JP2004207404A - 電磁装置及び高電圧発生装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】大型化を抑制した上で良好な出力特性を有し、さらに2次巻線の抵抗値が小さい電磁装置及び高電圧発生装置を提供する。
【解決手段】棒状の磁気コア1、平角導線を磁気コア1に略当接して一層にエッジワイズ巻で巻装した2次巻線2b、及び高耐圧被覆を有して2次巻線2bの上に巻装した1次巻線2aからなる電磁部材Aと、電磁部材Aの周囲を被覆する樹脂3と、磁気コア1の長手方向の面に対向した略半楕円形のU字状に形成されたフェライトからなるヨークコア4とを備え、U字状のヨークコア4は、その開放端側が棒状の磁気コア1の長手方向の面に対向するように取り付けられて閉磁路の磁気回路を構成すると共に、高圧放電ランプLaのランプ口金と接続されるランプ口金電極端子T4が収納されるソケット部Sを略包囲するように配置される。
【選択図】 図1
【解決手段】棒状の磁気コア1、平角導線を磁気コア1に略当接して一層にエッジワイズ巻で巻装した2次巻線2b、及び高耐圧被覆を有して2次巻線2bの上に巻装した1次巻線2aからなる電磁部材Aと、電磁部材Aの周囲を被覆する樹脂3と、磁気コア1の長手方向の面に対向した略半楕円形のU字状に形成されたフェライトからなるヨークコア4とを備え、U字状のヨークコア4は、その開放端側が棒状の磁気コア1の長手方向の面に対向するように取り付けられて閉磁路の磁気回路を構成すると共に、高圧放電ランプLaのランプ口金と接続されるランプ口金電極端子T4が収納されるソケット部Sを略包囲するように配置される。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高輝度放電灯を瞬時に始動、再始動させるために高電圧パルスを発生する電磁装置及び高電圧発生装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
HIDランプ(高輝度放電灯)を始動、点灯させるためにはイグナイタと呼ばれる高電圧を発生する始動装置(高電圧発生装置)が必要であり、高電圧発生装置には低電圧の入力をパルス状の高電圧出力に変換するパルストランスのような電磁装置が用いられている。
【0003】
ところで、近年自動車用の前照灯(ヘッドライト)において、安全性及びエコロジーを重視する観点から従来のハロゲンランプよりも高輝度、低消費電力、長寿命であるHIDランプのような高圧放電ランプが使用されるようになっており、高圧放電ランプの急速な普及に伴ってイグナイタの寸法的な制約(イグナイタのランプソケット内蔵化等)から極めて小型の電磁装置が要望されている。
【0004】
図7,8は、自動車用ヘッドライト向けのソケット内蔵型イグナイタ20の回路図及び外観図を示している。イグナイタ20の基本的な回路構成は、入力端子T1〜T3と、出力端子T4,T5と、入力端子T1(高電圧側)−入力端子T2(低電圧側)間に接続したコンデンサC1と、コンデンサC1に並列接続した放電ギャップGAP(スイッチ要素)とパルストランスPTの1次巻線2aとの直列回路と、入力端子T1−出力端子T4(高電圧側)間に接続したパルストランスPTの2次巻線2bと、1次巻線2a、2次巻線2bが巻装した磁気コア1とから構成され、入力端子T3(低電圧側)−出力端子T5(低電圧側)間は短絡されている。高圧放電ランプLaは出力端子T4−T5間に接続されており、点灯装置50は入力端子T1,T2,T3に接続されている。
【0005】
そして、高圧放電ランプLaが点灯していない状態で点灯装置50から入力端子T1,T2を介して電圧を供給されるとコンデンサC1が充電され、コンデンサC1の両端電圧が上昇して所定値に達したときに放電ギャップGAPがオンすることでパルストランスPTの1次巻線2aに放電ギャップGAPを介してコンデンサC1の充電電荷が放電され、パルストランスPTの2次巻線2bにパルス状の高電圧が発生する。この高電圧パルスが出力端子T4,T5を介して高圧放電ランプLaの両端に印加されて高圧放電ランプLaを絶縁破壊に至らしめて始動するものである。
【0006】
また、イグナイタ20は、図8に示すように高圧放電ランプLaが着脱自在に装着されるソケットと一体に構成されており、内部にイグナイタ20を配置した合成樹脂製のソケット本体23を備えて、ソケット本体23の前面のランプソケット部Sには、略円形のソケット開口部24と、ソケット開口部24の内側略中央に突出した略円筒形の筒部25とが形成されており、この筒部25の内側にランプ口金の中央電極部(図示せず)と接触導通するランプ口金電極端子T4(図7参照)が収納されている。さらに、ランプ口金の外周面に設けられた外側電極部(図示せず)と接触導通する複数の外側電極T5(図7参照)がソケット開口部24の内側に取り付けられており、ランプ口金をソケット開口部24に挿入すると、イグナイタ20と高圧放電ランプLaとが電気的且つ機械的に接続される。
【0007】
そして、上記部品以外に、保護用の抵抗、ツェナダイオード、ノイズフィルター用コンデンサ、チョークコイル等が用いられることもあり、これらのイグナイタ20の部品をソケット本体23内に収納し、且つソケットの一層の小型化、薄型化を実現するには、部品として大きな割合を占めるパルストランスPT(電磁装置)の小型化が大きな条件となっていた。
【0008】
そこで第1の従来例では、パルストランスPTのより小型化、薄型化を狙った提案がされている。これは図9〜11に示すように、ロッド型の磁気コア1に抵抗率(固有抵抗)が大きいNi−Znフェライト材を用い、このコア1に直接、平角導線を一層にエッジワイズ巻して(厚みの薄い箔状の平角導線をその幅広の面が対向するように巻回する)2次巻線2bを形成したものである。平角導線のエッジワイズ巻による巻線占積率の向上に加えて、磁気コア1と2次巻線2bとの間にコイルボビン等の絶縁物が不要となって、より小型、薄型を追求したパルストランスPTとなっている。さらに、高耐圧被覆を有する1次巻線2aを、2次巻線2b上の低圧側に寄せて巻装しており、1次巻線2aと2次巻線2bとの間の絶縁を確保している。また、図12(a),(b)はこの第1の従来例のパルストランスPTを用いた自動車用ヘッドライト向けソケット内蔵型イグナイタの部品配置図を示しており、ソケット本体23の内部にコンデンサC1、放電ギャップGAP、パルストランスPT、フィルター用チョークコイルL1が収納される。(例えば、特許文献1参照。)
次に図13(a),(b),(c)、図14(a),(b)に示す第2の従来例では、パルストランスPTの巻線抵抗値を下げる提案がされている。これは、磁気コアを閉磁路構成とし、磁気コアの結合を向上させて漏れ磁束を抑制することにより、巻線の巻き数を減少させて巻線抵抗値を下げる方法である。図13(a),(b),(c)はそれぞれ第2の従来例によるトランスの一実施の形態を示す平面図、正面図、側面図である。また、図14(a)はこのトランスの縦断面図、図14(b)は図14(a)のE−E断面図である。
【0009】
図13(a),(b),(c),図14(a),(b)において高電圧パルスを出力する2次巻線2bは平角導線を断面が略長円形の筒状をなすように巻かれている。2次巻線2bを覆って取付けられている絶縁カバー30は樹脂製で、断面形状が略長円形の筒状を成している。絶縁カバー30の両端には2次巻線2bの端子台31a、31bが一体に形成され、これらの端子台31a,31bには2次巻線2bの両端を接続する端子32,33が固定される。
【0010】
2次巻線2bの外周には平角導線でなる1次巻線2aが、絶縁上の安全性の向上を図るため、絶縁カバー30の巻芯方向の中央より端部側に巻装される。すなわち、2次巻線2bの1次巻線2a側が2次巻線2bの低圧側となる。
【0011】
筒状の絶縁カバー30の外周には、1次巻線2aの巻き位置および端末引き出しのための位置決め用ガイド34を突出して一体に設けている。
【0012】
図14(a)において、磁気コア1は2次巻線2bとして巻かれたコイルに挿入された棒状コアである。磁気コア1は、断面形状が2次巻線2bのコイルの内周形状よりわずかに小さい略長円形をなす。磁気コア1として高抵抗のフェライトコアを用いることにより、2次巻線2bとの間に絶縁物を介せずに直接組み込むことができる。
【0013】
コの字状の磁気コア5は、磁気コア1の長手方向の面に対向した面5aと、磁気コア1の長手方向の両端面に各々対向した面5b,5cとを有するコの字形状であり、面5b,5cで棒状の磁気コア1の両端から磁気コア1を挟むように絶縁材35を介して取り付けられて閉磁路の磁気回路を構成している。
【0014】
なお、絶縁カバー30と磁気コア1との間は接着剤(図示なし)により固定され、さらに一般的には、1次巻線2aの端末や2次巻線2bの端子32,33以外の部分は樹脂(図示なし)によりモールドされる。(例えば、特許文献2参照。)
また第3の従来例としては、パルストランスの2次巻線に発生する高電圧パルスを、パルストランスの磁気コア内を通してソケットの高圧側の出力端子に印加することで、周囲との絶縁性を高めて小型化を図るものがある。(例えば、特許文献3,4参照。)
【0015】
【特許文献1】
特開2002−93635号公報(3頁右欄第46行〜4頁左欄第34行、6頁左欄第7行〜第11行、図1、図2、図17、図18)
【特許文献2】
特開2000−36416号公報(3頁左欄第37行〜4頁左欄第6行、図1〜図3)
【特許文献3】
特開2001−257087号公報(3頁左欄第20行〜第40行、図2)
【特許文献4】
特開2000−195684号公報(3頁左欄第26行〜第35行、図1、図2)
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
近年、HIDランプを用いた自動車用ヘッドライトは、環境負荷を軽減するという立場から、無水銀化が進みつつある。ここで、無水銀のHIDランプは従来の水銀入りランプよりも低ランプ電圧、高ランプ電流となるランプ特性を有しており、例えば、図7に示した回路構成のイグナイタではパルストランスPTの2次巻線2bにランプ電流が流れるので、従来の2倍程度のランプ電流が流れた場合、2次巻線2bの抵抗成分による温度上昇、効率低下を引き起こすため、より低い巻線抵抗値を有するパルストランスPTが要望されていた。
【0017】
ここで、図11に構造を示す平角導線を用いた従来のパルストランスPTの場合、2次巻線2bの抵抗値を低下させるために2次巻線2bの平角導線の断面積を増加させる方法として、平角導線の厚みを厚くする方法と、巾を広げる方法とが考えられる。平角導線の厚みを厚くする場合は、パルストランスPTが長手方向に非常に長くなることを意味しており、例えば、2次巻線2bの抵抗値を1/3程度にしようとすると、パルストランスPTの長さが2倍以上となり、図12((a),(b)に示すソケット本体23の内部に入らなくなる。
【0018】
また、平角導線の巾を広げる場合は、平角導線の曲率の限界(平角導線がコアに巻装されたときに内周に対する外周の伸び率が大きくなり過ぎると、外周部の絶縁皮膜が劣化し、絶縁性能が低下する)から、平角導線の巾を広くすることは実質不可能である。このように第1の従来例においては、ソケットに入る小型のイグナイタで、無水銀のHIDランプに対応できるように巻線の低抵抗値化を図ることは困難であった。
【0019】
さらに第2の従来例では、コの字状の磁気コア5と棒状の磁気コア1とで閉磁路の磁気回路を構成することで漏れ磁束を抑制でき、同程度のパルス電圧を得るのに2次巻線2bの巻数を低減できるが、コの字状の磁気コア5が追加された分、結局大型化するという問題点がある。
【0020】
また、第3の従来例ではパルストランスの2次巻線からソケットの高圧側の出力端子までの経路はパルストランスの磁気コア内を通しているが、ソケットの周囲には磁気コアはなく、ソケットからのノイズを防ぐことができないという問題点がある。
【0021】
そして、第1〜第3の従来例において、高圧放電ランプを装着して点灯したときに発生するノイズを所定のノイズレベルに抑制する目的で回路内に挿入されるフィルタ用チョークコイルがある場合は、このチョークコイルの抵抗値もパルストランスPTの2次抵抗と同様に低減する必要がある。
【0022】
本発明は、上記事由に鑑みてなされたものであり、その目的は、大型化を抑制した上で良好な出力特性を有し、さらに2次巻線の抵抗値が小さい電磁装置及び高電圧発生装置を提供することにある。
【0023】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、放電ランプのランプ口金が電気的且つ機械的に接続されるランプソケット部を設け、このランプソケット部内に設けた電極を介して高電圧パルスをランプ口金に印加する高電圧発生装置に用いられ、第1の磁気コアと、導線を第1の磁気コアに巻装した1次巻線及び2次巻線と、第1の磁気コアと閉磁路の磁気回路を構成して磁路方向の形状を曲面で形成すると共に高電圧発生装置内のランプソケット部近傍に配置されてランプソケット部の周縁部の少なくとも一部を包囲する第2の磁気コアとを備えて、2次巻線に発生する高電圧パルスをランプ口金に印加することを特徴とする。
【0024】
請求項2の発明は、請求項1において、前記第2の磁気コアは、U字型形状に形成されることを特徴とする。
【0025】
請求項3の発明は、請求項1または2において、前記第2の磁気コアは、前記第1の磁気コアの開放端を覆うガイド部を備えることを特徴とする。
【0026】
請求項4の発明は、少なくともパルストランスと、パルストランスの1次巻線に並列接続されたコンデンサと、コンデンサから1次巻線への放電経路を開閉するスイッチ要素とを収容する装置本体を備え、この装置本体に放電ランプのランプ口金が電気的且つ機械的に接続されるランプソケット部を設けて、このランプソケット部内に設けた電極を介して前記パルストランスの2次巻線に発生する高電圧パルスをランプ口金に印加する高電圧発生装置において、前記パルストランスは、第1の磁気コアと、導線を第1の磁気コアに巻装した1次巻線及び2次巻線と、第1の磁気コアと閉磁路の磁気回路を構成して磁路方向の形状を曲面で形成すると共に装置本体内のランプソケット部近傍に配置されてランプソケット部の周縁部の少なくとも一部を包囲する第2の磁気コアとを具備することを特徴とする。
【0027】
請求項5の発明は、請求項4において、前記第2の磁気コアは、U字型形状に形成されることを特徴とする。
【0028】
請求項6の発明は、請求項4または5において、前記第2の磁気コアは、前記第1の磁気コアの開放端を覆うガイド部を備えることを特徴とする。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0030】
図1〜3は、本実施形態のパルストランスPT(電磁装置)を用いた自動車用ヘッドライト向けソケット内蔵型イグナイタ(高電圧発生装置)の部品配置図を示しており、ソケット本体(装置本体)23の内部にコンデンサC1、放電ギャップGAP、パルストランスPTが収納されて、その外形及び回路構成は従来例同様に図7,8で示される。
【0031】
本実施形態の電磁装置(パルストランスPT)の構成は図1〜3に示すように、棒状の磁気コア1(第1の磁気コア)、平角導線を磁気コア1に略当接して一層にエッジワイズ巻で巻装した2次巻線2b、及び高耐圧被覆を有して2次巻線2bの上に巻装した1次巻線2aからなる電磁部材Aと、電磁部材Aの周囲を被覆する樹脂3と、磁気コア1の長手方向の面に対向した略半楕円形のU字状に形成されたフェライトからなるヨークコア4(第2の磁気コア)とを備える。1次巻線2aは、2次巻線2b上の低圧側に寄せて巻装しており、1次巻線2aと2次巻線2bとの間の絶縁を確保して、第1の従来例と同様の絶縁性能を有している。そして、磁気コア1として高抵抗のフェライトコアを用いることにより、2次巻線2bとの間に絶縁物を介せずに直接組み込むことができる。
【0032】
ここで、U字状のヨークコア4は、その開放端側が棒状の磁気コア1の長手方向の面に対向するように取り付けられて、磁気コア1とで閉磁路の磁気回路を構成すると共に、高圧放電ランプLaのランプ口金と接続されるランプ口金電極端子T4が収納されるソケット部Sを略包囲するように配置される。
【0033】
樹脂3は、例えば不飽和ポリエステル樹脂や液晶ポリマー樹脂等を用いて、電磁部材Aの周囲を略直方体状に覆うように成形されたもので、このとき樹脂3は巻線間にも充填されている。
【0034】
また、電磁部材Aのみが樹脂3で全体を覆われ、ヨークコア4は樹脂3で覆われていないので、U字状のヨークコア4のように強度的に弱いコーナ部を有する構造であっても、樹脂3の膨張・収縮の影響でコアが割れることを防止できる。
【0035】
さらに本実施形態では、パルストランスPTの後端側に、1次巻線2aの高圧側端末に接続した端子、1次巻線2aの低圧側端末に接続した端子、2次巻線2bの低圧側端末に接続した端子を備えて、ソケット本体23の内部でコンデンサC1や放電ギャップGAPに接続される。パルストランスPTの前端側には、2次巻線2bの高圧側端末に接続したランプ口金電極端子T4を備えて、ランプ口金電極端子T4はソケットに装着された高圧放電ランプLaのランプ口金と接続される。
【0036】
したがって、配線は端子間で行うことができるので、高電圧発生装置の配線、組み立てが容易となり、さらにはコンデンサC1,放電ギャップGAP,パルストランスPT間の絶縁を考慮した配線も容易となる。
【0037】
また、ソケット本体23の前面のランプソケット部Sは、略円形のソケット開口部24と、ソケット開口部24の内側略中央に突出した略円筒形の筒部25とが形成されており(図3参照)、この筒部25の内側にランプ口金の中央電極部(図示せず)と接触導通するランプ口金電極端子T4が収納されている。さらに、ランプ口金の外周面に設けられた外側電極部(図示せず)と接触導通する複数の外側電極T5がソケット開口部24の内側に取り付けられており、ランプ口金をソケット開口部24に挿入すると、高電圧発生装置と高圧放電ランプとが電気的且つ機械的に接続される。
【0038】
次に、本実施形態と、第2の従来例との各パルストランスPTの出力特性比較結果について説明する。本比較試験で用いたパルストランスPTは本実施形態1及び第2の従来例共に、棒状の磁気コア1をΦ8mm径、長さ30mmのNi−Znフェライトとし、1次巻線2aの巻数(1次巻数)N1は4ターン、2次巻線2bの巻数(2次巻数)N2は130ターンとして、2次巻線2bの平角導線は厚み150μm、幅1.2mmとした。このときの2次巻線2bの抵抗値は0.4Ω程度と小さくなっている。
【0039】
また、第2の従来例では磁気コア5を、Φ8mm径相当のコア断面を有するNi−Znフェライトからなるコの字状とし、磁気コア1の長手方向の両端面と、磁気コア1の両端面に各々対向した磁気コア5の面5b,5cとの間の各ギャップは、1.5mmとしている。
【0040】
本実施形態ではヨークコア4を、Φ8mm径相当のコア断面を有するNi−ZnフェライトからなるU字形状とし、磁気コア1の長手方向の両端部と、ヨークコア4の両開放端部との間の各ギャップは2.5mmとしている。
【0041】
まず、パルストランスPTの1次巻線2aへの入力電圧を800Vとしたとき、第2の従来例における2次巻線2bでのパルス出力電圧特性は、パルスピーク電圧Vopが30kV程度、パルスの半値幅τが150ns程度であった。
【0042】
対して本実施形態においては、パルスピーク電圧Vopが32kV程度、パルスの半値幅τが150ns程度であり、パルスの半値幅τは同程度であるもののパルスピーク電圧Vopは第2の従来例に比べて大きくなっていることが確認された。
【0043】
これは、ヨークコア4の形状が略半楕円形のU字状であり、第2の従来例のコの字状の磁気コア5のように角張ったエッジコーナー部が無く、コの字状の磁気コア5に比べてコア中に発生する磁束の集中が緩和されてコアロスが低減できたためと考えられる。
【0044】
このように本実施形態では、2次巻線2bの抵抗値を0.4Ω程度と非常に小さくしても、パルスピーク電圧Vopを高くすることができる。
【0045】
また、前面から見たソケット本体23のソケット部S側の端部形状は、端部に近付くにつれて幅が狭くなっていく半円形状であるために、ソケット本体23のソケット部S側のスペースは従来、コンデンサC1、放電ギャップGAP等の他の部品は配置不可能であり、且つ高電圧部位に近いため高絶縁性が要求される箇所であった。しかし本実施形態では、このスペースにU字状のヨークコア4の湾曲部をソケット本体23の半円形状に沿って配置しているので、第2の従来例のようにコの字状の磁気コア5が追加された分、ソケット本体23を大型化する必要もなく、2次巻線2bの抵抗値を小さくすることができる
さらに本実施形態では、ヨークコア4が、高圧放電ランプLaのランプ口金と接触導通するランプ口金電極端子T4が収納されているソケット部Sを略包囲するように配置されるため、高圧放電ランプLaを点灯させるときに発生するノイズを抑制することができ、所定のノイズレベルに抑えるために従来必要としていたフィルタ用のチョークコイルL1(図12参照)をなくす、あるいは小さくすることができ、そのフィルタ用のチョークコイルL1の抵抗値を小さくすることができる。
【0046】
このように、高電圧発生装置で用いられる本実施形態のパルストランスPTは、大型化を抑制した上で従来と同等以上の出力パルス特性を有し、且つ2次巻線2bの抵抗値を小さくすることができるものである。
【0047】
また、ヨークコア4は図4に示す略半楕円形のU字状としているが、図5に示すようにU字状に形成したヨークコア4の一方の端部に矩形のガイド部4aを立設し、ガイド部4aが磁気コア1の一方の開放端を覆うようにすれば、磁気コア1とヨークコア4との間の漏れ磁束がさらに抑制されるので、出力パルス特性をさらに向上させることができると共に、2次巻線2bのさらなる低抵抗化を図ることができる。また、図6に示すようにU字状に形成したヨークコア4の両端部に矩形のガイド部4a,4bを各々立設し、ガイド部4a,4bが磁気コア1の両開放端を覆うようにすれば、図5に比べてさらなる出力パルス特性の向上、及び2次巻線2bのさらなる低抵抗化を図ることができる。
【0048】
【発明の効果】
請求項1の発明は、放電ランプのランプ口金が電気的且つ機械的に接続されるランプソケット部を設け、このランプソケット部内に設けた電極を介して高電圧パルスをランプ口金に印加する高電圧発生装置に用いられ、第1の磁気コアと、導線を第1の磁気コアに巻装した1次巻線及び2次巻線と、第1の磁気コアと閉磁路の磁気回路を構成して磁路方向の形状を曲面で形成すると共に高電圧発生装置内のランプソケット部近傍に配置されてランプソケット部の周縁部の少なくとも一部を包囲する第2の磁気コアとを備えて、2次巻線に発生する高電圧パルスをランプ口金に印加するので、2次巻線の抵抗値を小さくしてもパルスピーク電圧を高くすることができ、さらにランプソケット部の周縁部を包囲する第2の磁気コアによってノイズの発生を抑制することで、高電圧発生装置に備えたフィルタ用のチョークコイルを小さくして、チョークコイルの抵抗値を低減できるという効果がある。すなわち、高電圧発生装置の大型化を抑制した上で良好な出力特性を有し、さらに2次巻線の抵抗値を小さくできるものである。
【0049】
請求項2の発明は、請求項1において、前記第2の磁気コアは、U字型形状に形成されるので、角張ったエッジコーナー部が無く、第2の磁気コア中に発生する磁束の集中が緩和されてコアロスが低減できるという効果がある。
【0050】
請求項3の発明は、請求項1または2において、前記第2の磁気コアは、前記第1の磁気コアの開放端を覆うガイド部を備えるので、第1の磁気コアと第2の磁気コアとの間の漏れ磁束が抑制されて、出力パルス特性をさらに向上させることができると共に、2次巻線のさらなる低抵抗化を図ることができるという効果がある。
【0051】
請求項4の発明は、少なくともパルストランスと、パルストランスの1次巻線に並列接続されたコンデンサと、コンデンサから1次巻線への放電経路を開閉するスイッチ要素とを収容する装置本体を備え、この装置本体に放電ランプのランプ口金が電気的且つ機械的に接続されるランプソケット部を設けて、このランプソケット部内に設けた電極を介して前記パルストランスの2次巻線に発生する高電圧パルスをランプ口金に印加する高電圧発生装置において、前記パルストランスは、第1の磁気コアと、導線を第1の磁気コアに巻装した1次巻線及び2次巻線と、第1の磁気コアと閉磁路の磁気回路を構成して磁路方向の形状を曲面で形成すると共に装置本体内のランプソケット部近傍に配置されてランプソケット部の周縁部の少なくとも一部を包囲する第2の磁気コアとを具備するので、2次巻線の抵抗値を小さくしてもパルスピーク電圧を高くすることができ、さらにランプソケット部の周縁部を包囲する第2の磁気コアによってノイズの発生を抑制することで、本装置に備えたフィルタ用のチョークコイルを小さくして、チョークコイルの抵抗値を低減できるという効果がある。すなわち、大型化を抑制した上で良好な出力特性を有し、さらに2次巻線の抵抗値を小さくできるものである。
【0052】
請求項5の発明は、請求項4において、前記第2の磁気コアは、U字型形状に形成されるので、角張ったエッジコーナー部が無く、第2の磁気コア中に発生する磁束の集中が緩和されてコアロスが低減できるという効果がある。
【0053】
請求項6の発明は、請求項4または5において、前記第2の磁気コアは、前記第1の磁気コアの開放端を覆うガイド部を備えるので、第1の磁気コアと第2の磁気コアとの間の漏れ磁束が抑制されて、出力パルス特性をさらに向上させることができると共に、2次巻線のさらなる低抵抗化を図ることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態のパルストランスを用いたソケット内蔵型イグナイタを後面から見た部品配置図である。
【図2】同上の前面から見た部品配置図である。
【図3】同上の側面から見た部品配置図である。
【図4】同上のヨークコア4の外観図である。
【図5】同上の一端にガイドを設けたヨークコア4の外観図である。
【図6】同上の両端にガイドを設けたヨークコア4の外観図である。
【図7】イグナイタの回路図である。
【図8】イグナイタの外観図である。
【図9】第1の従来例の1次巻線を省略した電磁装置の構造を示す図である。
【図10】同上の2次巻線の拡大図である。
【図11】同上の構造を示す図である。
【図12】(a)第1の従来例のソケット内蔵型イグナイタを前面から見た部品配置図である。
(b)同上の側面から見た部品配置図である。
【図13】(a)従来例2のトランスの形態を示す平面図である。
(b)同上の正面図である。
(c)同上の側面図である。
【図14】(a)同上の縦断面図である。
(b)同上のE−E断面図である。
【符号の説明】
1 棒状の磁気コア
2a 1次巻線
2b 2次巻線
3 樹脂
4 U字状のヨークコア
23 ソケット本体
PT パルストランス
C1 コンデンサ
GAP 放電ギャップ
【発明の属する技術分野】
本発明は、高輝度放電灯を瞬時に始動、再始動させるために高電圧パルスを発生する電磁装置及び高電圧発生装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
HIDランプ(高輝度放電灯)を始動、点灯させるためにはイグナイタと呼ばれる高電圧を発生する始動装置(高電圧発生装置)が必要であり、高電圧発生装置には低電圧の入力をパルス状の高電圧出力に変換するパルストランスのような電磁装置が用いられている。
【0003】
ところで、近年自動車用の前照灯(ヘッドライト)において、安全性及びエコロジーを重視する観点から従来のハロゲンランプよりも高輝度、低消費電力、長寿命であるHIDランプのような高圧放電ランプが使用されるようになっており、高圧放電ランプの急速な普及に伴ってイグナイタの寸法的な制約(イグナイタのランプソケット内蔵化等)から極めて小型の電磁装置が要望されている。
【0004】
図7,8は、自動車用ヘッドライト向けのソケット内蔵型イグナイタ20の回路図及び外観図を示している。イグナイタ20の基本的な回路構成は、入力端子T1〜T3と、出力端子T4,T5と、入力端子T1(高電圧側)−入力端子T2(低電圧側)間に接続したコンデンサC1と、コンデンサC1に並列接続した放電ギャップGAP(スイッチ要素)とパルストランスPTの1次巻線2aとの直列回路と、入力端子T1−出力端子T4(高電圧側)間に接続したパルストランスPTの2次巻線2bと、1次巻線2a、2次巻線2bが巻装した磁気コア1とから構成され、入力端子T3(低電圧側)−出力端子T5(低電圧側)間は短絡されている。高圧放電ランプLaは出力端子T4−T5間に接続されており、点灯装置50は入力端子T1,T2,T3に接続されている。
【0005】
そして、高圧放電ランプLaが点灯していない状態で点灯装置50から入力端子T1,T2を介して電圧を供給されるとコンデンサC1が充電され、コンデンサC1の両端電圧が上昇して所定値に達したときに放電ギャップGAPがオンすることでパルストランスPTの1次巻線2aに放電ギャップGAPを介してコンデンサC1の充電電荷が放電され、パルストランスPTの2次巻線2bにパルス状の高電圧が発生する。この高電圧パルスが出力端子T4,T5を介して高圧放電ランプLaの両端に印加されて高圧放電ランプLaを絶縁破壊に至らしめて始動するものである。
【0006】
また、イグナイタ20は、図8に示すように高圧放電ランプLaが着脱自在に装着されるソケットと一体に構成されており、内部にイグナイタ20を配置した合成樹脂製のソケット本体23を備えて、ソケット本体23の前面のランプソケット部Sには、略円形のソケット開口部24と、ソケット開口部24の内側略中央に突出した略円筒形の筒部25とが形成されており、この筒部25の内側にランプ口金の中央電極部(図示せず)と接触導通するランプ口金電極端子T4(図7参照)が収納されている。さらに、ランプ口金の外周面に設けられた外側電極部(図示せず)と接触導通する複数の外側電極T5(図7参照)がソケット開口部24の内側に取り付けられており、ランプ口金をソケット開口部24に挿入すると、イグナイタ20と高圧放電ランプLaとが電気的且つ機械的に接続される。
【0007】
そして、上記部品以外に、保護用の抵抗、ツェナダイオード、ノイズフィルター用コンデンサ、チョークコイル等が用いられることもあり、これらのイグナイタ20の部品をソケット本体23内に収納し、且つソケットの一層の小型化、薄型化を実現するには、部品として大きな割合を占めるパルストランスPT(電磁装置)の小型化が大きな条件となっていた。
【0008】
そこで第1の従来例では、パルストランスPTのより小型化、薄型化を狙った提案がされている。これは図9〜11に示すように、ロッド型の磁気コア1に抵抗率(固有抵抗)が大きいNi−Znフェライト材を用い、このコア1に直接、平角導線を一層にエッジワイズ巻して(厚みの薄い箔状の平角導線をその幅広の面が対向するように巻回する)2次巻線2bを形成したものである。平角導線のエッジワイズ巻による巻線占積率の向上に加えて、磁気コア1と2次巻線2bとの間にコイルボビン等の絶縁物が不要となって、より小型、薄型を追求したパルストランスPTとなっている。さらに、高耐圧被覆を有する1次巻線2aを、2次巻線2b上の低圧側に寄せて巻装しており、1次巻線2aと2次巻線2bとの間の絶縁を確保している。また、図12(a),(b)はこの第1の従来例のパルストランスPTを用いた自動車用ヘッドライト向けソケット内蔵型イグナイタの部品配置図を示しており、ソケット本体23の内部にコンデンサC1、放電ギャップGAP、パルストランスPT、フィルター用チョークコイルL1が収納される。(例えば、特許文献1参照。)
次に図13(a),(b),(c)、図14(a),(b)に示す第2の従来例では、パルストランスPTの巻線抵抗値を下げる提案がされている。これは、磁気コアを閉磁路構成とし、磁気コアの結合を向上させて漏れ磁束を抑制することにより、巻線の巻き数を減少させて巻線抵抗値を下げる方法である。図13(a),(b),(c)はそれぞれ第2の従来例によるトランスの一実施の形態を示す平面図、正面図、側面図である。また、図14(a)はこのトランスの縦断面図、図14(b)は図14(a)のE−E断面図である。
【0009】
図13(a),(b),(c),図14(a),(b)において高電圧パルスを出力する2次巻線2bは平角導線を断面が略長円形の筒状をなすように巻かれている。2次巻線2bを覆って取付けられている絶縁カバー30は樹脂製で、断面形状が略長円形の筒状を成している。絶縁カバー30の両端には2次巻線2bの端子台31a、31bが一体に形成され、これらの端子台31a,31bには2次巻線2bの両端を接続する端子32,33が固定される。
【0010】
2次巻線2bの外周には平角導線でなる1次巻線2aが、絶縁上の安全性の向上を図るため、絶縁カバー30の巻芯方向の中央より端部側に巻装される。すなわち、2次巻線2bの1次巻線2a側が2次巻線2bの低圧側となる。
【0011】
筒状の絶縁カバー30の外周には、1次巻線2aの巻き位置および端末引き出しのための位置決め用ガイド34を突出して一体に設けている。
【0012】
図14(a)において、磁気コア1は2次巻線2bとして巻かれたコイルに挿入された棒状コアである。磁気コア1は、断面形状が2次巻線2bのコイルの内周形状よりわずかに小さい略長円形をなす。磁気コア1として高抵抗のフェライトコアを用いることにより、2次巻線2bとの間に絶縁物を介せずに直接組み込むことができる。
【0013】
コの字状の磁気コア5は、磁気コア1の長手方向の面に対向した面5aと、磁気コア1の長手方向の両端面に各々対向した面5b,5cとを有するコの字形状であり、面5b,5cで棒状の磁気コア1の両端から磁気コア1を挟むように絶縁材35を介して取り付けられて閉磁路の磁気回路を構成している。
【0014】
なお、絶縁カバー30と磁気コア1との間は接着剤(図示なし)により固定され、さらに一般的には、1次巻線2aの端末や2次巻線2bの端子32,33以外の部分は樹脂(図示なし)によりモールドされる。(例えば、特許文献2参照。)
また第3の従来例としては、パルストランスの2次巻線に発生する高電圧パルスを、パルストランスの磁気コア内を通してソケットの高圧側の出力端子に印加することで、周囲との絶縁性を高めて小型化を図るものがある。(例えば、特許文献3,4参照。)
【0015】
【特許文献1】
特開2002−93635号公報(3頁右欄第46行〜4頁左欄第34行、6頁左欄第7行〜第11行、図1、図2、図17、図18)
【特許文献2】
特開2000−36416号公報(3頁左欄第37行〜4頁左欄第6行、図1〜図3)
【特許文献3】
特開2001−257087号公報(3頁左欄第20行〜第40行、図2)
【特許文献4】
特開2000−195684号公報(3頁左欄第26行〜第35行、図1、図2)
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
近年、HIDランプを用いた自動車用ヘッドライトは、環境負荷を軽減するという立場から、無水銀化が進みつつある。ここで、無水銀のHIDランプは従来の水銀入りランプよりも低ランプ電圧、高ランプ電流となるランプ特性を有しており、例えば、図7に示した回路構成のイグナイタではパルストランスPTの2次巻線2bにランプ電流が流れるので、従来の2倍程度のランプ電流が流れた場合、2次巻線2bの抵抗成分による温度上昇、効率低下を引き起こすため、より低い巻線抵抗値を有するパルストランスPTが要望されていた。
【0017】
ここで、図11に構造を示す平角導線を用いた従来のパルストランスPTの場合、2次巻線2bの抵抗値を低下させるために2次巻線2bの平角導線の断面積を増加させる方法として、平角導線の厚みを厚くする方法と、巾を広げる方法とが考えられる。平角導線の厚みを厚くする場合は、パルストランスPTが長手方向に非常に長くなることを意味しており、例えば、2次巻線2bの抵抗値を1/3程度にしようとすると、パルストランスPTの長さが2倍以上となり、図12((a),(b)に示すソケット本体23の内部に入らなくなる。
【0018】
また、平角導線の巾を広げる場合は、平角導線の曲率の限界(平角導線がコアに巻装されたときに内周に対する外周の伸び率が大きくなり過ぎると、外周部の絶縁皮膜が劣化し、絶縁性能が低下する)から、平角導線の巾を広くすることは実質不可能である。このように第1の従来例においては、ソケットに入る小型のイグナイタで、無水銀のHIDランプに対応できるように巻線の低抵抗値化を図ることは困難であった。
【0019】
さらに第2の従来例では、コの字状の磁気コア5と棒状の磁気コア1とで閉磁路の磁気回路を構成することで漏れ磁束を抑制でき、同程度のパルス電圧を得るのに2次巻線2bの巻数を低減できるが、コの字状の磁気コア5が追加された分、結局大型化するという問題点がある。
【0020】
また、第3の従来例ではパルストランスの2次巻線からソケットの高圧側の出力端子までの経路はパルストランスの磁気コア内を通しているが、ソケットの周囲には磁気コアはなく、ソケットからのノイズを防ぐことができないという問題点がある。
【0021】
そして、第1〜第3の従来例において、高圧放電ランプを装着して点灯したときに発生するノイズを所定のノイズレベルに抑制する目的で回路内に挿入されるフィルタ用チョークコイルがある場合は、このチョークコイルの抵抗値もパルストランスPTの2次抵抗と同様に低減する必要がある。
【0022】
本発明は、上記事由に鑑みてなされたものであり、その目的は、大型化を抑制した上で良好な出力特性を有し、さらに2次巻線の抵抗値が小さい電磁装置及び高電圧発生装置を提供することにある。
【0023】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、放電ランプのランプ口金が電気的且つ機械的に接続されるランプソケット部を設け、このランプソケット部内に設けた電極を介して高電圧パルスをランプ口金に印加する高電圧発生装置に用いられ、第1の磁気コアと、導線を第1の磁気コアに巻装した1次巻線及び2次巻線と、第1の磁気コアと閉磁路の磁気回路を構成して磁路方向の形状を曲面で形成すると共に高電圧発生装置内のランプソケット部近傍に配置されてランプソケット部の周縁部の少なくとも一部を包囲する第2の磁気コアとを備えて、2次巻線に発生する高電圧パルスをランプ口金に印加することを特徴とする。
【0024】
請求項2の発明は、請求項1において、前記第2の磁気コアは、U字型形状に形成されることを特徴とする。
【0025】
請求項3の発明は、請求項1または2において、前記第2の磁気コアは、前記第1の磁気コアの開放端を覆うガイド部を備えることを特徴とする。
【0026】
請求項4の発明は、少なくともパルストランスと、パルストランスの1次巻線に並列接続されたコンデンサと、コンデンサから1次巻線への放電経路を開閉するスイッチ要素とを収容する装置本体を備え、この装置本体に放電ランプのランプ口金が電気的且つ機械的に接続されるランプソケット部を設けて、このランプソケット部内に設けた電極を介して前記パルストランスの2次巻線に発生する高電圧パルスをランプ口金に印加する高電圧発生装置において、前記パルストランスは、第1の磁気コアと、導線を第1の磁気コアに巻装した1次巻線及び2次巻線と、第1の磁気コアと閉磁路の磁気回路を構成して磁路方向の形状を曲面で形成すると共に装置本体内のランプソケット部近傍に配置されてランプソケット部の周縁部の少なくとも一部を包囲する第2の磁気コアとを具備することを特徴とする。
【0027】
請求項5の発明は、請求項4において、前記第2の磁気コアは、U字型形状に形成されることを特徴とする。
【0028】
請求項6の発明は、請求項4または5において、前記第2の磁気コアは、前記第1の磁気コアの開放端を覆うガイド部を備えることを特徴とする。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0030】
図1〜3は、本実施形態のパルストランスPT(電磁装置)を用いた自動車用ヘッドライト向けソケット内蔵型イグナイタ(高電圧発生装置)の部品配置図を示しており、ソケット本体(装置本体)23の内部にコンデンサC1、放電ギャップGAP、パルストランスPTが収納されて、その外形及び回路構成は従来例同様に図7,8で示される。
【0031】
本実施形態の電磁装置(パルストランスPT)の構成は図1〜3に示すように、棒状の磁気コア1(第1の磁気コア)、平角導線を磁気コア1に略当接して一層にエッジワイズ巻で巻装した2次巻線2b、及び高耐圧被覆を有して2次巻線2bの上に巻装した1次巻線2aからなる電磁部材Aと、電磁部材Aの周囲を被覆する樹脂3と、磁気コア1の長手方向の面に対向した略半楕円形のU字状に形成されたフェライトからなるヨークコア4(第2の磁気コア)とを備える。1次巻線2aは、2次巻線2b上の低圧側に寄せて巻装しており、1次巻線2aと2次巻線2bとの間の絶縁を確保して、第1の従来例と同様の絶縁性能を有している。そして、磁気コア1として高抵抗のフェライトコアを用いることにより、2次巻線2bとの間に絶縁物を介せずに直接組み込むことができる。
【0032】
ここで、U字状のヨークコア4は、その開放端側が棒状の磁気コア1の長手方向の面に対向するように取り付けられて、磁気コア1とで閉磁路の磁気回路を構成すると共に、高圧放電ランプLaのランプ口金と接続されるランプ口金電極端子T4が収納されるソケット部Sを略包囲するように配置される。
【0033】
樹脂3は、例えば不飽和ポリエステル樹脂や液晶ポリマー樹脂等を用いて、電磁部材Aの周囲を略直方体状に覆うように成形されたもので、このとき樹脂3は巻線間にも充填されている。
【0034】
また、電磁部材Aのみが樹脂3で全体を覆われ、ヨークコア4は樹脂3で覆われていないので、U字状のヨークコア4のように強度的に弱いコーナ部を有する構造であっても、樹脂3の膨張・収縮の影響でコアが割れることを防止できる。
【0035】
さらに本実施形態では、パルストランスPTの後端側に、1次巻線2aの高圧側端末に接続した端子、1次巻線2aの低圧側端末に接続した端子、2次巻線2bの低圧側端末に接続した端子を備えて、ソケット本体23の内部でコンデンサC1や放電ギャップGAPに接続される。パルストランスPTの前端側には、2次巻線2bの高圧側端末に接続したランプ口金電極端子T4を備えて、ランプ口金電極端子T4はソケットに装着された高圧放電ランプLaのランプ口金と接続される。
【0036】
したがって、配線は端子間で行うことができるので、高電圧発生装置の配線、組み立てが容易となり、さらにはコンデンサC1,放電ギャップGAP,パルストランスPT間の絶縁を考慮した配線も容易となる。
【0037】
また、ソケット本体23の前面のランプソケット部Sは、略円形のソケット開口部24と、ソケット開口部24の内側略中央に突出した略円筒形の筒部25とが形成されており(図3参照)、この筒部25の内側にランプ口金の中央電極部(図示せず)と接触導通するランプ口金電極端子T4が収納されている。さらに、ランプ口金の外周面に設けられた外側電極部(図示せず)と接触導通する複数の外側電極T5がソケット開口部24の内側に取り付けられており、ランプ口金をソケット開口部24に挿入すると、高電圧発生装置と高圧放電ランプとが電気的且つ機械的に接続される。
【0038】
次に、本実施形態と、第2の従来例との各パルストランスPTの出力特性比較結果について説明する。本比較試験で用いたパルストランスPTは本実施形態1及び第2の従来例共に、棒状の磁気コア1をΦ8mm径、長さ30mmのNi−Znフェライトとし、1次巻線2aの巻数(1次巻数)N1は4ターン、2次巻線2bの巻数(2次巻数)N2は130ターンとして、2次巻線2bの平角導線は厚み150μm、幅1.2mmとした。このときの2次巻線2bの抵抗値は0.4Ω程度と小さくなっている。
【0039】
また、第2の従来例では磁気コア5を、Φ8mm径相当のコア断面を有するNi−Znフェライトからなるコの字状とし、磁気コア1の長手方向の両端面と、磁気コア1の両端面に各々対向した磁気コア5の面5b,5cとの間の各ギャップは、1.5mmとしている。
【0040】
本実施形態ではヨークコア4を、Φ8mm径相当のコア断面を有するNi−ZnフェライトからなるU字形状とし、磁気コア1の長手方向の両端部と、ヨークコア4の両開放端部との間の各ギャップは2.5mmとしている。
【0041】
まず、パルストランスPTの1次巻線2aへの入力電圧を800Vとしたとき、第2の従来例における2次巻線2bでのパルス出力電圧特性は、パルスピーク電圧Vopが30kV程度、パルスの半値幅τが150ns程度であった。
【0042】
対して本実施形態においては、パルスピーク電圧Vopが32kV程度、パルスの半値幅τが150ns程度であり、パルスの半値幅τは同程度であるもののパルスピーク電圧Vopは第2の従来例に比べて大きくなっていることが確認された。
【0043】
これは、ヨークコア4の形状が略半楕円形のU字状であり、第2の従来例のコの字状の磁気コア5のように角張ったエッジコーナー部が無く、コの字状の磁気コア5に比べてコア中に発生する磁束の集中が緩和されてコアロスが低減できたためと考えられる。
【0044】
このように本実施形態では、2次巻線2bの抵抗値を0.4Ω程度と非常に小さくしても、パルスピーク電圧Vopを高くすることができる。
【0045】
また、前面から見たソケット本体23のソケット部S側の端部形状は、端部に近付くにつれて幅が狭くなっていく半円形状であるために、ソケット本体23のソケット部S側のスペースは従来、コンデンサC1、放電ギャップGAP等の他の部品は配置不可能であり、且つ高電圧部位に近いため高絶縁性が要求される箇所であった。しかし本実施形態では、このスペースにU字状のヨークコア4の湾曲部をソケット本体23の半円形状に沿って配置しているので、第2の従来例のようにコの字状の磁気コア5が追加された分、ソケット本体23を大型化する必要もなく、2次巻線2bの抵抗値を小さくすることができる
さらに本実施形態では、ヨークコア4が、高圧放電ランプLaのランプ口金と接触導通するランプ口金電極端子T4が収納されているソケット部Sを略包囲するように配置されるため、高圧放電ランプLaを点灯させるときに発生するノイズを抑制することができ、所定のノイズレベルに抑えるために従来必要としていたフィルタ用のチョークコイルL1(図12参照)をなくす、あるいは小さくすることができ、そのフィルタ用のチョークコイルL1の抵抗値を小さくすることができる。
【0046】
このように、高電圧発生装置で用いられる本実施形態のパルストランスPTは、大型化を抑制した上で従来と同等以上の出力パルス特性を有し、且つ2次巻線2bの抵抗値を小さくすることができるものである。
【0047】
また、ヨークコア4は図4に示す略半楕円形のU字状としているが、図5に示すようにU字状に形成したヨークコア4の一方の端部に矩形のガイド部4aを立設し、ガイド部4aが磁気コア1の一方の開放端を覆うようにすれば、磁気コア1とヨークコア4との間の漏れ磁束がさらに抑制されるので、出力パルス特性をさらに向上させることができると共に、2次巻線2bのさらなる低抵抗化を図ることができる。また、図6に示すようにU字状に形成したヨークコア4の両端部に矩形のガイド部4a,4bを各々立設し、ガイド部4a,4bが磁気コア1の両開放端を覆うようにすれば、図5に比べてさらなる出力パルス特性の向上、及び2次巻線2bのさらなる低抵抗化を図ることができる。
【0048】
【発明の効果】
請求項1の発明は、放電ランプのランプ口金が電気的且つ機械的に接続されるランプソケット部を設け、このランプソケット部内に設けた電極を介して高電圧パルスをランプ口金に印加する高電圧発生装置に用いられ、第1の磁気コアと、導線を第1の磁気コアに巻装した1次巻線及び2次巻線と、第1の磁気コアと閉磁路の磁気回路を構成して磁路方向の形状を曲面で形成すると共に高電圧発生装置内のランプソケット部近傍に配置されてランプソケット部の周縁部の少なくとも一部を包囲する第2の磁気コアとを備えて、2次巻線に発生する高電圧パルスをランプ口金に印加するので、2次巻線の抵抗値を小さくしてもパルスピーク電圧を高くすることができ、さらにランプソケット部の周縁部を包囲する第2の磁気コアによってノイズの発生を抑制することで、高電圧発生装置に備えたフィルタ用のチョークコイルを小さくして、チョークコイルの抵抗値を低減できるという効果がある。すなわち、高電圧発生装置の大型化を抑制した上で良好な出力特性を有し、さらに2次巻線の抵抗値を小さくできるものである。
【0049】
請求項2の発明は、請求項1において、前記第2の磁気コアは、U字型形状に形成されるので、角張ったエッジコーナー部が無く、第2の磁気コア中に発生する磁束の集中が緩和されてコアロスが低減できるという効果がある。
【0050】
請求項3の発明は、請求項1または2において、前記第2の磁気コアは、前記第1の磁気コアの開放端を覆うガイド部を備えるので、第1の磁気コアと第2の磁気コアとの間の漏れ磁束が抑制されて、出力パルス特性をさらに向上させることができると共に、2次巻線のさらなる低抵抗化を図ることができるという効果がある。
【0051】
請求項4の発明は、少なくともパルストランスと、パルストランスの1次巻線に並列接続されたコンデンサと、コンデンサから1次巻線への放電経路を開閉するスイッチ要素とを収容する装置本体を備え、この装置本体に放電ランプのランプ口金が電気的且つ機械的に接続されるランプソケット部を設けて、このランプソケット部内に設けた電極を介して前記パルストランスの2次巻線に発生する高電圧パルスをランプ口金に印加する高電圧発生装置において、前記パルストランスは、第1の磁気コアと、導線を第1の磁気コアに巻装した1次巻線及び2次巻線と、第1の磁気コアと閉磁路の磁気回路を構成して磁路方向の形状を曲面で形成すると共に装置本体内のランプソケット部近傍に配置されてランプソケット部の周縁部の少なくとも一部を包囲する第2の磁気コアとを具備するので、2次巻線の抵抗値を小さくしてもパルスピーク電圧を高くすることができ、さらにランプソケット部の周縁部を包囲する第2の磁気コアによってノイズの発生を抑制することで、本装置に備えたフィルタ用のチョークコイルを小さくして、チョークコイルの抵抗値を低減できるという効果がある。すなわち、大型化を抑制した上で良好な出力特性を有し、さらに2次巻線の抵抗値を小さくできるものである。
【0052】
請求項5の発明は、請求項4において、前記第2の磁気コアは、U字型形状に形成されるので、角張ったエッジコーナー部が無く、第2の磁気コア中に発生する磁束の集中が緩和されてコアロスが低減できるという効果がある。
【0053】
請求項6の発明は、請求項4または5において、前記第2の磁気コアは、前記第1の磁気コアの開放端を覆うガイド部を備えるので、第1の磁気コアと第2の磁気コアとの間の漏れ磁束が抑制されて、出力パルス特性をさらに向上させることができると共に、2次巻線のさらなる低抵抗化を図ることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態のパルストランスを用いたソケット内蔵型イグナイタを後面から見た部品配置図である。
【図2】同上の前面から見た部品配置図である。
【図3】同上の側面から見た部品配置図である。
【図4】同上のヨークコア4の外観図である。
【図5】同上の一端にガイドを設けたヨークコア4の外観図である。
【図6】同上の両端にガイドを設けたヨークコア4の外観図である。
【図7】イグナイタの回路図である。
【図8】イグナイタの外観図である。
【図9】第1の従来例の1次巻線を省略した電磁装置の構造を示す図である。
【図10】同上の2次巻線の拡大図である。
【図11】同上の構造を示す図である。
【図12】(a)第1の従来例のソケット内蔵型イグナイタを前面から見た部品配置図である。
(b)同上の側面から見た部品配置図である。
【図13】(a)従来例2のトランスの形態を示す平面図である。
(b)同上の正面図である。
(c)同上の側面図である。
【図14】(a)同上の縦断面図である。
(b)同上のE−E断面図である。
【符号の説明】
1 棒状の磁気コア
2a 1次巻線
2b 2次巻線
3 樹脂
4 U字状のヨークコア
23 ソケット本体
PT パルストランス
C1 コンデンサ
GAP 放電ギャップ
Claims (6)
- 放電ランプのランプ口金が電気的且つ機械的に接続されるランプソケット部を設け、このランプソケット部内に設けた電極を介して高電圧パルスをランプ口金に印加する高電圧発生装置に用いられ、第1の磁気コアと、導線を第1の磁気コアに巻装した1次巻線及び2次巻線と、第1の磁気コアと閉磁路の磁気回路を構成して磁路方向の形状を曲面で形成すると共に高電圧発生装置内のランプソケット部近傍に配置されてランプソケット部の周縁部の少なくとも一部を包囲する第2の磁気コアとを備えて、2次巻線に発生する高電圧パルスをランプ口金に印加することを特徴とする電磁装置。
- 前記第2の磁気コアは、U字型形状に形成されることを特徴とする請求項1記載の電磁装置。
- 前記第2の磁気コアは、前記第1の磁気コアの開放端を覆うガイド部を備えることを特徴とする請求項1または2記載の電磁装置。
- 少なくともパルストランスと、パルストランスの1次巻線に並列接続されたコンデンサと、コンデンサから1次巻線への放電経路を開閉するスイッチ要素とを収容する装置本体を備え、この装置本体に放電ランプのランプ口金が電気的且つ機械的に接続されるランプソケット部を設けて、このランプソケット部内に設けた電極を介して前記パルストランスの2次巻線に発生する高電圧パルスをランプ口金に印加する高電圧発生装置において、前記パルストランスは、第1の磁気コアと、導線を第1の磁気コアに巻装した1次巻線及び2次巻線と、第1の磁気コアと閉磁路の磁気回路を構成して磁路方向の形状を曲面で形成すると共に装置本体内のランプソケット部近傍に配置されてランプソケット部の周縁部の少なくとも一部を包囲する第2の磁気コアとを具備することを特徴とする高電圧発生装置。
- 前記第2の磁気コアは、U字型形状に形成されることを特徴とする請求項4記載の高電圧発生装置。
- 前記第2の磁気コアは、前記第1の磁気コアの開放端を覆うガイド部を備えることを特徴とする請求項4または5記載の高電圧発生装置。
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2006080532A (ja) * | 2004-09-10 | 2006-03-23 | Patent Treuhand Ges Elektr Gluehlamp Mbh | 変圧器および変圧器を備えた点弧装置並びに変圧器を備えた高圧放電ランプ |
CN102751079A (zh) * | 2012-03-30 | 2012-10-24 | 山东电力设备有限公司 | 风力发电用组合式变压器 |
-
2002
- 2002-12-24 JP JP2002373187A patent/JP2004207404A/ja not_active Withdrawn
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