JP2004076037A - 透明導電性薄膜を有する物品及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】生産コストが低く、特に透明性に優れ、高い導電率を有する(比抵抗値が低く)、優れた透明導電性薄膜を有する物品及びその製造する方法を提供することにある。
【解決手段】大気圧プラズマ放電薄膜形成方法を用いて、透明導電性薄膜を形成した後、還元性ガスに該薄膜を晒し、薄膜形成ガスと還元性ガスに晒すことを交互に繰り返すことを特徴とする透明導電性薄膜を有する物品の製造方法。
【選択図】 なし
【解決手段】大気圧プラズマ放電薄膜形成方法を用いて、透明導電性薄膜を形成した後、還元性ガスに該薄膜を晒し、薄膜形成ガスと還元性ガスに晒すことを交互に繰り返すことを特徴とする透明導電性薄膜を有する物品の製造方法。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶表示素子、有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、電子ペーパー、タッチパネルや太陽電池等の各種エレクトロニクス素子に好適な透明導電性薄膜を基材上に有する物品及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より低電気抵抗(低比抵抗値)で、高い可視光透過率の透明導電性薄膜を有する物品、例えば透明導電性フィルムは、液晶画像表示装置、有機EL画像表示装置、プラズマディスプレイパネル(PDP)、電界放出型ディスプレイ(FED)等のフラットディスプレイの透明電極、太陽電池の透明電極、電子ペーパー、タッチパネル、電磁波シールド材、赤外線反射膜等多くの分野に利用されている。透明導電性薄膜としてはPt、Au、Ag、Cu等の金属膜、SnO2、In2O3、CdO、ZnO、SbドープSnO2、FドープSnO2、AlドープZnO、SnドープIn2O3等の酸化物またはドーパントによる複合酸化物膜、カルコゲナイド、LaB6、TiN、TiC等の非酸化物がある。中でも錫をドープした酸化インジウム(以降、ITOという場合がある)膜が、優れた電気特性とエッチングによる加工の容易さからもっとも広く使用されている。これらは真空蒸着法やスパッタリング法,イオンプレーティング法、真空プラズマCVD法、スプレーパイロリシス法、熱CVD法、ゾルゲル法等により形成されている。
【0003】
従来、真空蒸着法やスパッタリング等の真空装置により透明導電性薄膜は製造されているが、それらの設備は大掛かりで設備コストが高価で、生産性が低く、収率も低いのが現状である。また、マグネトロンスパッタリング法で形成された透明導電性薄膜、例えばITOはエッチング加工性が悪い。ITOのような透明導電性薄膜は通常マグネトロンスパッタリング法で成膜されるが、成膜されるITOの比抵抗値を低く実現させるために、成膜の際に基材が200℃程度に加熱するが、その結果、ITOが結晶化し易くなる。結晶化したITO膜は抵抗値が低く、高湿度且つ高温(50〜100℃)下で保存した場合の抵抗値の変化(以降、ロバストネスという)も小さいが、エッチング処理性が悪くパターニングがうまくいかない。一方マグネトロンスパッタリングを用いて、基材温度が100度以下の低温でITO膜を形成した場合、エッチング速度は早くなるが、高温で形成した場合に比べ、(イ)結晶性が低く、比抵抗値が高い、(ロ)膜中へ酸素が取り込まれにくく透過率が低い、という課題があった。これらのような課題に対して、スパッタ中の酸素分圧を増やす方法、または薄膜形成後に適当な温度・気体組成のもとで熱処理(エージング)を行う方法もあるが、上記課題を満足するまでには至っていない。
【0004】
一方、熱CVD法や蒸着法では、比抵抗値の低い膜は得られるものの、基材を高温にして成膜するため樹脂フィルムへの成膜が出来にくい。
【0005】
ゾルゲル法(塗布製膜法)は、塗布液の分散調液、塗布、乾燥等多くのプロセスが必要であるばかりでなく、膜の被処理基材との接着性が低いため、塗布液にバインダー樹脂を含有させることが必要で、その結果、膜厚が厚くなったり、透明性に劣るという課題がある。また、得られた透明導電性薄膜の電気特性もPVD法に比較すると劣る傾向にあった。
【0006】
熱CVD法は、スピンコート法やディップコート法、印刷法などにより基材に目的物質の前駆物質を塗布し、これを焼成(熱分解)することで膜を形成するもので、装置が簡単で生産性に優れ、大面積の成膜が容易であるという利点があるが、焼成時に400〜500℃という高温処理が必要とするため基材の種類が限られ、特に、プラスティックフィルム基材への品質の良好な成膜が得られにくいという欠点があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記の各方法のデメリットを克服する方法として、例えば特開2000−303175には、大気圧もしくはその近傍の圧力下でプラズマ放電させて成膜する大気圧プラズマ放電薄膜形成方法が開示されている。
【0008】
この大気圧プラズマ放電薄膜形成方法は、大気圧もしくはその近傍の圧力下で放電して混合ガスをプラズマ励起し、基材上に膜を形成する方法で、スパッタリングや真空蒸着のような真空系と異なり、大面積を処理出来るので、生産性面からも、また装置コスト的にも有利な点がある。この特開2000−303175においては、透明導電性薄膜を、トリエチルインジウムのような有機金属化合物を使用し形成しているが、得られる透明導電性薄膜の比抵抗値のオーダーがせいぜい10−2Ω・cm台と高く、1×10−3Ω・cm以下の比抵抗値の電気特性が要求される液晶ディスプレイ(LCD)、有機ELディスプレイ(ELD)、PDP、電子ペーパー等のフラットパネルディスプレイ用の透明導電性薄膜としては不十分である。大気圧プラズマ放電薄膜形成方法はスパッタリング装置のような大掛かりな設備を使用せず、比較的簡単な装置で薄膜を形成することが出来る。このように真空設備のような大掛かりな設備を使用せず、ガラス、フィルム上に低抵抗で、透過率が高い透明導電性薄膜を形成する方法が望まれている。
【0009】
特開平9−50712あるいは特開2000−129427では、スパッタリング法により透明導電性薄膜を得る際のITOを主成分とするターゲットを用いたDCマグネトロンスパッタリング法による薄膜形成ガス組成についての検討がなされているが、結晶部分が多く出来易いためエッチング(パターニング)速度が遅いという課題がある。
【0010】
従来のローパワー大気圧プラズマ放電薄膜形成方法で形成された透明導電性薄膜は、比抵抗値が高く、また透過率が充分でなく、更に結晶化度が膜内で部分的に異なる傾向が強く、また、パルス波形の高周波電圧をかけて透明導電性薄膜を形成すると、ムラが多く、またハイパワーのパルス波形の高周波電圧の大気圧プラズマ放電薄膜形成方法ではアーク放電が起こり易く、薄膜形成が不安定になるようなことが起こり易い。このような膜の不均一性により、温度、湿度に対して膜の抵抗値が変化し易くなる。
【0011】
本発明は上記のような課題に鑑みて行われたものであって、本発明の目的は、生産コストが低く、特に透明性に優れ、高い導電率を有する(比抵抗値が低く)、優れた透明導電性薄膜を有する物品及びその製造する方法を提供することにある。第2の目的は、上記如き薄膜を形成する薄膜形成装置に関する。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は以下の手段により達成される。
【0013】
1.対向電極間(放電空間)を、大気圧もしくはその近傍の圧力とし、放電ガスと薄膜形成ガスを主構成成分とする透明導電性薄膜形成ガスのうちの少なくとも放電ガスを該対向電極間に導入し、高周波電圧を該対向電極間に印加して放電ガスをプラズマ状態とし、続いてプラズマ状態になった薄膜形成ガスに基材を晒して基材上に薄膜を形成する大気圧プラズマ放電薄膜形成方法を用いた透明導電性薄膜を有する物品の製造方法において、基材上を該プラズマ状態の薄膜形成ガスに晒して薄膜を形成した後の基材上の薄膜を還元性ガスに晒し、更に該基材上の薄膜を該プラズマ状態の薄膜形成ガスと該還元性ガスに交互に晒すことを特徴とする透明導電性薄膜を有する物品の製造方法。
【0014】
2.前記基材が樹脂フィルムまたは樹脂シートであることを特徴とする前記1に記載の透明導電性薄膜を有する物品の製造方法。
【0015】
3.前記基材がガラス板であることを特徴とする前記1に記載の透明導電性薄膜を有する物品の製造方法。
【0016】
4.前記薄膜形成ガスが少なくとも有機金属化合物を含有することを特徴とする前記1乃至3の何れか1項に記載の透明導電性薄膜を有する物品の製造方法。
【0017】
5.前記有機金属化合物が下記一般式(I)で表されるものであることを特徴とする前記4に記載の透明導電性薄膜を有する物品の製造方法。
【0018】
一般式(I) R1 xMR2 yR3 z
(式中、Mは金属、R1はアルキル基、R2はアルコキシ基、R3はβ−ジケトン錯体基、β−ケトカルボン酸エステル錯体基、β−ケトカルボン酸錯体基及びケトオキシ基(ケトオキシ錯体基)から選ばれる基であり、金属Mの価数をmとすると、x+y+z=mであり、x=0〜mまたはx=0〜m−1であり、y=0〜m、z=0〜mである。)
6.前記一般式(I)で表される有機金属化合物が、R2で表されるアルコキシ基を少なくとも一つ有するものであることを特徴とする前記5に記載の透明導電性薄膜を有する物品の製造方法。
【0019】
7.前記一般式(I)で表される有機金属化合物が、R3で表されるβ−ジケトン錯体基、β−ケトカルボン酸エステル錯体基、β−ケトカルボン酸錯体基及びケトオキシ基(ケトオキシ錯体基)から選ばれる基を少なくとも一つ有することを特徴とする前記5または6に記載の透明導電性薄膜を有する物品の製造方法。
【0020】
8.前記一般式(I)で表される有機金属化合物のMの金属が、インジウム(In)、錫(Sn)、亜鉛(Zn)、ジルコニウム(Zr)、アンチモン(Sb)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)及びゲルマニウム(Ge)から選ばれる少なくとも一つのものであることを特徴とする前記5乃至7の何れか1項に記載の透明導電性薄膜を有する物品の製造方法。
【0021】
9.前記薄膜形成ガスが、補助ガスとして酸化性ガスを含有することを特徴とする前記1乃至8の何れか1項に記載の透明導電性薄膜を有する物品の製造方法。
【0022】
10.前記酸化性ガスが、酸素、オゾン、二酸化炭素及び空気から選ばれることを特徴とする前記9に記載の透明導電性薄膜を有する物品の製造方法。
【0023】
11.前記放電ガスが、ヘリウム、アルゴン及び窒素から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする前記1乃至10の何れか1項に記載の透明導電性薄膜を有する物品の製造方法。
【0024】
12.前記還元性ガスが、水素、炭化水素及び水から選ばれる少なくとも一つのガスであることを特徴とする前記1乃至11の何れか1項に記載の透明導電性薄膜を有する物品の製造方法。
【0025】
13.高周波電圧をかける周波数を200kHz以上とすることを特徴とする前記1乃至12の何れか1項に記載の透明導電性薄膜を有する物品の製造方法。
【0026】
14.高周波電圧をかける周波数を150MHz以下とすることを特徴とする前記13に記載の透明導電性薄膜を有する物品の製造方法。
【0027】
15.電力密度を50W/cm2以下とすることを特徴とする前記1乃至14の何れか1項に記載の透明導電性薄膜を有する物品の製造方法。
【0028】
16.電力密度を1.2W/cm2以上とすることを特徴とする前記15に記載の透明導電性薄膜を有する物品の製造方法。
【0029】
17.前記1乃至16の何れか1項に記載の方法で作製したことを特徴とする透明導電性薄膜を有する物品。
【0030】
18.前記透明導電性薄膜が1×10−3Ω・cm以下の比抵抗値を有することを特徴とする前記17に記載の透明導電性薄膜を有する物品。
【0031】
以下、本発明を詳述する。
本発明は、透明性に優れ、導電性(低比抵抗値)で、高温高湿下でも性能の劣化し難く、薄膜の硬度が高い優れた透明導電性薄膜を基材上に形成する方法として、大気圧もしくはその近傍の圧力下で薄膜形成する大気圧プラズマ放電薄膜形成方法、特にハイパワーの大気圧プラズマ放電薄膜形成方法を用いて、基材上に、透明導電性薄膜を形成する方法において、プラズマ状態の薄膜形成ガスに晒して透明導電性薄膜を形成させた後、更に還元性ガスに該薄膜を晒し、更に、該薄膜形成と、還元性ガスに晒すこととを交互に行うことにより、製造される透明導電性薄膜を有する物品及びその製造方法、並びに薄膜形成装置に関する。
【0032】
本発明の透明導電性薄膜を有する物品は、連続的なサイン波形の高周波電圧をかける大気圧プラズマ放電薄膜形成方法により、基材としてのプラスティックフィルム、ガラス板、レンズ、その他の成型物の上に透明導電性薄膜を形成するのであるが、透明導電性薄膜形成の際、形成された透明導電性薄膜を還元性ガスに晒し、更に同様な薄膜形成と還元性ガス処理を交互に行い、優れた透明導電性薄膜を形成することが特徴である。
【0033】
通常は、透明導電性薄膜の形成の際には、形成された透明導電性薄膜をより均一に緻密にすることが出来、導電性及び様々な性能を向上させることが出来るため、薄膜形成ガスに、薄膜形成に直接は関与せずとも、薄膜の性質に影響を及ぼす補助ガスまたは添加ガスと呼ばれる水素、メタン等の炭化水素、水から選ばれる還元性ガスを含有させることが行われる。補助ガスには、還元性ガスの他、酸化性、その他薄膜形成を促進するようなガスなどがある。補助ガスは全ガス100体積%に対して0.0001〜10体積%が好ましく、より好ましくは0.001〜5体積%である。
【0034】
従って、上記のように、大気圧プラズマ等による導電性薄膜の形成時には、添加ガス或いは補助ガスとして、例えば水素等の還元性ガスを薄膜形成ガスと一緒に混合して膜形成することで、形成される透明導電性薄膜をより均一に緻密にすることが出来、これにより、抵抗値の低い、導電性の高い薄膜が得られ、また、エッチング性能も向上する。しかしながら、一方で、この様にして形成されるITO等の透明導電性薄膜は、導電性は高いものの、透過率が比較的低く、透明性にやや劣るという欠点がある。この欠点を解決するため、膜形成ガスと添加ガスとの比率、また大気圧プラズマCVDの条件等の調整などを精密に行う必要があるが、出来上がる膜の性能に再現性がなかったり、膜の均一性等に問題が生じエッチング性能や導電性において必ずしも満足のゆく性能が得られていない。同じ発明者等による2002年7月26日出願の特願2002−218074に記載されたように、膜形成ガスと添加ガスである還元性ガスの存在下において透明導電性薄膜を形成した後に、再度、酸化処理を別に行うことが有効であることが記載されている。即ち、大気圧プラズマ法による上記の薄膜形成ガスと一緒に還元性ガスを存在させ、導電性薄膜を形成した後、例えば酸素、オゾン等の酸化性ガスに晒し、更に膜形成、酸化性ガスへ晒す等の操作を繰り返すことが、透明性の高い導電性薄膜を得ることができる。
【0035】
しかしながら、結晶化度の高い、キャリア密度は高いものの、透過率の低い膜を酸化性ガスとの接触を繰り返し、マイルドな酸化過程により透過率を向上させるプロセスは時間がかかる等の問題もあった。
【0036】
一方、有機金属化合物を含有する薄膜形成ガスに、添加ガスとして、酸化性ガスを少量混合する(例えば、薄膜形成ガスの0.0001〜1.0体積%程度)ことで、成膜された、金属酸化物からなる透明導電性薄膜は、基材上での反応(結晶化)が非常に早く、多結晶で連続性が低いものの、透明性の高い(透過率の低い)膜を形成する。この方法で形成した膜は、一方で、導電性膜としては抵抗値が高いためそのままでは使用が限られており、この方法での成膜は今まで余り試みられていなかった。
【0037】
本発明者等は、大気圧プラズマCVDを用いた、大気圧プラズマ放電薄膜形成方法において、薄膜形成ガスにこの様な酸化性ガスを共存させ、基材上に金属酸化物を含有する透明導電性膜を形成させた後に、形成された透明導電性薄膜を、今度は、還元性ガスに晒すことで、本来の透明性に加えて、抵抗値の低い透明導電性膜として優れた性能を有する膜が得られることを見いだした。同様な薄膜形成と還元性ガス処理を繰り返し交互に行うことで、さらに、優れた透明導電性薄膜を形成することが可能である。好ましくは、これらの大気圧プラズマ放電薄膜形成方法を用いた場合、薄膜形成ガスに酸化性ガスを少量混合しての薄膜形成と、その後の還元性ガスによる処理は複数回、好ましくは4〜5回繰り返すことが好ましい。
【0038】
この様に、ハイパワーの高周波電圧をかけ、薄膜形成ガスを用いて、透明導電性薄膜を形成した直後に還元性ガスにその透明導電性薄膜を晒し、好ましくは透明導電性薄膜の形成と還元性ガスに晒すという工程を繰り返すことにより、成膜条件の制御とは別に、成膜後に還元性雰囲気に晒すという操作を加えることにより透明導電性薄膜の性質をコントロールすることができる。
【0039】
この方法、即ち、大気圧プラズマ放電薄膜形成方法による薄膜形成後に、形成された透明導電性薄膜を、還元性ガスに晒す、また、大気圧プラズマCVDによる薄膜形成と還元性ガスへ晒すという操作を繰り返すことで、比抵抗値として10−4Ω・cm以下である高い導電性を有する透明導電性薄膜を形成することが出来るばかりではなく、このような方法で形成した薄膜は、透明導電性薄膜として透明度が高く、さらに、硬度が非常に高くなり、しかも均一にすることが出来、様々な優れた特性を有する。プラズマ放電処理空間でなく、その外で還元性ガス雰囲気に表面が均一に晒されることにより還元反応が膜の表面、内部で均一に穏やかに行われ、膜中のキャリア密度が均一に増加することで導電性の向上(抵抗値の低下)がむらなく行われると考えられる。
【0040】
本発明に係る連続モードと呼ばれる連続サイン波状の連続発振モードによる透明導電性薄膜の形成は、パルスモードと呼ばれるON/OFFを断続的に行う断続発振モードによる方法より緻密で良質な膜が得られる。
【0041】
ここで、本発明に用いるハイパワーの大気圧プラズマ放電薄膜形成方法及び大気圧プラズマ放電処理装置について説明する。
【0042】
本発明において、プラズマ放電処理が大気圧もしくはその近傍の圧力で行われるが、ここで大気圧近傍とは、20kPa〜110kPaの圧力を表すが、本発明に記載の良好な効果を得るためには、93kPa〜104kPaが好ましい。
【0043】
本発明に係る大気圧プラズマ放電処理装置は、二つの電極が、例えば片方の電極がアース電極で、対向する位置に配置された他方の電極が印加電極で構成する対向電極を有し、これらの対向電極間(放電空間ということがある)に少なくとも放電ガス及び薄膜形成ガスおよび添加ガスを含有する混合ガスを導入し、対向電極間に高周波電源からの高周波電圧をかけて放電させ、混合ガスを励起またはプラズマ状態とし、該励起またはプラズマ状態の混合ガス(詳しくは、先ず該混合ガスのうちの放電ガスを励起またはプラズマ状態とし、更に該励起またはプラズマ状態の放電ガスからエネルギーを受けて薄膜形成ガスまたは添加ガスが励起またはプラズマ状態となり、該励起またはプラズマ状態のガス)に該放電空間を静止または移送する基材を晒すことによって、該基材の上に透明導電性薄膜の薄膜を形成させる装置である。また他の方式の大気圧プラズマ放電処理装置は、対向電極間(放電空間)で上記と同様に混合ガスを励起またはプラズマ状態とし、該対向電極外にジェット状に該プラズマ状態の混合ガスを吹出し、該対向電極の下面と基材との間の空間(処理空間という)において基材(静置していても移動していてもよい)を該プラズマ状態の混合ガスに晒すことによって該基材の上に透明導電性薄膜の薄膜を形成させるジェット方式の装置である。また、放電ガスと薄膜形成ガスまたは添加ガス等を混合して使用せず、放電ガスを放電空間に導入して励起またはプラズマ状態とし、処理空間にジェット状に吹き出させ、別に処理空間に導入した薄膜形成ガスまたは添加ガス等を励起またはプラズマ状態にして基材を晒すという装置もある。
【0044】
以下本発明に有用な大気圧プラズマ放電処理装置及び薄膜形成と酸化性ガス処理を交互に行う薄膜形成装置の例を図によって説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0045】
図1は、本発明に係る大気圧プラズマ放電処理装置の一例を示す概略図である。図1はプラズマ放電処理装置30、ガス供給手段50、電圧印加手段40、及び電極温度調節手段60から構成されている。ロール回転電極35と角筒型固定電極群36として、基材Fをプラズマ放電処理するものである。この図1では、ロール回転電極35はアース電極で、角筒型固定電極群36は高周波電源41に接続されている印加電極である。基材Fは図示されていない元巻きから巻きほぐされて搬送して来るか、または前工程から搬送されて来て、ガイドロール64を経てニップロール65で基材に同伴して来る空気等を遮断し、ロール回転電極35に接触したまま巻き回されながら角筒型固定電極群36との間を移送され、ニップロール66、ガイドロール67を経て、図示してない巻き取り機で巻き取られるか、次工程に移送する。混合ガスはガス供給手段50で、ガス発生装置51で発生させた混合ガスGを、流量制御して給気口52より放電処理室32のプラズマ放電処理容器31内に入れ、該プラズマ放電処理容器31内を混合ガスGで満たし、放電処理が行われた処理排ガスG′を排気口53より排出するようにする。次に電圧印加手段40で、高周波電源41により角筒型固定電極群36に電圧を印加し、アース電極のロール回転電極35との電極間で放電プラズマを発生させる。ロール回転電極35及び角筒型固定電極群36を電極温度調節手段60を用いて媒体を加熱または冷却し電極に送液する。電極温度調節手段60で温度を調節した媒体を送液ポンプPで配管61を経てロール回転電極35及び角筒型固定電極群36内側から温度を調節する。プラズマ放電処理の際、基材の温度によって得られる薄膜の物性や組成は変化することがあり、これに対して適宜制御することが好ましい。媒体としては、蒸留水、油等の絶縁性材料が好ましく用いられる。プラズマ放電処理の際、幅手方向あるいは長手方向での基材の温度ムラを出来るだけ生じさせないようにロール回転電極35の内部の温度を制御することが望ましい。なお、68及び69はプラズマ放電処理容器31と外界を仕切る仕切板である。
【0046】
図2は、図1に示したロール回転電極の導電性の金属質母材とその上に被覆されている誘電体の構造を示す一例を示す斜視図である。
【0047】
図2において、ロール電極35aの導電性の金属質母材35Aで形成されているロールの表面側に誘電体が被覆されており、中は中空になっていて温度調節が行われるジャケットになっている。
【0048】
図3は、図1に示した角筒型電極の母材とその上に被覆されている誘電体の構造を示す一例を示す斜視図である。
【0049】
図3において、角筒型電極36aは、金属等の導電性の母材に対し、図2同様の誘電体被覆層を有している。角筒型電極36aは中空の金属角型のパイプで、パイプの表面に上記と同様の誘電体を被覆し、放電中は温度調節が行えるようになっている。尚、角筒型固定電極群36の数は、上記ロール回転電極35の円周より大きな円周上に沿って複数本設置されており、放電面積はロール回転電極35に相対している角筒型電極36a面の全面積となる。
【0050】
図3に示した角筒型電極36aは、円筒型(丸型)電極に比べて、放電範囲(放電面積)を広げる効果があるので、本発明の薄膜形成方法に好ましく用いられる。
【0051】
図2及び図3において、ロール電極35a及び角筒型電極36aは、導電性の金属質母材35A及び36Aの表面に、誘電体35B及び36Bを誘電体被覆層とした構造になっている。誘電体被覆層は、セラミックスを溶射後、無機化合物の封孔材料を用いて封孔処理したセラミックス被覆層である。セラミックス被覆誘電体層の厚さは片肉で1mmである。また、溶射に用いるセラミックス材としては、アルミナやアルミナ・窒化珪素等が好ましく用いられるが、この中でもアルミナが加工し易いので、更に好ましく用いられる。
【0052】
または、誘電体層として、ガラスライニングによる無機材料のライニング処理誘電体であってもよい。
【0053】
導電性の金属質母材35A及び36Aとしては、チタン金属またはチタン合金、銀、白金、ステンレススティール、アルミニウム、鉄等の金属等や、鉄とセラミックスとの複合材料またはアルミニウムとセラミックスとの複合材料を挙げることが出来るが、後述の理由からはチタン金属またはチタン合金が好ましい。
【0054】
対向電極間距離は、導電性の金属質母材に設けた誘電体の厚さ、印加電圧の大きさ、プラズマを利用する目的等を考慮して決定されるが、電極の一方に誘電体を設けた場合には誘電体表面と導電性の金属質母材表面の最短距離、また上記電極の双方に誘電体を設けた場合には誘電体表面同士の距離で、いずれの場合も均一な放電を行う観点から0.5〜20mmが好ましく、特に好ましくは1±0.5mmである。
【0055】
本発明に有用な導電性の金属質母材及び誘電体についての詳細については後述する。
【0056】
プラズマ放電処理容器31はパイレックス(R)ガラス製の処理容器等が好ましく用いられるが、電極との絶縁がとれれば金属製を用いることも可能である。例えば、アルミニウムまたは、ステンレススティールのフレームの内面にポリイミド樹脂等を張り付けても良く、該金属フレームにセラミックス溶射を行い絶縁性をとっても良い。
【0057】
図4は、本発明に係る大気圧プラズマ放電処理装置の一例を示す概略図である。
【0058】
高周波電源141により高周波電圧を印加する印加電極101とアース電極102の対向電極間(放電空間)103に混合ガスGを導入し、放電空間で放電を起こさせ、そこで励起またはプラズマ状態の混合ガスG°(点線で表している)がジェット状に下方に流れ(ジェット方式)、電極と基材との間の処理空間104において静置してある基材F(例えば、ガラス板)または移送して来る基材F(例えば、フィルム)上に透明導電性薄膜を形成させる。フィルム状の基材Fは、図示してない基材の元巻ロールから巻きほぐされて搬送されるか、あるいは前工程から搬送されて来る。また、ガラス板のような基材Fもベルトコンベアのような移動体の上に載せて移送し処理してもよい。G′は処理排ガスである。101A及び102Aは印加電極101及びアース電極102の導電性の金属質母材であり、101B及び102Bは誘電体である。図4のジェット方式のプラズマ放電装置100は、図示してないが、図1のガス供給手段50及び電極温度調節手段60を有している。また電極の内部も中空となって温度調節用のジャケットになっている。
【0059】
図5は、本発明に係る大気圧プラズマ放電処理装置の一例を示す概略図である。図5においては、放電ガスと薄膜形成ガスを混合せずに、放電ガスを放電空間に、薄膜形成ガスを直接処理空間に導入する方式の装置である。両側に印加電極201があり、その間にアース電極202がある。アース電極202は中央に薄膜形成ガスG1を通過させるスリット204を有している。アース電極202の外側の壁と印加電極201の内側の壁とで形成される二つのスリットが放電空間203となっている。放電空間203に放電ガスG2を満たし、高周波電源241から両方の放電空間203に高周波電圧を印加し、放電ガスG2を励起またはプラズマ状態としてジェット状に下方(紙面下側)に吹き出させ、基材(この場合フィルム状の基材)と電極底面とで形成される処理空間205で薄膜形成ガスG1が励起またはプラズマ状態の放電ガスと接触し、エネルギーの授受が行われ薄膜形成ガスが励起またはプラズマ状態となり、該励起またはプラズマ状態の薄膜形成ガスG°に基材を晒して薄膜形成が行われる。この様な放電ガスと薄膜形成ガスを分けて導入する装置においては添加ガスは放電ガスとともに或いは、薄膜形成ガスと混合して導入される。図5においては、図1と同様なプラズマ放電放電容器、電極温度調節手段、ガス供給手段等が省略されている。
【0060】
図6は、本発明の薄膜形成装置の一例を示す概略図である。
図6の左側は図1と同様のものであり、番号等は省略されている。プラズマ処理装置30で薄膜形成された基材Fが次の還元性ガス処理装置300に導入され、ロール状の回転ドラム301およびカバー303の間に形成された還元性ガス処理空間302において、ロール状の回転ドラムに巻き回されている基材Fの薄膜形成面を還元性ガスAGに晒すことによって薄膜に対する還元性ガス処理が行われる。図6の様な処理装置を交互につなげれば、薄膜形成と還元性ガス処理とを交互に行うことが出来る。304は還元性ガスの給気口、306はニップロール、307は遮蔽板、308はガイドロールである。還元性ガス処理装置300は図6のような形でなくともよく、例えば、箱形の処理箱の中にロールを上下に互い違いに設置し、基材Fをロールを通して引き回して処理するような空間であってもよく、これらに限定されない。
【0061】
図7は、本発明の薄膜形成装置の別の一例を示す概略図である。
図7は、図4とプラズマ放電処理装置100と図6の還元性ガス処理装置300を組み合わせたような装置であるが、プラズマ放電処理装置100がプラズマ放電処理容器110の内部に設置されている。111及び112はニップロールで外界と遮断をしており、115は混合ガス給気口、116は処理済みガス排気口である。なお、図4のプラズマ放電処理装置100の金属質母材と誘電体は図7においては省略されている。
【0062】
図8は、本発明の薄膜形成装置の別の一例を示す概略図である。
図8は、基材をガラス板とした場合の大気圧プラズマ放電薄膜形成と還元性ガス処理を行う装置である。図8では、プラズマ放電処理装置100の隣に還元性ガス処理室400が配置されており、基材がフィルムのような連続処理が出来るのと異なり、ガラス板の場合には毎葉処理となるので、基材を載せたまま各室間を移動処理出来る移動架台108を有している。プラズマ放電処理装置100は図4(101A、102A、101B及び102Bについては省略してある)と同様であるので符号の説明は省略するが、プラズマ放電処理容器110の中に有り、基材Fとしてのガラス板は移動架台108の上に静置してしてある。薄膜形成後ガラス板(基材F)は、移動架台108ごとゲート119を開けて隣の予備室420に移り、更にゲート419を開け、ゲート119を閉めると同時に還元性ガス処理室400内に入る。還元性ガス処理室400を還元性ガスで満たし、移動した移動架台108′の上のガラス板である基材F′の薄膜表面を還元性ガスに晒した後、再び予備室420を通ってプラズマ放電処理装置100で、還元された薄膜表面の上に薄膜を形成させ、また更に薄膜形成後、還元性ガス処理を繰り返せるようになっている。
【0063】
図9は、本発明の薄膜形成装置の一例を示す概略図である。
図9は、図8と異なり電極の中央に放電ガス、薄膜形成ガス等を含有する混合ガスGを通すスリット503を有する印加電極501と移動架台が電極となっている移動架台電極502とで対向電極を構成している。スリットの出口505から放電空間504に吹き出た放電主にガスと薄膜形成ガスを含有する混合ガスが、印加電極501底面と移動架台電極502の間隙で形成する放電空間504で先ず放電ガスがプラズマ状態となり、続いて薄膜形成ガス、添加ガス等からなる混合ガスがプラズマ状態となる(G°)。移動している移動架台電極502上の基材Fは該混合ガスプラズマG°に晒される。薄膜形成後、ゲート519を開き予備室530に基材Fを載せたまま移動架台電極502が移動し、次にゲート519を閉じて、ゲート529を開き還元性ガス処理装置520に移動して、ゲート529を閉じ、基材Fの薄膜表面を還元性ガスAGに晒す。所定時間の還元性ガス処理終了後ゲート529を開き移動架台電極502′(ここでは電極としての働きはない)予備室530に入り、ゲート529を閉め、還元性ガスAGが残らないように、ガスを不活性ガス等で置き換え、ゲート519を開き、移動架台電極502を大気圧プラズマ放電処理装置500内に入り、図9に描いてある移動架台電極の位置に止まり、再び薄膜形成を行い、同様な薄膜形成と還元性ガス処理を繰り返す。ここで、510はチャンバー、515は混合ガスGの供給口である。
【0064】
図10は、本発明の薄膜形成装置の一例を示す概略図であり、還元性ガス処理手段を内蔵している大気圧プラズマ放電処理装置でもある。
【0065】
図10の大気圧プラズマ放電処理装置600は、図1のそれと同様にロール回転電極635と複数の角筒型電極からなる角筒型固定電極群636とで構成する対向電極を有するが、大きく異なるところは、角筒型固定電極群636の角筒型電極の間隔が開いていて、隣の角筒型電極との間には還元性ガス処理手段の還元性ガス吹き出し管637があることである。また、図10の角筒型電極は図3のような構造とは異なり、また図9の電極と似ており、混合ガスを通すスリットが該電極の中央部分にあり、放電空間632は該角筒型電極底面のロール回転電極635に相対する面とロール回転電極面との間の電極間隙となっている。ロール回転電極635の円弧より大きな同心円上に角筒型電極群636の各電極と還元性ガス吹き出し口637が交互に配列されており、放電空間632と還元性ガスの処理空間633が交互にあり、プラズマ放電処理による薄膜形成と還元性ガス処理が交互に行われるようになっている。還元性ガスの処理空間は還元性ガス吹き出し管637とロール回転電極635の面との間の空間である。角筒型固定電極群636への混合ガスの供給は、供給管652から配管653,654を通して行われる。また、還元性ガス吹き出し管637への還元性ガスの供給は還元性ガス供給管655(点線で表されている)から配管656,657を通して行われる。フィルムである基材Fは、ガイドロール664でロール回転電極の曲面に密着される。ニップロール665と仕切板668とで外界とチャンバー631とを遮断している。基材Fはロール回転電極635と同期して巻き回され、その間でプラズマ状態となった薄膜形成ガスを含む混合ガスにより巻き回されているフィルムである基材F上に薄膜が形成され、続いて次の還元性ガス処理を受け、次に再び薄膜が形成され、続いて還元性ガス処理を受けるというように、薄膜形成と還元性ガス処理を交互に行いながら電極の数だけ繰り返される。なお、Gは混合ガス、G°はプラズマ状態の混合ガス、AGは還元性ガス、G′は処理済みガス、666はニップロール、667は仕切板、668はガイドロールであり、基材Fとしてのフィルムは系外に出る。また、高周波電源641からは角筒型固定電極群の電極全てに電界が印加出来るように線で結ばれている(図示してない)。
【0066】
図11は、図10の部分拡大図である。
図11は、図10の角筒型固定電極群636の電極及び還元性ガス吹き出し管637のロール回転電極635曲面付近の部分拡大図としてより詳細に示した。635Aはロール電極の導電性金属質母材、635Bはロール電極に被覆された誘電体636Aは角筒型電極の導電性金属質母材、636Bは角筒型電極に被覆された誘電体、638は還元性ガス吸引管である。還元性ガス吸引管638は、還元性ガス処理空間から還元性ガスが放電空間に行かないように吸引する役目をしている。還元性ガス吸引管の排気口は略されている。
【0067】
本発明において、還元性ガス処理後の次の薄膜形成も前の薄膜形成と同一のものを行う場合と異なる薄膜を形成させる場合とがあるが、同一薄膜を薄く幾層にも還元性ガス処理を行い積層することが好ましい。
【0068】
次に、本発明の透明導電薄膜を形成するハイパワーの大気圧プラズマ放電薄膜形成条件、大気圧プラズマ放電処理装置の電極について述べる。
【0069】
本発明に係るハイパワーの大気圧プラズマ放電薄膜形成方法は、対向する電極間に印加する高周波電圧は、100kHzを越えた高周波電圧で、且つ、1W/cm2以上の電力密度を供給し、放電ガスを励起してプラズマを発生させるものである。
【0070】
本発明において、対向電極間に印加する高周波電圧の周波数の上限値は、好ましくは150MHz以下であり、より好ましくは15MHz以下である。また、高周波電圧の周波数の下限値としては、好ましくは200kHz以上、より好ましくは800kHz以上である。
【0071】
また、電極間に供給する電力密度の上限値とは、好ましくは50W/cm2以下、より好ましくは20W/cm2以下である。下限値は、好ましくは1.2W/cm2以上である。尚、放電面積(cm2)は、電極において放電が起こる範囲の面積のことを指す。
【0072】
高周波電源より印加電極に印加される電圧の値は適宜決定されるが、例えば、電圧が10V〜10kV程度で、上記のように電源周波数は100kHzを越えて150MHz以下に調整される。
【0073】
本発明に有用な電源の印加法に関しては、連続モードと呼ばれる連続サイン波状の連続発振モードである。
【0074】
本発明においては、このような電圧を印加して、均一なグロー放電状態を保つことが出来る電極をプラズマ放電処理装置に採用する必要がある。
【0075】
本発明においては、印加電極に電圧を印加する電源としては、ハイパワーの電圧を掛けられる電源であれば、特に限定はないが、パール工業製高周波電源(200kHz)、パール工業製高周波電源(800kHz)、パール工業製高周波電源(2MHz)、パール工業製高周波電源(13.56MHz)、パール工業製高周波電源(27MHz)、パール工業製高周波電源(150MHz)等が好ましく使用出来る。より好ましくは、100kHz超〜150MHzの高周波電源であり、更に好ましくは、800kHz〜27MHzのものである。
【0076】
このようなハイパワーの大気圧プラズマ放電処理装置に使用する電極は、構造的にも、性能的にも過酷な条件に耐えられるものでなければならないので、下記のような導電性の金属質母材上に誘電体を被覆した電極が好ましい。
【0077】
本発明に使用する誘電体被覆電極においては、様々な導電性の金属質母材と誘電体との間に特性が合うものが好ましく、その一つの特性として、導電性の金属質母材と誘電体との線熱膨張係数の差が10×10−6/℃以下となる組み合わせのものである。好ましくは8×10−6/℃以下、さらに好ましくは5×10−6/℃以下、さらに好ましくは2×10−6/℃以下である。尚、線熱膨張係数とは、周知の材料特有の物性値である。
【0078】
線熱膨張係数の差が、この範囲にある導電性の金属質母材と誘電体との組み合わせとしては、
▲1▼導電性の金属質母材が純チタンまたはチタン合金で、誘電体がセラミックス溶射被膜
▲2▼導電性の金属質母材が純チタンまたはチタン合金で、誘電体がガラスライニング
▲3▼導電性の金属質母材がステンレススティールで、誘電体がセラミックス溶射被膜
▲4▼導電性の金属質母材がステンレススティールで、誘電体がガラスライニング
▲5▼導電性の金属質母材がセラミックスおよび鉄の複合材料で、誘電体がセラミックス溶射被膜
▲6▼導電性の金属質母材がセラミックスおよび鉄の複合材料で、誘電体がガラスライニング
▲7▼導電性の金属質母材がセラミックスおよびアルミの複合材料で、誘電体がセラミックス溶射皮膜
▲8▼導電性の金属質母材がセラミックスおよびアルミの複合材料で、誘電体がガラスライニング
等がある。線熱膨張係数の差という観点では、上記▲1▼または▲2▼、及び▲5▼〜▲8▼が好ましく、特に▲1▼が好ましい。
【0079】
本発明において、導電性の金属質母材は、上記の特性からはチタンまたはチタン合金が特に有用である。導電性の金属質母材をチタンまたはチタン合金とすることにより、誘電体を上記とすることにより、使用中の電極の劣化、特にひび割れ、剥がれ、脱落等がなく、過酷な条件での長時間の使用に耐えることが出来る。
【0080】
本発明に有用な電極の導電性の金属質母材は、チタンを70質量%以上含有するチタン合金またはチタン金属である。本発明において、チタン合金またはチタン金属中のチタンの含有量は、70質量%以上であれば、問題なく使用出来るが、好ましくは80質量%以上のチタンを含有しているものが好ましい。本発明に有用なチタン合金またはチタン金属は、工業用純チタン、耐食性チタン、高力チタン等として一般に使用されているものを用いることが出来る。工業用純チタンとしては、TIA、TIB、TIC、TID等を挙げることが出来、何れも鉄原子、炭素原子、窒素原子、酸素原子、水素原子等を極僅か含有しているもので、チタンの含有量としては、99質量%以上を有している。耐食性チタン合金としては、T15PBを好ましく用いることが出来、上記含有原子の他に鉛を含有しており、チタン含有量としては、98質量%以上である。また、チタン合金としては、鉛を除く上記の原子の他に、アルミニウムを含有し、その他バナジウムや錫を含有しているT64、T325、T525、TA3等を好ましく用いることが出来、これらのチタン含有量としては、85質量%以上を含有しているものである。これらのチタン合金またはチタン金属はステンレススティール、例えばAISI316に比べて、熱膨張係数が1/2程度小さく、導電性の金属質母材としてチタン合金またはチタン金属の上に施された後述の誘電体との組み合わせがよく、高温、長時間での使用に耐えることが出来る。
【0081】
一方、誘電体の求められる特性としては、具体的には、比誘電率が6〜45の無機化合物であることが好ましく、また、このような誘電体としては、アルミナ、窒化珪素等のセラミックス、あるいは、ケイ酸塩系ガラス、ホウ酸塩系ガラス等のガラスライニング材等がある。この中では、後述のセラミックスを溶射したものやガラスライニングにより設けたものが好ましい。特にアルミナを溶射して設けた誘電体が好ましい。
【0082】
または、上述のような大電力に耐える仕様の一つとして、誘電体の空隙率が10体積%以下、好ましくは8体積%以下であることで、好ましくは0体積%を越えて5体積%以下である。なお、誘電体の空隙率は、BET吸着法や水銀ポロシメーターにより測定することが出来る。後述の実施例においては、島津製作所製の水銀ポロシメーターにより金属質母材に被覆された誘電体の破片を用い、空隙率を測定する。誘電体が、低い空隙率を有することにより、高耐久性が達成される。このような空隙を有しつつも空隙率が低い誘電体としては、後述の大気圧プラズマ溶射法等による高密度、高密着のセラミックス溶射被膜等を挙げることが出来る。更に空隙率を下げるためには、封孔処理を行うことが好ましい。
【0083】
上記、大気圧プラズマ溶射法は、セラミックス等の微粉末、ワイヤ等をプラズマ熱源中に投入し、溶融または半溶融状態の微粒子として被覆対象の金属質母材に吹き付け、皮膜を形成させる技術である。プラズマ熱源とは、分子ガスを高温にし、原子に解離させ、さらにエネルギーを与えて電子を放出させた高温のプラズマガスである。このプラズマガスの噴射速度は大きく、従来のアーク溶射やフレーム溶射に比べて、溶射材料が高速で金属質母材に衝突するため、密着強度が高く、高密度な被膜を得ることが出来る。詳しくは、特開2000−301655に記載の高温被曝部材に熱遮蔽皮膜を形成する溶射方法を参照することが出来る。この方法により、上記のような被覆する誘電体(セラミック溶射膜)の空隙率にすることが出来る。
【0084】
また、大電力に耐える別の好ましい仕様としては、誘電体の厚みが0.5〜2mmであることである。この膜厚変動は、5%以下であることが望ましく、好ましくは3%以下、さらに好ましくは1%以下である。
【0085】
誘電体の空隙率をより低減させるためには、上記のようにセラミックス等の溶射膜に、更に、無機化合物で封孔処理を行うことが好ましい。前記無機化合物としては、金属酸化物が好ましく、この中では特に酸化ケイ素(SiOx)を主成分として含有するものが好ましい。
【0086】
封孔処理の無機化合物は、ゾルゲル反応により硬化して形成したものであることが好ましい。封孔処理の無機化合物が金属酸化物を主成分とするものである場合には、金属アルコキシド等を封孔液として前記セラミック溶射膜上に塗布し、ゾルゲル反応により硬化する。無機化合物がシリカを主成分とするものの場合には、アルコキシシランを封孔液として用いることが好ましい。
【0087】
ここでゾルゲル反応の促進には、エネルギー処理を用いることが好ましい。エネルギー処理としては、熱硬化(好ましくは200℃以下)や、紫外線照射などがある。更に封孔処理の仕方として、封孔液を希釈し、コーティングと硬化を逐次で数回繰り返すと、よりいっそう無機質化が向上し、劣化の無い緻密な電極が出来る。
【0088】
本発明に係る誘電体被覆電極の金属アルコキシド等を封孔液として、セラミックス溶射膜にコーティングした後、ゾルゲル反応で硬化する封孔処理を行う場合、硬化した後の金属酸化物の含有量は60モル%以上であることが好ましい。封孔液の金属アルコキシドとしてアルコキシシランを用いた場合には、硬化後のSiOx(xは2以下)含有量が60モル%以上であることが好ましい。硬化後のSiOx含有量は、XPSにより誘電体層の断層を分析することにより測定する。
【0089】
本発明の薄膜形成方法に係る電極においては、電極の少なくとも基材と接する側のJIS B 0601で規定される表面粗さの最大高さ(Rmax)が10μm以下になるように調整することが、本発明に記載の効果を得る観点から好ましいが、更に好ましくは、表面粗さの最大値が8μm以下であり、特に好ましくは、7μm以下に調整することである。このように誘電体被覆電極の誘電体表面を研磨仕上げする等の方法により、誘電体の厚み及び電極間のギャップを一定に保つことができ、放電状態を安定化出来ること、更に熱収縮差や残留応力による歪やひび割れを無くし、且つ、高精度で、耐久性を大きく向上させることが出来る。誘電体表面の研磨仕上げは、少なくとも基材と接する側の誘電体において行われることが好ましい。更にJIS B 0601で規定される中心線平均表面粗さ(Ra)は0.5μm以下が好ましく、更に好ましくは0.1μm以下である。
【0090】
本発明に使用する誘電体被覆電極において、大電力に耐える他の好ましい仕様としては、耐熱温度が100℃以上であることである。更に好ましくは120℃以上、特に好ましくは150℃以上である。なお、耐熱温度とは、絶縁破壊が発生せず、正常に放電出来る状態において耐えられる最も高い温度のことを指す。このような耐熱温度は、上記のセラミックス溶射や、泡混入量の異なる層状のガラスライニングで設けた誘電体を適用したり、下記金属質母材と誘電体の線熱膨張係数の差の範囲内の材料を適宜選択する手段を適宜組み合わせることによって達成可能である。
【0091】
次に、本発明の透明導電性薄膜を形成するガスについて説明する。使用するガスは、基本的に放電ガス及び薄膜形成ガスを構成成分とするガスである。
【0092】
放電ガスは、放電空間において励起状態またはプラズマ状態となり薄膜形成ガスにエネルギーを与えて励起またはプラズマ状態にする役割を行うもので、希ガスまたは窒素ガスである。希ガスとしては、周期表の第18属元素、具体的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン等を挙げることが出来るが、本発明に記載の緻密で、低比抵抗値を有する薄膜を形成する効果を得るためには、ヘリウム、アルゴンが好ましく用いられる。放電ガスは、全ガス100体積%に対し、90.0〜99.9体積%含有されることが好ましい。
【0093】
薄膜形成ガスは、放電空間で放電ガスからエネルギーを受け励起状態またはプラズマ状態となり、透明導電性薄膜を形成するガスであり、または反応を制御したり、反応を促進したりするガスでもある。
【0094】
本発明においては、薄膜形成ガスは少なくとも有機金属化合物を含有している。また有機金属化合物から形成される金属酸化物にドーピングするドーピング用有機金属化合物を加える場合があり、同様な有機金属化合物が使用される。
【0095】
本発明に有用な有機金属化合物は下記の一般式(I)で示すものから選ばれるものであることが好ましい。
【0096】
一般式(I) R1 xMR2 yR3 z
式中、Mは金属、R1はアルキル基、R2はアルコキシ基、R3はβ−ジケトン錯体基、β−ケトカルボン酸エステル錯体基、β−ケトカルボン酸錯体基及びケトオキシ基(ケトオキシ錯体基)から選ばれる基であり、金属Mの価数をmとすると、x+y+z=mであり、x=0〜m、好ましくはx=0〜m−1であり、y=0〜m、z=0〜mであり、何れも0または正の整数である。R1のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等を挙げることが出来、R2のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、3,3,3−トリフルオロプロポキシ基等を挙げることが出来る。また、R3のβ−ジケトン錯体基、β−ケトカルボン酸エステル錯体基、β−ケトカルボン酸錯体基及びケトオキシ基(ケトオキシ錯体基)から選ばれる基としては、β−ジケトン錯体基として、例えば、2,4−ペンタンジオン(アセチルアセトンあるいはアセトアセトンともいう)、1,1,1,5,5,5−ヘキサメチル−2,4−ペンタンジオン、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン、1,1,1−トリフルオロ−2,4−ペンタンジオン等を挙げることが出来、β−ケトカルボン酸エステル錯体基として、例えば、アセト酢酸メチルエステル、アセト酢酸エチルエステル、アセト酢酸プロピルエステル、トリメチルアセト酢酸エチル、トリフルオロアセト酢酸メチル等を挙げることが出来、β−ケトカルボン酸として、例えば、アセト酢酸、トリメチルアセト酢酸等を挙げることが出来、またケトオキシとして、例えば、アセトオキシ基(またはアセトキシ基)、プロピオニルオキシ基、ブチリロキシ基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基等を挙げることが出来る。これらの基の炭素原子数は、上記例有機金属示化合物を含んで、18以下が好ましい。また例示にもあるように直鎖または分岐のもの、また水素原子をフッ素原子に置換したものでもよい。
【0097】
本発明において取り扱いの問題から、爆発の危険性の少ない有機金属化合物が好ましく、分子内に少なくとも一つ以上の酸素を有する有機金属化合物が好ましい。このようなものとしてR2で表されるアルコキシ基を少なくとも一つ含有する有機金属化合物、またR3のβ−ジケトン錯体基、β−ケトカルボン酸エステル錯体基、β−ケトカルボン酸錯体基及びケトオキシ基(ケトオキシ錯体基)から選ばれる基を少なくとも一つ有する金属化合物が好ましい。
【0098】
本発明に使用し得る有機金属化合物の金属は、特に制限ないが、インジウム(In)、錫(Sn)、亜鉛(Zn)、ジルコニウム(Zr)、アルミニウム(Al)及びアンチモン(Sb)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)から選ばれる少なくとも1種の金属が好ましく、インジウム、亜鉛及び錫から選ばれる少なくとも1種の金属が特に好ましい。
【0099】
本発明において、上記の好ましい有機金属化合物の例としては、インジウムトリス2,4−ペンタンジオナート(あるいは、トリスアセトアセトナートインジウム)、インジウムトリスヘキサフルオロペンタンジオナート、メチルトリメチルアセトキシインジウム、トリアセトアセトオキシインジウム、トリアセトオキシインジウム、ジエトキシアセトアセトオキシインジウム、インジウムトリイソポロポキシド、ジエトキシインジウム(1,1,1−トリフルオロペンタンジオナート)、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナート)インジウム、エトキシインジウムビスアセトメチルアセタート、ジ(n)ブチルビス(2,4−ペンタンジオナート)錫、ジ(n)ブチルジアセトオキシ錫、ジ(t)ブチルジアセトオキシ錫、テトライソプロポキシ錫、テトラ(i)ブトキシ錫、亜鉛2,4−ペンタンジオナート等を挙げることが出来、何れも好ましく用いることが出来る。
【0100】
この中で特に、インジウムトリス2,4−ペンタンジオナート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナート)インジウム、亜鉛ビス2,4−ペンタンジオナート、ジ(n)ブチルジアセトオキシ錫が好ましい。これらの有機金属化合物は一般に市販(例えば、東京化成工業(株)等から)されている。
【0101】
これらの有機金属化合物の薄膜形成ガスは全ガス中で0.01〜10体積%含有されることが好ましく、より好ましくは0.1〜3体積%である。
【0102】
本発明において、該有機金属化合物から形成される透明導電性薄膜の導電性を更に高めるためのドーピング用有機金属化合物またはドーピング用フッ素化合物を混合ガスに含有させることが好ましい。ドーピング用有機金属化合物またはドーピング用フッ素化合物の薄膜形成ガスとしては、例えば、トリイソプロポキシアルミニウム、ニッケルトリス2,4−ペンタンジオナート、マンガンビス2,4−ペンタンジオナート、ボロンイソプロポキシド、トリ(n)ブトキシアンチモン、トリ(n)ブチルアンチモン、ジ(n)ブチル錫ビス2,4−ペンタンジオナート、ジ(n)ブチルジアセトオキシ錫、ジ(t)ブチルジアセトオキシ錫、テトライソプロポキシ錫、テトラブトキシ錫、テトラブチル錫、亜鉛2,4−ペンタンジオナート、六フッ化プロピレン、八フッ化シクロブタン、四フッ化メタン等を挙げることが出来る。
【0103】
また、本発明の透明導電性薄膜の形成においては、薄膜形成ガスに添加ガスとして、酸化性ガスを導入することが好ましい。
【0104】
酸化性ガスとしては、酸素、オゾン、過酸化水素、二酸化炭素等を挙げることが出来る。これらの単体または混合したガスでも良い。好ましくは酸素と窒素の混合ガスが好ましい。これらのガスはヘリウム、アルゴン等の希ガス或いは窒素から選ばれる放電ガスと混合した混合ガスとして供給してもよいし、或いは、金属化合物等、本発明に係わる薄膜形成ガスに混合して用いてもよい、これら酸化性ガスの混合ガス全体に対する成分の濃度は0.0001〜1.0体積%、好ましくは0.001〜0.1体積%、更に好ましくは0.001〜0.05体積%である。混合される酸化性ガスの濃度が余り高いと金属酸化物膜の形成速度が大きすぎ、多結晶化が進みすぎ、成膜のコントロールが難しくなり、還元性ガスによる反応が低下するため抵抗が下がらなくなる。また低すぎる場合には、得られる金属酸化物膜の透明性が低下し、成膜後の還元性ガスによる処理によっても充分な透明性を得ることが出来ない。
【0105】
酸化性ガス種、及び窒素、ヘリウム、アルゴンから選ばれる気体と混合した場合の酸化性ガス濃度の最適値は上記の範囲で、基材温度、酸化処理回数、処理時間によって適宜条件を選択することが出来る。
【0106】
なお、本発明においては、放電ガス及び薄膜形成ガス、更に上記の様な添加ガスを混合した混合ガスを用いて薄膜を形成するが、別の態様として、これらのガスを混合しないで、別々にして放電ガスを放電空間に、また処理空間に薄膜形成ガスを導入してもよい。
【0107】
前記透明導電性薄膜を形成するに必要な有機金属化合物と上記ドーピング用の薄膜形成ガスの比は、形成する透明導電性薄膜の種類により異なるが、例えば、酸化インジウムに錫をドーピングして得られるITO膜においては、In:Snの原子数比が100:0.1〜100:15の範囲になるように薄膜形成ガス量を調整することが必要である。好ましくは、100:0.5〜100:10になるよう調整することが好ましい。酸化錫にフッ素をドーピングして得られる透明導電性薄膜(フッ素ドープ酸化錫膜をFTO膜という)においては、得られたFTO膜のSn:Fの原子数比が100:0.01〜100:50の範囲になるよう薄膜形成ガスの量比を調整することが好ましい。In2O3−ZnO透明導電性薄膜においては、In:Znの原子数比が100:50〜100:5の範囲になるよう薄膜形成ガスの量比を調整することが好ましい。In:Sn、Sn:F及びIn:Znの各原子数比はXPS測定によって求めることが出来る。
【0108】
本発明において、得られる透明導電性薄膜は、例えば、SnO2、In2O3、ZnOの酸化物膜、またはSbドープSnO2、FTO、AlドープZnO、ZnドープIn(IZO)、ZrドープIn、ITO等ドーパントによりドーピングされた複合酸化物を挙げることが出来、これらから選ばれる少なくとも一つを主成分とするアモルファス膜が好ましい。またその他にカルコゲナイド、LaB6、TiN、TiC等の非酸化物膜、Pt、Au、Ag、Cu等の金属膜、CdO等の透明導電性薄膜を挙げることが出来る。
【0109】
本発明に使用する還元性ガスは、形成された薄膜を還元するためのガスで、薄膜の表面ばかりでなく、内部も還元を促進させるために薄膜形成を出来るだけ薄くし、その面を還元性ガスで処理し、このような薄膜形成と還元性ガス処理を繰り返すことによって、薄膜中の金属の濃度を高めてキャリア密度を高めるように作用する。これにより緻密且つ均一で、導電性が高く、残渣のない良好なエッチング特性を有する膜をうることが出来る。
【0110】
還元性ガスとしては、水素、メタン等の炭化水素、水から選ばれる還元性ガスであり、これらの単体または混合したガスでも良い。またこれらのガスを窒素、ヘリウム、アルゴンから選ばれる気体と混合してもよい。混合したガス中の還元性ガス成分の濃度は1〜99体積%、好ましくは10〜50体積%、更に好ましくは20〜40体積%である。還元性ガス種、及び窒素、ヘリウム、アルゴンから選ばれる気体と混合した場合の還元性ガス濃度の最適値は基材温度、酸化処理回数、処理時間によって適宜条件を選択することが出来る。
【0111】
薄膜形成ガスまたは放電ガスに還元性ガスを混合して大気圧プラズマCVDを行うよりも、薄膜形成後に還元性ガスで処理する方が、特に透明性に優れた導電性薄膜を得ることができる。この様に、プラズマCVD法により成膜した薄膜に、更に還元性ガスによる処理で、別の異なった作用を及ぼすことが出来る。
【0112】
還元性ガスの温度は、素材の耐熱性が許す範囲、成膜温度にもよるが、できるだけ高温にすることが好ましい。例えばガラス基板の場合、100〜300℃が好ましく、フィルムでは、50〜200℃が好ましい。この温度内で成膜時の基板温度にあわせて還元性ガスの温度を選択する。
【0113】
本発明の透明導電性薄膜を有する物品の製造方法により得られる透明導電性薄膜は、高い透過率に加えて、高いキャリア移動度を有する特徴をもつ。よく知られているように透明導電性薄膜の電気伝導率は以下の(1)式で表される。
【0114】
σ=n×e×μ (1)
ここで、σは電気伝導率、nはキャリア密度、eは電子の電気量、そしてμはキャリアの移動度である。電気伝導率σを上げるためにはキャリア密度nあるいはキャリア移動度μを増大させる必要があるが、キャリア密度nを増大させていくと2×1021cm−3付近から反射率が大きくなるため透明性が失われる。そのため、電気伝導率σを増大させるためにはキャリア移動度μを増大させる必要がある。本発明の透明導電性薄膜の形成方法によれば条件を最適化することにより、DCマグネトロンスパッタリング法により形成された透明導電性薄膜に近いキャリア移動度μを有する透明導電性薄膜を形成することが可能であることが判明した。
【0115】
本発明の透明導電性薄膜の形成方法は高いキャリア移動度μを有するため、ドーピングなしでも比抵抗値として1×10−3Ω・cm以下の比抵抗値の透明導電性薄膜を得ることが出来る。ドーピングを行いキャリア密度nを増加させることで更に比抵抗値を下げることが出来る。また、必要に応じて比抵抗値を上げる薄膜形成ガスを用いることにより、比抵抗値として1×10−2Ω・cm以上の高比抵抗値の透明導電性薄膜を得ることも出来る。透明導電性薄膜の比抵抗値を調整するために用いる薄膜形成ガスとしては、例えば、チタントリイソプロポキシド、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン等を挙げることが出来る。
【0116】
本発明の透明導電性薄膜の形成方法によって得られる透明導電性薄膜は、キャリア密度nが、1×1019cm−3以上、より好ましい条件下においては、1×1020cm−3以上となるが、透明性は低下しない。
【0117】
本発明の優れた効果の一つとして、エッチングがある。各種ディスプレイ素子を電極として用いる場合、基板上に回路を描くパターニング工程は必須なものであり、パターニングが容易に行うことが出来るかが工程適性上重要な課題となっている。一般に、パターニングはフォトリソグラフィー法により行われることが多く、導通を必要としない部分はエッチングにより溶解、除去するため、該部分のエッチング液による溶解の速さ及び残渣のないことが重要な課題となっている。エッチング液には、通常、硝酸、塩酸、塩酸と硝酸の混酸、フッ酸、塩化第二鉄水溶液等が用いられ、これらのウェットエッチングする方法が主流である。
【0118】
透明性導電性薄膜として、上記形成された酸化物または複合酸化物の薄膜の膜厚は、0.1〜1000nmの範囲が好ましい。
【0119】
本発明の透明導電性フィルムの基材について説明する。
本発明の透明導電性フィルムを形成する基材としては、薄膜をその表面に形成出来るものであれば特に限定はない。基材が静置状態でも移送状態でもプラズマ状態の混合ガスに晒され、均一の薄膜が形成されるものであれば基材の形態または材質には制限ない。樹脂フィルムが本発明には適している。材質的には、樹脂としては、樹脂フィルム、樹脂シート、樹脂板等を挙げることが出来る。
【0120】
樹脂フィルムは本発明に係る大気圧プラズマ放電処理装置の電極間または電極の近傍を連続的に移送させて透明導電性薄膜を形成することが出来るので、スパッタリングのような真空系のようなバッチ式でない、大量生産に向き、連続的な生産性の高い生産方式として好適である。
【0121】
樹脂フィルム、樹脂シート、樹脂レンズ、樹脂成形物等成形物の材質としては、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルロースアセテートプロピオネートまたはセルロースアセテートブチレートのようなセルロースエステル、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートのようなポリエステル、ポリエチレンやポリプロピレンのようなポリオレフィン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコールコポリマー、シンジオタクティックポリスチレン、ポリカーボネート、ノルボルネン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリエーテルイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、ポリメチルアクリレート、アクリレートコポリマー等を挙げることが出来る。
【0122】
これらの素材は単独であるいは適宜混合されて使用することも出来る。中でもゼオネックスやゼオノア(日本ゼオン(株)製)、非晶質シクロポリオレフィン樹脂フィルムのARTON(日本合成ゴム(株)製)、ポリカーボネートフィルムのピュアエース(帝人(株)製)、セルローストリアセテートフィルムのコニカタックKC4UX、KC8UX(コニカ(株)製)などの市販品を好ましく使用することが出来る。更に、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルフォン及びポリエーテルスルフォンなどの固有複屈折率の大きい素材であっても、溶液流延成膜、溶融押し出し成膜等の条件、更には縦、横方向に延伸条件等を適宜設定することにより使用することが出来るものを得ることが出来る。
【0123】
これらのうち光学的に等方性に近いセルロースエステルフィルムが本発明の透明導電性フィルムに好ましく用いられる。セルロースエステルフィルムとしては、上記のようにセルローストリアセテートフィルム、セルロースアセテートプロピオネートが好ましく用いられるものの一つである。セルローストリアセテートフィルムとしては市販品のコニカタックKC4UX、KC8UX等が有用である。
【0124】
これらの樹脂の表面にゼラチン、ポリビニルアルコール、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、セルロースエステル樹脂等を塗設したものも使用出来る。またこれら樹脂フィルムの薄膜側に防眩層、クリアハードコート層、防汚層等を設けてもよい。また、必要に応じて接着層、アルカリバリアコート層、ガスバリア層や耐溶剤性層等を設けてもよい。
【0125】
また、本発明に係る基材は、上記の記載に限定されない。フィルム形状のものの膜厚としては10〜1000μmが好ましく、より好ましくは40〜200μmである。
【0126】
【実施例】
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、これらに限定されない。
【0127】
〔評価〕
《透過率》
JIS−R−1635に従い、日立製作所製分光光度計U−4000型を用いて測定を行った。試験光の波長は550nmとした。
【0128】
《比抵抗値》
JIS−R−1637に従い、四端子法により求めた。なお、測定には三菱化学製ロレスタ−GP、MCP−T600を用いた。
【0129】
実施例1
〈電極の作製〉
図4に示したような2個の平板電極(長さ640mm、幅250mm、高さ300mm)を、冷却水による冷却手段を有するチタン合金T64製ジャケットを有する金属質母材の幅方向と高さ方向を有する面を主に、大気圧プラズマ法により高密度、高密着性のアルミナ溶射膜を1mm厚さで被覆し、その後テトラメトキシシランを酢酸エチルで希釈した溶液を塗布乾燥後、紫外線照射により硬化させ封孔処理を行い、表面を平滑にしてRmax5μmとした誘電体(比誘電率10、空隙率5体積%、耐熱性200℃、線熱膨張係数1.8×10−4/℃)となるように製作した。
【0130】
〈薄膜形成装置〉
図8に示した、プラズマ放電処理装置100、予備室420及び還元性ガス処理室400の順に配置し、プラズマ放電装置100の中に、上記2個の印加電極101及びアース電極102を放電空間103(電極間隙)が1.5mmになるように平行に誘電体被覆面を対峙させて設置し、電極101に高周波電源141を、他方の電極102にアースを接続した。2個の電極101及び102の底面(紙面下側)から1.5mm下側に該底面と平行になるように基材Fとしてガラス板を移動架台108の上に静置させる。移動架台108は移動手段(図には示されていない)により水平に平行にプラズマ放電装置100と還元性ガス処理室400の間を往復出来るようになっている。移動架台108上のガラス板(基材F)の端(紙面右側)がスリット出口105(放電空間下端)の真下になるように移動架台108を置く。
【0131】
〈透明導電性ガラス板の作製〉
前記プラズマ放電装置100の放電空間103を103kPaの圧力とし、下記混合ガスGを満たした。基材Fとしては厚さ0.5mm、長さ200mm、幅200mmのソーダガラス板を使用した。下記の透明導電性薄膜用混合ガスを放電空間103に導入し、表1に示した高周波電源を使用し、また電力密度で放電を行った。移動架台108上のガラス板(基材F)の左側をスリット出口105の下に位置させ、膜厚が10〜20nmになるように、ガラス板(基材F)を電極と基材との間の処理空間104においてジェット状の励起またはプラズマ状態の薄膜形成ガスに晒し、1回目の薄膜を形成した。なお、ガラス板(基板F)の温度は250℃とし薄膜形成した。薄膜形成後、移動架台108を、ゲート119を開いて、予備室420に導入し、ゲート119を閉めて、次にゲート419を開いて還元性ガス処理室400に導入してゲート419を閉じて下記の還元性ガスで処理した。その後逆に同様にしてプラズマ放電装置に戻し、膜厚を10〜20nmになるように励起またはプラズマ状態の薄膜形成ガスに晒し、再び予備室、還元性ガス処理室を行き来、往復して、励起またはプラズマ状態の薄膜形成ガス及び還元性ガスに4回ずつ晒して、最終的に80nmの膜厚のITO膜を形成して試料1〜6を作製した。
【0132】
比較例1
図8の薄膜形成装置のかわりに図4に示した大気圧プラズマ放電処理装置を用い、表1に示したように高周波電源、電力密度の一部を変更し、還元性ガス処理を行わなかった以外は実施例1と同様に行い、100nmのITO膜を基材上に形成して、試料No.7、8、9、11及び12を作製した。試料No.10は、使用した電源が高電圧パルス電源(ハイデン研究所社製、半導体素子:IXYS社製、型番IXBH40N160−627Gを使用)で、周波数8kHz、立ち上り時間1μsec、パルス継続時間100μsecのパルス電圧で行った。
【0133】
実施例2
〈電極の作製〉
図1のロール回転電極35に使用するロール電極35a(図2)は、冷却水による冷却手段を有するチタン合金T64製ジャケットロール金属質母材に対して大気圧プラズマ法により高密度、高密着性のアルミナ溶射膜を1mm厚さで被覆し、その後テトラメトキシシランを酢酸エチルで希釈した溶液を塗布乾燥後、紫外線照射により硬化させ封孔処理を行い、表面を平滑にしてRmax5μmとした誘電体(比誘電率10、空隙率5体積%、耐熱性200℃、線熱膨張係数1.8×10−4/℃)を有するロール径1000mmφとなるようにロール回転電極35を製作した。
【0134】
一方、図1の角筒型固定電極群36に使用する角筒型電極36aは、中空の角筒型のチタン合金T64の金属質母材で作製し、上記同様の誘電体を同条件にて被覆し、同様な物性値のものを得た。
【0135】
〈薄膜形成装置〉
図6(図6は符号を省略してあるため図1を参照)に示した、プラズマ放電装置30及び還元性ガス処理装置300を順に配置し、プラズマ放電装置30の中、ロール回転電極35のまわりに電極間隙32(放電空間)が1mmになるように、角筒型電極をロール回転電極35のまわりに、25本配置した(図では10本で示した)角筒型固定電極群36の放電総面積は、150cm(幅手方向の長さ)×4cm(搬送方向の長さ)×25本(電極の数)=15000cm2であった。ロール回転電極は接地し、角筒型固定電極群には高周波電源41をそれぞれ接続した。
【0136】
還元性ガス処理装置300はロール径1000mmφの耐熱性を有する樹脂で被覆されているステンレススティール製の回転ドラム301のまわりにカバー303があり処理室302を還元性ガスで満たせるようになっている。該カバー303の末端にはニップロール306と仕切板307がついている。なお、ロール回転電極35、回転ドラム301は同期して回転するようにドライブされている。
【0137】
図6のプラズマ放電装置30と還元性ガス処理装置300を4基ずつ交互に連結されているものを使用した。
【0138】
〈透明導電性フィルムの作製〉
基材Fをロール回転電極35に巻き回しながら接触して移送させ、放電空間32を103kPaの圧力とし、放電空間32に下記混合ガスを満たした。基材Fとしては表1に示したように、非晶質ポリオレフィン樹脂フィルム(JSR社製ARTONフィルム、厚さ100μm)を使用した。また、高周波電源を使用し表2に示した周波数および電力密度で放電を行い、膜厚が20〜25nmになるように薄膜形成を行い、続いて還元性ガス処理装置300に導入し回転ドラム301に巻き回しながら接触して移送させ、還元性ガス処理空間302に下記還元性ガスを満たして、還元性ガス処理を行った。続いて、2番目のプラズマ放電装置及び還元性ガス処理装置、3番目のプラズマ放電装置及び還元性処理装置、更に4番目のプラズマ放電装置及び還元性処理装置で交互に薄膜形成及び還元処理を行い、仕上がり透明導電性薄膜の膜厚を95〜100nmとした。なお、4基の条件は全て同じである。表2のようにITO、FTO、IZO膜を形成して試料13〜16を作製した。
【0139】
比較例2
図6の薄膜形成装置の代わりに図1に示した大気圧プラズマ放電処理装置を用い、表2に示したように高周波電源、電力密度の一部を変更し、還元性ガス処理を行わなかった以外は実施例2と同様に行い、95〜100nmの、ITO、IZO膜及びFTO膜を基材上に形成して、試料No.17〜20とした。
【0140】
以上、実施例1,2および比較例1および2で作製した試料No.1〜20について上述の評価を行い、その結果を表1および2に示した。
【0141】
【表1】
【0142】
【表2】
【0143】
(結果)
大気圧プラズマ放電薄膜形成方法により形成した薄膜を還元性ガスで処理し、薄膜形成と還元性ガス処理を繰り返し行うことによって透明導電性薄膜を形成する本発明の方法は、透明性に優れ、非常に低い比抵抗値を有する透明導電性薄膜が得られることが判明した。これに対して、薄膜形成後還元性ガス処理をしなかった比較例は、ある程度の透明度は得られるものの、比抵抗値が高かった。
【0144】
また、本発明の方法により得られた透明導電性薄膜は別に、耐湿、耐熱特性を温度60℃、90%RHの強制劣化条件での比抵抗値の変化でみたところ良好な性質を示し、水、塩酸及び第二塩化鉄溶液を混合したエッチング液をもちいてのエッチング性も、透明導電性薄膜の除去が完全であり、エッチングパターンの境界部分も明瞭であった。
【0145】
【発明の効果】
本発明により、透明性、導電性、エッチング特性に優れた透明導電性物品及びその製造方法を提供出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る大気圧プラズマ放電処理装置の一例を示す概略図である。
【図2】図1に示したロール回転電極の導電性の金属質母材とその上に被覆されている誘電体の構造を示す一例を示す斜視図である。
【図3】図1に示した角筒型電極の母材とその上に被覆されている誘電体の構造を示す一例を示す斜視図である。
【図4】本発明に係る大気圧プラズマ放電処理装置の一例を示す概略図である。
【図5】本発明に係る大気圧プラズマ放電処理装置の一例を示す概略図である。
【図6】本発明の薄膜形成装置の一例を示す概略図である。
【図7】本発明の薄膜形成装置の一例を示す概略図である。
【図8】本発明の薄膜形成装置の一例を示す概略図である。
【図9】本発明の薄膜形成装置の一例を示す概略図である。
【図10】本発明の薄膜形成装置の一例を示す概略図である。
【図11】図10の部分拡大図である。
【符号の説明】
100 プラズマ放電処理装置
101 印加電極
102 アース電極
103 放電空間
104 処理空間
108、108′ 移動架台
400 還元性ガス処理室
F 基材
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶表示素子、有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、電子ペーパー、タッチパネルや太陽電池等の各種エレクトロニクス素子に好適な透明導電性薄膜を基材上に有する物品及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より低電気抵抗(低比抵抗値)で、高い可視光透過率の透明導電性薄膜を有する物品、例えば透明導電性フィルムは、液晶画像表示装置、有機EL画像表示装置、プラズマディスプレイパネル(PDP)、電界放出型ディスプレイ(FED)等のフラットディスプレイの透明電極、太陽電池の透明電極、電子ペーパー、タッチパネル、電磁波シールド材、赤外線反射膜等多くの分野に利用されている。透明導電性薄膜としてはPt、Au、Ag、Cu等の金属膜、SnO2、In2O3、CdO、ZnO、SbドープSnO2、FドープSnO2、AlドープZnO、SnドープIn2O3等の酸化物またはドーパントによる複合酸化物膜、カルコゲナイド、LaB6、TiN、TiC等の非酸化物がある。中でも錫をドープした酸化インジウム(以降、ITOという場合がある)膜が、優れた電気特性とエッチングによる加工の容易さからもっとも広く使用されている。これらは真空蒸着法やスパッタリング法,イオンプレーティング法、真空プラズマCVD法、スプレーパイロリシス法、熱CVD法、ゾルゲル法等により形成されている。
【0003】
従来、真空蒸着法やスパッタリング等の真空装置により透明導電性薄膜は製造されているが、それらの設備は大掛かりで設備コストが高価で、生産性が低く、収率も低いのが現状である。また、マグネトロンスパッタリング法で形成された透明導電性薄膜、例えばITOはエッチング加工性が悪い。ITOのような透明導電性薄膜は通常マグネトロンスパッタリング法で成膜されるが、成膜されるITOの比抵抗値を低く実現させるために、成膜の際に基材が200℃程度に加熱するが、その結果、ITOが結晶化し易くなる。結晶化したITO膜は抵抗値が低く、高湿度且つ高温(50〜100℃)下で保存した場合の抵抗値の変化(以降、ロバストネスという)も小さいが、エッチング処理性が悪くパターニングがうまくいかない。一方マグネトロンスパッタリングを用いて、基材温度が100度以下の低温でITO膜を形成した場合、エッチング速度は早くなるが、高温で形成した場合に比べ、(イ)結晶性が低く、比抵抗値が高い、(ロ)膜中へ酸素が取り込まれにくく透過率が低い、という課題があった。これらのような課題に対して、スパッタ中の酸素分圧を増やす方法、または薄膜形成後に適当な温度・気体組成のもとで熱処理(エージング)を行う方法もあるが、上記課題を満足するまでには至っていない。
【0004】
一方、熱CVD法や蒸着法では、比抵抗値の低い膜は得られるものの、基材を高温にして成膜するため樹脂フィルムへの成膜が出来にくい。
【0005】
ゾルゲル法(塗布製膜法)は、塗布液の分散調液、塗布、乾燥等多くのプロセスが必要であるばかりでなく、膜の被処理基材との接着性が低いため、塗布液にバインダー樹脂を含有させることが必要で、その結果、膜厚が厚くなったり、透明性に劣るという課題がある。また、得られた透明導電性薄膜の電気特性もPVD法に比較すると劣る傾向にあった。
【0006】
熱CVD法は、スピンコート法やディップコート法、印刷法などにより基材に目的物質の前駆物質を塗布し、これを焼成(熱分解)することで膜を形成するもので、装置が簡単で生産性に優れ、大面積の成膜が容易であるという利点があるが、焼成時に400〜500℃という高温処理が必要とするため基材の種類が限られ、特に、プラスティックフィルム基材への品質の良好な成膜が得られにくいという欠点があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記の各方法のデメリットを克服する方法として、例えば特開2000−303175には、大気圧もしくはその近傍の圧力下でプラズマ放電させて成膜する大気圧プラズマ放電薄膜形成方法が開示されている。
【0008】
この大気圧プラズマ放電薄膜形成方法は、大気圧もしくはその近傍の圧力下で放電して混合ガスをプラズマ励起し、基材上に膜を形成する方法で、スパッタリングや真空蒸着のような真空系と異なり、大面積を処理出来るので、生産性面からも、また装置コスト的にも有利な点がある。この特開2000−303175においては、透明導電性薄膜を、トリエチルインジウムのような有機金属化合物を使用し形成しているが、得られる透明導電性薄膜の比抵抗値のオーダーがせいぜい10−2Ω・cm台と高く、1×10−3Ω・cm以下の比抵抗値の電気特性が要求される液晶ディスプレイ(LCD)、有機ELディスプレイ(ELD)、PDP、電子ペーパー等のフラットパネルディスプレイ用の透明導電性薄膜としては不十分である。大気圧プラズマ放電薄膜形成方法はスパッタリング装置のような大掛かりな設備を使用せず、比較的簡単な装置で薄膜を形成することが出来る。このように真空設備のような大掛かりな設備を使用せず、ガラス、フィルム上に低抵抗で、透過率が高い透明導電性薄膜を形成する方法が望まれている。
【0009】
特開平9−50712あるいは特開2000−129427では、スパッタリング法により透明導電性薄膜を得る際のITOを主成分とするターゲットを用いたDCマグネトロンスパッタリング法による薄膜形成ガス組成についての検討がなされているが、結晶部分が多く出来易いためエッチング(パターニング)速度が遅いという課題がある。
【0010】
従来のローパワー大気圧プラズマ放電薄膜形成方法で形成された透明導電性薄膜は、比抵抗値が高く、また透過率が充分でなく、更に結晶化度が膜内で部分的に異なる傾向が強く、また、パルス波形の高周波電圧をかけて透明導電性薄膜を形成すると、ムラが多く、またハイパワーのパルス波形の高周波電圧の大気圧プラズマ放電薄膜形成方法ではアーク放電が起こり易く、薄膜形成が不安定になるようなことが起こり易い。このような膜の不均一性により、温度、湿度に対して膜の抵抗値が変化し易くなる。
【0011】
本発明は上記のような課題に鑑みて行われたものであって、本発明の目的は、生産コストが低く、特に透明性に優れ、高い導電率を有する(比抵抗値が低く)、優れた透明導電性薄膜を有する物品及びその製造する方法を提供することにある。第2の目的は、上記如き薄膜を形成する薄膜形成装置に関する。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は以下の手段により達成される。
【0013】
1.対向電極間(放電空間)を、大気圧もしくはその近傍の圧力とし、放電ガスと薄膜形成ガスを主構成成分とする透明導電性薄膜形成ガスのうちの少なくとも放電ガスを該対向電極間に導入し、高周波電圧を該対向電極間に印加して放電ガスをプラズマ状態とし、続いてプラズマ状態になった薄膜形成ガスに基材を晒して基材上に薄膜を形成する大気圧プラズマ放電薄膜形成方法を用いた透明導電性薄膜を有する物品の製造方法において、基材上を該プラズマ状態の薄膜形成ガスに晒して薄膜を形成した後の基材上の薄膜を還元性ガスに晒し、更に該基材上の薄膜を該プラズマ状態の薄膜形成ガスと該還元性ガスに交互に晒すことを特徴とする透明導電性薄膜を有する物品の製造方法。
【0014】
2.前記基材が樹脂フィルムまたは樹脂シートであることを特徴とする前記1に記載の透明導電性薄膜を有する物品の製造方法。
【0015】
3.前記基材がガラス板であることを特徴とする前記1に記載の透明導電性薄膜を有する物品の製造方法。
【0016】
4.前記薄膜形成ガスが少なくとも有機金属化合物を含有することを特徴とする前記1乃至3の何れか1項に記載の透明導電性薄膜を有する物品の製造方法。
【0017】
5.前記有機金属化合物が下記一般式(I)で表されるものであることを特徴とする前記4に記載の透明導電性薄膜を有する物品の製造方法。
【0018】
一般式(I) R1 xMR2 yR3 z
(式中、Mは金属、R1はアルキル基、R2はアルコキシ基、R3はβ−ジケトン錯体基、β−ケトカルボン酸エステル錯体基、β−ケトカルボン酸錯体基及びケトオキシ基(ケトオキシ錯体基)から選ばれる基であり、金属Mの価数をmとすると、x+y+z=mであり、x=0〜mまたはx=0〜m−1であり、y=0〜m、z=0〜mである。)
6.前記一般式(I)で表される有機金属化合物が、R2で表されるアルコキシ基を少なくとも一つ有するものであることを特徴とする前記5に記載の透明導電性薄膜を有する物品の製造方法。
【0019】
7.前記一般式(I)で表される有機金属化合物が、R3で表されるβ−ジケトン錯体基、β−ケトカルボン酸エステル錯体基、β−ケトカルボン酸錯体基及びケトオキシ基(ケトオキシ錯体基)から選ばれる基を少なくとも一つ有することを特徴とする前記5または6に記載の透明導電性薄膜を有する物品の製造方法。
【0020】
8.前記一般式(I)で表される有機金属化合物のMの金属が、インジウム(In)、錫(Sn)、亜鉛(Zn)、ジルコニウム(Zr)、アンチモン(Sb)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)及びゲルマニウム(Ge)から選ばれる少なくとも一つのものであることを特徴とする前記5乃至7の何れか1項に記載の透明導電性薄膜を有する物品の製造方法。
【0021】
9.前記薄膜形成ガスが、補助ガスとして酸化性ガスを含有することを特徴とする前記1乃至8の何れか1項に記載の透明導電性薄膜を有する物品の製造方法。
【0022】
10.前記酸化性ガスが、酸素、オゾン、二酸化炭素及び空気から選ばれることを特徴とする前記9に記載の透明導電性薄膜を有する物品の製造方法。
【0023】
11.前記放電ガスが、ヘリウム、アルゴン及び窒素から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする前記1乃至10の何れか1項に記載の透明導電性薄膜を有する物品の製造方法。
【0024】
12.前記還元性ガスが、水素、炭化水素及び水から選ばれる少なくとも一つのガスであることを特徴とする前記1乃至11の何れか1項に記載の透明導電性薄膜を有する物品の製造方法。
【0025】
13.高周波電圧をかける周波数を200kHz以上とすることを特徴とする前記1乃至12の何れか1項に記載の透明導電性薄膜を有する物品の製造方法。
【0026】
14.高周波電圧をかける周波数を150MHz以下とすることを特徴とする前記13に記載の透明導電性薄膜を有する物品の製造方法。
【0027】
15.電力密度を50W/cm2以下とすることを特徴とする前記1乃至14の何れか1項に記載の透明導電性薄膜を有する物品の製造方法。
【0028】
16.電力密度を1.2W/cm2以上とすることを特徴とする前記15に記載の透明導電性薄膜を有する物品の製造方法。
【0029】
17.前記1乃至16の何れか1項に記載の方法で作製したことを特徴とする透明導電性薄膜を有する物品。
【0030】
18.前記透明導電性薄膜が1×10−3Ω・cm以下の比抵抗値を有することを特徴とする前記17に記載の透明導電性薄膜を有する物品。
【0031】
以下、本発明を詳述する。
本発明は、透明性に優れ、導電性(低比抵抗値)で、高温高湿下でも性能の劣化し難く、薄膜の硬度が高い優れた透明導電性薄膜を基材上に形成する方法として、大気圧もしくはその近傍の圧力下で薄膜形成する大気圧プラズマ放電薄膜形成方法、特にハイパワーの大気圧プラズマ放電薄膜形成方法を用いて、基材上に、透明導電性薄膜を形成する方法において、プラズマ状態の薄膜形成ガスに晒して透明導電性薄膜を形成させた後、更に還元性ガスに該薄膜を晒し、更に、該薄膜形成と、還元性ガスに晒すこととを交互に行うことにより、製造される透明導電性薄膜を有する物品及びその製造方法、並びに薄膜形成装置に関する。
【0032】
本発明の透明導電性薄膜を有する物品は、連続的なサイン波形の高周波電圧をかける大気圧プラズマ放電薄膜形成方法により、基材としてのプラスティックフィルム、ガラス板、レンズ、その他の成型物の上に透明導電性薄膜を形成するのであるが、透明導電性薄膜形成の際、形成された透明導電性薄膜を還元性ガスに晒し、更に同様な薄膜形成と還元性ガス処理を交互に行い、優れた透明導電性薄膜を形成することが特徴である。
【0033】
通常は、透明導電性薄膜の形成の際には、形成された透明導電性薄膜をより均一に緻密にすることが出来、導電性及び様々な性能を向上させることが出来るため、薄膜形成ガスに、薄膜形成に直接は関与せずとも、薄膜の性質に影響を及ぼす補助ガスまたは添加ガスと呼ばれる水素、メタン等の炭化水素、水から選ばれる還元性ガスを含有させることが行われる。補助ガスには、還元性ガスの他、酸化性、その他薄膜形成を促進するようなガスなどがある。補助ガスは全ガス100体積%に対して0.0001〜10体積%が好ましく、より好ましくは0.001〜5体積%である。
【0034】
従って、上記のように、大気圧プラズマ等による導電性薄膜の形成時には、添加ガス或いは補助ガスとして、例えば水素等の還元性ガスを薄膜形成ガスと一緒に混合して膜形成することで、形成される透明導電性薄膜をより均一に緻密にすることが出来、これにより、抵抗値の低い、導電性の高い薄膜が得られ、また、エッチング性能も向上する。しかしながら、一方で、この様にして形成されるITO等の透明導電性薄膜は、導電性は高いものの、透過率が比較的低く、透明性にやや劣るという欠点がある。この欠点を解決するため、膜形成ガスと添加ガスとの比率、また大気圧プラズマCVDの条件等の調整などを精密に行う必要があるが、出来上がる膜の性能に再現性がなかったり、膜の均一性等に問題が生じエッチング性能や導電性において必ずしも満足のゆく性能が得られていない。同じ発明者等による2002年7月26日出願の特願2002−218074に記載されたように、膜形成ガスと添加ガスである還元性ガスの存在下において透明導電性薄膜を形成した後に、再度、酸化処理を別に行うことが有効であることが記載されている。即ち、大気圧プラズマ法による上記の薄膜形成ガスと一緒に還元性ガスを存在させ、導電性薄膜を形成した後、例えば酸素、オゾン等の酸化性ガスに晒し、更に膜形成、酸化性ガスへ晒す等の操作を繰り返すことが、透明性の高い導電性薄膜を得ることができる。
【0035】
しかしながら、結晶化度の高い、キャリア密度は高いものの、透過率の低い膜を酸化性ガスとの接触を繰り返し、マイルドな酸化過程により透過率を向上させるプロセスは時間がかかる等の問題もあった。
【0036】
一方、有機金属化合物を含有する薄膜形成ガスに、添加ガスとして、酸化性ガスを少量混合する(例えば、薄膜形成ガスの0.0001〜1.0体積%程度)ことで、成膜された、金属酸化物からなる透明導電性薄膜は、基材上での反応(結晶化)が非常に早く、多結晶で連続性が低いものの、透明性の高い(透過率の低い)膜を形成する。この方法で形成した膜は、一方で、導電性膜としては抵抗値が高いためそのままでは使用が限られており、この方法での成膜は今まで余り試みられていなかった。
【0037】
本発明者等は、大気圧プラズマCVDを用いた、大気圧プラズマ放電薄膜形成方法において、薄膜形成ガスにこの様な酸化性ガスを共存させ、基材上に金属酸化物を含有する透明導電性膜を形成させた後に、形成された透明導電性薄膜を、今度は、還元性ガスに晒すことで、本来の透明性に加えて、抵抗値の低い透明導電性膜として優れた性能を有する膜が得られることを見いだした。同様な薄膜形成と還元性ガス処理を繰り返し交互に行うことで、さらに、優れた透明導電性薄膜を形成することが可能である。好ましくは、これらの大気圧プラズマ放電薄膜形成方法を用いた場合、薄膜形成ガスに酸化性ガスを少量混合しての薄膜形成と、その後の還元性ガスによる処理は複数回、好ましくは4〜5回繰り返すことが好ましい。
【0038】
この様に、ハイパワーの高周波電圧をかけ、薄膜形成ガスを用いて、透明導電性薄膜を形成した直後に還元性ガスにその透明導電性薄膜を晒し、好ましくは透明導電性薄膜の形成と還元性ガスに晒すという工程を繰り返すことにより、成膜条件の制御とは別に、成膜後に還元性雰囲気に晒すという操作を加えることにより透明導電性薄膜の性質をコントロールすることができる。
【0039】
この方法、即ち、大気圧プラズマ放電薄膜形成方法による薄膜形成後に、形成された透明導電性薄膜を、還元性ガスに晒す、また、大気圧プラズマCVDによる薄膜形成と還元性ガスへ晒すという操作を繰り返すことで、比抵抗値として10−4Ω・cm以下である高い導電性を有する透明導電性薄膜を形成することが出来るばかりではなく、このような方法で形成した薄膜は、透明導電性薄膜として透明度が高く、さらに、硬度が非常に高くなり、しかも均一にすることが出来、様々な優れた特性を有する。プラズマ放電処理空間でなく、その外で還元性ガス雰囲気に表面が均一に晒されることにより還元反応が膜の表面、内部で均一に穏やかに行われ、膜中のキャリア密度が均一に増加することで導電性の向上(抵抗値の低下)がむらなく行われると考えられる。
【0040】
本発明に係る連続モードと呼ばれる連続サイン波状の連続発振モードによる透明導電性薄膜の形成は、パルスモードと呼ばれるON/OFFを断続的に行う断続発振モードによる方法より緻密で良質な膜が得られる。
【0041】
ここで、本発明に用いるハイパワーの大気圧プラズマ放電薄膜形成方法及び大気圧プラズマ放電処理装置について説明する。
【0042】
本発明において、プラズマ放電処理が大気圧もしくはその近傍の圧力で行われるが、ここで大気圧近傍とは、20kPa〜110kPaの圧力を表すが、本発明に記載の良好な効果を得るためには、93kPa〜104kPaが好ましい。
【0043】
本発明に係る大気圧プラズマ放電処理装置は、二つの電極が、例えば片方の電極がアース電極で、対向する位置に配置された他方の電極が印加電極で構成する対向電極を有し、これらの対向電極間(放電空間ということがある)に少なくとも放電ガス及び薄膜形成ガスおよび添加ガスを含有する混合ガスを導入し、対向電極間に高周波電源からの高周波電圧をかけて放電させ、混合ガスを励起またはプラズマ状態とし、該励起またはプラズマ状態の混合ガス(詳しくは、先ず該混合ガスのうちの放電ガスを励起またはプラズマ状態とし、更に該励起またはプラズマ状態の放電ガスからエネルギーを受けて薄膜形成ガスまたは添加ガスが励起またはプラズマ状態となり、該励起またはプラズマ状態のガス)に該放電空間を静止または移送する基材を晒すことによって、該基材の上に透明導電性薄膜の薄膜を形成させる装置である。また他の方式の大気圧プラズマ放電処理装置は、対向電極間(放電空間)で上記と同様に混合ガスを励起またはプラズマ状態とし、該対向電極外にジェット状に該プラズマ状態の混合ガスを吹出し、該対向電極の下面と基材との間の空間(処理空間という)において基材(静置していても移動していてもよい)を該プラズマ状態の混合ガスに晒すことによって該基材の上に透明導電性薄膜の薄膜を形成させるジェット方式の装置である。また、放電ガスと薄膜形成ガスまたは添加ガス等を混合して使用せず、放電ガスを放電空間に導入して励起またはプラズマ状態とし、処理空間にジェット状に吹き出させ、別に処理空間に導入した薄膜形成ガスまたは添加ガス等を励起またはプラズマ状態にして基材を晒すという装置もある。
【0044】
以下本発明に有用な大気圧プラズマ放電処理装置及び薄膜形成と酸化性ガス処理を交互に行う薄膜形成装置の例を図によって説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0045】
図1は、本発明に係る大気圧プラズマ放電処理装置の一例を示す概略図である。図1はプラズマ放電処理装置30、ガス供給手段50、電圧印加手段40、及び電極温度調節手段60から構成されている。ロール回転電極35と角筒型固定電極群36として、基材Fをプラズマ放電処理するものである。この図1では、ロール回転電極35はアース電極で、角筒型固定電極群36は高周波電源41に接続されている印加電極である。基材Fは図示されていない元巻きから巻きほぐされて搬送して来るか、または前工程から搬送されて来て、ガイドロール64を経てニップロール65で基材に同伴して来る空気等を遮断し、ロール回転電極35に接触したまま巻き回されながら角筒型固定電極群36との間を移送され、ニップロール66、ガイドロール67を経て、図示してない巻き取り機で巻き取られるか、次工程に移送する。混合ガスはガス供給手段50で、ガス発生装置51で発生させた混合ガスGを、流量制御して給気口52より放電処理室32のプラズマ放電処理容器31内に入れ、該プラズマ放電処理容器31内を混合ガスGで満たし、放電処理が行われた処理排ガスG′を排気口53より排出するようにする。次に電圧印加手段40で、高周波電源41により角筒型固定電極群36に電圧を印加し、アース電極のロール回転電極35との電極間で放電プラズマを発生させる。ロール回転電極35及び角筒型固定電極群36を電極温度調節手段60を用いて媒体を加熱または冷却し電極に送液する。電極温度調節手段60で温度を調節した媒体を送液ポンプPで配管61を経てロール回転電極35及び角筒型固定電極群36内側から温度を調節する。プラズマ放電処理の際、基材の温度によって得られる薄膜の物性や組成は変化することがあり、これに対して適宜制御することが好ましい。媒体としては、蒸留水、油等の絶縁性材料が好ましく用いられる。プラズマ放電処理の際、幅手方向あるいは長手方向での基材の温度ムラを出来るだけ生じさせないようにロール回転電極35の内部の温度を制御することが望ましい。なお、68及び69はプラズマ放電処理容器31と外界を仕切る仕切板である。
【0046】
図2は、図1に示したロール回転電極の導電性の金属質母材とその上に被覆されている誘電体の構造を示す一例を示す斜視図である。
【0047】
図2において、ロール電極35aの導電性の金属質母材35Aで形成されているロールの表面側に誘電体が被覆されており、中は中空になっていて温度調節が行われるジャケットになっている。
【0048】
図3は、図1に示した角筒型電極の母材とその上に被覆されている誘電体の構造を示す一例を示す斜視図である。
【0049】
図3において、角筒型電極36aは、金属等の導電性の母材に対し、図2同様の誘電体被覆層を有している。角筒型電極36aは中空の金属角型のパイプで、パイプの表面に上記と同様の誘電体を被覆し、放電中は温度調節が行えるようになっている。尚、角筒型固定電極群36の数は、上記ロール回転電極35の円周より大きな円周上に沿って複数本設置されており、放電面積はロール回転電極35に相対している角筒型電極36a面の全面積となる。
【0050】
図3に示した角筒型電極36aは、円筒型(丸型)電極に比べて、放電範囲(放電面積)を広げる効果があるので、本発明の薄膜形成方法に好ましく用いられる。
【0051】
図2及び図3において、ロール電極35a及び角筒型電極36aは、導電性の金属質母材35A及び36Aの表面に、誘電体35B及び36Bを誘電体被覆層とした構造になっている。誘電体被覆層は、セラミックスを溶射後、無機化合物の封孔材料を用いて封孔処理したセラミックス被覆層である。セラミックス被覆誘電体層の厚さは片肉で1mmである。また、溶射に用いるセラミックス材としては、アルミナやアルミナ・窒化珪素等が好ましく用いられるが、この中でもアルミナが加工し易いので、更に好ましく用いられる。
【0052】
または、誘電体層として、ガラスライニングによる無機材料のライニング処理誘電体であってもよい。
【0053】
導電性の金属質母材35A及び36Aとしては、チタン金属またはチタン合金、銀、白金、ステンレススティール、アルミニウム、鉄等の金属等や、鉄とセラミックスとの複合材料またはアルミニウムとセラミックスとの複合材料を挙げることが出来るが、後述の理由からはチタン金属またはチタン合金が好ましい。
【0054】
対向電極間距離は、導電性の金属質母材に設けた誘電体の厚さ、印加電圧の大きさ、プラズマを利用する目的等を考慮して決定されるが、電極の一方に誘電体を設けた場合には誘電体表面と導電性の金属質母材表面の最短距離、また上記電極の双方に誘電体を設けた場合には誘電体表面同士の距離で、いずれの場合も均一な放電を行う観点から0.5〜20mmが好ましく、特に好ましくは1±0.5mmである。
【0055】
本発明に有用な導電性の金属質母材及び誘電体についての詳細については後述する。
【0056】
プラズマ放電処理容器31はパイレックス(R)ガラス製の処理容器等が好ましく用いられるが、電極との絶縁がとれれば金属製を用いることも可能である。例えば、アルミニウムまたは、ステンレススティールのフレームの内面にポリイミド樹脂等を張り付けても良く、該金属フレームにセラミックス溶射を行い絶縁性をとっても良い。
【0057】
図4は、本発明に係る大気圧プラズマ放電処理装置の一例を示す概略図である。
【0058】
高周波電源141により高周波電圧を印加する印加電極101とアース電極102の対向電極間(放電空間)103に混合ガスGを導入し、放電空間で放電を起こさせ、そこで励起またはプラズマ状態の混合ガスG°(点線で表している)がジェット状に下方に流れ(ジェット方式)、電極と基材との間の処理空間104において静置してある基材F(例えば、ガラス板)または移送して来る基材F(例えば、フィルム)上に透明導電性薄膜を形成させる。フィルム状の基材Fは、図示してない基材の元巻ロールから巻きほぐされて搬送されるか、あるいは前工程から搬送されて来る。また、ガラス板のような基材Fもベルトコンベアのような移動体の上に載せて移送し処理してもよい。G′は処理排ガスである。101A及び102Aは印加電極101及びアース電極102の導電性の金属質母材であり、101B及び102Bは誘電体である。図4のジェット方式のプラズマ放電装置100は、図示してないが、図1のガス供給手段50及び電極温度調節手段60を有している。また電極の内部も中空となって温度調節用のジャケットになっている。
【0059】
図5は、本発明に係る大気圧プラズマ放電処理装置の一例を示す概略図である。図5においては、放電ガスと薄膜形成ガスを混合せずに、放電ガスを放電空間に、薄膜形成ガスを直接処理空間に導入する方式の装置である。両側に印加電極201があり、その間にアース電極202がある。アース電極202は中央に薄膜形成ガスG1を通過させるスリット204を有している。アース電極202の外側の壁と印加電極201の内側の壁とで形成される二つのスリットが放電空間203となっている。放電空間203に放電ガスG2を満たし、高周波電源241から両方の放電空間203に高周波電圧を印加し、放電ガスG2を励起またはプラズマ状態としてジェット状に下方(紙面下側)に吹き出させ、基材(この場合フィルム状の基材)と電極底面とで形成される処理空間205で薄膜形成ガスG1が励起またはプラズマ状態の放電ガスと接触し、エネルギーの授受が行われ薄膜形成ガスが励起またはプラズマ状態となり、該励起またはプラズマ状態の薄膜形成ガスG°に基材を晒して薄膜形成が行われる。この様な放電ガスと薄膜形成ガスを分けて導入する装置においては添加ガスは放電ガスとともに或いは、薄膜形成ガスと混合して導入される。図5においては、図1と同様なプラズマ放電放電容器、電極温度調節手段、ガス供給手段等が省略されている。
【0060】
図6は、本発明の薄膜形成装置の一例を示す概略図である。
図6の左側は図1と同様のものであり、番号等は省略されている。プラズマ処理装置30で薄膜形成された基材Fが次の還元性ガス処理装置300に導入され、ロール状の回転ドラム301およびカバー303の間に形成された還元性ガス処理空間302において、ロール状の回転ドラムに巻き回されている基材Fの薄膜形成面を還元性ガスAGに晒すことによって薄膜に対する還元性ガス処理が行われる。図6の様な処理装置を交互につなげれば、薄膜形成と還元性ガス処理とを交互に行うことが出来る。304は還元性ガスの給気口、306はニップロール、307は遮蔽板、308はガイドロールである。還元性ガス処理装置300は図6のような形でなくともよく、例えば、箱形の処理箱の中にロールを上下に互い違いに設置し、基材Fをロールを通して引き回して処理するような空間であってもよく、これらに限定されない。
【0061】
図7は、本発明の薄膜形成装置の別の一例を示す概略図である。
図7は、図4とプラズマ放電処理装置100と図6の還元性ガス処理装置300を組み合わせたような装置であるが、プラズマ放電処理装置100がプラズマ放電処理容器110の内部に設置されている。111及び112はニップロールで外界と遮断をしており、115は混合ガス給気口、116は処理済みガス排気口である。なお、図4のプラズマ放電処理装置100の金属質母材と誘電体は図7においては省略されている。
【0062】
図8は、本発明の薄膜形成装置の別の一例を示す概略図である。
図8は、基材をガラス板とした場合の大気圧プラズマ放電薄膜形成と還元性ガス処理を行う装置である。図8では、プラズマ放電処理装置100の隣に還元性ガス処理室400が配置されており、基材がフィルムのような連続処理が出来るのと異なり、ガラス板の場合には毎葉処理となるので、基材を載せたまま各室間を移動処理出来る移動架台108を有している。プラズマ放電処理装置100は図4(101A、102A、101B及び102Bについては省略してある)と同様であるので符号の説明は省略するが、プラズマ放電処理容器110の中に有り、基材Fとしてのガラス板は移動架台108の上に静置してしてある。薄膜形成後ガラス板(基材F)は、移動架台108ごとゲート119を開けて隣の予備室420に移り、更にゲート419を開け、ゲート119を閉めると同時に還元性ガス処理室400内に入る。還元性ガス処理室400を還元性ガスで満たし、移動した移動架台108′の上のガラス板である基材F′の薄膜表面を還元性ガスに晒した後、再び予備室420を通ってプラズマ放電処理装置100で、還元された薄膜表面の上に薄膜を形成させ、また更に薄膜形成後、還元性ガス処理を繰り返せるようになっている。
【0063】
図9は、本発明の薄膜形成装置の一例を示す概略図である。
図9は、図8と異なり電極の中央に放電ガス、薄膜形成ガス等を含有する混合ガスGを通すスリット503を有する印加電極501と移動架台が電極となっている移動架台電極502とで対向電極を構成している。スリットの出口505から放電空間504に吹き出た放電主にガスと薄膜形成ガスを含有する混合ガスが、印加電極501底面と移動架台電極502の間隙で形成する放電空間504で先ず放電ガスがプラズマ状態となり、続いて薄膜形成ガス、添加ガス等からなる混合ガスがプラズマ状態となる(G°)。移動している移動架台電極502上の基材Fは該混合ガスプラズマG°に晒される。薄膜形成後、ゲート519を開き予備室530に基材Fを載せたまま移動架台電極502が移動し、次にゲート519を閉じて、ゲート529を開き還元性ガス処理装置520に移動して、ゲート529を閉じ、基材Fの薄膜表面を還元性ガスAGに晒す。所定時間の還元性ガス処理終了後ゲート529を開き移動架台電極502′(ここでは電極としての働きはない)予備室530に入り、ゲート529を閉め、還元性ガスAGが残らないように、ガスを不活性ガス等で置き換え、ゲート519を開き、移動架台電極502を大気圧プラズマ放電処理装置500内に入り、図9に描いてある移動架台電極の位置に止まり、再び薄膜形成を行い、同様な薄膜形成と還元性ガス処理を繰り返す。ここで、510はチャンバー、515は混合ガスGの供給口である。
【0064】
図10は、本発明の薄膜形成装置の一例を示す概略図であり、還元性ガス処理手段を内蔵している大気圧プラズマ放電処理装置でもある。
【0065】
図10の大気圧プラズマ放電処理装置600は、図1のそれと同様にロール回転電極635と複数の角筒型電極からなる角筒型固定電極群636とで構成する対向電極を有するが、大きく異なるところは、角筒型固定電極群636の角筒型電極の間隔が開いていて、隣の角筒型電極との間には還元性ガス処理手段の還元性ガス吹き出し管637があることである。また、図10の角筒型電極は図3のような構造とは異なり、また図9の電極と似ており、混合ガスを通すスリットが該電極の中央部分にあり、放電空間632は該角筒型電極底面のロール回転電極635に相対する面とロール回転電極面との間の電極間隙となっている。ロール回転電極635の円弧より大きな同心円上に角筒型電極群636の各電極と還元性ガス吹き出し口637が交互に配列されており、放電空間632と還元性ガスの処理空間633が交互にあり、プラズマ放電処理による薄膜形成と還元性ガス処理が交互に行われるようになっている。還元性ガスの処理空間は還元性ガス吹き出し管637とロール回転電極635の面との間の空間である。角筒型固定電極群636への混合ガスの供給は、供給管652から配管653,654を通して行われる。また、還元性ガス吹き出し管637への還元性ガスの供給は還元性ガス供給管655(点線で表されている)から配管656,657を通して行われる。フィルムである基材Fは、ガイドロール664でロール回転電極の曲面に密着される。ニップロール665と仕切板668とで外界とチャンバー631とを遮断している。基材Fはロール回転電極635と同期して巻き回され、その間でプラズマ状態となった薄膜形成ガスを含む混合ガスにより巻き回されているフィルムである基材F上に薄膜が形成され、続いて次の還元性ガス処理を受け、次に再び薄膜が形成され、続いて還元性ガス処理を受けるというように、薄膜形成と還元性ガス処理を交互に行いながら電極の数だけ繰り返される。なお、Gは混合ガス、G°はプラズマ状態の混合ガス、AGは還元性ガス、G′は処理済みガス、666はニップロール、667は仕切板、668はガイドロールであり、基材Fとしてのフィルムは系外に出る。また、高周波電源641からは角筒型固定電極群の電極全てに電界が印加出来るように線で結ばれている(図示してない)。
【0066】
図11は、図10の部分拡大図である。
図11は、図10の角筒型固定電極群636の電極及び還元性ガス吹き出し管637のロール回転電極635曲面付近の部分拡大図としてより詳細に示した。635Aはロール電極の導電性金属質母材、635Bはロール電極に被覆された誘電体636Aは角筒型電極の導電性金属質母材、636Bは角筒型電極に被覆された誘電体、638は還元性ガス吸引管である。還元性ガス吸引管638は、還元性ガス処理空間から還元性ガスが放電空間に行かないように吸引する役目をしている。還元性ガス吸引管の排気口は略されている。
【0067】
本発明において、還元性ガス処理後の次の薄膜形成も前の薄膜形成と同一のものを行う場合と異なる薄膜を形成させる場合とがあるが、同一薄膜を薄く幾層にも還元性ガス処理を行い積層することが好ましい。
【0068】
次に、本発明の透明導電薄膜を形成するハイパワーの大気圧プラズマ放電薄膜形成条件、大気圧プラズマ放電処理装置の電極について述べる。
【0069】
本発明に係るハイパワーの大気圧プラズマ放電薄膜形成方法は、対向する電極間に印加する高周波電圧は、100kHzを越えた高周波電圧で、且つ、1W/cm2以上の電力密度を供給し、放電ガスを励起してプラズマを発生させるものである。
【0070】
本発明において、対向電極間に印加する高周波電圧の周波数の上限値は、好ましくは150MHz以下であり、より好ましくは15MHz以下である。また、高周波電圧の周波数の下限値としては、好ましくは200kHz以上、より好ましくは800kHz以上である。
【0071】
また、電極間に供給する電力密度の上限値とは、好ましくは50W/cm2以下、より好ましくは20W/cm2以下である。下限値は、好ましくは1.2W/cm2以上である。尚、放電面積(cm2)は、電極において放電が起こる範囲の面積のことを指す。
【0072】
高周波電源より印加電極に印加される電圧の値は適宜決定されるが、例えば、電圧が10V〜10kV程度で、上記のように電源周波数は100kHzを越えて150MHz以下に調整される。
【0073】
本発明に有用な電源の印加法に関しては、連続モードと呼ばれる連続サイン波状の連続発振モードである。
【0074】
本発明においては、このような電圧を印加して、均一なグロー放電状態を保つことが出来る電極をプラズマ放電処理装置に採用する必要がある。
【0075】
本発明においては、印加電極に電圧を印加する電源としては、ハイパワーの電圧を掛けられる電源であれば、特に限定はないが、パール工業製高周波電源(200kHz)、パール工業製高周波電源(800kHz)、パール工業製高周波電源(2MHz)、パール工業製高周波電源(13.56MHz)、パール工業製高周波電源(27MHz)、パール工業製高周波電源(150MHz)等が好ましく使用出来る。より好ましくは、100kHz超〜150MHzの高周波電源であり、更に好ましくは、800kHz〜27MHzのものである。
【0076】
このようなハイパワーの大気圧プラズマ放電処理装置に使用する電極は、構造的にも、性能的にも過酷な条件に耐えられるものでなければならないので、下記のような導電性の金属質母材上に誘電体を被覆した電極が好ましい。
【0077】
本発明に使用する誘電体被覆電極においては、様々な導電性の金属質母材と誘電体との間に特性が合うものが好ましく、その一つの特性として、導電性の金属質母材と誘電体との線熱膨張係数の差が10×10−6/℃以下となる組み合わせのものである。好ましくは8×10−6/℃以下、さらに好ましくは5×10−6/℃以下、さらに好ましくは2×10−6/℃以下である。尚、線熱膨張係数とは、周知の材料特有の物性値である。
【0078】
線熱膨張係数の差が、この範囲にある導電性の金属質母材と誘電体との組み合わせとしては、
▲1▼導電性の金属質母材が純チタンまたはチタン合金で、誘電体がセラミックス溶射被膜
▲2▼導電性の金属質母材が純チタンまたはチタン合金で、誘電体がガラスライニング
▲3▼導電性の金属質母材がステンレススティールで、誘電体がセラミックス溶射被膜
▲4▼導電性の金属質母材がステンレススティールで、誘電体がガラスライニング
▲5▼導電性の金属質母材がセラミックスおよび鉄の複合材料で、誘電体がセラミックス溶射被膜
▲6▼導電性の金属質母材がセラミックスおよび鉄の複合材料で、誘電体がガラスライニング
▲7▼導電性の金属質母材がセラミックスおよびアルミの複合材料で、誘電体がセラミックス溶射皮膜
▲8▼導電性の金属質母材がセラミックスおよびアルミの複合材料で、誘電体がガラスライニング
等がある。線熱膨張係数の差という観点では、上記▲1▼または▲2▼、及び▲5▼〜▲8▼が好ましく、特に▲1▼が好ましい。
【0079】
本発明において、導電性の金属質母材は、上記の特性からはチタンまたはチタン合金が特に有用である。導電性の金属質母材をチタンまたはチタン合金とすることにより、誘電体を上記とすることにより、使用中の電極の劣化、特にひび割れ、剥がれ、脱落等がなく、過酷な条件での長時間の使用に耐えることが出来る。
【0080】
本発明に有用な電極の導電性の金属質母材は、チタンを70質量%以上含有するチタン合金またはチタン金属である。本発明において、チタン合金またはチタン金属中のチタンの含有量は、70質量%以上であれば、問題なく使用出来るが、好ましくは80質量%以上のチタンを含有しているものが好ましい。本発明に有用なチタン合金またはチタン金属は、工業用純チタン、耐食性チタン、高力チタン等として一般に使用されているものを用いることが出来る。工業用純チタンとしては、TIA、TIB、TIC、TID等を挙げることが出来、何れも鉄原子、炭素原子、窒素原子、酸素原子、水素原子等を極僅か含有しているもので、チタンの含有量としては、99質量%以上を有している。耐食性チタン合金としては、T15PBを好ましく用いることが出来、上記含有原子の他に鉛を含有しており、チタン含有量としては、98質量%以上である。また、チタン合金としては、鉛を除く上記の原子の他に、アルミニウムを含有し、その他バナジウムや錫を含有しているT64、T325、T525、TA3等を好ましく用いることが出来、これらのチタン含有量としては、85質量%以上を含有しているものである。これらのチタン合金またはチタン金属はステンレススティール、例えばAISI316に比べて、熱膨張係数が1/2程度小さく、導電性の金属質母材としてチタン合金またはチタン金属の上に施された後述の誘電体との組み合わせがよく、高温、長時間での使用に耐えることが出来る。
【0081】
一方、誘電体の求められる特性としては、具体的には、比誘電率が6〜45の無機化合物であることが好ましく、また、このような誘電体としては、アルミナ、窒化珪素等のセラミックス、あるいは、ケイ酸塩系ガラス、ホウ酸塩系ガラス等のガラスライニング材等がある。この中では、後述のセラミックスを溶射したものやガラスライニングにより設けたものが好ましい。特にアルミナを溶射して設けた誘電体が好ましい。
【0082】
または、上述のような大電力に耐える仕様の一つとして、誘電体の空隙率が10体積%以下、好ましくは8体積%以下であることで、好ましくは0体積%を越えて5体積%以下である。なお、誘電体の空隙率は、BET吸着法や水銀ポロシメーターにより測定することが出来る。後述の実施例においては、島津製作所製の水銀ポロシメーターにより金属質母材に被覆された誘電体の破片を用い、空隙率を測定する。誘電体が、低い空隙率を有することにより、高耐久性が達成される。このような空隙を有しつつも空隙率が低い誘電体としては、後述の大気圧プラズマ溶射法等による高密度、高密着のセラミックス溶射被膜等を挙げることが出来る。更に空隙率を下げるためには、封孔処理を行うことが好ましい。
【0083】
上記、大気圧プラズマ溶射法は、セラミックス等の微粉末、ワイヤ等をプラズマ熱源中に投入し、溶融または半溶融状態の微粒子として被覆対象の金属質母材に吹き付け、皮膜を形成させる技術である。プラズマ熱源とは、分子ガスを高温にし、原子に解離させ、さらにエネルギーを与えて電子を放出させた高温のプラズマガスである。このプラズマガスの噴射速度は大きく、従来のアーク溶射やフレーム溶射に比べて、溶射材料が高速で金属質母材に衝突するため、密着強度が高く、高密度な被膜を得ることが出来る。詳しくは、特開2000−301655に記載の高温被曝部材に熱遮蔽皮膜を形成する溶射方法を参照することが出来る。この方法により、上記のような被覆する誘電体(セラミック溶射膜)の空隙率にすることが出来る。
【0084】
また、大電力に耐える別の好ましい仕様としては、誘電体の厚みが0.5〜2mmであることである。この膜厚変動は、5%以下であることが望ましく、好ましくは3%以下、さらに好ましくは1%以下である。
【0085】
誘電体の空隙率をより低減させるためには、上記のようにセラミックス等の溶射膜に、更に、無機化合物で封孔処理を行うことが好ましい。前記無機化合物としては、金属酸化物が好ましく、この中では特に酸化ケイ素(SiOx)を主成分として含有するものが好ましい。
【0086】
封孔処理の無機化合物は、ゾルゲル反応により硬化して形成したものであることが好ましい。封孔処理の無機化合物が金属酸化物を主成分とするものである場合には、金属アルコキシド等を封孔液として前記セラミック溶射膜上に塗布し、ゾルゲル反応により硬化する。無機化合物がシリカを主成分とするものの場合には、アルコキシシランを封孔液として用いることが好ましい。
【0087】
ここでゾルゲル反応の促進には、エネルギー処理を用いることが好ましい。エネルギー処理としては、熱硬化(好ましくは200℃以下)や、紫外線照射などがある。更に封孔処理の仕方として、封孔液を希釈し、コーティングと硬化を逐次で数回繰り返すと、よりいっそう無機質化が向上し、劣化の無い緻密な電極が出来る。
【0088】
本発明に係る誘電体被覆電極の金属アルコキシド等を封孔液として、セラミックス溶射膜にコーティングした後、ゾルゲル反応で硬化する封孔処理を行う場合、硬化した後の金属酸化物の含有量は60モル%以上であることが好ましい。封孔液の金属アルコキシドとしてアルコキシシランを用いた場合には、硬化後のSiOx(xは2以下)含有量が60モル%以上であることが好ましい。硬化後のSiOx含有量は、XPSにより誘電体層の断層を分析することにより測定する。
【0089】
本発明の薄膜形成方法に係る電極においては、電極の少なくとも基材と接する側のJIS B 0601で規定される表面粗さの最大高さ(Rmax)が10μm以下になるように調整することが、本発明に記載の効果を得る観点から好ましいが、更に好ましくは、表面粗さの最大値が8μm以下であり、特に好ましくは、7μm以下に調整することである。このように誘電体被覆電極の誘電体表面を研磨仕上げする等の方法により、誘電体の厚み及び電極間のギャップを一定に保つことができ、放電状態を安定化出来ること、更に熱収縮差や残留応力による歪やひび割れを無くし、且つ、高精度で、耐久性を大きく向上させることが出来る。誘電体表面の研磨仕上げは、少なくとも基材と接する側の誘電体において行われることが好ましい。更にJIS B 0601で規定される中心線平均表面粗さ(Ra)は0.5μm以下が好ましく、更に好ましくは0.1μm以下である。
【0090】
本発明に使用する誘電体被覆電極において、大電力に耐える他の好ましい仕様としては、耐熱温度が100℃以上であることである。更に好ましくは120℃以上、特に好ましくは150℃以上である。なお、耐熱温度とは、絶縁破壊が発生せず、正常に放電出来る状態において耐えられる最も高い温度のことを指す。このような耐熱温度は、上記のセラミックス溶射や、泡混入量の異なる層状のガラスライニングで設けた誘電体を適用したり、下記金属質母材と誘電体の線熱膨張係数の差の範囲内の材料を適宜選択する手段を適宜組み合わせることによって達成可能である。
【0091】
次に、本発明の透明導電性薄膜を形成するガスについて説明する。使用するガスは、基本的に放電ガス及び薄膜形成ガスを構成成分とするガスである。
【0092】
放電ガスは、放電空間において励起状態またはプラズマ状態となり薄膜形成ガスにエネルギーを与えて励起またはプラズマ状態にする役割を行うもので、希ガスまたは窒素ガスである。希ガスとしては、周期表の第18属元素、具体的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン等を挙げることが出来るが、本発明に記載の緻密で、低比抵抗値を有する薄膜を形成する効果を得るためには、ヘリウム、アルゴンが好ましく用いられる。放電ガスは、全ガス100体積%に対し、90.0〜99.9体積%含有されることが好ましい。
【0093】
薄膜形成ガスは、放電空間で放電ガスからエネルギーを受け励起状態またはプラズマ状態となり、透明導電性薄膜を形成するガスであり、または反応を制御したり、反応を促進したりするガスでもある。
【0094】
本発明においては、薄膜形成ガスは少なくとも有機金属化合物を含有している。また有機金属化合物から形成される金属酸化物にドーピングするドーピング用有機金属化合物を加える場合があり、同様な有機金属化合物が使用される。
【0095】
本発明に有用な有機金属化合物は下記の一般式(I)で示すものから選ばれるものであることが好ましい。
【0096】
一般式(I) R1 xMR2 yR3 z
式中、Mは金属、R1はアルキル基、R2はアルコキシ基、R3はβ−ジケトン錯体基、β−ケトカルボン酸エステル錯体基、β−ケトカルボン酸錯体基及びケトオキシ基(ケトオキシ錯体基)から選ばれる基であり、金属Mの価数をmとすると、x+y+z=mであり、x=0〜m、好ましくはx=0〜m−1であり、y=0〜m、z=0〜mであり、何れも0または正の整数である。R1のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等を挙げることが出来、R2のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、3,3,3−トリフルオロプロポキシ基等を挙げることが出来る。また、R3のβ−ジケトン錯体基、β−ケトカルボン酸エステル錯体基、β−ケトカルボン酸錯体基及びケトオキシ基(ケトオキシ錯体基)から選ばれる基としては、β−ジケトン錯体基として、例えば、2,4−ペンタンジオン(アセチルアセトンあるいはアセトアセトンともいう)、1,1,1,5,5,5−ヘキサメチル−2,4−ペンタンジオン、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン、1,1,1−トリフルオロ−2,4−ペンタンジオン等を挙げることが出来、β−ケトカルボン酸エステル錯体基として、例えば、アセト酢酸メチルエステル、アセト酢酸エチルエステル、アセト酢酸プロピルエステル、トリメチルアセト酢酸エチル、トリフルオロアセト酢酸メチル等を挙げることが出来、β−ケトカルボン酸として、例えば、アセト酢酸、トリメチルアセト酢酸等を挙げることが出来、またケトオキシとして、例えば、アセトオキシ基(またはアセトキシ基)、プロピオニルオキシ基、ブチリロキシ基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基等を挙げることが出来る。これらの基の炭素原子数は、上記例有機金属示化合物を含んで、18以下が好ましい。また例示にもあるように直鎖または分岐のもの、また水素原子をフッ素原子に置換したものでもよい。
【0097】
本発明において取り扱いの問題から、爆発の危険性の少ない有機金属化合物が好ましく、分子内に少なくとも一つ以上の酸素を有する有機金属化合物が好ましい。このようなものとしてR2で表されるアルコキシ基を少なくとも一つ含有する有機金属化合物、またR3のβ−ジケトン錯体基、β−ケトカルボン酸エステル錯体基、β−ケトカルボン酸錯体基及びケトオキシ基(ケトオキシ錯体基)から選ばれる基を少なくとも一つ有する金属化合物が好ましい。
【0098】
本発明に使用し得る有機金属化合物の金属は、特に制限ないが、インジウム(In)、錫(Sn)、亜鉛(Zn)、ジルコニウム(Zr)、アルミニウム(Al)及びアンチモン(Sb)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)から選ばれる少なくとも1種の金属が好ましく、インジウム、亜鉛及び錫から選ばれる少なくとも1種の金属が特に好ましい。
【0099】
本発明において、上記の好ましい有機金属化合物の例としては、インジウムトリス2,4−ペンタンジオナート(あるいは、トリスアセトアセトナートインジウム)、インジウムトリスヘキサフルオロペンタンジオナート、メチルトリメチルアセトキシインジウム、トリアセトアセトオキシインジウム、トリアセトオキシインジウム、ジエトキシアセトアセトオキシインジウム、インジウムトリイソポロポキシド、ジエトキシインジウム(1,1,1−トリフルオロペンタンジオナート)、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナート)インジウム、エトキシインジウムビスアセトメチルアセタート、ジ(n)ブチルビス(2,4−ペンタンジオナート)錫、ジ(n)ブチルジアセトオキシ錫、ジ(t)ブチルジアセトオキシ錫、テトライソプロポキシ錫、テトラ(i)ブトキシ錫、亜鉛2,4−ペンタンジオナート等を挙げることが出来、何れも好ましく用いることが出来る。
【0100】
この中で特に、インジウムトリス2,4−ペンタンジオナート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナート)インジウム、亜鉛ビス2,4−ペンタンジオナート、ジ(n)ブチルジアセトオキシ錫が好ましい。これらの有機金属化合物は一般に市販(例えば、東京化成工業(株)等から)されている。
【0101】
これらの有機金属化合物の薄膜形成ガスは全ガス中で0.01〜10体積%含有されることが好ましく、より好ましくは0.1〜3体積%である。
【0102】
本発明において、該有機金属化合物から形成される透明導電性薄膜の導電性を更に高めるためのドーピング用有機金属化合物またはドーピング用フッ素化合物を混合ガスに含有させることが好ましい。ドーピング用有機金属化合物またはドーピング用フッ素化合物の薄膜形成ガスとしては、例えば、トリイソプロポキシアルミニウム、ニッケルトリス2,4−ペンタンジオナート、マンガンビス2,4−ペンタンジオナート、ボロンイソプロポキシド、トリ(n)ブトキシアンチモン、トリ(n)ブチルアンチモン、ジ(n)ブチル錫ビス2,4−ペンタンジオナート、ジ(n)ブチルジアセトオキシ錫、ジ(t)ブチルジアセトオキシ錫、テトライソプロポキシ錫、テトラブトキシ錫、テトラブチル錫、亜鉛2,4−ペンタンジオナート、六フッ化プロピレン、八フッ化シクロブタン、四フッ化メタン等を挙げることが出来る。
【0103】
また、本発明の透明導電性薄膜の形成においては、薄膜形成ガスに添加ガスとして、酸化性ガスを導入することが好ましい。
【0104】
酸化性ガスとしては、酸素、オゾン、過酸化水素、二酸化炭素等を挙げることが出来る。これらの単体または混合したガスでも良い。好ましくは酸素と窒素の混合ガスが好ましい。これらのガスはヘリウム、アルゴン等の希ガス或いは窒素から選ばれる放電ガスと混合した混合ガスとして供給してもよいし、或いは、金属化合物等、本発明に係わる薄膜形成ガスに混合して用いてもよい、これら酸化性ガスの混合ガス全体に対する成分の濃度は0.0001〜1.0体積%、好ましくは0.001〜0.1体積%、更に好ましくは0.001〜0.05体積%である。混合される酸化性ガスの濃度が余り高いと金属酸化物膜の形成速度が大きすぎ、多結晶化が進みすぎ、成膜のコントロールが難しくなり、還元性ガスによる反応が低下するため抵抗が下がらなくなる。また低すぎる場合には、得られる金属酸化物膜の透明性が低下し、成膜後の還元性ガスによる処理によっても充分な透明性を得ることが出来ない。
【0105】
酸化性ガス種、及び窒素、ヘリウム、アルゴンから選ばれる気体と混合した場合の酸化性ガス濃度の最適値は上記の範囲で、基材温度、酸化処理回数、処理時間によって適宜条件を選択することが出来る。
【0106】
なお、本発明においては、放電ガス及び薄膜形成ガス、更に上記の様な添加ガスを混合した混合ガスを用いて薄膜を形成するが、別の態様として、これらのガスを混合しないで、別々にして放電ガスを放電空間に、また処理空間に薄膜形成ガスを導入してもよい。
【0107】
前記透明導電性薄膜を形成するに必要な有機金属化合物と上記ドーピング用の薄膜形成ガスの比は、形成する透明導電性薄膜の種類により異なるが、例えば、酸化インジウムに錫をドーピングして得られるITO膜においては、In:Snの原子数比が100:0.1〜100:15の範囲になるように薄膜形成ガス量を調整することが必要である。好ましくは、100:0.5〜100:10になるよう調整することが好ましい。酸化錫にフッ素をドーピングして得られる透明導電性薄膜(フッ素ドープ酸化錫膜をFTO膜という)においては、得られたFTO膜のSn:Fの原子数比が100:0.01〜100:50の範囲になるよう薄膜形成ガスの量比を調整することが好ましい。In2O3−ZnO透明導電性薄膜においては、In:Znの原子数比が100:50〜100:5の範囲になるよう薄膜形成ガスの量比を調整することが好ましい。In:Sn、Sn:F及びIn:Znの各原子数比はXPS測定によって求めることが出来る。
【0108】
本発明において、得られる透明導電性薄膜は、例えば、SnO2、In2O3、ZnOの酸化物膜、またはSbドープSnO2、FTO、AlドープZnO、ZnドープIn(IZO)、ZrドープIn、ITO等ドーパントによりドーピングされた複合酸化物を挙げることが出来、これらから選ばれる少なくとも一つを主成分とするアモルファス膜が好ましい。またその他にカルコゲナイド、LaB6、TiN、TiC等の非酸化物膜、Pt、Au、Ag、Cu等の金属膜、CdO等の透明導電性薄膜を挙げることが出来る。
【0109】
本発明に使用する還元性ガスは、形成された薄膜を還元するためのガスで、薄膜の表面ばかりでなく、内部も還元を促進させるために薄膜形成を出来るだけ薄くし、その面を還元性ガスで処理し、このような薄膜形成と還元性ガス処理を繰り返すことによって、薄膜中の金属の濃度を高めてキャリア密度を高めるように作用する。これにより緻密且つ均一で、導電性が高く、残渣のない良好なエッチング特性を有する膜をうることが出来る。
【0110】
還元性ガスとしては、水素、メタン等の炭化水素、水から選ばれる還元性ガスであり、これらの単体または混合したガスでも良い。またこれらのガスを窒素、ヘリウム、アルゴンから選ばれる気体と混合してもよい。混合したガス中の還元性ガス成分の濃度は1〜99体積%、好ましくは10〜50体積%、更に好ましくは20〜40体積%である。還元性ガス種、及び窒素、ヘリウム、アルゴンから選ばれる気体と混合した場合の還元性ガス濃度の最適値は基材温度、酸化処理回数、処理時間によって適宜条件を選択することが出来る。
【0111】
薄膜形成ガスまたは放電ガスに還元性ガスを混合して大気圧プラズマCVDを行うよりも、薄膜形成後に還元性ガスで処理する方が、特に透明性に優れた導電性薄膜を得ることができる。この様に、プラズマCVD法により成膜した薄膜に、更に還元性ガスによる処理で、別の異なった作用を及ぼすことが出来る。
【0112】
還元性ガスの温度は、素材の耐熱性が許す範囲、成膜温度にもよるが、できるだけ高温にすることが好ましい。例えばガラス基板の場合、100〜300℃が好ましく、フィルムでは、50〜200℃が好ましい。この温度内で成膜時の基板温度にあわせて還元性ガスの温度を選択する。
【0113】
本発明の透明導電性薄膜を有する物品の製造方法により得られる透明導電性薄膜は、高い透過率に加えて、高いキャリア移動度を有する特徴をもつ。よく知られているように透明導電性薄膜の電気伝導率は以下の(1)式で表される。
【0114】
σ=n×e×μ (1)
ここで、σは電気伝導率、nはキャリア密度、eは電子の電気量、そしてμはキャリアの移動度である。電気伝導率σを上げるためにはキャリア密度nあるいはキャリア移動度μを増大させる必要があるが、キャリア密度nを増大させていくと2×1021cm−3付近から反射率が大きくなるため透明性が失われる。そのため、電気伝導率σを増大させるためにはキャリア移動度μを増大させる必要がある。本発明の透明導電性薄膜の形成方法によれば条件を最適化することにより、DCマグネトロンスパッタリング法により形成された透明導電性薄膜に近いキャリア移動度μを有する透明導電性薄膜を形成することが可能であることが判明した。
【0115】
本発明の透明導電性薄膜の形成方法は高いキャリア移動度μを有するため、ドーピングなしでも比抵抗値として1×10−3Ω・cm以下の比抵抗値の透明導電性薄膜を得ることが出来る。ドーピングを行いキャリア密度nを増加させることで更に比抵抗値を下げることが出来る。また、必要に応じて比抵抗値を上げる薄膜形成ガスを用いることにより、比抵抗値として1×10−2Ω・cm以上の高比抵抗値の透明導電性薄膜を得ることも出来る。透明導電性薄膜の比抵抗値を調整するために用いる薄膜形成ガスとしては、例えば、チタントリイソプロポキシド、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン等を挙げることが出来る。
【0116】
本発明の透明導電性薄膜の形成方法によって得られる透明導電性薄膜は、キャリア密度nが、1×1019cm−3以上、より好ましい条件下においては、1×1020cm−3以上となるが、透明性は低下しない。
【0117】
本発明の優れた効果の一つとして、エッチングがある。各種ディスプレイ素子を電極として用いる場合、基板上に回路を描くパターニング工程は必須なものであり、パターニングが容易に行うことが出来るかが工程適性上重要な課題となっている。一般に、パターニングはフォトリソグラフィー法により行われることが多く、導通を必要としない部分はエッチングにより溶解、除去するため、該部分のエッチング液による溶解の速さ及び残渣のないことが重要な課題となっている。エッチング液には、通常、硝酸、塩酸、塩酸と硝酸の混酸、フッ酸、塩化第二鉄水溶液等が用いられ、これらのウェットエッチングする方法が主流である。
【0118】
透明性導電性薄膜として、上記形成された酸化物または複合酸化物の薄膜の膜厚は、0.1〜1000nmの範囲が好ましい。
【0119】
本発明の透明導電性フィルムの基材について説明する。
本発明の透明導電性フィルムを形成する基材としては、薄膜をその表面に形成出来るものであれば特に限定はない。基材が静置状態でも移送状態でもプラズマ状態の混合ガスに晒され、均一の薄膜が形成されるものであれば基材の形態または材質には制限ない。樹脂フィルムが本発明には適している。材質的には、樹脂としては、樹脂フィルム、樹脂シート、樹脂板等を挙げることが出来る。
【0120】
樹脂フィルムは本発明に係る大気圧プラズマ放電処理装置の電極間または電極の近傍を連続的に移送させて透明導電性薄膜を形成することが出来るので、スパッタリングのような真空系のようなバッチ式でない、大量生産に向き、連続的な生産性の高い生産方式として好適である。
【0121】
樹脂フィルム、樹脂シート、樹脂レンズ、樹脂成形物等成形物の材質としては、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルロースアセテートプロピオネートまたはセルロースアセテートブチレートのようなセルロースエステル、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートのようなポリエステル、ポリエチレンやポリプロピレンのようなポリオレフィン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコールコポリマー、シンジオタクティックポリスチレン、ポリカーボネート、ノルボルネン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリエーテルイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、ポリメチルアクリレート、アクリレートコポリマー等を挙げることが出来る。
【0122】
これらの素材は単独であるいは適宜混合されて使用することも出来る。中でもゼオネックスやゼオノア(日本ゼオン(株)製)、非晶質シクロポリオレフィン樹脂フィルムのARTON(日本合成ゴム(株)製)、ポリカーボネートフィルムのピュアエース(帝人(株)製)、セルローストリアセテートフィルムのコニカタックKC4UX、KC8UX(コニカ(株)製)などの市販品を好ましく使用することが出来る。更に、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルフォン及びポリエーテルスルフォンなどの固有複屈折率の大きい素材であっても、溶液流延成膜、溶融押し出し成膜等の条件、更には縦、横方向に延伸条件等を適宜設定することにより使用することが出来るものを得ることが出来る。
【0123】
これらのうち光学的に等方性に近いセルロースエステルフィルムが本発明の透明導電性フィルムに好ましく用いられる。セルロースエステルフィルムとしては、上記のようにセルローストリアセテートフィルム、セルロースアセテートプロピオネートが好ましく用いられるものの一つである。セルローストリアセテートフィルムとしては市販品のコニカタックKC4UX、KC8UX等が有用である。
【0124】
これらの樹脂の表面にゼラチン、ポリビニルアルコール、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、セルロースエステル樹脂等を塗設したものも使用出来る。またこれら樹脂フィルムの薄膜側に防眩層、クリアハードコート層、防汚層等を設けてもよい。また、必要に応じて接着層、アルカリバリアコート層、ガスバリア層や耐溶剤性層等を設けてもよい。
【0125】
また、本発明に係る基材は、上記の記載に限定されない。フィルム形状のものの膜厚としては10〜1000μmが好ましく、より好ましくは40〜200μmである。
【0126】
【実施例】
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、これらに限定されない。
【0127】
〔評価〕
《透過率》
JIS−R−1635に従い、日立製作所製分光光度計U−4000型を用いて測定を行った。試験光の波長は550nmとした。
【0128】
《比抵抗値》
JIS−R−1637に従い、四端子法により求めた。なお、測定には三菱化学製ロレスタ−GP、MCP−T600を用いた。
【0129】
実施例1
〈電極の作製〉
図4に示したような2個の平板電極(長さ640mm、幅250mm、高さ300mm)を、冷却水による冷却手段を有するチタン合金T64製ジャケットを有する金属質母材の幅方向と高さ方向を有する面を主に、大気圧プラズマ法により高密度、高密着性のアルミナ溶射膜を1mm厚さで被覆し、その後テトラメトキシシランを酢酸エチルで希釈した溶液を塗布乾燥後、紫外線照射により硬化させ封孔処理を行い、表面を平滑にしてRmax5μmとした誘電体(比誘電率10、空隙率5体積%、耐熱性200℃、線熱膨張係数1.8×10−4/℃)となるように製作した。
【0130】
〈薄膜形成装置〉
図8に示した、プラズマ放電処理装置100、予備室420及び還元性ガス処理室400の順に配置し、プラズマ放電装置100の中に、上記2個の印加電極101及びアース電極102を放電空間103(電極間隙)が1.5mmになるように平行に誘電体被覆面を対峙させて設置し、電極101に高周波電源141を、他方の電極102にアースを接続した。2個の電極101及び102の底面(紙面下側)から1.5mm下側に該底面と平行になるように基材Fとしてガラス板を移動架台108の上に静置させる。移動架台108は移動手段(図には示されていない)により水平に平行にプラズマ放電装置100と還元性ガス処理室400の間を往復出来るようになっている。移動架台108上のガラス板(基材F)の端(紙面右側)がスリット出口105(放電空間下端)の真下になるように移動架台108を置く。
【0131】
〈透明導電性ガラス板の作製〉
前記プラズマ放電装置100の放電空間103を103kPaの圧力とし、下記混合ガスGを満たした。基材Fとしては厚さ0.5mm、長さ200mm、幅200mmのソーダガラス板を使用した。下記の透明導電性薄膜用混合ガスを放電空間103に導入し、表1に示した高周波電源を使用し、また電力密度で放電を行った。移動架台108上のガラス板(基材F)の左側をスリット出口105の下に位置させ、膜厚が10〜20nmになるように、ガラス板(基材F)を電極と基材との間の処理空間104においてジェット状の励起またはプラズマ状態の薄膜形成ガスに晒し、1回目の薄膜を形成した。なお、ガラス板(基板F)の温度は250℃とし薄膜形成した。薄膜形成後、移動架台108を、ゲート119を開いて、予備室420に導入し、ゲート119を閉めて、次にゲート419を開いて還元性ガス処理室400に導入してゲート419を閉じて下記の還元性ガスで処理した。その後逆に同様にしてプラズマ放電装置に戻し、膜厚を10〜20nmになるように励起またはプラズマ状態の薄膜形成ガスに晒し、再び予備室、還元性ガス処理室を行き来、往復して、励起またはプラズマ状態の薄膜形成ガス及び還元性ガスに4回ずつ晒して、最終的に80nmの膜厚のITO膜を形成して試料1〜6を作製した。
【0132】
比較例1
図8の薄膜形成装置のかわりに図4に示した大気圧プラズマ放電処理装置を用い、表1に示したように高周波電源、電力密度の一部を変更し、還元性ガス処理を行わなかった以外は実施例1と同様に行い、100nmのITO膜を基材上に形成して、試料No.7、8、9、11及び12を作製した。試料No.10は、使用した電源が高電圧パルス電源(ハイデン研究所社製、半導体素子:IXYS社製、型番IXBH40N160−627Gを使用)で、周波数8kHz、立ち上り時間1μsec、パルス継続時間100μsecのパルス電圧で行った。
【0133】
実施例2
〈電極の作製〉
図1のロール回転電極35に使用するロール電極35a(図2)は、冷却水による冷却手段を有するチタン合金T64製ジャケットロール金属質母材に対して大気圧プラズマ法により高密度、高密着性のアルミナ溶射膜を1mm厚さで被覆し、その後テトラメトキシシランを酢酸エチルで希釈した溶液を塗布乾燥後、紫外線照射により硬化させ封孔処理を行い、表面を平滑にしてRmax5μmとした誘電体(比誘電率10、空隙率5体積%、耐熱性200℃、線熱膨張係数1.8×10−4/℃)を有するロール径1000mmφとなるようにロール回転電極35を製作した。
【0134】
一方、図1の角筒型固定電極群36に使用する角筒型電極36aは、中空の角筒型のチタン合金T64の金属質母材で作製し、上記同様の誘電体を同条件にて被覆し、同様な物性値のものを得た。
【0135】
〈薄膜形成装置〉
図6(図6は符号を省略してあるため図1を参照)に示した、プラズマ放電装置30及び還元性ガス処理装置300を順に配置し、プラズマ放電装置30の中、ロール回転電極35のまわりに電極間隙32(放電空間)が1mmになるように、角筒型電極をロール回転電極35のまわりに、25本配置した(図では10本で示した)角筒型固定電極群36の放電総面積は、150cm(幅手方向の長さ)×4cm(搬送方向の長さ)×25本(電極の数)=15000cm2であった。ロール回転電極は接地し、角筒型固定電極群には高周波電源41をそれぞれ接続した。
【0136】
還元性ガス処理装置300はロール径1000mmφの耐熱性を有する樹脂で被覆されているステンレススティール製の回転ドラム301のまわりにカバー303があり処理室302を還元性ガスで満たせるようになっている。該カバー303の末端にはニップロール306と仕切板307がついている。なお、ロール回転電極35、回転ドラム301は同期して回転するようにドライブされている。
【0137】
図6のプラズマ放電装置30と還元性ガス処理装置300を4基ずつ交互に連結されているものを使用した。
【0138】
〈透明導電性フィルムの作製〉
基材Fをロール回転電極35に巻き回しながら接触して移送させ、放電空間32を103kPaの圧力とし、放電空間32に下記混合ガスを満たした。基材Fとしては表1に示したように、非晶質ポリオレフィン樹脂フィルム(JSR社製ARTONフィルム、厚さ100μm)を使用した。また、高周波電源を使用し表2に示した周波数および電力密度で放電を行い、膜厚が20〜25nmになるように薄膜形成を行い、続いて還元性ガス処理装置300に導入し回転ドラム301に巻き回しながら接触して移送させ、還元性ガス処理空間302に下記還元性ガスを満たして、還元性ガス処理を行った。続いて、2番目のプラズマ放電装置及び還元性ガス処理装置、3番目のプラズマ放電装置及び還元性処理装置、更に4番目のプラズマ放電装置及び還元性処理装置で交互に薄膜形成及び還元処理を行い、仕上がり透明導電性薄膜の膜厚を95〜100nmとした。なお、4基の条件は全て同じである。表2のようにITO、FTO、IZO膜を形成して試料13〜16を作製した。
【0139】
比較例2
図6の薄膜形成装置の代わりに図1に示した大気圧プラズマ放電処理装置を用い、表2に示したように高周波電源、電力密度の一部を変更し、還元性ガス処理を行わなかった以外は実施例2と同様に行い、95〜100nmの、ITO、IZO膜及びFTO膜を基材上に形成して、試料No.17〜20とした。
【0140】
以上、実施例1,2および比較例1および2で作製した試料No.1〜20について上述の評価を行い、その結果を表1および2に示した。
【0141】
【表1】
【0142】
【表2】
【0143】
(結果)
大気圧プラズマ放電薄膜形成方法により形成した薄膜を還元性ガスで処理し、薄膜形成と還元性ガス処理を繰り返し行うことによって透明導電性薄膜を形成する本発明の方法は、透明性に優れ、非常に低い比抵抗値を有する透明導電性薄膜が得られることが判明した。これに対して、薄膜形成後還元性ガス処理をしなかった比較例は、ある程度の透明度は得られるものの、比抵抗値が高かった。
【0144】
また、本発明の方法により得られた透明導電性薄膜は別に、耐湿、耐熱特性を温度60℃、90%RHの強制劣化条件での比抵抗値の変化でみたところ良好な性質を示し、水、塩酸及び第二塩化鉄溶液を混合したエッチング液をもちいてのエッチング性も、透明導電性薄膜の除去が完全であり、エッチングパターンの境界部分も明瞭であった。
【0145】
【発明の効果】
本発明により、透明性、導電性、エッチング特性に優れた透明導電性物品及びその製造方法を提供出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る大気圧プラズマ放電処理装置の一例を示す概略図である。
【図2】図1に示したロール回転電極の導電性の金属質母材とその上に被覆されている誘電体の構造を示す一例を示す斜視図である。
【図3】図1に示した角筒型電極の母材とその上に被覆されている誘電体の構造を示す一例を示す斜視図である。
【図4】本発明に係る大気圧プラズマ放電処理装置の一例を示す概略図である。
【図5】本発明に係る大気圧プラズマ放電処理装置の一例を示す概略図である。
【図6】本発明の薄膜形成装置の一例を示す概略図である。
【図7】本発明の薄膜形成装置の一例を示す概略図である。
【図8】本発明の薄膜形成装置の一例を示す概略図である。
【図9】本発明の薄膜形成装置の一例を示す概略図である。
【図10】本発明の薄膜形成装置の一例を示す概略図である。
【図11】図10の部分拡大図である。
【符号の説明】
100 プラズマ放電処理装置
101 印加電極
102 アース電極
103 放電空間
104 処理空間
108、108′ 移動架台
400 還元性ガス処理室
F 基材
Claims (18)
- 対向電極間(放電空間)を、大気圧もしくはその近傍の圧力とし、放電ガスと薄膜形成ガスを主構成成分とする透明導電性薄膜形成ガスのうちの少なくとも放電ガスを該対向電極間に導入し、高周波電圧を該対向電極間に印加して放電ガスをプラズマ状態とし、続いてプラズマ状態になった薄膜形成ガスに基材を晒して基材上に薄膜を形成する大気圧プラズマ放電薄膜形成方法を用いた透明導電性薄膜を有する物品の製造方法において、基材上を該プラズマ状態の薄膜形成ガスに晒して薄膜を形成した後の基材上の薄膜を還元性ガスに晒し、更に該基材上の薄膜を該プラズマ状態の薄膜形成ガスと該還元性ガスに交互に晒すことを特徴とする透明導電性薄膜を有する物品の製造方法。
- 前記基材が樹脂フィルムまたは樹脂シートであることを特徴とする請求項1に記載の透明導電性薄膜を有する物品の製造方法。
- 前記基材がガラス板であることを特徴とする請求項1に記載の透明導電性薄膜を有する物品の製造方法。
- 前記薄膜形成ガスが少なくとも有機金属化合物を含有することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の透明導電性薄膜を有する物品の製造方法。
- 前記有機金属化合物が下記一般式(I)で表されるものであることを特徴とする請求項4に記載の透明導電性薄膜を有する物品の製造方法。
一般式(I) R1 xMR2 yR3 z
(式中、Mは金属、R1はアルキル基、R2はアルコキシ基、R3はβ−ジケトン錯体基、β−ケトカルボン酸エステル錯体基、β−ケトカルボン酸錯体基及びケトオキシ基(ケトオキシ錯体基)から選ばれる基であり、金属Mの価数をmとすると、x+y+z=mであり、x=0〜mまたはx=0〜m−1であり、y=0〜m、z=0〜mである。) - 前記一般式(I)で表される有機金属化合物が、R2で表されるアルコキシ基を少なくとも一つ有するものであることを特徴とする請求項5に記載の透明導電性薄膜を有する物品の製造方法。
- 前記一般式(I)で表される有機金属化合物が、R3で表されるβ−ジケトン錯体基、β−ケトカルボン酸エステル錯体基、β−ケトカルボン酸錯体基及びケトオキシ基(ケトオキシ錯体基)から選ばれる基を少なくとも一つ有することを特徴とする請求項5または6に記載の透明導電性薄膜を有する物品の製造方法。
- 前記一般式(I)で表される有機金属化合物のMの金属が、インジウム(In)、錫(Sn)、亜鉛(Zn)、ジルコニウム(Zr)、アンチモン(Sb)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)及びゲルマニウム(Ge)から選ばれる少なくとも一つのものであることを特徴とする請求項5乃至7の何れか1項に記載の透明導電性薄膜を有する物品の製造方法。
- 前記薄膜形成ガスが、補助ガスとして酸化性ガスを含有することを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載の透明導電性薄膜を有する物品の製造方法。
- 前記酸化性ガスが、酸素、オゾン、二酸化炭素及び空気から選ばれることを特徴とする請求項9に記載の透明導電性薄膜を有する物品の製造方法。
- 前記放電ガスが、ヘリウム、アルゴン及び窒素から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1乃至10の何れか1項に記載の透明導電性薄膜を有する物品の製造方法。
- 前記還元性ガスが、水素、炭化水素及び水から選ばれる少なくとも一つのガスであることを特徴とする請求項1乃至11の何れか1項に記載の透明導電性薄膜を有する物品の製造方法。
- 高周波電圧をかける周波数を200kHz以上とすることを特徴とする請求項1乃至12の何れか1項に記載の透明導電性薄膜を有する物品の製造方法。
- 高周波電圧をかける周波数を150MHz以下とすることを特徴とする請求項13に記載の透明導電性薄膜を有する物品の製造方法。
- 電力密度を50W/cm2以下とすることを特徴とする請求項1乃至14の何れか1項に記載の透明導電性薄膜を有する物品の製造方法。
- 電力密度を1.2W/cm2以上とすることを特徴とする請求項15に記載の透明導電性薄膜を有する物品の製造方法。
- 請求項1乃至16の何れか1項に記載の方法で作製したことを特徴とする透明導電性薄膜を有する物品。
- 前記透明導電性薄膜が1×10−3Ω・cm以下の比抵抗値を有することを特徴とする請求項17に記載の透明導電性薄膜を有する物品。
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