JP2004196000A - 水田作業機 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】左右の後輪2への伝動を各別に断続するサイドクラッチ45を備えるとともに、前輪1が直進姿勢から設定角度以上に操向されることに連動して旋回内側のサイドクラッチ45を切り操作する機械式の自動操向機構Aを備え、前輪1が直進姿勢から設定角度以上に操向されている状態が検出されると、旋回内側の後輪2に対するサイドクラッチ45をアクチュエータ81によって自動的かつ間欠的に入り切り制御するよう構成してある。
【選択図】 図7
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、機体の操向構造に特徴を有する田植機や水田直播機などの水田作業機に関する。
【0002】
【従来の技術】
代表的な水田作業機である田植機においては、左右の後輪のそれぞれにサイドクラッチやサイドブレーキなどを装備し、前輪を設定角度以上に操向させる作動に連動して、旋回内側となる後輪の推進能力抑制手段を作動させて、左右後輪に推進能力の差による機体旋回力を発揮させる自動操向機構を備えたものが実用化されている。
【0003】
上記自動操向機構は、前輪操向操作だけで左右後輪に機体旋回力を発揮させて小回り旋回を行うことができるものであり、旧来のように、左右一対備えたサイドクラッチペダルやサイドブレーキペダルを踏み分け操作しなくても小さい旋回半径での旋回を行うことができるのであるが、旋回内側の後輪を完全に遊転状態にするために、圃場の走行負荷によって旋回半径が異なってしまうことがあった。つまり、耕盤が浅かったり、土壌が柔らかくて走行負荷が小さい圃場では、旋回内側の後輪が機体旋回に引きずられて遊転移動するために旋回半径が大きくなり、逆に、耕盤が深かったり、土壌の粘性が高くで走行負荷が大きい圃場では、旋回内側の後輪が圃場内で位置固定されてしまって旋回半径が小さくなるとともに、旋回内側の後輪で圃場を掻いて荒らしやすくなるものであった。
【0004】
そこで、自動操向機構が作動して旋回内側の後輪のサイドクラッチが切られている旋回状態の途中においても、解除ペダルを踏込むことで、切り操作されているサイドクラッチを強制的に入り作動させて左右後輪による機体旋回力を無くすようにし、解除ペダルを踏込んでいる間は4輪駆動で操向して、旋回内側の後輪による圃場の荒らしを軽減することができるようにする手段が提案された(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
【特許文献1】
特開2002−264835号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
提案されている上記構造によると、旋回内側の後輪のサイドクラッチが自動的に切り操作されている状態で逐一解除ペダルを踏込み操作する必要があり、操作が煩わしいものになっていた。また、切られているサイドクラッチを無理に入り作動させための弾性融通機構を必要とするとともに、この弾性融通に抗したペダル操作が必要となるためにペダル操作が重くなりがちであり、操作性の点で難点があった。
【0007】
本発明は、このような点に着目してなされたものであって、前輪を大きく操向操作するだけで小回り旋回を行うことのできる自動操向機構の特徴を活かしながら、旋回内側の後輪による圃場の荒らしを軽減できるようにすることを主たる目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
〔請求項1に係る発明の構成、作用、および効果〕
【0009】
請求項1に係る発明の水田作業機は、左右の後輪への伝動を各別に断続するサイドクラッチを備えるとともに、前輪が直進姿勢から設定角度以上に操向されることに連動して旋回内側のサイドクラッチを切り操作する自動操向機構を備え、前輪が直進姿勢から設定角度以上に操向されている状態が検出されると、旋回内側の後輪に対するサイドクラッチをアクチュエータによって自動的かつ間欠的に入り切り操作する制御装置を設けてあることを特徴とする。
【0010】
上記構成によると、自動操向機構が作動して旋回内側の後輪に対するサイドクラッチが切り操作される状態になると、自動的にアクチュエータが作動制御されてサイドクラッチを間欠的に入り切り操作することになり、旋回内側の後輪は遊転状態と駆動状態に繰り返し切換えられ、走行負荷の大きい圃場においても旋回内側の後輪が操向負荷によって停止した状態のままで引きずられてしまうことが少なくなる。
【0011】
従って、請求項1の発明によると、前輪を大きく操向するだけで自動操向機構を作動させての小回り旋回を行うことができるとともに、旋回内側の後輪による圃場の荒らしが少なくなり、畦際などでの円滑な機体旋回を軽快に行うことができる。
【0012】
〔請求項2に係る発明の構成、作用、および効果〕
【0013】
請求項2に係る発明の水田作業機は、請求項1の発明において、前記自動操向機構を、前輪のステアリング機構と左右のサイドクラッチとを連動連結した機械式のものに構成するとともに、この自動操向機構中に前記アクチュエータを介在してあるものである。
【0014】
上記構成によると、機械的な自動操向機構を作動させて旋回内側の後輪に対するサイドクラッチを切り操作した状態でアクチュエータを間欠的に往復作動させることで当該サイドクラッチを間欠的に入り切り作動させることになる。そして、制御装置の故障等によってアクチュエータが作動できなくなっても、機械的な自動操向機構は常に作動させることができるので、前輪操向に連動して一方のサイドクラッチを切り操作しての旋回を行うことができる。
【0015】
従って、請求項2の発明によると、請求項1の発明の上記効果をもたらすとともに、アクチュエータが作動できなくなった場合でも、自動操向機構を作動させての小回り旋回を実行することが可能であり、実用上有用となる。
【0016】
〔請求項3に係る発明の構成、作用、および効果〕
【0017】
請求項3に係る発明の水田作業機は、請求項2の発明において、前記アクチュエータを電気制御可能に構成するとともに、電装系統が非通電状態にある時、前記アクチュエータが、前輪操向に連動して旋回内側の後輪のサイドクラッチが切り操作可能な標準状態となるよう構成してあるものである。
【0018】
上記構成によると、電装系統に故障や断線が発生しても、アクチュエータは標準状態となっているので、アクチュエータを間欠作動させての小回り旋回は不能でも、機械的な自動操向機構を作動させて一方のサイドクラッチを切り状態に維持しての小回り旋回を実行することができる。
【0019】
従って、請求項3の発明によると、電装系統の万一の故障時にも、従来と同様な小回り旋回機能を発揮させての機体操向を行うことができ、電装系統の修理のために作業の中断を強いられるようなことはなく、実用上の効果が大きい。
【0020】
〔請求項4に係る発明の構成、作用、および効果〕
【0021】
請求項4に係る発明の水田作業機は、請求項または3の発明において、前記自動操向機構を、前記ステアリング機構の作動に連動して天秤状に揺動作動する中間アーム、この中間アームの両端と左右のサイドクラッチの各操作レバーを機械的に連動連結する連動部材とで構成するとともに、中間アームの両端と左右サイドクラッチの各操作レバーとの機械的な連動系にそれぞれアクチュエータを介在してあるものである。
【0022】
上記構成によると、自動操向機構が作動して中間アームに機械的に連係された一方のサイドクラッチが切り操作されるとともに、一方の機械的連動系に介在されたアクチュエータが間欠作動して一方のサイドクラッチが繰り返して入り切りされる。そして、制御装置の故障等によってアクチュエータが作動できなくなったとしても、機械的な自動操向機構は常に作動させることができるので、前輪操向に連動して一方のサイドクラッチを切り操作しての旋回を行うことができる。
【0023】
従って、請求項4の発明によると、請求項2または3の発明の上記効果をもたらすとともに、アクチュエータが作動できなくなった場合でも、自動操向機構を作動させての小回り旋回を実行することができ、実用上有用となる。
【0024】
〔請求項5に係る発明の構成、作用、および効果〕
【0025】
請求項5に係る発明の水田作業機は、請求項4の発明において、左右サイドクラッチに対応させて設けた前記両アクチュエータを同時に同方向に作動させるよう構成してあるものである。
【0026】
上記構成によると、自動操向機構が作動して旋回内側の後輪に対するサイドクラッチが切り操作されるとともに、このサイドクラッチの機械的連動系に介在された一方のアクチュエータが間欠作動して旋回内側に対応したサイドクラッチが繰り返して入り切りされる。この場合、旋回外側に対応したサイドクラッチの機械的連動系に介在した他方のアクチュエータも一方のアクチュエータと同時に同方向に作動するが、自動操向機構が作動した状態では旋回外側に対応した他方の機械的連動系はサイドクラッチの入り切りに関与しない状態にあるので、その連動系に介在したアクチュエータが間欠作動してもサイドクラッチは入り状態に維持されたままとなる。
【0027】
従って、請求項5の発明によると、一対のアクチュエータを別々に作動制御しなくてもよくなり、制御装置の簡素化に有効となる。
【0028】
〔請求項6に係る発明の構成、作用、および効果〕
【0029】
請求項6に係る発明の水田作業機は、請求項4または5の発明において、中間アームの両端と左右サイドクラッチの各操作レバーとを連動連結する連動部材をロッドで構成するとともに、両ロッドの連動長さを調節可能に構成してあるものである。
【0030】
上記構成によると、アクチュエータが作動不能となったような場合、両ロッドの連動長さを標準長さに調節することで、前輪操向に連動して旋回内側の後輪に対するサイドクラッチを切り操作する自動操向機構を所期の通り作動させることができる。
【0031】
従って、請求項6の発明によると、アクチュエータが作動できなくなった場合でも、自動操向機構を作動させての小回り旋回を実行することができ、実用上有用となる。
【0032】
〔請求項7に係る発明の構成、作用、および効果〕
【0033】
請求項7に係る発明の水田作業機は、請求項2または3の発明において、前記自動操向機構を、ステアリングリンク機構の作動に連動して天秤状に揺動作動する中間アーム、この中間アームの両端と左右のサイドクラッチの各操作レバーを機械的に連動連結する連動部材とで構成するとともに、ステアリング機構と中間アームとの連動系に単一のアクチュエータを介在してあるものである。
【0034】
上記構成によると、自動操向機構が作動して中間アームに機械的に連係された一方のサイドクラッチが切り操作されるとともに、ステアリング機構と中間アームとの連動系に介在されたアクチュエータが間欠作動して一方のサイドクラッチが繰り返して入り切りされる。
【0035】
従って、請求項7の発明によると、旋回内側に対応するサイドクラッチを間欠的に入り切り作動させるアクチュエータが単一であるので、両サイドクラッチに対してそれぞれアクチュエータを備える場合に比較して部品点数が少なくなり、構造の簡素化およびコスト低減に有効となる。
【0036】
〔請求項8に係る発明の構成、作用、および効果〕
【0037】
請求項8に係る発明の水田作業機は、請求項1〜7のいずれか一項の発明において、前輪操向角度が大きい時ほど所定時間内の平均したクラッチ切り時間が長くなるように、前輪操向角度の変更に連動して前記平均クラッチ切り時間を複数段階に変更する制御手段を備えてあるものである。
【0038】
上記構成によると、前輪を大きく操向するほど平均したクラッチ切り時間が長くなって、3輪駆動による旋回の時間が段階的に長くなる。
【0039】
従って、請求項8の発明によると、前輪操向量に見合った機体旋回が実行されるので、操作感覚の良好な旋回操作を行うことができる。
【0040】
〔請求項9に係る発明の構成、作用、および効果〕
【0041】
請求項9に係る発明の水田作業機は、請求項1〜7のいずれか一項の発明において、前輪操向角度が大きい時ほど所定時間内の平均したクラッチ切り時間が長くなるように、前輪操向角度の変更に連動して前記平均クラッチ切り時間を連続的かつ線形に変更する制御手段を備えてあるものである。
【0042】
上記構成によると、前輪を大きく操向するほど平均したクラッチ切り時間が長くなって、3輪駆動による旋回の時間が前輪操向量に正比例して連続的に長くなる。
【0043】
従って、請求項9の発明によると、前輪操向量に見合った機体旋回が実行されるので、操作感覚の良好な旋回操作を行うことができる。
【0044】
〔請求項10に係る発明の構成、作用、および効果〕
【0045】
請求項10に係る発明の水田作業機は、請求項1〜7のいずれか一項の発明において、前輪操向角度が大きい時ほど所定時間内の平均したクラッチ切り時間が長くなるように、前輪操向角度の変更に連動して前記平均クラッチ切り時間を連続的かつ非線形に変更する制御手段を備えてあるものである。
【0046】
上記構成によると、前輪を大きく操向するほど平均したクラッチ切り時間が長くなって、3輪駆動による旋回の時間が連続的に非線形に長くなる。この場合、例えば、前輪操向角度が小さい範囲では前輪操向角度の増大に対する平均クラッチ切り時間の増大比率が小さく、前輪操向角度が大きい範囲では前輪操向角度の増大に対する平均クラッチ切り時間の増大比率が大きくなる非線形特性に設定したり、あるいは、前輪操向角度が小さい範囲では前輪操向角度の増大に対する平均クラッチ切り時間の増大比率が大きく、前輪操向角度が大きい範囲では前輪操向角度の増大に対する平均クラッチ切り時間の増大比率が小さくなる非線形特性に設定したりすることができる。
【0047】
従って、請求項10の発明によると、前輪操向角度と機体旋回半径との関係を任意の非線形特性に設定して、機体の仕様などに好適な特性で旋回操作することが可能となる。
【0048】
【発明の実施の形態】
図1、図2に、水田作業機の一例として乗用型田植機が示されている。この乗用型田植機は、操向自在な左右一対の前輪1と操向不能な左右一対の後輪2とを備えた四輪駆動型の走行機体3の後部に、8条植え仕様の苗植付け装置4が油圧シリンダ5によって駆動されるリンク機構6を介して昇降自在に連結されるとともに、機体後部に8条仕様の施肥装置7が装備された構造となっている。
【0049】
前記走行機体3における機体フレーム8の前部には、前輪1を軸支したミッションケース9が連結固定されるとともに、機体フレーム8の後部には、後輪2を軸支した後部伝動ケース10がローリング自在に支持されている。また、ミッションケース9の前側に、横軸型のエンジン11が配備されるとともに、エンジン11の後方に位置する搭乗運転部に、前輪1を操向操作するためのステアリングハンドル12、運転座席13、ステップ14などが備えられている。
【0050】
前記苗植付け装置4は、10条分の苗を載置して左右方向に設定ストロークで往復移動される苗のせ台16、苗のせ台16の下端から1株分づつ苗を切り出して圃場に植付けてゆく8組の回転式の植付け機構17、植付け箇所を整地する5個の整地フロート18、等を備えて構成されており、苗のせ台16に補給するための予備苗を複数段に載置収容する予備苗のせ台19が、機体前部の左右に配備されている。
【0051】
前記施肥装置7は、運転座席13と苗植付け装置4との間において走行機体3上に搭載されており、粉粒状の肥料を貯留する肥料ホッパー21、この肥料ホッパー21内の肥料を設定量ずつ繰り出す繰出し機構22、繰り出された肥料を供給ホース23を介して前記整地フロート18に備えた作溝器24に風力搬送する電動ブロア25、などを備えている。
【0052】
前記ミッションケース9の左側面には、前記エンジン11にベルト連動された静油圧式無段変速装置(HST)からなる主変速装置31が連結装備されており、この主変速装置31を操作するための主変速レバー32が、前記ステアリングハンドル12の左横脇に配置されている。この主変速レバー32は、中立停止位置から前方への揺動操作によって前進速度の変更が、また、中立停止位置から後方への揺動操作によって後進速度の変更が可能となっている。
【0053】
図3,図4に示すように、ミッションケース9内には、前記主変速装置31からの出力を高低二段に変速するギヤ式の副変速機構33と、この副変速機構33からの出力を左右の前輪1に伝達するデフロック付きのデフ機構34とが設置されているとともに、走行伝動系から分岐した動力の正転動力のみを苗植付け装置4へ伝達する一方向クラッチ35と、これからの動力を6段に変速する株間変速機構36と、苗植付け装置4への動力伝達用のPTO軸37、このPTO軸からの動力伝達を断続する植付けクラッチ38、等が装備されている。
【0054】
前記副変速機構33は、ギヤシフトによって植付け作業用の低速段、移動走行用の高速段に切換え可能に構成され、この副変速機構33を操作するための副変速レバー39が運転座席13の左横脇に配置されている。なお、前記デフ機構34は、運転部におけるステップ14上に配備したデフロックペダル40の踏み込み操作によってロックされて、左右前輪1が等速で駆動されるようになっている。
【0055】
後輪駆動用の後部伝動ケース10は、図5〜図7に示すように、機体フレーム8に前後軸芯X周りに一定範囲内でローリング自在に支持された横向き伝動ケース部10Aと、その左右両端それぞれに連結された減速ケース部10Bとから構成されており、その横向き伝動ケース部10A内に、ミッションケース8から後ろ向きに延出された主伝動軸15からの動力を左右に振り分ける横向き伝動軸41が内装されて主伝動軸15にベベルギヤ連動されている。また、各減速ケース部10Bには後輪2を軸支する車軸42と、前記横向き伝動軸41と車軸42とを減速連動する減速ギヤ機構43が装備されている。
【0056】
そして、横向き伝動軸41の両端と各減速ギヤ機構43との間には、各後輪2への動力伝達を断続する摩擦式のサイドクラッチ45が介装されている。これらサイドクラッチ45は、横向き伝動軸41にスプライン嵌合されて一体回転するとともに軸芯方向に移動自在なボス部材46と、減速ギヤ機構43に連動する従動側ドラム47とを備え、ボス部材46の機体横外方への移動により互いに圧接されて摩擦連動(クラッチ入り)するとともに、ボス部材の機体横内方への移動により摩擦連動を解除(クラッチ切り)する複数の摩擦板48がボス部材46と従動側ドラム47とに交互に係合装着され、ボス部材46をクラッチ入り側に移動付勢するクラッチバネ49が横向き伝動軸41に外嵌装着された構造となっている。
【0057】
また、右側の減速ケース部10Bと右側サイドクラッチ45のボス部材46との間には、機体停止用のブレーキ50が設けられている。このブレーキ50は、前記ボス部材46の外周にスプライン外嵌装着された摩擦板51と減速ケース部10Bの内周に係合して回り止めした摩擦板52とを圧接することで、ボス部材46とこれと一体回転する横向き伝動軸41を制動するよう構成されたものであり、ボス部材46に遊嵌したカップ状の操作部材53が機体横外方へ移動されることで摩擦板51,52同士が圧接されるようになっている。
【0058】
機体停止用の前記ブレーキ50は、減速ケース10Bの上面に縦軸心P1周りに回転自在に貫通装着したブレーキ操作軸54によって操作されるようになっている。つまり、ブレーキ操作軸54のケース内突入部分にはシフトフォーク55が装着されるとともに、このシフトフォーク55が前記操作部材53の端面に対向配備されており、ブレーキ操作軸54を回動することでシフトフォーク55を介して操作部材53をシフトさせて、ボス部材46を制動することができるようになっている。
【0059】
そして、図7に示すように、前記ブレーキ操作軸54のケース外突出部に備えた操作レバー54aが、運転部におけるステップ14の足元右前に配備されたペダル56に連係ロッド57を介して連動連結されており、ペダル56の踏み込み操作に伴って連係ロッド57が前方に引張り変位されてブレーキ50が制動操作され、踏み込みを解除することでブレーキ50制動が解除されるようになっている。また、踏込み操作されたペダル50をロックレバー58で係止保持することで、駐車状態をもたらすことができるようになっている。なお、詳細な構造は省略するが、ペダル56を連結した支軸56aの左端部が前記主変速装置31の操作系に機械的に連係されており、ペダル56を踏み込むと、前進域あるいは後進域に操作されている主変速レバー32が、強制的に中立停止位置に戻されるようになっている。
【0060】
前記サイドクラッチ45の操作構造は以下のように構成されている。つまり、前記ボス部材46の端面にスラストカラー60を介して突き合わせ配置されたクラッチ操作スリーブ61が横向き伝動軸41にスライド可能に挿嵌されるとともに、減速ケース部10Aの上面に縦軸芯P2周りに回動自在にクラッチ操作軸62が貫通装着され、このクラッチ操作軸62のケース内突入端部に形成した偏心カム63が前記クラッチ操作スリーブ61の端面に対向配置され、クラッチ操作軸62の回動操作によってサイドクラッチ45が入り切り操作されるようになっている。なお、図5中に示すように、左側のサイドクラッチ45のクラッチ操作軸62は、平面視で反時計回りの回動によってクラッチ切り作動し、時計回りの回動ではクラッチ入り状態が維持され、また、図6中に示すように、右側のサイドクラッチ45のクラッチ操作軸62は、平面視で時計回りの回動によってクラッチ切り作動し、反時計回りの回動ではクラッチ入り状態が維持されるように、偏心カム63の位相が設定されている。
【0061】
そして、前輪1が直進位置から設定角度以上に操向作動されるのに連動して旋回内側のサイドクラッチ45だけを自動的に切り操作して、左右後輪2の推進能力に差による機体旋回力をもたらす自動操向機構Aが備えられており、以下、自動操向機構Aの具体構成について説明する。
【0062】
図7に示すように、ステアリングハンドル12の回動操作によって縦軸心Z周りに左右に揺動されるピットマンアーム65と、前輪1それぞれのナックルアーム66とがタイロッド67を介して連動連結されてステアリング機構68が構成されるとともに、このピットマンアーム65に連設した操作金具65aと、機体の前後中間付近の下部に縦軸芯Y周りに揺動可能に配備した中継アーム69とが押し引きロッド70で連動連結され、この中継アーム69と一体に縦軸芯Y周りに天秤揺動する中間アーム71が備えられている。この中間アーム71の左右両端と前記クラッチ操作軸62のケース外突出部に連設した操作レバー62aとが連動部材としてのロッド72を介して連動連結されている。
【0063】
また、ロッド72と操作レバー62aとは、ロッド72の後部金具72aに形成した長孔73と操作レバー62aの連結ピン74とを介して融通をもって連結されており、ロッド72が前方へ大きく引き操作されると、長孔73の後端で連結ピン74が押されることで操作レバー62aがクラッチ切り方向に回動され、ロッド72が後方に押し操作されても、長孔73が連結ピン74に対して後方に移動するだけとなって、操作レバー62aが回動操作されることがないように構成されている。
【0064】
上記構成によると、通常の植付け作業中における前輪1の操向角度は設定角度未満の小さいものであり、中間アーム71が揺動して一方のロッド72が前方に引き操作されても長孔73と連結ピン73とが相対移動するだけで操作レバー62aは回動操作されることはなく、左右のサイドクラッチ45は共に入り状態に維持され、左右後輪2は等速で駆動される。
【0065】
畦際での機体方向転換のために前輪1を左方あるいは右方に設定角度以上に大きく操向すると、一方のロッド72が長孔73の融通以上に前方に引かれることになり、旋回内側に相当するサイドクラッチ45の操作レバー62aがクラッチ切り方向に回動操作されることになる。その結果、左右の前輪1と旋回外側となる右側の後輪2との3輪駆動によって機体が旋回し、サイドクラッチ45が切られている旋回内側の後輪2は機体の旋回移動に伴って接地追従して遊転可能であり、旋回内側の後輪2で不当に圃場を荒らすことなく機体旋回を行うことができる。
【0066】
以上の構成および機能は従来の自動操向機構と同様であるが、本発明においては、以下のような構成が付加されている。
【0067】
図7,図8に示すように、中間アーム71の両端とサイドクラッチ45の操作レバー62aを連動連結する各ロッド72の前端部には、サイドクラッチ入り切り用アクチュエータとして単動型の油圧シリンダ81が前部金具72bを介して連結されている。
【0068】
この油圧シリンダ81は、圧油が供給されると短縮作動し、排油されると内装バネ83によって伸長作動するよう構成されており、図9の油圧回路図に示すように、電磁式の制御バルブ84を介して作動制御されるようになっている。なお、図9中の、85はパワステアリング用のトルクジェネレータ、86は、昇降用の前記油圧シリンダ5の作動を司る電磁制御バルブアッシである。
【0069】
ここで、通常、前記制御バルブ84は非励磁状態にあって、両油圧シリンダ81は圧油供給を受けて短縮作動状態にあり、この時、油圧シリンダ81を含めたロッド72の連係長さが標準状態にある。そして、この標準状態で前輪1が直進位置から設定角度θ0(例えば30°)以上に操向されると、上記のように、旋回内側の後輪2のサイドクラッチ45が自動的に切り操作されるようになっている。
【0070】
そして、前記制御バルブ84が制御装置87を介して以下のように作動制御される。つまり、前輪1の直進位置からの操向角度θがポテンショメータあるいはロータリエンコーダなどからなるステアリングセンサ88で検出されて制御装置87に入力されており、前輪1が直進位置から設定角度θ0以上に操向されたことが検出されると、制御バルブ84が、図8(ロ)に示すように、周期Tをもって所定時間tずつ間欠的に通電制御され、制御バルブ84が通電励磁されて切換わっている間は、両油圧シリンダ81が排油作動して内装バネ83で伸長作動し、両ロッド72の連係長さが長くなる。
【0071】
この場合、前輪1の設定角度以上の操向に連動して一方のロッドが前方に引き操作されて旋回内側のサイドクラッチ45が切られている状態にあるが、上記のように制御バルブ84が通電励磁されてロッド72の連係長さが長くなっている間だけロッド72が後方に変位するので、切られていた旋回内側のサイドクラッチ45が入り状態に復帰する。そして、制御バルブ84の通電励磁が停止して油圧シリンダ81が短縮作動し、ロッド72の連係長さが標準状態まで短縮されると、旋回内側のサイドクラッチ45が再び切られることになり、制御バルブ84の間欠励磁作動に伴って旋回内側のサイドクラッチ45が所定周期Tで所定時間a(=T−t)ずつ間欠的に切り操作されることになる。
【0072】
なお、制御バルブ84の間欠作動によって旋回外側の後輪2におけるサイドクラッチ45を操作するロッド72も同様に連係長さが変化することになるが、この変化は長孔73の融通で吸収されて操作レバー62aには伝達されないので、旋回外側のサイドクラッチ45は入り状態に維持される。
【0073】
制御バルブ84を間欠的に通電励磁して旋回内側の後輪2のサイドクラッチ45を間欠的に入り切りさせるパターンは種々考えられ、そのいくつかを以下に示す。
【0074】
〔第1例〕:図10(イ)に示すように、前輪1の操向角度θが自動操向機構Aを起動させる前記設定角度θ0から最大操向角度θmまでの全域において、制御バルブ84を一定の周期Tで所定のクラッチ切り時間a1を与える。
【0075】
〔第2例〕:図10(ロ)に示すように、前輪1の操向角度θが自動操向機構Aを起動させる前記設定角度θ0から最大操向角度θmまでの全域において、一定の周期Tごとに所定のクラッチ切り時間a1を与えるとともに、前輪1を直進に戻す行程においては、前記設定角度θ0よりも大きい設定角度θ1で励磁を停止して、早く旋回内側のサイドクラッチ45を入れるようにする。
【0076】
〔第3例〕:図10(ハ)に示すように、前輪1の操向角度θが自動操向機構Aを起動させる前記設定角度θ0からそれより大きい第1設定角度θ1までの操作域では、一定の周期Tごとに所定のクラッチ切り時間a1を与え、第1設定角度θ1からそれより大きい第2設定角度θ2までの操作域では、前記周期Tごと前記クラッチ切り時間a1より大きい所定のクラッチ切り時間a2を与え、さらに、第2設定角度θ1から最大操向角度θmまでの操作域では、前記周期Tごと前記クラッチ切り時間a2より大きい所定のクラッチ切り時間a3を与える。
つまり、前輪操向角度が大きくなるほど、平均的なクラッチ切り時間を段階的に長くなり、小回り旋回機能が高くなってゆく。
【0077】
〔第4例〕:図10(ニ)に示すように、前輪1の操向角度θが自動操向機構Aを起動させる前記設定角度θ0から最大操向角度θmまでの全域において、一定の周期Tごとに与えるクラッチ切り時間aを連続的かつ線形に増大変更する。これによっても、前輪操向角度が大きくなるほど、平均的なクラッチ切り時間が長くなり、小回り旋回機能が次第に高くなってゆく。
【0078】
〔第5例〕:図10(ホ)に示すように、前輪1の操向角度θが自動操向機構Aを起動させる前記設定角度θ0から最大操向角度θmより少し小さい角度θ2までの領域では一定の周期Tごとに与えるクラッチ切り時間aを連続的かつ線形に増大変更し、この角度θ2から最大操向角度θmまでの操作域では、一定の周期Tごとに所定のクラッチ切り時間a1を与え、前輪1を最大操向角度θmから直進に戻す行程においては、前最大操向角度θmから直ちに一定の周期Tごとに与えるクラッチ切り時間aを連続的かつ線形に減少変更し、記設定角度θ0よりも大きい設定角度θ1で励磁を停止して、早く旋回内側のサイドクラッチ45を入れるようにする。
【0079】
〔第6例〕:図10(へ)に示すように、前輪1の操向角度θが自動操向機構Aを起動させる前記設定角度θ0から最大操向角度θmまでの全域において、一定の周期Tごとに与えるクラッチ切り時間aを連続的かつ非線形に増大変更して、最大操向角度θmではクラッチ切り時間a1とする。これによっても、前輪操向角度θが大きくなるほど平均的なクラッチ切り時間aが長くなり、小回り旋回機能が急速に高くなってゆく。
【0080】
なお、電気制御系の故障などによって油圧シリンダ81が伸長したままで伸縮作動不能となった場合には、ロッド72の前部金具72bと油圧シリンダとの連結位置を調節して、油圧シリンダを含めたロッド72の連係長さを標準長さにすることで自動操向機構Aを作動可能にし、前輪操向角度が設定角度θ0以上になると旋回内側の後輪2のサイドクラッチ45を連続的に切り操作することができる。
【0081】
〔別実施形態〕
本発明は、以下のような形態で実施することもできる。
【0082】
(1)上記実施形態では、中間アーム71の両端と左右のサイドクラッチ45とを連動連結するロッド72に組み込んだ一対の油圧シリンダ81を単一の制御バルブ84に接続して、両油圧シリンダ81を同時に同方向に作動させるようにしているが、3位置切換え式の制御バルブを中立位置と一方の切換え位置との間で間欠作動させることで、サイドクラッチ45が切られた側の油圧シリンダ81のみを間欠的に作動させることもできる。
【0083】
(1)上記実施形態では、中間アーム71と左右のサイドクラッチ45とを連動連結する一対のロッド連動系にサイドクラッチ間欠入り切り用のアクチュエータとしての油圧シリンダ81をそれぞれ組み込んでいるが、ピットマンアーム65と中継アーム69とを連動連結するロッド連動系に、中立、短縮、および、伸長の3位置に切換え可能な油圧シリンダなどのアクチュエータを組み込み、押し引きロッド70を後方に押し操作する左旋回時には、アクチュエータに中立と短縮を繰り返し作動させることで左サイドクラッチ45を間欠的に入り切り制御し、押し引きロッド70を前方に引き操作する右旋回時には、アクチュエータに中立と伸長を繰り返し作動させることで右サイドクラッチ45を間欠的に入り切り制御することができる。
【0084】
(2)上記実施形態では、上記のように、一定の周期Tごとのクラッチ切り時間aを段階的、あるいは、連続的に変化させることで、前輪操向角度θが大きくなるほど平均的なクラッチ切り時間を長くして小回り旋回機能を次第に高くしてゆくようにしているが、1回のクラッチ切り時間aを一定にするとともに、前輪操向角度θが大きクなるほど周期Tを段階的、あるいは、連続的に小さくなるように変更して、所定時間内での平均的なクラッチ切り時間を長くすることもできる。
【0085】
(3)上記実施形態では、左右後輪2に速度差を与えて旋回機能を発揮させるのに、旋回内側となる一方のサイドクラッチ45を間欠的に切り操作する形態のものを例示しているが、サイドクラッチの切り操作に引き続いてサイドブレーキを制動操作する形態で実施することもできる。
【0086】
(4)上記実施形態では、前輪1を設定角度θ0以上に操向すると、旋回内側の後輪2に対するサイドクラッチ45を自動的に切り操作する自動操向機構Aを機械式のものに構成し、この自動操向機構Aによって切り操作された一方のサイドクラッチ45を間欠的に入り作動させるようにしているが、左右のサイドクラッチ45をそれぞれ独立してアクチュエータによってのみ入り切り操作可能に構成し、設定角度θ0以上の前輪操向に連動して一方のアクチュエータのみを作動させて、旋回内側の後輪2に対するサイドクラッチ45を所望の特性で間欠入り切り制御することもできる。
【0087】
(5)上記実施形態では、中間アーム71とサイドクラッチ45の操作レバー62aを連動連結する連動部材としてロッド72を利用しているが、ワイヤを連動部材として利用することもできる。
【0088】
(6)自動操向機構Aの作動によってきり操作されたサイドクラッチ45を間欠的に入り切りするアクチュエータとしては、上記のように制御バルブ84によって作動制御される油圧シリンダ81を利用するほかに、制御装置87によって直接に制御される電動シリンダや電磁ソレノイドなどの電気式のアクチュエータを利用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】乗用田植機の全体側面図
【図2】乗用田植機の全体平面図
【図3】走行伝動系の概略図
【図4】作業伝動系の概略図
【図5】左側サイドクラッチの縦断背面図
【図6】右側サイドクラッチおよびブレーキの縦断背面図
【図7】自動操向機構の概略平面図
【図8】自動操向機構の要部を示す平面図
【図9】油圧回路図
【図10】サイドクラッチ作動特性を示す線図
【符号の説明】
1 前輪
2 後輪
45 サイドクラッチ
62a 操作レバー
68 ステアリング機構
71 中間アーム
72 連係部材(ロッド)
81 アクチュエータ(油圧シリンダ)
87 制御装置
θ 前輪操向角度
θ0 設定角度
Claims (10)
- 左右の後輪への伝動を各別に断続するサイドクラッチを備えるとともに、前輪が直進姿勢から設定角度以上に操向されることに連動して旋回内側のサイドクラッチを切り操作する自動操向機構を備え、
前輪が直進姿勢から設定角度以上に操向されている状態が検出されると、旋回内側の後輪に対するサイドクラッチをアクチュエータによって自動的かつ間欠的に入り切り操作する制御装置を設けてあることを特徴とする水田作業機。 - 前記自動操向機構を、前輪のステアリング機構と左右のサイドクラッチとを連動連結した機械式のものに構成するとともに、この自動操向機構中に前記アクチュエータを介在してある請求項1記載の水田作業機。
- 前記アクチュエータを電気制御可能に構成するとともに、電装系統が非通電状態にある時、前記アクチュエータが、前輪操向に連動して旋回内側の後輪のサイドクラッチが切り操作可能な標準状態となるよう構成してある請求項2記載の水田作業機。
- 前記自動操向機構を、前記ステアリング機構の作動に連動して天秤状に揺動作動する中間アーム、この中間アームの両端と左右のサイドクラッチの各操作レバーを機械的に連動連結する連動部材とで構成するとともに、中間アームの両端と左右サイドクラッチの各操作レバーとの機械的な連動系にそれぞれアクチュエータを介在してある請求項2または3記載の水田作業機。
- 左右サイドクラッチに対応させて設けた前記両アクチュエータを同時に同方向に作動させるよう構成してある請求項4記載の水田作業機。
- 中間アームの両端と左右サイドクラッチの各操作レバーとを連動連結する連動部材をロッドで構成するとともに、両ロッドの連動長さを調節可能に構成してある請求項4または5記載の水田作業機。
- 前記自動操向機構を、ステアリングリンク機構の作動に連動して天秤状に揺動作動する中間アーム、この中間アームの両端と左右のサイドクラッチの各操作レバーを機械的に連動連結する連動部材とで構成するとともに、ステアリング機構と中間アームとの連動系に単一のアクチュエータを介在してある請求項2または3記載の水田作業機。
- 前輪操向角度が大きい時ほど所定時間内の平均したクラッチ切り時間が長くなるように、前輪操向角度の変更に連動して前記平均クラッチ切り時間を複数段階に変更する制御手段を備えてある請求項1〜7のいずれか一項に記載の水田作業機。
- 前輪操向角度が大きい時ほど所定時間内の平均したクラッチ切り時間が長くなるように、前輪操向角度の変更に連動して前記平均クラッチ切り時間を連続的かつ線形に変更する制御手段を備えてある請求項1〜7のいずれか一項に記載の水田作業機。
- 前輪操向角度が大きい時ほど所定時間内の平均したクラッチ切り時間が長くなるように、前輪操向角度の変更に連動して前記平均クラッチ切り時間を連続的かつ非線形に変更する制御手段を備えてある請求項1〜7のいずれか一項に記載の水田作業機。
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