JP4269754B2 - 透明導電膜積層体およびその製造方法 - Google Patents

透明導電膜積層体およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、透明導電膜積層体およびその製造方法に関し、さらに詳しくは、比抵抗が低く、耐久性、可撓性に優れ、かつエッチング特性に優れる透明導電膜積層体およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、透明導電膜の用途が拡大しており、特に携帯電話などの移動端末に用いられる液晶ディスプレイやELディスプレイ用途には、軽量で耐久性、可撓性があり、かつ比抵抗の小さな透明導電基板が求められている。また、透明導電基板は、通常樹脂フィルム等の基材上に透明導電層を形成した透明導電膜積層体に、エッチングによりパターンを形成することにより製造される。このため透明導電膜積層体には、エッチング特性に優れること、すなわちエッチング速度が大きいことはもとより、エッチングにより形成されたエッチングパターンの境界部分が明瞭であり、かつ透明導電膜の残りがないことが重要であり、このようなエッチング特性を有する透明導電膜積層体が求められている。
【0003】
なお、透明導電性積層体およびその製造方法としては、例えば以下のようなものが知られている。
スパッタリング法と加熱処理との組合せにより製造され、有機高分子成型物上に、膜厚500Å以下、比抵抗3.4×10-4〜8.0×10-4Ω・cm、波長550nmでの光吸収率が0.3〜3.7%で、ピーク(222)の強度I222とピーク(400)の強度I400の比がI400/I222<1.0であり、かつ(222)方向の結晶粒子径が400Å未満である、主としてインジウム酸化物からなる透明導電層が形成されてなる透明導電性積層体(例えば、特許文献1)。
【0004】
スパッタリング法により製造され、ガラス基板上に、非晶性で厚さ1000Å以上のインジウム・錫酸化物を主成分とする透明導電膜、さらにその上に下層よりも結晶性が高く厚さ100〜300Åのインジウム・錫酸化物を主成分とする透明導電膜が積層されてなる透明電極(例えば、特許文献2)。
反応性蒸着法により製造され、耐熱性および耐プラズマ性の低い基材上に、結晶粒を有し、X線回折法における(222)面のピーク強度I1 と(400)面のピーク強度I2 との比I1 /I2 が5以上であるとともに、比抵抗が0.8×10-4〜3.5×10-4Ω・cmの範囲にある透明導電膜が設けられている透明導電膜(例えば、特許文献3)。
【0005】
In−Sn−Oを主成分とするターゲットを用いたDCマグネトロンスパッタリング法による透明導電積層体の製造方法において、不活性ガスと水分を含む反応性ガスとからなる雰囲気における、不活性ガスに対する酸素と水分との合計分圧比が0.03〜0.001の範囲であり、かつ水分の分圧に対する酸素の分圧比が0〜10の範囲である雰囲気中で、含有する溶媒量が5重量%以下である高分子フィルムの上に製膜する透明導電積層体の製造方法(例えば、特許文献4)。
【0006】
スパッタリング法により製造され、高分子フィルム上に、結晶質部を有し、該結晶質部の(222)面からのX線回折強度に対する(440)面からのX線回折強度の比が0.3〜1.2の範囲であるIn−Sn−O系透明導電膜が形成されてなる透明導電積層体(例えば、特許文献5)。
【0007】
【特許文献1】
特公平3−15536号公報
【特許文献2】
特開平8−180748号公報
【特許文献3】
特開平9−71857号公報
【特許文献4】
特開2000−129427号公報
【特許文献5】
特開2000−238178号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は比抵抗が低く耐久性、可撓性に優れ、かつエッチング特性に優れる透明導電膜積層体およびその製造方法を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は以下の構成よりなる。
(1) 基材上に直接または他の層を介して透明導電層が形成されてなる積層体であって、該透明導電層のX線回折法における(222)の回折強度I1と(400)の回折強度I2との比(I2/I1)が0.3以下、(222)の回折強度I1と(440)の回折強度I3との比(I3/I1)が0.18以下であり、かつ該透明導電層の炭素濃度が0.1〜5.0原子%の範囲であることを特徴とする透明導電膜積層体。
(2) I2/I10.03〜0.25の範囲にあり、I3/I10.03〜0.18の範囲にあることを特徴とする(1)に記載の透明導電膜積層体。
(3) 前記透明導電層が、インジウム、錫および亜鉛から選ばれる少なくとも1種の原子を含むことを特徴とする(1)または(2)に記載の透明導電膜積層体。
(4) 前記基材が、透明樹脂フィルムであることを特徴とする(1)ないし(3)のいずれか1項に記載の透明導電膜積層体。
(5) 前記透明樹脂フィルムが、タッチパネル用フィルム基材、液晶素子プラスチック基板、有機EL素子プラスチック基板または電子ペーパー用フィルム基板であることを特徴とする(4)に記載の透明導電膜積層体。
(6) 大気圧またはその近傍の圧力下で、放電空間にガスを供給するとともに該放電空間に高周波電圧を印加し、ガスを励起してプラズマ状態とし、この励起したプラズマ状態のガスに基材を晒すことにより、基材上に透明導電膜を形成して(1)ないし(5)のいずれかに記載の透明導電膜積層体を製造することを特徴とする透明導電膜積層体の製造方法。
(7) 前記高周波電圧の周波数が、100kHzを超え150MHz以下であることを特徴とする(6)に記載の透明導電膜積層体の製造方法。
【0010】
本発明に係る透明導電性膜積層体が有する透明導電膜は比抵抗が低く耐久性、可撓性に優れ、かつエッチング特性に優れる。
本発明に係る透明導電性膜積層体の製造方法は、基材上に比抵抗が低く耐久性、可撓性に優れ、かつエッチング特性に優れる透明導電膜を生産性よく製造することができる。
【0011】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明に係る透明導電膜積層体は、基材上に直接または他の層を介して透明導電層を有しており、該透明導電層のX線回折法における(222)の回折強度I1と(400)の回折強度I2との比(I2/I1)が0.3以下、好ましくは0.03〜0.25、より好ましくは0.05〜0.20の範囲にあり、該透明導電層のX線回折法における(222)の回折強度I1と(440)の回折強度I3との比(I3/I1)が0.3以下、好ましくは0.03〜0.25、より好ましくは0.05〜0.20の範囲にある。
【0012】
また、該透明導電層の炭素濃度は、0.1〜5.0原子%、好ましくは0.1〜3.0原子%、より好ましくは0.1〜2.0原子%の範囲である。
透明導電層のI2/I1およびI3/I1が上記範囲内にあると、透明導電層は、比抵抗が低く、耐久性、可撓性に優れかつエッチング特性に優れる。
また、透明導電層の炭素濃度が上記範囲内にあることにより透明導電膜積層体は、一層耐久性、可撓性に優れたものとなる。
【0013】
本発明において透明導電層は、金属と、酸素、炭素、水素または窒素等の元素との化合物膜であることが好ましい。好ましい組成は、含有元素の合計に対し、金属元素の量が5〜90原子%、より好ましくは10〜60原子%、さらに好ましくは20〜40原子%である。
本発明において透明導電層は、インジウム、錫および亜鉛から選ばれる少なくとも1種の原子を含むことが好ましい。透明導電層として具体的には、例えば、SnO2、In23、ZnOの酸化物膜、またはSbドープSnO2、FドープSnO2(FTO)、AlドープZnO、SnドープIn23(ITO)等のドーパントによるドーピングした複合酸化物を挙げることができ、これらから選ばれる少なくとも一つを主成分とするものが好ましい。またその他にカルコゲナイド、LaB6、TiN、TiC等の非酸化物膜、Pt、Au、Ag、Cu等の金属膜、CdO等の透明導電膜を挙げることができる。
【0014】
透明導電層は優れた導電性を有し、比抵抗値が通常5×10-4Ω・cm以下である。
上記透明導電膜の膜厚は、0.1〜1000nmの範囲であることが望ましい。
本発明において透明導電層のX線回折法における(222)の回折強度I1、(400)の回折強度I2および(440)の回折強度I3、透明導電層の組成は以下のようにして測定される。
【0015】
《測定法》
X線回折測定は以下の条件によって行うことが好ましい。X線回折装置は日本電子製回転対陰極型X線回折装置JDX11RAを用い、ブラッグ−ブレンターノの光学系を用いて測定する。ターゲットには銅を用い、40kV−100mAでX線を発生させる。発散スリット、受光スリットを1°、散乱スリットを0.15°とした。受光側にグラファイトのモノクロメータを用いる。各結晶格子面のピークは(222)面が2θとして29〜32°、(400)面が32〜37°、(440)面が2θとして49〜51°の範囲を0.004°刻みで一刻みあたり1秒かけて測定する。得られた回折パターンからKα1、2線の分離を行わず、回折ピークのピークトップからそのピークのベースラインを直線としたときのベースライン強度の差を回折ピークの強度とする。
【0016】
透明導電層の組成は、XPS表面分析装置により測定される。
《他の層》
本発明に係る透明導電膜積層体は、基材上に他の層を介して透明導電層が形成されていてもよく、このような他の層としては、防眩層、クリアハードコート層、バリア層、防汚層、接着層、アルカリバリアコート層、ガスバリア層、耐溶剤性層等が挙げられ、これらの他の層の形成方法としては、従来公知の方法が挙げられる。
【0017】
《基材》
本発明に係る透明導電膜積層体に用いられる基材としては、例えば以下のようなものが挙げられる。
本発明で用いられる基材としては、従来公知の材料を用いることができるが、例えば、ガラス、樹脂フィルム等が好ましく用いられ、さらに好ましくは、透過率50%以上の透明な樹脂フィルム(例えば、フィルム状のセルローストリアセテート等のセルロースエステル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスチレン、さらにこれらの上にゼラチン、ポリビニルアルコール(PVA)、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、セルロース系樹脂等)を塗設したもの等が挙げられる。
【0018】
また、上記の材料を用いた基材は、防眩層やクリアハードコート層を塗設したり、バックコート層、帯電防止層を塗設したりしたものであってもよい。
上記の基材の具体例をさらに挙げると、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、セルロースジアセテートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルム、セルロースアセテートプロピオネートフィルム、セルロースアセテートフタレートフィルム、セルローストリアセテート、セルロースナイトレート等のセルロースエステル類またはそれらの誘導体からなるフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコールフィルム、シンジオタクティックポリスチレン系フィルム、ポリカーボネートフィルム、ノルボルネン樹脂系フィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリイミドフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリスルホン系フィルム、ポリエーテルケトンイミドフィルム、ポリアミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ナイロンフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、アクリルフィルムまたはポリアリレート系フィルム等を挙げることができる。
【0019】
これらの素材は単独でまたは適宜混合されて使用することができる。中でも光学的に等方的なシクロポリオレフィンまたはノルボルネン系の樹脂からなるフィルム、具体的にはゼオネックス、ゼオノア(登録商標、日本ゼオン(株)製)、ARTON(登録商標、JSR(株)製)などの市販品を好ましく使用することができる。
【0020】
さらに、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホンおよびポリエーテルスルフォンなどの固有複屈折率の大きい素材であっても、溶液流延、溶融押し出し等の条件、さらには縦、横方向に延伸条件等を適宜設定することにより、本発明に係る基材として用いることができる。なお、本発明に用いることのできる基材は、上記の記載に限定されない。
【0021】
本発明では、膜厚が10μm〜1000μmのフィルムが基材として好ましく用いられる。また、例えば、1000m以上長尺フィルムを用いることもできる。
本発明では、前記透明樹脂フィルムが、タッチパネル用フィルム基材、液晶素子プラスチック基板、有機EL素子プラスチック基板、電子ペーパー用フィルム基板であることが好ましい。
【0022】
《製造方法》
本発明に係る透明導電性膜積層体の製造方法は、特に限定されないが、例えば以下のようにして基材に透明導電層(薄膜ともいう。)を大気圧プラズマ法により成形することにより製造することができる。
大気圧プラズマ法では、大気圧またはその近傍の圧力下で、放電空間(対向電極間)にガスを供給するとともに該放電空間に高周波電圧を印加し、ガスを励起してプラズマ状態とし、この励起したプラズマ状態のガスに基材を晒す大気圧プラズマ放電処理をし、基材の表面に薄膜を形成する。このとき、対向電極間で形成する放電空間に印加する高周波電圧は、一つの周波数の高周波であってもよいし、二つまたはそれ以上の周波数の高周波であってもよい。
【0023】
大気圧プラズマ放電処理は、大気圧またはその近傍の圧力下で行われるが、大気圧またはその近傍の圧力とは20kPa〜110kPa程度の圧力であり、本発明に記載の良好な効果を得るためには、93kPa〜104kPaの範囲の圧力が好ましい。
対向電極間(放電空間)に供給するガスは、少なくとも、高周波電圧により励起する放電ガスと、そのエネルギーを受け取ってプラズマ状態または励起状態になり薄膜を形成する薄膜形成ガスを含んでいる。
【0024】
大気圧プラズマ放電処理による薄膜形成方法の具体例としては、例えばヘリウムまたはアルゴンのような希ガスを放電ガスとして使用し、100kHzを超え、150MHz以下までの、好ましくは数100kHz〜100MHz程度の高周波電圧をかけて薄膜形成を行う。このようなハイパワーの高周波電圧をかけることにより、ヘリウムガスやアルゴンガスの放電ガスが放電開始するのに充分な電圧であると同時に、緻密で均一な薄膜を得ることができ、しかも薄膜形成の生産性が優れているというメリットがある。
【0025】
上記の薄膜形成方法に使用する放電ガスはヘリウムやアルゴン等の希ガスであるが、希ガスの価格により薄膜を形成する際の生産コストおよび製品コストに影響を与えることがある。
また、大気圧プラズマ放電処理による薄膜形成方法の具体例として高価な希ガスを使用せず、放電ガスとして窒素を使用できる2周波数を使用する大気圧プラズマ放電処理方法がある。この方法は、比較的低い周波数の高周波電圧(1〜200kHz)により窒素ガス等の放電ガスを放電開始し、これにより放電ガスが励起され、そのエネルギーを受けて薄膜形成ガスが励起され、より高い周波数の高周波電圧(800kHz〜150MHz)により該励起した薄膜形成ガスが上記ハイパワーの方法と同様に、基材表面に緻密かつ均一な薄膜を形成する。つまり、二つの周波数の高周波電圧を使いわけ、それぞれが役割を果たすように設計されている。
【0026】
なお、本発明でいう高周波とは、少なくとも0.5kHzの周波数を有するものを言う。
上記一つの周波数の高周波電圧で薄膜形成する場合(1周波数高周波電圧印加方式という場合がある)、または二つの周波数の高周波電圧で薄膜形成する場合(2周波数高周波電圧印加方式という場合がある)の電極は全く同じものが使用でき、装置自体は大きな違いはない。異なる点は、高周波電源が二つ、それに付随するフィルターがあること、さらに対向電極の両方の電極から高周波電圧を印加することである。
【0027】
1周波数高周波電圧印加方式の場合には、対向電極の一方はアース電極、もう片方は印加電極であり、印加電極に高周波電源が接続されており、アース電極にはアースが接地されている。
図を使用して、1周波数高周波電圧印加方式および2周波数高周波電圧印加方式のそれぞれの方式の薄膜形成装置(大気圧プラズマ放電処理装置)を説明する。
【0028】
図1は、1周波数高周波電圧印加方式の薄膜形成装置の一例を示す概略図である。
プラズマ放電容器10の内部にある高周波電圧を印加する3個の印加電極(角筒型電極)11とその下側にある移動可能で基材Fを搭載する架台のアース電極(架台型電極)12とで対向電極を形成している。印加電極11は何個並べてもよい。ガスGは、プラズマ放電容器10のガス供給口25から供給され、ガスGを均一化するメッシュ26を通り、印加電極11の間および印加電極とプラズマ放電容器10の内壁に沿って通り、対向電極の間の放電空間13をガスGで満たす。高周波電源21により印加電極11に高周波電圧を印加し、放電空間13で励起したガスGに基材Fが晒され、該基材F上に薄膜が形成される。薄膜形成中、ここでは図示してない電極温度調節手段から配管を経て電極を加熱または冷却する。プラズマ放電処理の際の基材の温度によっては、得られる薄膜の物性や組成は変化することがあり、これに対して適宜制御することが望ましい。温度調節の媒体としては、蒸留水、油等の絶縁性材料が好ましく用いられる。プラズマ放電処理の際、幅手方向または長手方向での基材の温度ムラができるだけ生じないように電極の内部の温度を均等に調節することが望まれる。
【0029】
図2は、1周波数高周波電圧印加方式の薄膜形成装置の一例を示す概略図である。
図2は、薄膜形成装置およびそれに付随するプラズマ放電処理装置30、ガス充填手段50、高周波電圧印加手段40および電極温度調節手段60が図示されており、本発明に用いることのできるプラズマ放電処理装置の基本的な構成が示されている。本発明の他の図においては、図の関係からこれらの手段が省略されている場合があるが、全て必要な手段であることを断っておく。
【0030】
図2は、アース電極としてのロール電極35と印加電極の角筒型電極群36として、基材Fをプラズマ放電処理して薄膜を形成させるものである。基材Fは図示されていない元巻きから巻きほぐされて搬送して来るか、または前工程から搬送されて来てガイドロール64を経てニップロール65で基材に同伴して来る空気等を遮断し、ロール電極35に接触したまま巻き回されながら角筒型電極群36との間を移送され、ニップロール66、ガイドロール67を経て、図示してない巻取り機で巻き取られるか、次工程に移送する。ガスGはガス充填手段50で、ガス供給装置51で発生させたガスGを、流量制御して給気口52より放電空間32のプラズマ放電処理容器31内に入れ、該プラズマ放電処理容器31内をガスGで充填し処理排ガスG’を排気口53より排出するようにする。次に高周波電圧印加手段40で、高周波電源41により角筒型電極群36に電圧を印加し、ロール電極35にはアースを接地し、放電プラズマを発生させる。ロール電極35および角筒型電極群36を、電極温度調節手段60を用いて媒体を加熱または冷却し電極に送液する。電極温度調節手段60で温度を調節した媒体を送液ポンプPで配管61を経てロール電極35および角筒型電極群36内側から温度を調節する。プラズマ放電処理の際、基材の温度によって得られる形成する薄膜は変化することがあり、これに対して適宜制御することが好ましい。媒体としては、蒸留水、油等の絶縁性材料が好ましく用いられる。プラズマ放電処理の際、幅手方向または長手方向での基材の温度ムラができるだけ生じないようにロールを用いた回転電極の内部の温度を制御することが望まれる。また、電極内部の温度調節を行わない場合もある。なお、68および69はプラズマ放電処理容器31と外界を仕切る仕切板である。
【0031】
なお、角筒型電極群36の筒型電極というのは、断面形状は角でも円でも形はどのようでもよいが、ロール電極より断面の大きさは小さく、ロール電極の回りに複数配置される電極群を構成し得る大きさのものである。両端は閉じられていて、内部は中空で温度調節用の媒体で満たされるようになっている。さらに母材と誘電体の構造に関しては後述の図3および4で説明する。このように筒型電極の断面形状は特に限定はないが、角筒型電極や丸筒型電極が好ましい。角筒型電極は丸筒型電極に比べ角筒型状の方が放電範囲を広げる効果があり好ましい。角筒型電極の回転電極に相対している面は、該ロール電極の中心とを結ぶ線に対して直角であることが好ましい。さらに該ロール電極に相対している面は該ロール電極の断面の円の同心円の円弧を有する面であることが好ましい。図2の角筒型電極群36のそれぞれの電極は角筒型電極として表されている。
【0032】
本発明において、印加する高周波電圧は、断続的なパルス波であってもよいし、連続したサイン波であってもよく、印加電圧波形に限定されないが、ハイパワーの高周波電圧を印加、強固な薄膜を形成させるのにサイン波が好ましい。
本発明において、印加する高周波電圧は、1kHz〜150MHzの周波数のものが好ましく使用でき、サイン波においては5kHz〜30MHzが好ましく用いられる。
【0033】
本発明において、一つの電極から一つの周波数の高周波電圧を印加するのであるが、高周波電圧は100kHzを越し150MHz以下が好ましく、より好ましくは800kHz〜30MHzである。その時の電力密度は1〜50W/cm2(ここで、分母のcm2は放電が起こっている面積である。)が好ましく、より好ましくは1.2〜30W/cm2である。この場合、放電ガスを励起させプラズマを発生させるのと、励起された薄膜形成ガスにより基材表面に強固に薄膜を形成することができる両方が可能となる。
【0034】
このような薄膜形成装置に有用な高周波電源としては、100kHz*(ハイデン研究所製)、200kHz、800kHz、2MHz、13.56MHz、27MHzおよび150MHz(いずれもパール工業製)等を挙げることができる。なお、*印はハイデン研究所インパルス高周波電源(連続モードで100kHz)である。
【0035】
プラズマ放電処理装置においては、このような電圧を印加して、均一なグロー放電状態を保つことができる電極を採用する必要がある。
図3は、図2に示したロール電極の導電性の金属質母材とその上に被覆されている誘電体の構造の一例を示す斜視図である。
図3において、ロール電極35aは導電性の金属質母材35Aとその上に誘電体35Bが被覆されたものである。内部は中空のジャケットになっていて温度調節が行われるようになっている。
【0036】
図4は、図2に示されている角筒型電極の導電性の金属質母材とその上に被覆されている誘電体の構造の一例を示す斜視図である。
図4において、角筒型電極36aは、導電性の金属質母材36Aに対し、図3同様の誘電体36Bの被覆を有しており、該電極の構造は金属質のパイプになっていて、それがジャケットとなり、放電中の温度調節が行えるようになっている。
【0037】
なお、角筒型電極の数は、上記ロール電極の円周より大きな円周上に沿って複数本設置されていおり、該電極の放電面積はロール電極35に対向している全角筒型電極面の面積の和で表される。
図3に示した角筒型電極36aは、円筒型電極でもよいが、角筒型電極は円筒型電極に比べて、放電範囲(放電面積)を広げる効果があるので、本発明に好ましく用いられる。
【0038】
図3および4において、ロール電極35aおよび角筒型電極36aは、それぞれ導電性の金属質母材35Aおよび36Aの上に誘電体35Bおよび36Bとしてのセラミックスを溶射後、無機化合物の封孔材料を用いて封孔処理したものである。セラミックス誘電体は片肉で1mm程度の被覆であればよい。溶射に用いるセラミックス材としては、アルミナ・窒化珪素等が好ましく用いられるが、この中でもアルミナが加工し易いので、特に好ましく用いられる。また、誘電体層が、ガラスライニングにより無機材料を設けたライニング処理誘電体であってもよい。
【0039】
導電性の金属質母材35Aおよび36Aとしては、チタンまたはチタン合金、銀、白金、ステンレススティール、アルミニウム、鉄等の金属等や、鉄とセラミックスとの複合材料またはアルミニウムとセラミックスとの複合材料を挙げることができるが、後述の理由からはチタンまたはチタン合金が特に好ましい。
2個の電極間の距離(電極間隙)は、導電性の金属質母材に設けた誘電体の厚さ、印加電圧の大きさ、プラズマを利用する目的等を考慮して決定されるが、電極の一方に誘電体を設けた場合の誘電体表面と導電性の金属質母材表面の最短距離、上記電極の双方に誘電体を設けた場合の誘電体表面同士の距離としては、いずれの場合も均一な放電を行う観点から0.1〜20mmが好ましく、特に好ましくは0.5〜2mmである。
【0040】
プラズマ放電処理容器10または31はパイレックス(登録商標)ガラス製の処理容器等が好ましく用いられるが、電極との絶縁がとれれば金属製を用いることも可能である。例えば、アルミニウムまたは、ステンレススティールのフレームの内面にポリイミド樹脂等を張り付けても良く、該金属フレームにセラミックス溶射を行い、絶縁性をとってもよい。図1において、平行した両電極の両側面(基材面近くまで)を上記のような材質の物で覆うことが好ましい。
【0041】
次に導電性の金属質母材および誘電体についての詳細について述べる。
このようなハイパワーの大気圧プラズマによる薄膜形成法に使用する電極は、構造的にも、性能的にも過酷な条件に耐えられるものでなければならない。このような電極としては、金属質母材上に誘電体を被覆したもの(誘電体被覆電極)であることが好ましい。
【0042】
誘電体被覆電極においては、様々な金属質母材と誘電体との間に特性が合うものが好ましく、その一つの特性として、金属質母材と誘電体との線熱膨張係数の差が10×10-6/℃以下となる組合せのものである。金属質母材と誘電体との線熱膨張係数の差は、好ましくは8×10-6/℃以下、より好ましくは5×10-6/℃以下、さらに好ましくは2×10-6/℃以下である。なお、線熱膨張係数とは、周知の材料特有の物性値である。
【0043】
線熱膨張係数の差が、この範囲にある導電性の金属質母材と誘電体との組合せとしては、
金属母材 誘電体
▲1▼純チタンまたはチタン合金 セラミックス溶射被膜
▲2▼純チタンまたはチタン合金 ガラスライニング
▲3▼ステンレススティール セラミックス溶射被膜
▲4▼ステンレススティール ガラスライニング
▲5▼セラミックスおよび鉄の複合材料 セラミックス溶射被膜
▲6▼セラミックスおよび鉄の複合材料 ガラスライニング
▲7▼セラミックスおよびアルミの複合材料 セラミックス溶射皮膜
▲8▼セラミックスおよびアルミの複合材料 ガラスライニング
等がある。線熱膨張係数の差という観点では、上記▲1▼または▲2▼および▲5▼〜▲8▼が好ましく、特に▲1▼が好ましい。
【0044】
金属質母材は、上記の特性からはチタンまたはチタン合金が特に有用である。金属質母材をチタンまたはチタン合金とすることにより、誘電体を上記とすることにより、使用中の電極の劣化、特にひび割れ、剥がれ、脱落等がなく、過酷な条件での長時間の使用に耐えることができる。
有用な電極の金属質母材は、チタンを70質量%以上含有するチタン合金またはチタンである。このチタン合金またはチタン中のチタンの含有量は、70質量%以上であれば、問題なく使用できるが、好ましくは80質量%以上のチタンを含有しているものが好ましい。本発明に有用なチタン合金またはチタンは、工業用純チタン、耐食性チタン、高力チタン等として一般に使用されているものを用いることができる。工業用純チタンとしては、TIA、TIB、TIC、TID等を挙げることができ、いずれも鉄原子、炭素原子、窒素原子、酸素原子、水素原子等を極僅か含有しているもので、チタンの含有量としては、99質量%以上を有している。耐食性チタン合金としては、T15PBを好ましく用いることができ、上記含有原子の他に鉛を含有しており、チタン含有量としては、98質量%以上である。また、チタン合金としては、鉛を除く上記の原子の他に、アルミニウムを含有し、その他バナジウムや錫を含有しているT64、T325、T525、TA3等を好ましく用いることができ、これらのチタン含有量としては、85質量%以上を含有しているものである。これらのチタン合金またはチタンはステンレススティール、例えばAISI316に比べて、熱膨張係数が1/2程度小さく、金属質母材としてチタン合金またはチタンの上に施された後述の誘電体との組合せがよく、高温、長時間での使用に耐えることができる。
【0045】
一方、誘電体の求められる特性としては、具体的には、比誘電率が6〜45の無機化合物であることが好ましく、また、このような誘電体としては、アルミナ、窒化珪素等のセラミックス、または、ケイ酸塩系ガラス、ホウ酸塩系ガラス等のガラスライニング材等がある。この中では、後述のセラミックスを溶射したものやガラスライニングにより設けたものが好ましい。特にアルミナを溶射して設けた誘電体が好ましい。
【0046】
または、上述のような大電力に耐える仕様の一つとして、誘電体の空隙率が10体積%以下、好ましくは8体積%以下であることで、好ましくは0体積%を越えて5体積%以下である。なお、誘電体の空隙率は、BET吸着法や水銀ポロシメーターにより測定することができる。後述の実施例においては、島津製作所製の水銀ポロシメーターにより金属質母材に被覆された誘電体の破片を用い、空隙率を測定する。誘電体が、低い空隙率を有することにより、高耐久性が達成される。このような空隙を有しつつも空隙率が低い誘電体としては、後述の大気プラズマ溶射法等による高密度、高密着のセラミックス溶射被膜等を挙げることができる。さらに空隙率を下げるためには、封孔処理を行うことが好ましい。
【0047】
上記、大気プラズマ溶射法は、セラミックス等の微粉末、ワイヤ等をプラズマ熱源中に投入し、溶融または半溶融状態の微粒子として被覆対象の金属質母材に吹き付け、皮膜を形成させる技術である。プラズマ熱源とは、分子ガスを高温にし、原子に解離させ、さらにエネルギーを与えて電子を放出させた高温のプラズマガスである。このプラズマガスの噴射速度は大きく、従来のアーク溶射やフレーム溶射に比べて、溶射材料が高速で金属質母材に衝突するため、密着強度が高く、高密度な被膜を得ることができる。詳しくは、特開2000−301655号公報に記載の高温被曝部材に熱遮蔽皮膜を形成する溶射方法を参照することができる。この方法により、上記のような被覆する誘電体(セラミック溶射膜)の空隙率にすることができる。
【0048】
また、大電力に耐える別の好ましい仕様としては、誘電体の厚みが0.5〜3mmであることである。この膜厚変動は、5%以下であることが望ましく、好ましくは3%以下、さらに好ましくは1%以下である。
誘電体の空隙率をより低減させるためには、上記のようにセラミックス等の溶射膜に、さらに、無機化合物で封孔処理を行うことが好ましい。前記無機化合物としては、金属酸化物が好ましく、この中では特に酸化ケイ素(SiOx)を主成分として含有するものが好ましい。
【0049】
封孔処理の無機化合物は、ゾルゲル反応により硬化して形成したものであることが好ましい。封孔処理の無機化合物が金属酸化物を主成分とするものである場合には、金属アルコキシド等を封孔液として前記セラミック溶射膜上に塗布し、ゾルゲル反応により硬化する。無機化合物がシリカを主成分とするものの場合には、アルコキシシランを封孔液として用いることが好ましい。
【0050】
ここでゾルゲル反応の促進には、エネルギー処理を用いることが好ましい。エネルギー処理としては、熱硬化(好ましくは200℃以下)や、紫外線照射などがある。さらに封孔処理の仕方として、封孔液を希釈し、コーティングと硬化を逐次で数回繰り返すと、よりいっそう無機質化が向上し、劣化の無い緻密な電極ができる。
【0051】
誘電体被覆電極の金属アルコキシド等を封孔液として、セラミックス溶射膜にコーティングした後、ゾルゲル反応で硬化する封孔処理を行う場合、硬化した後の金属酸化物の含有量は60モル%以上であることが好ましい。封孔液の金属アルコキシドとしてアルコキシシランを用いた場合には、硬化後のSiOx(xは2以下)含有量が60モル%以上であることが好ましい。硬化後のSiOx含有量は、XPSにより誘電体層の断層を分析することにより測定される。
【0052】
本発明の薄膜形成方法で用いられる電極においては、電極の少なくとも基材と接する側のJIS B 0601で規定される表面粗さの最大高さ(Rmax)が10μm以下になるように調整することが、本発明に記載の効果を得る観点から好ましいが、さらに好ましくは、表面粗さの最大値が8μm以下であり、特に好ましくは、7μm以下に調整することである。このように誘電体被覆電極の誘電体表面を研磨仕上げする等の方法により、誘電体の厚みおよび電極間のギャップを一定に保つことができ、放電状態を安定化できること、さらに熱収縮差や残留応力による歪やひび割れを無くし、かつ、高精度で、耐久性を大きく向上させることができる。誘電体表面の研磨仕上げは、少なくとも基材と接する側の誘電体において行われることが好ましい。さらにJIS B 0601で規定される中心線平均表面粗さ(Ra)は0.5μm以下が好ましく、さらに好ましくは0.1μm以下である。
【0053】
本発明に使用する誘電体被覆電極において、大電力に耐える他の好ましい仕様としては、耐熱温度が100℃以上であることである。さらに好ましくは120℃以上、特に好ましくは150℃以上である。また上限は500℃である。なお、耐熱温度とは、絶縁破壊が発生せず、正常に放電できる状態において耐えられる最も高い温度のことを指す。このような耐熱温度は、上記のセラミックス溶射や、泡混入量の異なる層状のガラスライニングで設けた誘電体を適用したり、下記金属質母材と誘電体の線熱膨張係数の差の範囲内の材料を適宜選択する手段を適宜組み合わせたりすることによって達成可能である。
【0054】
次に、2周波数高周波電圧印加方式の薄膜形成装置を説明する。
図5は、図1に示した薄膜形成装置を2周波数高周波電圧印加方式とした薄膜形成装置の一例を示した概略図である。
薄膜形成装置は、プラズマ放電処理装置、二つの高周波電源を有する高周波電圧印加手段の他に、図5では図示してないが、ガス供給手段、電極温度調節手段を有している装置である。
【0055】
この大気圧プラズマ放電処理装置は、第1電極(角筒型電極)111と第2電極(架台型電極)112から構成されている対向電極を有しており、該対向電極間に、第1電極111からは第1電源121からの第1の周波数ω1の高周波電圧V1が印加され、また第2電極112からは第2電源122からの第2の周波数ω2の高周波電圧V2が印加されるようになっている。第1電源121は第2電源122より大きな高周波電圧(V1>V2)を印加できる能力を有していればよく、また第1電源121の第1の周波数ω1は第2電源122の第2の周波数ω2より小さな能力を有していればよい。
【0056】
第1電極111と第1電源121との間には、第1電源121からの電流が第1電極111に向かって流れるように第1フィルター123が設置されており、第1電源121からの電流を通過しにくくし、第2電源122からの電流が通過し易くするように設計されている。
また、第2電極112と第2電源122との間には、第2電源122からの電流が第2電極112に向かって流れるように第2フィルター124が設置されており、第2電源122からの電流を通過しにくくし、第1電源121からの電流を通過し易くするように設計されている。
【0057】
図5では、図1と同様に3個の第1電極111と基材Fを搭載している移動可能な架台の第2電極112との対向電極間(放電空間)113に、ここでは図示してないガス供給手段からガス供給口129を通してガスGを導入して、放電空間113にガスを満たし、第1電極111と第2電極112の両方から高周波電圧を印加して放電を発生させ、ガスGをプラズマ状態にし、励起したガスに基材を晒し、薄膜を形成させる。
【0058】
また、図5に前述の高周波電圧(印加電圧)と放電開始電圧の測定に使用する測定器を示した。125および128は高周波プローブであり、126および127はオシロスコープである。
図6は、図2に示した薄膜形成装置を2周波数高周波電圧印加方式とした薄膜形成装置の一例を示した概略図である。
【0059】
この薄膜形成装置は、少なくとも、プラズマ放電処理装置130、二つの高周波電源を有する高周波電圧印加手段140、ガス供給手段150、電極温度調節手段160を有している装置である。
図6は、ロール電極(第1電極)135と角筒型電極群(第2電極)136との対向電極間(放電空間)132で、基材Fをプラズマ放電処理して薄膜を形成するものである。
【0060】
ロール電極(第1電極)135と角筒型電極群(第2電極)136との間の放電空間(対向電極間)132に、ロール電極(第1電極)135には第1電極141から周波数ω1であって高周波電圧V1を、また角筒型電極群(第2電極)136には第2電源142から周波数ω2であって高周波電圧V2をかけるようになっている。
【0061】
ロール電極(第1電極)135と第1電源141との間には、第1電源141からの電流がロール電極(第1電極)135に向かって流れるように第1フィルター143が設置されており、該第1フィルターは第1電源141からの電流を通過しにくくし、第2電源142からの電流を通過し易くするように設計されている。また、角筒型電極群(第2電極)136と第2電源142との間には、第2電源からの電流が第2電極に向かって流れるように第2フィルター144が設置されており、第2フィルター144は、第2電源142からの電流を通過しにくくし、第1電源141からの電流を通過し易くするように設計されている。ここで、通過しにくいとは、好ましくは、電流の20%以下、より好ましくは10%以下しか通さないことをいう。逆に通過し易いとは、好ましくは電流の80%以上、より好ましくは90%以上を通すことをいう。
【0062】
本発明において、上記のような性質のあるフィルターであれば制限無く使用できる。例えば、第1フィルターとしては、第2電源の周波数に応じて数10〜数万pFのコンデンサー、または数μH程度のコイルを用いることができる。第2フィルターとしては、第1電源の周波数に応じて10μH以上のコイルを用い、これらのコイルまたはコンデンサーを介してアース接地することでフィルターとして使用できる。
【0063】
なお、本発明においては、ロール電極135を第2電極、また角筒型電極群136を第1電極としてもよい。いずれにしろ第1電極には第1電源が、また第2電極には第2電源が接続される。さらに、第1電源は第2電源より大きな高周波電圧(V1>V2)を印加できる能力を有していればよい。また、周波数はω1<ω2となる能力を有していればよい。
【0064】
ガス供給手段150のガス供給装置151で発生させたガスGは、流量を制御して給気口152よりプラズマ放電処理容器131内に導入する。放電空間132およびプラズマ放電処理容器131内をガスGで満たす。
基材Fを、図示されていない元巻きから巻きほぐして搬送されて来るか、または前工程から搬送されて来て、ガイドロール164を経てニップロール165で基材に同伴されて来る空気等を遮断し、ロール電極135に接触したまま巻き回しながら角筒型電極群136との間に移送し、ロール電極(第1電極)135と角筒型電極群(第2電極)136との両方から電圧をかけ、対向電極間(放電空間)132で放電プラズマを発生させる。基材Fはロール電極135に接触したまま巻き回されながらプラズマ状態のガスにより薄膜を形成する。基材Fは、ニップロール166、ガイドロール167を経て、図示してない巻取り機で巻き取るか、次工程に移送する。
【0065】
放電処理済みの処理排ガスG’は排気口153より排出する。
薄膜形成中、ロール電極(第1電極)135および角筒型電極群(第2電極)136を加熱または冷却するために、電極温度調節手段160で温度を調節した媒体を、送液ポンプPで配管161を経て両電極に送り、電極内側から温度を調節する。なお、165および166はプラズマ放電処理容器131と外界とを仕切る仕切板である。
【0066】
本発明においては、このような電圧を印加して、均一なグロー放電状態を保つことができる電極をプラズマ放電処理装置に採用する必要がある。
本発明において、対向する電極間に印加する電力は、第2電極に1〜50W/cm2の電力密度を供給し、放電ガスを励起してプラズマを発生させ、エネルギーを薄膜形成ガスに与え薄膜を形成させる。対向する電極間に印加する電力は、好ましくは1.2〜30W/cm2である。
【0067】
ここで高周波電源の印加法に関しては、連続モードと呼ばれる連続サイン波状の連続発振モードと、パルスモードと呼ばれるON/OFFを断続的に行う断続発振モードのどちらを採用してもよいが、少なくとも第2電極側は連続サイン波の方がより緻密で良質な膜が得られるので好ましい。
本発明における放電条件は、対向する第1電極と第2電極との放電空間に、高周波電圧を印加し、該高周波電圧が、第1の周波数ω1の電圧成分と、前記第1の周波数ω1より高い第2の周波数ω2の電圧成分とを重ね合わせた成分を少なくとも有する。
【0068】
前記高周波電圧が、第1の周波数ω1の電圧成分と、前記第1の周波数ω1より高い第2の周波数ω2の電圧成分とを重ね合わせた成分となり、その波形は周波数ω1のサイン波上に、それより高い周波数ω2のサイン波が重畳されたω1のサイン波の波形となる。サイン波の重畳した波形に限られるものではなく、両方パルス波であっても、一方がサイン波でもう一方がパルス波であってもかまわない。また、さらに第3の電圧成分を有していてもよい。しかし、本発明においては、1周波数高周波電圧印加方式と同様に、少なくとも第2電極側は連続サイン波の方が、より緻密で良質な膜が得られる。
【0069】
本発明において、放電開始電圧とは、実際の薄膜形成方法に使用される放電空間(電極の構成など)および反応条件(ガス条件など)において放電を起こすことのできる最低電圧のことを指す。放電開始電圧は、放電空間に供給されるガス種や電極の誘電体種などによって多少変動するが、放電ガス単独の放電開始電圧と略同一と考えてよい。
【0070】
上記で述べたような高周波電圧を対向電極間(放電空間)に印加することによって、薄膜形成可能な放電を起こし、高品位な薄膜形成に必要な高密度プラズマを発生することができると推定される。ここで重要なのは、このような高周波電圧が対向する電極それぞれに印加され、すなわち、同じ放電空間に両方から印加されることである。例えば特開平11−16696号公報に記載されているように、印加電極を2つ併置し、離間した異なる放電空間それぞれに、異なる周波数の高周波電圧を印加する方法では、本発明の薄膜形成は達成できない。
【0071】
本発明において、高周波電圧を、放電空間に印加する具体的な方法は、対向電極を構成する第1電極に周波数ω1であって電圧V1である第1の高周波電圧を印加する第1電源を接続し、第2電極に周波数ω2であって電圧V2である第2の高周波電圧を印加する第2電源を接続した薄膜形成装置(大気圧プラズマ放電処理装置)を用いる。
【0072】
このような二つの高周波電源から高周波電圧を印加することは、第1の周波数ω1側によって高い放電開始電圧を有する放電ガスの放電を開始するのに必要であり、また第2の周波数ω2側はプラズマ密度を高くして緻密で良質な薄膜を形成するのに必要であるということが本発明の重要な点である。
本発明において、第1電源を用いて第1電極からは1〜200kHz程度の高周波電圧を、また第2電源を用いて第2電極からは800kHz〜15MHzの程度の高周波電圧を印加するのが好ましい。この場合、印加する1〜200kHzの高周波電圧により、放電開始電圧の高い放電ガスが励起しプラズマを発生し、そのエネルギーで薄膜形成ガスを励起し、プラズマ状態の薄膜形成ガスが印加する比較的高い周波数の高周波電圧により薄膜を基材上に強固に形成する。
【0073】
さらに、薄膜形成装置の第1電源は、第2電源より大きな高周波電圧を印加できる能力を有していることが好ましい。
また、本発明における別の放電条件としては、対向する第1電極と第2電極との間に、高周波電圧を印加し、該高周波電圧が、第1の高周波電圧V1および第2の高周波電圧V2を重畳したものであって、放電開始電圧をIVとしたとき、
1≧IV>V2
または V1>IV≧V2
を満たす。さらに好ましくは、
1>IV>V2
を満たすことである。
【0074】
高周波および放電開始電圧の定義、また、上記本発明の高周波電圧を、対向電極間(放電空間)に印加する具体的な方法としては、上述したものと同様である。
ここで、本発明でいう高周波電圧(印加電圧)と放電開始電圧は、下記の方法で測定されたものをいう。
【0075】
高周波電圧V1およびV2(単位:kV/mm)の測定方法:
各電極部の高周波プローブ(P6015A)を設置し、該高周波プローブをオシロスコー社製、TDS3012Bに接続し、電圧を測定する。
放電開始電圧IV(単位:kV/mm)の測定方法:
電極間に放電ガスを供給し、該電極間の電圧を増大させていき、放電が始まる電圧を放電開始電圧IVと定義する。測定器は上記高周波電圧測定と同じである。なお、上記測定に使用する高周波プローブとオシロスコープの位置関係については図6においては図示していないが、図5と同様なものを用いることができる。
【0076】
本発明において、高い電圧をかけるような放電条件をとることにより、例え窒素ガスのように放電開始電圧が高い放電ガスでも、放電ガスを開始し、高密度で安定なプラズマ状態を維持でき、高性能な薄膜形成を行うことができるのである。
上記の測定により放電ガスを窒素ガスとした場合、その放電開始電圧IVは3.7kV/mm程度であり、従って、上記の関係において、第1の高周波電圧を、V1≧3.7kV/mmとして印加することによって窒素ガスを励起し、プラズマ状態にすることができる。
【0077】
放電ガスとして、窒素ガスの他に、窒素ガスと酸素ガスの混合物(空気を含む)でも同様に放電開始電圧が窒素と同程度であり、本発明において、好ましく用いられる。
薄膜形成装置(大気圧プラズマ放電処理装置)に設置する高周波電源は、前述のものと同じであるが、第1電源(高周波電源)と第2電源(高周波電源)とに周波数により下記のように分けられる。
【0078】
第1電源としは、
高周波電源記号 メーカー 周波数
A1 神鋼電機 3kHz
A2 神鋼電機 5kHz
A3 春日電機 15kHz
A4 神鋼電機 50kHz
A5 ハイデン研究所 100kHz*
A6 パール工業 200kHz
なお、*印はハイデン研究所インパルス高周波電源(連続モードで100kHz)である。
【0079】
また、第2電源(高周波電源)としては、
高周波電源記号 メーカー 周波数
B1 パール工業 800kHz
B2 パール工業 2MHz
B3 パール工業 13.56MHz
B4 パール工業 27MHz
B5 パール工業 150MHz
等の市販のものを挙げることができ、いずれも好ましく使用できる。
【0080】
上記の対向電極の少なくとも一方の電極が膜厚制御手段(供述の)を有し、前記対向電極間に、放電ガスと薄膜形成ガスとを供給するガス供給手段を備える。さらに、電極の温度を制御する電極温度制御手段を有することが好ましい。
また、図5および6の電極には金属母材および誘電体が示されていないが、図3および4と同様に電極の金属母材に同様な誘電体が被覆されていることはいうまでもない。
【0081】
薄膜形成ガスとしては、有機金属化合物、ハロゲン金属化合物、金属水素化合物等を挙げることができ、これらの薄膜形成ガスは、1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
有機金属化合物は下記の一般式(I)で示すものが好ましい。
一般式(I) R1 xMR2 y3 z
式中、Mは遷移金属元素、典型金属元素および半金属元素から選ばれる少なくとも1種の金属元素であり、R1はアルキル基、R2はアルコキシ基、R3はβ−ジケトン錯体基、β−ケトカルボン酸エステル錯体基、β−ケトカルボン酸錯体基およびケトオキシ基(ケトオキシ錯体基)から選ばれる基であり、金属Mの価数をmとした場合、x+y+z=mであり、x=0〜m、またはx=0〜m−1であり、y=0〜m、z=0〜mで、いずれも0または正の整数である。
【0082】
1のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等を挙げることができる。
2のアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、3,3,3−トリフルオロプロポキシ基等を挙げることができる。またR2は、アルキル基の水素原子をフッ素原子に置換したものでもよい。
【0083】
3のβ−ジケトン錯体基、β−ケトカルボン酸エステル錯体基、β−ケトカルボン酸錯体基およびケトオキシ基(ケトオキシ錯体基)から選ばれる基としては、β−ジケトン錯体基として、例えば、2,4−ペンタンジオン(アセチルアセトンまたはアセトアセトンともいう)、1,1,1,5,5,5−ヘキサメチル−2,4−ペンタンジオン、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン、1,1,1−トリフルオロ−2,4−ペンタンジオン等を挙げることができ、β−ケトカルボン酸エステル錯体基として、例えば、アセト酢酸メチルエステル、アセト酢酸エチルエステル、アセト酢酸プロピルエステル、トリメチルアセト酢酸エチル、トリフルオロアセト酢酸メチル等を挙げることができ、β−ケトカルボン酸として、例えば、アセト酢酸、トリメチルアセト酢酸等を挙げることができ、またケトオキシとして、例えば、アセトオキシ基(またはアセトキシ基)、プロピオニルオキシ基、ブチリロキシ基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基等を挙げることができる。これらの基の炭素原子数は、18以下が好ましい。また例示にもあるように直鎖または分岐のもの、また水素原子をフッ素原子に置換したものでもよい。
【0084】
本発明において取扱いの問題から、爆発の危険性の少ない有機金属化合物が好ましく、分子内に少なくとも一つ以上の酸素を有する有機金属化合物が好ましい。このようなものとしてR2のアルコキシ基を少なくとも一つを含有する有機金属化合物、またR3のβ−ジケトン錯体基、β−ケトカルボン酸エステル錯体基、β−ケトカルボン酸錯体基およびケトオキシ基(ケトオキシ錯体基)から選ばれる基を少なくとも一つ有する金属化合物が好ましい。
【0085】
なお、具体的な有機金属化合物については後述する。
本発明において、放電空間または処理空間に供給するガスには、放電ガス、薄膜形成ガスの他に、薄膜形成の反応を促進する補助ガス(添加ガスともいう)を混合してもよい。補助ガスとしては、酸化性ガスとして、酸素、オゾン、過酸化水素、二酸化炭素、一酸化炭素、また還元性ガスとして水素、アンモニア、硫化水素等を挙げることができるが、酸化性ガスとしては酸素または一酸素化炭素および還元性ガスとしては水素が好ましく、これらから選択される成分を混合させるのが好ましい。その含有量は全ガスに対して0.01〜5体積%含有させることにより、反応促進され、かつ、緻密で良質な薄膜を形成することができる。
【0086】
上記形成された酸化物または複合化合物の薄膜の膜厚は、0.1〜1000nmの範囲が好ましい。
有機金属化合物の金属元素は、遷移金属元素、典型金属元素、半金属元素から選ばれる少なくとも1種の金属元素である。
遷移金属元素としては、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Nb、Mo、Rh、Pd、Ag、Hf、Ta、W、Ir、La、Ce、Nd、Th等を挙げることができる。
【0087】
典型金属元素としては、Li、Be、Na、Mg、Al、K、Ca、Zn、Ga、Ge、Rb、Sr、Cd、In、Sn、Sb、Cs、Ba、Hf、Tl、Bi、Ra、La、Ce、Nd等を挙げることができる。
半金属元素としては、B、Si、Ge*、As、Sb*、Te、Bi*、Se等を挙げることができる。(*印の元素は典型金属元素ではあるが、半金属または半導体として半金属元素としてもよいものである。)
有機金属化合物のより好ましい金属元素としては、Al、Si、Ti、Zn、In、Snである。有機金属化合物が加水分解して金属酸化物層となった時、可視光に対して優れた透明性を有することが好ましく、上記の金属元素を有する有機金属化合物が好ましい。
【0088】
本発明の薄膜形成方法で、上記のような有機金属化合物、ハロゲン金属化合物、金属水素化合物等の金属化合物を放電ガスと共に使用することにより、金属酸化物層(金属酸化物窒化物等の層も含む)または金属窒化物層等を形成することができ、高機能性の透明導電膜を得ることができる。好ましい有機金属化合物の金属は、インジウム(In)、亜鉛(Zn)および錫(Sn)から選ばれる少なくとも1種の金属である。
【0089】
好ましい有機金属化合物のより好ましい例は、インジウムトリス(2,4−ペンタンジオナート)、インジウムトリス(ヘキサフルオロペンタンジオナート)、インジウムトリアセトアセタート、トリアセトキシインジウム、ジエトキシアセトキシインジウム、トリイソプロポキシインジウム、ジエトキシインジウム(1,1,1−トリフルオロペンタンジオナート)、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナート)インジウム、エトキシインジウムビス(アセトメチルアセタート)、ジ(n)ブチル錫ビス(2,4−ペンタンジオナート)、ジ(n)ブチルジアセトキシ錫、ジ(t)ブチルジアセトキシ錫、テトライソプロポキシ錫、テトラ(i)ブトキシ錫、ビス(2,4−ペンタンジオナート)亜鉛等を挙げることができる。これらの有機金属化合物は一般に市販(例えば、東京化成工業(株)等から)されている。
【0090】
本発明においては、上記分子内に少なくとも1つの酸素原子を有する有機金属化合物の他に、該有機金属化合物から形成された透明導電膜の導電性をさらに高めるために該透明導電膜をドーピングすることが好ましく、薄膜形成ガスとしての該有機金属化合物とドーピング用有機金属化合物ガスを同時に混合して用いることが好ましい。ドーピング用有機金属化合物またはドーピング用フッ素化合物の薄膜形成ガスとしては、例えば、トリイソプロポキシアルミニウム、トリス(2,4−ペンタンジオナート)ニッケル、ビス(2,4−ペンタンジオナート)マンガン、イソプロポキシボロン、トリ(n)ブトキシアンチモン、トリ(n)ブチルアンチモン、ジ(n)ブチルビス(2,4−ペンタンジオナート)錫、ジ(n)ブチルジアセトキシ錫、ジ(t)ブチルジアセトキシ錫、テトライソプロポキシ錫、テトラブトキシ錫、テトラブチル錫、亜鉛ジ(2,4−ペンタンジオナート)、六フッ化プロピレン、八フッ化シクロブタン、四フッ化メタン等を挙げることができる。
【0091】
前記透明導電膜を形成するに必要な有機金属化合物と上記ドーピング用の薄膜形成ガスの比は、製膜する透明導電膜の種類により異なるが、例えば、酸化インジウムに錫をドーピングして得られるITO膜においては、InとSnの比の原子数比が100:0.1〜100:15の範囲になるように薄膜形成ガス量を制御することが必要である。InとSnの比の原子数比は、好ましくは、100:0.5〜100:10になるよう制御することが好ましい。
【0092】
酸化錫にフッ素をドーピングして得られる透明導電膜(FTO膜という)においては、得られたFTO膜のSnとFの比の原子数比が100:0.01〜100:50の範囲になるよう薄膜形成ガスの量比を制御することが好ましい。
In23−ZnO系アモルファス透明導電膜においては、InとZnの比の原子数比が100:50〜100:5の範囲になるよう薄膜形成ガスの量比を制御することが好ましい。
【0093】
In:Sn比、Sn:F比およびIn:Zn比の各原子数比はXPS測定によって求めることができる。
本発明において、薄膜形成ガスは、混合ガス(放電ガス、薄膜形成ガス、ドーピング用薄膜形成ガス、補助ガスを含む)に対し、0.01〜10体積%含有させることが好ましい。
【0094】
上述したような薄膜形成方法により基材上に透明導電層を形成することができるが、X線回折法における(222)の回折強度I1と(400)の回折強度I2との比(I2/I1)が0.3以下であり、(222)の回折強度I1と(440)の回折強度I3との比(I3/I1)が0.3以下であるような透明導電層は、上述したような薄膜形成方法において、例えば電極に印加する高周波を連続するサイン波とし、0.1W/cm2以上の電力を投入することにより製造することができる。
【0095】
また、I2/I1の値およびI3/I1の値を調節するには、上述したような薄膜形成方法において、例えば電極に印加する高周波の周波数を100kHz以上とし、電力密度を変更すればよい。
透明導電層の炭素濃度を0.1〜5.0原子%の範囲とするには、上述したような薄膜形成方法において、例えば電極に印加する高周波を連続するサイン波とし、0.1W/cm2以上の電力を投入すればよい。
【0096】
【実施例】
以下、本発明を実施例により説明する。
本実施例において、透明導電膜の評価は以下のようにして行った。
〔評価〕
〈透過率〉
JIS−R−1635に従い、日立製作所製分光光度計U−4000型を用いて測定を行った。試験光の波長は550nmとした。
【0097】
〈比抵抗値〉
JIS−R−1637に従い、四端子法により求めた。なお、測定には三菱化学製ロレスタ−GP、MCP−T600を用いた。
〈エッチング特性〉
透明導電層にパターニングするための下記の組成の30℃のエッチング液に基材上の透明導電層を浸漬し、エッチング時間は30秒、45秒、60秒、90秒、120秒、180秒でサンプリングした。続いて水洗、乾燥を行い、乾燥後の試料についてエッチング部と非エッチング部との境界部分の断面を電子顕微鏡により観察し、また膜の除去の具合を目視によって評価した。
・エッチング液組成
水、濃塩酸および40質量%第二塩化鉄溶液を質量比で85:8:7で混合したものをエッチング液とした。
・エッチングパターンの評価レベル
エッチングパターンの評価は、以下の基準によりA〜Fで示した。
【0098】
A:30秒で透明導電膜が除去でき、エッチングパターンの境界部分が頗る良好なもの
B:45秒で透明導電膜が除去でき、エッチングパターンの境界部分が頗る良好なもの
C:60秒で透明導電膜は除去でき、エッチングパターンの境界部分が頗る良好なもの
D:120秒で透明導電膜は除去できたが、エッチングパターンの境界部分があまり良好でない
E:180秒を超しても透明導電膜が若干残っている部分があり、エッチングパターンの境界部分がギザギザ(凸凹)していた
F:180秒を超しても透明導電膜が島状に残っている
〈膜組成〉
膜組成、炭素濃度は、XPS表面分析装置を用いてその値を測定した。XPS表面分析装置としては、特に限定なく、いかなる機種も使用することができるが、本実施例においてはVGサイエンティフィックス社製ESCALAB−200Rを用いた。
【0099】
X線アノードにはMgを用い、出力600W(加速電圧15kV、エミッション電流40mA)で測定した。エネルギー分解能は、清浄なAg3d5/2ピークの半値幅で規定したとき、1.5〜1.7eVとなるように設定した。測定を行う前に、汚染による影響を除くために、薄膜の膜厚の10〜20%の厚さに相当する表面層をエッチング除去する必要がある。表面層の除去には、希ガスイオンが利用できるイオン銃を用いることが好ましく、イオン種としては、He、Ne、Ar、Xe、Krなどが利用できる。本測定おいては、Arイオンエッチングを用いて表面層を除去した。
【0100】
先ず、結合エネルギー0eVから1100eVの範囲を、データ取り込み間隔1.0eVで測定し、いかなる元素が検出されるかを求めた。
次に、検出された、エッチングイオン種を除く全ての元素について、データの取り込み間隔を0.2eVとして、その最大強度を与える光電子ピークについてナロースキャンを行い、各元素のスペクトルを測定した。得られたスペクトルは、測定装置、または、コンピューターの違いによる含有率算出結果の違いを生じせしめなくするために、VAMAS−SCA−JAPAN製のCOMMON DATA PROCESSING SYSTEM(Ver.2.3以降が好ましい)上に転送した後、同ソフトで処理を行い、炭素濃度の値を原子数濃度(atomic concentration:at%)として求めた。
【0101】
錫とインジウムの比も、上記結果から得られた原子数濃度の比とした。
定量処理を行う前に、各元素についてCount Scaleのキャリブレーションを行い、5ポイントのスムージング処理を行った。定量処理では、バックグラウンドを除去したピークエリア強度(cps*eV)を用いた。バックグラウンド処理には、Shirleyによる方法を用いた。
【0102】
Shirley法については、D.A.Shirley,Phys.Rev.,B5,4709(1972)を参考にすることができる。
〈可撓性〉
実施例および比較例で得られたそれぞれの透明導電フィルムについて、JIS規格K5400に準じて行った。フィルムの巻付けには直径10mmのステンレス棒を用いた。試験の結果、透明導電層に微細なクラックが発生したものを×、何らの変化もなかったものを○とした。
【0103】
〈耐久性〉
23℃、55%RHに放置して置いた試料を、恒温器を用いて温度60℃、90%RHの条件で240時間処理した後、再び23℃、55%RHに放置し、加湿、加熱前後の比抵抗値(Ω・cm)をそれぞれR0およびRとし、変化率R/R0を耐久性の指標とした。比抵抗値の評価は、上記比抵抗値と同様の方法で測定した。
【0104】
【比較例1〜5、参考例1〜3】
(試料101の作成)
薄膜形成装置として通常のDCマグネトロンスパッタ装置、ターゲット材料として錫5%ドープの酸化インジウム、導入ガスとしてアルゴンと酸素の混合ガスを用い基材としての厚さ2mmの無アルカリガラス上に、下記の薄膜形成条件で、錫ドープ酸化インジウム膜を形成した。これを試料101とした。
【0105】
《薄膜形成条件》
ターゲット電流 :DC 0.4mA
バックグラウンド真空度 :0.80mPa
薄膜形成時総ガス圧 :1.47Pa
薄膜形成時酸素分圧 :1×10-3Pa
基材温度 :350℃
以下表1に示す条件にてガラス基材上に試料102から104を形成した。
【0106】
【表1】
Figure 0004269754
【0107】
平行平板電極を有する大気圧プラズマ装置を用いて基材としての厚さ2mmの無アルカリガラス上に下記の薄膜形成条件で、錫ドープ酸化インジウム膜を形成した。これを試料105とした。
大気圧プラズマ放電処理装置の電極間隙を1mmとし、放電空間の圧力を104kPaとして、放電空間に下記薄膜形成用ガスを供給し続けて満たし、連続周波数13.56MHz、1.5W/cm2の電力密度の高周波電圧を供給しプラズマを発生させた。なお、ガスの供給と使用済みガスの排気を連続的に行った。
【0108】
Figure 0004269754
以下表2に示す条件にて試料106から108を作成した。
【0109】
【表2】
Figure 0004269754
【0110】
上記条件で作成した試料の評価を行った。結果を表3に示す。
【0111】
【表3】
Figure 0004269754
【0112】
【実施例1、参考例4、比較例6〜8】
基材を厚さ100μmのARTON(登録商標、JSR(株)製)フィルムとし試料105から108と同様の条件にて透明導電膜付きフィルムを作成し、評価を行った。
【0113】
【表4】
Figure 0004269754
【0114】
本発明の範囲にある試料は比抵抗が低くかつエッチング特性が良好であることがわかる。
【0115】
【発明の効果】
本発明に係る透明導電膜積層体は、比抵抗が低く耐久性、可撓性に優れ、かつエッチング特性に優れる。
本発明に係る透明導電性膜積層体の製造方法は、基材上に比抵抗が低く耐久性、可撓性に優れ、かつエッチング特性に優れる透明導電膜を生産性よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に有用な1周波数高周波電圧印加方式の薄膜形成装置の一例を示す概略図である。
【図2】本発明に有用な1周波数高周波電圧印加方式の薄膜形成装置の一例を示す概略図である。
【図3】図2に示したロール電極の導電性の金属質母材とその上に被覆されている誘電体の構造の一例を示す斜視図である。
【図4】図2に示されている角筒型電極の導電性の金属質母材とその上に被覆されている誘電体の構造の一例を示す斜視図である。
【図5】図1に示した薄膜形成装置を2周波数高周波電圧印加方式とした薄膜形成装置の一例を示した概略図である。
【図6】図2に示した薄膜形成装置を2周波数高周波電圧印加方式とした薄膜形成装置の一例を示した概略図である。
【符号の説明】
132 放電空間
135 第1電極(ロール電極)
136 第2電極(角筒型電極群)
141 第1電源
142 第2電源
143 第1フィルター
144 第2フィルター

Claims (7)

  1. 基材上に直接または他の層を介して透明導電層が形成されてなる積層体であって、該透明導電層のX線回折法における(222)の回折強度I1と(400)の回折強度I2との比(I2/I1)が0.3以下、(222)の回折強度I1と(440)の回折強度I3との比(I3/I1)が0.18以下であり、かつ該透明導電層の炭素濃度が0.1〜5.0原子%の範囲であることを特徴とする透明導電膜積層体。
  2. 2/I10.03〜0.25の範囲にあり、I3/I10.03〜0.18の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の透明導電膜積層体。
  3. 前記透明導電層が、インジウム、錫および亜鉛から選ばれる少なくとも1種の原子を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の透明導電膜積層体。
  4. 前記基材が、透明樹脂フィルムであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の透明導電膜積層体。
  5. 前記透明樹脂フィルムが、タッチパネル用フィルム基材、液晶素子プラスチック基板、有機EL素子プラスチック基板または電子ペーパー用フィルム基板であることを特徴とする請求項4に記載の透明導電膜積層体。
  6. 大気圧またはその近傍の圧力下で、放電空間にガスを供給するとともに該放電空間に高周波電圧を印加し、ガスを励起してプラズマ状態とし、この励起したプラズマ状態のガスに基材を晒すことにより、基材上に透明導電膜を形成して請求項1ないし5のいずれか1項に記載の透明導電膜積層体を製造することを特徴とする透明導電膜積層体の製造方法。
  7. 前記高周波電圧の周波数が、100kHzを超え150MHz以下であることを特徴とする請求項6に記載の透明導電膜積層体の製造方法。
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