JP2005268392A - 電子部品の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 デラミネーションがなく、かつ高い寸法精度を有する電子部品の製造方法を提供すること。
【解決手段】 支持体1上に第1のセラミックグリーンシート層2を形成する工程、その上に第2のセラミックグリーンシート層3を形成してグリーンシート4を形成する工程、グリーンシート4上に導体層5を形成する工程、導体層5が形成されたグリーンシート4を複数枚積層して加熱することによってグリーンシート積層体6を作製する工程、グリーンシート積層体6の両主面に拘束グリーンシート7を積層する工程、両主面に拘束グリーンシート7が積層されたグリーンシート積層体6を焼成する工程、および拘束グリーンシート7を焼成して成る拘束層を除去する工程を具備し、第1のセラミックグリーンシート層2は、グリーンシート積層体6を作製する際の加熱時に溶融状態となる溶融成分を含有している。
【選択図】 図1
【解決手段】 支持体1上に第1のセラミックグリーンシート層2を形成する工程、その上に第2のセラミックグリーンシート層3を形成してグリーンシート4を形成する工程、グリーンシート4上に導体層5を形成する工程、導体層5が形成されたグリーンシート4を複数枚積層して加熱することによってグリーンシート積層体6を作製する工程、グリーンシート積層体6の両主面に拘束グリーンシート7を積層する工程、両主面に拘束グリーンシート7が積層されたグリーンシート積層体6を焼成する工程、および拘束グリーンシート7を焼成して成る拘束層を除去する工程を具備し、第1のセラミックグリーンシート層2は、グリーンシート積層体6を作製する際の加熱時に溶融状態となる溶融成分を含有している。
【選択図】 図1
Description
本発明は、積層コンデンサや積層セラミック配線基板等のような電子部品の製造方法に関するものである。
近年、電子機器の小型化に伴い、積層コンデンサや積層セラミック配線基板のような電子部品において、小型化および高性能化が望まれている。例えば、積層コンデンサにおいては小型化および高容量化のためにより薄い誘電体層および導体層を多層化したものが求められている。また、積層セラミック配線基板においては小型化および配線導体の高密度化のためにより薄い絶縁層および配線導体層を多層に形成し、配線導体層の幅および間隔もより微細なものが求められている。
このような電子部品は、セラミック粉末に有機バインダー、可塑剤、溶剤等を加えてスラリーとし、ドクターブレード等によりセラミックグリーンシート(以下、グリーンシートともいう)を成形した後、金属粉末を含有する導体ペーストを印刷するなどして上述のグリーンシート上に導体層を形成し、ついで複数枚の導体層が形成されたグリーンシートを積層して加圧することにより圧着して積層体を得て、この積層体を焼成することで得られる。
電子部品に対する要求に対応して導体層が形成されたグリーンシートを多数積層すると、導体層が形成された領域が重なる部分とそうでない部分ではその厚み差が大きくなる。このため積層されたグリーンシートを厚み方向に加圧した場合、導体層が形成された領域が重なる部分においては加圧力が十分に加わるものの、そうでない部分においては加圧力が十分に加わりにくくなるので、不十分な圧着となってしまいやすい。その結果、そのような積層体を焼成すると、圧着が不十分な部分でデラミネーション(層間剥離)が発生するという問題があった。
このようなデラミネーションが電子部品の内部に存在すると、容量値の変化や絶縁破壊が起りやすくなるので電気的な特性が確保できないという問題があった。
この問題に対して、特許文献1では、加圧された際の流動性が高い高流動性部分を有する積層体を用いることが提案されている。積層体を厚み方向に加圧した際に、内部電極が積層されている領域に存在する高流動性部分が残りの部分に移動して残りの部分の厚みが増大しようとすることにより、加圧力が全体に均一に加わることとなるので、デラミネーションが生じ難くなるものである。
また、グリーンシート上に形成された導体層の上に別のグリーンシートを積層する場合、この導体層の断面形状にグリーンシートが追従し難いために導体層の周辺に空隙が発生し、この空隙を起因とするデラミネーションが発生しやすいという問題があった。特に導体層の間隔が微細な場合は、導体層間に空隙が発生しやすかった。
この問題に対しては、特許文献2では、グリーンシート上に導体層を形成した後、導体層の形成されている部分の周囲の領域にセラミックペーストを印刷することが提案されている。このような方法を用いれば、導体層の形成されている部分の周囲の領域にセラミックペーストを印刷することで導体層とグリーンシートとの段差をなくすことができる。このため、導体層の周辺や配線導体層間に空隙が発生することを抑え、空隙に起因するデラミネーションの発生も抑えることが可能となる。また、導体層が形成されたグリーンシートを複数枚積層しても厚み差が発生しないので、ムラなく加圧して圧着することが可能となり、圧着が不十分な部分が発生することを抑え、デラミネーションの発生を抑えることが可能となる。
また、積層セラミック配線基板においては配線の微細化とともに高寸法精度化が要求されている。これは、積層セラミック配線基板の寸法ばらつきがあると、積層セラミック配線基板上にICチップやチップコンデンサ等のチップ部品を搭載するときに積層セラミック配線基板表面の接続導体上に半田ペーストを印刷するマスクを寸法に合わせて複数用意する必要があったり、積層セラミック基板の外辺を基準として自動機により搭載すると、積層セラミック配線基板表面の接続導体上に正確に搭載できなかったりするという問題があったからである。
この問題に対しては、特許文献3〜5では、ガラスセラミックグリーンシートの積層体の両面または片面に、ガラスセラミック成分の焼成温度では焼結しない無機材料とバインダー、可塑剤等の有機成分とを含む拘束グリーンシートを積層して焼成する方法が提案されている。この拘束焼成方法によれば、焼成時の収縮を拘束するために、積層体の厚さ方向のみに収縮が起こり、積層面の縦方向および横方向(平面方向)には収縮が起こらなくなり、焼成収縮のばらつきによるガラスセラミック基板の寸法のばらつきを抑え、ガラスセラミック基板の寸法精度が向上するというものである。
特許第3344100号公報
特開平5−217448号公報
特開平4−243978号公報
特開平5−28867号公報
特開平5−102666号公報
しかしながら、従来の高流動性部分を有する積層体を用いる方法においては、高流動性部分を移動させてデラミネーションが発生しないような圧着を行なうためには、例えば厚み方向に180MPaという高い圧力を加える必要がある。このような高い圧力を導体層が形成されたグリーンシートに加えると、グリーンシートや導体パターンの形状が変形してしまうこととなる。その結果、基板の所望の寸法精度が得られないために基板上への部品実装が困難となったり、設計通りの導体パターンの形状が得られないために、特に高周波用配線基板等ではインピーダンス整合等の電気的特性が得られなくなるという問題があった。さらに、配線用の導体層のパターンの間隔が微細な場合の導体層の周囲や導体層間に発生する空隙の問題は解決されないままであった。
また、導体層の形成されている部分の周囲の領域にセラミックペーストを印刷する方法においては、導体層が形成されたグリーンシート上にさらにセラミックペーストを印刷するという工程が加わるばかりでなく、導体層のパターンの間隔が微細な場合は導体層の周辺にセラミックペーストを印刷することが困難であった。このため、導体層の上にもセラミックペーストが印刷されてしまい、導体層上に印刷されたセラミックペーストにより、積層されて上下に配置される導体層間を接続するための貫通導体が導体層と接続されなくなるという問題があった。
また、従来の拘束焼成方法では焼成収縮による寸法ばらつきは抑えることができるものの、積層体を作製する際に加圧力が5乃至30MPa(50乃至300kg/cm2)という高い圧力を加えていたので、焼成前の積層体を作製する段階で寸法ばらつきが発生してしまうという問題があった。
さらには、キャビティを有するような電子部品を製造する場合、キャビティとなる貫通穴を形成したグリーンシートとキャビティの底部となる貫通穴が形成されていないグリーンシートとを積層して圧着すると、グリーンシート積層体のキャビティ底部が反ってしまうという問題があった。これは、圧着するための加圧によりキャビティの周囲だけに圧力が加わり、キャビティ周囲のグリーンシートが加圧により伸びるのに対して、キャビティ底部には圧力が加わらないのでキャビティ底部のグリーンシートは周囲から押されてしまうことによるものである。これは、電子部品がより小型でキャビティ底部の厚みがより薄い場合により発生しやすいものであった。キャビティ底部が反ってしまうと、水晶振動子やICチップ等の電子素子を搭載することが困難となる。搭載できても搭載された部品が傾いてしまうので、CCDやC−MOS等の光半導体素子を搭載した場合は受光精度が悪くなるという問題があった。
本発明は、上記従来の問題点に鑑みて完成されたものであり、その目的は、デラミネーションがなく、かつ高い寸法精度を有する電子部品の製造方法を提供することである。
本発明の電子部品の製造方法は、支持体上に第1のセラミックグリーンシート層を形成する工程と、該第1のセラミックグリーンシート層上に第2のセラミックグリーンシート層を形成してセラミックグリーンシートを形成する工程と、前記セラミックグリーンシート上に導体層を形成する工程と、前記導体層が形成された前記セラミックグリーンシートを複数枚積層して加熱することによってセラミックグリーンシート積層体を作製する工程と、前記セラミックグリーンシート積層体の両主面に前記セラミックグリーンシート積層体の焼結温度では実質的に収縮しない拘束グリーンシートを積層する工程と、両主面に前記拘束グリーンシートが積層された前記セラミックグリーンシート積層体を焼成する工程と、前記拘束グリーンシートを焼成して成る拘束層を除去する工程とを具備しており、前記第1のセラミックグリーンシート層は、前記セラミックグリーンシート積層体を作製する際の加熱時に溶融状態となる溶融成分を含有していることを特徴とする。
本発明の電子部品の製造方法は好ましくは、前記溶融成分の融点が35乃至100℃であることを特徴とする。
本発明の電子部品の製造方法によれば、第1のセラミックグリーンシート層は加熱時に溶融する溶融成分を含有することから、セラミックグリーンシート積層体を加熱した際に第1のセラミックグリーンシート層が軟化するので、第1のセラミックグリーンシート層はその下に位置するセラミックグリーンシートの第2のセラミックグリーンシート層およびその上に形成された導体層の形状に追従して変形することとなる。その結果、導体層の周囲や導体層間に空隙が発生することなくセラミックグリーンシート同士が密着することとなり、セラミックグリーンシート積層体を焼成して得られる電子部品はデラミネーションの発生のないものとなる。
また、第1のセラミックグリーンシート層は加熱時に溶融する溶融成分を含有することから、第1のセラミックグリーンシート層は加熱のみで軟化して接着性を有するものとなるので、大きな加圧力によりセラミックグリーンシートを圧着させる必要がない。そして、導体層が形成されている第2のセラミックグリーンシート層は加熱時に溶融する溶融成分を含有しないことから、第2のセラミックグリーンシート層は加熱時に変形することはなく、その結果、積層したセラミックグリーンシートに位置ずれが発生するのを防止するとともに、軟化した第1のセラミックグリーンシート層を第2のセラミックグリーンシート層およびその上に形成された導体層の形状に追従して変形するのを補助するために押さえる程度では変形しないものとなる。
よって、セラミックグリーンシートおよびその上に形成された導体層の形状が変形することがなく、得られるセラミックグリーンシート積層体は高い寸法精度を有するものとなる。この高寸法精度のセラミックグリーンシート積層体の両主面にセラミックグリーンシート積層体の焼結温度では実質的に収縮しない拘束グリーンシートを積層して焼成するため、焼成工程においてセラミックグリーンシート積層体の収縮は拘束グリーンシートによって拘束されるため、実質的に収縮せず、焼成して得られる電子部品は高い寸法精度を有するものとなる。
また、キャビティを有する電子部品を製造する場合に大きな加圧力によりグリーンシートを圧着させる必要がないので、キャビティ周囲部とキャビティ底部との加圧によるグリーンシートの伸びの違いによるキャビティ底部の反りの発生を抑えることができ、キャビティ底部に電子素子等を精度よく確実に搭載することが可能な電子部品を得ることができる。
また、第1のセラミックグリーンシート層の溶融成分の融点が35乃至100℃であるものを用いた場合、常温で第1のセラミックグリーンシート層が軟化して変形することはないので、積層工程までのハンドリングが容易となるとともに、加熱時にセラミックグリーンシート中のバインダーや可塑剤等の有機成分が分解することがないので、分解ガスによりデラミネーションが発生することがなく、より好ましいものとなる。
このように、本発明の製造方法によれば、セラミックグリーンシート間に空隙を発生させることがなく、セラミックグリーンシートや導体層の変形を抑えたセラミックグリーンシート積層体を得ることが可能となり、また本発明の製造方法により作製された電子部品はデラミネーションがなく高い寸法精度を有するものとなる。
本発明の電子部品の製造方法について以下に詳細に説明する。
図1(a)〜(e)は、本発明の電子部品の製造方法の実施の形態の一例を示す工程毎の断面図であり、1は支持体、2は第1のセラミックグリーンシート層、3は第2のセラミックグリーンシート層、4はセラミックグリーンシート、5は導体層、6はセラミックグリーンシート積層体、7は拘束グリーンシートである。
まず図1(a)に示すように、支持体1上に第1のセラミックグリーンシート層2を形成し、次に図1(b)に示すように、第1のセラミックグリーンシート層2上に第2のセラミックグリーンシート層3を形成してセラミックグリーンシート4を形成する。
本発明における第1のセラミックグリーンシート層2および第2のセラミックグリーンシート層3は、セラミック粉末、有機バインダー、溶剤等を混合したものが用いられる。第1のセラミックグリーンシート層2はさらに溶融成分を含有する。第1のセラミックグリーンシート層2および第2のセラミックグリーンシート層3ともに、さらに可塑剤を添加して、セラミックグリーンシート4の硬度や強度を調整してもよい。
セラミック粉末としては、例えばセラミック配線基板であれば、ガラスセラミック粉末(ガラス粉末とフィラー粉末との混合物)が挙げられ、積層コンデンサであればBaTiO3系,PbTiO3系等の複合ペロブスカイト系セラミック粉末が挙げられ、電子部品に要求される特性に合わせて適宜選択される。
ガラスセラミック粉末のガラス成分としては、例えばSiO2−B2O3系、SiO2−B2O3−Al2O3系,SiO2−B2O3−Al2O3−MO系(ただし、MはCa,Sr,Mg,BaまたはZnを示す),SiO2−Al2O3−M1O−M2O系(ただし、M1およびM2は同じまたは異なってCa,Sr,Mg,BaまたはZnを示す),SiO2−B2O3−Al2O3−M1O−M2O系(ただし、M1およびM2は上記と同じである),SiO2−B2O3−M3 2O系(ただし、M3はLi、NaまたはKを示す,SiO2−B2O3−Al2O3−M3 2O系(ただし、M3は上記と同じである),Pb系ガラス,Bi系ガラス等が挙げられる。
また、ガラスセラミック粉末のフィラー粉末としては、例えばAl2O3,SiO2,ZrO2とアルカリ土類金属酸化物との複合酸化物,TiO2とアルカリ土類金属酸化物との複合酸化物,Al2O3およびSiO2から選ばれる少なくとも1種を含む複合酸化物(例えばスピネル,ムライト,コージェライト)等のセラミック粉末が挙げられる。
第1のセラミックグリーンシート層2および第2のセラミックグリーンシート層3に配合される有機バインダーとしては、従来からセラミックグリーンシートに使用されているものが使用可能であり、例えばアクリル系(アクリル酸,メタクリル酸またはそれらのエステルの単独重合体または共重合体,具体的にはアクリル酸エステル共重合体,メタクリル酸エステル共重合体,アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体等),ポリビニルブチラ−ル系,ポリビニルアルコール系,アクリル−スチレン系,ポリプロピレンカーボネート系,セルロース系等の単独重合体または共重合体が挙げられる。焼成工程での分解、揮発性を考慮すると、アクリル系バインダーがより好ましい。
第1のセラミックグリーンシート層2に含有される溶融成分は、セラミックグリーンシート積層体6を作製する際の加熱時に溶融状態となるものであり、炭化水素,脂肪酸,エステル,脂肪アルコール,多価アルコール等が挙げられる。スラリーを調整する際の溶媒への溶解性を考慮すると、分子量が小さくかつ極性を有する炭化水素,エステル,脂肪アルコール,多価アルコールが好ましい。さらに上述したアクリルバインダーとの相溶性を考慮すると、エステル,脂肪アルコール,多価アルコールがより好ましい。
溶融成分は上記のものの中でも、その融点が35乃至100℃であるものが好ましい。これは、この範囲の融点のものを用いると、常温では第1のセラミックグリーンシート層2が軟化して変形することはないので、積層工程までのハンドリングが容易となり、セラミックグリーンシート積層体6を作製する工程における加熱時にセラミックグリーンシート4中のバインダーや可塑剤等の有機成分が分解することがないので、分解ガスによりデラミネーションが発生することがないからである。融点が35乃至100℃である溶融成分としては、具体的にはヘキサデカノール,ポリエチレングリコール,ポリグリセロール,ステアリルアミド,オレイルアミド,エチレングリコールモノステアレート,パラフィン,ステアリン酸,シリコーン等が挙げられる。
第1のセラミックグリーンシート層2に含有される溶融成分の含有量は、使用するバインダー成分およびその量や、使用する溶融成分により異なるが、溶融成分が溶融した状態で第1のセラミックグリーンシート層2が軟化し、その下に位置するセラミックグリーンシート4の第2のセラミックグリーンシート層3およびその上に形成された導体層5の形状に追従して変形するような量であればよい。
第1のセラミックグリーンシート層2は、上記セラミック粉末,有機バインダー,溶融成分に溶剤(有機溶剤,水等)、必要に応じて所定量の可塑剤,分散剤を加えてスラリーを得、これをPETフィルム等の支持体1上にドクターブレード法,リップコーター法,ダイコーター法等により成形することによって得られる。第1のセラミックグリーンシート層2の厚さは、導体層5とセラミックグリーンシート4との段差を埋めるために、導体層5の厚みより厚くなるように形成される。
第2のセラミックグリーンシート層3は、第1のセラミックグリーンシート層2に用いるスラリーに対して、溶融成分を含まないスラリーを用いて形成される。
第1のセラミックグリーンシート層2上に第2のセラミックグリーンシート層3を形成する方法としては、以下の(1)乃至(3)の方法がある。
(1)第1のセラミックグリーンシート層2と同様に成形した第2のセラミックグリーンシート層3を第1のセラミックグリーンシート層2の上に積層して形成する方法。
(2)支持体1上に形成された第1のセラミックグリーンシート層2上に第2のセラミックグリーンシート3のスラリーを塗布して形成する方法。
(3)支持体1上に塗布された第1のセラミックグリーンシート層2のスラリー上に第2のセラミックグリーンシート層3のスラリーを塗布して形成する方法。
第1のセラミックグリーンシート層2上に第2のセラミックグリーンシート層3を積層する際に、第1のセラミックグリーンシート層2と第2のセラミックグリーンシート層3との間に空隙が発生する可能性があるため、第1のセラミックグリーンシート層2と第2のセラミックグリーンシート層3との密着性を向上させるためには上記(2)または(3)の方法が好ましい。
さらに、上記(3)の方法では、第1のセラミックグリーンシート層2と第2のセラミックグリーンシート層3の形成がほぼ同時に行なわれるので、工程が簡略化されるのでより好ましい。この(3)の方法においては、ダイコーター法やリップコーター法等の押し出し式の方法を用いるとよく、これらは非接触式の塗布方法であり、また溶剤が少なく比較的粘度の高いスラリーを用いることができるので、第1のセラミックグリーンシート層2のスラリーと第2のセラミックグリーンシート層3のスラリーが混ざり合うことなくセラミックグリーンシート4を形成することができるのでよい。
次に図1(c)に示すように、セラミックグリーンシート4上に導体層5を形成する。セラミックグリーンシート4上に導体層5を形成する方法としては、例えば導体材料粉末をペースト化したものをスクリーン印刷法やグラビア印刷法等により印刷する方法、セラミックグリーンシート4上にめっき法や蒸着法等により所定パターン形状の金属膜を直接形成する方法、あるいは所定パターンに印刷する印刷法、金属箔を所定パターンに加工する方法、めっき法または蒸着法等があり、さらには他の支持板上に形成または接着した金属膜や金属薄板をセラミックグリーンシート4上に転写する方法がある。導体材料としては、例えばW,Mo,Mn,Au,Ag,Cu,Pd(パラジウム),Pt(白金)等の1種または2種以上が挙げられ、2種以上の場合は混合、合金、層別のコーティング等のいずれの形態であってもよい。
導体層5はセラミックグリーンシート4の第2のセラミックグリーンシート層3上に形成される。これは、第2のセラミックグリーンシート層3は加熱時に溶融する溶融成分を含有しないことから、第2のセラミックグリーンシート層3は加熱時に変形することはないので、その上に導体層5を形成することにより導体層5を変形させないようにするためである。
なお、導体層5を形成する前に必要に応じて上下の層間の導体層5同士を接続するためのビアホール導体やスルーホール導体等の貫通導体を形成してもよい。これら貫通導体は、パンチング加工やレーザ加工等によりセラミックグリーンシート4に形成した貫通孔に、導体材料粉末をペースト化したもの(導体ペースト)を印刷やプレス充填により埋め込む等の手段によって形成される。
キャビティを有する電子部品を製造する場合、次のセラミックグリーンシート積層体6を作製する工程より前に、キャビティとなる貫通穴を金型による打ち抜き等によりセラミックグリーンシート4の一部に形成しておく。貫通穴の形成は、キャビティの内壁面への導体層5の形成の有無や形成方法に応じて、導体層5を形成する前でもよいし、形成した後でもよい。
次に図1(d)に示すように、位置合わせして積み重ねたセラミックグリーンシート4を、溶融成分が溶融状態となり第1のセラミックグリーンシート層2が軟化して変形する程度の温度つまり溶融成分の融点程度の温度で加熱することで、セラミックグリーンシート積層体6を作製する。また、このとき、積層したセラミックグリーンシート4の位置ずれを防止するとともに、軟化した第1のセラミックグリーンシート層2を第2のセラミックグリーンシート層3およびその上に形成された導体層5のパターン形状に追従して変形するのを補助するために押さえる程度の加圧(0.1乃至1MPa)を行なうと、より精度よく確実な圧着が可能となる。
セラミックグリーンシート積層体6を作製する工程において、第1のセラミックグリーンシート層2は加熱時に溶融する溶融成分を含有することから、導体層5が形成されたセラミックグリーンシート4を積層して加熱した際に第1のセラミックグリーンシート層2が軟化するので、第1のセラミックグリーンシート層2はその下に位置するセラミックグリーンシート4の第2のセラミックグリーンシート層3およびその上に形成された導体層5の形状に追従して変形することとなる。これにより、導体層5の周囲や導体層5間に空隙が発生することなくセラミックグリーンシート4同士が密着することとなり、セラミックグリーンシート積層体6を焼成して得られる電子部品はデラミネーションの発生のないものとなる。
また、第1のセラミックグリーンシート層2は、加熱時に溶融する溶融成分を含有することから、加熱のみで第1のセラミックグリーンシート層2が軟化して接着性を有するものとなるので、大きな加圧力によりセラミックグリーンシート4を圧着させる必要がない。そして、導体層5の形成される第2のセラミックグリーンシート層3は加熱時に溶融する溶融成分を含有しないことから、第2のセラミックグリーンシート層3は加熱時に変形することはなく、積層したセラミックグリーンシート4が位置ずれしないように、また、軟化した第1のセラミックグリーンシート層2を第2のセラミックグリーンシート層3およびその上に形成された導体層5のパターンの形状に追従して変形するのを補助するために押さえる程度では変形しない。よって、セラミックグリーンシート4およびその上に形成された導体層5が変形することがなく、さらに加圧によるグリーンシート4への歪がなく得られるセラミックグリーンシート積層体6は高い寸法精度を有するものとなる。
また、キャビティを有する電子部品を製造する場合、大きな加圧力によりセラミックグリーンシート4を圧着させる必要がないので、キャビティ周囲部とキャビティ底部との加圧によるグリーンシート4の伸びの違いによるキャビティ底部の反りの発生を抑えることが可能となり、キャビティ底部に電子素子等を精度よく確実に搭載することが可能な電子部品を得ることができる。
図1(d)の構成で最下部に位置するセラミックグリーンシート4としては、第2のセラミックグリーンシート層3のみで構成されるセラミックグリーンシート4’を用いればよい。積層コンデンサのように表面に導体層5が露出しないような電子部品の場合、図1(d)の最上部に位置するセラミックグリーンシート4には導体層5が形成されていないものを用いればよく、積層セラミック配線基板のような両面に導体層5が露出するような電子部品の場合、最下部のセラミックグリーンシート4’の両面に導体層5を形成したものを用いればよい。
次に図1(e)に示すように、セラミックグリーンシート積層体6の両主面に、セラミックグリーンシート積層体6の焼結温度では実質的に収縮しない拘束グリーンシート7を積層する。ここで「実質的に収縮しない」とは、拘束グリーンシート7のXY方向(平面方向)の収縮が1%以下、好ましくは0.8%以下、より好ましくは0.5%以下に抑制されていることを意味する。「XY方向」とは、三次元座標において拘束グリーンシート7の厚さ方向をZ方向としたときのX方向およびY方向によって規定される面内の方向をいう。
拘束グリーンシート7はセラミックグリーンシート積層体6の焼結温度では焼結収縮しない、例えばAl2O3,ZrO2,SiO2等の難焼結性無機材料を主成分とする無機粉末と、セラミックグリーンシート4に配合されるものと同様の有機バインダーとに溶剤(有機溶剤,水等)、必要に応じて所定量の可塑剤,分散剤を加えてスラリーを得、これをPETフィルム等の支持体1上にドクターブレード法,リップコーター法,ダイコーター法等により成形することによって得られる。可塑剤を添加すると拘束グリーンシート7に可撓性を付与し、セラミックグリーンシート積層体6との密着性を高めることができるので好ましいものとなる。
セラミックグリーンシート積層体6の両面に積層される拘束グリーンシート7の厚さは、片面だけでセラミックグリーンシート積層体6の厚さに対して10%以上であるのが好ましく、これよりも薄いと拘束グリーンシート7の拘束性が低下するおそれがある。また、有機成分の揮散の容易および拘束層の除去性を考慮すると、拘束グリーンシート7の厚さはセラミックグリーンシート積層体6の厚さの約200%以下であるのがよい。また、積層される拘束グリーンシート7は1枚のものであってもよく、あるいは所定の厚みになるように複数枚を積層したものであってもよい。
拘束グリーンシート7をセラミックグリーンシート積層体6の両面に積層するには、熱と圧力を加えて熱圧着する方法、有機バインダー,可塑剤,溶剤等からなる接着剤を拘束グリーンシート7とセラミックグリーンシート積層体6との間に塗布して熱圧着する方法等が採用可能である。
次に、拘束グリーンシート7が両主面に積層されたセラミックグリーンシート積層体6(以下、積層体6ともいう)を焼成する。焼成工程は、有機成分の除去工程とセラミック粉末の焼結工程とから成る。有機成分の除去は100乃至800℃の温度範囲でセラミックグリーンシート積層体6を加熱することによって行い、有機成分を分解、揮発させる。また、焼結温度はセラミック組成により異なり、約800乃至1600℃の範囲内で行なう。焼成雰囲気はセラミック粉末や導体材料により異なり、大気中、還元雰囲気中、非酸化性雰囲気中等で行なわれ、有機成分の除去を効果的に行なうために水蒸気等を含ませてもよい。
また、焼成時には、反りを防止するために、積層体6の上面に重しを載せる等して荷重をかけてもよい。荷重は50Pa乃至1MPa程度が適当である。荷重が50Pa未満である場合、積層体6の反り抑制作用が充分でないおそれがある。また、荷重が1MPaを超える場合、使用する重しが大きくなるため焼成炉に入らなかったり、また焼成炉に入っても熱容量不足になり焼成できなかったりするなどの問題をひき起こすおそれがある。重しとしては、分解した有機成分の揮散を妨げないように、例えば多孔質のセラミックスや金属等を使用するのが好ましい。積層体6の上面に多孔質の重しを置き、その上に非多孔質の重しを置いてもよい。
焼成の間、積層体6の収縮は拘束グリーンシート7によって拘束されるため実質的に収縮せず、焼成収縮による寸法ばらつきが抑えられので、焼成して得られる電子部品は高い寸法精度を有するものとなる。
例えば、加熱時に溶融する溶融成分を含有しない第1のセラミックグリーンシート層2を用い、拘束グリーンシート7を用いない場合、積層体6および電子部品の寸法精度は±0.5%(寸法誤差)程度であったが、本発明の溶融成分を含有する第1のセラミックグリーンシート層2および拘束グリーンシート7を用いた場合、積層体6および電子部品の寸法精度は±0.2%程度となり、大幅に向上することが実験により判明した。
焼成後の電子部品の表面には、拘束グリーンシート7が焼成により有機成分が除去されて成る拘束層が付着した状態となるので、この拘束層を除去する。除去方法としては、表面に付着した拘束層を除去できる方法であれば特に制限はなく、例えば研磨、ウォータージェット、ケミカルブラスト、サンドブラスト、ウェットブラスト(砥粒と水とを空気圧により噴射させる方法)等の方法が挙げられる。
拘束層が除去された電子部品の表面に露出した導体層5の表面に、導体層5の腐食防止のため、または半田や金属ワイヤ等の外部基板や他の電子部品との良好な接続のために、NiやAuのめっきを施すとよい。
以上のような方法で作製された電子部品は、その内部にデラミネーションを有さず寸法精度の高いものであるので、電子部品として要求される優れた電気特性や気密性の高いものとなる。
1・・・支持体
2・・・第1のセラミックグリーンシート層
3・・・第2のセラミックグリーンシート層
4・・・セラミックグリーンシート
5・・・導体層
6・・・セラミックグリーンシート積層体
7・・・拘束グリーンシート
2・・・第1のセラミックグリーンシート層
3・・・第2のセラミックグリーンシート層
4・・・セラミックグリーンシート
5・・・導体層
6・・・セラミックグリーンシート積層体
7・・・拘束グリーンシート
Claims (2)
- 支持体上に第1のセラミックグリーンシート層を形成する工程と、該第1のセラミックグリーンシート層上に第2のセラミックグリーンシート層を形成してセラミックグリーンシートを形成する工程と、前記セラミックグリーンシート上に導体層を形成する工程と、前記導体層が形成された前記セラミックグリーンシートを複数枚積層して加熱することによってセラミックグリーンシート積層体を作製する工程と、前記セラミックグリーンシート積層体の両主面に前記セラミックグリーンシート積層体の焼結温度では実質的に収縮しない拘束グリーンシートを積層する工程と、両主面に前記拘束グリーンシートが積層された前記セラミックグリーンシート積層体を焼成する工程と、前記拘束グリーンシートを焼成して成る拘束層を除去する工程とを具備しており、前記第1のセラミックグリーンシート層は、前記セラミックグリーンシート積層体を作製する際の加熱時に溶融状態となる溶融成分を含有していることを特徴とする電子部品の製造方法。
- 前記溶融成分の融点が35乃至100℃であることを特徴とする請求項1記載の電子部品の製造方法。
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