JP5106804B2 - 多層容器の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、EVOH(エチレン−ビニルアルコール共重合体)を用いて医療・食品分野に使用される多層容器製造方法に関し、より詳しくは、ガスバリア性を維持しながら柔軟性と透明性に優れた多層容器を製造するための製造方法に関する。
各種の医薬薬液を非経口(例えば静脈)投与叉は経口(例えば流動食)を投与する時に、ガラスビンに代わり、バリア付きアウターバッグに包んでバリア性を上げた所謂ソフトバッグが多く使用されている。この実液バッグは、比較的に頑丈で高価なバリア付きアウターバッグで包装され、更には真空包装又は実液容器とアウターバッグ間には脱酸素材(三菱瓦斯化学株式会社製の製品名"エージレス")が入れられて輸送される。そのアウターバッグが輸送中にピンホールが発生し、製品の酸化を知らせる為に酸化インジケーター(三菱瓦斯化学株式会社製の製品名"エージレスアイ")等が入り流通しているが、アウターバッグの流通中の完全なるピンホールの抑制は容易ではなく、病院で使用するまで相当数のピンホールが発生する。特に医薬品分野では、本問題に悩まされ、医薬品の信頼性を損なうなどの問題が生じている。
また、アウターバッグ間には脱酸素材を挿入したり、酸化インジケーターを付加することは、製品のコスト増加を招く。さらに、ピンホールの発生を抑えるために、シリカ蒸着やアルミナ蒸着を施したバリア付きフィルムが出てきたが、厚生労働省の実液の医薬品容器の適性試験に合格できず、アウターバッグの外包装で使用する範囲から脱せれない。
EVOHを共押し出し工法で製造し、バリア性を上げる方法が知られているが、このような共押し出し工法で製造された製品は滅菌をするために、滅菌中の高温水により外層・内層のオレフィンフィルムのバリア性が著しく低下し、滅菌中の滅菌水がEVOHに浸透し、水分を吸収したEVOHは透明性が著しく低下して、バリア性が低下してしまう。その為に、外層であるポリプロピレン(PP)材を極端に厚くし滅菌中に同ポリプロピレン材を通してEVOH内に湿度を極力浸透させない方法も知られるが、容器が極端に硬くなってしまう。このような製法によって製造される容器は硬質容器の用途となり、その実用化は限定されたものとなってしまう。
軟質容器のEVOH滅菌可能バッグとして、最外層に吸湿牲の高いナイロン6等を共押しで製造する工法がある(例えば、特許文献1参照。)。ナイロンを実液容器の外層に使用すると、日本薬局方の理化学試験・細胞毒性試験に合格できてもナイロン中のカプロラクタムの人体に影響が全くない実証の為のバリデーションは、難解で莫大な経費が掛かり、実用困難である。現実の問題とし、医薬品業界の輸液容器は、日本薬局方による理化学試験フィルム容器の切り刻み方式で運用されている。即ちナイロンを外層にする事は現実の問題として困難である。
特開2005−304911号公報
即ち、医薬品の大型注射剤のアミノ酸・脂肪乳剤等のシングルバッグやダブルバッグ、または重曹入りのCAPD等では、未だに単層のポリエチレン(PE)またはポリプロピレン(PP)を実液バッグとして使用し、滅菌中の酸化を防ぐ方法として、高価なバリア付きのアウターバッグに包装し流通させているのが実情とされている。
酸素バリア性でEVOH使用の代表的食品容器は、高脂肪・高蛋白の実液の入ったプラスチックボトル入りのマヨネーズ容器がある。本容器は、バリア付きアウターバッグに頼る事が無く、塵よけの袋を取り除いた後に常温下で約8ヶ月の賞味期限がある。従って、マヨネーズ容器の製品が酸敗したというクレームは殆ど生じていない。今後の、滅菌する医療用や食品用の容器もバリア付きアウターフイルムに頼ること無く、中身の見えるマヨネーズ容器の様なバリア容器として流通できることが望ましい。
従来のシングルバックのアミノ酸やダブルバックなどの輸液バッグは、高価なアウターバッグに入れ脱酸素材でアウターバッグと実液バッグ間の酸素を取り除く方法を取っており、アウターバッグのピンホールは製品全体の品質の致命傷となることから、アウターバッグの流通中には本アウターバッグを保護するための個別アウターバック保護フィルムや個別包装ダンボールに入れて輸送中のピンホールによる悪影響を防止している。それでもアミノ酸の場合は、ピンホールが発生して酸化した場合では、輸液全体の褐変現象があり発見しやすい。
ところが脂肪乳剤では変質した場合でも真っ白であり、ピンホールがあっても外観上判別困難である。従って脂肪乳剤のソフトバッグでは酸化確認インジケーターを実液バッグに貼り付ける必要があり、これが病院側での使用前の確認項目となっていることから病院側で見逃した場合は人命に係わる問題となることがある。上述にように、現在市販されている容器では、酸素の透過を抑える特性を与えながら、液剤の加熱処理のための加湿環境下で処理した場合に十分な耐性を有しておらず、特に加熱加湿後に透明性が失われるという問題を有していた。
そこで本発明は、上述の技術的な課題に鑑み、加熱加湿による滅菌処理を施しても透明性を維持することができ、且つガスバリア性も良好な多層容器の製造方法を提供することを目的とする。
上述の技術的な課題を解決するため、本発明の多層容器は、収納される液剤に対して加熱加湿による所要の滅菌処理が施される多層容器であって、エチレン−ビニルアルコール共重合体からなる中間層と、オレフィン系樹脂材からなる内側層及び外側層とからなり、前記液剤と共に当該多層容器を前記滅菌処理後に冷却させ、さらにその冷却後に加熱乾燥されることを特徴とする。
本発明の多層容器の一例によれば、前記中間層と前記内側層および前記外側層の間には、接着層が形成され、前記エチレン−ビニルアルコール共重合体からなる中間層と前記接着層を併せた層厚を容器を構成するフィルム全体の肉厚の1/6〜1/10とするように構成することができる。
本発明においては、収納される液剤としては医療用の各種液剤の他、化学分野、食品分野の各種液剤を収納できる。液剤の保存性を高め、内容物の変質等を防止するため、酸素などのガスを除去する目的で、冷却後の加熱乾燥処理を行う処理装置中の空気は不活性ガスに置換するようにしても良い。また、酸化しやすい液を液剤とした場合では、前記液剤の充填時に前記液剤の酸素を取り除き若しくは窒素等の不活性ガスに95%以上置換させて充填するようにしても良い。輸液容器でバリア性を要求する代表的な輸液としては、例えばアミノ酸が挙げられる。静脈栄養剤のアミノ酸の事例として、L−アラニン、L−アラギニン、L−アスパラギン酸、L−システイン、Lドーバ、L−グルタミン、グリシン、L−イソロイシン、L−ロイシン、L−リジン、L−メチオニン、L−オルニチン、L−トリプトファン、L−バリン等があるが、何れもアミノ基(-NH2)とカルボキシル基(-COOH)をもつ化合物の総称で有り、アミノ基は塩化水素とイオン結合し塩酸塩を作り、またアセチル化をうけアセチルアミノ酸を作る。一方、カルボキル基は、ナトリウムと結合し、ナトリウム塩を作り、またエステルを受けアミノ酸エステル体を作る。
本発明の多層容器の各層について説明すると、内層は、例えばポリエチレンまたはポリプロピレン系樹脂からなり、外層は例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、またはポリブチレンテレフタレート系樹脂からなることを特徴とする。エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)からなる中間層の乾燥を速くするためには、外層と接着層の肉厚を極力薄くとることが好ましい。例えば、全肉厚200μのアミノ酸バッグでは、例えばフィルム構成PE20μ/tie.10μ/EVOH20μ/tie.10μ/PE140μ等の構成がより好ましい。本フィルムは、インフレーション工法及びキャスト工法の何れでも良い。またブロー成型の場合では、上記の構成の3種5層容器となるように成形しても良い。耐熱性を上げる為に外層・内層材をPP材としてフィルム構成をPP20μ/tie.10μ/EVOH20μ/tie.10μ/PP140μとすることも可能であり、ブロー成型も可能である。
外層若しくは内層としてポリエチレン(PE)材を使用する場合では、医療用の柔軟性のあるL-LDPE(低密度ポリエチレン)が良い。ポリエチレン(PE)材としては、チグラー系触媒またはメタロセン系触媒で製造された何れでも良い。ポリエチレン(PE)材は、外層の融点よりも内層の融点が低い方が、フィルムシールする時に適応性が良い。接着層は、ポリプロピレン(PP)ではエチレン−ビニルアルコール共重合体用の接着層、例えば三菱化学製のModic-AP-P604等を用いることができる。本発明の多重容器に使用されるエチレン−ビニルアルコール共重合体は、容器目的によって色々な種類のものが利用されるが、例えば日本合成化学工業製のDT2903RBのエチレンコンテット29mol%等が事例として挙げられる。
本発明の多層容器では、液剤の保存能力を高め透明度を維持するために、液剤の収納後に滅菌処理、冷却処理、及び乾燥処理が行われる。滅菌処理は、液剤中の菌類、細菌類を大きく減らす処理であり、例えば90℃以上の高圧高温下の加湿環境下で行われる。これは加湿環境下の方が、熱が伝わり易く、処理速度を上げることができるためである。水または蒸気より滅菌温度まで温度が上昇して透湿度が上がり、高温蒸気が外層を通してエチレン−ビニルアルコール共重合体用(EVOH)内に水分子が吸着される。この状態で冷却された場合には外層の透湿度が低くなってエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)に吸着した水分子が外層内に閉じ込められることになり、エチレン−ビニルアルコール共重合体内で水の局在化による空孔が発生し、透明性が損なわれて外観が著しく悪くなると共にガスバリア性機能が著しく落ちてしまう。
そこで、本発明の多層容器では、冷却後には乾燥した雰囲気下で加熱乾燥処理が行われ、この処理温度は一例として50℃以上100℃以下とされる。また、加熱乾燥処理中は、湿度が50%以下の低湿度に処理槽や処理炉が維持される。この冷却後の加熱乾燥により、外層材の透湿度を上げることで乾燥し易くし、滅菌中にエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)に吸収された水分を短時間にとり、ガスバリア性と透明度を急速に回復させることができる。
本発明の多層容器の容器形状としては、種々のものに対応することができ、ポート部を有して形成される単室若しくは複室の容器、或いは外側に樹脂製の外装部を有する容器であっても良い。多層フィルムの成型法としては、インフレーションフィルム工法でフィルムを製造し、製袋機で製袋をする。例えば輸液バッグの場合では、必要なポートを溶着してバッグは完成する。このようなポート部を形成する場合、当該多層容器の外層を構成するオレフィン系樹脂材で覆うように構成することができる。
病院で輸液の混合注入や排液の役割を果たすポートは、ポート肉厚が2mm程度であって、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)から突出するポート長さは30mm程度であり、酸素透過度は0.02cm3/m3・24hr・atm(23℃、50%RH)であって、空気中からの酸化はアミノ酸液程度であれば無視できる。無視できない酸化しやすい脂肪乳剤液ではポート部の一部をエチレン−ビニルアルコール共重合体のバリアフィルムで包めば酸素の透過を防ぐことができる。また、ブローボトル又はブローバックでは、ポート部も多層共押出しとなるので酸素の透過の心配はない。
また、本発明の多層容器の液剤収納方法は、エチレン−ビニルアルコール共重合体からなる中間層とオレフィン系樹脂材からなる内側層及び外側層とからなり所要の液剤を収納する多層容器に、前記液剤を当該多重容器に充填した後に加熱加湿によって滅菌処理を施し、前記多層容器を冷却させ、さらにその冷却後に加熱乾燥を施すことを特徴とする。
本発明の多層容器の液剤収納方法によれば、液剤の保存能力を高め透明度を維持するために、液剤の収納後に滅菌処理、冷却処理、及び乾燥処理が行われる。滅菌処理は例えば90℃以上の高圧高温下の加湿環境下で行われる。また冷却後には乾燥した雰囲気下で加熱乾燥処理が行われ、この処理温度は一例として50℃以上100℃以下とされ、乾燥処理時には低湿度とされる。この冷却後の加熱乾燥により、外層材の透湿度を上げることで乾燥し易くし、滅菌中にエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)に吸収された水分を短時間にとり、ガスバリア性と透明度を急速に回復させることができる。
また、本発明の多層容器の処理装置は、エチレン−ビニルアルコール共重合体からなる中間層とオレフィン系樹脂材からなる内側層及び外側層とからなり所要の液剤を収納する多層容器に、前記液剤を当該多重容器に充填した後に加熱加湿によって滅菌処理を施し、前記多層容器を冷却させ、さらにその冷却後に加熱乾燥を施すことを連続的に行うことを特徴とする。
本発明は、高温高圧滅菌の必要な製品でガスバリア性を要求する医療用のアミノ酸や脂肪乳剤、抗生物質、重層、ブドウ糖等ハイカロリーの薬液のシングルバッグやダブルバッグ・トリプルバッグに適応する。又食品の高脂肪・高蛋白等の流動食や透明度を要求するレトルトパウチ商品などに適合できる。
また、本発明の多層容器を用いることでピンホールの発生を抑えることができ、輸送中のアウターバッグのピンホール問題は、医薬品としての致命傷となるので本発明の医薬品業界と病院など医療現場での寄与する所は大きい。
以下、本発明の好適な多層容器を医薬品容器として用いた形態と充填機及び滅菌・冷却・乾燥機の詳細について図面を参照しながら説明する。
ガスバリア性の高い熱可塑性樹脂として、EVOHが知られており、例えば厚さ20ミクロン当り0.3(60%RH)〜0.75%(80%RH)cc/m2・day・atmの酸素透過度(OTR)を示すものが汎用されている。そして、常温医薬品や食品の包装において、例えば薄いPP又はPE層を内外層としてEVOH層を挟んだものとすれば、優れたバリア性と透明性を維持することができることが知られているが、これを医療用に転用する場合には、120℃程度の滅菌処理を施した場合、滅菌中に外層を通じてEVOH層に至る水分が多くなり、ガスバリア性が顕著に低下したり、白濁やしわ模様等の問題が発生するなどの重大な問題が生ずる。そこで、外層を十分厚くして滅菌中の水分含浸を抑制することが考えられるが、外層のPEやPPを厚くすると、ハードボトルのように硬くなり、排液性や柔軟性も要求される医療用途には不向きである。
本実施形態の多層容器は、収納する液剤に滅菌処理を施すもので且つ高いガスバリア性を備えた容器であって、EVOHの如き湿度吸収体外層体を含まないオレフィン材、又はポリエステル・PBT等の如きEVOHのもつ透湿度以下のプラスチック材を外層とし、オレフィン材を内層材にしたEVOHの共押し出しの多層構造体として形成されるものである。例えば、一般的に酸化しやすい内容液を滅菌、冷却した場合に外層・内層が滅菌水又は蒸気より滅菌温度まで上昇して透湿度が上がり、高温蒸気が外層を通してEVOH内に水分が吸収されることになるが、冷却によりオレフィンの外層・内層の温度が下がり、透湿度が低くなり、EVOH中に湿度を蓄積したために、バリア性が落ちるとともに外観が著しく悪くなる問題が発生する。EVOHバリア機能は、炭素・酸素・水素のエチレン=ポリビニールアルコールの共重合体によってもたらされる特性であるが、水分を吸う事で、EVOH内で水の局在化の空孔が発生し、ガスバリア性機能が著しく落ち、滅菌処理を施すEVOHガスバリアプラスチック容器製品は使用不能であった。そこで本発明の多層容器は、滅菌と冷却後に外層材の温度を低湿度下で90℃近辺に加熱し、外層材の透湿度を上げることで乾燥し易くし、EVOHに滅菌中に吸収された水分を短時間にとり、ガスバリア牲と透明度を急速に回復させることが実現される。
EVOHは、ポリビニールアルコールとエチレンとの共重合体であるが、エチレン組成が低い程構造がポリビニールアルコールPVOHに近く、水素結合による分子凝集力が働くので、優れた酸素バリア性を示す。EVOHはナイロンの10〜40倍、PEの6000〜7000倍の酸素バリアー性(0.4〜1.5cc(20μ)/m2・24hr・atm)を示す性能を持つ。但し、高湿度下では、この水素結合が切れるのでバリア性は大幅に低下し、その機能を失う。本発明の多層容器は、滅菌後に乾燥をする事で極めて短時間にEVOH中の水分を除去することができ、機能が回復できる。以下に説明する実施例では、EVOHのエチレンコンテットは、28〜45mol%、密度1.22〜1.13内を使用している。
本発明における滅菌可能のEVOHガスバリア性多層容器とは、例えば共押出しの円筒状で多層容器ができるインフレーション工法のフィルムやダイレクトブロー工法のブローボトル・ソフトバッグ又はフラット状の多層Tダイ法、押し出しラミネーション法などによって形成できるものである。
本製法では、PPインフレーション工法の事例として、最低3種5層で製品が構成できる。また、チュブラーは一例として水冷下向きが好ましい。外層と内層の融点を変え、更に柔軟性を得たい場合は、5種6層などの構成も可能である。本実施形態では一例として、ダブルバッグの出来る5種6層のEVOHガスバリアフイルムの事例をあげる。3種5層では外層と内層材を同じとし、中間層の肉厚分を加えた内層厚さとすればよい。前記オレフィン多層容器の内層は、ポリエチレン又はポリプロピレン。外層は、ポリプロピレン又はポリエチレンのオレフィン又はポリエステル・PBT等でも良い。外層面は、20μ以下EVOHの接着層面は10μ以下とし、乾燥時に外層面が邪魔をして乾燥時間が短縮できる様に肉厚を薄くして、短時間にバリア機能を高めることが望ましい。
図1に医療用の軟質容器であるソフトバックの一例を示す。このソフトバック10は、チューブ状の後述する多層構造フィルム11の両端部16、17を熱溶着或いは超音波溶着した構造を有しており、チューブ状の多層構造フィルム11の内部には所要の内容積を有した液剤室12が設けられる。両端部16、17の一方の端部16には、プラスチック材料からなる液剤の取り出し口となる筒状のポート14が液剤室12の内部が外部と連通するように形成されている。このポート14の材料は、例えばPP若しくはPEなどの材料からなり、多層構造フィルム11の内層に溶着される。詳しくはポート14は基端部側が細くされた円錐台形状とされるが、特に限定されるものではなく、また、先端部にはティアーオフ可能な蓋部15が設けられている。両端部16、17の他方の端部17には、透穴部13が形成されており、例えば点滴などの場合には、この透穴部13にフックを引っ掛けて当該容器自体を吊るすことができる。
図2は、図1のソフトバック10に用いられる多層構造フィルム11のフィルム構造を示す図である。この多層構造フィルムは、外側層25と内側層21の間に夫々接着層24、22を介して中間層23を挟んだ5層構造である。この5層構造の多層構造フィルムの例として、例えば、外側層25と内側層21をポリプロピレン樹脂フィルムにより構成し、中間層23をEVOH(エチレン−ビニルアルコール共重合体)により構成し、接着層22、24を特殊ポリオレフィン樹脂により形成することができる。図2の各層21〜25はそれぞれ膜厚t1〜t5を有し、次のような膜厚に設定することができる。
次に表1はこのような多層構造フィルムの形成例であり、それぞれの膜厚を示すものである。
表1において、番号#1〜#3はフィルムのタイプを表すものであり、3種類の異なるフィルム例を示している。各層の数値は、μ単位での各層の膜厚であり、膜厚はフィルム全体の厚みを示したものである。ここで、各層の材料の一例について説明すると、外側層と内側層としては例えばPP(ポリプロピレン樹脂)であって、ゼラスMC(登録商標、三菱化学株式会社製)などのオレフィン系熱可塑性エラストマーを用いることができる。中間層としては、ガスバリヤ性の高いEVOH(エチレン−ビニルアルコール共重合体)を用いることができ、ソアノール(登録商標、日本合成化学株式会社製)などの製品を使用することができる。また、接着層としては、所要の接着性樹脂を使用することができ、例えばモデックAP(登録商標、三菱化学株式会社製)などの高い接着性を持たせた特殊ポリオレフィンを用いることが可能である。
なお、以上の如き各層の組み合わせは、他にも挙げることができるものであり、必ずしも5層構造のフィルムとする必要はなく、接着層を省略しながら、中間層や外側層、内側層に接着性を高める樹脂をブレンドするなどして、中間層、外側層、及び内側層を直接接着することも可能である。また、外側層と中間層は接着性のポリプロピレン又はポリエチレンを介して接着することもでき、中間層と内側層は接着性のポリエチレンを介して接着するようにしても良い。
本実施形態の多層容器では、液剤と共に高温高圧の滅菌処理が施され、その滅菌処理の後に冷却させ、さらにその冷却後に加熱乾燥される。図3は本発明にかかる多層容器の処理時間と温度の関係を示す図である。液剤を収納した後、後述するような処理装置内に配置されて殺菌処理が行なわれる。処理装置内に配置したところで、温度が室温から120℃まで上昇され約45分加熱による滅菌処理が行なわれる。この滅菌処理においては、高温で高湿度の環境下におかれることから、外側層のポリプロピレンなどのフィルムの水蒸気透過性が通常の10000倍近くとなり、水蒸気が中間層であるEVOH(エチレン−ビニルアルコール共重合体)に吸収されて、中間層自体に取り込まれて透明な材料を乳白色に変化させると共にガスバリア性を低下させてしまう。
そこで、滅菌処理の後で、本実施形態の多層容器では冷却処理を行い、さらに乾燥処理を行なう。図3の処理例では、約15分で120℃から25℃まで温度を下げたところで再び温度を上げて乾燥処理を行なう。約10分かけて25℃から約90℃に昇温し、その約90℃で15〜30分、50%RHで乾燥することで外側層の水蒸気透過性が高くなり、その結果、中間層であるEVOH(エチレン−ビニルアルコール共重合体)に吸収されていた水分子がフィルム外部に短時間で放出される。この乾燥処理における水分放出により、一時乳白色化していた多層フィルムが再び透明化することになり、ガスバリア性が回復すると共に、目視による内容物の確認などにも支障が生じないことになる。
以上の如き、滅菌、冷却、及び乾燥の工程は、所定の処理装置内に各多層容器を配置しながら処理をすすめることができるものであり、処理炉には酸化を防止するために、窒素ガスを雰囲気ガスとするように構成できる。処理装置は、各工程で同じ処理炉を使用するものであっても良く、滅菌と乾燥で異なるチャンバーを使用するような構造であっても良く、コンベアなどを用いて連続的な処理を施す構造を有していても良い。
図4乃至図9は本実施形態の多層容器の処理に好適な処理装置を示す図である。図4、図5に示すように、本発明の一例としての多層容器の処理装置30は、上段、下段の2段からなるフレーム32の下段側に略円筒形状の処理槽31が設けられており、その処理槽31の両端部は上下方向に摺動する蓋部33として機能する。この処理槽31の内部に複数の多層容器を収納して、前述の如き、滅菌、冷却、及び乾燥の各工程を経て、製品として完成させることができる。円筒状の処理槽31の側部には、処理槽31の内部に供給される循環水の温度を制御するための熱交換器34が設けられ、フレーム32の上段には処理用の純水を貯めるための貯水槽35と、この貯水槽35に並んで温水槽36が設けられている。温水槽36からは温水を炉内に導入して、高温高湿状態で多層容器を処理することが可能である。
図6、図7は処理槽31とその内部に配列されるトレー41を示す図である。図7では、1つのトレー41が図示されており、そのトレー41上に後述するようなキットバック型の多層容器40が9個×4列のマトリクス状に配置される。それぞれのキットバック型の多層容器40は、概ね平たいチューブ形状であることから、図示のようにマトリクス状に並べた場合には、トレー41の厚み方向の高さが高くならないようにすることができる。このようなトレー41が30段程度重ねて配置され、一度に多くの多層容器40をバッチ処理することができる。本発明にかかる処理装置では、乾燥時間が延長し滅菌サイクルが長くなる場合は、乾燥機を別途配置しても良い。
図8は本発明にかかる多層容器の処理装置30の気体、液体のフローを示す構造図である。一対の小型槽は、それぞれ貯水槽35、温水槽36であり、また、これらよりも大型の処理槽31が設けられている。多層容器の処理装置30には、水も導入され、使用済みの水は排水されるように構成されているが、特に酸化を防止するために温水槽36と処理槽31には供給路37、38を介して窒素が導入されるように構成されている。供給路38側はブロワー側の窒素供給路として機能し、特に処理槽31の内部の雰囲気を窒素に置換して、余計な酸化などを未然に防止することができる。
図9は本処理装置における制御のタイミングチャートである。1サイクルの処理では先ず準備状態から、各容器を処理槽31内に搬入し、前方の蓋を閉める。続いて、温水を注入し始め、その約90秒後に昇温を図って、炉内温度を滅菌温度である121℃を超える温度まで上げる。この昇温作業に伴って、図中破線で示す様に製品温度も上昇し、昇温開始から15分後には滅菌温度である121℃に製品温度も到達する。この滅菌温度は約30分維持されて、医療用のソフトバッグなどの内部に存在する菌などを死滅させる。滅菌処理の後、徐々に温度が下げられ、槽内温度として約45〜46℃程度、15分程度の冷却期間とされる。続いて、排水と110度傾斜させた水切が施される。排水の直後から、再度の昇温と窒素雰囲気による乾燥作業が進められ、この乾燥工程によって中間層に一端取り込まれた水分子が外側層を透過して容器外部に放出され、その結果、容器自身は高いガスバリア性と透明性を回復することができることになる。乾燥処理の後、後側の蓋を開けて搬出し、搬出後に後側の蓋を閉め、次いで前側の蓋を開けて、1サイクルの処理を終了する。
図9の本実施形態にかかる処理装置における制御のタイミングチャートは、医療用のキットバック用のものであるが、例えば、食品やその他の製品などでは、滅菌温度や要求される透明性も異なる場合があり、その場合には適宜、昇温の時間や目標温度を変更することができる。一般に、医療用のソフトバッグにあっては、医薬品製造後に好ましくは3年間の保管が望まれており、アミノ酸または脂肪乳剤にあっては、1年間の保管が望まれている。本発明での乾燥工程では90度近くまで乾燥温度を上げるのでバッグ表面温度が90度まで上がる。その場合は、液剤の温度が60℃近くまで上昇する。特に、本発明では、滅菌・乾燥中はプラスチックのバリアフィルムのバリア効果が一時的には失われるので酸化を防ぐ対応が必要であり、従って滅菌・冷却中に係わらず乾燥中の温度上昇中のアミノ酸の反応を抑える必要があることから、窒素置換の乾燥は極めて効果である。本発明にかかる多層容器を使用すれば、フィルムからの酸化は確実に防止されることになり、滅菌も確実に処理されるため保存性の極めて高いバックを提供できることになる。また本製法によって、アミノ酸・脂肪乳剤バッグ等をバリア性の強いガラスビン等と同等の製法が取れる。
次に、図10を参照しながら、プラスチックボトル型の多層容器50について説明する。一般にブロー製法のプラスチック材のボトルが市場には多く出ている。ブロー工法は、PP又はPETボトルに代表される2軸延伸工法と、パリソンからいきなり、連続パリソンを作り、溶融パリソンを金型に加え、無菌の高圧ブローエアーを吹き込み、容器形状を成形するダイレクトブロー製法がある。多層容器製造では、後者のダイレクトブロー−製法が使用される。図10に示すように、プラスチックボトル型の多層容器50は、PPやPEの如き樹脂材を外側層とする樹脂ボトル部51が多層フィルムにより構成される例であり、樹脂ボトル部51の内部には所要の液剤を収納するための収納室52が形成される。樹脂ボトル部51は扁平な円筒形状であり、底部55の最も底面となる領域には図中下方向に延長される舌片57が設けられ、点滴などのフックを掛けるための孔53が舌片57の中央部に形成されている。
このプラスチックボトル型の多層容器50の上側には、樹脂ボトル部51の断面積よりも狭くなるネック部55が形成され、その先端には蓋部58とティアーオフ可能なプルタブ56が設けられている。このような構造のプラスチックボトル型の多層容器50においても、樹脂ボトル部51を構成する多層フィルムの中間層に、EVOH(エチレン−ビニルアルコール共重合体)を使用することができ、ガスバリヤ性を高くすることが可能である。また、前述のような滅菌、冷却、及び乾燥工程を経ることで、高いガスバリヤ性を維持すると共に、滅菌時に失われてしまう透明性も回復することができ、医療用途や食品、化粧品、化学品などの種々の用途に適用可能である。また、プラスチックボトルは一般的に自立転倒防止の為に扁平牲が無いので、アウターバッグには包装しにくいが、扁平牲のあるソフトバッグに収納することで、アミノ酸や脂肪乳剤等を市場に供給することが可能である。特に、酸化しやすいアミノ酸や脂肪乳剤・高カロリーのシングルボトルが得られることになる。
また、本発明の多層容器は、図11に示すような、抗生物質のキットバックに対しても適用可能である。図11に示すキットバック60は、一対の室を有しており、上側の室が液剤を収納するための液剤収納室62であり、下側の室が粉体などからなる抗生物質用の製剤収納室63である。上下の液剤収納室62と製剤収納室63の間には、イージーピール部として機能するヒートシール64が施されており、液剤収納室62と製剤収納室63の間を仕切っているが、当該ヒートシール64を剥離させることで、液剤収納室62に含まれる液剤と製剤収納室63に含まれる抗生物質の如き製剤を混ぜることができ、所要の医療用の製剤等として機能する。
図11に示すキットバック60の下端側には、シール部67の略中央部に孔部66が形成されており、この孔部66に点滴などのフックを掛けることが可能である。また、キットバック60の上端側には製剤等を取り出すためのポート65が液剤収納室62の内部に連絡するように設けられており、このポート65を介して外部に液剤を供給することができる。
このようなキットバック60においても、上下の液剤収納室62と製剤収納室63は前述の如き多層フィルムにより構成される。例えば、エチレン−ビニルアルコール共重合体からなる中間層と、オレフィン系樹脂材からなる内側層及び外側層、さらには接着層を介在させた多層フィルムを使用する。一例として、前述のソフトバックと同様に、外側層と内側層としては例えばPP(ポリプロピレン樹脂)であって、例えばゼラスMC(登録商標、三菱化学株式会社製)などのオレフィン系熱可塑性エラストマーを用いることができる。中間層としては、ガスバリヤー性の高いEVOH(エチレン−ビニルアルコール共重合体)を用いることができ、例えばソアノール(登録商標、日本合成化学株式会社製)などの製品を使用することができる。また、接着層としては、所要の接着性樹脂を使用することができ、例えばモデックAP(登録商標、三菱化学株式会社製)などの高い接着性を持たせた特殊ポリオレフィンを用いることが可能である。外側、内側層、及び中間層の膜厚は例えば10〜20ミクロン前後であり、接着層は5〜10ミクロン程度である。このような構造の多層フィルムは、液剤と共に多層容器を滅菌処理後に冷却させ、さらにその冷却後に加熱乾燥して構成されるものである。後述するように、抗生物質側は温度を上げる事が出来ないので製剤収納室63は中身を充填しないで空容器で滅菌する。その時に空容器側に滅菌水が浸透する可能性があるので、本乾燥工程により、EVOHの乾燥のみならず、空容器である製剤収納室63の内部の乾燥まで行うことができる。
図12はキットバック60を用いた製品の製造工程を示す工程図である。初めに、インフレーションなどの方法で、エチレン−ビニルアルコール共重合体からなる中間層と、オレフィン系樹脂材からなる内側層及び外側層、及びこれらの中間層と内側層及び外側層の間に接着層を用いた多層フィルムを成型加工して製袋する。熱プレス若しくは超音波加工になどにより、前述のような液剤収納室と製剤収納室を備えた形状に加工する(図12中、工程(A))。このとき加工された袋の上端部は未だシールされておらず、開口部となっている。次に、円筒状のポートを袋の上端部に挟みこみ、そのポート及び周囲をシールして、ポートだけが液剤収納室の内部に連通するように加工する(工程(B))。
このようにポートを取り付けた後、液剤収納室に例えば生理食塩水、ブドウ糖のような液剤を充填する(工程(C))。この液剤の充填後、製剤収納室には抗生物質を充填せずに空容器のままに、滅菌、冷却、および乾燥処理を行なう(工程(D))。これは抗生物質を昇温した場合には、薬剤が変質する可能性があり、好ましくないからである。この滅菌、冷却、および乾燥処理により、液剤側である液剤収納室は十分に滅菌され、さらに冷却および乾燥処理を経るために、加湿により一度低減したガスバリヤ性が回復し、同時に失われていた透明性も回復することになる。このとき、同時に製剤収納室も空容器のままに滅菌、乾燥されることになり、万一、製剤収納室に水分が入り込んだ場合でも蒸発することになり、後の工程での抗生物質等の充填には水分などによる悪影響などの問題を生じないことになる。
続いて、空となっていた底部側の製剤収納室を一端開口して抗生物質粉末などの製剤を充填する(工程(E))。この抗生物質粉末の充填の後、製剤収納室の開口した底部側を溶着して、抗生物質粉末を製剤収納室内に密封する(工程(F))。必要であれば、アルミニウムホイルなどを含むフィルムで製剤収納室側を遮蔽するようにしても良い。
また、液剤側の室と製剤側の室が内層以外は異なるフィルムにより医療用複室容器を構成することもでき、例えばインフレーション工法により好適に製造することが出来る。より具体的には、インフレーションフィルム製造機のチユブラーのダイス構造によって容器の一部のみを多層構造が可能である。例えばチュブラーの半周をPP/AD/EVOH/AD/PPの5層フィルムとし、残りの半周をPP/PPの2層フィルムとして、ダイス出口からチユーブ同士が重なる様に平らに巻き取るようにしても良い。抗生物質のキットバッグの生理食塩水とブドウ糖が入る部分はバリアが不要で、抗生物質の入る部分はバリアが必要であることから、高価なEVOHと接着層の使用量は半分と成り容器の材料費が大幅な削減と成って、一層の経済性を享受できることになる。
また、ソフトバックの変形例として酸素透過性を抑えたフィルムをポートを包むように形成することで、ポート自体やポートの周囲からの酸素の侵入を防止することが可能な多層容器を図13に示す。この多層容器71は、前述の如きエチレン−ビニルアルコール共重合体からなる中間層と、オレフィン系樹脂材からなる内側層及び外側層、さらには接着層を介在させた多層フィルムを使用して構成される。前述のソフトバックと同様に、外側層と内側層としては例えばPP(ポリプロピレン樹脂)であって、例えばゼラスMC(登録商標、三菱化学株式会社製)などのオレフィン系熱可塑性エラストマーを用いることができる。中間層としては、ガスバリヤ性の高いEVOH(エチレン−ビニルアルコール共重合体)を用いることができ、例えばソアノール(登録商標、日本合成化学株式会社製)などの製品を使用することができる。また、接着層としては、所要の接着性樹脂を使用することができ、例えばモデックAP(登録商標、三菱化学株式会社製)などの高い接着性を持たせた特殊ポリオレフィンを用いることが可能である。外側、内側層、及び中間層の膜厚は例えば10〜20ミクロン前後であり、接着層は5〜10ミクロン程度である。
このような多層フィルムによって、溶着部72に囲まれる形状で液剤収納用の収納室73が形成され、下端部75には点滴などのためのフックが掛けられる孔74が形成される。当該多層容器の上端部79にはポート76が収納室73内の液剤を外部に取り出すように形成され、ポート76の先端部に形成された栓77を取ることで、収納室73内の液剤を外部に出すことができる。ポート76の材質は、一例としてポリプロピレンなどの材料であることから、その厚みなどによってポート76付近からの酸素の侵入などによって液剤の酸化などが発生するおそれがある。
そこで、本多層容器では、酸素透過性を抑えた多層フィルムの一部を延長して延長部78をポート76を包むように形成する。延長部78は袋を構成するフィルムの一部を表面と裏面でそれぞれ台形状に突出させ、ポート76を挟んで張り合わせるように溶着するものである。この延長部78によって酸素は延長部78を透過する前に遮断されることになり、液剤の酸化などは確実に抑制される。
以下、本発明の多層容器について、インフレーション工法により製造したフィルムの物性を説明する。先ず、下記の表2は、5種6層の多層フィルムの構成を示すものである。
外側層と内側層としてはオレフィン系熱可塑性エラストマーであるゼラスMC(登録商標、三菱化学株式会社製)のうちの型番MC715、MC711が使用される。中間層としては、オレフィン系熱可塑性エラストマーと共にガスバリヤー性の高いEVOHとして、ソアノール(登録商標、日本合成化学株式会社製)の型番DT2903が使用される。また、接着層としては高い接着性を持たせた特殊ポリオレフィンであるモデックAP(登録商標、三菱化学株式会社製)の型番P604Vが使用される。
また、ポリエチレン系の単室ソフトバックでは、比較的に短時間でヒートシールが可能であり115℃滅菌可能で滅菌変形しないPEリッチの4種5層のEVOH構成フィルムを用いて構成することができる。下記の表3はこのような4種5層の多層フィルムの構成を示すものである。
外側層としてはオレフィン系熱可塑性エラストマーであるゼラスMC(登録商標、三菱化学株式会社製)のうちの型番MC715が使用され、内側層としてはカーネル(商品名、日本ポリケム株式会社製)の型番KF284が使用される。中間層としては、オレフィン系熱可塑性エラストマーと共にガスバリヤー性の高いEVOHとして、ソアノール(登録商標、日本合成化学株式会社製)の型番DT2903が使用される。また、接着層としては高い接着性を持たせた特殊ポリオレフィンであるモデックAP(登録商標、三菱化学株式会社製)の型番P604Vが使用される。
次に、プラスチックボトルの構成例について、下記の表4に示すような材料でポリプロピレン系の材料を用い、3種5層の多層構造としたEVOHガスバリアボトルを構成できる。
外側層及び内側層としては、ランダムポリプロピレン(チッソ株式会社製)の型番LB340Gが使用され、中間層としては、オレフィン系熱可塑性エラストマーと共にガスバリヤー性の高いEVOHとして、ソアノール(登録商標、日本合成化学株式会社製)の型番DT2903が使用される。また、接着層としては高い接着性を持たせた特殊ポリオレフィンであるモデックAP(登録商標、三菱化学株式会社製)の型番P604Vが使用される。内側層(内層)を140ミクロンと厚くすることで、立体的な内部空間を確保できるプラスチックボトルとして機能する。
本発明の多層容器の適用例としては、食品容器としてレトルトパウチ商品がある。食品容器の121℃×30分の滅菌中には、製品の酸化のみでなく、食品の栄養分であるビタミンCの崩壊も問題となる。滅菌水の浸透回復が今までに出来なかったので、今までやむをえずにアルミニウムパウチ容器が主流となっていた。すなわち、アルミニウムパウチ容器は、本ビタミンCの崩壊を防ぐ良い方法であるが、残念ながら需要者、取引者が製品内部を見る事が出来ない不便さがある。
ところが、本発明にかかる多層容器およびその製法では、滅菌製品で透明性を確保することができバリア機能を保つことができる。また、食品製品の中にはUV光による退色性を回避したい製品があるが、本製品では外層フィルムを着色とし、中身を確認したい部分のみ無印刷とする事が出来るといった大きな利点がある。
本発明の多層容器(以下、多層バックと称す。)について、本件発明者らはその効果を確認するため次のような実験を行なっている。基本テストとして、EVOHを組み込んだPPのバリアフィルム(外側層PP材は三菱化学株式会社製のMC715、内側層のPP材は同じく三菱化学株式会社製のMC611、EVOHは日本合成化学工業製のソアノールDT2903RB、接着層はModic-APP604)を作成し、これを150×150mmに4方シールしてバッグを作り、180mlの注射用水を充填し封止した。
本多層バックを日阪製作所製のRCS-40RTGN滅菌機を使用して、121℃×30分の滅菌・冷却処理を行なって取り出した。多層バックは、前述の様に水分を吸収し、乳白色となっていた。日本電色工業株式会社製のヘイズ測定器で測定した所、滅菌前の透明性ヘイズ値18〜22が84〜88まで悪くなり、水分を吸収した事が確認された。
本滅菌後の多層バックを30日間空気中に放置しても、その透明性は何ら改善されなかった。滅菌後にヘイズ値が大きく降下した多層バックを、温度90度30分湿度50%RHの乾燥に入れ乾燥させたところ、短時間でヘイズ値が18〜22迄ほぼ元のバッグのヘイズ値まで回復した。なお、乾燥時間を15分にしたところ、ヘイズ値は79〜80となり、EVOH内の水分除去が不完全であり、ヘイズ値は元の値に近かった。
前述の表1におけるフィルム構成♯1のPP20/Tie10/EVOH20/Tie10/PP20合計80μのものよりも♯3のPP10/Tie5/EVOH20/Tie5/PP20合計65μの方が透明性回復は早い事が分かった。これにより外側層と接着層の肉厚が薄ければEVOHの乾燥時間が短く出来る事が分かる。
なお、実際の生産用の滅菌・冷却・乾燥機械では、滅菌、乾燥工程中はその時間に、バリアフィルムのバリア効果が失われるので酸化を防ぐ対応が必要となる。従って、ソフトバッグの外面の無菌保証をするには、滅菌機の中でバッグの滅菌と冷却、乾燥工程が一連の工程となっている事が好ましい。
本発明の多層容器の一例であって所謂ソフトバックを示す平面図である。 本発明の多層容器の一例に用いられる多層フィルムの構造を示す構造断面図である。 本発明の多層容器の処理工程を温度と時間の関係で示す図である。 本発明の多層容器を処理するための処理装置の一例を示す正面図である。 図4に示した処理装置の一例を示す側面図である。 図4に示した処理装置の一例の処理槽内部とその処理槽に挿入された複数のトレーを示す正面図である。 図6に示した前記トレーをキットバックと共に示す図であり、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は異なる方向からの側面図である。 図4に示した処理装置のガス、液体用の配線構造を説明するための模式図である。 図4に示した処理装置の処理工程におけるタイミングチャートである。 本発明の多層容器の他の一例であって所謂プラスチックボトルを示す平面図である。 本発明の多層容器のさらに他の一例であって所謂キットバックを示す平面図である。 図11に示す所謂キットバックの製造工程を工程順に説明するための工程図である。 本発明の多層容器の一例の変形例を示す平面図である。
符号の説明
10 ソフトバック
11 多層構造フィルム
12 液剤室
13 透穴部
14 ポート
15 蓋部
16、17 端部
21 内側層
22 接着層
23 中間層
24 接着層
25 外側層
30 処理装置
31 処理槽
32 フレーム
33 蓋部
34 熱交換器
35 貯水槽
36 温水槽
40 多層容器
41 トレー
60 キットバック
62 液剤収納室
63 製剤収納室
64 ヒートシール
65 ポート
66 孔部
67 シール部
71 多層容器
72 溶着部
73 収納室
74 孔
75 下端部
76 ポート
78 延長部
79 上端部

Claims (8)

  1. エチレン−ビニルアルコール共重合体からなる中間層と、オレフィン系樹脂材からなる内側層及び外側層とを用いた多層フィルムを成形加工して製袋するステップと、
    上記製袋された多層フィルムを、上端部を開口部としつつ、液剤収納室と製剤収納室を備えた形状に加工するステップと、
    上記上端部にポートを挟みこみ、そのポート及び周囲をシールして、ポートだけが液剤収納室の内部に連通するように加工するステップと、
    上記液剤収納室に液剤を充填するステップと、
    上記液剤の充填後、製剤収納室には抗生物質を充填せずに空容器のまま滅菌処理、冷却処理、再加熱処理及び乾燥処理、を同一の処理槽内にて連続的に行うステップと、
    上記空となっていた底部側の製剤収納室の一端開口して抗生物質粉末を充填し、製剤収納室の開口した底部側を溶着して、抗生物質粉末を製剤収納室内に密封するステップと、
    を有することを特徴とする多層容器の製造方法。
  2. 前記中間層と前記内側層及び前記外側層の間には、接着層が形成されることを特徴とする請求項1に記載の多層容器の製造方法。
  3. 前記エチレン−ビニルアルコール共重合体からなる中間層と前記接着層を併せた層厚を、容器を構成するフィルム全体の肉厚の1/6〜1/10とすることを特徴とする請求項2に記載の多層容器の製造方法。
  4. 前記液剤は酸化しやすい液からなり、前記液剤の充填時に前記液剤の酸素を取り除き若しくは窒素等の不活性ガスに95%以上置換させて充填してなることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の多層容器の製造方法。
  5. 前記滅菌処理は、90℃以上の高圧高温下で行われることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の多層容器の製造方法。
  6. 前記再加熱処理及び乾燥処理は温度が50℃以上100℃以下で且つ低湿度で行われることを特徴とする請求項1,2,5のいずれかに記載の多層容器の製造方法。
  7. 前記冷却後の再加熱処理及び乾燥処理を行う処理槽中の空気は不活性ガスに置換されてなることを特徴とする請求項1,2,5,6のいずれかに記載の多層容器の製造方法。
  8. 前記多層容器の前記内層は、ポリエチレンまたはポリプロピレン系樹脂からなり、前記多層容器の前記外層は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、またはポリブチレンテレフタレート系樹脂からなることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の多層容器の製造方法。
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