JP2004285388A - 薄膜形成装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】価且つ安全な放電ガスを用いても、安定した放電状態を維持した高密度プラズマを達成することができ、良質な薄膜を長時間製膜可能な薄膜形成装置を提供し、良質で高性能な薄膜を安価に提供する。
【解決手段】大気圧プラズマ放電処理装置10を用いる薄膜形成装置において、ロール回転電極(第1電極)11と角筒型固定電極郡(第2電極)12は相対的に対向し移動する関係を有し、ロール回転電極11から印加する高周波電界強度は、角筒型固定電極郡12から印加される高周波電界強度よりも高く、前記2種類の電界を重畳して大気圧プラズマ放電させ、ロールで回転電極11に容量結合25aとLC共振部25bから構成される第3フィルタ25を設置する。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、大気圧プラズマ放電処理を用いた薄膜形成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
大気圧プラズマ放電処理を用いることによって、希ガスと薄膜形成性ガスの混合ガスを使用して高品位の薄膜を得ることが知られているが、放電ガスに使用しているヘリウムやアルゴンが高価なためコストアップの原因になっている。従来のこの装置では、放電ガスとして希ガス以外の安価なガス、例えば、空気成分中の酸素ガス、窒素ガスや二酸化炭素等を使用するには放電を開始する電界の強さ(以下、電界強度とも言う)が高く、従来の高周波電界のもとでは安定な放電が得られず、薄膜が形成することが困難であった。
【0003】
例えば、特許文献1には、パルス電界を用いることにより、窒素ガスのような放電開始電界強度の高いガスでも放電が達成できることが開示されている。
【0004】
特許文献2には、酸素ガス、あるいは酸素ガスと希ガスを混合したガスを、予備放電電極において低周波電界をかけて活性化又は電離させ、次にこの電離又は活性化されたガスを、電離又は活性化されてない酸素ガス、あるいは酸素ガスと希ガスを混合したガスと共に、前記予備放電電極に対し併設された主放電電極のもとに送り、大気圧下、主放電電極間に高周波電界を印加してプラズマを発生させ、プラズマによって生成した活性種を被処理体の表面をエッチングあるいは被処理体面上にある有機物をアッシングするという装置が開示されている。
【0005】
特許文献3には、アルゴンを放電ガスとして、片側の電極から、パルス化された高周波電界と、パルス化された直流電界とを重畳することによって安定な放電状態を達成でき、それにより薄膜形成も可能であることが開示されている。
【0006】
特許文献4には、高周波電界と低周波電界とを重畳し、窒素ガスを用い、発生したプラズマによって基材を洗浄する工程を有する電子部品実装装置が開示されている。
【0007】
【特許文献1】
特開平10−154598号公報
【特許文献2】
特開平11−16696号公報
【特許文献3】
特開2002−110397号公報
【特許文献4】
特開平11−191576号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、本発明者等の研究によると、特許文献1に開示された装置を薄膜の形成に応用した場合、プラズマ密度が低く、良質の膜が得られないばかりか、製膜速度も遅く、生産性が非常に低いことが判明した。
特許文献2に開示された装置を薄膜の形成に応用した場合、酸素ガス、あるいは酸素ガスと希ガスを混合したガスを予備放電電極間で低周波電界をかけて電離あるいは活性化したガスとした後、該電離あるいは活性化したガスと主放電電極の手前で導入した薄膜形成性ガスとを混合して、主放電電極に高周波電界をかけるとパーティクルが発生してしまい、薄膜の形成がほとんど行われないことがわかった。また、プラズマ状態の酸素ガスと薄膜形成性ガスを混合すると爆発の危険性があり、この方法は薄膜形成装置として不適当であることが判明した。
また、特許文献3に開示された製膜装置では、最初、トリガーとして直流パルス電界でプラズマを発生させるが、その後、高周波パルス電界への切り替えを行い、プラズマが安定後、基材をプラズマ中へ導入する、とある。すなわち、製膜中は直流パルス電界及び高周波パルス電界を重畳していない。本発明者等の研究によると、このような電界の印加法では、結果として高性能な薄膜形成ができないことが判明した。
また、特許文献4は、電子部品の洗浄しか開示がないが、単に低周波及び高周波を重畳したのみでは、高性能な薄膜形成は難しいことがわかった。
【0009】
本発明の課題は、例えば窒素のような安価且つ安全な放電ガスを用いても、安定した放電状態を維持した高密度プラズマを発生させることができ、良質な薄膜を長時間製膜可能な薄膜形成装置を提供し、良質で高性能な薄膜を安価に提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、大気圧もしくはその近傍の圧力下において互いに相対向し相対的に平行移動可能に設けられた第1電極と第2電極とで構成される放電空間に薄膜形成ガスを含有するガスを供給し、前記放電空間に互いに周波数及び電界強度が異なる第1および第2の高周波電界を重畳して印加することにより前記ガスを励起し、この励起したガスに基材を晒すことにより当該基材上に薄膜を形成する薄膜形成装置において、前記第1又は第2電極のうち、いずれか高電界強度の電極側に、特定の周波電流を通過させて接地するフィルタを電気的に接続したことを特徴としている。
【0011】
この請求項1に記載の発明によれば、特定の高周波電界を印加することで、窒素等の放電開始電界強度の高い放電ガスでも、高密度プラズマを発生させることができ、良質な薄膜が得られ、高速に製膜でき、更には、安価、且つ安全に運転でき、環境負荷の低減も達成できる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の薄膜形成装置において、前記フィルタは、その一端側が前記いずれか高電界強度の電極側に間隔をおいて対面するように配置された静電容量結合部、コイル及びコンデンサの直列共振回路からなり、他端側が接地されていることを特徴としている。
【0013】
この請求項2に記載の発明によれば、高い高周波電界強度側の電極に特定周波数を遮断するためのフィルタを設置し、コイル及びコンデンサの直列共振回路からなり、他端側が接地することで、均一な高密度プラズマの発生が得られ、更に長時間製膜しても安定した良質な薄膜が得る事が可能となった。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項2記載の薄膜形成装置において、前記コンデンサは可変容量コンデンサであり、前記直列共振回路に流れる電流を検出する電流検出器と、この電流検出器により検出された電流値が常に最大値となるように前記可変容量コンデンサの静電容量値を制御するコントローラ部とを備えたことを特徴としている。
【0015】
この請求項3に記載の発明によれば、前記フィルタに電流検出器と、コントローラ部と、を備えたことで、フィルタには、常に一定の最大電流が流れるように調節され、より均一な放電状態が保たれ、また単時間あたりの電流変化率が小さくなり、発熱による回路乗数の変化が少なくなり、回路及び周辺部材に長時間の駆動によって発生する発熱が低減され、良質な薄膜が得る事が可能となった。
【0016】
請求項4に記載の発明は、請求項1、2又は3記載の薄膜形成装置において、前記第1電極又は第2電極のいずれか一方は周方向に回転するロール回転電極であり、他方は前記ロール回転電極の外周側に所定の間隔を置いて配置された固定電極であることを特徴としている。
【0017】
請求項5に記載の発明は、請求項1、2又は3記載の薄膜形成装置において、前記第1電極及び第2電極は、互いに所定の間隔を置いて対向配置された並行平板電極であることを特徴としている。
【0018】
この請求項4及び5に記載の発明によれば、安定した温度状態を保ち、良質で高性能な薄膜を有する基材を安価に提供することが可能となった。
【0019】
【発明の実施の形態】
[概要]
まず、本発明の実施形態の概要を説明する。
本発明において、プラズマ放電処理は、大気圧もしくはその近傍の圧力下で行われるが、大気圧もしくはその近傍の圧力とは20kPa〜110kPa程度であり、本発明に記載の良好な効果を得るためには、93kPa〜104kPaが好ましい。
【0020】
本発明の薄膜形成装置において、対向電極間(放電空間)に供給するガスは、少なくとも、電界により励起する放電ガスと、そのエネルギーを受け取ってプラズマ状態あるいは励起状態になり薄膜を形成する薄膜形成ガスを含んでいる。
【0021】
しかしながら、上記の薄膜形成装置では、ヘリウムやアルゴン等の希ガスの放電ガスでは、薄膜を形成する際の生産コストが放電ガスのコストに依存するところが多いく、また環境的な見地からも代替の放電ガスの使用を本発明者等は検討していた。その代替の放電ガスとして、空気、酸素、窒素、二酸化炭素、水素等を検討した結果、これらのガスであっても同様に高密度プラズマを発生できる条件を求め、且つ薄膜形成性に優れ、形成した薄膜が緻密且つ均一となる条件及び装置を検討した結果、本発明に至ったものである。
【0022】
本発明における放電条件は、放電空間に、前記第1の高周波電界と第2の高周波電界とを重畳し、前記第1の高周波電界の周波数ω1より前記第2の高周波電界の周波数ω2が高く、且つ、前記第1の高周波電界の強さV1、前記第2の高周波電界の強さV2及び放電開始電界の強さIVとの関係が、
V1≧IV>V2
又は V1>IV≧V2 を満たし、
前記第2の高周波電界の出力密度が、1W/cm2以上である。
【0023】
高周波とは、少なくとも0.5kHzの周波数を有するものを言う。
重畳する高周波電界が、ともにサイン波である場合、第1の高周波電界の周波数ω1と該周波数ω1より高い第2の高周波電界の周波数ω2とを重ね合わせた成分となり、その波形は周波数ω1のサイン波上に、それより高い周波数ω2のサイン波が重なった鋸歯状の波形となる。
【0024】
本発明において、放電開始電界の強さとは、実際の薄膜形成装置に使用される放電空間(電極の構成など)及び反応条件(ガス条件など)において放電を起こすことのできる最低電界強度のことを指す。放電開始電界強度は、放電空間に供給されるガス種や電極の誘電体種又は電極間距離などによって多少変動するが、同じ放電空間においては、放電ガスの放電開始電界強度に支配される。
【0025】
上記で述べたような高周波電界を放電空間に印加することによって、薄膜形成可能な放電を起こし、高品位な薄膜形成に必要な高密度プラズマを発生することができると推定される。
ここで重要なのは、このような高周波電界が対向する電極に印加され、すなわち、同じ放電空間に印加されることである。前述の特許文献2のように、印加電極を2つ併置し、離間した異なる放電空間それぞれに、異なる高周波電界を印加する装置では、本発明の薄膜形成は達成できない。
【0026】
上記サイン波等の連続波の重畳について説明したが、これに限られるものではなく、第1の高調波電界V1及び第2の高調波電界V2共にパルス波の場合、もしくは、第1の高調波電界V1又は第2の高調波電界V2のいずれか一方が連続波であり、他方が高調波電界がパルス波であってもよい。また、更に第3の電界を有していてもよい。
【0027】
上記本発明の高周波電界を、同一放電空間に印加する具体的な装置としては、対向電極を構成する第1電極に周波数ω1であって電界強度V1である第1の高周波電界を印加する第1電源を接続し、第2電極に周波数ω2であって電界強度V2である第2の高周波電界を印加する第2電源を接続した大気圧プラズマ放電処理装置を用いることである。
【0028】
上記の大気圧プラズマ放電処理装置には、対向電極間に、放電ガスと薄膜形成ガスとを供給するガス供給手段を備える。更に、電極の温度を制御する電極温度制御手段を有することが好ましい。
【0029】
更に、本発明における大気圧プラズマ放電処理装置の第1電源は、第2電源より高い高周波電界強度を印加できる能力を有していることが好ましい。
【0030】
また、第1電極、第1電源又はそれらの間の何れかには第1フィルタを、また第2電極、第2電源又はそれらの間の何れかには第2フィルタを接続することが好ましい。第1フィルタは、第2電源から第1電源への第2の高周波電界の電流を通過しにくくし、また第2フィルタは、第1の高周波電界の電流をアースして、第1電源から第2電源への第1の高周波電界の電流を通過しにくくする機能が備わっているものを使用する。ここで、通過しにくいとは、好ましくは、電流の20%以下、より好ましくは10%以下しか通さないことをいう。逆に通過しやすいとは、好ましくは電流の80%以上、より好ましくは90%以上を通すことをいう。
【0031】
更に、第1電極には、本発明のフィルタとして第3フィルタを設置する。第3フィルタは、第2の高周波電界の電流をアースする機能があり、その結果、第2電源から第1電源への第2の高周波電界の電流が通過しにくくなる。また、第1電源からの電流を通過しにくくする。
【0032】
ここで、本発明でいう高周波電界強度(印加電界強度)と放電開始電界強度は、下記の方法で測定されたものをいう。
【0033】
高周波電界強度V1及びV2(単位:kV/mm)の測定方法:
各電極部に高周波電圧プローブ(P6015A)を設置し、該高周波電圧プローブの出力信号をオシロスコープ(Tektronix社製、TDS3012B)に接続し、電界強度を測定する。
【0034】
放電開始電界強度IV(単位:kV/mm)の測定方法:
電極間に放電ガスを供給し、この電極間の電界強度を増大させていき、放電が始まる電界強度を放電開始電界強度IVと定義する。測定器は上記高周波電界強度測定と同じである。
【0035】
なお、上記測定に使用する高周波電圧プローブとオシロスコープの位置関係については後述の図1に示してある。
【0036】
本発明の放電条件を整えることより、例えば窒素ガスのように放電開始電界強度が高い放電ガスでも、放電を開始し、高密度で安定なプラズマ状態を維持でき、高性能な薄膜形成を行うことができるのである。
【0037】
上記の測定により放電ガスを窒素ガスとした場合、その放電開始電界強度IV(1/2Vp−p)は3.7kV/mm程度であり、従って、上記の関係において、第1の高周波電界強度を、V1≧3.7kV/mmとして印加することによって窒素ガスを励起し、プラズマ状態にすることができる。
【0038】
ここで、第1電源の周波数ω1としては、200kHz以下が好ましく用いることができる。またこの電界波形としては、連続波でもパルス波でもよい。下限は1kHz程度が望ましい。
【0039】
一方、第2電源の周波数ω2としては、800kHz以上が好ましく用いられる。この第2電源の周波数ω2が高い程、プラズマ密度が高くなり、緻密で良質な薄膜が得られる。上限は200MHz程度が望ましい。
【0040】
このような2つの電源から高周波電界V1、V2を印加することは、第1の高周波電界V1によって高い放電開始電界強度を有する放電ガスの放電を開始するのに必要であり、また第2の高周波電界V2の高い周波数及び高い出力密度によりプラズマ密度を高くして緻密で良質な薄膜を形成することが本発明の重要な点である。
また、第1の高周波電界V1の出力密度を高くすることで、放電の均一性を維持したまま、第2の高周波電界V2の出力密度を向上させることができる。これにより、更なる均一高密度プラズマが生成でき、更なる製膜速度の向上と、膜質の向上が両立できる。
【0041】
本発明に用いられる大気圧プラズマ放電処理装置において、前記第1フィルタは、第2電源から第1電源への第2の高周波電界V2の電流を通過しにくくする。
【0042】
例えば、第1フィルタとしては、第2電源の周波数ω2に応じて10μH以上のコイルを用いる。本発明において、かかる性質のあるフィルタであれば適宜使用可能である。
【0043】
第2フィルタは、第1の高周波電界V1の電流をアースする機能があり、結果として第1電源から第2電源への第1の高周波電界V1の電流を通過しにくくする。
【0044】
例えば、第2フィルタとしては、第1電源の周波数ω1に応じて10μH以上のコイルを用い、これらのコイルを介してアース接地することでフィルタとして使用できる。本発明において、かかる性質のあるフィルタであれば適宜使用可能である。
【0045】
第3フィルタは、第2の高周波電界の電流をアースして、第2電源から第1電源への第1の高周波電界の電流を通過しにくくし、また第1電源からの電流を通過しにくくする。
【0046】
第3フィルタは、第1電極との間でコンデンサを形成する静電容量結合部と、コイル及びコンデンサからなるLC直列共振回路からなり、LC直列共振回路には、第3フィルタに流れる電流が常に最大電流が流れるように調整するコントローラ部を有している。
【0047】
例えば、第3フィルタとしては、第2電源の周波数ω2に応じて数10pF〜数万pFのコンデンサ部及び数μH程度のリアクタンス部としてのコイルを用いることができる。これらのコイル及びコンデンサを介してアース接地することで第3フィルタとして使用できる。
本発明に記載の良好な効果を得るためには、容量結合部は500pF〜1000pF程度、LC共振部では、コイル部が0.3μH〜10μH程度、コンデンサ部が50pF〜1000pF程度の素子を用いるのが好ましい。
【0048】
また、LC共振部は、コイル部と可変コンデンサからなるLC共振回路と、コントローラ部と、電流検出器を備えている。
放電空間内の特定の周波数を濾波するために、LC共振部内の電流検出手段から電流値を検出し、コントローラ部から可変コンデンサの静電容量を調整し、第3フィルタには特定の周波数において常に最大電流が流れるように制御される。
コントローラ部を備えることにより、電流変動を低減し、安定したプラズマ放電を得ることができ、更に回路及び周辺部材の温度変動による発熱を防止する事ができ、機械的強度、回路寿命を向上させる。
本発明において、かかる性質のあるフィルタであれば制限無く使用できる。
【0049】
本発明に用いられる大気圧プラズマ放電処理装置は、上述のように、対向電極の間で放電させ、前記対向電極間に導入したガスをプラズマ状態とし、前記対向電極間を移送される基材を該プラズマ状態のガスに晒すことによって、該基材の上に薄膜を形成させるものである。
【0050】
[第1の実施の形態]
次に、図を参照して本発明の第1の実施の形態を詳細に説明する。
まず、構成を説明する。
図1に、本発明に有用な対向電極間で基材を処理する方式の大気圧プラズマ放電処理装置の一例を示す。
【0051】
本発明の大気圧プラズマ放電処理装置は、少なくとも、大気圧プラズマ放電処理装置10、二つの異なる電源を有する電界印加手段20、ガス供給手段30、電極温度調節手段40を有している。
【0052】
大気圧プラズマ放電処理装置10は、ロール回転電極(第1電極)11と角筒型固定電極群(第2電極)12との対向電極間(放電空間)13で、基材Fをプラズマ放電処理して薄膜を形成するものである。
【0053】
また、ロール回転電極11と角筒型固定電極群12との間の放電空間13に、ロール回転電極11には第1電源21から周波数ω1、電界強度V1、電流I1の第1の高周波電界を、また角筒型固定電極群12には第2電源22から周波数ω2、電界強度V2、電流I2の第2の高周波電界をかける構成である。
【0054】
ロール回転電極11と第1電源21との間には、第1フィルタ23が設置される。また、ロール回転電極11には、第3フィルタ25が設置される。
【0055】
図2に、第3フィルタ25の構成図を示す。
図1、図2に示すように、第3フィルタ25は、ロール回転電極11の周面に間隔を置いて対向配置された電極で構成された静電容量結合部25aと、この静電容量結合部25aとアースGNDとの間に電気的に直列接続されたLC共振部25bとからなる。
【0056】
図2に示すように、LC共振部25bは、コイルLと可変容量コンデンサCの直列回路からなるLC共振回路と、この可変容量コンデンサCの容量を調整する調整手段としてのコントローラ部25cと、第3フィルタ25に流れる回路電流を検知する電流検出手段としての電流検出器CTとを備える。
第3フィルタ25は第2電源22からの電流をアースすることで、第2電源22から第1電源21への電流を通過しにくくし、また、第1電源21からの電流を通過しにくくするように設計される。
【0057】
静電容量結合部25aは、ロール回転電極11の周面に間隔を置いて対向配置された電極で構成されているため、ロール回転電極11とは非接触である。
通常、例えば、第2電源のアースとしてブラシをロール回転電極11の両端のどちらか一方に接続していたため、放電空間にはブラシによる高周波ノイズが発生していた。本発明の第3フィルタはロール回転電極11とは非接触であるため、高周波ノイズが発生せず、安定した放電空間を維持できる。
【0058】
また、第2電源からみた場合、対向電極間13の放電空間と第3フィルターは、直列コンデンサを形成している。第3フィルタのインピーダンスを小さくすることで第2電源22からの電流が流れやすくなり、放電空間に第2の高周波電界を非常に安定した状態でかけることができる。
従って、長時間薄膜形成を行った場合、高周波電界を用いた場合に幅手方向に生じていた電界強度分布差が減少し、長時間安定した薄膜形成を行うことが可能となった。
【0059】
今、放電空間の温度が変化した場合、ロール電極11に接近して配置された静電容量結合部25aもその温度変動の影響を受け、静電容量が変動することが起こる。すると、この第3フィルタ25の共振周波数が変動することになり、流れる電流に変化が生じる。しかしながら、その電流値は電流検出器CTにより常時監視されており、検出信号がコントローラ部25cに送られる。コントローラ部25cは可変容量コンデンサCの静電容量の値を調整し、常に最大の電流が流れるように制御する。その結果、不要な低周波成分を除去することができ、安定したプラズマ放電が得られることになる。
【0060】
第3フィルタ25は、放電空間内に発生する特定の周波数電流を濾波する機能を有し、第3フィルタ25内に特定の低周波数において最大電流が流れるように制御される。
LC共振部25b内の電流検出器CTから第3フィルタ25に流れる電流値が検出され、検出された電流値はコントローラ部25c内にて設定された電流値と比較され、設定電流が流れるように可変容量コンデンサCの容量を変化させる。
【0061】
また、角筒型固定電極群12と第2電源22との間には、第2フィルタ24が設置されており、第2フィルタ24は、第1電源21からの電流をアースして、第1電源21から第2電源22への電流を通過しにくくするように設計される。
【0062】
また、電流はI1<I2となることが好ましい。第1の高周波電界の電流I1は、好ましくは0.3mA/cm2〜20mA/cm2、さらに好ましくは1.0mA/cm2〜20mA/cm2である。また、第2の高周波電界の電流I2は、好ましくは10mA/cm2〜100mA/cm2、さらに好ましくは20mA/cm2〜100mA/cm2である。
【0063】
ガス供給手段30のガス発生装置31で発生させたガスGは、流量を制御してガス流路部32を経て給気口33よりプラズマ放電処理容器14内に導入される。
【0064】
基材Fは、図示されていない元巻きから巻きほぐして搬送され、又は前工程から搬送され、ガイドロール51aを経てニップロール52aで基材Fに同伴されて来る空気等を遮断し、ロール回転電極11に接触したまま巻き回しながら角筒型固定電極群12との間に移送される。ロール回転電極11と角筒型固定電極群12との両方から電界をかけており、対向電極間13で放電プラズマが発生している。基材Fはロール回転電極11に接触したまま、巻き回されながらプラズマ状態のガスにより薄膜が形成される。基材Fは、ニップロール52b、ガイドロール51bを経て、図示しない巻き取り機で巻き取られる、又は次工程に移送される。
放電処理済みの処理排ガスG′は排気口34より排出される。
【0065】
薄膜形成中電極温度調節手段は、配管内を媒体が通ることにより電極を加熱又は冷却する。プラズマ放電処理の際の基材の温度によっては、得られる薄膜の物性や組成等は変化することがあり、これに対して適宜制御することが望ましい。
温度調節の媒体としては、蒸留水、油等の絶縁性材料が好ましく用いられる。プラズマ放電処理の際、幅手方向あるいは長手方向での基材の温度ムラが生じないように電極の内部の温度を均等に調節することが望まれる。
【0066】
薄膜形成中、ロール回転電極11及び角筒型固定電極群12を加熱又は冷却するために、電極温度調節手段40で温度を調節した媒体を、送液ポンプPから配管41を経て両電極に送り、電極内側から温度を調節する。
なお、53a及び53bはプラズマ放電処理容器14と外界とを仕切る仕切板である。
【0067】
図3は、図1に示したロール回転電極11の導電性の金属質母材とその上に被覆されている誘電体の構造の一例を示す斜視図である。
【0068】
図3において、ロール回転電極11は導電性の金属質母材11aとその上に誘電体11bが被覆されたものである。プラズマ放電処理中の電極表面温度を制御するため、温度調節用の媒体(水もしくはシリコンオイル等)が循環できる構造である。
【0069】
図4は、図1に示した角筒型固定電極郡12の角筒型固定電極12Aの導電性の金属質母材とその上に被覆されている誘電体の構造の一例を示す斜視図である。
【0070】
図4において、角筒型固定電極12Aは、導電性の金属質母材12aに対し、図2同様の誘電体12bの被覆を有しており、該電極の構造は金属質のパイプになっていて、それがジャケットとなり、放電中の温度調節が行える構造である。
【0071】
なお、角筒型固定電極12Aの数は、上記ロール回転電極11の円周より大きな円周上に沿って複数本設置されていおり、角筒型固定電極群12の放電面積はロール回転電極11に対向している全角筒型固定電極面の面積の和で表される。
【0072】
図4に示した該角筒型固定電極12Aは、円筒型電極でもよいが、角筒型電極は円筒型電極に比べて、放電範囲(放電面積)を広げる効果があるので、本発明に好ましく用いられる。
【0073】
図3及び4において、ロール回転電極11及び該角筒型固定電極12Aは、それぞれ導電性の金属質母材11a及び12aの上に誘電体11b及び12bとしてのセラミックスを溶射後、無機化合物の封孔材料を用いて封孔処理したものである。セラミックス誘電体は片肉で1mm程度被覆あればよい。溶射に用いるセラミックス材としては、アルミナ・窒化珪素等が好ましく用いられるが、この中でもアルミナが加工し易いので、特に好ましく用いられる。また、誘電体層が、ライニングにより無機材料を設けたライニング処理誘電体であってもよい。
【0074】
導電性の金属質母材11a及び12aとしては、チタン金属又はチタン合金、銀、白金、ステンレススティール、アルミニウム、鉄等の金属等や、鉄とセラミックスとの複合材料又はアルミニウムとセラミックスとの複合材料を挙げることができるが、後述の理由からはチタン金属又はチタン合金が特に好ましい。
【0075】
本発明に有用な導電性の金属質母材及び誘電体についての詳細については後述する。
【0076】
また、図1に前述の高周波電界強度(印加電界強度)と放電開始電界強度の測定に使用する測定器を示した。61a及び61bは高周波電圧プローブであり、62a及び62bはオシロスコープである。
【0077】
[第2の実施の形態]
なお、上述した図1〜図4に示す大気圧プラズマ放電処理装置10は、基材Fがフィルム等のように曲げられることのできる場合に使用される装置であったが、ある程度厚みのある基材M又は硬い基材M、例えばガラスやレンズ等、基材をロール回転電極11に巻回すことが困難な場合には、図5に示すような大気圧プラズマ放電処理装置100を使用する。図5に、本発明に係る大気圧プラズマ放電処理装置の第2の実施の形態を示す。
【0078】
大気圧プラズマ放電処理装置100は、電極110、電界印加手段120、ガス供給手段130等から概略構成されており、電極110は、下側平板電極111と上側平板電極郡112とを備えており、下側平板電極111と上側平板電極郡112とは上下に対向して配置され相対的に移動する関係である。
【0079】
上側平板電極郡112は、第2電源122から電源供給されており、上側平板電極郡112と第2電源122との間には、第2フィルタ124が設置されている。
上側平板電極郡112は複数の略矩形状の平板電極112A,…が左右に対向して配置されて構成されたもので、これら複数の平板電極112A,…間の隙間がそれぞれガス流路部132,…とされている。つまり、上側平板電極郡112の上方には、ガス発生装置131が設けられており、このガス発生装置131から反応性ガスや放電ガスがそれぞれのガス流路部132,…内に送給されて、下側平板電極111との間で噴出される。
【0080】
下側平板電極111は、第1電源121から電源供給されており、下側平板電極郡111と第1電源121との間には、第1フィルタ123が設置されている。
また、下側平板電極111には、第3フィルタ125が設置されている。前記第3フィルタ125は、静電容量結合部125aとLC共振部125bから構成されている。
【0081】
第3フィルタ125は、図2に示した構成となっており実施例1記載の第3フィルタ25同様の効果が得られる。
【0082】
下側平板電極111は、基材Mをその表面に装着し、かつ、基材Mをガス流路部132に対して前後方向に往復移動させる。したがって、この下側平板電極111が移動することによって、上側平板電極郡112と下側平板電極111との間でプラズマ状態となり、基材Mに製膜が行われる。
【0083】
対向する第1電極及び第2の電極の電極間距離は、電極の一方に誘電体を設けた場合、該誘電体表面ともう一方の電極の導電性の金属質母材表面との最短距離のことを言う。双方の電極に誘電体を設けた場合、誘電体表面同士の距離の最短距離を言う。電極間距離は、導電性の金属質母材に設けた誘電体の厚さ、印加電界強度の大きさ、プラズマを利用する目的等を考慮して決定されるが、いずれの場合も均一な放電を行う観点から0.1〜20mmが好ましく、特に好ましくは0.5〜2mmである。
【0084】
プラズマ放電処理容器14はパイレックス(R)ガラス製の処理容器等が好ましく用いられるが、電極との絶縁がとれれば金属製を用いることも可能である。例えば、アルミニウム又は、ステンレススティールのフレームの内面にポリイミド樹脂等を張り付けても良く、該金属フレームにセラミックス溶射を行い、絶縁性をとってもよい。
【0085】
本発明の大気圧大気圧プラズマ放電処理装置に設置する第1電源(高周波電源)としては、
Figure 2004285388
等の市販のものを挙げることができ、何れも使用することができる。
【0086】
また、第2電源(高周波電源)としては、
Figure 2004285388
等の市販のものを挙げることができ、何れも好ましく使用できる。
なお、上記電源のうち、*印はハイデン研究所インパルス高周波電源(連続モードで100kHz)である。それ以外は連続サイン波のみ印加可能な高周波電源である。
【0087】
本発明においては、このような電界を印加して、均一で安定な放電状態を保つことができる電極を大気圧プラズマ放電処理装置に採用することが好ましい。
【0088】
本発明において、対向する電極間に印加する電力は、第2電極(第2の高周波電界)に1W/cm2以上の電力(出力密度)を供給し、放電ガスを励起してプラズマを発生させ、エネルギーを薄膜形成ガスに与え、薄膜を形成する。
第2電極に供給する電力の上限値としては、好ましくは50W/cm2、より好ましくは20W/cm2である。下限値は、好ましくは1.2W/cm2である。なお、放電面積(cm2)は、電極において放電が起こる範囲の面積のことを指す。
また、第1電極(第1の高周波電界)にも、1W/cm2以上の電力(出力密度)を供給することにより、第2の高周波電界の均一性を維持したまま、出力密度を向上させることができる。これにより、更なる均一高密度プラズマを生成でき、更なる製膜速度の向上と膜質の向上が両立できる。好ましくは5W/cm2以上である。第1電極に供給する電力の上限値は、好ましくは50W/cm2である。
【0089】
ここで高周波電界の波形としては、特に限定されない。連続モードと呼ばれる連続サイン波状の連続発振モードと、パルスモードと呼ばれるON/OFFを断続的に行う断続発振モード等があり、そのどちらを採用してもよいが、少なくとも第2電極側(第2の高周波電界)は連続サイン波の方がより緻密で良質な膜が得られるので好ましい。
【0090】
このような大気圧プラズマによる薄膜形成法に使用する電極は、構造的にも、性能的にも過酷な条件に耐えられるものでなければならない。このような電極としては、金属質母材上に誘電体を被覆したものであることが好ましい。
【0091】
本発明に使用する誘電体被覆電極においては、様々な金属質母材と誘電体との間に特性が合うものが好ましく、その一つの特性として、金属質母材と誘電体との線熱膨張係数の差が10×10−6/℃以下となる組み合わせのものである。好ましくは8×10−6/℃以下、更に好ましくは5×10−6/℃以下、更に好ましくは2×10−6/℃以下である。なお、線熱膨張係数とは、周知の材料特有の物性値である。
【0092】
線熱膨張係数の差が、この範囲にある導電性の金属質母材と誘電体との組み合わせとしては、
▲1▼金属質母材が純チタン又はチタン合金で、誘電体がセラミックス溶射被膜
▲2▼金属質母材が純チタン又はチタン合金で、誘電体がガラスライニング
▲3▼金属質母材がステンレススティールで、誘電体がセラミックス溶射被膜
▲4▼金属質母材がステンレススティールで、誘電体がガラスライニング
▲5▼金属質母材がセラミックス及び鉄の複合材料で、誘電体がセラミックス溶射被膜
▲6▼金属質母材がセラミックス及び鉄の複合材料で、誘電体がガラスライニング
▲7▼金属質母材がセラミックス及びアルミの複合材料で、誘電体がセラミックス溶射皮膜
▲8▼金属質母材がセラミックス及びアルミの複合材料で、誘電体がガラスライニング
等がある。線熱膨張係数の差という観点では、上記▲1▼又は▲2▼及び▲5▼〜▲8▼が好ましく、特に▲1▼が好ましい。
【0093】
本発明において、金属質母材は、上記の特性からはチタン又はチタン合金が特に有用である。金属質母材をチタン又はチタン合金とすることにより、誘電体を上記とすることにより、使用中の電極の劣化、特にひび割れ、剥がれ、脱落等がなく、過酷な条件での長時間の使用に耐えることができる。
【0094】
本発明に有用な電極の金属質母材は、チタンを70質量%以上含有するチタン合金又はチタン金属である。本発明において、チタン合金又はチタン金属中のチタンの含有量は、70質量%以上であれば、問題なく使用できるが、好ましくは80質量%以上のチタンを含有しているものが好ましい。本発明に有用なチタン合金又はチタン金属は、工業用純チタン、耐食性チタン、高力チタン等として一般に使用されているものを用いることができる。工業用純チタンとしては、TIA、TIB、TIC、TID等を挙げることができ、何れも鉄原子、炭素原子、窒素原子、酸素原子、水素原子等を極僅か含有しているもので、チタンの含有量としては、99質量%以上を有している。耐食性チタン合金としては、T15PBを好ましく用いることができ、上記含有原子の他に鉛を含有しており、チタン含有量としては、98質量%以上である。また、チタン合金としては、鉛を除く上記の原子の他に、アルミニウムを含有し、その他バナジウムや錫を含有しているT64、T325、T525、TA3等を好ましく用いることができ、これらのチタン含有量としては、85質量%以上を含有しているものである。これらのチタン合金又はチタン金属はステンレススティール、例えばAISI316に比べて、熱膨張係数が1/2程度小さく、金属質母材としてチタン合金又はチタン金属の上に施された後述の誘電体との組み合わせがよく、高温、長時間での使用に耐えることができる。
【0095】
一方、誘電体の求められる特性としては、具体的には、比誘電率が6〜45の無機化合物であることが好ましく、また、このような誘電体としては、アルミナ、窒化珪素等のセラミックス、あるいは、ケイ酸塩系ガラス、ホウ酸塩系ガラス等のガラスライニング材等がある。この中では、後述のセラミックスを溶射したものやガラスライニングにより設けたものが好ましい。特にアルミナを溶射して設けた誘電体が好ましい。
【0096】
又は、上述のような大電力に耐える仕様の一つとして、誘電体の空隙率が10体積%以下、好ましくは8体積%以下であることで、更に好ましくは0体積%を越えて5体積%以下である。なお、誘電体の空隙率は、BET吸着法や水銀ポロシメーターにより測定することができる。後述の実施例においては、島津製作所製の水銀ポロシメーターにより金属質母材に被覆された誘電体の破片を用い、空隙率を測定する。誘電体が、低い空隙率を有することにより、高耐久性が達成される。このような空隙を有しつつも空隙率が低い誘電体としては、後述の大気プラズマ溶射法等による高密度、高密着のセラミックス溶射被膜等を挙げることができる。更に空隙率を下げるためには、封孔処理を行うことが好ましい。
【0097】
上記、大気プラズマ溶射法は、セラミックス等の微粉末、ワイヤ等をプラズマ熱源中に投入し、溶融又は半溶融状態の微粒子として被覆対象の金属質母材に吹き付け、皮膜を形成させる技術である。プラズマ熱源とは、分子ガスを高温にし、原子に解離させ、更にエネルギーを与えて電子を放出させた高温のプラズマガスである。このプラズマガスの噴射速度は大きく、従来のアーク溶射やフレーム溶射に比べて、溶射材料が高速で金属質母材に衝突するため、密着強度が高く、高密度な被膜を得ることができる。詳しくは、特開2000−301655に記載の高温被曝部材に熱遮蔽皮膜を形成する溶射方法を参照することができる。この方法により、上記のような被覆する誘電体(セラミック溶射膜)の空隙率にすることができる。
【0098】
また、大電力に耐える別の好ましい仕様としては、誘電体の厚みが0.5〜2mmであることである。この膜厚変動は、5%以下であることが望ましく、好ましくは3%以下、更に好ましくは1%以下である。
【0099】
誘電体の空隙率をより低減させるためには、上記のようにセラミックス等の溶射膜に、更に、無機化合物で封孔処理を行うことが好ましい。前記無機化合物としては、金属酸化物が好ましく、この中では特に酸化ケイ素(SiOx)を主成分として含有するものが好ましい。
【0100】
封孔処理の無機化合物は、ゾルゲル反応により硬化して形成したものであることが好ましい。封孔処理の無機化合物が金属酸化物を主成分とするものである場合には、金属アルコキシド等を封孔液として前記セラミック溶射膜上に塗布し、ゾルゲル反応により硬化する。無機化合物がシリカを主成分とするものの場合には、アルコキシシランを封孔液として用いることが好ましい。
【0101】
ここでゾルゲル反応の促進には、エネルギー処理を用いることが好ましい。エネルギー処理としては、熱硬化(好ましくは200℃以下)や、紫外線照射などがある。更に封孔処理の仕方として、封孔液を希釈し、コーティングと硬化を逐次で数回繰り返すと、よりいっそう無機質化が向上し、劣化の無い緻密な電極ができる。
【0102】
本発明に係る誘電体被覆電極の金属アルコキシド等を封孔液として、セラミックス溶射膜にコーティングした後、ゾルゲル反応で硬化する封孔処理を行う場合、硬化した後の金属酸化物の含有量は60モル%以上であることが好ましい。封孔液の金属アルコキシドとしてアルコキシシランを用いた場合には、硬化後のSiOx(xは2以下)含有量が60モル%以上であることが好ましい。硬化後のSiOx含有量は、XPS(X線光電子分光法)により誘電体層の断層を分析することにより測定する。
【0103】
本発明の薄膜形成装置に係る電極においては、電極の少なくとも基材と接する側のJIS B 0601で規定される表面粗さの最大高さ(Rmax)が10μm以下になるように調整することが、本発明に記載の効果を得る観点から好ましいが、更に好ましくは、表面粗さの最大値が8μm以下であり、特に好ましくは、7μm以下に調整することである。このように誘電体被覆電極の誘電体表面を研磨仕上げする等の方法により、誘電体の厚み及び電極間のギャップを一定に保つことができ、放電状態を安定化できること、更に熱収縮差や残留応力による歪やひび割れを無くし、且つ、高精度で、耐久性を大きく向上させることができる。誘電体表面の研磨仕上げは、少なくとも基材と接する側の誘電体において行われることが好ましい。更にJIS B 0601で規定される中心線平均表面粗さ(Ra)は0.5μm以下が好ましく、更に好ましくは0.1μm以下である。
【0104】
本発明に使用する誘電体被覆電極において、大電力に耐える他の好ましい仕様としては、耐熱温度が100℃以上であることである。更に好ましくは120℃以上、特に好ましくは150℃以上である。また上限は500℃である。なお、耐熱温度とは、大気圧プラズマ処理で用いられる電圧において絶縁破壊が発生せず、正常に放電できる状態において耐えられる最も高い温度のことを指す。このような耐熱温度は、上記のセラミックス溶射や、泡混入量の異なる層状のガラスライニングで設けた誘電体を適用したり、上記金属質母材と誘電体の線熱膨張係数の差の範囲内の材料を適宜選択する手段を適宜組み合わせることによって達成可能である。
【0105】
次に、放電空間に供給するガスについて説明する。
供給するガスは、少なくとも放電ガス及び薄膜形成ガスを含有する。放電ガスと薄膜形成ガスは混合して供給してもよいし、別々に供給してもかまわない。
【0106】
放電ガスとは、薄膜形成可能なグロー放電を発生させることのできるガスである。放電ガスとしては、窒素、希ガス、空気、水素ガス、酸素などがあり、これらを単独で放電ガスとして用いても、混合して用いてもかまわない。本発明において、放電ガスとして好ましいのは窒素である。放電ガスの50〜100体積%が窒素ガスであることが好ましい。このとき、放電ガスとして窒素以外の放電ガスとしては、希ガスを50体積%未満含有することが好ましい。また、放電ガスの量は、放電空間に供給する全ガス量に対し、90〜99.9体積%含有することが好ましい。
【0107】
薄膜形成ガスとは、それ自身が励起して活性となり、基材上に化学的に堆積して薄膜を形成する原料のことである。
【0108】
次に、本発明に使用する薄膜を形成するために放電空間に供給するガスについて説明する。基本的に放電ガスと薄膜形成ガスであるが、更に、添加ガスを加えることもある。放電空間に供給する全ガス量中、放電ガスを90〜99.9体積%含有することが好ましい。
【0109】
本発明に使用する薄膜形成ガスとしては、有機金属化合物、ハロゲン金属化合物、金属水素化合物等を挙げることができる。
【0110】
本発明に有用な有機金属化合物は下記の一般式(I)で示すものが好ましい。一般式(I) R1xMR2yR3z式中、Mは金属、R1はアルキル基、R2はアルコキシ基、R3はβ−ジケトン錯体基、β−ケトカルボン酸エステル錯体基、β−ケトカルボン酸錯体基及びケトオキシ基(ケトオキシ錯体基)から選ばれる基であり、金属Mの価数をmとした場合、x+y+z=mであり、x=0〜m、又はx=0〜m−1であり、y=0〜m、z=0〜mで、何れも0又は正の整数である。R1のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等を挙げることができる。R2のアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、3,3,3−トリフルオロプロポキシ基等を挙げることができる。またアルキル基の水素原子をフッ素原子に置換したものでもよい。R3のβ−ジケトン錯体基、β−ケトカルボン酸エステル錯体基、β−ケトカルボン酸錯体基及びケトオキシ基(ケトオキシ錯体基)から選ばれる基としては、β−ジケトン錯体基として、例えば、2,4−ペンタンジオン(アセチルアセトンあるいはアセトアセトンともいう)、1,1,1,5,5,5−ヘキサメチル−2,4−ペンタンジオン、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン、1,1,1−トリフルオロ−2,4−ペンタンジオン等を挙げることができ、β−ケトカルボン酸エステル錯体基として、例えば、アセト酢酸メチルエステル、アセト酢酸エチルエステル、アセト酢酸プロピルエステル、トリメチルアセト酢酸エチル、トリフルオロアセト酢酸メチル等を挙げることができ、β−ケトカルボン酸として、例えば、アセト酢酸、トリメチルアセト酢酸等を挙げることができ、またケトオキシとして、例えば、アセトオキシ基(又はアセトキシ基)、プロピオニルオキシ基、ブチリロキシ基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基等を挙げることができる。これらの基の炭素原子数は、上記例有機金属示化合物を含んで、18以下が好ましい。また例示にもあるように直鎖又は分岐のもの、また水素原子をフッ素原子に置換したものでもよい。
【0111】
本発明において取り扱いの問題から、爆発の危険性の少ない有機金属化合物が好ましく、分子内に少なくとも一つ以上の酸素を有する有機金属化合物が好ましい。このようなものとしてR2のアルコキシ基を少なくとも一つを含有する有機金属化合物、またR3のβ−ジケトン錯体基、β−ケトカルボン酸エステル錯体基、β−ケトカルボン酸錯体基及びケトオキシ基(ケトオキシ錯体基)から選ばれる基を少なくとも一つ有する金属化合物が好ましい。
【0112】
なお、具体的な有機金属化合物については後述する。
本発明において、放電空間に供給するガスには、放電ガス、薄膜形成性ガスの他に、薄膜形成の反応を促進する添加ガスを混合してもよい。添加ガスとしては、酸素、オゾン、過酸化水素、二酸化炭素、一酸化炭素、水素、アンモニア等を挙げることができるが、酸素、一酸素化炭素及び水素が好ましく、これらから選択される成分を混合させるのが好ましい。その含有量はガス全量に対して0.01〜5体積%含有させることが好ましく、それによって反応促進され、且つ、緻密で良質な薄膜を形成することができる。
【0113】
上記形成された酸化物又は複合化合物の薄膜の膜厚は、0.1〜1000nmの範囲が好ましい。
【0114】
本発明において、薄膜形成性ガスに使用する有機金属化合物、ハロゲン化金属、金属水素化合物の金属として、Li、Be、B、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Cd、In、Ir、Sn、Sb、Cs、Ba、La、Hf、Ta、W、Tl、Pb、Bi、Ce、Pr、Nd、Pm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu等を挙げることができる。
【0115】
本発明の薄膜形成装置は、上記のような有機金属化合物、ハロゲン金属化合物、金属水素化合物等の金属化合物を放電ガスと共に使用することにより様々な高機能性の薄膜を得ることができる。本発明の薄膜の例を以下に示すが、本発明はこれに限られるものではない。
【0116】
電極膜 Au、Al、Ag、Ti、Ti、Pt、Mo、Mo−Si
誘電体保護膜 SiO2、SiO、Si3N4、Al2O3、Al2O3、Y2O3
透明導電膜 In2O3、SnO2
エレクトロクロミック膜 WO3、IrO2、MoO3、V2O5
蛍光膜 ZnS、ZnS+ZnSe、ZnS+CdS
磁気記録膜 Fe−Ni、Fe−Si−Al、γ−Fe2O3、Co、Fe3O4、Cr、SiO2、AlO3
超導電膜 Nb、Nb−Ge、NbN
太陽電池膜 a−Si、Si
反射膜 Ag、Al、Au、Cu
選択性吸収膜 ZrC−Zr
選択性透過膜 In2O3、SnO2
反射防止膜 SiO2、TiO2、SnO2
シャドーマスク Cr
耐摩耗性膜 Cr、Ta、Pt、TiC、TiN
耐食性膜 Al、Zn、Cd、Ta、Ti、Cr
耐熱膜 W、Ta、Ti
潤滑膜 MoS2
装飾膜 Cr、Al、Ag、Au、TiC、Cu
尚、上記窒化物の窒化度、酸化物の酸化度、硫化物の硫化度、炭化物の炭化度は一例であり、金属との組成比は適宜変化してよい。また、薄膜には、上記金属化合物以外に、炭素化合物、窒素化合物、水素化合物等の不純物が含有されてもよい。
本発明において、特に好ましい金属化合物の金属は、上記のうちSi(珪素)、Ti(チタン)、Sn(錫)、Zn(亜鉛)、In(インジウム)及びAl(アルミニウム)であり、これらの金属と結合する金属化合物のうち、上記一般式(I)で示した有機金属化合物が好ましい。有機金属化合物の例示については後述する。
【0117】
ここで、上記の高機能膜のうち反射防止膜(層)及び反射防止膜を積層した反射防止フィルム及び透明導電フィルムについて詳細に説明する。
【0118】
本発明に係る高機能膜のうちの反射防止フィルムの反射防止層は中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層それぞれの薄膜が積層されたものである。
【0119】
本発明に係る反射防止層薄膜形成性用のガス材料において、高屈折率層を形成するチタン化合物、中屈折率層を形成する錫化合物、低屈折率層を形成する珪素化合物について述べる。反射防止層を有する反射防止フィルムは、各屈折率層を基材上に直接又は他の層を介して積層して得られるものであるが、積層は、例えば、図1のような大気圧プラズマ放電処理装置を、中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層の順に3層を積層するために、直列に3基並べて連続的に処理することができ、この連続的積層処理は品質の安定や生産性の向上等から本発明の薄膜の形成に適している。また積層せずに、1層処理ごと、処理後巻き取り、逐次処理して積層してもよい。本発明において、反射防止層の上に防汚層を設ける場合には、上記の大気圧プラズマ放電処理装置を更にもう1基続けて設置し、4基並べて最後に防汚層を積層してもよい。また、反射防止層を設ける前に、基材の上に予めハードコート層や防眩層を塗布によって設けてもよく、また、その裏側に予めバックコート層を塗布によって設けてもよい。
【0120】
本発明に係る反射防止フィルムの反射防止層薄膜形成性ガスには、適切な屈折率を得ることのできる化合物であれば制限なく使用できるが、本発明において、高屈折率層薄膜形成性ガスとしてはチタン化合物を、中屈折率層薄膜形成性ガスとしては錫化合物又はチタン化合物と珪素化合物の混合物(又は高屈折率形成用のチタン化合物で形成した層と低屈折率層を形成する珪素化合物で形成した層を積層してもよい)を、また低屈折率層薄膜形成性ガスとしては珪素化合物、フッ素化合物、あるいは珪素化合物とフッ素化合物の混合物を好ましく用いることができる。これらの化合物を屈折率を調節するために、何れかの層の形成用薄膜形成性ガスとして2種以上混合して使用してもよい。
【0121】
本発明に有用な中屈折率層薄膜形成性ガスに用いる錫化合物としては、有機錫化合物、錫水素化合物、ハロゲン化錫等であり、有機錫化合物としては、例えば、ジブチルジエトキシ錫、ブチル錫トリス(2,4−ペンタンジオナート)、テトラエトキシ錫、メチルトリエトキシ錫、ジエチルジエトキシ錫、トリイソプロピルエトキシ錫、エチルエトキシ錫、メチルメトキシ錫、イソプロピルイソプロポキシ錫、テトラブトキシ錫、ジエトキシ錫、ジメトキシ錫、ジイソプロポキシ錫、ジブトキシ錫、ジブチリロキシ錫、ジエチル錫、テトラブチル錫、錫ビス(2,4−ペンタンジオナート)、エチル錫アセトアセトナート、エトキシ錫(2,4−ペンタンジオナート)、ジメチル錫ジ(2,4−ペンタンジオナート)、ジアセトメチルアセタート錫、ジアセトキシ錫、ジブトキシジアセトキシ錫、ジアセトオキシ錫ジアセトアセトナート等、ハロゲン化錫としては、二塩化錫、四塩化錫等を挙げることができ、何れも本発明において、好ましく用いることができる。また、これらの薄膜形成性ガスを2種以上同時に混合して使用してもよい。なお、このようにして、形成された酸化錫層は表面比抵抗値を1011Ω/cm2以下に下げることができるため、帯電防止層としても有用である。
【0122】
本発明に有用な高屈折率層薄膜形成性ガスに使用するチタン化合物としては、有機チタン化合物、チタン水素化合物、ハロゲン化チタン等があり、有機チタン化合物としては、例えば、トリエトキシチタン、トリメトキシチタン、トリイソプロポキシチタン、トリブトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、メチルジメトキシチタン、エチルトリエトキシチタン、メチルトリイソプロポキシチタン、トリエチルチタン、トリイソプロピルチタン、トリブチルチタン、テトラエチルチタン、テトライソプロピルチタン、テトラブチルチタン、テトラジメチルアミノチタン、ジメチルチタンジ(2,4−ペンタンジオナート)、エチルチタントリ(2,4−ペンタンジオナート)、チタントリス(2,4−ペンタンジオナート)、チタントリス(アセトメチルアセタート)、トリアセトキシチタン、ジプロポキシプロピオニルオキシチタン等、ジブチリロキシチタン、チタン水素化合物としてはモノチタン水素化合物、ジチタン水素化合物等、ハロゲン化チタンとしては、トリクロロチタン、テトラクロロチタン等を挙げることができ、何れも本発明において好ましく用いることができる。またこれらの薄膜形成性ガスを2種以上を同時に混合して使用することができる。
【0123】
本発明に有用な低屈折率層薄膜形成性ガスに使用する珪素化合物としては、有機珪素化合物、珪素水素化合物、ハロゲン化珪素化合物等を挙げることができ、有機珪素化合物としては、例えば、テトラエチルシラン、テトラメチルシラン、テトライソプロピルシラン、テトラブチルシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルシランジ(2,4−ペンタンジオナート)、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン等、珪素水素化合物としては、テトラ水素化シラン、ヘキサ水素化ジシラン等、ハロゲン化珪素化合物としては、テトラクロロシラン、メチルトリクロロシラン、ジエチルジクロロシラン等を挙げることができ、何れも本発明において好ましく用いることができる。また、前記フッ素化合物を使用することができる。これらの薄膜形成性ガスを2種以上を同時に混合して使用することができる。
また、屈折率の微調整にこれら錫化合物、チタン化合物、珪素化合物を適宜2種以上同時に混合して使用してもよい。
【0124】
上記の有機錫化合物、有機チタン化合物又は有機珪素化合物は、取り扱い上の観点から金属水素化合物、アルコキシ金属が好ましく、腐食性、有害ガスの発生がなく、工程上の汚れなども少ないことから、アルコキシ金属が好ましく用いられる。また、上記の有機錫化合物、有機チタン化合物又は有機珪素化合物を放電空間である電極間に導入するには、両者は常温常圧で、気体、液体、固体何れの状態であっても構わない。気体の場合は、そのまま放電空間に導入できるが、液体、固体の場合は、加熱、減圧、超音波照射等の手段により気化させて使用される。有機錫化合物、有機チタン化合物又は有機珪素化合物を加熱により気化して用いる場合、テトラエトキシ金属、テトライソプロポキシ金属などの常温で液体で、沸点が200℃以下である金属アルコキシドが反射防止膜の形成に好適に用いられる。上記アルコキシ金属は、溶媒によって希釈して使用されても良く、この場合、希ガス中へ気化器等により気化して混合ガスに使用すればよい。溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、n−ヘキサンなどの有機溶媒及びこれらの混合溶媒が使用できる。
【0125】
薄膜形成性ガスについて、放電プラズマ処理により基材上に均一な薄膜を形成する観点から、全ガス中の含有率は、0.01〜10体積%で有することが好ましいが、更に好ましくは、0.01〜1体積%である。
【0126】
なお、中屈折率層については、上記珪素化合物、上記チタン化合物又は上記錫化合物を、目標とする屈折率に合わせて適宜混合することによっても得ることができる。
【0127】
なお、各屈折率層の好ましい屈折率と膜厚は、例えば、中屈折率層の酸化錫層では屈折率として1.6〜1.8、また膜厚として50〜70nm程度、高屈折率層の酸化チタン層では屈折率として1.9〜2.4、また膜厚として80〜150nm程度、低屈折率層の酸化珪素層では屈折率として1.3〜1.5、また膜厚として80〜120nm程度である。
【0128】
次に本発明に係る高機能膜の他の例として透明導電膜を有する薄膜の形成について説明する。
【0129】
前述の反射防止層を形成する際に使用する有機金属化合物の金属成分がインジウム等の透明性と導電性を有する薄膜を形成すると言う点が若干異なるが、有機基についてはほぼ同じような成分が用いられる。
【0130】
透明導電膜を形成する好ましい有機金属化合物の金属は、インジウム(In)、亜鉛(Zn)及び錫(Sn)から選ばれる少なくとも1種の金属である。
【0131】
本発明において、好ましい有機金属化合物の好ましい例は、インジウムトリス(2,4−ペンタンジオナート)、インジウムトリス(ヘキサフルオロペンタンジオナート)、インジウムトリアセトアセタート、トリアセトキシインジウム、ジエトキシアセトキシインジウム、トリイソポロポキシインジウム、ジエトキシインジウム(1,1,1−トリフルオロペンタンジオナート)、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナート)インジウム、エトキシインジウムビス(アセトメチルアセタート)、ジ(n)ブチル錫ビス(2,4−ペンタンジオナート)、ジ(n)ブチルジアセトキシ錫、ジ(t)ブチルジアセトキシ錫、テトライソプロポキシ錫、テトラ(i)ブトキシ錫、ビス(2,4−ペンタンジオナート)亜鉛等を挙げることができる。これらの有機金属化合物は一般に市販(例えば、東京化成工業(株)等から)されている。
【0132】
本発明においては、上記分子内に少なくとも1つの酸素原子を有する有機金属化合物の他に、該有機金属化合物から形成された透明導電膜の導電性を更に高めるために該透明導電膜をドーピングすることが好ましく、薄膜形成性ガスとしての該有機金属化合物とドーピング用有機金属化合物ガスを同時に混合して用いることが好ましい。ドーピングに用いられる有機金属化合物又はフッ素化合物の薄膜形成性ガスとしては、例えば、トリイソプロポキシアルミニウム、トリス(2,4−ペンタンジオナート)ニッケル、ビス(2,4−ペンタンジオナート)マンガン、イソプロポキシボロン、トリ(n)ブトキシアンチモン、トリ(n)ブチルアンチモン、ジ(n)ブチルビス(2,4−ペンタンジオナート)錫、ジ(n)ブチルジアセトキシ錫、ジ(t)ブチルジアセトキシ錫、テトライソプロポキシ錫、テトラブトキシ錫、テトラブチル錫、亜鉛ジ(2,4−ペンタンジオナート)、六フッ化プロピレン、八フッ化シクロブタン、四フッ化メタン等を挙げることができる。
【0133】
前記透明導電膜を形成するに必要な有機金属化合物と上記ドーピング用の薄膜形成性ガスの比は、製膜する透明導電膜の種類により異なるが、例えば、酸化インジウムに錫をドーピングして得られるITO膜においては、InとSnの比の原子数比が100:0.1〜100:15の範囲になるように薄膜形成性ガス量を調整することが必要である。好ましくは、100:0.5〜100:10になるよう調整することが好ましい。酸化錫にフッ素をドーピングして得られる透明導電膜(FTO膜という)においては、得られたFTO膜のSnとFの比の原子数比が100:0.01〜100:50の範囲になるよう薄膜形成性ガスの量比を調整することが好ましい。In2O3−ZnO系アモルファス透明導電膜においては、InとZnの比の原子数比が100:50〜100:5の範囲になるよう薄膜形成性ガスの量比を調整することが好ましい。In:Sn比、Sn:F比及びIn:Zn比の各原子数比はXPS測定によって求めることができる。
【0134】
本発明において、透明導電薄膜形成性ガスは、混合ガスに対し、0.01〜10体積%含有させることが好ましい。
【0135】
本発明において、得られる透明導電膜は、例えば、SnO2、In2O3、ZnOの酸化物膜、又はSbドープSnO2、FドープSnO2(FTO)、AlドープZnO、SnドープIn2O3(ITO)等ドーパントによるドーピングした複合酸化物を挙げることができ、これらから選ばれる少なくとも一つを主成分とするアモルファス膜が好ましい。またその他にカルコゲナイド、LaB6、TiN、TiC等の非酸化物膜、Pt、Au、Ag、Cu等の金属膜、CdO等の透明導電膜を挙げることができる。
【0136】
上記形成された酸化物又は複合酸化物の透明導電膜の膜厚は、0.1〜1000nmの範囲が好ましい。
【0137】
本発明に用いられる基材について説明する。
本発明に用いられる基材としては、板状、シート状又はフィルム状の平面形状のもの、あるいはレンズその他成形物等の立体形状のもの等の薄膜をその表面に形成できるものであれば特に限定はない。基材が静置状態でも移送状態でもプラズマ状態の混合ガスに晒され、均一の薄膜が形成されるものであれば基材の形態又は材質には制限ない。形態的には平面形状、立体形状でもよく、平面形状のものとしては、ガラス板、樹脂フィルム等を挙げることができる。材質的には、ガラス、樹脂、陶器、金属、非金属等様々のものを使用できる。具体的には、ガラスとしては、ガラス板やレンズ等、樹脂としては、樹脂レンズ、樹脂フィルム、樹脂シート、樹脂板等を挙げることができる。
【0138】
樹脂フィルムは本発明に係る大気圧プラズマ放電処理装置の電極間又は電極の近傍を連続的に移送させて透明導電膜を形成することができるので、スパッタリングのような真空系のようなバッチ式でない、大量生産に向き、連続的な生産性の高い生産方式として好適である。
【0139】
樹脂フィルム、樹脂シート、樹脂レンズ、樹脂成形物等成形物の材質としては、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルロースアセテートプロピオネート又はセルロースアセテートブチレートのようなセルロースエステル、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートのようなポリエステル、ポリエチレンやポリプロピレンのようなポリオレフィン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコールコポリマー、シンジオタクティックポリスチレン、ポリカーボネート、ノルボルネン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリエーテルイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、ポリメチルアクリレート、アクリレートコポリマー等を挙げることができる。
【0140】
これらの素材は単独であるいは適宜混合されて使用することもできる。中でもゼオネックスやゼオノア(日本ゼオン(株)製)、非晶質シクロポリオレフィン樹脂フィルムのARTON(ジェイエスアール(株)製)、ポリカーボネートフィルムのピュアエース(帝人(株)製)、セルローストリアセテートフィルムのコニカタックKC4UX、KC8UX(コニカ(株)製)などの市販品を好ましく使用することができる。更に、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルフォン及びポリエーテルスルフォンなどの固有複屈折率の大きい素材であっても、溶液流延製膜、溶融押し出し製膜等の条件、更には縦、横方向に延伸条件等を適宜設定することにより使用することができるものを得ることができる。
【0141】
これらのうち光学的に等方性に近いセルロースエステルフィルムが本発明の光学素子に好ましく用いられる。セルロースエステルフィルムとしては、上記のようにセルローストリアセテートフィルム、セルロースアセテートプロピオネートが好ましく用いられるものの一つである。セルローストリアセテートフィルムとしては市販品のコニカタックKC4UX等が有用である。
【0142】
これらの樹脂の表面にゼラチン、ポリビニルアルコール、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、セルロースエステル樹脂等を塗設したものも使用できる。またこれら樹脂フィルムの薄膜側に防眩層、クリアハードコート層、バリア層、防汚層等を設けてもよい。また、必要に応じて接着層、アルカリバリアコート層、ガスバリア層や耐溶剤性層等を設けてもよい。
【0143】
また、本発明に用いられる基材は、上記の記載に限定されない。フィルム形状のものの膜厚としては10〜1000μmが好ましく、より好ましくは40〜200μmである。
【0144】
【実施例】
本発明を実施例により詳述するが、これらに限定されない。
【0145】
[実施例1]
基材としてコニカタックKC4UXの長尺フィルム(1500m巻きフィルム)を用い、下記のように裏面側にバックコート層及び表側にハードコート層を塗設し、フィルムロールとして巻き取った。この基材を使用し、図1の装置を3基直列に連結して反射防止フィルムを作製した。基材を該フィルムロールのアンワインダーから巻きほぐし、ハードコート層の上に1基目の大気圧プラズマ放電処理装置で中屈折率層を形成し、続いて、中屈折率層の上に2基目の同様の装置で高屈折率層を積層して形成し、更に続いて、高屈折率層の上に3基目の同様な装置で低屈折率層を積層して形成し、バックコート層/基材F/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層の反射防止フィルムを作製した。
【0146】
〔基材の準備〕
〈クリアハードコート層塗布済み基材の作製〉
コニカタックKC4UXの片面に下記のバックコート層塗布組成物を設け、他の面に、乾燥膜厚で4μmの中心線表面粗さ(Ra)15nmのクリアハードコート層を設け、クリアハードコート層塗布済み基材を作製した。
【0147】
《バックコート層塗布組成物》
Figure 2004285388
【0148】
〔電極の作製〕
前述の図1の大気圧プラズマ放電処理装置において、誘電体で被覆したロール電極及び同様に誘電体を被覆した複数の角筒型電極のセットを以下のように作製した。
【0149】
第1電極となるロール回転電極11は、冷却水による冷却手段を有するチタン合金T64製ジャケットロール金属質母材に対して、大気圧プラズマ法により高密度、高密着性のアルミナ溶射膜を被覆し、ロール径1000mmφとなるようにした。
【0150】
封孔処理及び被覆した誘電体表面研磨は、Rmax5μmとした。最終的な誘電体の空隙率(貫通性のある空隙率)はほぼ0体積%、このときの誘電体層のSiOx含有率は75mol%、また、最終的な誘電体の膜厚は1mm、誘電体の比誘電率は10であった。更に導電性の金属質母材と誘電体の線熱膨張係数の差は1.7×10−6で、耐熱温度は260℃であった。
【0151】
一方、第2電極の角筒型固定電極12Aは、中空の角筒型のチタン合金T64に対し、上記同様の誘電体を同条件にて被覆し、対向する角筒型固定電極群12とした。この角筒型固定電極12Aの誘電体については上記ロール電極のものと、誘電体表面のRmax、誘電体層のSiOx含有率、また誘電体の膜厚と比誘電率、金属質母材と誘電体の線熱膨張係数の差、更に電極の耐熱温度は、第1電極とほぼ同じ物性値に仕上がった。
【0152】
この角筒型固定電極12Aをロール回転電極11のまわりに、対向電極間隙を1mmとして25本配置した。角筒型固定電極群12の放電総面積は、150cm(幅手方向の長さ)×4cm(搬送方向の長さ)×25本(電極の数)=15000cm2であった。なお、何れも第3フィルタ25は、静電容量結合部25aは500pF、LC共振部25bでは、コイルLが0.6μH、可変容量コンデンサCが約400pFの素子を用いた。
【0153】
〔反射防止フィルムの作製〕
プラズマ放電中、第1電極(ロール回転電極11)及び第2電極(角筒型固定電極群12)が80℃になるように調節保温し、ロール回転電極11はドライブで回転させて次のように薄膜形成を行った。圧力は103kPaとし、下記の混合ガスをそれぞれの放電空間及び大気圧プラズマ放電処理装置内部へ導入し、上記バックコート層及びクリアハードコート層塗布済み基材のクリアハードコート層の上に中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層の順に連続して大気圧プラズマ放電薄膜形成を行い、3層積層の反射防止フィルムを24時間連続作製した。
【0154】
《中屈折率層混合ガス組成物》
放電ガス:窒素 99.4体積%
薄膜形成性ガス:ジブチルジアセトキシ錫 0.1体積%
(リンテック社製気化器にてアルゴンガスに混合して気化)
添加ガス:酸素 0.5体積%
《中屈折率層条件》
出力密度:第1電極側 1W/cm2
:第2電極側 5W/cm2
《高屈折率層混合ガス組成物》
放電ガス:窒素 99.4体積%
薄膜形成性ガス:テトライソプロポキシチタン 0.1体積%
(リンテック社製気化器にてアルゴンガスに混合して気化)
添加ガス:酸素ガス 0.5体積%
《高屈折率層条件》
出力密度:第1電極側 1W/cm2
:第2電極側 5W/cm2
《低屈折率層混合ガス組成物》
放電ガス:窒素 98.9体積%
薄膜形成性ガス:テトラエトキシシラン 0.1体積%
(リンテック社製気化器にてアルゴンガスに混合して気化)
添加ガス:酸素ガス 1体積%
《低屈折率層条件》
Figure 2004285388
【0155】
作成した試料を1時間おきにサンプリングし、下記評価を行った。
【0156】
〔評価〕
〈平均分光反射率〉
放電開始後10分経過後の試料をサンプリングし、分光光度計U−4000型(日立製作所製)を用いて、5度正反射の条件で反射率を測定した。測定は反射防止フィルムの反射防止層のない側の面を粗面化処理した後、黒色スプレーを用いて光吸収処理を行い反射防止フィルムの裏面の光の反射を防止して、400〜700nmの波長の反射スペクトルを測定し、その内の500〜650nmの波長について平均分光反射率を求めた。
【0157】
(結果)
本発明の装置により、薄膜を3層積層して形成した反射防止フィルムは、性能が変動することなしに一定で平均分光反射率が目標通りのものが得られた。
【0158】
[実施例2]
図5に示したような大気圧プラズマ放電処理装置1基を使用し、電極及び誘電体は実施例1と同じ構成のものを使用及び同じ加工をした。電極及び誘電体の物性値は実施例1と同じように仕上げた。尚、第1電極(下側平板電極111)の温度を150℃に、第2電極(上側平板電極郡112)の温度を80℃に調節保温するように、電極温度調整手段を構成し、次のように薄膜形成を行った。基材として、厚さ500μmのガラス基材を使用した。圧力は103kPaとし、下記の混合ガスを処理室内及び大気圧プラズマ放電処理装置へ導入し、下記基材の上に透明導電膜を形成し、24時間連続製膜した。なお、第3フィルタ125は、静電容量結合部125aは500pF、LC共振部125bでは、コイルLが0.6μH、可変容量コンデンサCが約400pFの素子を用いた。
【0159】
〈混合ガス組成〉
Figure 2004285388
【0160】
〔評価〕
作成した試料を1時間おきにサンプリングし、下記評価を行った。
〈比抵抗値(Ω・cm)〉
JIS R 1637に従い、四端子法により求めた。なお、測定には三菱化学製ロレスタ−GP、MCP−T600を用いた。
〈透過率(%)〉
JIS R 1635に従い、日立製作所製分光光度計1U−4000型を用いて550nmの波長での透過光で測定を行った。
【0161】
(結果)
本発明の装置により、試料性能が変動することなしに一定で、薄膜形成性及び薄膜の緻密性が優れ、透過率が高く、また比抵抗値も非常に小さく高性能の透明導電膜を有する基材が得られた。
【0162】
【発明の効果】
請求項1に記載の発明によれば、特定の高周波電界を印加することで、窒素等の放電開始電界強度の高い放電ガスでも、高密度プラズマを発生させることができ、良質な薄膜が得られ、高速に製膜でき、更には、安価、且つ安全に運転でき、環境負荷の低減も達成できる。
【0163】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1と同様の効果を得られるのは勿論のこと、高い高周波電界強度側の電極に特定周波数を遮断するためのフィルタを設置し、コイル及びコンデンサの直列共振回路からなり、他端側が接地することで、均一な高密度プラズマの発生が得られ、更に長時間製膜しても安定した良質な薄膜が得る事が可能となった。
【0164】
請求項3に記載の発明によれば、請求項2と同様の効果を得られるのは勿論のこと、前記フィルタに電流検出器と、コントローラ部と、を備えたことで、フィルタには、常に一定の最大電流が流れるように調節され、より均一な放電状態が保たれ、また単時間あたりの電流変化率が小さくなり、発熱による回路乗数の変化が少なくなり、回路及び周辺部材に長時間の駆動によって発生する発熱が低減され、良質な薄膜が得る事が可能となった。
【0165】
請求項4及び5に記載の発明によれば、請求項1、2又は3と同様の効果を得られるのは勿論のこと、安定した温度状態を保ち、良質で高性能な薄膜を有する基材を安価に提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に有用な対向電極間で基材を処理する方式の大気圧プラズマ放電処理装置の一例を示す概略図である。
【図2】本発明の濾波手段である第3フィルタの一例を示す概略図である。
【図3】導電性の金属質母材とその上に被覆されている誘電体を有するロール回転電極の一例を示す斜視図である。
【図4】角筒型電極の導電性の金属質母材とその上に被覆されている誘電体の構造の一例を示す斜視図である。
【図5】本発明に有用な対向電極間で基材を処理する方式の大気圧プラズマ放電処理装置の他の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
10、100 大気圧プラズマ放電処理装置
11 ロール回転電極
11a 金属母体
11b 誘電体
111 下側平板電極
112 上側平板電極郡
112A 上側平板電極
12 角筒型固定電極郡
12A 角筒型固定電極
12a 金属母体
12b 誘電体
13 対向電極間
14 プラズマ放電処理容器
20、120 電界印加手段
21、121 第1電源
22、121 第2電源
23、123 第1フィルタ
24、124 第2フィルタ
25 第3フィルタ
25a、125a 静電容量結合部
25b、125b LC共振部
25c コントローラ部
30、130 ガス供給手段
31、131 ガス発生装置
32、132 ガス流路部
33 給気口
34 排気口
40 電極温度調整手段
41 配管
51a、51b ガイドロール
52a、52b ニップロール
53a、53b 仕切板
61a、61b 高周波電圧プローブ
62a、62b オシロスコープ
C 可変容量コンデンサ
CT 電流検出器
F、M 基材
G ガス
G´ 処理排ガス
L コイル
P 送液ポンプ

Claims (5)

  1. 大気圧もしくはその近傍の圧力下において互いに相対向し相対的に平行移動可能に設けられた第1電極と第2電極とで構成される放電空間に薄膜形成ガスを含有するガスを供給し、前記放電空間に互いに周波数及び電界強度が異なる第1および第2の高周波電界を重畳して印加することにより前記ガスを励起し、この励起したガスに基材を晒すことにより当該基材上に薄膜を形成する薄膜形成装置において、
    前記第1又は第2電極のうち、いずれか高電界強度の電極側に、特定の周波電流を通過させて接地するフィルタを電気的に接続したことを特徴とする薄膜形成装置。
  2. 請求項1記載の薄膜形成装置において、
    前記フィルタは、その一端側が前記いずれか高電界強度の電極側に間隔をおいて対面するように配置された静電容量結合部、コイル及びコンデンサの直列共振回路からなり、他端側が接地されている、ことを特徴とする薄膜形成装置。
  3. 請求項2記載の薄膜形成装置において、
    前記コンデンサは可変容量コンデンサであり、前記直列共振回路に流れる電流を検出する電流検出器と、
    この電流検出器により検出された電流値が常に最大値となるように前記可変容量コンデンサの静電容量値を制御するコントローラ部と、を備えたことを特徴とする薄膜形成装置。
  4. 請求項1、2又は3記載の薄膜形成装置において、
    前記第1電極又は第2電極のいずれか一方は周方向に回転するロール回転電極であり、他方は前記ロール回転電極の外周側に所定の間隔を置いて配置された固定電極であること、を特徴とする薄膜形成装置。
  5. 請求項1、2又は3記載の薄膜形成装置において、
    前記第1電極及び第2電極は、互いに所定の間隔を置いて対向配置された並行平板電極であること、を特徴とする薄膜形成装置。
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