JP4582824B2 - 塗料用樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は塗料用樹脂組成物に関するものである。さらに詳しくは加工性に優れ、かつ耐酸性、耐食性等に優れた塗装金属板用プライマー塗料組成物またはプライマーと上塗りを兼ねる裏面用塗料に好適な樹脂組成物を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】
塗装金属板、いわゆるプレコート金属板はその経済性、生産性、加工性などの利点をいかして屋根材、壁材など建材分野、物置、ラジエターユニットなどの屋外器物、VTR、洗濯機、冷蔵庫などの家電製品に広く使用されている。塗装金属板として、まず第1に要求される特性は折り曲げ加工性に優れていることである。現在用いられている塗料用樹脂としてはアルキッド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等があるが、これらは加工性に問題があり、高度の加工性を要求される分野においては、高分子量ポリエステルが使用されているのが現状である。
【0003】
現在、塗装金属板用プライマー樹脂としては、主としてエポキシ樹脂であるが、エポキシ樹脂は可撓性に欠けるため高度の加工には耐えられず、加工部の塗膜にクラックが発生し、容易に腐食するという欠点がある。また、エポキシ樹脂は一般に耐食性が良好であると認識されているが、耐衝撃性に劣り、塗装金属板を切断する際に端面に微小な塗膜のウキが生じるため端面の耐食性に劣るという問題がある。上記問題のために高加工用プライマーとしてはその利点が生かせないという重大な欠点があり、また、加工性の良好な高分子量ポリエステル樹脂を上塗りに用いた場合はプライマーと上塗りの層間密着性が不良である問題もある。
【0004】
このような問題を解決したものとしては、特公昭62−5467号公報、特開平6−256712号公報が知られており、また、発明者らは、特願平6−250496号を出願しており、加工性と耐湿性、耐食性、耐薬品性などをある程度両立させている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、年々要求特性は厳しくなり、建材、家電を問わず加工性と硬度、種々の耐汚染性、耐薬品性、耐候性、耐食性等の塗膜物性の高度の両立が要求されている。さらには、端面あるいは加工部の耐食性の保証、絞り加工性も要求されるようになって来ており、上記の従来技術では加工性、絞り加工性とクロスカット部および端面の耐食性、あるいは加工性と耐薬品性が満たされなくなってきた。
すなわち、特公昭62−5467号公報では、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を共重合した芳香族ポリエステルを提案しているが、こものもはエポキシ樹脂と比較して良好な加工性と耐食性を有するが、スクラッチ性が不充分であり、また、端面の耐食性が不充分である。
特開平6−256712号公報では、脂肪族ジカルボン酸とビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を主成分とする低Tgのポリエステル樹脂を提案しているが、このものは優れた加工性と比較的良好な端面耐食性を有するものの、基本的に芳香族成分の少ない柔らかい樹脂のため、スクラッチ性、クロスカット部分の耐食性が劣り、耐薬品性も劣っている。
【0006】
特願平6−250496号では、脂環族グリコールとビスフェノールAのアルキレンオキサイドを主成分とした芳香族ポリエステル樹脂を提案しているが、このものも良好なコインスクラッチ性を得ようとするとガラス転移点温度を40℃以上にする必要があり、この領域では良好なクロスカット部の耐食性が得られるものの、端面及び加工部の耐食性に劣る問題がある。
このように、加工性、クロスカット部耐食性、端面耐食性、耐薬品性、スクラッチ性など種々の要求特性を両立することは至難であり、特に、クロスカット部と端面の耐食性を両立することは困難であった。
このような要求特性に対し上塗り用樹脂も鋭意検討されているものの加工性とその他の塗膜物性の両立が不充分であり、従来技術のプライマーとの組合せにおいては、未だ満足な特性が得られておらず、従来に無い優れたプライマー用樹脂の開発が要望されている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らはこうした問題に鑑み、優れた加工性とクロスカット部および端面の耐食性、耐薬品性を合わせもつプライマー塗料用樹脂について鋭意検討した結果、芳香族ジカルボン酸を必須成分とした共重合ポリエステル樹脂にコロイダルシリカを少量配合することにより、驚くべきことにポリエステル樹脂の特性を損なうことなく、著しく耐食性、耐薬品性が向上することを見いだし本発明に到達した。
【0008】
すなわち本発明は、(A)芳香族ジカルボン酸20〜100モル%、脂肪族および/または脂環族ジカルボン酸0〜80モル%と、グリコール成分が下記一般式(I)で示されるビスフェノールAのエチレンオキサイドおよび/またはプロピレングリコール10〜100モル%、その他のグリコールが0〜90モル%であるポリエステル樹脂に、(B)前記ポリエステル樹脂(A)と反応し得る硬化剤と(C)コロイダルシリカとを(A)/(B)=95/5〜60/40(重量比)、かつ(A)/(C)=99.9/0.1〜70/30(重量比)の割合で配合したものであって、コロイダルシリカ(C)がポリエステル樹脂(A)の重合する際に添加されたものであることを特徴とする塗料用樹脂組成物である。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明のポリエステル樹脂(A)において、共重合する酸成分は芳香族ジカルボン酸20〜100モル%、脂肪族および/または脂環族ジカルボン酸0〜80モル%である。芳香族ジカルボン酸が20モル%未満では良好な耐食性、スクラッチ性、耐薬品性が得られない。
【00010】
本発明のポリエステル樹脂(A)に共重合する芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などが挙げられる。芳香族ジカルボン酸としては塗膜物性と溶解性の面からテレフタル酸とイソフタル酸を併用することが特に好ましい。
【0011】
本発明のポリエステル樹脂(A)に共重合する脂肪族ジカルボン酸としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、アゼライン酸、ダイマー酸などが挙げられる。このうちアジピン酸、セバシン酸が加工性、耐食性、耐薬品性の面から特に好ましい。
ポリエステル樹脂(A)に共重合する脂環族ジカルボン酸としては1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸が挙げられる。このうち、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸が加工性の面より好ましい。
【0012】
ポリエステル樹脂(A)に共重合するグリコール成分は任意であるが、一般式(I)で示されるビスフェノールAのエチレンオサイドおよび/またはプロピレンオキサイドの付加物を10〜100モル%共重合することが耐食性、加工性、耐薬品性、耐水性、金属板への密着性の面から好ましく、特に好ましくは30〜70モル%である。
【0013】
【化2】
【0014】
その他のグリコールとしてはエチレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−ブチル−2−エチル−プロパンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカン(TCD)グリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどが挙げられる。その他のグリコールは経済性、塗膜物性から適宜選択されるが、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールが特に好ましい。
【0015】
また、発明の内容を損なわない範囲で、トリメリット酸、ピロメリット酸などの多価カルボン酸またはトリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトールなどの多価ポリオールを併用しても良い。このような3価以上のポリカルボン酸またはポリオールを適量共重合することにより、さらに耐薬品性を向上できる。
【0016】
また、本発明のポリエステル樹脂(A)において、スルホン酸金属塩基を含むジカルボン酸やグリコールを5モル%以下の範囲で使用しても良い。スルホン酸金属塩基を含むジカルボン酸としては、スルホテレフタル酸、5−スルホイソフタル酸、4−スルホナフタレン−2,7−ジカルボン酸、5〔4−スルホフェノキシ〕イソフタル酸などの金属塩を挙げることができる。スルホン酸金属塩基を含むグリコールとしては2−スルホ1,4−ブタンジオール、2,5−ジメチル−3−スルホ−2,5−ヘキサンジオールなどの金属塩が挙げられる。金属塩としてはLi、Na、K、Mg、Ca、Cu、Feなどの塩が挙げられる。
【0017】
本発明のポリエステル樹脂(A)はアクリル、エポキシまたはウレタンで変性してもよい。
アクリル変性ポリエステル樹脂はポリエステル樹脂にフマル酸、オレイン酸などの不飽和二重結合を含有するジカルボン酸を共重合してポリエステル樹脂中に不飽和二重結合を導入し、この不飽和二重結合と(メタ)アクリル酸エステル、スチレン、酢酸ビニルなどのビニル化合物を溶液中でラジカル重合する方法、あるいは(メタ)アクリル酸エステル、スチレンなどより合成される片末端にヒドロキシ基を2個含有するマクロモノマーを直接ポリエステルに共重合するなどの公知の方法により合成される。
【0018】
エポキシ変性ポリエステル樹脂はポリエステル樹脂の末端ヒドロキシ基に無水トリメリット酸、無水フタル酸等の酸無水物を付加させて、末端カルボキシ変性をした後、このカルボキシル基とエポキシ樹脂をトリフェニルホスフィンなどの触媒の存在下でエポキシ変性する方法などの公知の方法により合成できる。また、鎖延長剤にジメチロールプロピオン酸のどのカルボキシル基含有グリコールを用いることによりカルボキシル基を導入しても良い。
【0019】
ウレタン変性ポリエステル樹脂は低分子量のポリエステルジオールと必要により鎖延長剤を配合し、ジイソシアネート化合物と反応させるなど公知の方法により合成される。また、鎖延長剤にジメチロールプロピオン酸などのカルボキシル基含有ジオールを用いてカルボキシル基を側鎖に導入しても良い。
【0020】
本発明のポリエステル樹脂(A)はガラス転移点温度が0〜80℃が好ましい。0℃未満では加工性は良好であるが、スクラッチ性、耐薬品性、耐沸水性などが低下し好ましくない。また、本発明のポリエステル樹脂(A)は還元粘度で0.3〜0.7dl/g、数平均分子量で5,000〜25,000であることが好ましい。
【0021】
本発明の塗料用樹脂組成物はポリエステル樹脂(A)とこれと反応し得る硬化剤(B)とコロイダルシリカ(C)とを配合することが必要である。
硬化剤(B)の配合量は(A)/(B)=95/5〜60/40(重量比)である。ポリエステル樹脂(A)の配合量が95(A)/5(B)(重量比)を越えると良好な耐薬品性、耐食性、スクラッチ性などの塗膜物性が不良となり、60(A)/40(B)未満(重量比)では良好な加工性が得られない。
コロイダルシリカ(C)の配合量は(A)/(C)=99.9/0.1〜70/30(重量比)、好ましくは99/1〜85/15(重量比)である。ポリエステル樹脂(A)の配合量が99.9(A)/0.1(C)(重量比)を越えると充分な耐食性が得られず、また、耐薬品性も低下する。70(A)/30(C)(重量比)未満では加工性、耐薬品性が低下する。
【0022】
ポリエステル樹脂(A)と反応し得る硬化剤としては、アルキルエーテル化アミノホルムアルデヒド樹脂、エポキシ化合物およびイソシアネート化合物が挙げられる。
アルキルエーテル化アミノホルムアルデヒド樹脂とは、たとえばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノールなどの炭素原子数1〜4のアルコールによってアルキルエーテル化されたホルムアルデヒドあるいはパラホルムアルデヒドなどと尿素、N,N−エチレン尿素、ジシアンジアミド、アミノトリアジン等との縮合生成物であり、メトキシ化メチロール−N,N−エチレン尿素、メトキシ化メチロールジシアンジアミド、メトキシ化メチロールベンゾグアナミン、ブトキシ化メチロールベンゾグアナミン、メトキシ化メチロールメラミン、ブトキシ化メチロールメラミン、メトキシ化/ブトキシ化混合型メチロールメラミン、ブトキシ化メチロールベンゾグアナミンなどが挙げられるが、加工性の面から好ましいのは、メトキシ化メチロールメラミン、ブトキシ化メチロールメラミン、またはメトキシ化/ブトキシ化混合型メチロールメラミンであり、それぞれ単独、または併用して使用することができる。
【0023】
エポキシ化合物としてはビスフェノールAのジグリシジルエーテルおよびそのオリゴマー、水素化ビスフェノールAのジグリシジルエーテルおよびそのオリゴマー、オルソフタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、p−オキシ安息香酸ジグリシジルエステル、テトラハイドロフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサハイドロフタル酸ジグリシジルエステル、コハク酸ジグリシジルエステル、アジピン酸ジグリシジルエステル、セバシン酸ジグリシジルエステル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルおよびポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル類、トリメリット酸トリグリシジルエステル、トリグリシジルイソシアヌレート、1,4−ジグリシジルオキシベンゼン、ジグリシジルプロピレン尿素、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、グリセロールアルキレンオキサイド付加物のトリグリシジルエーテルなどを挙げることができる。
【0024】
さらにイソシアネート化合物としては芳香族、脂肪族のジイソシアネート、3価以上のポリイソシアネートがあり、低分子化合物、高分子化合物のいずれでもよい。たとえば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートあるいはこれらのイソシアネート化合物の3量体、およびこれらのイソシアネート化合物の過剰量と、たとえばエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ソルビトール、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどの低分子活性水素化合物または各種ポリエステルポリオール類、ポリエーテルポリオール類、ポリアミド類の高分子活性水素化合物などとを反応させて得られる末端イソシアネート基含有化合物が挙げられる。
【0025】
イソシアネート化合物としてはブロック化イソシアネートることが好ましい。
イソシアネートブロック化剤としては、例えばフェノール、チオフェノール、メチルチオフェノール、エチルチオフェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシノール、ニトロフェノール、クロロフェノールなどのフェノール類、アセトキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシムなそのオキシム類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、エチレンクロルヒドリン、1,3−ジクロロ−2−プロパノールなどのハロゲン置換アルコール類、t−ブタノール、t−ペンタノール、などの第3級アルコール類、ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム、β−プロピロラクタムなどのラクタム類が挙げられ、その他にも芳香族アミン類、イミド類、アセチルアセトン、アセト酢酸エステル、マロン酸エチルエステルなどの活性メチレン化合物、メルカプタン類、イミン類、尿素類、ジアリール化合物類重亜硫酸ソーダなども挙げられる。ブロック化イソシアネートは上記イソシアネート化合物とイソシアネートブロック化剤とを従来公知の適宜の方法より付加反応させて得られる。
【0026】
これらの架橋剤には、その種類に応じて選択された公知の硬化剤あるいは促進剤を併用することもできる。
【0027】
本発明で使用するコロイダルシリカとは、珪酸ソーダから作製される無水珪酸の超微粒子を水中または溶剤、エチレングリコールなどの有機化合物液体に分散したコロイド溶液である。コロイダルシリカの粒子径は一般には1〜100nmとされるが、5〜60nmのものが好ましい。コロイダルシリカの形状は通常は球状であるが、球状の一次粒子が連鎖状につながった特殊な形状のものも使用できる。
【0028】
コロイダルシリカはそのコロイダル溶液を塗料配合時に添加して使用することもできるが、配合後のコロイダルシリカ溶液の安定性、耐食性の面からポリエステル樹脂(A)を重合する際に、そのエステル化時またはエステル化終了時に添加してから重合することが好ましい。コロイダルシリカを重合時に配合することにより、コロイダルシリカの凝集を防ぎ、透明なワニスが得られ、耐食性などの塗膜物性も塗料配合時に添加する場合より良好なものになる。
コロイダルシリカをポリエステル樹脂の重合時に添加する場合はそのコロイド溶液の分散媒は水またはエチレングリコールなどのグリコール類が好ましい。
【0029】
本発明の塗料用樹脂組成物の焼付け温度は金属板の大きさ、厚さ、また焼き付け炉の能力、塗料の硬化性などにより任意に選択される。塗料組成物の製造にはロール練り機、ボールミル、サンドミル、ブレンダーなどの混合機が用いられる。塗装に当たってはローラー塗り、ロールコーター、スプレー塗装、静電塗装などが適時選択される。
【0030】
本発明の塗料用樹脂組成物は目的、用途に応じて酸化チタン、タルク、硫酸バリウム、などの体質顔料、ジンククロメート、ストロンチウムクロメート、カルシウムクロメート等の防食顔料、公知の着色剤、シリカ、ワックスなどの添加剤、グラスファイバー等を配合することができる。
【0031】
本発明の塗料用樹脂組成物は有機溶媒に溶解した形で使用されるものである。
有機溶媒としては、例えばトルエン、キシレン、ソルベッソ100、ソルベッソ150、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、メチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、N−メチルピロリドン、二塩基酸エステル等から溶解性、蒸発速度を考慮して適宜選択される。
【0032】
本発明の塗料用樹脂組成物はそれ自体を塗布焼付けしただけでも充分な性能を示すため、塗装金属板の裏面コートなどに好適であるが、さらに、プライマーとして使用することが好ましく、耐候性、耐汚染性、耐アルカリ性などを向上する目的でトップコートとして公知の上塗り塗料を塗布することもできる。
【0033】
【実施例】
以下本発明を実施例を用いて説明する。実施例中、単に部とあるのは重量部を示す。また、各測定項目は以下の方法に従った。
【0034】
1.還元粘度ηsp/c(dl/g)
ポリエステル樹脂0.10gをフェノール/テトラクロロエタン(重量比6/4)の混合溶媒25ccに溶かし、30℃で測定した。
【0035】
2.ガラス転移点温度
示差走査熱量計(DSC)を用いて、20℃/分の昇温速度で測定した。サンプルは試料5mgをアルミニウム押え蓋型容器に入れ、クリンプして用いた。
【0036】
3.酸価
試料0.2gを精秤し20mlのクロロホルムに溶解した。ついで、0.01Nの水酸化カリウム(エタノール溶液)で滴定して求めた。指示薬には、フェノールフタレインを用いた。
【0037】
4.加工性
塗装鋼板を180度折り曲げ、屈曲部に発生する割れを10倍のルーペで観察し判定した。2Tとは折り曲げ部に同じ板厚のものを2枚挟んだ場合を示し、0Tは板を挟まなくて180度折り曲げた場合を示す。
【0038】
5.耐アルカリ性
塗装鋼板を5%NaOH中に48時間浸漬し、塗面のブリスタ−の発生状態をASTM D714−56に準じて評価した。異常のない場合は10とした。
【0039】
6.耐酸性
塗装鋼板を5%HCl中に48時間浸漬し、塗面のブリスタ−の発生状態をASTM D714−56に準じて評価した。異常のない場合は10とした。
【0040】
7.耐食性
塗装鋼板を所定時間35℃で5%NaCl塩水噴霧試験を実施し、ブリスターの発生状況を目視判定した。耐食性はクロスカット部、端面(切断部)、2T加工部について実施した。尚、塩水噴霧時間は500時間と1000時間で評価した。評価基準を以下に示す。
2T加工部
◎:異常なし ○:ほとんどブリスターなし △:ブリスター発生
×:著しくブリスター発生
クロスカット部(ブリスターのふくれ幅)
◎:1mm以下 ○:1〜5mm △:5〜10mm ×:10mm以上
×:ブリスター多数発生
端面(ブリスターのふくれ幅)
◎:1mm以下 ○:1〜5mm △:5〜10mm ×:10mm以上
【0041】
8.上塗り塗料の作製
あらかじめ溶解した市販の高分子量ポリエステル バイロン300 60固形部、バイロン200 40固形部(何れも東洋紡績(株)製)、メチルエーテル化メチロールメラミン スミマールM40S(不揮発分80%、住友化学工業(株)製)31部、p−トルエンスルホン酸の10%ベンジルアルコール溶液2.5部、酸価チタン125部を加え、ガラスビーズ型高速振とう機で5時間分散し上塗り塗料を作製した。尚、溶剤はシクロヘキサノン/ソルベッソ150=50/50(重量比)混合品を適量使用した。
【0042】
9.塗装鋼板(試験片)の作製
0.5mm厚の亜鉛目付量60g/m2 の溶融亜鉛めっき鋼板にクロメート処理を施したものを基材とした。この基材に所定のプライマーを乾燥膜厚が5μmになるように塗布し、210℃×50秒焼付けた。ついで、8.で作製した上塗り塗料を乾燥膜厚が20μmになるように塗布し、230℃×60秒焼付けて塗装鋼板を作製した。
【0043】
合成例(A)
攪拌機、コンデンサー、温度計を具備した反応容器にテレフタル酸174部、イソフタル酸110部、アジピン酸188部、無水トリメリット酸5.8部、エチレングリコール353部、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物であるDA−350(日本油脂(株)製)288部、形状が球状で粒子径10〜20nmのコロイダルシリカのエチレングリコール分散液(固形分20%)19固形部、テトラブチルチタネート0.306部を仕込み、窒素雰囲気加圧下で160℃から240℃まで、4時間かけてエステル化反応を行った。
ついで系内を徐々に減圧していき、50分かけて5mmHgまで減圧し、さらに0.3mmHg以下の真空下、260℃にて60分間重縮合反応を行った。得られたポリエステル樹脂(A)はNMR等の組成分析の結果、酸成分がモル比でテレフタル酸/イソソフタル酸/アジピン酸/トリメリット酸=35/22/42/1であり、グリコール成分がモル比でエチレングリコール/DA−350=68/32であり、コロイダルシリカの含有量は得られたポリエステル樹脂中に2重量%であった。また、還元粘度を測定したところ0.35dl/gであり、酸価15当量/106 g、ガラス転移温度15℃であった。
このポリエステル樹脂Aをシクロヘキサノン/ソルベッソ150(エクソン化学(株)製)=50/50(重量比)に固形分40%で溶解したところ、透明な淡黄色のワニスを得た。結果を表1に示す。
【0044】
以下、合成例(A)に準じた方法により表1〜表2に示す組成のポリエステル樹脂(B)〜(I)を合成した。
【0045】
合成例(J)
合成例(A)と同様にして酸成分がモル比でテレフタル酸/イソフタル酸/マレイン酸=50/42/8であり、グリコール成分がモル比でエチレングリコール/1,6−ヘキサンジオール=40/60であり、還元粘度が0.4dl/g、酸価が10当量/106 g、数平均分子量が11,000のポリエステル樹脂を得た。
ついで、得られたポリエステル樹脂175部をシクロヘキサノン/ソルベッソ150(エクソン化学(株)製)=50/50(重量比)に固形分40%で溶解し、メタクリル酸メチル20部、メタクリル酸ブチル10部を仕込み、110℃に加熱し、カヤエステルO(化薬ヌーリー(株)製)の10%キシレン溶液を50部を3時間かけて滴下した後、110℃で2時間反応させて固形分40%のアクリル変性ポリエステル樹脂(J)を得た。
【0046】
合成例(K)
攪拌機、コンデンサー、温度計を具備した反応容器にテレフタル酸258部、イソフタル酸90部、セバシン酸182部、エチレングリコール176部、ネオペンチルグリコール173部、形状が球状で粒子径10〜20nmのコロイダルシリカのエチレングリコール分散液(固形分20%)94固形部、テトラブチルチタネート0.306部を仕込み、窒素雰囲気加圧下で160℃から240℃まで、4時間かけてエステル化反応を行った。
ついで、180℃に冷却し、ポリメタクリル酸メチルのマクロモノマHA−6(東亜合成(株)製)270部を仕込み、系内を徐々に減圧していき、50分かけて5mmHgまで減圧し、さらに0.3mmHg以下の真空下、260℃にて60分間重縮合反応を行った。得られたアクリル変性ポリエステル(K)はやや白濁した淡黄色液体であったが、これはアクリルとエステルの相溶性に起因するものである。NMR等の組成分析の結果、酸成分がモル比でテレフタル酸/イソソフタル酸/セバシン酸=52/18/30であり、グリコール成分がモル比でエチレングリコール/メオペンチルグリコール/HA−6=53.5/45/1.5であり、コロイダルシリカの含有量は得られた変性ポリエステル樹脂中に10重量%であった。また、還元粘度を測定したところ0.60dl/gであり、酸価25当量/106 g、ガラス転移温度15℃であった、数平均分子量18,000であった。
【0047】
合成例(L)
攪拌機、コンデンサー、温度計を具備した反応容器にテレフタル酸174部、イソフタル酸110部、アジピン酸188部、無水トリメリット酸5.8部、エチレングリコール353部、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物であるDA−350(日本油脂(株)製)288部、形状が球状で粒子径10〜20nmのコロイダルシリカのエチレングリコール分散液(固形分20%)55固形部、テトラブチルチタネート0.306部を仕込み、窒素雰囲気加圧下で160℃から240℃まで、4時間かけてエステル化反応を行った。
ついで系内を徐々に減圧していき、50分かけて5mmHgまで減圧し、さらに0.3mmHg以下の真空下、260℃にて60分間重縮合反応を行った。ついで、窒素雰囲気下で200℃まで冷却し、無水トリメリット酸12部を仕込み、30分付加反応させた。
得られた共重合ポリエステルはNMR等の組成分析の結果、酸成分がモル比でテレフタル酸/イソソフタル酸/アジピン酸/トリメリット酸=35/22/42/1であり、グリコール成分がモル比でエチレングリコール/DA−350=68/32であり、還元粘度0.35dl/g、酸価130当量/106 g、ガラス転移温度15℃であった。
ついで、このポリエステル樹脂100部をシクロヘキサノンに固形分60%になるように溶解し、さらにエポキシ樹脂エピコート1004(油化シェルエポキシ(株)製)15部を溶解し、窒素雰囲気下で120℃に加熱した。ついで、トリフェニルホスフィン0.2部を仕込み4時間反応させて、淡黄色透明のエポキシ変性ポリエステル樹脂(L)を得た。変性ポリエステル(L)に含まれるコロイダルシリカの含有量は樹脂中に5重量%であった。この樹脂の酸価は72当量/106 gであった。
【0048】
合成例(M)
合成例(A)と同様にして酸成分がモル比でテレフタル酸/イソフタル酸=50/50であり、グリコール成分がモル比でエチレングリコール/DA−350(ビスフェノールAのエチレンオキサイド2.2モル付加物、日本油脂(株)製)=45/55であり、還元粘度が0.15dl/g、酸価が10当量/106 g、数平均分子量が2,000で、1次粒子径が10〜20nmの球状の粒子が連鎖状につながった形状のコロイダルシリカが6重量%含有するポリエステル樹脂を得た。
ついで、このポリエステル樹脂100部をシクロヘキサノンに固形分が50%になるように溶解した後、鎖延長剤としてネオペンチルグリコール5部を仕込み溶解した。ついで窒素雰囲気下で80℃に加熱し、ジメフェニルメタンジイソシアネートを24部仕込み、3時間反応させ、ウレタン変性ポリエステル樹脂(M)を得た。得られた変性ポリエステル樹脂は淡黄色透明で、還元粘度0.8dl/g、数平均分子量25,000、酸価15当量/106 g、ガラス転移点温度80℃であった。変性後のコロイダルシリカの含有量は5重量%であった。
【0049】
比較合成例(N)〜(O)
合成例(A)に準じた方法により表3に示す組成のポリエステル樹脂(N)〜(O)を合成した。
【0050】
実施例 1
ポリエステル樹脂(A)溶液100固形部に酸化チタン50部、ストロンチウムクロメート50部、メチルエーテル化メチロールメラミン(商品名:スミマールM40S、不揮発分80%、住友化学工業(株)製)20固形部、p−トルエンスルホン酸の10%ベンジルアルコール溶液2.5部を加え、ガラスビーズ型高速振とう機で5時間分散しプライマー塗料を作製した。
【0051】
この塗料組成物を9.に記述した方法で塗布、焼付けして塗装鋼板を作製し、所定の試験をおこなった。結果を表5に示す。このように、コロイダルシリカを配合しない同一組成のポリエステル樹脂と比較して(比較例1)、耐食性がクロスカット部、端面、加工部共に著しく向上していることがわかる。
【0052】
以下、表4〜表8に示す組成により同様にして、実施例2〜5、参考例1〜8、比較例1〜8の塗料組成物を作成し、塗布、焼付けを行った。得られた塗装鋼板の試験結果を表4〜表8に示す。ただし、塗料の配合比は固形分換算で表示した。いずれの実施例においても良好な耐食性と耐薬品性を有し、相当するコロイダルシリカを配合しない場合と比較して、そのポリエステル樹脂の特性を損なうことなく耐食性が著しく向上していることが分かる。
【0053】
【表1】
【0054】
【表2】
【0055】
【表3】
【0056】
【表4】
【0057】
【表5】
【0058】
【表6】
【0059】
【表7】
【0060】
【表8】
【0061】
【発明の効果】
本発明の塗料用樹脂組成物は特定のポリエステル樹脂にコロイダルシリカを配合することにより、ポリエステル樹脂の特性を損なうことなく著しく耐食性、耐薬品性を向上することができる。また、コロイダルシリカを特定のポリエステル樹脂を重合する際に配合することにより透明なワニスが得られ、良好な塗膜外観と耐食性が得られる。
従って、本発明の塗料用樹脂をプライマーに使用することにより、従来のポリエステル樹脂あるいはエポキシ樹脂と比較して、クロスカット部、加工部、端面を問わず優れた耐食性が得られるため、ポリエステル樹脂の組成を調整することにより、加工性、スクラッチ性、耐薬品性などの塗膜物性と各種耐食性とを高度に両立することが可能となる。
また、加工部および端面の耐食性が優れるため特に高度の耐食性が要求される、建材、屋外器物はもとより、冷蔵庫、洗濯機、エアコン室外機などの耐食性の必要な家電用途にも幅広く使用することができる。
Claims (1)
- (A)(A−a)酸成分が芳香族ジカルボン酸57〜100モル%、脂肪族および/または脂環族ジカルボン酸0〜42モル%と、(A−b)グリコール成分が下記一般式(I)で示されるビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物および/またはプロピレンオキサイド付加物30〜55モル%、その他のグリコールが45〜70モル%と、からなるポリエステル樹脂に、(B)前記ポリエステル樹脂(A)と反応し得るアルキルエーテル化アミノホルムアルデヒド樹脂と(C)コロイダルシリカとを(A)/(B)=95/5〜60/40(重量比)、かつ(A)/(C)=99.9/0.1〜70/30(重量比)の割合で配合したものであって、コロイダルシリカ(C)がポリエステル樹脂(A)の重合する際に添加されたものであることを特徴とする塗料用樹脂組成物。
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