JP2004279328A - 物質同定システム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】電子線装置に、電子線回折像観察用TVカメラ10によって取り込んだ回折像から格子面間隔を算出する電子線回折像解析部3、EDX検出器9に接続され物質組成を求めるEDX分析部2、物質同定のための検索用データベースとデータベース検索機能を備えた物質同定部4を有する。物質同定部4は、電子線回折像解析部3から送信された格子面間隔データ、EDX分析部2から送信された元素データをもとに検索用データベースを検索して物質を同定する。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子線回折像とエネルギー分析結果とを組み合わせて試料中の物質を同定する物質同定システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
電子顕微鏡などの電子線装置を用いて物質の同定を行う場合、まず試料の透過像を観察・記録する。次に、その視野の電子線回折像を観察・記録し、記録した電子線回折像の回折スポット間の距離を測定し、結晶の格子面間隔を求める。この場合、測定者が、回折スポットの中央と思われるところを決定してスポット間の距離を測定するため、測定値にばらつきが生じる。精度を上げるには、一つの電子線回折像に対し複数個のスポットを測定し、各スポットの組に対しそれぞれ格子面間隔を算出する必要がある。また、電子顕微鏡をEDX分析(energy dispersive X−ray spectroscopy)モードに変換し、収束した電子線を試料に照射し、その照射領域から発生した特性X線により構成元素を検出する。その際、試料以外の試料近傍の構造物からのX線も検出される。測定者は、経験に基づいて、検出された元素のうち試料以外の構造物の元素を除外し、試料中の元素を選択する。そして、上記検出された構成元素からなる物質から可能性のある物質を、X線回折を用いて測定された格子面間隔のデータベースと照合して同定を行っていた。一般に透過電子顕微鏡では、これらの操作は全て独立して手作業で行われ、それぞれの結果をオペレータが総合して物質の同定を行っていた。また、得られた透試料過像、電子線回折像、EDX分析結果などのデータは、測定者が透過像に対応する回折像及びEDX分析結果を分別し、整理していた。
【0003】
特許文献1には、回折像が投影される各画素の強度を求め、強度が最大の画素をメインスポットとしその画素の座標からその他の回折スポットの投影されている画素の座標までの距離から、その物質のd値の組を求め、予め記憶しておいた種々の物質のd値から、その物質を同定する方法が記載されている。
【0004】
【特許文献1】
特公平4−11822号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記従来技術では、データの取得から物質の同定まで全て手作業で行っており、1〜2日程度の時間と手間を要する。また、EDX分析では、自動同定によって各ピークに対応する元素の候補があげられるが、本来の分析領域には含まれない電子顕微鏡の照射系レンズ近傍から放出されるシステムX線や電子線照射した領域以外の試料領域から発生する迷光X線などに対応する元素もあげられる。分析領域の元素かどうかの識別には、オペレータの経験が要求される。また、走査透過像と回折像の方向が必ずしも一致していないため、高倍率像で格子像を観察し、回折像と格子像の方向から視野を一致させる必要があった。
【0006】
特許文献1の方法では、実際にはメインスポットは強度が非常に強いため明るさに広がりを持ち最大強度で数画素を占めるため、中心を正確に求めるのは困難である。また、取得した電子線回折像全ての領域について座標を設け強度分布を算出するため、格子面間隔を得るまでに長時間を要する。また、例えばさらに物質を絞り込むためには、上記従来技術と同様、EDX分析などの他の組成分析を行い、得られた組成情報から、測定者が物質を同定する必要があった。
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み、迅速かつ高精度に物質の同定が可能な物質同定システムを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明による物質同定システムは、電子線を細く絞って試料に照射する手段と、電子線を試料上で走査する電子線走査部と、電子線照射によって試料から放出された二次電子又は試料透過電子を検出する電子検出器と、電子検出器の出力を用いて試料走査像を表示する試料像表示部と、電子線と試料との相互作用によって得られるエネルギー線を分析して元素情報を出力する元素分析部と、試料透過電子線によって形成される電子線回折像を撮像する電子線回折像撮像部と、電子線回折像から求められた結晶の格子面間隔に適合する物質の情報を出力する電子線回折像解析部と、元素分析部から得られた情報と電子線回折像解析部から得られた情報とを元に試料の電子線照射領域に含有される物質を同定する物質同定部とを含むことを特徴とする。本システムを用いると、迅速、容易かつ高精度に試料の特定領域の物質同定を行うことができる。
【0008】
元素分析部は、電子線照射によって試料から発生する特性X線を分析して元素情報を出力するエネルギー分散型X線分析部とすることができる。この時、各元素の特性X線スペクトルのKα線とLα線の強度比(IL/IK)を基準として当該元素の情報を元素情報として出力するか否かを判定する判定部を有するのが好ましい。この判定部を備えることにより、EDX分析で検出された元素から試料の分析対象領域に存在する元素以外の元素を取り除き、種々の物質の結晶の格子面間隔データベースを照合して、得られた結晶の格子面間隔データ及び組成情報から試料物質を特定することが可能になる。
【0009】
元素分析部は、また、試料透過電子線のエネルギー損失スペクトルを分析して元素情報を出力する電子線エネルギー損失分光分析部としてもよい。
本発明の物質同定システムでは、試料上の1個所の分析によって得られた試料走査像、元素情報、電子線回折像、同定された物質に関する情報を一組のデータとして保存する。
【0010】
本発明の物質同定システムは、電子線回折像撮像部によって撮像された電子線回折像を表示する電子線回折像表示部と、電子線回折像のカメラ長調節用レンズと、電子線走査部を制御する制御部とを備え、制御部は、カメラ長調節用レンズの設定を変更するとき当該変更によって発生する電子線回折像の回転と同じ角度だけ試料像表示部に表示される試料像を回転させるように電子線走査部を制御するのが好ましい。本構成によると、試料の走査像とその領域の電子線回折像の方向を常に一致させることができ、配向性などの像解釈を容易に行うことができる。
【0011】
また、上記電子線走査部を制御する制御部に代えて、電子線回折像表示部を制御する制御部を備え、この制御部により、カメラ長調節用レンズの設定を変更するとき当該変更によって発生する電子線回折像の回転と同じ角度だけ電子線回折像表示部に表示される像を逆方向に回転させて表示するように電子線回折像表示部を制御するようにしてもよい。本構成によっても、試料の走査像とその領域の電子線回折像の方向を常に一致させることができ、配向性などの像解釈を容易に行うことができる。
【0012】
電子線回折像解析部は、電子線回折像表示部に表示されたスポット状の電子線回折像に対してメインスポットを含む少なくとも2つのスポットを囲むように設定された矩形領域の短辺の各位置において長辺方向の画素強度を積算した短軸強度プロファイルを作成する手段と、矩形領域の長辺の各位置において短辺方向の画素強度を積算した長軸強度プロファイルを作成する手段と、矩形領域をその中心の周りに回転させる手段と、短軸強度プロファイルのピーク強度が最大となる矩形領域の回転位置において測定した長軸強度プロファイルのピーク間距離から結晶面間隔を算出する手段とを備える構成とすることができる。矩形領域が囲むスポットは、例えば、メインスポットとそれに隣接する1つのスポットからなる合計2つのスポット、あるいはメインスポットとそれに対称な2つのスポットからなる合計3つのスポットとする。
【0013】
電子線回折像解析部は、また、電子線回折像表示部に表示されたスポット状の電子線回折像に対して少なくとも2つのスポットを囲むように設定された矩形領域の短辺の各位置において長辺方向の画素強度を積算した短軸強度プロファイルを作成する手段と、矩形領域の長辺の各位置において短辺方向の画素強度を積算した長軸強度プロファイルを作成する手段と、短軸強度プロファイルのピーク位置と長軸強度プロファイルのピーク位置から算出された2つのスポットの間の距離を元に結晶の格子面間隔を算出する手段とを備えるように構成してもよい。矩形領域が囲むスポットは、例えばメインスポットとそれに隣接する1つのスポットからなる合計2つのスポットとすればよい。
【0014】
電子線回折像解析部は、電子線回折像表示部に表示されたスポット状の電子線回折像の2つのポットに対して各スポットを囲むように設定された第1の領域と第2の領域の各々において画素強度分布を求める手段と、各画素強度分布のピーク位置に基づいて算出された2つのスポットの間の距離を元に結晶の格子面間隔を算出する手段とを備えるように構成してもよい。この時、2つのスポットを囲む第1の領域と第2の領域は、例えば円形の領域あるいは矩形の領域とすることができる。
【0015】
電子線回折像解析部は、電子線回折像表示部に表示されたメインスポットを中心とする同心円状の電子線回折像に対して、メインスポットを囲むように設定された領域内での画素強度分布を求める手段と、画素強度分布のピーク位置を求める手段と、そのピーク位置を通り同心円を横切る直線上の強度プロファイルを求める手段と、その強度プロファイルのピーク位置を求める手段と、前記直線上のピーク間距離を元に結晶の格子面間隔を算出する手段とを備える構成としてもよい。
強度プロファイルのピークは、強度プロファイルを正規分布あるいは放物線にフィッティングさせることによって求めるのが好ましい。
【0016】
本発明による物質同定システムは、また、電子線を細く絞って試料に照射する手段と、電子線照射によって試料から発生する特性X線を検出するX線検出器と、X線検出器で検出された特性X線を分析して元素情報を出力するエネルギー分散型X線分析部と、エネルギー分散型X線分析部で1つの元素に起因するとされた特性X線のKα線とLα線の強度比(IL/IK)を基準として当該特性X線が試料の電子線照射領域に存在する元素に由来するものか否かを判定する判定部とを備えることを特徴とする。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明による物質同定システムの一例の概略構成図である。この物質同定システムは、電子線装置1、EDX分析部2、電子線回折像解析部3、物質同定のための検索用データベース(図19参照)及びデータベース検索機能を備えた物質同定部4を備える。電子線装置1は、電子銃12、コンデンサーレンズ13、対物レンズ14、投射レンズ24を備える。コンデンサーレンズ13と対物レンズ14の間には、電子線装置制御部19の制御下にある走査電源18から給電される走査コイル5が配置されている。対物レンズ14は強励磁により前磁場14aと後磁場14bの2つのレンズ作用を有し、対物レンズ14の前磁場14aと後磁場14bの間には、試料微動装置26により可動な試料ホルダ25に装着された試料15が挿入される。
【0018】
試料15の上方、走査コイル5の下方には二次電子検出器6が設置されている。投射レンズ24の下方には、暗視野STEM像観察用の円環状検出器8が配置され、円環状検出器8の下方には明視野STEM像観察用検出器7が光軸から出し入れ可能に設置されている。検出器6,7,8は、それぞれ信号増幅器16,20,21を介してCRT等の走査像表示部17に接続される。走査像表示部17には走査電源18からの走査信号も入力される。
【0019】
電子線22は、コンデンサーレンズ13及び対物レンズ14の前磁場14aにより試料15上でスポット状に収束され、走査コイル5によって試料15上を走査される。二次電子検出器6は電子線22の照射によって試料15から放出される二次電子を検出する。明視野STEM像検出器7は試料15から角度が半角約50mrad以内で散乱を受けた透過電子を検出する。円環状検出器8は、電子線22の照射によって試料15から散乱角度が半角約80〜500mradの範囲で散乱した電子(弾性散乱電子)を検出する。これらの検出器6,7,8からの信号で走査信号に同期して走査像表示部17の輝度変調をすることで試料走査像を表示し、試料15の形状や結晶構造観察を行う。暗視野STEM像は、試料15の平均原子番号を反映したコントラストをもつ。
【0020】
明視野STEM像観察用検出器7の下方には、電子線回折像観察用TVカメラ10が配置されている。電子線回折像観察用TVカメラ10は、電子線回折像解析部3を介して電子線回折像表示用モニター11に接続されている。また、対物レンズ14の上方には、電子線照射によって試料から発生された特性X線を検出するためのEDX検出器9が配置されており、EDX検出器9はEDX分析部2に接続されている。なお、電子線装置制御部19、EDX分析部2及び電子線回折像解析部3は、それぞれ物質同定部4とオフライン及びオンラインでのデータの通信が可能なように接続されている。
【0021】
図2は、図1に示した物質同定システムの主な処理手順を示した説明図である。
(1) まず、電子線装置1で試料に電子線を照射し、照射した電子線を走査することにより、試料の二次電子像、明視野走査透過像、暗視野走査透過像観察を行い、試料の形状及び結晶構造観察を行う。観察結果は電子線装置制御部19に保存される。保存と同時に、その画像ファイル名又は画像データが物質同定部4に入力される。
【0022】
(2) 走査電子線を試料の測定対象となる領域に停止する。このとき形成された電子線回折像は、電子線回折像観察用TVカメラ10で取り込まれ、表示された二次電子像、明視野走査透過像、暗視野走査透過像と回折像の方向が一致するように補正され、電子線回折像表示用モニター11上に表示される。回折像観察結果は電子線回折像解析部3に保存される。保存と同時に、その画像ファイル名又は画像データが物質同定部4に入力される。
【0023】
(3) 電子線回折像表示用モニター11上に表示された電子線回折像の種類により、結晶の格子面間隔測定法(図6,8,10,12,14のいずれかの方法)の選択を行う。選択した測定法により測定値Rを求める。格子面間隔dはd=Lλ/Rで与えられる。ここで、Lはカメラ長、λは電子線の波長であり、Lλは定数であるので、Lλを既知の物質のd,Rを使って予め求めておけば、測定値Rから格子面間隔dを算出すことができる。算出された結晶の格子面間隔値は電子線回折像解析部3に記憶され、そのデータが物質同定部4に入力される。
(2’) 上記(2)と同時にEDX分析を開始する。得られたEDXスペクトルはEDX分析部2に保存される。保存と同時に、そのファイル名又はEDXスペクトルデータが物質同定部4に入力される。
(3’) EDXスペクトルから電子線照射領域の試料の構成元素を求める。得られた組成データはEDX分析部2に記憶されると同時に、物質同定部4に入力される。
【0024】
(4) 物質同定部4では、上記(3)で得られた結晶の格子面間隔データ及び上記(3’)で得られた組成データを照合し、データベースから該当する物質を検索する。
(5) 物質同定部4で物質同定を行い、結果を表示する。
(6) 物質同定部4において、物質同定結果及び(1)から(4)の一連のデータを同一ラベルで保存する。
【0025】
図3は、試料の微小領域を収束ビームで照射したとき発生されるナノプローブ回折像の説明図である。電子銃12から出た電子線22は、コンデンサーレンズ13及び対物レンズ前磁場14aにより試料15上に収束され照射される。電子線22を試料15の測定対象箇所に停止させると、試料15を透過した電子線22は試料15により回折を受け、対物レンズ14の後焦点面に電子線回折像を形成する。電子線回折像はさらに投射レンズ24により拡大され、電子線回折像観察用TVカメラ10上に投影され、撮像された回折像は電子線回折像表示用モニター11上に表示される。このときの電子線回折像のメインスポット27と回折スポット28との間の距離が試料15の格子面間隔に対応する。電子線回折像の倍率は、投射レンズ24の電流値を変えることにより変更できる。投射レンズがない場合、投射レンズで拡大された電子線回折像と同じ電子線回折像を得るために必要な、試料15から拡大された電子線回折像までの距離をカメラ長Lで表す。投射レンズ24の電流値を変えると、電子線回折像の方向も変化してしまう。この場合、電子線回折像の方向と観察視野の方向とが一致せず、結晶の配向性を調べたい時に不具合を生じる。
【0026】
本発明では、電子線回折像の方向と観察視野の方向を一致させる手段を備える。図4を用いて、電子線回折像と試料走査像の方向を一致させる方法の一例について説明する。予め、ある投射レンズ24の電流値で、電子線回折像(a)と試料走査像(b)の方向が一致するように、電子線回折像観察用TVカメラ10の位置を機械的に調整しておく。電子線回折像を拡大すると、(c)に矢印で示すように、電子線回折像は拡大と同時に像が回転してしまう。
【0027】
一般に、投射レンズ24のレンズ電流値Iと像の回転角φの関係はφ=0.18NI/√Φ0で与えられる。ここで、Φ0は加速電圧、Nはレンズの巻数、Iはレンズ電流である。よって投射レンズ24の電流値により電子線回折像の回転角φ(図4(c)では、反時計方向に回転しているので“−φ”と表記した)が分かるので、それと同じ角度すなわち角度φだけ試料走査像を回転させるように、電子線装置制御部19から走査電源18に電子線22の走査方向の変更を指示する。これにより、試料走査像(b)から角度φだけ回転された試料走査像(d)が走査像表示部17上に表示される。こうして表示された電子線回折像(c)と試料走査像(d)とは方向が一致する。
【0028】
図5は、電子線回折像と試料走査像の方向を一致させる方法の他の例を説明する図である。電子線回折像(a)と試料走査像(b)の方向が一致しているとき、投射レンズ24のレンズ電流を変更して電子線回折像を拡大すると、拡大された電子線回折像(c)は、電子線回折像(a)に対して角度φ(図5(c)では、反時計方向に回転しているので“−φ”と表記した)だけ回転する。この方法では、電子線回折像表示用モニター11で電子線回折像を逆方向に角度φ(図示の例では、−φだけ回転したのを元に戻すため+φ)だけ回転させて元の方向に戻す。具体的には、φ(−φ)だけ回転した電子線回折像(c)を−φ(+φ)だけ回転させるように電子線装置制御部19から回折像解析部3に指示し、回折像解析部3では電子線回折像表示用モニター11に−φ(+φ)だけ回転した回折像(d)を表示する。こうして、方向が一致した試料走査像(b)と電子線回折像(d)が得られる。
次に、電子線回折像から物質の格子間距離を求める方法について説明する。電子線回折像は、その試料の結晶の大きさによりスポット状やリング状などの異なる形状を示す。
【0029】
図6は、電子線回折像の回折スポット間の距離から物質の格子間距離を求める方法の一例を説明する図、図7はその手順を説明するフローチャートである。
まず、電子線回折像表示用モニター11に表示された電子線回折像の中でメインスポットの位置を確認する(S11)。そのためには、例えば、試料微動装置26を動かし、試料15を移動させても存在するスポットがメインスポットであるので、その位置を確認し、視野を戻す。次に、メインスポット及びメインスポットに隣接する1つのスポットを含むように測定領域を設定する(S12)。これは、例えば図6(a)に示すように、画面上で一対の回折スポットが入る領域を矩形の枠で取り囲むことによって行う。
【0030】
スポット間の距離を正確に測定するためには、スポットの配列に平行な直線上で距離を測定する必要がある。そこで、2つの回折スポットが入る矩形をある角度(例えば±5°)の範囲で回転させ、図6(c)に示すように、矩形の長軸方向に2つの回折スポットが整列するようにする。そのために、図6(b)に示すように、矩形の短軸(Y軸)上の各点において長軸(X軸)方向のpixel強度の積算値を計算し、Y軸方向の積算強度プロファイルを求め(S13)、積算強度のピーク値を求める(S14)。矩形によって指定した測定領域を、測定領域の中央の点を中心として例えば0.1゜ずつ回転し(S15)、Y軸方向の積算強度プロファイルを求め、そのピーク値を求める操作を、±5゜の範囲で繰り返す(S16)。測定領域の長軸方向に2つの回折スポットが整列すると、Y軸方向のpixel強度積算値プロファイルは、図6(d)に示すように、1つのピークを示し、ピーク強度が最大となる。従って、測定領域を回転させながら測定したY軸方向の積算強度プロファイルのピーク強度が最大を示した角度の測定領域を回折スポット間の距離を測定する測定領域として決定する(S17)。
【0031】
次に、決定された測定領域において、今度は矩形の長軸(X軸)上の各点において短軸(Y軸)方向のpixel強度の積算値を計算し、X軸方向の積算強度プロファイルを測定する(S18)。そして、図6(e)に示すように、測定されたX軸方向の積算強度プロファイルに現れる2つのピークIpi,IpjのX座標xi,xjを算出し(S19)、スポット間距離R=|xj−xi|を算出する(S20)。格子面間隔dはd=Lλ/Rで与えられる。Lはカメラ長、λは電子線の波長であり、Lλは定数であるので、Lλを既知の物質を使って予め求めておけば、測定値Rから格子面間隔dを求めることができる。これらの処理は電子線回折像解析部3で行い、その値は物質同定部4に転送される。
【0032】
電子線回折像中に各スポットが均等に分布している場合にはスポット間隔の測定を一度だけ行えばよい。しかし、隣接するスポット間の間隔が異なるスポット対がある場合には、新たに異なるスポットが入る領域を設定しステップ12からステップ20までを繰り返し、その回折スポットから格子面間間隔の測定を行う。こうして、格子面間隔の測定値は1つだけ得られる場合もあれば、複数の測定値が得られる場合もある。これは、以下に説明する他の方法で格子間間隔を測定する場合においても同様である。
【0033】
図8は、電子線回折像の回折スポット間の距離から物質の格子間間隔を求める方法の他の例を説明する図、図9はその手順を説明するフローチャートである。
まず、メインスポットの位置を確認する(S21)。次に、図8(a)に示すように、メインスポットとそれに隣接するスポットを含む測定領域を設定する(S22)。このステップ21及びステップ22は、図7においてステップ11及びステップ12として説明した工程と同じである。次に、図8(b)に略示するように、矩形の測定領域の長軸をX軸、短軸をY軸として、X軸方向のpixel強度の積算値を計算し、X軸方向の積算強度プロファイルを求める。同様にして、Y軸方向のpixel強度の積算値を計算し、Y軸方向の積算強度プロファイルを求める(S23)。続いて、X軸方向の積算強度プロファイルからそのピーク座標xi,xjを求め、Y軸方向の積算強度プロファイルからそのピーク座標yi,yjを求める(S24)。次に、得られた2つの回折スポットに対応する2つのピーク座標(xi,yi),(xj,yj)から、ピーク間距離R=[(xj‐xi)2+(yj‐yi)2]1/2を算出する(S25)。ピーク間距離Rが求まれば、前記のようにd=Lλ/Rの関係を用いて格子面間隔dが計算される。
次に、図10の概略説明図及び図11のフローチャートを用いて、メインスポットに対して対称的なスポットが得られた場合の物質の格子面間隔を求める方法の例を説明する。
【0034】
本例では、図10(a)に示すように、電子線回折像表示用モニター11に表示された電子線回折像に対し、メインスポットを挟んで対称な位置にある一対の回折スポットが入る矩形領域を設定する。メインスポットの位置は、図7のステップ11で説明したようにして確認することができる。次に、図10(b)に略示するように、矩形領域の短軸(Y軸)上の各点において長軸(X軸)方向のpixel強度の積算値を計算し、Y軸方向の積算強度プロファイルを求める。スポット間の距離を正確に測定するためには、スポットの配列に平行な直線上で距離を測定する必要がある。そこで、メインスポットを含む3つの回折スポットが入った矩形領域をある角度の範囲で回転させ、Y軸方向のpixel強度積算値のプロファイルに現れるピークが図10(c)に示すように1つとなり、強度最大を示す角度のところを測定領域とする。ここまでの手順は、図7にて説明したステップ11からステップ16までの手順とほぼ同様である。
【0035】
次に、決定された測定領域において、図10(d)に略示するように、X軸(長軸)方向のpixel強度積算値のプロファイルをとる(S31)。次に、X軸(長軸)方向のpixel強度積算値のプロファイルにおいて、メインスポットに対応するpixel強度積算値Ix=Imaxとなる座標x0を削除する(S32)。続いて、X軸(長軸)方向のpixel強度積算値のプロファイルに残った2つのピークのX座標xi及びxjを算出する(S33)。そして、算出された2つの座標xi,xjを用いてスポット間距離R=|xj−xi|/2を計算する(S34)。格子面間隔dは、前述のように関係式d=Lλ/Rから計算される。
【0036】
図12の概念図及び図13のフローチャートを用いて、スポットの配置が対称であるか非対称であるかに無関係に物質の格子面間隔を求めることのできる他の方法について説明する。
最初に、電子線回折像表示用モニター11に表示された電子線回折像の中でメインスポットの位置を確認する(S41)。この確認は、図7のステップ11で説明したようにして行うことができる。次に、図12(a)に示すように、電子線回折像に対して第1の測定領域を設定し、スポット間距離を求める一対のスポットのうちの一つを指定する(S42)。この指定は、所望のスポットを例えば円形の図形で囲んで選択することによって行うことができる。また、指定スポットはメインスポットあるいはメインスポットに隣接するスポットとするのが望ましい。スポットが指定されると、その測定領域の中でX,Y軸方向の積算強度プロファイルを求め(S43)、X軸方向の積算強度プロファイルが最大強度を示すX座標xi、及びY軸方向の積算強度プロファイルが最大強度を示すY座標yiを求める(S44)。
【0037】
次に、図12(b)に示すように、電子線回折像に対して第2の測定領域を設定し、スポット間距離を求める他方のスポットを選択する(S45)。この第2のスポットの選択も、所望のスポットを例えば円形の図形で囲んで選択することによって行う。第2のスポットとして選択されるスポットは、先に選択したスポットがメインスポットである場合には、メインスポットに隣接するスポットであり、先に選択したスポットがメインスポットに隣接するスポットである場合には、メインスポットに対してそのスポットと対称な位置にあるスポットとするのが望ましい。次に、第1のスポットに対するのと同様に、第2の測定領域の中でX,Y軸方向の積算強度プロファイルを求め(S46)、X軸方向の積算強度プロファイルが最大強度を示すX座標xj、及びY軸方向の積算強度プロファイルが最大強度を示すY座標yjを求める(S47)。
【0038】
2つのスポットに対する測定が終わると、そのスポット間の距離S={(xj−xi)2+(yj−yi)2}1/2を計算して求める(S48)。このとき、選択した一対のスポットがメインスポットを挟んで対称的な2点(2R)か、メインスポットを含むか(R)によって、R=S/2又はR=Sに従ってRの値を求める。格子面間隔dは、前述のように関係式d=Lλ/Rから計算される。別のスポット対について測定する場合には、ステップ42に戻って処理を反復する。
次に、電子線回折像がリング状をなしている場合の測定方法について、図14の概略図及び図15のフローチャートを用いて一例を説明する。
【0039】
図14(a)は、リング状の電子線回折像を示す模式図である。中心に位置するスポットがメインスポットであり、試料によって回折された電子線はメインスポットの周りにリング状に分布している。
最初に、電子線回折像表示用モニター11上でメインスポットの位置を確認する(S51)。次に、図14(b)に示すように、メインスポットを円形の図形等で囲むことによって領域指定し、その領域内でメインスポットのX軸方向の積算強度プロファイル及びY軸方向の積算強度プロファイルを求める(S52)。そして、各軸方向の積算強度プロファイルのピークからメインスポットの座標(xi,yi)を求める(S53)。ここまでの処理は、図13にて説明したステップ41からステップ44の処理と同様にして行うことができる。
【0040】
次に、求めたメインスポットの座標を原点とし(S54)、図14(c)に示すように、原点から回折リングを横切るようにして直線を引く(S55)。そして、その直線上で強度プロファイルをとる(S56)。図14(d)は、得られた強度プロファイルの模式図である。次に、強度プロファイルの隣り合う2つのピーク間の距離Rを求める(S57)。格子面間隔dは、前述のように関係式d=Lλ/Rから計算される。強度プロファイル上の位置によって隣り合う2つのピーク間の距離Rが異なる場合には、格子面間隔としても複数の値が得られる。
【0041】
以上、図6から図15を用いて説明したいずれの測定においても、強度プロファイルのピーク位置は、強度プロファイルを放物線あるいはガウス分布などにフィッティングさせ、その最適フィッティング位置をピーク位置とすることにより、高精度にピーク位置を求めるのが好ましい。この方法によると、従来は高い精度での測定が困難であった電子線回折像の中心スポットと回折スポット間の距離を高精度で測定し、格子面間隔を精度よく算出することができる。
【0042】
図16は、正規分布等とのフィッティングによって強度プロファイルのピーク位置を求める方法の説明図である。例えば、取り込み領域の各画素ごとに座標Xを持たせる。i番目の画素のX座標をxi、強度をIxとした場合、測定値を○でプロットする。これにフィッティングさせる放物線は次式(1)の形をとる。
【0043】
【数1】
【0044】
係数a,b,cは、測定値Ixiと計算値Ixcaliが最も近くなるように、例えば最小二乗法により求める。すなわち、係数a,b,cは、次式(2)、(3)に従い、誤差eの2乗和Sを最小とするように決定される。ここで、nは取り込み領域の画素数である。
【0045】
【数2】
【0046】
また、ガウス(正規)分布にフィッティングさせてピーク位置を求める場合は、上式(1)の代わりに次式(1’)を用い、平均値μ、分散σ、規格化定数aを決定する。これらのパラメータμ、σ、aを求める際には、前記と同様に式(2)、(3)を用いる。
【0047】
【数3】
【0048】
次に、EDX分析による組成分析について説明する。EDX分析により組成分析する場合には、電子線22を試料15の測定対象箇所に停止させる。すると、その領域から組成に対応したエネルギーをもつ特性X線が発生する。特性X線はEDX検出器9で検出され、EDX分析部2では、検出されたX線のエネルギーに比例した電気パルス波高の処理が行われる。処理結果は、EDX分析部2の表示部23上にエネルギー別に整理したスペクトルとして表示される。また、EDX分析部2では、得られたスペクトルを用いて定量計算などの信号処理を行う。信号処理結果は物質同定部4に転送される。
【0049】
EDX分析結果を元に含有元素の決定を行う際には、EDX検出器で検出された特性X線が試料15から発生したものか、あるいは、電子線装置1の照射系レンズ近傍から放出されるシステムX線、電子線照射した領域以外の試料領域から発生する迷光X線かを考慮に入れる必要がある。分析領域以外から発生したX線は分析対象から除外しなければならない。
【0050】
本発明は、分析領域以外から発生したX線を分析対象から自動的に除外してEDX分析を行う仕組みを備える。この仕組みについて、図17及び図18を用いて説明する。図17は特性X線の検出スペクトル例を示す図であり、図18は分析領域の組成元素を求める手順を示すフローチャートである。
【0051】
EDX分析結果は、図17(a)(b)に示すようなスペクトルとして表示部23上に表示される。横軸はX線のエネルギー、縦軸は信号強度である。入射電子がK核の電子を弾き飛ばして出来た空位にL核からの電子が遷移したとき発生する特性X線はKα線と呼ばれ、M核からL核に電子が遷移したときに発生する特性X線はLα線と呼ばれる。
【0052】
電子線照射によって試料15から発生したX線が試料での吸収を受けずに検出された場合に、図17(a)のようなLα線の強度がKα線より高いスペクトルが検出されたとする。しかし、電子線で励起されるのではなく、電子線の広がりをカットするための照射系の絞りに電子線が照射され発生するX線が試料15周りの構造物を励起し、その構造物の特性X線を発生した場合、あるいは試料15により散乱した電子線が周囲の構造物を励起した場合には、図17(b)のようにKα線の強度がLα線の強度より高くなる。
なお、電子線照射によって複数の元素が同時に励起された場合、複数のKα線と複数のLα線が検出されるが、各元素によりKα線とLα線のエネルギー値が決まっているため、それぞれの元素に対応したKα線とLα線のペアを見つけるのは容易である。
【0053】
本発明では、上記した現象に着目し、図18に示した手順で分析視野の組成を求める。
まず、試料15の目的の箇所のEDX分析を行う。はじめから試料15に含まれないと考えられる元素は、この段階で取り除いておく。また、EDX分析部2では、検出元素の中でKα線とLα線が検出されたものについて、Lα線とKα線との強度比A=IL/IKを求めておく(S61)。残りの検出された元素をEDX分析部2から物質同定部4に入力する。物質同定部4では、EDX分析部2から入力されたデータと電子線回折像解析部3からのデータと自動検索用データとを比較する(S62)。両者のデータが一致する場合には、それらのデータを用いて物質同定処理を行う(S67)。
【0054】
ステップ62の判定で、組み合わせが一致しない場合、あるいはEDXで検出された元素が多すぎる場合には、電子線装置によって分析箇所近傍の何もないところ、すなわち試料15エッジ近傍の分析を行い、検出された元素に関してLα線とKα線との強度比H=IL/IKを求める(S63)。次に、EDX分析によって検出された各元素について、Lα線とKα線との強度比A=IL/IKと強度比Hとを比較する(S64)。A≧1の場合、すなわちIL≧IKの場合には分析視野から発せられた特性X線と考え、該当する元素を物質同定処理のための自動検索用データとする(S65)。A<1の場合には、AとHの比較を行い、A>Hであれば分析視野に由来する特性X線であると考え、該当する元素を物質同定処理のための自動検索用データとする(S65)。A<1であってA≦Hの場合には、その特性X線は分析視野以外から発生したものとみなし、物質同定処理のための自動検索用データから除外する。この処理をEDX分析で検出された元素について順次行う(S66)。その後、物質同定部4は、残った元素を元に物質同定を行う(S67)。これにより、分析視野以外から発生したと思われるX線を解析対象から取り除き、精度良く物質同定を行うことが可能となる。
【0055】
図19は、物質同定部4の保持するデータ例を示す図である。物質同定部4は物質同定処理のための検索用データベース53を保持し、それに電子線回折像解析部3から物質同定部4に送られてきた結晶面間隔データ51及びEDX分析部2から送られてきた組成(元素)データ52が加わる。検索用データベース53は、物質名(あるいは化学式、化学構造式)とその組成(構成元素)及び格子面間隔データを組にして保持する。物質同定部4では、試料の分析によって得られた組成データ52を元に可能性のある化合物を検索用データベースからピックアップする。次に、ピックアップした候補となる化合物の格子面間隔と測定した格子面間隔データ51を比較し、同じ値を示す化合物を検索し保存する。図示の例の場合、組成が測定された組成データ52と一致し、測定された格子面間隔データ51と一致する格子面間隔を含む物質54が検索され、表示部に表示されると共に保存されることになる。
【0056】
図20に、物質同定部4におけるデータの保存形式の例を示す。この例に示すように、試料の1つの分析視野から得られたデータは、(1) 二次電子像や透過電子像などの画像データ又はその画像を記録しているファイルのファイル名、(2) 電子線回折像の画像データ又はその画像を記録しているファイルのファイル名、(3) EDXスペクトルデータ又はそのデータを記録しているファイルのファイル名、(4) 面間隔データ、(5) 組成データ、(6) 検索結果を1つのデータ番号の元にファイリングする。このようなデータ保存形式によると、一分析点に対応する試料像、電子線回折像、EDX分析結果及び物質同定結果を一組として保存することができ、データ突き合わせが容易になる。
【0057】
図21は、本発明による物質同定システムの他の例を示す模式図である。本例の物質同定システムは、組成分析の手段として、電子線エネルギー損失分光器(EELS:electron energy loss spectroscopy)29を電子線回折像用TVカメラ10の下方に装着したものである。EELS分光器29は、EELS分析部30を介して物質同定部4に接続されている。EELSはEDXの代わりに用いることもできるし、EDXとEELSを併用して組成分析を行うこともできる。
【0058】
図22は、図21に示した物質同定システムの処理手順を示した説明図である。
(1)〜(3)までは、図2と同じであり、格子面間隔データ及び組成データが出た時点で、電子線回折像観察用TVカメラ10を電子線軸からはずし、試料15を透過した電子線22をEELS分光器29に入射させる。試料15で損失を受けたエネルギーは、構成される物質により異なるため、分光器で分光され損失エネルギーごとスペクトルが得られ、構成する物質の組成が得られる。その結果を物質同定部4に入力する。
(4) 物質同定部4では、上記EELSデータと上記(3)で得られた結晶の格子面間隔データ及び上記(3’)で得られた組成データを照合し、検索用データベースから該当する物質を検索する。あるいは、EELSデータのみを用いて検索用データベースから該当する物質を検索する。
(5) 物質同定部4で物質同定結果の表示を行う。
(6) 物質同定部4で、物質同定結果及び(1)から(4)の一連のデータを同一ラベルの下に保存する。
【0059】
【発明の効果】
本発明によれば、測定者が行う手作業を減らし、精度良く迅速に物質を同定することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による物質同定システムの一例の概略構成図。
【図2】図1に示した物質同定システムの主な処理手順を示した説明図。
【図3】ナノプローブ回折像の説明図。
【図4】電子線回折像と試料走査像の方向を一致させる方法の一例の説明図。
【図5】電子線回折像と試料走査像の方向を一致させる方法の他の例の説明図。
【図6】物質の格子面間隔を求める方法の一例を説明する図。
【図7】物質の格子面間隔を求める手順の説明図。
【図8】物質の格子面間隔を求める方法の他の例を説明する図。
【図9】物質の格子面間隔を求める手順の説明図。
【図10】メインスポットに対して対称的なスポットから物質の格子面間隔を求める方法の概略説明図。
【図11】メインスポットに対して対称的なスポットから物質の格子面間隔を求める手順を示すフローチャート。
【図12】物質の格子面間隔を求める方法の他の例の概略説明図。
【図13】物質の格子面間隔を求める方法の手順を示すフローチャート。
【図14】リング状をなしている電子線回折像から物質の格子面面間隔を求める方法の概略説明図。
【図15】リング状をなしている電子線回折像から物質の格子面間隔を求める手順を示すフローチャート。
【図16】強度プロファイルのピーク位置を求める方法の説明図。
【図17】特性X線の検出スペクトル例を示す図。
【図18】分析領域以外から発生したX線を分析対象から自動的に除外してEDX分析を行う方法の説明図。
【図19】物質同定部4の保持するデータ例を示す図。
【図20】物質同定部におけるデータの保存形式の例を示す図。
【図21】本発明による物質同定システムの他の例を示す模式図。
【図22】図21に示した物質同定システムの処理手順を示した説明図。
【符号の説明】
1…電子線装置、2…EDX分析部、3…電子線回折像解析部、4…物質同定部、5…走査コイル、6…二次電子検出器、7…明視野走査透過像検出器、8…暗視野走査透過像検出器、9…EDX検出器、10…電子線回折像観察用TVカメラ、11…電子線回折像観察用モニター、12…電子銃、13…コンデンサーレンズ、14…対物レンズ、15…試料、16…信号増幅器、17…走査像表示部、18…走査電源、19…電子線装置制御部、20…信号増幅器、21…信号増幅器、22…電子線、23…表示部、24…投射レンズ、25…試料ホルダ、26…試料微動装置、27…メインスポット、28…回折スポット、29…EELS分光器、30…EELS分析部
Claims (13)
- 電子線を細く絞って試料に照射する手段と、
前記電子線を試料上で走査する電子線走査部と、
電子線照射によって試料から放出された二次電子又は試料透過電子を検出する電子検出器と、
前記電子検出器の出力を用いて試料走査像を表示する試料像表示部と、
前記電子線と試料との相互作用によって得られるエネルギー線を分析して元素情報を出力する元素分析部と、
試料透過電子線によって形成される電子線回折像を撮像する電子線回折像撮像部と、
前記電子線回折像から求められた結晶の格子面間隔に適合する物質の情報を出力する電子線回折像解析部と、
前記元素分析部から得られた情報と前記電子線回折像解析部から得られた情報とを元に試料の電子線照射領域に含有される物質を同定する物質同定部とを含むことを特徴とする物質同定システム。 - 請求項1記載の物質同定システムにおいて、前記元素分析部は、電子線照射によって試料から発生する特性X線を分析して元素情報を出力するエネルギー分散型X線分析部であることを特徴とする物質同定システム。
- 請求項2記載の物質同定システムにおいて、前記元素分析部は、各元素の特性X線スペクトルのKα線とLα線の強度比(IL/IK)を基準として当該元素の情報を前記元素情報として出力するか否かを判定する判定部を有することを特徴とする物質同定システム。
- 請求項1記載の物質同定システムにおいて、前記元素分析部は、試料透過電子線のエネルギー損失スペクトルを分析して元素情報を出力する電子線エネルギー損失分光分析部であることを特徴とする物質同定システム。
- 請求項1記載の物質同定システムにおいて、試料上の1個所の分析によって得られた試料走査像、元素情報、電子線回折像、同定された物質に関する情報を一組のデータとして保存することを特徴とする物質同定システム。
- 請求項1記載の物質同定システムにおいて、前記電子線回折像撮像部によって撮像された電子線回折像を表示する電子線回折像表示部と、電子線回折像のカメラ長調節用レンズと、前記電子線走査部を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記カメラ長調節用レンズの設定を変更するとき当該変更によって発生する前記電子線回折像の回転と同じ角度だけ前記試料像表示部に表示される試料像を回転させるように前記電子線走査部を制御することを特徴とする物質同定システム。
- 請求項1記載の物質同定システムにおいて、前記電子線回折像撮像部によって撮像された電子線回折像を表示する電子線回折像表示部と、電子線回折像のカメラ長調節用レンズと、前記電子線回折像表示部を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記カメラ長調節用レンズの設定を変更するとき当該変更によって発生する前記電子線回折像の回転と同じ角度だけ前記電子線回折像表示部に表示される像を逆方向に回転させて表示するように前記電子線回折像表示部を制御することを特徴とする物質同定システム。
- 請求項1記載の物質同定システムにおいて、前記電子線回折像解析部は、前記電子線回折像表示部に表示されたスポット状の電子線回折像に対してメインスポットを含む少なくとも2つのスポットを囲むように設定された矩形領域の短辺の各位置において長辺方向の画素強度を積算した短軸強度プロファイルを作成する手段と、前記矩形領域の長辺の各位置において短辺方向の画素強度を積算した長軸強度プロファイルを作成する手段と、前記矩形領域をその中心の周りに回転させる手段と、前記短軸強度プロファイルのピーク強度が最大となる前記矩形領域の回転位置において測定した前記長軸強度プロファイルのピーク間距離から結晶の格子面間隔を算出する手段とを備えることを特徴とする物質同定システム。
- 請求項1記載の物質同定システムにおいて、前記電子線回折像解析部は、前記電子線回折像表示部に表示されたスポット状の電子線回折像に対して少なくとも2つのスポットを囲むように設定された矩形領域の短辺の各位置において長辺方向の画素強度を積算した短軸強度プロファイルを作成する手段と、前記矩形領域の長辺の各位置において短辺方向の画素強度を積算した長軸強度プロファイルを作成する手段と、前記短軸強度プロファイルのピーク位置と前記長軸強度プロファイルのピーク位置から算出された前記2つのスポットの間の距離を元に結晶の格子面間隔を算出する手段とを備えることを特徴とする物質同定システム。
- 請求項1記載の物質同定システムにおいて、前記電子線回折像解析部は、前記電子線回折像表示部に表示されたスポット状の電子線回折像の2つのポットに対して各スポットを囲むように設定された第1の領域と第2の領域の各々において画素強度分布を求める手段と、各画素強度分布のピーク位置に基づいて算出された前記2つのスポットの間の距離を元に結晶の格子面間隔を算出する手段とを備えることを特徴とする物質同定システム。
- 請求項1記載の物質同定システムにおいて、前記電子線回折像解析部は、前記電子線回折像表示部に表示されたメインスポットを中心とする同心円状の電子線回折像に対して、メインスポットを囲むように設定された領域内での画素強度分布を求める手段と、前記画素強度分布のピーク位置を求める手段と、前記ピーク位置を通り前記同心円を横切る直線上の強度プロファイルを求める手段と、前記強度プロファイルのピーク位置を求める手段と、前記直線上のピーク間距離を元に結晶の格子面間隔を算出する手段とを備えることを特徴とする物質同定システム。
- 請求項8〜11記載の物質同定システムにおいて、強度プロファイルのピークは、強度プロファイルを正規分布あるいは放物線にフィッティングさせることによって求めることを特徴とする物質同定システム。
- 電子線を細く絞って試料に照射する手段と、
電子線照射によって試料から発生する特性X線を検出するX線検出器と、
前記X線検出器で検出された特性X線を分析して元素情報を出力するエネルギー分散型X線分析部と、
前記エネルギー分散型X線分析部で1つの元素に起因するとされた特性X線のKα線とLα線の強度比(IL/IK)を基準として当該特性X線が試料の電子線照射領域に存在する元素に由来するものか否かを判定する判定部とを備えることを特徴とする物質同定システム。
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