JP3601717B2 - ポリエステル樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はポリエステル樹脂組成物に関するものである。ポリエステル樹脂、とりわけ数平均分子量が2,000以上の高分子ポリエステル樹脂の製造は通常はエステル化、初期重合、後期重合の3缶法、あるいはこの重合工程を1段とした2缶法で行われる。この際、エステル化時、エステル交換時および減圧重合時に発泡すると反応缶から重合途中の樹脂や原料があふれ出すため大きな問題となる。また、得られたポリエステル樹脂の品質もロットごとに安定したものでなければならない。
【0002】
【従来の技術】
塗料用樹脂などを中心にビスフェノールAおよび/またはビスフェノールFのアルキレンオキサイド付加物を原料に用いたポリエステル樹脂が知られている。例えば、塗料用樹脂としては、特公昭62−5467号公報、特開平3−217471号公報などが知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、このようなビスフェノールAおよび/またはビスフェノールFのアルキレンオキサイド付加物を原料に用いたポリエスル樹脂を製造する場合、ポリエチレンテレフタレートに代表される通常のモノマー系では見られない、エステル化時、エステル交換時、減圧重合時を問わず著しく発泡する場合があり、大きな問題となっている。また、本発明のポリエステル樹脂組成物は、塗料用樹脂やコーティング剤として有用であり、特に金属板のプライマー塗料用の樹脂や熱昇華転写型の受像紙等の画像記録媒体として好適に用いられるが、従来の方法で製造したポリエステル樹脂及びその組成物は、前述した製造時の発泡の問題の他に塗膜物性が不足したり、バラツキが大きいことが問題となっている。例えば、耐食性、沸水試験後の外観不良、耐指紋性がばらついたり、また、最近の厳しい塗膜物性の要求には耐食性、耐プレッシャーマーク性などが不足している問題がある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
これらの問題の原因は長年不明であったが、本発明者らが鋭意検討した結果、ビスフェノールAおよび/またはビスフェノールFのアルキレンオキサイド付加物に微量不純物として含まれるイソプロペニルフェノールあるいはビニルフェノールのアルキレンオキサイド付加物が重合時の発泡や塗膜物性に影響することを見い出し本発明に到達した。
【0005】
すなわち本発明は、酸成分として、芳香族ジカルボン酸が50〜100モル%、脂肪族および/または脂環族ジカルボン酸が0〜50モル%、グリコール成分として一般式(1)に示すビスフェノールAおよび/またはビスフェノールFのアルキレンオキサイド付加物が5〜100モル%、その他のポリオールが0〜95モル%からなるポリエステル樹脂(B)において、原料として、イソプロペニルフェノールのアルキレンオキサイド付加物および/またはビニルフェノールのアルキレンオキサイド付加物の含有量が20、000ppm以下であるビスフェノールAおよび/またはビスフェノールFのアルキレンオキサイド付加物(A)を用いて製造したポリエステル樹脂(B)及び/又はその変性物(C)とこれらの樹脂と反応し得る硬化剤(D)を配合してなるポリエステル樹脂組成物である。
【化2】
(式中、R1,R2,R3は水素またはメチル基であり、m、nはそれぞれ1以上の数であると同時に2≦m+n≦8である。)
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明に用いるポリエステル樹脂は、グリコール成分として、ビスフェノールAおよび/またはビスフェノールFのアルキレンオキサイド付加物(A)が5〜100モル%含まれる場合に適用される。
【0007】
ビスフェノールAおよび/またはビスフェノールFのアルキレンオキサイド付加物(A)は、ビスフェノールAおよび/またはFにアルカリ触媒の存在下でアルキレンオキサイドを付加し、ついで酸で中和して製造するが、この際に原料であるビスフェノールAまたはビスフェノールFが熱分解して微量のイソプロペニルフェノールあるいはビニルフェノールが生成し、これらにアルキレンオキサイドが付加されることを見いだした。さらには、これらの不純物が一定量以上残留生成するとポリエステル製造時に発泡したり、塗膜物性に悪影響を及ぼすことを見い出した。また、本発明者らは、これらの不純物は、アルキレンオキサイドを付加させる時の反応温度が高いほど多量に発生することも確認している。
【0008】
このイソプロペニルフェノールのアルキレンオキサイドおよび/またはビニルフェノールのアルキレンオキサイド付加物の含有量は、使用するビスフェノールAおよび/またはビスフェノールFのアルキレンオキサイド付加物の量に対して、20、000ppm以下であることが必要であり、より好ましくは10、000ppm、さらに好ましくは8、000ppm以下、最も好ましくは5、000ppm以下である。これらの副生成物の含有量が20、000ppmを越えると重合時に発泡が起こり、また、前述したような塗膜物性が低下する。
【0009】
本発明に用いるポリエステル樹脂において使用するビスフェノールAおよび/またはビスフェノールFのアルキレンオキサイド付加物(A)は、全グリコール成分に対し、5〜100モル%、好ましくは15〜80モル%、さらに好ましくは25〜60モル%含まれる。5モル%未満では、上記グリコール(A)の持つ耐食性、加工性などの優れた特性が出ない。
【0010】
本発明に用いるポリエステル樹脂において、製造するポリエステル樹脂(B)に使用する酸成分は、芳香族ジカルボン酸50〜100モル%、好ましくは70〜100モル%、さらに好ましくは80〜100モル%である。芳香族ジカルボン酸が50モル%未満では良好な耐酸性、耐薬品性、耐食性、スクラッチ性が得られない。
【0011】
本発明に用いるポリエステル樹脂(B)に共重合する芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などが挙げられる。芳香族ジカルボン酸としては塗膜物性と溶解性の面からテレフタル酸とイソフタル酸を併用することが特に好ましい。芳香族ジカルボン酸の含有量は50〜100モル%が好ましく、より好ましくは70〜100モル%、さらに好ましくは80〜100モル%である。
【0012】
本発明に用いるポリエステル樹脂(B)に共重合する脂肪族および/または脂環族ジカルボン酸0〜50モル%、好ましくは0〜30モル%である。これらのジカルボン酸は必須ではないが、共重合することにより、主に柔軟性を付与できるので加工性を改善できる。
【0013】
本発明に用いるポリエステル樹脂(B)に共重合する脂肪族ジカルボン酸としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、アゼライン酸、ダイマー酸などが挙げられる。ポリエステル樹脂(A)に共重合する脂環族ジカルボン酸としては1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸が挙げられる。このうち、アジピン酸、セバシン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸が加工性の面より好ましく、耐酸性の面より含有量は30モル%以下が好ましい。
【0014】
ポリエステル樹脂(B)に共重合するグリコール成分としては、一般式(I)で示されるビスフェノールAおよび/またはビスフェノールFのエチレンオサイドおよび/またはプロピレンオキサイド付加物以外のその他のグリコールを通常併用して使用する。
【0015】
その他のグリコールとしてはエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−メチル、8−メチル−1,8−オクタンジオールなどのアルキレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、TCDグリコールなどの脂環族グリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどが挙げられる。その他のグリコールは経済性、塗膜物性などから適宜選択されるが、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどが好ましい。
【0016】
また、トリメリット酸、ピロメリット酸などの多価カルボン酸またはトリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトールなどの多価ポリオールを全酸または全グリコールに対し、0.1〜3モル%用いると耐酸性をさらに向上できる。
【0017】
本発明に用いるポリエステル樹脂において、本実施例で例示したような常圧または加圧でジカルボン酸とグリコールを直接エステル化して重合する直接重合法、ジカルボン酸のジメチルエステルとグリコールをエステル交換してから重合するエステル交換法や少量のキシレンを添加して常圧で脱水反応を行う方法など公知の方法で合成される。また、重合触媒も本実施例で示したテトラブチルチタネートなどのチタン化合物を始め、亜鉛化合物、アンチモン化合物、錫化合物、ゲルマニウム化合物などの公知の触媒が使用される。
【0018】
本発明に用いるポリエステル樹脂(B)は、用途によって樹脂特性を変えることができるが、ガラス転移点温度は0〜80℃が好ましい。0℃未満では加工性は良好であるが、スクラッチ性、耐薬品性、耐沸水性、耐ブロッキング性などが低下する可能性があり好ましくない。80℃を越えると耐酸性は良好であるが加工性が低下する可能性があり好ましくない。また、本発明に用いるポリエステル樹脂(B)は数平均分子量2000以上が好ましく、より好ましくは5000〜35,000である。数平均分子量が2000未満では加工性、耐衝撃性などの物性が低下する可能性がある。
【0019】
また、本発明に用いるポリエステル樹脂(B)において、スルホン酸金属塩基を含むジカルボン酸やグリコールを5モル%以下の範囲で使用しても良い。スルホン酸金属塩基を含むジカルボン酸としては、スルホテレフタル酸、5−スルホイソフタル酸、4−スルホナフタレン−2,7−ジカルボン酸、5〔4−スルホフェノキシ〕イソフタル酸などの金属塩を挙げることができる。スルホン酸金属塩基を含むグリコールとしては2−スルホ1、4−ブタンジオール、2、5−ジメチル−3−スルホ−2、5−ヘキサンジオールなどの金属塩が挙げられる。金属塩としてはLi、Na、K、Mg、Ca、Cu、Feなどの塩が挙げられる。
【0020】
本発明に用いるポリエステル樹脂(B)はビニル重合性モノマーでのビニル変性、エポキシ化合物によるエポキシ樹脂変性、またはイソシアネート化合物でウレタン変性してもよい。ポリエステル樹脂をビニル重合性モノマーでビニル変性する場合は、ポリエステル樹脂にフマル酸、オレイン酸などの不飽和2重結合を含有するジカルボン酸を共重合してポリエステル樹脂中に不飽和2重結合を導入し、この不飽和2重結合と(メタ)アクリル酸エステル、スチレン、酢酸ビニルなどのビニル化合物を溶液中でラジカル重合する方法、あるいは(メタ)アクリル酸エステル、スチレンなどより合成される片末端にヒドロキシ基を2個含有するマクロモノマーを直接ポリエステルに共重合するなどの公知の方法により合成される。
【0021】
エポキシ樹脂変性ポリエステル樹脂はポリエステル樹脂の末端ヒドロキシ基に無水トリメリット酸、無水フタル酸等の酸無水物を付加させて、末端カルボキシ変性をした後、このカルボキシル基とエポキシ樹脂をトリフェニルホスフィンなどの触媒の存在下でエポキシ変性する方法などの公知の方法により合成できる。また、鎖延長剤にジメチロールプロピオン酸のどのカルボキシル基含有グリコールを用いることによりカルボキシル基を導入しても良い。
【0022】
ウレタン変性ポリエステル樹脂は低分子量のポリエステルジオールと必要により鎖延長剤を配合し、ジイソシアネート化合物と反応させるなど公知の方法により合成される。また、鎖延長剤にジメチロールプロピオン酸などのカルボキシル基含有ジオールを用いてカルボキシル基を側鎖に導入しても良い。
【0023】
本発明に用いるポリエステル樹脂(B)および/またはこれらを変性してなる変性ポリエステル(C)とこれらと反応し得る硬化剤(D)を配合して塗料用に使用することができる。硬化剤を配合することにより、耐溶剤性を付与でき、加工性、硬度、耐汚染性、耐薬品性、耐食性などの種々の塗膜物性を向上できる。硬化剤(D)の配合量は{(B)+(C)}/(D)=95/5〜60/40が好ましく、より好ましくは90/10〜70/30(重量比)である。{(B)+(C)}の配合量が95/5を越えると耐薬品性、耐食性、スクラッチ性などの塗膜物性が不良となり、60/40未満では良好な加工性が得られない場合がある。
【0024】
ポリエステル樹脂(B)および/または変性ポリエステル樹脂(C)と反応し得る硬化剤としては、アルキルエーテル化アミノホルムアルデヒド樹脂、エポキシ化合物およびイソシアネート化合物、フェノール樹脂などが挙げられる。このうち、加工性よりアルキルエーテル化アミノホルムアルデヒド樹脂、イソシアネート化合物、レゾール型フェノール樹脂が好ましい。さらに、耐酸性の面からイソシアネート化合物が特に好ましく、貯蔵安定性よりイソシアネート化合物はブロック化して使用することが好ましい。
【0025】
イソシアネート化合物としては芳香族、脂肪族のジイソシアネート、3価以上のポリイソシアネートがあり、低分子化合物、高分子化合物のいずれでもよい。たとえば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートあるいはこれらのイソシアネート化合物の3量体、およびこれらのイソシアネート化合物の過剰量と、たとえばエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ソルビトール、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどの低分子活性水素化合物または各種ポリエステルポリオール類、ポリエーテルポリオール類、ポリアミド類の高分子活性水素化合物などとを反応させて得られる末端イソシアネート基含有化合物が挙げられる。
【0026】
イソシアネート化合物としてはブロック化イソシアネートにすることが好ましい。イソシアネートブロック化剤としては、例えばフェノール、チオフェノール、メチルチオフェノール、エチルチオフェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシノール、ニトロフェノール、クロロフェノールなどのフェノール類、アセトキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシムなどのオキシム類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、エチレンクロルヒドリン、1、3−ジクロロ−2−プロパノールなどのハロゲン置換アルコール類、t−ブタノール、t−ペンタノール、などの第3級アルコール類、ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム、β−プロピロラクタムなどのラクタム類が挙げられ、その他にも芳香族アミン類、イミド類、アセチルアセトン、アセト酢酸エステル、マロン酸エチルエステルなどの活性メチレン化合物、メルカプタン類、イミン類、尿素類、ジアリール化合物類重亜硫酸ソーダなども挙げられる。ブロック化イソシアネートは上記イソシアネート化合物とイソシアネートブロック化剤とを従来公知の適宜の方法より付加反応させて得られる。
【0027】
アルキルエーテル化アミノホルムアルデヒド樹脂とは、たとえばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノールなどの炭素原子数1〜4のアルコールによってアルキルエーテル化されたホルムアルデヒドあるいはパラホルムアルデヒドなどと尿素、N,N−エチレン尿素、ジシアンジアミド、アミノトリアジン等との縮合生成物であり、メトキシ化メチロール−N,N−エチレン尿素、メトキシ化メチロールジシアンジアミド、メトキシ化メチロールベンゾグアナミン、ブトキシ化メチロールベンゾグアナミン、メトキシ化メチロールメラミン、ブトキシ化メチロールメラミン、メトキシ化/ブトキシ化混合型メチロールメラミン、ブトキシ化メチロールベンゾグアナミンなどが挙げられるが、加工性の面から好ましいのは、メトキシ化メチロールメラミン、ブトキシ化メチロールメラミン、またはメトキシ化/ブトキシ化混合型メチロールメラミンであり、それぞれ単独、または併用して使用することができる。
【0028】
エポキシ化合物としてはビスフェノールAのジグリシジルエーテルおよびそのオリゴマー、水素化ビスフェノールAのジグリシジルエーテルおよびそのオリゴマー、オルソフタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、p−オキシ安息香酸ジグリシジルエステル、テトラハイドロフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサハイドロフタル酸ジグリシジルエステル、コハク酸ジグリシジルエステル、アジピン酸ジグリシジルエステル、セバシン酸ジグリシジルエステル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、1、4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1、6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルおよびポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル類、トリメリット酸トリグリシジルエステル、トリグリシジルイソシアヌレート、1、4−ジグリシジルオキシベンゼン、ジグリシジルプロピレン尿素、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、グリセロールアルキレンオキサイド付加物のトリグリシジルエーテルなどを挙げることができる。
【0029】
さらにフェノール樹脂としては、フェノール類にアルカリ触媒の存在下でアルデヒドを反応させたレゾール型樹脂、フェノール類に酸性触媒の存在下でアルデヒドを反応させたノボラック型などが挙げられ、架橋剤として好適なものを意味し、特にレゾール型樹脂が好ましい。これらのフェノール樹脂に用いるフェノール類は、フェノール、o−クレゾール、p−クレゾール、m−クレゾール、m−メトキシフェノール、2,3−キシレノール、2,5−キシレノール、p−tert−ブチルフェノール、p−エチルフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールFなどが挙げられ、これらのモノ〜トリメチロール化物やその縮合物、あるいはそれらのアルキルエーテル化物、あるいはこれらをエポキシ変性、油変性、メラミン変性、アミド変性など各種変性をしたものなどが使用できる。原料として使用する好ましいフェノール類としては、フェノールとして3官能以上であるフェノール、m−クレゾール、ビスフェノールA、ビスフェノールFが挙げられる。
【0030】
これらの硬化剤には、その種類に応じて選択された公知の硬化剤あるいは促進剤を併用することが好ましい。
【0031】
本発明の(変性)ポリエステル樹脂組成物の焼付け温度は金属板の大きさ、厚さ、また焼き付け炉の能力、塗料の硬化性などにより任意に選択される。塗料組成物の製造にはロール練り機、ボールミル、サンドミル、ブレンダーなどの混合機が用いられる。塗装に当たってはローラー塗り、ロールコーター、スプレー塗装、静電塗装などが適時選択される。
【0032】
本発明の(変性)ポリエステル樹脂組成物は目的、用途に応じて酸化チタン、タルク、硫酸バリウム、クレーなどの体質顔料、ジンククロメート、ストロンチウムクロメート、カルシウムクロメートなどのクロム含有防錆顔料、コロイダルシリカ、トリポリリン酸アルミなどのトリポリリン酸塩系、リン酸亜鉛系、亜リン酸塩系、リンモリブデン酸塩系、モリブデン酸塩系、シアナミド亜鉛カルシウム系、ホウ酸塩系、カルシウムシリカ系などの非クロム系防錆顔料、公知の着色剤、シリカ、ワックスなどの添加剤、難燃剤、グラスファイバー等を配合することができる。
【0033】
本発明の樹脂組成物は通常は有機溶媒に溶解した形で使用されるものであるが、前述したスルホン酸金属塩基などのイオン性基を導入した場合などは水分散体として使用することもできる。有機溶媒としては、例えばトルエン、キシレン、ソルベッソ100、150、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、メチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、N−メチルピロリドン、2塩基酸エステル等から溶解性、蒸発速度を考慮して適宜選択される。本発明の(変性)ポリエステル樹脂を塗料用に用いる場合は、それ自体を塗布焼付けしただけでも充分な性能を示すため、塗装金属板の裏面コートなどに好適であるが、さらに、プライマーとして使用することが好ましく、耐候性、耐汚染性、耐アルカリ性などを向上する目的でトップコートとして公知の上塗り塗料を塗布することもできる。また、本発明の(変性)ポリエステル樹脂は紙、プラスチックフィルムに塗布して画像記録媒体としても使用できる。従来技術と比較して、優れた印字性、耐指紋性などの特性が得られる。
【0034】
【実施例】
以下本発明を実施例を用いて説明する。実施例中、単に部とあるのは重量部を示す。また、各測定項目は以下の方法に従った。
【0035】
1.還元粘度ηsp/c(dl/g)
ポリエステル樹脂0.10gをフェノール/テトラクロロエタン(容量比6/4)の混合溶媒25ccに溶かし、30℃で測定した。
【0036】
2.ポリエステルの分子量およびビスフェノールAまたはビスフェノールFのアルキレンオキサイド付加モル数の定量
ゲルろ過クロマトグラフ(GPC)により、溶剤はテトラヒドロフラン、標準サンプルはポリスチレンを用いて測定した。カラムは、分子量測定時はショーデックKF802、KF804、KF806(昭和電工(株))を直列につないで使用した。アルキレンオキサイド付加モル数測定時はTSKgel SUPERH4000、H3000、H2000(東ソー(株)製)を直列につないで用いた。ディテクターはRIを用いた。
【0037】
3.不純物のイソプロペニルフェノールのアルキレンオキサイド付加物およびビニルフェノールのアルキレンオキサイド付加物の定量
ゲルろ過クロマトグラフ(GPC)により、溶剤はテトラヒドロフランを用いて測定した。カラムは、TSKgel SUPERH4000、H3000、H2000(東ソー(株)製)を直列につないで用いた。デティクターはUV(254nm)を用いた。
【0038】
4.ガラス転移点温度
示差走査熱量計(DSC)を用いて、20℃/分の昇温速度で測定した。サンプルは試料5mgをアルミニウム押え蓋型容器に入れ、クリンプして用いた。
【0039】
5.酸価
試料0.2gを精秤し20mlのクロロホルムに溶解した。ついで、0.01Nの水酸化カリウム(エタノール溶液)で滴定して求めた。指示薬には、フェノールフタレインを用いた。
【0040】
6.リン含有量の定量
試料0.2gを三角フラスコに精秤し、硫酸3ml、過塩素酸0.5mlおよび硝酸3.5mlを加えて熱板上で徐々に加熱分解して硫酸白煙とした。室温まで放冷後、水で約15mlに希釈した。0.2%パラニトロフェノール溶液1滴を加え、流水にて冷却しながら徐々にアンモニア水を加えて硫酸を中和した。ついで、全ての内容物を50mlメスフラスコに水で洗い込みながら移し、2%モリブデン酸アンモニウム溶液5mlおよび0.2%硫酸ヒドラジン溶液2mlを加え、水にて標線を合わせてから内容物をよく混合した。ついで、沸騰水浴中に10分間フラスコをつけて加熱発色させ、これを室温まで水冷して試験液とした。また、空実験を同様に行った。得られた試験液を分光光度計で波長830nmで空試験液を対照にして吸光度を測定し、あらかじめ作成しておいた検量線を用いてリン含有量を定量した。リン標準液は、試薬特急リン酸二水素カリウムを水に溶解して作成したものを用いた。
【0041】
7.加工性
塗装鋼板を180度折り曲げ、屈曲部に発生する割れを10倍のルーペで観察し判定した。3Tとは折り曲げ部に同じ板厚のものを3枚挟んだ場合をさし、0Tは板を挟まなくて180度折り曲げた場合をさす。
【0042】
8.耐沸水性
塗装鋼板を沸騰水中に3時間浸漬し、塗面のブリスターの発生状態をASTMD714−56に準じて評価した。異常のない場合は10とした。
【0043】
9.耐食性
塗装鋼板を、JIS K5400に記載の方法である、35℃で5%NaCl塩水噴霧試験を1000時間実施し、ブリスターの発生状況を目視判定した。耐食性はクロスカット部、1T加工部、端面部について実施した。評価基準を以下に示す。
1T加工部または2T加工部
◎:異常なし ○:ほとんどブリスターなし △:ブリスター発生
×:著しくブリスター発生
クロスカット部(ブリスターのふくれ幅)
◎:1mm以下 ○:1〜5mm △:5〜10mm ×:10mm以上
端面部(ブリスターのふくれ幅)
◎:1mm以下 ○:1〜5mm △:5〜10mm ×:10mm以上
【0044】
10.耐プレッシャーマーク性
塗装鋼板に、一辺が1cmの立方体に切った発泡スチロールを置き、加重1kg/cm2をかけ60℃で2時間放置した。試験後の塗膜外観で判定した。
◎:異常なし
○:わずかに発泡スチロールの跡がのこる
×:発泡スチロールのはっきり跡がのこる
××:発泡スチロールの跡が著しくのこり、場合によっては発泡スチロールが塗面に接着する
【0045】
11.上塗り塗料(I)の作製
あらかじめ溶解した市販の高分子量ポリエステル、バイロン300、80固形部、バイロン200、20固形部(何れも東洋紡績(株)製)、メチルエーテル化メチロールメラミン、スミマールM40S(不揮発分80%、住友化学工業(株)製)25部、p−トルエンスルホン酸の10%ベンジルアルコール溶液2.5部、酸化チタン125部、表面平滑剤としてポリフローS(共栄社油脂化学工業(株)製)を加え、ガラスビーズ型高速振とう機で8時間分散し上塗り塗料を作製した。尚、溶剤はシクロヘキサノン/ソルベッソ150=50/50混合品を適量使用した。
【0046】
12.上塗り塗料の作製あらかじめ溶解した、ポリエステル樹脂A〜Cまたは比較ポリエステル樹脂I〜K、30固形部、メチルエーテル化メチロールメラミン、スミマールM40S(不揮発分80%、住友化学工業(株)製)10部、p−トルエンスルホン酸の20%ベンジルアルコール溶液0.5部、酸化チタン40部、表面平滑剤としてポリフローS(共栄社油脂化学工業(株)製)0.2部を加え、ボールミル中で1昼夜混練し上塗り塗料を作製した。尚、溶剤はシクロヘキサノン/ソルベッソ150=50/50混合品を適量使用した。
【0047】
13.塗装鋼板(試験片)の作製0.5mm厚のリン酸亜鉛処理亜鉛めっき鋼板に所定のプライマーを乾燥膜厚が5μmになるように塗布し、220℃×60秒焼付けた。ついで、11.で作製した上塗り塗料を乾燥膜厚が20μmになるように塗布し、230℃×60秒焼付けて塗装鋼板を作製した。
【0048】
ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物(a)の合成
公知の方法により、触媒に水酸化カリウムを用いて加圧下でビスフェノールAにエチレンオキサイドを2.3モル付加した後、リン酸で中和した。反応後に吸着ろ過により触媒残渣をろ過した。得られたビスフェノールAエチレンオキサイド付加物に含まれるリンの含有量を測定したところ5ppmであった。また、イソプロペニルフェノールのエチレンオキサイド付加物の含有量は120ppmであった。結果を表1に示す。
【0049】
ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物(d)の合成
公知の方法により、触媒にトリエチルアミンを用いてビスフェノールAにエチレンオキサイドを平均4.0モル付加した後、コハク酸で中和した。反応後にろ過せずそのまま使用した。得られたビスフェノールAエチレンオキサイド付加物に含まれるリンの含有量を測定したところ2ppm未満(測定限界以下)であった。また、イソプロペニルフェノールのエチレンオキサイド付加物の含有量は7600ppmであった。結果を表1に示す。
【0050】
以下同様にして表1、表2に示すビスフェノールAまたはビスフェノールFのアルキレンオキサイド付加物(b)〜(j)を合成した。表2の合成例(g)〜(j)は比較合成例である。触媒として水酸化カリウムを用いたものはいずれも重合を阻害しないように触媒残渣を吸着ろ過して除去しており、リン含有量でおおむね25ppm以下にした。また、不純物のイソプロペニルフェノールまたはビニルフェノールのアルキレンオキサイド付加物の量は、反応温度を調節して変化させている。反応温度が高いほどビスフェノールAまたはFが分解して、これらの不純物の量が増える。
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【0053】
表1、表2において、
ビスA:ビスフェノールA
ビスF:ビスフェノールF
EO:エチレンオキサイド
PO:プロピレンオキサイド
KOH:水酸化カリウム
TEA:トリエチルアミン
である。
【0054】
合成例1(ポリエステル樹脂Aの合成)
攪拌機、コンデンサー、温度計を具備した反応容器にジメチルテレフタレート485部、ジメチルイソフタレート485部、エチレングリコール512部、ビスフェノールAのエチレンオキサイド2.3モル付加物(a)907部、酢酸亜鉛0.44部、三酸化アンチモン0.43部を仕込み、140℃から220℃まで、4時間かけてエステル交換反応を行った。ついで系内を徐々に減圧していき、60分かけて1mmHgまで減圧し、さらに0.1〜0.3mmHgの減圧下、270℃にて重縮合反応を行ったところ、速やかに重合し、50分で還元粘度0.64dl/g、数平均分子量21,000に到達した。得られたポリエステル樹脂(A)はNMR等の組成分析の結果、酸成分がモル比でテレフタル酸/イソソフタル酸=50/50であり、グリコール成分がモル比でエチレングリコール/ビスフェノールAエチレンオキサイド2.3モル付加物=45/55であった。また、酸価12当量/106g、ガラス転移温度76℃であった。エステル交換時、重合時ともに異常な発泡はなかった。このポリエステル樹脂(A)をシクロヘキサノン/ソルベッソ150(エクソン化学(株)製)=50/50(重量比)に固形分40%で溶解したところ、透明な色相(APHA)100のワニスを得た。結果を表3に示す。
【0055】
以下同様に合成例2〜7を行い、ポリエステル樹脂(B)〜(G)を合成した。結果を表3、表4に示す。いずれの場合も良好な重合速度を得ている。また、これらは酸価、色相ともに低い値のものが得られた。ただし、不純物であるイソプロペニルフェノールのエチレンオキサイド付加物の多い原料を使用した実施例6については、不純物が少ない場合と比較して発泡が多く認められた。
【0056】
【表3】
【0057】
【表4】
【0058】
合成例8(ポリエステル樹脂Hの合成)
攪拌機、コンデンサー、温度計を具備した反応容器にテレフタル酸415部、イソフタル酸415部、エチレングリコール384部、ビスフェノールFのエチレンオキサイド2.2モル付加物(f)1128部、テトラブチルチタネート0.51部を仕込み、140℃から220℃まで、4時間かけてエステル化反応を行った。ついで系内を徐々に減圧していき、60分かけて1mmHgまで減圧し、さらに0.1〜0.3mmHgの減圧下、270℃にて重縮合反応を行ったところ、速やかに重合し、90分で還元粘度0.55dl/g、数平均分子量16,000に到達した。得られたポリエステル樹脂(H)はNMR等の組成分析の結果、酸成分がモル比でテレフタル酸/イソソフタル酸=50/50であり、グリコール成分がモル比でエチレングリコール/ビスフェノールFエチレンオキサイド2.2モル付加物=24/76であった。また、酸価13当量/106g、ガラス転移温度68℃であった。エステル化時、重合時ともに異常な発泡はなかった。このポリエステル樹脂(H)をシクロヘキサノン/ソルベッソ150(エクソン化学(株)製)=50/50(重量比)に固形分40%で溶解したところ、透明な色相(APHA)150のワニスを得た。結果を表4に示す。
【0059】
比較合成例1(比較ポリエステル樹脂(I)の合成)
攪拌機、コンデンサー、温度計を具備した反応容器にジメチルテレフタレート485部、ジメチルイソフタレート485部、エチレングリコール512部、ビスフェノールAのエチレンオキサイド2.3モル付加物(g)907部、酢酸亜鉛0.44部、三酸化アンチモン0.43部を仕込み、140℃から220℃まで、4時間かけてエステル交換反応を行った。この際、かなりの発泡が認められたので、攪拌速度を低下して注意深く反応させる必要があった。ついで系内を徐々に減圧していき、60分かけて1mmHgまで減圧し、さらに0.1〜0.3mmHgの減圧下、270℃にて重縮合反応を行ったところ、著しく発泡し、内容物の一部が系外に出てしまったので、攪拌速度を低下、真空度をやや低下して、約80分かけて、還元粘度0.64dl/g、数平均分子量21,000のポリエステル樹脂を得た。得られたポリエステル樹脂(I)はNMR等の組成分析の結果、酸成分がモル比でテレフタル酸/イソフタル酸=50/50であり、グリコール成分がモル比でエチレングリコール/ビスフェノールAエチレンオキサイド2.3モル付加物=45/55であった。また、酸価40当量/106g、ガラス転移温度76℃であった。このポリエステル樹脂(A)をシクロヘキサノン/ソルベッソ150(エクソン化学(株)製)=50/50(重量比)に固形分40%で溶解したところ、透明な色相(APHA)200のワニスを得た。
【0060】
以下同様に比較合成例2〜7を行った。結果を表5、表6に示す。いずれの場合も同条件の合成例と比較して著しく発泡し、通常の条件下では重合が困難な場合もあった。
【表5】
【0061】
【表6】
【0062】
参考例1(塗膜物性評価)
ポリエステル樹脂(A)の溶解品100固形部に酸化チタン40部、ストロンチウムクロメート40部、硬化剤としてのメチルエーテル化メチロールメラミン(商品名:スミマールM40S、不揮発分80%、住友化学工業(株)製)10部、硬化触媒としてのp−トルエンスルホン酸の10%ベンジルアルコール溶液2.5部を加え、ビーズ分散機8時間分散しプライマー塗料を作製した。このプライマー塗料組成物を13.に記述した方法でプライマー、上塗りの順に塗布、焼付けして塗装鋼板を作製し、所定の試験をおこなった。尚、上塗り塗料は上塗り塗料(I)を使用した。結果を表7に示す。このように、本発明の製造方法による塗料用樹脂組成物は加工性、耐食性、耐沸水性に優れ、特に相当する比較例と比較して、耐食性、耐沸水性に優れていることが分かる。
【0063】
以下、表7〜表9に示す組成により同様にして、参考例2〜8、比較参考例1〜5の塗料組成物を作成し、塗布、焼付けを行った。得られた塗装鋼板の試験結果を表7〜表9に示す。ただし、塗料の配合比は固形分換算で表示した。いずれの参考例も相当する比較参考例よりも良好な塗膜物性を示し、比較ポリエステルは相当する参考例と比較して、かなり耐食性、耐沸水性が劣ることが分かる。また、参考例においても、原料の不純物であるイソプロペニルフェノールまたはビニルフェノールのアルキレンオキサイド付加物の少ない高純度の原料を使用したものは、耐食性、耐沸水性がさらに顕著に優れることが分かる。
【0064】
【表7】
【0065】
【表8】
【0066】
【表9】
【0067】
参考例9(上塗り塗料としての評価)
ポリエステル樹脂(A)の溶解品を用いて、前記12.に記載した方法により上塗り塗料を作製した。これを前記11.の方法によりプライマーなしで乾燥膜厚が20μmになるように塗布し、230℃×30秒焼き付けて塗装鋼板を作製した。このものの耐プレッシャーマーク性を評価したところ非常に良好で、痕跡なしの◎であった。また、耐沸水性にも優れる。結果を表10に示す。
【0068】
以下、表10に示す組成により同様にして、参考例10、11、比較参考例6、7の塗料組成物を作成し、塗布、焼付けを行った。得られた塗装鋼板の試験結果を表10に示す。いずれの参考例も相当する比較参考例よりも良好な耐プレッシャーマーク性を示し、ポリエステル(I)、ポリエステル(J)などは、参考例と比較してかなり耐プレッシャーマーク性が劣ることが分かる。また、参考例においても、原料の不純物であるイソプロペニルフェノールまたはビニルフェノールのアルキレンオキサイド付加物の少ない高純度の原料を使用したものは、耐プレッシャーマーク性、耐沸水性がさらに優れることが分かる。
【0069】
【表10】
【0070】
参考例12(昇華型熱転写受像層としての評価)
ポリエステル樹脂(A)をトルエン/メチルエチルケトン(50/50)の混合溶媒に溶解し、20%溶液とした。この溶液にエポキシ変性シリコーンオイル(信越化学(株)製 KF−102)を樹脂に対して10重量%配合し、厚み150μmの合成紙王子油化製:ユポPPG−150)にワイヤーバーを用いて塗工後、120℃で30分間乾燥し、厚み4μmの染着層を持つ昇華型熱転写受像体を得た。白色度の高い昇華型熱転写受像体であった。これに市販のビデオプリンターを用いて写真調の画像を記録した。白色部、着色部とも違和感のない色調の優れた画像が得られた。受像体の耐久性の評価として、画像が記録された受像体を暗所60℃の環境下で168時間放置した。また、直射日光の当たる窓辺(室内)に画像が記録された受像体を2週間放置した。いずれの場合も変色、色あせ等は認められず耐久性の高い受像体であった。また、画像が記録された受像体表面に、親指を強く押し当てて指紋が画像表面に残るようにし、この受像体を40℃の環境下で放置した。48時間後に取り出し、画像を観察したところ、染料の凝集、変色(色抜け)、指紋後残り等はなく、耐指紋性に優れる受像体であった。
【0071】
【発明の効果】
本発明に用いるポリエステルの製造方法では重合時に発泡の少ない良好な作業性が得られるため、反応釜の内容物があふれることがなく、さらに、より高真空下での重合、高攪拌速度が可能となり重合速度を速めることができる。また、得られたポリエステル樹脂は、ロットバラツキも少なく、従来技術と比較して生産性が大幅に向上する。このため、樹脂の色相や酸価を小さく押さえることが可能である。従って、本発明の塗料用樹脂組成物をプライマーに使用することにより、従来のポリエステル樹脂あるいはエポキシ樹脂と比較して、優れた加工性、耐食性、耐沸水性が得られるため、特に高度の加工性、耐食性、耐沸水性の要求される冷蔵庫、洗濯機、エアコン室外機、ファンヒーターなどの家電用、金属サイディングなどの建材用に有用である。また、上塗りまたは上塗りとプライマーを兼ねた1コート塗料としても有用であり、優れた耐沸水性、耐プレッシャーマーク性が得られる。さらには、紙、プラスチックフィルムに塗布して画像記録媒体として使用することができる。本発明の樹脂組成物をコーティングすることにより、従来技術と比較して、優れた色調、印字性、耐指紋性が得られる。
Claims (1)
- 酸成分として、芳香族ジカルボン酸が50〜100モル%、脂肪族および/または脂環族ジカルボン酸が0〜50モル%、グリコール成分として一般式(1)に示すビスフェノールAおよび/またはビスフェノールFのアルキレンオキサイド付加物が5〜100モル%、その他のポリオールが0〜95モル%からなるポリエステル樹脂(B)において、原料として、イソプロペニルフェノールのアルキレンオキサイド付加物および/またはビニルフェノールのアルキレンオキサイド付加物の含有量が20、000ppm以下であるビスフェノールAおよび/またはビスフェノールFのアルキレンオキサイド付加物(A)を用いて製造したポリエステル樹脂(B)及び/又はその変性物(C)とこれらの樹脂と反応し得る硬化剤(D)を配合してなる画像記録媒体コーティング剤用ポリエステル樹脂組成物。
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