JP2004319527A - セラミック配線基板およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】誘電体層の厚みばらつきを有効に抑えることにより、高容量かつ低インダクタンスで高精度なコンデンサを内蔵したセラミック配線基板およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】セラミックスから成る絶縁層2a〜2dを複数積層して成る絶縁基体2の内部に、金属粉末を焼結して成るメタライズ導体から成る、配線層3および前記絶縁層2a〜2dを挟んで対向するコンデンサ電極層4を有するセラミック配線基板1であって、前記絶縁層2a〜2dは、100質量部の無機粉末と、8質量部以上20質量部以下の、重量平均分子量が10万以上45万以下のポリオキサゾリンから成るバインダとから成るセラミックグリーンシートを焼成して成るものとした。
厚みばらつきを生じることなくセラミックグリーンシート(絶縁層)を薄くすることができ、高容量・高精度のコンデンサを内蔵したセラミック配線基板を得ることができる。
【選択図】 図1
【解決手段】セラミックスから成る絶縁層2a〜2dを複数積層して成る絶縁基体2の内部に、金属粉末を焼結して成るメタライズ導体から成る、配線層3および前記絶縁層2a〜2dを挟んで対向するコンデンサ電極層4を有するセラミック配線基板1であって、前記絶縁層2a〜2dは、100質量部の無機粉末と、8質量部以上20質量部以下の、重量平均分子量が10万以上45万以下のポリオキサゾリンから成るバインダとから成るセラミックグリーンシートを焼成して成るものとした。
厚みばらつきを生じることなくセラミックグリーンシート(絶縁層)を薄くすることができ、高容量・高精度のコンデンサを内蔵したセラミック配線基板を得ることができる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、セラミックスから成る絶縁基体の表面および/または内部に配線回路層と電極体層とを具備した、混成集積回路基板等に適したセラミック配線基板およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、携帯用端末等の電子機器の小型化や使用される周波数帯域の高周波化に伴い、電子機器に組み込まれる配線基板にも小型化・高周波化が要求されており、これまで配線基板の表面に実装されていたチップコンデンサを、配線基板内部に形成することで実装面積を削減し配線基板を小型化しつつ、低インダクタンスで実装し高周波特性を向上させることのできるコンデンサを内蔵したセラミック配線基板が提案されている。
【0003】
セラミック配線基板にコンデンサを内蔵する方法としては、例えば絶縁層の一部を誘電体層とし、その誘電体層を挟むように上下に電極層を形成してコンデンサを形成する方法がある。この誘電体層を他の絶縁層より比誘電率の高い絶縁層としたり、他の絶縁層より厚みの薄い絶縁層としたりすることによりコンデンサとして機能するような静電容量を得ている。この方法を用いると、構造的に低インダクタンスなコンデンサを内蔵することが可能となる。
【0004】
このようなコンデンサ内蔵セラミック配線基板は、導体ペーストを塗布してコンデンサ電極パターンが形成された誘電体層となるセラミックグリーンシートを、所定の導体パターンが形成された他の絶縁層となるセラミックグリーンシートで挟んで積層し、焼成することにより得られる。
【0005】
このような従来の絶縁層を得るために用いられるセラミックグリーンシートのバインダとして一般的なものは、100質量部のセラミック原料粉末等の無機粉末と、8質量部以上20質量部以下のアクリルまたはブチラール等のバインダとから成るものであった。
【0006】
すなわち、従来のセラミック配線基板は、
(a)100質量部のセラミック原料粉末等の無機粉末と、8質量部以上20質量部以下のアクリルまたはブチラール等のバインダとを混練してセラミックスラリーを得るとともに、このセラミックスラリーをベースフィルム上に膜状に塗布して複数のセラミックグリーンシートを準備する工程と、
(b)これらのセラミックグリーンシートの表面に金属粉末のメタライズペーストを印刷して配線パターンおよびコンデンサ電極パターンを形成する工程と、
(c)複数のセラミックグリ−ンシートを積層して、配線パターンおよび前記コンデンサ電極パターンが内部に配置されるとともにコンデンサ電極パターンがセラミックグリーンシートを挟んで対向する積層体を形成する工程と、
(d)この積層体を焼成して、セラミックスから成る絶縁層を複数積層して成る絶縁基体の内部に、金属粉末を焼結して成るメタライズ導体から成る、配線層および前記絶縁層を挟んで対向するコンデンサ電極層を形成する工程とを具備する製造方法により製造される。
【0007】
このセラミック配線基板では構造的に低インダクタンスであるコンデンサを内蔵することができるが、さらなる小型化要求に対応するためには、単位面積当りの容量を向上させなければならず、誘電体グリーンシートの厚みを薄くすることや、薄くした誘電体グリーンシートを複数枚積層してコンデンサを並列接続する等の工夫が必要となる。
【0008】
しかし、誘電体グリーンシートの厚みを薄くすると、セラミックグリーンシートの厚みがばらついてしまい、セラミックグリーンシートの厚みがばらついてしまうと、薄いセラミックグリーンシートを用いて誘電体層を形成するコンデンサ内蔵セラミック配線基板においては、薄いセラミックグリーンシートのわずかな厚みばらつきによってもコンデンサの静電容量が設計値に対して大きくばらつくという不具合が生じることとなり、その結果として、セラミック配線基板が高周波信号を通すことができなくなったり、セラミック配線基板に搭載された電子部品が正常に作動しなくなるというような問題点があった。
【0009】
この問題点に対して、ペロブスカイト型セラミックスからなる誘電体層と、ガラスセラミックスからなる絶縁体層と、この誘電体層とこの絶縁体層の間に介在し、Ag・Au・Pd・Pt・CuおよびNiのうち少なくとも1種類以上を主成分とする電極層とを有し、この誘電体層と、この電極層およびこの絶縁体層を同時焼成によって形成して成るコンデンサ付きセラミック基板において、この電極層のガラス成分含有量を2%以下としたり、前記電極層の厚みを20μm以上としたりすることが開示されている。
【0010】
【特許文献1】
特開平8−298365号公報
【0011】
【特許文献2】
特開昭57−32657号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、近年のコンデンサ内蔵セラミック配線基板に対してさらなる小型化の要求に対応するためには、内蔵したコンデンサの単位面積当りの静電容量を向上させなければならず、誘電体層となるセラミックグリーンシートの厚みをさらに薄くする等の工夫が必要となっている。
【0013】
セラミック配線基板を、チタン酸バリウム等のペロブスカイト型セラミックスからなる誘電体層と、ガラスセラミックスからなる絶縁体層と、この誘電体層とこの絶縁体層の間に介在し、Ag・Au・Pd・Pt・CuおよびNiのうち少なくとも1種類以上を主成分とする電極層とを有し、この誘電体層と、この電極層およびこの絶縁体層を同時焼成によって形成したとしても、セラミック絶縁層を薄くし、コンデンサの高容量化を図ることはできるものの、セラミック絶縁層となるセラミックグリーンシートの厚みばらつきを効果的に抑えることはできず、静電容量ばらつきが比較的大きいという課題が残る。
【0014】
薄いセラミックグリーンシートを用いて絶縁層(誘電体層)を形成するコンデンサ内蔵セラミック配線基板においては、薄いセラミックグリーンシートのわずかな厚みばらつきによってもコンデンサの静電容量が設計値に対して大きくばらつくという不具合が生じることとなり、その結果として、セラミック配線基板が高周波信号を通すことができなくなくなったり、セラミック配線基板に搭載された電子部品が正常に作動しなくなるというような問題を発生させてしまう。
【0015】
本発明は上記問題点に鑑み完成されたもので、その目的は、絶縁層(誘電体層)の厚みばらつきを有効に抑えることにより、高容量かつ低インダクタンスで高精度なコンデンサを内蔵したセラミック配線基板およびその製造方法を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上述の問題点を解決するために鋭意検討を重ねた結果、セラミックグリーンシート中にバインダとして用いられる有機成分をポリオキサゾリンとするとともに、その重量平均分子量を適切な範囲に調整することによって、薄いセラミックグリーンシートであってもその厚みばらつきを有効に抑制ができ、このセラミックグリーンシートをコンデンサ電極層間の絶縁層として用いることにより、高容量かつ低インダクタンスで高精度なコンデンサを内蔵したセラミック配線基板を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0017】
すなわち、本発明のセラミック配線基板は、セラミックスから成る絶縁層を複数積層して成る絶縁基体の内部に、金属粉末を焼結して成るメタライズ導体から成る、配線層および前記絶縁層を挟んで対向するコンデンサ電極層を有するセラミック配線基板であって、前記コンデンサ電極層間の前記絶縁層は、100質量部の無機粉末と、8質量部以上20質量部以下の、重量平均分子量が10万以上45万以下のポリオキサゾリンから成るバインダとから成るセラミックグリーンシートを焼成して成るものであることを特徴とするものである。
【0018】
また、本発明のセラミック配線基板は、上記構成において、ポリオキサゾリンから成るバインダの酸価が、0.05mgKOH/g以上50mgKOH/g以下であることを特徴とするものである。
【0019】
また、本発明のセラミック配線基板の製造方法は、(a)100質量部の無機粉末と、8質量部以上20質量部以下の、重量平均分子量が10万以上45万以下のポリオキサゾリンから成るバインダとから成るセラミックグリーンシートを複数準備する工程と、(b)前記セラミックグリーンシートの表面に金属粉末のメタライズペーストを印刷して配線パターンおよびコンデンサ電極パターンを形成する工程と、(c)複数の前記セラミックグリ−ンシートを積層して、前記配線パターンおよび前記コンデンサ電極パターンが内部に配置されるとともに前記コンデンサ電極パターンが前記セラミックグリーンシートを挟んで対向する積層体を形成する工程と、(d)この積層体を焼成して、セラミックスから成る絶縁層を複数積層して成る絶縁基体の内部に、前記金属粉末を焼結して成るメタライズ導体から成る、配線層および前記絶縁層を挟んで対向するコンデンサ電極層を形成する工程とを具備することを特徴とするものである。
【0020】
また、本発明のセラミック配線基板の製造方法は、前記(c)工程において前記積層体の両主面に前記セラミックスの焼結温度では焼結しない拘束グリーンシートを積層するとともに、前記(d)工程の後に、前記拘束グリーンシートを焼成して成る拘束層を除去する工程を具備することを特徴とするものである。
【0021】
また、本発明のセラミック配線基板の製造方法は、上記構成において、前記ポリオキサゾリンから成るバインダの酸価が、0.05mgKOH/g以上50mgKOH/g以下であることを特徴とするものである。
【0022】
また、本発明のセラミック配線基板の製造方法は、上記構成において、前記ポリオキサゾリンから成るバインダの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が2以上7以下であることを特徴とするものである。
【0023】
また、本発明のセラミック配線基板の製造方法は、上記構成において、前記セラミックグリーンシートを準備するための前記無機粉末と前記ポリオキサゾリンから成るバインダとから成るセラミックスラリーのチキソトロピー指数が2以上5以下であることを特徴とするものである。
【0024】
本発明のセラミック配線基板によれば、コンデンサ電極層間の絶縁層として、100質量部の無機粉末と、8質量部以上20質量部以下の、重量平均分子量が10万以上45万以下のポリオキサゾリンから成るバインダとから成るセラミックグリーンシートを焼成して成るものとしたことから、セラミックグリーンシートを得るためのセラミックスラリーについて、その保形性・成膜性・膜強度を維持しつつ粘度・降伏値を下げることができ、このセラミックスラリーをベースフィルム上に膜状に塗布した後のレベリング性を向上させることができる。その結果、セラミックグリーンシートの厚みばらつきを有効に抑制することができ、このセラミックグリーンシートをコンデンサ電極層間の絶縁層として用いることにより、誘電体層を薄く、かつ厚みばらつきの少ないものとすることができ、高容量かつ低インダクタンスで高精度なコンデンサを内蔵したセラミック配線基板を得ることができる。
【0025】
また、本発明のセラミック配線基板において、ポリオキサゾリンから成るバインダの酸価が、0.05mgKOH/g以上50mgKOH/g以下である場合には、無機粉末とポリオキサゾリンから成るバインダとの分散性を好適に向上させることができることから、セラミックスラリーの保形性・成膜性・膜強度をより一層確実に維持しつつ粘度・降伏値を下げることができ、セラミックグリーンシートの厚みばらつきをより一層有効に制御することができるため、このセラミックグリーンシートをコンデンサ電極層間の絶縁層として用いることにより、より一層高容量かつ低インダクタンスで高精度なコンデンサを内蔵したセラミック配線基板を得ることができる。
【0026】
また、本発明のセラミック配線基板の製造方法によれば、100質量部の無機粉末と、8質量部以上20質量部以下の、重量平均分子量が10万以上45万以下のポリオキサゾリンから成るバインダとによりセラミックグリーンシートを準備するようにしたことから、セラミックグリーンシートを得るためのセラミックスラリーについて、その保形性・成膜性・膜強度を維持しつつ粘度・降伏値を下げることができ、このセラミックスラリーをベースフィルム上に塗布して、薄く、かつ厚みばらつきの小さいセラミックグリーンシートを準備することができる。このようにセラミックグリーンシートの厚みばらつきを有効に抑制することができるため以降の積層工程および焼結の工程を不具合もなく簡単に通すことが可能となる。
【0027】
そして、この薄く、かつ厚みばらつきの小さい複数のセラミックグリーンシートにメタライズペーストを印刷して配線パターンおよびコンデンサ電極パターンを形成し、これらの配線パターンおよびコンデンサ電極パターンが内部に配置されるとともにコンデンサ電極パターンがセラミックグリーンシートを挟んで対向する積層体を形成し、この積層体を焼成するようにしたことから、セラミックスから成る絶縁層を複数積層して成る絶縁基体の内部に、金属粉末を焼結して成るメタライズ導体から成る、薄くかつ厚みばらつきの小さい絶縁層を挟んで対向するコンデンサ電極層および配線層が形成された配線基板を得ることができる。
【0028】
また、本発明のセラミック配線基板の製造方法において、上記の各工程を含み、積層体の両面に前記セラミックスの焼結温度では焼結しない拘束グリーンシートを積層するようにした場合には、焼成時に拘束グリーンシートをセラミックグリーンシートと結合させることにより拘束グリーンシートが実質的に収縮しないため、セラミック配線基板の焼成時に生じる平面方向の収縮を拘束グリーンシートによって抑えることができるので、焼成時に熱収縮の異なる誘電体層を変形させることなく、セラミックスから成る絶縁層と配線層とを同時焼成することができ、より一層寸法精度の良好なセラミック配線基板を形成することができる。
【0029】
また、本発明のセラミック配線基板の製造方法において、ポリオキサゾリンから成るバインダの酸価を、0.05mgKOH/g以上50mgKOH/g以下とした場合には、無機粉末とポリオキサゾリンから成るバインダとの分散性をより好適に向上させることができることから、セラミックグリーンシートの厚みばらつきをより一層有効に制御することができるため、このセラミックグリーンシートをコンデンサ電極層間の絶縁層として用いることにより、より一層高容量かつ低インダクタンスで高精度なコンデンサを内蔵したセラミック配線基板を容易に得ることができる。
【0030】
また、本発明のセラミック配線基板の製造方法において、ポリオキサゾリンから成るバインダの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が2以上7以下とした場合には、バインダに含まれるポリオキサゾリンの分子鎖の長さの分布が適度となり、無機粉末とポリオキサゾリンから成るバインダとの結合性が良くなって、保形性・成膜性・膜強度を維持しつつセラミックスラリーの粘度・降伏値を下げ、ベースフィルム上に膜状に塗布した後のレベリング性を向上させることができ、セラミックグリーンシートの厚みばらつきをより一層有効に抑制することが可能となる。
【0031】
その結果、セラミックグリーンシートをコンデンサ電極層間の絶縁層として用いることにより、より一層高容量かつ低インダクタンスで高精度なコンデンサを内蔵したセラミック配線基板を容易に得ることができる。
【0032】
また、本発明のセラミック配線基板の製造方法において、セラミックグリーンシートを準備するための無機粉末とポリオキサゾリンから成るバインダとから成るセラミックスラリーのチキソトロピー指数が2以上5以下であるものとしたときには、セラミックスラリーをベースフィルム上に塗布する際に、セラミックスラリーの粘度や降伏値を適度に低いものとし、セラミックスラリーをより一層、均一かつ滑らかに、かつ保形性を維持して成形することができるようになるため、ベースフィルム上に塗布されたセラミックスラリーのレベリング性をより一層向上させることができ、塗布されたセラミックスラリーを乾燥して得られるセラミックグリーンシートの平坦性をより一層向上することが可能となるので、より高容量かつ低インダクタンスで高精度なコンデンサを内蔵したセラミック配線基板を製造することができる。
【0033】
【発明の実施の形態】
本発明のセラミック配線基板を添付図面に基づき以下に詳細に説明する。
【0034】
図1は本発明のセラミック配線基板の実施の形態の一例を示したものであり、セラミック配線基板1は、絶縁層(2a〜2d)を複数積層して成る絶縁基体2、金属粉末を焼成して成るメタライズ導体から成る配線層3、金属粉末を焼成して成るメタライズ導体から成り、絶縁層2a〜2d(この図の例では2b)を挟んで対向するコンデンサ電極層4、配線層3と絶縁層(2a〜2d)を挟んで対向するコンデンサ電極層4とを接続し、配線層3とともに配線を構成する貫通導体5とを具備する。
【0035】
絶縁基体2は、この例ではセラミックスから成る複数の絶縁層2a〜2dを積層して成る積層体から構成され、この絶縁層2a〜2dおよび絶縁基体2の表面および裏面には、メタライズ導体から成る配線層3および絶縁層2bを挟んで対向するコンデンサ電極層4が形成されている。さらに、絶縁層2bを挟んで対向するコンデンサ電極層4と配線層3とは、導体ペーストを充填し焼結して配線層3とともに配線を構成する貫通導体5により接続され、セラミック配線基板1内で回路網を形成している。
【0036】
そして、絶縁層2bと、絶縁層2bを挟んで対向するコンデンサ電極層4とにより所定の静電容量を有するコンデンサが形成され、このセラミック配線基板1は、コンデンサを内蔵するセラミック配線基板として、例えば、配線層3の表面に半導体素子や圧電振動子等の電子部品を接続する電子部品搭載用の配線基板等の用途に用いられる。なお、メタライズ導体は、Cu・Ag・Al・Au・Ni・PtおよびPdから選ばれる少なくとも1種以上の金属粉末の焼結体により形成されている。この形成方法については、後に説明する。
【0037】
絶縁基体2(セラミック絶縁層2a〜2d)の材質としては、アルミナセラミックス・ムライトセラミックス・窒化珪素セラミックス・窒化アルミニウムセラミックス・ガラスセラミックス等の周知のセラミック基板材料が用いられるが、とりわけ、焼成温度が800℃〜1000℃の低温焼成セラミック材料、具体的には、ガラス粉末またはガラス粉末とセラミックフィラー粉末との混合物を焼成したガラスセラミックスから成ることが、絶縁層2a〜2dの材質の選択の幅が拡大するとともに、配線層3および貫通導体5として、いわゆる低融点金属であるCu・Ag・Al等の低抵抗の金属を用いることができる点で望ましい。
【0038】
絶縁層2a〜2dを製造するのに用いられる無機粉末としては、ガラス粉末・セラミック粉末・またはガラス粉末とセラミック粉末との混合粉末が用いられる。
【0039】
ガラス粉末としては、例えばSiO2−B2O3系・SiO2−B2O3−Al2O3系・SiO2−B2O3−Al2O3−MO系(但し、MはCa・Sr・Mg・BaまたはZnを示す)・SiO2−Al2O3−M1O−M2O系(但し、M1およびM2は同一または異なってCa・Sr・Mg・BaまたはZnを示す)・SiO2−B2O3−Al2O3−M1O−M2O系(但し、M1およびM2は前記と同じである)・SiO2−B2O3−M3 2O系(但し、M3はLi・NaまたはKを示す)・SiO2−B2O3−Al2O3−M3 2O系(但し、M3は前記と同じである)・Pb系ガラス・Bi系ガラス等が挙げられる。
【0040】
また、セラミック粉末としては、例えばAl2O3・SiO2・ZrO2とアルカリ土類金属酸化物との複合酸化物・TiO2とアルカリ土類金属酸化物との複合酸化物・Al2O3およびSiO2から選ばれる少なくとも1種を含む複合酸化物(例えばスピネル・ムライト・コージェライト)等が挙げられる。
【0041】
無機粉末の製造方法・形状等は特に制限されるものではなく、既存の種々の無機粉末が使用可能である。また、その平均粒径については、分散性または塗工性の点から、0.01μm以上3μm以下であることが好ましい。
【0042】
この無機粉末に添加混合されるバインダとしては、ポリオキサゾリンが用いられるが、その具体例としては、例えば2−ビニル−2−オキサゾリン・2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン・2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン・2−イソプロペニル−2−オキサゾリン・2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン・2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリン等が挙げられ、これらの群から選ばれる1種または2種以上の混合物を使用することができる。
【0043】
ポリオキサゾリンはアクリル樹脂より分子中にCO基を多く含んでおり、このCO基は無機粉末の表面に存在するOH基と親和性がよいため、無機粉末のぬれ性がよくなって、その結果ポリオキサゾリンをバインダとして用いると、セラミックスラリーの粘度を下げる効果を生じるものと推察される。また、ポリオキサゾリンは溶媒に対する溶解性も優れている。
【0044】
本発明のセラミック配線基板1は、コンデンサ電極層4間の前記絶縁層2a〜2d(図1に示した例では2b)は、100質量部の無機粉末と、8質量部以上20質量部以下の、重量平均分子量が10万以上45万以下のポリオキサゾリンから成るバインダとから成るセラミックグリーンシートを焼成して成るものであることとすることが重要である。
【0045】
これは、セラミックグリーンシートの厚みばらつきには、主にセラミックスラリーをベースフィルム上に膜状に塗布した後のレベリング性が大きく影響しており、セラミックスラリーの粘度・降伏値が高いとレベリング性が悪化する傾向があるからである。セラミックスラリーの粘度・降伏値を下げる方法としては、溶媒量を増やす方法やバインダの混合割合を下げる方法でも可能であるが、溶媒量を増やす方法では塗布されたスラリー膜のチキソ性が小さくなり、保形性がなくなるのでセラミックスラリーが流れやすくなり、目的の厚みにすることが困難となる。また、溶媒量が多いと乾燥収縮が大きくなるためクラック等の欠陥が発生しやすくなり、さらには溶剤の乾燥に時間がかかるので、乾燥を早めるために温度を上げたり乾燥風量を上げたりすると、急激に溶媒が蒸発する際にピンホールが形成されやすくなる等、成膜性が悪化する傾向がある。また、バインダの混合割合を下げる方法では、無機粉末とバインダとが充分に結合しないために、セラミックグリーンシートの膜強度が弱くなり、セラミックグリーンシートにクラックや無機粉末の脱粒による欠陥が発生しやすくなる傾向がある。
【0046】
これに対し、ポリオキサゾリンの重量平均分子量を10万以上45万以下の範囲とし、かつ無機粉末とポリオキサゾリンから成るバインダとの混合割合を、無機粉末100質量部に対してバインダを8質量部以上20質量部以下とすることにより、保形性・成膜性・膜強度を維持しつつセラミックスラリーの粘度・降伏値を下げ、ベースフィルム上に膜状に塗布した後のレベリング性を向上させることができ、セラミックグリーンシートの厚みばらつきを有効に抑制することができる。
【0047】
重量平均分子量が45万を超えると、ポリオキサゾリンの分子鎖が長くなり、バインダ中で分子同士がお互いに絡み合う機会が増加することから、セラミックスラリーの粘度・降伏値が上がり過ぎ、ベースフィルム上に膜状に塗布した後のレベリング性が悪化し、セラミックグリーンシートの厚みばらつきが大きくなる傾向がある。
【0048】
重量平均分子量が10万未満の場合には、ポリオキサゾリンの分子鎖が短くなり、バインダ中で分子同士がお互いに絡み合う機会が減少することから、セラミックスラリーの粘度・降伏値が下がり過ぎ、例えば塗布後の乾燥工程において過熱された空気が当ることによりセラミックスラリーが流れて厚みばらつきが大きくなり、またセラミックグリーンシートの強度が低下し乾燥収縮することで生じる応力によりクラック等の欠陥が発生しやすくなるといった傾向がある。
【0049】
また、本発明のセラミック配線基板1は、セラミックグリーンシートにおいて、無機粉末と、重量平均分子量が10万以上45万以下のポリオキサゾリンから成るバインダとの混合割合は、無機粉末100質量部に対してバインダを8質量部以上20質量部以下とすることが重要である。
【0050】
これは、この混合割合とすると、無機粉末とバインダとが充分に結合し、セラミックグリーンシートの強度を向上させることができるからであり、また、この混合割合とすると、セラミックグリーンシート中の無機粉末の充填率が適量となり、焼成後に緻密な焼結体を得ることができるからである。
【0051】
バインダの混合割合が8質量部未満の場合には、無機粉末とバインダとが充分に結合しないために、セラミックグリーンシートの強度が弱くなり、セラミックグリーンシートにクラックや無機粉末の脱粒によるピンホール等の欠陥が発生しやすくなる傾向がある。
【0052】
他方、バインダの混合割合が20質量部を超えると、セラミックグリーンシート中の無機粉末の充填率が低下するために、焼成後に緻密な焼結体が得られなくなり、焼結体中にボイドや欠け等の欠陥が生じやすくなる傾向がある。
【0053】
さらに、本発明のセラミック配線基板1は、ポリオキサゾリンから成るバインダの酸価が、0.05mgKOH/g以上50mgKOH/g以下であることが好ましい。
【0054】
これは、この酸価の範囲とすると、ポリオキサゾリンから成るバインダの分子中のCOOH基の数が無機粉末の表面に存在するOH基の数に対して適量となり、無機粉末とポリオキサゾリンから成るバインダとの分散性を向上させることができるからであり、その結果、保形性・成膜性・膜強度を維持しつつセラミックスラリーの粘度・降伏値を下げてベースフィルム上に膜状に塗布した後のレベリング性を向上することができ、セラミックグリーンシートの厚みばらつきをより一層有効に制御することができるからである。
【0055】
ポリオキサゾリンから成るバインダの酸価が0.05mgKOH/g未満の場合には、無機粉末の表面に存在するOH基に対してポリオキサゾリンから成るバインダ分子中のCOOH基の数が少ないために無機粉末を分散させることが困難となり、無機粉末が凝集しセラミックスラリーが増粘しやすくなることから、塗布後のセラミックスラリーの表面が良好に平坦化せず均一な膜厚のセラミックグリーンシートが形成しづらくなる傾向がある。
【0056】
他方、50mgKOH/gを超えると、無機粉末の表面に存在するOH基に対して過剰なCOOH基がポリオキサゾリンから成るバインダの分子同士を互いに結合させることとなり、セラミックスラリーが増粘しやすくなり、また焼成時における脱脂性が悪化しやすくなって焼結性が上がらず十分に緻密な焼結体が得られにくくなるという傾向がある。
【0057】
なお、グリーンシートを成形するためのスラリーに用いられる溶媒としては、無機粉末およびバインダを分散させ、グリーンシート成形に適した粘度・降伏値が得られるように、例えば水や、メチルアルコール・エチルアルコール・イソプロピルアルコール等のアルコール類を使用することができる。
【0058】
この溶媒量は、無機粉末およびバインダを分散させ、グリーンシートの成形に適した粘度・降伏値が得られ、かつ上述したような保形性・成膜性・膜強度を維持するためには、無機粉末100質量部に対して40質量部〜60質量部とするとよい。
【0059】
本発明のセラミック配線基板1は、上記のような無機粉末・バインダに溶媒等を添加混合してセラミックスラリーとするとともに、そのセラミックスラリーに従来周知のドクターブレード法やダイコート法等を採用することによって成形して複数のセラミックグリーンシートを準備し、これらのセラミックグリーンシートに対してメタライズ導体と成るメタライズペーストの印刷や、積層等の所定の加工を施し、焼成することにより製造される。
【0060】
次に、本発明のセラミック配線基板1の製造方法について、図2(1)〜図2(5)に製造工程毎に示した断面図に基づいて説明する。
【0061】
まず、図2(1)に示すように、ガラス粉末またはガラス粉末とセラミックフィラー粉末とを所定量秤量し、混合してガラスセラミック組成物を調整し、その組成物に有機バインダ等を加えた後、ドクターブレード法・圧延方・プレス法等によりベースフィルム上に膜状に塗布して、100質量部の無機粉末と、8質量部以上20質量部以下の、重量平均分子量が10万以上45万以下のポリオキサゾリンから成るバインダとから成るセラミックグリーンシート10を複数準備する(a工程)。
【0062】
この(a)工程においては、バインダを100質量部の無機粉末と、8質量部以上20質量部以下の、重量平均分子量が10万以上45万以下のポリオキサゾリンから成るものとすることが重要である。
【0063】
これは、100質量部の無機粉末と、8質量部以上20質量部以下の、重量平均分子量が10万以上45万以下のポリオキサゾリンから成るバインダとから成るセラミックグリーンシートとすることにより、本発明の配線基板の説明で前述した通り保形性・成膜性・膜強度を維持しつつセラミックスラリーの粘度・降伏値を下げ、ベースフィルム上に膜状に塗布した後のレベリング性を向上させることができ、セラミックグリーンシート10の厚みばらつきを有効に抑制することができるからである。
【0064】
ポリオキサゾリンから成るバインダの重量平均分子量が45万を超えると、ポリオキサゾリンの分子鎖が長くなり、バインダ中で分子同士がお互いに絡み合う機会が増加することから、セラミックスラリーの粘度・降伏値が上がり過ぎ、ベースフィルム上に膜状に塗布した後のレベリング性が悪化し、セラミックグリーンシート10の厚みばらつきが大きくなる傾向がある。
【0065】
重量平均分子量が10万未満の場合には、ポリオキサゾリンの分子鎖が短くなり、バインダ中で分子同士がお互いに絡み合う機会が減少することから、セラミックスラリーの粘度・降伏値が下がり過ぎ、例えば塗布後の乾燥工程において過熱された空気が当ることによりセラミックスラリーが流れて厚みばらつきが大きくなり、またセラミックグリーンシート10の強度が低下し乾燥収縮することで生じる応力によりクラック等の欠陥が発生しやすくなるといった傾向がある。
【0066】
バインダの混合割合が8質量部未満の場合には、無機粉末とバインダとが充分に結合しないために、セラミックグリーンシート10の強度が弱くなり、セラミックグリーンシート10にクラックや無機粉末の脱粒によるピンホール等の欠陥が発生しやすくなる傾向がある。
【0067】
他方、バインダの混合割合が20質量部を超えると、セラミックグリーンシート10中の無機粉末の充填率が低下するために、焼成後に緻密な焼結体が得られなくなり、焼結体中にボイドや欠け等の欠陥が生じやすくなる傾向がある。
【0068】
また、ポリオキサゾリンから成るバインダの酸価は、バインダの酸価が、0.05mgKOH/g以上50mgKOH/g以下であることが好ましい。
【0069】
これは、この酸価の範囲とすると、ポリオキサゾリンから成るバインダの分子中のCOOH基の数が無機粉末の表面に存在するOH基の数に対して適量となり、無機粉末とポリオキサゾリンから成るバインダとの分散性を向上させることができるからであり、その結果、保形性・成膜性・膜強度を維持しつつセラミックスラリーの粘度・降伏値を下げてベースフィルム上に膜状に塗布した後のレベリング性を向上することができ、セラミックグリーンシート10の厚みばらつきをより一層有効に制御することができるためである。このように厚みばらつきがより一層有効に制御されたセラミックグリーンシート10をコンデンサ電極層間の絶縁層として用いることにより、より高容量かつ低インダクタンスで高精度なコンデンサを内蔵したセラミック配線基板を確実に得ることができる。
【0070】
さらに、ポリオキサゾリンから成るバインダの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が2以上7以下であることが好ましい。
【0071】
これは、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)をこの範囲とすると、バインダに含まれるポリオキサゾリンの分子鎖の長さの分布が適度となり、無機粉末とポリオキサゾリンから成るバインダとの結合性が良くなって、保形性・成膜性・膜強度を維持しつつセラミックスラリーの粘度・降伏値を下げ、ベースフィルム上に膜状に塗布した後のレベリング性を向上させることができ、セラミックグリーンシートの厚みばらつきをより一層有効に抑制することができるからである。
【0072】
重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が2未満の場合には、ポリオキサゾリンから成るバインダの分子鎖の長さが均一になりやすい。その結果、セラミックスラリーの粘度・降伏値を下げ、ベースフィルム上に膜状に塗布した後のレベリング性を向上させやすくすることはできるが、一方、バインダ中で分子同士がお互いに絡み合う機会が減少しやすくなることから、保形性・成膜性・膜強度を維持することが困難となりやすい傾向がある。
【0073】
他方、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が7を超えると、ポリオキサゾリンから成るバインダの分子鎖が長いものと分子鎖が短いものとの分子同士がお互いに絡み合う機会が増加しやすくなることから、セラミックスラリーの粘度・降伏値が上がり過ぎ、ベースフィルム上に膜状に塗布した後のレベリング性が悪化しやすくなり、セラミックグリーンシートの厚みばらつきが大きくなりやすいという傾向がある。
【0074】
また、本発明のセラミック配線基板1の製造方法においては、セラミックスラリーのチキソトロピー指数を2以上5以下とすることが好ましい。
【0075】
ここで、チキソトロピーとは、異常粘性の一種で、粘弾性体に対してかき混ぜる等の応力を加えた場合、ゲルが流動性のゾルに変わり、これを放置しておくと再びゲルにもどる性質のことで、チキソトロピー指数とは粘弾性体に低ずれ応力を加えた場合の粘度を、粘弾性体に高ずれ応力を加えた場合の粘度で割った値である。
【0076】
本発明のセラミック配線基板1の製造方法においては、セラミックスラリーのチキソトロピー指数を2以上5以下であるものとしたときには、セラミックスラリーをベースフィルム上に塗工する際に、セラミックスラリーの粘度や降伏値を適度に低いものとし、セラミックスラリーをより一層、均一かつ滑らかに、かつ保形性を維持してベースフィルム上に塗工することができるようになるため、ベースフィルム上に塗工されたセラミックスラリーのレベリング性をより一層向上させることができ、塗工されたセラミックスラリーを乾燥して得られるセラミックグリーンシートの平坦性をより一層向上することが可能となるからである。
【0077】
チキソトロピー指数が2未満になると、セラミックスラリーが流れやすくなる傾向があり、ベースフィルム上に塗工したときにセラミックスラリーの保形性が低くなり、乾燥時にセラミックグリーンシートの表面の平坦性が悪くなる傾向がある。
【0078】
他方、チキソトロピー指数が5を超えると、セラミックスラリーをベースフィルム上に塗工する際に、セラミックスラリーの粘度や降伏値が若干高くなりすぎて塗工しにくくなる傾向があり、ベースフィルム上に塗工されたセラミックスラリーの平坦性を向上させることが困難となる。
【0079】
なお、セラミックスラリーのチキソトロピー指数を2以上5以下とするには、有機溶剤添加量にてセラミックスラリー中の固形分比率を調整する方法や、有機バインダの酸価および分子量を調整する方法、または分散剤の種類および添加量を調整するといった方法を用いることができる。
【0080】
例えば、有機溶剤添加量にてセラミックスラリー中の固形分比率を調整する方法の場合、有機溶剤の添加量を多くすることにより、チキソトロピー指数を低く調整することができ、有機溶剤の添加量を少なくするとチキソトロピー指数を高く調整することができる。
【0081】
次に、図2(2)に示すように、このグリーンシート10にレーザ加工やマイクロドリル・パンチング等の機械的加工により貫通孔を形成し、その内部に導体ペーストを充填してビアホール導体となるビアホール導体パターン11を形成する。
【0082】
導体ペーストは、Cu・Ag・Al・Au・Ni・PtおよびPdから選ばれる少なくとも1種以上の金属粉末を有機溶剤・バインダとともに混練することにより形成され、例えば、Cuの粉末と有機バインダと有機溶剤とを含み、必要に応じてガラス等の無機成分を添加して混合して調製される。
【0083】
導体ペーストの貫通孔内への充填は、貫通孔の配置に合わせて開口を形成したスクリーン製版を用いるスクリーン印刷法により行なうことができる。
【0084】
次に、図2(3)、(4)に示すように、このグリーンシート10の表面に金属粉末のメタライズペーストを印刷して配線パターン12、およびコンデンサ電極パターン13を形成する(b工程)。
【0085】
この配線回路パターン12、およびコンデンサ電極パターン13を形成するメタライズペーストは、通常、上述のビアホール導体パターンを形成するための導体ペーストと同様の金属材料(つまり、Cu・Ag・Al・Au・Ni・PtおよびPdから選ばれる少なくとも1種以上の金属粉末)および同様の製造・調整方法を用いて成るペーストが使用される。
【0086】
メタライズペーストの印刷は、スクリーン印刷・グラビア印刷等の印刷法を採用することができ、例えば、配線回路パターン12やコンデンサ電極パターン13の製版を用いるスクリーン印刷によって、グリーンシート10の表面に所望のパターンに形成することができる。
【0087】
なお、メタライズペーストの印刷後に、配線回路パターン12、およびコンデンサ電極パターン13がグリーンシート10の表面に凹凸を作らないように圧力を印加して埋設しておくことが、静電容量精度の高いコンデンサ電極パターン13を形成する上で望ましい。
【0088】
その後、図2(5)に示すように、貫通孔の形成やメタライズペーストの印刷等の所定の加工を施した複数のセラミックグリーンシートに形成された配線シート14〜17を、配線パターン12およびコンデンサ電極パターン13が内部に配置されるとともに、コンデンサ電極パターン13が配線シート15を挟んで対向するようにして積層し、積層体(図示せず)を作製する(c工程)。なお、図2(5)においては、グリーンシート10・ビアホール導体パターン11・配線回路パターン12およびコンデンサ電極パターン13の符号は省略している。
【0089】
そして、この積層体を400℃〜850℃の温度で加熱処理してグリーンシート10内やビアホール導体パターン11・配線回路パターン12およびコンデンサ電極パターン13中の有機成分を分解除去した後、同時焼成することにより、図1に示すような、セラミックスから成る絶縁層2a〜2dを複数積層して成る絶縁基体2の内部に、金属粉末を焼結して成るメタライズ導体から成る、配線層3および絶縁層2bを挟んで対向するコンデンサ電極層4が形成された、本発明のセラミック配線基板1が得られる(d工程)。ここで、上記の同時焼成の条件としては、例えば積層体をガラスセラミックグリーンシートにて形成し、800℃〜1000℃の窒素雰囲気中で焼成すればよい。
【0090】
なお、この焼成時には、収縮挙動によってセラミック配線基板1となるセラミックグリーンシートに形成された配線シート14〜17の積層体中の配線回路パターン12およびコンデンサ電極パターン13の寸法精度のばらつきを低減するため、上記(c)(d)工程において、セラミックグリーンシートの積層体の焼成温度(セラミックスの焼結温度)では焼結しない拘束グリーンシートを積層するとともに、(d)工程の後に拘束グリーンシートを焼成して成る拘束層を除去することが好ましい。
【0091】
このように、X−Y方向には実質的に収縮しない方法で焼成することにより、従来の製造方法(いわゆる厚膜法)とは異なり、焼成収縮のばらつきに起因するコンデンサ電極層4の寸法精度を維持したまま焼成してコンデンサ電極層4を形成することができる。
【0092】
このように積層体の焼成の際にX−Y方向には実質的に収縮させない方法として、積層体の両主面にグリーンシート10のセラミックスの焼結温度では焼結しない拘束グリーンシートを積層するとともに、その積層体の焼成後に拘束グリーンシートを焼成して成る拘束層を除去する方法を用いた場合には、焼成後のセラミック配線基板1中の配線回路パターン12およびコンデンサ電極パターン13の寸法精度の寸法精度をともにより一層高精度に維持することができることから、電気的な回路定数の安定化をもたらし、配線基板としての電気特性の安定性を向上させるために好ましいものとできる。
【0093】
なお、焼成後、拘束層を除去する方法としては、ガラスセラミック基板の表面に結合した拘束シートを除去できる方法であれば特に制限はなく、例えば超音波洗浄、研磨、ウォータージェット、サンドブラスト、ウェットブラスト(砥粒と水とを空気圧により噴射させる方法)等が挙げられる。
【0094】
セラミック配線基板1を寸法精度良好として製造する方法は、このような拘束グリーンシートでセラミックグリーンシート積層体を挟む方法に限らず、特開昭57−32657号公報に記載されたような方法に基づいて、グリーンシート10(配線シート14〜17)の積層体に対してその積層方向に0.5MPa〜5MPa程度の圧力を印加するような方法を採用し、グリーンシート10のX−Y方向(主面に平行な方向)における収縮を抑制し、グリーンシート10のZ方向(厚み方向)にのみ収縮しX−Y方向には実質的に収縮しない焼成方法にて焼成するようにしてもよい。
【0095】
以上のような本発明のセラミック配線基板の製造方法により、本発明のセラミック配線基板1を作製することができるが、以上のような絶縁層を複数積層して成る絶縁基体から成る多層配線基板ではなく、単層の絶縁層から成る絶縁基体に表裏2層の配線回路層を有するセラミック配線基板を作製する場合には、図2(4)に示す工程においてグリーンシート10の裏面にも同様の配線回路パターン12およびコンデンサ電極パターン13を形成し、その後に焼成を行なうことにより作製することができる。
【0096】
本発明のセラミック配線基板の製造方法によれば、積層体の両主面に拘束グリーンシートを積層して焼成時に積層体をX−Y方向には実質的に収縮させない焼成を行なうことにより、焼成による絶縁基体の寸法ばらつきを抑制することができ、より一層精度の良好な静電容量を有するセラミック配線基板を形成することができる。
【0097】
【実施例】
以下、本発明を具体例によって詳細に説明するが、本発明は以下の具体例に限定されるものではない。
【0098】
無機粉末として、SiO2−Al2O3−MgO−B2O3−ZnO系ガラス粉末60質量部・CaZrO3粉末20質量部・SrTiO3粉末17質量部およびAl2O3粉末3質量部を使用し、この無機粉末100質量部に対して、バインダとして2−ビニル−2−オキサゾリン12質量部および溶媒としてメチルアルコール55質量部を加え、ボールミル法により混合しセラミックスラリーとした。
【0099】
また、2−ビニル−2−オキサゾリンバインダの分子量および酸価と、有機溶剤であるメタノールの添加量とを変えることによりチキソトロピー指数の調整を行なった。
【0100】
このセラミックスラリーを用いて、ダイコート法により、厚さ25μmのセラミックグリーンシートを成形した。
【0101】
成形されたセラミックグリーンシートは、厚みばらつきと外観および静電容量について評価した。
【0102】
静電容量はセラミック配線基板を作製し測定をおこなった。セラミック配線基板の作製方法は以下の通りである。
【0103】
まず、金属粉末として平均粒径が5μmのCu粉末に、有機バインダとしてアクリル系樹脂、溶媒としてDBPを添加混練し、配線回路層用銅ペーストおよびビアホール導体用銅ペーストを作製した。
【0104】
そして、グリーンシートの所定箇所にパンチング加工を行なってビアホールを形成し、そのビアホール内にビアホール導体用銅ペーストを充填した。さらに、グリーンシートの所定箇所に、配線回路層用銅ペーストを用いてスクリーン印刷法にて、配線回路パターンを印刷形成した。
【0105】
さらに、コンデンサ電極パターンを配線回路層用銅ペーストを用いてスクリーン印刷した配線シートを内層に位置するように配置し、60℃の温度および5MPaの圧力にて熱圧着して積層体を形成した。
【0106】
そして、この積層体を、有機バインダ等の有機成分を分解除去するため窒素雰囲気中にて750℃で1時間保持した後、900℃で1時間保持することにより、本発明のセラミック配線基板を作製し静電容量をアジレント・テクノロジー株式会社製インピーダンス測定器(型式:4294Aプレシジョン・インピーダンス・アナライザ、測定精度:±0.08%)にて測定を行なった。その測定結果を表1に示す。
【0107】
【表1】
【0108】
表1における、セラミックグリーンシートの外観について、200mm×200mmに裁断されたセラミックグリーンシート20枚に対して、クラックおよびピンホールが全く無い外観性に優れた試料を「○」として、クラックおよびピンホールの発生しているセラミックグリーンシートが5枚を超える試料を「×」として評価した。また、クラックおよびピンホールの発生しているセラミックグリーンシートが5枚以内の試料は「△」と評価した。セラミックグリーンシートの外観は、クラックおよびピンホールの有無を目視で観察して評価した。
【0109】
セラミックグリーンシートの厚みばらつきは、測定点としてセラミックグリーンシートの成形幅方向に対して等間隔に20点を、成形流れ方向に対して長さ2000mmまでは100mm間隔で、それ以降は成形長さ5m・10m・50mで設定し、合計460点について、株式会社セイコーem社製フィルム厚み測定器(型式:ミリトロン1240型、測定精度:±0.1%)で厚みを測定し、3σ(標準偏差の3倍)が平均厚みの3%以内の試料を「○」とし、平均厚みの4.5%以内の試料を「△」とし、4.5%を超える試料を「×」として評価した。
【0110】
静電容量は、3σ(標準偏差の3倍)が平均静電容量の±5%以内を「○」とし、±7.5%以内を「△」、±7.5%を超えるものを「×」とした。
【0111】
表1の結果から明らかなように、バインダの重量平均分子量が10万未満の5万である試料No.6では、セラミックスラリーの粘度・降伏値が下がり過ぎ、厚みばらつきが大きくなり、またセラミックグリーンシートの強度が低下して、乾燥収縮することで生じる応力によりクラック等の欠陥が生じた(表中の厚みばらつき・外観・静電容量ばらつきの欄にそれぞれ×で示す)。また、重量平均分子量が45万を超える50万である試料No.9では、セラミックスラリーの粘度・降伏値が上がり過ぎ、ベースフィルム上に膜状に塗布した後のレベリング性が悪化し、セラミックグリーンシートの厚みばらつきが大きくなり、さらに静電容量のばらつきも大きくなった(表中の厚みばらつきの欄に×で示す)。
【0112】
これに対して、本発明の試料は厚みばらつき・静電容量の評価結果が良好であったが、バインダの酸価が0.05mgKOH/g未満の0.03mgKOH/gである試料No.10では、無機粉末が凝集しやすくなり、セラミックスラリーの粘度・降伏値が上がり、厚みばらつきが大きくなり、静電容量も大きくなる傾向があった(表中の厚みばらつき・静電容量の欄に△で示す)。
【0113】
また、酸価が50mgKOH/gを超える60mgKOH/gである試料No.14では、セラミックスラリーの粘度・降伏値が上がり、厚みばらつきが大きくなる傾向があり、静電容量も大きくなる傾向があった(表中の厚みばらつき・静電容量ばらつきの欄に△で示す)。
【0114】
また、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(多分散度:Mw/Mn)が2未満の1である試料No.15では、ポリオキサゾリンから成るバインダの分子鎖の長さが均一になる傾向があるため、セラミックスラリーの粘度・降伏値が下がり、ベースフィルム上に膜状に塗布した後のレベリング性を維持することはできるが、一方、バインダ中で分子同士がお互いに絡み合う機会が減少しやすくなることから、保形性・成膜性・膜強度を維持することが困難となり、セラミックグリーンシートにクラックや無機粉末の脱粒によるピンホール等の欠陥が、実用上は問題がないレベルであるものの、生じやすくなった(表中の外観の欄に△で示す)。
【0115】
また、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(多分散度:Mw/Mn)が7を超える8である試料No.18では、ポリオキサゾリンからなるバインダの分子鎖が長いものと分子鎖が短いものとの分子同士がお互いに絡み合う機会が増加しやすくなることから、セラミックスラリーの粘度・降伏値が上がり過ぎ、ベースフィルム上に膜状に塗布した後のレベリング性が悪化し、セラミックグリーンシートの厚みばらつきが、実用上は問題がないレベルであるものの、大きくなる傾向があった(表中の厚みばらつきの欄に△で示す)。
【0116】
また、チキソトロピー指数を1.3とした試料No.19およびチキソトロピー指数を6とした試料No.22では、ベースフィルム上に塗工されたセラミックスラリーの保形性が低下したり塗工時の平坦性が劣化したりする傾向があり、乾燥時に表面に凹凸が生じやすく、厚み精度が劣化する傾向が見られた(表中の厚みばらつきの欄に△で示す)。
【0117】
これに対して、本発明の試料の中でも、バインダ混合割合が8質量部以上20質量部以下の、重量平均分子量が10万以上45万以下の、酸価が0.05mgKOH/g以上50mgKOH/g以下であり、かつポリオキサゾリンから成るバインダの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が2以上7以下でありかつセラミックスラリーのチキソトロピー指数が2以上5以下とした試料であるNo.2〜4・7・8・11〜13・16・17・20・21は、いずれもセラミックグリーンシートの厚みばらつき・外観・静電容量の評価結果が良好であり、セラミックスラリーのレベリング性が良好で、厚みばらつきが小さく、乾燥収縮によるクラックもなく、静電容量のばらつきも小さい優れたものであった。
【0118】
なお、本発明は上述の実施の形態の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば種々の変更は可能である。
【0119】
例えば、上述の実施の形態の例では、無機粉末とポリオキサゾリンと溶媒を添加混合してセラミックスラリーを作製したが、セラミックグリーンシートに柔軟性を付与するために可塑剤を添加してもよく、また無機粉末の分散性を高めるために分散剤を添加してもよい。
【0120】
【発明の効果】
本発明のセラミック配線基板によれば、コンデンサ電極層間の絶縁層として、100質量部の無機粉末と、8質量部以上20質量部以下の、重量平均分子量が10万以上45万以下のポリオキサゾリンから成るバインダとから成るセラミックグリーンシートを焼成して成るものとしたことから、セラミックグリーンシートを得るためのセラミックスラリーについて、その保形性・成膜性・膜強度を維持しつつ粘度・降伏値を下げることができ、このセラミックスラリーをベースフィルム上に膜状に塗布した後のレベリング性を向上させることができる。その結果、セラミックグリーンシートの厚みばらつきを有効に抑制することができ、このセラミックグリーンシートをコンデンサ電極層間の絶縁層として用いることにより、誘電体層を薄く、かつ厚みばらつきの少ないものとすることができ、高容量かつ低インダクタンスで高精度なコンデンサを内蔵したセラミック配線基板を得ることができる。
【0121】
また、本発明のセラミック配線基板において、ポリオキサゾリンから成るバインダの酸価が、0.05mgKOH/g以上50mgKOH/g以下である場合には、無機粉末とポリオキサゾリンから成るバインダとの分散性を好適に向上させることができることから、セラミックスラリーの保形性・成膜性・膜強度をより一層確実に維持しつつ粘度・降伏値を下げることができ、セラミックグリーンシートの厚みばらつきをより一層有効に制御することができるため、このセラミックグリーンシートをコンデンサ電極層間の絶縁層として用いることにより、より一層高容量かつ低インダクタンスで高精度なコンデンサを内蔵したセラミック配線基板を得ることができる。
【0122】
また、本発明のセラミック配線基板の製造方法によれば、100質量部の無機粉末と、8質量部以上20質量部以下の、重量平均分子量が10万以上45万以下のポリオキサゾリンから成るバインダとによりセラミックグリーンシートを準備するようにしたことから、セラミックグリーンシートを得るためのセラミックスラリーについて、その保形性・成膜性・膜強度を維持しつつ粘度・降伏値を下げることができ、このセラミックスラリーをベースフィルム上に塗布して、薄く、かつ厚みばらつきの小さいセラミックグリーンシートを準備することができる。このようにセラミックグリーンシートの厚みばらつきを有効に抑制することができるため以降の積層工程および焼結の工程を不具合もなく簡単に通すことが可能となる。
【0123】
そして、この薄く、かつ厚みばらつきの小さい複数のセラミックグリーンシートにメタライズペーストを印刷して配線パターンおよびコンデンサ電極パターンを形成し、これらの配線パターンおよびコンデンサ電極パターンが内部に配置されるとともにコンデンサ電極パターンがセラミックグリーンシートを挟んで対向する積層体を形成し、この積層体を焼成するようにしたことから、セラミックスから成る絶縁層を複数積層して成る絶縁基体の内部に、金属粉末を焼結して成るメタライズ導体から成る、薄くかつ厚みばらつきの小さい絶縁層を挟んで対向するコンデンサ電極層および配線層が形成された配線基板を得ることができる。
【0124】
また、本発明のセラミック配線基板の製造方法において、上記の各工程を含み、積層体の両面に前記セラミックスの焼結温度では焼結しない拘束グリーンシートを積層するようにした場合には、焼成時に拘束グリーンシートをセラミックグリーンシートと結合させることにより拘束グリーンシートが実質的に収縮しないため、セラミック配線基板の焼成時に生じる平面方向の収縮を拘束グリーンシートによって抑えることができるので、焼成時に熱収縮の異なる誘電体層を変形させることなく、セラミックスから成る絶縁層と配線層とを同時焼成することができ、より一層寸法精度の良好なセラミック配線基板を形成することができる。
【0125】
また、本発明のセラミック配線基板の製造方法において、ポリオキサゾリンから成るバインダの酸価を、0.05mgKOH/g以上50mgKOH/g以下とした場合には、無機粉末とポリオキサゾリンから成るバインダとの分散性をより好適に向上させることができることから、セラミックグリーンシートの厚みばらつきをより一層有効に制御することができるため、このセラミックグリーンシートをコンデンサ電極層間の絶縁層として用いることにより、より一層高容量かつ低インダクタンスで高精度なコンデンサを内蔵したセラミック配線基板を容易に得ることができる。
【0126】
また、本発明のセラミック配線基板の製造方法において、ポリオキサゾリンから成るバインダの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が2以上7以下とした場合には、バインダに含まれるポリオキサゾリンの分子鎖の長さの分布が適度となり、無機粉末とポリオキサゾリンから成るバインダとの結合性が良くなって、保形性・成膜性・膜強度を維持しつつセラミックスラリーの粘度・降伏値を下げ、ベースフィルム上に膜状に塗布した後のレベリング性を向上させることができ、セラミックグリーンシートの厚みばらつきをより一層有効に抑制することが可能となる。
【0127】
その結果、セラミックグリーンシートをコンデンサ電極層間の絶縁層として用いることにより、より一層高容量かつ低インダクタンスで高精度なコンデンサを内蔵したセラミック配線基板を容易に得ることができる。
【0128】
また、本発明のセラミック配線基板の製造方法において、セラミックグリーンシートを準備するための無機粉末とポリオキサゾリンから成るバインダとから成るセラミックスラリーのチキソトロピー指数が2以上5以下であるものとしたときには、セラミックスラリーをベースフィルム上に塗布する際に、セラミックスラリーの粘度や降伏値を適度に低いものとし、セラミックスラリーをより一層、均一かつ滑らかに、かつ保形性を維持して成形することができるようになるため、ベースフィルム上に塗布されたセラミックスラリーのレベリング性をより一層向上させることができ、塗布されたセラミックスラリーを乾燥して得られるセラミックグリーンシートの平坦性をより一層向上することが可能とことなるので、より高容量かつ低インダクタンスで高精度なコンデンサを内蔵したセラミック配線基板を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のセラミック配線基板の実施の形態の一例を示す断面図である。
【図2】本発明のセラミック配線基板の製造方法の実施の形態の一例を示す工程毎の断面図である。
【符号の説明】
1・・・・・セラミック配線基板
2・・・・・絶縁基体
2a〜2d・・・・・絶縁層
3・・・・・配線層
4・・・・・コンデンサ電極層
5・・・・・貫通導体
10・・・・・グリーンシート
11・・・・・ビアホール導体パターン
12・・・・・配線回路パターン
13・・・・・コンデンサ電極パターン
14〜17・・・・・配線シート
【発明の属する技術分野】
本発明は、セラミックスから成る絶縁基体の表面および/または内部に配線回路層と電極体層とを具備した、混成集積回路基板等に適したセラミック配線基板およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、携帯用端末等の電子機器の小型化や使用される周波数帯域の高周波化に伴い、電子機器に組み込まれる配線基板にも小型化・高周波化が要求されており、これまで配線基板の表面に実装されていたチップコンデンサを、配線基板内部に形成することで実装面積を削減し配線基板を小型化しつつ、低インダクタンスで実装し高周波特性を向上させることのできるコンデンサを内蔵したセラミック配線基板が提案されている。
【0003】
セラミック配線基板にコンデンサを内蔵する方法としては、例えば絶縁層の一部を誘電体層とし、その誘電体層を挟むように上下に電極層を形成してコンデンサを形成する方法がある。この誘電体層を他の絶縁層より比誘電率の高い絶縁層としたり、他の絶縁層より厚みの薄い絶縁層としたりすることによりコンデンサとして機能するような静電容量を得ている。この方法を用いると、構造的に低インダクタンスなコンデンサを内蔵することが可能となる。
【0004】
このようなコンデンサ内蔵セラミック配線基板は、導体ペーストを塗布してコンデンサ電極パターンが形成された誘電体層となるセラミックグリーンシートを、所定の導体パターンが形成された他の絶縁層となるセラミックグリーンシートで挟んで積層し、焼成することにより得られる。
【0005】
このような従来の絶縁層を得るために用いられるセラミックグリーンシートのバインダとして一般的なものは、100質量部のセラミック原料粉末等の無機粉末と、8質量部以上20質量部以下のアクリルまたはブチラール等のバインダとから成るものであった。
【0006】
すなわち、従来のセラミック配線基板は、
(a)100質量部のセラミック原料粉末等の無機粉末と、8質量部以上20質量部以下のアクリルまたはブチラール等のバインダとを混練してセラミックスラリーを得るとともに、このセラミックスラリーをベースフィルム上に膜状に塗布して複数のセラミックグリーンシートを準備する工程と、
(b)これらのセラミックグリーンシートの表面に金属粉末のメタライズペーストを印刷して配線パターンおよびコンデンサ電極パターンを形成する工程と、
(c)複数のセラミックグリ−ンシートを積層して、配線パターンおよび前記コンデンサ電極パターンが内部に配置されるとともにコンデンサ電極パターンがセラミックグリーンシートを挟んで対向する積層体を形成する工程と、
(d)この積層体を焼成して、セラミックスから成る絶縁層を複数積層して成る絶縁基体の内部に、金属粉末を焼結して成るメタライズ導体から成る、配線層および前記絶縁層を挟んで対向するコンデンサ電極層を形成する工程とを具備する製造方法により製造される。
【0007】
このセラミック配線基板では構造的に低インダクタンスであるコンデンサを内蔵することができるが、さらなる小型化要求に対応するためには、単位面積当りの容量を向上させなければならず、誘電体グリーンシートの厚みを薄くすることや、薄くした誘電体グリーンシートを複数枚積層してコンデンサを並列接続する等の工夫が必要となる。
【0008】
しかし、誘電体グリーンシートの厚みを薄くすると、セラミックグリーンシートの厚みがばらついてしまい、セラミックグリーンシートの厚みがばらついてしまうと、薄いセラミックグリーンシートを用いて誘電体層を形成するコンデンサ内蔵セラミック配線基板においては、薄いセラミックグリーンシートのわずかな厚みばらつきによってもコンデンサの静電容量が設計値に対して大きくばらつくという不具合が生じることとなり、その結果として、セラミック配線基板が高周波信号を通すことができなくなったり、セラミック配線基板に搭載された電子部品が正常に作動しなくなるというような問題点があった。
【0009】
この問題点に対して、ペロブスカイト型セラミックスからなる誘電体層と、ガラスセラミックスからなる絶縁体層と、この誘電体層とこの絶縁体層の間に介在し、Ag・Au・Pd・Pt・CuおよびNiのうち少なくとも1種類以上を主成分とする電極層とを有し、この誘電体層と、この電極層およびこの絶縁体層を同時焼成によって形成して成るコンデンサ付きセラミック基板において、この電極層のガラス成分含有量を2%以下としたり、前記電極層の厚みを20μm以上としたりすることが開示されている。
【0010】
【特許文献1】
特開平8−298365号公報
【0011】
【特許文献2】
特開昭57−32657号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、近年のコンデンサ内蔵セラミック配線基板に対してさらなる小型化の要求に対応するためには、内蔵したコンデンサの単位面積当りの静電容量を向上させなければならず、誘電体層となるセラミックグリーンシートの厚みをさらに薄くする等の工夫が必要となっている。
【0013】
セラミック配線基板を、チタン酸バリウム等のペロブスカイト型セラミックスからなる誘電体層と、ガラスセラミックスからなる絶縁体層と、この誘電体層とこの絶縁体層の間に介在し、Ag・Au・Pd・Pt・CuおよびNiのうち少なくとも1種類以上を主成分とする電極層とを有し、この誘電体層と、この電極層およびこの絶縁体層を同時焼成によって形成したとしても、セラミック絶縁層を薄くし、コンデンサの高容量化を図ることはできるものの、セラミック絶縁層となるセラミックグリーンシートの厚みばらつきを効果的に抑えることはできず、静電容量ばらつきが比較的大きいという課題が残る。
【0014】
薄いセラミックグリーンシートを用いて絶縁層(誘電体層)を形成するコンデンサ内蔵セラミック配線基板においては、薄いセラミックグリーンシートのわずかな厚みばらつきによってもコンデンサの静電容量が設計値に対して大きくばらつくという不具合が生じることとなり、その結果として、セラミック配線基板が高周波信号を通すことができなくなくなったり、セラミック配線基板に搭載された電子部品が正常に作動しなくなるというような問題を発生させてしまう。
【0015】
本発明は上記問題点に鑑み完成されたもので、その目的は、絶縁層(誘電体層)の厚みばらつきを有効に抑えることにより、高容量かつ低インダクタンスで高精度なコンデンサを内蔵したセラミック配線基板およびその製造方法を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上述の問題点を解決するために鋭意検討を重ねた結果、セラミックグリーンシート中にバインダとして用いられる有機成分をポリオキサゾリンとするとともに、その重量平均分子量を適切な範囲に調整することによって、薄いセラミックグリーンシートであってもその厚みばらつきを有効に抑制ができ、このセラミックグリーンシートをコンデンサ電極層間の絶縁層として用いることにより、高容量かつ低インダクタンスで高精度なコンデンサを内蔵したセラミック配線基板を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0017】
すなわち、本発明のセラミック配線基板は、セラミックスから成る絶縁層を複数積層して成る絶縁基体の内部に、金属粉末を焼結して成るメタライズ導体から成る、配線層および前記絶縁層を挟んで対向するコンデンサ電極層を有するセラミック配線基板であって、前記コンデンサ電極層間の前記絶縁層は、100質量部の無機粉末と、8質量部以上20質量部以下の、重量平均分子量が10万以上45万以下のポリオキサゾリンから成るバインダとから成るセラミックグリーンシートを焼成して成るものであることを特徴とするものである。
【0018】
また、本発明のセラミック配線基板は、上記構成において、ポリオキサゾリンから成るバインダの酸価が、0.05mgKOH/g以上50mgKOH/g以下であることを特徴とするものである。
【0019】
また、本発明のセラミック配線基板の製造方法は、(a)100質量部の無機粉末と、8質量部以上20質量部以下の、重量平均分子量が10万以上45万以下のポリオキサゾリンから成るバインダとから成るセラミックグリーンシートを複数準備する工程と、(b)前記セラミックグリーンシートの表面に金属粉末のメタライズペーストを印刷して配線パターンおよびコンデンサ電極パターンを形成する工程と、(c)複数の前記セラミックグリ−ンシートを積層して、前記配線パターンおよび前記コンデンサ電極パターンが内部に配置されるとともに前記コンデンサ電極パターンが前記セラミックグリーンシートを挟んで対向する積層体を形成する工程と、(d)この積層体を焼成して、セラミックスから成る絶縁層を複数積層して成る絶縁基体の内部に、前記金属粉末を焼結して成るメタライズ導体から成る、配線層および前記絶縁層を挟んで対向するコンデンサ電極層を形成する工程とを具備することを特徴とするものである。
【0020】
また、本発明のセラミック配線基板の製造方法は、前記(c)工程において前記積層体の両主面に前記セラミックスの焼結温度では焼結しない拘束グリーンシートを積層するとともに、前記(d)工程の後に、前記拘束グリーンシートを焼成して成る拘束層を除去する工程を具備することを特徴とするものである。
【0021】
また、本発明のセラミック配線基板の製造方法は、上記構成において、前記ポリオキサゾリンから成るバインダの酸価が、0.05mgKOH/g以上50mgKOH/g以下であることを特徴とするものである。
【0022】
また、本発明のセラミック配線基板の製造方法は、上記構成において、前記ポリオキサゾリンから成るバインダの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が2以上7以下であることを特徴とするものである。
【0023】
また、本発明のセラミック配線基板の製造方法は、上記構成において、前記セラミックグリーンシートを準備するための前記無機粉末と前記ポリオキサゾリンから成るバインダとから成るセラミックスラリーのチキソトロピー指数が2以上5以下であることを特徴とするものである。
【0024】
本発明のセラミック配線基板によれば、コンデンサ電極層間の絶縁層として、100質量部の無機粉末と、8質量部以上20質量部以下の、重量平均分子量が10万以上45万以下のポリオキサゾリンから成るバインダとから成るセラミックグリーンシートを焼成して成るものとしたことから、セラミックグリーンシートを得るためのセラミックスラリーについて、その保形性・成膜性・膜強度を維持しつつ粘度・降伏値を下げることができ、このセラミックスラリーをベースフィルム上に膜状に塗布した後のレベリング性を向上させることができる。その結果、セラミックグリーンシートの厚みばらつきを有効に抑制することができ、このセラミックグリーンシートをコンデンサ電極層間の絶縁層として用いることにより、誘電体層を薄く、かつ厚みばらつきの少ないものとすることができ、高容量かつ低インダクタンスで高精度なコンデンサを内蔵したセラミック配線基板を得ることができる。
【0025】
また、本発明のセラミック配線基板において、ポリオキサゾリンから成るバインダの酸価が、0.05mgKOH/g以上50mgKOH/g以下である場合には、無機粉末とポリオキサゾリンから成るバインダとの分散性を好適に向上させることができることから、セラミックスラリーの保形性・成膜性・膜強度をより一層確実に維持しつつ粘度・降伏値を下げることができ、セラミックグリーンシートの厚みばらつきをより一層有効に制御することができるため、このセラミックグリーンシートをコンデンサ電極層間の絶縁層として用いることにより、より一層高容量かつ低インダクタンスで高精度なコンデンサを内蔵したセラミック配線基板を得ることができる。
【0026】
また、本発明のセラミック配線基板の製造方法によれば、100質量部の無機粉末と、8質量部以上20質量部以下の、重量平均分子量が10万以上45万以下のポリオキサゾリンから成るバインダとによりセラミックグリーンシートを準備するようにしたことから、セラミックグリーンシートを得るためのセラミックスラリーについて、その保形性・成膜性・膜強度を維持しつつ粘度・降伏値を下げることができ、このセラミックスラリーをベースフィルム上に塗布して、薄く、かつ厚みばらつきの小さいセラミックグリーンシートを準備することができる。このようにセラミックグリーンシートの厚みばらつきを有効に抑制することができるため以降の積層工程および焼結の工程を不具合もなく簡単に通すことが可能となる。
【0027】
そして、この薄く、かつ厚みばらつきの小さい複数のセラミックグリーンシートにメタライズペーストを印刷して配線パターンおよびコンデンサ電極パターンを形成し、これらの配線パターンおよびコンデンサ電極パターンが内部に配置されるとともにコンデンサ電極パターンがセラミックグリーンシートを挟んで対向する積層体を形成し、この積層体を焼成するようにしたことから、セラミックスから成る絶縁層を複数積層して成る絶縁基体の内部に、金属粉末を焼結して成るメタライズ導体から成る、薄くかつ厚みばらつきの小さい絶縁層を挟んで対向するコンデンサ電極層および配線層が形成された配線基板を得ることができる。
【0028】
また、本発明のセラミック配線基板の製造方法において、上記の各工程を含み、積層体の両面に前記セラミックスの焼結温度では焼結しない拘束グリーンシートを積層するようにした場合には、焼成時に拘束グリーンシートをセラミックグリーンシートと結合させることにより拘束グリーンシートが実質的に収縮しないため、セラミック配線基板の焼成時に生じる平面方向の収縮を拘束グリーンシートによって抑えることができるので、焼成時に熱収縮の異なる誘電体層を変形させることなく、セラミックスから成る絶縁層と配線層とを同時焼成することができ、より一層寸法精度の良好なセラミック配線基板を形成することができる。
【0029】
また、本発明のセラミック配線基板の製造方法において、ポリオキサゾリンから成るバインダの酸価を、0.05mgKOH/g以上50mgKOH/g以下とした場合には、無機粉末とポリオキサゾリンから成るバインダとの分散性をより好適に向上させることができることから、セラミックグリーンシートの厚みばらつきをより一層有効に制御することができるため、このセラミックグリーンシートをコンデンサ電極層間の絶縁層として用いることにより、より一層高容量かつ低インダクタンスで高精度なコンデンサを内蔵したセラミック配線基板を容易に得ることができる。
【0030】
また、本発明のセラミック配線基板の製造方法において、ポリオキサゾリンから成るバインダの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が2以上7以下とした場合には、バインダに含まれるポリオキサゾリンの分子鎖の長さの分布が適度となり、無機粉末とポリオキサゾリンから成るバインダとの結合性が良くなって、保形性・成膜性・膜強度を維持しつつセラミックスラリーの粘度・降伏値を下げ、ベースフィルム上に膜状に塗布した後のレベリング性を向上させることができ、セラミックグリーンシートの厚みばらつきをより一層有効に抑制することが可能となる。
【0031】
その結果、セラミックグリーンシートをコンデンサ電極層間の絶縁層として用いることにより、より一層高容量かつ低インダクタンスで高精度なコンデンサを内蔵したセラミック配線基板を容易に得ることができる。
【0032】
また、本発明のセラミック配線基板の製造方法において、セラミックグリーンシートを準備するための無機粉末とポリオキサゾリンから成るバインダとから成るセラミックスラリーのチキソトロピー指数が2以上5以下であるものとしたときには、セラミックスラリーをベースフィルム上に塗布する際に、セラミックスラリーの粘度や降伏値を適度に低いものとし、セラミックスラリーをより一層、均一かつ滑らかに、かつ保形性を維持して成形することができるようになるため、ベースフィルム上に塗布されたセラミックスラリーのレベリング性をより一層向上させることができ、塗布されたセラミックスラリーを乾燥して得られるセラミックグリーンシートの平坦性をより一層向上することが可能となるので、より高容量かつ低インダクタンスで高精度なコンデンサを内蔵したセラミック配線基板を製造することができる。
【0033】
【発明の実施の形態】
本発明のセラミック配線基板を添付図面に基づき以下に詳細に説明する。
【0034】
図1は本発明のセラミック配線基板の実施の形態の一例を示したものであり、セラミック配線基板1は、絶縁層(2a〜2d)を複数積層して成る絶縁基体2、金属粉末を焼成して成るメタライズ導体から成る配線層3、金属粉末を焼成して成るメタライズ導体から成り、絶縁層2a〜2d(この図の例では2b)を挟んで対向するコンデンサ電極層4、配線層3と絶縁層(2a〜2d)を挟んで対向するコンデンサ電極層4とを接続し、配線層3とともに配線を構成する貫通導体5とを具備する。
【0035】
絶縁基体2は、この例ではセラミックスから成る複数の絶縁層2a〜2dを積層して成る積層体から構成され、この絶縁層2a〜2dおよび絶縁基体2の表面および裏面には、メタライズ導体から成る配線層3および絶縁層2bを挟んで対向するコンデンサ電極層4が形成されている。さらに、絶縁層2bを挟んで対向するコンデンサ電極層4と配線層3とは、導体ペーストを充填し焼結して配線層3とともに配線を構成する貫通導体5により接続され、セラミック配線基板1内で回路網を形成している。
【0036】
そして、絶縁層2bと、絶縁層2bを挟んで対向するコンデンサ電極層4とにより所定の静電容量を有するコンデンサが形成され、このセラミック配線基板1は、コンデンサを内蔵するセラミック配線基板として、例えば、配線層3の表面に半導体素子や圧電振動子等の電子部品を接続する電子部品搭載用の配線基板等の用途に用いられる。なお、メタライズ導体は、Cu・Ag・Al・Au・Ni・PtおよびPdから選ばれる少なくとも1種以上の金属粉末の焼結体により形成されている。この形成方法については、後に説明する。
【0037】
絶縁基体2(セラミック絶縁層2a〜2d)の材質としては、アルミナセラミックス・ムライトセラミックス・窒化珪素セラミックス・窒化アルミニウムセラミックス・ガラスセラミックス等の周知のセラミック基板材料が用いられるが、とりわけ、焼成温度が800℃〜1000℃の低温焼成セラミック材料、具体的には、ガラス粉末またはガラス粉末とセラミックフィラー粉末との混合物を焼成したガラスセラミックスから成ることが、絶縁層2a〜2dの材質の選択の幅が拡大するとともに、配線層3および貫通導体5として、いわゆる低融点金属であるCu・Ag・Al等の低抵抗の金属を用いることができる点で望ましい。
【0038】
絶縁層2a〜2dを製造するのに用いられる無機粉末としては、ガラス粉末・セラミック粉末・またはガラス粉末とセラミック粉末との混合粉末が用いられる。
【0039】
ガラス粉末としては、例えばSiO2−B2O3系・SiO2−B2O3−Al2O3系・SiO2−B2O3−Al2O3−MO系(但し、MはCa・Sr・Mg・BaまたはZnを示す)・SiO2−Al2O3−M1O−M2O系(但し、M1およびM2は同一または異なってCa・Sr・Mg・BaまたはZnを示す)・SiO2−B2O3−Al2O3−M1O−M2O系(但し、M1およびM2は前記と同じである)・SiO2−B2O3−M3 2O系(但し、M3はLi・NaまたはKを示す)・SiO2−B2O3−Al2O3−M3 2O系(但し、M3は前記と同じである)・Pb系ガラス・Bi系ガラス等が挙げられる。
【0040】
また、セラミック粉末としては、例えばAl2O3・SiO2・ZrO2とアルカリ土類金属酸化物との複合酸化物・TiO2とアルカリ土類金属酸化物との複合酸化物・Al2O3およびSiO2から選ばれる少なくとも1種を含む複合酸化物(例えばスピネル・ムライト・コージェライト)等が挙げられる。
【0041】
無機粉末の製造方法・形状等は特に制限されるものではなく、既存の種々の無機粉末が使用可能である。また、その平均粒径については、分散性または塗工性の点から、0.01μm以上3μm以下であることが好ましい。
【0042】
この無機粉末に添加混合されるバインダとしては、ポリオキサゾリンが用いられるが、その具体例としては、例えば2−ビニル−2−オキサゾリン・2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン・2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン・2−イソプロペニル−2−オキサゾリン・2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン・2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリン等が挙げられ、これらの群から選ばれる1種または2種以上の混合物を使用することができる。
【0043】
ポリオキサゾリンはアクリル樹脂より分子中にCO基を多く含んでおり、このCO基は無機粉末の表面に存在するOH基と親和性がよいため、無機粉末のぬれ性がよくなって、その結果ポリオキサゾリンをバインダとして用いると、セラミックスラリーの粘度を下げる効果を生じるものと推察される。また、ポリオキサゾリンは溶媒に対する溶解性も優れている。
【0044】
本発明のセラミック配線基板1は、コンデンサ電極層4間の前記絶縁層2a〜2d(図1に示した例では2b)は、100質量部の無機粉末と、8質量部以上20質量部以下の、重量平均分子量が10万以上45万以下のポリオキサゾリンから成るバインダとから成るセラミックグリーンシートを焼成して成るものであることとすることが重要である。
【0045】
これは、セラミックグリーンシートの厚みばらつきには、主にセラミックスラリーをベースフィルム上に膜状に塗布した後のレベリング性が大きく影響しており、セラミックスラリーの粘度・降伏値が高いとレベリング性が悪化する傾向があるからである。セラミックスラリーの粘度・降伏値を下げる方法としては、溶媒量を増やす方法やバインダの混合割合を下げる方法でも可能であるが、溶媒量を増やす方法では塗布されたスラリー膜のチキソ性が小さくなり、保形性がなくなるのでセラミックスラリーが流れやすくなり、目的の厚みにすることが困難となる。また、溶媒量が多いと乾燥収縮が大きくなるためクラック等の欠陥が発生しやすくなり、さらには溶剤の乾燥に時間がかかるので、乾燥を早めるために温度を上げたり乾燥風量を上げたりすると、急激に溶媒が蒸発する際にピンホールが形成されやすくなる等、成膜性が悪化する傾向がある。また、バインダの混合割合を下げる方法では、無機粉末とバインダとが充分に結合しないために、セラミックグリーンシートの膜強度が弱くなり、セラミックグリーンシートにクラックや無機粉末の脱粒による欠陥が発生しやすくなる傾向がある。
【0046】
これに対し、ポリオキサゾリンの重量平均分子量を10万以上45万以下の範囲とし、かつ無機粉末とポリオキサゾリンから成るバインダとの混合割合を、無機粉末100質量部に対してバインダを8質量部以上20質量部以下とすることにより、保形性・成膜性・膜強度を維持しつつセラミックスラリーの粘度・降伏値を下げ、ベースフィルム上に膜状に塗布した後のレベリング性を向上させることができ、セラミックグリーンシートの厚みばらつきを有効に抑制することができる。
【0047】
重量平均分子量が45万を超えると、ポリオキサゾリンの分子鎖が長くなり、バインダ中で分子同士がお互いに絡み合う機会が増加することから、セラミックスラリーの粘度・降伏値が上がり過ぎ、ベースフィルム上に膜状に塗布した後のレベリング性が悪化し、セラミックグリーンシートの厚みばらつきが大きくなる傾向がある。
【0048】
重量平均分子量が10万未満の場合には、ポリオキサゾリンの分子鎖が短くなり、バインダ中で分子同士がお互いに絡み合う機会が減少することから、セラミックスラリーの粘度・降伏値が下がり過ぎ、例えば塗布後の乾燥工程において過熱された空気が当ることによりセラミックスラリーが流れて厚みばらつきが大きくなり、またセラミックグリーンシートの強度が低下し乾燥収縮することで生じる応力によりクラック等の欠陥が発生しやすくなるといった傾向がある。
【0049】
また、本発明のセラミック配線基板1は、セラミックグリーンシートにおいて、無機粉末と、重量平均分子量が10万以上45万以下のポリオキサゾリンから成るバインダとの混合割合は、無機粉末100質量部に対してバインダを8質量部以上20質量部以下とすることが重要である。
【0050】
これは、この混合割合とすると、無機粉末とバインダとが充分に結合し、セラミックグリーンシートの強度を向上させることができるからであり、また、この混合割合とすると、セラミックグリーンシート中の無機粉末の充填率が適量となり、焼成後に緻密な焼結体を得ることができるからである。
【0051】
バインダの混合割合が8質量部未満の場合には、無機粉末とバインダとが充分に結合しないために、セラミックグリーンシートの強度が弱くなり、セラミックグリーンシートにクラックや無機粉末の脱粒によるピンホール等の欠陥が発生しやすくなる傾向がある。
【0052】
他方、バインダの混合割合が20質量部を超えると、セラミックグリーンシート中の無機粉末の充填率が低下するために、焼成後に緻密な焼結体が得られなくなり、焼結体中にボイドや欠け等の欠陥が生じやすくなる傾向がある。
【0053】
さらに、本発明のセラミック配線基板1は、ポリオキサゾリンから成るバインダの酸価が、0.05mgKOH/g以上50mgKOH/g以下であることが好ましい。
【0054】
これは、この酸価の範囲とすると、ポリオキサゾリンから成るバインダの分子中のCOOH基の数が無機粉末の表面に存在するOH基の数に対して適量となり、無機粉末とポリオキサゾリンから成るバインダとの分散性を向上させることができるからであり、その結果、保形性・成膜性・膜強度を維持しつつセラミックスラリーの粘度・降伏値を下げてベースフィルム上に膜状に塗布した後のレベリング性を向上することができ、セラミックグリーンシートの厚みばらつきをより一層有効に制御することができるからである。
【0055】
ポリオキサゾリンから成るバインダの酸価が0.05mgKOH/g未満の場合には、無機粉末の表面に存在するOH基に対してポリオキサゾリンから成るバインダ分子中のCOOH基の数が少ないために無機粉末を分散させることが困難となり、無機粉末が凝集しセラミックスラリーが増粘しやすくなることから、塗布後のセラミックスラリーの表面が良好に平坦化せず均一な膜厚のセラミックグリーンシートが形成しづらくなる傾向がある。
【0056】
他方、50mgKOH/gを超えると、無機粉末の表面に存在するOH基に対して過剰なCOOH基がポリオキサゾリンから成るバインダの分子同士を互いに結合させることとなり、セラミックスラリーが増粘しやすくなり、また焼成時における脱脂性が悪化しやすくなって焼結性が上がらず十分に緻密な焼結体が得られにくくなるという傾向がある。
【0057】
なお、グリーンシートを成形するためのスラリーに用いられる溶媒としては、無機粉末およびバインダを分散させ、グリーンシート成形に適した粘度・降伏値が得られるように、例えば水や、メチルアルコール・エチルアルコール・イソプロピルアルコール等のアルコール類を使用することができる。
【0058】
この溶媒量は、無機粉末およびバインダを分散させ、グリーンシートの成形に適した粘度・降伏値が得られ、かつ上述したような保形性・成膜性・膜強度を維持するためには、無機粉末100質量部に対して40質量部〜60質量部とするとよい。
【0059】
本発明のセラミック配線基板1は、上記のような無機粉末・バインダに溶媒等を添加混合してセラミックスラリーとするとともに、そのセラミックスラリーに従来周知のドクターブレード法やダイコート法等を採用することによって成形して複数のセラミックグリーンシートを準備し、これらのセラミックグリーンシートに対してメタライズ導体と成るメタライズペーストの印刷や、積層等の所定の加工を施し、焼成することにより製造される。
【0060】
次に、本発明のセラミック配線基板1の製造方法について、図2(1)〜図2(5)に製造工程毎に示した断面図に基づいて説明する。
【0061】
まず、図2(1)に示すように、ガラス粉末またはガラス粉末とセラミックフィラー粉末とを所定量秤量し、混合してガラスセラミック組成物を調整し、その組成物に有機バインダ等を加えた後、ドクターブレード法・圧延方・プレス法等によりベースフィルム上に膜状に塗布して、100質量部の無機粉末と、8質量部以上20質量部以下の、重量平均分子量が10万以上45万以下のポリオキサゾリンから成るバインダとから成るセラミックグリーンシート10を複数準備する(a工程)。
【0062】
この(a)工程においては、バインダを100質量部の無機粉末と、8質量部以上20質量部以下の、重量平均分子量が10万以上45万以下のポリオキサゾリンから成るものとすることが重要である。
【0063】
これは、100質量部の無機粉末と、8質量部以上20質量部以下の、重量平均分子量が10万以上45万以下のポリオキサゾリンから成るバインダとから成るセラミックグリーンシートとすることにより、本発明の配線基板の説明で前述した通り保形性・成膜性・膜強度を維持しつつセラミックスラリーの粘度・降伏値を下げ、ベースフィルム上に膜状に塗布した後のレベリング性を向上させることができ、セラミックグリーンシート10の厚みばらつきを有効に抑制することができるからである。
【0064】
ポリオキサゾリンから成るバインダの重量平均分子量が45万を超えると、ポリオキサゾリンの分子鎖が長くなり、バインダ中で分子同士がお互いに絡み合う機会が増加することから、セラミックスラリーの粘度・降伏値が上がり過ぎ、ベースフィルム上に膜状に塗布した後のレベリング性が悪化し、セラミックグリーンシート10の厚みばらつきが大きくなる傾向がある。
【0065】
重量平均分子量が10万未満の場合には、ポリオキサゾリンの分子鎖が短くなり、バインダ中で分子同士がお互いに絡み合う機会が減少することから、セラミックスラリーの粘度・降伏値が下がり過ぎ、例えば塗布後の乾燥工程において過熱された空気が当ることによりセラミックスラリーが流れて厚みばらつきが大きくなり、またセラミックグリーンシート10の強度が低下し乾燥収縮することで生じる応力によりクラック等の欠陥が発生しやすくなるといった傾向がある。
【0066】
バインダの混合割合が8質量部未満の場合には、無機粉末とバインダとが充分に結合しないために、セラミックグリーンシート10の強度が弱くなり、セラミックグリーンシート10にクラックや無機粉末の脱粒によるピンホール等の欠陥が発生しやすくなる傾向がある。
【0067】
他方、バインダの混合割合が20質量部を超えると、セラミックグリーンシート10中の無機粉末の充填率が低下するために、焼成後に緻密な焼結体が得られなくなり、焼結体中にボイドや欠け等の欠陥が生じやすくなる傾向がある。
【0068】
また、ポリオキサゾリンから成るバインダの酸価は、バインダの酸価が、0.05mgKOH/g以上50mgKOH/g以下であることが好ましい。
【0069】
これは、この酸価の範囲とすると、ポリオキサゾリンから成るバインダの分子中のCOOH基の数が無機粉末の表面に存在するOH基の数に対して適量となり、無機粉末とポリオキサゾリンから成るバインダとの分散性を向上させることができるからであり、その結果、保形性・成膜性・膜強度を維持しつつセラミックスラリーの粘度・降伏値を下げてベースフィルム上に膜状に塗布した後のレベリング性を向上することができ、セラミックグリーンシート10の厚みばらつきをより一層有効に制御することができるためである。このように厚みばらつきがより一層有効に制御されたセラミックグリーンシート10をコンデンサ電極層間の絶縁層として用いることにより、より高容量かつ低インダクタンスで高精度なコンデンサを内蔵したセラミック配線基板を確実に得ることができる。
【0070】
さらに、ポリオキサゾリンから成るバインダの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が2以上7以下であることが好ましい。
【0071】
これは、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)をこの範囲とすると、バインダに含まれるポリオキサゾリンの分子鎖の長さの分布が適度となり、無機粉末とポリオキサゾリンから成るバインダとの結合性が良くなって、保形性・成膜性・膜強度を維持しつつセラミックスラリーの粘度・降伏値を下げ、ベースフィルム上に膜状に塗布した後のレベリング性を向上させることができ、セラミックグリーンシートの厚みばらつきをより一層有効に抑制することができるからである。
【0072】
重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が2未満の場合には、ポリオキサゾリンから成るバインダの分子鎖の長さが均一になりやすい。その結果、セラミックスラリーの粘度・降伏値を下げ、ベースフィルム上に膜状に塗布した後のレベリング性を向上させやすくすることはできるが、一方、バインダ中で分子同士がお互いに絡み合う機会が減少しやすくなることから、保形性・成膜性・膜強度を維持することが困難となりやすい傾向がある。
【0073】
他方、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が7を超えると、ポリオキサゾリンから成るバインダの分子鎖が長いものと分子鎖が短いものとの分子同士がお互いに絡み合う機会が増加しやすくなることから、セラミックスラリーの粘度・降伏値が上がり過ぎ、ベースフィルム上に膜状に塗布した後のレベリング性が悪化しやすくなり、セラミックグリーンシートの厚みばらつきが大きくなりやすいという傾向がある。
【0074】
また、本発明のセラミック配線基板1の製造方法においては、セラミックスラリーのチキソトロピー指数を2以上5以下とすることが好ましい。
【0075】
ここで、チキソトロピーとは、異常粘性の一種で、粘弾性体に対してかき混ぜる等の応力を加えた場合、ゲルが流動性のゾルに変わり、これを放置しておくと再びゲルにもどる性質のことで、チキソトロピー指数とは粘弾性体に低ずれ応力を加えた場合の粘度を、粘弾性体に高ずれ応力を加えた場合の粘度で割った値である。
【0076】
本発明のセラミック配線基板1の製造方法においては、セラミックスラリーのチキソトロピー指数を2以上5以下であるものとしたときには、セラミックスラリーをベースフィルム上に塗工する際に、セラミックスラリーの粘度や降伏値を適度に低いものとし、セラミックスラリーをより一層、均一かつ滑らかに、かつ保形性を維持してベースフィルム上に塗工することができるようになるため、ベースフィルム上に塗工されたセラミックスラリーのレベリング性をより一層向上させることができ、塗工されたセラミックスラリーを乾燥して得られるセラミックグリーンシートの平坦性をより一層向上することが可能となるからである。
【0077】
チキソトロピー指数が2未満になると、セラミックスラリーが流れやすくなる傾向があり、ベースフィルム上に塗工したときにセラミックスラリーの保形性が低くなり、乾燥時にセラミックグリーンシートの表面の平坦性が悪くなる傾向がある。
【0078】
他方、チキソトロピー指数が5を超えると、セラミックスラリーをベースフィルム上に塗工する際に、セラミックスラリーの粘度や降伏値が若干高くなりすぎて塗工しにくくなる傾向があり、ベースフィルム上に塗工されたセラミックスラリーの平坦性を向上させることが困難となる。
【0079】
なお、セラミックスラリーのチキソトロピー指数を2以上5以下とするには、有機溶剤添加量にてセラミックスラリー中の固形分比率を調整する方法や、有機バインダの酸価および分子量を調整する方法、または分散剤の種類および添加量を調整するといった方法を用いることができる。
【0080】
例えば、有機溶剤添加量にてセラミックスラリー中の固形分比率を調整する方法の場合、有機溶剤の添加量を多くすることにより、チキソトロピー指数を低く調整することができ、有機溶剤の添加量を少なくするとチキソトロピー指数を高く調整することができる。
【0081】
次に、図2(2)に示すように、このグリーンシート10にレーザ加工やマイクロドリル・パンチング等の機械的加工により貫通孔を形成し、その内部に導体ペーストを充填してビアホール導体となるビアホール導体パターン11を形成する。
【0082】
導体ペーストは、Cu・Ag・Al・Au・Ni・PtおよびPdから選ばれる少なくとも1種以上の金属粉末を有機溶剤・バインダとともに混練することにより形成され、例えば、Cuの粉末と有機バインダと有機溶剤とを含み、必要に応じてガラス等の無機成分を添加して混合して調製される。
【0083】
導体ペーストの貫通孔内への充填は、貫通孔の配置に合わせて開口を形成したスクリーン製版を用いるスクリーン印刷法により行なうことができる。
【0084】
次に、図2(3)、(4)に示すように、このグリーンシート10の表面に金属粉末のメタライズペーストを印刷して配線パターン12、およびコンデンサ電極パターン13を形成する(b工程)。
【0085】
この配線回路パターン12、およびコンデンサ電極パターン13を形成するメタライズペーストは、通常、上述のビアホール導体パターンを形成するための導体ペーストと同様の金属材料(つまり、Cu・Ag・Al・Au・Ni・PtおよびPdから選ばれる少なくとも1種以上の金属粉末)および同様の製造・調整方法を用いて成るペーストが使用される。
【0086】
メタライズペーストの印刷は、スクリーン印刷・グラビア印刷等の印刷法を採用することができ、例えば、配線回路パターン12やコンデンサ電極パターン13の製版を用いるスクリーン印刷によって、グリーンシート10の表面に所望のパターンに形成することができる。
【0087】
なお、メタライズペーストの印刷後に、配線回路パターン12、およびコンデンサ電極パターン13がグリーンシート10の表面に凹凸を作らないように圧力を印加して埋設しておくことが、静電容量精度の高いコンデンサ電極パターン13を形成する上で望ましい。
【0088】
その後、図2(5)に示すように、貫通孔の形成やメタライズペーストの印刷等の所定の加工を施した複数のセラミックグリーンシートに形成された配線シート14〜17を、配線パターン12およびコンデンサ電極パターン13が内部に配置されるとともに、コンデンサ電極パターン13が配線シート15を挟んで対向するようにして積層し、積層体(図示せず)を作製する(c工程)。なお、図2(5)においては、グリーンシート10・ビアホール導体パターン11・配線回路パターン12およびコンデンサ電極パターン13の符号は省略している。
【0089】
そして、この積層体を400℃〜850℃の温度で加熱処理してグリーンシート10内やビアホール導体パターン11・配線回路パターン12およびコンデンサ電極パターン13中の有機成分を分解除去した後、同時焼成することにより、図1に示すような、セラミックスから成る絶縁層2a〜2dを複数積層して成る絶縁基体2の内部に、金属粉末を焼結して成るメタライズ導体から成る、配線層3および絶縁層2bを挟んで対向するコンデンサ電極層4が形成された、本発明のセラミック配線基板1が得られる(d工程)。ここで、上記の同時焼成の条件としては、例えば積層体をガラスセラミックグリーンシートにて形成し、800℃〜1000℃の窒素雰囲気中で焼成すればよい。
【0090】
なお、この焼成時には、収縮挙動によってセラミック配線基板1となるセラミックグリーンシートに形成された配線シート14〜17の積層体中の配線回路パターン12およびコンデンサ電極パターン13の寸法精度のばらつきを低減するため、上記(c)(d)工程において、セラミックグリーンシートの積層体の焼成温度(セラミックスの焼結温度)では焼結しない拘束グリーンシートを積層するとともに、(d)工程の後に拘束グリーンシートを焼成して成る拘束層を除去することが好ましい。
【0091】
このように、X−Y方向には実質的に収縮しない方法で焼成することにより、従来の製造方法(いわゆる厚膜法)とは異なり、焼成収縮のばらつきに起因するコンデンサ電極層4の寸法精度を維持したまま焼成してコンデンサ電極層4を形成することができる。
【0092】
このように積層体の焼成の際にX−Y方向には実質的に収縮させない方法として、積層体の両主面にグリーンシート10のセラミックスの焼結温度では焼結しない拘束グリーンシートを積層するとともに、その積層体の焼成後に拘束グリーンシートを焼成して成る拘束層を除去する方法を用いた場合には、焼成後のセラミック配線基板1中の配線回路パターン12およびコンデンサ電極パターン13の寸法精度の寸法精度をともにより一層高精度に維持することができることから、電気的な回路定数の安定化をもたらし、配線基板としての電気特性の安定性を向上させるために好ましいものとできる。
【0093】
なお、焼成後、拘束層を除去する方法としては、ガラスセラミック基板の表面に結合した拘束シートを除去できる方法であれば特に制限はなく、例えば超音波洗浄、研磨、ウォータージェット、サンドブラスト、ウェットブラスト(砥粒と水とを空気圧により噴射させる方法)等が挙げられる。
【0094】
セラミック配線基板1を寸法精度良好として製造する方法は、このような拘束グリーンシートでセラミックグリーンシート積層体を挟む方法に限らず、特開昭57−32657号公報に記載されたような方法に基づいて、グリーンシート10(配線シート14〜17)の積層体に対してその積層方向に0.5MPa〜5MPa程度の圧力を印加するような方法を採用し、グリーンシート10のX−Y方向(主面に平行な方向)における収縮を抑制し、グリーンシート10のZ方向(厚み方向)にのみ収縮しX−Y方向には実質的に収縮しない焼成方法にて焼成するようにしてもよい。
【0095】
以上のような本発明のセラミック配線基板の製造方法により、本発明のセラミック配線基板1を作製することができるが、以上のような絶縁層を複数積層して成る絶縁基体から成る多層配線基板ではなく、単層の絶縁層から成る絶縁基体に表裏2層の配線回路層を有するセラミック配線基板を作製する場合には、図2(4)に示す工程においてグリーンシート10の裏面にも同様の配線回路パターン12およびコンデンサ電極パターン13を形成し、その後に焼成を行なうことにより作製することができる。
【0096】
本発明のセラミック配線基板の製造方法によれば、積層体の両主面に拘束グリーンシートを積層して焼成時に積層体をX−Y方向には実質的に収縮させない焼成を行なうことにより、焼成による絶縁基体の寸法ばらつきを抑制することができ、より一層精度の良好な静電容量を有するセラミック配線基板を形成することができる。
【0097】
【実施例】
以下、本発明を具体例によって詳細に説明するが、本発明は以下の具体例に限定されるものではない。
【0098】
無機粉末として、SiO2−Al2O3−MgO−B2O3−ZnO系ガラス粉末60質量部・CaZrO3粉末20質量部・SrTiO3粉末17質量部およびAl2O3粉末3質量部を使用し、この無機粉末100質量部に対して、バインダとして2−ビニル−2−オキサゾリン12質量部および溶媒としてメチルアルコール55質量部を加え、ボールミル法により混合しセラミックスラリーとした。
【0099】
また、2−ビニル−2−オキサゾリンバインダの分子量および酸価と、有機溶剤であるメタノールの添加量とを変えることによりチキソトロピー指数の調整を行なった。
【0100】
このセラミックスラリーを用いて、ダイコート法により、厚さ25μmのセラミックグリーンシートを成形した。
【0101】
成形されたセラミックグリーンシートは、厚みばらつきと外観および静電容量について評価した。
【0102】
静電容量はセラミック配線基板を作製し測定をおこなった。セラミック配線基板の作製方法は以下の通りである。
【0103】
まず、金属粉末として平均粒径が5μmのCu粉末に、有機バインダとしてアクリル系樹脂、溶媒としてDBPを添加混練し、配線回路層用銅ペーストおよびビアホール導体用銅ペーストを作製した。
【0104】
そして、グリーンシートの所定箇所にパンチング加工を行なってビアホールを形成し、そのビアホール内にビアホール導体用銅ペーストを充填した。さらに、グリーンシートの所定箇所に、配線回路層用銅ペーストを用いてスクリーン印刷法にて、配線回路パターンを印刷形成した。
【0105】
さらに、コンデンサ電極パターンを配線回路層用銅ペーストを用いてスクリーン印刷した配線シートを内層に位置するように配置し、60℃の温度および5MPaの圧力にて熱圧着して積層体を形成した。
【0106】
そして、この積層体を、有機バインダ等の有機成分を分解除去するため窒素雰囲気中にて750℃で1時間保持した後、900℃で1時間保持することにより、本発明のセラミック配線基板を作製し静電容量をアジレント・テクノロジー株式会社製インピーダンス測定器(型式:4294Aプレシジョン・インピーダンス・アナライザ、測定精度:±0.08%)にて測定を行なった。その測定結果を表1に示す。
【0107】
【表1】
【0108】
表1における、セラミックグリーンシートの外観について、200mm×200mmに裁断されたセラミックグリーンシート20枚に対して、クラックおよびピンホールが全く無い外観性に優れた試料を「○」として、クラックおよびピンホールの発生しているセラミックグリーンシートが5枚を超える試料を「×」として評価した。また、クラックおよびピンホールの発生しているセラミックグリーンシートが5枚以内の試料は「△」と評価した。セラミックグリーンシートの外観は、クラックおよびピンホールの有無を目視で観察して評価した。
【0109】
セラミックグリーンシートの厚みばらつきは、測定点としてセラミックグリーンシートの成形幅方向に対して等間隔に20点を、成形流れ方向に対して長さ2000mmまでは100mm間隔で、それ以降は成形長さ5m・10m・50mで設定し、合計460点について、株式会社セイコーem社製フィルム厚み測定器(型式:ミリトロン1240型、測定精度:±0.1%)で厚みを測定し、3σ(標準偏差の3倍)が平均厚みの3%以内の試料を「○」とし、平均厚みの4.5%以内の試料を「△」とし、4.5%を超える試料を「×」として評価した。
【0110】
静電容量は、3σ(標準偏差の3倍)が平均静電容量の±5%以内を「○」とし、±7.5%以内を「△」、±7.5%を超えるものを「×」とした。
【0111】
表1の結果から明らかなように、バインダの重量平均分子量が10万未満の5万である試料No.6では、セラミックスラリーの粘度・降伏値が下がり過ぎ、厚みばらつきが大きくなり、またセラミックグリーンシートの強度が低下して、乾燥収縮することで生じる応力によりクラック等の欠陥が生じた(表中の厚みばらつき・外観・静電容量ばらつきの欄にそれぞれ×で示す)。また、重量平均分子量が45万を超える50万である試料No.9では、セラミックスラリーの粘度・降伏値が上がり過ぎ、ベースフィルム上に膜状に塗布した後のレベリング性が悪化し、セラミックグリーンシートの厚みばらつきが大きくなり、さらに静電容量のばらつきも大きくなった(表中の厚みばらつきの欄に×で示す)。
【0112】
これに対して、本発明の試料は厚みばらつき・静電容量の評価結果が良好であったが、バインダの酸価が0.05mgKOH/g未満の0.03mgKOH/gである試料No.10では、無機粉末が凝集しやすくなり、セラミックスラリーの粘度・降伏値が上がり、厚みばらつきが大きくなり、静電容量も大きくなる傾向があった(表中の厚みばらつき・静電容量の欄に△で示す)。
【0113】
また、酸価が50mgKOH/gを超える60mgKOH/gである試料No.14では、セラミックスラリーの粘度・降伏値が上がり、厚みばらつきが大きくなる傾向があり、静電容量も大きくなる傾向があった(表中の厚みばらつき・静電容量ばらつきの欄に△で示す)。
【0114】
また、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(多分散度:Mw/Mn)が2未満の1である試料No.15では、ポリオキサゾリンから成るバインダの分子鎖の長さが均一になる傾向があるため、セラミックスラリーの粘度・降伏値が下がり、ベースフィルム上に膜状に塗布した後のレベリング性を維持することはできるが、一方、バインダ中で分子同士がお互いに絡み合う機会が減少しやすくなることから、保形性・成膜性・膜強度を維持することが困難となり、セラミックグリーンシートにクラックや無機粉末の脱粒によるピンホール等の欠陥が、実用上は問題がないレベルであるものの、生じやすくなった(表中の外観の欄に△で示す)。
【0115】
また、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(多分散度:Mw/Mn)が7を超える8である試料No.18では、ポリオキサゾリンからなるバインダの分子鎖が長いものと分子鎖が短いものとの分子同士がお互いに絡み合う機会が増加しやすくなることから、セラミックスラリーの粘度・降伏値が上がり過ぎ、ベースフィルム上に膜状に塗布した後のレベリング性が悪化し、セラミックグリーンシートの厚みばらつきが、実用上は問題がないレベルであるものの、大きくなる傾向があった(表中の厚みばらつきの欄に△で示す)。
【0116】
また、チキソトロピー指数を1.3とした試料No.19およびチキソトロピー指数を6とした試料No.22では、ベースフィルム上に塗工されたセラミックスラリーの保形性が低下したり塗工時の平坦性が劣化したりする傾向があり、乾燥時に表面に凹凸が生じやすく、厚み精度が劣化する傾向が見られた(表中の厚みばらつきの欄に△で示す)。
【0117】
これに対して、本発明の試料の中でも、バインダ混合割合が8質量部以上20質量部以下の、重量平均分子量が10万以上45万以下の、酸価が0.05mgKOH/g以上50mgKOH/g以下であり、かつポリオキサゾリンから成るバインダの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が2以上7以下でありかつセラミックスラリーのチキソトロピー指数が2以上5以下とした試料であるNo.2〜4・7・8・11〜13・16・17・20・21は、いずれもセラミックグリーンシートの厚みばらつき・外観・静電容量の評価結果が良好であり、セラミックスラリーのレベリング性が良好で、厚みばらつきが小さく、乾燥収縮によるクラックもなく、静電容量のばらつきも小さい優れたものであった。
【0118】
なお、本発明は上述の実施の形態の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば種々の変更は可能である。
【0119】
例えば、上述の実施の形態の例では、無機粉末とポリオキサゾリンと溶媒を添加混合してセラミックスラリーを作製したが、セラミックグリーンシートに柔軟性を付与するために可塑剤を添加してもよく、また無機粉末の分散性を高めるために分散剤を添加してもよい。
【0120】
【発明の効果】
本発明のセラミック配線基板によれば、コンデンサ電極層間の絶縁層として、100質量部の無機粉末と、8質量部以上20質量部以下の、重量平均分子量が10万以上45万以下のポリオキサゾリンから成るバインダとから成るセラミックグリーンシートを焼成して成るものとしたことから、セラミックグリーンシートを得るためのセラミックスラリーについて、その保形性・成膜性・膜強度を維持しつつ粘度・降伏値を下げることができ、このセラミックスラリーをベースフィルム上に膜状に塗布した後のレベリング性を向上させることができる。その結果、セラミックグリーンシートの厚みばらつきを有効に抑制することができ、このセラミックグリーンシートをコンデンサ電極層間の絶縁層として用いることにより、誘電体層を薄く、かつ厚みばらつきの少ないものとすることができ、高容量かつ低インダクタンスで高精度なコンデンサを内蔵したセラミック配線基板を得ることができる。
【0121】
また、本発明のセラミック配線基板において、ポリオキサゾリンから成るバインダの酸価が、0.05mgKOH/g以上50mgKOH/g以下である場合には、無機粉末とポリオキサゾリンから成るバインダとの分散性を好適に向上させることができることから、セラミックスラリーの保形性・成膜性・膜強度をより一層確実に維持しつつ粘度・降伏値を下げることができ、セラミックグリーンシートの厚みばらつきをより一層有効に制御することができるため、このセラミックグリーンシートをコンデンサ電極層間の絶縁層として用いることにより、より一層高容量かつ低インダクタンスで高精度なコンデンサを内蔵したセラミック配線基板を得ることができる。
【0122】
また、本発明のセラミック配線基板の製造方法によれば、100質量部の無機粉末と、8質量部以上20質量部以下の、重量平均分子量が10万以上45万以下のポリオキサゾリンから成るバインダとによりセラミックグリーンシートを準備するようにしたことから、セラミックグリーンシートを得るためのセラミックスラリーについて、その保形性・成膜性・膜強度を維持しつつ粘度・降伏値を下げることができ、このセラミックスラリーをベースフィルム上に塗布して、薄く、かつ厚みばらつきの小さいセラミックグリーンシートを準備することができる。このようにセラミックグリーンシートの厚みばらつきを有効に抑制することができるため以降の積層工程および焼結の工程を不具合もなく簡単に通すことが可能となる。
【0123】
そして、この薄く、かつ厚みばらつきの小さい複数のセラミックグリーンシートにメタライズペーストを印刷して配線パターンおよびコンデンサ電極パターンを形成し、これらの配線パターンおよびコンデンサ電極パターンが内部に配置されるとともにコンデンサ電極パターンがセラミックグリーンシートを挟んで対向する積層体を形成し、この積層体を焼成するようにしたことから、セラミックスから成る絶縁層を複数積層して成る絶縁基体の内部に、金属粉末を焼結して成るメタライズ導体から成る、薄くかつ厚みばらつきの小さい絶縁層を挟んで対向するコンデンサ電極層および配線層が形成された配線基板を得ることができる。
【0124】
また、本発明のセラミック配線基板の製造方法において、上記の各工程を含み、積層体の両面に前記セラミックスの焼結温度では焼結しない拘束グリーンシートを積層するようにした場合には、焼成時に拘束グリーンシートをセラミックグリーンシートと結合させることにより拘束グリーンシートが実質的に収縮しないため、セラミック配線基板の焼成時に生じる平面方向の収縮を拘束グリーンシートによって抑えることができるので、焼成時に熱収縮の異なる誘電体層を変形させることなく、セラミックスから成る絶縁層と配線層とを同時焼成することができ、より一層寸法精度の良好なセラミック配線基板を形成することができる。
【0125】
また、本発明のセラミック配線基板の製造方法において、ポリオキサゾリンから成るバインダの酸価を、0.05mgKOH/g以上50mgKOH/g以下とした場合には、無機粉末とポリオキサゾリンから成るバインダとの分散性をより好適に向上させることができることから、セラミックグリーンシートの厚みばらつきをより一層有効に制御することができるため、このセラミックグリーンシートをコンデンサ電極層間の絶縁層として用いることにより、より一層高容量かつ低インダクタンスで高精度なコンデンサを内蔵したセラミック配線基板を容易に得ることができる。
【0126】
また、本発明のセラミック配線基板の製造方法において、ポリオキサゾリンから成るバインダの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が2以上7以下とした場合には、バインダに含まれるポリオキサゾリンの分子鎖の長さの分布が適度となり、無機粉末とポリオキサゾリンから成るバインダとの結合性が良くなって、保形性・成膜性・膜強度を維持しつつセラミックスラリーの粘度・降伏値を下げ、ベースフィルム上に膜状に塗布した後のレベリング性を向上させることができ、セラミックグリーンシートの厚みばらつきをより一層有効に抑制することが可能となる。
【0127】
その結果、セラミックグリーンシートをコンデンサ電極層間の絶縁層として用いることにより、より一層高容量かつ低インダクタンスで高精度なコンデンサを内蔵したセラミック配線基板を容易に得ることができる。
【0128】
また、本発明のセラミック配線基板の製造方法において、セラミックグリーンシートを準備するための無機粉末とポリオキサゾリンから成るバインダとから成るセラミックスラリーのチキソトロピー指数が2以上5以下であるものとしたときには、セラミックスラリーをベースフィルム上に塗布する際に、セラミックスラリーの粘度や降伏値を適度に低いものとし、セラミックスラリーをより一層、均一かつ滑らかに、かつ保形性を維持して成形することができるようになるため、ベースフィルム上に塗布されたセラミックスラリーのレベリング性をより一層向上させることができ、塗布されたセラミックスラリーを乾燥して得られるセラミックグリーンシートの平坦性をより一層向上することが可能とことなるので、より高容量かつ低インダクタンスで高精度なコンデンサを内蔵したセラミック配線基板を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のセラミック配線基板の実施の形態の一例を示す断面図である。
【図2】本発明のセラミック配線基板の製造方法の実施の形態の一例を示す工程毎の断面図である。
【符号の説明】
1・・・・・セラミック配線基板
2・・・・・絶縁基体
2a〜2d・・・・・絶縁層
3・・・・・配線層
4・・・・・コンデンサ電極層
5・・・・・貫通導体
10・・・・・グリーンシート
11・・・・・ビアホール導体パターン
12・・・・・配線回路パターン
13・・・・・コンデンサ電極パターン
14〜17・・・・・配線シート
Claims (7)
- セラミックスから成る絶縁層を複数積層して成る絶縁基体の内部に、金属粉末を焼結して成るメタライズ導体から成る、配線層および前記絶縁層を挟んで対向するコンデンサ電極層を有するセラミック配線基板であって、前記コンデンサ電極層間の前記絶縁層は、100質量部の無機粉末と、8質量部以上20質量部以下の、重量平均分子量が10万以上45万以下のポリオキサゾリンから成るバインダとから成るセラミックグリーンシートを焼成して成るものであることを特徴とするセラミック配線基板。
- 前記ポリオキサゾリンから成るバインダの酸価が、0.05mgKOH/g以上50mgKOH/g以下であることを特徴とする請求項1記載のセラミック配線基板。
- (a)100質量部の無機粉末と、8質量部以上20質量部以下の、重量平均分子量が10万以上45万以下のポリオキサゾリンから成るバインダとから成るセラミックグリーンシートを複数準備する工程と、(b)前記セラミックグリーンシートの表面に金属粉末のメタライズペーストを印刷して配線パターンおよびコンデンサ電極パターンを形成する工程と、(c)複数の前記セラミックグリ−ンシートを積層して、前記配線パターンおよび前記コンデンサ電極パターンが内部に配置されるとともに前記コンデンサ電極パターンが前記セラミックグリーンシートを挟んで対向する積層体を形成する工程と、(d)該積層体を焼成して、セラミックスから成る絶縁層を複数積層して成る絶縁基体の内部に、前記金属粉末を焼結して成るメタライズ導体から成る、配線層および前記絶縁層を挟んで対向するコンデンサ電極層を形成する工程とを具備することを特徴とするセラミック配線基板の製造方法。
- 前記(c)工程において前記積層体の両主面に前記セラミックスの焼結温度では焼結しない拘束グリーンシートを積層するとともに、前記(d)工程の後に、前記拘束グリーンシートを焼成して成る拘束層を除去する工程を具備することを特徴とする請求項3記載のセラミック配線基板の製造方法。
- 前記ポリオキサゾリンから成るバインダの酸価が、0.05mgKOH/g以上50mgKOH/g以下であることを特徴とする請求項3記載のセラミック配線基板の製造方法。
- 前記ポリオキサゾリンから成るバインダの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が2以上7以下であることを特徴とする請求項3記載のセラミック配線基板の製造方法。
- 前記セラミックグリーンシートを準備するための前記無機粉末と前記ポリオキサゾリンから成るバインダとから成るセラミックスラリーのチキソトロピー指数が2以上5以下であることを特徴とする請求項3記載のセラミック配線基板の製造方法。
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WO2008050757A1 (fr) * | 2006-10-24 | 2008-05-02 | Murata Manufacturing Co., Ltd. | Composition de bouillie pour feuille de céramique crue et son procédé de fabrication, et composant électronique céramique multicouches et son procédé de fabrication |
CN114555739A (zh) * | 2019-09-30 | 2022-05-27 | 富士胶片株式会社 | 粘接片及电子零件 |
-
2003
- 2003-03-24 JP JP2003080207A patent/JP2004319527A/ja not_active Withdrawn
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