JP2004246223A - マスクの補正方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】テストマスクを作製する工程S1と、テストマスクから転写パターンを測長する工程S2、S3と、関数モデルを使って転写パターンをシミュレーションした結果が、測長結果になるような関数モデルを導出する工程S4と、プロセスモデルを用いて、転写パターンが設計パターンと一致するようなマスクパターンを導出し、マスクデータを作成する工程S5と、マスクデータに基づいて補正マスクを作製する工程S6と、補正マスクの転写に際し、露光装置の開口数(NA)及び照明条件(σ)の少なくともいずれかを調節してOPE特性がピッチの広狭に関してフラットになる条件を求める露光条件設定工程S7とからなる。
【選択図】 図7
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光近接効果補正法(OPC)を用いてフォトマスクを補正する方法に関し、更に詳細には、線幅のパターン疎密依存誤差に関するテストマスクと補正マスクとのマスク間差をできるだけ解消するようにしたマスクの補正方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
半導体装置の微細化及び高集積化に伴い、半導体装置に設けられる回路パターンも微細化している。そして、回路パターンの微細化とともに、半導体装置の製造工程でパターニングを行う際に使用される光リソグラフィ・プロセスでは、必要とされる解像度(Resolution)が厳しくなり、その結果、露光装置の投影光学系の高NA化及び露光光源の短波長化が進んでいる。
光リソグラフィにおける解像度(R)は、以下のレイリーの式で表される。
R=kl×{λ/(NA)} ・・・・・(1)
ここで、λは露光波長、NAは露光装置の開口数であり、k1は光リソグラフィ・プロセスの条件等で決まる定数である。
必要とされる解像度(R)が厳しくなるに従い、k1ファクタも小さくなってきているので、益々、所望の解像度を得ることが難しくなっている。
【0003】
また、近年の半導体装置の高性能化及び高集積化に伴い、必要とされる解像度が上がり、上述のようにk1が小さい領域での光リソグラフィ、即ちlow−k1リソグラフィになっている。
このようなlow−k1リソグラフィでは、フォトマスクのマスク製造誤差が、ウェハ上に転写した転写パターンのパターン線幅(Critical Dimension:以下CDと言う)に与える影響が大きくなって来ている。
そこで、low−k1リソグラフィでは、露光装置に斜入射照明を採用したり、フォトマスクとして位相シフトマスクを用いたり、更には、マスク寸法及びマスク形状を予めバイアス補正し、変形するOPC(Optical− Proximity Effect Correction)を導入して光近接効果を補正している。
OPC補正では、後述するように、プロセスモデル抽出用マスクの転写結果からプロセスモデルを抽出し、プロセスモデルに基づいてマスク補正値を導出し、その導出されたマスク補正値に基づいて補正マスクを作製している。
【0004】
フォトマスクのパターン寸法誤差(maskCDerror )がウエハ上に転写した転写パターンの寸法誤差( waferCDerror )に与える影響の強調度を表す指標として、以下の式(2)で表されるMEF(Mask Error Enhancement Factor )が一般的に用いられている。
MEF=wafer CDerror /(maskCDerror /M)・・・(2)
ここで、Mは、露光装置の縮小投影倍率であって、現在の半導体装置の製造用露光装置では典型的には5または4である。
近年のlow−k1リソグラフィでは、式(2)で算出されるMEFは、クリティカルパターンでは、2〜3にも及ぶこともある。つまり、Low−k1リソグラフィでは、フォトマスクのパターン寸法誤差が、ウエハ上に転写した転写パターン寸法に対して大きなインパクトを有し、フォトマスクのパターン寸法誤差の転写パターンに対する影響度は益々大きくなって来ている。
【0005】
ここで、図8を参照して、従来のマスクのOPC補正方法を説明する。図8は従来のマスクのOPC補正方法の手順を示すフローチャートである。
先ず、図8に示すように、ステップS1 でプロセスモデル抽出用マスク、つまりテストマスクを作製する。プロセスモデルとは、関数モデルを使ってフォトマスクの転写パターンをシミュレーションした結果が、テストマスクの転写パターンを測長して得た測長結果になるような関数モデルを意味する。テストマスクの作製では、プロセスモデルを抽出するため、実デバイスの回路パターンを代表するような様々な形状、寸法、ピッチ等を有するテストパターンをテストマスクに配置する。
【0006】
次いで、ステップS2 のテストマスクの転写工程に移行する。ステップS2 では、先ず、露光装置の露光条件、レジストプロセス条件、エッチングプロセス条件等のプロセス条件を設定し、設定したプロセス条件でテストマスクをウエハ上に転写し、加工して、転写パターンをウエハ上に形成する。
次に、ステップS3 でウエハ上に形成された転写パターンのパターン寸法をSEM等で測長する。
続いて、ステップS4 のプロセスモデル抽出工程で、パターン寸法の測長値からプロセスモデルを作成する。
次に、ステップS5 の補正マスク作製工程では、転写、加工後に所望のパターン寸法及びパターン形状を得ることができるような補正マスクパターンをプロセスモデルに基づいて導出(抽出)し、補正マスクパターンに基づいて補正マスクを作製する。
以上の工程を経て、OPCを施した補正マスク、つまり製品マスクを作製することができる。
【0007】
このように、OPC補正は、テストマスク作製→転写→測長→プロセスモデル抽出→マスク補正値導出→補正マスク(製品マスク)作製からなる手順で行われている。そして、補正マスクを用いて転写したパターンを測長して補正マスクを評価すると言うように、マスクのOPC補正は、複雑な工程を経て行われている。
従来のマスクのOPC補正は、例えば特開2002−122977号公報の第2頁及び第3頁に記載されている。
【0008】
ところで、近年のlow−k1リソグラフィでは、マスクの製造の際に生じるパターン寸法誤差のインパクトは、上述のように、従来に比べてマスクパターンの正確な転写の観点から著しく大きくなってきている。
一方では、フォトマスクのマスクパターンを設計通り作製することは難しく、マスク寸法は必ずパターン寸法誤差(公差)を含んでいる。特に、問題となっているのは、パターンの疎密依存性、又は線幅のパターン疎密依存誤差と呼ばれているものである。
これは、図1に示すように、フォトマスクのマスクパターンの目標線幅が同じでも、密集ラインのパターンと孤立ラインのパターンでは、それぞれの寸法誤差が異なり、密集ラインのパターン寸法誤差の方が大きい傾向がある。
【0009】
例えば、Proc.SPIE VOl.4754(2002)の第196頁から第204頁に記載の「Advanced pattern correction method for fabricating highly accurate reticles」に報告されているように、マスクのパターン寸法誤差は、主として、マスクパターンを描画する際の描画誤差と、描画→現像後の基盤エッチングの際のエッチング誤差とに起因しているものの、更に、寸法変動疎密特性、つまり線幅のパターン疎密依存誤差が注目されている。
そして、マスク作製の際の描画に起因する誤差はEB露光量補正により補正され、描画→現像後の基盤エッチングの起因する誤差はパターン補正により補正されるが、線幅のパターン疎密依存誤差を完全に制御することは難しい。
【0010】
現在の一般的なフォトマスク仕様としては、平均寸法公差(Mean to Target)、及び面内のライン幅均一性が挙げられていて、線幅のパターン疎密依存誤差に関しては、ITRS等のロードマップにも現在のところ項目が存在しない。
しかし、以下に説明するように、マスク線幅のパターン疎密依存誤差は、転写パターンの転写CD誤差に大きく影響する。
【0011】
【特許文献1】
特開2002−122977号公報(第2頁及び第3頁)
【非特許文献】
Proc.SPIE VOl.4754(2002)(第196頁から第204頁)
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
従来、光リソグラフィ工程の実施に際し、フォトマスク間の相互のパターン寸法誤差に関して余り関心が持たれていなかった。しかし、今日のlow−k1リソグラフィでは、同じ仕様で作製された2枚のフォトマスクであっても、それぞれの転写パターンの相互の転写CD間差が大きなことが注目されている。
これは、線幅のパターン疎密依存誤差に関する2枚のフォトマスク同士の僅かな差が、近年のlow−k1リソグラフィにおける大きなMEFにより強調されているためである。
【0013】
ところで、マスクパターンのパターンピッチを振った時の転写CDの特性、即ち図2に示すようなパターンピッチ対転写CDの関係を示すグラフは、OPE(Optical Proximity Effect)カーブと呼ばれ、マスク補正値を導出する際の基本データの一つである。
マスク補正の基本データとなるOPEカーブには、本来、補正対象である光近接効果による影響に加えて、線幅のパターン疎密依存誤差による影響も重畳されていることになる。
【0014】
前述のように、テストマスクのマスクパターンも、また補正マスクのマスクパターンも、それぞれ、マスク線幅のパターン疎密依存誤差を含んでいる。従って、マスク線幅のパターン疎密依存誤差に関するテストマスクと補正マスクとのマスク間差が重要となる。
前述したステップS4 プロセスモデル抽出工程では、テストマスクが設計通りに出来ていることを前提にして、プロセスモデルを作成しているが、現実には、マスク線幅のパターン疎密依存誤差がテストマスクのマスクパターンに存在する。従って、プロセスモデルはテストマスクのパターン寸法誤差を含んだ状態で作成されているので、マスク線幅のパターン疎密依存誤差に基づくテストマスクの線幅の疎密依存寸法誤差もプロセスモデルに伝搬している。
【0015】
テストマスクと全く同じパターン疎密依存誤差を持った補正マスクを作製することができれば、補正マスクの転写CD誤差は殆どゼロに出来るが、しかし、実際は、テストマスクと補正マスクとでは、線幅のパターン疎密依存誤差に関するマスク間差が製造ばらつきの範囲で発生することは避けられない。このマスク間差は、補正マスクを転写した際に、前述のようにMEFで強調されるものと理解される。
そのため、テストマスクの持つ線幅のパターン疎密依存誤差と補正マスクの持つ線幅のパターン疎密依存誤差の差、つまりマスク間差が、補正マスクを転写して得られるパターンの加工寸法に対して影響し、転写パターンに無視できない誤差、即ちマスク補正残差が生じる。
この結果、高いパターン寸法制御精度の転写パターンを得ることが難しい。
【0016】
しかし、OPCによる従来のマスク補正方法では、マスク間差に対して特別の考慮を払うようなことがなく、上述のように、テストマスクによりプロセスモデルを作成し、それにより補正した補正フォトマスクを作製する際にも、線幅のパターン疎密依存誤差に関するテストマスクと補正後フォトマスクとのマスク間差の影響を解消することができない。これが、OPC補正誤差の一つの誤差要素として残留し、補正精度の向上を難しくしている。
【0017】
そこで、本発明の目的は、光近接効果補正によりフォトマスクを補正する際、線幅のパターン疎密依存誤差に関するテストマスクと補正マスクとのマスク間差を小さくできるフォトマスクの補正方法、つまりはマスク製造管理方法を提供することである。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、次のように考えた。即ち、先ず、テストマスクと補正マスクの線幅疎密依存のマスク間差を最小にするため、製造ばらつきの中心の線幅疎密依存を持つマスクをテストマスクとして用いる。
また、補正マスクの転写の際にプロセスマージンを劣化させない範囲で露光装置のNA、及びσの少なくともいずれかを微調整してOPEカーブを制御し、線幅のパターン疎密依存誤差のマスク間差をマッチングさせることにより、補正マスク転写時のOPEカーブに残差が生じることを抑制することが可能である。ここで、σはコヒーレンスファクタであって、σ=照明系NA/投影レンズ物体側NAである。
【0019】
そこで、露光装置のNA及びσの少なくともいずれかを微調整することにより、テストマスクと補正マスクとをマッチングさせて、線幅のパターン疎密依存誤差に関するテストマスクと補正マスクとのマスク間差を解消して、OPC補正精度を向上させることを着想した。
そして、以下に説明するように、シミュレーション及び実験により本着想が有効であることを確認し、本発明方法を発明するに到った。
【0020】
上記目的を達成するために、上述の知見に基づいて、本発明に係るマスクの補正方法は、光近接効果補正法を用いてフォトマスクを補正する方法であって、
光近接効果補正法の適用に必要な関数モデルの抽出用マスクとして機能するテストマスクを、線幅疎密依存が所定レベル以下で且つ製造ばらつきの中心で作製する工程と、
テストマスクのマスクパターンをウエハ上に転写し、転写パターンの寸法を測長する工程と、
フォトマスクをウエハ上に転写してなる転写パターンの寸法を関数モデルを使ってシミュレーションした際、シミュレーション結果が前記測長する工程で得た測長結果に一致するような関数モデル(以下、プロセスモデルと言う)を導出する工程と、
プロセスモデルを用いて、転写パターンが設計パターンと一致するようなマスクパターンを導出し、導出したマスクパターンに基づいてマスクデータを作成する工程と、
作成したマスクデータに基づき、かつ補正マスクの線幅のパターン疎密依存誤差が所定範囲内でテストマスクのそれと一致するような作製条件で、補正マスクを作製する工程と、
補正マスクを転写する際、パターンピッチの所定範囲にわたりOPE特性をフラットにできるような、露光装置の開口数(NA)及びコヒーレンスファクタ(σ)の少なくともいずれかを求める露光条件設定工程と
を有することを特徴としている。
【0021】
本発明方法では、補正マスクを転写する際、パターンピッチの所定範囲にわたりOPE特性をフラットにできる、露光装置の開口数(NA)及びコヒーレンスファクタ(σ)の少なくともいずれかを求め、その条件で露光することにより、マスク製造上残留する、線幅のパターン疎密依存誤差に関するテストマスクと補正マスクとのマスク間差を所定内の範囲に抑えることができる。
尚、σは、輪帯照明ではインナー(inner)−σと、アウター(outer)−σである。インナーσとはリング状光源の内側σことであり、アウターσとはリング状光源の外側σのことである。
【0022】
本発明方法の好適な実施態様のテストマスクを作製する工程では、テストマスクの線幅のパターン疎密依存誤差を許容範囲に収めることができ、且つ疎密依存誤差が製造ばらつきの中心となるマスク作製条件でテストマスクを作製する。テストマスクのマスク作製条件は、実験或いはシミュレーション計算により求める。これにより、線幅のパターン疎密依存誤差が許容範囲内で、且つばらつき幅の中で平均的なマスクをテストマスクとして使用することができる。
また、補正マスクを作製する工程では、線幅のパターン疎密依存誤差に関するテストマスクと補正マスクとのマスク間差が、所定範囲内になるように設定されたマスク作製条件で補正マスクを作製する。補正マスクのマスク作製条件は、実験或いはシミュレーション計算により求める。プロセスモデルからマスクデータを抽出し、マスクデータに基づいて、上述のマスク作製条件で補正マスクを作製することにより、マスク間差の影響の大部分を解消することができる。
更に、露光条件設定工程では、テストマスクの線幅のパターン疎密依存誤差を基準してテストマスクと補正マスクのパターン疎密依存誤差のマスク間差の影響を相殺するため、補正マスクを転写したときのOPEカーブが最もフラットになるように露光装置の設定NA、σを微調整する。これにより、補正マスクの作製工程で僅かに残存するテストマスクとのマスク間差を解消することができる。
【0023】
本発明方法の基本的な概念は、以下の通りである。
(1)パターンの疎密によるマスク製造誤差を許容レベル以下にするために、テストマスクに許容される線幅のパターン疎密依存誤差の許容範囲を設定する。且つ、パターン疎密依存誤差の製造ばらつきの中心になるものをテストマスクとして使用する。これにより、補正マスク転写時に、テストマスクの線幅のパターン疎密依存誤差に起因してウエハ上の転写パターンに伝搬されるパターン寸法誤差を許容レベル内に収めることができる。
【0024】
(2)テストマスク及び補正マスクの線幅のパターン疎密依存誤差が、それぞれ、所定範囲以内で一致するようにする。これにより、補正マスクの線幅のパターン疎密依存誤差が、所定範囲内のマスク間差で、テストマスクの線幅のパターン疎密依存誤差と同じものとして再現され、ウエハ上の転写パターンのマスク間差に起因するパターン寸法誤差が所定範囲内に収まるようになる。
(3)(2)では、補正マスクと線幅のパターン疎密依存誤差とテストマスクの線幅のパターン疎密依存誤差とが所定範囲以内で一致するものの、補正マスクとテストマスクとの間には線幅のパターン疎密依存誤差のマスク間差が僅かながら残留する。そこで、露光装置のNA及びσの少なくともいずれかを調整して、テストマスクと補正マスクとをマッチングさせることにより、残留しているマスク間差をゼロにする。つまり、(2)の結果、尚、残留しているマスク間差を解消することにより、ウエハ上の転写パターンのパターン寸法誤差を更に小さくすることができる。
【0025】
以下に、上記の基本的な概念を更に詳しく説明する。
(1)に関する説明
前述のように、テストマスクの製造では、パターンの疎密に依存してパターン寸法誤差が生じる。それは、テストマスクをパターニングする際、密集ラインを有するデンス(Dense 、密集ライン)領域では、マスク基板を構成する石英のエッチングレートが、孤立ラインからなるアイソレーション(Isolation 、孤立ライン)領域と比較して低い。その結果、デンス領域のパターン線幅が、図1に示すように、アイソレーション領域に比べて相対的に太くなる傾向があるからである。
図1は、ピッチの広狭とマスク製造誤差との典型的な関係を示すグラフであって、ラインパターンの線幅を固定し、パターンピッチを狭いピッチから広いピッチに変動させて、マスク製造誤差を測定したものである。
【0026】
ここで、簡単のために、デンス(Dense 、密集ライン)とアイソレーション(Isolation 、孤立ライン)の2つのピッチ態様のフォトマスクを例に挙げ、図2を参照して、それぞれの転写CDを説明する。図2は、線幅のパターン疎密依存誤差をパラメータにして、パターンピッチと転写CDとの関係を模式的に示すグラフである。グラフ(1)は、線幅のパターン疎密依存誤差ΔMがゼロのときのOPEグラフであり、即ち本来抽出すべき光近接効果を表す。グラフ(2)は線幅のパターン疎密依存誤差ΔMを含むマスクを転写した時のOPEグラフである。
ここで、線幅のパターン疎密依存誤差ΔMは、
ΔM=DE −IE
DE :デンスのピッチ態様のマスク製造誤差
IE :アイソレーションのピッチ態様のマスク製造誤差
で表される。
【0027】
図2に示すOPEグラフ(1)とOPEグラフ(2)とを比較すると、線幅のパターン疎密依存誤差がΔMのときのデンスのピッチ態様の転写CDは、線幅のパターン疎密依存誤差ΔMがゼロのときのデンスのピッチ態様の転写CDよりMEFd×ΔMだけ大きい。つまり、ΔM=0のときの転写CDに比べてMEFd×ΔMだけ強調されている。なお、MEFdは、ピッチ態様がデンスのときのMEFを示す。
このように、マスク線幅のパターン疎密依存誤差を有するテストマスクのOPEカーブ(2)は、線幅のパターン疎密依存誤差が無い理想的なマスクのOPEカーブ(1)から逸脱して、誤差が生じている。
従って、テストマスクに線幅のパターン疎密依存誤差があるときには、算出されるマスク補正値に誤差が生じて、補正マスクの転写パターンの寸法に誤差が伝搬する。
【0028】
図3は、テストマスクの線幅のパターン疎密依存誤差が補正マスクの転写CDの寸法誤差に与える影響を示すグラフであって、線幅のパターン疎密依存誤差に関するテストマスクと補正マスクのマスク間差をゼロとしたときの補正マスクの転写CD誤差をシミュレーションした結果である。シミュレーションの条件は、以下の通りである。
ここで、ΔMはテストマスクの線幅のパターン疎密依存誤差を表し、図3の横軸に示すように、−6nmから+8nmまでの可変パラメータとしている。
シミュレーションで仮定したプロセスは、コントラストγが10、拡散長が30nmという標準的なArFレジストに対応したものである。
【0029】
図4は、図3のグラフの計算データを示す表である。いずれの計算も、テストマスクの線幅のパターン疎密依存誤差を変えた場合の補正マスクの転写CD誤差のウエハ面換算のシミュレーション計算結果である。
図3及び図4から、線幅のパターン疎密依存誤差に関するテストマスクと補正マスクのマスク間差がゼロであっても、補正マスクの線幅が127nm(テストマスクの線幅のパターン疎密依存誤差がゼロの時に算出される補正マスクの260nmピッチパターンの線幅)にはならなく、テストマスクの線幅のパターン疎密依存誤差に応じて僅かに誤差が発生する。更に、この補正マスクを転写した際には、上述の僅かな誤差がMEFで強調され、図3に示すように、ウエハ転写パターンの線幅に無視できない誤差が残留することが判る。
これはテストマスクの線幅のパターン疎密依存誤差が比較的大きい場合は、マスク補正の系の線形性が完全には保たれないためであると考えられる。
【0030】
(2)に関する説明
図1に示すように、線幅のパターン疎密依存誤差に関するテストマスクと補正マスクのマスク間差が、MEFで強調されて補正マスクの転写パターンの線幅に反映されるため、マスク間差を管理することが重要である。
これは、テストマスクの線幅のパターン疎密依存誤差を基準としてマスク間差を管理して補正マスクを作製することが必要であることを示している。更に、製造ばらつきを考慮した場合、テストマスクのパターン疎密依存誤差はばらつきの中心であることが望ましい。
【0031】
(3)に関する説明
図5は線幅のパターン疎密依存誤差ΔMがゼロの理想マスク(マスクA)と、ΔMがウエハ上換算で2nmの現実に近いマスク(マスクB)の2つのマスクの転写CDのシミュレーション結果を示す。なお、マスクA、Bは、それぞれ、線幅のパターン疎密依存誤差がゼロのテストマスクでプロセスモデルを抽出し、図9に示すように、補正マスクを転写した後に、スルーピッチで110nmになるように各ピッチにおける補正マスクのライン寸法が算出される。図9はこのスルーピッチでのマスク補正値を示すグラフである。
この補正されたライン寸法に対して、線幅のパターン疎密依存誤差ΔMがそれぞれゼロのマスク(マスクA)と2nmのマスク(マスクB)を仮定して転写CDを計算している。図10にこの検討に用いたマスクBの線幅のパターン疎密依存誤差を示す。
図5から、ピッチが小さい初期状態では、マスクの線幅のパターン疎密依存誤差が、各ピッチ、線幅に対するMEFで強調されるので、マスクBのOPEカーブはマスクAのOPEカーブに対して大きく逸脱している。ピッチが大きくなるにつれて、つまりピッチが約500nm以上になると、マスクAのOPEカーブとマスクBのOPEカーブとがほぼ一致することが分かる。
【0032】
露光装置の開口数(NA)を僅かに変えることにより、例えばNAを0.60から0.58に変更することにより、マスクBのOPEカーブをマスクAのOPEカーブにマッチングさせることができる。
図6は、露光装置のNAの微調整によりマスクマッチングさせたシミュレーション結果を示すグラフを示し、NA0.60で露光したマスクA及びマスクBのOPEカーブに加えて、NAが0.59及び0.58で露光したマスクBのOPEカーブを示してある。
図6から、NAを僅かに変えることにより、マスクAとマスクBの線幅のパターン疎密依存誤差のマスク間差をほぼ解消できることが分かる。
【0033】
以上の説明のように、本発明方法によれば、露光装置のNA及びσの少なくともいずれかを僅かに変えることにより、OPCによる従来のマスク補正方法では、線幅のパターン疎密依存誤差に関し残留するテストマスクと補正マスクのマスク間差を解消することができる。
これにより、線幅のパターン疎密依存誤差に関するテストマスクと補正マスクのマスク間差に起因するウエハの転写パターン寸法誤差を大きく低減することができる。
【0034】
【発明の実施の形態】
以下に、実施形態例を挙げ、添付図面を参照して、本発明の実施の形態を具体的かつ詳細に説明する。
実施形態例
本実施形態例は本発明に係るマスク補正方法の実施形態の一例であって、図7は本実施形態例のマスク補正方法の手順を示すフローチャートである。
先ず、図7に示すように、ステップS1 テストマスク作製工程でテストマスクを作製する。テストマスクは、光近接効果補正法を適用するプロセスモデル抽出用マスクとして機能するマスクであって、テストマスク作製時には、先ず、図3に示す解析結果に基づいて、テストマスクの線幅のパターン疎密依存誤差を許容範囲を設定する。次いで、テストマスクの線幅のパターン疎密依存誤差を許容範囲内に収めるマスク作製条件を設定し、そのマスク作製条件でテストマスクを作製する。
また、テストマスク作製時のマスク作製条件は、ステップS6 の補正マスクの作製時でも補正マスクの線幅のパターン疎密依存誤差を同じ許容範囲内に収めることができるマスク作製条件とする。即ち、線幅のパターン疎密依存誤差が製造ばらつきの中心にあるようなものが望ましい。
【0035】
続いて、ステップS2 テストマスク転写工程に移行して、実際のフォトマスクを転写する条件と同じ転写条件でテストマスクのマスクパターンをウエハ上に転写する。
次に、ステップS3 転写ウエハ測長工程に移行して、ウエハ上に転写した転写パターンの寸法をCD−SEM等で測長する。
次いで、ステップS4 プロセスモデル抽出工程に移行する。ステップS4 では、汎用OPCシミュレータを用いてフォトマスクのマスクパターンの転写パターンをシミュレーションした結果が、ステップS3 で得た測長結果になるような関数モデル、いわゆるプロセスモデルを抽出ないし導出する。これにより、汎用OPCシミュレータによりプロセスモデルに基づいてシミュレーションして得たフォトマスクのマスクパターンの転写パターンは、ステップS3 で得た測長結果を有する転写パターンになる。
【0036】
次に、ステップS5 マスク補正処理工程に移行して、ステップS4 で導出したプロセスモデルを用いて、転写パターンが設計パターンになるようなマスクパターンを前述の汎用シミュレータを使用して導出し、作製すべきマスクのマスクCADデータを作成する。
【0037】
次に、ステップS6 補正マスク作製工程に移行して、ステップS5 で作成したマスクCADデータに基づいて補正マスクを作製する。
補正マスクの作製の際には、補正マスクの線幅のパターン疎密依存誤差が所定の範囲内でテストマスクの線幅のパターン疎密依存誤差と一致するようなマスク製造条件で補正マスクを作製する。
【0038】
次いで、露光装置の露光条件の調整によりOPEカーブをマッチングさせるステップS7 補正マスク転写工程に移行する。
上述のようなマスク作製条件でテストマスク及び補正マスクを作製しているので、双方のマスクの線幅のパターン疎密依存誤差は所定の範囲内で一致しているが、光リソグラフィ・プロセスの再現性に起因する線幅のパターン疎密依存誤差に関するマスク間差が残留しでいるので、線幅のパターン疎密依存誤差は、テストマスクと補正マスクとの間で僅かに異なる。
そこで、ステップS7 では、フォーカスマージン及び露光量マージンからなるリソグラフィマージンの許容範囲内で、露光装置の開口数(NA)及びコヒーレンスファクタ(σin、σout)の少なくともいずれかを僅かに変えて補正マスクを転写し、転写CDのOPEカーブがピッチの広狭に関しフラットになる露光条件を求める。
求めた露光条件で補正マスクを転写することにより、上述の線幅のパターン疎密依存誤差のマスク間差をほぼ完全に解消することができる。
【0039】
【発明の効果】
本発明方法によれば、OPC法により補正した補正マスクを転写する際、パターンピッチの所定範囲にわたりOPE特性をフラットにできる、露光装置の開口数(NA)及びコヒーレンスファクタ(σ)の少なくともいずれかを求め、その条件で露光することにより、マスク製造上残留する線幅のパターン疎密依存誤差に関するテストマスクと補正マスクとのマスク間差を所定範囲に抑えることができる。
【0040】
また、テストマスクの線幅のパターン疎密依存誤差を許容範囲に収めることができるマスク作製条件でテストマスクを作製してテストマスクを使用し、プロセスモデル抽出、補正マスクの線幅を算出することにより、補正マスクの転写パターンの線幅のパターン疎密依存誤差を許容範囲内に収めることができる。
更に、線幅のパターン疎密依存誤差に関するテストマスクと補正マスクとのマスク間差が、所定範囲内になるように設定されたマスク作製条件で補正マスクを作製することにより、線幅のパターン疎密依存誤差に関するテストマスクと補正マスクとのマスク間差の大部分を解消することができる。
更に、露光条件設定工程では、補正マスクを転写した際、OPEカーブに残留している誤差が全ピッチにわたり最も小さくなる(OPEカーブがフラットになる)ように、露光装置のNA、σのうちの少なくとも一つを、プロセスマージンの劣化の影響の無い範囲で僅かに変える。これにより、テストマスクの線幅のパターン疎密依存誤差を基準してテストマスクと補正マスクとをマッチングさせ、線幅のパターン疎密依存誤差に関するテストマスクと補正マスクとのマスク間差を解消することにより、補正マスクの作製工程で僅かに残存するマスク間差を解消することができる。これにより、マスクの補正精度を大幅に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ピッチの広狭とマスク製造誤差との典型的な関係を示すグラフである。
【図2】マスクの線幅のパターン疎密依存誤差をパラメータにして、パターンピッチと転写CDとの関係を表す模式的なグラフ、いわゆるOPEグラフである。
【図3】テストマスクの線幅のパターン疎密依存誤差が補正マスクを転写した際の転写CDに与える影響を示すグラフである。
【図4】図3のグラフのデータの表である。
【図5】補正マスクの線幅のパターン疎密依存誤差ΔMがゼロの理想マスク(マスクA)と、ΔMが2nmの現実に近いマスク(マスクB)の2つのマスクの補正マスクの転写CDのシミュレーション結果を示すOPEカーブである。
【図6】露光装置のNAの微調整によりマスクマッチングさせたシミュレーション結果を示すOPEカーブである。
【図7】実施形態例のマスク補正方法の手順を示すフローチャートである。
【図8】従来のマスク補正方法の手順を示すフローチャートである。
【図9】ピッチと補正マスクのCDの関係でOPC後のマスク寸法を示すグラフである。
【図10】マスクBの線幅の疎密依存誤差(ウエハ換算)を示すグラフである。
Claims (4)
- 光近接効果補正法を用いてフォトマスクを補正する方法であって、
光近接効果補正法の適用に必要な関数モデルの抽出用マスクとして機能するテストマスクを作製する工程と、
テストマスクのマスクパターンをウエハ上に転写し、転写パターンの寸法を測長する工程と、
フォトマスクをウエハ上に転写してなる転写パターンの寸法を関数モデルを使ってシミュレーションした際、シミュレーション結果が前記測長する工程で得た測長結果に一致するような関数モデル(以下、プロセスモデルと言う)を導出する工程と、
プロセスモデルを用いて、転写パターンが設計パターンと一致するようなマスクパターンを導出し、導出したマスクパターンに基づいてマスクデータを作成する工程と、
作成したマスクデータに基づいて補正マスクを作製する工程と、
補正マスクを転写する際、パターンピッチの所定範囲にわたりOPE特性をフラットにできるような、露光装置の開口数(NA)及びコヒーレンスファクタ(σ)の少なくともいずれかを求める露光条件設定工程と
を有することを特徴とするマスクの補正方法。 - テストマスクを作製する工程では、テストマスクの線幅のパターン疎密依存誤差を許容範囲に収めることができるマスク作製条件でテストマスクを作製することを特徴とする請求項1に記載のマスクの補正方法。
- 補正マスクを作製する工程では、線幅のパターン疎密依存誤差に関するテストマスクと補正マスクとのマスク間差が、所定範囲内になるように設定されたマスク作製条件で補正マスクを作製することを特徴とする請求項1又は2に記載のマスクの補正方法。
- 露光条件設定工程では、補正マスクを転写した際のOPEカーブが全ピッチにわたり最もフラットになるように、露光装置の露光条件のNA、及びσの少なくとも一つを僅かに変えることにより、線幅のパターン疎密依存誤差に関するテストマスクと補正マスクとのマスク間差を解消することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のマスクの補正方法。
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