JP2004095753A - 多層セラミック基板の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】多層セラミック基板に備える積層体となる生の基板用積層体15において、基板用セラミックグリーン層17〜19間の界面に沿って、基板用セラミック材料粉末の焼結温度では焼結しにくい収縮抑制用無機材料粉末を含む層間拘束層6を形成するとともに、生の基板用積層体15の一方主面上に、焼成工程によって基板用積層体15に固着した状態とならずかつ生の基板用積層体15より機械的強度の高い補強層16を配置し、その状態で焼成工程を実施する。補強層16は、たとえば、焼成工程における焼成温度では焼結しにくい無機材料粉末を含む。
【選択図】 図2
Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、多層セラミック基板の製造方法に関するもので、特に、多層セラミック基板における不所望な変形を生じにくくすることができる、多層セラミック基板の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電子機器に対する小型軽量化、多機能化、高性能化等の要望に有利に応え得るものとして、多層セラミック基板が提案されかつ実用化されている。
【0003】
このような多層セラミック基板を製造しようとする場合、導体膜やビアホール導体などの配線導体を形成した複数のセラミックグリーンシートを積層することによって、生の積層体を得、この生の積層体を、プレスした後、焼成する工程が実施され、それによって、焼結後の積層体を作製するようにされる。その後、焼結後の積層体の外表面上に、必要に応じて、導体膜をさらに形成し、必要な電子部品を実装すれば、多層セラミック基板が完成される。また、キャビティが形成された多層セラミック基板にあっては、焼結後の積層体に設けられたキャビティ内に、必要な電子部品が実装される。
【0004】
上述のように、多層セラミック基板の製造方法において、焼成工程を実施したとき、生の積層体が収縮することは避けられないが、この収縮が特に不均一に生じる場合には、多層セラミック基板における配線の高密度化を阻害することになるので、焼成工程の間、積層体に備えるセラミック層の寸法や形状などについての精密な制御技術が求められる。
【0005】
上述のような焼成時のセラミック層の寸法や形状などについての精密な制御を可能とする方法として、いわゆる無収縮プロセスによる多層セラミック基板の製造方法がある。無収縮プロセスには、いくつかの態様があるが、その典型的な態様な1つとして、たとえば特開2000−315864号公報に記載されたものがある。
【0006】
上述の公報では、生の積層体において、セラミックグリーンシートによって与えられた基板用セラミックグリーン層間の各界面に沿って、基板用セラミック材料粉末の焼結温度では焼結しにくい収縮抑制用無機材料粉末を含む層間拘束層を比較的薄く形成しておき、層間拘束層による収縮抑制効果が及ぼされた状態で、生の積層体を焼成する、多層セラミック基板の製造方法が記載されている。
【0007】
層間拘束層は、焼成工程の結果、ここに基板用セラミックグリーン層の材料が浸透することによって、緻密化されかつ固化される。したがって、層間拘束層は、焼成工程の後、除去されず、製品としての多層セラミック基板に残される。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
近年、多層セラミック基板の低背化が進み、そのため、多層セラミック基板に備える積層体の厚みが薄くなってきている。そのため、以下のような問題を招くことがある。
【0009】
積層体の厚みが薄くなるほど、焼成前の生の状態での積層体が機械的に軟弱となり、その取扱い性が悪くなり、加工時、搬送時などにおいて変形や破損が発生しやすい。また、生の積層体において、部分的に形成される導体膜等の配線導体やプレス工程での付与圧力の不均一な分布などが原因して、焼結後の積層体において、反りまたはうねりなどの変形が生じることがある。
【0010】
焼結後の積層体において、上述のようなうねり等が生じていると、以下のような問題に遭遇する。
【0011】
多層セラミック基板において、うねりが生じていると、積層体上に実装される電子部品のための実装面が傾いたりして平坦でなくなるため、たとえば、ワイヤボンディング、フリップチップ実装および半田付けのいずれが適用される場合であっても、積層体上に電子部品を適正に実装することができなくなることがある。
【0012】
また、積層体にうねりが生じた場合、積層体の見掛けの厚みが厚くなり、そのため、積層体上に電子部品を実装した状態における合計厚みが設計値より厚くなり、規格を満足しなくなることがある。
【0013】
また、多層セラミック基板を、たとえばプリント配線基板のようなマザーボード上に実装する際、積層体にうねりが生じていると、積層体とマザーボードとの間に不均一な隙間が生じ、多層セラミック基板の実装不良を招くことがある。
【0014】
他方、積層体にキャビティが設けられた多層セラミック基板の場合には、その低背化を図ろうとするには、キャビティの深さについては、そこに収容される電子部品の高さ寸法を受け入れることが許容されなければならないため、キャビティの深さを浅くすることが実質的に不可能であり、このことから、キャビティの底面壁を薄くせざるを得ない。したがって、最近では、多層セラミック基板の低背化に伴い、キャビティの底面壁の厚みが0.6mm以下のものも開発されてきている。
【0015】
また、多層セラミック基板の多機能化に伴い、キャビティ内に実装する部品が大きくなったり、多くなったりすることから、キャビティの開口の寸法が大きくなる傾向がある。
【0016】
これらのことから、キャビティを備える多層セラミック基板にあっては、次のような問題を招くことがある。
【0017】
キャビティを有する生の積層体を、焼成工程の前にプレスするに際して、弾性体を用いたプレスが適用される。すなわち、生の積層体を金型の中に入れて、生の積層体の上面上に弾性体を配置する。次いで、弾性体に向かって圧力が加えられる。これによって、キャビティ内に弾性体が入り込み、生の積層体におけるキャビティの開口の周辺部だけでなく、キャビティの底面にもプレス圧力が及ばされる。
【0018】
しかしながら、上述したプレス工程において、キャビティの底面に及ぼされる圧力は、キャビティの開口の周辺部に及ぼされる圧力より小さくなることは避けられない。また、キャビティの底面壁の部分には、その周囲から中央に向かう横からの応力がかかる。このようなことから、キャビティの底面壁が薄くなったり、キャビティの開口の寸法が大きくなったりすると、圧力を除去した段階で、キャビティの底面壁のほぼ中央部が上方へ盛り上がるようなうねりが生じやすい。したがって、このうねりは、焼成工程を終えた後にも残る。
【0019】
また、プレス工程において、キャビティの底面壁に生じたうねりのような変形がたとえ小さい場合であっても、これを焼成したとき、生の積層体の段階での圧力付与履歴や導体膜等の配線導体の配置などが原因となり、キャビティの底面壁においてうねり等の変形が生じることがある。
【0020】
上述のようにキャビティの底面壁にうねりが発生すると、たとえば、ワイヤボンディングやフリップチップ実装によって実装されるベアチップのような電子部品が、キャビティ内において不所望に傾き、実装不良が生じることがある。また、キャビティの底面の中央部が盛り上がるようなうねりが生じると、キャビティ内に実装される電子部品がキャビティの開口端からはみ出したり、ワイヤボンディングによる実装が適用される場合には、ワイヤがキャビティの開口端からはみ出たりする、といった不良が発生することがある。
【0021】
そこで、この発明の目的は、上述のような問題を解決し得る、多層セラミック基板の製造方法を提供しようとすることである。
【0022】
【課題を解決するための手段】
この発明は、基板用セラミック材料粉末を用意する工程と、基板用セラミック材料粉末の焼結温度では焼結しにくい収縮抑制用無機材料粉末を用意する工程と、基板用セラミック材料粉末を含む複数の積層された基板用セラミックグリーン層および収縮抑制用無機材料粉末を含みかつ基板用セラミックグリーン層間の界面に沿って位置される層間拘束層をもって構成される生の基板用積層体を作製する工程と、生の基板用積層体を、基板用セラミック材料粉末が焼結する温度下で焼成し、それによって、基板用セラミックグリーン層を焼結させるとともに、基板用セラミックグリーン層に含まれる材料の浸透によって層間拘束層を緻密化しかつ固化する、焼成工程とを備える、多層セラミック基板の製造方法に向けられるものであって、上述した技術的課題を解決するため、次のような構成を備えることを特徴としている。
【0023】
すなわち、この発明に係る多層セラミック基板の製造方法は、さらに、焼成工程によって基板用積層体に固着した状態とならずかつ生の基板用積層体より機械的強度の高い補強層を生の基板用積層体の一方主面上に配置する工程を備え、焼成工程は、補強層を生の基板用積層体の一方主面上に配置した状態で実施されることを特徴とするとともに、焼成工程の後、補強層を除去する工程をさらに備えることを特徴としている。
【0024】
この発明において、補強層は、たとえば、層間拘束層において用いられた収縮抑制用無機材料粉末のように、焼成工程における焼成温度では焼結しにくい無機材料粉末を含む組成とされる。
【0025】
あるいは、補強層は、焼成工程によって基板用積層体に固着しないようにするための剥離容易性を担う剥離容易層と機械的強度を高くするための高強度性を担う高強度層とを備える複数層からなる構造を有していてもよい。この場合、剥離容易層が生の基板用積層体に接するように配置される。
【0026】
上述の剥離容易層は、たとえば、焼成工程における焼成温度では焼結しにくい無機材料粉末を含む組成とされる。
【0027】
他方、高強度層は、たとえば、基板用セラミック材料粉末を含む組成とされたり、あるいは、焼結させたセラミック板から構成されたりする。高強度層がセラミック板から構成される場合、焼成工程での焼成温度では、さらなる焼結が進まないものであることが好ましい。また、高強度層は、金属からなる板から構成されてもよい。
【0028】
この発明において、生の基板用積層体は、補強層が配置される主面に導体膜を形成していないことが好ましい場合がある。
【0029】
また、生の基板用積層体は、その一方主面上に開口端を位置させたキャビティを有していてもよい。この場合、補強層は、生の基板用積層体の、キャビティの開口端が位置する主面とは逆の主面上に配置されることが好ましい。
【0030】
【発明の実施の形態】
図1および図2は、この発明の第1の実施形態を説明するためのものである。ここで、図1は、この実施形態によって得られた多層セラミック基板1を示す断面図であり、図2は、図1に示した多層セラミック基板1を製造する途中の段階で得られる生の複合積層体2を示す断面図である。
【0031】
まず、図1を参照して、多層セラミック基板1について説明する。
【0032】
多層セラミック基板1は、積層された複数のセラミック層3、4および5ならびにセラミック層3〜5間の界面に沿って位置される層間拘束層6をもって構成される積層体7を備えている。
【0033】
また、積層体7には、積層体7の一方主面上、すなわち、図示の姿勢では、下方主面上に開口端8を位置させたキャビティ9が設けられている。キャビティ9は、この実施形態では、段部10を有している。
【0034】
また、積層体7に関連して、次のような配線導体が設けられている。配線導体としては、セラミック層3〜5または層間拘束層6上に形成されるいくつかの導体膜11や、セラミック層3〜5またはセラミック層3〜5および層間拘束層6の双方を厚み方向に貫通するように設けられるいくつかのビアホール導体12がある。
【0035】
また、キャビティ9内には、ベアチップのようなチップ状の電子部品13が収容されている。図1においてワイヤ14が図示されているように、この実施形態では、電子部品13は、ワイヤボンディングによって実装状態とされる。なお、ワイヤボンディングに代えて、フリップチップ実装または通常の半田付けが適用されることもある。
【0036】
図示しないが、積層体7の上面上にも、電子部品が搭載されることもある。この場合、積層体7の上面上に形成された導体膜11が、この電子部品を電気的に接続しかつ機械的に固定するために用いられる。
【0037】
積層体7のキャビティ9の開口の周辺部に設けられた導体膜11は、この多層セラミック基板1を、図示しないプリント配線基板のようなマザーボード上に実装するときに用いられる。
【0038】
なお、図示した多層セラミック基板1は、図面の煩雑化を避けるため、簡略化されて図示されている。実際の多層セラミック基板には、より多数のセラミック層が積層された積層体を備えるものや、導体膜およびビアホール導体によってコンデンサおよび/またはインダクタのような受動素子を構成しているものなどがある。
【0039】
このような多層セラミック基板1を製造するため、図2に示すような生の複合積層体2が作製される。生の複合積層体2は、図1に示した積層体7となるべき生の基板用積層体15および電気回路とは無関係な補強層16から構成される。図2において、生の基板用積層体15に備える要素であって、図1に示した要素に対応する要素には、図1において用いたのと同様の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0040】
生の基板用積層体15は、後述する焼成工程の結果、図1に示したセラミック層3、4および5とそれぞれなる複数の積層された基板用セラミックグリーン層17、18および19を備え、基板用セラミックグリーン層17〜19間の界面に沿って、図1に示したのと同様の態様で層間拘束層6が位置されている。また、図1に示したのと同様の態様をもって、キャビティ9、導体膜11およびビアホール導体12が設けられている。
【0041】
図2に示すような生の複合積層体2を作製するため、たとえば、次のような各工程が実施される。
【0042】
まず、基板用セラミックグリーン層17〜19となる複数の基板用セラミックグリーンシートが用意される。基板用セラミックグリーンシートは、基板用セラミック材料粉末に、バインダおよび可塑剤からなる有機ビヒクルならびにその他の必要な添加剤を添加し、これらを混合することによって、スラリーを作製し、このスラリーをドクターブレード法等によってシート状に成形することによって得ることができる。
【0043】
上述の基板用セラミック材料粉末は、後述する焼成工程において、たとえばニッケルまた銅を含む導体膜11およびビアホール導体12との同時焼成を可能とするため、ならびに、層間拘束層6に含まれる収縮抑制用無機材料粉末の選択の幅を広げるため、たとえば1000℃以下の温度で焼結させることが可能な低温焼結セラミック材料となる粉末であることが好ましい。
【0044】
一例として、基板用セラミックグリーンシートは、たとえば、酸化バリウム、酸化ケイ素、アルミナ、酸化カルシウムおよび酸化ホウ素の各粉末を混合した低温焼結セラミック材料粉末に、ポリビニルブチラールからなるバインダとジ−n−ブチルフタレートからなる可塑剤とトルエンおよびイソプロピレンアルコールからなる溶剤とを混合して得られたスラリーを、ドクターブレード法等により、有機フィルム上でシート状に成形し、これを乾燥させることによって得ることができる。
【0045】
次に、上述した基板用セラミックグリーンシート上に、層間拘束層6が形成される。層間拘束層6は、上述した基板用セラミック材料粉末の焼結温度では焼結しにくい収縮抑制用無機材料粉末に、バインダおよび溶剤からなる有機ビヒクルならびにその他の必要な添加剤を添加し、これらを混合することによって、スラリーを作製し、このスラリーを、基板用セラミックグリーンシート上に印刷等の方法によって薄層状に付与することによって形成される。
【0046】
前述したように、基板用セラミック材料粉末が1000℃以下の温度で焼結可能である場合、層間拘束層6に含まれる収縮抑制用無機材料粉末としては、たとえば、アルミナ、ムライト、窒化アルミニウム、ジルコニア、アノーサイト、フォルステライトおよびコージライトの各粉末の少なくとも1種を好適に用いることができる。
【0047】
一例として、層間拘束層6は、上述した収縮抑制用無機材料粉末を主成分とし、軟化点780℃で粒径1.5μmのホウケイ酸ガラス粉末を15〜60体積%含み、さらに、ポリビニルブチラールからなるバインダとジ−n−ブチルフタレートからなる可塑剤とトルエンおよびイソプロピレンアルコールからなる溶剤とを混合して得られたスラリーを、基板用セラミックグリーンシート上に印刷等により塗布し、これを乾燥させることによって形成されることができる。
【0048】
なお、層間拘束層6は、上述したスラリーをシート状に成形し、このシートを前述した基板用セラミックグリーンシート上に積層するようにしてもよい。
【0049】
層間拘束層6は、生の基板用積層体15に備える複数の基板用セラミックグリーン層17〜19の各々を与える基板用セラミックグリーンシートのすべてに形成される必要はない。たとえば、図2に示した複数の基板用セラミックグリーン層17〜19のうち、最も上に位置している基板用セラミックグリーン層17上には層間拘束層6が形成されていないため、この基板用セラミックグリーン層17を与える基板用セラミックグリーンシートには層間拘束層6が形成されない。また、図示しないが、基板用セラミックグリーン層17〜19のうち、中間に位置するものを与える基板用セラミックグリーンシートにおいても、層間拘束層6が形成されないものがあってもよい。
【0050】
次に、基板用セラミックグリーン層17〜19の各々を与える基板用セラミックグリーンシートの特定のものに、ビアホール導体12を設けるための貫通孔が、たとえば、パンチ、ドリルまたはレーザ加工等によって形成される。この場合、基板用セラミックグリーンシート上に層間拘束層6が形成されている場合には、層間拘束層6をも貫通するように貫通孔が設けられる。
【0051】
次に、上述した貫通孔に、たとえばニッケル粉末または銅粉末を導電成分として含む導電性ペーストが充填され、それによって、ビアホール導体12が形成される。
【0052】
次に、基板用セラミックグリーンシート上または層間拘束層6上に、同様の導電性ペーストを用いてたとえばスクリーン印刷を適用することによって、導体膜11が形成される。なお、ビアホール導体12の形成と導体膜11の形成との順序を逆にしてもよい。
【0053】
次に、生の基板用積層体15に備える基板用セラミックグリーン層17〜19の各々を構成する基板用セラミックグリーンシートのうち、基板用セラミックグリーン層18のための基板用セラミックグリーンシートには、キャビティ9の底面側の部分を与えるための貫通部20が設けられ、また、基板用セラミックグリーン層19のための基板用セラミックグリーンシートには、キャビティ9の開口端8側の部分を与えるための貫通部21が設けられる。これら貫通部20および21は、たとえば、パンチ、ドリルまたはレーザ加工によって形成される。基板用セラミックグリーンシートが層間拘束層6を形成している場合には、貫通部20および21は、層間拘束層6をも貫通するように設けられる。
【0054】
前述したように、キャビティ9は段部10を有しているので、このような段部10を与えるため、上述した貫通部20は貫通部21より小さくされる。
【0055】
次に、補強層16となる補強シートが用意される、補強シートは、後述する焼成工程によって生の基板用積層体15から得られた焼結後の積層体7に固着した状態とならずかつ生の基板用積層体15より高い機械的強度を有している。そのため、補強層16となる補強シートは、たとえば、焼成工程における焼成温度では焼結しにくい無機材料粉末を含み、これに有機ビヒクルを添加し、これらを混合することによって得られたスラリーをシート状に成形したものによって与えることができる。この補強シートに含まれる無機材料粉末としては、前述した層間拘束層6に含まれる収縮抑制用無機材料粉末と同様のものを用いることができる。
【0056】
次に、図2に示した生の複合積層体2が得られるように、補強層16となる補強シート上に、基板用セラミックグリーン層17〜19となる基板用セラミックグリーンシートが積層される。この積層工程において、1枚の基板用セラミックグリーンシートを積層する毎にプレスしてもよい。
【0057】
このようにして、図2に示すように、生の基板用積層体15の、キャビティ9の開口端8が位置する主面とは逆の主面上に補強層16が配置された、生の複合積層体2が得られる。
【0058】
なお、生の複合積層体2を得るため、生の基板用積層体15における複数の基板用セラミックグリーンシートの積層を行なった後、この生の基板用積層体15と補強層16となる補強シートとを積み重ねるようにしてもよい。
【0059】
次に、生の複合積層体2全体が積層方向にプレスされる。このプレス工程は、生の複合積層体2を金型内に入れ、かつ、弾性体を、生の基板用積層体15の、キャビティ9の開口端8が位置する主面上に配置した状態で、静水圧プレスを適用することによって実施されることが好ましい。なお、静水圧プレスに代えて、剛体プレスが適用されてもよい。
【0060】
図2には、1個の多層セラミック基板1のための生の基板用積層体15が図示されているが、複数個の多層セラミック基板1を与えるための集合基板の状態で生の基板用積層体15が作製される場合には、上述のプレス工程を終えた後、集合状態にある生の基板用積層体15に対して、後の分割工程での分割を容易にするための溝または切欠き等が生の基板用積層体15に形成される。
【0061】
次に、生の複合積層体2は、基板用セラミックグリーン層17〜19に含まれる基板用セラミック材料粉末が焼結する温度下で焼成される。前述したように、導体膜11およびビアホール導体12にニッケルまたは銅が含まれる場合、この焼成工程は、還元性雰囲気下で実施される。
【0062】
このような焼成工程を実施することによって、基板用セラミックグリーン層17〜19が焼結し、また、導電性ペーストが焼き付けられ、導体膜11およびビアホール導体12が導電性ペーストの焼結体によって与えられる。
【0063】
他方、層間拘束層6に含まれる収縮抑制用無機材料粉末は、焼成工程において、実質的に焼結しないため、層間拘束層6には実質的な収縮が生じない。そのため、層間拘束層6による収縮抑制作用が、基板用セラミックグリーン層17〜19に及ぼされる。その結果、基板用セラミックグリーン層17〜19は、厚み方向にのみ実質的に収縮し、その主面方向への収縮が抑制される。したがって、図1に示した焼結後の積層体7の寸法精度を高くでき、導体膜11およびビアホール導体12によって与えられる配線の高密度化を高い信頼性をもって達成することができる。
【0064】
層間拘束層6は、図1に示す製品としての多層セラミック基板1に残されるので、その厚みを比較的薄くすることによって、焼成工程を終えた時点では、基板用セラミックグリーン層17〜19に含まれる材料の浸透によって緻密化されかつ固化されている。
【0065】
補強層16は、図2に示した生の複合積層体2を得た後、上述の焼成工程を終えるまでの間、生の基板用積層体15を補強し、生の複合積層体2において不所望な変形や破損が生じることを防止する。したがって、焼成後において、得られた積層体7、特にキャビティ9の底面壁において、うねりなどの変形を生じにくくすることができる。
【0066】
また、補強層16は、前述した層間拘束層6と同様の機能をも果たしている。すなわち、補強層16に含まれる無機材料粉末についても、焼成工程において実質的に焼結しないため、補強層16には実質的な収縮が生じない。したがって、補強層16による収縮抑制作用が、生の基板用積層体15に及ぼされる。
【0067】
このような焼成工程を終えた後、補強層16は除去される。補強層16は、層間拘束層6より厚くされ、基板用セラミックグリーン層17〜19に含まれる材料の浸透によって緻密化されかつ固化されることはなく、そのため、前述したように、焼成工程によって基板用積層体7に固着した状態とならない。したがって、補強層16は、焼成工程の後、これを容易に除去することができる。
【0068】
次に、焼結後の基板用積層体7の外表面上に位置する導体膜11に対して、めっき処理が施され、次いで、キャビティ9内に電子部品13が実装され、それによって、図1に示すような多層セラミック基板1が完成される。
【0069】
なお、多層セラミック基板1が集合基板の状態で作製される場合には、集合基板を分割する工程が実施されるが、この分割工程は、上述した電子部品13の実装後であっても、焼成工程を終えた後であっても、あるいは、補強層16を除去した後であってもよい。
【0070】
以上のように作製された多層セラミック基板1に関して、キャビティ9の底面壁でのうねりの度合いを評価するため、キャビティ9の底面壁の厚みを焼成後において0.15mmとなるようにし、キャビティ9の開口の寸法を焼成後において3.5mm□とし、キャビティ9の底面壁と補強層16との合計厚みを焼成後において0.85mmとして、この発明の実施例に係る試料となる焼結後の積層体7を作製したところ、キャビティ9の底面壁でのうねりを10μmに抑えることができた。
【0071】
これに対して、比較例として、同様の寸法の積層体を、補強層を設けるが層間拘束層を設けずに作製したところ、キャビティの底面壁のうねりは50μmと大きくなり、また、層間拘束層を設けるが補強層を設けずに作製したところ、キャビティの底面壁のうねりは100μmとさらに大きくなった。
【0072】
なお、さらなる比較例として、補強層を、生の基板用積層体の両主面上に設けて、同様の寸法の積層体を作製したところ、キャビティの底面壁のうねりは、前述した実施例の場合と同様、10μmであった。このことは、言い換えると、キャビティの底面壁のうねりを抑制するには、キャビティの底面壁側に補強層を設けるだけで十分であることを意味している。
【0073】
したがって、それにも関らず、生の基板用積層体の両主面上に補強層を設ける場合には、次のような問題を招いてしまう。
【0074】
すなわち、補強層のための材料費が増加し、かつキャビティに連通する貫通部を補強層に設けるための費用および補強層を積み重ねるための費用が加わるので、多層セラミック基板を製造するためのコストが上昇する。
【0075】
また、補強層の積み重ねずれが生じる可能性が生じ、良品率が低下する。
【0076】
また、キャビティの開口端側の主面上に設けられた補強層を除去するとき、たとえばジェット式研磨装置(ウェットブラスト、サンドブラストなど)が用いられるが、この除去工程において、キャビティの内部に収容されるベアチップのような電子部品のための実装面を損傷することがあり、適正な実装を困難または不可能にしてしまう。また、キャビティの周辺部にある主面上に形成された導体膜が損傷し、その接合強度が低下することがある。この主面上にある導体膜は、たとえば、多層セラミック基板をマザーボード上に実装する際の接合部分を与えるので、マザーボードへの実装強度を低下させる。
【0077】
また、この発明による効果は、図1に示した積層体7において、特に、キャビティ9の底面壁の厚みが0.6mm以下のときにより顕著に発揮され、また、キャビティ9の開口の寸法が2.0mm□以上のときに顕著に発揮されることが確認されている。
【0078】
図3および図4は、この発明の第2の実施形態を説明するためのものである。ここで、図3は、図1に対応する図であって、多層セラミック基板31を示す断面図であり、図4は、図2に対応する図であって、図3に示した多層セラミック基板31を製造する途中の段階で得られる生の複合積層体32を示す断面図である。図3および図4において、図1および図2に示した要素に相当する要素には同様の参照符号を付している。
【0079】
図3に示した多層セラミック基板31には、キャビティが設けられていない。したがって、図4に示した生の複合積層体に備える生の基板用積層体15は、貫通部が設けられていない基板用セラミックグリーン層17および層間拘束層6をもって構成されている。
【0080】
また、図3に示すように、積層体7の上面上には、いくつかの電子部品33および34が実装されている。電子部品33は、表面実装部品であり、半田35を介して、積層体7の上面上に形成された導体膜11に電気的に接続される。電子部品34は、フリップチップ実装される部品であり、半田または金からなるバンプ36を介して、積層体7の上面上にある導体膜11に電気的に接続されている。
【0081】
図4に示すように、補強層16は、生の基板用積層体15における、この多層セラミック基板31をマザーボード上に実装する際にマザーボードに対向する主面とは逆側の主面上に配置されることが好ましい。これによって、焼成後において、補強層16を除去する際、補強層16が配置された側とは逆側にある導体膜11を損傷させることがない。この導体膜11は、多層セラミック基板31をマザーボード上に実装する際に用いられるものであり、比較的高い接合強度が要求される。なぜなら、マザーボード上に実装されたとき、この導体膜11によって、積層体7と電子部品33および34とを含む合計の重量を支える必要があるためである。
【0082】
これに対して、補強層16が配置された側にある導体膜11は、補強層16の除去に際して多少の損傷を受けても、積層体7より一般的に軽い電子部品33および34の重量を支えれば足りるので、その接合強度の低下はそれほど深刻な問題を引き起こすものではない。
【0083】
図3および図4を参照して説明した第2の実施形態のその他の構成については、前述した第1の実施形態の場合と同様であるので、その説明を省略する。
【0084】
この発明による効果を確認するため、図3および図4を参照して説明した第2の実施形態についても、焼結後の積層体7でのうねりの度合いを評価した。
【0085】
この発明の実施例に係る評価試料は、生の基板用積層体15の厚みを焼成後において0.15mmとなるようにし、生の基板用積層体15と補強層16との合計厚みを焼成後において0.85mmとなるようにした。その結果、焼結後の積層体7において、うねりを10μmにまで抑えることができた。
【0086】
これに対して、比較例として、補強層を設けるが、層間拘束層を設けない場合には、50μmのうねりが生じ、また、層間拘束層を設けるが、補強層を設けない場合にも、50μmのうねりが生じた。
【0087】
また、生の基板用積層体の両主面上に補強層を設けても、うねりは10μmであり、この発明の実施例である一方主面上に補強層16を設けた場合と同等のうねりが生じた。
【0088】
図5は、この発明の第3の実施形態を説明するための図4に相当する図であって、生の複合積層体38を示す断面図である。図5において、図4に示した要素に相当する要素には同様の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0089】
図5に示した生の複合積層体38に備える生の基板用積層体15の、補強層16が配置される主面には導体膜が形成されていない。これは、焼成後の補強層16の除去による導体膜の損傷を避けようとするためのものである。
【0090】
この実施形態では、生の基板用積層体15の側面に露出するように端子導体39が設けられ、この端子導体39がマザーボード上に実装する際の電気的接続のために用いられる。端子導体39は、たとえば、ビアホール導体を分割することによって形成されることができる。
【0091】
図5に示した実施形態は、図2に示したキャビティ9を備える実施形態にも適用することができる。
【0092】
補強層16の除去による導体膜の損傷を避けたい場合、図5に示した構造を採用することに代えて、焼成工程を終え、かつ補強層を除去した後に、導体膜を、たとえば導電性ペーストの付与および焼き付けによって形成するようにしてもよい。
【0093】
図6は、この発明の第4の実施形態を説明するための図4に対応する図であって、生の複合積層体41を示す断面図である。図6において、図4に示した要素に相当する要素には同様の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0094】
図6に示した実施形態は、補強層16の構造に特徴がある。すなわち、補強層16は、焼成工程によって基板用積層体15に固着しないようにするための剥離容易性を担う剥離容易層42と機械的強度を高くするための高強度性を担う高強度層43とを備える少なくとも2層からなる構造を有していて、剥離容易層42が生の基板用積層体15に接するように配置される。
【0095】
上述の剥離容易層42は、たとえば、図2、図4または図5に示した補強層16の場合と同様、焼成工程における焼成温度では焼結しにくい無機材料粉末を含む組成をもって構成される。
【0096】
他方、高強度層43は、焼成工程において耐え得る材料から構成されればよく、たとえば、基板用セラミック材料粉末を含む組成とされたり、セラミック材料粉末を焼結させたセラミック板から構成されたり、金属からなる板から構成されたりする。
【0097】
高強度層43において、セラミック板が用いられる場合には、このセラミック板は、焼成工程における焼成温度では、さらなる焼結が進まないものであることが好ましい。なぜなら、焼結されたセラミック板として、さらなる焼結が進むもの、たとえば、基板用セラミック材料粉末と同材料からなるセラミック板を用いると、さらなる焼結により、セラミック板にクラックが入るなどの問題が生じることがあるためである。前述したように、基板用セラミック材料粉末が1000℃以下の温度で焼結可能である場合、セラミック板の材料として、たとえば、アルミナ、フォルステライト、スピネル、ムライト、コージライト、ステアタイトなどを好適に用いることができる。
【0098】
また、高強度層43において、金属からなる板が用いられる場合、たとえば、銅、ニッケル、タングステン、鉄などの金属からなる板が好適に用いられる。
【0099】
図6に示した構成は、図2に示したようなキャビティ9を備える生の基板用積層体15に対しても適用することができる。
【0100】
【発明の効果】
以上のように、この発明によれば、層間拘束層の存在により、焼結後の基板用積層体の寸法精度を高くすることができ、配線の高密度化を高い信頼性をもって達成することができるとともに、補強層の存在により、生の基板用積層体の不所望な変形や損傷を防止することができ、また、焼成工程の後において、うねりなどの変形を生じにくくすることができる。
【0101】
特に、キャビティが設けられる場合には、キャビティの底面壁でのうねりを生じにくくすることができる。
【0102】
このようなことから、焼結後の積層体に搭載される電子部品の実装不良が生じにくくなる。
【0103】
また、多層セラミック基板に備える積層体の厚みを問題なく薄くすることができるので、多層セラミック基板の低背化を有利に行なうことができる。
【0104】
また、焼成工程において、補強層を下向きにすれば、焼成用セッターには補強層が接するようになり、この補強層と焼成用セッターとがたとえ固着しても、焼結後の基板用積層体が損傷を受けることはない。
【0105】
補強層において、焼成工程における焼成温度では焼結しにくい無機材料粉末が用いられると、補強層によっても、層間拘束層と同様の機能を発揮させることができ、焼結後の積層体の寸法精度をより高めることができる。
【0106】
生の基板用積層体の、補強層が配置される主面に導体膜を形成しないようにすれば、焼成工程の後、補強層を除去する際に導体膜が損傷を受け、接合強度が低下するという問題を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の第1の実施形態を説明するためのもので、多層セラミック基板1を示す断面図である。
【図2】図1に示した多層セラミック基板1を製造する途中の段階で得られる生の複合積層体2を示す断面図である。
【図3】この発明の第2の実施形態を説明するためのもので、多層セラミック基板31を示す断面図である。
【図4】図3に示した多層セラミック基板31を製造する途中の段階で得られる生の複合積層体32を示す断面図である。
【図5】この発明の第3の実施形態を説明するための図4に対応する図であって、生の複合積層体38を示す断面図である。
【図6】この発明の第4の実施形態を説明するための図4に対応する図であって、生の複合積層体41を示す断面図である。
【符号の説明】
1,31 多層セラミック基板
2,32,38,41 生の複合積層体
3,4,5 セラミック層
6 層間拘束層
7 焼結後の基板用積層体
8 開口端
9 キャビティ
15 生の基板用積層体
16 補強層
17,18,19 基板用セラミックグリーン層
42 剥離容易層
43 高強度層
Claims (10)
- 基板用セラミック材料粉末を用意する工程と、
前記基板用セラミック材料粉末の焼結温度では焼結しにくい収縮抑制用無機材料粉末を用意する工程と、
前記基板用セラミック材料粉末を含む複数の積層された基板用セラミックグリーン層および前記収縮抑制用無機材料粉末を含みかつ前記基板用セラミックグリーン層間の界面に沿って位置される層間拘束層をもって構成される生の基板用積層体を作製する工程と、
生の前記基板用積層体を、前記基板用セラミック材料粉末が焼結する温度下で焼成し、それによって、前記基板用セラミックグリーン層を焼結させるとともに、前記基板用セラミックグリーン層に含まれる材料の浸透によって前記層間拘束層を緻密化しかつ固化する、焼成工程と
を備え、さらに、
前記焼成工程によって前記基板用積層体に固着した状態とならずかつ生の前記基板用積層体より機械的強度の高い補強層を生の前記基板用積層体の一方主面上に配置する工程を備え、
前記焼成工程は、前記補強層を生の前記基板用積層体の一方主面上に配置した状態で実施され、さらに、
前記焼成工程の後、前記補強層を除去する工程を備える、多層セラミック基板の製造方法。 - 前記補強層は、前記焼成工程における焼成温度では焼結しにくい無機材料粉末を含む、請求項1に記載の多層セラミック基板の製造方法。
- 前記補強層は、前記焼成工程によって前記基板用積層体に固着しないようにするための剥離容易性を担う剥離容易層と機械的強度を高くするための高強度性を担う高強度層とを備える複数層からなる構造を有し、前記剥離容易層が生の前記基板用積層体に接するように配置される、請求項1に記載の多層セラミック基板の製造方法。
- 前記剥離容易層は、前記焼成工程における焼成温度では焼結しにくい無機材料粉末を含む、請求項3に記載の多層セラミック基板の製造方法。
- 前記高強度層は、前記基板用セラミック材料粉末を含む、請求項3または4に記載の多層セラミック基板の製造方法。
- 前記高強度層は、焼結させたセラミック板から構成され、かつ、前記セラミック板は、前記焼成工程での焼成温度では、さらなる焼結が進まないものである、請求項3または4に記載の多層セラミック基板の製造方法。
- 前記高強度層は、金属からなる板から構成される、請求項3または4に記載の多層セラミック基板の製造方法。
- 前記補強層は、生の前記基板用積層体における、当該多層セラミック基板をマザーボード上に実装する際にマザーボードに対向する主面とは逆側の主面上に配置される、請求項1ないし7のいずれかに記載の多層セラミック基板の製造方法。
- 生の前記基板用積層体は、前記補強層が配置される主面に導体膜を形成していない、請求項1ないし8のいずれかに記載の多層セラミック基板の製造方法。
- 生の前記基板用積層体は、その一方主面上に開口端を位置させたキャビティを有し、前記補強層は、生の前記基板用積層体の、前記キャビティの開口端が位置する主面とは逆の主面上に配置される、請求項1ないし9のいずれかに記載の多層セラミック基板の製造方法。
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