JP2005277072A - 電子部品の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 デラミネーションがなく、かつ高い寸法精度を有する電子部品の製造方法を提供すること。
【解決手段】 第1のセラミックグリーンシート2の作製工程と、第2のセラミックグリーンシート3の作製工程と、第1および第2のセラミックグリーンシート2,3を積層し加熱することによってセラミックグリーンシート4を作製する工程と、セラミックグリーンシート4上に導体層5を形成する工程と、セラミックグリーンシート4を複数枚積層し加熱することによりセラミックグリーンシート積層体6を作製する工程と、その積層体6の焼成工程とを具備し、第1のセラミックグリーンシート2は、セラミックグリーンシート4を作製する際およびセラミックグリーンシート積層体6を作製する際の加熱時に溶融状態となる溶融成分を含有し、セラミックグリーンシート4を作製する工程の加熱は、溶融成分の融点より0乃至70℃高い温度で行なう。
【選択図】 図1
【解決手段】 第1のセラミックグリーンシート2の作製工程と、第2のセラミックグリーンシート3の作製工程と、第1および第2のセラミックグリーンシート2,3を積層し加熱することによってセラミックグリーンシート4を作製する工程と、セラミックグリーンシート4上に導体層5を形成する工程と、セラミックグリーンシート4を複数枚積層し加熱することによりセラミックグリーンシート積層体6を作製する工程と、その積層体6の焼成工程とを具備し、第1のセラミックグリーンシート2は、セラミックグリーンシート4を作製する際およびセラミックグリーンシート積層体6を作製する際の加熱時に溶融状態となる溶融成分を含有し、セラミックグリーンシート4を作製する工程の加熱は、溶融成分の融点より0乃至70℃高い温度で行なう。
【選択図】 図1
Description
本発明は、積層コンデンサや積層セラミック配線基板等のような電子部品の製造方法に関するものである。
近年、電子機器の小型化に伴い、積層コンデンサや積層セラミック配線基板のような電子部品において、小型化および高性能化が望まれている。例えば、積層コンデンサにおいては小型化および高容量化のためにより薄い誘電体層および導体層を多層化したものが求められている。また、積層セラミック配線基板においては、小型化および配線導体の高密度化のためにより薄い絶縁層および配線導体層を多層に形成し、配線導体の幅および間隔もより微細なものが求められている。
このような電子部品は、セラミック粉末に有機バインダー、可塑剤、溶剤等を加えてスラリーとし、ドクターブレード等によりセラミックグリーンシート(以下、グリーンシートともいう)を成形した後、金属粉末を含有する導体ペーストを印刷するなどして前記グリーンシート上に導体層を形成し、ついで複数枚の導体層が形成されたグリーンシートを積層して加圧することにより圧着して積層体を得て、この積層体を焼成することで得られる。
電子部品に対する要求に対応して導体層が形成されたグリーンシートを多数積層すると、導体層が形成された領域が重なる部分とそうでない部分ではその厚み差が大きくなる。このため、積層されたグリーンシートを厚み方向に加圧した場合、導体層が形成された領域が重なる部分においては加圧力が十分に加わるものの、そうでない部分では加圧力が十分に加わりにくくなるので、不十分な圧着となってしまいやすい。その結果、そのような積層体を焼成すると、圧着が不十分な部分でデラミネーション(層間剥離)が発生するという問題があった。
このようなデラミネーションが電子部品の内部に存在すると、容量値の変化や絶縁破壊が起りやすくなるので電気的な特性が確保できないという問題があった。
この問題に対して、特許文献1では、加圧された際の流動性が高い高流動性部分を有する積層体を用いることが提案されている。積層体を厚み方向に加圧した際に、内部電極が積層されている領域に存在する高流動性部分が残りの部分に移動して残りの部分の厚みが増大しようとすることにより、加圧力が全体に均一に加わることとなるので、デラネーションが生じ難くなるものである。
また、グリーンシート上に形成された導体層の上に別のグリーンシートを積層する場合、この導体層の断面形状にグリーンシートが追従し難いために、導体層の周辺に空隙が発生し、この空隙を起因とするデラミネーションが発生しやすいという問題があった。特に導体層の間隔が微細な場合、導体層間に空隙が発生しやすかった。
この問題に対して、特許文献2では、グリーンシート上に導体層を形成した後、導体層の形成されている部分の周囲の領域にセラミックペーストを印刷することが提案されている。このような方法を用いれば、導体層の形成されている部分の周囲の領域にセラミックペーストを印刷することで導体層とグリーンシートとの段差をなくすことができる。このため、導体層の周辺や配線導体層の配線間に空隙が発生することを抑え、空隙に起因するデラミネーションの発生も抑えることが可能となる。また、導体層が形成されたグリーンシートを複数枚積層しても厚み差が発生しないので、ムラなく加圧して圧着することが可能となり、圧着が不十分な部分が発生することを抑え、デラミネーションの発生を抑えることが可能となる。
特許第3344100号公報
特開平5−217448号公報
しかしながら、従来の高流動性部分を有する積層体を用いる方法においては、高流動性部分を移動させてデラミネーションが発生しないような圧着を行なうためには、例えば厚み方向に180MPaという高い圧力を加える必要がある。このような高い圧力を導体層が形成されたグリーンシートに加えると、グリーンシートや導体パターンの形状が変形してしまうこととなる。その結果、基板の所望の寸法精度が得られないために基板上への部品実装が困難となったり、設計通りの導体パターンの形状が得られないために、特に高周波用配線基板等ではインピーダンス整合等の電気的特性が得られなくなるという問題があった。さらに、配線導体層の配線の間隔が微細な場合に配線間に発生する空隙の問題は解決されないままであった。
また、この高流動性部分は樹脂バインダーの含有量や可塑剤の含有量が高い組成であるので、このような組成のグリーンシートは、常温で粘着性の高いものであるためハンドリングが容易でなく、またそのために積層時に空気を巻き込みやすいのでデラミネーションが発生してしまう問題点があった。
また、導体層の形成されている部分の周囲の領域にセラミックペーストを印刷する方法においては、導体層が形成されたグリーンシート上にさらにセラミックペーストを印刷するという工程が加わるばかりでなく、配線導体層の配線間隔が微細な場合は配線導体層の配線間にセラミックペーストを印刷することが困難であった。このため、配線導体層の上にもセラミックペーストが印刷されてしまい、配線導体層上に印刷されたセラミックペーストにより、積層されて上下に配置される配線導体層同士の間を接続するための貫通導体が配線導体層と接続されなくなるという問題があった。
さらには、キャビティを有するような電子部品を製造する場合、キャビティとなる貫通穴を形成したグリーンシートとキャビティの底部となる貫通穴が形成されていないグリーンシートとを積層して圧着すると、グリーンシート積層体のキャビティ底部が反るという問題があった。これは、圧着するための加圧によりキャビティの周囲だけに圧力が加わり、キャビティ周囲のグリーンシートが加圧により伸びるのに対して、キャビティ底部には圧力が加わらないのでキャビティ底部のグリーンシートは周囲から押されることによる。これは、電子部品がより小型でキャビティ底部の厚みがより薄い場合により発生しやすいものであった。キャビティ底部が反ると、水晶振動子やICチップ等の電子素子を搭載することが困難となる。搭載できても搭載された部品が傾くので、CCDやC−MOS等の光半導体素子を搭載した場合は受光精度が悪くなるという問題があった。
本発明は、上記従来の問題点に鑑みて完成されたものであり、その目的は、デラミネーションがなく、かつ高い寸法精度を有する電子部品の製造方法を提供することである。
本発明の電子部品の製造方法は、第1のセラミックグリーンシートを作製する工程と、第2のセラミックグリーンシートを作製する工程と、前記第1のセラミックグリーンシートと前記第2のセラミックグリーンシートとを積層して加熱することによってセラミックグリーンシートを作製する工程と、前記セラミックグリーンシート上に導体層を形成する工程と、前記導体層が形成された前記セラミックグリーンシートを複数枚積層して加熱することによってセラミックグリーンシート積層体を作製する工程と、前記セラミックグリーンシート積層体を焼成する工程とを具備しており、前記第1のセラミックグリーンシートは、前記セラミックグリーンシートを作製する際および前記セラミックグリーンシート積層体を作製する際の加熱時に溶融状態となる溶融成分を含有しており、前記セラミックグリーンシートを作製する工程の加熱は、前記溶融成分の融点より0乃至70℃高い温度で行なうことを特徴とする。
また、本発明の電子部品の製造方法は、好ましくは前記溶融成分の融点が35℃乃至100℃であることを特徴とする。
本発明の電子部品の製造方法によれば、第1のセラミックグリーンシートは加熱時に溶融する溶融成分を含有することから、まず別々に作製した第1のセラミックグリーンシートと第2のセラミックグリーンシートとを積層して加熱することによってセラミックグリーンシートを作製する際に、第1のセラミックグリーンシートが軟化するので、第1のセラミックグリーンシートはその上また下に位置する第2のセラミックグリーンシートの形状に追従して変形することとなる。その結果、第1のセラミックグリーンシートと第2のセラミックグリーンシートとの間に空隙が発生することなくセラミックグリーンシート同士が密着することができる。また、このときの加熱を溶融成分の融点より0乃至70℃高い温度で行なうことにより、第1のセラミックグリーンシート層から第2のセラミックグリーンシート層へ適当な量の溶融成分が拡散することとなり、第1のセラミックグリーンシート層と第2のセラミックグリーンシート層の界面の接合強度が保たれ、かつセラミックグリーンシート積層体を作製する際の加熱時に、第1のセラミックグリーンシート層が加熱のみで軟化して導体パターンの形状に追従して変形し、接着性を有するものとなるのに十分な量の溶融成分を第1のセラミックグリーンシート層内に保持できる。
次に、導体層が形成されたセラミックグリーンシートを積層して加熱した際に第1のセラミックグリーンシートが軟化するので、第1のセラミックグリーンシートはその上また下に位置する第2のセラミックグリーンシートおよびその上に形成された導体層のパターンの形状に追従して変形することとなる。その結果、導体層周囲や導体層の配線間に空隙が発生することなくセラミックグリーンシート同士が密着することとなり、セラミックグリーンシート積層体を焼成して得られる電子部品はデラミネーションの発生のないものとなる。
また、第1のセラミックグリーンシートは、加熱時に溶融する溶融成分を含有することから、加熱のみで第1のセラミックグリーンシートが軟化して接着性を有するものとなるので、大きな加圧力によりセラミックグリーンシートを圧着させる必要がない。さらに加熱しない常温においては第1のセラミックグリーンシートが軟化せず接着性を持たない為、加熱しない加工においてハンドリングが容易である利点をもつ。
そして、導体層のパターンの形成される第2のセラミックグリーンシートは加熱時に溶融する溶融成分を含有しないことから、第2のセラミックグリーンシートは加熱時に変形することはなく、積層したセラミックグリーンシートが位置ずれしないように、また、軟化した第1のセラミックグリーンシートを第2のセラミックグリーンシートおよびその上に形成された導体層のパターンの形状に追従して変形するのを補助するために押さえる程度では変形しない。よって、セラミックグリーンシートおよびそれに形成された導体層のパターン形状が変形することがなく、得られるセラミックグリーンシート積層体およびそれを焼成して得られる電子部品は高い寸法精度を有するものとなる。
またキャビティを有する電子部品を製造する場合、大きな加圧力によりセラミックグリーンシートを圧着させる必要がないので、キャビティ周囲部とキャビティ底部との加圧によるグリーンシートの伸びの違いによるキャビティ底部の反りの発生を抑えることが可能となり、キャビティ底部に電子素子を精度よく確実に搭載することが可能な電子部品を得ることができる。
また、加熱時に溶融する溶融成分の融点が35℃乃至100℃であるものを用いた場合は、常温では第1のセラミックグリーンシートが軟化して変形することはないので、積層工程までのハンドリングが容易となり、加熱時にセラミックグリーンシート中の有機バインダー(バインダー)や可塑剤等の有機成分が分解することがないので、分解ガスによりデラミネーションが発生してしまうことがなく、より好ましいものとなる。
このように、本発明の製造方法によれば、セラミックグリーンシート層間に空隙を発生させることがなく、セラミックグリーンシートや導体層の変形を抑えたセラミックグリーンシート積層体を得ることが可能となり、本発明の製造方法により作製された電子部品はデラミネーションがなく、高い寸法精度を有する電子部品となる。
本発明の電子部品の製造方法について以下に詳細に説明する。
図1は本発明の電子部品の製造方法の実施の形態の一例を示す工程毎の断面図であり、1は支持体、2は第1のセラミックグリーンシート、3は第2のセラミックグリーンシート、4はセラミックグリーンシート、5は導体層、6はセラミックグリーンシート積層体である。
まず、図1(a)に示すように、第1のセラミックグリーンシート2および第2のセラミックグリーンシート3をそれぞれ作製する。第1のセラミックグリーンシート2は、セラミック粉末,有機バインダー,溶融成分に溶剤(有機溶剤,水等)、必要に応じて硬度や強度を調整するための所定量の可塑剤,分散剤を加えてスラリーを得、これをPETフィルムや紙等の支持体1上にドクターブレード法,リップコーター法,ダイコーター法等により成形することによって得られる。第1のセラミックグリーンシート2の厚さは、導体層5とセラミックグリーンシート4との段差を埋めるために、導体層5の厚みより厚くなるように作製される。第2のセラミックグリーンシート3は、第1のセラミックグリーンシート2に用いるスラリーに対して、溶融成分を含まないスラリーを用いて同様に作製される。
セラミック粉末としては、例えばセラミック配線基板であれば、Al2O3,AlN,ガラスセラミック粉末(ガラス粉末とフィラー粉末との混合物)等が挙げられ、積層コンデンサであればBaTiO3系,PbTiO3系等の複合ペロブスカイト系セラミック粉末が挙げられ、電子部品に要求される特性に合わせて適宜選択される。
ガラスセラミック粉末のガラス成分としては、例えばSiO2−B2O3系、SiO2−B2O3−Al2O3系,SiO2−B2O3−Al2O3−MO系(ただし、MはCa,Sr,Mg,BaまたはZnを示す),SiO2−Al2O3−M1O−M2O系(ただし、M1およびM2は同じまたは異なっていて、Ca,Sr,Mg,BaまたはZnを示す),SiO2−B2O3−Al2O3−M1O−M2O系(ただし、M1およびM2は上記と同じである),SiO2−B2O3−M3 2O系(ただし、M3はLi,NaまたはKを示す,SiO2−B2O3−Al2O3−M3 2O系(ただし、M3は上記と同じである),Pb系ガラス,Bi系ガラス等が挙げられる。
また、ガラスセラミック粉末のフィラー粉末としては、例えばAl2O3,SiO2,ZrO2とアルカリ土類金属酸化物との複合酸化物,TiO2とアルカリ土類金属酸化物との複合酸化物,Al2O3およびSiO2から選ばれる少なくとも1種を含む複合酸化物(例えばスピネル,ムライト,コージェライト)等のセラミック粉末が挙げられる。
セラミックグリーンシート4に配合される有機バインダーとしては、従来よりセラミックグリーンシートに使用されているものが使用可能であり、例えばアクリル系(アクリル酸,メタクリル酸またはそれらのエステルの単独重合体または共重合体,具体的にはアクリル酸エステル共重合体,メタクリル酸エステル共重合体,アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体等),ポリビニルブチラ−ル系,ポリビニルアルコール系,アクリル−スチレン系,ポリプロピレンカーボネート系,セルロース系等の単独重合体または共重合体が挙げられる。焼成工程での分解、揮発性を考慮すると、アクリル系バインダーがより好ましい。
第1のセラミックグリーンシート2に含有される溶融成分は、セラミックグリーンシート積層体6を作製する際の加熱時に溶融状態となるものであり、炭化水素,脂肪酸,エステル,脂肪アルコール,多価アルコール等が挙げられる。スラリーを調製する際の溶媒への溶解性を考慮すると、分子量が小さくかつ極性を有する炭化水素,エステル,脂肪アルコール,多価アルコールが好ましい。さらに上述したアクリルバインダーとの相溶性を考慮すると、エステル,脂肪アルコール,多価アルコールがより好ましい。
溶融成分は上記のものの中でも、その融点が35乃至100℃であるものが好ましい。これは、この範囲の融点のものを用いると、常温では第1のセラミックグリーンシート2が軟化して変形することはないので、積層工程までのハンドリングが容易となり、セラミックグリーンシート積層体6を作製する工程における加熱時にセラミックグリーンシート4中のバインダーや可塑剤等の有機成分が分解することがないので、分解ガスによりデラミネーションが発生することがないからである。融点が35乃至100℃である溶融成分としては具体的には、ヘキサデカノール,ポリエチレングリコール,ポリグリセロール,ステアリルアミド,オレイルアミド,エチレングリコールモノステアレート,パラフィン,ステアリン酸,シリコーン等が挙げられる。
第1のセラミックグリーンシート2に含有される溶融成分の含有量は、使用するバインダー成分およびその量や使用する溶融成分により異なるが、溶融成分が溶融した状態で第1のセラミックグリーンシート2が軟化し、その上また下に(図1では下)に位置するセラミックグリーンシート4の第2のセラミックグリーンシート3およびその上に形成された導体パターンの形状に追従して変形するような量であればよい。
次に、図1(b)に示すように、第1のセラミックグリーンシート2と第2のセラミックグリーンシート3とを積層して加熱することによってセラミックグリーンシート4を作製する。このときの加熱は、溶融成分の融点より0乃至70℃高い温度で行なう。これにより、第1のセラミックグリーンシート2から第2のセラミックグリーンシート3へ適当な量の溶融成分が拡散することとなり、第1のセラミックグリーンシート2と第2のセラミックグリーンシート3の界面の接合強度が保たれ、かつセラミックグリーンシート積層体6を作製する際の加熱時に、第1のセラミックグリーンシート2が加熱のみで軟化して導体層5のパターンの形状に追従して変形し、接着性を有するものとなるのに十分な量の溶融成分を第1のセラミックグリーンシート2内に保持できるからである。
溶融成分の融点より低い温度で積層すると、第1のセラミックグリーンシート2が軟化しないので、第1のセラミックグリーンシート2はその上また下に位置する第2のセラミックグリーンシート3の形状に追従して変形することができず、第1のセラミックグリーンシート2と第2のセラミックグリーンシート3との間に空隙が発生する場合があり、また第1のセラミックグリーンシート2から第2のセラミックグリーンシート3へ溶融成分が十分に拡散しないので、第1のセラミックグリーンシート2と第2のセラミックグリーンシート3のと界面の接合強度が保たれず、セラミックグリーンシート4に貫通導体を形成するための貫通孔や、キャビティを形成するための貫通穴を形成する等の加工をする際に界面に剥がれが発生する場合がある。
また溶融成分の融点より70℃を超えて高い温度で積層すると、加熱時に第1のセラミックグリーンシート2から第2のセラミックグリーンシート3への溶融成分の拡散する量が大きすぎるため、第1のセラミックグリーンシート2内に十分な量の溶融成分を保持できず、積層した際に第2のセラミックグリーンシート3の上にある導体層5のパターンに追従して変形できず、セラミック層間にデラミネーションが発生するためである。好ましくは、加熱は溶融成分の融点より0乃至70℃高い温度で行ない、加熱温度を120℃以下とすると、加熱時にセラミックグリーンシート4中のバインダーや可塑剤等の有機成分が分解することがないので、分解ガスによるデラミネーションが発生することがない。このためには、上述したように、溶融成分の融点が35乃至100℃であるものを用いればよい。
さらに、第1のセラミックグリーンシート2と第2のセラミックグリーンシート3とを積層し加熱してセラミックグリーンシート4を作製する際の加熱は、好ましくは、溶融成分の融点より10乃至60℃高い温度で行なうと、第1のセラミックグリーンシート2及び第2のセラミックグリーンシート3のシート厚みまたは積層時間等の積層条件が変動した際にも第1のセラミックグリーンシート2から第2のセラミックグリーンシート3へ適当な量の溶融成分が拡散し、かつ積層後にセラミックグリーンシート4をしばらく加熱したまま放置しておいても、第1のセラミックグリーンシート2内に十分な量の溶融成分を保持できる。
また、図1(b)のように、厚みの薄い第1のセラミックグリーンシート2を支持体1上に保持した状態で、第2のセラミックグリーンシート3を積層する方がハンドリングの容易さの点で好ましい。このとき、積層したセラミックグリーンシート4が位置ずれしないように、軟化した第1のセラミックグリーンシート2を第2のセラミックグリーンシート3の形状に追従して変形するのを補助するために押さえる程度の加圧(0.1〜1MPa)を行なうと、より精度よく確実な圧着が可能となる。
次に、図1(c)に示すように、セラミックグリーンシート4上に導体層5を形成する。セラミックグリーンシート4上に導体層5を形成する方法としては、例えば導体材料の粉末をペースト化した導体ペーストをスクリーン印刷法やグラビア印刷法等により印刷したり、めっき法や蒸着法等により所定パターン形状の金属膜を形成するようなセラミックグリーンシート4上に直接形成する方法、あるいは印刷により所定パターン形状に形成した導体厚膜や所定パターン形状に加工した金属箔、めっき法や蒸着法等により形成した所定パターン形状の金属膜を、セラミックグリーンシート4上に転写する方法がある。導体材料としては、例えばW,Mo,Mn,Au,Ag,Cu,Pd(パラジウム),Pt(白金)等の1種または2種以上が挙げられ、2種以上の場合は混合、合金、層別のコーティング等のいずれの形態であってもよい。
導体層5はセラミックグリーンシート4の第2のセラミックグリーンシート3上に形成されるのが好ましい。これは、第2のセラミックグリーンシート3は加熱時に溶融する溶融成分を含有しないことから、第2のセラミックグリーンシート3は加熱時に変形することはないので、その上に導体層5を形成することにより導体層5を変形させないようにするためである。
なお、導体層5を形成する前に必要に応じて上下の層間の導体層5同士を接続するためのビアホール導体やスルーホール導体等の貫通導体を形成してもよい。この貫通導体は、パンチング加工やレーザ加工等によりセラミックグリーンシート4に形成した貫通孔に、導体材料の粉末をペースト化した導体ペーストを印刷やプレス充填により埋め込む等の手段によって形成される。
キャビティを有する電子部品を製造する場合、次の積層体を作製する工程より前に、キャビティ形状の貫通穴を金型による打ち抜き等によりセラミックグリーンシート4の一部に形成しておく。貫通穴の形成は、キャビティの内壁面への導体層5の形成の有無や形成方法に応じて、導体層5を形成する前でもよいし、形成した後でもよい。
次に、図1(d)に示すように、位置合わせして積み重ねたセラミックグリーンシート4を、溶融成分が溶融状態となり第1のセラミックグリーンシート2が軟化して変形する程度の温度、つまり溶融成分の融点程度の温度で加熱することで、セラミックグリーンシート積層体6を作製する。このとき、積層したセラミックグリーンシート4が位置ずれしないように、また、軟化した第1のセラミックグリーンシート2を第2のセラミックグリーンシート3およびその上に形成された導体層5のパターン形状に追従して変形するのを補助するために押さえる程度の加圧(0.1〜1MPa)を行なうと、より精度よく確実な圧着が可能となる。セラミックグリーンシート4を位置合わせして積み重ねた後、真空吸引することによりセラミックグリーンシート4間の空気を抜くようにすると、空気の巻き込みを抑えることができる。
セラミックグリーンシート積層体6を作製する工程において、第1のセラミックグリーンシート2は加熱時に溶融する溶融成分を含有することから、導体層5が形成されたセラミックグリーンシート4を積層して加熱した際に第1のセラミックグリーンシート2が軟化するので、第1のセラミックグリーンシート2はその上また下に位置するセラミックグリーンシート4の第2のセラミックグリーンシート3およびその上に形成された導体層5の形状に追従して変形することとなる。これにより、導体層5の周囲や導体層5の配線間に空隙が発生することなくセラミックグリーンシート4同士が密着し、セラミックグリーンシート積層体6を焼成して得られる電子部品はデラミネーションの発生のないものとなる。
また、第1のセラミックグリーンシート2は、加熱時に溶融する溶融成分を含有することから、加熱のみで第1のセラミックグリーンシート2が軟化して接着性を有するものとなるので、大きな加圧力によりセラミックグリーンシート4を圧着させる必要がない。そして、例えば導体層5の形成される第2のセラミックグリーンシート3は加熱時に溶融する溶融成分を含有しないことから、第2のセラミックグリーンシート3は加熱時に変形することはなく、積層したセラミックグリーンシート4が位置ずれしないように、また、軟化した第1のセラミックグリーンシート2を第2のセラミックグリーンシート3およびその上に形成された導体層5のパターンの形状に追従して変形するのを補助するために押さえる程度では変形しない。よって、セラミックグリーンシート4およびそれに形成された導体層5の形状が変形することがなく、さらに加圧によるセラミックグリーンシート4への歪がなく得られるセラミックグリーンシート積層体6およびそれを焼成して得られる電子部品は高い寸法精度を有するものとなる。
なお、セラミックグリーンシート積層体6を作製する際の加熱温度を120℃以下とすると、セラミックグリーンシート4中のバインダーや可塑剤等の有機成分が分解し、分解ガスが発生することがないので、よりデラミネーションのない積層体を作製することが可能となる。
例えば、加熱時に溶融する溶融成分を含有しない第1のセラミックグリーンシート2を用いた場合、セラミックグリーンシート積層体6および電子部品の寸法精度は±0.5%程度であったが、本発明の溶融成分を含有する第1のセラミックグリーンシート2を用いた場合、セラミックグリーンシート積層体6および電子部品の寸法精度は±0.3%程度となり、大幅に向上することが実験により判明した。
図1(d)の最下部に位置するセラミックグリーンシートとしては、第2のセラミックグリーンシート3のみで構成されるセラミックグリーンシート4’を用いればよい。積層コンデンサのように表面に導体層5が露出しないような電子部品の場合は、図1(d)の最上部に位置するセラミックグリーンシート4には導体層5が形成されていないセラミックグリーンシート4を用いればよく、積層セラミック配線基板のような両面に導体層5が露出するような電子部品の場合は、最下部のセラミックグリーンシート4’の両面に導体層5を形成したものを用いればよい。
そして、最後に、セラミックグリーンシート積層体6を焼成することにより本発明の電子部品が作製される。焼成工程は有機成分の除去とセラミック粉末の焼結とから成る。有機成分の除去は100〜800℃の温度範囲でセラミックグリーンシート積層体6を加熱することによって行い、有機成分を分解、揮発させる。焼結温度はセラミック組成により異なり、約800〜1600℃の範囲内で行なう。焼成雰囲気はセラミック粉末や導体材料により異なり、大気中、還元雰囲気中、非酸化性雰囲気中等で行なわれ、有機成分の除去を効果的に行なうために水蒸気等を含ませてもよい。
焼成後に得られた電子部品は、その表面に露出した導体層5の表面には、導体層5の腐食防止のために、または半田や金属ワイヤ等の外部基板や電子部品との接続手段の良好な接続のために、NiやAuのめっきを施すとよい。
セラミック材料としてガラスセラミックスのような低温焼結材料を用いる場合、セラミックグリーンシート積層体6の上下面にさらに拘束グリーンシートを積層して焼成し、焼成後に拘束シートを除去するようにすれば、より高寸法精度のセラミック基板を得ることが可能となる。拘束グリーンシートは、Al2O3等の難焼結性無機材料を主成分とするグリーンシートであり、焼成時に収縮しないものである。この拘束グリーンシートが積層された積層体は、収縮しない拘束グリーンシートにより積層平面方向(xy方向:平面方向)の収縮が抑制され、積層方向(z方向)にのみ収縮するので、焼成収縮に伴う寸法ばらつきが抑制される。このときの拘束グリーンシートも本発明のセラミックグリーンシート4と同様の第1のセラミックグリーンシート2と第2のセラミックグリーンシート3とを有する構成にすると、拘束グリーンシートを積層して圧着する際にも大きな加圧力を必要とせず、得られる電子部品はより高寸法精度のものとなるのでよい。
また、拘束グリーンシートには難焼結性無機成分に加えて、焼成温度以下の軟化点を有するガラス成分、例えばセラミックグリーンシート4中のガラスと同じガラスを含有させるとよい。焼成中にこのガラスが軟化してセラミックグリーンシート4と結合することによりセラミックグリーンシート4と拘束グリーンシートとの結合が強固なものとなり、より確実な拘束力が得られる。このときのガラス量は難焼結性無機成分とガラス成分を合わせた無機成分に対して0.5〜15質量%とすると拘束力が向上し、かつ拘束グリーンシートの焼成収縮が0.5%以下に抑えられる。
焼成後、拘束シートを除去する。除去方法としては、例えば研磨、ウォータージェット、ケミカルブラスト、サンドブラスト、ウェットブラスト(砥粒と水とを空気圧により噴射させる方法)等が挙げられる。
以上のような方法で作製された電子部品は、その内部にデラミネーションを有さず寸法精度の高いものであるので、電子部品として要求される優れた電気特性や気密性の高いものとなる。
本発明の実施例について以下に説明する。
まず、第1のセラミックグリーンシート用に、平均粒径1μmのアルミナを90質量部、焼結助剤としてシリカ、マグネシア、カルシアと、着色顔料として遷移金属酸化物の酸化クロムとを合わせて10質量部の割合で調合したセラミック粉末100質量部に対して、有機バインダーとしてメタクリル酸イソブチル樹脂を固形分で10質量部、溶融成分を各々10質量部添加し、トルエン及び酢酸エチルを溶媒としてボールミルにより40時間混合し、第1のスラリーを調製した。溶融成分は、融点が40℃のテトラデカノール、50℃のヘキサデカノール、60℃のオクタデカノールを各々主成分とするものを用いて3種類の第1のスラリーを調製した。
また、第2のセラミックグリーンシート用に、第1のスラリーと同様のセラミック粉末100質量部に対して有機バインダーとしてメタクリル酸メチル樹脂を固形分で10質量部、可塑剤としてフタル酸ジブチルを1質量部添加し、トルエン及び酢酸エチルを溶媒としてボールミルにより40時間混合し、第2のスラリーを調製した。
次に、これらのスラリーから、ダイコーターシート成形機を用いて、成形速度2m/分、成形シート幅が250mmの条件で、厚み50μmの3種類の第1のセラミックグリーンシートおよび第2のセラミックグリーンシートを作製した。
第1のセラミックグリーンシートの上に第2のセラミックグリーンシートを重ねあわせて、表1に示すような加熱温度で加熱し、0.5MPaの圧力で加圧することによりセラミックグリーンシートを作製した。得られたセラミックグリーンシートは、第1のセラミックグリーンシートと第2のセラミックグリーンシートにテープを貼り付け、このテープを互いに反対の方向に引っ張ることにより、第1のセラミックグリーンシートと第2のセラミックグリーンシートとの界面の接合強度を評価した。その界面で剥離せず、第1のセラミックグリーンシート内または第2のセラミックグリーンシート内で破断した場合を良品とした。
また、セラミックグリーンシートの第2のセラミックグリーンシート上に、タングステン粉末を主成分とする導体ペーストを用いスクリーン印刷法により10〜20μmの厚みで所定パターンに印刷して導体層を形成し、導体層を形成したセラミックグリーンシートをそれぞれ4層重ねあわせて厚み方向に0.5MPaの圧力および80℃の温度で加熱圧着してセラミックグリーンシート積層体を作製した。得られたセラミックグリーンシート積層体は、水蒸気を含んだ窒素雰囲気中に約1000℃の温度で1時間保持することにより有機成分を除去した後、還元雰囲気中にて約1600℃の温度で1時間焼成することで評価用のセラミック焼結体を作製した。
この焼結体の断面(クロスセクション)観察を行い、セラミック層間のデラミネーションの発生の有無を評価した。溶融成分の融点に対するセラミックグリーンシートを作製する際の加熱温度による接合強度およびデラミネーションの評価結果を表1に示す。
表1の接合強度の欄の「○」は、第1のセラミックグリーンシートと第2のセラミックグリーンシートとの界面で剥離せず、第1のセラミックグリーンシート内または第2のセラミックグリーンシート内で破断したことを示す。また「×」は、第1のセラミックグリーンシートと第2のセラミックグリーンシートとの界面で容易に剥がれたことを示す。また、デラミネーションの欄の「○」は、焼結体のセラミック層間や配線導体周辺にデラミネーションが見られず優れていたことを示す。「×」は、セラミック層間や配線導体周辺にデラミネーションの発生が見られたことを示す。
表1より、溶融成分の融点より低い加熱温度でセラミックグリーンシートを作製した場合、第1のセラミックグリーンシートと第2のセラミックグリーンシートとの界面で容易に剥離し、セラミックグリーンシート作製後のハンドリングで剥がれやすいものあった。
また、各溶融成分の融点より70℃を超えて高い加熱温度でセラミックグリーンシートを作製した場合、焼結体のセラミック層間や配線導体周辺にデラミネーションが発生した。
これに対して、溶融成分の融点より0乃至70℃高い温度で加熱して積層した場合、第1のセラミックグリーンシートと第2のセラミックグリーンシートとの接合強度は第1および第2のセラミックグリーンシートの強度以上と十分であり、かつセラミック層間にデラミネーションもなく優れたものであった。また、試料No.31はセラミックグリーンシート積層体の形成に問題は無くセラミック層間にデラミネーションは見られないものの、セラミック層の内部に問題とはならないようなごく微小なボイドが見られ、これはグリーンシート作製時の加熱により発生した分解ガスによるものと考えられる。
1・・・支持体
2・・・第1のセラミックグリーンシート
3・・・第2のセラミックグリーンシート
4・・・セラミックグリーンシート
5・・・導体層
6・・・セラミックグリーンシート積層体
2・・・第1のセラミックグリーンシート
3・・・第2のセラミックグリーンシート
4・・・セラミックグリーンシート
5・・・導体層
6・・・セラミックグリーンシート積層体
Claims (2)
- 第1のセラミックグリーンシートを作製する工程と、第2のセラミックグリーンシートを作製する工程と、前記第1のセラミックグリーンシートと前記第2のセラミックグリーンシートとを積層して加熱することによってセラミックグリーンシートを作製する工程と、前記セラミックグリーンシート上に導体層を形成する工程と、前記導体層が形成された前記セラミックグリーンシートを複数枚積層して加熱することによってセラミックグリーンシート積層体を作製する工程と、前記セラミックグリーンシート積層体を焼成する工程とを具備しており、前記第1のセラミックグリーンシートは、前記セラミックグリーンシートを作製する際および前記セラミックグリーンシート積層体を作製する際の加熱時に溶融状態となる溶融成分を含有しており、前記セラミックグリーンシートを作製する工程の加熱は、前記溶融成分の融点より0乃至70℃高い温度で行なうことを特徴とする電子部品の製造方法。
- 前記溶融成分の融点が35乃至100℃であることを特徴とする請求項1記載の電子部品の製造方法。
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JP2004087689A JP2005277072A (ja) | 2004-03-24 | 2004-03-24 | 電子部品の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
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