JP2004262185A - 印刷装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】製版されたマスタ8を巻装する版胴1と、用紙29を版胴1上のマスタ8に押し付ける押圧手段15と、版胴1に向けて送風し、押圧手段15によって版胴1に押し付けられた用紙29を版胴1から剥離するための剥離手段73と、版胴1に製版されたマスタ8が巻装され、マスタ8の後端が剥離手段73による版胴1からの用紙29の剥離位置を通過した後、一枚目の用紙29の先端が剥離位置を通過するまでの間に、剥離手段73による送風を開始する制御手段とを有する印刷装置。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、孔版印刷装置等を含む印刷装置に係り、詳しくは、版胴に押し付けられた用紙を送風により剥離する剥離手段を有する印刷装置において、かかる剥離手段の送風に起因するマスタのシワを防止する技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
孔版マスタ(以下、単に「マスタ」という)を、サーマルヘッドの発熱素子に接触させて加熱穿孔・製版し、この製版されたマスタ(以下、「製版済みのマスタ」というときがある)を回転自在な版胴に巻装する給版動作を行い、版胴内部に設けられたインキ供給部材よりインキを供給し、プレスローラ等の押圧手段で版胴上の製版済みのマスタに用紙を押し付けて製版済みマスタを版胴に密着させる版付け動作を行い、その後、用紙を押圧手段により連続的に押し付けて、版胴の開孔部分、マスタの穿孔部分よりインキを滲み出させ印刷を行う孔版印刷装置が知られている。
【0003】
このような孔版印刷装置では、マスタから滲出したインキが用紙に転移して印刷が行われるために、用紙がインキの粘着力で版胴に貼り付き易くなり、版胴上の製版済みのマスタに貼り付いて排出されない「巻き上がり」と呼ばれる不具合が発生し易いため、版胴の外周面に近接自在な排紙爪もしくは分離爪とも呼ばれる剥離爪を設けて、版胴上の製版済みのマスタと用紙の先端部との間に上記剥離爪を挿入する態様で、用紙を強制的に剥離する用紙強制剥離方式が用いられている。またこの用紙強制剥離方式においては、用紙の剥離をより確実に行うため、〔特許文献1〕、〔特許文献2〕に記載されているように、かかる剥離爪等と送風を行う手段とを有する剥離手段を構成し、版胴上の製版済みのマスタと用紙の先端部との間に送風を行う技術が知られている。
【0004】
【特許文献1】特開平9−193526号公報
【特許文献2】特開2002−36699号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、かかる剥離手段においては、給版動作と同時に送風を開始するため、次のような問題が生じていた。給版動作時には、版胴と製版済みマスタとの間に、通常、多少の空気が入るため、給版動作時に送風を行うと、その風圧により、版付け動作前に、版胴と製版済みマスタとが、版胴表面に付着したインキにより密着してしまい、版胴と製版済みマスタとの間に空気が閉じ込められ、空気溜りが生じてしまう。
【0006】
その後の版付け動作を行うときに、版胴と製版済みマスタとが密着していなければ、版胴と製版済みマスタとの間の空気は、押圧手段で版胴上の製版済みのマスタに用紙を押し付けるときに絞るようにして押し出され、なんら問題は生じないが、版胴と製版済みマスタとが密着しこれらの間に空気が閉じ込められ空気溜りが生じた状態で版付け動作を行うと、閉じ込められた空気が正常に押し出されず、製版済みマスタが版胴との間で不自然な状態で押し潰されて、製版済みマスタにシワが生じてしまう。
【0007】
空気が閉じ込められた部分が製版済みマスタの画像部に位置し、高い密度で孔が形成されている場合には、この孔から空気が抜けて空気溜りが生じず、製版済みマスタのシワが生じないことも考えられるが、製版済みマスタの周縁部の非画像部や、画像部中の孔が少ししか形成されていない部分では、空気溜りが発生するため、これが押し潰されると、その過程で、製版済みマスタの、孔が形成されている部分にシワが寄ってしまうという問題があるのである。
【0008】
また、使用するインキが低粘度インキである場合や、高温環境などでインキの粘度が下がった場合には、インキが版胴の開孔部分から滲出することで、給版時の送風によって版胴と製版済みマスタとが密着しやすくなり、製版済みマスタのかかるシワが生じやすい。また、使用するマスタが、腰のあるマスタであるときには、版付け動作を行うときに、版胴と製版済みマスタとの間の空気が、押圧手段で版胴上の製版済みのマスタに用紙を押し付けるときに絞るようにして押し出されることもあるが、腰のない、薄型マスタを用いる場合には、かかる空気の押し出しが正常に行なわれず、やはり製版済みマスタのかかるシワが生じる。そして、特に、製版済みマスタにシワが生じると、印刷画像上に好ましくない影響を与えてしまう点が問題である。
【0009】
したがって、本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであって、版胴に押し付けられた用紙を送風により剥離する剥離手段を有し、版胴からの用紙の剥離を良好に行うとともに、剥離手段の送風に起因するマスタのシワを防止する印刷装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、製版されたマスタを巻装する版胴と、用紙を上記版胴上のマスタに押し付けインキを同用紙に転移するための押圧手段と、上記版胴に対向して配設され、同版胴に向けて送風し、上記押圧手段によって上記版胴に押し付けられた用紙を同版胴から剥離するための剥離手段とを具備する印刷装置において、上記版胴に製版されたマスタが巻装され、このマスタの後端が上記剥離手段による上記版胴からの用紙の剥離位置を通過した後、一枚目の用紙の先端が上記剥離位置を通過するまでの間に、上記剥離手段による送風を開始する制御手段を有することを特徴とする。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の印刷装置において、上記制御手段によって作動させられることにより上記版胴を駆動する駆動手段を有し、上記制御手段は、上記駆動手段の作動タイミングに基づいて、上記剥離手段による送風を開始することを特徴とする。
【0012】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の印刷装置において、上記制御手段によって作動させられることにより上記版胴と上記押圧手段との間に向けて送り出すレジストローラを有し、上記制御手段は、上記レジストローラの作動タイミングに基づいて、上記剥離手段による送風を開始することを特徴とする。
【0013】
請求項4記載の発明は、請求項1記載の印刷装置において、上記版胴と上記押圧手段との間に向けて送り出すレジストローラと、上記押圧手段が用紙を上記版胴に押し付けるニップ部との間に配設され、用紙の先端を検知する用紙先端検知手段とを有し、上記制御手段は、上記用紙先端検知手段による用紙の先端の検知に基づいて、上記剥離手段による送風を開始することを特徴とする。
【0014】
請求項5記載の発明は、請求項1ないし4の何れか1つに記載の印刷装置において、上記インキが低粘度インキであることを特徴とする。
【0015】
請求項6記載の発明は、請求項1ないし5の何れか1つに記載の印刷装置において、上記マスタが薄型マスタであることを特徴とする。
【0016】
請求項1における「用紙を版胴上のマスタに押し付けインキを用紙に転移するための押圧手段」の構成・方式としては、製版済みのマスタを介して版胴の外周面に接離自在な押圧手段としてのプレスローラを押し付けるプレスローラ方式と、製版済みのマスタを介して版胴の外周面に押圧手段としての圧胴を押し付けて印刷を行う圧胴接離方式と、製版済みのマスタを介して圧胴に対して版胴を押し付けて印刷を行う版胴接離方式と、それらの併用方式とがある。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、図を参照して実施例を含む本発明の実施の形態(以下、単に「実施形態」という)を説明する。各実施形態や変形例等に亘り、同一の機能および形状等を有する部材や構成部品等の構成要素については、同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。図および説明の簡明化を図るため、図に表されるべき構成要素であっても、その図において特別に説明する必要がないものは適宜断わりなく省略することがある。公開特許公報等を引用して構成や動作例等を説明する場合には、引用した構成要素等の符号に括弧を付して区別することとする。
【0018】
まず、図1を参照して、実施形態に係る印刷装置の一例としての孔版印刷装置の全体構成について説明する。孔版印刷装置100は、図1および図2に示すように、概略、図1の右側上方に配置されロール状に巻かれたマスタ8を製版する製版装置14と、図1における左寄りの略中央部に配置され製版されたマスタ8(以下、「製版済みのマスタ8」というときがある)を外周面に巻装する版胴1と、この版胴1上の製版済みのマスタ(図示せず)に用紙29を押し付ける押圧手段としてのプレスローラ15と、製版装置14の下方に配置され、給紙台としての給紙トレイ28上に積載された用紙29を版胴1とプレスローラ15との間の図2に示す印刷部すなわちニップ部61に向けて給紙する給紙装置30と、版胴1およびプレスローラ15を挟んで給紙装置30に対向する位置に配置され印刷済みの用紙29を図示しない排紙台としての排紙トレイに排出する排紙装置45とを具備している。
【0019】
孔版印刷装置100はまた、版胴1に対向して配設され、先端が版胴1の外周面に近接し版胴1上の製版済みのマスタ8から印刷済みの用紙29を剥ぎ取る図2等に示す剥離位置とこの剥離位置から離間した図1等に示す非剥離位置とを選択的に占める剥離部材としての分離爪31と、版胴1に対向して配設され、版胴1に向けて送風し、プレスローラ15によって版胴に押し付けられた用紙29を剥離位置において版胴1から剥離するエアーナイフ64とを有する、図1、5に示す剥離手段73を具備している。本実施形態において剥離手段73はエアーナイフ64と分離爪31とを備えているが、剥離手段73は少なくともエアーナイフ64を有していれば良く、したがってエアーナイフ64が剥離手段73に相当する場合もある。
【0020】
孔版印刷装置100は、上記した装置や構成要素の他に、それぞれ公知であり図示しない、版胴1および製版装置14の上部に配置され原稿受台上から移送される原稿の画像を読み取る原稿読取装置と、排紙装置45と該原稿読取装置との間であって版胴1の左近傍に配置され版胴1の外周面から剥ぎ取られた使用済みのマスタ8を図示しない排版ボックスに排出する排版装置等とを具備している。上記原稿読取装置および上記排版装置は、例えば特許第2756224号公報(特開平7−52515号公報)の図1に記載されているものと同様の構成を具備している。
【0021】
製版装置14は、マスタ8をマスタ搬送方向X1に繰り出し可能に支持するマスタ支持手段としてのマスタ支持部材8cと、画像情報に応じて繰り出されたマスタ8を加熱製版するサーマルヘッド10と、サーマルヘッド10にマスタ8を押圧しながらマスタ搬送方向X1下流側にマスタ8を回転しながら搬送するプラテンローラ9と、製版済みのマスタ8または未製版のマスタ8を所定の長さに切断するカッタ11と、プラテンローラ9により搬送されてきたマスタ8を適度の張力を付与しながら版胴1の拡開したクランパ7に向けて搬送する搬送ローラ対12等を具備している。
【0022】
マスタ8は、連続シート状をなし、合成樹脂製のロール芯8bに巻き付けられてマスタロール8aが形成される。ロール芯8bはマスタロール8aの両端面から突出していてマスタ8の幅よりも長く形成されている。マスタロール8aは、両端側のロール芯8bがマスタ支持部材8cにより図1における反時計回り方向に回転自在に支持されていて、マスタ支持部材8cに対して着脱自在となっている。両端側のマスタ支持部材8cは、製版装置14におけるマスタ搬送方向X1に沿ってその左右両側に配設されている図示しない製版側板対にスライド可能に取り付けられている。上記製版側板対は、装置100本体に固設されている。したがって、マスタ8は、マスタ支持部材8cによって、マスタロール8aからマスタ搬送方向X1に繰り出し可能に支持されている。
【0023】
マスタ8は、例えば特開平10−147075号公報に記載されているような、和紙とフィルムとの間に、微細に発泡加工した多孔性樹脂膜を挟み、従来のマスタに比して薄くされている、いわゆる薄型マスタである。薄型マスタは、従来のマスタに比して、インキの滲出を均一に行い良好な印刷を行うこと、消費するインキ量が低減されることにおいて利点がある。マスタ8は薄型マスタであれば、上記特開平10−147075号公報に記載されているものに限らずどのようなものでも良い。
【0024】
サーマルヘッド10は、プラテンローラ9のプラテンローラ軸と平行に延在して設けられていて、図示しないカムおよびバネ部材等を備えた接離機構により、マスタ8を介してプラテンローラ9に接離自在となっている。サーマルヘッド10は、上記バネ部材によりプラテンローラ9に接触する向きに付勢されている。サーマルヘッド10の主走査方向には、プラテンローラ9にマスタ8を介して当接する部位に多数の発熱素子(図示せず)が配設されている。サーマルヘッド10は、図示しないA/D変換器と製版制御装置を兼ねる図5に示す制御手段とで処理されて送出されるデジタル画像信号に基づき上記発熱素子を選択的に加熱することにより、マスタ8を選択的に加熱溶融穿孔・製版する製版手段としての周知の機能を有する。
【0025】
プラテンローラ9は、金属製の芯金を介してプラテンローラ軸と一体的に形成されている。プラテンローラ9は、プラテンローラ軸の両端部が上記製版側板対に回転可能に支持されていることにより、図1における時計回り方向に回転自在となっている。プラテンローラ9は、タイミングベルトやギヤ等の回転伝達部材(図示せず)を介して、図5に示すプラテンローラ駆動手段としてのステッピングモータ76に連結され、これにより図1における時計回り方向に回転駆動される。
【0026】
上記構成のとおり、プラテンローラ9がステッピングモータ76により回転駆動されることにより、マスタ8はマスタロール8aから引き出されることとなる。搬送ローラ対12は、バネ等の付勢手段により適度な押圧力を与えられて互いに圧接して設けられていて、各ローラ軸の両端部が上記製版側板対に回転自在に支持されていることにより互いに反対方向に回転自在となっている。搬送ローラ対12は、上側の搬送ローラ12がプラテンローラ9の周速度(搬送速度)よりもわずかに速い周速度(搬送速度)で回転するように、図示しない複数のギヤ等の回転伝達部材、および例えば図示しないパウダー式電磁クラッチを介してステッピングモータ76に連結されている。ここに、ステッピングモータ76は、図5に示すように、プラテンローラ駆動手段とともに、搬送ローラ対駆動手段を構成している。
【0027】
上記パウダー式電磁クラッチは、プラテンローラ9とサーマルヘッド10との間のニップ部61からマスタ8を無理に引き摺り出さないような所定の張力としてのフロントテンションをプラテンローラ9と搬送ローラ対12との間のマスタ8に付与する機能を有する。搬送ローラ対12は、マスタ8との間で滑りながら適度なフロントテンションを製版済みのマスタ8に付与するようになっている。なお、上記電磁クラッチに代えて、ステッピングモータ76とは独立したステッピングモータで搬送ローラ対12を単独駆動してもよい。
【0028】
搬送ローラ対12に隣るマスタ搬送方向X1下流側には、製版済みのマスタ8の先端を版胴1のクランパ7に案内するための湾曲したガイド板13が搬送ローラ対12の各軸方向に延在して設けられている。カッタ11は、プラテンローラ9と搬送ローラ対12との間のマスタ搬送路を挟んで上下に設けられ固定刃11bおよび可動刃11aを備えたギロチンタイプの公知のものである。カッタ11は、上記ギロチンタイプに限らず、可動刃がマスタ搬送方向X1と直行するマスタ幅方向に回転しながら移動する回転刃移動タイプのものを用いてもよい。
【0029】
版胴1は、多孔性で円筒状の支持円筒体と、その支持円筒体の外周を覆うように複数層巻き付けられた樹脂あるいは金属網体製のメッシュスクリーン(図示せず)との2層構造からなる。版胴1は、インキ通過性の多数の開孔を有する開口部1a(印刷可能領域)と、クランパ7等が設けられている非開口部(非印刷可能領域)とを備えた周知の構成を有する。版胴1は、図示しない端板フランジの外周部に巻着・固設されていて、後述するインキパイプ5を兼ねる支軸の周りに回転自在に支持されている。
【0030】
版胴1は、図示しないギヤやベルト等の駆動伝達手段を介して図5に示す版胴駆動手段としての電動モータ72に連結されていて、電動モータ72により図1中の時計回り方向である矢印A方向に回転駆動される。電動モータ72としては、例えば制御用のDCモータが使用されている。版胴1の内部には、インキパイプ5に固設された図示しないインキ側板に回転自在に支持されていて、図示しないギヤ等の駆動伝達手段により電動モータ72の回転駆動力が伝達されて版胴1と同期して図1中の時計回り方向である矢印B方向に回転駆動され、版胴1の内周面に接触してインキを供給するインキローラ2と、インキローラ2とわずかな間隙を置いて平行に配置され、インキローラ2との間に断面楔状のインキ溜まり4を形成するドクタローラ3と、インキ溜まり4へインキを供給するインキパイプ5とが配置されている。インキローラ2、ドクタローラ3およびインキパイプ5はインキ供給手段を構成している。
【0031】
インキ溜まり4のインキは、版胴1の外部に設けられた図示しないインキパック等より図示しないインキポンプで吸引され、インキパイプ5の供給孔より供給されて混練される。インキ溜まり4のインキは、ドクタローラ3により計量されながらインキローラ2の外周面上に薄膜状に供給され、さらにインキローラ2の外周面が版胴1の上記支持円筒体内周面に接触することにより版胴1の開口部1a部分に供給される。インキは、従来より用いられてきたインキよりも粘度の低い、いわゆる低粘度インキであり、版胴1の支持円筒体およびメッシュスクリーンと、製版済みのマスタ8に形成された孔とから良好に染み出し、所望の印刷画像を高精度にて実現する。
【0032】
版胴1の上記非開口部外周面上の一部分には、版胴1の一つの母線に沿って設けられた強磁性体製のステージ6と、このステージ6の両側端に設けられたクランパ軸に回動自在に取り付けられ、ステージ6の平面部に対して開閉自在なゴム磁石を有するクランパ7とがそれぞれ設けられている。クランパ7は、装置100本体側に設けられた図示しない開閉装置により所定位置において開閉される。版胴1は、クランパ7が図1に示す略右横に位置する状態、すなわち給版位置において停止されるようになっている。版胴1は、上記インキパックや上記インキポンプ等と一体的になされた版胴ユニットとして構成されており、装置100本体に対してインキパイプ5の軸線方向に挿脱自在、すなわち着脱自在になっている。このように上記版胴ユニットを着脱自在にするための着脱手段としては、例えば特開2001−10195号公報の図2に開示されている構成例が挙げられる。
【0033】
インキローラ2に対向する版胴1の外周面の下方近傍には、版胴1の外周面に接離自在なプレスローラ15が配設されている。プレスローラ15は、版胴1上の製版済みのマスタ8に用紙29を押し付ける図2に示す第1の位置とこの第1の位置から離れた、図1に示す初期位置でもある第2の位置との間で変位自在に構成されている。プレスローラ15の図1における奥側の端部には、プレスローラ15を、第1の位置と第2の位置との間で変位させるための変位手段が配設されている。
【0034】
上記変位手段は、アーム軸16a、プレスローラアーム対16、加圧アーム17、カムフォロア18、加圧バネ19およびカム20等から主に構成されている。アーム軸16aは、装置100本体側に固設された図示しない筐体側板に回転自在に支持されている。プレスローラ15は、その横幅が版胴1の横幅と略同じ長さとなるように形成されており、中心部にはプレスローラ軸15aが挿通固着されている。プレスローラ軸15aの両端部は、図1における紙面の手前側および奥側に配置されたアーム軸16aにその一端側が固定されたプレスローラアーム対16の他端側に回転自在に支持されていて、版胴1上の製版済みのマスタに用紙29を介して圧接したときに従動回転するように構成されている。
【0035】
アーム軸16aの端部には、加圧アーム17の一端部が固着されている。加圧アーム17の略中央部には、カムフォロア18が回転自在に軸を持って保持されている。加圧アーム17の他端部側には、プレスローラ15を常に版胴1の外周面に圧接する向きに付勢する引張バネである加圧バネ19の一端が係止され、加圧バネ19の他端は上記筐体側板側に係止されている。この加圧バネ19により、加圧アーム17の他端側は、アーム軸16aを中心として図1における時計回り方向に揺動する向きに付勢されている。加圧アーム17の他端部には、図示しない係止手段の係止部材と係合可能な図示しない切欠が一体的に形成されていて、該切欠は上記係止部材と係脱可能となっている。
【0036】
カムフォロア18近傍の上記筐体側板には、版胴1の回転と同期して回転するカム20を固着したカム軸20aが回転自在に支持されている。カム20は、小径部と大径部とが形成された例えば板カムからなる。カム軸20aには、図示しないベルトプーリまたはギヤ等が固設されていて、図示しないベルトやギヤ等の駆動伝達手段を介して版胴1を回転駆動する電動モータ72に連結されており、これによりカム20が版胴1の回転と同期して回転するようになっている。加圧バネ19により、カムフォロア18はカム20に常に当接する向きに付勢されている。
【0037】
上記係止手段は、通紙時(印刷時)以外はプレスローラ15を図1に示す第2の位置(厳密には第2の位置よりもさらに僅かに離間した位置)で保持する周知のものであり、上記係止部材、支軸、押圧手段駆動手段としての図5に示すソレノイド78および図示しない引張バネ等を具備している。孔版印刷装置100の動作を制御するマイクロコンピュータを具備した図5に示す制御手段70は、後述する図5に示す用紙先端検知センサ71からの、用紙29の通紙を検知した通紙信号に基づいて、ソレノイド78をオンすることで上記変位手段を作動させるように制御する、すなわちプレスローラ15を第1の位置に揺動・変位させて版胴1上の製版済みのマスタ8に用紙29を押し付けて印刷動作を行わせるようになっている。
【0038】
給紙装置30は、用紙29を繰り出し可能に積載して昇降自在な給紙トレイ28と、給紙トレイ28上の用紙29に接触して用紙29を1枚ずつ分離して搬送する分離搬送手段としての給紙ローラ26および分離部材27と、上下のレジストローラ47、47によって構成されたレジストローラ対(以下、「レジストローラ対47」と記載する。)等を具備している。レジストローラ対47は、版胴1の外周面とプレスローラ15との間にタイミングを取ってそのニップ部に先端を突き付けている用紙29を送り出し、給送するものである。
【0039】
給紙トレイ28は、図示しない給紙トレイ昇降モータおよびワイヤ式昇降機構等を備えた図示しない駆動装置により、積載された用紙29のうち最上位の用紙29が、常に、給紙ローラ26に所定の押圧力、すなわち用紙29を搬送可能な押圧力をもって接触するように、用紙29の増減に連動して、用紙29が搬送可能な範囲の押圧力で接触する状態を保持しつつ、昇降される。給紙トレイ28は、多くの用紙種類および用紙サイズを使用できる構造を有すると共に、その用紙積載容量を例えば用紙サイズA3やA4の用紙29で500枚以上を積載可能とするに適した構造を有している。
【0040】
給紙ローラ26は、金属製の給紙ローラ軸26aと一体的に形成されていて、給紙ローラ軸26aの一端部が上記筐体側板に回転自在に支持されている。分離部材27は、用紙29に対する摩擦係数の高いゴムや樹脂で形成され給紙ローラ26に当接可能となっている分離パッドと呼ばれる部材を有している。この分離パッドは、付勢手段としての図示しない圧縮バネにより給紙ローラ26に押し付けられる向きに付勢されている。給紙ローラ26は、例えばパルス入力で駆動するモータである図5に示す給紙ローラ駆動手段としてのステッピングモータ79に歯付きプーリおよび歯付きベルトを介して連結されていて、ステッピングモータ79により図1における時計回り方向に回転駆動される。
【0041】
レジストローラ対47は、上記筐体側板に回転自在に支持されている。上側のレジストローラ47は、下側のレジストローラ47に対して所定のタイミングで当接するように接離自在に設けられている。下側のレジストローラ47は、例えばパルス入力で駆動するモータである図5に示すレジストローラ駆動手段としてのステッピングモータ77に歯付きプーリおよび歯付きベルトを介して連結されていて、ステッピングモータ77により図1における反時計回り方向に回転駆動される。なお、給紙ローラ駆動手段79、レジストローラ駆動手段77は、それぞれステッピングモータに限らず、周知のように、電動モータ72からの回転駆動力をベルトやギヤおよびカムを具備した駆動力伝達・同期手段を介して版胴1の回転に同期して駆動してもよい。
【0042】
版胴1とプレスローラ15との間に位置するニップ部61からレジストローラ対47のニップ部までの用紙搬送経路には、レジストローラ対47から給送された用紙29の先端を検知する図5に示す用紙先端検知手段としての用紙先端検知センサ71が配設されている。用紙先端検知センサ71は、例えば発光部および受光部を具備した反射型の光学センサである。
【0043】
排紙装置45は、エアーナイフ64と、分離爪31と、分離爪31が印刷時において上記剥離位置を占めたとき、先端31a(以下、「尖端31a」と言い替える)を突出し、分離爪31が非印刷時において上記非剥離位置を占めたとき、尖端31aを収納する収納部材36と、エアーナイフ64と分離爪31とにより図2に示す版胴1上の製版済みのマスタ8から剥離・分離された印刷済みの用紙29を吸引しながら上記排紙トレイに搬送し排出する排紙搬送装置37と、上記した排紙トレイとから主に構成されている。図1、図5に示す剥離手段73は、排紙装置45のうち排紙搬送装置37および排紙トレイを除く部分と、エアーナイフ64と、分離爪31と、後述する図1、図5に示す送風手段74と、後述する図5に示す剥離部材駆動手段75とを有している。
【0044】
排紙搬送装置37は、上記筐体側板対に回転自在に支持され図1および図2における反時計回り方向に回転自在な排紙ローラ前38と、同じく上記筐体側板対に回転自在に支持され図1および図2において反時計回り方向に図5に示す排紙ローラ駆動手段としてのモータ80により回転駆動される排紙ローラ後39と、排紙ローラ前38および排紙ローラ後39に張り渡された多孔性の排紙ベルト40と、排紙ベルト40の内側に配置され剥離・分離された印刷済みの用紙29を排紙ベルト40に吸引するための吸引ファン41とを具備している。
【0045】
分離爪31は、版胴1上の製版済みのマスタ8に用紙29を介してプレスローラ15が圧接することにより形成されるニップ部61の、A方向における下流近傍に、その尖端31aが上記剥離位置と上記非剥離位置との間に揺動・変位できるように配設されている。分離爪31は、例えば特開2001−10195号公報の図1および図4ないし図6等に示されている分離部材としてのエアーナイフと比較して、その下部に用紙案内部35が一体的に形成されていることが主に相違する。
【0046】
すなわち、分離爪31は、特開2001−10195号公報明細書の段落番号(0025)および(0050)ないし(0054)等に記載されているものと比べて、エアーを吹き出す構成(本実施形態におけるエアーナイフ64に相当)が別体となっている他は略同様に構成されている。具体的には、分離爪31は、図1ないし図4に示すように、用紙29が版胴1の外周面に貼り付いて巻き上がるのを確実に防止するために、その尖端31aの部分が尖った剥離爪ともいわれる構成・機能を有している。
【0047】
エアーナイフ64は、その先端部に位置し、エアーを吐出する、図1、図2に示すノズル65を備えている。このノズル65は、図1、図5に示す送風手段としての空気圧発生装置のファン74から後述するタイミングで圧縮空気流が高速で吹き込まれ、版胴1に押し付けられている用紙29の先端部と版胴1の外周面との間に吹き付けるものである。エアーナイフ64は、その先端部に位置するノズル65が、クランパ7配置部等の版胴1の外周突出部分が版胴1の回転により最も近接する位置においてかかる突出部分と僅かに離間し干渉しない位置を占めている。
【0048】
エアーナイフ64は、図1における紙面と垂直方向である版胴1の軸方向に延在しているとともに、軸方向における版胴1の中央部に対向する位置に分離爪31を受け入れ分離爪31の変位を許容する図示しない分離部材受け入れ部としての切り欠きを有しており、軸方向における版胴1のほぼ全体にわたって空気を吹き付けるようになっている。かかる切り欠きは、分離爪31の版胴1に近接・離間するかかる変位を許容するとともに、エアーナイフ64自体を版胴1に近接して配設することを目的として形成されている。ファン74はエアーナイフ64に一体的に備えられている。送風手段はファン74でなくポンプであっても良い。
【0049】
分離爪31は、分離爪アーム34を介して、分離爪31の基部を固定し、分離爪31を揺動可能に支持する分離爪軸32に連結・固定されている。分離爪軸32の両端部は、上記筐体側板対に所定角度回動自在に支持されている。分離爪31の下部には、その尖端31aから基端部側にかけて薄板状かつ略扇形状の用紙案内部35が一体的に形成されている。
【0050】
用紙案内部35は、図3(b)に示すように、分離爪31が上記剥離位置を占めたとき、その尖端31aにより剥離した印刷済みの用紙29の先端面等を僅かに窪んだ湾曲面形状をなす用紙当接面35aに沿わせることにより、収納部材36に衝突したり引っ掛かってしまうことでジャム等を生じることなく、排紙搬送装置37の排紙ベルト40に整然と案内し受け渡す役目を有している。この点から、分離爪31の尖端31a部位はできるだけ尖った形状を残して確実な剥離性能を維持するために、用紙案内部35の用紙当接面35aの形状を上記のように形成している。
【0051】
分離爪31は、例えば上記特開2001−10195号公報の図1および図4ないし図6等に示されている分離部材変位手段(17aおよび17b)の何れか一方(以下、分離部材変位手段(17a)を代表として説明する)により、その尖端31aが分離爪軸32を中心として上記剥離位置(分離位置)と上記非剥離位置(非分離位置)との間に揺動可能となっている。
【0052】
上記剥離位置とは、好ましくは、分離爪31の尖端31aが、プレスローラ15の外周面と版胴1の外周面との圧接したときにおける版胴1の凹みにより変形した版胴1の外周面にも干渉せず、かつ、版胴1の外周面から用紙29の先端部を剥離・分離するのに最適な、版胴1の外周面からその遠心方向に最小間隙を有する位置に変位した位置、および、この位置を占める分離爪31と、エアーナイフ64による空気の吹き付けとにより用紙29の先端が版胴1から剥離される位置をいう。剥離位置において分離爪31の尖端31aが版胴1、製版済みマスタ8、用紙29に対して占める位置と、エアーナイフ64が版胴1、製版済みマスタ8、用紙29に対して空気を吹き付ける位置とはほぼ一致している。
【0053】
また、上記非剥離位置とは、分離爪31の尖端31aが、クランパ7配置部等の版胴1の外周突出部分と干渉しない位置に変位した位置をいう。また、例えば上記特開2001−10195号公報で開示されている分離部材退避手段(70a,70b)のような構成を有していないものにあっては、上記剥離位置とは、分離爪31の尖端31aが、版胴1の外周面に干渉せず、かつ、版胴1の外周面から用紙29の先端部を剥離・分離するのに最適な、版胴1の外周面からその遠心方向に最小間隙を有する位置に変位した位置、および、この位置を占める分離爪31と、エアーナイフ64による空気の吹き付けとにより用紙29の先端が版胴1から剥離される位置をいう。
【0054】
分離部材変位手段(17a)は、上記した分離爪アーム34と、上記した分離爪軸32と、版胴1の支軸5に対して着脱自在に設けられ、版胴1の回転と同期して回転駆動され、かつ、上記剥離位置と上記非剥離位置との間に分離爪31の尖端31aを選択的に変位させるための剥離爪カム(75)と、分離爪軸32に設けられ、剥離爪カム(75)に従動するカムフォロアを構成するローラ(77a)およびこのローラ(77a)を一方の自由端で回動自在に支持するカムフォロアアーム(76)と、カムフォロアアーム(76)のローラ(77a)を剥離爪カム(75)の輪郭周面に圧接する向きに付勢する付勢手段としてのバネ(78)(引張バネ)とを具備している。
【0055】
なお、上記特開2001−10195号公報記載の技術では、同公報明細書の段落番号(0025)および(0055)ないし(0057)、ならびに図1および図4ないし図6に示されている同技術に特有の分離部材退避手段(70a,70b)により、同公報の段落番号(0086)ないし(0089)に記載されていると同様の動作が行われるが、本発明では該構成および動作はその要旨とするところではないので、その説明を省略する。
【0056】
分離爪軸32の一端には図示しない加圧アームが固設されている。この加圧アームには、図示しない分離爪係止手段の係止部材と係合可能な切欠(図示せず)が一体的に形成されていて、該切欠は上記係止部材と係脱可能となっている。上記分離爪係止手段は、通紙時(印刷時)以外は分離爪31を図1に示す上記非剥離位置(厳密には非剥離位置よりもさらに僅かに離間した位置)で保持する周知のものであり、上記分離爪係止部材、支軸、図5に示す剥離部材駆動手段としてのソレノイド75および引張バネ(共に図示せず)等を具備している。
【0057】
制御手段70は、用紙先端検知センサ71からの通紙信号に基づいて、ソレノイド75をオンすることで分離部材変位手段(17a)を作動させるように制御する。すなわち制御手段70は、分離爪31を上記剥離位置に揺動・変位させて版胴1上の製版済みのマスタ8から印刷済みの用紙29を剥ぎ取る排紙・剥離動作を行わせるようになっている。非印刷状態のときや、版胴1が上記版胴ユニットを構成して装置100本体から離脱するホームポジションを占めているときには、上記分離爪係止手段により分離爪31は上記非剥離位置に保持されると共に、その尖端31aが収納部材36の内部に退避した状態で保持されるようになっている。
【0058】
収納部材36は、図4に詳しく示すように、例えばステンレススチール製の薄板や板金材あるいは適宜の樹脂を折り曲げて断面コ字状をなすように一体成形されていて、装置100本体側の上記筐体側板に固設された図示しない不動部材に図1ないし図3に示すように右下がりの傾斜した状態で取り付け固定されている。収納部材36の下部底壁には、分離爪31の用紙案内部35を緩く嵌入する案内溝36aが形成されている。
【0059】
図5において、制御手段70の右側に図示されている各手段は、制御手段70により制御され、上述した種々の部材の駆動等が行われる。また、図5において制御手段70の左側に図示されている操作パネル69と用紙先端検知手段71とは制御手段70に向けて信号を出力し、これにより、制御手段70は、操作パネル69、用紙先端検知手段71等から入力された信号に基づいて、上述した、制御手段70の右側に図示されている各手段の制御を行うようになっている。
【0060】
孔版印刷装置100の動作を図6を参照しつつ説明する。ユーザにより上記原稿読取装置の上記原稿受台に図示しない原稿がセットされ、これに前後して印刷に使用すべき用紙種類および用紙サイズの用紙29が適宜給紙トレイ28上に補充積載される。次いで、図5に示す操作パネル69上の図示しない製版スタートキーが押されるとスタート信号が生成されて、これが制御手段70に入力されることによって排版から排紙に亘る一連の動作が開始される。
【0061】
スタート信号に基づいて版胴1が回転駆動され、図示しない上記排版装置により、版胴1に巻装されている使用済みのマスタ8が剥離され上記排版ボックス内に廃棄され、排版動作が行われる(図6(S1))。排版動作(図6(S1))に次いで、版胴1はクランパ7が図1において略右真横位置となる給版位置まで回転して停止する。版胴1が該給版位置に停止すると、クランパ7が上記開閉装置により開放されて給版待機状態となる。
【0062】
給版待機状態において、上記原稿読取装置に配設されている図示しない原稿分離搬送装置の作動により1枚の原稿が読取部に送出されて、図示しないスキャナの作動によってその原稿の画像が光学情報として読み取られ、CCD(電荷結合素子)等からなる画像センサで上記光学情報がアナログの電気信号に変換され、さらに上記A/D変換器および上記製版制御装置を経由して処理され、画像情報が決定される(図6(S2))。決定された画像情報に基づいて送出されるデジタル画像信号によって、制御手段70により、サーマルヘッド10の上記発熱素子が主走査方向にパルス状に通電されて選択的に発熱される。
【0063】
発熱素子の選択的な発熱と同時に、ステッピングモータ76が回転駆動されることにより、プラテンローラ9および搬送ローラ対12が回転を開始して、マスタロール8aからマスタ8が引き出されつつ上記主走査方向と直交する副走査方向でもあるマスタ搬送方向X1に搬送されながら、マスタ8の上記熱可塑性樹脂フィルム部分が画像情報に応じて選択的に加熱穿孔される製版が行われる(図6(S3))。
【0064】
製版が進行することで、マスタ8の先端部がガイド板13に案内されてステージ6に対して拡開しているクランパ7の間に挿入され、搬送ローラ対12等が所定の角度回転され、これに対応してステッピングモータ76のステップ数が制御手段70によってカウントされ、カウントされた数がある設定値に達し、製版済みのマスタ8の先端がステージ6とクランパ7との間に届いたと制御手段70が判断すると、制御手段70の制御に基づいて上記開閉装置によりクランパ7が閉じられ、製版済みのマスタ8の先端部がステージ6とクランパ7との間に吸着・挾持される。
【0065】
製版済みのマスタ8の先端部のクランプ後、電動モータ72の作動により版胴1がマスタ搬送速度と略同じ周速度で図1の矢印A方向に回転を再開して、製版済みのマスタ8が搬送ローラ対12により搬送されて版胴1の外周面へ巻装され給版が行われる(図6(S4))。ステッピングモータ76の所定ステップ数の回転駆動により、制御手段70によりマスタ8の製版および設定量の製版済みのマスタ8の搬送が終了したと判断されると、制御手段70の制御に基づいてカッタ11が作動して製版済みのマスタ8が切断されると共に、ステッピングモータ76の回転駆動が停止されることによりプラテンローラ9および搬送ローラ対12の回転が停止する。そして、切断された製版済みのマスタ8の後端が、版胴1の回転によって製版装置14内から引き出され、版胴1の外周面に完全に巻き取られた段階で版胴1への製版済みのマスタ8の巻装が終了し、給版が完了する(図6(S4))。
【0066】
版胴1への製版済みのマスタ8の巻装が完了すると、版胴1が所定の周速度で図1の矢印A方向に回転駆動される(図6(S5))。制御手段70は、マスタ8の巻装後の電動モータ72の駆動状態を把握し、これにより版胴1の回転位相を把握しており、製版済みマスタ8の後端が上記剥離位置を通過したと判断する(図6(S6))と、送風手段74を作動させて、エアーナイフ64による送風を開始する(図6(S7))。すなわち、制御手段70は、マスタ8の巻装完了後に開始された電動モータ72の作動タイミングに基づいて、エアーナイフ64による送風を開始するようになっている。
【0067】
エアーナイフ31による送風の開始後、版胴1はさらに回転し、版付け動作が開始される(図6(S8))。なお、給版動作終了後に給送される一枚目の用紙29の先端が用紙先端検知センサ71を横切り・通過するまでは、換言すれば用紙先端検知センサ71によりかかる用紙29の先端がオン検知されるまでは、制御手段70によって上記係止手段のソレノイド78がオフされたままに制御されているため上記変位手段は非作動状態にあり、これによりプレスローラ15は第2の位置、すなわち版胴1の外周面から離間した初期位置で保持されている。
【0068】
版胴1の回転位置に合わせた所定のタイミングで、ステッピングモータ79が起動することにより給紙ローラ26が時計回り方向に回転し、給紙ローラ26と接触している給紙トレイ28上の最上の用紙29が、搬送されながら分離部材27との協働作用により1枚に分離されて用紙搬送方向X2の下流側にあるレジストローラ対47のニップ部に向けて送り出される。給紙ローラ26の回転により用紙29の先端がレジストローラ対47のニップ部に向けて正常に搬送されたと、制御手段70が、ステッピングモータ79への所定のパルス数(所定のステップ数)から判断すると、制御手段70は、ステッピングモータ79の作動を停止し、給紙ローラ26の回転が停止される。
【0069】
用紙29は、ステッピングモータ79が停止するまでの間、レジストローラ対47のニップ部で先端が当接した後、先端部に所定の湾曲した撓みが形成された状態で保持される。次いで、版胴1が図1の矢印A方向にさらに回転されると、版胴1上の製版済みのマスタ8の製版画像先端位置に合わせた所定のタイミングで、ステッピングモータ77が作動する(図6(S9))ことにより、レジストローラ対47のニップ部で当接して待機している用紙29の先端が版胴1とプレスローラ15との間に向けて送り出される。ステッピングモータ77は所定パルス数(所定ステップ数)分回転駆動された後停止する。
【0070】
ステッピングモータ77に供給される所定のパルス数内に、用紙先端検知センサ71により用紙29の先端がオン検知される(図6(S10))ことによって、上記係止手段のソレノイド76に通電がなされ、ソレノイド76がオンすることにより上記変位手段が作動する。すなわち、ソレノイド76がオンすることで、加圧アーム17はその係止状態を解除されて加圧バネ19の付勢力によってアーム軸16aを中心に時計回り方向に揺動する。加圧アーム17の揺動により、カムフォロア18の外周面がカム20の輪郭周面と当接し、カムフォロア18の外周面がカム20の小径部周面と対向し非当接状態となるカム20の回転位置で、プレスローラアーム対16はアーム軸16aを中心に加圧バネ19の付勢力によって時計回り方向に揺動し上昇することとなる。
【0071】
これにより、プレスローラ15は、その外周面が版胴1上の製版済みのマスタ8に用紙29を押し付ける第1の位置に変位して、プレスローラ15は従動回転しながら版胴1上の製版済みのマスタ8に用紙29を連続的に押し付けることで、製版済みのマスタ8を版胴1の外周面に密着させマスタ8にインキを充填させるためのいわゆる版付け印刷が行われる。この版付け印刷では、版胴1の開口部1aの開孔部分から製版済みのマスタ8の穿孔部分へとインキが滲み出てきて用紙29の表面に転移されることで孔版印刷が行われる。
【0072】
この際、製版済みマスタ8にシワが生じることはない。すなわち、エアーナイフ64からの送風が開始されるのが、製版済みマスタ8の後端が剥離位置を通過した後のため、低粘度インキを用いていても、製版済みマスタ8が、エアーナイフ64によるエアーの吹き付けにより、版胴1に密着することがなく、したがって版胴1と製版済みマスタ8との間に空気が閉じ込められて空気溜りが生じることがないため、版胴1と製版済みマスタ8との間の層状の空気は、プレスローラ15で版胴1上の製版済みのマスタ8に用紙29を押し付けるときに追い出されるから、マスタ8が薄型マスタであり、従来のマスタに比して腰のないマスタであっても、製版済みマスタ8にシワが生じることはない。
【0073】
また、低粘度インキを用いて印刷を行うことにより、版胴1の支持円筒体およびメッシュスクリーンからのインキの透過性と、製版済みのマスタ8に形成された孔からのインキの透過性及び滲出性が良好であり、また印刷画像上の滲み及び画像の欠落が少なく、所望の印刷画像が高精度・高解像度で得られるとともに、薄型マスタを用いて印刷を行うことにより、従来のマスタに比して、インキの滲出を均一に行ってムラのない良好な印刷画像が得られる。また、薄型マスタを用いて印刷を行うことにより、従来のマスタに比して、消費するインキ量が低減され、かかる良好な印刷画像が低コストで得られるようになっている。さらに、作動タイミングからの経過時間がカウントされる電動モータ72の当該作動タイミングに基づいてエアーナイフ64による送風が開始されるので、制御手段70による、エアーナイフ64による送風開始に関する制御が比較的簡易となっている。
【0074】
プレスローラ15が版胴1上の製版済みのマスタ8に用紙29を押し付ける時、プレスローラ15とともにインキローラ2も版胴1の回転方向と同一方向に回転する。インキ溜まり4のインキは、インキローラ2の回転によりインキローラ2の表面に付着され、インキローラ2とドクターローラ3との間隙を通過する際にその量を規制され、版胴1の内周面に供給される。
【0075】
また用紙先端検知センサ71により用紙29の先端がオン検知される(図6(S10))ことによって、上記分離爪係止手段のソレノイド75に通電がなされ、これにより分離部材変位手段(17a)を作動させることとなる。すなわち、ソレノイド75がオンすることで、バネ(78)の付勢力付与状態下において分離部材変位手段(17a)の分離爪カム(75)が版胴1と共に版胴1のホームポジション(クランパ7が略真下に位置する版胴1の回転位置)から時計回り方向に少し回転すると、分離爪カム(75)の小径部とカムフォロアアーム(76)のローラ(77a)とが対向することとなり、これにより図2に示すように、カムフォロアアーム(76)、分離爪アーム34および分離爪31は共に分離爪軸32を中心として反時計回り方向に揺動して、図3(a)に示すように収納部材36内に収納されていた分離爪31の尖端31aが図2および図3(b)に示すように版胴1の外周表面に近接して剥離位置を占める。
【0076】
分離爪31の尖端31aが版胴1の外周表面に近接して剥離位置を占め、この剥離位置を用紙29の先端が通過する(図6(S11))ことで、エアーナイフ64による空気の吹き付けとの協働により、印刷済みの用紙29の先端部が、版胴1上の製版済みのマスタ8から、剥離位置において確実に剥離される。このように、制御手段70が、版付け後、一枚目の用紙29の先端が剥離位置を通過するまでの間に、エアーナイフ64による送風を開始させるとともに、分離爪31をして剥離位置を占めしむことで、かかる一枚目の用紙29は分離爪31の尖端31aにより確実に剥離され、また、剥離された印刷済みの用紙29の先端部は、分離爪31の尖端31a下部の用紙当接面35aに当接しつつこれに沿って排紙搬送装置37の排紙ベルト40へと案内される。剥離された用紙29は、モータ80の回転駆動により駆動される、排紙搬送装置37の排紙ベルト40上に吸引・吸着されて搬送されながら上記排紙トレイに排出・積載され、版付け動作が終了する(図6(S12))。
【0077】
説明が前後するが、版胴1が矢印A方向に回転して、クランパ7が、版胴1に圧接しているプレスローラ15の近傍に至ると、版胴1の回転と同期して回転駆動されていたカム20が、その大径部周面をカムフォロア18の外周面に接する位置に回転させているので、プレスローラ15は版胴1の外周面から外側へ突出しているクランパ7配置部から離間することとなり、プレスローラ15とクランパ7部位との干渉が避けられる。
【0078】
同様に、クランパ7が剥離位置を占めている分離爪31の尖端31aの近傍に至ると、版胴1の回転と同期して回転駆動されていた分離爪カム(75)が、その大径部周面をカムフォロアアーム(76)のローラ(77a)の外周面に接する位置に回転させているので、版胴1のクランパ7配置部から離間することとなる。これと同時に、図1に二点鎖線で示し、また図3(a)に示すように、分離爪31は分離爪軸32を中心として時計回り方向に揺動することにより、分離爪31における下方に突出した用紙案内部35が収納部材36の案内溝36aに案内されつつその尖端31aが収納部材36内に収納されるので、分離爪31の尖端31aとクランパ7部位との干渉が避けられる。
【0079】
一方、プレスローラ15が版胴1の外周面に当接した時点より版胴1が略4分の3回転し、カム20の大径部周面とカムフォロア18とが接する時点、つまり、上記係止部材と加圧アーム17の上記切欠とが係止可能な時点において、ソレノイド78への通電が遮断されると、上記係止部材は係止状態となることにより、プレスローラ15は、版胴1の外周面から離れた第2の位置(初期位置)に復帰して保持されて、印刷待機状態となる。分離爪31も同様に、上記非剥離位置に保持されることにより、用紙案内部35が収納部材36の案内溝36aの奥に保持されると共に、その尖端31aが収納部材36内に収納・待避保持されることとなる。
【0080】
版付け動作終了後、ユーザは上記排紙トレイに排出された印刷物を適宜目視して、通常の印刷動作を行ってもよいかどうかを適宜判断し、オーケーであれば操作パネル69の図示しないテンキーで印刷枚数を設定し、操作パネル69の図示しない印刷スタートキーを押すと、上記したと同様の給紙、通常の印刷および排紙の各動作が順次行われ、指定された所定枚数の印刷が行われる(図6(S13))。所定枚数の印刷(図6(S13))が終了すると、エアーナイフ64による送風が停止される(図6(S14))。印刷画像は、低粘度インキ、薄型マスタを用いて印刷を行っているから、上述したように、解像度が高く、高品質である。
【0081】
所定枚数の印刷(図6(S13))が終了一旦し、エアーナイフ64による送風が停止された(図6(S14))後、再度同じ製版済みマスタ8を用いて印刷が行われるときには、すでに送風手段74による送風の条件が満たされているので、制御手段70は、上述した印刷スタートキーが押されるとすぐに送風手段74を作動させ、エアーナイフ64による送風を開始し(図6(S7))、次に指定された所定枚数の印刷が行われ(図6(S13))、所定枚数の印刷が終了するとエアーナイフ64による送風を停止する(図6(S14))。このように、再度同じ製版済みマスタ8を用いて印刷が行われるときには、ステップ(図6(S7))、ステップ(図6(S13))、ステップ(図6(S14))が繰り返される。
【0082】
なお、版付け印刷された用紙29の枚数は、正規の通常の印刷枚数としてカウントされないようになっている。通常の印刷動作は、版付け印刷動作と比較して、上記したように版付け印刷された用紙29の枚数が正規の通常の印刷枚数としてカウントされないこと、およびユーザが所望する設定印刷速度に応じた速度での給紙、印刷および排紙の各動作が行われることが主に相違するだけである。
【0083】
以上説明した実施形態においては、制御手段70が、版胴1に製版済みのマスタ8が巻装され、この製版済みのマスタ8の後端が剥離位置を通過した後、一枚目の用紙29の先端が剥離位置を通過するまでの間に、電動モータ72の作動タイミングに基づいて、エアーナイフ64による送風を開始する場合を示したが、エアーナイフ64による送風の開始タイミングは、版胴1に製版済みのマスタ8が巻装され、この製版済みのマスタ8の後端が剥離位置を通過した後、一枚目の用紙29の先端が剥離位置を通過するまでの間であれば、他のタイミングであっても良い。以下、図7、図8にしたがって、それぞれ、上述の実施形態と異なるタイミングでエアーナイフ64による送風を開始する例を説明する。なお、上述の実施形態と異なる動作について主に説明し、上述の実施形態と同様の部分については、図7、図8においてそれぞれ図6と同じ符号を付し、適宜説明を省略する。
【0084】
図7に示す例は、制御手段70により、レジストローラ47の作動タイミングに基づいて、エアーナイフ64による送風を開始する場合の動作を示すものである。すなわち、制御手段70は、製版済みマスタ8の後端が剥離位置を通過したと判断する(図7(S6))と、版胴1をさらに回転させ、これにより版付け動作が開始される(図7(S7’))。
【0085】
その後、給紙トレイ28上の最上の用紙29が、レジストローラ対47のニップ部に向けて送り出され、レジストローラ対47のニップ部に先端が当接し、先端部に所定の湾曲した撓みが形成された状態で保持される。次いで、版胴1が図1における矢印A方向にさらに回転されると、版胴1上の製版済みのマスタ8の製版画像先端位置に合わせた所定のタイミングで、レジストローラ対47のステッピングモータ77が作動する(図7(S8’))ことにより、レジストローラ対47のニップ部で当接して待機している用紙29の先端がレジストローラ対47でタイミングを取られて版胴1とプレスローラ15との間に向けて送り出される。ステッピングモータ77は所定パルス数(所定ステップ数)分回転駆動された後停止する。
【0086】
制御手段70は、ステッピングモータ77の動作タイミングに基づき、ステッピングモータ77の作動開始(図7(S8’))とともに送風手段74を作動させて、エアーナイフ64による送風を開始する(図7(S9’))。その後は上述の実施形態と同様の動作が行われ、所定枚数の印刷が行われる。
【0087】
この印刷の際においても、製版済みマスタ8にシワが生じることはない。すなわち、エアーナイフ64からの送風が開始されるのが、製版済みマスタ8の後端が剥離位置を通過した後のため、低粘度インキを用いていても、製版済みマスタ8が、エアーナイフ64によるエアーの吹き付けにより、版胴1に密着することがなく、したがって版胴1と製版済みマスタ8との間に空気が閉じ込められて空気溜りが生じることがないため、版胴1と製版済みマスタ8との間の層状の空気は、プレスローラ15で版胴1上の製版済みのマスタ8に用紙29を押し付けるときに追い出されるから、マスタ8が薄型マスタであっても、製版済みマスタ8にシワが生じることはない。
【0088】
また、一枚目の用紙29の先端が剥離位置を通過する前にエアーナイフ64を作動させるので、用紙29の剥離も良好に行われる。さらに、作動タイミングからの経過時間がカウントされるステッピングモータ77の当該作動タイミングに基づいてエアーナイフ64による送風が開始されるので、制御手段70による、エアーナイフ64による送風開始に関する制御を比較的簡易に行うことができる。
【0089】
所定枚数の印刷(図7(S13))が終了一旦し、エアーナイフ64による送風が停止された(図7(S14))後、再度同じ製版済みマスタ8を用いて印刷が行われるときにも、ステッピングモータ77の動作タイミングに基づき、ステッピングモータ77の作動開始(図7(S8’))とともに送風手段74を作動させて、エアーナイフ64による送風を開始し(図7(S9’))、これに続いてステップ(図7(S13))、ステップ(図7(S14))を行う。
【0090】
このように、再度同じ製版済みマスタ8を用いて印刷が行われるときには、ステップ(図7(S8’))、ステップ(図7(S9’))、ステップ(図7(S13))、ステップ(図7(S14))が繰り返される。ただし、再度同じ製版済みマスタ8を用いて印刷が行われるときは、すでに送風手段74による送風が一旦行われた後であるので、制御手段70は、送風手段74による送風の条件が満たされているとして、上述した印刷スタートキーが押されるとすぐに送風手段74を作動させ、エアーナイフ64による送風を開始し(図7(S9’))、次に指定された所定枚数の印刷を行い(図7(S13))、所定枚数の印刷が終了するとエアーナイフ64による送風を停止する(図7(S14))ようにしても良い。
【0091】
図8に示す例は、制御手段70により、用紙先端検知センサ71による用紙29の先端の検知に基づいて、エアーナイフ64による送風を開始する場合の動作を示すものである。すなわち、制御手段70は、製版済みマスタ8の後端が剥離位置を通過したと判断する(図8(S6))と、版胴1をさらに回転させ、これにより版付け動作が開始される(図8(S7”))。
【0092】
その後、給紙トレイ28上の最上の用紙29が、レジストローラ対47のニップ部に向けて送り出され、レジストローラ対47のニップ部に先端が当接し、先端部に所定の湾曲した撓みが形成された状態で保持される。次いで、版胴1が図1における矢印A方向にさらに回転されると、版胴1上の製版済みのマスタ8の製版画像先端位置に合わせた所定のタイミングで、レジストローラ対47のステッピングモータ77が作動する(図8(S8”))ことにより、レジストローラ対47のニップ部で当接して待機している用紙29の先端がレジストローラ対47でタイミングを取られて版胴1とプレスローラ15との間に向けて送り出される。ステッピングモータ77は所定パルス数(所定ステップ数)分回転駆動された後停止する。
【0093】
用紙29がレジストローラ対47によりニップ部61に向けて搬送される過程であって、ステッピングモータ77に供給される所定のパルス数内に、用紙先端検知センサ71により用紙29の先端がオン検知される(図8(S9”))。制御手段70は、用紙先端検知センサ71による用紙29の先端の検知に基づき、用紙先端検知センサ71により用紙29の先端の検知(図8(S9”))と同時に送風手段74を作動させて、エアーナイフ64による送風を開始する(図8(S10”))。その後は上述の実施形態と同様の動作が行われ、所定枚数の印刷が行われる。
【0094】
この印刷の際においても、製版済みマスタ8にシワが生じることはない。すなわち、エアーナイフ64からの送風が開始されるのが、製版済みマスタ8の後端が剥離位置を通過した後のため、低粘度インキを用いていても、製版済みマスタ8が、エアーナイフ64によるエアーの吹き付けにより、版胴1に密着することがなく、したがって版胴1と製版済みマスタ8との間に空気が閉じ込められて空気溜りが生じることがないため、版胴1と製版済みマスタ8との間の層状の空気は、プレスローラ15で版胴1上の製版済みのマスタ8に用紙29を押し付けるときに追い出されるから、マスタ8が薄型マスタであっても、製版済みマスタ8にシワが生じることはない。
【0095】
また、一枚目の用紙29の先端が剥離位置を通過する前にエアーナイフ64を作動させるので、用紙29の剥離も良好に行われる。さらに、製版済みマスタ8の後端が剥離位置を通過した後、一枚目の用紙29の先端が剥離位置を通過するまでの間にこの用紙29の先端の検知を必ず行う用紙先端検知センサ71による検知信号と同期してエアーナイフ64による送風が開始されるので、制御手段70による、エアーナイフ64による送風開始に関する制御を比較的簡易に行うことができる。
【0096】
所定枚数の印刷(図8(S13))が終了一旦し、エアーナイフ64による送風が停止された(図8(S14))後、再度同じ製版済みマスタ8を用いて印刷が行われるときにも、用紙先端検知センサ71による用紙29の先端の検知に基づき、用紙先端検知センサ71による用紙29の先端の検知(図8(S9”))と同時に送風手段74を作動させて、エアーナイフ64による送風を開始し(図8(S10”))、これに続いてステップ(図8(S13))、ステップ(図8(S14))を行う。
【0097】
このように、再度同じ製版済みマスタ8を用いて印刷が行われるときには、ステップ(図8(S9”))、ステップ(図8(S10”))、ステップ(図8(S13))、ステップ(図8(S14))が繰り返される。ただし、再度同じ製版済みマスタ8を用いて印刷が行われるときは、すでに送風手段74による送風が一旦行われた後であるので、制御手段70は、送風手段74による送風の条件が満たされているとして、上述した印刷スタートキーが押されるとすぐに送風手段74を作動させ、エアーナイフ64による送風を開始し(図8(S10”))、次に指定された所定枚数の印刷を行い(図8(S13))、所定枚数の印刷が終了するとエアーナイフ64による送風を停止する(図8(S14))ようにしても良い。
【0098】
以上、本発明の実施形態とその変形例について説明したが、エアーナイフ64による送風開始のタイミングは、版胴1に製版済みのマスタ8が巻装され、この製版済みのマスタ8の後端が剥離位置を通過した後、一枚目の用紙29の先端が剥離位置を通過するまでの間であれば、制御手段70により、別の態様とすることができる。
【0099】
すなわち、電動モータ72の作動タイミング、言い換えると電動モータ72の作動開始のタイミングに基づいてエアーナイフ64による送風を開始する場合であっても、制御手段70により、電動モータ72の作動開始からの時間をカウントし、エアーナイフ64による送風開始のタイミングを、レジストローラ対47の作動タイミングと同期するタイミングとしてもよいし、用紙先端検知センサ71により一枚目の用紙29の先端が検知されるタイミングと同期するタイミングとしても良い。
【0100】
また、レジストローラ対47の作動タイミング、言い換えるとレジストローラ対47の作動開始のタイミングに基づいてエアーナイフ64による送風を開始する場合であっても、制御手段70により、レジストローラ対47の作動開始からの時間をカウントし、エアーナイフ64による送風開始のタイミングを、用紙先端検知センサ71により一枚目の用紙29の先端が検知されるタイミングと同期するタイミングとしても良い。
【0101】
このように、エアーナイフ64による送風の開始タイミングは、版胴1に製版済みのマスタ8が巻装され、この製版済みのマスタ8の後端が剥離位置を通過した後、一枚目の用紙29の先端が剥離位置を通過するまでの間であれば、どのようなタイミングであっても良く、他のどのような部材の作動タイミングをきっかけとするものでもよく、また他のどのような部材の作動開始と同期して送風を開始してもよい。
【0102】
本発明は、上述した実施形態のように薄型マスタを用いる印刷装置に限らず、熱可塑性樹脂フィルムと、合成繊維等からなる多孔質支持体とを貼り合わせたラミネート構造をなすもの、和紙繊維、あるいは和紙繊維および合成繊維を混抄したもの等からなる多孔質支持体と熱可塑性樹脂フィルムとを貼り合わせたものや、いわゆる実質的に熱可塑性樹脂フィルムのみからなる従来のマスタを用いる印刷装置に適用することもできる。また、本発明は、上述した実施形態のように低粘度インキを用いる印刷装置に限らず、従来から用いられている通常のインキを用いる印刷装置に適用することもできる。
【0103】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、製版されたマスタを巻装する版胴と、用紙を上記版胴上のマスタに押し付けインキを同用紙に転移するための押圧手段と、上記版胴に対向して配設され、同版胴に向けて送風し、上記押圧手段によって上記版胴に押し付けられた用紙を同版胴から剥離するための剥離手段とを具備する印刷装置において、上記版胴に製版されたマスタが巻装され、このマスタの後端が上記剥離手段による上記版胴からの用紙の剥離位置を通過した後、一枚目の用紙の先端が上記剥離位置を通過するまでの間に、上記剥離手段による送風を開始する制御手段を有するので、版胴に押し付けられた用紙を送風により剥離することで、版胴からの用紙の剥離を良好に行うことができるとともに、製版済みのマスタが、剥離手段によるエアーの吹き付けにより、版胴に密着することがなく、したがって版胴と製版済みマスタとの間に空気が閉じ込められて空気溜りが生じることがないため、版胴と製版済みマスタとの間にある空気が、押圧手段で版胴上の製版済みのマスタに用紙を押し付けるときに追い出されるから、剥離手段の送風に起因するマスタのシワを防止することができ、良好な印刷画像を得ることができる印刷装置を提供することができる。
【0104】
制御手段によって作動させられることにより版胴を駆動する駆動手段を有し、制御手段が、駆動手段の作動タイミングに基づいて、剥離手段による送風を開始することとすれば、一般に作動タイミングからの経過時間がカウントされる駆動手段の当該作動タイミングに基づいて剥離手段による送風が開始されるので、比較的簡易な制御により、製版済みのマスタが、剥離手段によるエアーの吹き付けにより、版胴に密着することがなく、したがって剥離手段の送風に起因するマスタのシワを防止することができ、良好な印刷画像を得ることができる印刷装置を提供することができる。
【0105】
制御手段によって作動させられることにより版胴と押圧手段との間に向けて送り出すレジストローラを有し、制御手が、レジストローラの作動タイミングに基づいて、剥離手段による送風を開始することとすれば、一般に作動タイミングからの経過時間がカウントされるレジストローラの当該作動タイミングに基づいて剥離手段による送風が開始されるので、比較的簡易な制御により、製版済みのマスタが、剥離手段によるエアーの吹き付けにより、版胴に密着することがなく、したがって剥離手段の送風に起因するマスタのシワを防止することができ、良好な印刷画像を得ることができる印刷装置を提供することができる。
【0106】
版胴と押圧手段との間に向けて送り出すレジストローラと、押圧手段が用紙を版胴に押し付けるニップ部との間に配設され、用紙の先端を検知する用紙先端検知手段とを有し、制御手段が、用紙先端検知手段による用紙の先端の検知に基づいて、剥離手段による送風を開始することとすれば、マスタの後端が剥離位置を通過した後、一枚目の用紙の先端が上記剥離位置を通過するまでの間に用紙の先端の検知を必ず行う用紙先端検知手段による検知信号と同期して剥離手段による送風が開始されるので、比較的簡易な制御により、製版済みのマスタが、剥離手段によるエアーの吹き付けにより、版胴に密着することを確実に防止でき、したがって剥離手段の送風に起因するマスタのシワを確実に防止することができ、良好な印刷画像を得ることができる印刷装置を提供することができる。
【0107】
インキが低粘度インキであることとすれば、版胴からのインキの透過性と、製版済みのマスタに形成された孔からのインキの透過性及び滲出性が良好であり、また印刷画像上の滲み及び画像の欠落が少なく、所望の印刷画像を高精度・高解像度で得ることができる印刷装置であって、剥離手段の送風に起因するマスタのシワを防止することにより良好な印刷画像を得ることができる等の上述の効果を奏することができる印刷装置を提供することができる。
【0108】
マスタが薄型マスタであることとすれば、従来の通常のマスタに比して、インキの滲出を均一に行ってムラのない良好な印刷画像が得られ、また、消費するインキ量が低減される印刷装置であって、剥離手段の送風に起因するマスタのシワを防止することにより良好な印刷画像を得ることができる等の上述の効果を奏することができる印刷装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態を示す孔版印刷装置の要部の一部断面正面図である。
【図2】図1に示した孔版印刷装置の印刷時において、分離爪が剥離位置を占め、剥離手段による剥離動作等を行っている状態を示す要部の一部断面正面図である。
【図3】(a)は、非印刷時等において分離爪が非剥離位置を占めた状態を、(b)は、印刷時において分離爪が剥離位置を占めた状態を示す要部の拡大正面図である。
【図4】実施形態1における収納部材と分離爪との形状関係を説明するための要部の分解斜視図である。
【図5】図1に示した孔版印刷装置に備えられた制御手段と、この制御手段に出力を行う主な構成およびこの制御手段により入力が行われる主な構成とを示したブロック図である。
【図6】図1に示した孔版印刷装置の主要な動作を示すフローチャートである。
【図7】図6のフローチャートに示された動作と比較して、剥離手段による送風開始のタイミングを異ならせた例を示すフローチャートである。
【図8】図6、図7のフローチャートに示された動作と比較して、剥離手段による送風開始のタイミングを異ならせた例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1 版胴
8 マスタ
15 押圧手段としてのプレスローラ
29 用紙
47 レジストローラ
61 ニップ部
70 制御手段
71 用紙先端検知手段
72 駆動手段
73 剥離手段
Claims (6)
- 製版されたマスタを巻装する版胴と、用紙を上記版胴上のマスタに押し付けインキを同用紙に転移するための押圧手段と、上記版胴に対向して配設され、同版胴に向けて送風し、上記押圧手段によって上記版胴に押し付けられた用紙を同版胴から剥離するための剥離手段とを具備する印刷装置において、
上記版胴に製版されたマスタが巻装され、このマスタの後端が上記剥離手段による上記版胴からの用紙の剥離位置を通過した後、一枚目の用紙の先端が上記剥離位置を通過するまでの間に、上記剥離手段による送風を開始する制御手段を有することを特徴とする印刷装置。 - 請求項1記載の印刷装置において、上記制御手段によって作動させられることにより上記版胴を駆動する駆動手段を有し、上記制御手段は、上記駆動手段の作動タイミングに基づいて、上記剥離手段による送風を開始することを特徴とする印刷装置。
- 請求項1記載の印刷装置において、上記制御手段によって作動させられることにより上記版胴と上記押圧手段との間に向けて送り出すレジストローラを有し、上記制御手段は、上記レジストローラの作動タイミングに基づいて、上記剥離手段による送風を開始することを特徴とする印刷装置。
- 請求項1記載の印刷装置において、上記版胴と上記押圧手段との間に向けて送り出すレジストローラと、上記押圧手段が用紙を上記版胴に押し付けるニップ部との間に配設され、用紙の先端を検知する用紙先端検知手段とを有し、上記制御手段は、上記用紙先端検知手段による用紙の先端の検知に基づいて、上記剥離手段による送風を開始することを特徴とする印刷装置。
- 請求項1ないし4の何れか1つに記載の印刷装置において、上記インキが低粘度インキであることを特徴とする印刷装置。
- 請求項1ないし5何れか1つに記載の印刷装置において、上記マスタが薄型マスタであることを特徴とする印刷装置。
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