JP2004275616A - 滅菌方法、医療容器およびプレフィルドシリンジの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ポリプロピレンを主材料として構成された滅菌対象物に対して、ポリプロピレンの分解等を防止または抑制しつつ放射線滅菌を施すことができる滅菌方法、かかる滅菌方法により滅菌が施された医療容器、および、長期間保存した場合でも、内部に充填された液状製剤にポリプロピレンの分解物が溶出し難いプレフィルドシリンジを製造可能なプレフィルドシリンジの製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の滅菌方法は、ポリプロピレンを主材料として構成された滅菌対象物に対して脱酸素雰囲気中で放射線滅菌を施すものであり、例えば脱酸素状態の包材2内に封入された外筒3に対して放射線滅菌を施す。包材2内を脱酸素状態とする方法は、包材2内に外筒3とともに脱酸素剤5を封入する方法、包材2内を不活性ガスで満たす方法、包材2内を減圧または真空状態とする方法が挙げられる。これらの場合、包材2はガスバリア性を有するものであるのが好ましい。
【選択図】図4
【解決手段】本発明の滅菌方法は、ポリプロピレンを主材料として構成された滅菌対象物に対して脱酸素雰囲気中で放射線滅菌を施すものであり、例えば脱酸素状態の包材2内に封入された外筒3に対して放射線滅菌を施す。包材2内を脱酸素状態とする方法は、包材2内に外筒3とともに脱酸素剤5を封入する方法、包材2内を不活性ガスで満たす方法、包材2内を減圧または真空状態とする方法が挙げられる。これらの場合、包材2はガスバリア性を有するものであるのが好ましい。
【選択図】図4
Description
【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、滅菌方法、医療容器およびプレフィルドシリンジの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
薬液が無菌充填された医療容器としては、例えば、プレフィルドシリンジ、輸液バック等がある。
【0003】
このような医療容器の製造方法として、例えば特許文献1には、プレフィルドシリンジの製造方法が開示されている。
【0004】
この製造方法では、薬液が充填されていない医療容器を滅菌した後、この滅菌された医療容器内に高周波滅菌を施した薬液を充填することが行われる。
【0005】
ここで、医療容器(シリンジ外筒)の構成材料としては、入手が容易であり、比較的安価であることから、ポリプロピレンが広く用いられ、また、医療容器の滅菌には、γ線等の放射線を照射する滅菌(放射線滅菌)方法が用いられている。
【0006】
ところが、ポリプロピレン製の医療容器に放射線滅菌を施すと、医療容器からポリプロピレンの分解物が溶出し易い状態となり、かかる医療容器を薬液を充填した状態で保存する形態のものに適用した場合、薬液中にポリプロピレンの分解物が溶出、混入するおそれがある。
【0007】
これらのものは、人体にとって異物であり、人体に投与された場合、それらの人体への悪影響が危惧される。
【0008】
【特許文献1】
特開平9−276404号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、ポリプロピレンを主材料として構成された滅菌対象物に対して、ポリプロピレンの分解等を防止または抑制しつつ放射線滅菌を施すことができる滅菌方法、かかる滅菌方法により滅菌が施された医療容器、および、長期間保存した場合でも、内部に充填された液状製剤にポリプロピレンの分解物が溶出し難いプレフィルドシリンジを製造可能なプレフィルドシリンジの製造方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
このような目的は、下記(1)〜(10)の本発明により達成される。
【0011】
(1) ポリプロピレンを主材料として構成された滅菌対象物に対して、脱酸素雰囲気中で放射線滅菌を施すことを特徴とする滅菌方法。
【0012】
(2) 脱酸素状態の包材内に封入された前記滅菌対象物に対して、前記放射線滅菌を施す上記(1)に記載の滅菌方法。
【0013】
(3) 前記包材内に、前記滅菌対象物とともに脱酸素剤を封入することにより、前記包材内を脱酸素状態とする上記(2)に記載の滅菌方法。
【0014】
(4) 前記包材内を不活性ガスで満たすことにより、前記包材内を脱酸素状態とする上記(2)または(3)に記載の滅菌方法。
【0015】
(5) 前記包材内を減圧または真空状態とすることにより、前記包材内を脱酸素状態とする上記(2)ないし(4)のいずれかに記載の滅菌方法。
【0016】
(6) 前記包材は、ガスバリア性を有するものである上記(2)ないし(5)のいずれかに記載の滅菌方法。
【0017】
(7) 前記滅菌対象物を封入した前記包材を、第2の包材内に封入した状態で、前記滅菌対象物に対して放射線滅菌を施す上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の滅菌方法。
【0018】
(8) ポリプロピレンを主材料として構成され、上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の滅菌方法により、放射線滅菌が施されることを特徴とする医療容器。
【0019】
(9) 前記医療容器は、前記放射線滅菌後に、液状製剤が充填されて保存されるものである上記(8)に記載の医療容器。
【0020】
(10) ポリプロピレンを主材料として構成されたプレフィルドシリンジの外筒に対して、脱酸素雰囲気中で放射線滅菌を施す工程と、
放射線滅菌後の前記外筒内に、無菌環境下で液状製剤を充填する工程とを有することを特徴とするプレフィルドシリンジの製造方法。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の滅菌方法、医療容器およびプレフィルドシリンジの製造方法について、添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0022】
本発明の滅菌方法では、ポリプロピレンを主材料として構成された滅菌対象物に対して、脱酸素雰囲気中で放射線を照射することにより滅菌(放射線滅菌)を施す。
【0023】
ここで、「脱酸素雰囲気」とは、大気の酸素濃度よりも低い酸素濃度の雰囲気(低酸素雰囲気)のことを言う。なお、雰囲気中の酸素濃度は、できるだけ低い方が好ましい。
【0024】
また、本発明におけるポリプロピレンは、典型的にはプロピレンモノマーを重合させた重合体であるが、その他、ポリプロピレンを主成分とする樹脂材料(例えば、共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等)であってもよい。
【0025】
また、この樹脂材料中には、例えば可塑剤、酸化防止剤、難燃剤、発泡剤、着色顔料、充填剤、滑剤等の各種添加剤が含まれていてもよい。
【0026】
ここで、仮に、ポリプロピレンで構成された滅菌対象物に対して、大気中で放射線滅菌を施すと、滅菌対象物中からポリプロピレンの分解物が溶出し易い状態となる。このため、かかる滅菌対象物を液体を充填する容器に適用した場合には、液体中にポリプロピレンの分解物が溶出するおそれがある。これらのものは、人体にとって異物であり、人体へ投与されることは好ましくない。
【0027】
そこで、本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、ポリプロピレンを主材料として構成された滅菌対象物に対して、脱酸素雰囲気中で放射線滅菌を施すことにより、滅菌対象物中において、ポリプロピレンの分解物が生成し難い状態となることを見出した。これにより、かかる滅菌対象物を、液体を充填する容器に適用した場合でも、充填された液体中にポリプロピレンの分解物が溶出することを防止または抑制することができる。
【0028】
したがって、かかる滅菌対象物を、医療容器、特に、後述するような液状製剤10を充填して保存する医療容器へ適用した場合でも、高い安全性が確保される。換言すれば、本発明の滅菌方法は、医療容器(特に、液状製剤10を充填して保存する医療容器)の滅菌への適用に適している。
【0029】
また、ポリプロピレンは、入手が容易であり、比較的安価であることから、ポリプロピレンを主材料として医療容器を構成することにより、製造コストの低減を図ることができ、製剤を安価で安定的に市場に提供することができる。
【0030】
このような医療容器としては、ポリプロピレンを主材料として構成されるものであればいかなるものであってもよく、例えば、プレフィルドシリンジの外筒、輸液、栄養療法等に使用するボトル(瓶)やバッグ(袋)、注射用薬剤カートリッジ等の容器、チューブ、各種カテーテル等が挙げられるが、特に、液状製剤を充填して保存する容器に適用するのが好ましい。本発明によれば、かかる容器に適用した場合でも、液状製剤中へのポリプロピレンの分解物の溶出が長期にわたって防止または抑制される。
【0031】
次に、滅菌対象物をプレフィルドシリンジの外筒(医療容器)に適用した場合、すなわち、本発明の滅菌方法をプレフィルドシリンジの製造方法に適用した場合を代表に説明する。
【0032】
図1〜図5は、それぞれ、プレフィルドシリンジの製造方法を説明するための平面図である。
【0033】
[1] まず、ポリプロピレンを主材料として構成された外筒3を複数本用意し、各外筒3の先端部(口部)に、それぞれ、キャップ(封止部材)31を装着する。
【0034】
そして、図1に示すように、複数本(例えば10〜20本)の外筒3をトレー4に並べて載置する。
【0035】
[2] 次に、図2に示すように、トレー4を複数段重ねて、開口部23を介して包材2内に収納する。
【0036】
ここで、包材2は、例えば重ねられたシート材21の外周部を、シール部22でシールしてなるものが用いられる。本実施形態では、2枚のシート材21が重ねられ、それらの3辺がシール部22でシールされ、1辺の未シール状態の部分が開口部23とされている。
【0037】
なお、シール部22は、例えば、熱融着、高周波融着、超音波融着のような融着や、接着剤や溶媒による接着等により形成することができる。
【0038】
シート材21は、包材2内に、大気が実質的に侵入しないガスバリア性を有するのものが好ましい。このガスバリア性は、例えば、20℃での酸素透過量(JIS K 7126に規定)が10cc/m2・24hrs・atm以下であるのが好ましく、1cc/m2・24hrs・atm以下であるのがより好ましい。
【0039】
後述するように、包材2の開口部23はシールされ、その内部が脱酸素状態とされるが、シート材21をガスバリア性を有するものとすることにより、包材2内への大気(特に酸素)の侵入を防止することができる。これにより、得られるプレフィルドシリンジ1に充填される液状製剤10中へのポリプロピレンの分解物の溶出をより確実に防止または抑制することができる。
【0040】
このようなシート材21の構成材料としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)のようなポリオレフィンや、その他、ポリアミド、ポリエステル、エチレンビニルアルコール系樹脂等、あるいはこれらの多層積層体が挙げられる。
【0041】
また、シート材21には、金属層や酸化物層等の無機物層が、積層あるいは蒸着等により被着形成されていてもよい。
【0042】
シート材21(単層体または多層積層体)の平均厚さは、特に限定されないが、通常、30〜300μm程度であるのが好ましく、50〜150μm程度であるのがより好ましい。
【0043】
このようなシート材21は、例えば、インフレーション法、Tダイ法、ブロー成型法、ドライラミネート法、ホットメルトラミネート法、共押出インフレーション法、共押出Tダイ法、ホットプレス法等の種々の方法により製造することができる。
【0044】
[3] 次に、図3に示すように、包材2の開口部23をシールして封止する。これにより、外筒3を包材2内に封入する。
【0045】
このとき、外筒3とともに、脱酸素剤5を包材2内に封入する。これにより、包材2内の酸素が脱酸素剤5に吸収(吸着)され、包材2内が脱酸素状態となる。すなわち、外筒3は、脱酸素雰囲気下に置かれることとなる。脱酸素剤5を用いる方法によれば、包材2内を比較的容易に脱酸素状態とすることができる。
【0046】
脱酸素剤5としては、例えば、鉄系の脱酸素剤、有機系の脱酸素剤等が挙げられる。
【0047】
このような脱酸素剤5は、通気性を有する容器(包材)51内に収納された状態とされている。この容器51の構成材料としては、例えば、ポリエチレン製不織布、ポリテトラフルオロエチレン製多孔質体等が挙げられる。
【0048】
なお、包材2内を脱酸素状態とする方法は、包材2内に脱酸素剤5を封入する方法に限定されず、例えば、包材2内をAr、N2等の不活性ガスで満たす方法、包材2内を減圧または真空状態とする方法等が挙げられる。これらの方法によれば、包材2内を、より高度に脱酸素状態とすることができる。
【0049】
また、前述したような方法は、任意の2種以上を組み合わせて用いることもできる。これにより、包材2内をさらに高度に脱酸素状態とすることができる。
【0050】
[4] 次に、図4に示すように、外筒3を封入した包材2を、第2の包材6内に封入する。これにより、後工程で液状製剤10を無菌充填するに際して、より高度に無菌状態を維持することができる。なお、包材2が収納される第2の包材6内は、脱酸素状態とされなくてもよい。
【0051】
第2の包材6を構成するシート材の構成材料としては、例えば、前記包材2で挙げたものと同様のものとすることができる。
【0052】
[5] 次に、図4に示すように、第2の包材6の外部から、複数の外筒3に対して放射線を照射して、放射線滅菌を施す。
【0053】
照射する放射線としては、放射線滅菌に通常用いられる放射線を用いることができ、例えば、γ線、電子放射線が挙げられる。
【0054】
放射線の線量も、通常の放射線滅菌で用いられる線量が用いられ、特に限定されないが、10〜30Kグレイ程度であるのが好ましく、16〜25Kグレイ程度であるのがより好ましい。
また、放射線の照射時間も、特に限定されず、2〜7時間程度である。
【0055】
[6] 次に、放射線滅菌が終了した第2の包材6を、例えばクラスBまたはクラスCの無菌環境とされた無菌室内に搬送し、第2の包材6を開封して、外筒3を封入した包材2を取り出す。
【0056】
そして、この包材2の外表面を、例えば、過酸化水素、アルコール等により消毒(殺菌)する。
【0057】
[7] 次に、消毒が施された包材2を、この無菌室内に置かれたアイソレータ(クラスAの無菌環境となされた薬剤充填室)内で開封する。なお、前記工程[6]は、アイソレータに連結されたブース内で行うのが好ましい。
【0058】
そして、包材2内から複数の外筒3を取り出し、各外筒3内に、予め滅菌処理(例えばろ過滅菌等)が施された液状製剤10を充填するとともに、ガスケット11、プランジャ12等の他の部材を装着して、図5に示すように、プレフィルドシリンジ1を完成させる。
【0059】
液状製剤10としては、血液製剤、ブドウ糖等の糖質注射液、塩化ナトリウムや乳酸カリウム等の電解質補正用注射液、ビタミン剤、ワクチン、抗生物質注射液、造影剤、ステロイド剤、蛋白質分解酵素阻害剤、脂肪乳剤、各種蛋白製剤、抗癌剤、麻酔薬、覚せい剤、麻薬のような各種薬液、各種診断薬、あるいは、蒸留水、生理食塩水、消毒薬、栄養剤、流動食、アルコール等の液体が収納される。
【0060】
ここで、外筒3は、ポリプロピレンを主材料として構成されたものであるが、脱酸素雰囲気中で放射線滅菌が施されているため、ポリプロピレンの分解物が溶出し難い状態となっている。したがって、充填された液状製剤10中に、これらの分解物が混入するのが防止または抑制され、安全性の高い製剤とすることができる。
【0061】
以上、本発明の滅菌方法、医療容器およびプレフィルドシリンジの製造方法について、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0062】
例えば、本発明の滅菌方法では、必要に応じて、第2の包材を用いるようにすればよく、第2の包材は省略することもできる。
【0063】
【実施例】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
【0064】
1.プレフィルドシリンジの外筒の滅菌
(実施例1)
ポリプロピレン(日本ポリケム社製、ポリプロピレン100%のホモポリマー)で構成されたプレフィルドシリンジの外筒(医療容器)を用意した。なお、この外筒には、容量が5mLのものを用意した(以下の各実施例および比較例でも同様である。)。
【0065】
また、シート材として、無機質蒸着多層フィルム(凸版印刷社製、「GXフィルム」)を用いて、シート材の外周部の一部が未シール状態の開口部となるように、シール部を形成した。これにより、包材を得た。
【0066】
次に、この開口部から、複数の外筒と、鉄系の脱酸素剤(三菱ガス化学社製、「エージレス」)とを包材内に収納し、開口部を封止した。なお、外筒の先端部にはキャップを装着しておいた。
【0067】
さらに、この包材を、前記と同様のシート材で構成される第2の包材内に封入した。
【0068】
次に、第2の包材の外部から外筒に対して、γ線を照射し、γ線滅菌(放射線滅菌)を施した。なお、γ線の線量は20Kグレイとした。
【0069】
(実施例2)
包材内に封入する脱酸素剤として、鉄系の脱酸素剤に代わり、有機系の脱酸素剤(大江化学社製、「Dタイプ」)を用いた以外は、前記実施例1と同様にしてプレフィルドシリンジの外筒に対して、γ線滅菌を施した。
【0070】
(実施例3)
包材内に脱酸素剤を封入するのに代わり、包材内をアルゴンガスで満たした以外は、前記実施例1と同様にしてプレフィルドシリンジの外筒に対して、γ線滅菌を施した。
【0071】
(実施例4)
包材内に脱酸素剤を封入するとともに、包材内をアルゴンガスで満たした以外は、前記実施例1と同様にしてプレフィルドシリンジの外筒に対して、γ線滅菌を施した。
【0072】
(実施例5)
包材内に脱酸素剤を封入するのに代わり、包材内を減圧状態(10Torr)とした以外は、前記実施例1と同様にしてプレフィルドシリンジの外筒に対して、γ線滅菌を施した。
【0073】
(比較例)
包材内に脱酸素剤を封入しなかったこと以外は、前記実施例1と同様にしてプレフィルドシリンジの外筒に対して、γ線滅菌を施した。
【0074】
2.安全性評価試験
実施例1〜実施例5および比較例において、γ線滅菌が施されたプレフィルドシリンジの外筒に対して、それぞれ、日本薬局方第14改正に記載のプラスチック製医薬品容器試験法、溶出試験による方法に基づいて、安全性評価を行った。
この結果を表1に示す。
【0075】
【表1】
【0076】
なお、表1中の特性値は、△pHが低く、△過マンガン酸カリウム還元性物質の量が少なく、また各波長域における吸光度が小さい程、ポリプロピレンの分解物の溶出が少ないことを意味する。
【0077】
<評価>
表1に示すように、実施例1〜5において、γ線滅菌が施されたプレフィルドシリンジの外筒は、いずれも、比較例において、γ線滅菌が施されたプレフィルドシリンジの外筒に比べて、ポリプロピレンの分解物の溶出が少ないことがわかる。
【0078】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、ポリプロピレンを主材料として構成された滅菌対象物に対して放射線滅菌を施しても、ポリプロピレンの分解物の溶出を防止または抑制することができる。
【0079】
したがって、滅菌対象物を医療容器に適用した場合には、材料コストを低減できるとともに、容易に滅菌を行うことができるようになり、しかも安全性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】プレフィルドシリンジの製造方法を説明するための平面図である。
【図2】プレフィルドシリンジの製造方法を説明するための平面図である。
【図3】プレフィルドシリンジの製造方法を説明するための平面図である。
【図4】プレフィルドシリンジの製造方法を説明するための平面図である。
【図5】プレフィルドシリンジの製造方法を説明するための平面図である。
【符号の説明】
1 プレフィルドシリンジ
10 液状製剤
11 ガスケット
12 プランジャ
2 包材
21 シート材
22 シール部
23 開口部
3 外筒
31 キャップ
4 トレー
5 脱酸素剤
51 容器
6 第2の包材
【発明が属する技術分野】
本発明は、滅菌方法、医療容器およびプレフィルドシリンジの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
薬液が無菌充填された医療容器としては、例えば、プレフィルドシリンジ、輸液バック等がある。
【0003】
このような医療容器の製造方法として、例えば特許文献1には、プレフィルドシリンジの製造方法が開示されている。
【0004】
この製造方法では、薬液が充填されていない医療容器を滅菌した後、この滅菌された医療容器内に高周波滅菌を施した薬液を充填することが行われる。
【0005】
ここで、医療容器(シリンジ外筒)の構成材料としては、入手が容易であり、比較的安価であることから、ポリプロピレンが広く用いられ、また、医療容器の滅菌には、γ線等の放射線を照射する滅菌(放射線滅菌)方法が用いられている。
【0006】
ところが、ポリプロピレン製の医療容器に放射線滅菌を施すと、医療容器からポリプロピレンの分解物が溶出し易い状態となり、かかる医療容器を薬液を充填した状態で保存する形態のものに適用した場合、薬液中にポリプロピレンの分解物が溶出、混入するおそれがある。
【0007】
これらのものは、人体にとって異物であり、人体に投与された場合、それらの人体への悪影響が危惧される。
【0008】
【特許文献1】
特開平9−276404号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、ポリプロピレンを主材料として構成された滅菌対象物に対して、ポリプロピレンの分解等を防止または抑制しつつ放射線滅菌を施すことができる滅菌方法、かかる滅菌方法により滅菌が施された医療容器、および、長期間保存した場合でも、内部に充填された液状製剤にポリプロピレンの分解物が溶出し難いプレフィルドシリンジを製造可能なプレフィルドシリンジの製造方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
このような目的は、下記(1)〜(10)の本発明により達成される。
【0011】
(1) ポリプロピレンを主材料として構成された滅菌対象物に対して、脱酸素雰囲気中で放射線滅菌を施すことを特徴とする滅菌方法。
【0012】
(2) 脱酸素状態の包材内に封入された前記滅菌対象物に対して、前記放射線滅菌を施す上記(1)に記載の滅菌方法。
【0013】
(3) 前記包材内に、前記滅菌対象物とともに脱酸素剤を封入することにより、前記包材内を脱酸素状態とする上記(2)に記載の滅菌方法。
【0014】
(4) 前記包材内を不活性ガスで満たすことにより、前記包材内を脱酸素状態とする上記(2)または(3)に記載の滅菌方法。
【0015】
(5) 前記包材内を減圧または真空状態とすることにより、前記包材内を脱酸素状態とする上記(2)ないし(4)のいずれかに記載の滅菌方法。
【0016】
(6) 前記包材は、ガスバリア性を有するものである上記(2)ないし(5)のいずれかに記載の滅菌方法。
【0017】
(7) 前記滅菌対象物を封入した前記包材を、第2の包材内に封入した状態で、前記滅菌対象物に対して放射線滅菌を施す上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の滅菌方法。
【0018】
(8) ポリプロピレンを主材料として構成され、上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の滅菌方法により、放射線滅菌が施されることを特徴とする医療容器。
【0019】
(9) 前記医療容器は、前記放射線滅菌後に、液状製剤が充填されて保存されるものである上記(8)に記載の医療容器。
【0020】
(10) ポリプロピレンを主材料として構成されたプレフィルドシリンジの外筒に対して、脱酸素雰囲気中で放射線滅菌を施す工程と、
放射線滅菌後の前記外筒内に、無菌環境下で液状製剤を充填する工程とを有することを特徴とするプレフィルドシリンジの製造方法。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の滅菌方法、医療容器およびプレフィルドシリンジの製造方法について、添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0022】
本発明の滅菌方法では、ポリプロピレンを主材料として構成された滅菌対象物に対して、脱酸素雰囲気中で放射線を照射することにより滅菌(放射線滅菌)を施す。
【0023】
ここで、「脱酸素雰囲気」とは、大気の酸素濃度よりも低い酸素濃度の雰囲気(低酸素雰囲気)のことを言う。なお、雰囲気中の酸素濃度は、できるだけ低い方が好ましい。
【0024】
また、本発明におけるポリプロピレンは、典型的にはプロピレンモノマーを重合させた重合体であるが、その他、ポリプロピレンを主成分とする樹脂材料(例えば、共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等)であってもよい。
【0025】
また、この樹脂材料中には、例えば可塑剤、酸化防止剤、難燃剤、発泡剤、着色顔料、充填剤、滑剤等の各種添加剤が含まれていてもよい。
【0026】
ここで、仮に、ポリプロピレンで構成された滅菌対象物に対して、大気中で放射線滅菌を施すと、滅菌対象物中からポリプロピレンの分解物が溶出し易い状態となる。このため、かかる滅菌対象物を液体を充填する容器に適用した場合には、液体中にポリプロピレンの分解物が溶出するおそれがある。これらのものは、人体にとって異物であり、人体へ投与されることは好ましくない。
【0027】
そこで、本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、ポリプロピレンを主材料として構成された滅菌対象物に対して、脱酸素雰囲気中で放射線滅菌を施すことにより、滅菌対象物中において、ポリプロピレンの分解物が生成し難い状態となることを見出した。これにより、かかる滅菌対象物を、液体を充填する容器に適用した場合でも、充填された液体中にポリプロピレンの分解物が溶出することを防止または抑制することができる。
【0028】
したがって、かかる滅菌対象物を、医療容器、特に、後述するような液状製剤10を充填して保存する医療容器へ適用した場合でも、高い安全性が確保される。換言すれば、本発明の滅菌方法は、医療容器(特に、液状製剤10を充填して保存する医療容器)の滅菌への適用に適している。
【0029】
また、ポリプロピレンは、入手が容易であり、比較的安価であることから、ポリプロピレンを主材料として医療容器を構成することにより、製造コストの低減を図ることができ、製剤を安価で安定的に市場に提供することができる。
【0030】
このような医療容器としては、ポリプロピレンを主材料として構成されるものであればいかなるものであってもよく、例えば、プレフィルドシリンジの外筒、輸液、栄養療法等に使用するボトル(瓶)やバッグ(袋)、注射用薬剤カートリッジ等の容器、チューブ、各種カテーテル等が挙げられるが、特に、液状製剤を充填して保存する容器に適用するのが好ましい。本発明によれば、かかる容器に適用した場合でも、液状製剤中へのポリプロピレンの分解物の溶出が長期にわたって防止または抑制される。
【0031】
次に、滅菌対象物をプレフィルドシリンジの外筒(医療容器)に適用した場合、すなわち、本発明の滅菌方法をプレフィルドシリンジの製造方法に適用した場合を代表に説明する。
【0032】
図1〜図5は、それぞれ、プレフィルドシリンジの製造方法を説明するための平面図である。
【0033】
[1] まず、ポリプロピレンを主材料として構成された外筒3を複数本用意し、各外筒3の先端部(口部)に、それぞれ、キャップ(封止部材)31を装着する。
【0034】
そして、図1に示すように、複数本(例えば10〜20本)の外筒3をトレー4に並べて載置する。
【0035】
[2] 次に、図2に示すように、トレー4を複数段重ねて、開口部23を介して包材2内に収納する。
【0036】
ここで、包材2は、例えば重ねられたシート材21の外周部を、シール部22でシールしてなるものが用いられる。本実施形態では、2枚のシート材21が重ねられ、それらの3辺がシール部22でシールされ、1辺の未シール状態の部分が開口部23とされている。
【0037】
なお、シール部22は、例えば、熱融着、高周波融着、超音波融着のような融着や、接着剤や溶媒による接着等により形成することができる。
【0038】
シート材21は、包材2内に、大気が実質的に侵入しないガスバリア性を有するのものが好ましい。このガスバリア性は、例えば、20℃での酸素透過量(JIS K 7126に規定)が10cc/m2・24hrs・atm以下であるのが好ましく、1cc/m2・24hrs・atm以下であるのがより好ましい。
【0039】
後述するように、包材2の開口部23はシールされ、その内部が脱酸素状態とされるが、シート材21をガスバリア性を有するものとすることにより、包材2内への大気(特に酸素)の侵入を防止することができる。これにより、得られるプレフィルドシリンジ1に充填される液状製剤10中へのポリプロピレンの分解物の溶出をより確実に防止または抑制することができる。
【0040】
このようなシート材21の構成材料としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)のようなポリオレフィンや、その他、ポリアミド、ポリエステル、エチレンビニルアルコール系樹脂等、あるいはこれらの多層積層体が挙げられる。
【0041】
また、シート材21には、金属層や酸化物層等の無機物層が、積層あるいは蒸着等により被着形成されていてもよい。
【0042】
シート材21(単層体または多層積層体)の平均厚さは、特に限定されないが、通常、30〜300μm程度であるのが好ましく、50〜150μm程度であるのがより好ましい。
【0043】
このようなシート材21は、例えば、インフレーション法、Tダイ法、ブロー成型法、ドライラミネート法、ホットメルトラミネート法、共押出インフレーション法、共押出Tダイ法、ホットプレス法等の種々の方法により製造することができる。
【0044】
[3] 次に、図3に示すように、包材2の開口部23をシールして封止する。これにより、外筒3を包材2内に封入する。
【0045】
このとき、外筒3とともに、脱酸素剤5を包材2内に封入する。これにより、包材2内の酸素が脱酸素剤5に吸収(吸着)され、包材2内が脱酸素状態となる。すなわち、外筒3は、脱酸素雰囲気下に置かれることとなる。脱酸素剤5を用いる方法によれば、包材2内を比較的容易に脱酸素状態とすることができる。
【0046】
脱酸素剤5としては、例えば、鉄系の脱酸素剤、有機系の脱酸素剤等が挙げられる。
【0047】
このような脱酸素剤5は、通気性を有する容器(包材)51内に収納された状態とされている。この容器51の構成材料としては、例えば、ポリエチレン製不織布、ポリテトラフルオロエチレン製多孔質体等が挙げられる。
【0048】
なお、包材2内を脱酸素状態とする方法は、包材2内に脱酸素剤5を封入する方法に限定されず、例えば、包材2内をAr、N2等の不活性ガスで満たす方法、包材2内を減圧または真空状態とする方法等が挙げられる。これらの方法によれば、包材2内を、より高度に脱酸素状態とすることができる。
【0049】
また、前述したような方法は、任意の2種以上を組み合わせて用いることもできる。これにより、包材2内をさらに高度に脱酸素状態とすることができる。
【0050】
[4] 次に、図4に示すように、外筒3を封入した包材2を、第2の包材6内に封入する。これにより、後工程で液状製剤10を無菌充填するに際して、より高度に無菌状態を維持することができる。なお、包材2が収納される第2の包材6内は、脱酸素状態とされなくてもよい。
【0051】
第2の包材6を構成するシート材の構成材料としては、例えば、前記包材2で挙げたものと同様のものとすることができる。
【0052】
[5] 次に、図4に示すように、第2の包材6の外部から、複数の外筒3に対して放射線を照射して、放射線滅菌を施す。
【0053】
照射する放射線としては、放射線滅菌に通常用いられる放射線を用いることができ、例えば、γ線、電子放射線が挙げられる。
【0054】
放射線の線量も、通常の放射線滅菌で用いられる線量が用いられ、特に限定されないが、10〜30Kグレイ程度であるのが好ましく、16〜25Kグレイ程度であるのがより好ましい。
また、放射線の照射時間も、特に限定されず、2〜7時間程度である。
【0055】
[6] 次に、放射線滅菌が終了した第2の包材6を、例えばクラスBまたはクラスCの無菌環境とされた無菌室内に搬送し、第2の包材6を開封して、外筒3を封入した包材2を取り出す。
【0056】
そして、この包材2の外表面を、例えば、過酸化水素、アルコール等により消毒(殺菌)する。
【0057】
[7] 次に、消毒が施された包材2を、この無菌室内に置かれたアイソレータ(クラスAの無菌環境となされた薬剤充填室)内で開封する。なお、前記工程[6]は、アイソレータに連結されたブース内で行うのが好ましい。
【0058】
そして、包材2内から複数の外筒3を取り出し、各外筒3内に、予め滅菌処理(例えばろ過滅菌等)が施された液状製剤10を充填するとともに、ガスケット11、プランジャ12等の他の部材を装着して、図5に示すように、プレフィルドシリンジ1を完成させる。
【0059】
液状製剤10としては、血液製剤、ブドウ糖等の糖質注射液、塩化ナトリウムや乳酸カリウム等の電解質補正用注射液、ビタミン剤、ワクチン、抗生物質注射液、造影剤、ステロイド剤、蛋白質分解酵素阻害剤、脂肪乳剤、各種蛋白製剤、抗癌剤、麻酔薬、覚せい剤、麻薬のような各種薬液、各種診断薬、あるいは、蒸留水、生理食塩水、消毒薬、栄養剤、流動食、アルコール等の液体が収納される。
【0060】
ここで、外筒3は、ポリプロピレンを主材料として構成されたものであるが、脱酸素雰囲気中で放射線滅菌が施されているため、ポリプロピレンの分解物が溶出し難い状態となっている。したがって、充填された液状製剤10中に、これらの分解物が混入するのが防止または抑制され、安全性の高い製剤とすることができる。
【0061】
以上、本発明の滅菌方法、医療容器およびプレフィルドシリンジの製造方法について、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0062】
例えば、本発明の滅菌方法では、必要に応じて、第2の包材を用いるようにすればよく、第2の包材は省略することもできる。
【0063】
【実施例】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
【0064】
1.プレフィルドシリンジの外筒の滅菌
(実施例1)
ポリプロピレン(日本ポリケム社製、ポリプロピレン100%のホモポリマー)で構成されたプレフィルドシリンジの外筒(医療容器)を用意した。なお、この外筒には、容量が5mLのものを用意した(以下の各実施例および比較例でも同様である。)。
【0065】
また、シート材として、無機質蒸着多層フィルム(凸版印刷社製、「GXフィルム」)を用いて、シート材の外周部の一部が未シール状態の開口部となるように、シール部を形成した。これにより、包材を得た。
【0066】
次に、この開口部から、複数の外筒と、鉄系の脱酸素剤(三菱ガス化学社製、「エージレス」)とを包材内に収納し、開口部を封止した。なお、外筒の先端部にはキャップを装着しておいた。
【0067】
さらに、この包材を、前記と同様のシート材で構成される第2の包材内に封入した。
【0068】
次に、第2の包材の外部から外筒に対して、γ線を照射し、γ線滅菌(放射線滅菌)を施した。なお、γ線の線量は20Kグレイとした。
【0069】
(実施例2)
包材内に封入する脱酸素剤として、鉄系の脱酸素剤に代わり、有機系の脱酸素剤(大江化学社製、「Dタイプ」)を用いた以外は、前記実施例1と同様にしてプレフィルドシリンジの外筒に対して、γ線滅菌を施した。
【0070】
(実施例3)
包材内に脱酸素剤を封入するのに代わり、包材内をアルゴンガスで満たした以外は、前記実施例1と同様にしてプレフィルドシリンジの外筒に対して、γ線滅菌を施した。
【0071】
(実施例4)
包材内に脱酸素剤を封入するとともに、包材内をアルゴンガスで満たした以外は、前記実施例1と同様にしてプレフィルドシリンジの外筒に対して、γ線滅菌を施した。
【0072】
(実施例5)
包材内に脱酸素剤を封入するのに代わり、包材内を減圧状態(10Torr)とした以外は、前記実施例1と同様にしてプレフィルドシリンジの外筒に対して、γ線滅菌を施した。
【0073】
(比較例)
包材内に脱酸素剤を封入しなかったこと以外は、前記実施例1と同様にしてプレフィルドシリンジの外筒に対して、γ線滅菌を施した。
【0074】
2.安全性評価試験
実施例1〜実施例5および比較例において、γ線滅菌が施されたプレフィルドシリンジの外筒に対して、それぞれ、日本薬局方第14改正に記載のプラスチック製医薬品容器試験法、溶出試験による方法に基づいて、安全性評価を行った。
この結果を表1に示す。
【0075】
【表1】
【0076】
なお、表1中の特性値は、△pHが低く、△過マンガン酸カリウム還元性物質の量が少なく、また各波長域における吸光度が小さい程、ポリプロピレンの分解物の溶出が少ないことを意味する。
【0077】
<評価>
表1に示すように、実施例1〜5において、γ線滅菌が施されたプレフィルドシリンジの外筒は、いずれも、比較例において、γ線滅菌が施されたプレフィルドシリンジの外筒に比べて、ポリプロピレンの分解物の溶出が少ないことがわかる。
【0078】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、ポリプロピレンを主材料として構成された滅菌対象物に対して放射線滅菌を施しても、ポリプロピレンの分解物の溶出を防止または抑制することができる。
【0079】
したがって、滅菌対象物を医療容器に適用した場合には、材料コストを低減できるとともに、容易に滅菌を行うことができるようになり、しかも安全性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】プレフィルドシリンジの製造方法を説明するための平面図である。
【図2】プレフィルドシリンジの製造方法を説明するための平面図である。
【図3】プレフィルドシリンジの製造方法を説明するための平面図である。
【図4】プレフィルドシリンジの製造方法を説明するための平面図である。
【図5】プレフィルドシリンジの製造方法を説明するための平面図である。
【符号の説明】
1 プレフィルドシリンジ
10 液状製剤
11 ガスケット
12 プランジャ
2 包材
21 シート材
22 シール部
23 開口部
3 外筒
31 キャップ
4 トレー
5 脱酸素剤
51 容器
6 第2の包材
Claims (5)
- ポリプロピレンを主材料として構成された滅菌対象物に対して、脱酸素雰囲気中で放射線滅菌を施すことを特徴とする滅菌方法。
- 脱酸素状態の包材内に封入された前記滅菌対象物に対して、前記放射線滅菌を施す請求項1に記載の滅菌方法。
- ポリプロピレンを主材料として構成され、請求項1または2に記載の滅菌方法により、放射線滅菌が施されることを特徴とする医療容器。
- 前記医療容器は、前記放射線滅菌後に、液状製剤が充填されて保存されるものである請求項3に記載の医療容器。
- ポリプロピレンを主材料として構成されたプレフィルドシリンジの外筒に対して、脱酸素雰囲気中で放射線滅菌を施す工程と、
放射線滅菌後の前記外筒内に、無菌環境下で液状製剤を充填する工程とを有することを特徴とするプレフィルドシリンジの製造方法。
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