JP3623294B2 - 電解質液が収容された医療用容器及びその製造方法 - Google Patents
電解質液が収容された医療用容器及びその製造方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP3623294B2 JP3623294B2 JP33405395A JP33405395A JP3623294B2 JP 3623294 B2 JP3623294 B2 JP 3623294B2 JP 33405395 A JP33405395 A JP 33405395A JP 33405395 A JP33405395 A JP 33405395A JP 3623294 B2 JP3623294 B2 JP 3623294B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- container
- bicarbonate
- chamber
- medical container
- solution
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Images
Classifications
-
- A—HUMAN NECESSITIES
- A61—MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
- A61J—CONTAINERS SPECIALLY ADAPTED FOR MEDICAL OR PHARMACEUTICAL PURPOSES; DEVICES OR METHODS SPECIALLY ADAPTED FOR BRINGING PHARMACEUTICAL PRODUCTS INTO PARTICULAR PHYSICAL OR ADMINISTERING FORMS; DEVICES FOR ADMINISTERING FOOD OR MEDICINES ORALLY; BABY COMFORTERS; DEVICES FOR RECEIVING SPITTLE
- A61J1/00—Containers specially adapted for medical or pharmaceutical purposes
- A61J1/14—Details; Accessories therefor
- A61J1/20—Arrangements for transferring or mixing fluids, e.g. from vial to syringe
- A61J1/2093—Containers having several compartments for products to be mixed
-
- A—HUMAN NECESSITIES
- A61—MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
- A61M—DEVICES FOR INTRODUCING MEDIA INTO, OR ONTO, THE BODY; DEVICES FOR TRANSDUCING BODY MEDIA OR FOR TAKING MEDIA FROM THE BODY; DEVICES FOR PRODUCING OR ENDING SLEEP OR STUPOR
- A61M1/00—Suction or pumping devices for medical purposes; Devices for carrying-off, for treatment of, or for carrying-over, body-liquids; Drainage systems
- A61M1/14—Dialysis systems; Artificial kidneys; Blood oxygenators ; Reciprocating systems for treatment of body fluids, e.g. single needle systems for hemofiltration or pheresis
- A61M1/16—Dialysis systems; Artificial kidneys; Blood oxygenators ; Reciprocating systems for treatment of body fluids, e.g. single needle systems for hemofiltration or pheresis with membranes
- A61M1/1654—Dialysates therefor
- A61M1/1656—Apparatus for preparing dialysates
- A61M1/1674—Apparatus for preparing dialysates using UV radiation sources for sterilising the dialysate
-
- A—HUMAN NECESSITIES
- A61—MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
- A61M—DEVICES FOR INTRODUCING MEDIA INTO, OR ONTO, THE BODY; DEVICES FOR TRANSDUCING BODY MEDIA OR FOR TAKING MEDIA FROM THE BODY; DEVICES FOR PRODUCING OR ENDING SLEEP OR STUPOR
- A61M1/00—Suction or pumping devices for medical purposes; Devices for carrying-off, for treatment of, or for carrying-over, body-liquids; Drainage systems
- A61M1/14—Dialysis systems; Artificial kidneys; Blood oxygenators ; Reciprocating systems for treatment of body fluids, e.g. single needle systems for hemofiltration or pheresis
- A61M1/28—Peritoneal dialysis ; Other peritoneal treatment, e.g. oxygenation
- A61M1/287—Dialysates therefor
-
- A—HUMAN NECESSITIES
- A61—MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
- A61J—CONTAINERS SPECIALLY ADAPTED FOR MEDICAL OR PHARMACEUTICAL PURPOSES; DEVICES OR METHODS SPECIALLY ADAPTED FOR BRINGING PHARMACEUTICAL PRODUCTS INTO PARTICULAR PHYSICAL OR ADMINISTERING FORMS; DEVICES FOR ADMINISTERING FOOD OR MEDICINES ORALLY; BABY COMFORTERS; DEVICES FOR RECEIVING SPITTLE
- A61J1/00—Containers specially adapted for medical or pharmaceutical purposes
- A61J1/05—Containers specially adapted for medical or pharmaceutical purposes for collecting, storing or administering blood, plasma or medical fluids ; Infusion or perfusion containers
- A61J1/10—Bag-type containers
-
- A—HUMAN NECESSITIES
- A61—MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
- A61J—CONTAINERS SPECIALLY ADAPTED FOR MEDICAL OR PHARMACEUTICAL PURPOSES; DEVICES OR METHODS SPECIALLY ADAPTED FOR BRINGING PHARMACEUTICAL PRODUCTS INTO PARTICULAR PHYSICAL OR ADMINISTERING FORMS; DEVICES FOR ADMINISTERING FOOD OR MEDICINES ORALLY; BABY COMFORTERS; DEVICES FOR RECEIVING SPITTLE
- A61J1/00—Containers specially adapted for medical or pharmaceutical purposes
- A61J1/14—Details; Accessories therefor
- A61J1/20—Arrangements for transferring or mixing fluids, e.g. from vial to syringe
- A61J1/2003—Accessories used in combination with means for transfer or mixing of fluids, e.g. for activating fluid flow, separating fluids, filtering fluid or venting
- A61J1/202—Separating means
- A61J1/2024—Separating means having peelable seals
-
- A—HUMAN NECESSITIES
- A61—MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
- A61J—CONTAINERS SPECIALLY ADAPTED FOR MEDICAL OR PHARMACEUTICAL PURPOSES; DEVICES OR METHODS SPECIALLY ADAPTED FOR BRINGING PHARMACEUTICAL PRODUCTS INTO PARTICULAR PHYSICAL OR ADMINISTERING FORMS; DEVICES FOR ADMINISTERING FOOD OR MEDICINES ORALLY; BABY COMFORTERS; DEVICES FOR RECEIVING SPITTLE
- A61J1/00—Containers specially adapted for medical or pharmaceutical purposes
- A61J1/14—Details; Accessories therefor
- A61J1/20—Arrangements for transferring or mixing fluids, e.g. from vial to syringe
- A61J1/2003—Accessories used in combination with means for transfer or mixing of fluids, e.g. for activating fluid flow, separating fluids, filtering fluid or venting
- A61J1/202—Separating means
- A61J1/2034—Separating means having separation clips
Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、電解質液が収容された医療用容器及びその製造方法に関するものであり、より詳細には、末梢静脈或いは中心性静脈などから投与される輸液剤等の体液の投与物、人工透析液等の循環系の透析液、及び臓器等を保存する保存溶液を構成する電解質液が収容された医療用容器及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
人体の血液中或いは組織細胞中には重炭酸が一定の濃度で含まれているにも拘わらず、人体の治療等に使用される輸液剤、人工透析液、及び臓器(組織)保存液には所定の電解質が含有されるものの、重炭酸は全く、或いは殆ど含まれていない。
例えば、人体の血漿中の重炭酸濃度は、通常24mEq/L程度である。輸液により重炭酸を直接体内に投与する場合、また血液透析や腹膜透析により間接的に投与する場合等には、それぞれの溶液の重炭酸濃度を血漿中の濃度に合わせて調合することが望ましい。しかし、輸液剤等はプラスチックの医療用容器内に充填されて、通常高圧蒸気滅菌等により完全に滅菌した状態で病院に提供される。このため、予め重炭酸を容器内の液に調合しておくと、重炭酸は高圧蒸気滅菌時に殆ど炭酸ガスに分解する。また、従来のプラスチックの医療用容器に重炭酸を充填して高圧蒸気滅菌をしなくても、希釈された溶液内では、重炭酸は炭酸ガスに分解して消失する。
このため、輸液剤、透析液等には重炭酸が使用されず、体内でこれに代わるものが添加されている。血漿中等の重炭酸濃度を一定に保つためには、重炭酸に代わるものとしてアセテート又はラクテート等が調合される。
【0003】
例えば、代表的な電解質維持の輸液剤にあっては、Naが20〜50mEq/L、Kが20mEq/L前後、Clが20〜50mEq/L、及びラクテート、又はアセテートが30mEq/L含まれ、グルコース、フルクトース、キシリトース、ソルビトース等が1〜10重量%で含まれる。
アセテート又はラクテートは、体内で重炭酸を造り重炭酸を補う働きをすると共に、グルコース溶液を酸性に維持して容器内の安定性を図っている。このため、現在、輸液にはアセテート又はラクテート等が頻用されている。
また、輸液は従来から非定容性のプラスチック容器に充填され、瓶針等を必要としないクローズドシステムのものが使用されている。そして、このような容器は輸液の充填後、高圧蒸気滅菌処理が一般になされる。しかし、輸液に糖類等が含まれ、且つ輸液のPH値が高いと、その蒸気滅菌時に輸液が変色を起こす場合がある。このため、電解質輸液剤にあっては、できるだけPH値を下げて調整を行っている。
【0004】
また腹膜透析液では、一例として以下の組成及び特性を有している。
・電解質濃度(mEq/L)
Na+ ・・・・130〜150
K+ ・・・・必要により
Ca2+ ・・・・1〜6
Mg2+ ・・・・0〜3
Cl− ・・・・90〜135
ラクテート−・・30〜45
・ブドウ糖(g/dl)・・・1〜8
・浸透圧(mOsm/l)・・300〜680
・pH ・・・・約5.5
アセテート又はラクテートは、体内で重炭酸を造り、透析時に消失する重炭酸を補う働きをする。
【0005】
臓器保存液には、ユーロコリンズ液、ウィスコンシン液等が提案されており、ユーロコリンズ液の調製成分としては以下のものが一例として挙げることができる。
K2HPO4・・・・・・7.40g/L
NaHCO3・・・・・・0.84g/L
KH2PO4・・・・・・2.04g/L
KCl・・・・・・・・1.12g/L
MgSO4・・・・・・・0.48g/L
D50W・・・・・・・・50ml/L
ヘパリン・・・・・・・・5、000単位/L
浸透圧 326mOsm/kg
【0006】
また、臓器保存剤には、抗生物質、生理活性蛋白質(インスリン、抗血小板因子、抗利尿ホルモン等)、糖類(グルコース、マンニトール等)、ビタミン類(ビタミンC、ビタミンE等)、有機酸(乳酸、クエン酸等)、核酸塩基(アデノシン三リン酸等)、降圧剤(カルシウム拮抗剤、アドレナリンβ受容体拮抗剤、アンギオテンシン変換酵素阻害剤等)、抗凝固剤(ヘパリン等)等を既に含ませることが提案されている。また特開平7−215801号公報に記載されるリン酸ジエステル化合物等の薬物も提案されている。
従来また、臓器保存液と容器との関係においては、加熱滅菌や無菌濾過した精製水等に所定の電解質及び保存剤を無菌的に溶解し、これをビニール容器等に無菌的に充填している。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のこのような電解質液に多量のアセテート、クエン酸等の有機酸を用いた場合、アセテート等は直ぐに体内で分解されない患者、例えば肝障害のある患者がいるため、患者の体内はアシドーシスの傾向が見られる。また、上述のように輸液剤等のPH値ができるだけ低くく抑えられると、投与患者には酸過剰投与、腎障害、下痢、嘔吐などを生じることがある。特にPH値が5.0以下では頻繁にこのような症状が見られる。
またこのような電解質液の問題を解消し、できる限り体液成分、或いは組織細胞成分に近づけるため、重炭酸塩を添加しようとすると、上述したように高圧蒸気滅菌時に重炭酸塩が分解し、また保存時においても徐々に炭酸ガスとして喪失する傾向が見られる。
このようなことから、特開平6−105905号公報には重炭酸溶液を室に充填し、かかる室をガスバリア性の包装材で包装して炭酸ガスとして喪失を防止しているものが提案されている。しかしながら、高圧蒸気滅菌処理されている重炭酸溶液が充填されている以上、上記の問題は十分な解決を見ていない。
更に、臓器保存液を収容した従来の医療用容器にあっては、以下の点に問題がある。臓器保存液には、溶液化した場合の不安定な重炭酸及び臓器保存剤があるため、長期間の保存ができない。また、かかるビニール容器に臓器保存液を充填した状態では、重炭酸及び臓器保存剤が容易に変質するため高圧蒸気滅菌ができない。このため、臓器保存液を無菌的にビニール容器に充填させるものの、その無菌保証が十分にできない。
【0008】
従って、本発明の目的は、アシドーシス等により腎障害、下痢、嘔吐等の生じることがなく、また投与時のPH値も体液に近い値に維持することができる電解質液或い透析液等の好ましい医療用容器及びその製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、体内の投与液、循環系での透析液、又は臓器の保存液として用いられる電解質液が収容された医療用容器において、上記容器壁は熱可塑性のプラスチック壁からなり、上記容器内は複数の室に分かれ、該室と室との隔離壁の全部又は一部は上記容器外からの開放が可能で該室と室とを連通可能にする隔離開放手段で形成され、上記一の室には電解質液が収容されて蒸気滅菌がなされ、上記他の一の室には充填後に照射滅菌された重炭酸塩が収容されていることを特徴とする医療用容器を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0010】
本発明に係る医療用容器において、上記照射滅菌がγ線、電子線、又は紫外線の何れかであることを特徴とすることにより、重炭酸塩は簡単に滅菌され、また重炭酸塩が単純な塩構造ゆえに各照射線により変質等を起こす危惧は全くない。また高圧蒸気等に晒されることもないため、蒸気滅菌時に容器壁への水分等の透過がなく化学的分解が殆ど生じない。
本発明に係る医療用容器において、上記容器壁の厚みが1600μm〜10μmの範囲にあり、且つ上記重炭酸塩の収容室内が電子線照射滅菌されていることを特徴とすることにより、電子線照射装置の設備は、1MeV以下の加速電圧でも容器壁を通って室内の重炭酸塩を確実に滅菌し、その装置設備においてもX線等の遮蔽装置を大がかりに設ける必要がない。このため、医療用容器を大量製造するに当たり、コンパクトな製造ラインを組むことができる。
【0011】
本発明に係る医療用容器において、上記容器壁の厚みが100μm〜10μmの範囲にあり、且つ上記重炭酸塩の収容室内が紫外線照射滅菌されていることを特徴とし、特に上記容器壁は、波長250nmにおける紫外線透過率が厚み10μmで60%以上で、その密度が0.95〜0.85g/cm3の範囲にある樹脂壁であることを特徴とすることにより、紫外線装置等の簡単な設備により容器内の重炭酸塩を容易に滅菌することができる。
本発明に係る医療用容器において、上記容器がポリオレフィン系樹脂からなることを特徴とすることにより、医療用容器の樹脂壁は電解質液に影響を与えることが少なく、汎用性があるため経済的である。
本発明に係る医療用容器において、上記隔離開放手段が剥離可能なピールシール部であることを特徴とすることにより、容器の使用者は極めて簡単に室同士を連通させる作業ができ、容器の製造では衛生的なライン処理ができ、大量生産が容易にできる。
【0012】
本発明に係る医療用容器において、上記電解質液の収容室内には該電解質と共に糖質が含まれ、且つ電解質液のPH値が該室内で5.5以下に維持されると共に、上記隔離開放手段の開放後における上記容器内の電解質液のPH値が6.0〜8.0となることを特徴とすることにより、容器内の糖質は高圧蒸気滅菌時に変色或いは変質が防止される。また、患者に使用する場合、PH値の低下により輸液剤等が腹痛等を起こさせるということがない。
本発明に係る医療用容器において、上記重炭酸塩がナトリウム塩又はカリウム塩であることを特徴とすることにより、電解質液で用いられるべきナトリウム又はカリウム成分を重炭酸塩に差し引いて移行させることができるので、使用時まで密封されて保存される電解質液の室中でのPH値を5.5以下に容易にさげることができ、またかかる塩は室と室とを連通したときに容易に電解質液に溶解する。また電解質液側にカルシウム又はマグネシウムイオンが少量含まれていたとしても重炭酸は電解質液全体に溶解していくので沈殿等が生じ難い。
【0013】
本発明に係る医療用容器において、上記室中の重炭酸塩の量は上記容器内での電解質液中の濃度が1〜65mEq/Lとなるように収容されていることを特徴とすることにより、体液及び組織細胞中に適した重炭酸濃度を与え、人体及び各組織への電解質の変動を少なくする。
本発明に係る医療用容器において、上記電解質中のアセテート、又はラクテートの含有量が25〜0mEq/Lに抑えられることを特徴とすることにより、体液中に過剰にラクテート等を存在させないため、アシドーシス及びアルカリローシスの管理が容易になる。
【0014】
本発明は、体内の投与液、循環系での透析液、又は臓器の保存液として用いられる電解質液が収容された医療用容器の製造方法において、熱可塑性のプラスチック壁からなる上記容器内を複数の室に分けると共に、該室と室との隔離壁の全部又は一部を上記容器外からの開放が可能な隔離開放手段で形成し、上記一の室に電解質液を収容して該室を密封した後に蒸気滅菌を行い、次に上記他の一の室に重炭酸塩を充填して密封した後に該室内を照射滅菌することを特徴とする医療用容器の製造方法を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0015】
本発明に係る医療用容器の製造方法において、上記照射滅菌が電子線照射滅菌であることを特徴とし、特に、上記電子線照射滅菌はその加速電圧が1MeV以下のである中低電圧による電子線照射滅菌であることを特徴とすることにより、上記容器の室内中の重炭酸塩を簡単且つ確実にすることができる。また、かかる処理は大量の製造ラインに乗せることも容易にできる。
【0016】
【作用】
上記医療用容器には複数の室が設けられ、一の室には重炭酸塩が収容され、またかかる重炭酸塩は使用時に隔離開放手段の開放により電解質液と混合される。このため、投与や透析等にも用いられる電解質液に重炭酸が含まれるため、これを投与した場合は体内での重炭酸濃度に変動がなく体内でのPH値が維持され、従来のものと相違してアシドーシス等の電解質異常を生じることがない。即ち、重炭酸の添加割合に応じてアセテートやラクテート等の電解質を少なくなくできるため、体内に直接重炭酸が作用し、体内中の重炭酸濃度が一定になる。更に重炭酸の添加により、PH値が6.0〜8.0の範囲に維持することができ、投与におけるPH値低下が引き起こす腹痛や下痢等を防止することができる。
また人工透析液や腹膜透析液にあっては、従来の透析液と相違してアシドーシスやアルカローシス等の電解質異常を生じることがない。そして重炭酸の添加により、透析液のpHが6.5〜7.5の好適な範囲に維持することができ、透析における腹痛やPH値の異常による免疫力の低下を防止して感染症を少なくする。
【0017】
上記重炭酸塩は、懸濁、粉体、顆粒、或いは打錠、特に粉体で容器内の室に長期間存在させているので、従来の重炭酸溶液のように容易に分解することはない。また、上記重炭酸塩は照射滅菌されるため、従来の滅菌方法である高圧蒸気滅菌時に容器壁を介して多量の水分を吸収して、分解を起こしてその組成を変えてしまうおそれがない。特に、照射滅菌が低中電圧装置による電子線滅菌であれば、設備が経済的で大量生産ライン化が極めて簡単である。
更に、重炭酸塩は、容器内の主要な電解質液の室から分かれて他の室に充填され、また主要電解質液中の電解質の一部を、重炭酸のアルカリ性塩剤として割り当て、重炭酸は炭酸ガスとして分解するのを防止した状態で充填される。そして重炭酸塩として一部ナトリウム塩又はカリウム塩を重炭酸の充填室側に配合するため、糖質等を含む電解質液の室内のPH値を低くして、蒸気滅菌処理時の糖質を安定に維持することができる。また重炭酸と一度反応すると容易に溶解しないカルシウム塩も、酸性状態に維持され、混合時も重炭酸が徐々に溶解するため沈殿等は生じ難い。
従って、室と室とが外部から開放可能な隔離開放手段で仕切られたのと相まって、使用時に重炭酸は無菌状態で、主要な電解質液と混合され、医療用容器は、好適な輸液、透析液、臓器保存液を提供する。
【0018】
【実施例】
以下、本発明に係る電解質液が収容された医療用容器及びその製造方法の好ましい実施例を添付図面を参照しながら詳述する。
図1は本発明に係る医療用容器の第一実施例の断面図、図2は第一実施例の医療用容器の製造途中の断面図、図3は第一実施例の医療用容器の製造途中の断面図、図4は第一実施例の医療用容器に用いられる電子線照射装置の概略断面図、図5は第一実施例の医療用容器の使用時の断面図、図6は本発明に係る医療用容器の第二実施例の製造途中の断面図、図7は第二実施例の医療用容器の断面図、図8は第二実施例の医療用容器に用いられる紫外線照射装置の概略断面図、図9は第二実施例の医療用容器の使用時の断面図、図10は本発明に係る医療用容器の第三実施例の半断面図、図11は第三実施例のの医療用容器の使用時の半断面図である。
【0019】
本実施例に係る医療用容器1は体内の投与液として用いられる電解質液が収容された医療用容器、特に高張糖質液からなり、中心静脈経路より投与される高カロリー輸液剤の医療用容器である。かかる医療用容器内は3つの室2、3、4に分かれ、室2と室3と及び室3と室4との隔離壁の全部は上記容器外からの隔離開放が可能で各該室を連通可能にするピールシール部5、6で形成され、第一室2には電解質液を含む第一輸液成分11が収容されて蒸気滅菌がなされ、第二室3には充填後に照射滅菌された重炭酸塩12が収容されている。
【0020】
本実施例の輸液を更に詳しく説明すると、本実施例に係る医療用容器1は熱可塑性の樹脂壁からなり、容器1は筒状の樹脂シートの両端に熱溶着シール部1A、1Bが形成されて容器本体が形成されている。また、容器1の中間部には二条の外側からの剥離が可能なピールシール部5、6が形成され、容器1内はピールシール部5、6により、第一室2、第二室3、及び第三室4が形成されている。
熱溶着シール部1A、1Bには充填口兼排出口7及び充填口8が設けられ、第一室2には第一輸液剤成分11が高圧蒸気滅菌されて充填され、第三室4には第二輸液成分13が高圧蒸気滅菌されて充填されてる。また、第二室3の側部には薬剤充填用の切り欠き部9が形成され、第二室3には重炭酸塩12が照射滅菌されて充填されている。
【0021】
本実施例の医療用容器1に用いられる熱可塑性樹脂シートは、直鎖状低密度ポリエチレンからなり、筒状の樹脂シートはインフレーション成形により形成されたものである。本発明においては、直鎖状低密度ポリエチレンに限る必要はなく、熱可塑性樹脂であれば、それ自体公知の多様な樹脂を用いることができる。例えば、低密度ポリエチレン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、軟質ポリエステル樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体等の可撓性に富んだ材料を用いることができる。しかしながら、輸液成分11、12、13等に悪影響の少ない樹脂としては、本実施例のようなオレフィン系樹脂を用いることが望ましい。
また、本発明において医療用容器の樹脂シート壁は、異なる樹脂の多層ラミネートであっても良い。この場合、特に、外層或いは中間層等に炭酸ガスの難透過性の高い樹脂を用いることが望ましい。このような炭酸ガスのバリア性の高い樹脂層を設けた場合、容器1内の重炭酸塩12が若干分解し、炭酸ガスを放出したとしても、容器1の充填室4からの炭酸ガス放出が極めて困難となり、容器の長期間の安定保存が更に保証される。このような樹脂としては、高密度ポリエチレン、塩化ビニリデン、ポリエステル、ナイロン、ビニロン等である。
また本発明において医療用容器は、インフレション成形物である必要はなく、押出し成形物、真空成形物、射出成形物、ブロー成形物等でも良い。
【0022】
本実施例の医療用容器1は長さが500mmで幅が200mmに形成されており、また容器壁の厚みは、200μmに形成される。本発明において、医療用容器1の容器壁の厚みは、1600〜10μm、特に800〜30μmであることが望ましい。容器壁の厚みが上記範囲を上回ると、後述する簡易設備の電子線照射装置による重炭酸塩12の照射滅菌が困難となり、大量生産ラインに乗せ難くなる。また上記範囲を下回ると、容器壁の破断する機会が多くなる不具合がある。
【0023】
図5に示す如く輸液成分11、12、及び13が混合すると高カロリー輸液剤14となる。
高カロリー輸液剤14は中心静脈から投与され、糖質が10乃至50重量%、特に15乃至30重量%の範囲で含まれる高カロリー輸液剤である。かかる輸液剤は、腸管などの大量切除、小腸病変、重症下痢症などの患者に栄養補給を目的として行われる。
糖質は、主にブドウ糖が用いられるが、ブドウ糖の他には、フルクトース、キシリトース、ソルビトース等も用いられる。
【0024】
高カロリー輸液剤14には、糖質の他に適宜電解質が含有され、電解質としては、Na(ナトリウム)、K(カリウム)、Cl(クロール)、Ca(カルシウム)、Mg(マグネシウム)等が挙げられる。また、必要により、Zn(亜鉛)、P(リン)、Fe(鉄)、Cu(銅)等の微量金属類、及びクエン酸、グルコン酸、酢酸(アセテート類)、乳酸(ラクテート類)等の有機酸も添加される。
これらの電解質及び有機酸は、塩酸塩、乳酸塩、酢酸塩、硫酸塩、リン酸塩、グルコン酸塩、グリセロリン酸塩として用いられ、Caにあっては、グリセロリン酸塩として用いられる。また、沈殿などを生じないようにP供給を十分にするために、多価アルコール又は糖のリン酸エステルなどが用いられる。
【0025】
Naは0〜160、特に20〜80mEq/Lの範囲濃度で輸液剤に用いられる。Kは0〜80、特に10〜70mEq/Lの範囲濃度で輸液剤に用いられる。Clは0〜160、特に20〜80mEq/Lの範囲濃度で輸液剤に用いられる。Caは0〜20、特に4〜15mEq/Lの範囲濃度で輸液剤に用いられる。Mgは0〜25、特に6〜20mEq/Lの範囲濃度で輸液剤に用いられる。Pは0〜500、特に120〜350mg/Lの範囲濃度で輸液剤に用いられる。Znは0〜40、特に5〜30μmolの範囲濃度で輸液剤に用いられる。
【0026】
本実施例の高カロリー輸液剤14には、アセテート又はラクテート等の電解質と共に、又はその替わりに重炭酸が1〜65mEq/Lの範囲濃度で含有される。重炭酸は、血漿中の濃度付近が好ましく、特に、5〜50、更には15〜30mEq/Lの範囲で含有される。重炭酸が上記範囲を上回ると、投与後の患者にアルカリローシスが生じるおそれがあり、また上記範囲を下回ると、肝障害者等ではアセテートなどの分解による重炭酸が血中に生じないため、アシドーシスなどを生じる。また、重炭酸を添加したことにより、アセテート又はラクテートの濃度は、25mEq/L以下、特に重症肝障害者には、15〜0mEq/Lの範囲で含有されることが望ましい。
【0027】
また、高カロリー輸液剤14には、カロリー補給も必要とするため、糖質以外に、三大栄養素であるアミノ酸製剤及び脂肪乳剤を配合することが望ましく、本実施例では、糖質と高圧蒸気滅菌時にメイラード反応を生じるアミノ酸製剤が輸液剤14に含まれている。
【0028】
第一輸液成分11は上記糖質と電解質との溶液からなる。但し、重炭酸塩12は第二室3に充填されるため、輸液成分11から重炭酸が除かれる。また重炭酸塩12はアルカリ塩であるため、かかるアルカリ塩は第一又は第二輸液成分11、13に含まれるべき塩の一部が割り当てられる。塩としては重炭酸塩12が輸液成分11に混合されたときに容易に溶解される塩が好ましく、このような塩としてはナトリウム塩又はカリウム塩が望ましい。このため、本実施例では、重炭酸塩12で用いた分のナトリウム或いはカリウムが輸液成分11から計算量に従って差し引かれる。
第一室2内の輸液成分11のPH値は、5.5以下に下げられ、特に本実施例ではPH値が5.0〜3.0の範囲に調製される。輸液成分11のPH値が上記範囲を上回れば、その高圧蒸気滅菌処理時に糖質が変色又は変質する場合がある。また高カロリー輸液剤14全体のPH値は6.0〜8.0、特に6.5〜7.5の範囲にあることが望ましい。輸液剤14のPH値が上記範囲を下回ると、患者に下痢や腹痛等が生じることが多くなり、上記範囲を上回ればアルカリローシスを起こすおそれがある。従って、輸液成分11のPH値が3.0を下回れば、輸液成分11と重炭酸塩12とを混合したときでも高カロリー輸液剤14全体のPHが低くなって、患者に悪影響を与えるおそれがある。
【0029】
重炭酸塩12は本実施例では重炭酸ナトリウムの粉末である。本発明では、重炭酸塩12は粉末、顆粒、打錠又は懸濁物でもよいが、その安定性から粉末等の固形物であることが望ましい。また重炭酸塩はナトリウム以外のものでも良いが、特にナトリウムとカリウムが望ましい。これらは輸液成分11、13に容易に溶解し、電解質成分として十分に添加されうるものである。また第二室3には重炭酸塩12の他に炭酸塩、水酸化塩等を適宜添加しても良い。
本実施例では、24mEq/Lの重炭酸ナトリウムが用いられている。従って、容器1に液が1000mL収納されることから、重炭酸塩13としての炭酸水素ナトリウムは、2.02gの範囲で用いられる。
重炭酸塩12が充填された第二室3の厚みは、容器壁の厚みを含めて、3200μm以下、特に1600μmであることが望ましい。第二室3を両面から照射滅菌する場合、上記範囲内にあれば、後述する簡易な電子線照射滅菌装置により簡単にすることができる。
【0030】
第二輸液成分13はアミノ酸製剤である。アミノ酸製剤としては、必須アミノ酸(E)と非必須アミノ酸(N)とが配合され、その配合比はほぼ1程度に維持される。またアミノ酸投与は十分量の糖質と併用投与することが必要であり、アミノ酸中の窒素1gに対する投与カロリー量の割合は150〜200を目標としている。また、肝性昏睡に陥った患者には分岐鎖アミノ酸製剤が投与される。アミノ酸製剤は、輸液剤中に0.5〜15、特に1〜10重量%で含有することが望ましい。
アミノ酸は、グリシン、L−アラニン、L−プロリン、L−アスパラギン酸、L−セリン、L−チロシン、L−グルタミン酸、L−システイン、L−ロイシン、L−イソロイシン、L−バリン、L−リジン、L−メチオニン、L−フェニルアラニン、L−トレオニン、L−トリプトファン、L−アルギニン、L−ヒスチジン等がある。アミノ酸は、遊離アミノ酸だけでなく、その無機塩類、有機塩類、生体内で加水分解可能なエステル、2以上のペプチド等のようにダイマーとして使用される場合もある。
【0031】
第一輸液成分11及び第二輸液成分13は第一室2及び第三室4内で高圧蒸気滅菌処理されている。高圧蒸気滅菌処理は日本薬局方の蒸気滅菌の基準に基づいて行われ、本実施例では100〜130℃の温度でオートクレーブ等で行われる。尚、本発明ではそれ自体公知の蒸気滅菌を採用することができる。
【0032】
重炭酸塩12は第二室3内で照射滅菌されている。本実施例では第二室3内の照射滅菌は電子線照射滅菌によりなされている。本発明の照射滅菌処理は、γ線、電子線、及び紫外線による照射滅菌処理でも良い。しかし、滅菌の確実性とその経済性及び大量生産適応性の点から以下の電子線照射滅菌が望ましい。
【0033】
照射滅菌を確実にするには電子線の容器壁の透過性が問題となる。電子線の透過性は、主に加速電圧により決定され、高エネルギー型では最高13000g/m2であり、これは、水(比重1g/m2)の厚みで13000μmである。しかし、加速電圧装置が大型化するとX線の遮蔽設備が大がかりになり、また樹脂素材を変質させるおそれがある。このため、中低エネルギー型の1MeV以下、特に低エネルギー型の500KV以下の加速電圧装置が望ましく、かかる装置では中エネルギー型で約1500g/m2 、低エネルギー型で約800g/m2が限界であるため、電子線透過の厚みは樹脂素材で1600μmが最適な限度とされる。従って、上述したように容器1の壁の厚み及び第二室3の厚みは上記範囲内であることが望ましい。
電子線滅菌はその加速電圧が1MeV未満、特に低エネルギー型の500KV〜50KVのものであれば、電子線の所定の浸透性が得られる一方、X線等の放出がほとんどないため、その遮蔽設備を必要とせず、生産ラインにコンパクトに配することができる。即ち、加速電圧500KVによる電子線の浸透性は約8000g/m2以下で、特に800μm以下の樹脂肉薄部での浸透性が十分に得られる。
【0034】
図4に示す如く電子線照射装置50は、ベルトコンベア51の上方に設けられ、機枠52と、機枠52に形成される窓枠53、窓枠53に取り付けられた窓箔54、窓枠53の上方を覆っている加速管55、及び加速管55内の真空チャンバ内に設けられた電子線発生部56からなる。また電子線発生部56はグリッド57、ガンフレーム58、及びフィラメント59とからなる。
フィラメント59は通電され、加熱させられて熱電子を発生する。熱電子は所定の電圧が印加されたフィラメント59とグリッド57との間で加速され、窓箔54からコンベア51上に照射される。尚、機枠52は電子線照射により二次的に発生するX線等の外部漏出を防止するため鉛遮蔽がされている。
従って、コンベア51の速度とフィラメント59の通電量により、照射電子線量が調整され、加速電圧により、電子線の浸透性を調整することができる。
【0035】
図4において、医療用容器1の第二室3のみが電子線照射装置50により照射滅菌されている。また電子線照射が容器1の両面からなされている。
微生物の殺菌においては、特開平7−16286号公報にも記載されるように、放射線菌で指標となるB.pumilus(spores)E−601で約0.2Mrad(2kGy)のD値を有する。1cm2当たり、通常100オーダーの菌が付着しているが、安全性を十分考慮すれば、102オーダーまでの付着があるとの仮定も成り立つ。また滅菌保証レベル(SAL)は生存率10−6%である。従って、本実施例での電子線照射装置50は第二室3内が6×0.2Mrad以上、好ましく8×0.2Mrad以上で滅菌されるように通電量とコンベア速度が調整されて滅菌処理がなされている。
【0036】
次に、医療用容器1の製造方法について説明する。
図2に示す如く、医療用容器1はインフレション成形した筒状の直鎖状低密度ポリエチレンシートが所定の大きさに裁断して形成される。裁断したシートは熱溶着シールにより両端部が固着シールされ、このときに排出口7及び充填口8が取付られる。次に、医療用容器2の所定の位置に二条のピールシール部5、6が形成され、容器内に第一室2、第二室3及び第三室4が分割される。
具体的には、直鎖状低密度ポリエチレン(密度:0.916g/cm3、MI:2)のシートは、その肉厚200μm、長さ500mm、幅200mmの筒状シートに裁断される。次に容器の形態とするため、インパルスシーラー(富士インパルス株式会社製オートシーラFA−300−5W)で両端を熱溶着シールする。シール条件はシール時間1.5秒間、冷却時間5秒間である。ピールシール部5、6は、剥離可能となるように、120〜140℃でプリヒートした挟持体で長時間挟んで形成される。尚、本発明では、かかる方法以外のそれ自体公知のピールシール部の形成方法を用いても良い。
次に、第一室2には排出口7から第一輸液成分11が充填され、排出口7はゴム栓7Aで密栓される。第三室4には充填口8から第二輸液成分13が充填され、充填口8はゴム栓8Aで密栓される。かかる状態で、上述の高圧蒸気滅菌が医療用容器1になされ、第一輸液成分11及び第二輸液成分13が滅菌される。
図3に示す如く、医療用容器1の第二室3には切り欠き部9が形成され、かかる切り欠き部9の開口から第二室3に重炭酸塩12が充填される。そして、切り欠き部9の開口部が熱溶着シールされた後、医療用容器1は電子線照射装置50へと搬送され、第二室3の両面が照射滅菌される。
【0037】
このように構成された本実施例の医療用容器1では、重炭酸塩12は容器外へと消失するおそれが少ない。即ち、重炭酸塩12は高圧蒸気滅菌等に晒されないため、炭酸ガスに分解し容器壁を通って外に出るおそれが少ない。また、重炭酸塩12は粉末或いは懸濁液等の固形であるため、炭酸ガスなどに分解し難く、特に、粉末、顆粒物であれば殆ど第二室3内で分解することがない。
また、重炭酸塩12は照射時に変質等を生じるおそれのない物質であるため、照射滅菌が問題なく容器壁越しになされ、確実な滅菌がなされている。
医療用容器1の患者への適用では、図5に示す如く、ピールシール部5及び6が容器1の外側から開放され、全ての室2、3、4が連通される。重炭酸塩12は先ず第二輸液成分に溶解され、次にカルシウム等が存在する第一輸液成分と混合され、高カロリー輸液剤14が調製される。この場合、重炭酸塩12はカルシウム等を含む電解質溶液に徐々に溶解混合されるため、炭酸カルシウム等の沈殿が生じにくい。但し、かかる高カロリー輸液剤14においてはカルシウムを含まないことが望ましい。尚、輸液具の連通針15が排出口7に刺通され、高カロリー輸液が患者に開始される。
【0038】
このように重炭酸塩12を含む高カロリー輸液剤にあっては、アセテート又はラクテート等の添加を極力抑えているため、投与患者のアシドーシスや酸過剰投与の電解質異常を防止することができる。また高カロリー輸液剤のPH値が6.0〜8.0、特に6.5〜7.5までの適値に調製されるため、投与患者に腹痛や嘔吐等の症状を起こさせることがない。
上記実施例では、医療用容器の充填物を高カロリー輸液剤14とした。しかし、本発明では、電解質輸液剤が生理食塩水、生理食塩水−糖液、リンゲル液、リンゲル液−糖液、ハルトマン液、ハルトマン液−糖液等の開始液、細部外液補充液、胃腸液補充液、電解質維持液等であってもより、このため、電解質の含有量は、血漿の浸透圧を多少上回って使用しても良く、Naを0〜160mEq/Lの間で使用しても良い。
【0039】
次に、本発明に係る医療用容器の第二実施例を図6〜図9を参照しながら説明する。
図6〜図9に示す如く、本実施例の医療用容器21は循環系での透析液、即ち糖を含んだ電解質溶液からなり、腹腔内に注入される腹膜透析液の医療用容器である。そして、医療用容器21は、2つの室22、23に分かれ、室22と室23との隔離壁の一部は上記容器外からの隔離開放が可能で各室22、23を連通可能にする挟持ピン24で形成され、第一室22には電解質液を含む腹膜透析用の母液17が収容されて蒸気滅菌がなされ、第二室23には充填後に照射滅菌された重炭酸塩18が収容されている。
【0040】
本実施例に係る腹膜透析液の医療用容器21を更に詳しく説明すると、容器21は、急性或いは慢性腹膜透析用の透析液を含む腹膜透析液用容器である。本実施例において具体的には、容器21は、高密度ポリエチレンを押出し成形して作製したシートを延伸し、所定の大きさに裁断して形成されたものである。裁断したシートは2枚に重ねられ、2枚のシートは熱溶着により所定の四方が完全に固着シールされ、周縁シール部21A及び隔離シール部21Bは非剥離状態になっている。
本実施例の医療用容器21に用いられる熱可塑性樹脂シートは、高密度ポリエチレンであるが、本発明において、第一実施例と同様に、その他の公知の樹脂シートの使用が可能であり、また多層のラミネートシートであっても良く、成型物も押出し成形物に限ることはない。
但し、後述するように容器1の第二室23内が紫外線照射滅菌されることより、樹脂シートは、波長250nmにおける紫外線透過率が厚み10μmで60%以上、特に70%以上で、その密度が0.95〜0.85g/cm3の範囲にある特性を有することが望ましい。上記範囲を下回る紫外線透過率であれば、第二室23内が十分に紫外線照射されない。また樹脂が上記密度の範囲内あれば、紫外線透過率の極めて高い樹脂シートが得易い。
【0041】
本実施例の医療用容器21は長さが500mmで幅が300mmに形成されており、また容器壁の厚みは、50μmに形成される。本発明において、医療用容器1の容器壁の厚みは、100〜10μm、特に60〜30μmであることが望ましい。容器壁の厚みが上記範囲を上回ると、後述する紫外線照射装置による重炭酸塩18の照射滅菌が困難となり、大量生産ラインに乗せ難くなる。また上記範囲を下回ると、容器壁の破断する機会が多くなる不具合がある。
容器1の隔離シール部21Bには取付孔27、27が設けられ、取付孔27、27には隔離用の挟持ピン24が取り付けられている。挟持ピン24は2本の挟持バー24A、24Bと蝶番24Cからなり、挟持バー24A、24Bは互いに蝶番24Cで着脱可能になっている。従って、挟持ピン24は取付孔27、27の間に取り付けられると、第一室22と第二室23とが完全に隔離され、挟持ピン24が取り外されると、第一室22と第二室23とは連通する。
【0042】
母液17と重炭酸塩18とが混合した腹膜透析液19は、電解質に重炭酸を1〜40mEq/Lの濃度範囲で含み、且つpHが5.7〜7.5の範囲である。
また、重炭酸塩18はナトリウム塩であり、糖質を含んだ母液17に配合される電解質は、Na+ を90〜150mEq/Lの濃度範囲で、Ca2+ を0〜6mEq/Lの濃度範囲で、Mg2+ を0〜3mEq/Lの濃度範囲で、Cl− を90〜135mEq/Lの濃度範囲で、アセテート又はラクテート−を0〜40Eq/Lの濃度範囲で含み、液浸透圧が300〜680mOsm/lである。
【0043】
母液17は第一室22内で電解質を含みPH値が5.5以下に維持され、母液17は第一室22内で高圧蒸気滅菌処理されている。高圧蒸気滅菌処理は日本薬局方の蒸気滅菌の基準に基づいて行われ、本実施例では100〜130℃の温度でオートクレーブ等で行われる。尚、本発明ではそれ自体公知の蒸気滅菌を採用することができる。
本実施例では、24mEq/Lの重炭酸ナトリウムが用いられている。従って、容器21に液が2000mL収納されることから、重炭酸塩18は、4.04gの範囲で用いられる。
重炭酸塩18が充填された第二室23の厚みは、容器壁の厚みを含めて、200μm以下、特に120μmであることが望ましい。第二室23を両面から照射滅菌する場合、上記範囲内にあれば、簡易な紫外線照射滅菌装置により簡単にすることができる。
重炭酸塩18は第二室23内で照射滅菌されている。本実施例では第二室23内の照射滅菌は紫外線照射滅菌によりなされている。本発明の照射滅菌処理は、γ線、電子線、及び紫外線による照射滅菌処理でも良い。しかし、極めて簡単な設備により滅菌できる点、及びその経済性及び大量生産適応性の点から以下の紫外線照射滅菌も望ましい。
【0044】
図8に示す如く、紫外線照射装置61は、ベルトコンベア63の上方に設けられ、高出力紫外線ランプ62が配される。高出力紫外線ランプ62は、低圧水銀ランプであり、波長250〜260nm付近の紫外線強度の高いものが用いられる。高出力紫外線ランプ62は照射部の窓面で100mWcm2以上であることが望ましく、このため、装置的にコンパクトなものとするため、紫外線ランプ62は200w〜1kwの範囲のものが望ましい。また照射部の窓面からベルトコンベアまでの距離Bは、25mm以下、特に10mm以下である。距離Bが25mm以下にあれば、窓面の照射率の70%程度の確保がされる。
医療用容器21は第二室23の部分を除いて紫外線遮蔽カバー等で遮蔽された状態で紫外線照射装置61のコンベア63に搬送され、また、紫外線照射が容器21の両面からなされるように、紫外線照射装置61は図示しないが後段に更に1台設けられ、容器21はコンベア63上で180度反転されて処理されている。
微生物の殺菌において、紫外線に対する抵抗力のあるB.subtilis(spores)を99.9%殺菌するには、ほぼ33.3mW・sec/cm2の照射線量が必要とされる。10−3オーダーまでの付着を避けた後、滅菌保証レベル(SAL)である生存率10−6%が保証される。従って、本実施例での紫外線照射装置61で30秒以内に滅菌するには、第二室23内に少なくとも1.11mW・sec/cm2以上の紫外線量が到達するように高出力紫外線照射装置61が調整されて医療用容器21は処理されている。
【0045】
次に、医療用容器21の製造方法について説明する。
図6に示す如く、医療用容器21は押出し成形した高密度ポリエチレンシートが所定の大きさに裁断して形成される。裁断したシートは熱溶着シールにより周縁が固着シールされ、このときに排出ポート29が取付られる。次に、医療用容器21の所定の位置に隔離シール部21Bが形成され、隔離シール部21Bに取付孔27が形成される。取付孔27に挟持ピン24が取付られ、容器21内に第一室22、第二室23が分割される。本実施例において、高密度ポリエチレンのシートは、その肉厚50μm、長さ500mm、幅300mmのシートに裁断される。次に容器の形態とするため、インパルスシーラー(富士インパルス株式会社製オートシーラFA−300−5W)で重ねたシートの周縁を熱溶着シールする。シール条件はシール時間1.5秒間、冷却時間5秒間である。
次に、第一室22には排出ポート29から母液17が充填され、排出ポート29は密栓される。かかる状態で、上述の高圧蒸気滅菌が医療用容器1なされ、母液17が滅菌される。
図6に示す如く、医療用容器21の第二室23の上方は開放され、かかる開放開口から第二室23に重炭酸塩18が充填される。そして、第二室23の開口部が熱溶着シールされた後、医療用容器21は紫外線照射装置60へと搬送され、第二室23の両面が照射滅菌される。
【0046】
このように構成された本実施例の腹膜透析液の医療用容器21では、重炭酸塩18は第一実施例と同様に容器外へと消失するおそれが少ない。また、重炭酸塩12は紫外線照射時に変質等を生じるおそれのない物質であるため、紫外線照射滅菌が問題なく容器壁越しになされ、確実な滅菌がなされている。
腹膜透析液の医療用容器21の使用に際しては、図9に示す如く容器21の外側から挟持ピン24が取り外され、第一室22と第二室23とが連通される。そして、母液17と重炭酸塩18とが混合され、容器21内で腹膜用透析液19ができる。母液17と混合したとき、重炭酸塩18は母液17のPH値を上昇させ、結局、透析液19のPH調整の役割も果たす。従って、容器21内に、無菌的にPH調整された腹膜透析液が家庭内でも提供されることとなる。
患者に適用する場合は、容器21の排出ポート7にカテーテル等の連通針が刺通され、カテーテルは患者の腹腔内に接続される。そして、容器21内の透析液19が腹腔内に流入して透析が行われる。
この場合、透析液19中の重炭酸の濃度が、患者側の体液中の濃度と変わりがないため、体液から重炭酸が透析液中に流出して、アシドーシスを起こすことがない。また、重炭酸の濃度を調整することにより、アルカローシス等も防止し、電解質異常を起こすことがない。
上記実施例では、医療用容器21の充填物を腹膜用透析液19とした。しかし、本発明では、かかる透析液に限る必要はなく、人工腎臓用環流液、人工腎臓用透析液、人工腎臓補充液等にも有用に適用することができる。
【0047】
次に、本発明に係る医療用容器の第三実施例を図10を参照しながら説明する。
図10に示す如く、本実施例の医療用容器31は、臓器移植の際に臓器が浸される臓器保存液を収容した医療用容器である。そして、医療用容器31は、2つの室32、33に分かれ、室32と室33との隔離壁の一部は上記容器外からの隔離開放が可能で各室32、33を連通可能にするクリックチップ34で形成され、第一室32には電解質液を含む腹膜透析用の母液41が収容されて蒸気滅菌がなされ、第二室33には充填後にγ線照射滅菌された重炭酸塩42が収容されている。
【0048】
本実施例に係る腹膜透析液の医療用容器31を更に詳しく説明すると、容器31は、臓器保存液を収容した医療用容器である。本実施例において具体的には、容器31は、直鎖状低密度ポリエチレンを押出し成形して作製したシートを延伸し、所定の大きさに裁断して形成されたものである。裁断したシートは2枚に重ねられ、2枚のシートは熱溶着により所定の四方が完全に固着シールされ、周縁シール部31A及び隔離シール部31Bは非剥離状態になっている。
本実施例の医療用容器31は長さが500mmで幅が250mmに形成されており、また容器壁の厚みは、300μmに形成されている。
隔離シール部1Bの形成時にクリックチップ34が2枚のシート間に液密に取り付けられ、通常、クリックチップ34は折り取り破壊されない限り、室32と室33との間を不連通としている。即ち、クリックチップ34は樹脂成形物から形成され、一端が閉止した管状に形成される。そして、クリックチップ34はその閉止端の側面の切れ込み34Aでその閉止端が折り取られることにより、完全な両端開放型の管となる。周縁シール部31Aの形成時に排出口35が取付られる。排出口35には蓋体36が取付られ、蓋体36は止め材37を介して液密に排出口35を封止している。
【0049】
本実施例における母液41と重炭酸塩42とが混合した臓器保存液43は、ユーロコリンズ液を基本としており、重炭酸塩42と母液41とが各室32、33に分けて収容される。
重炭酸塩42、及び母液41を混合したときの臓器保存液43は、その浸透圧が250〜400mOsm、好ましくは280〜350mOsmの範囲である。また臓器保存液のPHは、3〜10、特に4〜9に調整されている。
【0050】
母液41は、容器31の大部分をしめる母液充填室32に充填され、重炭酸塩42が母液充填室32から分離して重炭酸塩室33に充填される関係から、その重炭酸のカリウム塩の理論量を差し引いた組成液として充填される。また、母液41には、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩等が薬理学的に許容される範囲内で用いられる。また、母液充填室32に充填される母液41にグルコース等の糖類が含まれる場合には、そのpHが5.5以下であることが望ましく、特に5.3、更には5.0以下であることが望ましい。このような母液41の酸性化は、充填室32から重炭酸塩42のカリウムを分離して奪ったことにより容易に達成され、上記範囲のPH値に母液41が維持された場合には、高圧蒸気滅菌により母液41を加熱処理しても、母液41内のブドウ糖等が変質を起こすおそれが極めて少なくなる。
また母液41には臓器保存剤、及び必要により賦形剤、結合剤、緩衝剤、等張化剤、PH調整剤、防腐剤、溶解剤、粘性剤等のそれ自体公知の添加物を添加することができる。
臓器保存剤としては、抗生物質、生理活性蛋白質(インスリン、抗血小板因子、抗利尿ホルモン等)、糖類(グルコース、マンニトール等)、ビタミン類(ビタミンC、ビタミンE等)、有機酸(乳酸、クエン酸等)、核酸塩基(アデノシン三リン酸等)、降圧剤(カルシウム拮抗剤、アドレナリンβ受容体拮抗剤、アンギオテンシン変換酵素阻害剤等)、抗凝固剤(ヘパリン等)等が既に提案されている。また特開平7−215801号公報に記載されるリン酸ジエステル化合物等の薬物も提案されている。
本実施例の母液41は容器31と共に高圧蒸気滅菌がなされている。
【0051】
重炭酸塩42は容器31の充填室33に充填され、母液充填室32に充填されるべき塩の一部が割り当てられる。本実施例では、充填室33には重炭酸カリウム塩42の顆粒が充填される。
重炭酸塩42は、薬理学的に許容できる量の範囲内であれば良い。特に、臓器保存液中の重炭酸濃度(HCO3 )が、1〜50、特に5〜40、更には10〜30mEq/Lの範囲になることが望ましい。従って、本実施例では、容器本体2に母液が1L収容されることから、重炭酸塩としての炭酸水素カリウムは、0.01〜5.0gの範囲で用いられる。
重炭酸塩42は容器31の充填室33に収容された状態で、充填室33のみがγ線滅菌されている。
【0052】
臓器保存液43を収容した医療用容器31の使用に際しては、容器31の外側からクリックチップ34の折り取りにより、充填室32と充填室33が連通される。そして、図11に示す如く重炭酸塩42を母液41に溶解させ、容器本体2内で無菌的操作により臓器保存液43を調製することができる。その後、排出口37に導管等を取付け、臓器の入った槽に無菌的に充填される。
従って、医療用容器31では、臓器保存液43を長期間の間保存することができるだけでなく、臓器保存液43の無菌充填のみに頼らずに、確実な滅菌を施すことができるので、臓器保存液43の無菌を十分に保証することができる。
尚、上記実施例の臓器保存液としては、肝臓、腎臓、心臓、肺臓等の主要な臓器だけでなく、角膜組織等の組織的な臓器にも使用される。
本発明の各実施例では、隔離開放手段に外側からの開放可能なピールシール部、挟持ピン、及びクリックチップを用いたが、本発明では外側の開放可能な限り、どのような隔離開放手段でも良い。但し、操作性、生産性の点でピールシール部であることが望ましい。
また、本発明の各実施例の重炭酸塩の室に重炭酸塩の粉末、顆粒を用いたが、この他に、懸濁物、打錠剤等であっても良い。また、室には、その安定性が保証されれば、重炭酸塩以外の物を充填しても良い。
【0053】
【発明の効果】
以上説明したように本発明に係る医療用容器及びその製造方法によれば、容器壁は熱可塑性のプラスチック壁からなり、上記容器内は複数の室に分かれ、該室と室との隔離壁の全部又は一部は上記容器外からの隔離開放が可能で該室と室とを連通可能にする隔離開放手段で形成され、上記一の室には電解質液が収容されて蒸気滅菌がなされ、上記他の一の室には充填後に照射滅菌された重炭酸塩が収容されているので、アシドーシス等により腎障害、下痢、嘔吐等の生じることがなく、また投与時のPH値も体液に近い値に維持することができる電解質液或い透析液等の好ましい医療用容器を提供することができる。具体的には糖質等は、医療用容器内で変質又変色するおそれがなく、重炭酸塩も長期保存において安定に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る医療用容器の第一実施例の断面図である。
【図2】第一実施例の医療用容器の製造途中の断面図である。
【図3】第一実施例の医療用容器の製造途中の断面図である。
【図4】第一実施例の医療用容器に用いられる電子線照射装置の概略断面図である。
【図5】第一実施例の医療用容器の使用時の断面図である。
【図6】本発明に係る医療用容器の第二実施例の製造途中の断面図である。
【図7】第二実施例の医療用容器の断面図である。
【図8】第二実施例の医療用容器に用いられる紫外線照射装置の概略断面図である。
【図9】第二実施例の医療用容器の使用時の断面図である。
【図10】本発明に係る医療用容器の第三実施例の断面図である。
【図11】第三実施例のの医療用容器の使用時の断面図である。
【符号の説明】
1、21、31 医療用容器
1A、21A 両端シール部
2 第一室
3 第二室
4 第三室
5、6 ピールシール部
7 排出口
8 充填口
9 切り欠き部
11 第一輸液成分
12 重炭酸塩
13 第二輸液成分
50 電子線照射装置
【産業上の利用分野】
本発明は、電解質液が収容された医療用容器及びその製造方法に関するものであり、より詳細には、末梢静脈或いは中心性静脈などから投与される輸液剤等の体液の投与物、人工透析液等の循環系の透析液、及び臓器等を保存する保存溶液を構成する電解質液が収容された医療用容器及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
人体の血液中或いは組織細胞中には重炭酸が一定の濃度で含まれているにも拘わらず、人体の治療等に使用される輸液剤、人工透析液、及び臓器(組織)保存液には所定の電解質が含有されるものの、重炭酸は全く、或いは殆ど含まれていない。
例えば、人体の血漿中の重炭酸濃度は、通常24mEq/L程度である。輸液により重炭酸を直接体内に投与する場合、また血液透析や腹膜透析により間接的に投与する場合等には、それぞれの溶液の重炭酸濃度を血漿中の濃度に合わせて調合することが望ましい。しかし、輸液剤等はプラスチックの医療用容器内に充填されて、通常高圧蒸気滅菌等により完全に滅菌した状態で病院に提供される。このため、予め重炭酸を容器内の液に調合しておくと、重炭酸は高圧蒸気滅菌時に殆ど炭酸ガスに分解する。また、従来のプラスチックの医療用容器に重炭酸を充填して高圧蒸気滅菌をしなくても、希釈された溶液内では、重炭酸は炭酸ガスに分解して消失する。
このため、輸液剤、透析液等には重炭酸が使用されず、体内でこれに代わるものが添加されている。血漿中等の重炭酸濃度を一定に保つためには、重炭酸に代わるものとしてアセテート又はラクテート等が調合される。
【0003】
例えば、代表的な電解質維持の輸液剤にあっては、Naが20〜50mEq/L、Kが20mEq/L前後、Clが20〜50mEq/L、及びラクテート、又はアセテートが30mEq/L含まれ、グルコース、フルクトース、キシリトース、ソルビトース等が1〜10重量%で含まれる。
アセテート又はラクテートは、体内で重炭酸を造り重炭酸を補う働きをすると共に、グルコース溶液を酸性に維持して容器内の安定性を図っている。このため、現在、輸液にはアセテート又はラクテート等が頻用されている。
また、輸液は従来から非定容性のプラスチック容器に充填され、瓶針等を必要としないクローズドシステムのものが使用されている。そして、このような容器は輸液の充填後、高圧蒸気滅菌処理が一般になされる。しかし、輸液に糖類等が含まれ、且つ輸液のPH値が高いと、その蒸気滅菌時に輸液が変色を起こす場合がある。このため、電解質輸液剤にあっては、できるだけPH値を下げて調整を行っている。
【0004】
また腹膜透析液では、一例として以下の組成及び特性を有している。
・電解質濃度(mEq/L)
Na+ ・・・・130〜150
K+ ・・・・必要により
Ca2+ ・・・・1〜6
Mg2+ ・・・・0〜3
Cl− ・・・・90〜135
ラクテート−・・30〜45
・ブドウ糖(g/dl)・・・1〜8
・浸透圧(mOsm/l)・・300〜680
・pH ・・・・約5.5
アセテート又はラクテートは、体内で重炭酸を造り、透析時に消失する重炭酸を補う働きをする。
【0005】
臓器保存液には、ユーロコリンズ液、ウィスコンシン液等が提案されており、ユーロコリンズ液の調製成分としては以下のものが一例として挙げることができる。
K2HPO4・・・・・・7.40g/L
NaHCO3・・・・・・0.84g/L
KH2PO4・・・・・・2.04g/L
KCl・・・・・・・・1.12g/L
MgSO4・・・・・・・0.48g/L
D50W・・・・・・・・50ml/L
ヘパリン・・・・・・・・5、000単位/L
浸透圧 326mOsm/kg
【0006】
また、臓器保存剤には、抗生物質、生理活性蛋白質(インスリン、抗血小板因子、抗利尿ホルモン等)、糖類(グルコース、マンニトール等)、ビタミン類(ビタミンC、ビタミンE等)、有機酸(乳酸、クエン酸等)、核酸塩基(アデノシン三リン酸等)、降圧剤(カルシウム拮抗剤、アドレナリンβ受容体拮抗剤、アンギオテンシン変換酵素阻害剤等)、抗凝固剤(ヘパリン等)等を既に含ませることが提案されている。また特開平7−215801号公報に記載されるリン酸ジエステル化合物等の薬物も提案されている。
従来また、臓器保存液と容器との関係においては、加熱滅菌や無菌濾過した精製水等に所定の電解質及び保存剤を無菌的に溶解し、これをビニール容器等に無菌的に充填している。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のこのような電解質液に多量のアセテート、クエン酸等の有機酸を用いた場合、アセテート等は直ぐに体内で分解されない患者、例えば肝障害のある患者がいるため、患者の体内はアシドーシスの傾向が見られる。また、上述のように輸液剤等のPH値ができるだけ低くく抑えられると、投与患者には酸過剰投与、腎障害、下痢、嘔吐などを生じることがある。特にPH値が5.0以下では頻繁にこのような症状が見られる。
またこのような電解質液の問題を解消し、できる限り体液成分、或いは組織細胞成分に近づけるため、重炭酸塩を添加しようとすると、上述したように高圧蒸気滅菌時に重炭酸塩が分解し、また保存時においても徐々に炭酸ガスとして喪失する傾向が見られる。
このようなことから、特開平6−105905号公報には重炭酸溶液を室に充填し、かかる室をガスバリア性の包装材で包装して炭酸ガスとして喪失を防止しているものが提案されている。しかしながら、高圧蒸気滅菌処理されている重炭酸溶液が充填されている以上、上記の問題は十分な解決を見ていない。
更に、臓器保存液を収容した従来の医療用容器にあっては、以下の点に問題がある。臓器保存液には、溶液化した場合の不安定な重炭酸及び臓器保存剤があるため、長期間の保存ができない。また、かかるビニール容器に臓器保存液を充填した状態では、重炭酸及び臓器保存剤が容易に変質するため高圧蒸気滅菌ができない。このため、臓器保存液を無菌的にビニール容器に充填させるものの、その無菌保証が十分にできない。
【0008】
従って、本発明の目的は、アシドーシス等により腎障害、下痢、嘔吐等の生じることがなく、また投与時のPH値も体液に近い値に維持することができる電解質液或い透析液等の好ましい医療用容器及びその製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、体内の投与液、循環系での透析液、又は臓器の保存液として用いられる電解質液が収容された医療用容器において、上記容器壁は熱可塑性のプラスチック壁からなり、上記容器内は複数の室に分かれ、該室と室との隔離壁の全部又は一部は上記容器外からの開放が可能で該室と室とを連通可能にする隔離開放手段で形成され、上記一の室には電解質液が収容されて蒸気滅菌がなされ、上記他の一の室には充填後に照射滅菌された重炭酸塩が収容されていることを特徴とする医療用容器を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0010】
本発明に係る医療用容器において、上記照射滅菌がγ線、電子線、又は紫外線の何れかであることを特徴とすることにより、重炭酸塩は簡単に滅菌され、また重炭酸塩が単純な塩構造ゆえに各照射線により変質等を起こす危惧は全くない。また高圧蒸気等に晒されることもないため、蒸気滅菌時に容器壁への水分等の透過がなく化学的分解が殆ど生じない。
本発明に係る医療用容器において、上記容器壁の厚みが1600μm〜10μmの範囲にあり、且つ上記重炭酸塩の収容室内が電子線照射滅菌されていることを特徴とすることにより、電子線照射装置の設備は、1MeV以下の加速電圧でも容器壁を通って室内の重炭酸塩を確実に滅菌し、その装置設備においてもX線等の遮蔽装置を大がかりに設ける必要がない。このため、医療用容器を大量製造するに当たり、コンパクトな製造ラインを組むことができる。
【0011】
本発明に係る医療用容器において、上記容器壁の厚みが100μm〜10μmの範囲にあり、且つ上記重炭酸塩の収容室内が紫外線照射滅菌されていることを特徴とし、特に上記容器壁は、波長250nmにおける紫外線透過率が厚み10μmで60%以上で、その密度が0.95〜0.85g/cm3の範囲にある樹脂壁であることを特徴とすることにより、紫外線装置等の簡単な設備により容器内の重炭酸塩を容易に滅菌することができる。
本発明に係る医療用容器において、上記容器がポリオレフィン系樹脂からなることを特徴とすることにより、医療用容器の樹脂壁は電解質液に影響を与えることが少なく、汎用性があるため経済的である。
本発明に係る医療用容器において、上記隔離開放手段が剥離可能なピールシール部であることを特徴とすることにより、容器の使用者は極めて簡単に室同士を連通させる作業ができ、容器の製造では衛生的なライン処理ができ、大量生産が容易にできる。
【0012】
本発明に係る医療用容器において、上記電解質液の収容室内には該電解質と共に糖質が含まれ、且つ電解質液のPH値が該室内で5.5以下に維持されると共に、上記隔離開放手段の開放後における上記容器内の電解質液のPH値が6.0〜8.0となることを特徴とすることにより、容器内の糖質は高圧蒸気滅菌時に変色或いは変質が防止される。また、患者に使用する場合、PH値の低下により輸液剤等が腹痛等を起こさせるということがない。
本発明に係る医療用容器において、上記重炭酸塩がナトリウム塩又はカリウム塩であることを特徴とすることにより、電解質液で用いられるべきナトリウム又はカリウム成分を重炭酸塩に差し引いて移行させることができるので、使用時まで密封されて保存される電解質液の室中でのPH値を5.5以下に容易にさげることができ、またかかる塩は室と室とを連通したときに容易に電解質液に溶解する。また電解質液側にカルシウム又はマグネシウムイオンが少量含まれていたとしても重炭酸は電解質液全体に溶解していくので沈殿等が生じ難い。
【0013】
本発明に係る医療用容器において、上記室中の重炭酸塩の量は上記容器内での電解質液中の濃度が1〜65mEq/Lとなるように収容されていることを特徴とすることにより、体液及び組織細胞中に適した重炭酸濃度を与え、人体及び各組織への電解質の変動を少なくする。
本発明に係る医療用容器において、上記電解質中のアセテート、又はラクテートの含有量が25〜0mEq/Lに抑えられることを特徴とすることにより、体液中に過剰にラクテート等を存在させないため、アシドーシス及びアルカリローシスの管理が容易になる。
【0014】
本発明は、体内の投与液、循環系での透析液、又は臓器の保存液として用いられる電解質液が収容された医療用容器の製造方法において、熱可塑性のプラスチック壁からなる上記容器内を複数の室に分けると共に、該室と室との隔離壁の全部又は一部を上記容器外からの開放が可能な隔離開放手段で形成し、上記一の室に電解質液を収容して該室を密封した後に蒸気滅菌を行い、次に上記他の一の室に重炭酸塩を充填して密封した後に該室内を照射滅菌することを特徴とする医療用容器の製造方法を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0015】
本発明に係る医療用容器の製造方法において、上記照射滅菌が電子線照射滅菌であることを特徴とし、特に、上記電子線照射滅菌はその加速電圧が1MeV以下のである中低電圧による電子線照射滅菌であることを特徴とすることにより、上記容器の室内中の重炭酸塩を簡単且つ確実にすることができる。また、かかる処理は大量の製造ラインに乗せることも容易にできる。
【0016】
【作用】
上記医療用容器には複数の室が設けられ、一の室には重炭酸塩が収容され、またかかる重炭酸塩は使用時に隔離開放手段の開放により電解質液と混合される。このため、投与や透析等にも用いられる電解質液に重炭酸が含まれるため、これを投与した場合は体内での重炭酸濃度に変動がなく体内でのPH値が維持され、従来のものと相違してアシドーシス等の電解質異常を生じることがない。即ち、重炭酸の添加割合に応じてアセテートやラクテート等の電解質を少なくなくできるため、体内に直接重炭酸が作用し、体内中の重炭酸濃度が一定になる。更に重炭酸の添加により、PH値が6.0〜8.0の範囲に維持することができ、投与におけるPH値低下が引き起こす腹痛や下痢等を防止することができる。
また人工透析液や腹膜透析液にあっては、従来の透析液と相違してアシドーシスやアルカローシス等の電解質異常を生じることがない。そして重炭酸の添加により、透析液のpHが6.5〜7.5の好適な範囲に維持することができ、透析における腹痛やPH値の異常による免疫力の低下を防止して感染症を少なくする。
【0017】
上記重炭酸塩は、懸濁、粉体、顆粒、或いは打錠、特に粉体で容器内の室に長期間存在させているので、従来の重炭酸溶液のように容易に分解することはない。また、上記重炭酸塩は照射滅菌されるため、従来の滅菌方法である高圧蒸気滅菌時に容器壁を介して多量の水分を吸収して、分解を起こしてその組成を変えてしまうおそれがない。特に、照射滅菌が低中電圧装置による電子線滅菌であれば、設備が経済的で大量生産ライン化が極めて簡単である。
更に、重炭酸塩は、容器内の主要な電解質液の室から分かれて他の室に充填され、また主要電解質液中の電解質の一部を、重炭酸のアルカリ性塩剤として割り当て、重炭酸は炭酸ガスとして分解するのを防止した状態で充填される。そして重炭酸塩として一部ナトリウム塩又はカリウム塩を重炭酸の充填室側に配合するため、糖質等を含む電解質液の室内のPH値を低くして、蒸気滅菌処理時の糖質を安定に維持することができる。また重炭酸と一度反応すると容易に溶解しないカルシウム塩も、酸性状態に維持され、混合時も重炭酸が徐々に溶解するため沈殿等は生じ難い。
従って、室と室とが外部から開放可能な隔離開放手段で仕切られたのと相まって、使用時に重炭酸は無菌状態で、主要な電解質液と混合され、医療用容器は、好適な輸液、透析液、臓器保存液を提供する。
【0018】
【実施例】
以下、本発明に係る電解質液が収容された医療用容器及びその製造方法の好ましい実施例を添付図面を参照しながら詳述する。
図1は本発明に係る医療用容器の第一実施例の断面図、図2は第一実施例の医療用容器の製造途中の断面図、図3は第一実施例の医療用容器の製造途中の断面図、図4は第一実施例の医療用容器に用いられる電子線照射装置の概略断面図、図5は第一実施例の医療用容器の使用時の断面図、図6は本発明に係る医療用容器の第二実施例の製造途中の断面図、図7は第二実施例の医療用容器の断面図、図8は第二実施例の医療用容器に用いられる紫外線照射装置の概略断面図、図9は第二実施例の医療用容器の使用時の断面図、図10は本発明に係る医療用容器の第三実施例の半断面図、図11は第三実施例のの医療用容器の使用時の半断面図である。
【0019】
本実施例に係る医療用容器1は体内の投与液として用いられる電解質液が収容された医療用容器、特に高張糖質液からなり、中心静脈経路より投与される高カロリー輸液剤の医療用容器である。かかる医療用容器内は3つの室2、3、4に分かれ、室2と室3と及び室3と室4との隔離壁の全部は上記容器外からの隔離開放が可能で各該室を連通可能にするピールシール部5、6で形成され、第一室2には電解質液を含む第一輸液成分11が収容されて蒸気滅菌がなされ、第二室3には充填後に照射滅菌された重炭酸塩12が収容されている。
【0020】
本実施例の輸液を更に詳しく説明すると、本実施例に係る医療用容器1は熱可塑性の樹脂壁からなり、容器1は筒状の樹脂シートの両端に熱溶着シール部1A、1Bが形成されて容器本体が形成されている。また、容器1の中間部には二条の外側からの剥離が可能なピールシール部5、6が形成され、容器1内はピールシール部5、6により、第一室2、第二室3、及び第三室4が形成されている。
熱溶着シール部1A、1Bには充填口兼排出口7及び充填口8が設けられ、第一室2には第一輸液剤成分11が高圧蒸気滅菌されて充填され、第三室4には第二輸液成分13が高圧蒸気滅菌されて充填されてる。また、第二室3の側部には薬剤充填用の切り欠き部9が形成され、第二室3には重炭酸塩12が照射滅菌されて充填されている。
【0021】
本実施例の医療用容器1に用いられる熱可塑性樹脂シートは、直鎖状低密度ポリエチレンからなり、筒状の樹脂シートはインフレーション成形により形成されたものである。本発明においては、直鎖状低密度ポリエチレンに限る必要はなく、熱可塑性樹脂であれば、それ自体公知の多様な樹脂を用いることができる。例えば、低密度ポリエチレン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、軟質ポリエステル樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体等の可撓性に富んだ材料を用いることができる。しかしながら、輸液成分11、12、13等に悪影響の少ない樹脂としては、本実施例のようなオレフィン系樹脂を用いることが望ましい。
また、本発明において医療用容器の樹脂シート壁は、異なる樹脂の多層ラミネートであっても良い。この場合、特に、外層或いは中間層等に炭酸ガスの難透過性の高い樹脂を用いることが望ましい。このような炭酸ガスのバリア性の高い樹脂層を設けた場合、容器1内の重炭酸塩12が若干分解し、炭酸ガスを放出したとしても、容器1の充填室4からの炭酸ガス放出が極めて困難となり、容器の長期間の安定保存が更に保証される。このような樹脂としては、高密度ポリエチレン、塩化ビニリデン、ポリエステル、ナイロン、ビニロン等である。
また本発明において医療用容器は、インフレション成形物である必要はなく、押出し成形物、真空成形物、射出成形物、ブロー成形物等でも良い。
【0022】
本実施例の医療用容器1は長さが500mmで幅が200mmに形成されており、また容器壁の厚みは、200μmに形成される。本発明において、医療用容器1の容器壁の厚みは、1600〜10μm、特に800〜30μmであることが望ましい。容器壁の厚みが上記範囲を上回ると、後述する簡易設備の電子線照射装置による重炭酸塩12の照射滅菌が困難となり、大量生産ラインに乗せ難くなる。また上記範囲を下回ると、容器壁の破断する機会が多くなる不具合がある。
【0023】
図5に示す如く輸液成分11、12、及び13が混合すると高カロリー輸液剤14となる。
高カロリー輸液剤14は中心静脈から投与され、糖質が10乃至50重量%、特に15乃至30重量%の範囲で含まれる高カロリー輸液剤である。かかる輸液剤は、腸管などの大量切除、小腸病変、重症下痢症などの患者に栄養補給を目的として行われる。
糖質は、主にブドウ糖が用いられるが、ブドウ糖の他には、フルクトース、キシリトース、ソルビトース等も用いられる。
【0024】
高カロリー輸液剤14には、糖質の他に適宜電解質が含有され、電解質としては、Na(ナトリウム)、K(カリウム)、Cl(クロール)、Ca(カルシウム)、Mg(マグネシウム)等が挙げられる。また、必要により、Zn(亜鉛)、P(リン)、Fe(鉄)、Cu(銅)等の微量金属類、及びクエン酸、グルコン酸、酢酸(アセテート類)、乳酸(ラクテート類)等の有機酸も添加される。
これらの電解質及び有機酸は、塩酸塩、乳酸塩、酢酸塩、硫酸塩、リン酸塩、グルコン酸塩、グリセロリン酸塩として用いられ、Caにあっては、グリセロリン酸塩として用いられる。また、沈殿などを生じないようにP供給を十分にするために、多価アルコール又は糖のリン酸エステルなどが用いられる。
【0025】
Naは0〜160、特に20〜80mEq/Lの範囲濃度で輸液剤に用いられる。Kは0〜80、特に10〜70mEq/Lの範囲濃度で輸液剤に用いられる。Clは0〜160、特に20〜80mEq/Lの範囲濃度で輸液剤に用いられる。Caは0〜20、特に4〜15mEq/Lの範囲濃度で輸液剤に用いられる。Mgは0〜25、特に6〜20mEq/Lの範囲濃度で輸液剤に用いられる。Pは0〜500、特に120〜350mg/Lの範囲濃度で輸液剤に用いられる。Znは0〜40、特に5〜30μmolの範囲濃度で輸液剤に用いられる。
【0026】
本実施例の高カロリー輸液剤14には、アセテート又はラクテート等の電解質と共に、又はその替わりに重炭酸が1〜65mEq/Lの範囲濃度で含有される。重炭酸は、血漿中の濃度付近が好ましく、特に、5〜50、更には15〜30mEq/Lの範囲で含有される。重炭酸が上記範囲を上回ると、投与後の患者にアルカリローシスが生じるおそれがあり、また上記範囲を下回ると、肝障害者等ではアセテートなどの分解による重炭酸が血中に生じないため、アシドーシスなどを生じる。また、重炭酸を添加したことにより、アセテート又はラクテートの濃度は、25mEq/L以下、特に重症肝障害者には、15〜0mEq/Lの範囲で含有されることが望ましい。
【0027】
また、高カロリー輸液剤14には、カロリー補給も必要とするため、糖質以外に、三大栄養素であるアミノ酸製剤及び脂肪乳剤を配合することが望ましく、本実施例では、糖質と高圧蒸気滅菌時にメイラード反応を生じるアミノ酸製剤が輸液剤14に含まれている。
【0028】
第一輸液成分11は上記糖質と電解質との溶液からなる。但し、重炭酸塩12は第二室3に充填されるため、輸液成分11から重炭酸が除かれる。また重炭酸塩12はアルカリ塩であるため、かかるアルカリ塩は第一又は第二輸液成分11、13に含まれるべき塩の一部が割り当てられる。塩としては重炭酸塩12が輸液成分11に混合されたときに容易に溶解される塩が好ましく、このような塩としてはナトリウム塩又はカリウム塩が望ましい。このため、本実施例では、重炭酸塩12で用いた分のナトリウム或いはカリウムが輸液成分11から計算量に従って差し引かれる。
第一室2内の輸液成分11のPH値は、5.5以下に下げられ、特に本実施例ではPH値が5.0〜3.0の範囲に調製される。輸液成分11のPH値が上記範囲を上回れば、その高圧蒸気滅菌処理時に糖質が変色又は変質する場合がある。また高カロリー輸液剤14全体のPH値は6.0〜8.0、特に6.5〜7.5の範囲にあることが望ましい。輸液剤14のPH値が上記範囲を下回ると、患者に下痢や腹痛等が生じることが多くなり、上記範囲を上回ればアルカリローシスを起こすおそれがある。従って、輸液成分11のPH値が3.0を下回れば、輸液成分11と重炭酸塩12とを混合したときでも高カロリー輸液剤14全体のPHが低くなって、患者に悪影響を与えるおそれがある。
【0029】
重炭酸塩12は本実施例では重炭酸ナトリウムの粉末である。本発明では、重炭酸塩12は粉末、顆粒、打錠又は懸濁物でもよいが、その安定性から粉末等の固形物であることが望ましい。また重炭酸塩はナトリウム以外のものでも良いが、特にナトリウムとカリウムが望ましい。これらは輸液成分11、13に容易に溶解し、電解質成分として十分に添加されうるものである。また第二室3には重炭酸塩12の他に炭酸塩、水酸化塩等を適宜添加しても良い。
本実施例では、24mEq/Lの重炭酸ナトリウムが用いられている。従って、容器1に液が1000mL収納されることから、重炭酸塩13としての炭酸水素ナトリウムは、2.02gの範囲で用いられる。
重炭酸塩12が充填された第二室3の厚みは、容器壁の厚みを含めて、3200μm以下、特に1600μmであることが望ましい。第二室3を両面から照射滅菌する場合、上記範囲内にあれば、後述する簡易な電子線照射滅菌装置により簡単にすることができる。
【0030】
第二輸液成分13はアミノ酸製剤である。アミノ酸製剤としては、必須アミノ酸(E)と非必須アミノ酸(N)とが配合され、その配合比はほぼ1程度に維持される。またアミノ酸投与は十分量の糖質と併用投与することが必要であり、アミノ酸中の窒素1gに対する投与カロリー量の割合は150〜200を目標としている。また、肝性昏睡に陥った患者には分岐鎖アミノ酸製剤が投与される。アミノ酸製剤は、輸液剤中に0.5〜15、特に1〜10重量%で含有することが望ましい。
アミノ酸は、グリシン、L−アラニン、L−プロリン、L−アスパラギン酸、L−セリン、L−チロシン、L−グルタミン酸、L−システイン、L−ロイシン、L−イソロイシン、L−バリン、L−リジン、L−メチオニン、L−フェニルアラニン、L−トレオニン、L−トリプトファン、L−アルギニン、L−ヒスチジン等がある。アミノ酸は、遊離アミノ酸だけでなく、その無機塩類、有機塩類、生体内で加水分解可能なエステル、2以上のペプチド等のようにダイマーとして使用される場合もある。
【0031】
第一輸液成分11及び第二輸液成分13は第一室2及び第三室4内で高圧蒸気滅菌処理されている。高圧蒸気滅菌処理は日本薬局方の蒸気滅菌の基準に基づいて行われ、本実施例では100〜130℃の温度でオートクレーブ等で行われる。尚、本発明ではそれ自体公知の蒸気滅菌を採用することができる。
【0032】
重炭酸塩12は第二室3内で照射滅菌されている。本実施例では第二室3内の照射滅菌は電子線照射滅菌によりなされている。本発明の照射滅菌処理は、γ線、電子線、及び紫外線による照射滅菌処理でも良い。しかし、滅菌の確実性とその経済性及び大量生産適応性の点から以下の電子線照射滅菌が望ましい。
【0033】
照射滅菌を確実にするには電子線の容器壁の透過性が問題となる。電子線の透過性は、主に加速電圧により決定され、高エネルギー型では最高13000g/m2であり、これは、水(比重1g/m2)の厚みで13000μmである。しかし、加速電圧装置が大型化するとX線の遮蔽設備が大がかりになり、また樹脂素材を変質させるおそれがある。このため、中低エネルギー型の1MeV以下、特に低エネルギー型の500KV以下の加速電圧装置が望ましく、かかる装置では中エネルギー型で約1500g/m2 、低エネルギー型で約800g/m2が限界であるため、電子線透過の厚みは樹脂素材で1600μmが最適な限度とされる。従って、上述したように容器1の壁の厚み及び第二室3の厚みは上記範囲内であることが望ましい。
電子線滅菌はその加速電圧が1MeV未満、特に低エネルギー型の500KV〜50KVのものであれば、電子線の所定の浸透性が得られる一方、X線等の放出がほとんどないため、その遮蔽設備を必要とせず、生産ラインにコンパクトに配することができる。即ち、加速電圧500KVによる電子線の浸透性は約8000g/m2以下で、特に800μm以下の樹脂肉薄部での浸透性が十分に得られる。
【0034】
図4に示す如く電子線照射装置50は、ベルトコンベア51の上方に設けられ、機枠52と、機枠52に形成される窓枠53、窓枠53に取り付けられた窓箔54、窓枠53の上方を覆っている加速管55、及び加速管55内の真空チャンバ内に設けられた電子線発生部56からなる。また電子線発生部56はグリッド57、ガンフレーム58、及びフィラメント59とからなる。
フィラメント59は通電され、加熱させられて熱電子を発生する。熱電子は所定の電圧が印加されたフィラメント59とグリッド57との間で加速され、窓箔54からコンベア51上に照射される。尚、機枠52は電子線照射により二次的に発生するX線等の外部漏出を防止するため鉛遮蔽がされている。
従って、コンベア51の速度とフィラメント59の通電量により、照射電子線量が調整され、加速電圧により、電子線の浸透性を調整することができる。
【0035】
図4において、医療用容器1の第二室3のみが電子線照射装置50により照射滅菌されている。また電子線照射が容器1の両面からなされている。
微生物の殺菌においては、特開平7−16286号公報にも記載されるように、放射線菌で指標となるB.pumilus(spores)E−601で約0.2Mrad(2kGy)のD値を有する。1cm2当たり、通常100オーダーの菌が付着しているが、安全性を十分考慮すれば、102オーダーまでの付着があるとの仮定も成り立つ。また滅菌保証レベル(SAL)は生存率10−6%である。従って、本実施例での電子線照射装置50は第二室3内が6×0.2Mrad以上、好ましく8×0.2Mrad以上で滅菌されるように通電量とコンベア速度が調整されて滅菌処理がなされている。
【0036】
次に、医療用容器1の製造方法について説明する。
図2に示す如く、医療用容器1はインフレション成形した筒状の直鎖状低密度ポリエチレンシートが所定の大きさに裁断して形成される。裁断したシートは熱溶着シールにより両端部が固着シールされ、このときに排出口7及び充填口8が取付られる。次に、医療用容器2の所定の位置に二条のピールシール部5、6が形成され、容器内に第一室2、第二室3及び第三室4が分割される。
具体的には、直鎖状低密度ポリエチレン(密度:0.916g/cm3、MI:2)のシートは、その肉厚200μm、長さ500mm、幅200mmの筒状シートに裁断される。次に容器の形態とするため、インパルスシーラー(富士インパルス株式会社製オートシーラFA−300−5W)で両端を熱溶着シールする。シール条件はシール時間1.5秒間、冷却時間5秒間である。ピールシール部5、6は、剥離可能となるように、120〜140℃でプリヒートした挟持体で長時間挟んで形成される。尚、本発明では、かかる方法以外のそれ自体公知のピールシール部の形成方法を用いても良い。
次に、第一室2には排出口7から第一輸液成分11が充填され、排出口7はゴム栓7Aで密栓される。第三室4には充填口8から第二輸液成分13が充填され、充填口8はゴム栓8Aで密栓される。かかる状態で、上述の高圧蒸気滅菌が医療用容器1になされ、第一輸液成分11及び第二輸液成分13が滅菌される。
図3に示す如く、医療用容器1の第二室3には切り欠き部9が形成され、かかる切り欠き部9の開口から第二室3に重炭酸塩12が充填される。そして、切り欠き部9の開口部が熱溶着シールされた後、医療用容器1は電子線照射装置50へと搬送され、第二室3の両面が照射滅菌される。
【0037】
このように構成された本実施例の医療用容器1では、重炭酸塩12は容器外へと消失するおそれが少ない。即ち、重炭酸塩12は高圧蒸気滅菌等に晒されないため、炭酸ガスに分解し容器壁を通って外に出るおそれが少ない。また、重炭酸塩12は粉末或いは懸濁液等の固形であるため、炭酸ガスなどに分解し難く、特に、粉末、顆粒物であれば殆ど第二室3内で分解することがない。
また、重炭酸塩12は照射時に変質等を生じるおそれのない物質であるため、照射滅菌が問題なく容器壁越しになされ、確実な滅菌がなされている。
医療用容器1の患者への適用では、図5に示す如く、ピールシール部5及び6が容器1の外側から開放され、全ての室2、3、4が連通される。重炭酸塩12は先ず第二輸液成分に溶解され、次にカルシウム等が存在する第一輸液成分と混合され、高カロリー輸液剤14が調製される。この場合、重炭酸塩12はカルシウム等を含む電解質溶液に徐々に溶解混合されるため、炭酸カルシウム等の沈殿が生じにくい。但し、かかる高カロリー輸液剤14においてはカルシウムを含まないことが望ましい。尚、輸液具の連通針15が排出口7に刺通され、高カロリー輸液が患者に開始される。
【0038】
このように重炭酸塩12を含む高カロリー輸液剤にあっては、アセテート又はラクテート等の添加を極力抑えているため、投与患者のアシドーシスや酸過剰投与の電解質異常を防止することができる。また高カロリー輸液剤のPH値が6.0〜8.0、特に6.5〜7.5までの適値に調製されるため、投与患者に腹痛や嘔吐等の症状を起こさせることがない。
上記実施例では、医療用容器の充填物を高カロリー輸液剤14とした。しかし、本発明では、電解質輸液剤が生理食塩水、生理食塩水−糖液、リンゲル液、リンゲル液−糖液、ハルトマン液、ハルトマン液−糖液等の開始液、細部外液補充液、胃腸液補充液、電解質維持液等であってもより、このため、電解質の含有量は、血漿の浸透圧を多少上回って使用しても良く、Naを0〜160mEq/Lの間で使用しても良い。
【0039】
次に、本発明に係る医療用容器の第二実施例を図6〜図9を参照しながら説明する。
図6〜図9に示す如く、本実施例の医療用容器21は循環系での透析液、即ち糖を含んだ電解質溶液からなり、腹腔内に注入される腹膜透析液の医療用容器である。そして、医療用容器21は、2つの室22、23に分かれ、室22と室23との隔離壁の一部は上記容器外からの隔離開放が可能で各室22、23を連通可能にする挟持ピン24で形成され、第一室22には電解質液を含む腹膜透析用の母液17が収容されて蒸気滅菌がなされ、第二室23には充填後に照射滅菌された重炭酸塩18が収容されている。
【0040】
本実施例に係る腹膜透析液の医療用容器21を更に詳しく説明すると、容器21は、急性或いは慢性腹膜透析用の透析液を含む腹膜透析液用容器である。本実施例において具体的には、容器21は、高密度ポリエチレンを押出し成形して作製したシートを延伸し、所定の大きさに裁断して形成されたものである。裁断したシートは2枚に重ねられ、2枚のシートは熱溶着により所定の四方が完全に固着シールされ、周縁シール部21A及び隔離シール部21Bは非剥離状態になっている。
本実施例の医療用容器21に用いられる熱可塑性樹脂シートは、高密度ポリエチレンであるが、本発明において、第一実施例と同様に、その他の公知の樹脂シートの使用が可能であり、また多層のラミネートシートであっても良く、成型物も押出し成形物に限ることはない。
但し、後述するように容器1の第二室23内が紫外線照射滅菌されることより、樹脂シートは、波長250nmにおける紫外線透過率が厚み10μmで60%以上、特に70%以上で、その密度が0.95〜0.85g/cm3の範囲にある特性を有することが望ましい。上記範囲を下回る紫外線透過率であれば、第二室23内が十分に紫外線照射されない。また樹脂が上記密度の範囲内あれば、紫外線透過率の極めて高い樹脂シートが得易い。
【0041】
本実施例の医療用容器21は長さが500mmで幅が300mmに形成されており、また容器壁の厚みは、50μmに形成される。本発明において、医療用容器1の容器壁の厚みは、100〜10μm、特に60〜30μmであることが望ましい。容器壁の厚みが上記範囲を上回ると、後述する紫外線照射装置による重炭酸塩18の照射滅菌が困難となり、大量生産ラインに乗せ難くなる。また上記範囲を下回ると、容器壁の破断する機会が多くなる不具合がある。
容器1の隔離シール部21Bには取付孔27、27が設けられ、取付孔27、27には隔離用の挟持ピン24が取り付けられている。挟持ピン24は2本の挟持バー24A、24Bと蝶番24Cからなり、挟持バー24A、24Bは互いに蝶番24Cで着脱可能になっている。従って、挟持ピン24は取付孔27、27の間に取り付けられると、第一室22と第二室23とが完全に隔離され、挟持ピン24が取り外されると、第一室22と第二室23とは連通する。
【0042】
母液17と重炭酸塩18とが混合した腹膜透析液19は、電解質に重炭酸を1〜40mEq/Lの濃度範囲で含み、且つpHが5.7〜7.5の範囲である。
また、重炭酸塩18はナトリウム塩であり、糖質を含んだ母液17に配合される電解質は、Na+ を90〜150mEq/Lの濃度範囲で、Ca2+ を0〜6mEq/Lの濃度範囲で、Mg2+ を0〜3mEq/Lの濃度範囲で、Cl− を90〜135mEq/Lの濃度範囲で、アセテート又はラクテート−を0〜40Eq/Lの濃度範囲で含み、液浸透圧が300〜680mOsm/lである。
【0043】
母液17は第一室22内で電解質を含みPH値が5.5以下に維持され、母液17は第一室22内で高圧蒸気滅菌処理されている。高圧蒸気滅菌処理は日本薬局方の蒸気滅菌の基準に基づいて行われ、本実施例では100〜130℃の温度でオートクレーブ等で行われる。尚、本発明ではそれ自体公知の蒸気滅菌を採用することができる。
本実施例では、24mEq/Lの重炭酸ナトリウムが用いられている。従って、容器21に液が2000mL収納されることから、重炭酸塩18は、4.04gの範囲で用いられる。
重炭酸塩18が充填された第二室23の厚みは、容器壁の厚みを含めて、200μm以下、特に120μmであることが望ましい。第二室23を両面から照射滅菌する場合、上記範囲内にあれば、簡易な紫外線照射滅菌装置により簡単にすることができる。
重炭酸塩18は第二室23内で照射滅菌されている。本実施例では第二室23内の照射滅菌は紫外線照射滅菌によりなされている。本発明の照射滅菌処理は、γ線、電子線、及び紫外線による照射滅菌処理でも良い。しかし、極めて簡単な設備により滅菌できる点、及びその経済性及び大量生産適応性の点から以下の紫外線照射滅菌も望ましい。
【0044】
図8に示す如く、紫外線照射装置61は、ベルトコンベア63の上方に設けられ、高出力紫外線ランプ62が配される。高出力紫外線ランプ62は、低圧水銀ランプであり、波長250〜260nm付近の紫外線強度の高いものが用いられる。高出力紫外線ランプ62は照射部の窓面で100mWcm2以上であることが望ましく、このため、装置的にコンパクトなものとするため、紫外線ランプ62は200w〜1kwの範囲のものが望ましい。また照射部の窓面からベルトコンベアまでの距離Bは、25mm以下、特に10mm以下である。距離Bが25mm以下にあれば、窓面の照射率の70%程度の確保がされる。
医療用容器21は第二室23の部分を除いて紫外線遮蔽カバー等で遮蔽された状態で紫外線照射装置61のコンベア63に搬送され、また、紫外線照射が容器21の両面からなされるように、紫外線照射装置61は図示しないが後段に更に1台設けられ、容器21はコンベア63上で180度反転されて処理されている。
微生物の殺菌において、紫外線に対する抵抗力のあるB.subtilis(spores)を99.9%殺菌するには、ほぼ33.3mW・sec/cm2の照射線量が必要とされる。10−3オーダーまでの付着を避けた後、滅菌保証レベル(SAL)である生存率10−6%が保証される。従って、本実施例での紫外線照射装置61で30秒以内に滅菌するには、第二室23内に少なくとも1.11mW・sec/cm2以上の紫外線量が到達するように高出力紫外線照射装置61が調整されて医療用容器21は処理されている。
【0045】
次に、医療用容器21の製造方法について説明する。
図6に示す如く、医療用容器21は押出し成形した高密度ポリエチレンシートが所定の大きさに裁断して形成される。裁断したシートは熱溶着シールにより周縁が固着シールされ、このときに排出ポート29が取付られる。次に、医療用容器21の所定の位置に隔離シール部21Bが形成され、隔離シール部21Bに取付孔27が形成される。取付孔27に挟持ピン24が取付られ、容器21内に第一室22、第二室23が分割される。本実施例において、高密度ポリエチレンのシートは、その肉厚50μm、長さ500mm、幅300mmのシートに裁断される。次に容器の形態とするため、インパルスシーラー(富士インパルス株式会社製オートシーラFA−300−5W)で重ねたシートの周縁を熱溶着シールする。シール条件はシール時間1.5秒間、冷却時間5秒間である。
次に、第一室22には排出ポート29から母液17が充填され、排出ポート29は密栓される。かかる状態で、上述の高圧蒸気滅菌が医療用容器1なされ、母液17が滅菌される。
図6に示す如く、医療用容器21の第二室23の上方は開放され、かかる開放開口から第二室23に重炭酸塩18が充填される。そして、第二室23の開口部が熱溶着シールされた後、医療用容器21は紫外線照射装置60へと搬送され、第二室23の両面が照射滅菌される。
【0046】
このように構成された本実施例の腹膜透析液の医療用容器21では、重炭酸塩18は第一実施例と同様に容器外へと消失するおそれが少ない。また、重炭酸塩12は紫外線照射時に変質等を生じるおそれのない物質であるため、紫外線照射滅菌が問題なく容器壁越しになされ、確実な滅菌がなされている。
腹膜透析液の医療用容器21の使用に際しては、図9に示す如く容器21の外側から挟持ピン24が取り外され、第一室22と第二室23とが連通される。そして、母液17と重炭酸塩18とが混合され、容器21内で腹膜用透析液19ができる。母液17と混合したとき、重炭酸塩18は母液17のPH値を上昇させ、結局、透析液19のPH調整の役割も果たす。従って、容器21内に、無菌的にPH調整された腹膜透析液が家庭内でも提供されることとなる。
患者に適用する場合は、容器21の排出ポート7にカテーテル等の連通針が刺通され、カテーテルは患者の腹腔内に接続される。そして、容器21内の透析液19が腹腔内に流入して透析が行われる。
この場合、透析液19中の重炭酸の濃度が、患者側の体液中の濃度と変わりがないため、体液から重炭酸が透析液中に流出して、アシドーシスを起こすことがない。また、重炭酸の濃度を調整することにより、アルカローシス等も防止し、電解質異常を起こすことがない。
上記実施例では、医療用容器21の充填物を腹膜用透析液19とした。しかし、本発明では、かかる透析液に限る必要はなく、人工腎臓用環流液、人工腎臓用透析液、人工腎臓補充液等にも有用に適用することができる。
【0047】
次に、本発明に係る医療用容器の第三実施例を図10を参照しながら説明する。
図10に示す如く、本実施例の医療用容器31は、臓器移植の際に臓器が浸される臓器保存液を収容した医療用容器である。そして、医療用容器31は、2つの室32、33に分かれ、室32と室33との隔離壁の一部は上記容器外からの隔離開放が可能で各室32、33を連通可能にするクリックチップ34で形成され、第一室32には電解質液を含む腹膜透析用の母液41が収容されて蒸気滅菌がなされ、第二室33には充填後にγ線照射滅菌された重炭酸塩42が収容されている。
【0048】
本実施例に係る腹膜透析液の医療用容器31を更に詳しく説明すると、容器31は、臓器保存液を収容した医療用容器である。本実施例において具体的には、容器31は、直鎖状低密度ポリエチレンを押出し成形して作製したシートを延伸し、所定の大きさに裁断して形成されたものである。裁断したシートは2枚に重ねられ、2枚のシートは熱溶着により所定の四方が完全に固着シールされ、周縁シール部31A及び隔離シール部31Bは非剥離状態になっている。
本実施例の医療用容器31は長さが500mmで幅が250mmに形成されており、また容器壁の厚みは、300μmに形成されている。
隔離シール部1Bの形成時にクリックチップ34が2枚のシート間に液密に取り付けられ、通常、クリックチップ34は折り取り破壊されない限り、室32と室33との間を不連通としている。即ち、クリックチップ34は樹脂成形物から形成され、一端が閉止した管状に形成される。そして、クリックチップ34はその閉止端の側面の切れ込み34Aでその閉止端が折り取られることにより、完全な両端開放型の管となる。周縁シール部31Aの形成時に排出口35が取付られる。排出口35には蓋体36が取付られ、蓋体36は止め材37を介して液密に排出口35を封止している。
【0049】
本実施例における母液41と重炭酸塩42とが混合した臓器保存液43は、ユーロコリンズ液を基本としており、重炭酸塩42と母液41とが各室32、33に分けて収容される。
重炭酸塩42、及び母液41を混合したときの臓器保存液43は、その浸透圧が250〜400mOsm、好ましくは280〜350mOsmの範囲である。また臓器保存液のPHは、3〜10、特に4〜9に調整されている。
【0050】
母液41は、容器31の大部分をしめる母液充填室32に充填され、重炭酸塩42が母液充填室32から分離して重炭酸塩室33に充填される関係から、その重炭酸のカリウム塩の理論量を差し引いた組成液として充填される。また、母液41には、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩等が薬理学的に許容される範囲内で用いられる。また、母液充填室32に充填される母液41にグルコース等の糖類が含まれる場合には、そのpHが5.5以下であることが望ましく、特に5.3、更には5.0以下であることが望ましい。このような母液41の酸性化は、充填室32から重炭酸塩42のカリウムを分離して奪ったことにより容易に達成され、上記範囲のPH値に母液41が維持された場合には、高圧蒸気滅菌により母液41を加熱処理しても、母液41内のブドウ糖等が変質を起こすおそれが極めて少なくなる。
また母液41には臓器保存剤、及び必要により賦形剤、結合剤、緩衝剤、等張化剤、PH調整剤、防腐剤、溶解剤、粘性剤等のそれ自体公知の添加物を添加することができる。
臓器保存剤としては、抗生物質、生理活性蛋白質(インスリン、抗血小板因子、抗利尿ホルモン等)、糖類(グルコース、マンニトール等)、ビタミン類(ビタミンC、ビタミンE等)、有機酸(乳酸、クエン酸等)、核酸塩基(アデノシン三リン酸等)、降圧剤(カルシウム拮抗剤、アドレナリンβ受容体拮抗剤、アンギオテンシン変換酵素阻害剤等)、抗凝固剤(ヘパリン等)等が既に提案されている。また特開平7−215801号公報に記載されるリン酸ジエステル化合物等の薬物も提案されている。
本実施例の母液41は容器31と共に高圧蒸気滅菌がなされている。
【0051】
重炭酸塩42は容器31の充填室33に充填され、母液充填室32に充填されるべき塩の一部が割り当てられる。本実施例では、充填室33には重炭酸カリウム塩42の顆粒が充填される。
重炭酸塩42は、薬理学的に許容できる量の範囲内であれば良い。特に、臓器保存液中の重炭酸濃度(HCO3 )が、1〜50、特に5〜40、更には10〜30mEq/Lの範囲になることが望ましい。従って、本実施例では、容器本体2に母液が1L収容されることから、重炭酸塩としての炭酸水素カリウムは、0.01〜5.0gの範囲で用いられる。
重炭酸塩42は容器31の充填室33に収容された状態で、充填室33のみがγ線滅菌されている。
【0052】
臓器保存液43を収容した医療用容器31の使用に際しては、容器31の外側からクリックチップ34の折り取りにより、充填室32と充填室33が連通される。そして、図11に示す如く重炭酸塩42を母液41に溶解させ、容器本体2内で無菌的操作により臓器保存液43を調製することができる。その後、排出口37に導管等を取付け、臓器の入った槽に無菌的に充填される。
従って、医療用容器31では、臓器保存液43を長期間の間保存することができるだけでなく、臓器保存液43の無菌充填のみに頼らずに、確実な滅菌を施すことができるので、臓器保存液43の無菌を十分に保証することができる。
尚、上記実施例の臓器保存液としては、肝臓、腎臓、心臓、肺臓等の主要な臓器だけでなく、角膜組織等の組織的な臓器にも使用される。
本発明の各実施例では、隔離開放手段に外側からの開放可能なピールシール部、挟持ピン、及びクリックチップを用いたが、本発明では外側の開放可能な限り、どのような隔離開放手段でも良い。但し、操作性、生産性の点でピールシール部であることが望ましい。
また、本発明の各実施例の重炭酸塩の室に重炭酸塩の粉末、顆粒を用いたが、この他に、懸濁物、打錠剤等であっても良い。また、室には、その安定性が保証されれば、重炭酸塩以外の物を充填しても良い。
【0053】
【発明の効果】
以上説明したように本発明に係る医療用容器及びその製造方法によれば、容器壁は熱可塑性のプラスチック壁からなり、上記容器内は複数の室に分かれ、該室と室との隔離壁の全部又は一部は上記容器外からの隔離開放が可能で該室と室とを連通可能にする隔離開放手段で形成され、上記一の室には電解質液が収容されて蒸気滅菌がなされ、上記他の一の室には充填後に照射滅菌された重炭酸塩が収容されているので、アシドーシス等により腎障害、下痢、嘔吐等の生じることがなく、また投与時のPH値も体液に近い値に維持することができる電解質液或い透析液等の好ましい医療用容器を提供することができる。具体的には糖質等は、医療用容器内で変質又変色するおそれがなく、重炭酸塩も長期保存において安定に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る医療用容器の第一実施例の断面図である。
【図2】第一実施例の医療用容器の製造途中の断面図である。
【図3】第一実施例の医療用容器の製造途中の断面図である。
【図4】第一実施例の医療用容器に用いられる電子線照射装置の概略断面図である。
【図5】第一実施例の医療用容器の使用時の断面図である。
【図6】本発明に係る医療用容器の第二実施例の製造途中の断面図である。
【図7】第二実施例の医療用容器の断面図である。
【図8】第二実施例の医療用容器に用いられる紫外線照射装置の概略断面図である。
【図9】第二実施例の医療用容器の使用時の断面図である。
【図10】本発明に係る医療用容器の第三実施例の断面図である。
【図11】第三実施例のの医療用容器の使用時の断面図である。
【符号の説明】
1、21、31 医療用容器
1A、21A 両端シール部
2 第一室
3 第二室
4 第三室
5、6 ピールシール部
7 排出口
8 充填口
9 切り欠き部
11 第一輸液成分
12 重炭酸塩
13 第二輸液成分
50 電子線照射装置
Claims (14)
- 体内の投与液、循環系での透析液、又は臓器の保存液として用いられる電解質液が収容された医療用容器において、
上記容器壁は熱可塑性のプラスチック壁からなり、上記容器内は複数の室に分かれ、該室と室との隔離壁の全部又は一部は上記容器外からの開放が可能で該室と室とを連通可能にする隔離開放手段で形成され、上記一の室には電解質液が収容されて蒸気滅菌がなされ、上記他の一の室には充填後に照射滅菌された重炭酸塩が収容されていることを特徴とする医療用容器。 - 上記照射滅菌がγ線、電子線、又は紫外線の何れかであることを特徴とする請求項1記載の医療用容器。
- 上記容器壁の厚みが1600μm〜10μmの範囲にあり、且つ上記重炭酸塩の収容室内が電子線照射滅菌されていることを特徴とする請求項2記載の医療用容器。
- 上記容器壁の厚みが100μm〜10μmの範囲にあり、且つ上記重炭酸塩の収容室内が紫外線照射滅菌されていることを特徴とする請求項2記載の医療用容器。
- 上記容器壁は、波長250nmにおける紫外線透過率が厚み10μmで60%以上で、その密度が0.95〜0.85g/cm3の範囲にある樹脂壁であることを特徴とする請求項4記載の医療用容器。
- 上記容器がポリオレフィン系樹脂からなることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の医療用容器。
- 上記隔離開放手段が剥離可能なピールシール部であることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の医療用容器。
- 上記電解質液の収容室内には該電解質と共に糖質が含まれ、且つ電解質液のPH値が該室内で5.5以下に維持されると共に、上記隔離開放手段の開放後における上記容器内の電解質液のPH値が6.0〜8.0となることを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の医療用容器。
- 上記重炭酸塩がナトリウム塩又はカリウム塩であることを特徴とする請求項1〜8の何れかに記載の医療用容器。
- 上記室中の重炭酸塩の量は上記容器内での電解質液中の濃度が1〜65mEq/Lとなるように収容されていることを特徴とする請求項9記載の医療用容器。
- 上記電解質中のアセテート、又はラクテートの含有量が25〜0mEq/Lに抑えられることを特徴とする請求項10記載の医療用容器。
- 体内の投与液、循環系での透析液、又は臓器の保存液として用いられる電解質液が収容された医療用容器の製造方法において、
熱可塑性のプラスチック壁からなる上記容器内を複数の室に分けると共に、該室と室との隔離壁の全部又は一部を上記容器外からの開放が可能な隔離開放手段で形成し、上記一の室に電解質液を収容して該室を密封した後に蒸気滅菌を行い、次に上記他の一の室に重炭酸塩を充填して密封した後に該室内を照射滅菌することを特徴とする医療用容器の製造方法。 - 上記照射滅菌が電子線照射滅菌であることを特徴とする請求項12記載の医療用容器の製造方法。
- 上記電子線照射滅菌はその加速電圧が1MeV以下のである中低加速電圧による電子線照射滅菌であることを特徴とする請求項13記載の医療用容器の製造方法。
Priority Applications (3)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP33405395A JP3623294B2 (ja) | 1995-11-28 | 1995-11-28 | 電解質液が収容された医療用容器及びその製造方法 |
US08/757,227 US5871477A (en) | 1995-11-28 | 1996-11-27 | Medical container with electrolyte solution stored therein |
EP19960308599 EP0776649A3 (en) | 1995-11-28 | 1996-11-28 | Medical container with electrolyte solution stored therein |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP33405395A JP3623294B2 (ja) | 1995-11-28 | 1995-11-28 | 電解質液が収容された医療用容器及びその製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH09140771A JPH09140771A (ja) | 1997-06-03 |
JP3623294B2 true JP3623294B2 (ja) | 2005-02-23 |
Family
ID=18272990
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP33405395A Expired - Fee Related JP3623294B2 (ja) | 1995-11-28 | 1995-11-28 | 電解質液が収容された医療用容器及びその製造方法 |
Country Status (3)
Country | Link |
---|---|
US (1) | US5871477A (ja) |
EP (1) | EP0776649A3 (ja) |
JP (1) | JP3623294B2 (ja) |
Families Citing this family (32)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CA2169451C (en) * | 1994-07-01 | 2007-11-13 | Leo Martis | Biochemically balanced peritoneal dialysis solutions |
US6399110B1 (en) * | 1997-08-22 | 2002-06-04 | Shimizu Pharmaceutical Co., Ltd. | Glucose-containing preparation |
US6361642B1 (en) * | 1997-12-02 | 2002-03-26 | Baxter International Inc. | Heat and pressure-formed flexible containers |
US7670491B2 (en) * | 1998-10-20 | 2010-03-02 | Advanced Renal Technologies | Buffered compositions for dialysis |
DE19850830B4 (de) * | 1998-11-04 | 2004-12-30 | Fresenius Medical Care Deutschland Gmbh | Verfahren zur Herstellung einer Lösung, insbesondere einer Dialyse- oder Infusionslösung |
DE19912850B4 (de) * | 1999-03-22 | 2005-04-07 | Fresenius Medical Care Deutschland Gmbh | Lösung, insbesondere für Hämo- oder Peritonealdialyse, sowie Verfahren zu deren Herstellung |
US6309673B1 (en) | 1999-09-10 | 2001-10-30 | Baxter International Inc. | Bicarbonate-based solution in two parts for peritoneal dialysis or substitution in continuous renal replacement therapy |
US7678097B1 (en) | 1999-11-12 | 2010-03-16 | Baxter International Inc. | Containers and methods for manufacturing same |
US7122210B2 (en) * | 2002-01-11 | 2006-10-17 | Baxter International Inc. | Bicarbonate-based solutions for dialysis therapies |
US7445801B2 (en) * | 2002-06-07 | 2008-11-04 | Baxter International Inc. | Stable bicarbonate-based solution in a single container |
AU2003284594B2 (en) * | 2002-11-21 | 2009-01-15 | Kowa Co., Ltd | Peritoneal dialysis method |
US20040121982A1 (en) * | 2002-12-20 | 2004-06-24 | Leo Martis | Biocompatible dialysis fluids containing icodextrins |
JP2004229750A (ja) * | 2003-01-28 | 2004-08-19 | Nipro Corp | プレフィルドシリンジ及びそのバレルの製造方法 |
TWI319984B (en) * | 2003-06-06 | 2010-02-01 | Sterile combined preparation | |
JP2005096860A (ja) * | 2003-09-03 | 2005-04-14 | Showa Denko Plastic Products Co Ltd | 仕切部材及びこれを用いた容器 |
JP4601984B2 (ja) * | 2004-03-31 | 2010-12-22 | 扶桑薬品工業株式会社 | 複室容器 |
SE0400523D0 (sv) | 2004-03-01 | 2004-03-01 | Gambro Lundia Ab | A medical solution, a method for producing said medical solution and use thereof |
US20050276868A1 (en) * | 2004-06-10 | 2005-12-15 | Bart Degreve | Bicarbonate-based peritoneal dialysis solutions |
DE102004039989B4 (de) * | 2004-08-18 | 2006-07-06 | Ritter Gmbh | Bicarbonatbehälter mit Zweikanal-Steckverbinder zum Einmalgebrauch in Hämodialysegeräten |
MX2007002912A (es) * | 2004-09-09 | 2007-05-16 | Nestec Sa | Productos nutricionales teniendo calidad mejorada y metodos y sistemas considerando los mismos. |
SE0402507D0 (sv) | 2004-10-14 | 2004-10-14 | Gambro Lundia Ab | Medicinsk lösning, förfarande för framställning och användning därav |
US7935070B2 (en) * | 2005-01-28 | 2011-05-03 | Fresenius Medical Care North America | Systems and methods for dextrose containing peritoneal dialysis (PD) solutions with neutral pH and reduced glucose degradation product |
DE102005024151A1 (de) * | 2005-05-23 | 2006-11-30 | Thomas Nicola | Vorrichtung zur Peritonealdialyse |
US7857977B2 (en) * | 2005-07-12 | 2010-12-28 | Rockwell Medical Technologies, Inc. | Packaging of ferric pyrophosphate for dialysis |
DE102008063592B4 (de) | 2008-12-18 | 2012-01-12 | Dirk Schindelhauer | Multifunktionaler Laborprozessbeutel für die Reinherstellung von Biomolekülen |
US9585810B2 (en) | 2010-10-14 | 2017-03-07 | Fresenius Medical Care Holdings, Inc. | Systems and methods for delivery of peritoneal dialysis (PD) solutions with integrated inter-chamber diffuser |
ES2648523T3 (es) * | 2012-12-31 | 2018-01-03 | Somahlution, Llc | Solución para la conservación de conductos vasculares |
JP6643236B2 (ja) * | 2013-09-02 | 2020-02-12 | ビー.ブラウン メディカル インコーポレイティド | フレキシブル容器と製造システムおよび方法 |
CN105916374B (zh) | 2013-11-22 | 2021-11-05 | 索玛解有限公司 | 用于增加器官和组织保存溶液的稳定性和储存寿命的溶液 |
US11446209B2 (en) * | 2018-04-13 | 2022-09-20 | Fresenius Kabi Ab | Arrangement and method for providing a formulation for parenteral nutrition |
US20190350810A1 (en) | 2018-05-18 | 2019-11-21 | Baxter International Inc. | Dual chamber flexible container and drug product using same |
EP3725286A1 (en) * | 2019-04-18 | 2020-10-21 | B. Braun Melsungen AG | Medicinal product comprising a container and an aqueous liquid containing bicarbonate |
Family Cites Families (13)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
DE3238649A1 (de) * | 1982-10-19 | 1984-04-19 | Hagen Dr. 8520 Erlangen Theuer | Mehrkompartimentbeutel fuer mischinfusionsloesungen |
EP0132632A3 (en) * | 1983-07-21 | 1985-05-29 | Abbott Laboratories | Compartmented flexible solution container |
IT1214872B (it) * | 1984-04-06 | 1990-01-18 | Mariano Feriani | Sacca contenente due o piu'sostanze per infusione ad uso medicale, poste in scomparti separati, comprendente mezzi atti a consentire la miscelazione di tali sostanze solo al momento dell'uso. |
AU6775787A (en) * | 1985-12-20 | 1987-07-15 | Veech, R.L. | Preparation of electrolyte solutions and containers |
JP2675075B2 (ja) * | 1988-06-10 | 1997-11-12 | 株式会社新素材総合研究所 | 内容物入り容器 |
JPH05131018A (ja) * | 1991-11-11 | 1993-05-28 | Terumo Corp | バツグ連結体およびその製造方法 |
DE4201078A1 (de) * | 1992-01-17 | 1993-07-22 | Braun Melsungen Ag | Strahlensterilisierbare verpackungseinheit fuer medizinisch-technische gebrauchsartikel |
JP3254234B2 (ja) * | 1992-02-06 | 2002-02-04 | テルモ株式会社 | 紫外線殺菌用容器包装体 |
JP2811035B2 (ja) * | 1992-08-05 | 1998-10-15 | 株式会社大塚製薬工場 | 重炭酸配合液及びその収容容器 |
JPH0716286A (ja) | 1993-06-30 | 1995-01-20 | Iwasaki Electric Co Ltd | 電子線を用いた殺菌方法 |
JPH07215801A (ja) | 1994-01-28 | 1995-08-15 | Senju Pharmaceut Co Ltd | 肺保存剤および肺保存方法 |
JP3016347B2 (ja) * | 1995-02-10 | 2000-03-06 | 株式会社ニッショー | 複室容器の製造方法 |
JP3016348B2 (ja) * | 1995-03-23 | 2000-03-06 | 株式会社ニッショー | 複室容器 |
-
1995
- 1995-11-28 JP JP33405395A patent/JP3623294B2/ja not_active Expired - Fee Related
-
1996
- 1996-11-27 US US08/757,227 patent/US5871477A/en not_active Expired - Fee Related
- 1996-11-28 EP EP19960308599 patent/EP0776649A3/en not_active Withdrawn
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
EP0776649A2 (en) | 1997-06-04 |
JPH09140771A (ja) | 1997-06-03 |
US5871477A (en) | 1999-02-16 |
EP0776649A3 (en) | 1997-11-26 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP3623294B2 (ja) | 電解質液が収容された医療用容器及びその製造方法 | |
NZ263691A (en) | Stabilising bicarbonate solutions for peritoneal dialysis; method and device | |
JPWO2009044919A1 (ja) | 安定な炭酸水素イオン含有薬液 | |
EP2554151B1 (en) | Aseptic combination preparation | |
JP2007137836A (ja) | 末梢静脈栄養輸液 | |
JPH10201821A (ja) | 医療用容器 | |
JPH10277132A (ja) | 医療用容器 | |
JPH08164199A (ja) | 中性腹膜透析液 | |
JPH09110703A (ja) | 電解質輸液剤及びその容器 | |
CA2820174A1 (en) | Low sodium solution with different concentrations of sodium for dialysis | |
JP4361493B2 (ja) | 腹膜透析用薬剤の製造のための医学的溶液を調製する方法 | |
JP2003160501A (ja) | 微量金属を含む輸液製剤 | |
JP4361492B2 (ja) | 腹膜透析用薬剤の製造のための医学的溶液を調製する方法 | |
JP3832458B2 (ja) | ろ過型人工腎臓用補液収容複室容器 | |
JPH10192365A (ja) | 医療用容器 | |
JPH1119178A (ja) | 炭酸成分入り医療用溶液を収容した医療用容器の製造方法 | |
JPH10179689A (ja) | 医療用容器 | |
JP2006083164A (ja) | 輸液製剤 | |
JP2789448B2 (ja) | 医療用容器及びその製造方法 | |
JPH09193963A (ja) | 炭酸塩又は重炭酸塩を充填した樹脂容器の包装方法 | |
JP4802492B2 (ja) | ヘパリン含有プレフィルドシリンジ製剤 | |
JPH10201820A (ja) | 医療用容器 | |
JPH09226842A (ja) | 重炭酸塩等を収容したプラスチック容器の包装体構造 | |
JP3904030B2 (ja) | 補液収容複室容器製剤 | |
JP2005330244A (ja) | 末梢静脈投与用輸液 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20040604 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20041026 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20041124 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |