JP2004284963A - 芳香族シラン化合物の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】収率の高い芳香族シラン化合物の製造方法の提供。
【解決手段】芳香環の炭素原子に結合した脱離基(X)を1個以上有する芳香族化合物と、ケイ素原子に結合した水素原子を有するシラン化合物とを、1価のロジウム触媒、ハロゲンの金属塩及び塩基の存在下、シラン化合物のケイ素原子に結合した水素原子と脱離基(X)との脱HXによりカップリング反応させることを特徴とする芳香族シラン化合物の製造方法。
【選択図】 なし
【解決手段】芳香環の炭素原子に結合した脱離基(X)を1個以上有する芳香族化合物と、ケイ素原子に結合した水素原子を有するシラン化合物とを、1価のロジウム触媒、ハロゲンの金属塩及び塩基の存在下、シラン化合物のケイ素原子に結合した水素原子と脱離基(X)との脱HXによりカップリング反応させることを特徴とする芳香族シラン化合物の製造方法。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、芳香環の炭素原子に結合した脱離基を1個以上有する芳香族化合物と、ケイ素原子に結合した水素原子を有するシラン化合物とをカップリング反応させて芳香族シラン化合物を製造する方法に関し、特に収率を改善した芳香族シラン化合物の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
芳香族化合物のシリル化反応として、リチウムやマグネシウムを触媒として使用する反応が広く用いられている。しかし、この方法は活性の高いアリールリチウム化合物やアリールグリニャール化合物を経由するため反応の制御が難しく、1個のシリコン原子にアリール基が2個以上置換されたシリル化合物が多く生成し、その分離が困難であるため十分な収率が得られないという課題があった。
遷移金属錯体を触媒に用いたシリル化反応として、パラジウム金属錯体を触媒に用いたシリル化反応が知られているが、基質であるハロゲン化芳香族化合物としてヨウ素化合物での収率は良いものの、それ以外では収率が低下してしまい、さらにはベンゼン環の置換基によって収率が大きく変わるため、基質の選択の自由度が乏しいという課題があった。
ロジウム金属錯体を触媒に用いたシリル化反応として、[ビス(アセトニトリル)(1,5−シクロオクタジエン)ロジウム(I)]テトラフルオロボレート錯体を使用した反応が公知である(例えば非特許文献1参照。)。この非特許文献1には、アリールハライドとトリエトキシシランとを、[ビス(アセトニトリル)(1,5−シクロオクタジエン)ロジウム(I)]テトラフルオロボレート錯体、ヨウ化テトラブチルアンモニウム及び塩基(Et3N)の存在下で反応させてアリールトリエトキシシランを製造する反応系が記載されている。
【0003】
【非特許文献1】
オーガニックレターズ(ORGANIC LETTERS),2002年,4巻,No.11,p. 1843−1845
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、非特許文献1に記載されたロジウム金属錯体を用いた芳香族シラン化合物の製造において、良好な反応収率を示す反応系は、ロジウム金属錯体として上記化合物を用い、ヨウ素化合物としてヨウ化アルキルアンモニウム塩を用いた場合のみであり、それ以外のロジウム触媒を使用した場合には収率が低下してしまう。
また、基質としてトリフルオロメチル基を含有する化合物を用いた場合には、収率が70%程度に低下してしまう課題があった。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、収率の高い芳香族シラン化合物の製造方法の提供を目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明は、芳香環(A)の炭素原子に結合した脱離基(X)を1個以上有する芳香族化合物と、ケイ素原子に結合した水素原子を有するシラン化合物とを、1価のロジウム触媒、ハロゲンの金属塩及び塩基の存在下、シラン化合物のケイ素原子に結合した水素原子と脱離基(X)との脱HXによりカップリング反応させることを特徴とする芳香族シラン化合物の製造方法を提供する。
本発明の方法において、カップリング反応が次式(1)
【0007】
【化2】
【0008】
[式中、A−Xnは芳香環(A)の炭素原子に結合した脱離基(X)をn個有する芳香族化合物を示し、nは、1〜6の整数を示し、X1,X2及びX3はそれぞれ独立にアルキル基、アリール基、ハロゲン原子、アシルオキシ基、アミノ基又はアルコキシ基を示し、Rh(I)は1価のロジウム触媒を示す。]
で表される反応であることが好ましい。
また、1価のロジウム触媒は、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム、(アセチルアセトナト)ジカルボニルロジウム、(アセチルアセトナト)カルボニル(トリフェニルホスフィン)ロジウム、ジ−μ−クロロビス[(η−1,5−シクロオクタジエン)ロジウム(I)]、トランス−ヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスファン)ロジウム、[ビス(アセトニトリル)(1,5−シクロオクタジエン)ロジウム(I)]テトラフルオロボレートからなる群から選択される1種または2種以上であることが好ましい。
さらに、前記芳香族化合物及び前記触媒が存在する反応系にケイ素原子に結合した水素原子を有するシラン化合物を連続的に添加することが好ましい。
また、芳香族化合物がフッ素原子を有してもよい。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明において、脱離基(X)とは、カップリング反応において芳香族化合物から脱離され、芳香環(A)の炭素原子とシラン化合物のケイ素原子とを結合させるための基をいう。本発明において好ましい脱離基(X)としては、フッ素原子を除くハロゲン原子又は有機スルホニルオキシ基が挙げられる。ハロゲン原子としては、臭素原子又はヨウ素原子が好ましい。有機スルホニルオキシ基としては、メタンスルホニルオキシ基、p−トルエンスルホニルオキシ基又はトリフルオロメタンスルホニルオキシ基が好ましく、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基がさらに好ましい。
【0010】
本発明において、芳香族化合物の芳香環(A)は、芳香族性の環を1個以上有する化合物を意味し、芳香族性の環としては、ベンゼン環などの単環、ナフタレン環などの縮合多環、ピリジン環などの芳香族性複素環などがある。この芳香環(A)は2個以上の芳香族性の環を有していてもよく、複数の芳香族性の環はビフェニルなどのように直接結合してもよく、ビスフェノールAやジフェニルエーテルなどのように多官能の連結基を介して結合していてもよい。また、芳香環(A)は非芳香族性の環を有していてもよい。本発明における脱離基(X)は、芳香族性の環の炭素原子に直接結合しており、その数は1〜3であることが好ましく、特に1〜2であることが好ましい。
【0011】
上記芳香環(A)は、上記脱離基(X)とは別の置換基を有していてもよい。たとえば、フッ素原子、メチル基などのアルキル基、トリフルオロメチル基などのポリフルオロアルキル基、メトキシ基などのアルコキシ基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基などが挙げられる、これら置換基の内有機基である置換基の炭素数は6以下が好ましい。特に好ましい置換基はフッ素原子及びトリフルオロメチル基である。
【0012】
本発明において、ケイ素原子に結合した水素原子を有するシラン化合物(以下、単にシラン化合物とも記す。)は、各種の化合物から選択して用いることができる。この場合の水素原子の数は1〜3個であり、1〜2であることが好ましく、特に1であることが好ましい。上記シラン化合物は水素原子が結合したケイ素原子以外にさらに1〜3価のオルガノシリル基を有してもよい。オルガノシリル基とは、1〜3個の1価有機基が直接結合した(水素原子が直接結合していない)ケイ素原子や2または3価の有機基が1個のケイ素原子に結合したケイ素原子をいう。さらに場合により上記シラン化合物は上記以外の1〜3価のケイ素原子や4価のケイ素原子を含んでいてもよい。
【0013】
本発明において、ケイ素原子に結合した水素原子を有するシラン化合物としては、H−SiX1X2X3 (ここで、X1,X2及びX3はそれぞれ独立にアルキル基、アリール基、ハロゲン原子、アシルオキシ基、アミノ基又はアルコキシ基を示す。)で表される化合物が好ましい。特に、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、アミノ基又はアルコキシ基が好ましい。アルキル基及びアリール基の炭素数は1〜8が好ましい。上記アルキル基及びフェニル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、フェニル基、トリル基等が好ましい。ハロゲン原子としてはフッ素、塩素が好ましい。アミノ基としては炭素数1〜8のジアルキルアミノ基が好ましく、たとえばジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等が挙げられる。アルコキシ基の炭素数は1〜8が好ましく、たとえばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。
【0014】
本発明におけるシラン化合物としては、トリフルオロシラン、トリクロロシラン、トリヒドロシラン、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリプロピルシラン、トリブチルシラン、メチルジフルオロシラン、メチルジクロロシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、メチルシラン、フェニルジクロロシラン、フェニルジメトキシシラン、フェニルジエトキシシラン、メチルメトキシシラン、メチルエトキシシラン、ジメチルクロロシラン、ジメチルメトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルシラン、ジフェニルメトキシシラン、ジフェニルエトラン、ジフェニルシラン等が挙げられる。これらのシラン化合物の内でも、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、フェニルジメトキシシラン、フェニルジエトキシシラン、ジメチルメトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジフェニルメトキシシラン、ジフェニルエトキシシラン等のアルコキシシランが特に好ましい。
【0015】
本発明の芳香族シラン化合物の製造方法は、例えば式(1)で表される。
【0016】
【化3】
【0017】
[式中、A−Xnは、芳香環(A)の炭素原子に結合した脱離基(X)をn個有する芳香族化合物を示し、nは、1〜6の整数を示し、X1,X2及びX3はそれぞれ独立にアルキル基、アリール基、ハロゲン原子、アシルオキシ基、アミノ基又はアルコキシ基を示し、Rh(I)は1価のロジウム触媒を示す。]
【0018】
本発明において、1価のロジウム触媒としては、1価のロジウム錯体から選択される1種または2種以上が挙げられ、好ましくはクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム、(アセチルアセトナト)ジカルボニルロジウム、(アセチルアセトナト)カルボニル(トリフェニルホスフィン)ロジウム、ジ−μ−クロロビス[(η−1,5−シクロオクタジエン)ロジウム(I)]、トランス−ヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスファン)ロジウム、[ビス(アセトニトリル)(1,5−シクロオクタジエン)ロジウム(I)]テトラフルオロボレートからなる群から選択される1種または2種以上が挙げられる。これらの内、ジ−μ−クロロビス[(η−1,5−シクロオクタジエン)ロジウム(I)]が最も好ましい。
【0019】
本発明において、ハロゲンの金属塩とは、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子と金属原子が結合した無機化合物を言う。ハロゲンの金属塩を用いることにより、シラン化合物の副反応を抑制することができ、芳香族シラン化合物を高収率で得ることができる。本発明において好ましいハロゲンの金属塩としては、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化亜鉛、ヨウ化アルミニウム、ヨウ化カドミウム、ヨウ化銀、ヨウ化サマリウム、ヨウ化水銀、ヨウ化セシウム、ヨウ化銅、ヨウ化鉛、臭化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウムからなる群から選択される1種または2種以上が挙げられる。特に好ましいハロゲンの金属塩としては、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウムが挙げられる。
【0020】
本発明において、塩基は有機塩基及び無機塩基のいずれかを用いることができる。有機塩基と無機塩基とを併用してもかまわない。有機塩基としては、例えばトリエチルアミン、トリ(n−プロピル)アミン及びトリ(n−ブチル)アミン等に代表される脂肪族アミン類、N−メチルピぺリジン及びキヌクリジン等の環状アミン類等が挙げられる。また無機塩基としては、例えば炭酸ナトリウム及び炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩、水酸化マグネシウム及び水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物等を挙げることができる。本発明において、好ましい塩基としては有機塩基が挙げられ、より好ましくは脂肪族アミン類が挙げられ、特に好ましくはトリエチルアミンが挙げられる。
【0021】
本発明では、芳香環の炭素原子に結合した脱離基を1個以上有する芳香族化合物と、ケイ素原子に結合した水素原子を有するシラン化合物とを、1価のロジウム触媒、ハロゲンの金属塩及び塩基の存在下でカップリング反応させて芳香族シラン化合物を製造する。この反応において、反応基質(芳香族化合物およびシラン化合物)、触媒、ハロゲンの金属塩及び塩基の配合量、温度、時間等の反応条件は、所望の芳香族シラン化合物を製造可能であれば、特に限定されないが、以下に好ましい条件を記述する。
【0022】
(芳香族化合物中の脱離基Xのモル数):(シラン化合物中のケイ素原子に結合した水素原子のモル数)は、1:1〜1:100の範囲が好ましく、さらに好ましくは1:1〜1:5の範囲である。
芳香族化合物の脱離基Xのモル数に対するロジウム触媒のモル数の割合は1以下とすることが触媒効果を有利にするために好ましく、さらに好ましくは0.005〜0.2の範囲であり、最も好ましくは0.01〜0.1である。芳香族化合物の脱離基Xのモル数に対する塩基のモル数の割合は1以上とすることが好ましく、さらに好ましくは1〜50の範囲であり、最も好ましくは1〜10の範囲である。また、芳香族化合物の脱離基Xのモル数に対するハロゲンの金属塩のモル数の割合は0.01以上とすることが好ましく、さらに好ましくは1〜10の範囲であり、最も好ましいのは1〜5の範囲である。
【0023】
本発明の方法において、カップリング反応は溶媒希釈下に行うことが好ましい。この溶媒としては、テトラヒドロフラン(THF)、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン及びジエチレングリコールジメチルエ−テル(ジグライム)等のエ−テル類、ベンゼン、トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド及びスルホラン等の極性溶媒類等が挙げられ、好ましくは極性溶媒類が挙げられる。その中でもジメチルホルムアミドが最も好ましい。
【0024】
カップリング反応は、反応系内の化合物の中で沸点が一番低い化合物の沸点以下の温度で行うことが好ましい。10℃〜100℃が好ましく、20℃〜90℃がさらに好ましく、30℃〜80℃が最も好ましい。通常は常圧下で行うことが好ましいが、必要に応じて加圧下で行ってもよい。
【0025】
本発明の製造方法において、反応基質、触媒、ハロゲンの金属塩及び塩基の反応系への添加順序には制限は無いが、芳香族化合物、触媒、ハロゲンの金属塩及び塩基を最初に仕込み、最後にシラン化合物を加えることが好ましい。また、芳香族化合物及び触媒の存在する反応系に、シラン化合物を連続的に添加する方法も好ましい。これらの方法でカップリング反応を行なうことが、後述するように副反応を抑えることができる点で好ましい。さらに、操作性も考慮すると、芳香族化合物、触媒、ハロゲンの金属塩及び塩基を最初に反応容器に仕込み、最後にシラン化合物を連続で添加する方法が最も好ましい。
【0026】
反応は、反応基質である芳香族化合物とシラン化合物とがカップリング反応するのに十分な時間行われる。しかしながら、反応が進み、生成物が増加するにつれて、望ましくない副反応、例えば、シラン化合物が分解・重合することが問題となる。それ故、所望の生成物の収量を最適化するために、シラン化合物を連続的に反応系に添加することが望ましい。
【0027】
シラン化合物の連続添加に要する時間、及び添加終了後の反応時間等は、反応物の性状、及び選択された操作条件、例えば、温度、反応物のモル比、等により最適化可能であるが、連続添加に要する時間は、通常0.5時間〜24時間が好ましく、4時間〜10時間が最も好ましい。添加終了後の反応時間は、通常0.5時間〜10時間が好ましく、0.5時間〜5時間が最も好ましい。
【0028】
【実施例】
本発明を以下の実施例により説明するが、かかる実施例は本発明の技術範囲を限定することを意図するものではない。
【0029】
(実施例1)
50mLのガラス製三ツ口フラスコに、ブロモベンゼン(1.0g)、トリエチルアミン(1.9g)、ヨウ化ナトリウム(1.0g)、ジ−μ−クロロビス[(η−1,5−シクロオクタジエン)ロジウム(I)](47mg)、トリエトキシシラン(2.1g)、およびN,N−ジメチルホルムアミド(19g)を仕込み、80℃に加熱し、その温度で2時間攪拌した。粗液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、ブロモベンゼンの転化率は100%であった。また、目的物であるトリエトキシシリルベンゼンとトリエトキシシラン由来の不純物との質量比は64.5:35.5であった。NMRより求めた収率は93%であった。
【0030】
(比較例)
50mLのガラス製三ツ口フラスコに、ブロモベンゼン(1.0g)、トリエチルアミン(1.9g)、ヨウ化テトラブチルアンモニウム(2.4g)、ジ−μ−クロロビス[(η−1,5−シクロオクタジエン)ロジウム(I)](47mg)、トリエトキシシラン(2.1g)、およびN,N−ジメチルホルムアミド(19g)を仕込み、80℃に加熱し、その温度で2時間攪拌した。粗液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、ブロモベンゼンの転化率は100%であった。また、目的物であるトリエトキシシリルベンゼンとトリエトキシシラン由来の不純物との質量比は42.5:57.5であった。NMRより求めた収率は71%であった。
【0031】
(実施例2)
50mLのガラス製三ツ口フラスコに、4,4’−ジブロモビフェニル(1.0g)、トリエチルアミン(1.9g)、ヨウ化ナトリウム(2.4g)、ジ−μ−クロロビス[(η−1,5−シクロオクタジエン)ロジウム(I)](47mg)およびN,N−ジメチルホルムアミド(19.0mL)を仕込み、80℃に加熱した。トリエトキシシラン(4.2g)を6時間かけて滴下し、そのままの温度で1時間攪拌した。粗液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、4,4’−ジブロモビフェニルの転化率は100%であった。NMRより求めた4,4’−ビス(トリエトキシシリル)ビフェニルの収率は92%であった。
【0032】
(実施例3)
50mLのガラス製三ツ口フラスコに、p−トリフルオロメチルブロモベンゼン(1.0g)、トリエチルアミン(1.3g)、ヨウ化ナトリウム(1.6g)、ジ−μ−クロロビス[(η−1,5−シクロオクタジエン)ロジウム(I)](33mg)およびN,N−ジメチルホルムアミド(19.0mL)を仕込み、80℃に加熱した。トリエトキシシラン(2.9g)を6時間かけて滴下し、そのままの温度で1時間攪拌した。粗液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、p−トリフルオロメチルブロモベンゼンの転化率は100%であった。NMRより求めた1−トリエトキシシリル−4−トリフルオロメチルベンゼンの収率は91%であった。
【0033】
(実施例4)
ジ−μ−クロロビス[(η−1,5−シクロオクタジエン)ロジウム(I)]を[ビス(アセトニトリル)(1,5−シクロオクタジエン)ロジウム(I)]テトラフルオロボレート錯体に変えた以外は、実施例3と同様に操作した。p−トリフルオロメチルブロモベンゼンの転化率は100%であった。NMRより求めた1−トリエトキシシリル−4−トリフルオロメチルベンゼンの収率は94%であった。
【0034】
【発明の効果】
本発明によれば、従来技術よりも高い収率で芳香族シラン化合物を製造することができる。
また、本発明は基質である芳香族化合物の選択自由度が従来技術よりも広くなり、特にフッ素原子を有する芳香族化合物を用いて高収率でフッ素含有芳香族シラン化合物を製造することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、芳香環の炭素原子に結合した脱離基を1個以上有する芳香族化合物と、ケイ素原子に結合した水素原子を有するシラン化合物とをカップリング反応させて芳香族シラン化合物を製造する方法に関し、特に収率を改善した芳香族シラン化合物の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
芳香族化合物のシリル化反応として、リチウムやマグネシウムを触媒として使用する反応が広く用いられている。しかし、この方法は活性の高いアリールリチウム化合物やアリールグリニャール化合物を経由するため反応の制御が難しく、1個のシリコン原子にアリール基が2個以上置換されたシリル化合物が多く生成し、その分離が困難であるため十分な収率が得られないという課題があった。
遷移金属錯体を触媒に用いたシリル化反応として、パラジウム金属錯体を触媒に用いたシリル化反応が知られているが、基質であるハロゲン化芳香族化合物としてヨウ素化合物での収率は良いものの、それ以外では収率が低下してしまい、さらにはベンゼン環の置換基によって収率が大きく変わるため、基質の選択の自由度が乏しいという課題があった。
ロジウム金属錯体を触媒に用いたシリル化反応として、[ビス(アセトニトリル)(1,5−シクロオクタジエン)ロジウム(I)]テトラフルオロボレート錯体を使用した反応が公知である(例えば非特許文献1参照。)。この非特許文献1には、アリールハライドとトリエトキシシランとを、[ビス(アセトニトリル)(1,5−シクロオクタジエン)ロジウム(I)]テトラフルオロボレート錯体、ヨウ化テトラブチルアンモニウム及び塩基(Et3N)の存在下で反応させてアリールトリエトキシシランを製造する反応系が記載されている。
【0003】
【非特許文献1】
オーガニックレターズ(ORGANIC LETTERS),2002年,4巻,No.11,p. 1843−1845
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、非特許文献1に記載されたロジウム金属錯体を用いた芳香族シラン化合物の製造において、良好な反応収率を示す反応系は、ロジウム金属錯体として上記化合物を用い、ヨウ素化合物としてヨウ化アルキルアンモニウム塩を用いた場合のみであり、それ以外のロジウム触媒を使用した場合には収率が低下してしまう。
また、基質としてトリフルオロメチル基を含有する化合物を用いた場合には、収率が70%程度に低下してしまう課題があった。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、収率の高い芳香族シラン化合物の製造方法の提供を目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明は、芳香環(A)の炭素原子に結合した脱離基(X)を1個以上有する芳香族化合物と、ケイ素原子に結合した水素原子を有するシラン化合物とを、1価のロジウム触媒、ハロゲンの金属塩及び塩基の存在下、シラン化合物のケイ素原子に結合した水素原子と脱離基(X)との脱HXによりカップリング反応させることを特徴とする芳香族シラン化合物の製造方法を提供する。
本発明の方法において、カップリング反応が次式(1)
【0007】
【化2】
【0008】
[式中、A−Xnは芳香環(A)の炭素原子に結合した脱離基(X)をn個有する芳香族化合物を示し、nは、1〜6の整数を示し、X1,X2及びX3はそれぞれ独立にアルキル基、アリール基、ハロゲン原子、アシルオキシ基、アミノ基又はアルコキシ基を示し、Rh(I)は1価のロジウム触媒を示す。]
で表される反応であることが好ましい。
また、1価のロジウム触媒は、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム、(アセチルアセトナト)ジカルボニルロジウム、(アセチルアセトナト)カルボニル(トリフェニルホスフィン)ロジウム、ジ−μ−クロロビス[(η−1,5−シクロオクタジエン)ロジウム(I)]、トランス−ヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスファン)ロジウム、[ビス(アセトニトリル)(1,5−シクロオクタジエン)ロジウム(I)]テトラフルオロボレートからなる群から選択される1種または2種以上であることが好ましい。
さらに、前記芳香族化合物及び前記触媒が存在する反応系にケイ素原子に結合した水素原子を有するシラン化合物を連続的に添加することが好ましい。
また、芳香族化合物がフッ素原子を有してもよい。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明において、脱離基(X)とは、カップリング反応において芳香族化合物から脱離され、芳香環(A)の炭素原子とシラン化合物のケイ素原子とを結合させるための基をいう。本発明において好ましい脱離基(X)としては、フッ素原子を除くハロゲン原子又は有機スルホニルオキシ基が挙げられる。ハロゲン原子としては、臭素原子又はヨウ素原子が好ましい。有機スルホニルオキシ基としては、メタンスルホニルオキシ基、p−トルエンスルホニルオキシ基又はトリフルオロメタンスルホニルオキシ基が好ましく、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基がさらに好ましい。
【0010】
本発明において、芳香族化合物の芳香環(A)は、芳香族性の環を1個以上有する化合物を意味し、芳香族性の環としては、ベンゼン環などの単環、ナフタレン環などの縮合多環、ピリジン環などの芳香族性複素環などがある。この芳香環(A)は2個以上の芳香族性の環を有していてもよく、複数の芳香族性の環はビフェニルなどのように直接結合してもよく、ビスフェノールAやジフェニルエーテルなどのように多官能の連結基を介して結合していてもよい。また、芳香環(A)は非芳香族性の環を有していてもよい。本発明における脱離基(X)は、芳香族性の環の炭素原子に直接結合しており、その数は1〜3であることが好ましく、特に1〜2であることが好ましい。
【0011】
上記芳香環(A)は、上記脱離基(X)とは別の置換基を有していてもよい。たとえば、フッ素原子、メチル基などのアルキル基、トリフルオロメチル基などのポリフルオロアルキル基、メトキシ基などのアルコキシ基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基などが挙げられる、これら置換基の内有機基である置換基の炭素数は6以下が好ましい。特に好ましい置換基はフッ素原子及びトリフルオロメチル基である。
【0012】
本発明において、ケイ素原子に結合した水素原子を有するシラン化合物(以下、単にシラン化合物とも記す。)は、各種の化合物から選択して用いることができる。この場合の水素原子の数は1〜3個であり、1〜2であることが好ましく、特に1であることが好ましい。上記シラン化合物は水素原子が結合したケイ素原子以外にさらに1〜3価のオルガノシリル基を有してもよい。オルガノシリル基とは、1〜3個の1価有機基が直接結合した(水素原子が直接結合していない)ケイ素原子や2または3価の有機基が1個のケイ素原子に結合したケイ素原子をいう。さらに場合により上記シラン化合物は上記以外の1〜3価のケイ素原子や4価のケイ素原子を含んでいてもよい。
【0013】
本発明において、ケイ素原子に結合した水素原子を有するシラン化合物としては、H−SiX1X2X3 (ここで、X1,X2及びX3はそれぞれ独立にアルキル基、アリール基、ハロゲン原子、アシルオキシ基、アミノ基又はアルコキシ基を示す。)で表される化合物が好ましい。特に、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、アミノ基又はアルコキシ基が好ましい。アルキル基及びアリール基の炭素数は1〜8が好ましい。上記アルキル基及びフェニル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、フェニル基、トリル基等が好ましい。ハロゲン原子としてはフッ素、塩素が好ましい。アミノ基としては炭素数1〜8のジアルキルアミノ基が好ましく、たとえばジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等が挙げられる。アルコキシ基の炭素数は1〜8が好ましく、たとえばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。
【0014】
本発明におけるシラン化合物としては、トリフルオロシラン、トリクロロシラン、トリヒドロシラン、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリプロピルシラン、トリブチルシラン、メチルジフルオロシラン、メチルジクロロシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、メチルシラン、フェニルジクロロシラン、フェニルジメトキシシラン、フェニルジエトキシシラン、メチルメトキシシラン、メチルエトキシシラン、ジメチルクロロシラン、ジメチルメトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルシラン、ジフェニルメトキシシラン、ジフェニルエトラン、ジフェニルシラン等が挙げられる。これらのシラン化合物の内でも、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、フェニルジメトキシシラン、フェニルジエトキシシラン、ジメチルメトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジフェニルメトキシシラン、ジフェニルエトキシシラン等のアルコキシシランが特に好ましい。
【0015】
本発明の芳香族シラン化合物の製造方法は、例えば式(1)で表される。
【0016】
【化3】
【0017】
[式中、A−Xnは、芳香環(A)の炭素原子に結合した脱離基(X)をn個有する芳香族化合物を示し、nは、1〜6の整数を示し、X1,X2及びX3はそれぞれ独立にアルキル基、アリール基、ハロゲン原子、アシルオキシ基、アミノ基又はアルコキシ基を示し、Rh(I)は1価のロジウム触媒を示す。]
【0018】
本発明において、1価のロジウム触媒としては、1価のロジウム錯体から選択される1種または2種以上が挙げられ、好ましくはクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム、(アセチルアセトナト)ジカルボニルロジウム、(アセチルアセトナト)カルボニル(トリフェニルホスフィン)ロジウム、ジ−μ−クロロビス[(η−1,5−シクロオクタジエン)ロジウム(I)]、トランス−ヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスファン)ロジウム、[ビス(アセトニトリル)(1,5−シクロオクタジエン)ロジウム(I)]テトラフルオロボレートからなる群から選択される1種または2種以上が挙げられる。これらの内、ジ−μ−クロロビス[(η−1,5−シクロオクタジエン)ロジウム(I)]が最も好ましい。
【0019】
本発明において、ハロゲンの金属塩とは、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子と金属原子が結合した無機化合物を言う。ハロゲンの金属塩を用いることにより、シラン化合物の副反応を抑制することができ、芳香族シラン化合物を高収率で得ることができる。本発明において好ましいハロゲンの金属塩としては、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化亜鉛、ヨウ化アルミニウム、ヨウ化カドミウム、ヨウ化銀、ヨウ化サマリウム、ヨウ化水銀、ヨウ化セシウム、ヨウ化銅、ヨウ化鉛、臭化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウムからなる群から選択される1種または2種以上が挙げられる。特に好ましいハロゲンの金属塩としては、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウムが挙げられる。
【0020】
本発明において、塩基は有機塩基及び無機塩基のいずれかを用いることができる。有機塩基と無機塩基とを併用してもかまわない。有機塩基としては、例えばトリエチルアミン、トリ(n−プロピル)アミン及びトリ(n−ブチル)アミン等に代表される脂肪族アミン類、N−メチルピぺリジン及びキヌクリジン等の環状アミン類等が挙げられる。また無機塩基としては、例えば炭酸ナトリウム及び炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩、水酸化マグネシウム及び水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物等を挙げることができる。本発明において、好ましい塩基としては有機塩基が挙げられ、より好ましくは脂肪族アミン類が挙げられ、特に好ましくはトリエチルアミンが挙げられる。
【0021】
本発明では、芳香環の炭素原子に結合した脱離基を1個以上有する芳香族化合物と、ケイ素原子に結合した水素原子を有するシラン化合物とを、1価のロジウム触媒、ハロゲンの金属塩及び塩基の存在下でカップリング反応させて芳香族シラン化合物を製造する。この反応において、反応基質(芳香族化合物およびシラン化合物)、触媒、ハロゲンの金属塩及び塩基の配合量、温度、時間等の反応条件は、所望の芳香族シラン化合物を製造可能であれば、特に限定されないが、以下に好ましい条件を記述する。
【0022】
(芳香族化合物中の脱離基Xのモル数):(シラン化合物中のケイ素原子に結合した水素原子のモル数)は、1:1〜1:100の範囲が好ましく、さらに好ましくは1:1〜1:5の範囲である。
芳香族化合物の脱離基Xのモル数に対するロジウム触媒のモル数の割合は1以下とすることが触媒効果を有利にするために好ましく、さらに好ましくは0.005〜0.2の範囲であり、最も好ましくは0.01〜0.1である。芳香族化合物の脱離基Xのモル数に対する塩基のモル数の割合は1以上とすることが好ましく、さらに好ましくは1〜50の範囲であり、最も好ましくは1〜10の範囲である。また、芳香族化合物の脱離基Xのモル数に対するハロゲンの金属塩のモル数の割合は0.01以上とすることが好ましく、さらに好ましくは1〜10の範囲であり、最も好ましいのは1〜5の範囲である。
【0023】
本発明の方法において、カップリング反応は溶媒希釈下に行うことが好ましい。この溶媒としては、テトラヒドロフラン(THF)、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン及びジエチレングリコールジメチルエ−テル(ジグライム)等のエ−テル類、ベンゼン、トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド及びスルホラン等の極性溶媒類等が挙げられ、好ましくは極性溶媒類が挙げられる。その中でもジメチルホルムアミドが最も好ましい。
【0024】
カップリング反応は、反応系内の化合物の中で沸点が一番低い化合物の沸点以下の温度で行うことが好ましい。10℃〜100℃が好ましく、20℃〜90℃がさらに好ましく、30℃〜80℃が最も好ましい。通常は常圧下で行うことが好ましいが、必要に応じて加圧下で行ってもよい。
【0025】
本発明の製造方法において、反応基質、触媒、ハロゲンの金属塩及び塩基の反応系への添加順序には制限は無いが、芳香族化合物、触媒、ハロゲンの金属塩及び塩基を最初に仕込み、最後にシラン化合物を加えることが好ましい。また、芳香族化合物及び触媒の存在する反応系に、シラン化合物を連続的に添加する方法も好ましい。これらの方法でカップリング反応を行なうことが、後述するように副反応を抑えることができる点で好ましい。さらに、操作性も考慮すると、芳香族化合物、触媒、ハロゲンの金属塩及び塩基を最初に反応容器に仕込み、最後にシラン化合物を連続で添加する方法が最も好ましい。
【0026】
反応は、反応基質である芳香族化合物とシラン化合物とがカップリング反応するのに十分な時間行われる。しかしながら、反応が進み、生成物が増加するにつれて、望ましくない副反応、例えば、シラン化合物が分解・重合することが問題となる。それ故、所望の生成物の収量を最適化するために、シラン化合物を連続的に反応系に添加することが望ましい。
【0027】
シラン化合物の連続添加に要する時間、及び添加終了後の反応時間等は、反応物の性状、及び選択された操作条件、例えば、温度、反応物のモル比、等により最適化可能であるが、連続添加に要する時間は、通常0.5時間〜24時間が好ましく、4時間〜10時間が最も好ましい。添加終了後の反応時間は、通常0.5時間〜10時間が好ましく、0.5時間〜5時間が最も好ましい。
【0028】
【実施例】
本発明を以下の実施例により説明するが、かかる実施例は本発明の技術範囲を限定することを意図するものではない。
【0029】
(実施例1)
50mLのガラス製三ツ口フラスコに、ブロモベンゼン(1.0g)、トリエチルアミン(1.9g)、ヨウ化ナトリウム(1.0g)、ジ−μ−クロロビス[(η−1,5−シクロオクタジエン)ロジウム(I)](47mg)、トリエトキシシラン(2.1g)、およびN,N−ジメチルホルムアミド(19g)を仕込み、80℃に加熱し、その温度で2時間攪拌した。粗液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、ブロモベンゼンの転化率は100%であった。また、目的物であるトリエトキシシリルベンゼンとトリエトキシシラン由来の不純物との質量比は64.5:35.5であった。NMRより求めた収率は93%であった。
【0030】
(比較例)
50mLのガラス製三ツ口フラスコに、ブロモベンゼン(1.0g)、トリエチルアミン(1.9g)、ヨウ化テトラブチルアンモニウム(2.4g)、ジ−μ−クロロビス[(η−1,5−シクロオクタジエン)ロジウム(I)](47mg)、トリエトキシシラン(2.1g)、およびN,N−ジメチルホルムアミド(19g)を仕込み、80℃に加熱し、その温度で2時間攪拌した。粗液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、ブロモベンゼンの転化率は100%であった。また、目的物であるトリエトキシシリルベンゼンとトリエトキシシラン由来の不純物との質量比は42.5:57.5であった。NMRより求めた収率は71%であった。
【0031】
(実施例2)
50mLのガラス製三ツ口フラスコに、4,4’−ジブロモビフェニル(1.0g)、トリエチルアミン(1.9g)、ヨウ化ナトリウム(2.4g)、ジ−μ−クロロビス[(η−1,5−シクロオクタジエン)ロジウム(I)](47mg)およびN,N−ジメチルホルムアミド(19.0mL)を仕込み、80℃に加熱した。トリエトキシシラン(4.2g)を6時間かけて滴下し、そのままの温度で1時間攪拌した。粗液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、4,4’−ジブロモビフェニルの転化率は100%であった。NMRより求めた4,4’−ビス(トリエトキシシリル)ビフェニルの収率は92%であった。
【0032】
(実施例3)
50mLのガラス製三ツ口フラスコに、p−トリフルオロメチルブロモベンゼン(1.0g)、トリエチルアミン(1.3g)、ヨウ化ナトリウム(1.6g)、ジ−μ−クロロビス[(η−1,5−シクロオクタジエン)ロジウム(I)](33mg)およびN,N−ジメチルホルムアミド(19.0mL)を仕込み、80℃に加熱した。トリエトキシシラン(2.9g)を6時間かけて滴下し、そのままの温度で1時間攪拌した。粗液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、p−トリフルオロメチルブロモベンゼンの転化率は100%であった。NMRより求めた1−トリエトキシシリル−4−トリフルオロメチルベンゼンの収率は91%であった。
【0033】
(実施例4)
ジ−μ−クロロビス[(η−1,5−シクロオクタジエン)ロジウム(I)]を[ビス(アセトニトリル)(1,5−シクロオクタジエン)ロジウム(I)]テトラフルオロボレート錯体に変えた以外は、実施例3と同様に操作した。p−トリフルオロメチルブロモベンゼンの転化率は100%であった。NMRより求めた1−トリエトキシシリル−4−トリフルオロメチルベンゼンの収率は94%であった。
【0034】
【発明の効果】
本発明によれば、従来技術よりも高い収率で芳香族シラン化合物を製造することができる。
また、本発明は基質である芳香族化合物の選択自由度が従来技術よりも広くなり、特にフッ素原子を有する芳香族化合物を用いて高収率でフッ素含有芳香族シラン化合物を製造することができる。
Claims (5)
- 芳香環(A)の炭素原子に結合した脱離基(X)を1個以上有する芳香族化合物と、ケイ素原子に結合した水素原子を有するシラン化合物とを、1価のロジウム触媒、ハロゲンの金属塩及び塩基の存在下、シラン化合物のケイ素原子に結合した水素原子と脱離基(X)との脱HXによりカップリング反応させることを特徴とする芳香族シラン化合物の製造方法。
- 1価のロジウム触媒が、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム、(アセチルアセトナト)ジカルボニルロジウム、(アセチルアセトナト)カルボニル(トリフェニルホスフィン)ロジウム、ジ−μ−クロロビス[(η−1,5−シクロオクタジエン)ロジウム(I)]、トランス−ヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスファン)ロジウム、[ビス(アセトニトリル)(1,5−シクロオクタジエン)ロジウム(I)]テトラフルオロボレートからなる群から選択される1種または2種以上である請求項1又は2に記載の芳香族シラン化合物の製造方法。
- 前記芳香族化合物及び前記触媒が存在する反応系にケイ素原子に結合した水素原子を有するシラン化合物を連続的に添加することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の芳香族シラン化合物の製造方法。
- 芳香族化合物がフッ素原子を有する請求項1〜4のいずれかに記載の芳香族シラン化合物の製造方法。
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-
2003
- 2003-03-19 JP JP2003076030A patent/JP2004284963A/ja not_active Withdrawn
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