JPH10277132A - 医療用容器 - Google Patents

医療用容器

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JPH10277132A
JPH10277132A JP9102759A JP10275997A JPH10277132A JP H10277132 A JPH10277132 A JP H10277132A JP 9102759 A JP9102759 A JP 9102759A JP 10275997 A JP10275997 A JP 10275997A JP H10277132 A JPH10277132 A JP H10277132A
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mother liquor
medical container
bicarbonate
electrolyte component
adjuster
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JP9102759A
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Hiroshi Motobayashi
博志 本林
Hiroyuki Shichi
宏幸 志知
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Material Engineering Technology Laboratory Inc
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    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B65CONVEYING; PACKING; STORING; HANDLING THIN OR FILAMENTARY MATERIAL
    • B65DCONTAINERS FOR STORAGE OR TRANSPORT OF ARTICLES OR MATERIALS, e.g. BAGS, BARRELS, BOTTLES, BOXES, CANS, CARTONS, CRATES, DRUMS, JARS, TANKS, HOPPERS, FORWARDING CONTAINERS; ACCESSORIES, CLOSURES, OR FITTINGS THEREFOR; PACKAGING ELEMENTS; PACKAGES
    • B65D81/00Containers, packaging elements, or packages, for contents presenting particular transport or storage problems, or adapted to be used for non-packaging purposes after removal of contents
    • B65D81/32Containers, packaging elements, or packages, for contents presenting particular transport or storage problems, or adapted to be used for non-packaging purposes after removal of contents for packaging two or more different materials which must be maintained separate prior to use in admixture
    • B65D81/3261Flexible containers having several compartments
    • B65D81/3266Flexible containers having several compartments separated by a common rupturable seal, a clip or other removable fastening device

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  • Mechanical Engineering (AREA)
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  • Medical Preparation Storing Or Oral Administration Devices (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【目的】 腎障害、下痢、嘔吐等の生じることがなく、
また投与時のPH値も高く維持できる輸液用剤、透析液
用剤、及び臓器保存剤等の医療用剤が充填された医療用
容器を提供。 【構成】 可撓性壁を有する樹脂素材からなり且つ排出
口を具備し、内部に母液とPH調整剤とが分けて充填さ
れる医療用容器であって、上記母液とPH調整剤とは隔
離シール部で隔離されたそれぞれの収納室に充填され、
上記隔離シール部は使用時に少なくとも一部を剥離開放
しうるピールシール部で形成され、また、上記母液中に
は負電解質成分が陽電解質成分に対して2〜35mEq
/Lの範囲(但し、分解性の負電解質成分或いは陽電解
質成分を除く。)で過剰に含有され、且つPH調整剤と
して重炭酸塩が含有されていることを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、柔軟な可撓性壁を有す
る樹脂製容器であって、輸液、透析液、臓器保存液等を
収納した医療用容器に関するものであり、特に、患者へ
の適用に際して従来から問題となっている電解質異常、
例えば、肝障害者等に見られるアシドーシス症状の緩和
や輸液時の嘔吐、悪寒等を軽減することができる輸液、
透析液、臓器保存液等を提供すると共に、これ等の主要
成分の保存性を高めることができる医療用容器に関する
ものである。
【0002】
【従来の技術】最近、輸液、透析液及び臓器保存液の医
療用関係の電解質溶液等は柔軟な樹脂製の容器に充填さ
れて提供されている。このような医療用容器には二枚の
樹脂シートを重ね互いの周縁を熱シールして成形したも
の、射出成形したもの、ブロー成形したもの等がある。
また医療用容器には排出口が形成され、医療用容器が輸
液容器であれば排出口には点滴針等が刺通される。また
高カロリー輸液用剤が充填された医療用容器において
は、二室に分割した容器が提案されている(特開昭63
−19149号公報)。高カロリー輸液用剤中には糖類
とアミノ酸とが含まれるものがあり、かかる医療用容器
ではこれらの溶液を別々の室に収納している。これは、
糖類とアミノ酸を一緒にして高圧蒸気滅菌処理すると、
メイラード反応により変色を起こすからである。このよ
うな医療用容器の互いに隣接する室と室とは隔離シール
部により隔離され、隔離シール部は室を外側から押圧し
て室内を昇圧したときに剥離開放しうるようになってい
る。従って、製造時及び保存時は糖類溶液とアミノ酸溶
液とは区分して収納され、その使用の際には、容器本体
を圧迫するだけで容易に両液を混ぜ、完全な糖類−アミ
ノ酸溶液からなる高カロリー輸液用剤を提供できるよう
になっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
医療用容器は以下の点で問題が見られる。医療用剤であ
る頻用電解質維持液用剤、血漿増量剤及び高カロリー輸
液用剤には電解質を添加するが、必ずしも血漿その他の
体液とほぼ同様な組成の電解質を添加してはいない。例
えば、血漿中には、重炭酸イオン及び炭酸ガスが含まれ
るにも拘わらず、かかる輸液剤には添加されない。かか
る輸液剤中には重炭酸イオンの負イオンの量に替えて塩
素イオンが余分に添加される。これは、輸液剤中の重炭
酸イオンを入れると、蒸気滅菌中及び保存中に炭酸ガス
に分解し、輸液剤を負イオンの少ないアルカリ性溶液に
変えてしまうからである。例えば、血漿中の電解質量に
合わせた電解質維持液、即ち、ナトリウムイオンが13
5mEq/L及びその他の陽イオンが25mEq/L
で、クロールイオンが90mEq/L、重炭酸イオン2
5mEq/L、及びリンゲル及び蛋白質によるその他の
負イオンが45mEq/Lとして輸液剤を調整し、プラ
スチックの医療用容器に収納した場合、これを蒸気滅菌
すると、PH値が7.4の正常値から急激にPH値8近
くまで上昇する。また、蒸気滅菌しなくても、かかる医
療用容器を長期間保存したものは徐々にPH値の上昇が
みられた。
【0004】そこで、従来、重炭酸イオン25mEq/
Lに代わる負イオンとしてクロールイオンを過剰に加え
ている。しかし、かかる医療用剤は体内でクロール過剰
によるアシドーシスが生じる。また、かかるクロールの
アシドーシスを解消するため、現在、重炭酸イオンの代
わりに体内での分解可能なアセテートイオン或いはラク
テートイオンが用いられている。しかしながら、アセテ
ート等を用いた場合、アセテート等は直ぐに体内で分解
されない患者、例えば肝障害のある患者がいるため、患
者の体内はアシドーシスの傾向が見られる。また、重炭
酸イオンをかかるクロールイオン及び有機酸イオンで置
き換えた場合には、血漿中のPH値が7.2〜7.4で
あるのに対し、輸液剤中のPH値は6.0以下となりバ
ランスを崩す弊害も生じてしまう。
【0005】このため、最近、重炭酸イオンを含めた輸
液剤の容器も種々提案されている。例えば、重炭酸水素
ナトリウム12.6gを常温で注射用水に溶解して1L
とし、除菌フィルタでろ過した後に、内容200mlの
ポリエチレン製輸液バックに分注し、密封した後、高圧
蒸気滅菌し、かかるバックを常温に冷却し、内層/低密
度ポリエチレン、中間層/エチレン・ビニルアルコール
共重合体及び外層/二軸延伸ナイロンの積層体からなる
ガス非透過性包装体内に炭酸ガス発生型脱酸素剤と共に
収納、密封したものが提案されている(特開平6−33
9512号公報)。これは、脱酸素剤から炭酸ガスを発
生させ、かかるガスを利用して輸液剤中の重炭酸イオン
を長期間安定に保存しようとするものである。しかし、
かかる脱酸素剤を用いたものでは、その脱酸素剤の機能
が一定に得られれば問題はない。例えば、過剰に輸液剤
中に炭酸ガスが流入すれば、重炭酸イオン/炭酸ガス=
20:1の濃度を守ろうとするため、炭酸ガス過剰によ
り、重炭酸イオンも過剰に輸液剤中に存在するおそれが
生じ、危険な電解質異常を起こす恐れがある。一方、脱
酸素剤による炭酸ガスの供給が不完全であれば、長期保
存が不可能であることは明らかである。即ち、包装体等
にピンホール等があれば重大な支障を来す。
【0006】また、最近、糖類、例えば、グルコース、
フルクトース、キシリトース、ソルビトース等が1〜5
0重量%の範囲で含まれる栄養輸液剤がある。更にはア
ミノ酸等も添加されている。透析液や保存液においても
このような糖類が添加されている。しかし、このような
糖類が添加された医療用剤のPH値が6.0を上回れ
ば、医療用容器に充填して蒸気滅菌した場合、液剤中の
糖類が直ぐに変色したり、また保存期間中に変色したり
することがある。このため、PH値を5.5以下、特
に、5.0以下に維持して医療用剤等を調整して医療用
容器に収納し、滅菌処理を行っている。しかしながら、
PH値を5.5以下に、特にPH値を5.0以下にした
医療用剤を提供すると、投与患者又は適用患者が下痢、
嘔吐、腎障害等を起こす原因となり、患者に軽度の負
担、場合によっては重度の負担がかかることがある。
尚、このようなPH値での溶液に、重炭酸イオン等を入
れると、短時間で分解を起こしてしまう。
【0007】従って、本発明は、アシドーシス等の電解
質異常等を起こすことのない輸液用剤、透析液用剤、及
び臓器保存剤等の医療用剤が充填された医療用容器を提
供することを目的とする。本発明はまた、腎障害、下
痢、嘔吐等の生じることがなく、また投与時のPH値も
高く維持できる輸液用剤、透析液用剤、及び臓器保存剤
等の医療用剤が充填された医療用容器を提供することを
目的とする。本発明は更に、容器内に上記の好ましい医
療用剤を安全で、確実に提供できる構造とした医療用容
器を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、可撓性壁を有
する樹脂素材からなり且つ排出口を具備し、内部に母液
とPH調整剤とが分けて充填される医療用容器であっ
て、上記母液とPH調整剤とは隔離シール部で隔離され
たそれぞれの収納室に充填され、上記隔離シール部は使
用時に少なくとも一部を剥離開放しうるピールシール部
で形成され、また、上記母液中には負電解質成分が陽電
解質成分に対して2〜35mEq/Lの範囲(但し、分
解性の負電解質成分或いは陽電解質成分を除く。)で過
剰に含有され、且つPH調整剤として重炭酸塩が含有さ
れていることを特徴とする医療用容器を提供することに
より、上記目的を達成したものである。
【0009】上記医療用容器は可撓性壁を有する。可撓
性壁は撓むことにより医療用容器内の容積が容易に変化
するものであれば良い。また、医療用容器壁は内容物の
確認できる程度に透明性を有することが望ましい。容器
内での薬剤の状態を確認する上で必要となるからであ
る。上記医療用容器は樹脂素材からなり、インフレーシ
ョンフィルム、チューブ、シート及びフィルムから成形
したもの、押出成形、射出成形、又はブロー成形したも
のである。医療用容器の樹脂素材としてはポリオレフィ
ン系樹脂、塩化ビニル、塩化ビニリデン系樹脂、ポリエ
ステル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアク
リルニトリル系樹脂、ポリアクリル酸系樹脂、ポリアミ
ド系樹脂等の汎用樹脂である。また樹脂容器は単層又は
多層で形成されていても良い。医療用容器内の薬剤と接
触する最内層は、薬剤に影響を与えない、また溶出物が
生じない樹脂層であるあることが望ましい。このような
樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂が望ましく、例え
ば、低、中、高−密度ポリエチレン、ポリプロピレン等
の低級オレフィン樹脂等が挙げられる。また、医療用容
器壁にはガスバリアー性層が形成されていることが望ま
しい。特に、酸素等を容易に透過しない層であることが
望ましい。このようなガスバリアー性層としては、殆
ど、又は全くガスを透過させないアルミニウム等の金属
層や酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化チタン等の無機
蒸着層であり、またポリ塩化ビニリデン、ポリエステ
ル、ナイロン、エチレン−ビニルアルコール共重合体、
フッ素系樹脂等のようにガスバリアー性の高い樹脂層で
ある。包装体におけるガスバリアー性層の酸素透過量は
40cc*20μ/m2*day*atm(温度:20
℃)以下、特に、30cc*20μ/m2*day*a
tm以下、また好ましくは5cc*20μ/m2*da
y*atm以下、更には1cc*20μ/m2*day
*atm以下であることが望ましい。また、医療用容器
の壁は内部の薬剤が確認できる程度に透明性を有するこ
とが望まれる。このため、ガスを全く透過させない優れ
た機能を有する上記アルミニウム層等の金属層から成る
壁は少なくとも一部においてその金属層が剥離可能に形
成されていることが望ましい。かかる層を有した医療用
容器においては高圧蒸気滅菌時に内部の薬剤の熱による
変質を十分に防止することができる。
【0010】上記医療用容器内には母液とPH調整剤と
が分けて充填される。母液は輸液、透析液、臓器保存液
に用いられる成分であり、例えば、ナトリウム、カリウ
ム、マグネシウム、カルシウム、クロール、リン等、そ
の他の人体に存在する無機電解質、酢酸、乳酸、クエン
酸等、その他の人体に存在する有機電解質等であり、ま
た、電解質の他に糖類、アミノ酸、蛋白質、脂肪等のエ
ネルギー、必要により生理活性物質、ビタミン等も含ま
れる。尚、母液は医療用容器に無菌的に充填しても良い
が、医療用容器の収納室に液密収容した後、蒸気滅菌処
理されたものであることが望ましい。かかる滅菌処理に
より、母液の滅菌が確実になされ、患者への安全な投与
ができるからである。PH調整剤は、重炭酸塩を主成分
とした上記電解質を構成する無機塩又は有機塩である。
また、重炭酸塩の懸濁液或いは濃厚液でも良い。少なく
とも高圧蒸気滅菌中或いは2〜3年の長期保存中に20
%を限度として重炭酸塩が炭酸ガスに消失しない状態で
上記室に収納できればよい。また、これらのPH調整剤
が母液に溶解したとき、本来の輸液用剤、透析液用剤、
及び臓器保存液用剤が構成される。従って、本発明では
母液中の電解質成分の一部がPH調整剤として分離して
医療用容器に収納されることになる。従って、重炭酸塩
としては、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム等である
ことが望ましい。
【0011】上記母液とPH調整剤とは隔離シール部で
隔離されたそれぞれの収納室に充填され、上記隔離シー
ル部は該収納室内の昇圧等によって少なくとも一部を剥
離開放しうるピールシール部で形成される。また医療用
容器が一体ではなく、収納室は異なる容器を接合して、
接合部にピールシール部が形成されていても良い。上記
ピールシール部は弱シール部とも称され、外部から室或
いは容器を圧迫し、内部が一定の昇圧状態になったとき
に剥離するシール部である。上記ピールシール部の剥離
強度は、室内の圧が0.01〜1.0Kgf/cm2
特に、0.05〜0.5Kgf/cm2の昇圧で剥離す
る強度が望ましい。上記範囲を下回る強度であれば、製
造、運搬、保存時等の隔離状態を保つための安全性に欠
ける。上記範囲を上回る強度であれば、用時に室と室同
士の連通操作を容易にすることができなくなるおそれが
ある。医療用容器の内層同士のピールシールの形成或い
は完全密封シールを形成する場合に、これらを確実に異
ならせて形成するためには、医療用容器の内層は異なる
樹脂のブレンド物であることが望ましい。特に、異なる
樹脂は、熱溶融開始温度、或いはピカッド軟化点が異な
り、相溶性のあまりない樹脂ブレンド物からなることが
望ましい。かかるブレンド物層を有することより、同一
の内層で、完全な密封シール接着のシール温度条件設定
が簡単にできる一方、ピールシール接着のシール温度条
件設定も簡単にできる。また、ピールシール接着に求め
られるシール強度、即ち、使用時の外力による易剥離性
と、保存時に剥離が生じないシール強度との関係を厳密
に設定することができる。即ち、内層に相溶性の異なる
樹脂を溶融混合し、これをシート状に成形することによ
って、ミクロ的に熱接着性の異なる部分に分離した表面
としたものである。そして、任意の温度におけるそのシ
ートの表面相互のミクロ的な部分の熱溶融性を決めるこ
とにより、シール強度の強弱を正確に付け、上記効果を
容易に達成するものである。上記母液及びPH調整剤が
収納される収納室には上記排出口が形成されている。輸
液用或いは腹膜透析用の医療用容器であれば、排出口は
点滴用等の針が刺通される構造となっている。また、そ
の他に臓器保存液用の医療用容器であれば、通常のキャ
ップ等で液密に閉じた排出口となっている。
【0012】上記負電解質成分とは、母液中で負イオン
に電離しうる成分をいう。上記陽電解質成分とは、母液
中で陽イオンに電離しうる成分をいう。分解性の負電解
質成分とは、炭酸イオン又は炭酸及び重炭酸イオン又は
重炭酸等のように溶液のPH値の影響により炭酸ガスと
して溶液中から容易に分解喪失するものである。分解性
の陽電解質成分とは、アンモニウムイオン又はアンモニ
ア等のように溶液のPH値の影響でアンモニアガスとし
て溶液から容易に分解喪失するものである。上記母液に
は負電解質成分が陽電解質成分より過剰に充填され、P
H値が酸性の溶液となっている。即ち、クロール、アセ
テート、ラクテート、蛋白質成分等の負イオン化する電
解質成分のモル量は、ナトリウム、カリウム、蛋白質成
分及びその他の陽イオン化する電解質成分のモル量より
過剰に充填されて収納室に収納される。上記陽電解質成
分に対する負電解質成分の過剰量は、2〜35mEq/
Lの範囲にある。通常、溶液中の負イオンと陽イオンと
は電気的に等モル量であり、溶液中で負電解質成分が過
剰量存在すれば、負電解質成分の過剰量は、大部分が解
離しない状態であり、一部ナノ単位での解離差を生じて
ナノ単位での水素イオンと水酸基イオンとにアンバラン
スを生じさせてPH値に寄与している。従って、負電解
質成分が過剰な母液はPH値を6.0以下の酸性に容易
に設定できる。かかる過剰量の意義は更に、使用時にP
H調整剤である重炭酸塩を混合したときにある。例え
ば、母液の負電解質成分の過剰量が5mEq/Lであ
り、これに30mEq/L相当量の重炭酸ナトリウムを
添加すると、該過剰量の5mEq/Lは重炭酸ナトリウ
ム中の一部のナトリウムと相殺され、かかる場合、母液
のPH値が7.4近辺であれば、5mEq/Lに相当す
る重炭酸が炭酸ガスに変化して負イオンを消失させ、母
液中の負イオンと陽イオンとのバランスを保つこととな
る。従って、炭酸ガスの一部は、{HCO3 -}/{H2
CO3}=20の状態で母液に存在すると共に、その他
は外気に出て来る。また、重炭酸塩は母液、即ち輸液剤
中等に25mEq/L量として残り、PH値も7.4付
近に一定にさせる。
【0013】本発明に係る医療用容器はかかる原理を利
用したものである。即ち、PH調整剤として収納室に収
納される重炭酸塩は、蒸気滅菌時或いは保存時に予め、
20%程度まで炭酸ガスとして消失してしまうことが見
込まれる。このため、かかる20%程度の炭酸ガスの消
失は、混合時に一定の量として必ず消失するものである
と見込まれるようにすれば常に、一定の重炭酸イオン濃
度で、PH値が一定に成った医療用剤が得られるのであ
る。例えば、母液の負電解質成分2mEq/L過剰で、
PH調整剤内の重炭酸塩が収納室に最初10mEq/L
相当量(母液に溶解した場合の仮定の濃度)であるとす
る。そして、医療用容器の蒸気滅菌処理により、収納室
の重炭酸塩が9mEq/Lにまで減少し、1mEq/L
の水酸化塩等ができたときに、かかる医療用容器の隔離
シール部を開封して母液と重炭酸塩を混ぜたとき、かか
る混合液からは1mEq/Lに相当する重炭酸が炭酸ガ
スとなり、医療用溶液は8mEq/Lの重炭酸イオンを
含む、一定のPH値の溶液として提供される。また、か
かる医療用容器を更に長期間保存し、収納室の重炭酸塩
が8mEq/Lにまで減少し、2mEq/Lの水酸化塩
等ができたときに、かかる医療用容器の隔離シール部を
開封して母液と重炭酸塩を混ぜたとき、炭酸ガスの発生
はないが、かかる医療用溶液は8mEq/Lの重炭酸イ
オンを含む、一定のPH値の溶液として提供される。従
って、上記陽電解質成分に対する負電解質成分の過剰量
は、2〜35mEq/Lの範囲、特に3〜20mEq/
L、更には6〜15mEq/Lの範囲であることが望ま
しい。過剰量が上記範囲を下回れば、PH調整剤中の重
炭酸塩の滅菌処理時或いは保存時における分解量以上の
炭酸ガスを母液と混合したときに発生させることができ
ずに重炭酸イオンが溶液中で不足し、混合した輸液剤或
いは透析液の成分に悪影響を与え、PH値を狂わせるお
それがある。一方、過剰量が上記範囲を上回れば、炭酸
ガスの発生量が多くなり医療用容器内が過大に膨張して
不都合が生じる。
【0014】次に、本発明に係る医療用容器の製造方法
を説明する。先ず、上記樹脂素材を用いて可撓性の容器
本体を成形し、隔離シール部を形成した後、一の収納室
に母液を充填する。隔離シール部に於けるピールシール
部の形成は、それ自体公知の方法を採用することができ
る。例えば、容器本体の内層の樹脂の融点又はピカット
軟化温度に基づいてヒートシール温度、ヒート時間等の
条件を設定することにより、隔離シール部の上記剥離強
度を得ることができる。収納室に上記母液を液密に充填
した後、他の収納室に上記PH調整剤を充填して充填口
を液密に閉じる。PH調整剤は無菌充填しても良く、ま
た無菌保証を高めるために、上記PH調整剤を充填した
後、母液及び容器本体と共に蒸気滅菌処理することがで
きる。滅菌温度は100〜140℃、特に、105℃〜
120℃の範囲で高圧蒸気滅菌を行うことが望ましい。
滅菌温度が上記範囲以下では母液の滅菌処理が十分にな
されないおそれがあり、また滅菌時間がかかり過ぎる不
具合がある。上記範囲を上回る滅菌温度では、容器自体
が軟化して変形し、また隔離シール部の剥離強度を変え
てその機能を失わせるおそれがある。
【0015】このように構成した医療用容器にあって
は、上記母液中の負電解質成分と陽電解質成分とのギャ
ップを利用することにより、製造時及び保存時にPH調
整剤である重炭酸塩が一部分解して炭酸ガスが喪失して
も、かかる炭酸ガスは使用時における母液とPH調整剤
との混合時に発生する炭酸ガス量を上回らないため、医
療用容器内には一定のPH値を有し、且つ所定の重炭酸
イオンを有した医療用剤を提供することができる。また
PH調整剤をアルカリ性にして、母液のPH値をできる
だけ低くしている。このため、母液は蒸気滅菌時、及び
その後の保存時においても変色、変質等を起こすおそれ
がない。特に、糖類等が含まれていても変色、変質が生
じにくい。一方、その使用に際しては、収納室を外側か
ら押圧することにより、隔離シール部が剥離開放しPH
調整剤が母液に無菌的操作で溶解する。このため、母液
のPH値が上昇して最適値となるので、これを患者に投
与或いは適用しても下痢、嘔吐、腎障害等を起こすおそ
れが少なくなる。更に、医療現場では、忙しさに忙殺さ
れ、隔離シール部を剥離開放しないで母液のみを患者に
適用するミスが生じる場合がある。しかし、本発明に係
る医療用容器では、PH調整剤の収納室に排出口が設け
られているので、必ず隔離シール部を剥離開放して母液
とPH調整剤とを混合しなければ、患者に点滴や適用で
きなくなっている。従って、医療用容器の操作上、輸液
等の医療用剤を安全で、確実に提供した後、点滴等がで
きる。
【0016】請求項2記載の発明は、請求項1記載の医
療用容器において、上記母液が輸液成分又は透析液成分
であり、上記母液のPH値が5.5以下であり、上記母
液に上記PH調整剤を溶解したときのPH値が6.5〜
8.0となることを特徴とする。PH調整剤をアルカリ
性塩とし、上記母液に含まれるべき塩基を少なくして上
記母液のPH値を5.5以下、より好ましくは5.0〜
2.0の範囲とすることにより、特に母液中に存在する
糖類等が高圧蒸気滅菌中に変色等の変質を起こすおそれ
が少なくなる。上記母液に上記PH調整剤を溶解したと
きの輸液剤又は透析液剤のPH値が6.5〜8.0、よ
り好ましくは、7.0〜7.5の範囲とすることによ
り、患者への投与或いは適用の際に、患者に下痢や嘔吐
や腎障害や感染症等の併発のおそれが極めて少なくな
る。
【0017】請求項3記載の本発明は、請求項2記載の
医療用容器において、上記母液の輸液剤成分は更に複数
の収納室に区分されて収納されていることを特徴とす
る。糖類及びアミノ酸等を一緒に投与することを必要と
する高カロリー輸液においては、糖類の溶液とアミノ酸
との溶液を分けて蒸気滅菌する必要がある。このため、
上記のように母液成分を更に分けて収納することが望ま
れる場合がある。そして、この場合、高カロリー輸液に
おいては、糖溶液を含む母液成分のPH値を低くして、
ブドウ糖溶液を安定に維持することができる。
【0018】請求項4記載の本発明は、請求項1記載の
医療用容器において、上記母液及びPH調整剤が蒸気滅
菌処理されていることを特徴とする。収納室内ほPH調
整剤は、無菌充填でも良いが、無菌保証を高めるために
は積極的に滅菌されていることが望ましい。収納室のP
H調整剤の滅菌処理には、γ線、電子線等の照射滅菌処
理でも良いが、より好ましくは、母液と共に蒸気滅菌処
理することが望ましい。かかる滅菌処理によりPH調整
剤である重炭酸塩はある程度分解するが、上述したよう
に、使用時にあっては、重炭酸イオン及びPH値の一定
した医療用剤を簡単に得ることができ、滅菌も極めて容
易にできる。尚、蒸気滅菌処理は、100℃〜140
℃、特に、105℃〜120℃の範囲の温度で高圧蒸気
滅菌することが望ましい。
【0019】請求項5記載の本発明は、請求項1〜4の
何れかに記載の医療用容器において、脱酸素剤と共にガ
スバリアー性包装体に密封包装されていることを特徴と
する。脱酸素剤には炭酸ガス発生型があり、かかる脱酸
素剤をガスバリアー性包装体内に収容すると、包装体が
炭酸ガス雰囲気となり、PH調整剤の収納室中の重炭酸
塩の分解を保存中、特に蒸気滅菌中に極力防止すること
ができる。脱酸素剤としては、アスコルビン酸、カテコ
ール系化合物を主体とした有機系のもの、或いは鉄等の
金属及びハロゲン化金属からなる粉末状のものなどがあ
る。具体的には、商品名「エージレス」(三菱瓦斯化学
株式会社)やその他のメーカー等から市販されているも
のである。脱酸素剤としては、酸素吸収のみ行うもの、
酸素を吸収して炭酸ガスを発生するもの等があるが、炭
酸ガスを発生するものが望ましい。具体的なガスバリア
ー性包装体としては、包装壁が殆ど、又は全くガスを透
過させないアルミニウム等の金属層や酸化珪素、酸化マ
グネシウム、酸化チタン等の無機蒸着層を有するもの、
また、ポリ塩化ビニリデン、ポリエステル、ナイロン、
エチレン−ビニルアルコール共重合体、フッ素系樹脂等
のようにガスバリアー性の高い樹脂層を有するものであ
る。包装体におけるガスバリアー性層の酸素透過量は4
0cc*20μ/m2*day*atm(温度:20
℃)以下、特に、30cc*20μ/m2*day*a
tm以下、また好ましくは5cc*20μ/m2*da
y*atm以下、更には1cc*20μ/m2*day
*atm以下であることが望ましい。包装体におけるガ
スバリアー性層の炭酸ガス透過量は、200cc*20
μ/m2*day*atm(温度:25℃)以下、特
に、100cc*20μ/m2*day*atm以下、
また好ましくは10cc*20μ/m2*day*at
m以下、更には1cc*20μ/m2*day*atm
以下であることが望ましい。
【0020】請求項6記載の本発明は、上記PH調整剤
が充填される収納室は乾燥剤と共に水蒸気バリアー性包
装体に密封包装されていることを特徴とする。PH調整
剤の重炭酸塩が固体の乾燥物であれば懸濁液など場合よ
り長期保存が可能となって好ましい。従って、このよう
な乾燥物を長期間安定に保つためには、上記PH調整剤
の収納室を水蒸気バリアー性包装体で覆っておくことが
望ましく、かかる場合、重炭酸塩の加熱滅菌時等の分解
を防止することができる。又は炭酸塩からなることを特
徴とする。乾燥剤としては、それ自身吸湿性の強い物質
であって化学的乾燥剤でも物理的乾燥剤でも良い。好ま
しい乾燥剤としてはシリカゲル、活性アルミナ、塩化カ
ルシウム、モレキュラーシーブス等の多孔質構造物等が
ある。具体的な水蒸気バリアー性包装体としては、包装
壁が殆ど、又は全くガスを透過させないアルミニウム等
の金属層や酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化チタン等
の無機蒸着層を有するもの、また、ポリ塩化ビニリデ
ン、ポリテトラフロロエチレン、ポリ3フッ化エチレ
ン、塩酸ゴム、ポリエチレン、ポリプロピレン等のよう
に水蒸気バリアー性の高い樹脂層を有するものである。
包装体における水蒸気バリアー性層の透湿量は、15g
/m2*day(温度:40℃、90%RH、30μm
当たり)以下、特に、5g/m2*day以下、また好
ましくは1g/m2*day以下であることが望まし
い。
【0021】
【実施例】以下、本発明に係る医療用容器の好ましい実
施例を添付図面を参照しながら詳述する。図1は本発明
に係る医療用容器の第一実施例の正断面図である。図2
は第一実施例の医療用容器の使用時の正断面図である。
図3は第一実施例の医療用容器の変形例を示す正断面図
である。
【0022】本実施例に係る医療用容器1は、図1及び
図2に示す如く可撓性壁を有する樹脂素材からなり且つ
排出口2を具備し、内部に母液3とPH調整剤4とが分
けて充填される。そして、医療用容器1は上記母液3と
PH調整剤4とは隔離シール部5で隔離されたそれぞれ
の収納室6、7に充填され、上記隔離シール部5は使用
時に剥離開放しうるピールシール部で形成され、また、
上記母液3中には負電解質成分が陽電解質成分に対して
2〜35mEq/Lの範囲(但し、分解性の負電解質成
分或いは陽電解質成分を除く。)で過剰に含有され、且
つPH調整剤4として重炭酸塩が含有されている。
【0023】第一実施例に係る医療用容器1を更に詳し
く説明すると、医療用容器1は図1及び図2に示す如
く、インフレーション成形した透明で柔軟な可撓性樹脂
シートを所定の大きさに裁断して裁断端部1A、1Bが
熱溶着シールされて成形されている。シートは肉厚が2
50μmで、内層が厚み50μmの直鎖状低密度ポリエ
チレンとポリプロピレンとのブレンド物で、外層が厚み
200μmの低密度ポリエチレンの二層構造からなる。
直鎖状低密ポリエチレンは融点が126℃で、ポリプロ
ピレンは融点が160℃である。また、内層は直鎖状低
密度ポリエチレンとポリプロピレンとを65:35の割
合でブレンドしたものである。端部シール部1A、1B
は固着シール部で殆ど剥離せず、剥離しようとするとシ
ートの破断が生じる非剥離シール部である。医療用容器
1は隔離シール部5によってPH調整剤4の収納室6と
母液3の収納室7により区分されている。隔離シール部
5は剥離開封可能なシール部として形成され、母液3の
収納室7を0.2Kgf/cm2以上で圧迫した時に剥
離開封する。端部シール部1Aには排出口2が設けられ
ている。排出口2は樹脂製の排出ポート21と排出ポー
ト21の開口を閉止するゴム栓22とからなり、ゴム栓
22に点滴用針8が刺通されるようになっている。
【0024】図2に示す如く、本実施例の医療用容器1
には使用時に母液3とPH調整剤4と混ぜたときに輸液
用剤9が提供される。母液は、塩化ナトリウム102.
0mmol/L、塩化カリウム4.0mmol/L、塩
化カルシウム1.5mmol/L、乳酸4.5mmol
/L及びグルコース5%重量の濃度で収納室7内に1リ
ットル収納されている。従って、陽電解質に対する負電
解質の過剰量は4.5mEq/Lとなっている。また母
液のPH値は2.9〜3.0に調整されている。一方、
PH調整剤4は、液1リットルに溶解したときの濃度が
重炭酸ナトリウム28mmol/L相当量になる重炭酸
塩の乾燥物が収納されている。母液3及びPH調整剤4
は収納室6、7内で密封収納されて、医療用容器1と共
にオートクレーブ滅菌処理が成されている。
【0025】次に、本実施例の医療用容器1の製造方法
について簡単に説明する。先ず、インフレション成形し
た上記樹脂シートを所定の長さに裁断し、樹脂シートの
中間部に隔離シール部5を形成する。隔離シール部5の
ヒートシール温度は140℃で12秒間行う。かかるヒ
ートシール温度条件では樹脂シートの内層のポリプロピ
レンが十分に溶融しないため剥離可能なシール部として
形成される。次に、裁断された一端部1Aを熱溶着シー
ルする。ヒートシール温度は170℃で、5秒間行い、
互いの端縁を固着シール部とする。尚、かかるヒートシ
ールの際に端縁に排出ポート21を取り付ける。樹脂シ
ート内を熱溶着シールする。洗滌、乾燥する。ヒートシ
ール温度は170℃で、5秒間行い、互いの端縁を固着
シール部として容器本体を製造する。次に、排出ポート
21から上記PH調整剤4を収納室6に無菌充填し、充
填後、排出口16をゴム栓22で液密に閉じる。母液3
及びPH調整剤4を容器本体と共にオートクレーブ滅菌
処理する。滅菌温度を115℃で行う。尚、滅菌後、水
蒸気バリアー性フイルムからなる包装体で収納室6のみ
を包装すると共に、その包装体内に乾燥剤を入れ、更
に、全体をガスバリアー性フィルムからなる包装体で医
療用容器1の全体を包装し、包装体内に脱酸素剤を収納
して長期保存に付する。
【0026】このように構成された本実施例の医療用容
器1にあっては、収納室7の母液3はPH値が5.5以
下であるため、その製造時、及び保存時において糖類等
の変色、変質を起こすおそれがない。医療用容器1を使
用する場合、先ず、収納室7を押圧して隔離シール部5
を剥離開放し、収納室6と収納室7とを連通する。これ
により、母液3中にPH調整剤4が溶解し、医療用容器
1内に輸液用剤9が生じる。医療用容器1を40℃に1
か月間置いたもと、医療用容器1を室温に1カ月間置い
たものとし、これ等の隔離シール部5を剥離開封してそ
れぞれの輸液剤9を得て、共に以下の成分分析結果がな
された。ナトリウムイオン130mEq/L、カリウム
イオン4mEq/L、カルシウムイオン3mEq/L、
クロールイオン109mEq/L、重炭酸イオン23.
5〜24.0mEq/L、乳酸イオン4.5mEq/L
及びグルコース5重量%であり、PH値は7.2〜7.
4であった。従って、母液3とPH調整剤4とを混合し
た輸液用剤9は、PH値が6.5〜7.5の範囲にある
ため、患者に投与しても下痢、嘔吐、腎障害等を起こす
おそれが少なくなる。また、重炭酸塩等をPH調整剤4
とすることにより、輸液用剤9に重炭酸を電解質として
含めることができる。更に、保存時、重炭酸はPH調整
剤4として母液3とは区別してアルカリ性の状態に存在
するため、長期間安定な状態に置くことができ、従来の
ように、母液に存在するために炭酸ガスに容易に変化し
て消失を起こすおそれが少ない。更に、母液3中の負電
解質成分と陽電解質成分とのギャップを利用することに
より、製造時及び保存時にPH調整剤4である重炭酸塩
が一部分解して炭酸ガスが喪失しても、かかる炭酸ガス
は使用時における母液3とPH調整剤4との混合時に発
生するロス用の炭酸ガス量を上回らないため、医療用容
器1内には一定のPH値を有し、且つ所定の重炭酸イオ
ンを有した輸液剤9を提供することができる。このよう
な重炭酸を含む医療用容器1の使用により、患者は、体
内でのPH値が維持され、従来のものと相違してアシド
ーシス等の電解質異常を生じることがない。また、重炭
酸の電解質量の添加割合に応じて酢酸や乳酸等の電解質
を少なくなくできるため、体内に直接重炭酸が作用し、
体内中の重炭酸濃度を一定とすることができる。
【0027】図3は、第一実施例の変形例を示す医療用
容器31である。医療用容器31は体内の投与液として
用いられる電解質液が収容された医療用容器、特に高張
糖質液からなり、中心静脈経路より投与される高カロリ
ー輸液剤の医療用容器である。かかる医療用容器31内
は3つの室32、33、34に分かれ、室32と室33
と及び室33と室34との隔離シール部35、36の全
部はピールシール部で形成され、第一室32には第一母
液41が収納されて容器と共に蒸気滅菌がなされ、第二
室33には第二母液42が収納され蒸気滅菌が成されて
いる。また、排出口37が設けられた第三室34にはP
H調整剤43が無菌充填されている。第一母液41、第
二母液42及びPH調整剤43が混合すると高カロリー
輸液用剤となる。高カロリー輸液用剤は中心静脈から投
与され、糖質が10乃至50重量%、特に15乃至30
重量%の範囲で含まれる高カロリー輸液剤である。かか
る輸液剤は、腸管などの大量切除、小腸病変、重症下痢
症などの患者に栄養補給を目的として行われる。糖質
は、主にブドウ糖が用いられるが、ブドウ糖の他には、
フルクトース、キシリトース、ソルビトース等も用いら
れる。高カロリー輸液用剤には、糖質の他に適宜電解質
が含有され、電解質としては、Na(ナトリウム)、K
(カリウム)、Cl(クロール)、Ca(カルシウ
ム)、Mg(マグネシウム)等が挙げられる。また、必
要により、Zn(亜鉛)、P(リン)、Fe(鉄)、C
u(銅)等の微量金属類、及びクエン酸、グルコン酸、
酢酸(アセテート類)、乳酸(ラクテート類)等の有機
酸も添加される。これらの電解質及び有機酸は、塩酸
塩、乳酸塩、酢酸塩、硫酸塩、リン酸塩、グルコン酸
塩、グリセロリン酸塩として用いられ、Caにあって
は、グリセロリン酸塩として用いられる。また、沈殿な
どを生じないようにP供給を十分にするために、多価ア
ルコール又は糖のリン酸エステルなどが用いられる。ま
た、高カロリー輸液用剤には、糖質以外に、三大栄養素
であるアミノ酸製剤が含まれている。
【0028】第一母液41は上記糖質と電解質との母液
成分からなる。但し、母液中の陽電解質に対する負電解
質の過剰量は、第1実施例と同様に配合される。PH調
整剤43は懸濁した重炭酸塩が第1実施例と同様に含ま
れている。第二母液42はアミノ酸製剤である。アミノ
酸製剤としては、必須アミノ酸(E)と非必須アミノ酸
(N)とが配合され、その配合比はほぼ1程度に維持さ
れる。またアミノ酸投与は十分量の糖質と併用投与する
ことが必要であり、アミノ酸中の窒素1gに対する投与
カロリー量の割合は150〜200を目標としている。
また、肝性昏睡に陥った患者には分岐鎖アミノ酸製剤が
投与される。アミノ酸製剤は、輸液剤中に0.5〜1
5、特に1〜10重量%で含有することが望ましい。ア
ミノ酸は、グリシン、L−アラニン、L−プロリン、L
−アスパラギン酸、L−セリン、L−チロシン、L−グ
ルタミン酸、L−システイン、L−ロイシン、L−イソ
ロイシン、L−バリン、L−リジン、L−メチオニン、
L−フェニルアラニン、L−トレオニン、L−トリプト
ファン、L−アルギニン、L−ヒスチジン等がある。ア
ミノ酸は、遊離アミノ酸だけでなく、その無機塩類、有
機塩類、生体内で加水分解可能なエステル、2以上のペ
プチド等のようにダイマーとして使用される場合もあ
る。PH調整剤43は第一実施例と同様に懸濁して重炭
酸ナトリウムが無菌充填されている。このように構成さ
れる医療用容器31においては、第一実施例と同様な作
用効果を奏する他に、糖類とアミノ酸類とが区分して配
されるため、メイラード反応を起こすことがない。上記
各実施例では、医療用容器を輸液用剤或いは透析液に用
いたが、臓器保存液等に用いても良い。上記各実施例で
は、インフレーション樹脂シートから容器本体を成形し
たが、可撓性で透明性を有する限り、ブロー成形物、射
出成形物、真空成形物等であっても良い。
【0029】
【発明の効果】以上説明したように本発明に係る医療用
容器によれば、可撓性壁を有する樹脂素材からなり且つ
排出口を具備し、内部に母液とPH調整剤とが分けて充
填される医療用容器であって、上記母液とPH調整剤と
は隔離シール部で隔離されたそれぞれの収納室に充填さ
れ、上記隔離シール部は使用時に少なくとも一部を剥離
開放しうるピールシール部で形成され、また、上記母液
中には負電解質成分が陽電解質成分に対して2〜35m
Eq/Lの範囲(但し、分解性の負電解質成分或いは陽
電解質成分を除く。)で過剰に含有され、且つPH調整
剤として重炭酸塩が含有されているので、腎障害、下
痢、嘔吐等の生じることがなく、また投与時のPH値も
高く維持できる輸液用剤、透析液用剤、及び臓器保存剤
等の医療用剤が充填された医療用容器とすることができ
る。また、アシドーシス等の電解質異常等を起こすこと
のない輸液用剤、透析液用剤、及び臓器保存剤等の医療
用剤が充填された医療用容器とすることができる。更に
操作上、容器内に上記の好ましい医療用剤を安全で、確
実に提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明に係る医療用容器の第一実施例の
正断面図である。
【図2】図2は第一実施例の医療用容器の使用時の正断
面図である。
【図3】図3は第一実施例の医療用容器の変形例を示す
正断面図である。
【符号の説明】
1、31、51 医療用容器 1A、1B 端縁シール部 2 排出口 3 母液 4 PH調整剤 5 隔離シール部 6、7 収納室

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 可撓性壁を有する樹脂素材からなり且つ
    排出口を具備し、内部に母液とPH調整剤とが分けて充
    填される医療用容器であって、 上記母液とPH調整剤とは隔離シール部で隔離されたそ
    れぞれの収納室に充填され、上記隔離シール部は使用時
    に少なくとも一部を剥離開放しうるピールシール部で形
    成され、また、上記母液中には負電解質成分が陽電解質
    成分に対して2〜35mEq/Lの範囲(但し、分解性
    の負電解質成分或いは陽電解質成分を除く。)で過剰に
    含有され、且つPH調整剤として重炭酸塩が含有されて
    いることを特徴とする医療用容器。
  2. 【請求項2】上記母液が輸液成分又は透析液成分であ
    り、上記母液のPH値が5.5以下であり、上記母液に
    上記PH調整剤を溶解したときのPH値が6.5〜8.
    0となることを特徴とする請求項1記載の医療用容器。
  3. 【請求項3】上記母液の輸液剤成分は更に複数の収納室
    に区分されて収納されていることを特徴とする請求項3
    記載の医療用容器。
  4. 【請求項4】上記母液及びPH調整剤が蒸気滅菌処理さ
    れていることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載
    の医療用容器。
  5. 【請求項5】脱酸素剤と共にガスバリアー性包装体に密
    封包装されていることを特徴とする請求項1〜4の何れ
    かに記載の医療用容器。
  6. 【請求項6】上記PH調整剤が充填される収納室は乾燥
    剤と共に水蒸気バリアー性包装体に密封包装されている
    ことを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の医療用
    容器。
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