JP2004099546A - フェニルシランの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】塩化アリールを用いてフェニルシランを生成する製法を提供する。
【解決手段】下式[1]又は[2]の有機リン化合物と遷移金属化合物からなる有機金属触媒の存在下で、塩素化アリールとヒドロシランとを液相で反応させる。
【化1】
(R1、R2及びR3は、H、OH、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルアリールオキシ基、アリールアルキルオキシ基又はシリル基を有しても良い炭化水素基。)
【化2】
(R4、R5、R6及びR7は、H、OH、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルアリールオキシ基、アリールアルキルオキシ基又はシリル基を有しても良い炭化水素基。R8及びR9は、H、シリル基を有しても良い炭化水素基又はシリル基。Q1とQ2はO原子又は−(CR10R11)−で示されるシリル基を有しても良い炭化水素基。mはQ1とQ2が共に酸素原子であるとき1〜3の整数を示し、Q1又はQ2が酸素原子以外であるとき0〜3の整数を示す。)
【選択図】 なし
【解決手段】下式[1]又は[2]の有機リン化合物と遷移金属化合物からなる有機金属触媒の存在下で、塩素化アリールとヒドロシランとを液相で反応させる。
【化1】
(R1、R2及びR3は、H、OH、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルアリールオキシ基、アリールアルキルオキシ基又はシリル基を有しても良い炭化水素基。)
【化2】
(R4、R5、R6及びR7は、H、OH、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルアリールオキシ基、アリールアルキルオキシ基又はシリル基を有しても良い炭化水素基。R8及びR9は、H、シリル基を有しても良い炭化水素基又はシリル基。Q1とQ2はO原子又は−(CR10R11)−で示されるシリル基を有しても良い炭化水素基。mはQ1とQ2が共に酸素原子であるとき1〜3の整数を示し、Q1又はQ2が酸素原子以外であるとき0〜3の整数を示す。)
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機金属触媒を用いたフェニルシランの新規な製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
フェニルシランの合成方法として、直接法及びグリニャール法が一般的に知られているが、各々問題がある。
即ち、直接法には、以下の問題がある(非特許文献1参照。)
1)副生成物が多い。
2)原料のタイプが限られる。
3)複雑な精製工程が必要である。
一方、グリニャール反応には、以下の問題がある(非特許文献2参照。)。
1)反応温度の制御が困難である。
2)基質、溶媒の脱水工程が必要である。
3)高コストである。
これらの理由により、直接法又はグリニャール法を工業的にスケールアップさせることは、困難な場合が多い。
【0003】
ロシアでは気相反応の研究が盛んであり、クロロベンゼンとトリクロロシランからフェニルトリクロロシランを得る気相反応が知られている(非特許文献3参照。)。しかし、気相反応は、500〜700℃という高い反応温度を必要とするため、工業的なスケールアップは極めて困難である。
【0004】
田中らは、o−ビス(ジメチルシリル)ベンゼンと芳香族化合物との反応により、モノアリール化ヒドロシランが選択的に得られることを報告している(非特許文献4参照。)。本反応は、o−ビス(ジメチルシリル)ベンゼン特有の反応である。
【0005】
最近、増田らは、ヨードベンゼンとトリエトキシシランからフェニルトリエトキシシランを得る新規な製造法を報告している (非特許文献5参照。)。この報告において、ヨードベンゼンにおけるハロゲンが塩素又は臭素である場合、反応が殆ど進行しないと報告されている。ヨードベンゼンを用いる製造法では、コストが極めて高くなることから、増田らの製造応を工業的にスケールアップさせることは困難である。
【0006】
【非特許文献1】
日本化学会編, 実験化学講座24「有機合成VI ヘテロ元素・典型金属元素化合物」、第4版、 丸善株式会社、1992年9月25日発行、 p.126
【非特許文献2】
日本化学会編, 実験化学講座24「有機合成VI ヘテロ元素・典型金属元素化合物」、第4版、 丸善株式会社、1992年9月25日発行、 p.123
【非特許文献3】
”Zh. Obshch. Khim.” 1995, 65, p.1869−1872
【非特許文献4】
”Organometallics”, 1993, 12, p.2065−2069
【非特許文献5】
”The Journal of Organic Chemistry”, 1997, 62, p.8569−8571
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、増田らの製造法において、原料であるハロゲン化アリールとして安価な塩化アリールを用いても円滑にフェニルシランを生成させることができる安価な工業的製造方法を提供することを課題とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、下記一般式[1]または[2]で表される有機リン化合物と遷移金属化合物からなる有機金属触媒の存在下で、塩素化アリール[3]とヒドロシラン[4]とを液相で反応させることを特徴とするフェニルシラン[5]の製造方法である。
【0009】
【化6】
【0010】
(上式において、R1、R2およびR3はそれぞれ同一または相異なり、水素原子、水酸基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルアリールオキシ基、アリールアルキルオキシ基またはシリル基を有しても良い炭化水素基を示す。但し、R1、R2およびR3のうち少なくとも一つは有機基である。また、R1、R2、R3はこれら2個以上が相互に連結して環を形成しても良い。)
【0011】
【化7】
【0012】
[上式において、R4、R5、R6およびR7はそれぞれ同一または相異なり、水素原子、水酸基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルアリールオキシ基、アリールアルキルオキシ基またはシリル基を有しても良い炭化水素基を示す。R8およびR9はそれぞれ同一または相異なり、水素原子、シリル基を有しても良い炭化水素基またはシリル基を示す。Q1は酸素原子または−(CR10R11)−で示されるシリル基を有しても良い炭化水素基(但し、R10、R11はそれぞれ同一または相異なり、水素原子、シリル基を有しても良い炭化水素基またはシリル基を示す)を示す。Q2は酸素原子または−(CR12R13)−で示されるシリル基を有しても良い炭化水素基(但し、R12、R13はそれぞれ同一または相異なり、水素原子、シリル基を有しても良い炭化水素基またはシリル基を示す)を示す。mはQ1およびQ2が共に酸素原子であるとき1から3の整数を示し、Q1またはQ2が酸素原子以外であるとき0から3の整数を示す。また、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12およびR13はこれら2個以上が相互に連結して環を形成しても良い。]
【0013】
【化8】
【0014】
(上式において、R14は有機基であり、Xは塩素であり、nは0〜5の整数である。)
【0015】
【化9】
【0016】
(上式において、R15、R16及びR17は炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のアルコキシ基、アリール基または塩素であり、互いに同一であっても異なっていてもよい。)
【0017】
【化10】
【0018】
(上式において、R14、R15、R16、R17及びnは上記と同義である。)以下、本発明について詳述する。
【0019】
【発明の実施の形態】
「塩素化アリール」
本発明における塩素化アリールは、上式[3]で表されるものである。好ましい例は、クロロベンゼンである。
上式[3]におけるR14は、本発明における有機金属触媒の形成を阻害するものでない限り、制限されない。
【0020】
「ヒドロシラン」
本発明におけるヒドロシランは上式[4]で表されるものである。
上式[4]において、R15、R16、R17は炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のアルコキシ基、アリール基または塩素であり、互いに同一であっても異なっていてもよい。
好ましいヒドロシランとして、トリクロロシラン、ジメチルクロロシラン、メチルジクロロシラン等のクロロシラン、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、ジメチルエトキシシラン等のアルコキシシラン、トリエチルシラン等のアルキルシランがある。その中でも、原料の得やすさ、生成物の機能を考慮すると、トリアルコキシシランが最も好ましい。
【0021】
「有機金属触媒」
本発明における触媒は、遷移金属化合物とP=O結合を有する有機リン化合物から形成することができる。P=O結合を有する有機リン化合物は遷移金属原子と配位結合を形成し、触媒の活性、選択性を向上させる効果がある。
【0022】
「遷移金属化合物」
本発明における遷移金属化合物は、触媒の活性中心たる金属を含む化合物である。反応機構、触媒活性を考慮すると、好ましい中心金属としては鉄、コバルト、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、オスミウム、パラジウム、白金等の第VIII族の遷移金属があげられる。その中にあって、パラジウムが最も好ましい。
パラジウム化合物としては、一般的に0価または2価のパラジウムが使用できる。触媒前駆体であるパラジウム化合物の好ましい例として、パラジウムブラック、アリルパラジウム クロライド ダイマー、クロチルパラジウムクロライド ダイマー、ジアセテートビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム(II)、ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)、ジクロロ(1,5−シクロオクタジエン)パラジウム(II)、トランス−ジクロロジアミン パラジウム (II)、パラジウム(II) アセテート、パラジウム(II) アセチルアセトン、パラジウム(II) クロライド、パラジウム (II) オキサイド、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0) クロロホルムアダクト 等がある。その中でも、触媒の得やすさ、活性を考慮すると、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0) クロロホルムアダクト、パラジウム(II) アセテート、パラジウム(II) クロライドが最も好ましい。
【0023】
「P=O結合を有する有機リン化合物」
本発明におけるP=O結合を有する有機リン化合物は、遷移金属化合物と反応して有機金属触媒を形成するものであり、下記式[1]または[2]に示す構造式で表されるものである。
【0024】
【化11】
【0025】
(上式において、R1、R2およびR3はそれぞれ同一または相異なり、水素原子、水酸基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルアリールオキシ基、アリールアルキルオキシ基またはシリル基を有しても良い炭化水素基を示す。但し、R1、R2およびR3のうち少なくとも一つは有機基である。また、R1、R2、R3はこれら2個以上が相互に連結して環を形成しても良い。)
【0026】
【化12】
【0027】
(上式において、R4、R5、R6およびR7はそれぞれ同一または相異なり、水素原子、水酸基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルアリールオキシ基、アリールアルキルオキシ基またはシリル基を有しても良い炭化水素基を示す。R8およびR9はそれぞれ同一または相異なり、水素原子、シリル基を有しても良い炭化水素基またはシリル基を示す。Q1は酸素原子または−(CR10R11)−で示されるシリル基を有しても良い炭化水素基(但し、R10、R11はそれぞれ同一または相異なり、シリル基を有しても良い炭化水素基またはシリル基を示す)を示す。Q2は酸素原子または−(CR12R13)−で示されるシリル基を有しても良い炭化水素基(但し、R12、R13はそれぞれ同一または相異なり、シリル基を有しても良い炭化水素基またはシリル基を示す)を示す。mはQ1およびQ2が共に酸素原子であるとき1から3の整数を示し、Q1またはQ2が酸素原子以外であるとき0から3の整数を示す。また、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12およびR13はこれら2個以上が相互に連結して環を形成しても良い。)
【0028】
上記式[1]におけるR1、R2およびR3はそれぞれ同一または相異なり、水素原子、水酸基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルアリールオキシ基、アリールアルキルオキシ基またはシリル基を有しても良い炭化水素基を示す。具体例としては、水素原子、水酸基、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基等のアリールオキシ基、o−トリルオキシ基、p−トリルオキシ基等のアルキルアリールオキシ基、ベンジルオキシ基等のアリールアルキルオキシ基、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基等のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基等のアリール基、o−トリル基、p−トリル基、メシチル基、2,6−ジイソプロピルフェニル基、2,4,6−トリ−t−ブチルフェニル基等のアルキルアリール基、ベンジル基等のアリールアルキル基等が挙げられる。
【0029】
有機リン化合物のPO結合における酸素を遷移金属化合物の中心金属に配位させるため、R1、R2およびR3のうち少なくとも一つは有機基でなければならない。もし、R1、R2およびR3の全てが水素または水酸基であると、有機リン化合物のPO結合における酸素を遷移金属化合物の中心金属に配位させることができない。
R1、R2およびR3のうち少なくとも一つが、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルアリールオキシ基、アリールアルキルオキシ基またはシリル基を有しても良い炭化水素基であれば、有機リン化合物のPO結合における酸素の配位を阻害することはない。
また、R1、R2およびR3はこれら2個以上、好ましくは隣接する基が互いに連結して環を形成しても良い。
【0030】
上記式[2]におけるR4、R5、R6およびR7は、それぞれ同一または相異なり、水素原子、水酸基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルアリールオキシ基、アリールアルキルオキシ基またはシリル基を有しても良い炭化水素基を示す。具体例としては、水素原子、水酸基、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基等のアリールオキシ基、o−トリルオキシ基、p−トリルオキシ基等のアルキルアリールオキシ基、ベンジルオキシ基等のアリールアルキルオキシ基、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基等のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基等のアリール基、o−トリル基、p−トリル基、メシチル基、2,6−ジイソプロピルフェニル基、2,4,6−トリ−t−ブチルフェニル基等のアルキルアリール基、ベンジル基等のアリールアルキル基等が挙げられる。
【0031】
R8およびR9はそれぞれ同一または相異なり、水素原子、シリル基を有しても良い炭化水素基またはシリル基を示す。具体例としては、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基等のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基等のアリール基、o−トリル基、p−トリル基、メシチル基、2,6−ジイソプロピルフェニル基、2,4,6−トリ−t−ブチルフェニル基等のアルキルアリール基、ベンジル基等のアリールアルキル基、トリメチルシリル基、トリブチルシリル基等のシリル基等が挙げられる。
【0032】
Q1は酸素原子または−(CR10R11)−で示されるシリル基を有しても良い炭化水素基(R10、R11はそれぞれ同一または相異なり、水素原子、シリル基を有しても良い炭化水素基またはシリル基を示す。具体例としては、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基等のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基等のアリール基、o−トリル基、p−トリル基、メシチル基、2,6−ジイソプロピルフェニル基、2,4,6−トリ−t−ブチルフェニル基等のアルキルアリール基、ベンジル基等のアリールアルキル基、トリメチルシリル基、トリブチルシリル基等のシリル基等が挙げられる。)を示す。
【0033】
Q2は酸素原子または−(CR12R13)−で示されるシリル基を有しても良い炭化水素基(但し、R12、R13はそれぞれ同一または相異なり、水素原子、シリル基を有しても良い炭化水素基またはシリル基を示す。具体例としては、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基等のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基等のアリール基、o−トリル基、p−トリル基、メシチル基、2,6−ジイソプロピルフェニル基、2,4,6−トリ−t−ブチルフェニル基等のアルキルアリール基、ベンジル基等のアリールアルキル基、トリメチルシリル基、トリブチルシリル基等のシリル基等が挙げられる。)を示す。
【0034】
また、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12およびR13はこれら2個以上が相互に連結して環を形成しても良い。
【0035】
以下にP=O結合を有する有機リン化合物の具体的な例を示すが、これらに限定されるものではない。
【0036】
上記式[1]で示されるP=O結合を有する単座の有機リン化合物としては、トリエチルホスフィンオキサイド、トリn−プロピルホスフィンオキサイド、トリオクチルホスフィンオキサイド、トリフェニルホスフィンオキサイド、トリ−o−トリルホスフィンオキサイド、ジ−i−プロピルホスファート、ジ−n−アミルホスファート、ジフェニルホスファート、トリメチルホスファート、トリエチルホスファート、トリ−n−アミルホスファート、トリフェニルホスファート、トリ−o−トリルホスファート、メチルジフェニルホスフィネート、エチルジフェニルホスフィネート、フェニルジフェニルホスフィネート、ジメチルフェニルホスフォネート、ジエチルフェニルホスフォネート、ジフェニルフェニルホスフォネート等が例示される。
【0037】
上記式[2]で示されるP=O結合を有する二座の有機リン化合物を下記[化13]に例示する。
【0038】
【化13】
【0039】
上記11個の構造式をまとめて式[13]という。
【0040】
P=O結合を有する有機リン化合物と遷移金属化合物との好ましい反応割合は、遷移金属化合物における遷移金属1モルあたりP=O結合を有する有機リン化合物におけるP=O結合1〜4モルとなる割合である。1モル以下では触媒活性が不十分であり、4モル以上では有機リン化合物が多すぎて経済的に不利になるだけでなく、逆に触媒活性が低下する場合もある。
【0041】
「反応溶媒」
好ましい反応溶媒は、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、N, N−ジメチルホルムアミドの非プロトン性の極性溶媒、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル等のエーテル類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール等のアルコール類、アセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族、ヘキサン、オクタン、デカンなどの脂肪族炭化水素等である。反応の収率を考慮すると、これらの中でN−メチルピロリドンが最も好ましい。
反応溶媒の使用量については特に制限はなく、反応系における反応基質濃度が1〜99%となる範囲内で所望に応じて適宜調整すれば良い。
【0042】
「塩基」
本発明における反応を円滑に進行させるには、生成する酸を捕捉するために塩基を反応系に共存させることが望ましい。好ましい塩基は、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化リチウム等である。反応の収率を考慮すると、これらの中でトリアルキルアミンが最も好ましい。
塩基の濃度は、反応系において捕捉する酸の発生量に応じて適宜調整すればよく、通常塩素化アリール1モル当たり塩基1〜5モルとなる割合とする。
【0043】
「触媒濃度、反応温度」
触媒の好ましい使用量は、塩化アリールの仕込み量に対して、0.001 mol%から20 mol%である。
また、反応温度の制御操作は、外部からの加熱に依存するため、一概に決められないが、通常、反応温度を室温〜120℃の範囲に保持することで、反応を円滑に継続させることができる。
【0044】
「反応操作」
反応系を不活性ガス雰囲気とした後、上記の遷移金属化合物(触媒前駆体)、上記一般式[1]または[2]で表される有機リン化合物、反応溶媒、反応原料及び塩基を各々所定量添加して、所定の温度で数分〜数時間攪拌して反応させる。この際、反応系に添加する順序に特に制限はないが、塩素化アリールとヒドロシランとを反応させる際には、本発明における有機金属触媒を存在させるようにすることが必要である。
反応系における塩素化アリールとヒドロシランの仕込割合は、理論的には等モル比であるが、反応を効率的に進行させるために、ヒドロシランをやや過剰に供給することが好ましい。好ましい仕込み割合は、塩素化アリール1モル当たりヒドロシラン1〜3モルである。
【0045】
【実施例】
以下、本発明を参考例および実施例によって具体的に説明する。
【0046】
実施例1
乾燥窒素雰囲気下、磁気攪拌子、冷却管、ラバーセプタムを備えた反応器にトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0) クロロホルムアダクト31mg(0.03mmol)、トリフェニルホスファート39mg(0.12mmol)を仕込んだ。N−メチルピロリドン 4mLを加え、室温にて15分間攪拌した。反応系内にトリエトキシシラン0.49g(3.0mmol)を加え、室温にて5分間攪拌した。予め調製した混合液〔トルエン(内部標準)0.2mL、クロロベンゼン 0.23g(2.0mmol)、ジイソプロピルエチルアミン0.78g(6.0mmol)〕を加えた。室温にて1時間攪拌後、ガスクロマトグラフィーにてフェニルトリエトキシシランの収率を求めた。その結果は以下の通りである。
【0047】
フェニルトリエトキシシランの収率:21%
質量分析(EI)
観測ピーク:195、240
ライブラリー(フェニルトリエトキシシラン):195(M+−OC2H5)、240(M+)
【0048】
質量分析(CI)
観測ピーク:241
ライブラリー(フェニルトリエトキシシラン):241(M++1)
【0049】
実施例2
実施例1のトリフェニルホスファートをトリフェニルホスフィンオキサイド33mg(0.12mmol)とした以外、同様の仕込にて、室温で1時間反応させた。反応結果は以下の通りである。
フェニルトリエトキシシランの収率:20%
【0050】
実施例3
実施例1のトリフェニルホスファートを1,2−ビス(ジフェノキシホスホリル)ベンゼン23mg(0.06mmol)とした以外、同様の仕込にて、室温で1時間反応させた。反応結果は以下の通りである。
フェニルトリエトキシシランの収率:22%
【0051】
【発明の効果】
本発明によって、温和な条件下で、種々のフェニルシランを低コストで製造することができる。
本発明により製造されるフェニルアルコキシシラン及びフェニルクロロシランは、ケイ素原子に結合した加水分解性の官能基が存在するため、他の有機ケイ素化合物(ポリマーを含む)との反応によりシロキサン結合を形成したり、無機化合物中のシラノール基とカップリング反応させることができる。
また、フェニル基を含有するため、耐熱性シルセスキオキサンの原料となる。そのため、有機合成品の中間原料、ポリマー樹脂の合成原料、ポリマーの改質剤、無機化合物の表面処理剤、ハードコート剤として有用である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機金属触媒を用いたフェニルシランの新規な製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
フェニルシランの合成方法として、直接法及びグリニャール法が一般的に知られているが、各々問題がある。
即ち、直接法には、以下の問題がある(非特許文献1参照。)
1)副生成物が多い。
2)原料のタイプが限られる。
3)複雑な精製工程が必要である。
一方、グリニャール反応には、以下の問題がある(非特許文献2参照。)。
1)反応温度の制御が困難である。
2)基質、溶媒の脱水工程が必要である。
3)高コストである。
これらの理由により、直接法又はグリニャール法を工業的にスケールアップさせることは、困難な場合が多い。
【0003】
ロシアでは気相反応の研究が盛んであり、クロロベンゼンとトリクロロシランからフェニルトリクロロシランを得る気相反応が知られている(非特許文献3参照。)。しかし、気相反応は、500〜700℃という高い反応温度を必要とするため、工業的なスケールアップは極めて困難である。
【0004】
田中らは、o−ビス(ジメチルシリル)ベンゼンと芳香族化合物との反応により、モノアリール化ヒドロシランが選択的に得られることを報告している(非特許文献4参照。)。本反応は、o−ビス(ジメチルシリル)ベンゼン特有の反応である。
【0005】
最近、増田らは、ヨードベンゼンとトリエトキシシランからフェニルトリエトキシシランを得る新規な製造法を報告している (非特許文献5参照。)。この報告において、ヨードベンゼンにおけるハロゲンが塩素又は臭素である場合、反応が殆ど進行しないと報告されている。ヨードベンゼンを用いる製造法では、コストが極めて高くなることから、増田らの製造応を工業的にスケールアップさせることは困難である。
【0006】
【非特許文献1】
日本化学会編, 実験化学講座24「有機合成VI ヘテロ元素・典型金属元素化合物」、第4版、 丸善株式会社、1992年9月25日発行、 p.126
【非特許文献2】
日本化学会編, 実験化学講座24「有機合成VI ヘテロ元素・典型金属元素化合物」、第4版、 丸善株式会社、1992年9月25日発行、 p.123
【非特許文献3】
”Zh. Obshch. Khim.” 1995, 65, p.1869−1872
【非特許文献4】
”Organometallics”, 1993, 12, p.2065−2069
【非特許文献5】
”The Journal of Organic Chemistry”, 1997, 62, p.8569−8571
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、増田らの製造法において、原料であるハロゲン化アリールとして安価な塩化アリールを用いても円滑にフェニルシランを生成させることができる安価な工業的製造方法を提供することを課題とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、下記一般式[1]または[2]で表される有機リン化合物と遷移金属化合物からなる有機金属触媒の存在下で、塩素化アリール[3]とヒドロシラン[4]とを液相で反応させることを特徴とするフェニルシラン[5]の製造方法である。
【0009】
【化6】
【0010】
(上式において、R1、R2およびR3はそれぞれ同一または相異なり、水素原子、水酸基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルアリールオキシ基、アリールアルキルオキシ基またはシリル基を有しても良い炭化水素基を示す。但し、R1、R2およびR3のうち少なくとも一つは有機基である。また、R1、R2、R3はこれら2個以上が相互に連結して環を形成しても良い。)
【0011】
【化7】
【0012】
[上式において、R4、R5、R6およびR7はそれぞれ同一または相異なり、水素原子、水酸基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルアリールオキシ基、アリールアルキルオキシ基またはシリル基を有しても良い炭化水素基を示す。R8およびR9はそれぞれ同一または相異なり、水素原子、シリル基を有しても良い炭化水素基またはシリル基を示す。Q1は酸素原子または−(CR10R11)−で示されるシリル基を有しても良い炭化水素基(但し、R10、R11はそれぞれ同一または相異なり、水素原子、シリル基を有しても良い炭化水素基またはシリル基を示す)を示す。Q2は酸素原子または−(CR12R13)−で示されるシリル基を有しても良い炭化水素基(但し、R12、R13はそれぞれ同一または相異なり、水素原子、シリル基を有しても良い炭化水素基またはシリル基を示す)を示す。mはQ1およびQ2が共に酸素原子であるとき1から3の整数を示し、Q1またはQ2が酸素原子以外であるとき0から3の整数を示す。また、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12およびR13はこれら2個以上が相互に連結して環を形成しても良い。]
【0013】
【化8】
【0014】
(上式において、R14は有機基であり、Xは塩素であり、nは0〜5の整数である。)
【0015】
【化9】
【0016】
(上式において、R15、R16及びR17は炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のアルコキシ基、アリール基または塩素であり、互いに同一であっても異なっていてもよい。)
【0017】
【化10】
【0018】
(上式において、R14、R15、R16、R17及びnは上記と同義である。)以下、本発明について詳述する。
【0019】
【発明の実施の形態】
「塩素化アリール」
本発明における塩素化アリールは、上式[3]で表されるものである。好ましい例は、クロロベンゼンである。
上式[3]におけるR14は、本発明における有機金属触媒の形成を阻害するものでない限り、制限されない。
【0020】
「ヒドロシラン」
本発明におけるヒドロシランは上式[4]で表されるものである。
上式[4]において、R15、R16、R17は炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のアルコキシ基、アリール基または塩素であり、互いに同一であっても異なっていてもよい。
好ましいヒドロシランとして、トリクロロシラン、ジメチルクロロシラン、メチルジクロロシラン等のクロロシラン、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、ジメチルエトキシシラン等のアルコキシシラン、トリエチルシラン等のアルキルシランがある。その中でも、原料の得やすさ、生成物の機能を考慮すると、トリアルコキシシランが最も好ましい。
【0021】
「有機金属触媒」
本発明における触媒は、遷移金属化合物とP=O結合を有する有機リン化合物から形成することができる。P=O結合を有する有機リン化合物は遷移金属原子と配位結合を形成し、触媒の活性、選択性を向上させる効果がある。
【0022】
「遷移金属化合物」
本発明における遷移金属化合物は、触媒の活性中心たる金属を含む化合物である。反応機構、触媒活性を考慮すると、好ましい中心金属としては鉄、コバルト、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、オスミウム、パラジウム、白金等の第VIII族の遷移金属があげられる。その中にあって、パラジウムが最も好ましい。
パラジウム化合物としては、一般的に0価または2価のパラジウムが使用できる。触媒前駆体であるパラジウム化合物の好ましい例として、パラジウムブラック、アリルパラジウム クロライド ダイマー、クロチルパラジウムクロライド ダイマー、ジアセテートビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム(II)、ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)、ジクロロ(1,5−シクロオクタジエン)パラジウム(II)、トランス−ジクロロジアミン パラジウム (II)、パラジウム(II) アセテート、パラジウム(II) アセチルアセトン、パラジウム(II) クロライド、パラジウム (II) オキサイド、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0) クロロホルムアダクト 等がある。その中でも、触媒の得やすさ、活性を考慮すると、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0) クロロホルムアダクト、パラジウム(II) アセテート、パラジウム(II) クロライドが最も好ましい。
【0023】
「P=O結合を有する有機リン化合物」
本発明におけるP=O結合を有する有機リン化合物は、遷移金属化合物と反応して有機金属触媒を形成するものであり、下記式[1]または[2]に示す構造式で表されるものである。
【0024】
【化11】
【0025】
(上式において、R1、R2およびR3はそれぞれ同一または相異なり、水素原子、水酸基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルアリールオキシ基、アリールアルキルオキシ基またはシリル基を有しても良い炭化水素基を示す。但し、R1、R2およびR3のうち少なくとも一つは有機基である。また、R1、R2、R3はこれら2個以上が相互に連結して環を形成しても良い。)
【0026】
【化12】
【0027】
(上式において、R4、R5、R6およびR7はそれぞれ同一または相異なり、水素原子、水酸基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルアリールオキシ基、アリールアルキルオキシ基またはシリル基を有しても良い炭化水素基を示す。R8およびR9はそれぞれ同一または相異なり、水素原子、シリル基を有しても良い炭化水素基またはシリル基を示す。Q1は酸素原子または−(CR10R11)−で示されるシリル基を有しても良い炭化水素基(但し、R10、R11はそれぞれ同一または相異なり、シリル基を有しても良い炭化水素基またはシリル基を示す)を示す。Q2は酸素原子または−(CR12R13)−で示されるシリル基を有しても良い炭化水素基(但し、R12、R13はそれぞれ同一または相異なり、シリル基を有しても良い炭化水素基またはシリル基を示す)を示す。mはQ1およびQ2が共に酸素原子であるとき1から3の整数を示し、Q1またはQ2が酸素原子以外であるとき0から3の整数を示す。また、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12およびR13はこれら2個以上が相互に連結して環を形成しても良い。)
【0028】
上記式[1]におけるR1、R2およびR3はそれぞれ同一または相異なり、水素原子、水酸基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルアリールオキシ基、アリールアルキルオキシ基またはシリル基を有しても良い炭化水素基を示す。具体例としては、水素原子、水酸基、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基等のアリールオキシ基、o−トリルオキシ基、p−トリルオキシ基等のアルキルアリールオキシ基、ベンジルオキシ基等のアリールアルキルオキシ基、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基等のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基等のアリール基、o−トリル基、p−トリル基、メシチル基、2,6−ジイソプロピルフェニル基、2,4,6−トリ−t−ブチルフェニル基等のアルキルアリール基、ベンジル基等のアリールアルキル基等が挙げられる。
【0029】
有機リン化合物のPO結合における酸素を遷移金属化合物の中心金属に配位させるため、R1、R2およびR3のうち少なくとも一つは有機基でなければならない。もし、R1、R2およびR3の全てが水素または水酸基であると、有機リン化合物のPO結合における酸素を遷移金属化合物の中心金属に配位させることができない。
R1、R2およびR3のうち少なくとも一つが、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルアリールオキシ基、アリールアルキルオキシ基またはシリル基を有しても良い炭化水素基であれば、有機リン化合物のPO結合における酸素の配位を阻害することはない。
また、R1、R2およびR3はこれら2個以上、好ましくは隣接する基が互いに連結して環を形成しても良い。
【0030】
上記式[2]におけるR4、R5、R6およびR7は、それぞれ同一または相異なり、水素原子、水酸基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルアリールオキシ基、アリールアルキルオキシ基またはシリル基を有しても良い炭化水素基を示す。具体例としては、水素原子、水酸基、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基等のアリールオキシ基、o−トリルオキシ基、p−トリルオキシ基等のアルキルアリールオキシ基、ベンジルオキシ基等のアリールアルキルオキシ基、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基等のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基等のアリール基、o−トリル基、p−トリル基、メシチル基、2,6−ジイソプロピルフェニル基、2,4,6−トリ−t−ブチルフェニル基等のアルキルアリール基、ベンジル基等のアリールアルキル基等が挙げられる。
【0031】
R8およびR9はそれぞれ同一または相異なり、水素原子、シリル基を有しても良い炭化水素基またはシリル基を示す。具体例としては、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基等のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基等のアリール基、o−トリル基、p−トリル基、メシチル基、2,6−ジイソプロピルフェニル基、2,4,6−トリ−t−ブチルフェニル基等のアルキルアリール基、ベンジル基等のアリールアルキル基、トリメチルシリル基、トリブチルシリル基等のシリル基等が挙げられる。
【0032】
Q1は酸素原子または−(CR10R11)−で示されるシリル基を有しても良い炭化水素基(R10、R11はそれぞれ同一または相異なり、水素原子、シリル基を有しても良い炭化水素基またはシリル基を示す。具体例としては、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基等のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基等のアリール基、o−トリル基、p−トリル基、メシチル基、2,6−ジイソプロピルフェニル基、2,4,6−トリ−t−ブチルフェニル基等のアルキルアリール基、ベンジル基等のアリールアルキル基、トリメチルシリル基、トリブチルシリル基等のシリル基等が挙げられる。)を示す。
【0033】
Q2は酸素原子または−(CR12R13)−で示されるシリル基を有しても良い炭化水素基(但し、R12、R13はそれぞれ同一または相異なり、水素原子、シリル基を有しても良い炭化水素基またはシリル基を示す。具体例としては、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基等のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基等のアリール基、o−トリル基、p−トリル基、メシチル基、2,6−ジイソプロピルフェニル基、2,4,6−トリ−t−ブチルフェニル基等のアルキルアリール基、ベンジル基等のアリールアルキル基、トリメチルシリル基、トリブチルシリル基等のシリル基等が挙げられる。)を示す。
【0034】
また、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12およびR13はこれら2個以上が相互に連結して環を形成しても良い。
【0035】
以下にP=O結合を有する有機リン化合物の具体的な例を示すが、これらに限定されるものではない。
【0036】
上記式[1]で示されるP=O結合を有する単座の有機リン化合物としては、トリエチルホスフィンオキサイド、トリn−プロピルホスフィンオキサイド、トリオクチルホスフィンオキサイド、トリフェニルホスフィンオキサイド、トリ−o−トリルホスフィンオキサイド、ジ−i−プロピルホスファート、ジ−n−アミルホスファート、ジフェニルホスファート、トリメチルホスファート、トリエチルホスファート、トリ−n−アミルホスファート、トリフェニルホスファート、トリ−o−トリルホスファート、メチルジフェニルホスフィネート、エチルジフェニルホスフィネート、フェニルジフェニルホスフィネート、ジメチルフェニルホスフォネート、ジエチルフェニルホスフォネート、ジフェニルフェニルホスフォネート等が例示される。
【0037】
上記式[2]で示されるP=O結合を有する二座の有機リン化合物を下記[化13]に例示する。
【0038】
【化13】
【0039】
上記11個の構造式をまとめて式[13]という。
【0040】
P=O結合を有する有機リン化合物と遷移金属化合物との好ましい反応割合は、遷移金属化合物における遷移金属1モルあたりP=O結合を有する有機リン化合物におけるP=O結合1〜4モルとなる割合である。1モル以下では触媒活性が不十分であり、4モル以上では有機リン化合物が多すぎて経済的に不利になるだけでなく、逆に触媒活性が低下する場合もある。
【0041】
「反応溶媒」
好ましい反応溶媒は、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、N, N−ジメチルホルムアミドの非プロトン性の極性溶媒、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル等のエーテル類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール等のアルコール類、アセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族、ヘキサン、オクタン、デカンなどの脂肪族炭化水素等である。反応の収率を考慮すると、これらの中でN−メチルピロリドンが最も好ましい。
反応溶媒の使用量については特に制限はなく、反応系における反応基質濃度が1〜99%となる範囲内で所望に応じて適宜調整すれば良い。
【0042】
「塩基」
本発明における反応を円滑に進行させるには、生成する酸を捕捉するために塩基を反応系に共存させることが望ましい。好ましい塩基は、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化リチウム等である。反応の収率を考慮すると、これらの中でトリアルキルアミンが最も好ましい。
塩基の濃度は、反応系において捕捉する酸の発生量に応じて適宜調整すればよく、通常塩素化アリール1モル当たり塩基1〜5モルとなる割合とする。
【0043】
「触媒濃度、反応温度」
触媒の好ましい使用量は、塩化アリールの仕込み量に対して、0.001 mol%から20 mol%である。
また、反応温度の制御操作は、外部からの加熱に依存するため、一概に決められないが、通常、反応温度を室温〜120℃の範囲に保持することで、反応を円滑に継続させることができる。
【0044】
「反応操作」
反応系を不活性ガス雰囲気とした後、上記の遷移金属化合物(触媒前駆体)、上記一般式[1]または[2]で表される有機リン化合物、反応溶媒、反応原料及び塩基を各々所定量添加して、所定の温度で数分〜数時間攪拌して反応させる。この際、反応系に添加する順序に特に制限はないが、塩素化アリールとヒドロシランとを反応させる際には、本発明における有機金属触媒を存在させるようにすることが必要である。
反応系における塩素化アリールとヒドロシランの仕込割合は、理論的には等モル比であるが、反応を効率的に進行させるために、ヒドロシランをやや過剰に供給することが好ましい。好ましい仕込み割合は、塩素化アリール1モル当たりヒドロシラン1〜3モルである。
【0045】
【実施例】
以下、本発明を参考例および実施例によって具体的に説明する。
【0046】
実施例1
乾燥窒素雰囲気下、磁気攪拌子、冷却管、ラバーセプタムを備えた反応器にトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0) クロロホルムアダクト31mg(0.03mmol)、トリフェニルホスファート39mg(0.12mmol)を仕込んだ。N−メチルピロリドン 4mLを加え、室温にて15分間攪拌した。反応系内にトリエトキシシラン0.49g(3.0mmol)を加え、室温にて5分間攪拌した。予め調製した混合液〔トルエン(内部標準)0.2mL、クロロベンゼン 0.23g(2.0mmol)、ジイソプロピルエチルアミン0.78g(6.0mmol)〕を加えた。室温にて1時間攪拌後、ガスクロマトグラフィーにてフェニルトリエトキシシランの収率を求めた。その結果は以下の通りである。
【0047】
フェニルトリエトキシシランの収率:21%
質量分析(EI)
観測ピーク:195、240
ライブラリー(フェニルトリエトキシシラン):195(M+−OC2H5)、240(M+)
【0048】
質量分析(CI)
観測ピーク:241
ライブラリー(フェニルトリエトキシシラン):241(M++1)
【0049】
実施例2
実施例1のトリフェニルホスファートをトリフェニルホスフィンオキサイド33mg(0.12mmol)とした以外、同様の仕込にて、室温で1時間反応させた。反応結果は以下の通りである。
フェニルトリエトキシシランの収率:20%
【0050】
実施例3
実施例1のトリフェニルホスファートを1,2−ビス(ジフェノキシホスホリル)ベンゼン23mg(0.06mmol)とした以外、同様の仕込にて、室温で1時間反応させた。反応結果は以下の通りである。
フェニルトリエトキシシランの収率:22%
【0051】
【発明の効果】
本発明によって、温和な条件下で、種々のフェニルシランを低コストで製造することができる。
本発明により製造されるフェニルアルコキシシラン及びフェニルクロロシランは、ケイ素原子に結合した加水分解性の官能基が存在するため、他の有機ケイ素化合物(ポリマーを含む)との反応によりシロキサン結合を形成したり、無機化合物中のシラノール基とカップリング反応させることができる。
また、フェニル基を含有するため、耐熱性シルセスキオキサンの原料となる。そのため、有機合成品の中間原料、ポリマー樹脂の合成原料、ポリマーの改質剤、無機化合物の表面処理剤、ハードコート剤として有用である。
Claims (2)
- 下記一般式[1]または[2]で表される有機リン化合物と遷移金属化合物からなる有機金属触媒の存在下で、塩素化アリール[3]とヒドロシラン[4]とを液相で反応させることを特徴とするフェニルシラン[5]の製造方法。
- ヒドロシランがトリアルコキシシランであることを特徴とする請求項1記載のフェニルシランの製造方法。
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