JP2004263136A - 粉体塗料用ポリエステル樹脂及び組成物、並びにこれを用いた粉体塗料 - Google Patents
粉体塗料用ポリエステル樹脂及び組成物、並びにこれを用いた粉体塗料 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】低温で焼き付けすることが出来、優れた塗膜外観を与える柔軟性と良好な耐ブロッキング性を有する粉体塗料用ポリエステル樹脂組成物を提供する。
【解決手段】酸価が30〜85mgKOH/g、主として芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールからなるポリエステル樹脂であり、ポリエステル樹脂が脂肪族ジカルボン酸を全酸成分に対する割合が1〜10モル%、特定の構造を有する脂環族グリコールBを10〜45モル%、及び3官能以上のカルボン酸Cを共重合成分を1〜10モル%、150℃における溶融粘度が100〜800dPa・sであることを特徴とする粉体塗料用ポリエステル樹脂、及び、この樹脂とエポキシ樹脂系硬化剤、イミダゾール系化合物とからなる粉体塗料用ポリエステル樹脂組成物、並びに粉体塗料。
【選択図】なし
【解決手段】酸価が30〜85mgKOH/g、主として芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールからなるポリエステル樹脂であり、ポリエステル樹脂が脂肪族ジカルボン酸を全酸成分に対する割合が1〜10モル%、特定の構造を有する脂環族グリコールBを10〜45モル%、及び3官能以上のカルボン酸Cを共重合成分を1〜10モル%、150℃における溶融粘度が100〜800dPa・sであることを特徴とする粉体塗料用ポリエステル樹脂、及び、この樹脂とエポキシ樹脂系硬化剤、イミダゾール系化合物とからなる粉体塗料用ポリエステル樹脂組成物、並びに粉体塗料。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、塗膜の平滑性、耐ブロッキング性、機械的強度に優れ、かつ、低温での焼き付けが可能な粉体塗料用ポリエステル樹脂組成物、並びにこれを用いた粉体塗料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
粉体塗料は、溶剤型塗料と比較してVOC発生がない無公害型塗料であること、一度で厚塗り塗装が可能であること、塗装直後でも利用に供しうること、比較的安価であること、回収利用が可能であることなどの利点を有し、家電製品、建材、自動車部品等の部材の保護装飾用塗料として、近年急速に需要が拡大している。
粉体塗料は主として、エポキシ樹脂系、アクリル樹脂系、ポリエステル樹脂系のものが使用されているが、その中でもポリエステル粉体塗料はバランスのとれた塗膜性能を有する塗料である。
【0003】
ところで、ポリエステル粉体塗料は溶剤型塗料と比較して一般に高温の焼付け温度が必要となっているが、焼き付け温度が低温化されることによって、溶剤塗装ラインの塗装設備をそのまま転用できたり、発生熱量の減少により、作業性の向上や作業環境の改善が図れるとともに、省エネルギーによるランニングコストの削減というメリットが得られる。また、耐熱性が十分でないために、従来粉体塗装できなかった材料への塗装が可能になる等、被塗物の拡大が可能になる。このような点からポリエステル粉体塗料における焼き付けの低温化が強く要望されている。
【0004】
しかし、従来のポリエステル粉体塗料は、150℃程度の温度で通常の塗料配合により焼き付けた場合、硬化反応性が不足し、実用的な塗膜が得られない。硬化反応性を高めるために、硬化促進剤を多量に添加すると塗膜外観が著しく悪化したり、また塗膜外観を実用的なレベルにするため、分子量を下げたり、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、アジピン酸、ドデカン二酸等の脂肪族のジオール、ジカルボン酸を共重合すると、樹脂のガラス転移点の低下により塗料の貯蔵安定性(耐ブロッキング性)が悪化するという問題があり実用に供するものを得ることが困難であった。また、ガラス転移温度の低下を抑制するためビスフェノールA骨格を有するグリコールを共重合する方法も検討されたが、効果やコストの面で最良の手段とは言えるものではなかった。(例えば、特許文献1参照。)
【0005】
【特許文献1】
特開2000−80307号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はこのような問題を解決し、150℃での焼き付けが可能で、塗膜の平滑性、機械的強度、耐ブロッキング性に優れた粉体塗料とすることができる粉体塗料用ポリエステル樹脂組成物を提供しようとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、本発明に到達した。すなわち、本発明の要旨は次の通りである。
(1)酸価が30〜85mgKOH/gで、主として芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールからなるポリエステル樹脂であり、ポリエステル樹脂が脂肪族ジカルボン酸A及び一般式(I)で示されるグリコールB及び3官能以上のカルボン酸Cを共重合成分として含有し、Aの全酸成分に対する割合が1〜10モル%、Bの全グリコール成分に対する割合が10〜45モル%、Cの全酸成分に対する割合が1〜10モル%、150℃における溶融粘度が100〜800dPa・sであることを特徴とする粉体塗料用ポリエステル樹脂。
【化2】
(X1、X2は、炭素数1〜4のヒドロキシアルキレン基または/および炭素数1〜4のヒドロキシアルキレン基にアルキレンオキシドを1〜4モル付加した基であり、同一であっても異なっていても良い。)
(2)上記(1)記載のポリエステル樹脂とエポキシ樹脂とからなる組成物100質量部に対して0.2〜1.0質量部のイミダゾール系化合物を配合してなる粉体塗料用樹脂組成物。
(3)上記(2)記載の粉体塗料用ポリエステル樹脂組成物を用いた粉体塗料
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のポリエステル樹脂は、構成成分として脂肪族ジカルボン酸Aを含有し、Aの全酸成分に占める割合は1〜10モル%であり、3〜8モル%とすることが好ましい。Aの割合が1モル%未満では、ポリエステル樹脂の可撓性が劣り、機械的物性が低下する。一方10モル%を超えるとポリエステル樹脂のガラス転移温度が大きく低下するため、耐ブロッキング性が悪化する。脂肪族ジカルボン酸Aとしては例えば、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等を用いることができるが、これらは単独に用いても、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でもアジピン酸あるいはセバシン酸が、コストや塗膜の平滑性及び機械的強度の点から好ましい。
【0009】
また、本発明のポリエステル樹脂は、構成成分として一般式(I)で示されるグリコールBを含有し、Bの全グリコール成分に占める割合は10〜45モル%であり、15〜40モル%とすることが好ましい。このグリコールBと、脂肪族ジカルボン酸Aおよび3官能以上のカルボン酸Cを組み合わせることにより、優れた耐ブロッキング性と低温焼き付け性を兼ね備えたポリエステル樹脂が得られる。Bの割合が10モル%未満では、ポリエステル樹脂のTg上昇に顕著な効果が得られず、結果として耐ブロッキング性が悪化する。Bの割合が45モル%を超えるとTgが高くなりすぎるため、塗膜外観が悪化する。一般式(I)で表されるグリコールBの中では、下記構造式(II)で示されるトリシクロデカンジメチロールが低温硬化性、コスト面から最も好ましい。
【0010】
【化3】
【0011】
さらに、本発明のポリエステル樹脂には、3官能以上のカルボン酸化合物Cが共重合されており、Cの全酸成分に占める割合は1〜10モル%であり、5〜8モル%とすることが好ましい。Cの割合が1モル%未満では架橋点が不足するため、機械的物性に乏しい塗膜となる。一方10モル%を超えると、架橋点が多すぎるため、塗膜外観が低下する。Cとしては、無水トリメリット酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸等が挙げられるが、中でも無水トリメリット酸が、コストや、硬化反応性、塗膜外観の面から好ましい。
【0012】
本発明のポリエステル樹脂を構成するA、C以外の酸成分としては、特に限定されないが、芳香族ジカルボン酸を主体とすることが好ましく、必要とする樹脂特性やコストパフォーマンスなどの理由から、主としてテレフタル酸とイソフタル酸が用いられるが、必要に応じて、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、無水イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等を併用してもよい。さらには、4−ヒドロキシ安息香酸、ε−カプロラクトンなどのオキシカルボン酸を少量併用してもよい。また、本発明において、ジカルボン酸やオキシカルボン酸は、それらのエステル形成性誘導体を使用することもできる。
【0013】
本発明のポリエステル樹脂を構成するB以外のグリコール成分としては、特に限定されないが、必要とする樹脂特性や、コストパフォーマンスなどの理由から、主としてエチレングリコールとネオペンチルグリコールが用いられる。また、必要に応じて併用されるグリコールとして、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等の直鎖型脂肪族グリコールや、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジオールなどの脂環族グリコールや、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールSのエチレンオキサイド付加物などの芳香族グリコールが挙げられる。さらに、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセリンなどの3官能以上のアルコールを少量使用してもよい。
【0014】
本発明のポリエステル樹脂の150℃における溶融粘度は、100〜800dPa・s、好ましくは150〜500dPa・sの範囲とする必要がある。150℃での溶融粘度が100dPa・s未満では、焼付け時の流動性が過大となるため塗膜にタレを生じ、一方、800dPa・sを超えると、流動性が低下し、塗膜の平滑性が悪くなる。
【0015】
本発明のポリエステル樹脂の酸価は、30〜85mgKOH/g、好ましくは、40〜70mgKOH/gの範囲のものである。酸価が30mgKOH/gに満たないと、樹脂の分子量が過大となり流動性が低下するため、塗膜の平滑性が低下し、一方、85mgKOH/gを超えると、樹脂の分子量が過小となるため、塗膜の機械的強度が低下する。
【0016】
本発明のポリエステル樹脂は、前記したカルボン酸成分、グリコール成分(それらのエステル形成性誘導体を含む)を原料とし、常法によって、200〜280℃の温度でエステル化又はエステル交換反応を行い、次いで、5hPa以下の減圧下、200〜300℃、好ましくは230〜290℃の温度で重縮合反応を行って高重合度のポリマーとし、さらに酸成分を添加して解重合反応を行う方法で製造することが出来る。
【0017】
また、常法にてエステル化又はエステル交換反応を行った後、常圧下、または50〜100hPa程度の減圧下、200〜300℃、好ましくは220〜280℃の温度で所定の極限粘度となるまで重縮合反応を行った後、常圧下、220〜280℃の温度で所定量のカルボン酸を添加し、付加反応を行うことによって製造することもできる。
【0018】
エステル化、エステル交換反応及び重縮合反応においては、公知の反応触媒、添加剤等を用いることが出来る。
【0019】
第二の発明である粉体塗料用樹脂組成物は、上記ポリエステル樹脂にエポキシ樹脂系硬化剤を配合したものである。エポキシ樹脂系硬化剤としては、チバ・ガイギー社製の「アラルダイトAER6003」、東都化成社製の「エポトートYD−014」、シェル社製の「エピコート1003」等が挙げられる。その配合量は、ポリエステル樹脂のカルボキシル基量に対して0.8〜1.2倍当量、好ましくは0.9〜1.1倍当量のエポキシ基量となるようにするのが適当である。ポリエステル樹脂とエポキシ樹脂系硬化剤との配合比率は、上記のように官能基の比率で調整することが好ましく、その重量比は特に限定されないが、ポリエステル樹脂/エポキシ樹脂系硬化剤=40/60〜60/40程度とするのが適当である。
【0020】
さらに粉体塗料用樹脂組成物においては、硬化促進剤としてイミダゾール系化合物を添加する必要があり、その添加量は、ポリエステル樹脂とエポキシ樹脂系硬化剤の合計100重量部に対して、0.2〜1.0重量部とする必要があり、好ましくは0.4〜0.8重量部である。添加量が0.2重量部に満たないと十分な低温焼き付け性が得られず、1.0重量部を超えると硬化反応性が過大となるため塗膜外観が悪化したり、得られる塗膜の色調が悪化したりする。
【0021】
イミダゾール系化合物としては、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール等が挙げられ、中でも、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾールが好ましく、2−ウンデシルイミダゾールが低温硬化性、外観に有利であり特に好ましい。市販品としては、四国化成社製の「キュアゾールC11Z」(2−ウンデシルイミダゾール)、「キュアゾールC17Z」(2−ヘプタデシルイミダゾール)などが挙げられる。
【0022】
なお、本発明の樹脂組成物には、必要に応じてブチルポリアクリレート系の「アクロナール4F」など公知のレベリング剤、ワキ防止剤としての効果を発揮するベンゾインなどの添加剤、二酸化チタン等の各種顔料などを配合することができる。なお、レベリング剤、ワキ防止剤、顔料の配合量は、特に限定されないが、ポリエステル樹脂とエポキシ樹脂系硬化剤の総量100質量部に対して、それぞれ0.5〜2重量部、0.3〜1.0重量部、40〜65重量部程度とするのが適当である。
【0023】
本発明の粉体塗料用樹脂組成物を用いた粉体塗料は、例えば次のようにして得ることができる。すなわち、上記のポリエステル樹脂とエポキシ樹脂系硬化剤に対して、顔料、硬化触媒、レベリング剤、ワキ防止剤等をニーダーまたはロールを用いて70〜110℃で混練し、ミキサー、ミル等で粉砕後、実用レベルの粒径となるように金網などを用いて分級することにより調製する。
【0024】
前記のようにして得られた粉体塗料を、静電吹き付け法により、リン酸亜鉛処理鋼板等の上に50〜60μmとなるように塗装し、通常、150〜160℃程度の温度で、15〜25分間焼き付けることにより、光沢や平滑性などに優れた塗膜を得ることができる。
【0025】
【作用】
本発明の粉体塗料用ポリエステル樹脂が優れた耐ブロッキング性と低温焼き付け性を兼ね備える理由は、分子内に橋かけ構造を有する脂環族グリコールBにより、ミクロブラウン運動が起こりにくくなり、ポリエステルのTgを高める効果があるとともに、ある程度の大きさの分子量を有する飽和脂肪族であることから、良好な柔軟性をもたらし、樹脂の強度を高めるという特性を有しており、さらにはこのグリコールBと、脂肪族ジカルボン酸A及び/又は3官能以上のカルボン酸Cを組み合わせることにより、その効果を高めていると推測する。
【0026】
【実施例】
次に実施例および比較例によって本発明を具体的に説明する。
なお、実施例および比較例においてポリエステル樹脂及び塗膜の特性値は次に示す方法で測定した。
極限粘度
ポリエステル樹脂をフェノールと四塩化エタンとの等重量混合物を溶媒とし、20℃で測定した溶液粘度から求めた。
共重合成分の割合
ポリエステルを重水素化トリフルオロ酢酸に溶解させ、1H−NMR(日本電子製JNM−LA400)を用いて測定して求めた。
酸価
ポリエステル樹脂0.5gをジオキサン/蒸留水=10/1(重量比)の混合溶媒50mlに溶解し、加熱還流後、0.1×103モル/m3の水酸化カリウムメタノール溶液で滴定して求めた。
ガラス転移温度
示差走査型熱量計(セイコー電子工業社製DSC−220型)を用い、昇温速度10℃/minで求めた。
溶融粘度
試料量15g、温度150℃にてブルックフィールド溶融粘度計(ブルックフィールド社製VISCO METER DV−1)で測定して求めた。
耐ブロッキング性
直径3cm、高さ7cmの有底ガラス管に、得られた粉体塗料を高さ4cm程度入れ、40℃の恒温槽中に1週間放置する。1週間後、ガラス管を逆さにして粉体塗料を出し、塗料の状態で判定した。
○:塗料に塊がないか、もしくは塊が小さく、手で持ち上げられない。
×:塗料が凝集して固化した大きな塊があり、その塊を手で持ち上げられる。
平滑性
塗膜の平滑性を目視により評価した。
○:塗膜に凹凸が少なく平滑性が良好なもの
×:塗膜に大きな凹凸があり平滑性が良くないもの
耐衝撃性
JIS K 5400に準じ、直径1.27cmの球面を持つ撃ち台とそれにあう窪みを持った受け台との間に塗膜が球面に接触するように塗装鋼板を挟み込み、その上から1kgのおもりを垂直に落下させ、塗膜の破壊する高さを求め、20cm以上の高さから落としても、塗膜が割れないものを合格とした。
【0027】
実施例1
テレフタル酸200モル部、イソフタル酸35モル部、アジピン酸15モル部、エチレングリコール125モル部、ネオペンチルグリコール137.5モル部、トリシクロデカンジメチロール(TCD)37.5モル部を、エステル化反応槽に仕込み、圧力0.3MPaG、温度260℃で4時間エステル化反応を行った。
エステル化反応終了後、三酸化アンチモンを2.5×10−4モル/酸成分1モル及びトリエチルホスフェート2.1×10−4モル/酸成分1モル添加し、60分をかけて0.5hPaに減圧し、280℃で3時間重縮合反応を行い、極限粘度0.45のポリエステルを得た。
次いで、このポリエステルに、無水トリメリット酸20モル部、イソフタル酸5モル部を添加し、常圧下、250℃で2時間解重合反応を行い、酸価63.0mgKOH/g、溶融粘度280dPa・s、ガラス転移温度49℃のポリエステル樹脂を得た。
【0028】
得られたポリエステル樹脂53.8重量部に対して、エポキシ当量が760geq/tのエピ・ビス型エポキシ樹脂硬化剤(チバ・ガイギー社製「アラルダイトAER6003」)を46.2重量部、イミダゾール系硬化促進剤(四国化成社製「C11Z」:ウンデシルイミダゾール)を0.4重量部、ブチルポリアクリレート系レベリング剤(ビー・エー・エス・エフ社製「アクロナール4F」)を1.0重量部、ベンゾイン0.5重量部、及び、ルチル型二酸化チタン顔料(石原産業社製「CR−90」)50.0重量部を添加し、ヘンシェルミキサー(三井三池製作所製「FM10B型」)で粉砕後、140メッシュの金網(106μm)で分級して粉体塗料を得た。なお、ポリエステル樹脂のカルボキシル基に対するエポキシ樹脂のエポキシ基の当量比は1.0であった。
得られた粉体塗料をリン酸亜鉛処理鋼板上に膜厚が50〜60μmとなるように静電塗装して、150℃×20分間焼き付けを行った。塗膜の性能を評価した結果を表1に示す。
【0029】
【表1】
【0030】
実施例2〜4及び比較例1〜10
ポリエステル樹脂、樹脂組成物、粉体塗料の組成を表1記載のように変更し、実施例1と同様の操作を行った。なお、比較例9、10は、ポリエステル樹脂としては、本発明に相当するものであるが、粉体塗料用樹脂組成物としては、イミダゾール系化合物の配合割合が本発明の範囲を外れるものであるため、比較例とした。これらの結果をまとめて表1に示す。
【0031】
実施例1〜4で得られた粉体塗料は、いずれも強度、平滑性を満足した良好な塗膜を与えた。
これに対して、比較例では次のような問題があった。
比較例1では、TCDの共重合量が少ないため、ポリエステル樹脂のガラス転移温度が低く、結果として塗料の耐ブロッキング性が不十分であった。
比較例2では、TCDの共重合量が多いために、ポリエステル樹脂のガラス転移温度が高く、溶融粘度も増大し、結果として塗膜の平滑性が不十分であった。
比較例3では、アジピン酸が共重合されていないため、ポリエステル樹脂の溶融粘度が高く、塗膜の平滑性が不十分であった。
比較例4では、アジピン酸の共重合量が多すぎるため、ガラス転移温度が低く、結果として塗料の耐ブロッキング性が不十分であった。
比較例5では、無水トリメリット酸が共重合されていないため、ポリエステル樹脂の架橋密度が低く、結果として塗膜の強度が不十分であった。
比較例6では、無水トリメリット酸の共重合量が多いため、ポリエステル樹脂の酸価が高く、架橋密度も高いために、結果として塗膜の平滑性が不十分であった。
比較例7では、ポリエステル樹脂の酸価が高く分子量が低いために、耐ブロッキング性が悪いばかりか結果として塗膜の強度が不十分であった。
比較例8では、ポリエステル樹脂の酸価が低く、溶融粘度も高いために、結果として塗膜の平滑性が不十分であった。
比較例9では、硬化促進剤であるイミダゾール系化合物の量が多かったために、硬化反応性が高すぎ、結果として塗膜の平滑性が不十分であった。
比較例10では、硬化促進剤の量が少なかったために、硬化反応性が劣り、結果として塗膜の強度が不十分であった。
【0032】
【発明の効果】
本発明のポリエステル樹脂によれば、良好な低温焼き付け性を備え、かつ、優れた塗膜外観を与える柔軟性と良好な耐ブロッキング性を有する粉体塗料用ポリエステル樹脂組成物が提供される。
【発明の属する技術分野】
本発明は、塗膜の平滑性、耐ブロッキング性、機械的強度に優れ、かつ、低温での焼き付けが可能な粉体塗料用ポリエステル樹脂組成物、並びにこれを用いた粉体塗料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
粉体塗料は、溶剤型塗料と比較してVOC発生がない無公害型塗料であること、一度で厚塗り塗装が可能であること、塗装直後でも利用に供しうること、比較的安価であること、回収利用が可能であることなどの利点を有し、家電製品、建材、自動車部品等の部材の保護装飾用塗料として、近年急速に需要が拡大している。
粉体塗料は主として、エポキシ樹脂系、アクリル樹脂系、ポリエステル樹脂系のものが使用されているが、その中でもポリエステル粉体塗料はバランスのとれた塗膜性能を有する塗料である。
【0003】
ところで、ポリエステル粉体塗料は溶剤型塗料と比較して一般に高温の焼付け温度が必要となっているが、焼き付け温度が低温化されることによって、溶剤塗装ラインの塗装設備をそのまま転用できたり、発生熱量の減少により、作業性の向上や作業環境の改善が図れるとともに、省エネルギーによるランニングコストの削減というメリットが得られる。また、耐熱性が十分でないために、従来粉体塗装できなかった材料への塗装が可能になる等、被塗物の拡大が可能になる。このような点からポリエステル粉体塗料における焼き付けの低温化が強く要望されている。
【0004】
しかし、従来のポリエステル粉体塗料は、150℃程度の温度で通常の塗料配合により焼き付けた場合、硬化反応性が不足し、実用的な塗膜が得られない。硬化反応性を高めるために、硬化促進剤を多量に添加すると塗膜外観が著しく悪化したり、また塗膜外観を実用的なレベルにするため、分子量を下げたり、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、アジピン酸、ドデカン二酸等の脂肪族のジオール、ジカルボン酸を共重合すると、樹脂のガラス転移点の低下により塗料の貯蔵安定性(耐ブロッキング性)が悪化するという問題があり実用に供するものを得ることが困難であった。また、ガラス転移温度の低下を抑制するためビスフェノールA骨格を有するグリコールを共重合する方法も検討されたが、効果やコストの面で最良の手段とは言えるものではなかった。(例えば、特許文献1参照。)
【0005】
【特許文献1】
特開2000−80307号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はこのような問題を解決し、150℃での焼き付けが可能で、塗膜の平滑性、機械的強度、耐ブロッキング性に優れた粉体塗料とすることができる粉体塗料用ポリエステル樹脂組成物を提供しようとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、本発明に到達した。すなわち、本発明の要旨は次の通りである。
(1)酸価が30〜85mgKOH/gで、主として芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールからなるポリエステル樹脂であり、ポリエステル樹脂が脂肪族ジカルボン酸A及び一般式(I)で示されるグリコールB及び3官能以上のカルボン酸Cを共重合成分として含有し、Aの全酸成分に対する割合が1〜10モル%、Bの全グリコール成分に対する割合が10〜45モル%、Cの全酸成分に対する割合が1〜10モル%、150℃における溶融粘度が100〜800dPa・sであることを特徴とする粉体塗料用ポリエステル樹脂。
【化2】
(X1、X2は、炭素数1〜4のヒドロキシアルキレン基または/および炭素数1〜4のヒドロキシアルキレン基にアルキレンオキシドを1〜4モル付加した基であり、同一であっても異なっていても良い。)
(2)上記(1)記載のポリエステル樹脂とエポキシ樹脂とからなる組成物100質量部に対して0.2〜1.0質量部のイミダゾール系化合物を配合してなる粉体塗料用樹脂組成物。
(3)上記(2)記載の粉体塗料用ポリエステル樹脂組成物を用いた粉体塗料
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のポリエステル樹脂は、構成成分として脂肪族ジカルボン酸Aを含有し、Aの全酸成分に占める割合は1〜10モル%であり、3〜8モル%とすることが好ましい。Aの割合が1モル%未満では、ポリエステル樹脂の可撓性が劣り、機械的物性が低下する。一方10モル%を超えるとポリエステル樹脂のガラス転移温度が大きく低下するため、耐ブロッキング性が悪化する。脂肪族ジカルボン酸Aとしては例えば、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等を用いることができるが、これらは単独に用いても、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でもアジピン酸あるいはセバシン酸が、コストや塗膜の平滑性及び機械的強度の点から好ましい。
【0009】
また、本発明のポリエステル樹脂は、構成成分として一般式(I)で示されるグリコールBを含有し、Bの全グリコール成分に占める割合は10〜45モル%であり、15〜40モル%とすることが好ましい。このグリコールBと、脂肪族ジカルボン酸Aおよび3官能以上のカルボン酸Cを組み合わせることにより、優れた耐ブロッキング性と低温焼き付け性を兼ね備えたポリエステル樹脂が得られる。Bの割合が10モル%未満では、ポリエステル樹脂のTg上昇に顕著な効果が得られず、結果として耐ブロッキング性が悪化する。Bの割合が45モル%を超えるとTgが高くなりすぎるため、塗膜外観が悪化する。一般式(I)で表されるグリコールBの中では、下記構造式(II)で示されるトリシクロデカンジメチロールが低温硬化性、コスト面から最も好ましい。
【0010】
【化3】
【0011】
さらに、本発明のポリエステル樹脂には、3官能以上のカルボン酸化合物Cが共重合されており、Cの全酸成分に占める割合は1〜10モル%であり、5〜8モル%とすることが好ましい。Cの割合が1モル%未満では架橋点が不足するため、機械的物性に乏しい塗膜となる。一方10モル%を超えると、架橋点が多すぎるため、塗膜外観が低下する。Cとしては、無水トリメリット酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸等が挙げられるが、中でも無水トリメリット酸が、コストや、硬化反応性、塗膜外観の面から好ましい。
【0012】
本発明のポリエステル樹脂を構成するA、C以外の酸成分としては、特に限定されないが、芳香族ジカルボン酸を主体とすることが好ましく、必要とする樹脂特性やコストパフォーマンスなどの理由から、主としてテレフタル酸とイソフタル酸が用いられるが、必要に応じて、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、無水イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等を併用してもよい。さらには、4−ヒドロキシ安息香酸、ε−カプロラクトンなどのオキシカルボン酸を少量併用してもよい。また、本発明において、ジカルボン酸やオキシカルボン酸は、それらのエステル形成性誘導体を使用することもできる。
【0013】
本発明のポリエステル樹脂を構成するB以外のグリコール成分としては、特に限定されないが、必要とする樹脂特性や、コストパフォーマンスなどの理由から、主としてエチレングリコールとネオペンチルグリコールが用いられる。また、必要に応じて併用されるグリコールとして、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等の直鎖型脂肪族グリコールや、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジオールなどの脂環族グリコールや、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールSのエチレンオキサイド付加物などの芳香族グリコールが挙げられる。さらに、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセリンなどの3官能以上のアルコールを少量使用してもよい。
【0014】
本発明のポリエステル樹脂の150℃における溶融粘度は、100〜800dPa・s、好ましくは150〜500dPa・sの範囲とする必要がある。150℃での溶融粘度が100dPa・s未満では、焼付け時の流動性が過大となるため塗膜にタレを生じ、一方、800dPa・sを超えると、流動性が低下し、塗膜の平滑性が悪くなる。
【0015】
本発明のポリエステル樹脂の酸価は、30〜85mgKOH/g、好ましくは、40〜70mgKOH/gの範囲のものである。酸価が30mgKOH/gに満たないと、樹脂の分子量が過大となり流動性が低下するため、塗膜の平滑性が低下し、一方、85mgKOH/gを超えると、樹脂の分子量が過小となるため、塗膜の機械的強度が低下する。
【0016】
本発明のポリエステル樹脂は、前記したカルボン酸成分、グリコール成分(それらのエステル形成性誘導体を含む)を原料とし、常法によって、200〜280℃の温度でエステル化又はエステル交換反応を行い、次いで、5hPa以下の減圧下、200〜300℃、好ましくは230〜290℃の温度で重縮合反応を行って高重合度のポリマーとし、さらに酸成分を添加して解重合反応を行う方法で製造することが出来る。
【0017】
また、常法にてエステル化又はエステル交換反応を行った後、常圧下、または50〜100hPa程度の減圧下、200〜300℃、好ましくは220〜280℃の温度で所定の極限粘度となるまで重縮合反応を行った後、常圧下、220〜280℃の温度で所定量のカルボン酸を添加し、付加反応を行うことによって製造することもできる。
【0018】
エステル化、エステル交換反応及び重縮合反応においては、公知の反応触媒、添加剤等を用いることが出来る。
【0019】
第二の発明である粉体塗料用樹脂組成物は、上記ポリエステル樹脂にエポキシ樹脂系硬化剤を配合したものである。エポキシ樹脂系硬化剤としては、チバ・ガイギー社製の「アラルダイトAER6003」、東都化成社製の「エポトートYD−014」、シェル社製の「エピコート1003」等が挙げられる。その配合量は、ポリエステル樹脂のカルボキシル基量に対して0.8〜1.2倍当量、好ましくは0.9〜1.1倍当量のエポキシ基量となるようにするのが適当である。ポリエステル樹脂とエポキシ樹脂系硬化剤との配合比率は、上記のように官能基の比率で調整することが好ましく、その重量比は特に限定されないが、ポリエステル樹脂/エポキシ樹脂系硬化剤=40/60〜60/40程度とするのが適当である。
【0020】
さらに粉体塗料用樹脂組成物においては、硬化促進剤としてイミダゾール系化合物を添加する必要があり、その添加量は、ポリエステル樹脂とエポキシ樹脂系硬化剤の合計100重量部に対して、0.2〜1.0重量部とする必要があり、好ましくは0.4〜0.8重量部である。添加量が0.2重量部に満たないと十分な低温焼き付け性が得られず、1.0重量部を超えると硬化反応性が過大となるため塗膜外観が悪化したり、得られる塗膜の色調が悪化したりする。
【0021】
イミダゾール系化合物としては、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール等が挙げられ、中でも、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾールが好ましく、2−ウンデシルイミダゾールが低温硬化性、外観に有利であり特に好ましい。市販品としては、四国化成社製の「キュアゾールC11Z」(2−ウンデシルイミダゾール)、「キュアゾールC17Z」(2−ヘプタデシルイミダゾール)などが挙げられる。
【0022】
なお、本発明の樹脂組成物には、必要に応じてブチルポリアクリレート系の「アクロナール4F」など公知のレベリング剤、ワキ防止剤としての効果を発揮するベンゾインなどの添加剤、二酸化チタン等の各種顔料などを配合することができる。なお、レベリング剤、ワキ防止剤、顔料の配合量は、特に限定されないが、ポリエステル樹脂とエポキシ樹脂系硬化剤の総量100質量部に対して、それぞれ0.5〜2重量部、0.3〜1.0重量部、40〜65重量部程度とするのが適当である。
【0023】
本発明の粉体塗料用樹脂組成物を用いた粉体塗料は、例えば次のようにして得ることができる。すなわち、上記のポリエステル樹脂とエポキシ樹脂系硬化剤に対して、顔料、硬化触媒、レベリング剤、ワキ防止剤等をニーダーまたはロールを用いて70〜110℃で混練し、ミキサー、ミル等で粉砕後、実用レベルの粒径となるように金網などを用いて分級することにより調製する。
【0024】
前記のようにして得られた粉体塗料を、静電吹き付け法により、リン酸亜鉛処理鋼板等の上に50〜60μmとなるように塗装し、通常、150〜160℃程度の温度で、15〜25分間焼き付けることにより、光沢や平滑性などに優れた塗膜を得ることができる。
【0025】
【作用】
本発明の粉体塗料用ポリエステル樹脂が優れた耐ブロッキング性と低温焼き付け性を兼ね備える理由は、分子内に橋かけ構造を有する脂環族グリコールBにより、ミクロブラウン運動が起こりにくくなり、ポリエステルのTgを高める効果があるとともに、ある程度の大きさの分子量を有する飽和脂肪族であることから、良好な柔軟性をもたらし、樹脂の強度を高めるという特性を有しており、さらにはこのグリコールBと、脂肪族ジカルボン酸A及び/又は3官能以上のカルボン酸Cを組み合わせることにより、その効果を高めていると推測する。
【0026】
【実施例】
次に実施例および比較例によって本発明を具体的に説明する。
なお、実施例および比較例においてポリエステル樹脂及び塗膜の特性値は次に示す方法で測定した。
極限粘度
ポリエステル樹脂をフェノールと四塩化エタンとの等重量混合物を溶媒とし、20℃で測定した溶液粘度から求めた。
共重合成分の割合
ポリエステルを重水素化トリフルオロ酢酸に溶解させ、1H−NMR(日本電子製JNM−LA400)を用いて測定して求めた。
酸価
ポリエステル樹脂0.5gをジオキサン/蒸留水=10/1(重量比)の混合溶媒50mlに溶解し、加熱還流後、0.1×103モル/m3の水酸化カリウムメタノール溶液で滴定して求めた。
ガラス転移温度
示差走査型熱量計(セイコー電子工業社製DSC−220型)を用い、昇温速度10℃/minで求めた。
溶融粘度
試料量15g、温度150℃にてブルックフィールド溶融粘度計(ブルックフィールド社製VISCO METER DV−1)で測定して求めた。
耐ブロッキング性
直径3cm、高さ7cmの有底ガラス管に、得られた粉体塗料を高さ4cm程度入れ、40℃の恒温槽中に1週間放置する。1週間後、ガラス管を逆さにして粉体塗料を出し、塗料の状態で判定した。
○:塗料に塊がないか、もしくは塊が小さく、手で持ち上げられない。
×:塗料が凝集して固化した大きな塊があり、その塊を手で持ち上げられる。
平滑性
塗膜の平滑性を目視により評価した。
○:塗膜に凹凸が少なく平滑性が良好なもの
×:塗膜に大きな凹凸があり平滑性が良くないもの
耐衝撃性
JIS K 5400に準じ、直径1.27cmの球面を持つ撃ち台とそれにあう窪みを持った受け台との間に塗膜が球面に接触するように塗装鋼板を挟み込み、その上から1kgのおもりを垂直に落下させ、塗膜の破壊する高さを求め、20cm以上の高さから落としても、塗膜が割れないものを合格とした。
【0027】
実施例1
テレフタル酸200モル部、イソフタル酸35モル部、アジピン酸15モル部、エチレングリコール125モル部、ネオペンチルグリコール137.5モル部、トリシクロデカンジメチロール(TCD)37.5モル部を、エステル化反応槽に仕込み、圧力0.3MPaG、温度260℃で4時間エステル化反応を行った。
エステル化反応終了後、三酸化アンチモンを2.5×10−4モル/酸成分1モル及びトリエチルホスフェート2.1×10−4モル/酸成分1モル添加し、60分をかけて0.5hPaに減圧し、280℃で3時間重縮合反応を行い、極限粘度0.45のポリエステルを得た。
次いで、このポリエステルに、無水トリメリット酸20モル部、イソフタル酸5モル部を添加し、常圧下、250℃で2時間解重合反応を行い、酸価63.0mgKOH/g、溶融粘度280dPa・s、ガラス転移温度49℃のポリエステル樹脂を得た。
【0028】
得られたポリエステル樹脂53.8重量部に対して、エポキシ当量が760geq/tのエピ・ビス型エポキシ樹脂硬化剤(チバ・ガイギー社製「アラルダイトAER6003」)を46.2重量部、イミダゾール系硬化促進剤(四国化成社製「C11Z」:ウンデシルイミダゾール)を0.4重量部、ブチルポリアクリレート系レベリング剤(ビー・エー・エス・エフ社製「アクロナール4F」)を1.0重量部、ベンゾイン0.5重量部、及び、ルチル型二酸化チタン顔料(石原産業社製「CR−90」)50.0重量部を添加し、ヘンシェルミキサー(三井三池製作所製「FM10B型」)で粉砕後、140メッシュの金網(106μm)で分級して粉体塗料を得た。なお、ポリエステル樹脂のカルボキシル基に対するエポキシ樹脂のエポキシ基の当量比は1.0であった。
得られた粉体塗料をリン酸亜鉛処理鋼板上に膜厚が50〜60μmとなるように静電塗装して、150℃×20分間焼き付けを行った。塗膜の性能を評価した結果を表1に示す。
【0029】
【表1】
【0030】
実施例2〜4及び比較例1〜10
ポリエステル樹脂、樹脂組成物、粉体塗料の組成を表1記載のように変更し、実施例1と同様の操作を行った。なお、比較例9、10は、ポリエステル樹脂としては、本発明に相当するものであるが、粉体塗料用樹脂組成物としては、イミダゾール系化合物の配合割合が本発明の範囲を外れるものであるため、比較例とした。これらの結果をまとめて表1に示す。
【0031】
実施例1〜4で得られた粉体塗料は、いずれも強度、平滑性を満足した良好な塗膜を与えた。
これに対して、比較例では次のような問題があった。
比較例1では、TCDの共重合量が少ないため、ポリエステル樹脂のガラス転移温度が低く、結果として塗料の耐ブロッキング性が不十分であった。
比較例2では、TCDの共重合量が多いために、ポリエステル樹脂のガラス転移温度が高く、溶融粘度も増大し、結果として塗膜の平滑性が不十分であった。
比較例3では、アジピン酸が共重合されていないため、ポリエステル樹脂の溶融粘度が高く、塗膜の平滑性が不十分であった。
比較例4では、アジピン酸の共重合量が多すぎるため、ガラス転移温度が低く、結果として塗料の耐ブロッキング性が不十分であった。
比較例5では、無水トリメリット酸が共重合されていないため、ポリエステル樹脂の架橋密度が低く、結果として塗膜の強度が不十分であった。
比較例6では、無水トリメリット酸の共重合量が多いため、ポリエステル樹脂の酸価が高く、架橋密度も高いために、結果として塗膜の平滑性が不十分であった。
比較例7では、ポリエステル樹脂の酸価が高く分子量が低いために、耐ブロッキング性が悪いばかりか結果として塗膜の強度が不十分であった。
比較例8では、ポリエステル樹脂の酸価が低く、溶融粘度も高いために、結果として塗膜の平滑性が不十分であった。
比較例9では、硬化促進剤であるイミダゾール系化合物の量が多かったために、硬化反応性が高すぎ、結果として塗膜の平滑性が不十分であった。
比較例10では、硬化促進剤の量が少なかったために、硬化反応性が劣り、結果として塗膜の強度が不十分であった。
【0032】
【発明の効果】
本発明のポリエステル樹脂によれば、良好な低温焼き付け性を備え、かつ、優れた塗膜外観を与える柔軟性と良好な耐ブロッキング性を有する粉体塗料用ポリエステル樹脂組成物が提供される。
Claims (3)
- 主として芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールからなるポリエステル樹脂であり、ポリエステル樹脂が脂肪族ジカルボン酸A、一般式(I)で示されるグリコールB、及び3官能以上のカルボン酸Cを共重合成分として含有し、Aの全酸成分に対する割合が1〜10モル%、Bの全グリコール成分に対する割合が10〜45モル%、Cの全酸成分に対する割合が1〜10モル%であり、このポリエステル樹脂の酸価が30〜85mgKOH/gで、150℃における溶融粘度が100〜800dPa・sであることを特徴とする粉体塗料用ポリエステル樹脂。
- 請求項1記載のポリエステル樹脂とエポキシ樹脂とからなる組成物100質量部当たり、イミダゾール系化合物0.2〜1.0質量部を配合してなる粉体塗料用樹脂組成物。
- 請求項2記載の粉体塗料用樹脂組成物を用いた粉体塗料。
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