JP2004217924A - エチレン系重合体およびこれから得られる成形体 - Google Patents

エチレン系重合体およびこれから得られる成形体 Download PDF

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Abstract

【課題】成形性に優れ且つ機械的強度に優れたエチレン系重合体及びこれを含む熱可塑性樹脂組成物、該エチレン系重合体及び該熱可塑性樹脂組成物から得られる成形体、好ましくはフィルムを提供すること
【解決手段】エチレンと、炭素数4〜10のα-オレフィンとの共重合体であって、下記要件[k1]〜[k3]を同時に満たすことを特徴とするエチレン系重合体。
[k1]190℃における2.16kg荷重でのメルトフローレート(MFR)が1.0〜50g/10分の範囲である。[k2]フィルム成形した際のネックイン量の尺度として定義されるLNRが0.6〜1.4の範囲である。[k3]160℃における破断点巻き取り速度〔DS(m/分)〕とメルトフローレート(MFR)とが下記関係式(Eq-1)を満たす。
【数1】
Figure 2004217924

【選択図】 なし

Description

本発明は、従来公知のエチレン系重合体と比較して成形性に優れ、かつ機械的強度に優れた新規なエチレン系重合体、及びエチレン系重合体を含む熱可塑性樹脂組成物、さらに詳しくは、このエチレン系重合体及びエチレン系重合体を含む熱可塑性樹脂組成物からなる成形体、好ましくはフィルムに関するものである。
エチレン系重合体は、種々の成形方法により成形され、多方面の用途に供されている。これら成形方法や用途に応じて、エチレン系重合体に要求される特性も異なってくる。例えばTダイ成形においてキャストフィルムを成形しようとする場合、フィルム端部が中央方向へと縮んでしまうネックインが発生する。ネックインが発生すると、フィルム幅が小さくなるとともにフィルム端部の厚みがフィルム中央部に比べ大きくなってしまうため、製品の歩留まりが悪化する。ネックインを最小限に抑えるためには、エチレン系重合体として分子量の割には、溶融張力の大きいものを選択しなければならない。同様の特性が中空成形におけるたれ下がり、あるいはちぎれを防止するために、あるいはインフレーションフィルムにおけるバブルのゆれ、あるいはちぎれを防止するために必要である。
高圧法低密度ポリエチレンは、チーグラー触媒を用いて製造したエチレン系重合体と比較して、溶融張力が大きく成形性が良いためフィルムや中空容器などの用途に供されている。しかし高圧法低密度ポリエチレンは、複雑な長鎖分岐構造を有するため引張強度、引裂強度あるいは耐衝撃強度などの機械的強度に劣ることが予想される。また、同様の理由によりTダイ成形における高速成膜加工性に劣ることが予想される。
また、チーグラー触媒系の内、メタロセン触媒系を用いて得られるエチレン系重合体は、引張強度、引裂強度あるいは耐衝撃強度などの機械的強度に優れるが、溶融張力に劣るためネックインが大きいなど成形性の悪化が予想される
成形性が良く、且つ機械的強度に優れるエチレン系重合体として、高圧法低密度ポリエチレンとメタロセン触媒系を用いて得られるエチレン系重合体との組成物が例えば特開平6-65443号公報などに提案されている。しかし、高圧法低密度ポリエチレンの含有量が少ない場合には溶融張力の向上が十分でないため、Tダイ成形おけるネックインが大きいなど成形性の悪化が予想される。また、高圧法低密度ポリエチレンの含有量が多い場合には引張強度、引裂強度あるいは耐衝撃強度などの機械的強度に劣ることが予想される。
このような問題を解決するため、長鎖分岐を導入したエチレン系重合体が種々開示されている。
特開平2−276807号公報にはエチレンビス(インデニル)ハフニウムジクロリドとメチルアルモキサンとからなる触媒の存在下で溶液重合により得られたエチレン系重合体が、特開平4−213309号公報にはシリカに担持したエチレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリドとメチルアルモキサンとからなる触媒の存在下で気相重合により得られたエチレン系重合体が、WO93/08221号公報には拘束幾何触媒の存在下で溶液重合により得られたエチレン系重合体が、特開平8−311260号公報にはシリカに担持したMe2Si(2-Me-Ind)2のラセミ及びメソ異性体とメチルアルモキサンとからなる触媒の存在下で気相重合により得られたエチレン系重合体が、特開平8−34819号公報には化学処理したモンモリロナイトに担持したビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライドからなる触媒の存在下でスラリー重合により得られたエチレン系重合体が、特開平8−319313号公報にはCp*Ti(OMe)3とメチルアルモキサンとからなる触媒を用いた重合により得られたエチレン系重合体が開示されている。
これらのエチレン系重合体は、長鎖分岐の無い直鎖状のエチレン系重合体に比べ溶融張力が向上し、成形性に優れる旨の記載があるが、ネックインは依然として大きく成形性の向上については不十分であることが予想される。
また、成形性を向上させるため、少量の高分子量成分を導入したエチレン系重合体が開示されている。
特開平6−172594号公報にはチーグラー触媒を用いて得られる、高分子量成分と低分子量成分とからなるエチレン系樹脂組成物が開示されている。このエチレン系樹脂組成物は分子量が大きすぎるため、成形性が悪いと予想される。また、マルチサイト触媒であるチーグラー触媒を用いているため、組成分布が広いと予想される。
特開平11−166083号公報にはチーグラー触媒を用いて得られる高分子量成分と低分子量成分とからなるエチレン系重合体と、フィリップス触媒を用いて得られるエチレン系重合体とのエチレン系樹脂組成物が開示されている。このエチレン系樹脂組成物は密度が高すぎるため、低温シール性に劣ると予想される。また、フィリップス触媒を用いて得られるエチレン系重合体は末端ビニル基が多いことが知られている。そのため、このエチレン系樹脂組成物は熱安定性に劣ると予想される。さらに、マルチサイト触媒であるチーグラー触媒を用いているため、組成分布が広いと予想される。
以上述べたように、従来の公知技術から、成形性に優れ、かつ機械的強度に優れた樹脂を効率的に得ることは難しかった。換言すれば、成形性に優れ、かつ機械的強度に優れたエチレン系重合体が出現すれば、その工業的価値は極めて大きいといえる。
本発明者らは、このような状況に鑑み鋭意研究した結果、特定の分子構造と溶融物性を付与することにより、Tダイ成形におけるネックインが小さく、高速成膜加工性に優れ、かつ機械的強度に優れるエチレン系重合体を見出し本発明を完成するに至った。
特開平6-65443号公報 特開平2-276807号公報 特開平4-213309号公報 WO93/08221号公報 特開平8-311260号公報 特開平8-34819号公報 特開平8-319313号公報 特開平6-172594号公報 特開平11-166083号公報
本発明は、従来公知のエチレン系重合体と比較して成形性に優れ、かつ機械的強度に優れた新規なエチレン系重合体、該エチレン系重合体を含む熱可塑性樹脂組成物、並びに、該エチレン系重合体及び該熱可塑性樹脂組成物から得られる成形体、好ましくはフィルムを提供することを目的としている。
本発明のエチレン系重合体は、エチレンと、炭素数4〜10のα-オレフィンとの共重合体であって、下記要件[k1]〜[k3]を同時に満たすことを特徴としている。
[k1]190℃における2.16kg荷重でのメルトフローレート(MFR)が1.0〜50g/10分の範囲である。
[k2]フィルム成形した際のネックイン量の尺度として定義されるLNRが0.6〜1.4の範囲である。
[k3]160℃における破断点巻き取り速度〔DS(m/分)〕とメルトフローレート(MFR)とが下記関係式(Eq-1))を満たす。
Figure 2004217924
本発明に係るエチレン系重合体は上記要件に加えて下記要件[m1]〜[m3]を同時に満たすことが好ましい。
[m1] 密度(d)が890〜950kg/mの範囲である。
[m2]190℃における溶融張力〔MT(g)〕と、200℃、角速度1.0rad/秒におけるせん断粘度〔η(Poise)〕との比〔MT/η(g/Poise)〕が2.00×10−4〜9.00×10−4の範囲である。
[m3]13C−NMRにより測定されたメチル分岐数〔A(/1000C)〕とエチル分岐数〔B(/1000C)〕との和〔(A+B)(/1000C)〕が1.4以下である。
さらに、本発明に係るエチレン系重合体は、上記要件に加えて下記[n1]〜[n3]のいずれか1つ以上を満たすことが好ましい。
[n1] GPCで測定したZ平均分子量(Mz)と重量平均分子量(Mw)との比(Mz/Mw)が10以上である
[n2]IRで測定した炭素数1000個あたりの末端ビニル基数〔v(/1000C)〕とGPCで測定した数平均分子量(Mn)とから算出される1分子鎖あたりの末端ビニル基数(V)が0.47/1分子鎖以下である。
[n3]DSCにおける融点の最大ピーク(Tm(℃))と密度(d)とが、下記関係式(Eq-2)を満たす。
Figure 2004217924
また本発明に係るエチレン系重合体を、他の熱可塑性樹脂とブレンドすることにより、成形性に優れ、かつ機械的強度に優れた熱可塑性樹脂組成物が得られる。本発明に係るエチレン系重合体、及びエチレン系重合体を含む樹脂組成物を加工することにより、成形性に優れ、且つ機械的強度に優れた成形体、好ましくはフィルムが得られる。
本発明のエチレン系重合体、及びエチレン系重合体を含む熱可塑性樹脂組成物は、成形性が良く、且つ機械的強度に優れた成形体、好ましくはフィルムを製造することができる。
以下、本発明に係るエチレン系重合体について具体的に説明する。
本発明に係るエチレン系重合体は、エチレンと炭素数4〜10のα-オレフィン、好ましくはエチレンと炭素数4〜10のα-オレフィン(ただしコモノマーとしてブテン−1を使用する場合には、炭素数6〜10のα-オレフィンも必須とする)、より好ましくはエチレンと炭素数6〜10のα-オレフィンとの共重合体である。エチレンとの共重合に用いられる炭素数4〜10のα-オレフィンとしては、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセンなどが挙げられる。
このようなエチレン系重合体は下記[k1]〜[k3]に示すような特性を有している。
[k1] メルトフローレート(MFR)が1.0〜50g/10分、好ましくは2.0〜50g/10分、より好ましくは4.0〜50g/10分の範囲である。
メルトフローレート(MFR)が1.0g/10分以上の場合、得られるエチレン系重合体のせん断粘度が高すぎず成形性が良好である。メルトフローレート(MFR)が50g/10分以下の場合、得られるエチレン系重合体の引張強度が良好である。
メルトフローレート(MFR)は分子量に強く依存しており、メルトフローレート(MFR)が小さいほど分子量は大きく、メルトフローレート(MFR)が大きいほど分子量は小さくなる。また、エチレン系重合体の分子量は、重合系内における水素とエチレンとの組成比(水素/エチレン)により決定されることが知られている(例えば、Kazuo Soga, KODANSHA”CATALYTIC OLEFIN POLYMERIZATION”,p376(1990))。このため、水素/エチレンを増減させることで、請求範囲の上限・下限のメルトフローレート(MFR)を有するエチレン系重合体を製造することが可能である。
メルトフローレート(MFR)は、ASTM D1238-89に従い190℃、2.16kg荷重の条件下に測定される。
[k2] LNRが0.6から1.4、好ましくは0.7から1.3、より好ましくは0.8から1.2の範囲である。
LNRが1.4以下の場合、得られるエチレン系重合体のネックインが良好である。ここでネックインとはTダイ成形時のダイスリップ開口幅に対する製品幅の減少値である。
LNRは、実施例1に示した製造方法における、<前段>にて重合されるエチレン系重合体の分子量と、<後段>にて重合されるエチレン系重合体の分子量との比(<前段>分子量/<後段>分子量)に強く依存し、(<前段>分子量/<後段>分子量)が大きいほど、LNRは小さく、(<前段>分子量/<後段>分子量)が小さいほどLNRは大きくなる傾向にある。また、エチレン系重合体の分子量は、重合系内における水素とエチレンとの組成比(水素/エチレン)により決定されることが知られている(例えばKazuo Soga, KODANSHA”CATALYTIC OLEFIN POLYMERIZATION”,p376(1990))。このため、水素/エチレンを調節し、(<前段>分子量/<後段>分子量)を増減させることで、請求範囲の上限・下限のLNRを有するエチレン系重合体を製造することが可能である。
LNRは、測定サンプルを小型のスリットダイスを用いてフィルム成形した際のネックイン量と、三井化学株式会社より市販されている高圧ラジカル重合法によるポリエチレン(商品名:ミラソンM11)を同様の方法によりフィルム成形した際のネックイン量との比によって決定される。LNRは、(a)キャピラリーレオメーター、(b)スリットダイス、(c)冷却ロール、エアーノズル、(d)引取ロール、からなる装置により測定される。
(a)キャピラリーレオメーターは溶融樹脂を押し出す役割を果たす。キャピラリーレオメーターは東洋精機製作所社製キャピラリーレオメーター:キャピログラフ1B(バレル系10mmφ)を用い、バレル温度200℃、ピストン速度50mm/分の条件で行った。なお、測定サンプルは1回の測定につき20g使用し、溶融時間は6分間とした。
(b)スリットダイスの上方向から眺めた図面を図1に、横方向から眺めた図面を図2に、A―B断面図を図3に示した。スリットダイスには、締め込みノズル(1)、ジョイント部(1)に接合したアダプターを介して、キャピラリーレオメーターのバレル下に固定され、プレートヒーターを用い200℃(図2の(3)は、熱電対挿入部)に加熱された。
(c)冷却ロール、エアーノズルの正面方向の図面を図4に、横方向の図面を図5に示した。冷却ロール(4)、エアーノズル(5)はスリットダイス下に設置され、スリットダイス下端と冷却ロール(4)上端との距離が10mmになるように固定された。エアーノズル長は26cmであり、5.5mm間隔で直径1mmのエアー吹き出し孔が空けられている。冷却エアーの流量は50l/分の条件で行った。
測定サンプルのフィルムを上記装置により成形し、フィルム終端から1.75m〜1.95mのフィルムをサンプリングした。測定サンプルのネックイン量(C)は、サンプリングしたフィルムのフィルム幅をスリットダイスのダイス幅(40mm)より差し引いた値により決定される。なお、フィルム幅は任意の3点について測定し、その平均値を用いた。また、三井化学株式会社より市販されている高圧ラジカル重合法によるポリエチレン(商品名:ミラソンM11)のネックイン量(d)も上記と同じ方法により決定される。LNRは、下記式(Eq-3)により決定される。
Figure 2004217924
[k3] 160℃における破断点巻き取り速度〔DS(m/分)〕とメルトフローレート(MFR)とが下記関係式(Eq-1)を満たす。
Figure 2004217924
好ましくは、下記関係式(Eq-4)を満たし、
Figure 2004217924
より好ましくは、下記関係式(eq-5)を満たす。
Figure 2004217924
破断点巻き取り速度(DS)が17×MFR0.577以上の場合、得られるエチレン系重合体の高速成膜加工性に優れる。
破断点巻き取り速度(DS)は、実施例1に示した製造方法における、<前段>にて重合されるエチレン系重合体の成分量と、<後段>にて重合されるエチレン系重合体の成分量との比(<前段>成分量/<後段>成分量)に依存し、(<前段>成分量/<後段>成分量)が大きいほど、同じメルトフローレート(MFR)における破断点巻き取り速度(DS)は小さく、(<前段>成分量/<後段>成分量)が小さいほど、同じメルトフローレート(MFR)における破断点巻き取り速度(DS)は大きくなる傾向にある。このため、実施例1に示した製造方法における<前段>での重合時間と<後段>での重合時間とを調節し、(<前段>成分量/<後段>成分量)を増減させることで、請求範囲の破断点巻き取り速度(DS)とメルトフローレート(MFR)との関係を満たすエチレン系重合体を製造することが可能である。
破断点巻き取り速度(DS)は、溶融させたエチレン系重合体を巻き取り速度を変化させながら巻き取り、エチレン系重合体の延伸物が破断した時点での巻き取り速度により決定される。測定には東洋精機製作所社製キャピラリーレオメーター:キャピログラフ1B(バレル系10mmφ)を用いた。条件は樹脂温度160℃、溶融時間6分、バレル径10mmφ、押し出し速度15mm/分、キャピラリー径2.00mmφ、キャピラリー長さ10mm、巻取り速度15〜400m/分、巻き取り加速度100m/分2で行なった。エチレン系重合体中に気泡等が存在する場合、破断点巻き取り速度(DS)が極端に小さくなってしまうことがある。このため、測定を7回実施し、そのうち上位3点の測定結果平均値を破断点巻き取り速度(DS)とした。
本発明に係るエチレン系重合体は、上記要件に加えて下記要件[m1]〜[m3]を同時に満たすことが好ましい。
[m1] 密度(d)が890〜950kg/m、好ましくは900〜940kg/m、より好ましくは905〜935kg/mの範囲にある。
密度(d)が890kg/m以上の場合、得られるエチレン系重合体の耐熱性が良好であり、密度(d)が950kg/m以下の場合、得られるエチレン系重合体の低温シール性が良好である。
密度はエチレン系重合体のα-オレフィン含量に依存しており、α-オレフィン含量が少ないほど密度は高く、α-オレフィン含量が多いほど密度は低くなる。また、エチレン系重合体中のα-オレフィン含量は、重合系内におけるα-オレフィンとエチレンとの組成比(α-オレフィン/エチレン)により決定されることが知られている(例えばWalter Kaminsky, Makromol.Chem. 193, p.606(1992))。このため、α-オレフィン/エチレンを増減させることで、請求範囲の下限・上限の密度を有するエチレン系重合体を製造することが可能である。
密度(d)は測定サンプルを120℃で1時間熱処理し、1時間かけて直線的に室温まで徐冷したのち、密度勾配管で測定した。
[m2] 溶融張力〔MT(g)〕と、200℃、角速度1.0rad/秒におけるせん断粘度〔η(Poise)〕との比〔MT/η(g/Poise)〕が2.00×10−4〜9.00×10−4、好ましくは2.30×10−4〜9.00×10−4、より好ましくは3.00×10−4〜9.00×10−4の範囲である。
MT/ηが2.00×10−4以上の場合、得られるエチレン系重合体のネックインが良好である。
MT/ηは、実施例1に示した製造方法における、<前段>にて重合されるエチレン系重合体の分子量と、<後段>にて重合されるエチレン系重合体の分子量との比(<前段>分子量/<後段>分子量)に強く依存し、(<前段>分子量/<後段>分子量)が大きいほど、MT/ηは大きく、(<前段>分子量/<後段>分子量)が小さいほどMT/ηは小さくなる。また、エチレン系重合体の分子量は、重合系内における水素とエチレンとの組成比(水素/エチレン)により決定されることが知られている(例えばKazuo Soga, KODANSHA”CATALYTIC OLEFIN POLYMERIZATION”,p376(1990))。このため、水素/エチレンを調節し、(<前段>分子量/<後段>分子量)を増減させることで、請求範囲の上限・下限のMT/ηを有するエチレン系重合体を製造することが可能である。
溶融張力(MT)は溶融されたポリマーを一定速度で延伸したときの応力を測定することにより決定される。測定には東洋精機製作所製、MT測定機を用いた。条件は樹脂温度190℃、溶融時間6分、バレル径9.55mmφ、押し出し速度15mm/分、巻取り速度10〜20m/分、ノズル径2.095mmφ、ノズル長さ8mmで行なった。
また、200℃、角速度1.0rad/秒におけるせん断粘度(η)は、測定温度200℃におけるせん断粘度(η*)の角速度〔ω(rad/秒)〕分散を0.02512≦ω≦400の範囲で測定することにより決定される。測定にはレオメトリックス社製レオメーターRDS-IIを用いた。サンプルホルダーは25mmφのパラレルプレートを用い、サンプル厚みは約1.8mmとした。測定点はω一桁当たり5点とした。歪み量は、測定範囲でのトルクが検出可能で、かつトルクオーバーにならないよう、10〜30%の範囲で適宜選択した。せん断粘度測定に用いたサンプルは、神藤金属工業所製プレス成形機を用い、予熱温度190℃、予熱時間5分間、加熱温度190℃、加熱時間2分間、加熱圧力100kg/cm、冷却温度20℃、冷却時間5分間、冷却圧力100kg/cmの条件にて、測定サンプルを厚さ2mmにプレス成形することで調製した。
[m3]13C−NMRにより測定されたメチル分岐数〔A(/1000C)〕とエチル分岐数〔B(/1000C)〕との和〔(A+B)(/1000C)〕が1.4以下、好ましくは1.0以下、より好ましくは0.6以下である。なお、本発明で定義したメチル分岐数およびエチル分岐数は、後述するように1000カーボンあたり数で定義される。
エチレン系重合体中にメチル分岐、エチル分岐などの短鎖分岐が存在すると、短鎖分岐が結晶中に取り込まれ、結晶の面間隔が広がってしまうため、樹脂の機械的強度が低下することが知られている(例えば 大澤善次郎 他:高分子の寿命予測と長寿命化技術, p.481, エヌ・ティー・エス(2002))。そのため、メチル分岐数とエチル分岐数との和(A+B)が1.4以下の場合、得られるエチレン系重合体の機械的強度が良好である。
エチレン系重合体中のメチル分岐数、エチル分岐数はエチレン系重合体の重合方法に強く依存し、高圧ラジカル重合により得られたエチレン系重合体は、チーグラー型触媒系を用いた配位重合により得られたエチレン系重合体に比べ、メチル分岐数、エチル分岐数が多い。配位重合の場合、エチレン系重合体中のメチル分岐数、エチル分岐数は、重合系内におけるプロピレン、1−ブテンとエチレンとの組成比(プロピレン/エチレン、1−ブテン/エチレン)に強く依存する。このため、1−ブテン/エチレンを増減させることで、請求範囲のメチル分岐数とエチル分岐数の和(A+B)を有するエチレン系重合体を製造することが可能である。
13C-NMRにより測定されたメチル分岐数およびエチル分岐数は下記のように決定される。測定は日本電子(株)社製ECP500型核磁気共鳴装置(1H:500MHz)を用い、積算回数1万〜3万回にて測定した。なお、化学シフト基準として主鎖メチレンのピーク(29.97ppm)を用いた。直径10mmの市販のNMR測定石英ガラス管中に、PEサンプル250から400mgと和光純薬工業(株)社製特級o-ジクロルベンゼン:ISOTEC社製ベンゼン-d6=5:1(体積比)の混合液3mlを入れ、120℃にて加熱、均一分散させることにより行った。NMRスペクトルにおける各吸収の帰属は、化学領域増刊141号 NMR−総説と実験ガイド[I]、132ページ〜133ページに準じて行った。1,000カーボン当たりのメチル分岐数は、5〜45ppmの範囲に現れる吸収の積分総和に対する、メチル分岐由来のメチル基の吸収(19.9ppm)の積分強度比より算出した。また、エチル分岐数は、5〜45ppmの範囲に現れる吸収の積分総和に対する、エチル分岐由来のエチル基の吸収(10.8ppm)の積分強度比より算出した。
さらに、本発明に係るエチレン系重合体は、上記要件に加えて下記[n1]〜[n3]のいずれか1つ以上を満たすことが好ましい。
[n1] GPCで測定したZ平均分子量(Mz)と重量平均分子量(Mw)との比(Mz/Mw)が10以上、好ましくは20以上、より好ましくは30以上である。Mz/Mwが10以上の場合、得られるエチレン系重合体の溶融張力が大きくなり成形性に優れる。
Mz/Mwは、実施例1に示した製造方法における、<前段>にて重合されるエチレン系重合体の分子量と、<後段>にて重合されるエチレン系重合体の分子量との差を広げると大きくなり、差を狭めると小さくなる。また、エチレン系重合体の分子量は、重合系内における水素とエチレンとの組成比(水素/エチレン)により決定されることが知られている(例えばKazuo Soga, KODANSHA”CATALYTIC OLEFIN POLYMERIZATION”,p376(1990))。このため、水素/エチレンを調節し、<前段>にて重合されるエチレン系重合体の分子量と、<後段>にて重合されるエチレン系重合体の分子量とを増減させることで、請求範囲のMz/Mwを有するエチレン系重合体を製造することが可能である。
Z平均分子量(Mz)、重量平均分子量(Mw)はウォーターズ社製GPC−150Cを用い、以下のようにして測定した。分離カラムは、TSKgel GMH6−HT及びTSKgel GMH6−HTLであり、カラムサイズはそれぞれ内径7.5mm、長さ600mmであり、カラム温度は140℃とし、移動相にはo-ジクロロベンゼン(和光純薬工業)および酸化防止剤としてBHT(武田薬品)0.025重量%を用い、1.0ml /分で移動させ、試料濃度は0.1重量%とし、試料注入量は500マイクロリットルとし、検出器として示差屈折計を用いた。標準ポリスチレンは、分子量がMw≦1000およびMw≧4×10については東ソー社製を用い、1000≦Mw≦4×10 についてはプレッシャーケミカル社製を用いた。分子量計算は、ユニバーサル校正して、PEとして換算して求めた値である。
[n2]IRで測定した炭素数1000個あたりの末端ビニル基数〔v(/1000C)〕とGPCで測定した数平均分子量(Mn)とから算出される1分子鎖あたりの末端ビニル基数(V)が0.47/1分子鎖以下、好ましくは0.30/1分子鎖以下、より好ましくは0.16/1分子鎖以下である。1分子鎖あたりの末端ビニル基数(V)が0.47/1分子鎖以下の場合、得られるエチレン系重合体の成形加工時の熱安定性に優れる。
1分子鎖あたりの末端ビニル基数(V)は、重合系内における水素とエチレンとの組成比(水素/エチレン)に強く依存し、水素/エチレンを増加させると1分子鎖あたりの末端ビニル基数(V)は減少し、水素/エチレンを減少させると1分子鎖あたりの末端ビニル基数(V)は増加する。このため、実施例1に示した製造方法における、<前段>での水素/エチレンを増減させることで、請求範囲の1分子鎖あたりの末端ビニル基数(V)を有するエチレン系重合体を製造することが可能である。
1分子鎖あたりの末端ビニル基数(V)はGPCで測定した数平均分子量(Mn)とIRで測定した炭素数1000個あたりの末端ビニル基数(v)とを用い、下記式(Eq-6)により決定される。
Figure 2004217924
数平均分子量(Mn)はウォーターズ社製GPC−150Cを用い、上述と同様の方法により測定した。
炭素数1000個あたりの末端ビニル基数(v)は日本分光社製赤外分光光度計FT-IR 410型を用い、以下のように測定した。測定試料はエチレン系重合体約0.3gをテフロン(登録商標)シート(0.1mm厚)、アルミ板(0.1mm厚)、鉄板(2〜3mm厚)の順にはさみ、これを、油圧成形機で加熱温度180℃、加熱時間3分、成形圧力50〜100kg/cm2でプレスし、その後、室温で1分間、圧力0〜50kg/cm2で冷却することにより調製した。測定は透過率法により、測定範囲5000cm-1〜400cm-1、分解能2cm-1、積算回数4回で実施した。910cm-1に検出される末端ビニル基由来の吸収をキーバンドとし、不飽和結合を含まないポリエチレンと、片末端のすべてがビニル基であるポリエチレンとを用いて作製した検量線より、炭素数1000個あたりの末端ビニル基数(v(/1000C))を定量した。
[n3] DSCにおける融点の最大ピーク〔Tm(℃)〕と密度(d)とが、下記関係式(Eq-2)を満たす。
Figure 2004217924
好ましくは、下記関係式(Eq-7)を満たす。
Figure 2004217924
融点の最大ピーク(Tm)が0.315×d−170以下の場合、得られるエチレン系重合体の低温シール性に優れる。
融点の最大ピーク(Tm)は密度(d)のほかに、得られるエチレン系重合体の分子鎖間でのα−オレフィンの分布(組成分布)にも依存する。密度が同じ場合、組成分布が広いほど、α−オレフィンの少ない分子鎖が存在し厚い結晶を形成してしまうため、融点の最大ピーク(Tm)は高くなり、組成分布が狭いほど、α−オレフィンは均等に各分子鎖が存在し厚い結晶を形成しないため、融点の最大ピーク(Tm)は低くなる。チーグラー触媒の場合、活性点が不均質であるため得られるエチレン系重合体の組成分布が広くなることが知られている(例えば 松浦一雄 他:ポリエチレン技術読本, p.20, 工業調査会(2001))。そのため、エチレン系重合体の密度が同じ場合、融点の最大ピーク(Tm)は高くなる。メタロセン触媒の場合、活性点が均質であるため得られるエチレン系重合体組成分布が狭くなり、その結果、密度が同じ場合、融点の最大ピーク(Tm)は低くなる。同じ密度における融点の最大ピーク(Tm)は重合温度によっても変動させることができる。重合温度を上げれば、重合系内が均一になり組成分布が狭くなる傾向にある。その結果、同じ密度における融点の最大ピーク(Tm)は低くなる。重合温度を下げれば、重合系内が不均一になり組成分布が広くなる傾向にある。その結果、同じ密度における融点の最大ピーク(Tm)は高くなる。このため、実施例1に示した製造方法における、<後段>での重合温度を増減させることで、請求範囲の融点の最大ピーク(Tm)と密度(d)との関係を満たすエチレン系重合体を製造することが可能である。
融点の最大ピーク(Tm)は、PERKIN ELMER社製Pyris 1を用い、以下のように測定した。測定に用いた試料は、神藤金属工業所製プレス成形機を用い、予熱温度190℃、予熱時間5分間、加熱温度190℃、加熱時間2分間、加熱圧力100kg/cm、冷却温度20℃、冷却時間5分間、冷却圧力100kg/cmの条件にて、測定サンプルを厚さ2mmにプレス成形することで調製した。測定サンプル約5mgをアルミパンに詰め、窒素雰囲気下(窒素:20ml/min.)で(1)〜(3)の温度プロファイルにて測定を実施した。
(1)30℃から10℃/分で200℃まで昇温
(2)200℃で5分間保持したのち20℃/分で30℃まで降温
(3)30℃から10℃/分で200℃まで昇温
(3)の測定で得られた吸熱曲線における最大ピークの温度を融点の最大ピーク(Tm(℃))とした。
上記のような特性を有する本発明に係るエチレン系重合体は、例えば、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を一個以上含む周期律表4族の遷移金属化合物と有機アルミニウムオキシ化合物を必須成分として含むオレフィン重合触媒の存在下、エチレン、またはエチレンと炭素数4〜10のα-オレフィンを(共)重合することによって得られる。又このオレフィン重合においては、重合反応系に特定の多官能性化合物を共存させることによって本願請求項を満たすエチレン系重合体を効率的に得ることができる。
さらに詳しく述べると、本発明のエチレン系重合体は、
(A)(a) シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を一個以上含む周期律表4族の遷移金属化合物、
(b) 有機アルミニウムオキシ化合物、および
(c) 下記一般式(I)で示される多官能性有機ハロゲン化物、
Figure 2004217924
〔式(I)中、Rはハロゲン原子を一個以上含む(o+p)価の基であり、o,pは、(o+p)≧2を満たす正の整数であり、QおよびQは、−OH、−NHまたは−NLH(−NLHにおいて、Lは、C〜C20の炭化水素基、C〜C20のハロゲン含有炭化水素基、ケイ素含有基、酸素含有基、硫黄含有基、窒素含有基またはリン含有基から選ばれる任意の基である。)を示し、LとR、NとR、NとNは互いに結合して環を形成していてもよい。〕を接触させて得られる固体状遷移金属触媒成分と、必要に応じて、
(B)有機アルミニウム化合物
とから形成される触媒系の存在下に、エチレンと炭素数4〜20のα-オレフィンとを、得られる共重合体の密度が890〜950kg/cmとなるように共重合させることによって製造することができるが、必ずしも上記に重合触媒並びに製造方法に限定されるものではない。
以下、(a) 遷移金属化合物、(b) 有機アルミニウムオキシ化合物、(c) 多官能性有機ハロゲン化物、必要に応じて用いられる(B)有機アルミニウム化合物について説明する。
(a) 遷移金属化合物
本発明で用いられる遷移金属化合物(a)は、例えば下記一般式(II)で表わされるシクロペンタジエニル骨格を有する配位子を1個以上含む周期律表4族の遷移金属化合物である。
Figure 2004217924
上記一般式(II)中、R1〜R6 は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、C〜C20のアルキル基、C3〜C20のシクロアルキル基、C2〜C20のアルケニル基、C6〜C20のアリール基、およびC〜C20のアリールアルキル基から選ばれ、珪素、ハロゲンまたはゲルマニウム原子を含むことができ、R3とR4 、R4 とR5 及びR5 とR6 のうちの少なくとも一組は互いに結合して環を形成してもよい。Rは、二つの配位子を結合する二価の基であって、C〜C20の炭化水素基、C〜C20のハロゲン含有炭化水素基、ケイ素含有基またはゲルマニウム或いはスズ含有基であり、同じ炭素、珪素、ゲルマニウム、スズ原子上の二つの置換基は互いに結合して環を形成してもよい。tとtは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、C〜C20の炭化水素基、C〜C20のハロゲン含有炭化水素基、珪素含有基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基およびリン含有基から選択された基である。Mは、チタン、ジルコニウムおよびハフニウムから選ばれた遷移金属である。
一般式(II)で表される、成分(a)としては、例えば、特開平4−268308号公報,同5−306304号公報,同6−100579号公報,同6−157661号公報,同6−184179号公報,同6−345809号公報、同7−149815号公報,同7−188318号公報,同7−258321号公報などに記載されている化合物を挙げることができる。なお、本願実施例においては、エチレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリドを用いたが、この遷移金属化合物に限定されるものではない。
(b) 有機アルミニウムオキシ化合物
本発明で用いた、(b) 有機アルミニウムオキシ化合物は、従来公知のアルミノキサンであってもよく、また特開平2−78687号公報に例示されているようなベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物であってもよい。これらの有機アルミニウムオキシ化合物(b)は、1種単独でまたは2種以上組み合せて用いられる。
(c) 多官能性有機ハロゲン化物
本発明で用いた、(c) 多官能性有機ハロゲン化物は下記一般式(I)表わされる化合物である。
Figure 2004217924
式(I)中、Rは、ハロゲン原子を一個以上含む(o+p)価の基であり、o,pは、(o+p)≧2を満たす正の整数であり、QおよびQは、−OH、−NHまたは−NLH(−NLHにおいて、Lは、ハロゲン原子、C〜C20の炭化水素基、C〜C20のハロゲン含有炭化水素基、ケイ素含有基、酸素含有基、硫黄含有基、窒素含有基またはリン含有基から選ばれる任意の基である。)を示し、LとR、NとR、NとNは互いに結合して環を形成していてもよい。
今回用いた、前記一般式(I)で表される多価官能性有機ハロゲン化物、テトラフルオロハイドロキノンであるが、本発明においてはこの化合物に何ら限定されるものではない。
(B)有機アルミニウム化合物
本発明で用いられる(B)有機アルミニウム化合物としては、たとえば下記一般式(III)で表される有機アルミニウム化合物を例示することができる。
AlT3−n … (III)
(式中、Rは炭素数1〜12の炭化水素基であり、Tはハロゲン原子または水素原子であり、nは1〜3である。)
有機アルミニウム化合物の中では、一般式R Alで表される化合物が好ましく、Rが炭素原子数1〜4のアルキル基であるものが好ましい。
固体状担体
本発明において使用される固体状担体は、無機あるいは有機の化合物であって、粒径が10〜300μm、好ましくは20〜200μmの顆粒状ないしは微粒子状の固体が使用される。このうち無機担体としては多孔質酸化物が好ましく、具体的にはSiO、Al、MgO、ZrO、TiO、B、CaO、ZnO、BaO、ThOなど、またはこれらの混合物、たとえばSiO−MgO、SiO−Al、SiO−TiO、SiO−V、SiO−Cr、SiO−TiO−MgOなどを例示することができる。これらの中でSiOおよびAlからなる群から選ばれた少なくとも1種の成分を主成分とするものが好ましい。なお、上記無機酸化物には少量のNaCO、KCO、CaCO、MgCO、NaSO、Al(SO)、BaSO、KNO、Mg(NO)、Al(NO)、NaO、KO、LiOなどの炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、酸化物成分を含有していても差しつかえない。
このような固体状担体は、その種類および製法により性状は異なるが、本発明に好ましく用いられる固体状担体は、比表面積が50〜1000m/g、好ましくは100〜700m/gであり、細孔容積が0.3〜2.5cm/gであることが望ましい。該固体状担体は、必要に応じて100〜1000℃、好ましくは150〜700℃の温度で焼成して用いられる。
さらに、本発明に用いることのできる固体状担体としては、粒径が10〜300μmである有機化合物の顆粒状ないしは微粒子状固体を挙げることができる。これら有機化合物としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテンなどの炭素数2〜14のα-オレフィンを主成分として生成される(共)重合体あるいはビニルシクロヘキサン、スチレンを主成分として生成される重合体もしくは共重合体を例示することができる。
本発明のオレフィン重合用固体触媒は、固体状担体と、(A)(a) シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を一個以上含む周期律表4族の遷移金属化合物、(b) 有機アルミニウムオキシ化合物、および(c) 前記一般式(I)で示される多官能性有機ハロゲン化物を接触させて得られる固体状遷移金属触媒成分と、必要に応じて、(B)有機アルミニウム化合物から構成される。なお、(A)固体状遷移金属触媒成分を成分(a)、(b)および(c)から調製する際には、さらに成分(d) 有機アルミニウム化合物を共存させることができる。この(d) 有機アルミニウム化合物としては、前記の(B)有機アルミニウム化合物を制限なく用いることができる。
成分(a)、成分(b)、成分(c)および固体状担体から(A)固体状遷移金属触媒成分を調製する場合では、成分(a)、成分(b)、成分(c)および固体状担体を不活性炭化水素中で混合接触させることにより調製することができる。
この際の各成分の混合順序は任意であるが、成分(a)と成分(c)とを直接、混合接触させることは避けることが望ましい。このような直接的な接触では、成分(a)の分解・変質を招く恐れがあり、最終的に得られるオレフィン重合触媒の触媒活性を著しく低下させてしまう可能性が高い。
好ましい接触順序としては、例えば、
(1) 固体状担体に、成分(b)を混合接触させ、次いで成分(a)を接触させた後に、成分(c)を接触させる方法、
(2) 固体状担体に、成分(b)を混合接触させ、次いで成分(c)を接触させた後に、成分(a)を接触させる方法、
(3) まず成分(a)と成分(b)とを混合接触させ、次いで固体状担体、引き続き成分(c)を混合接触させる方法、
(4) 成分(b)と成分(c)との接触混合物に、固体状担体を接触させ、引き続き成分(a)を混合接触させる方法などが挙げられる。
成分(a)、成分(b)、成分(c)、成分(d)および固体状担体から(A)固体状遷移金属触媒成分調製する場合では、成分(a)、成分(b)、成分(c)、成分(d)および固体状担体を不活性炭化水素中で混合接触させることにより調製することができる。
この際の各成分の混合順序は任意であるが、成分(a)と成分(c)とを直接、混合接触させることは、上述と同様の理由から避けることが望ましい。
好ましい接触順序としては、例えば、
(☆1)固体状担体に、成分(b)を混合接触させ、次いで成分(a)を接触させた後に、成分(c)、成分(d)、または成分(c)と成分(d)との接触混合物を、接触させる方法、
(☆2)固体状担体に、成分(b)を混合接触させ、次いで成分(c)を接触させた後に、成分(a)または成分(d)を接触させる方法、
(☆3)まず成分(a)と成分(b)とを混合接触させ、次いで固体状担体、引き続き成分(c)、成分(d)、または成分(c)と成分(d)との接触混合物を、接触させる方法、
(☆4)成分(b)と成分(c)との接触混合物に、固体状担体を接触させ、引き続き成分(a)または成分(d)を混合接触させる方法などが挙げられる。
本発明では、上記各成分を混合するに際して、成分(a)は、固体状担体1gあたり、10−6〜5×10−4モル、好ましくは5×10−6〜2×10−4モルの量で用いられ、成分(a)の濃度は、10−5〜5×10−3モル/リットル−溶媒、好ましくは5×10−5〜2×10−2モル/リットル−溶媒の範囲である。成分(b)は、該成分(b)に由来するアルミニウム(Al)と、成分(a)に由来する遷移金属との原子比(Al/遷移金属)で、10〜1000、好ましくは50〜500の量で用いられる。成分(c)は、成分(b)に由来するアルミニウム1モルに対し、0.01〜5.0モル、好ましくは0.02〜1.0モル、より好ましくは0.03〜0.5モルの量で用いられる。また、成分(d)が用いられる場合は、該成分(d)中のアルミニウム原子(Al-d)と成分(b)中のアルミニウム原子(Al-b)とのグラム原子比(Al-d/Al-b)で、0.01〜2.0、好ましくは0.02〜1.0の量で用いられる。
上記各成分を混合する際の混合温度は、−50〜150℃、好ましくは−20〜120℃であり、接触時間は1〜1000分間、好ましくは5〜600分間である。また、混合接触時には混合温度を変化させてもよい。
本発明では、好ましい接触形態の一つとして、成分(b)および成分(c)を、あらかじめ不活性炭化水素中で混合接触させ、成分(b)と成分(c)との混合接触物を含む溶液を調製した後に、該溶液と、他の成分とを混合接触させる方法が挙げられる。成分(b)と成分(c)とを混合接触させるに際して、成分(b)の濃度は、0.01〜5モル/リットル−溶媒、好ましくは0.1〜3モル/リットル−溶媒の範囲である。成分(c)は、成分(b)に由来するアルミニウム1モルに対し、0.01〜5.0モル、好ましくは0.02〜1.0モル、より好ましくは0.03〜0.5モルの量であることが望ましい。成分(b)と成分(c)とを混合接触する際の混合温度は、−20〜150℃、好ましくは0〜120℃であり、接触時間は1〜1000分間、好ましくは5〜600分間である。
本発明で触媒の調製に用いられる不活性炭化水素として具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油などの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;エチレンクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素あるいはこれらの混合物などを挙げることができる。
本発明に係るオレフィン重合触媒では、成分(a)に由来する遷移金属原子が。固体状担体1g当たり、5×10−5〜5×10−2グラム原子、好ましくは10−5〜10−2グラム原子の量で担持され、成分(b)および必要により用いられる成分(d)に由来するアルミニウム原子が10−3〜1.0グラム原子、好ましくは5×10−3〜5×10−1グラム原子の量で担持され、成分(c)が、5×10−5〜5×10−2モル、好ましくは10−5〜10−2モルの量で担持されていることが望ましい。また、必要に応じて用いられる成分(B)は、成分(a)に由来する遷移金属原子1グラム原子当たり500モル以下、好ましくは1〜200モルの量で用いられることが望ましい。
本発明に関わるオレフィン重合では、重合反応を単段で行なっても良いし、二段以上の多段で行うこともできる。通常は多段、好ましくは二段または三段重合反応方式が採用される。本発明における二段重合は、通常、前段重合(以下の説明では「予備重合」と呼称する場合がある。)と後段重合(本重合)工程とから構成される。本発明の三段重合は、通常、予備重合と二段の本重合工程から構成される。
予備重合触媒は、上記成分(a)、成分(b)、成分(c)および固体状担体の存在下、通常、不活性炭化水素溶媒中、オレフィンを予備重合させることにより調製することができる。なお上記各成分(a)、成分(b)、成分(c)および固体状担体からはオレフィン重合触媒が形成されていることが好ましい。このオレフィン重合触媒に加えて、さらに成分(d)を添加してもよい。
予備重合に際して、成分(a)は固体状担体1g当り、遷移金属として10-6〜5×10-4モル、好ましくは5×10−6〜2×10−4モルの量で用いられる。成分(b)は、該成分(b)のアルミニウム(Al)と成分(a)の遷移金属との原子比(Al/遷移金属)で、10〜1000、好ましくは50〜500の量で用いられる。成分(c)は、成分(b)1モルに対し、0.01〜5.0モル、好ましくは0.02〜1.0モル、より好ましくは0.03〜0.5モルの量で用いられる。また、成分(d)が用いられる場合は、該成分(d)中のアルミニウム原子(Al−d)と成分(b)中のアルミニウム原子(Al−b)との原子比(Al−d/Al−b)で、0.01〜5.0、好ましくは0.02〜1.0の量で用いられる。
遷移金属化合物(a)または各成分から形成されたオレフィン重合触媒の予備重合系における濃度は、遷移金属/重合容積1リットル比で、通常10−6〜2×10−2モル/リットル、さらには5×10−5〜10−2モル/リットルであることが望ましい。
予備重合温度は、−20〜80℃、好ましくは0〜60℃であり、また予備重合時間は、0.5〜100時間、好ましくは1〜50時間程度である。予備重合には、後述する重合時に用いられるオレフィンと同様のオレフィンが用いられるが、好ましくはエチレンを主成分とするオレフィンである。
予備重合触媒は、不活性炭化水素溶媒を用いて調製されたオレフィン重合触媒懸濁液にオレフィンを導入してもよく、また不活性炭化水素溶媒中で生成したオレフィン重合触媒を懸濁液から分離した後、再び不活性炭化水素中に懸濁して、得られた懸濁液中にオレフィンを導入してもよい。
予備重合によって、固体状担体1g当り0.01〜1000g、好ましくは0.1〜800g、さらに好ましくは0.2〜500gの量のオレフィン重合体(予備重合体)が生成することが望ましい。
予備重合は回分式、半連続式、連続式のいずれの方法においても実施することができる。このように得られる予備重合触媒では、成分(a)に由来する遷移金属原子が、固体状担体1g当たり、10−7〜4×10−2グラム原子、好ましくは5×10−7〜2×10−2グラム原子の量で担持され、成分(b)に由来するアルミニウム原子が10−6〜9.0×10−1グラム原子、好ましくは5×10−6〜5×10−1グラム原子の量で担持され、成分(c)が、5×10−8〜4×10−2モル、好ましくは10−8〜2×10−2モルの量で担持されていることが望ましい。
次に、本発明に係るオレフィンの重合方法について説明する。本発明では、上記のオレフィン重合用固体触媒の存在下にオレフィンの重合を行う。重合は懸濁重合などの液相重合法あるいは気相重合法いずれにおいても実施できる。
液相重合法では上述した触媒調製の際に用いた不活性炭化水素と同じものを溶媒として用いることができ、またオレフィン自身を溶媒として用いることもできる。
本発明のオレフィン重合用触媒を用いてオレフィンの重合を行うに際して、上記のような触媒は、重合系内の成分(a)に由来する遷移金属原子の濃度として、10−8〜10−3グラム原子/リットル(重合容積)、好ましくは10−7〜10−4グラム原子/リットル(重合容積)の量で用いられることが望ましい。この際、所望により有機アルミニウムオキシ化合物を用いてもよい。有機アルミニウムオキシ化合物の使用量は、成分(a)に由来する遷移金属原子1グラム原子当たり0〜500モルの範囲であることが望ましい。
オレフィンの重合温度は、スラリー重合法を実施する際には、−50〜100℃、好ましくは0〜90℃の範囲であることが望ましく、液相重合法を実施する際には、0〜250℃、好ましくは20〜200℃の範囲であることが望ましい。また、気相重合法を実施する際には、重合温度は0〜120℃、好ましくは20〜100℃の範囲であることが望ましい。重合圧力は、常圧〜10MPa、好ましくは常圧〜5MPaの条件下であり、重合反応は、回分式、半連続式、連続式のいずれの方法においても行うことができる。さらに重合を反応条件の異なる2段以上に分けて行うことも可能である。
得られるオレフィン重合体の分子量は、重合系に水素を存在させるか、あるいは重合温度を変化させることによって調節することができる。このような本発明のオレフィン重合触媒により重合することができるオレフィンとしては、エチレン、および炭素数が4〜10のα−オレフィン、たとえば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン;炭素数が5〜20の環状オレフィン、たとえばシクロペンテン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、テトラシクロドデセン、2−メチル1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレンなどを挙げることができる。さらにスチレン、ビニルシクロヘキサン、ジエンなどを用いることもできる。
物性値のばらつきを抑制するため、重合反応により得られたエチレン系重合体粒子および所望により添加される他の成分は、任意の方法で溶融され、混練、造粒などを施される。
本発明に係るエチレン系重合体を、他の熱可塑性樹脂とブレンドすることにより、成形性に優れ、かつ機械的強度に優れた熱可塑性樹脂組成物が得られる。本願エチレン系重合体と、他の熱可塑性樹脂とのブレンド比率は、99.1/0.1〜0.1/99.9である。
他の熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステルおよびポリアセタール等の結晶性熱可塑性樹脂;ポリスチレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキサイド、ポリアクリレート等の非結晶性熱可塑性樹脂が用いられる。ポリ塩化ビニルも好ましく用いられる。
上記ポリオレフィンとして具体的には、エチレン系重合体、プロピレン系重合体、ブテン系重合体、4-メチル-1-ペンテン系重合体、3-メチル-1-ブテン系重合体、ヘキセン系重合体などが挙げられる。中でも、エチレン系重合体、プロピレン系重合体、4-メチル-1-ペンテン系重合体が好ましく、エチレン系重合体である場合は本発明に係るエチレン系重合体であっても従来のエチレン系重合体であってもよく、エチレン・極性基含有ビニル共重合体であってもよいが、従来のエチレン系重合体がより好ましい。
上記ポリエステルとして具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の芳香族系ポリエステル;ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシブチレートなどを挙げることができる。
上記ポリアミドとして具体的には、ナイロン−6、ナイロン−66、ナイロン−10、ナイロン−12、ナイロン−46等の脂肪族ポリアミド、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジアミンより製造される芳香族ポリアミドなどを挙げることができる。
上記ポリアセタールとして具体的には、ポリホルムアルデヒド(ポリオキシメチレン)、ポリアセトアルデヒド、ポリプロピオンアルデヒド、ポリブチルアルデヒドなどを挙げることができる。中でも、ポリホルムアルデヒドが特に好ましい。
上記ポリスチレンは、スチレンの単独重合体であってもよく、スチレンとアクリロニトリル、メタクリル酸メチル、α-メチルスチレンとの二元共重合体であってもよい。
上記ABSとしては、アクリロニトリルから誘導される構成単位を20〜35モル%の量で含有し、ブタジエンから誘導される構成単位を20〜30モル%の量で含有し、スチレンから誘導される構成単位を40〜60モル%の量で含有するABSが好ましく用いられる。
上記ポリカーボネートとしては、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタンなどから得られるポリマーを挙げることができる。中でも、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンから得られるポリカーボネートが特に好ましい。
上記ポリフェニレンオキシドとしては、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンオキシド)を用いることが好ましい。
上記ポリアクリレートとしては、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルアクリレートを用いることが好ましい。
上記のような熱可塑性樹脂は、単独で用いてもよく、また2種以上組み合わせて用いてもよい。特に好ましい熱可塑性樹脂はポリオレフィンであって、エチレン系重合体がより特に好ましい。
本発明に係るエチレン系重合体は、上記熱可塑性樹脂に加えてさらに、本発明の目的を損なわない範囲で、耐候性安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、スリップ防止剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、顔料、染料、核剤、可塑剤、老化防止剤、塩酸吸収剤、酸化防止剤等の添加剤が必要に応じて配合されていてもよい。
本発明に係るエチレン系重合体、及びエチレン系重合体を含む樹脂組成物を加工することにより、成形性に優れ、且つ機械的強度に優れた成形体、好ましくはフィルムが得られる。
本発明のエチレン系共重合体は、一般のフィルム成形やブロ−成形、インジェクション成形及び押出成形により加工される。フィルム成形では押出ラミネ−ト成形、Tダイフィルム成形、インフレ−ション成形(空冷、水冷、多段冷却、高速加工)などが挙げられる。得られたフィルムは単層でも使用することができるが、多層とすることでさらに様々な機能を付与することができる。その場合には、前記各成形法における共押出法が挙げられる。一方押出ラミネ−ト成形やドライラミネ−ト法のような貼合ラミネ−ト成形法によって、共押出が困難な紙やバリアフィルム(アルミ箔、蒸着フィルム、コ−ティングフィルムなど)との積層が挙げられる。ブロ−成形やインジェクション成形、押出成形での、共押出法による多層化での高機能製品の作製については、フィルム成形と同様に可能である。
本発明のエチレン系重合体、及びエチレン系重合体を含む熱可塑性樹脂組成物を加工することにより得られる成形体としては、フィルム、ブロー輸液バック、ブローボトル、押出成形によるチューブ、パイプ、引きちぎりキャップ、日用雑貨品等射出成形物、繊維、回転成形による大型成形品などがあげられる。
さらに、本発明のエチレン系重合体、及びエチレン系重合体を含む熱可塑性樹脂組成物を加工することにより得られるフィルムとしては水物包装袋、液体スープ包袋、液体紙器、ラミ原反、特殊形状液体包装袋(スタンディングパウチ等)、規格袋、重袋、ラップフィルム、砂糖袋、油物包装袋、食品包装用等の各種包装用フィルム、輸液バック、農業用資材等に好適である。また、ナイロン、ポリエステル等の基材と貼り合わせて、多層フィルムとして用いることもできる。
以下実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
★固体成分の調製★
固体成分(S1)の調製
窒素流通下、250℃で10時間乾燥したシリカ(SiO)30g(成分E)を、460mLのトルエンに懸濁した後、0℃まで冷却した。この懸濁液にメチルアルモキサン(成分B:三井化学品)のトルエン溶液(Al原子換算で1.52mmol/mL)140mLを1時間かけて滴下した。この際、系内の温度を0〜2℃に保った。引き続き0℃で30分間反応させた後、1.5時間かけて95℃まで昇温し、その温度で4時間反応させた。その後60℃まで降温し、上澄み液をデカンテーションにより除去した。このようにして得られた固体成分をトルエンで3回洗浄した後、トルエンを加え、固体成分(S1)のトルエンスラリーを調製した。得られた固体成分(S1)の一部を採取し、濃度を調べたところ、スラリー濃度:0.124g/mL、Al濃度:0.463mmol/mLであった。
固体成分(S2)の調製
窒素流通下、250℃で10時間乾燥したシリカ(SiO)13g(成分E)を、100mLのトルエンに懸濁した後、0℃まで冷却した。この懸濁液にメチルアルモキサン(成分B:アルベマール品)のトルエン溶液(Al原子換算で1.75mmol/mL)52.6mLを1時間かけて滴下した。この際、系内の温度を0〜2℃に保った。引き続き0℃で30分間反応させた後、1.5時間かけて95℃まで昇温し、その温度で4時間反応させた。その後60℃まで降温し、上澄み液をデカンテーションにより除去した。このようにして得られた固体成分をトルエンで4回洗浄した後、トルエンを加え、固体成分(S2)のトルエンスラリーを調製した。得られた固体成分(S2)の一部を採取し、濃度を調べたところ、スラリー濃度:0.1216g/mL、Al濃度:0.575mmol/mLであった。また、上澄みの一部を採取し、濃度を測定したところ、Al濃度:0.001mmol/mL以下であった。
固体成分(S3)の調製
メチルアルモキサン反応後、得られた固体成分のトルエンでの洗浄回数を2回にした以外は、固体成分(S2)と同様の方法で調製した。得られた固体成分(S3)の一部を採取し、濃度を調べたところ、スラリー濃度:0.1665g/mL、Al濃度:0.697mmol/mLであった。また、上澄みの一部を採取し、濃度を測定したところ、Al濃度:0.0042mmol/mLであった。
★固体触媒成分の調製★
固体触媒成分(X−1)の調製
窒素置換した200mLのガラス製フラスコにトルエン50mLを入れ、攪拌下、上記で調製した固体成分(S1)のトルエンスラリー(固体部換算で2.0g)を装入した。次に、エチレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド(成分A)のトルエン溶液(Zr原子換算で0.0011mmol/mL)33.9mLを滴下し、室温で2時間反応させた。その後、上澄み液をデカンテーションにより除去し、トルエンで3回洗浄し、100mLのトルエンスラリーとした。次に、室温にてテトラフルオロハイドロキノン135.8mg(成分C)を装入し、40℃まで昇温した後、30分間反応させた。その後、上澄み液をデカンテーションにより除去し、トルエンで3回洗浄し、50mLのトルエンスラリーとした。さらに、室温にて減圧留去によりトリメチルアルミニウムを除去したメチルアルモキサン(成分B)のトルエン溶液(Al原子換算で0.15mmol/mL)50mLを15分かけて滴下し、40℃まで昇温した後、30分間反応させた。その後、上澄み液をデカンテーションにより除去し、トルエンで3回、ヘキサンで3回洗浄し、デカン100mLを加えて固体触媒成分(X−1)のデカンスラリーを調製した。得られた固体触媒成分(X−1)のデカンスラリーの一部を採取して濃度を調べたところ、Zr濃度0.0263mg/mL、Al濃度3.61mg/mLであった。
固体触媒成分(X−2)の調製
窒素置換した200mLのガラス製フラスコにトルエン50mLを入れ、攪拌下、固体成分(S1)と同処方(反応温度・反応時間)で調製した固体成分のトルエンスラリー(固体部換算で2.0g、Al原子換算で9.9mmol)を装入した。次に、エチレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド(成分A)のトルエン溶液(Zr原子換算で0.001525mmol/mL)32.6mLを滴下し、室温で2時間反応させた。その後、上澄み液をデカンテーションにより除去し、トルエンで3回洗浄し、100mLのトルエンスラリーとした。次に、室温にてテトラフルオロハイドロキノン363.1mg(成分C)を装入し、40℃まで昇温した後、30分間反応させた。その後、上澄み液をデカンテーションにより除去し、トルエンで3回洗浄し、50mLのトルエンスラリーとした。さらに、メチルアルモキサン(アルベマール品;成分B)のトルエン溶液(Al原子換算で0.199mmol/mL)50mLを10分かけて滴下し、40℃まで昇温した後、30分間反応させた。その後、上澄み液をデカンテーションにより除去し、トルエンで3回、デカンで3回洗浄し、デカン75mLを加えて固体触媒成分(X−2)のデカンスラリーを調製した。得られた固体触媒成分(X−2)のデカンスラリーの一部を採取して濃度を調べたところ、Zr濃度0.0258mg/mL、Al濃度2.88mg/mLであった。
固体触媒成分(X−3)の調製
窒素置換した400mLのガラス製フラスコにトルエン208mLを入れ、攪拌下、上記で調製した固体成分(S2)のトルエンスラリー(固体部換算で8.0g)を装入した。次に、エチレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド(成分A)のトルエン溶液(Zr原子換算で0.0015mmol/mL)126mLを滴下し、室温で2時間反応させた。その後、上澄み液をデカンテーションにより除去し、トルエンで1回洗浄し、250mLのトルエンスラリーとした。次に、室温にてテトラフルオロハイドロキノン1.377g(成分C)を溶解したトルエン溶液150mLを装入し、40℃まで昇温した後、30分間反応させた。その後、上澄み液をデカンテーションにより除去し、トルエンで1回洗浄し、250mLのトルエンスラリーとした。さらに、メチルアルモキサン(アルベマール品;成分B)のトルエン溶液(Al原子換算で0.253mmol/mL)150mLを10分かけて滴下し、40℃まで昇温した後、30分間反応させた。その後、上澄み液をデカンテーションにより除去し、トルエンで3回、デカンで3回洗浄し、デカン150mLを加えて固体触媒成分(X−3)のデカンスラリーを調製した。得られた固体触媒成分(X−3)のデカンスラリーの一部を採取して濃度を調べたところ、Zr濃度0.0892mg/mL、Al濃度11.2mg/mLであった。
固体触媒成分(X−4)の調製
窒素置換した400mLのガラス製フラスコにトルエン100mLを入れ、攪拌下、上記で調製した固体成分(S3)のトルエンスラリー(固体部換算で4.0g)を装入した。次に、エチレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド(成分A)のトルエン溶液(Zr原子換算で0.0015mmol/mL)55.7mLを滴下し、室温で2時間反応させた。その後、上澄み液をデカンテーションにより除去し、トルエンで1回洗浄し、100mLのトルエンスラリーとした。次に、室温にてテトラフルオロハイドロキノン608.1mg(成分C)を溶解したトルエン溶液100mlを装入し、40℃まで昇温した後、30分間反応させた。その後、上澄み液をデカンテーションにより除去し、トルエンで1回洗浄し、100mLのトルエンスラリーとした。さらに、メチルアルモキサン(アルベマール品;成分B)のトルエン溶液(Al原子換算で0.167mmol/mL)100mLを10分かけて滴下し、40℃まで昇温した後、30分間反応させた。その後、上澄み液をデカンテーションにより除去し、トルエンで3回、デカンで3回洗浄し、デカン75mLを加えて固体触媒成分(X−4)のデカンスラリーを調製した。得られた固体触媒成分(X−4)のデカンスラリーの一部を採取して濃度を調べたところ、Zr濃度0.069mg/mL、Al濃度9.23mg/mLであった。
★前重合触媒成分の調製★
前重合触媒成分(Q−1)の調製
充分に窒素置換した内容積1リットルのSUS製オートクレーブに精製ヘプタン 500mLを入れ、エチレンを流通し、液相および気相をエチレンで飽和させた。20℃、エチレン雰囲気にて、トリイソブチルアルミニウム 0.375mmol(成分D)、固体触媒成分(X−3)(ジルコニウム原子換算で0.0254mmol)をこの順に装入した。エチレン圧を0.78MPa・Gとし、20℃にて8時間重合を行った後に脱圧し、オートクレーブ内のエチレンを窒素により置換した。内容物を充分に窒素置換した1L容器に移液し、デカンで3回洗浄し、デカンを加えて前重合触媒成分(Q−1)のデカンスラリーを調製した。得られた前重合触媒成分(Q−1)のデカンスラリーの一部を採取してスラリー濃度、前重合量を調べたところ、スラリー濃度=0.1693g/mL、固体触媒成分1g当たりの前重合量は、31g/g−固体触媒成分であった。また、前重合によって得られた重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定(GPC)測定を行ったところ、前重合体のMwは75.4×10、Mzは735.6×10であった。

重合(二段重合)
<前段> 充分に窒素置換した内容積1リットルのSUS製オートクレーブに精製ヘプタン 500mLを入れ、エチレンを流通し、液相および気相をエチレンで飽和させた。20℃、エチレン雰囲気にて、トリイソブチルアルミニウム 0.375mmol(成分D)、上記で調製した固体触媒成分(X−1)(ジルコニウム原子換算で0.004mmol)をこの順に装入した。エチレン圧を0.78MPa・Gとし、20℃にて30分間重合を行った後に脱圧し、オートクレーブ内のエチレンを窒素により置換した。
<後段> 次に、水素−エチレン混合ガス(水素濃度:0.55vol%)を用いて、系内を置換した後、1−ヘキセン10mLを添加し、80℃に昇温して、0.78MPa・Gにて20分間重合を行った。得られたポリマーを10時間、真空乾燥し、エチレン・1−ヘキセン共重合体35.6gを得た。
測定試料を調製するため、得られたエチレン系重合体に耐熱安定剤としてIrganox1076(チバスペシャリティケミカルズ)0.1重量%、Irgafos168(チバスペシャリティケミカルズ)0.1重量%を加え、東洋精機製作所製ラボプラストミルを用い、樹脂温度180℃、回転数50rpm.で5分間溶融混練した。さらに、この溶融ポリマーを、神藤金属工業所製プレス成形機を用い、冷却温度20℃、冷却時間5分間、冷却圧力100kg/cmの条件にて冷却した。該試料を用いて物性測定を行った結果を表1、表2に示す。
重合(二段重合)
実施例1において、後段の重合時間20分間を、14分間に変更した以外は実施例1と同様にして重合を行った。得られたポリマーを10時間、真空乾燥し、エチレン・1−ヘキセン共重合体23.3gを得た。
得られたエチレン系重合体を用い、実施例1と同様の方法にて測定試料を調製した。該試料を用いて物性測定を行った結果を表1、表2に示す。
重合(二段重合)
実施例1において、後段の重合時間20分間を、27分間に変更した以外は実施例1と同様にして重合行った。得られたポリマーを10時間、真空乾燥し、エチレン・1−ヘキセン共重合体46.7gを得た。
得られたエチレン系重合体を用い、実施例1と同様の方法にて測定試料を調製した。該試料を用いて物性測定を行った結果を表1、表2に示す。
充分に窒素置換した内容積1リットルのSUS製オートクレーブに精製ヘプタン 500mLを入れ、エチレンを流通し、液相および気相をエチレンで飽和させた。次に、水素−エチレン混合ガス(水素濃度:0.45vol%)を用いて、系内を置換した後、1−ヘキセン60mL、トリイソブチルアルミニウム 0.375mmol(成分D)、前重合触媒成分(Q−1)1.5gをこの順に装入した。70℃に昇温して、0.78MPa・Gにて90分間重合を行った。得られたポリマーを10時間、真空乾燥し、エチレン・1−ヘキセン共重合体61.4gを得た。
得られたエチレン系重合体を用い、実施例1と同様の方法にて測定試料を調製した。該試料を用いて物性測定を行った結果を表1、表2に示す。
充分に窒素置換した内容積1リットルのSUS製オートクレーブに精製ヘプタン 500mLを入れ、エチレンを流通し、液相および気相をエチレンで飽和させた。次に、水素−エチレン混合ガス(水素濃度:0.55vol%)を用いて、系内を置換した後、1−ヘキセン7.5mL、トリイソブチルアルミニウム 0.375mmol(成分D)、前重合触媒成分(Q−1)1.44gをこの順に装入した。90℃に昇温して、0.78MPa・Gにて90分間重合を行った。得られたポリマーを10時間、真空乾燥し、エチレン・1−ヘキセン共重合体15.6gを得た。
得られたエチレン系重合体を用い、実施例1と同様の方法にて測定試料を調製した。該試料を用いて物性測定を行った結果を表1、表2に示す。
充分に窒素置換した内容積1リットルのSUS製オートクレーブに精製ヘプタン 500mLを入れ、エチレンを流通し、液相および気相をエチレンで飽和させた。次に、水素−エチレン混合ガス(水素濃度:0.83vol%)を用いて、系内を置換した後、1−ヘキセン15mL、トリイソブチルアルミニウム 0.375mmol(成分D)、前重合触媒成分(Q−1)1.5gをこの順に装入した。80℃に昇温して、0.78MPa・Gにて270分間重合を行った。得られたポリマーを10時間、真空乾燥し、エチレン・1−ヘキセン共重合体50.8gを得た。
得られたエチレン系重合体を用い、実施例1と同様の方法にて測定試料を調製した。該試料を用いて物性測定を行った結果を表1、表2に示す。
重合(二段重合)
<前段> 充分に窒素置換した内容積1リットルのSUS製オートクレーブに精製ヘプタン 500mLを入れ、エチレンを流通し、液相および気相をエチレンで飽和させた。20℃、エチレン雰囲気にて、トリイソブチルアルミニウム 0.375mmol(成分D)、上記で調製した固体触媒成分(X−2)(ジルコニウム原子換算で0.001mmol)をこの順に装入した。エチレン圧を0.78MPa・Gとし、20℃にて6時間重合を行った後に脱圧し、オートクレーブ内のエチレンを窒素により置換した。
<後段>次に、水素−エチレン混合ガス(水素濃度:0.38vol%)を用いて、系内を置換した後、1−ヘキセン30mLを添加し、70℃に昇温して、0.78MPa・Gにて160分間重合を行った。得られたポリマーを10時間、真空乾燥し、エチレン・1−ヘキセン共重合体44.8gを得た。
得られたエチレン系重合体を用い、実施例1と同様の方法にて測定試料を調製した。該試料を用いて物性測定を行った結果を表1、表2に示す。
充分に窒素置換した内容積1リットルのSUS製オートクレーブに精製ヘプタン 500mLを入れ、エチレンを流通し、液相および気相をエチレンで飽和させた。次に、水素−エチレン混合ガス(水素濃度:0.54vol%)を用いて、系内を置換した後、1−ヘキセン15mL、トリイソブチルアルミニウム 0.375mmol(成分D)、前重合触媒成分(Q−1)1.5gをこの順に装入した。80℃に昇温して、0.78MPa・Gにて110分間重合を行った。得られたポリマーを10時間、真空乾燥し、エチレン・1−ヘキセン共重合体37.5gを得た。
得られたエチレン系重合体を用い、実施例1と同様の方法にて測定試料を調製した。該試料を用いて物性測定を行った結果を表1、表2に示す。
重合(二段重合)
<前段> 充分に窒素置換した内容積1リットルのSUS製オートクレーブに精製ヘプタン 500mLを入れ、エチレンを流通し、液相および気相をエチレンで飽和させた。20℃、エチレン雰囲気にて、トリイソブチルアルミニウム 0.375mmol(成分D)、上記で調製した固体触媒成分(X−4)(ジルコニウム原子換算で0.002mmol)をこの順に装入した。エチレン圧を0.78MPa・Gとし、20℃にて120分間重合を行った後に脱圧し、オートクレーブ内のエチレンを窒素により置換した。
<後段> 次に、水素−エチレン混合ガス(水素濃度:0.83vol%)を用いて、系内を置換した後、1−ヘキセン15mLを添加し、80℃に昇温して、0.78MPa・Gにて40分間重合を行った。得られたポリマーを10時間、真空乾燥し、エチレン・1−ヘキセン共重合体43.7gを得た。
得られたエチレン系重合体を用い、実施例1と同様の方法にて測定試料を調製した。該試料を用いて物性測定を行った結果を表1、表2に示す。
〔比較例1〕
固体成分(S)の調製
窒素流通下、250℃で10時間乾燥したシリカ(SiO)179g(成分E)を、2.75Lのトルエンに懸濁した後、0℃まで冷却した。この懸濁液にメチルアルモキサン(成分B)のトルエン溶液(Al原子換算で1.52mmol/mL)810mLを1時間かけて滴下した。この際、系内の温度を0〜2℃に保った。引続き0℃で30分間反応させ、次いで1.5時間かけて95℃まで昇温し、その温度で4時間反応させた。その後60℃まで降温し、上澄み液をデカンテーションにより除去した。このようにして得られた固体成分をトルエンで3回洗浄した後、トルエンを加えて全量1225mLとし、固体成分(S)のトルエンスラリーを調製した。得られた固体成分(S)の一部を採取し、濃度を調べたところ、スラリー濃度:0.203g/mL、Al濃度:0.985mmol/mLであった。また、固体成分(S)の一部を乾燥し、組成を調べたところ、固体成分1g当りAl原子が131mg含まれていた。
固体触媒成分(X)の調製
次に、上記で調製した固体成分(S)のトルエンスラリーに、攪拌下、エチレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド(成分A)のトルエン溶液(Zr原子換算で1.21mmol/L)5.00リットルを75℃で30分間かけて滴下し、さらに80℃まで昇温した後に、この温度で2時間反応させた。その後、上澄み液を除去し、ヘキサンで2回洗浄した後、ヘキサンを加えて全量3.32Lとし、固体触媒成分(X)のヘキサンスラリーを調製した。得られた固体触媒成分(X)の一部を乾燥し、組成を調べたところ、固体触媒成分1g当りZr原子が2.1mg含まれていた。
予備重合触媒(X’)の調製
上記で得られた固体触媒成分(X)のヘキサンスラリーを10℃まで冷却した後、常圧下でエチレンを系内に連続的に供給した。この間、系内の温度は10〜15℃に保持した。その後、トリイソブチルアルミニウム(成分D)のデカン溶液(Al原子換算で1.0mmol/mL)133mLと1−ヘキセン16.6mLを添加し、予備重合を開始した。15分後に系内の温度は35℃まで上昇したが、その後は系内温度を32〜35℃に保持した。予備重合を開始してから70分後に、再び1−ヘキセン5.5mLを添加した。更に、160分後と220分後にも同様に1−ヘキセン5.5mLを添加した。
その後、予備重合開始から275分後に、系内を窒素により置換し、予備重合を停止した。次いで、上澄み液を除去し、ヘキサンで2回洗浄し、固体触媒成分(X)1g当り3gのポリマーが予備重合された予備重合触媒(X’)を得た。
重合
連続式流動床気相重合装置を用い、全圧20kg/cm2-G、重合温度80℃、ガス線速度0.8m/sec.でエチレンと1−ヘキセンとの共重合を行った。上記で調製した予備重合触媒(X’)を乾燥し、10g/hrの割合で連続的に供給し、重合の間一定のガス組成を維持するためにエチレン、1−ヘキセン、水素および窒素を連続的に供給した(ガス組成:1−ヘキセン/エチレン=1.1×10−2、エチレン濃度=62%)。得られたエチレン・1−ヘキセン共重合体の収量は、6.1kg/hrであった。
得られたエチレン系重合体を用い、実施例1と同様の方法にて測定試料を調製した。該試料を用いて物性測定を行った結果を表1、表2に示す。
〔比較例2〕(SP2040)
三井化学株式会社より市販されている気相重合法によるエチレン・1−ヘキセン共重合体(商品名:エボリューSP1520)は製品ペレットを測定試料とし、物性評価を行った。結果を表1、表2に示す。
〔比較例3〕(PF1140)
ダウ・ケミカル・カンパニーより市販されている溶液重合法によるエチレン・1−オクテン共重合体(商品名:アフィニティーPF1140)は製品ペレットを測定試料とし、物性評価を行った。結果を表1、表2に示す。
比較例1、比較例2および比較例3は、LNR、MT/η*に関して請求項1及び請求項2に記載の要件から外れている。このため、実施例1〜9に比べ成形時のネックインが大きいと推定される。
〔比較例4〕(M11)
三井化学株式会社より市販されている高圧ラジカル重合法によるポリエチレン(商品名:ミラソンM11)は製品ペレットを測定試料とし、物性評価を行った。結果を表1、表2に示す。
比較例4は破断点巻き取り速度(DS)に関して請求項1に記載の要件から外れている。このため、実施例1、実施例2、実施例4、実施例5及び実施例7に比べ高速成膜加工性の劣ると推定される。さらに、メチル分岐数とエチル分岐数の和(A+B)に関して請求項1に記載の要件から外れている。このため、実施例1〜9に比べ、機械的強度に劣ると推定される。
〔比較例5〕(HHM5502)
フィリップス社より市販されているエチレン・1−ヘキセン共重合体(商品名:マーレックスHHM5502)は製品ペレットを測定試料とし、物性評価を行った。結果を表1、表2に示す。
比較例5はLNR、MT/η*に関して請求項1及び請求項2に記載の要件から外れている。このため、実施例1〜9に比べ成形時のネックインが大きいと推定される。さらに、1分子鎖あたりの末端ビニル基数(V)に関して請求項3に記載の要件から外れている。このため、実施例1〜9に比べ成形加工時の熱安定性に劣ると推定される。
〔比較例6〕(TUF-2060)
日本ユニカー社より市販されているエチレン・1−ヘキセン共重合体(商品名:タフセンTUF-2060)は製品ペレットを測定試料とし、物性評価を行った。結果を表1、表2に示す。
〔比較例7〕(TUF-2070)
日本ユニカー社より市販されているエチレン・1−ヘキセン共重合体(商品名:タフセンTUF-2070)は製品ペレットを測定試料とし、物性評価を行った。結果を表1、表2に示す。
〔比較例8〕(GZ701)
住友化学工業社より市販されているエチレン・1−ヘキセン共重合体(商品名:スミカセン−αGZ701)は製品ペレットを測定試料とし、物性評価を行った。結果を表1、表2に示す。
比較例6〜8はLNR、MT/η*に関して請求項1及び請求項2に記載の要件から外れている。このため、実施例1〜9に比べ成形時のネックインが大きいと推定される。さらに、融点の最大ピーク(Tm)と密度(d)との関係に関して請求項3に記載の要件から外れている。このため、実施例1〜9に比べ低温シール性に劣ると推定される。
Figure 2004217924
Figure 2004217924
本発明に係る小試ネックイン比を測定するためのスリットダイスの上方向から眺めた図面である。 同上スリットダイスの横方向から眺めた図面である。 同上スリットダイスのA―B断面図である。 冷却ロールおよびエアーノズルの正面から眺めた図面である。 冷却ロールおよびエアーノズルの横方向から眺めた図面である。

Claims (7)

  1. エチレンと、炭素数4〜10のα-オレフィンとの共重合体であって、下記要件[k1]〜[k3]を同時に満たすことを特徴とするエチレン系重合体。
    [k1]190℃における2.16kg荷重でのメルトフローレート(MFR)が1.0〜50g/10分の範囲である。
    [k2]フィルム成形した際のネックイン量の尺度として定義されるLNRが0.6〜1.4の範囲である。
    [k3]160℃における破断点巻き取り速度〔DS(m/分)〕とメルトフローレート(MFR)とが下記関係式(Eq-1)を満たす。
    Figure 2004217924
  2. 下記要件[m1]〜[m3]を同時に満たすことを特徴とする請求項1に記載のエチレン系重合体。
    [m1] 密度(d)が890〜950kg/mの範囲である。
    [m2]190℃における溶融張力〔MT(g)〕と、200℃、角速度1.0rad/秒におけるせん断粘度〔η(Poise)〕との比〔MT/η(g/Poise)〕が2.00×10−4〜9.00×10−4の範囲である。
    [m3] 13C−NMRにより測定された炭素原子1000個あたりのメチル分岐数〔A(/1000C)〕とエチル分岐数〔B(/1000C)〕との和〔(A+B)(/1000C)〕が1.4以下である。
  3. 下記要件[n1]〜(n3)のいずれか1つ以上を満たすことを特徴とする請求項1または2記載のエチレン系重合体。
    [n1] GPCで測定したZ平均分子量(Mz)と重量平均分子量(Mw)との比(Mz/Mw)が10以上である。
    [n2] IRで測定した炭素数1000個あたりの末端ビニル基数〔v(/1000C)〕とGPCで測定した数平均分子量(Mn)とから算出される1分子鎖あたりの末端ビニル基数(V)が0.47/1分子鎖以下である。
    [n3] DSCにおける融点の最大ピーク〔Tm(℃)〕と密度(d)とが、下記関係式を満たす。
    Figure 2004217924
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載のエチレン系重合体を含む熱可塑性樹脂組成物。
  5. 請求項1〜3のいずれかに記載のエチレン系重合体から得られる成形体。
  6. 請求項4に記載の熱可塑性樹脂組成物から得られる成形体。
  7. 成形体がフィルムであることを特徴とする請求項5又は6に記載の成形体。
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