JP2005311266A - 電子部品の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 デラミネーションがなく、かつ高い寸法精度を有する電子部品の製造方法を提供すること。
【解決手段】 支持体1上に第1のセラミックグリーンシート層2を形成し、その上に第2のセラミックグリーンシート層3を形成してセラミックグリーンシート4を形成し、導体層5を形成したセラミックグリーンシート4を複数枚積層して加熱してセラミックグリーンシート積層体6を作製し、セラミックグリーンシート積層体6の両主面に拘束グリーンシート7を積層して加熱することによって作製した生積層体8を焼成し、拘束グリーンシート7を焼成して成る拘束層を除去する電子部品の製造方法であって、第1のセラミックグリーンシート層2および拘束グリーンシート7は、加熱時に溶融状態となる溶融成分を含有している。
【選択図】 図1

Description

本発明は、積層コンデンサや積層セラミック配線基板等のような電子部品の製造方法に関するものである。
近年、電子機器の小型化に伴い、積層コンデンサや積層セラミック配線基板のような電子部品において、小型化および高性能化が望まれている。例えば、積層コンデンサにおいては小型化および高容量化のためにより薄い誘電体層および導体層を多層化したものが求められている。また、積層セラミック配線基板においては小型化および配線導体の高密度化のためにより薄い絶縁層および配線導体層を多層に形成し、配線導体層の幅および配線の間隔もより微細なものが求められている。
このような電子部品は、セラミック粉末に有機バインダー、可塑剤、溶剤等を加えてスラリーとし、ドクターブレード等によりセラミックグリーンシート(以下、グリーンシートともいう)を成形した後、金属粉末を含有する導体ペーストを印刷するなどして上述のグリーンシート上に導体層を形成し、ついで複数枚の導体層が形成されたグリーンシートを積層して加圧することにより圧着して積層体を得て、この積層体を焼成することで得られる。
電子部品に対する高機能化の要求に対応して、導体層が形成されたグリーンシートを多数積層すると、導体層が形成された領域が重なる部分とそうでない部分ではその厚み差が大きくなる。このため、積層されたグリーンシートを厚み方向に加圧した場合、導体層が形成された領域が重なる部分においては加圧力が十分に加わるものの、そうでない部分においては加圧力が十分に加わりにくくなるので、不十分な圧着となってしまいやすい。その結果、そのような積層体を焼成すると、圧着が不十分な部分でデラミネーション(層間剥離)が発生するという問題があった。
このようなデラミネーションが電子部品の内部に存在すると、容量値の変化や絶縁破壊が起りやすくなるので電気的な特性が確保できないという問題があった。
この問題に対して、特許文献1では、加圧された際の流動性が高い高流動性部分を有する積層体を用いることが提案されている。積層体を厚み方向に加圧した際に、内部電極が積層されている領域に存在する高流動性部分が残りの部分に移動して残りの部分の厚みが増大しようとすることにより、加圧力が全体に均一に加わることとなるので、デラミネーションが生じ難くなるものである。
また、グリーンシート上に形成された導体層の上に別のグリーンシートを積層する場合、この導体層の断面形状にグリーンシートが追従し難いために導体層の周辺に空隙が発生し、この空隙を起因とするデラミネーションが発生しやすいという問題があった。特に導体層の配線間隔が微細な場合、配線間に空隙が発生しやすかった。
この問題に対しては、特許文献2では、グリーンシート上に導体層を形成した後、導体層の形成されている部分の周囲の領域にセラミックペーストを印刷することが提案されている。このような方法を用いれば、導体層の形成されている部分の周囲の領域にセラミックペーストを印刷することで導体層とグリーンシートとの段差をなくすことができる。このため、導体層の周辺や配線導体層の配線間に空隙が発生することを抑え、空隙に起因するデラミネーションの発生も抑えることが可能となる。また、導体層が形成されたグリーンシートを複数枚積層しても厚み差が発生しないので、ムラなく加圧して圧着することが可能となり、圧着が不十分な部分が発生することを抑え、デラミネーションの発生を抑えることが可能となる。
また、積層セラミック配線基板においては配線の微細化と同時に高寸法精度化が要求されている。これは、積層セラミック配線基板の寸法ばらつきがあると、積層セラミック配線基板上にICチップやチップコンデンサ等のチップ部品を搭載するときに積層セラミック配線基板表面の接続導体上に半田ペーストを印刷するマスクを寸法に合わせて複数用意する必要があったり、積層セラミック基板の外辺を基準として自動機により搭載すると、積層セラミック配線基板表面の接続導体上に正確に搭載できなかったりするという問題があったからである。
この問題に対しては、特許文献3〜5では、ガラスセラミックグリーンシートの積層体の両面または片面に、ガラスセラミック成分の焼成温度では焼結しない無機材料とバインダー、可塑剤等の有機成分とを含む拘束グリーンシートを積層して焼成する方法が提案されている。この拘束焼成方法によれば焼成時の収縮を拘束するため、積層体の厚さ方向のみに収縮が起こり、積層面の縦方向、横方向には収縮が起こらなくなり、焼成収縮のばらつきに起因するガラスセラミック基板の寸法のばらつきを抑え、ガラスセラミック基板の寸法精度が向上するというものである。
特許第3344100号公報 特開平5−217448号公報 特開平4−243978号公報 特開平5−28867号公報 特開平5−102666号公報
しかしながら、上記従来の高流動性部分を有する積層体を用いる方法においては、高流動性部分を移動させてデラミネーションが発生しないような圧着を行なうためには、例えば厚み方向に180MPaという高い圧力を加える必要がある。このような高い圧力を導体層が形成されたグリーンシートに加えると、グリーンシートや導体パターンの形状が変形することとなる。その結果、基板の所望の寸法精度が得られないために、基板上への部品実装が困難となったり、設計通りの導体パターンの形状が得られないために、特に高周波用配線基板等ではインピーダンス整合等の電気的特性が得られなくなるという問題があった。さらに、導体層の配線間隔が微細な場合の配線間に発生する空隙の問題は解決されないままであった。
また、導体層の形成されている部分の周囲の領域にセラミックペーストを印刷する方法においては、導体層が形成されたグリーンシート上にさらにセラミックペーストを印刷するという工程が加わるばかりでなく、微細な配線パターンに正確に位置合わせして印刷するのが困難であり、特に配線間隔が微細な場合は隣り合う配線の間にセラミックペーストを印刷することが困難であった。このため、導体層の上にもセラミックペーストが印刷されてしまい、導体層上に印刷されたセラミックペーストにより、積層されて上下に配置される導体層間を接続するための貫通導体が導体層と接続されなくなるという問題があった。
また、従来の拘束焼成方法では焼成収縮ばらつきに起因する寸法ばらつきは抑えることができるものの、積層体を作製する際に加圧力が5乃至30MPa(50乃至300kg/cm)という高い圧力を加えていたので、焼成前の積層体を作製する段階で寸法ばらつきが発生するという問題があった。
さらに、キャビティを有する電子部品を製造する場合、キャビティとなる貫通穴を形成したグリーンシートとキャビティの底部となる貫通穴が形成されていないグリーンシートとを積層して圧着すると、グリーンシート積層体のキャビティ底部が反ってしまうという問題があった。これは、圧着するための加圧によりキャビティの周囲だけに圧力が加わり、キャビティ周囲のグリーンシートが加圧により伸びるのに対して、キャビティ底部には圧力が加わらないのでキャビティ底部のグリーンシートは周囲から押されてしまうことによるものである。これは、電子部品がより小型でキャビティ底部の厚みがより薄い場合により発生しやすいものであった。キャビティ底部が反ってしまうと、水晶振動子やICチップ等の電子素子を搭載することが困難となってしまう。搭載できても搭載された部品が傾いてしまうので、CCDやC−MOS等の光半導体素子を搭載した場合は受光精度が悪くなるという問題があった。
本発明は、上記従来の問題点に鑑みて完成されたものであり、その目的は、デラミネーションがなく、かつ高い寸法精度を有する電子部品の製造方法を提供することである。
本発明の電子部品の製造方法は、支持体上に第1のセラミックグリーンシート層を形成する工程と、前記第1のセラミックグリーンシート層上に第2のセラミックグリーンシート層を形成してセラミックグリーンシートを形成する工程と、前記セラミックグリーンシート上に導体層を形成する工程と、前記導体層が形成された前記セラミックグリーンシートを複数枚積層して加熱することによってセラミックグリーンシート積層体を作製する工程と、前記セラミックグリーンシート積層体の両主面に前記セラミックグリーンシート積層体の焼結温度では実質的に収縮しない拘束グリーンシートを積層して加熱することによって前記セラミックグリーンシート積層体の両主面に前記拘束グリーンシートが積層された生積層体を作製する工程と、前記生積層体を焼成する工程と、前記拘束グリーンシートが焼成されて成る拘束層を除去する工程とを具備しており、前記第1のセラミックグリーンシート層および前記拘束グリーンシートは、前記セラミックグリーンシート積層体を作製する際および前記生積層体を作製する際の加熱時に溶融状態となる溶融成分を含有していることを特徴とする。
また、本発明の電子部品の製造方法は好ましくは、前記溶融成分の融点が35乃至100℃であることを特徴とする。
また、本発明の電子部品の製造方法は好ましくは、前記拘束グリーンシートに含まれる有機成分の量は、前記拘束グリーンシートに含まれる前記無機粉末100質量部に対して10乃至30質量部であることを特徴とする。
また、本発明の電子部品の製造方法は好ましくは、前記拘束グリーンシートに含まれる前記溶融成分の量は、前記拘束グリーンシートに含まれる有機バインダー100質量部に対して50乃至100質量部であることを特徴とする。
本発明の電子部品の製造方法によれば、第1のセラミックグリーンシート層は加熱時に溶融する溶融成分を含有することから、導体層が形成されたセラミックグリーンシートを積層して加熱した際に第1のセラミックグリーンシート層が軟化するので、第1のセラミックグリーンシート層はその下に位置するセラミックグリーンシートの第2のセラミックグリーンシート層およびその上に形成された導体層の形状に追従して変形することとなる。その結果、導体層の周囲や導体層の配線間に空隙が発生することなくセラミックグリーンシート同士が密着し、セラミックグリーンシート積層体を焼成して得られる電子部品はデラミネーションの発生のないものとなる。
また、第1のセラミックグリーンシート層は加熱のみで軟化して接着性を有するものとなるので、大きな加圧力によりセラミックグリーンシートを圧着させる必要がなく、導体層が形成されている第2のセラミックグリーンシート層は加熱時に溶融する溶融成分を含有しないので加熱時に変形することがないことから、積層したセラミックグリーンシートの位置ずれを防止するとともに、軟化した第1のセラミックグリーンシート層を第2のセラミックグリーンシート層およびその上に形成された導体層の形状に追従して変形するのを補助するために押さえる程度では変形しない。よって、セラミックグリーンシートおよびその上に形成された導体層の形状が変形することがなく、得られるセラミックグリーンシート積層体は高い寸法精度を有するものとなる。
さらに、この高寸法精度のセラミックグリーンシート積層体の両主面に積層される拘束グリーンシートは加熱時に溶融する溶融成分を含有し、セラミックグリーンシート積層体の焼結温度では実質的に収縮しないものであることから、生積層体を作製する際の加熱により拘束グリーンシートが軟化するのでセラミックグリーンシート積層体の両主面およびその上に形成された導体層の形状に追従して変形することとなり、導体層の周囲や導体層の配線間に空隙が発生することなくセラミックグリーンシート積層体の両主面に密着し、大きな加圧力により圧着させる必要がないのでセラミックグリーンシートおよびその上に形成された導体層の形状を変形させず、グリーンシート積層体の高い寸法精度を保持しながら拘束グリーンシートを圧着できる。また、焼成工程でセラミックグリーンシート積層体の収縮は拘束グリーンシートによって導体層周囲まで確実に拘束されるので、セラミックグリーンシート積層体は実質的に焼成収縮せず焼成収縮ばらつきが抑えられ、焼成して得られる電子部品は変形のない高い寸法精度を有するものとなる。
また、キャビティを有する電子部品を製造する場合、大きな加圧力によりセラミックグリーンシートを圧着させる必要がないので、キャビティ周囲部とキャビティ底部との加圧によるグリーンシートの伸びの違いによるキャビティ底部の反りの発生を抑えることが可能となり、キャビティ底部に電子素子等を精度よく確実に搭載することが可能な電子部品を得ることができる。
また、第1のセラミックグリーンシート層および第2の拘束グリーンシート層の溶融成分の融点が35乃至100℃であるものを用いた場合、常温では第1のセラミックグリーンシート層および第2の拘束グリーンシート層が軟化して変形することはないので、積層工程までのハンドリングが容易となるとともに、それぞれの積層工程における加熱時にセラミックグリーンシート中の有機バインダー(以下、単にバインダーともいう)や可塑剤等の有機成分が分解することがないので、分解ガスによりセラミックグリーンシート積層体中にデラミネーションが発生することがなく、焼成して得られる電子部品はデラミネーションの発生のないものとなる。また、セラミックグリーンシート積層体と拘束グリーンシートとの間にデラミネーションが発生することがないので、焼成工程の途中で拘束グリーンシートが剥離して焼成収縮を拘束することができなくなったり、また一部の剥離により拘束力が不均一になり焼成された電子部品が変形するというようなことがないのでより好ましいものとなる。
また、本発明において好ましくは、バインダーと溶融成分とから成る拘束グリーンシートの有機成分の量は、拘束グリーンシートに含まれる無機粉末100質量部に対して10乃至30質量部であることから、無機成分と結びつく有機成分の量が適当な量となり、生積層体を作製する際の加熱により拘束グリーンシートが全体にわたり均一に軟化し、また無機成分が凝集して接着性の小さい部分が発生することがなくなる。その結果、導体層周囲や導体層の配線間に空隙が発生することなく拘束グリーンシートとセラミックグリーンシート積層体が全面にわたり密着することにより、セラミックグリーンシート積層体の収縮は拘束グリーンシートによって導体層周囲まで確実に拘束されるので、セラミックグリーンシート積層体は実質的に焼成収縮せず焼成収縮ばらつきが抑えられ、焼成して得られる電子部品は変形のない高い寸法精度を有するものとなり、より好ましいものとなる。
また、本発明において好ましくは、拘束シートに含まれる溶融成分の量はバインダー100質量部に対して50乃至100質量部であり、この範囲であれば、拘束グリーンシートのバインダーと結びつく溶融成分の量が適当な量となることから、生積層体を作製する際の加熱により拘束グリーンシートが全体にわたり均一に軟化し、また溶融成分が凝集して接着性の小さい部分が発生することがないので、導体層周囲や導体層の配線間に空隙が発生することなく拘束グリーンシートとセラミックグリーンシート積層体が全面にわたり密着する。その結果、セラミックグリーンシート積層体の収縮は拘束グリーンシートによって導体層周囲まで確実に拘束されるので、セラミックグリーンシート積層体は実質的に焼成収縮せず焼成収縮ばらつきが抑えられ、焼成して得られる電子部品は変形のない高い寸法精度を有するものとなり、より好ましいものとなる。
このように、本発明の製造方法によれば、セラミックグリーンシート間に空隙を発生させることがなく、セラミックグリーンシートや導体層の変形を抑えたセラミックグリーンシート積層体を得ることが可能となり、また本発明の製造方法により作製された電子部品はデラミネーションがなく、高い寸法精度を有するものとなる。
本発明の電子部品の製造方法について以下に詳細に説明する。図1は、本発明の電子部品の製造方法の実施の形態の一例を示す工程毎の断面図であり、1は支持体、2は第1のセラミックグリーンシート層、3は第2のセラミックグリーンシート層、4はセラミックグリーンシート、5は導体層、6はセラミックグリーンシート積層体、7は拘束グリーンシート、8は生積層体である。
まず図1(a)に示すように、支持体1上に第1のセラミックグリーンシート層2を形成し、次に図1(b)に示すように、第1のセラミックグリーンシート層2上に第2のセラミックグリーンシート層3を形成してセラミックグリーンシート4を形成する。
本発明における第1のセラミックグリーンシート層2および第2のセラミックグリーンシート層3は、セラミック粉末、有機バインダー、溶剤等を混合したものが用いられる。第1のセラミックグリーンシート層2はさらに溶融成分を含有する。第1のセラミックグリーンシート層2および第2のセラミックグリーンシート層3は、さらに可塑剤を添加してセラミックグリーンシート4の硬度や強度を調整してもよい。
セラミック粉末としては、例えばセラミック配線基板であれば、ガラスセラミック粉末(ガラス粉末とフィラー粉末との混合物)が挙げられ、積層コンデンサであればBaTiO系,PbTiO系等の複合ペロブスカイト系セラミック粉末が挙げられ、電子部品に要求される特性に合わせて適宜選択される。
ガラスセラミック粉末のガラス成分としては、例えばSiO−B系、SiO−B−Al系,SiO−B−Al−MO系(ただし、MはCa,Sr,Mg,BaまたはZnを示す),SiO−Al−MO−MO系(ただし、MおよびMは同じまたは異なっていて、Ca,Sr,Mg,BaまたはZnを示す),SiO−B−Al−MO−MO系(ただし、MおよびMは上記と同じである),SiO−B−M O系(ただし、MはLi、NaまたはKを示す,SiO−B−Al−M O系(ただし、Mは上記と同じである),Pb系ガラス,Bi系ガラス等が挙げられる。
また、ガラスセラミック粉末のフィラー粉末としては、例えばAl,SiO,ZrOとアルカリ土類金属酸化物との複合酸化物,TiOとアルカリ土類金属酸化物との複合酸化物,AlおよびSiOから選ばれる少なくとも1種を含む複合酸化物(例えばスピネル,ムライト,コージェライト)等のセラミック粉末が挙げられる。
第1のセラミックグリーンシート層2および第2のセラミックグリーンシート層3に配合される有機バインダーとしては、従来からセラミックグリーンシートに使用されているものが使用可能であり、例えばアクリル系(アクリル酸,メタクリル酸またはそれらのエステルの単独重合体または共重合体,具体的にはアクリル酸エステル共重合体,メタクリル酸エステル共重合体,アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体等),ポリビニルブチラ−ル系,ポリビニルアルコール系,アクリル−スチレン系,ポリプロピレンカーボネート系,セルロース系等の単独重合体または共重合体が挙げられる。焼成工程での分解、揮発性を考慮すると、アクリル系バインダーがより好ましい。
第1のセラミックグリーンシート層2に含有される溶融成分は、セラミックグリーンシート積層体6を作製する際の加熱時に溶融状態となるものであり、炭化水素,脂肪酸,エステル,脂肪アルコール,多価アルコール等が挙げられる。スラリーを調整する際の溶媒への溶解性を考慮すると、分子量が小さくかつ極性を有する炭化水素,エステル,脂肪アルコール,多価アルコールが好ましい。さらに上述したアクリルバインダーとの相溶性を考慮すると、エステル,脂肪アルコール,多価アルコールがより好ましい。
溶融成分は上記のものの中でも、その融点が35乃至100℃であるものが好ましい。これは、この範囲の融点のものを用いると、常温では第1のセラミックグリーンシート層2が軟化して変形することはないので、積層工程までのハンドリングが容易となり、セラミックグリーンシート積層体6を作製する工程における加熱時にセラミックグリーンシート4中のバインダーや可塑剤等の有機成分が分解することがないので、分解ガスによりデラミネーションが発生することがないからである。融点が35乃至100℃である溶融成分としては、具体的には、ヘキサデカノール,ポリエチレングリコール,ポリグリセロール,ステアリルアミド,オレイルアミド,エチレングリコールモノステアレート,パラフィン,ステアリン酸,シリコーン等が挙げられる。
第1のセラミックグリーンシート層2に含有される溶融成分の含有量は、使用するバインダー成分およびその量や、使用する溶融成分により異なるが、溶融成分が溶融した状態で第1のセラミックグリーンシート層2が軟化し、その下に位置するセラミックグリーンシート4の第2のセラミックグリーンシート層3およびその上に形成された導体層5の形状に追従して変形するような量であればよい。
第1のセラミックグリーンシート層2は、上記セラミック粉末,有機バインダー,溶融成分に溶剤(有機溶剤,水等)、必要に応じて所定量の可塑剤,分散剤を加えてスラリーを得、これを支持体1上にドクターブレード法,リップコーター法,ダイコーター法等により成形することによって得られる。第1のセラミックグリーンシート層2の厚さは、導体層5とセラミックグリーンシート4との段差を埋めるために、導体層5の厚みより厚くなるように形成される。
支持体1としては、厚みが30乃至200μmの、表面に離型処理を施した、例えばポリエチレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレート,ポリイミド等の有機樹脂製のフィルムや上質紙等が用いられる。
第2のセラミックグリーンシート層3は、第1のセラミックグリーンシート層2に用いるスラリーに対して、溶融成分を含まないスラリーを用いて形成される。
第1のセラミックグリーンシート層2上に第2のセラミックグリーンシート層3を形成する方法は、以下の(1)乃至(3)が挙げられる。
(1)第1のセラミックグリーンシート層2と同様に成形した第2のセラミックグリーンシート層3を第1のセラミックグリーンシート層2の上に積層して形成する方法。
(2)支持体1上に形成された第1のセラミックグリーンシート層2上に第2のセラミックグリーンシート3のスラリーを塗布して形成する方法。
(3)支持体1上に塗布された第1のセラミックグリーンシート層2のスラリー上に第2のセラミックグリーンシート層3のスラリーを塗布して形成する方法。
第1のセラミックグリーンシート層2上に第2のセラミックグリーンシート層3を積層する際に、第1のセラミックグリーンシート層2と第2のセラミックグリーンシート層3との間に空隙を発生させる可能性があり、従って第1のセラミックグリーンシート層2と第2のセラミックグリーンシート層3との密着性を向上させるためには上記(2)または(3)の方法が好ましい。さらには、上記(3)の方法では第1のセラミックグリーンシート層2と第2のセラミックグリーンシート層3の形成がほぼ同時に行なわれるので、工程が簡略化されるのでより好ましい。この(3)の方法においては、ダイコーター法やリップコーター法等の押し出し式の方法を用いるとよく、これらは非接触式の塗布方法であり、また溶剤の少ない、比較的粘度の高いスラリーを用いることができるので、第1のセラミックグリーンシート層2のスラリーと第2のセラミックグリーンシート層3のスラリーが混ざり合うことなくセラミックグリーンシート4を形成することができるのでよい。
次に図1(c)に示すように、セラミックグリーンシート4上に導体層5を形成する。セラミックグリーンシート4上に導体層5を形成する方法としては、例えば導体材料粉末をペースト化した導体ペーストをスクリーン印刷法やグラビア印刷法等により印刷する方法、セラミックグリーンシート4上にめっき法や蒸着法等により所定パターン形状の金属膜を直接形成する方法、あるいは所定パターン形状に印刷、形状加工、めっき、または蒸着等により形成した金属膜をセラミックグリーンシート4上に転写する方法がある。導体材料としては、例えばW,Mo,Mn,Au,Ag,Cu,Pd(パラジウム),Pt(白金)等の1種または2種以上が挙げられ、2種以上の場合は混合、合金、層別のコーティング等のいずれの形態であってもよい。
導体層5はセラミックグリーンシート4の第2のセラミックグリーンシート層3上に形成されるのが好ましい。これは、第2のセラミックグリーンシート層3は加熱時に溶融する溶融成分を含有しないことから、第2のセラミックグリーンシート層3は加熱時に変形することはないので、その上に導体層5を形成することにより導体層5を変形させないようにするためである。また、導体層5を第1のセラミックグリーンシート層2上に形成した場合でも導体層5が第1のセラミックグリーンシート層2に埋め込まれるので空隙が発生することはないが、導体層5に接続される貫通導体が形成される場合はこの貫通導体が変形する場合があり、導体層5が形成される面積が大きい場合は導体層5の上面とその上に積層されるセラミックグリーンシート4の下面との接着性が弱くなる場合があるからである。
なお、導体層5を形成する前に必要に応じて上下の層間の導体層5同士を接続するためのビアホール導体やスルーホール導体等の貫通導体を形成してもよい。この貫通導体は、パンチング加工やレーザ加工等によりセラミックグリーンシート4に形成した貫通孔に、導体材料粉末をペースト化した導体ペーストを印刷やプレス充填により埋め込む等の手段によって形成される。
キャビティを有する電子部品を製造する場合、次のセラミックグリーンシート積層体6を作製する工程より前に、キャビティ形状の貫通穴を金型による打ち抜き等によりセラミックグリーンシート4の一部に形成しておく。貫通穴の形成は、キャビティの内壁面への導体層5の形成の有無や形成方法に応じて、導体層5を形成する前でもよいし、形成した後でもよい。
次に図1(d)に示すように、位置合わせして積み重ねたセラミックグリーンシート4を、溶融成分が溶融状態となり第1のセラミックグリーンシート層2が軟化して変形する程度の温度つまり溶融成分の融点程度の温度で加熱することで、セラミックグリーンシート積層体6を作製する。また、このとき、積層したセラミックグリーンシート4の位置ずれを防止するとともに、軟化した第1のセラミックグリーンシート層2を第2のセラミックグリーンシート層3およびその上に形成された導体層5のパターン形状に追従して変形するのを補助するために押さえる程度の加圧(0.1乃至1MPa)を行なうと、より精度よく確実な圧着が可能となる。
なお、支持体1はセラミックグリーンシート4を位置合わせして積み重ねる前に、真空吸着して剥がすなどして除去しておく。第1のセラミックグリーンシート層2上に第2のセラミックグリーンシート層3を形成する方法が上記(1)の方法の場合は、導体層5を形成する前にセラミックグリーンシート4の導体層を形成する面側の支持体1を除去しておく。支持体1の材質や厚みによっては、貫通導体を形成するための貫通孔やキャビティ形状の貫通穴をパンチング加工や金型による打ち抜きにより形成する前に支持体1を除去しておくのが好ましい。例えば、支持体1として厚みが100μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用いてパンチング加工で貫通孔を形成する場合、ポリエチレンテレフタレート樹脂が伸びやすい性質を有するために貫通孔が良好に形成できない場合があるので、パンチング加工前に支持体1を除去するのが好ましい。
セラミックグリーンシート積層体6を作製する工程において、第1のセラミックグリーンシート層2は加熱時に溶融する溶融成分を含有することから、導体層5が形成されたセラミックグリーンシート4を積層して加熱した際に第1のセラミックグリーンシート層2が軟化するので、第1のセラミックグリーンシート層2はその下に位置するセラミックグリーンシート4の第2のセラミックグリーンシート層3およびその上に形成された導体層5の形状に追従して変形することとなる。これにより、導体層5の周囲や導体層5の配線間に空隙が発生することなくセラミックグリーンシート4同士が密着し、セラミックグリーンシート積層体6を焼成して得られる電子部品はデラミネーションの発生のないものとなる。
また、第1のセラミックグリーンシート層2は、加熱時に溶融する溶融成分を含有することから、加熱のみで第1のセラミックグリーンシート層2が軟化して接着性を有するものとなるので、大きな加圧力によりセラミックグリーンシート4を圧着させる必要がない。そして、導体層5の形成される第2のセラミックグリーンシート層3は加熱時に溶融する溶融成分を含有しないことから、第2のセラミックグリーンシート層3は加熱時に変形することはなく、積層したセラミックグリーンシート4が位置ずれしないように、また、軟化した第1のセラミックグリーンシート層2を第2のセラミックグリーンシート層3およびその上に形成された導体層5のパターンの形状に追従して変形するのを補助するために押さえる程度では変形しない。よって、セラミックグリーンシート4およびその上に形成された導体層5の形状が変形することがなく、さらに加圧によるグリーンシート4への歪がなく得られるセラミックグリーンシート積層体6は高い寸法精度を有するものとなる。
また、キャビティを有する電子部品を製造する場合、大きな加圧力によりセラミックグリーンシート4を圧着させる必要がないので、キャビティ周囲部とキャビティ底部との加圧によるグリーンシート4の伸びの違いによるキャビティ底部の反りの発生を抑えることが可能となり、キャビティ底部に電子素子等を精度よく確実に搭載することが可能な電子部品を得ることができる。
図1(d)の最下部に位置するセラミックグリーンシート4としては、第2のセラミックグリーンシート層3のみで構成されるセラミックグリーンシート4’を用いればよい。積層コンデンサのように表面に導体層5が露出しないような電子部品の場合、図1(d)の最上部に位置するセラミックグリーンシート4には導体層5が形成されていないセラミックグリーンシート4を用いればよく、積層セラミック配線基板のような両面に導体層5が露出するような電子部品の場合、最下部のセラミックグリーンシート4’の両面に導体層5を形成したものを用いればよい。
次に図1(e)に示すように、セラミックグリーンシート積層体6の両主面にセラミックグリーンシート積層体6の焼結温度では実質的に収縮しない、溶融成分を含有する拘束グリーンシート7を積層して加熱することによってセラミックグリーンシート積層体の両主面に前記拘束グリーンシートが積層された生積層体8を作製する。ここで「実質的に収縮しない」とは、拘束グリーンシート7のXY平面方向の収縮が1%以下、好ましくは0.8%以下、より好ましくは0.5%以下に抑制されていることを意味する。「XY平面」とは、三次元座標において拘束グリーンシート7の厚さ方向をZ方向としたときのX方向およびY方向によって規定される面をいう。
拘束グリーンシート7は、セラミックグリーンシート積層体6の焼結温度では焼結収縮しない、例えばAl,ZrO,SiO等の難焼結性無機材料を主成分とする無機粉末,第1のセラミックグリーンシート層2に配合されるものと同様の有機バインダーおよび溶融成分に溶剤(有機溶剤,水等)、必要に応じて所定量の可塑剤,分散剤を加えてスラリーを得、これをドクターブレード法,リップコーター法,ダイコーター法等により成形することによって得られる。
拘束グリーンシート7は、その全体に溶融成分を含むものであってもよいし、セラミックグリーンシート4と同様の構成、つまり溶融成分を含む第1の拘束グリーンシート層と溶融成分を含まない第2の拘束グリーンシート層とから成る2層拘束グリーンシートであってもよい。拘束グリーンシート7を全体に溶融成分を含むものとすると、拘束グリーンシート7を作製する工程が2層拘束グリーンシートに比べて簡略化され、また、2層拘束グリーンシートとすると、セラミックグリーンシート積層体の両主面に拘束グリーンシート7を加熱して積層する際に、積層装置の金型等に拘束グリーンシート7が付着しにくくなる。
拘束グリーンシート7を2層拘束グリーンシートとするには、セラミックグリーンシート4を作製するのと同様の、上記(1)乃至(3)の方法を用いればよく、第1の拘束グリーンシート層および第2の拘束グリーンシート層は、それぞれ第1のセラミックグリーンシート層2および第2のセラミックグリーンシート層3のセラミック粉末を、上記難焼結性無機材料を主成分とする無機粉末に置き換えたものを用いればよい。また、セラミックグリーンシート積層体6の両主面に接する側の面に、セラミックグリーンシート積層体6の両主面に形成された導体層5の厚みより厚い溶融成分を含む層が形成されるようにする。
セラミックグリーンシート積層体6の両面に積層される拘束グリーンシート7の厚さは、片面だけでセラミックグリーンシート積層体6の厚さに対して10%以上であるのが好ましく、これよりも薄いと拘束グリーンシート7の拘束性が低下するおそれがある。また、有機成分の揮散の容易および拘束層の除去性を考慮すると、拘束グリーンシート7の厚さはセラミックグリーンシート積層体6の厚さの約200%以下であるのがよい。
また、積層される拘束グリーンシート7は所定の厚みの1枚のものであってもよく、あるいは所定の厚みになるように複数枚を積層したものであってもよい。この場合、セラミックグリーンシート積層体6の両主面に接する側の面に、セラミックグリーンシート積層体6の両主面に形成された導体層5の厚みより厚い溶融成分を含む層が形成されていればよい。
生積層体8の作製は、セラミックグリーンシート積層体6の両主面に積層された拘束グリーンシート7を、その中の溶融成分が溶融状態となり拘束グリーンシート7(または拘束グリーンシート7の第1の拘束グリーンシート層)が軟化して変形する程度の温度、つまり拘束グリーンシート7中の溶融成分の融点程度の温度で、加熱することで行なわれる。このとき、軟化した拘束グリーンシート7(または第1の拘束グリーンシート層)に対し、セラミックグリーンシート積層体層6の上に形成された導体層5のパターン形状に追従して変形するのを補助するために押さえる程度の加圧(0.1乃至1MPa)を行なうと、より確実な圧着が可能となる。また、拘束グリーンシート7に含まれる溶融成分として、その融点が第1のセラミックグリーンシート層2に含まれる溶融成分の融点より低いものを用いて、積層する際の加熱を第1のセラミックグリーンシート層2に含まれる溶融成分の融点より低い温度で行なうと、セラミックグリーンシート積層体6が変形するおそれがなくなるのでより好ましい。
また、生積層体8の作製は、セラミックグリーンシート積層体6を作製するのと同時に行なってもよい。拘束グリーンシート7の間に位置合わせして積み重ねたセラミックグリーンシート4を載置して、溶融成分が溶融状態となり第1のセラミックグリーンシート層2および拘束グリーンシート7が軟化して変形する程度の温度、つまり溶融成分の融点程度の温度で加熱することで、セラミックグリーンシート積層体6の両主面に拘束グリーンシート7が積層された生積層体8を作製する。この場合の第1のセラミックグリーンシート層2に含まれる溶融成分と拘束グリーンシート7に含まれる溶融成分は、融点が同じものを用いるとよい。この場合工程が簡略化されるので好ましい。
生積層体8の作製工程において、拘束クグリーンシート7は、加熱時に溶融する溶融成分を含有することから、加熱のみで拘束グリーンシート7が軟化して接着性を有するものとなるので、大きな加圧力により拘束グリーンシート7を圧着させる必要がない。よって、セラミックグリーンシート積層体6およびその上に形成された導体層5の形状が変形することがなく、セラミックグリーンシート積層体6の高い寸法精度を保持したまま生積層体8を作製することが可能となる。
また、拘束グリーンシート7は加熱時に溶融する溶融成分を含有することから、積層して加熱した際に拘束グリーンシート7が軟化するので、拘束グリーンシート7はその下に位置するセラミックグリーンシート積層体6およびその表面に形成された導体層5の形状に追従して変形することとなる。これにより、導体層5の周囲にも空隙が発生することなく拘束グリーンシート7が密着されることとなり、後の焼成工程で導体層5の周囲を含むセラミックグリーンシート積層体6の全面に拘束力を及ぼすことが可能となるので、焼成して得られる電子部品は部分的な焼成収縮による変形のないものとなる。
ここで、バインダーと溶融成分とから成る拘束グリーンシート7の有機成分の量は、拘束グリーンシート7に含まれる無機粉末100質量部に対して10乃至30質量部であることが好ましい。有機成分の量が10質量部より少ないと、無機成分と結びつくことで拘束グリーンシート7中に分散させる役割をもつ有機成分の絶対量が足りなくなるので、生積層体8を作製する工程の加熱時に拘束グリーンシート7が全体にわたり軟化せず接着性が得られないか、または第1のセラミックグリーンシート層2が均一に軟化せず接着性のない部分ができることとなり、セラミックグリーンシート積層体6の収縮は拘束グリーンシート7によって部分的に拘束されず、セラミックグリーンシート積層体6は局所的に焼成収縮する部分としない部分が存在し焼成収縮ばらつきが発生する。有機成分が30質量部より多いと、拘束グリーンシートに含まれる有機成分が過多となり、焼成により除去される有機成分量が多いために拘束グリーンシート自体の焼成収縮が大きくなる。これにより、セラミックグリーンシート積層体6の収縮は拘束グリーンシート7によって拘束はされるが、拘束グリーンシート7の収縮が大きくセラミックグリーンシート積層体6は5乃至10%焼成収縮するため焼成収縮ばらつきが発生する。
ここで、有機成分とは拘束グリーンシート7に含まれるバインダーと溶融成分とを示す。拘束グリーンシート7を形成する際、有機成分として溶剤および可塑剤や分散剤等を加えたスラリーを用いるが、スラリーを乾燥させて拘束グリーンシート7とするので拘束グリーンシート7の有機成分には蒸発してしまう溶剤は含まれず、可塑剤や分散剤等はその量が少なく、拘束グリーンシート7中に拡散するので有機成分とはバインダーと溶融成分としている。
また、拘束グリーンシート7に含まれる溶融成分の量はバインダー100質量部に対して50乃至100質量部であることが好ましい。溶融成分の量が50質量部より少ないと、バインダーと結びつきバインダー中に分散する溶融成分の絶対量が足りなくなるので、生積層体8を作製する工程の加熱時に拘束グリーンシート7が全体にわたり軟化せず接着性が得られない、または拘束グリーンシート7に均一に軟化せず接着性のない部分ができてしまうこととなり、セラミックグリーンシート積層体6の収縮は拘束グリーンシート7によって部分的に拘束されず、セラミックグリーンシート積層体6は局所的に焼成収縮する部分としない部分が存在し焼成収縮ばらつきが発生する。溶融成分が100質量部より多いと、バインダーと結びつく溶融成分が過多となり、バインダー中に分散しきれない溶融成分が凝集する部分が発生し、この部分はバインダーが存在せず接着性を有さない部分となるので、セラミックグリーンシート積層体6の収縮は拘束グリーンシート7によって部分的に拘束されず、セラミックグリーンシート積層体6は局所的に焼成収縮する部分としない部分が存在し焼成収縮ばらつきが発生する。
次に、生積層体8を焼成する。焼成する工程は有機成分の除去とセラミック粉末の焼結とから成る。有機成分の除去は100乃至800℃の温度範囲でセラミックグリーンシート積層体6を加熱することによって行い、有機成分を分解、揮発させる。焼結温度はセラミック組成により異なり、約800乃至1600℃の範囲内で行なう。焼成雰囲気はセラミック粉末や導体材料により異なり、大気中、還元雰囲気中、非酸化性雰囲気中等で行なわれ、有機成分の除去を効果的に行なうために水蒸気等を含ませてもよい。
また、焼成時には、反りを防止するために、生積層体8の上面に重しを載せる等して荷重をかけてもよい。荷重は50Pa乃至1MPa程度が適当である。荷重が50Pa未満である場合、生積層体8の反り抑制作用が充分でないおそれがある。また、荷重が1MPaを超える場合、使用する重しが大きくなるため焼成炉に入らなかったり、また焼成炉に入っても熱容量不足になり焼成できなかったりするなどの問題をひき起こすおそれがある。重しとしては、分解した有機成分の揮散を妨げないように、例えば多孔質のセラミックスや金属等を使用するのが好ましい。生積層体8の上面に多孔質の重しを置き、その上に非多孔質の重しを置いてもよい。
焼成の間、セラミックグリーンシート積層体6の収縮は拘束グリーンシート7によって拘束されるため、セラミックグリーンシート積層体6は実質的に収縮せず、焼成収縮による寸法ばらつきが抑えられので、焼成して得られる電子部品は高い寸法精度を有するものとなる。
例えば、加熱時に溶融する溶融成分を含有しない第1のセラミックグリーンシート層2を用い、拘束グリーンシート7を用いない場合、セラミックグリーンシート積層体6および電子部品の寸法精度は±0.5%(寸法誤差)程度であったが、本発明の溶融成分を含有する第1のセラミックグリーンシート層2および拘束グリーンシート7を用いた場合、セラミックグリーンシート積層体6および電子部品の寸法精度は±0.2%以下となり、大幅に向上することが実験により判明した。
焼成後の電子部品の表面には拘束グリーンシート7が焼成により有機成分が除去された拘束層が付着した状態となるので、この拘束層を除去する。除去方法としては、表面に付着した拘束層を除去できる方法であれば特に制限はなく、例えば研磨、ウォータージェット、ケミカルブラスト、サンドブラスト、ウェットブラスト(砥粒と水とを空気圧により噴射させる方法)等が挙げられる。
拘束層が除去された電子部品の表面に露出した導体層5の表面に、導体層5の腐食防止のため、または半田や金属ワイヤ等の外部基板や他の電子部品との良好な接続のために、NiやAuのめっきを施すとよい。
以上のような方法で作製された電子部品は、その内部にデラミネーションを有さず寸法精度の高いものであるので、電子部品として要求される優れた電気特性や気密性の高いものとなる。
本発明の実施例1について以下に説明する。
まず、第1のセラミックグリーンシート層用に、SiO250質量%−Al235.5質量%−MgO18.5質量%−CaO26質量%の組成を有する結晶性のガラス粉末60質量部と、無機フィラーとして、平均粒径2μmのアルミナ40質量部からなるガラスセラミック粉末合計100質量部に対して、有機バインダーとしてメタクリル酸イソブチル樹脂20重量部を、また溶融成分として融点が48℃である溶融成分としてヘキサデカノールを10重量部で調合し、トルエン及び酢酸エチルを溶媒としてボールミルにより40時間混合し、第1のスラリーを調製した。
また、第2のセラミックグリーンシート層用に、第1のスラリーと同様のガラスセラミック粉末100質量部に対して、バインダーとしてメタクリル酸メチル樹脂を固形分で10質量部、可塑剤としてフタル酸ジブチルを1質量部添加し、トルエン及び酢酸エチルを溶媒としてボールミルにより40時間混合し、第2のスラリーを調製した。
次に、ダイコーターシート成形機を用いて、成形速度2m/分にて250mmの幅で第1のスラリーを塗工し、その上に第2のスラリーを塗工して乾燥することにより、第1のセラミックグリーンシート層の厚みが50μm、第2のセラミックグリーンシート層の厚みが50μmのセラミックグリーンシートを作製した。
このセラミックグリーンシートの第2のセラミックグリーンシート層上に、タングステン粉末を主成分とする導体ペーストを用いスクリーン印刷法により10〜20μmの厚みで所定パターン形状の導体層を形成し、導体層を形成したセラミックグリーンシートを4枚重ねあわせて厚み方向に0.5MPaの圧力および80℃の温度で加熱圧着してセラミックグリーンシート積層体を作製した。
さらに、拘束グリーンシート用に、平均粒径2μmのアルミナ95質量部とSiO250質量%−Al235.5質量%−MgO18.5質量%−CaO26質量%の組成を有する結晶性のガラス粉末5質量部からなる難焼結性無機材料を主成分とする無機粉末合計100質量部に対して、第1のセラミックグリーンシート層用の第1のスラリーと同様のバインダーとしてメタクリル酸イソブチル樹脂、また溶融成分として融点が48℃であるヘキサデカノールを表1の割合で調合し、トルエン及び酢酸エチルを溶媒としてボールミルにより40時間混合し、スラリーを調製した。その後、拘束グリーンシート用のスラリーをドクターブレード法により、厚さ200μmのグリーンシートに成形した。
得られた拘束グリーンシートをセラミックグリーンシート積層体の両面に重ね合せて厚み方向に0.5MPaの圧力および80℃の温度で加熱圧着して生積層体を作成した。
得られた生積層体は、300〜500℃の温度に加熱して脱バインダ処理を行い、さらに水蒸気を含んだ窒素雰囲気中で750℃の温度で1時間の熱処理を行い成形体中の残留炭素量を200ppm以下に低減した後、900℃の1時間焼成し、その後拘束グリーンシートが焼成により有機成分が除去された拘束層となって付着した状態となるので、この拘束層をウエットブラストで除去し、評価用の焼結体(セラミックス)を作製した。
この焼結体の寸法を3次元測定器で測定し、寸法精度を調査した。寸法精度の評価結果を表1に示す。
Figure 2005311266
表1の寸法精度の欄において、「○」は焼結体の寸法を3次元測定機で測定し、寸法ばらつきが±0.1%以下であったことを示す。一方、「△」は製品寸法に問題は無いものの、寸法ばらつきが±0.1%より大きいものであったことを示す。
表1より、拘束グリーンシートに含まれる有機成分量が無機成分100質量部に対して10質量部未満の試料No.1は、製品寸法に問題は無いものの、寸法ばらつきが0.1%より大きいものであった。
また、拘束グリーンシートに含まれる有機成分量が無機成分100質量部に対して30質量部より多い試料No.6,7,8も、製品寸法に問題は無いものの、寸法ばらつきが0.1%より大きいものであった。
これに対して、拘束グリーンシートに含まれる有機成分量が無機成分100質量部に対して10乃至30質量部の試料No.2,3,4,5は、製品寸法の寸法ばらつきが0.1%以下で優れたものであった。
本発明の実施例2について以下に説明する。
まず、第1のセラミックグリーンシート層用に、SiO250質量%−Al235.5質量%−MgO18.5質量%−CaO26質量%の組成を有する結晶性のガラス粉末60質量部と、無機フィラーとして、平均粒径2μmのアルミナ40質量部からなるガラスセラミック粉末合計100質量部に対して、バインダーとしてメタクリル酸イソブチル樹脂20重量部を、また溶融成分として融点が48℃であるヘキサデカノールを10重量部で調合し、トルエン及び酢酸エチルを溶媒としてボールミルにより40時間混合し、第1のスラリーを調製した。
また、第2のセラミックグリーンシート層用に、第1のスラリーと同様のガラスセラミック粉末100質量部に対して、バインダーとしてメタクリル酸メチル樹脂を固形分で10質量部、可塑剤としてフタル酸ジブチルを1質量部添加し、トルエン及び酢酸エチルを溶媒としてボールミルにより40時間混合し、第2のスラリーを調製した。
次に、ダイコーターシート成形機を用いて、成形速度2m/分にて250mmの幅で第1のスラリーを塗工し、その上に第2のスラリーを塗工して乾燥することにより、第1のセラミックグリーンシート層の厚みが50μm、第2のセラミックグリーンシート層の厚みが50μmのセラミックグリーンシートを作製した。
このセラミックグリーンシートの第2のセラミックグリーンシート層上に、タングステン粉末を主成分とする導体ペーストを用いスクリーン印刷法により10〜20μmの厚みで所定パターン形状の導体層を形成し、導体層を形成したセラミックグリーンシートを4枚重ねあわせて厚み方向に0.5MPaの圧力および80℃の温度で加熱圧着してセラミックグリーンシート積層体を作製した。
さらに、拘束グリーンシート用に、平均粒径2μmのアルミナ95質量部とSiO250質量%−Al235.5質量%−MgO18.5質量%−CaO26質量%の組成を有する結晶性のガラス粉末5質量部からなる難焼結性無機材料を主成分とする無機粉末合計100質量部に対して、第1のセラミックグリーンシート層用の第1のスラリーと同様のバインダーとしてメタクリル酸イソブチル樹脂、また溶融成分として融点が48℃であるヘキサデカノールを表2の割合で調合し、トルエン及び酢酸エチルを溶媒としてボールミルにより40時間混合し、スラリーを調製した。その後、拘束グリーンシート用のスラリーをドクターブレード法により、厚さ200μmのグリーンシートに成形した。
得られた拘束グリーンシートをセラミックグリーンシート積層体の両面に重ね合せて厚み方向に0.5MPaの圧力および80℃の温度で加熱圧着して生積層体を作成した。
得られた生積層体は、300〜500℃の温度に加熱して脱バインダ処理を行い、さらに水蒸気を含んだ窒素雰囲気中で750℃の温度で1時間の熱処理を行い成形体中の残留炭素量を200ppm以下に低減した後、900℃で1時間焼成し、その後拘束グリーンシートが焼成により有機成分が除去された拘束層となって付着した状態となるので、この拘束層をウエットブラストで除去し、評価用の焼結体を作成した。
この焼結体の寸法を3次元測定器で測定し、寸法精度を調査した。寸法精度の評価結果を表2に示す。
Figure 2005311266
表2の寸法精度の欄において、「○」は焼結体の寸法を3次元測定機で測定し、寸法ばらつきが±0.1%以下であったことを示す。一方、「△」は製品寸法に問題は無いものの、寸法ばらつきが±0.1%より大きいものであったことを示す。
表2より、拘束グリーンシートに含まれる溶融成分量がバインダー100質量部に対して50質量部未満の試料No.1,2,8,9は、製品寸法に問題は無いものの、寸法ばらつきが0.1%より大きいものであった。
また、拘束グリーンシートに含まれる溶融成分量がバインダー100質量部に対して10質量部より多い試料No.6,7,13,14も、製品寸法に問題は無いものの、寸法ばらつきが0.1%より大きいものであった。
これに対して、拘束グリーンシートに含まれる溶融成分量がバインダー100質量部に対して50乃至100質量部の試料No.3,4,5,10,11,12は、製品寸法の寸法ばらつきが0.1%以下で優れたものであった。
(a)〜(e)は、本発明の電子部品の製造方法の実施の形態の一例を示す工程毎の断面図である。
符号の説明
1・・・支持体
2・・・第1のセラミックグリーンシート層
3・・・第2のセラミックグリーンシート層
4・・・セラミックグリーンシート
5・・・導体層
6・・・セラミックグリーンシート積層体
7・・・拘束グリーンシート
8・・・生積層体

Claims (4)

  1. 支持体上に第1のセラミックグリーンシート層を形成する工程と、前記第1のセラミックグリーンシート層上に第2のセラミックグリーンシート層を形成してセラミックグリーンシートを形成する工程と、前記セラミックグリーンシート上に導体層を形成する工程と、前記導体層が形成された前記セラミックグリーンシートを複数枚積層して加熱することによってセラミックグリーンシート積層体を作製する工程と、前記セラミックグリーンシート積層体の両主面に前記セラミックグリーンシート積層体の焼結温度では実質的に収縮しない拘束グリーンシートを積層して加熱することによって前記セラミックグリーンシート積層体の両主面に前記拘束グリーンシートが積層された生積層体を作製する工程と、前記生積層体を焼成する工程と、前記拘束グリーンシートが焼成されて成る拘束層を除去する工程とを具備しており、前記第1のセラミックグリーンシート層および前記拘束グリーンシートは、前記セラミックグリーンシート積層体を作製する際および前記生積層体を作製する際の加熱時に溶融状態となる溶融成分を含有していることを特徴とする電子部品の製造方法。
  2. 前記溶融成分の融点が35乃至100℃であることを特徴とする請求項1記載の電子部品の製造方法。
  3. 前記拘束グリーンシートに含まれる有機成分の量は、前記拘束グリーンシートに含まれる前記無機粉末100質量部に対して10乃至30質量部であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の電子部品の製造方法。
  4. 前記拘束グリーンシートに含まれる前記溶融成分の量は、前記拘束グリーンシートに含まれる有機バインダー100質量部に対して50乃至100質量部であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の電子部品の製造方法。
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