JPH07331167A - 被覆組成物とこれを塗装した塗装金属板 - Google Patents

被覆組成物とこれを塗装した塗装金属板

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JPH07331167A
JPH07331167A JP6126380A JP12638094A JPH07331167A JP H07331167 A JPH07331167 A JP H07331167A JP 6126380 A JP6126380 A JP 6126380A JP 12638094 A JP12638094 A JP 12638094A JP H07331167 A JPH07331167 A JP H07331167A
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JP
Japan
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polyester resin
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resin
resistance
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JP6126380A
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Inventor
Kiwamu Yoshida
究 吉田
Kenji Ikishima
健司 壱岐島
Hiroyuki Suishi
弘之 水師
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Nippon Steel Corp
Original Assignee
Sumitomo Metal Industries Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 固形分基準で、数平均分子量5000以上の共重
合ポリエステル樹脂を70〜90重量部、架橋剤を30〜10重
量部、顔料を樹脂100 重量部に対して70〜120 重量部の
割合で含有する被覆組成物と、これを塗装した塗装金属
板。共重合ポリエステル樹脂 (70〜90重量部) のうち、
50〜90重量部はTgが40℃以上の高Tgポリエステル樹脂、
0〜40重量部はTgが10℃以下の低Tgポリエステル樹脂で
ある。架橋剤は、ブトキシ化メチロールメラミン以外
のアルキルエーテル化アミノホルムアルデヒド樹脂また
は多価イソシアネートと、ブトキシ化メチロールメラ
ミン(に対して3〜40重量%) とからなる。 【効果】 加工性、耐疵付性、耐汚染性、耐薬品性のい
ずれも優れた塗膜が得られる。低Tgポリエステル樹脂を
併用すると、低温加工性が向上。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、優れた加工性、耐汚染
性、耐疵付性および耐薬品性を有する樹脂皮膜を形成で
きる被覆組成物と、これを塗装した塗装金属板に関す
る。本発明の塗装金属板は、特に家電製品、自動車、建
材、事務機器等の用途に適している。
【0002】
【従来の技術】塗装金属板は、鋼板その他の金属板に、
成形加工前に予め塗料を塗布し、焼付けて塗装を完了し
てから出荷されるものであり、需要家で加工・組立を行
うと直ちに製品になる。需要家での塗装工程が省略で
き、塗装外観も良好であることから、冷蔵庫、洗濯機、
電子レンジ等の室内用家電製品や、自動販売機、エアコ
ン室外機等の屋外で使用される電気製品等に多用される
ようになってきた。
【0003】このように、塗装金属板は、塗装後に加工
・組立を行うものであるから、その塗膜には高度の加工
性が要求されるとともに、耐疵付性、耐汚染性、耐薬品
性といった性能が要求される。
【0004】一般に、加工性の良い塗膜は柔らかく、耐
疵付性に劣り、耐汚染性もあまり良くない。これに対し
て、耐疵付性に優れた塗膜は硬く、耐汚染性も比較的良
好であるが、加工性に劣る。
【0005】これらの性能を高度にバランスさせたもの
として粉体塗装鋼板が知られている。しかし、粉体塗装
鋼板ではいわゆる柚子肌と呼ばれる塗膜の凹凸が発生
し、平滑で光沢ある鮮映性に優れた塗装外観が得られな
い上、生産速度が10〜20 m/minと低いという問題もあ
る。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】従って、塗装金属板の
用途拡大のために、加工性、耐疵付性、耐汚染性、耐薬
品性などの性能をいずれも満たした塗装金属板を、高速
塗装が可能な溶剤系塗料の塗装によって製造することが
なお求められており、そのための塗料 (即ち、被覆組成
物) の探究がなされている。
【0007】例えば、特開平5−70736 号公報には、加
工性、耐疵付性、耐汚染性に優れ、鮮映性にも優れた溶
剤系塗料用の樹脂組成物が開示されている。この樹脂組
成物は、難溶解性の共重合ポリエステルの基本骨格中に
スルホン酸金属塩基を全酸または全アルコール成分に対
して 0.1〜5モル%導入した共重合ポリエステルを、特
定の溶剤に溶解または分散させたものからなる。この樹
脂組成物を用いた塗装鋼板は、従来の溶剤系塗装鋼板に
比べて、加工性と耐疵付性のバランスに優れるが、耐汚
染性については満足できるレベルまで到達していない。
【0008】特開平4−256469号公報には、加工性、耐
汚染性に優れたプレコート鋼板が開示されている。塗装
に使用する樹脂組成物は、高分子量線状ポリエステルに
硬化剤のメラミン樹脂およびスルホン酸系硬化促進剤を
配合したものからなる。しかし、この塗装鋼板は耐疵付
性は十分ではなく、耐薬品性、耐汚染性に関しても十分
な効果は得られていない。
【0009】色材協会誌Vol.64, No.12 (1991)には壱岐
島等により、ポリエステル/メラミン系塗膜におけるメ
ラミン濃化現象と耐汚染性等の表面物性について報告さ
れている。しかし、上記報告では加工性、耐疵付性に関
しては検討されていない。
【0010】同様にCAMP−ISIJ Vol.6 (1993) 1494〜14
97にも、ポリエステル/メラミン系塗膜の表面構造と耐
汚染性の関係および酸触媒の種類、添加量がメラミンの
表面濃化に及ぼす影響が報告されているが、耐疵付性あ
るいは耐薬品性に関する記載はなく、ブトキシ化メチロ
ールメラミンの効果に関しても検討されていない。
【0011】特開平2−269168号公報には、ガラス転移
温度5〜40℃、数平均分子量15,000〜30,000のポリエス
テル樹脂とヘキサメトキシメチロールメラミン樹脂とを
重量比で75/25〜55/45に配合した樹脂100 重量部に対
して、ドデシルベンゼンスルホン酸のアミンブロック体
を1〜2重量部配合してなる塗装金属板用塗料組成物が
開示されている。この組成物を用いた塗装鋼板は、確か
に耐汚染性の改善効果は認められるが、製造条件によっ
ては十分な耐汚染性が得られず、さらに耐疵付性、特に
温間加工時の疵付性が十分でないという問題点もある。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、加工性、
耐疵付性、耐汚染性、耐薬品性のいずれにも優れた塗装
金属板を実現すべく検討した結果、数平均分子量5000以
上、ガラス転移温度が40℃以上の共重合ポリエステル樹
脂をベース樹脂とする塗膜が加工性と耐疵付性のバラン
スがよいこと、しかしこのベース樹脂からなる溶剤系塗
料の塗布焼付においては、焼付硬化過程で有機溶剤が塗
膜中に残留するため、耐汚染性、耐薬品性が著しく低下
することを看取した。
【0013】かかる知見に基づきさらに検討を重ねた結
果、耐汚染性を改善するために架橋剤添加量を増大させ
ると加工性が著しく損なわれること、加工性を損なわず
に耐汚染性、耐薬品性を改善するには、ブトキシ化メチ
ロールメラミンをその他の架橋剤に対して3〜40wt%添
加することが有効であることを見出した。また、耐薬品
性、耐沸水性等の従来は皮膜バルクの性能と考えられて
いた物性についても、上記の架橋剤の選定により飛躍的
に改善できることが判明した。
【0014】さらに、厳しい加工性、特に低温での加工
性が要求される場合には、上記の共重合ポリエステル樹
脂にガラス転移温度が10℃以下の共重合ポリエステル樹
脂を少量配合することによって、極めて優れた低温加工
性、耐疵付性、耐汚染性、耐薬品性を発現できることも
見出した。
【0015】ここに、本発明の要旨は、溶剤中に、固形
分として下記A1を90〜50重量部、A2を0〜40重量部
(0を含む) 、B1とB2を合計で30〜10重量部含有
し、A1とA2の合計量は70〜90重量部、B2はB1に
対して3〜40wt%であり、かつ以上の成分の固形分合計
量100 重量部に対して70〜120 重量部の顔料を含有する
ことを特徴とする被覆組成物にある。 A1:数平均分子量5000以上、ガラス転移温度40℃以上
の共重合ポリエステル樹脂、 A2:数平均分子量5000以上、ガラス転移温度10℃以下
の共重合ポリエステル樹脂、 B1:ブトキシ化メチロールメラミン以外のアルキルエ
ーテル化アミノホルムアルデヒド樹脂および多価イソシ
アネートから選ばれた少なくとも1種の架橋剤、 B2:ブトキシ化メチロールメラミン。
【0016】本発明により、上記の被覆組成物の塗布焼
付により形成した塗膜を金属板上に有することを特徴と
する、加工性、耐汚染性、耐疵付性、耐薬品性に優れた
塗装金属板も提供される。
【0017】好適態様においては、前記共重合ポリエス
テル樹脂A1は、汎用有機溶剤に難溶解性の共重合ポリ
エステルの基本骨格中に、スルホン酸金属塩基を、全酸
または全アルコール成分に対して 0.1〜5モル%導入し
た共重合ポリエステル樹脂であり、有機溶剤はシクロヘ
キサノン、イソホロン、1−メチル2−ピロリドンから
選ばれた少なくとも1種の溶剤を主体とするものであ
る。
【0018】
【作用】以下、本発明の被覆組成物および塗装金属板に
ついて詳細に説明する。
【0019】共重合ポリエステル樹脂 本発明の被覆組成物のベース樹脂は、共重合ポリエステ
ル樹脂である。共重合ポリエステル樹脂としては、下記
のA1のみ、またはA1とA2との混合物を使用する: A1:数平均分子量5000以上、ガラス転移温度 (Tg) 40
℃以上の共重合ポリエステル樹脂 (以下、高Tgポリエス
テル樹脂という) 、 A2:数平均分子量5000以上、Tgが10℃以下の共重合ポ
リエステル樹脂 (以下、低Tgポリエステル樹脂という)
【0020】高Tgポリエステル樹脂は加工性と耐疵付性
のバランスがとれた塗膜を形成することができ、これに
低Tgポリエステルを混合すると、特に低温での加工性が
向上する。
【0021】高Tgポリエステル樹脂と低Tgポリエステル
樹脂は、いずれも共重合ポリエステル樹脂である。ここ
で、共重合ポリエステルとは、多塩基酸と多価アルコー
ルとから合成されたポリエステル樹脂であって、酸成分
とアルコール成分の少なくとも一方が2種以上の化合物
からなるものを意味する。
【0022】共重合ポリエステルの合成に使用できる多
塩基酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル
酸、 2,6−ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカル
ボン酸;アジピン酸、コハク酸、グルタル酸、セバシン
酸、マレイン酸、フマル酸、ドデカンジカルボン酸など
の脂肪族ジカルボン酸; 1,2−シクロヘキサンジカルボ
ン酸、 1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、 1,4−シク
ロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸な
ど、ならびにそれらの低級エステル、酸無水物等があ
る。
【0023】多価アルコール (ポリオール) としては、
エチレングリコール、 1,2−プロパンジオール、 1,3−
プロパンジオール、 1,3−ブタンジオール、 1,4−ブタ
ンジオール、ネオペンチルグリコール、 1,5−ペンタン
ジオール、 1,6−ヘキサンジオール、2−ブチル−2−
エチルプロパンジオール、 1,4−シクロヘキサンジメタ
ノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコー
ル等のジオール類が例示される。
【0024】さらに、必要に応じて3価以上の多塩基酸
であるトリメリット酸、ピロメリット酸など、あるいは
3価以上の多価アルコールであるペンタエリスリトー
ル、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、
グリセリン等を多塩基酸あるいは多価アルコールの一部
に用いることもできる。
【0025】多塩基酸と多価アルコールはいずれも1種
もしくは2種以上を使用できるが、その少なくとも一方
は2種以上を使用して共重合ポリエステルを合成する。
共重合反応は常法に従って、通常は適当な触媒の存在下
に、縮合またはエステル交換反応を経て進行させる。
【0026】高Tgポリエステル樹脂A1と低Tgポリエス
テル樹脂A2は、いずれも数平均分子量が5000以上の共
重合ポリエステルである。数平均分子量が5000未満で
は、十分な加工性が得られない。共重合ポリエステル樹
脂の数平均分子量の上限は特に定めないが、数平均分子
量が30,000以上になっても加工性はほとんど改善されな
いばかりでなく、樹脂組成物の粘度が高くなり、塗装作
業性が低下するため、好ましくは30,000以下である。好
ましい数平均分子量の範囲は8000〜25,000であり、より
好ましくは10,000〜20,000の範囲内である。
【0027】高Tgポリエステル樹脂A1 本発明の被覆組成物は、Tgが40℃以上、数平均分子量が
5000以上の共重合ポリエステル樹脂からなる高Tgポリエ
ステル樹脂を主要なベース樹脂成分として含有する。高
Tgポリエステル樹脂のTgが40℃より低くなると、塗膜の
硬度が低下し、耐疵付性、耐汚染性が劣化する。高Tgポ
リエステル樹脂のTgは、好ましくは45℃以上である。
【0028】好ましい高Tgポリエステル樹脂は、多価カ
ルボン酸成分がテレフタル酸とイソフタル酸とを含有
し、多価アルコール成分がエチレングリコールとネオペ
ンチルグリコールおよび/または 1,4−シクロヘキサン
ジメタノールとを含有するものである。
【0029】本発明で高Tgポリエステル樹脂として使用
するのに適した共重合ポリエステル樹脂の1例は、特開
平5−70736 号公報に記載のものである。この共重合ポ
リエステル樹脂は、汎用有機溶剤に難溶解性の基本骨格
を有し、この基本骨格からなる分子鎖中にスルホン酸金
属塩基を全酸または全アルコール成分に対して 0.1〜5
モル%の割合で導入した共重合ポリエステルである。
【0030】ここで、汎用有機溶剤とは、メチルエチル
ケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、
イソホロン、トルエン、キシレン、ソルベッソ類、酢酸
エチル、酢酸ブチル、セロソルブ類、カルビトール類等
を含む、通常の塗料に使用される有機溶剤を意味する。
【0031】この難溶解性骨格を持つ共重合ポリエステ
ル樹脂として特に好ましいのは、多価カルボン酸成分の
60モル%以上がテレフタル酸からなり、多価アルコール
成分の60モル%以上がエチレングリコールからなるもの
である。即ち、反復単位中のエチレンテレフタレート単
位が多く、それにより基本骨格が難溶解性となる。これ
らの成分が少ないと、樹脂の凝集力が低下し、加工性、
硬度だけでなく、耐汚染性も低下することがある。テレ
フタル酸に併用する多価カルボン酸成分としてはイソフ
タル酸が好ましく、エチレングリコールに併用する多価
アルコール成分としてはネオペンチルグリコールおよび
/または 1,4−シクロヘキサンジメタノールが好まし
い。その他の多価カルボン酸および/または多価アルコ
ール成分をさらに使用することもできる。
【0032】この共重合ポリエステルは、難溶解性の基
本骨格を持つことから、そのままでは難溶解性のため塗
料化できないが、少量のスルホン酸金属塩基を分子鎖中
に導入することによって、耐薬品性、加工性、硬度など
の性能を損なうことなく溶解性が高まり、シクロヘキサ
ノン、イソホロン、1−メチル−2−ピロリドンなどの
有機溶剤に溶解または分散可能になり、塗料化が可能と
なる。しかし、この共重合ポリエステル樹脂をベース樹
脂として使用しても、架橋剤が本発明の範囲外のもので
あると、前述したように、耐汚染性および耐薬品性は不
十分である。
【0033】スルホン酸金属塩基は、スルホン酸金属塩
基を含むジカルボン酸やグリコールを共重合反応成分の
一部として利用することにより分子鎖中に導入すること
ができる。スルホン酸金属塩基を含むジカルボン酸とし
ては、スルホテレフタル酸、5−スルホイソフタル酸、
4−スルホナフタレン−2,7 −ジカルボン酸、5(4−ス
ルホフェノキシ) イソフタル酸等の金属塩を挙げること
ができる。金属塩としてはLi、Na、K、Mg、Ca、Cu、Fe
等の塩が挙げられる。特に好ましいものは5−ナトリウ
ムスルホイソフタル酸である。スルホン酸金属塩基を含
むジカルボン酸は、全酸成分の 0.1〜5モル%の量で共
重合させる。スルホン酸金属塩基を0.1モル%以上導入
しないと十分な溶解性が得られず、その導入量が5モル
%を超えると、塗膜の耐水性が低下する。スルホン酸金
属塩基の導入量は好ましくは 0.4〜4モル%である。
【0034】この基本骨格が難溶解性の共重合ポリエス
テル樹脂を高Tgポリエステル樹脂として使用する場合、
被覆組成物の調製に用いる有機溶剤としては、シクロヘ
キサノン、イソホロン、および1−メチル−2−ピロリ
ドンの1種もしくは2種以上を使用する。これらの溶剤
以外では十分な溶解性を与えることが困難である。但
し、溶解性を損なわない範囲で、他の汎用有機溶剤を混
合した混合溶剤を使用することはできる。
【0035】本発明で用いる高Tgポリエステル樹脂は、
上記の難溶解性の基本骨格を持つものに限られるのでは
ない。従来より溶剤系ポリエステル樹脂塗料にベース樹
脂として使用されてきた、汎用有機溶剤に対して易溶性
の共重合ポリエステルも、Tgが40℃以上で、数平均分子
量が5000以上であれば、本発明において高Tgポリエステ
ル樹脂として使用できる。そして、高Tgポリエステル樹
脂が汎用有機溶剤に易溶性のものであっても、上記の難
溶解性基本骨格のものを使用した場合と遜色のない塗膜
性能 (加工性、耐汚染性、耐疵付性、耐薬品性) を実現
できる。これは、後述するように、架橋剤として高Tgポ
リエステル樹脂の加工性や耐汚染性の改善が可能な組合
わせを選択したためである。
【0036】汎用有機溶剤に易溶性の高Tgポリエステル
樹脂は、上記の難溶解性の基本骨格を持つ高Tgポリエス
テル樹脂に比べて、多価カルボン酸成分中のテレフタル
酸の割合、および多価アルコール成分中のエチレングリ
コールの割合が少ない。例えば、テレフタル酸の割合は
60モル%以下であり、エチレングリコールの割合も60モ
ル%以下である。従って、反復単位中のエチレンテレフ
タレート単位の割合が少ない。高Tgポリエステル樹脂が
汎用有機溶剤に易溶性のものである場合には、その共重
合ポリエステル樹脂が溶解する適当な有機溶剤を被覆組
成物の調製に使用すればよい。
【0037】高Tgポリエステル樹脂は、共重合ポリエス
テル成分と後述する架橋剤成分の合計量 (固形分基準)
を100 重量部とした時 (以下の各成分の配合割合におい
ても同じ) に、50〜90重量部を占める量で使用する。即
ち、高Tgポリエステル樹脂は樹脂固形分の主成分とな
る。好ましい割合は55〜85重量部であり、さらに好まし
くは60〜80重量部である。
【0038】低Tgポリエステル樹脂A2 上記の高Tgポリエステル樹脂に加えて、Tgが10℃以下の
低Tgポリエステル樹脂を少量併用することで、低温加工
性を向上させることができる。従って、特に低温で厳し
い加工を受ける用途に塗装金属板を使用する場合には、
高Tgポリエステル樹脂に低Tgポリエステル樹脂を併用す
ることが望ましい。
【0039】低Tgポリエステル樹脂の基本骨格は特に限
定されないが、使用する高Tgポリエステル樹脂と相溶性
が良好なものが好ましい。使用可能な低Tgポリエステル
の1例としては、多価カルボン酸成分がテレフタル酸と
アジピン酸とトリメリット酸とを主体とし、多価アルコ
ール成分がエチレングリコールとネオペンチルグリコー
ルと1,3-ブチレングリコールとを主体とするものが挙げ
られる。いずれの成分も、さらに1種もしくは2種以上
の第四成分を含有しうる。
【0040】低Tgポリエステル樹脂のTgが10℃より高い
と、低温加工性の改善幅が小さくなる。好ましくは低Tg
ポリエステル樹脂のTgは−10℃〜7℃である。低Tgポリ
エステル樹脂も、数平均分子量は5000以上のものを使用
する。数平均分子量が5000より小さいと、低温加工性の
改善効果が低下する。
【0041】低Tgポリエステル樹脂を併用する場合、そ
の量は40重量部以下に制限する。添加量が40重量部より
多くなると、耐疵付性 (硬度) 、耐汚染性が低下する。
低Tgポリエステル樹脂の添加による低温加工性の改善効
果を十分に得るには、低Tgポリエステル樹脂を10重量部
以上添加することが好ましい。低Tgポリエステル樹脂を
添加する場合のより好ましい添加量は15〜35重量部であ
る。
【0042】架橋剤 上記共重合ポリエステル樹脂は、それ単独でも塗膜を形
成することができるが、得られた塗膜は耐沸水性、密着
性等が十分でない。従って、本発明の被覆組成物におい
ては架橋剤を共存させる。
【0043】ベース樹脂である共重合ポリエステル樹脂
と架橋剤との配合比率は、重量比で90:10〜70:30の範
囲内とする。即ち、共重合ポリエステル樹脂 (高Tgポリ
エステル樹脂A1単独、またはこれと低Tgポリエステル
樹脂A2との混合物) が90〜70重量部、架橋剤 (後述す
る架橋剤B1とB2との混合物) が10〜30重量部の割合
(合計100 重量部) である。共重合ポリエステル樹脂の
量が90重量部を超えると、塗膜硬度、耐汚染性のみなら
ず、耐沸水性、密着性等が低下する。逆に、共重合ポリ
エステル樹脂の量が70重量部未満であると、加工性が低
下するため好ましくない。好ましい配合量は、共重合ポ
リエステル樹脂が88〜73重量部、特に85〜77重量部、架
橋剤が12〜27重量部、特に15〜23重量部である。
【0044】本発明においては、下記B1とB2の2種
類の架橋剤を併用する: B1:ブトキシ化メチロールメラミン以外のアルキルエ
ーテル化アミノホルムアルデヒド樹脂および多価イソシ
アネートから選ばれた少なくとも1種の架橋剤 B2:ブトキシ化メチロールメラミン。
【0045】 ブトキシ化メチロールメラミン以外の
架橋剤B1 (その他の架橋剤) 共重合ポリエステル樹脂と反応し、良好な物性を示す架
橋剤として、アルキルエーテル化アミノホルムアルデヒ
ド樹脂および多価イソシアネート化合物から選ばれた少
なくとも1種の架橋剤を使用する。
【0046】アルキルエーテル化アミノホルムアルデヒ
ド樹脂は、メタノール、エタノール、n−プロパノー
ル、イソプロパノール、n−ブタノール等の炭素原子数
1〜4のアルコールによってアルキルエーテル化された
ホルムアルデヒドあるいはパラホルムアルデヒド等と尿
素、 N,N−エチレン尿素、ジシアンジアミド、アミノト
リアジン等との縮合生成物である。例えば、メトキシ化
メチロール−N,N −エチレン尿素、メトキシ化メチロー
ルジシアンジアミド、メトキシ化メチロールベンゾグア
ナミン、ブトキシ化メチロールベンゾグアナミン、メト
キシ化メチロールメラミン、ブトキシ化メチロールメラ
ミン、ブトキシ化メチロールメラミン、メトキシ化/ブ
トキシ化混合型メチロールメラミン等が挙げられる。
【0047】本発明においては、ブトキシ化メチロール
メラミンを必ず併用することから、ブトキシ化メチロー
ルメラミンを除くアルキルエーテル化アミノホルムアル
デヒド樹脂を架橋剤として使用する。加工性の面から好
ましいのは、メトキシ化メチロールメラミンおよびメト
キシ化/ブトキシ化混合型メチロールメラミンであり、
これらを単独または混合して使用することができる。
【0048】多価イソシアネート化合物は、芳香族、脂
肪族および脂環式のジイソシアネートおよび3価以上の
ポリイソシアネートを含み、低分子化合物、高分子化合
物のいずれでもよい。具体例としては、テトラメチレン
ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、
トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシ
アネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、
キシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジジイ
ソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ならびに
これらの多価イソシアネート化合物の3量体、およびこ
れらの多価イソシアネート化合物の過剰量と、例えばエ
チレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロ
ールプロパン、モノエタノールアミン、ジエタノールア
ミン、トリエタノールアミン等の低分子活性水素化合物
または各種ポリエステルポリオール類、ポリアミド類等
の高分子活性水素化合物等とを反応させて得られる末端
イソシアネート化合物が挙げられる。
【0049】多価イソシアネート化合物はブロック化し
たもの、即ち、ブロック化イソシアネートであってもよ
い。イソシアネートブロック化剤としては、例えばフェ
ノール、チオフェノール、メチルチオフェノール、エチ
ルチオフェノール、クレゾール、キシレノール、レゾル
シノール、ニトロフェノール、クロロフェノール等のフ
ェノール類;アセトオキシム、メチルエチルケトオキシ
ム、シクロヘキサンオキシム等のオキシム類;メタノー
ル、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコ
ール類;エチレンクロルヒドリン、 1,3−ジクロロ−2
−プロパノール等のハロゲン置換アルコール類;t−ブ
タノール、t−ペンタノール等の第3級アルコール類;
ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロ
ラクタム、β−プロピロラクタム等のラクタム類等が挙
げられる。これ以外に、芳香族アミン類、イミド類、ア
セチルアセトン、アセト酢酸エステル、マロン酸エチル
エステル等の活性メチレン化合物類、メルカプタン類、
イミン類、尿素類、ジアリール化合物類、重亜硫酸ナト
リウム等も使用できる。ブロック化イソシアネートは上
記イソシアネート化合物とイソシアネートブロック化剤
とを従来公知の方法により付加反応させて得られる。
【0050】ブトキシ化メチロールメラミンB2 本発明では、上記の架橋剤B1に対して、少量のブトキ
シ化メチロールメラミンを架橋剤として併用する。この
ブトキシ化メチロールメラミンの併用により、塗膜の耐
汚染性、耐薬品性が改善され、最終的に本発明の目的を
達成することが可能となるのである。
【0051】ブトキシ化メチロールメラミンは、前述の
ように、n−ブタノールによりアルキルエーテル化され
たホルムアルデヒドあるいはパラホルムアルデヒドとア
ミノトリアジンとの縮合生成物である。ブトキシ化メチ
ロールメラミンB2は、その他の架橋剤B1に対して3
〜40重量%の割合で添加する。このブトキシ化メチロー
ルメラミンB2の割合が3重量%未満では、耐汚染性、
耐薬品性の改善効果が十分でない。一方、B2の添加量
が40重量%より多いと、塗膜の加工性が低下する。ブト
キシ化メチロールメラミンB2の好ましい添加量は5〜
30重量%、より好ましくは10〜25重量%である。
【0052】触媒 本発明の被覆組成物において、触媒成分は必須ではない
が、焼付過程における共重合ポリエステル樹脂と架橋剤
との架橋反応を促進させ、短時間の焼付で塗膜を乾燥・
硬化させるために、触媒を添加することが好ましい。
【0053】架橋剤B1がアルキルエーテル化アミノホ
ルムアルデヒド樹脂である場合には、p−トルエンスル
ホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸等のスルホン酸系
触媒が好ましい。架橋剤B1が多価イソシアネート化合
物である場合には、ジラウリル酸−n−ジブチルスズ等
の有機スズ塩やトリエチレンジアミン等の第3級アミン
化合物が触媒として好ましい。
【0054】触媒の添加量は、共重合ポリエステル樹脂
と架橋剤の固形分合計量100 重量部に対して 0.3〜5重
量部が適当である。触媒の添加量が0.3 重量部未満であ
ると、架橋反応が十分に進行せず、5重量部以上になる
と架橋が著しく進行して、加工性が低下するほか、耐沸
水性も低下する。触媒の好ましい添加量は 0.5〜3重量
部である。
【0055】顔料 本発明の被覆組成物は、上述した共重合ポリエステル樹
脂、架橋剤に加えて、顔料を必須成分として含有する。
適当な顔料の例には、塗膜に意匠性、加工性、硬度等を
付与できる着色顔料 (白色および黒色顔料を含む、例え
ば、酸化チタン、酸化亜鉛、クロム酸鉛、カーボンブラ
ック等の各種無機顔料および有機顔料)、塗膜の密着性
を改善できる体質顔料 (例、シリカ、カオリン等) 、塗
膜の耐食性を改善できる防錆顔料 (例、クロム酸ストロ
ンチウム、クロム酸バリウム等)、真珠光沢顔料などが
あり、これらから選んだ1種もしくは2種以上を使用す
る。顔料の種類、比率等は使用目的に合わせて適宜選択
すればよい。
【0056】顔料の添加量は、樹脂成分 (共重合ポリエ
ステル樹脂A1またはA1+A2と、架橋剤B1+B
2) の固形分合計量を100 重量部として70〜120 重量部
(即ち、70〜120 phr)の範囲内である。顔料の添加量が
70重量部未満になると、耐汚染性、耐疵付性、密着性、
そして隠蔽性等が低下し、120 重量部を超えると加工
性、耐汚染性等が低下する。顔料の添加量は好ましくは
80〜110 重量部である。
【0057】その他の添加剤 本発明の被覆組成物には、消泡剤、レベリング剤、表面
硬化調整剤、艶消し剤などの、塗料の慣用されている各
種の添加剤を添加してもよい。その種類や量は、本発明
の塗装金属板の使用目的や製造条件に合わせて適宜選択
すればよい。
【0058】被覆組成物 本発明の被覆組成物は、以上に述べた各成分を汎用有機
溶剤と共に、塗料製造用の適当な混合手段 (例、ロール
練り機、ボールミル、ブレンダ等) を用いて混合するこ
とにより製造される。有機溶剤としては、使用する共重
合ポリエステル樹脂、特に高Tgポリエステル樹脂を溶解
ないし分散させることができ、低Tgポリエステル樹脂
(使用する場合) や架橋剤も可溶であるものを選択す
る。上述したように、高Tgポリエステル樹脂が難溶解性
の基本骨格のものである場合には、有機溶剤の主体はシ
クロヘキサノン、イソホロン、および1−メチル−2−
ピロリドンから選ばれる。有機溶剤の量は、塗装方法に
適した粘度の被覆組成物が得られるように調整する。
【0059】母材および塗装方法 本発明の塗装金属板は、上記の被覆組成物を母材の金属
板の少なくとも片面に塗布した後、焼付けにより塗膜を
硬化させることにより製造される。
【0060】母材の金属板の種類は特に限定されない。
例えば、鋼板、アルミニウム板、銅板、ニッケル板、チ
タン板等が例示される。また、溶融亜鉛めっき、合金化
溶融亜鉛めっき、電気亜鉛めっき、Zn−Ni合金めっきを
始めとする各種の亜鉛合金電気めっき、アルミニウムま
たはアルミニウム合金めっきなどの多様なめっき皮膜を
有するめっき鋼板も母材金属板として有用である。実用
面から好ましい母材は、耐食性が改善されることから、
亜鉛または亜鉛合金めっき鋼板ならびにアルミニウム系
めっき鋼板である。
【0061】母材の金属板は、塗膜密着性の向上のため
に、塗装の前処理として、下地処理および/またはプラ
イマー塗布を行ってもよい。下地処理の例はリン酸亜鉛
処理およびクロメート処理であり、これらの一方または
両方を予め母材に施しておくことが好ましい。また、こ
の下地処理の上にプライマー塗布 (ポリエステル系、エ
ポキシ系、ウレタン系等) を行うと、防錆性を向上させ
ることができる。これらの下地処理やプライマー塗布は
周知であり、本発明においても従来と同様に実施すれば
よい。
【0062】母材への塗布は、ロール塗装、スプレー塗
装、静電塗装などの多様な塗布方法により実施できる。
焼付け温度は、母材の種類、樹脂および架橋剤の種類、
塗膜厚みなどの条件に応じて異なるが、一般には 200〜
240 ℃の範囲内である。塗膜の厚み (乾燥厚み) は、塗
装金属板の用途によっても異なるが、通常はプライマー
下塗り塗膜が3〜12μm、本発明の被覆組成物の上塗り
塗膜が10〜25μm、合計で20〜35μmであり、好ましく
は下塗り塗膜が5〜10μm、上塗り塗膜が15〜20μm、
合計で22〜30μmである。
【0063】
【実施例】以下、本発明を実施例により具体的に説明す
る。製造例および実施例中、部は特に指定のない限り重
量部である。また、次に述べる共重合ポリエステル樹脂
の製造例において、生成樹脂の数平均分子量 (Mn) はゲ
ルパーミッションクロマトグラフ(GPC) で求めた値であ
り、ガラス転移温度 (Tg) は示差走査熱量計(DSC)を用
いて20℃/分の昇温速度で測定した。
【0064】(製造例)共重合ポリエステル樹脂の合成 攪拌機、コンデンサーおよび温度計を備えた反応容器
に、ジメチルテレフタレート 582部(3モル) 、ジメチル
イソフタレート329.8 部(1.7モル) 、アジピン酸36.5部
(0.25モル) 、ジメチル−5−ナトリウムスルホイソフ
タレート14.8部 (0.05モル) 、エチレングリコール 465
部(7.5モル) 、 1,4−シクロヘキサンジメタノール 288
部(2モル) 、ネオペンチルグリコール52部(0.5モル) お
よびテトラブチルチタネート0.556-3(0.0017モル) を仕
込み、 160〜220 ℃まで4時間かけて昇温し、エステル
交換反応を行った。次いで、系内を徐々に減圧してい
き、45分かけて5mmHgまで減圧し、さらに0.3 mmHg以下
の真空下で260 ℃にて60分間重縮合反応を行った。
【0065】得られた共重合ポリエステル樹脂 (表1の
樹脂) は、NMR 等の組成分析の結果、酸成分がモル比
でテレフタル酸/イソフタル酸/アジピン酸/5−ナト
リウムスルホイソフタル酸=60/34/5/1であり、グ
リコール成分がモル比でエチレングリコール/ 1,4−シ
クロヘキサンジメタノール/ネオペンチルグリコール=
75/20/5であった。この共重合ポリエステル樹脂のTg
は63℃、数平均分子量(Mn) は17,000 (表1には17×103
と表示) であった。
【0066】上記の合成方法に準じて、表1に示す各種
の共重合ポリエステル樹脂を合成した。表1に示した共
重合ポリエステル樹脂のうち、A〜Dは本発明で用いる
高Tgポリエステル樹脂、E〜Gは本発明で用いる低Tgポ
リエステル樹脂、H〜KはTgまたはMnが本発明で規定す
る条件とは合致しない比較用の共重合ポリエステル樹脂
である。また、高Tgポリエステル樹脂のうち、Aは汎用
有機溶剤に可溶性の共重合ポリエステル樹脂であり、B
〜Dは基本骨格が汎用有機溶剤に難溶解性であって、ス
ルホン酸金属塩基の導入により溶解性を付与した共重合
ポリエステル樹脂である。
【0067】
【表1】
【0068】(実施例1)母材 塗装母材の金属板としては、板厚0.5 mmの溶融亜鉛めっ
き鋼板 (片面当たりの付着量60 g/m2)を使用した。この
母材鋼板の片面に、塗装前処理として、下地処理とプラ
イマー塗布を行った。下地処理は塗布型クロメート処理
液により行い、Cr換算付着量で40 mg/m2のクロメート皮
膜を形成した。次いで、耐沸水性、端面耐食性、塗膜密
着性を向上させるために、プライマー塗料 (神東塗料製
PSX555)を乾燥膜厚7μmとなるように塗布し、最高到
達鋼板温度 (PMT) 215℃で40秒間の焼付けを行ってプラ
イマー皮膜を硬化させた。
【0069】被覆組成物 上記の製造例で合成した共重合ポリエステル樹脂を、下
記の架橋剤、触媒、顔料および溶媒と混合し、被覆組成
物を調製した。使用したポリエステル樹脂の種類 (表1
の記号) と量 (部) 、架橋剤の種類と量 (部) 、その他
の架橋剤に対するBuMFの比率 (重量%) 、ならびに触媒
の種類を表2および表3にまとめて示す。表2に示した
組成物は本発明にかかる被覆組成物 (本発明例) であ
り、表3に示した組成物は本発明の範囲外の比較例の被
覆組成物である。なお、表3に示した比較例では、ベー
ス樹脂は必ずしも本発明の高Tgまたは低Tgポリエステル
樹脂に合致していないが、便宜上、表3には多量成分を
高Tgポリエステル樹脂、少量成分を低Tgポリエステル樹
脂と表示している。
【0070】架橋剤: 1)その他の架橋剤 ヘキサメトキシメチル化メラミン (HMMMと略記) (住友化学製スミマール M-40S) ヘキサメチレンジイソシアネート (HMDIと略記) (大日本インキ製バーノック D-550) 2)ブトキシ化メチロールメラミン (BuMFと略記) (大日本インキ製スーパーベッカミン J-820-60)触媒 :p−トルエンスルホン酸 (PTSA) ジラウリル酸−n−ジブチルスズ (DBTDL) (触媒の添加量はいずれも1phr =1部)顔料 :酸化チタン系白色顔料 (添加量はいずれも80部) (石原産業製タイペーク R820)溶剤 :シクロヘキサノン (110 〜130 部) 。
【0071】塗装 上記の被覆組成物をロールコーターを用いて、前処理し
た母材溶融亜鉛めっき鋼板の表面に、乾燥膜厚が17μm
になるように塗布し、最高到達鋼板温度 230±10℃で50
秒間焼付けして、塗装鋼板を作製した。得られた塗装鋼
板の加工性、鉛筆硬度、耐疵付性、耐汚染性、および耐
薬品性を、次の試験方法に従って評価した。これらの結
果も、表2 (本発明例) および表3 (比較例) に併せて
示す。
【0072】試験方法 加工性 :塗装面を外側にした 180°曲げ加工において、
10倍ルーペで塗膜に亀裂が認められない最小板挟み枚数
で表示。OTは密着曲げ可能を意味する。試験温度を20℃
および0℃の2水準で実施した。
【0073】鉛筆硬度:疵跡法(JIS K5400) に準拠し、
三菱ユニ (商品名) 鉛筆を用いて塗膜を線引きし、疵が
つく硬度を調べ評価した。この時、鉛筆硬度の各ランク
(例えば2H、H、F等) の間を2段階に分け、次のよ
うに+−表示を加えて評価を行った。 硬←2H, 2H-, H+, H, H-, F+, F, F-, HB+, HB→軟耐爪疵性 :爪で塗膜表面を強くこすり、表面の疵の有無
により、次の基準で耐疵付性を判定した。 ◎:全く痕跡無し ○:殆ど痕跡無し △:若干痕跡有り ×:はっきりと痕跡有りヌープ硬度(KH) :23℃の室内でダイヤモンド製の針を用
いて押し込み硬度を測定した。値が大きいほど塗膜は硬
度が高い。
【0074】耐赤フェルトペン汚染性:塗膜に内田洋行
製の赤色油性フェルトペンで線を描き、24時間放置後、
エタノールを染み込ませたガーゼで拭き取り、残り具合
で次の基準により耐汚染性を評価した。
【0075】◎:完全に除去 ○:殆ど除去 △:若干残る ×:かなり残る耐タバコ汚染性 :容積2L の容器内に塗装鋼板の試験片
(70×70 mm)を入れ、タバコ (ショートピース) 1本分
の煙を吸引充満させて24時間放置した後、試験片を取り
出し、中性洗剤で洗浄してから、色変化ΔEを色差計で
測定した。
【0076】耐アルカリ性:試験片を5% NaOH 溶液に25
℃、60%RH雰囲気下で48時間浸漬し、試験前後の光沢度
を測定し、光沢保持率(%) によって評価した。耐沸水性 :供試材を沸騰水中に3時間浸漬し、その際の
光沢変化を測定した。光沢保持率が90%以上であれば、
耐薬品性は良好である。
【0077】
【表2】
【0078】
【表3】
【0079】表2に示した試験No. 1〜18は本発明例で
ある。高Tgポリエステル樹脂をベース樹脂とし、少量の
ブトキシ化メチロールメラミン(BuMF)を混合したアルキ
ルエーテル化アミノホルムアルデヒド樹脂または多価イ
ソシアネートを架橋剤とすることにより、加工性、硬度
および耐疵付性、耐汚染性、耐薬品性 (耐アルカリ性お
よび耐沸水性) のいずれもが、非常に高水準にあり、高
度かつバランスのよい性能を示した。高Tgポリエステル
樹脂が、汎用有機溶剤に易溶性の樹脂Aであっても、難
溶解性の基本骨格を持つ樹脂B〜Dを用いた場合と遜色
のない結果が得られた。ベース樹脂に低Tgポリエステル
樹脂を添加すると (試験No. 9〜18) 、他の性能を低下
させずに低温 (0℃) での加工性が向上した。
【0080】これに対し、表3に示した比較例は、少な
くとも一つの性能が不十分であった。具体的には、試験
No. 19、28では、高Tgポリエステル樹脂を用いながら、
架橋剤添加量が少なく、硬度が不足し、耐疵付性、耐汚
染性、耐薬品性がいずれも低下した。試験No. 20、29で
は、架橋剤添加量が多すぎて、加工性が低下した。試験
No. 21、30はブトキシ化メチロールメラミンの添加量が
少なく、耐汚染性と耐薬品性が不十分であった。逆に、
ブトキシ化メチロールメラミンの添加量が多すぎた試験
No. 22、31では、加工性が低下した。試験No. 23〜27お
よび32〜36は、使用した共重合ポリエステル樹脂のTgま
たはMnが本発明の範囲外であり、そのために少なくとも
一つの性能が低下した。
【0081】試験No. 37、38では、低Tgポリエステル樹
脂の分子量が5000未満であったため、低温加工性がそれ
ぞれ試験No. 2、7に対して改善されていないだけでな
く、硬度、耐疵付性、耐汚染性も低下した。試験No. 3
9、40では、低Tgポリエステル樹脂の配合量が多すぎた
ため、やはり硬度、耐疵付性、耐汚染性が低下した。試
験No. 41、42では、架橋剤がブトキシ化メチロールメラ
ミンを含有していないため、対応する試験No. 1、9に
比べて耐汚染性が低下した。
【0082】
【発明の効果】本発明の被覆組成物は、数平均分子量50
00以上で、Tgが40℃以上の高Tgポリエステル樹脂をベー
ス樹脂の主要成分とし、架橋剤として少量のブトキシ化
メチロールメラミンを混合したアルキルエーテル化アミ
ノホルムアルデヒド樹脂または多価イソシアネートを組
合わせる。この組成により、高Tgポリエステル樹脂が示
す加工性を損なわずに、耐疵付性、耐汚染性、耐薬品性
を高度にバランスさせた塗膜が形成される。この被覆組
成物を塗装金属板を製造に用いることにより、加工性、
耐疵付性、耐汚染性、耐薬品性のいずれも優れた塗装金
属板を得ることができる。また、Tgが10℃以下の低Tgポ
リエステル樹脂を併用することにより、低温加工性も併
せて付与することができる。従って、本発明により、従
来は使用困難であった部位への溶剤系塗装金属板の適用
が可能となる。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 有機溶剤中に、固形分として下記A1を
    90〜50重量部、A2を0〜40重量部 (0を含む) 、B1
    とB2を合計で30〜10重量部含有し、A1とA2の合計
    量は70〜90重量部、B2はB1に対して3〜40wt%であ
    り、かつ以上の成分の固形分合計量100 重量部に対して
    70〜120 重量部の顔料を含有することを特徴とする被覆
    組成物。 A1:数平均分子量5000以上、ガラス転移温度40℃以上
    の共重合ポリエステル樹脂 A2:数平均分子量5000以上、ガラス転移温度10℃以下
    の共重合ポリエステル樹脂 B1:ブトキシ化メチロールメラミン以外のアルキルエ
    ーテル化アミノホルムアルデヒド樹脂および多価イソシ
    アネートから選ばれた少なくとも1種の架橋剤 B2:ブトキシ化メチロールメラミン
  2. 【請求項2】 請求項1記載の被覆組成物の塗布焼付に
    より形成した塗膜を金属板上に有することを特徴とす
    る、加工性、耐汚染性、耐疵付性および耐薬品性に優れ
    た塗装金属板。
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Cited By (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008201842A (ja) * 2007-02-16 2008-09-04 Basf Coatings Japan Ltd 塗料組成物
JP2012140614A (ja) * 2010-12-17 2012-07-26 Arakawa Chem Ind Co Ltd 塗料組成物
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JP2015010926A (ja) * 2013-06-28 2015-01-19 大日本印刷株式会社 煙汚れ試験システム、煙汚れ試験方法
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KR20200069343A (ko) 2017-10-30 2020-06-16 닛폰세이테츠 가부시키가이샤 도장 금속판 및 도장 금속판의 제조 방법

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