JP2005277162A - 電子部品の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 デラミネーションがなく、かつ高い寸法精度を有する電子部品の製造方法を提供すること。
【解決手段】 支持体1上に、第1のセラミックグリーンシート層2を形成する工程と、第1のセラミックグリーンシート層2上に第2のセラミックグリーンシート層3を形成してセラミックグリーンシート4を形成する工程と、セラミックグリーンシート4上に導体層5を形成する工程と、セラミックグリーンシート4を複数枚積層して加熱することによってセラミックグリーンシート積層体6を作製する工程と、その積層体6を焼成する工程とを具備し、第1のセラミックグリーンシート層2は、直径1mmの圧子を用いた0.77N以下の荷重条件の針入測定において、35℃から100℃における圧子の圧接部の変位が10乃至100μmである。
【選択図】 図1

Description

本発明は、積層コンデンサや積層セラミック配線基板等のような電子部品の製造方法に関するものである。
近年、電子機器の小型化に伴い、積層コンデンサや積層セラミック配線基板のような電子部品において、小型化および高性能化が望まれている。例えば、積層コンデンサにおいては小型化および高容量化のためにより薄い誘電体層および導体層を多層化したものが求められている。また、積層セラミック配線基板においては小型化および配線導体の高密度化のためにより薄い絶縁層および配線導体層を多層に形成し、配線導体層の配線の幅および間隔もより微細なものが求められている。
このような電子部品は、セラミック粉末に有機バインダー、可塑剤、溶剤等を加えてスラリーとし、ドクターブレード等によりセラミックグリーンシート(以下、グリーンシートともいう)を成形した後、金属粉末を含有する導体ペーストを印刷するなどしてグリーンシート上に導体層を形成し、ついで複数枚の導体層が形成されたグリーンシートを積層して加圧することにより圧着して積層体を得て、この積層体を焼成することで得られる。
電子部品に対する改善要求の1つとして、導体層が形成されたグリーンシートを多数積層すると、導体層が形成された領域が重なる部分とそうでないない部分ではその厚み差が大きくなることがある。このため、積層されたグリーンシートを厚み方向に加圧した場合、導体層が形成された領域が重なる部分においては加圧力が十分に加わるものの、そうでない部分においては加圧力が十分に加わりにくくなるので、不十分な圧着となってしまいやすい。その結果、そのような積層体を焼成すると、圧着が不十分な部分でデラミネーション(層間剥離)が発生するという問題があった。
このようなデラミネーションが電子部品内部に存在すると、容量値の変化や絶縁破壊が起りやすくなるので電気的な特性が確保できないという問題があった。
この問題に対して、特許文献1では、加圧された際の流動性が高い高流動性部分を有する積層体を用いることが提案されている。積層体を厚み方向に加圧した際に、内部電極が積層されている領域に存在する高流動性部分が残りの部分に移動して残りの部分の厚みが増大しようとすることにより、加圧力が全体に均一に加わることとなるので、デラネーションが生じ難くなるものである。
また、グリーンシート上に形成された導体層の上に別のグリーンシートを積層する場合、この導体層の断面形状にグリーンシートが追従し難いために導体層の周辺に空隙が発生し、この空隙を起因とするデラミネーションが発生しやすいという問題があった。特に導体層の配線の間隔が微細な場合は、導体層の配線間に空隙が発生しやすかった。
この問題に対しては、特許文献2では、グリーンシート上に導体層を形成した後、導体層の形成されている部分の周囲の領域にセラミックペーストを印刷することが提案されている。この方法を用いれば、導体層の形成されている部分の周囲の領域にセラミックペーストを印刷することで導体層とグリーンシートとの段差をなくすことができる。このため、導体層の周辺や配線導体層の配線間に空隙が発生することを抑え、空隙に起因するデラミネーションの発生も抑えることが可能となる。また、導体層が形成されたグリーンシートを複数枚積層しても厚み差が発生しないので、ムラなく加圧して圧着することが可能となり、圧着が不十分な部分が発生することを抑え、デラミネーションの発生を抑えることが可能となる。
特許第3344100号公報 特開平5−217448号公報
しかしながら、上記従来の高流動性部分を有する積層体を用いる方法においては、高流動性部分を移動させてデラミネーションが発生しないような圧着を行なうためには、例えば厚み方向に180MPa(1800kg/cm)という高い圧力を加える必要がある。このような高い圧力を導体層が形成されたグリーンシートに加えると、グリーンシートや導体パターンの形状が変形してしまうこととなる。その結果、基板の所望の寸法精度が得られないために、基板上への部品実装が困難となったり、設計通りの導体パターンの形状が得られないために、特に高周波用配線基板等ではインピーダンス整合等の電気的特性が得られなくなるという問題があった。さらに、配線導体層の配線間隔が微細な場合の配線間に発生する空隙の問題は解決されないままであった。
また、導体層の形成されている部分の周囲の領域にセラミックペーストを印刷する方法においては、導体層が形成されたグリーンシート上にさらにセラミックペーストを印刷するという工程が加わるばかりでなく、配線導体層の配線間隔が微細な場合は配線間にセラミックペーストを印刷することが困難であった。このため配線導体層の上にもセラミックペーストが印刷されてしまい、配線導体層上に印刷されたセラミックペーストにより、積層されて上下に配置される配線導体層間を接続するための貫通導体が配線導体層と接続されなくなるという問題があった。
さらには、キャビティを有する電子部品を製造する場合、キャビティとなる貫通穴を形成したグリーンシートとキャビティの底部となる貫通穴が形成されていないグリーンシートとを積層して圧着すると、グリーンシート積層体のキャビティ底部が反ってしまうという問題があった。これは、圧着するための加圧によりキャビティの周囲だけに圧力が加わり、キャビティ周囲のリーンシートが加圧により伸びるのに対して、キャビティ底部には圧力が加わらないのでキャビティ底部のグリーンシートは周囲から押されてしまうことによるものである。これは、電子部品がより小型でキャビティ底部の厚みがより薄い場合により発生しやすいものであった。キャビティ底部が反ってしまうと、水晶振動子やICチップ等の電子素子を搭載することが困難となってしまう。搭載できても搭載された部品が傾いてしまうので、CCDやC−MOS等の光半導体素子を搭載した場合は受光精度が悪くなってしまうという問題があった。
本発明は、上記従来の問題点に鑑みて完成されたものであり、その目的は、デラミネーションがなく、かつ高い寸法精度を有する電子部品の製造方法を提供することである。
本発明の電子部品の製造方法は、支持体上に、第1のセラミックグリーンシート層を形成する工程と、該第1のセラミックグリーンシート層上に第2のセラミックグリーンシート層を形成してセラミックグリーンシートを形成する工程と、前記セラミックグリーンシート上に導体層を形成する工程と、前記導体層が形成された前記セラミックグリーンシートを複数枚積層して加熱することによってセラミックグリーンシート積層体を作製する工程と、前記セラミックグリーンシート積層体を焼成する工程とを具備しており、前記第1のセラミックグリーンシート層は、直径1mmの圧子を用いた0.77N以下の荷重条件の針入測定において、35乃至100℃における前記圧子による圧接部の変位が10乃至100μmであることを特徴とする。
また、本発明の電子部品の製造方法は好ましくは、前記第1のセラミックグリーンシート層は、前記セラミックグリーンシート積層体を作製する際の加熱時に溶融状態となる溶融成分を含有し、前記溶融成分の融点が35乃至100℃であることを特徴とする。
本発明の電子部品の製造方法によれば、第1のセラミックグリーンシート層は、直径1mmの圧子を用いた0.77N以下の荷重条件の針入測定において、35乃至100℃における前記圧子による圧接部の変位が10乃至100μmであることから、セラミックグリーンシート積層体を作製する工程において1MPa以下という比較的小さい加圧で35℃から100℃に加熱した際に、導体層が形成されたセラミックグリーンシートを積層して加熱した際に第1のセラミックグリーンシート層が軟化するので、導体層が形成されたセラミックグリーンシートを積層した際に第1のセラミックグリーンシート層がその下に位置するセラミックグリーンシートの第2のセラミックグリーンシート層およびその上に形成された導体パターンの形状に追従して変形することとなる。その結果、導体層周囲や導体層の配線間に空隙が発生することなくセラミックグリーンシート同士が密着し、セラミックグリーンシート積層体を焼成して得られる電子部品はデラミネーションの発生のないものとなる。
また、第1のセラミックグリーンシート層は、セラミックグリーンシート積層体を作製する際の加熱時に溶融状態となる溶融成分を含有することから、加熱のみで第1のセラミックグリーンシート層が軟化して接着性を有するものとなるので、大きな加圧力によりセラミックグリーンシートを圧着させる必要がない。そして、導体層のパターンの形成される第2のセラミックグリーンシート層は加熱時に溶融する溶融成分を含有しないことから、第2のセラミックグリーンシート層は加熱時に変形することはなく、積層したセラミックグリーンシートが位置ずれしないように、また、軟化した第1のセラミックグリーンシート層を第2のセラミックグリーンシート層およびその上に形成された導体層のパターンの形状に追従して変形するのを補助するために押さえる程度では変形しないものである。
また、溶融成分の融点が35乃至100℃であることから、常温では第1のセラミックグリーンシート層が軟化して変形することはないので、積層工程までのハンドリングが容易となり、セラミックグリーンシート中の有機バインダー(以下、バインダーともいう)や可塑剤等の有機成分が分解するような温度(120℃以上)に加熱しなくてもよいので、分解ガスによりデラミネーションが発生してしまうことがない。よって、セラミックグリーンシートおよびその上に形成された導体層のパターン形状が変形することがなく、得られるセラミックグリーンシート積層体およびそれを焼成して得られる電子部品は高い寸法精度を有するものとなる。
また、キャビティを有する電子部品を製造する場合、大きな加圧力によりセラミックグリーンシートを圧着させる必要がないので、キャビティ周囲部とキャビティ底部との加圧によるグリーンシートの伸びの違いによるキャビティ底部の反りの発生を抑えることが可能となり、キャビティ底部に電子素子を精度よく確実に搭載することが可能な電子部品を得ることができる。
このように、本発明の製造方法によれば、セラミックグリーンシート間に空隙を発生させることがなく、セラミックグリーンシートや導体層の変形を抑えたセラミックグリーンシート積層体を得ることが可能となり、本発明の製造方法により作製された電子部品はデラミネーションがなく、高い寸法精度を有する電子部品となる。
本発明の電子部品の製造方法について以下に詳細に説明する。図1は本発明の電子部品の製造方法の実施の形態の一例を示す工程毎の断面図であり、1は支持体、2は第1のセラミックグリーンシート層、3は第2のセラミックグリーンシート層、4はセラミックグリーンシート、5は導体層、6はセラミックグリーンシート積層体である。
まず図1(a)に示すように、支持体1上に第1のセラミックグリーンシート層2を形成し、ついで図1(b)に示すように、第1のセラミックグリーンシート層2上に第2のセラミックグリーンシート層3を形成してセラミックグリーンシート4を形成する。
本発明における第1のセラミックグリーンシート層2および第2のセラミックグリーンシート層3は、セラミック粉末、有機バインダー、溶剤等を混合したものが用いられる。第1のセラミックグリーンシート層2および第2のセラミックグリーンシート層3ともに、さらに可塑剤を添加してセラミックグリーンシート4の硬度や強度を調整してもよい。
セラミック粉末としては、例えばセラミック配線基板であれば、Al,AlN,ガラスセラミック粉末(ガラス粉末とフィラー粉末との混合物)等が挙げられ、積層コンデンサであればBaTiO系,PbTiO系等の複合ペロブスカイト系セラミック粉末が挙げられ、電子部品に要求される特性に合わせて適宜選択される。
ガラスセラミック粉末のガラス成分としては、例えばSiO−B系、SiO−B−Al系,SiO−B−Al−MO系(ただし、MはCa,Sr,Mg,BaまたはZnを示す),SiO−Al−MO−MO系(ただし、MおよびMは同じまたは異なっていて、Ca,Sr,Mg,BaまたはZnを示す),SiO−B−Al−MO−MO系(ただし、MおよびMは上記と同じである),SiO−B−M O系(ただし、MはLi、NaまたはKを示す,SiO−B−Al−M O系(ただし、Mは上記と同じである),Pb系ガラス,Bi系ガラス等が挙げられる。
また、ガラスセラミック粉末のフィラー粉末としては、例えばAl,SiO,ZrOとアルカリ土類金属酸化物との複合酸化物,TiOとアルカリ土類金属酸化物との複合酸化物,AlおよびSiOから選ばれる少なくとも1種を含む複合酸化物(例えばスピネル,ムライト,コージェライト)等のセラミック粉末が挙げられる。
セラミックグリーンシート4に配合される有機バインダーとしては、従来よりセラミックグリーンシートに使用されているものが使用可能であり、例えばアクリル系(アクリル酸,メタクリル酸またはそれらのエステルの単独重合体または共重合体,具体的にはアクリル酸エステル共重合体,メタクリル酸エステル共重合体,アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体等),ポリビニルブチラ−ル系,ポリビニルアルコール系,アクリル−スチレン系,ポリプロピレンカーボネート系,セルロース系等の単独重合体または共重合体が挙げられる。焼成工程での分解、揮発性を考慮すると、アクリル系バインダーがより好ましい。
第1のセラミックグリーンシート層2は、直径1mmの石英製の圧子を用いた0.77N以下の荷重条件の針入測定において、35℃から100℃における圧子による圧接部の変位が10乃至100μmである。上記の針入測定とは、熱機械分析(TMA:thermo mechanical analysis)における針入測定(penetration-mode measurement)であり、TMA装置を用いて先端が針状の圧子により圧縮荷重を加えたときの、試料の軟化に伴う圧子による圧接部の変位を測定する手法である。
第1のセラミックグリーンシート層2は、直径1mmの圧子を用いた0.77N以下の荷重条件の針入測定において、35℃から100℃における圧子の圧接部の変位が10乃至100μmであることから、セラミックグリーンシート積層体6を作製する工程において1MPa(10kg/cm)以下の比較的小さい加圧で35℃から100℃に加熱した際に第1のセラミックグリーンシート層2が軟化するので、導体層5が形成されたセラミックグリーンシート4を積層した際に第1のセラミックグリーンシート層2がその下に位置するセラミックグリーンシート4の第2のセラミックグリーンシート層3およびその上に形成された導体層5のパターンの形状に追従して変形することとなる。その結果、導体層5周囲や導体層5の配線間に空隙が発生することなくセラミックグリーンシート4同士が密着することとなり、セラミックグリーンシート積層体6を焼成して得られる電子部品はデラミネーションの発生のないものとなる。
第1のセラミックグリーンシート層2の変位が10μm未満である場合、セラミックグリーンシート積層体6を作製する工程において加熱した際に、第1のセラミックグリーンシート層2が、その下に位置するセラミックグリーンシート4の第2のセラミックグリーンシート層3およびその上に形成された導体層5のパターンの形状に追従して変形する程度まで十分軟化しないため、導体層5周囲や隣り合う導体層5の配線間に空隙が発生じ、セラミックグリーンシート4同士が密着せず、セラミックグリーンシート積層体6を焼成して得られる電子部品は、デラミネーションが発生する。
第1のセラミックグリーンシート層2の変位が100μmより大きい場合、軟化の度合いが大きすぎるので、セラミックグリーンシート積層体6を作製する工程において軟化した第1のセラミックグリーンシート層2がセラミックグリーンシート4の端面からはみ出すほどの変形となってしまうこととなる。特にキャビティを有する電子部品を製造する場合、このはみ出した部分がキャビティ内の導体層5上にまで達すると、導体層5への接続ができなくなる。また、第1のセラミックグリーンシート層2の有機成分が、第2のセラミックグリーンシート層3に拡散しやすくなるので、第2のセラミックグリーンシート層3までもが軟化することとなり、セラミックグリーンシート4が変形しやすいものとなるので、その上に形成された導体層5も変形しやすくなり、結果として高寸法精度の電子部品を得ることができなくなる。
また、35乃至100℃における変位であるので、常温では第1のセラミックグリーンシート層2が軟化して変形することはないので、積層工程までのハンドリングが容易となり、セラミックグリーンシート積層体6を作製する工程において、セラミックグリーンシート4中のバインダーや可塑剤等の有機成分が分解し、分解ガスによりデラミネーションが発生することがないような温度(120℃以下)で加熱することにより軟化、変形するものとなる。
第1のセラミックグリーンシート層2が、35乃至100℃での変位が10乃至100μmとなるようにするためには、含有する有機成分を熱可塑性のものとすればよい。その方法は、上記セラミックグリーンシート4に配合される有機バインダーのうち、第1のセラミックグリーンシート層2に配合される有機バインダーとして、そのガラス転移点(Tg)が加熱温度(35乃至100℃)より低いものを用いる方法が挙げられる。このとき、ガラス転移点が低くても、有機バインダー量が少なければ変位が10μmより小さいものとなるので、第2のセラミックグリーンシート層3のような通常のセラミックグリーンシートの有機バインダー配合量(セラミック粉末100質量部に対して10乃至20質量部程度)より多く入れるのがよい。具体的には例えば、ガラス転移点(Tg)が−20℃乃至0℃のものを、セラミック粉末100質量部に対して30乃至60質量部添加するなどすればよい。
また、第1のセラミックグリーンシート層2に、35乃至100℃で溶融状態となる溶融成分を含有させる方法が、好ましい方法として挙げられる。これは、上記の有機バインダーのガラス転移点や配合量による方法では、ガラス転移点や配合量によっては、加熱しない常温の状態で、軟化の度合いは小さいか、または軟化はしないが表面が粘着性を有するものとなり、ハンドリングが困難となる場合があるのに対して、溶融成分を含有させる方法では溶融成分は加熱時にのみ溶融するので、常温では第1のセラミックグリーンシート層2が軟化して変形することはなく、積層工程までのハンドリングが容易となるからである。また、セラミックグリーンシート積層体6を作製する工程における加熱は、高くても120℃程度で加熱すれば溶融成分が溶融し、第1のセラミックグリーンシート層2は軟化して変形するので、セラミックグリーンシート4中のバインダーや可塑剤等の有機成分が分解することがなく、分解ガスによりデラミネーションが発生することがないからである。
また、溶融状態は有機バインダーの軟化した状態より粘度が低いので第1のセラミックグリーンシート層2は、その下に位置するセラミックグリーンシートの第2のセラミックグリーンシート層およびその上に形成された導体パターンの形状により追従して変形しやすいものとなる。
融点が35乃至100℃である溶融成分としては、スラリーを調整する際の溶媒への溶解性や、上述したアクリルバインダーとの相溶性を考慮すると、具体的には、ヘキサデカノール,ポリエチレングリコール,ポリグリセロール,ステアリルアミド,オレイルアミド,エチレングリコールモノステアレート,パラフィン,ステアリン酸,シリコーン等が挙げられる。
第1のセラミックグリーンシート層2は、上記セラミック粉末,有機バインダーに溶剤(有機溶剤,水等)、必要に応じて所定量の可塑剤,分散剤、好ましくは溶融成分を加えてスラリーを得、これをPETフィルム等の支持体上にドクターブレード法,リップコーター法,ダイコーター法等により成形することによって得られる。第1のセラミックグリーンシート層2の厚さは、導体層5とセラミックグリーンシート4との段差を埋めるために、導体層5の厚みより厚くなるように形成される。
第2のセラミックグリーンシート層3は、第1のセラミックグリーンシート層2に用いるスラリーと異なり、溶融成分を含まないスラリーを用いて形成される。また、有機バインダーは、第1のセラミックグリーンシート層2に含まれる有機バインダーよりガラス転移点が高いものを用いたり、その量を少なくするなどして、35乃至100℃で第1のセラミックグリーンシート層2より軟化しないようにする。
第1のセラミックグリーンシート層2上に第2のセラミックグリーンシート層3を形成する方法は、(1)第1のセラミックグリーンシート層2と同様に成形した第2のセラミックグリーンシート層3を第1のセラミックグリーンシート層2上に積層して形成する方法、(2)支持体1上に形成された第1のセラミックグリーンシート層2上に第2のセラミックグリーンシート3のスラリーを塗布して形成する方法、(3)支持体1上に塗布された第1のセラミックグリーンシート層2のスラリー上に第2のセラミックグリーンシート層3のスラリーを塗布して形成する方法が挙げられる。
第1のセラミックグリーンシート層2上への第2のセラミックグリーンシート層3の積層の際に、第1のセラミックグリーンシート層2と第2のセラミックグリーンシート層3との間に空隙を発生させる可能性があり、従って第1のセラミックグリーンシート層2と第2のセラミックグリーンシート層3との密着性を向上させるためには、上記(2)または(3)の方法が好ましい。さらに、上記(3)の方法では、第1のセラミックグリーンシート層2と第2のセラミックグリーンシート層3の形成がほぼ同時に行なわれるので、工程が簡略化されるのでより好ましい。この(3)の方法においては、ダイコーター法やリップコーター法等の押し出し式の方法を用いるとよく、これらは非接触式の塗布方法であり、また溶剤の少ない、比較的粘度の高いスラリーを用いることができるので、第1のセラミックグリーンシート層2のスラリーと第2のセラミックグリーンシート層3のスラリーが混ざり合うことなくセラミックグリーンシート4を形成することができるのでよい。
次に図1(c)に示すように、セラミックグリーンシート4上に導体層5を形成する。セラミックグリーンシート4上に導体層5を形成する方法としては、例えば導体材料粉末をペースト化した導体ペーストをスクリーン印刷法やグラビア印刷法等により印刷したり、めっき法や蒸着法等により所定パターン形状の金属膜を形成するようなセラミックグリーンシート4上に直接形成する方法、あるいは印刷により所定パターン形状に形成した導体厚膜や所定パターン形状に加工した金属箔、めっき法や蒸着法等により形成した所定パターン形状の金属膜を、セラミックグリーンシート4上に転写する方法がある。導体材料としては、例えばW,Mo,Mn,Au,Ag,Cu,Pd(パラジウム),Pt(白金)等の1種または2種以上が挙げられ、2種以上の場合は混合、合金、層別のコーティング等のいずれの形態であってもよい。
導体層5は、セラミックグリーンシート4の第2のセラミックグリーンシート層3上に形成されるのが好ましい。これは、第2のセラミックグリーンシート層3は加熱時に軟化して変形することはないので、その上に導体層5を形成することにより導体層5を変形させないようにするためである。
なお、導体層5を形成する前に、必要に応じて上下のセラミック層間の導体層5同士を接続するためのビアホール導体やスルーホール導体等の貫通導体を形成してもよい。この貫通導体は、パンチング加工やレーザ加工等によりセラミックグリーンシート4に形成した貫通孔に、導体材料粉末をペースト化した導体ペーストを印刷やプレス充填により埋め込む等の手段によって形成される。
キャビティを有する電子部品を製造する場合、次の積層体を作製する工程より前に、キャビティ形状の貫通穴を金型による打ち抜き等によりセラミックグリーンシート4の一部に形成しておく。貫通穴の形成は、キャビティの内壁面への導体層5の形成の有無や形成方法に応じて、導体層5を形成する前でもよいし、形成した後でもよい。
次に図1(d)に示すように、位置合わせして積み重ねたセラミックグリーンシート4を、第1のセラミックグリーンシート層2が軟化して変形する程度の温度(35乃至120℃程度)に加熱することで、セラミックグリーンシート積層体6を作製する。また、このとき、積層したセラミックグリーンシート4が位置ずれしないように、また、軟化した第1のセラミックグリーンシート層2を第2のセラミックグリーンシート層3およびその上に形成された導体層5のパターン形状に追従して変形するのを補助するために押さえる程度の加圧(0.1〜1MPa)を行なうと、より精度よく確実な圧着が可能となる。
セラミックグリーンシート積層体6を作製する工程において、第1のセラミックグリーンシート層2は加熱時に軟化することから、導体層5が形成されたセラミックグリーンシート4を積層して加熱した際に、第1のセラミックグリーンシート層2はその下に位置するセラミックグリーンシート4の第2のセラミックグリーンシート層3およびその上に形成された導体層5の形状に追従して変形する。これにより、導体層5の周囲や導体層5の配線間に空隙が発生することなくセラミックグリーンシート4同士が密着し、セラミックグリーンシート積層体6を焼成して得られる電子部品はデラミネーションの発生のないものとなる。
また、第1のセラミックグリーンシート層2は、加熱時に軟化することから、加熱のみで第1のセラミックグリーンシート層2が接着性を有するものとなるので、大きな加圧力によりセラミックグリーンシート4を圧着させる必要がない。そして、導体層5の形成される第2のセラミックグリーンシート層3は加熱時に軟化しないことから、第2のセラミックグリーンシート層3は加熱時に変形することはなく、積層したセラミックグリーンシート4が位置ずれしないように、また、軟化した第1のセラミックグリーンシート層2を第2のセラミックグリーンシート層3およびその上に形成された導体層5のパターンの形状に追従して変形するのを補助するために押さえる程度では変形しない。よって、セラミックグリーンシート4およびその上に形成された導体層の形状が変形することがなく、さらに加圧によるグリーンシート4への歪がなく得られるセラミックグリーンシート積層体6およびそれを焼成して得られる電子部品は高い寸法精度を有するものとなる。
例えば、加熱時に軟化しない第1のセラミックグリーンシート層2を用いた場合、セラミックグリーンシート積層体6および電子部品の寸法精度は±0.5%(寸法誤差)程度であったが、本発明の加熱時に軟化する第1のセラミックグリーンシート層2を用いた場合、セラミックグリーンシート積層体6および電子部品の寸法精度は±0.3%程度となり、大幅に向上することが実験により判明した。
また、キャビティを有する電子部品を製造する場合、大きな加圧力によりセラミックグリーンシートを圧着させる必要がないので、キャビティ周囲部とキャビティ底部との加圧によるグリーンシートの伸びの違いによるキャビティ底部の反りの発生を抑えることが可能となり、キャビティ底部に電子素子を精度よく確実に搭載することが可能な電子部品を得ることができる。
図1(d)の最下部に位置するセラミックグリーンシートとしては、第2のセラミックグリーンシート層3のみで構成されるセラミックグリーンシート4’を用いればよい。積層コンデンサのように表面に導体層5が露出しないような電子部品の場合は、図1(d)の最上部に位置するセラミックグリーンシート4には導体層5が形成されていないセラミックグリーンシート4を用いればよく、積層セラミック配線基板のような両面に導体層5が露出するような電子部品の場合は、最下部のセラミックグリーンシート4’の両面に導体層5を形成したものを用いればよい。
そして最後に、セラミックグリーンシート積層体6を焼成することにより本発明の電子部品が作製される。焼成工程は、有機成分の除去とセラミック粉末の焼結とから成る。有機成分の除去は、100〜800℃の温度範囲でセラミックグリーンシート積層体6を加熱することによって行い、有機成分を分解、揮発させる。焼結温度は、セラミック組成により異なり、約800〜1600℃の範囲内である。焼成雰囲気はセラミック粉末や導体材料により異なり、大気中、還元雰囲気中、非酸化性雰囲気中等で行なわれ、有機成分の除去を効果的に行なうために水蒸気等を含ませてもよい。
焼成後に得られた電子部品は、その表面に露出した導体層5の表面に、導体層5の腐食防止のために、または半田や金属ワイヤ等の外部基板や電子部品との接続手段の良好な接続のために、NiやAuのめっきを施すとよい。
セラミック材料としてガラスセラミックスのような低温焼結材料を用いる場合、セラミックグリーンシート積層体6の上下面にさらに拘束グリーンシートを積層して焼成し、焼成後に拘束シートを除去するようにすれば、より高寸法精度のセラミック基板を得ることが可能となる。拘束グリーンシートは、Al等の難焼結性無機材料を主成分とするグリーンシートであり、焼成時に収縮しないものである。この拘束グリーンシートが積層された積層体は、収縮しない拘束グリーンシートにより積層平面方向(xy方向:平面方向)の収縮が抑制され、積層方向(z方向)にのみ収縮するので、焼成収縮に伴う寸法ばらつきが抑制される。このときの拘束グリーンシートも本発明のセラミックグリーンシート6と同様の第1のセラミックグリーンシート層2と第2のセラミックグリーンシート層3とを有する構成にすると、拘束グリーンシートを積層して圧着する際にも大きな加圧力を必要とせず、得られる電子部品はより高寸法精度のものとなるのでよい。
また、拘束グリーンシートには難焼結性無機成分に加えて、焼成温度以下の軟化点を有するガラス成分、例えばセラミックグリーンシート4中のガラスと同じガラスを含有させるとよい。この場合、焼成中にこのガラスが軟化してセラミックグリーンシート4と結合することにより、セラミックグリーンシート4と拘束グリーンシートとの結合が強固なものとなり、より確実な拘束力が得られる。このときのガラス量は、難焼結性無機成分とガラス成分を合わせた無機成分100質量部に対して0.5〜15質量部とすると拘束力が向上し、かつ拘束グリーンシートの焼成収縮が0.5%以下に抑えられる。
焼成後、拘束シートを除去する。除去方法としては、例えば研磨、ウォータージェット、ケミカルブラスト、サンドブラスト、ウェットブラスト(砥粒と水とを空気圧により噴射させる方法)等が挙げられる。
以上のような方法で作製された電子部品は、その内部にデラミネーションを有さず寸法精度の高いものであるので、電子部品として要求される優れた電気特性や気密性の高いものとなる。
本発明の実施例について以下に説明する。
まず、第1のセラミックグリーンシート層用に、平均粒径1μmのアルミナを90質量%、焼結助剤としてシリカ、マグネシア、カルシアと、着色顔料として遷移金属の酸化物の酸化クロムとを合わせて10質量%の割合で調合したセラミック粉末100質量部に対して、有機バインダーとしてガラス転移点が−10℃のメタクリル酸メチル−アクリル酸エチル共重合体樹脂および溶融成分として融点が48℃のヘキサデカノールを表1のような割合で調合し、トルエン及び酢酸エチルを溶媒としてボールミルにより40時間混合し、第1のスラリーを調整した。
また、第2のセラミックグリーンシート層用に、第1のスラリーと同様のセラミック粉末100質量部に対して、有機バインダーとしてメタクリル酸メチル−アクリル酸エチル共重合体樹脂を固形分で10質量部、可塑剤としてフタル酸ジブチルを1質量部添加し、トルエン及び酢酸エチルを溶媒としてボールミルにより40時間混合し、第2のスラリーを調整した。
次に、ダイコーターシート成形機を用いて、成形速度2m/分にて250mmの幅で第1のスラリーを塗工し、その上に第2のスラリーを塗工して乾燥することにより、第1のセラミックグリーンシート層の厚みが150μm、第2のセラミックグリーンシート層の厚みが150μmのセラミックグリーンシートを作製した。
第1のセラミックグリーンシート層の針入測定は、測定装置(「SSC−5000」セイコー電子工業(株)製)を用いて、作製されたセラミックグリーンシートの第1のセラミックグリーンシート層上に当接した1mmφ(直径)の石英製の圧子に0.385Nの荷重をかけた状態で、室温(約25℃)から100℃まで昇温しながら第1のセラミックグリーンシート層の圧接部の変位量を測定した。
また、作製されたセラミックグリーンシートの第2のセラミックグリーンシート層上に、タングステン粉末を主成分とする導体ペーストを用いスクリーン印刷法により所定パターンに印刷し、導体層を形成した。導体層を形成したセラミックグリーンシートをそれぞれ4層重ねあわせて厚み方向に0.5MPa(5kg/cm)の圧力および80℃の温度で加熱圧着してセラミックグリーンシート積層体を作製した。
セラミックグリーンシートおよびセラミックグリーンシート積層体の表面の導体層の寸法を3次元測定機で測定し、積層前後の導体層の寸法から積層後の変形量を算出した。
得られたセラミックグリーンシート積層体は、水蒸気を含んだ窒素雰囲気中に約1000℃の温度で1時間保持することにより有機成分を除去した後、還元雰囲気中にて約1600℃の温度で1時間焼成することで評価用のセラミック焼結体を作製した。
このセラミック焼結体の断面(クロスセクション)観察を行い、セラミック層間や導体層周囲のデラミネーションの発生について評価した。そして、第1のセラミックグリーンシート層の針入測定における変位、セラミックグリーンシート積層体の作製後の変形(積層後の変形)およびデラミネーションの評価結果を表1に示す。
Figure 2005277162
表1において、針入測定における変位の欄は最大の変位を示す。また、表1の積層後の変形の欄において、「○」は変形量が±0.3%未満であったことを示し、「×」は変形量が±0.3%以上であったことを示す。表1のデラミネーションの欄において、「○」はセラミック焼結体のセラミック層間や導体層周囲にデラミネーションが見られず優れていたことを示し、「×」はセラミック焼結体のセラミック層間や導体層周囲にデラミネーションが見られたことを示す。
表1より、針入測定における変位が10μmより小さい試料No.1,2,3は、セラミック焼結体のセラミック層間や導体層周囲にデラミネーションが発生した。これは、第1のセラミックグリーンシート層が導体層に沿って変形できず、導体層の周囲や隣り合う導体層の配線間に空隙が発生じ、セラミックグリーンシート同士が密着せずにデラミネ−ションに至ったと考えられる。
また、針入測定における変位が100μmより大きい試料No.11,12は、積層後の寸法が積層前と比較して0.3%以上大きくなっていた。これは、積層工程において、第1のセラミックグリーンシート層中の溶融成分が軟化して第2のセラミックグリーンシート層中に拡散し、セラミックグリーンシート全体が軟化したことによって変形したためであると考えられる。
これに対して、針入測定における変位が10乃至100μm以下である試料No.4〜10は、積層後の寸法が積層前に対して±0.3%以下と良好であり、また、セラミック層間や導体層周囲にデラミネーションもなく優れたものであった。
また、第1のセラミックグリーンシート層が溶融成分を含む試料No.1,4は、昇温途中である溶融成分の融点(48℃)を超えたところで変位(軟化)が観られ、そこから急激に変位が大きくなり、融点〜融点+10℃の範囲でほぼ最大の変位を示した。これに対して、溶融成分を含まない試料No.2,3,5,6,7,8,9,10,11,12は、室温から100℃までの昇温に伴って変位が大きくなった。従って、第1のセラミックグリーンシート層が溶融成分を含む場合、セラミックグリーンシート積層体を作製する際の加熱のみで第1のセラミックグリーンシート層を軟化させて変形させることができ、セラミックグリーンシート積層体を作製する工程までの常温(室温)でのハンドリングが容易となることがわかった。
(a)〜(d)は、本発明の電子部品の製造方法の実施の形態の一例を示す工程毎の断面図である。
符号の説明
1・・・支持体
2・・・第1のセラミックグリーンシート層
3・・・第2のセラミックグリーンシート層
4・・・セラミックグリーンシート
5・・・導体層
6・・・セラミックグリーンシート積層体

Claims (2)

  1. 支持体上に、第1のセラミックグリーンシート層を形成する工程と、該第1のセラミックグリーンシート層上に第2のセラミックグリーンシート層を形成してセラミックグリーンシートを形成する工程と、前記セラミックグリーンシート上に導体層を形成する工程と、前記導体層が形成された前記セラミックグリーンシートを複数枚積層して加熱することによってセラミックグリーンシート積層体を作製する工程と、前記セラミックグリーンシート積層体を焼成する工程とを具備しており、前記第1のセラミックグリーンシート層は、直径1mmの圧子を用いた0.77N以下の荷重条件の針入測定において、35乃至100℃における前記圧子による圧接部の変位が10乃至100μmであることを特徴とする電子部品の製造方法。
  2. 前記第1のセラミックグリーンシート層は、前記セラミックグリーンシート積層体を作製する際の加熱時に溶融状態となる溶融成分を含有し、前記溶融成分の融点が35乃至100℃であることを特徴とする請求項1記載の電子部品の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2009182185A (ja) * 2008-01-31 2009-08-13 Seiko Epson Corp セラミック多層基板の製造方法
JP2017054999A (ja) * 2015-09-11 2017-03-16 日本特殊陶業株式会社 セラミック基板の製造方法

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