JP2004146394A - ガラスセラミック配線基板 - Google Patents
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Abstract
【課題】ガラスセラミックス焼結体から成る絶縁体層の内部および/または表面にこの絶縁体層との同時焼成によって形成された配線導体および内蔵コンデンサのための誘電体層を配設して成るガラスセラミック配線基板において、静電容量の温度変化が小さく、かつ、静電容量の大きなコンデンサを内蔵したガラスセラミック配線基板を得る。
【解決手段】誘電体層が、5乃至20質量部の軟化点が500乃至650℃のガラスと、80乃至95質量部の誘電体粉末とから成るガラスセラミック配線基板である。誘電体層について少量のガラスで誘電体粉末を緻密に焼結させることができるので、静電容量の温度変化が小さく、かつ、静電容量の大きなコンデンサを内蔵したガラスセラミック配線基板を得ることが可能となる。
【選択図】 なし
【解決手段】誘電体層が、5乃至20質量部の軟化点が500乃至650℃のガラスと、80乃至95質量部の誘電体粉末とから成るガラスセラミック配線基板である。誘電体層について少量のガラスで誘電体粉末を緻密に焼結させることができるので、静電容量の温度変化が小さく、かつ、静電容量の大きなコンデンサを内蔵したガラスセラミック配線基板を得ることが可能となる。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体素子・チップ部品等を搭載し、それらを相互配線するためのガラスセラミック配線基板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、IT(Information Technology)産業の中核をなす半導体分野では、半導体素子の性能向上が著しく、大型コンピュータ・パーソナルコンピュータ・移動通信端末等に代表される情報処理装置の、情報処理速度の高速化・装置の小型化・多機能化等を支えている。
【0003】
しかしながら、半導体素子が高速化・高性能化しても、素子と素子とを接続する配線基板上での信号遅延やクロストーク・インピーダンスのミスマッチ・電源変動等によるノイズによって、システムとしての動作が制限されることがあった。
【0004】
このため、高速かつ高性能な情報処理装置には、高性能の半導体素子をセラミック配線基板上に複数実装した、いわゆるマルチチップモジュール(MCM)が採用されている。
【0005】
このようなモジュールにおいて、半導体素子等の実装密度を高め、各半導体素子間を電気的に良好に接続するためには、配線導体を3次元的に配したセラミック配線基板が有用であり、従来は、セラミック配線基板の絶縁体層の材料としてアルミナセラミックス(酸化アルミニウム質焼結体)が用いられていた。
【0006】
しかしながら、アルミナセラミックスは焼結温度が1300℃以上と高いため、その絶縁体層に形成する配線導体としては高融点金属のタングステンやモリブデン等を使用する必要があり、また、これら高融点金属の酸化防止の点から、焼成を還元性雰囲気下で行なう必要があった。また、これら高融点金属は比抵抗が大きいため、高密度配線が難しいという問題点もあった。さらに、アルミナセラミックスは比誘電率が約10と大きいため、実装した半導体素子を高速で動作させたときの信号遅延が大きくなったり、シリコンと比べて熱膨張率が大きいため、半導体素子の実装後に熱サイクルによる信頼性が低下したりするという問題も生じることがあった。
【0007】
そこで、これらの問題を解決するため、セラミックスとガラスとの複合材料であるガラスセラミックスが絶縁体層の材料として注目を集めている。
【0008】
ガラスセラミックスは、母材となるセラミックスにガラスを加えた材料であり、焼結温度を低下させることができることから、材料物性や焼結温度に対する設計の自由度を大幅に広げることが可能となった。特に、比抵抗の小さな銀・銅等の低融点金属を配線導体材料として用いて同時焼成が可能なことから、高周波特性に優れた配線基板を形成することができる。
【0009】
また、近年、表面実装部品(SMD:Surface Mounted Device)の一部構成素子であったコンデンサやインダクタ等の受動素子をセラミック配線基板内に取り込むことによって、モジュール全体を小型化しようとする試みがなされている。
【0010】
例えば、コンデンサをセラミック配線基板内に取り込む場合は、セラミック配線基板の内部に誘電体層を配設し、その誘電体層を挟むように上下に配線導体を形成することによってセラミック配線基板内にコンデンサが形成され内蔵される。
【0011】
このようなセラミック配線基板は、配線導体用ペーストを塗布してコンデンサ電極パターンが形成された誘電体層となる誘電体グリーンシートを、所定の回路配線が形成された絶縁体層となる絶縁体グリーンシートで挟んで積層し、焼成することにより得られる。
【0012】
その際に、この誘電体層の厚みを絶縁体層より薄くしたり、誘電体層の比誘電率を絶縁体層より高くしたりすることによって内蔵するコンデンサの容量を高めている。
【0013】
しかし、誘電体層の厚みを薄くする、すなわち、誘電体グリーンシートの厚みを薄くすると、誘電体グリーンシートの強度が低下する傾向があるために、コンデンサ電極パターンを形成するために配線導体用ペーストを塗布した際に、配線導体用ペースト中の溶剤成分により誘電体グリーンシートに膨潤・変形が生じ、その後の乾燥工程でこの膨潤・変形部を起点としたクラックが発生してしまい、焼成後のセラミック配線基板においては上下層の配線導体間が短絡してショート不良が発生してしまうといった問題点があった。
【0014】
そこで、銀・銅等の低融点金属と同時焼成可能な比誘電率の高い誘電体材料として、鉛系複合ペロブスカイト(PMN,PNN,PMW等)またはチタン酸バリウムに代表されるTiO2とアルカリ土類金属酸化物との複合酸化物と、ガラスとの複合材料を、内蔵コンデンサ形成用の誘電体層に用いたガラスセラミック配線基板が提案されている。
【0015】
【特許文献1】
特開平10−149949号公報
【特許文献2】
特開2001−294445号公報
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、鉛系複合ペロブスカイト(PMN,PNN,PMW等)を誘電体層に用いたガラスセラミック配線基板においては、誘電体層の比誘電率の温度変化が大きいために、内蔵するコンデンサの静電容量が設計値に対して大きく変化してしまい、モジュールとして正常に機能しなくなる場合があるという問題点があった。また、昨今の環境負荷を低減しようとする観点から、これら鉛を含んでいる材料を用いることが敬遠されるようになっている。
【0017】
一方、TiO2とアルカリ土類金属酸化物との複合酸化物とガラスとの複合材料を誘電体層に用いたガラスセラミック配線基板においては、比誘電率の温度変化の異なる複数のTiO2とアルカリ土類金属酸化物との複合酸化物とガラスとを混合することで、比誘電率の温度変化を小さくできる点で優れている反面、銀・銅等の低融点金属と同時焼成しようとすると、800〜1000℃で焼結させる必要があり、そのためにガラスを多量に混合せねばならず、その結果、高い比誘電率が得られなくなるという問題点があった。
【0018】
また、このガラスセラミック配線基板の誘電体層に、粒度が粗い誘電体粉末を用いると、ガラスセラミックスの焼結温度である800〜1000℃において、誘電体層が十分に収縮せず、ガラスセラミックスの収縮率と整合しないため、その結果、誘電体層とガラスセラミックスから成る絶縁体層との層間で反りやクラックや剥離を生じ、強度が高く信頼性の高いガラスセラミック配線基板を得ることができないという問題点があった。
【0019】
本発明は上記問題点に鑑み完成されたもので、その目的は、静電容量の温度変化が小さく、かつ、静電容量の大きなコンデンサを内蔵したガラスセラミック配線基板を提供することにある。
【0020】
【課題を解決するための手段】
本発明のガラスセラミック配線基板は、ガラスセラミックス焼結体から成る絶縁体層の内部および/または表面にこの絶縁体層との同時焼成によって形成された配線導体および誘電体層を配設して成るガラスセラミック配線基板であって、前記誘電体層は、5乃至20質量部の軟化点が500乃至650℃のガラスと、80乃至95質量部の誘電体粉末とから成ることを特徴とするものである。
【0021】
また本発明のガラスセラミック配線基板は、上記構成において、前記ガラスは20℃における比誘電率が10以上であり、かつ前記誘電体粉末は純度が99%以上の焼結体によるキュリー点付近における比誘電率が3000以上を示すことを特徴とするものである。
【0022】
また本発明のガラスセラミック配線基板は、上記構成において、前記誘電体層は、平均粒径が2.2μm以下の前記ガラス粉末と、平均粒径が0.3μm以下の前記誘電体粉末とから形成されていることを特徴とするものである。
【0023】
本発明のガラスセラミック配線基板によれば、絶縁体層および配線導体との同時焼成によって形成される誘電体層が、5乃至20質量部の軟化点が500乃至650℃のガラスと、80乃至95質量部の誘電体粉末とから成ることから、少量のガラスで誘電体粉末を緻密に焼結させることができるので、従来使用できなかった比誘電率の温度変化の小さいTiO2とアルカリ土類金属酸化物との複合酸化物である誘電体粉末を、ガラスセラミックスの焼結温度である800〜1000℃で焼結させることも可能となり、この誘電体層による、静電容量の温度変化が小さく、かつ、静電容量の大きなコンデンサを内蔵したガラスセラミック配線基板を得ることができる。
【0024】
また本発明のガラスセラミック配線基板によれば、ガラスが20℃における比誘電率が10以上であり、かつ誘電体粉末が純度が99%以上の焼結体によるキュリー点付近における比誘電率が3000以上を示すものであるときには、絶縁体層および配線導体との同時焼成によって形成される誘電体層が、その誘電体層に含まれる5乃至20質量部のガラスによって比誘電率が大きく低下してしまうようなことが効果的に抑制でき、静電容量の大きなコンデンサを内蔵したガラスセラミック配線基板をより確実に得ることができる。
【0025】
また本発明のガラスセラミック配線基板によれば、誘電体層が、平均粒径が2.2μm以下のガラス粉末と、平均粒径が0.3μm以下の誘電体粉末とから形成されているときには、誘電体層に平均粒径が2.2μm以下の充分小さいガラス粉末が添加されているので、ガラス粉末と誘電体粉末とが混ざり合ったときに局所的にガラスの集中が起こることがなく、粒径が小さい誘電体粉末の粒界を軟化したガラスが満たすことができて、緻密でムラのない焼結体から成る誘電体層を得ることができる。また、誘電体層は平均粒径が0.3μm以下の80乃至95質量部の誘電体粉末により形成されていることから、ガラスセラミックスの焼結温度である800〜1000℃においてガラスセラミックスと同等の収縮率を示す。このため、ガラスセラミックスから成る絶縁体層と誘電体層との収縮の不整合による反りやクラックや剥離を生じることがない。従って、強度が高く、信頼性の高いガラスセラミック配線基板を得ることができる。
【0026】
【発明の実施の形態】
本発明のガラスセラミック配線基板について以下に詳細に説明する。
【0027】
本発明のガラスセラミック配線基板における絶縁体層は、ガラスセラミックス焼結体から成るものであり、ガラスと絶縁体粉末とから成る。
【0028】
このガラスとしては、例えばSiO2−B2O3系・SiO2−B2O3−Al2O3系・SiO2−B2O3−Al2O3−MO系(但し、MはCa,Sr,Mg,BaまたはZnを示す)・SiO2−Al2O3−M1O−M2O系(但し、M1およびM2は同一または異なってCa,Sr,Mg,BaまたはZnを示す)・SiO2−B2O3−Al2O3−M1O−M2O系(但し、M1およびM2は前記と同じである)・SiO2−B2O3−M3 2O系(但し、M3はLi,NaまたはKを示す)・SiO2−B2O3−Al2O3−M3 2O系(但し、M3は前記と同じである)・Pb系ガラス・Bi系ガラス等が挙げられる。
【0029】
また、絶縁体粉末としては、例えばAl2O3,SiO2,ZrO2とアルカリ土類金属酸化物との複合酸化物・TiO2とアルカリ土類金属酸化物との複合酸化物・Al2O3およびSiO2から選ばれる少なくとも1種を含む複合酸化物(例えばスピネル,ムライト,コージェライト)等が挙げられる。
【0030】
ガラス粉末と絶縁体粉末とを混合する場合には、その混合割合が質量比で40:60〜99:1であることが好ましい。
【0031】
この絶縁体層の前駆体である絶縁体グリーンシートは、ガラス粉末および絶縁体粉末と、有機溶剤系バインダ・有機溶剤・可塑剤等とを添加混合してスラリーとするとともに、そのスラリーに従来周知のドクターブレード法やカレンダロール法を採用することによって成形する。
【0032】
このガラス粉末および絶縁体粉末に添加混合される有機溶剤系バインダとしては、従来から絶縁体グリーンシートに使用されているものが使用可能であり、例えばアクリル系(アクリル酸,メタクリル酸またはそれらのエステルの単独重合体または共重合体、具体的にはアクリル酸エステル共重合体,メタクリル酸エステル共重合体,アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体等)・ポリビニルブチラ−ル系・ポリビニルアルコール系・アクリル−スチレン系・ポリプロピレンカーボネート系・セルロース系等の単独重合体または共重合体が挙げられる。
【0033】
絶縁体グリーンシートを成型するためのスラリーに用いられる有機溶剤としては、ガラス粉末と絶縁体粉末、および有機バインダを分散させ、絶縁体グリーンシート成型に適した粘度のスラリーが得られるように、例えば炭化水素類・エーテル類・エステル類・ケトン類・アルコール類等の有機溶剤が挙げられる。
【0034】
本発明のガラスセラミック配線基板においては、絶縁体層の内部および/または表面に絶縁体層との同時焼成によって形成された配線導体および内蔵コンデンサを形成するための誘電体層が配設されており、この誘電体層は5乃至20質量部の軟化点が500乃至650℃のガラスと、80乃至95質量部の誘電体粉末とから成ることが重要である。
【0035】
これは、誘電体粉末を誘電率の温度特性が小さいTiO2とアルカリ土類金属酸化物との複合酸化物としたときに、ガラスの量をこの範囲とすると、誘電体層の比誘電率を低下させないガラス量であり、かつ誘電体粉末の表面を十分に濡らすことができるガラス量であることから、比誘電率が高く、かつボイド等の欠陥の含まれない緻密な誘電体層を形成することができ、静電容量の温度変化が小さく、かつ静電容量の大きな内蔵コンデンサを形成することができるためである。これに対して、ガラスの量が5質量部未満の場合には、焼結時に誘電体粉末の表面を十分に濡らすことができないことから、誘電体粉末間にガラスが液相として介在しない部分が発生し、誘電体層が十分に焼結しないことから、比誘電率が低下するとともに、ボイド等の欠陥が生じやすくなるといった傾向がある。他方、20質量部を超えると、誘電体層に占めるガラスの量が多量となり比誘電率が低下することから、高い比誘電率の誘電体層が得られ難くなるといった傾向がある。
【0036】
また、この軟化点の範囲とすると、比較的低温でガラスの粘度が低下して液相が生じるために、ガラスセラミック配線基板の絶縁体層の焼結温度である800℃〜1000℃での加熱時に誘電体粉末の表面を十分に濡らすことができ、誘電体粉末を低温焼結することができるためである。これに対して、軟化点が500℃未満の場合には、誘電体層の前駆体である誘電体グリーンシート中に含まれる有機溶剤系バインダ等の有機成分が分解揮発する前にガラスが軟化して有機成分を包み込むために、焼成後に導電性を有する炭素成分が誘電体層内に残留して誘電体層の比誘電率が劣化するとともに、包み込まれた有機成分が分解揮発する際に気泡を生じて誘電体層内にボイド等の欠陥が生じる傾向がある。他方、650℃を超えると、ガラスセラミック配線基板の絶縁体層の焼結温度である800℃〜1000℃では十分に粘度が低下しないために、誘電体粉末の表面を濡らすことができず、ボイド等の欠陥が生じ、緻密な焼結体が得られなくなる傾向がある。
【0037】
また本発明のガラスセラミック配線基板においては、絶縁体層および配線導体との同時焼成によって形成される誘電体層のガラスが20℃における比誘電率が10以上であり、かつ誘電体粉末が純度が99%以上の焼結体によるキュリー点付近における比誘電率が3000以上を示すものであることが好ましい。
【0038】
誘電体を形成するガラスおよび誘電体粉末の比誘電率の値をこの範囲にすることにより、焼結前のガラスの比誘電率が充分高く、その特性が焼結後まで維持されるものとなり、また誘電体層を形成する誘電体材料の主成分である誘電体粉末は、99%以上の焼結体によるキュリー点付近における比誘電率が高いために、ガラスの添加による比誘電率の低下を充分吸収することができるので、誘電体層に5乃至20質量部の割合で含まれる比誘電率の低いガラスによって誘電体層の比誘電率が大きく低下してしまうようなことが効果的に抑制でき、静電容量の大きなコンデンサを内蔵したガラスセラミック配線基板をより確実に得ることができる。
【0039】
ガラスと誘電体粉末との複合材料である誘電体組成物の比誘電率は対数混合則によって決まるので、ガラスの比誘電率が10未満の場合には、ガラスの添加量が5乃至20質量部と少量であっても、誘電体組成物の比誘電率は比誘電率の低いガラス成分に支配され、誘電体組成物ひいては誘電体層の比誘電率が大きく低下してしまい、静電容量の大きなコンデンサを内蔵したガラスセラミック配線基板を得ることができない傾向がある。なお、ここで20℃における比誘電率を10以上とするのは、ガラスの比誘電率は温度依存性がある場合があるので、誘電体の温度特性測定の一般的な基準値である室温付近の20℃を、ガラスについての比誘電率の測定温度としたことによる。
【0040】
一方、誘電体粉末が純度が99%以上の焼結体によるキュリー点付近における比誘電率が3000に満たない場合は、誘電体粉末が固相焼結する温度付近でも誘電体粉末の粒や結晶が成長しないことによって高い比誘電率が得られていないものであるため、誘電体層において誘電体材料の特徴である強誘電性が現れないこととなる。従って、誘電体粉末の固相焼結温度よりはるかに低いガラスセラミック配線基板焼結温度である800℃〜1000℃では、焼結助剤としてガラスを5乃至20質量部添加することによって焼結を促進しても、誘電体層において同様に誘電体粉末の粒や結晶の成長が行なわれず、誘電体組成物の比誘電率が低下し、やはり静電容量の大きなコンデンサを内蔵したガラスセラミック配線基板を得ることができない傾向がある。
【0041】
また、本発明のガラスセラミック配線基板においては、誘電体層が平均粒径が2.2μm以下のガラス粉末と、平均粒径が0.3μm以下の誘電体粉末とから形成されていることが重要である。
【0042】
より好ましくは、ガラス粉末は平均粒径が1μm程度であると良い。ガラスを微粉化する一般的な手法は、有機溶剤とミルによる機械的粉砕であるが、この手法は、粉砕工程が長くなり、粉砕後の溶媒の除去が難しく、メディアのコンタミネーションが懸念され、誘電体層の電気特性を損なう恐れがある。そこで、本発明のガラスセラミック配線基板の誘電体層に使用するガラス粉末の微粉化手法としては、メディアのコンタミネーション防止の観点からメディア・粉砕ローター・ケーシーングの材質が耐磨耗性に優れたセラミックから成り、かつφ0.3μm程度の小径メディアを使用することでより一層粉体同士の摩砕による粉砕が可能な、ビーズミル工法を用いることが好ましい。
【0043】
また、誘電体粉末は平均粒径が0.1〜0.2μm程度であることが好ましい。誘電体粉末は水熱合成方法によって粒径の小さなものを造ることが可能であるが、粒径が小さすぎると、2次凝集によって粉体同士が分散せず均一な組成ができなくなるほか、ペーストやスラリー化するときに多量のバインダや分散剤が必要となり、ペーストやスラリーの充填が低くなる。従って、本発明のガラスセラミック配線基板の誘電体層に使用する誘電体粉末としては、平均粒径が0.3μm以下、中でも0.1〜0.2μmのものを使用することが好ましい。
【0044】
誘電体層は、平均粒径が2.2μm以下の充分小さいガラス粉末が添加されて形成されているときには、誘電体粉末とガラス粉末とが混ざり合ったときに局所的にガラスの集中が起こることがなく、粒径の小さい誘電体粉末の粒界を軟化したガラスが満たたすことができ、緻密でムラのない焼結体を得ることができる。また、誘電体層は、平均粒径が0.3μm以下で80乃至95質量部の誘電体粉末で形成されているときには、誘電体粉末の粒度が細かいためにその粒子間の接触面積が大きくなり、粒子の焼結や成長が促進され、通常の粗い誘電体粉末を使用した場合よりも収縮が早く始まり、ガラスセラミックスの焼結温度である800〜1000℃においてガラスセラミックスと同等の収縮率を示す。このため、ガラスセラミックスから成る絶縁体層と誘電体層との収縮の不整合による反りやクラックや剥離を生じることがない。従って、強度が高く、信頼性の高いガラスセラミック配線基板を得ることができる。
【0045】
ガラス粉末の平均粒径が2.2μmより大きい場合は、誘電体粉末と混ざり合った際に局所的にガラスが集中し、ガラスセラミックスの焼結温度である800〜1000℃においてガラスが軟化しても、平均粒径が0.3μm以下の誘電体粉末の粒界を十分に満たすことができない場合がある。従って、このような誘電体層は、焼結した部分と未焼結の部分とが混在する不均一な組織となる傾向があり、温度サイクル等の信頼性試験後に絶縁性が低下したり、静電容量が不安定になったり、さらには誘電体層にクラック等の不具合が生じたりすることがある。
【0046】
誘電体粉末の平均粒径が0.3μmより大きい場合は、粒度が粗いために粒子間の接触面積が小さくなり、粒子の焼結や成長が抑制され、ガラスセラミックスの焼結温度である800〜1000℃においてガラスセラミックスほど収縮しない場合がある。従って、残留応力として誘電体層の内部にストレスが残存する傾向があり、信頼性試験後の特性劣化を引き起こしたり、反りやクラックや剥離を生じたりすることがある。また、このような場合、誘電体層がガラスセラミックスの収縮を抑制するために、ガラスセラミックスの本来の比重や強度が得られなくなって、温度サイクル等の信頼性試験後にガラスセラミック配線基板自体が割れる等の不具合を生ずることもある。
【0047】
このような500乃至650℃の軟化点を有する本発明のガラスセラミック配線基板における誘電体層に好適なガラスとしては、例えばSiO2−B2O3系・SiO2−B2O3−Al2O3系・SiO2−B2O3−Al2O3−MO系(但し、MはCa,Sr,Mg,BaまたはZnを示す)SiO2−B2O3−M3 2O系(但し、M3はLi,NaまたはKを示す)・SiO2−B2O3−Al2O3−M3 2O系(但し、M3は前記と同じである)・Pb系ガラス・Bi系ガラス等を用いることができる。
【0048】
この誘電体層の前駆体である誘電体グリーンシートは、ガラス粉末および誘電体粉末と、有機溶剤系バインダ・有機溶剤・可塑剤等とを添加混合してスラリーとするとともに、そのスラリーに従来周知のドクターブレード法やカレンダロール法を採用することによって成形する。
【0049】
焼成後に誘電体層となる誘電体グリーンシートに用いられる誘電体粉末としては、ガラスセラミック配線基板に内蔵されるコンデンサの誘電体層が得られる、絶縁体層との同時焼成が可能でその絶縁体粉末よりも高い比誘電率を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、チタン酸バリウム・チタン酸ストロンチウム・ジルコン酸バリウムの高誘電率の誘電体の粉末が使用可能である。その粒径については、グリーンシート積層法に必要な強度を有する誘電体グリーンシートを成形する際の分散性および成形性の点から、0.05μm〜3μmであることが好ましい。
【0050】
そして、上記の誘電体材料およびガラス材料の中から、所望の内蔵コンデンサに必要な静電容量やその温度特性等を満たすことができる材料を選択して、ガラスが5乃至20質量部で誘電体粉末が80乃至95質量部である組成比で混合して
また、この誘電体グリーンシートに用いられる有機溶剤系バインダ・有機溶剤としては、ガラスセラミックス焼結体から成る絶縁体層との同時焼成が可能であれば特に制限されるものではなく、例えば絶縁体グリーンシートに配合される有機溶剤系バインダ・有機溶剤と同様のものが使用可能である。
【0051】
以上のようにして作製した絶縁体グリーンシートおよび誘電体グリーンシートに、必要に応じて金型加工等により貫通孔を形成し、この貫通孔にタングステン・モリブデン・金・銀・銅等の金属粉末に適当な有機バインダ・溶剤を添加混合した貫通導体用ペーストをスクリーン印刷等により充填し貫通導体となる貫通導体パターンを形成する。
【0052】
次に、これらのグリーンシートの表面に、タングステン・モリブデン・金・銀・銅等の金属粉末に適当な有機バインダ・溶剤を添加混合した配線導体用ペーストをスクリーン印刷等により塗布し、回路配線やコンデンサ電極等の所定形状の配線導体となる配線導体パターンを形成する。
【0053】
次に、貫通導体パターンや配線導体パターンを形成した複数の誘電体グリ−ンシートと絶縁体グリ−ンシートとを、3〜20MPaの圧力および30〜80℃の温度で加熱圧着する等して積層体を作製する。この積層体中における誘電体グリーンシートの位置や数や大きさには特に制限はなく、所望の内蔵コンデンサを有する配線基板の構成となるように配設して積層すればよい。
【0054】
その後、例えば導体用ペーストの金属粉末がAg粉末である場合は、大気中で800〜1000℃の温度で積層体を焼成することにより、本発明のセラミック配線基板が得られる。
【0055】
また積層体を焼成する際に、絶縁体グリーンシートや誘電体グリーンシートが焼結する温度では実質的に焼結収縮しない無機成分、例えばアルミナから成る拘束グリーンシートを積層体の両面に積層して焼成すると、この拘束グリーンシートによって積層体の主面方向の焼成時の収縮が拘束されて抑制されるために配線基板の寸法精度が向上し、ガラスセラミック配線基板に内蔵させるコンデンサの容量値のばらつきを小さくすることが可能となる。また、このような方法で焼成した場合は、厚み方向の焼成収縮が通常の方法で焼成した場合に比較して大きくなるので、誘電体層の厚みをより薄くすることが可能となり、内蔵コンデンサの高容量化も容易となる。
【0056】
さらに、ガラスセラミック配線基板の表面に位置する配線導体には、その表面に電子部品を実装する際の半田濡れ性の向上や配線導体の腐食防止のために、ニッケル・銅・金等のめっきを施してもよい。
【0057】
【実施例】
以下、本発明を具体例によって詳細に説明するが、本発明は以下の具体例に限定されるものではない。
【0058】
絶縁体層となる絶縁体グリーンシートを得るために、ガラスとしてSiO2−CaO−MgO系ガラス粉末50質量部と、誘電体粉末としてAl2O3粉末50質量部とを混合し、この無機粉末100質量部に有機バインダとしてアクリル樹脂12質量部・フタル酸系可塑剤6質量部および溶剤としてトルエン30質量部を加え、ボールミル法により混合しスラリーとした。
【0059】
このスラリーを用いてドクターブレード法により厚さ200μmの絶縁体グリーンシートを成形した。
【0060】
この絶縁体グリーンシートに金型またはパンチングマシーンを用いて所定の位置に貫通孔を形成し、この貫通孔にスクリーン印刷法にて貫通導体用ペーストを充填した。
【0061】
貫通導体用ペーストとしては、銅の粉末(平均粒径3μm)100質量部に対してAl2O3粉末1質量部および前記ガラスと同組成のガラス粉末5質量部を加え、さらにビヒクル成分として所定量のエチルセルロース系樹脂およびテルピネオールを加えて、3本ロールにより適度な粘度になるように混合したものを用いた。
【0062】
次に、充填した貫通導体用ペースト中の有機溶剤分の重量が減少するまで、60℃の温風により乾燥した
次に、このセラミックグリーンシート上に、配線導体用ペーストをスクリーン印刷により塗布し、縦40mm×横50mm×厚み15μmのコンデンサ電極パターンを形成した。
【0063】
配線導体用ペーストとしては、銅の粉末(平均粒径3μm)100質量部に対してAl2O3粉末1質量部および前記ガラスと同組成のガラス粉末2質量部を加え、さらにビヒクル成分として所定量のエチルセルロース系樹脂およびテルピネオールを加えて、3本ロールにより適度な粘度になるように混合したものを用いた。
【0064】
次に、印刷した配線導体用ペースト中の有機溶剤分の重量が減少するまで、60℃の温風により乾燥した。
【0065】
次に、この絶縁体グリーンシート上に形成されたコンデンサ電極パターン上に、誘電体ペーストをスクリーン印刷により塗布し、縦12mm×横12mm×厚み40μmの誘電体層を形成した。
【0066】
誘電体ペーストはガラスとBaTiO3とから成り、ガラスは表1に示すように混合割合および軟化点の異なるものを選び、ガラスとBaTiO3粉末との和を100質量部とし、これに対して、アクリル樹脂12質量部と、リン酸エステル系分散剤0.5質量部と、有機溶剤としてα−テルピネオールとを加え、攪拌脱泡機により混合した後に、さらに3本ロールを用いて混練した。
【0067】
次に、塗布した誘電体ペースト中の有機溶剤分の重量が減少するまで、60℃の温風により乾燥した。
【0068】
次に、この絶縁体グリーンシート上に印刷された誘電体層を覆うように、配線導体用ペーストをスクリーン印刷により塗布し、縦10mm×横10mm×厚み15μmのコンデンサ電極パターンを形成した。
【0069】
次に、塗布した配線導体用ペースト中の有機溶剤分の重量が減少するまで、60℃の温風により乾燥した。
【0070】
このようにして得られたグリーンシート成形体を、500℃で3時間のバインダの燃焼行程と900℃で1時間のセラミックスの焼結工程とを含む窒素雰囲気中の焼成条件下で焼成し、緻密なガラスセラミック焼結体から成る絶縁体層の内部および/または表面に同時焼成により形成された配線導体および誘電体層を配設して成るガラスセラミック配線基板を得た。
【0071】
このようにして得られたガラスセラミック配線基板中の誘電体層に対して、比誘電率・比誘電率の温度係数・カーボン残渣・ボイドについて評価した。
【0072】
比誘電率は、測定周波数1MHz、測定温度25℃での比誘電率をインピーダンスアナライザーを用いて測定し、比誘電率が200以上の試料を良品とし、200未満の試料を不良品として評価した。
【0073】
比誘電率の温度係数は、測定周波数1MHz、測定温度−55℃〜125℃の範囲での比誘電率をインピーダンスアナライザーを用いて測定し、各測定温度での比誘電率と測定温度25℃での比誘電率との差分と、測定温度25℃での比誘電率との比を求め、この温度係数が±15%未満の試料を良品とし、±15%を超える試料を不良品として評価した。
【0074】
カーボン残渣は、ガラスセラミック配線基板中の誘電体層を選択的に取り出して直径100μm以下の粉体に粉砕し、赤外吸収法により残留炭素分析を行ない、残留炭素量が500ppm未満の良品とし、500ppm以上を不良品として評価した。
【0075】
ボイドは、ガラスセラミック配線基板中の誘電体層の断面を研磨によって露出させ、SEM(走査型電子顕微鏡)にて200倍で観察し、誘電体層の気孔率が10%未満の試料を良品とし、10%以上の試料を不良品とした。
【0076】
誘電体層の反りは、ガラスセラミック配線基板の表面の誘電体層および電極が設けられた縦12mm×横12mmの部分の対角線の反りを、表面粗さ測定器にて測定し、50μm未満を良品とし、50μm以上を不良品とした。
【0077】
ガラスの各混合割合および各軟化点における評価の結果を表1に示す。なお、表1中の評価結果については、それぞれ良品を○で、不良品を×で示した。
【0078】
【表1】
【0079】
表1の結果から明らかなように、ガラスの混合割合が5質量部未満(3質量部)の試料No.1では、ガラスが焼結時に誘電体粉末の表面を十分に濡らすことができないことから、誘電体粉末間にガラスが液相として介在しない部分が発生し、誘電体層が十分に焼結せずに比誘電率が低下し、ボイドが生じた。(表中の比誘電率欄およびボイド欄に×で示す。)また、ガラスの混合割合が20質量部を超える(25質量部)試料No.5では、誘電体層に占めるガラスの量が多量となり比誘電率が低下することから、高い比誘電率の誘電体層が得られなかった。(表中の比誘電率欄に×で示す。)
また、ガラスの軟化点が500℃未満(480℃)の試料No.6では、誘電体層の前駆体である誘電体グリーンシート中に含まれる有機溶剤系バインダ等の有機成分が分解揮発する前にガラスが軟化して有機成分を包み込むために、焼成後に導電性を有する炭素成分が残留し、誘電体層の比誘電率が劣化し、包み込まれた有機成分が分解揮発する際の気泡によるボイドが生じた。(表中の比誘電率欄、カーボン残渣欄およびボイド欄に×で示す。)また、ガラスの軟化点が650℃を超える(776℃)の試料No.9では、ガラスセラミック配線基板の焼結温度である800℃〜1000℃では十分に粘度が低下しないために、誘電体粉末の表面を濡らすことができず、ボイドが生じ、高い比誘電率の誘電体層が得られなかった。また、誘電体層の収縮率とガラスセラミックスの収縮率とが整合していないので、誘電体層に大きな反りが発生した。(表中の比誘電率欄、ボイド欄および誘電体層の反りの欄に×で示す。)
これに対して、本発明のガラスセラミック配線基板の試料であるNo.2〜4,7,8,10〜23,中でも2〜4,7,8,12,15〜17,20,21は、いずれも焼結して得られたガラスセラミック配線基板中の誘電体層の比誘電率および比誘電率の温度係数の評価結果が良好であり、カーボン残渣およびボイド等の欠陥が発生しない優れたものであった。
【0080】
ただ、ガラスの比誘電率が10未満(5)の試料No.10と、同じく比誘電率が10未満(8)の試料No.11とは、ボイドやカーボン残渣がなく良好な焼結体であったが、これらの例では誘電体組成物の比誘電率がガラスの比誘電率によって低下し、誘電体組成物の比誘電率は200をやや下回る不十分な結果となった。(表中の比誘電率欄に△で示す。)また、誘電体粉末が、純度が99%以上の焼結体によるキュリー点付近における比誘電率が3000未満(2500)の試料No.13と、同じく比誘電率が3000未満(2800)の試料No.14とは、ボイドやカーボン残渣がなく良好な焼結体であったが、これらの例では誘電体粉末の本来の強誘電体の特性が発現せず、誘電体組成物の比誘電率は200をやや下回る不十分な結果となった。(表中の比誘電率欄に△で示す。)
また、誘電体粉末の平均粒径が0.3μmより大きい(0.4μm)試料No.18と、同じく平均粒径が0.3μmより大きい(0.5μm)試料No.19とは、ボイドやカーボン残渣がなく良好な焼結体であったが、ガラスセラミックスとの収縮が合わず、誘電体層の反りが凸側に50μmをやや上回る不十分な結果となった。(表中の誘電体層の反り欄に△で示す。)また、ガラス粉末の平均粒径が2.2μmより大きい(2.3μm)の試料No.22と、同じく誘電体粉末の平均粒径が0.3μmより大きい(3.0μm)の試料No.23とは、比誘電率が高くカーボン残渣もなかったが、部分的にやや焼結が甘い部分が見られ、ガラスが誘電体粉末の隙間を埋めることができず、焼結前の粒子の形状がそのまま残り、若干のボイドが確認された。(表中のボイド欄に△で示す。)
なお、本発明は上述の実施の形態の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば種々の変更は可能である。
【0081】
例えば、上述の実施の形態の例では、ガラス粉末と誘電体粉末とを含むスラリーを層状に成形した誘電体グリーンシートを積層するグリーンシート積層法で誘電体層を形成したが、ガラス粉末と誘電体粉末とを含む誘電体ペーストをスクリーン印刷等で塗布して多層化する厚膜印刷法で誘電体層を形成してもよい。
【0082】
また、上述の実施の形態の例では、配線導体は配線導体用ペーストをグリーンシートに塗布することにより形成したが、配線パターン形状の銅等の金属箔を転写して形成してもよい。配線導体を金属箔を転写することによって形成すると、配線導体の寸法精度をより向上させることができ、内蔵コンデンサの容量値のばらつきもより小さくすることができる。
【0083】
【発明の効果】
本発明のガラスセラミック配線基板によれば、絶縁体層および配線導体との同時焼成によって形成される誘電体層が、5乃至20質量部の軟化点が500乃至650℃のガラスと、80乃至95質量部の誘電体粉末とから成ることから、少量のガラスで誘電体粉末を緻密に焼結させることができる。
【0084】
また、本発明のガラスセラミック配線基板によれば、ガラスが20℃における比誘電率が10以上であり、かつ誘電体粉末が純度が99%以上の焼結体によるキュリー点付近における比誘電率が3000以上を示すものであるときには、絶縁体層および配線導体との同時焼成によって形成される誘電体層が、その誘電体層に含まれる5乃至20質量部のガラスによって比誘電率が大きく低下してしまうようなことが効果的に抑制でき、高い比誘電率を維持して静電容量の大きなコンデンサを内蔵したガラスセラミック配線基板をより確実に得ることができる。
【0085】
また本発明のガラスセラミック配線基板によれば、誘電体層が、平均粒径が2.2μm以下のガラス粉末と、平均粒径が0.3μm以下の誘電体粉末とから形成されているときには、誘電体層に平均粒径が2.2μm以下の充分小さいガラス粉末が添加されているので、ガラス粉末と誘電体粉末とが混ざり合った際に局所的なガラスの集中が起きることがなく、粒径が小さい誘電体粉末の粒界を軟化したガラスが満たすことができて、緻密でムラのない焼結体から成る誘電体層を得ることができる。また、誘電体層は平均粒径が0.3μm以下の80乃至95質量部の誘電体粉末により形成されているので、ガラスセラミックスの焼結温度である800〜1000℃においてガラスセラミックスと同等の収縮率を示し、ガラスセラミックスから成る絶縁体層と誘電体層との収縮の不整合による反りやクラックや剥離を生じることがない。
【0086】
この結果、この誘電体層により、静電容量の温度変化が小さく、かつ、静電容量の大きく、強度や信頼性の高い、コンデンサを内蔵したガラスセラミック配線基板を得ることが可能となる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体素子・チップ部品等を搭載し、それらを相互配線するためのガラスセラミック配線基板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、IT(Information Technology)産業の中核をなす半導体分野では、半導体素子の性能向上が著しく、大型コンピュータ・パーソナルコンピュータ・移動通信端末等に代表される情報処理装置の、情報処理速度の高速化・装置の小型化・多機能化等を支えている。
【0003】
しかしながら、半導体素子が高速化・高性能化しても、素子と素子とを接続する配線基板上での信号遅延やクロストーク・インピーダンスのミスマッチ・電源変動等によるノイズによって、システムとしての動作が制限されることがあった。
【0004】
このため、高速かつ高性能な情報処理装置には、高性能の半導体素子をセラミック配線基板上に複数実装した、いわゆるマルチチップモジュール(MCM)が採用されている。
【0005】
このようなモジュールにおいて、半導体素子等の実装密度を高め、各半導体素子間を電気的に良好に接続するためには、配線導体を3次元的に配したセラミック配線基板が有用であり、従来は、セラミック配線基板の絶縁体層の材料としてアルミナセラミックス(酸化アルミニウム質焼結体)が用いられていた。
【0006】
しかしながら、アルミナセラミックスは焼結温度が1300℃以上と高いため、その絶縁体層に形成する配線導体としては高融点金属のタングステンやモリブデン等を使用する必要があり、また、これら高融点金属の酸化防止の点から、焼成を還元性雰囲気下で行なう必要があった。また、これら高融点金属は比抵抗が大きいため、高密度配線が難しいという問題点もあった。さらに、アルミナセラミックスは比誘電率が約10と大きいため、実装した半導体素子を高速で動作させたときの信号遅延が大きくなったり、シリコンと比べて熱膨張率が大きいため、半導体素子の実装後に熱サイクルによる信頼性が低下したりするという問題も生じることがあった。
【0007】
そこで、これらの問題を解決するため、セラミックスとガラスとの複合材料であるガラスセラミックスが絶縁体層の材料として注目を集めている。
【0008】
ガラスセラミックスは、母材となるセラミックスにガラスを加えた材料であり、焼結温度を低下させることができることから、材料物性や焼結温度に対する設計の自由度を大幅に広げることが可能となった。特に、比抵抗の小さな銀・銅等の低融点金属を配線導体材料として用いて同時焼成が可能なことから、高周波特性に優れた配線基板を形成することができる。
【0009】
また、近年、表面実装部品(SMD:Surface Mounted Device)の一部構成素子であったコンデンサやインダクタ等の受動素子をセラミック配線基板内に取り込むことによって、モジュール全体を小型化しようとする試みがなされている。
【0010】
例えば、コンデンサをセラミック配線基板内に取り込む場合は、セラミック配線基板の内部に誘電体層を配設し、その誘電体層を挟むように上下に配線導体を形成することによってセラミック配線基板内にコンデンサが形成され内蔵される。
【0011】
このようなセラミック配線基板は、配線導体用ペーストを塗布してコンデンサ電極パターンが形成された誘電体層となる誘電体グリーンシートを、所定の回路配線が形成された絶縁体層となる絶縁体グリーンシートで挟んで積層し、焼成することにより得られる。
【0012】
その際に、この誘電体層の厚みを絶縁体層より薄くしたり、誘電体層の比誘電率を絶縁体層より高くしたりすることによって内蔵するコンデンサの容量を高めている。
【0013】
しかし、誘電体層の厚みを薄くする、すなわち、誘電体グリーンシートの厚みを薄くすると、誘電体グリーンシートの強度が低下する傾向があるために、コンデンサ電極パターンを形成するために配線導体用ペーストを塗布した際に、配線導体用ペースト中の溶剤成分により誘電体グリーンシートに膨潤・変形が生じ、その後の乾燥工程でこの膨潤・変形部を起点としたクラックが発生してしまい、焼成後のセラミック配線基板においては上下層の配線導体間が短絡してショート不良が発生してしまうといった問題点があった。
【0014】
そこで、銀・銅等の低融点金属と同時焼成可能な比誘電率の高い誘電体材料として、鉛系複合ペロブスカイト(PMN,PNN,PMW等)またはチタン酸バリウムに代表されるTiO2とアルカリ土類金属酸化物との複合酸化物と、ガラスとの複合材料を、内蔵コンデンサ形成用の誘電体層に用いたガラスセラミック配線基板が提案されている。
【0015】
【特許文献1】
特開平10−149949号公報
【特許文献2】
特開2001−294445号公報
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、鉛系複合ペロブスカイト(PMN,PNN,PMW等)を誘電体層に用いたガラスセラミック配線基板においては、誘電体層の比誘電率の温度変化が大きいために、内蔵するコンデンサの静電容量が設計値に対して大きく変化してしまい、モジュールとして正常に機能しなくなる場合があるという問題点があった。また、昨今の環境負荷を低減しようとする観点から、これら鉛を含んでいる材料を用いることが敬遠されるようになっている。
【0017】
一方、TiO2とアルカリ土類金属酸化物との複合酸化物とガラスとの複合材料を誘電体層に用いたガラスセラミック配線基板においては、比誘電率の温度変化の異なる複数のTiO2とアルカリ土類金属酸化物との複合酸化物とガラスとを混合することで、比誘電率の温度変化を小さくできる点で優れている反面、銀・銅等の低融点金属と同時焼成しようとすると、800〜1000℃で焼結させる必要があり、そのためにガラスを多量に混合せねばならず、その結果、高い比誘電率が得られなくなるという問題点があった。
【0018】
また、このガラスセラミック配線基板の誘電体層に、粒度が粗い誘電体粉末を用いると、ガラスセラミックスの焼結温度である800〜1000℃において、誘電体層が十分に収縮せず、ガラスセラミックスの収縮率と整合しないため、その結果、誘電体層とガラスセラミックスから成る絶縁体層との層間で反りやクラックや剥離を生じ、強度が高く信頼性の高いガラスセラミック配線基板を得ることができないという問題点があった。
【0019】
本発明は上記問題点に鑑み完成されたもので、その目的は、静電容量の温度変化が小さく、かつ、静電容量の大きなコンデンサを内蔵したガラスセラミック配線基板を提供することにある。
【0020】
【課題を解決するための手段】
本発明のガラスセラミック配線基板は、ガラスセラミックス焼結体から成る絶縁体層の内部および/または表面にこの絶縁体層との同時焼成によって形成された配線導体および誘電体層を配設して成るガラスセラミック配線基板であって、前記誘電体層は、5乃至20質量部の軟化点が500乃至650℃のガラスと、80乃至95質量部の誘電体粉末とから成ることを特徴とするものである。
【0021】
また本発明のガラスセラミック配線基板は、上記構成において、前記ガラスは20℃における比誘電率が10以上であり、かつ前記誘電体粉末は純度が99%以上の焼結体によるキュリー点付近における比誘電率が3000以上を示すことを特徴とするものである。
【0022】
また本発明のガラスセラミック配線基板は、上記構成において、前記誘電体層は、平均粒径が2.2μm以下の前記ガラス粉末と、平均粒径が0.3μm以下の前記誘電体粉末とから形成されていることを特徴とするものである。
【0023】
本発明のガラスセラミック配線基板によれば、絶縁体層および配線導体との同時焼成によって形成される誘電体層が、5乃至20質量部の軟化点が500乃至650℃のガラスと、80乃至95質量部の誘電体粉末とから成ることから、少量のガラスで誘電体粉末を緻密に焼結させることができるので、従来使用できなかった比誘電率の温度変化の小さいTiO2とアルカリ土類金属酸化物との複合酸化物である誘電体粉末を、ガラスセラミックスの焼結温度である800〜1000℃で焼結させることも可能となり、この誘電体層による、静電容量の温度変化が小さく、かつ、静電容量の大きなコンデンサを内蔵したガラスセラミック配線基板を得ることができる。
【0024】
また本発明のガラスセラミック配線基板によれば、ガラスが20℃における比誘電率が10以上であり、かつ誘電体粉末が純度が99%以上の焼結体によるキュリー点付近における比誘電率が3000以上を示すものであるときには、絶縁体層および配線導体との同時焼成によって形成される誘電体層が、その誘電体層に含まれる5乃至20質量部のガラスによって比誘電率が大きく低下してしまうようなことが効果的に抑制でき、静電容量の大きなコンデンサを内蔵したガラスセラミック配線基板をより確実に得ることができる。
【0025】
また本発明のガラスセラミック配線基板によれば、誘電体層が、平均粒径が2.2μm以下のガラス粉末と、平均粒径が0.3μm以下の誘電体粉末とから形成されているときには、誘電体層に平均粒径が2.2μm以下の充分小さいガラス粉末が添加されているので、ガラス粉末と誘電体粉末とが混ざり合ったときに局所的にガラスの集中が起こることがなく、粒径が小さい誘電体粉末の粒界を軟化したガラスが満たすことができて、緻密でムラのない焼結体から成る誘電体層を得ることができる。また、誘電体層は平均粒径が0.3μm以下の80乃至95質量部の誘電体粉末により形成されていることから、ガラスセラミックスの焼結温度である800〜1000℃においてガラスセラミックスと同等の収縮率を示す。このため、ガラスセラミックスから成る絶縁体層と誘電体層との収縮の不整合による反りやクラックや剥離を生じることがない。従って、強度が高く、信頼性の高いガラスセラミック配線基板を得ることができる。
【0026】
【発明の実施の形態】
本発明のガラスセラミック配線基板について以下に詳細に説明する。
【0027】
本発明のガラスセラミック配線基板における絶縁体層は、ガラスセラミックス焼結体から成るものであり、ガラスと絶縁体粉末とから成る。
【0028】
このガラスとしては、例えばSiO2−B2O3系・SiO2−B2O3−Al2O3系・SiO2−B2O3−Al2O3−MO系(但し、MはCa,Sr,Mg,BaまたはZnを示す)・SiO2−Al2O3−M1O−M2O系(但し、M1およびM2は同一または異なってCa,Sr,Mg,BaまたはZnを示す)・SiO2−B2O3−Al2O3−M1O−M2O系(但し、M1およびM2は前記と同じである)・SiO2−B2O3−M3 2O系(但し、M3はLi,NaまたはKを示す)・SiO2−B2O3−Al2O3−M3 2O系(但し、M3は前記と同じである)・Pb系ガラス・Bi系ガラス等が挙げられる。
【0029】
また、絶縁体粉末としては、例えばAl2O3,SiO2,ZrO2とアルカリ土類金属酸化物との複合酸化物・TiO2とアルカリ土類金属酸化物との複合酸化物・Al2O3およびSiO2から選ばれる少なくとも1種を含む複合酸化物(例えばスピネル,ムライト,コージェライト)等が挙げられる。
【0030】
ガラス粉末と絶縁体粉末とを混合する場合には、その混合割合が質量比で40:60〜99:1であることが好ましい。
【0031】
この絶縁体層の前駆体である絶縁体グリーンシートは、ガラス粉末および絶縁体粉末と、有機溶剤系バインダ・有機溶剤・可塑剤等とを添加混合してスラリーとするとともに、そのスラリーに従来周知のドクターブレード法やカレンダロール法を採用することによって成形する。
【0032】
このガラス粉末および絶縁体粉末に添加混合される有機溶剤系バインダとしては、従来から絶縁体グリーンシートに使用されているものが使用可能であり、例えばアクリル系(アクリル酸,メタクリル酸またはそれらのエステルの単独重合体または共重合体、具体的にはアクリル酸エステル共重合体,メタクリル酸エステル共重合体,アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体等)・ポリビニルブチラ−ル系・ポリビニルアルコール系・アクリル−スチレン系・ポリプロピレンカーボネート系・セルロース系等の単独重合体または共重合体が挙げられる。
【0033】
絶縁体グリーンシートを成型するためのスラリーに用いられる有機溶剤としては、ガラス粉末と絶縁体粉末、および有機バインダを分散させ、絶縁体グリーンシート成型に適した粘度のスラリーが得られるように、例えば炭化水素類・エーテル類・エステル類・ケトン類・アルコール類等の有機溶剤が挙げられる。
【0034】
本発明のガラスセラミック配線基板においては、絶縁体層の内部および/または表面に絶縁体層との同時焼成によって形成された配線導体および内蔵コンデンサを形成するための誘電体層が配設されており、この誘電体層は5乃至20質量部の軟化点が500乃至650℃のガラスと、80乃至95質量部の誘電体粉末とから成ることが重要である。
【0035】
これは、誘電体粉末を誘電率の温度特性が小さいTiO2とアルカリ土類金属酸化物との複合酸化物としたときに、ガラスの量をこの範囲とすると、誘電体層の比誘電率を低下させないガラス量であり、かつ誘電体粉末の表面を十分に濡らすことができるガラス量であることから、比誘電率が高く、かつボイド等の欠陥の含まれない緻密な誘電体層を形成することができ、静電容量の温度変化が小さく、かつ静電容量の大きな内蔵コンデンサを形成することができるためである。これに対して、ガラスの量が5質量部未満の場合には、焼結時に誘電体粉末の表面を十分に濡らすことができないことから、誘電体粉末間にガラスが液相として介在しない部分が発生し、誘電体層が十分に焼結しないことから、比誘電率が低下するとともに、ボイド等の欠陥が生じやすくなるといった傾向がある。他方、20質量部を超えると、誘電体層に占めるガラスの量が多量となり比誘電率が低下することから、高い比誘電率の誘電体層が得られ難くなるといった傾向がある。
【0036】
また、この軟化点の範囲とすると、比較的低温でガラスの粘度が低下して液相が生じるために、ガラスセラミック配線基板の絶縁体層の焼結温度である800℃〜1000℃での加熱時に誘電体粉末の表面を十分に濡らすことができ、誘電体粉末を低温焼結することができるためである。これに対して、軟化点が500℃未満の場合には、誘電体層の前駆体である誘電体グリーンシート中に含まれる有機溶剤系バインダ等の有機成分が分解揮発する前にガラスが軟化して有機成分を包み込むために、焼成後に導電性を有する炭素成分が誘電体層内に残留して誘電体層の比誘電率が劣化するとともに、包み込まれた有機成分が分解揮発する際に気泡を生じて誘電体層内にボイド等の欠陥が生じる傾向がある。他方、650℃を超えると、ガラスセラミック配線基板の絶縁体層の焼結温度である800℃〜1000℃では十分に粘度が低下しないために、誘電体粉末の表面を濡らすことができず、ボイド等の欠陥が生じ、緻密な焼結体が得られなくなる傾向がある。
【0037】
また本発明のガラスセラミック配線基板においては、絶縁体層および配線導体との同時焼成によって形成される誘電体層のガラスが20℃における比誘電率が10以上であり、かつ誘電体粉末が純度が99%以上の焼結体によるキュリー点付近における比誘電率が3000以上を示すものであることが好ましい。
【0038】
誘電体を形成するガラスおよび誘電体粉末の比誘電率の値をこの範囲にすることにより、焼結前のガラスの比誘電率が充分高く、その特性が焼結後まで維持されるものとなり、また誘電体層を形成する誘電体材料の主成分である誘電体粉末は、99%以上の焼結体によるキュリー点付近における比誘電率が高いために、ガラスの添加による比誘電率の低下を充分吸収することができるので、誘電体層に5乃至20質量部の割合で含まれる比誘電率の低いガラスによって誘電体層の比誘電率が大きく低下してしまうようなことが効果的に抑制でき、静電容量の大きなコンデンサを内蔵したガラスセラミック配線基板をより確実に得ることができる。
【0039】
ガラスと誘電体粉末との複合材料である誘電体組成物の比誘電率は対数混合則によって決まるので、ガラスの比誘電率が10未満の場合には、ガラスの添加量が5乃至20質量部と少量であっても、誘電体組成物の比誘電率は比誘電率の低いガラス成分に支配され、誘電体組成物ひいては誘電体層の比誘電率が大きく低下してしまい、静電容量の大きなコンデンサを内蔵したガラスセラミック配線基板を得ることができない傾向がある。なお、ここで20℃における比誘電率を10以上とするのは、ガラスの比誘電率は温度依存性がある場合があるので、誘電体の温度特性測定の一般的な基準値である室温付近の20℃を、ガラスについての比誘電率の測定温度としたことによる。
【0040】
一方、誘電体粉末が純度が99%以上の焼結体によるキュリー点付近における比誘電率が3000に満たない場合は、誘電体粉末が固相焼結する温度付近でも誘電体粉末の粒や結晶が成長しないことによって高い比誘電率が得られていないものであるため、誘電体層において誘電体材料の特徴である強誘電性が現れないこととなる。従って、誘電体粉末の固相焼結温度よりはるかに低いガラスセラミック配線基板焼結温度である800℃〜1000℃では、焼結助剤としてガラスを5乃至20質量部添加することによって焼結を促進しても、誘電体層において同様に誘電体粉末の粒や結晶の成長が行なわれず、誘電体組成物の比誘電率が低下し、やはり静電容量の大きなコンデンサを内蔵したガラスセラミック配線基板を得ることができない傾向がある。
【0041】
また、本発明のガラスセラミック配線基板においては、誘電体層が平均粒径が2.2μm以下のガラス粉末と、平均粒径が0.3μm以下の誘電体粉末とから形成されていることが重要である。
【0042】
より好ましくは、ガラス粉末は平均粒径が1μm程度であると良い。ガラスを微粉化する一般的な手法は、有機溶剤とミルによる機械的粉砕であるが、この手法は、粉砕工程が長くなり、粉砕後の溶媒の除去が難しく、メディアのコンタミネーションが懸念され、誘電体層の電気特性を損なう恐れがある。そこで、本発明のガラスセラミック配線基板の誘電体層に使用するガラス粉末の微粉化手法としては、メディアのコンタミネーション防止の観点からメディア・粉砕ローター・ケーシーングの材質が耐磨耗性に優れたセラミックから成り、かつφ0.3μm程度の小径メディアを使用することでより一層粉体同士の摩砕による粉砕が可能な、ビーズミル工法を用いることが好ましい。
【0043】
また、誘電体粉末は平均粒径が0.1〜0.2μm程度であることが好ましい。誘電体粉末は水熱合成方法によって粒径の小さなものを造ることが可能であるが、粒径が小さすぎると、2次凝集によって粉体同士が分散せず均一な組成ができなくなるほか、ペーストやスラリー化するときに多量のバインダや分散剤が必要となり、ペーストやスラリーの充填が低くなる。従って、本発明のガラスセラミック配線基板の誘電体層に使用する誘電体粉末としては、平均粒径が0.3μm以下、中でも0.1〜0.2μmのものを使用することが好ましい。
【0044】
誘電体層は、平均粒径が2.2μm以下の充分小さいガラス粉末が添加されて形成されているときには、誘電体粉末とガラス粉末とが混ざり合ったときに局所的にガラスの集中が起こることがなく、粒径の小さい誘電体粉末の粒界を軟化したガラスが満たたすことができ、緻密でムラのない焼結体を得ることができる。また、誘電体層は、平均粒径が0.3μm以下で80乃至95質量部の誘電体粉末で形成されているときには、誘電体粉末の粒度が細かいためにその粒子間の接触面積が大きくなり、粒子の焼結や成長が促進され、通常の粗い誘電体粉末を使用した場合よりも収縮が早く始まり、ガラスセラミックスの焼結温度である800〜1000℃においてガラスセラミックスと同等の収縮率を示す。このため、ガラスセラミックスから成る絶縁体層と誘電体層との収縮の不整合による反りやクラックや剥離を生じることがない。従って、強度が高く、信頼性の高いガラスセラミック配線基板を得ることができる。
【0045】
ガラス粉末の平均粒径が2.2μmより大きい場合は、誘電体粉末と混ざり合った際に局所的にガラスが集中し、ガラスセラミックスの焼結温度である800〜1000℃においてガラスが軟化しても、平均粒径が0.3μm以下の誘電体粉末の粒界を十分に満たすことができない場合がある。従って、このような誘電体層は、焼結した部分と未焼結の部分とが混在する不均一な組織となる傾向があり、温度サイクル等の信頼性試験後に絶縁性が低下したり、静電容量が不安定になったり、さらには誘電体層にクラック等の不具合が生じたりすることがある。
【0046】
誘電体粉末の平均粒径が0.3μmより大きい場合は、粒度が粗いために粒子間の接触面積が小さくなり、粒子の焼結や成長が抑制され、ガラスセラミックスの焼結温度である800〜1000℃においてガラスセラミックスほど収縮しない場合がある。従って、残留応力として誘電体層の内部にストレスが残存する傾向があり、信頼性試験後の特性劣化を引き起こしたり、反りやクラックや剥離を生じたりすることがある。また、このような場合、誘電体層がガラスセラミックスの収縮を抑制するために、ガラスセラミックスの本来の比重や強度が得られなくなって、温度サイクル等の信頼性試験後にガラスセラミック配線基板自体が割れる等の不具合を生ずることもある。
【0047】
このような500乃至650℃の軟化点を有する本発明のガラスセラミック配線基板における誘電体層に好適なガラスとしては、例えばSiO2−B2O3系・SiO2−B2O3−Al2O3系・SiO2−B2O3−Al2O3−MO系(但し、MはCa,Sr,Mg,BaまたはZnを示す)SiO2−B2O3−M3 2O系(但し、M3はLi,NaまたはKを示す)・SiO2−B2O3−Al2O3−M3 2O系(但し、M3は前記と同じである)・Pb系ガラス・Bi系ガラス等を用いることができる。
【0048】
この誘電体層の前駆体である誘電体グリーンシートは、ガラス粉末および誘電体粉末と、有機溶剤系バインダ・有機溶剤・可塑剤等とを添加混合してスラリーとするとともに、そのスラリーに従来周知のドクターブレード法やカレンダロール法を採用することによって成形する。
【0049】
焼成後に誘電体層となる誘電体グリーンシートに用いられる誘電体粉末としては、ガラスセラミック配線基板に内蔵されるコンデンサの誘電体層が得られる、絶縁体層との同時焼成が可能でその絶縁体粉末よりも高い比誘電率を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、チタン酸バリウム・チタン酸ストロンチウム・ジルコン酸バリウムの高誘電率の誘電体の粉末が使用可能である。その粒径については、グリーンシート積層法に必要な強度を有する誘電体グリーンシートを成形する際の分散性および成形性の点から、0.05μm〜3μmであることが好ましい。
【0050】
そして、上記の誘電体材料およびガラス材料の中から、所望の内蔵コンデンサに必要な静電容量やその温度特性等を満たすことができる材料を選択して、ガラスが5乃至20質量部で誘電体粉末が80乃至95質量部である組成比で混合して
また、この誘電体グリーンシートに用いられる有機溶剤系バインダ・有機溶剤としては、ガラスセラミックス焼結体から成る絶縁体層との同時焼成が可能であれば特に制限されるものではなく、例えば絶縁体グリーンシートに配合される有機溶剤系バインダ・有機溶剤と同様のものが使用可能である。
【0051】
以上のようにして作製した絶縁体グリーンシートおよび誘電体グリーンシートに、必要に応じて金型加工等により貫通孔を形成し、この貫通孔にタングステン・モリブデン・金・銀・銅等の金属粉末に適当な有機バインダ・溶剤を添加混合した貫通導体用ペーストをスクリーン印刷等により充填し貫通導体となる貫通導体パターンを形成する。
【0052】
次に、これらのグリーンシートの表面に、タングステン・モリブデン・金・銀・銅等の金属粉末に適当な有機バインダ・溶剤を添加混合した配線導体用ペーストをスクリーン印刷等により塗布し、回路配線やコンデンサ電極等の所定形状の配線導体となる配線導体パターンを形成する。
【0053】
次に、貫通導体パターンや配線導体パターンを形成した複数の誘電体グリ−ンシートと絶縁体グリ−ンシートとを、3〜20MPaの圧力および30〜80℃の温度で加熱圧着する等して積層体を作製する。この積層体中における誘電体グリーンシートの位置や数や大きさには特に制限はなく、所望の内蔵コンデンサを有する配線基板の構成となるように配設して積層すればよい。
【0054】
その後、例えば導体用ペーストの金属粉末がAg粉末である場合は、大気中で800〜1000℃の温度で積層体を焼成することにより、本発明のセラミック配線基板が得られる。
【0055】
また積層体を焼成する際に、絶縁体グリーンシートや誘電体グリーンシートが焼結する温度では実質的に焼結収縮しない無機成分、例えばアルミナから成る拘束グリーンシートを積層体の両面に積層して焼成すると、この拘束グリーンシートによって積層体の主面方向の焼成時の収縮が拘束されて抑制されるために配線基板の寸法精度が向上し、ガラスセラミック配線基板に内蔵させるコンデンサの容量値のばらつきを小さくすることが可能となる。また、このような方法で焼成した場合は、厚み方向の焼成収縮が通常の方法で焼成した場合に比較して大きくなるので、誘電体層の厚みをより薄くすることが可能となり、内蔵コンデンサの高容量化も容易となる。
【0056】
さらに、ガラスセラミック配線基板の表面に位置する配線導体には、その表面に電子部品を実装する際の半田濡れ性の向上や配線導体の腐食防止のために、ニッケル・銅・金等のめっきを施してもよい。
【0057】
【実施例】
以下、本発明を具体例によって詳細に説明するが、本発明は以下の具体例に限定されるものではない。
【0058】
絶縁体層となる絶縁体グリーンシートを得るために、ガラスとしてSiO2−CaO−MgO系ガラス粉末50質量部と、誘電体粉末としてAl2O3粉末50質量部とを混合し、この無機粉末100質量部に有機バインダとしてアクリル樹脂12質量部・フタル酸系可塑剤6質量部および溶剤としてトルエン30質量部を加え、ボールミル法により混合しスラリーとした。
【0059】
このスラリーを用いてドクターブレード法により厚さ200μmの絶縁体グリーンシートを成形した。
【0060】
この絶縁体グリーンシートに金型またはパンチングマシーンを用いて所定の位置に貫通孔を形成し、この貫通孔にスクリーン印刷法にて貫通導体用ペーストを充填した。
【0061】
貫通導体用ペーストとしては、銅の粉末(平均粒径3μm)100質量部に対してAl2O3粉末1質量部および前記ガラスと同組成のガラス粉末5質量部を加え、さらにビヒクル成分として所定量のエチルセルロース系樹脂およびテルピネオールを加えて、3本ロールにより適度な粘度になるように混合したものを用いた。
【0062】
次に、充填した貫通導体用ペースト中の有機溶剤分の重量が減少するまで、60℃の温風により乾燥した
次に、このセラミックグリーンシート上に、配線導体用ペーストをスクリーン印刷により塗布し、縦40mm×横50mm×厚み15μmのコンデンサ電極パターンを形成した。
【0063】
配線導体用ペーストとしては、銅の粉末(平均粒径3μm)100質量部に対してAl2O3粉末1質量部および前記ガラスと同組成のガラス粉末2質量部を加え、さらにビヒクル成分として所定量のエチルセルロース系樹脂およびテルピネオールを加えて、3本ロールにより適度な粘度になるように混合したものを用いた。
【0064】
次に、印刷した配線導体用ペースト中の有機溶剤分の重量が減少するまで、60℃の温風により乾燥した。
【0065】
次に、この絶縁体グリーンシート上に形成されたコンデンサ電極パターン上に、誘電体ペーストをスクリーン印刷により塗布し、縦12mm×横12mm×厚み40μmの誘電体層を形成した。
【0066】
誘電体ペーストはガラスとBaTiO3とから成り、ガラスは表1に示すように混合割合および軟化点の異なるものを選び、ガラスとBaTiO3粉末との和を100質量部とし、これに対して、アクリル樹脂12質量部と、リン酸エステル系分散剤0.5質量部と、有機溶剤としてα−テルピネオールとを加え、攪拌脱泡機により混合した後に、さらに3本ロールを用いて混練した。
【0067】
次に、塗布した誘電体ペースト中の有機溶剤分の重量が減少するまで、60℃の温風により乾燥した。
【0068】
次に、この絶縁体グリーンシート上に印刷された誘電体層を覆うように、配線導体用ペーストをスクリーン印刷により塗布し、縦10mm×横10mm×厚み15μmのコンデンサ電極パターンを形成した。
【0069】
次に、塗布した配線導体用ペースト中の有機溶剤分の重量が減少するまで、60℃の温風により乾燥した。
【0070】
このようにして得られたグリーンシート成形体を、500℃で3時間のバインダの燃焼行程と900℃で1時間のセラミックスの焼結工程とを含む窒素雰囲気中の焼成条件下で焼成し、緻密なガラスセラミック焼結体から成る絶縁体層の内部および/または表面に同時焼成により形成された配線導体および誘電体層を配設して成るガラスセラミック配線基板を得た。
【0071】
このようにして得られたガラスセラミック配線基板中の誘電体層に対して、比誘電率・比誘電率の温度係数・カーボン残渣・ボイドについて評価した。
【0072】
比誘電率は、測定周波数1MHz、測定温度25℃での比誘電率をインピーダンスアナライザーを用いて測定し、比誘電率が200以上の試料を良品とし、200未満の試料を不良品として評価した。
【0073】
比誘電率の温度係数は、測定周波数1MHz、測定温度−55℃〜125℃の範囲での比誘電率をインピーダンスアナライザーを用いて測定し、各測定温度での比誘電率と測定温度25℃での比誘電率との差分と、測定温度25℃での比誘電率との比を求め、この温度係数が±15%未満の試料を良品とし、±15%を超える試料を不良品として評価した。
【0074】
カーボン残渣は、ガラスセラミック配線基板中の誘電体層を選択的に取り出して直径100μm以下の粉体に粉砕し、赤外吸収法により残留炭素分析を行ない、残留炭素量が500ppm未満の良品とし、500ppm以上を不良品として評価した。
【0075】
ボイドは、ガラスセラミック配線基板中の誘電体層の断面を研磨によって露出させ、SEM(走査型電子顕微鏡)にて200倍で観察し、誘電体層の気孔率が10%未満の試料を良品とし、10%以上の試料を不良品とした。
【0076】
誘電体層の反りは、ガラスセラミック配線基板の表面の誘電体層および電極が設けられた縦12mm×横12mmの部分の対角線の反りを、表面粗さ測定器にて測定し、50μm未満を良品とし、50μm以上を不良品とした。
【0077】
ガラスの各混合割合および各軟化点における評価の結果を表1に示す。なお、表1中の評価結果については、それぞれ良品を○で、不良品を×で示した。
【0078】
【表1】
【0079】
表1の結果から明らかなように、ガラスの混合割合が5質量部未満(3質量部)の試料No.1では、ガラスが焼結時に誘電体粉末の表面を十分に濡らすことができないことから、誘電体粉末間にガラスが液相として介在しない部分が発生し、誘電体層が十分に焼結せずに比誘電率が低下し、ボイドが生じた。(表中の比誘電率欄およびボイド欄に×で示す。)また、ガラスの混合割合が20質量部を超える(25質量部)試料No.5では、誘電体層に占めるガラスの量が多量となり比誘電率が低下することから、高い比誘電率の誘電体層が得られなかった。(表中の比誘電率欄に×で示す。)
また、ガラスの軟化点が500℃未満(480℃)の試料No.6では、誘電体層の前駆体である誘電体グリーンシート中に含まれる有機溶剤系バインダ等の有機成分が分解揮発する前にガラスが軟化して有機成分を包み込むために、焼成後に導電性を有する炭素成分が残留し、誘電体層の比誘電率が劣化し、包み込まれた有機成分が分解揮発する際の気泡によるボイドが生じた。(表中の比誘電率欄、カーボン残渣欄およびボイド欄に×で示す。)また、ガラスの軟化点が650℃を超える(776℃)の試料No.9では、ガラスセラミック配線基板の焼結温度である800℃〜1000℃では十分に粘度が低下しないために、誘電体粉末の表面を濡らすことができず、ボイドが生じ、高い比誘電率の誘電体層が得られなかった。また、誘電体層の収縮率とガラスセラミックスの収縮率とが整合していないので、誘電体層に大きな反りが発生した。(表中の比誘電率欄、ボイド欄および誘電体層の反りの欄に×で示す。)
これに対して、本発明のガラスセラミック配線基板の試料であるNo.2〜4,7,8,10〜23,中でも2〜4,7,8,12,15〜17,20,21は、いずれも焼結して得られたガラスセラミック配線基板中の誘電体層の比誘電率および比誘電率の温度係数の評価結果が良好であり、カーボン残渣およびボイド等の欠陥が発生しない優れたものであった。
【0080】
ただ、ガラスの比誘電率が10未満(5)の試料No.10と、同じく比誘電率が10未満(8)の試料No.11とは、ボイドやカーボン残渣がなく良好な焼結体であったが、これらの例では誘電体組成物の比誘電率がガラスの比誘電率によって低下し、誘電体組成物の比誘電率は200をやや下回る不十分な結果となった。(表中の比誘電率欄に△で示す。)また、誘電体粉末が、純度が99%以上の焼結体によるキュリー点付近における比誘電率が3000未満(2500)の試料No.13と、同じく比誘電率が3000未満(2800)の試料No.14とは、ボイドやカーボン残渣がなく良好な焼結体であったが、これらの例では誘電体粉末の本来の強誘電体の特性が発現せず、誘電体組成物の比誘電率は200をやや下回る不十分な結果となった。(表中の比誘電率欄に△で示す。)
また、誘電体粉末の平均粒径が0.3μmより大きい(0.4μm)試料No.18と、同じく平均粒径が0.3μmより大きい(0.5μm)試料No.19とは、ボイドやカーボン残渣がなく良好な焼結体であったが、ガラスセラミックスとの収縮が合わず、誘電体層の反りが凸側に50μmをやや上回る不十分な結果となった。(表中の誘電体層の反り欄に△で示す。)また、ガラス粉末の平均粒径が2.2μmより大きい(2.3μm)の試料No.22と、同じく誘電体粉末の平均粒径が0.3μmより大きい(3.0μm)の試料No.23とは、比誘電率が高くカーボン残渣もなかったが、部分的にやや焼結が甘い部分が見られ、ガラスが誘電体粉末の隙間を埋めることができず、焼結前の粒子の形状がそのまま残り、若干のボイドが確認された。(表中のボイド欄に△で示す。)
なお、本発明は上述の実施の形態の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば種々の変更は可能である。
【0081】
例えば、上述の実施の形態の例では、ガラス粉末と誘電体粉末とを含むスラリーを層状に成形した誘電体グリーンシートを積層するグリーンシート積層法で誘電体層を形成したが、ガラス粉末と誘電体粉末とを含む誘電体ペーストをスクリーン印刷等で塗布して多層化する厚膜印刷法で誘電体層を形成してもよい。
【0082】
また、上述の実施の形態の例では、配線導体は配線導体用ペーストをグリーンシートに塗布することにより形成したが、配線パターン形状の銅等の金属箔を転写して形成してもよい。配線導体を金属箔を転写することによって形成すると、配線導体の寸法精度をより向上させることができ、内蔵コンデンサの容量値のばらつきもより小さくすることができる。
【0083】
【発明の効果】
本発明のガラスセラミック配線基板によれば、絶縁体層および配線導体との同時焼成によって形成される誘電体層が、5乃至20質量部の軟化点が500乃至650℃のガラスと、80乃至95質量部の誘電体粉末とから成ることから、少量のガラスで誘電体粉末を緻密に焼結させることができる。
【0084】
また、本発明のガラスセラミック配線基板によれば、ガラスが20℃における比誘電率が10以上であり、かつ誘電体粉末が純度が99%以上の焼結体によるキュリー点付近における比誘電率が3000以上を示すものであるときには、絶縁体層および配線導体との同時焼成によって形成される誘電体層が、その誘電体層に含まれる5乃至20質量部のガラスによって比誘電率が大きく低下してしまうようなことが効果的に抑制でき、高い比誘電率を維持して静電容量の大きなコンデンサを内蔵したガラスセラミック配線基板をより確実に得ることができる。
【0085】
また本発明のガラスセラミック配線基板によれば、誘電体層が、平均粒径が2.2μm以下のガラス粉末と、平均粒径が0.3μm以下の誘電体粉末とから形成されているときには、誘電体層に平均粒径が2.2μm以下の充分小さいガラス粉末が添加されているので、ガラス粉末と誘電体粉末とが混ざり合った際に局所的なガラスの集中が起きることがなく、粒径が小さい誘電体粉末の粒界を軟化したガラスが満たすことができて、緻密でムラのない焼結体から成る誘電体層を得ることができる。また、誘電体層は平均粒径が0.3μm以下の80乃至95質量部の誘電体粉末により形成されているので、ガラスセラミックスの焼結温度である800〜1000℃においてガラスセラミックスと同等の収縮率を示し、ガラスセラミックスから成る絶縁体層と誘電体層との収縮の不整合による反りやクラックや剥離を生じることがない。
【0086】
この結果、この誘電体層により、静電容量の温度変化が小さく、かつ、静電容量の大きく、強度や信頼性の高い、コンデンサを内蔵したガラスセラミック配線基板を得ることが可能となる。
Claims (3)
- ガラスセラミックス焼結体から成る絶縁体層の内部および/または表面に該絶縁体層との同時焼成によって形成された配線導体および誘電体層を配設して成るガラスセラミック配線基板であって、前記誘電体層は、5乃至20質量部の軟化点が500乃至650℃のガラスと、80乃至95質量部の誘電体粉末とから成ることを特徴とするガラスセラミック配線基板。
- 前記ガラスは20℃における比誘電率が10以上であり、かつ前記誘電体粉末は純度が99%以上の焼結体によるキュリー点付近における比誘電率が3000以上を示すことを特徴とする請求項1記載のガラスセラミック配線基板。
- 前記誘電体層は、平均粒径が2.2μm以下の前記ガラス粉末と、平均粒径が0.3μm以下の前記誘電体粉末とから形成されていることを特徴とする請求項1記載のガラスセラミック配線基板。
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