JP2004122811A - 水田作業機 - Google Patents
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Abstract
【課題】左右の後輪2のそれぞれに推進能力を抑制する推進能力抑制手段を装備し、前輪1を設定角度以上に操向させる作動に連動して、旋回内側となる後輪2の推進能力抑制手段を作動させて、左右後輪2に推進能力の差による機体旋回力を発揮させる自動操向機構を備えた水田作業機において、前輪を大きく操向操作するだけで小回り旋回を行うことのできる自動操向機構の特徴を活かしながら、必要に応じて旋回半径の大きい旋回をも行えるようにして、所望の機体旋回を行うことができるようにする。
【解決手段】前輪1の設定角度以上の操向域に、旋回内側となる後輪2の推進能力抑制手段を作動させる操向位置と、推進能力抑制手段を作動させない操向位置とを設けてある。
【選択図】 図7
【解決手段】前輪1の設定角度以上の操向域に、旋回内側となる後輪2の推進能力抑制手段を作動させる操向位置と、推進能力抑制手段を作動させない操向位置とを設けてある。
【選択図】 図7
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、機体の操向構造に特徴を有する田植機や水田直播機などの水田作業機に関する。
【0002】
【従来の技術】
代表的な水田作業機である田植機においては、左右の後輪のそれぞれに推進能力を抑制する推進能力抑制手段としてサイドクラッチやサイドブレーキなどを装備し、前輪を設定角度以上に操向させる作動に連動して、旋回内側となる後輪の推進能力抑制手段を作動させて、左右後輪に推進能力の差による機体旋回力を発揮させる自動操向機構を備えたものが実用化されている。
【0003】
上記自動操向機構は、前輪操向操作だけで左右後輪に機体旋回力を発揮させて小回り旋回を行うことができるものであり、旧来のように、左右一対備えたサイドクラッチペダルやサイドブレーキペダルを踏み分け操作しなくても小さい旋回半径での旋回を行うことができ、4条あるいは6条仕様などの条数の少ない(作業幅の小さい)仕様の機種では、畦際で機体をUターン旋回させる場合に、旋回から次行程の走行位置への位置合わせ(条合わせ)を一連にかつ速やかに行うことができ、自動操向機構の特徴を有効に発揮させることができるものである。
【0004】
しかし、8条あるいは10条仕などの条数の多い機種は、前行程の機体走行位置と次行程の機体走行位置との横方向間隔が大きいので、図14中のS1でに示すように、畦際での機体方向転換時の旋回半径が小さいと旋回過剰になりやすく、旋回を開始して次行程の機体走行位置への位置合わせ移動(条合わせ)に手間取ってしまうことになり、前記自動操向機構の特徴が十分に活用されにくものとなっていた。
【0005】
自動操向機構による旋回過剰の発生を抑制する手段としては、前行程の走行位置と次行程の走行位置との距離に対応して前輪の最大操向角度を小さ目に設定して、図14中のS2でに示すように、自動操向機構が作動した際の旋回半径を大き目に設定しておくことも考えられるが、これによると、畦際での機体方向転換時に、前輪を大きく操向操作しておくだけで、旋回を開始から次行程の機体走行位置への位置合わせ移動を円弧状の旋回移動軌跡でもって一連に速やかに行うことができるようになるのであるが、その反面、作業幅の大きい機体を大きい半径の円弧軌跡で旋回移動させるためには、畦際に形成する旋回スペース(枕地)Mの幅(畦からの距離)が全条植付け幅よりも大きいものとなってしまい、枕地を全条植えで回り植えした後に植え残した枕地を手植えしなければならなくなり、実用には不適当である。
【0006】
そこで、自動操向機構が作動して旋回内側の後輪のサイドクラッチが切られている小回り旋回状態の途中においても、解除ペダルを踏込むことで、切り操作されているサイドクラッチを強制的に入り作動させて左右後輪による機体旋回力を無くすようにし、解除ペダルを踏込んでいる間は、前輪だけの操向で機体を比較的大きい旋回半径で旋回作動させることができるようにして、略コの字形の軌跡での旋回を行いやすくする手段が提案された(例えば、特許文献1参照。)。
【0007】
【特許文献1】
特開2002−264835号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
提案されている上記構造によると、前輪操向に連動して自動的に切り操作されているサイドクラッチを無理に入り作動させための弾性融通機構を必要とし、このために連係構造が複雑になっていた。また、弾性融通に抗したペダル操作が必要となるためにペダル操作が重くなりがちであり、操作性の点で難点があった。
【0009】
本発明は、このような点に着目してなされたものであって、前輪を大きく操向操作するだけで小回り旋回を行うことのできる自動操向機構の特徴を活かしながら、必要に応じて旋回半径の大きい旋回をも行えるようにして、所望の機体旋回を行うことができるようにすることを主たる目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
〔請求項1に係る発明の構成、および、作用・効果〕
【0011】
請求項1に係る発明は、左右の後輪のそれぞれに推進能力を抑制する推進能力抑制手段を装備し、前輪を設定角度以上に操向させる作動に連動して、旋回内側となる後輪の推進能力抑制手段を作動させて、左右後輪に推進能力の差による機体旋回力を発揮させる自動操向機構を備えた水田作業機において、
前輪の設定角度以上の操向域に、旋回内側となる後輪の推進能力抑制手段を作動させる操向位置と、推進能力抑制手段を作動させない操向位置とを設けてあることを特徴とする。
【0012】
上記構成によると、前輪を設定角度以上に操向することで旋回内側の後輪に対する推進能力抑制手段が作動して小回り旋回が行われるが、前輪を設定角度以上の操作域における所定の操向位置に操向すれば、前輪を大きく操向させた状態で左右後輪を同等に駆動しての旋回状態をもたらすことができる。
【0013】
従って、請求項1の発明によると、前輪を大きく操向操作するだけで小回り旋回を行うことのできる自動操向機構の特徴を活かしながら、必要に応じて旋回半径の大きい旋回をも行うことができ、操向性能を向上することができる。
【0014】
〔請求項2に係る発明の構成、作用、および効果〕
【0015】
請求項2に係る発明は、左右の後輪のそれぞれに推進能力を抑制する推進能力抑制手段を装備し、前輪を設定角度以上に操向させる作動に連動して、旋回内側となる後輪の推進能力抑制手段を作動させて、左右後輪に推進能力の差による機体旋回力を発揮させる自動操向機構を備えた水田作業機において、
前輪の設定角度以上の操向域に、旋回内側となる後輪の推進能力抑制手段を作動させる操向位置、推進能力抑制手段の作動を解除する操向位置、および、推進能力抑制手段を作動させる操向位置をこの順で配置してあることを特徴とする。
【0016】
上記構成によると、前輪を設定角度以上に操向することで旋回内側の後輪に対する推進能力抑制手段が作動して小回り旋回が行われるが、前輪を設定角度以上の操作域の所定の操向位置に操向すれば、前輪を大きく操向させた状態で左右後輪を同等に駆動しての旋回状態をもたらすことができるとともに、前輪を最大に操向すれば旋回内側の後輪の推進能力を抑制しての小回り旋回状態となる。
【0017】
従って、請求項2の発明によると、前輪を大きく操向操作するだけで小回り旋回を行うことのできる自動操向機構の特徴を活かしながら、必要に応じて旋回半径の大きい旋回をも行うことができ、操向性能を向上することができる。
【0018】
〔請求項3に係る発明の構成、作用、および効果〕
【0019】
請求項3に係る発明は、左右の後輪のそれぞれに推進能力を抑制する推進能力抑制手段を装備し、前輪を設定角度以上に操向させる作動に連動して、旋回内側となる後輪の推進能力抑制手段を作動させて、左右後輪に推進能力の差による機体旋回力を発揮させる自動操向機構を備えた水田作業機において、
前輪が最大に操向されて推進能力抑制手段が作動している推進抑制状態から前輪が直進側に戻し操向されると、推進能力抑制手段が作動解除されるように構成してあることを特徴とする。
【0020】
上記構成によると、前輪を最大に操向すれば旋回内側の後輪の推進能力を抑制しての小回り旋回状態となるが、最大に操向した前輪を直進側に少し戻すと、旋回内側の後輪が通常の推進状態になり、前輪を大きく操向させた状態で左右後輪を同等に駆動しての旋回状態をもたらすことができる。
【0021】
従って、請求項3の発明によると、前輪を大きく操向操作するだけで小回り旋回を行うことのできる自動操向機構の特徴を活かしながら、必要に応じて旋回半径の大きい旋回をも行行うことができ、操向性能を向上することができる。
【0022】
〔請求項4に係る発明の構成、作用、および効果〕
【0023】
請求項4に係る発明は、左右の後輪のそれぞれに推進能力を抑制する推進能力抑制手段を装備し、前輪を設定角度以上に操向させる作動に連動して、旋回内側となる後輪の推進能力抑制手段を作動させて、左右後輪に推進能力の差による機体旋回力を発揮させる自動操向機構を備えた水田作業機において、
前輪を最大に操向操作することで推進能力抑制手段が作動解除されるように構成するとともに、この時の前輪操向操作に抵抗が付与されるよう構成してあることを特徴とする。
【0024】
上記構成によると、前輪を設定角度以上に大きく操向すれば旋回内側の後輪の推進能力を抑制しての小回り旋回状態となるが、前輪を最大に操向すると、旋回内側の後輪が通常の推進状態になり、前輪を大きく操向させた状態で左右後輪を同等に駆動しての旋回状態をもたらすことができる。そして、このように前輪を最大に操向するには操作抵抗が大きくなるので、左右後輪を同等に駆動しての旋回状態にあるかどうかを前輪操作力の大きさで認識することができる。
【0025】
従って、請求項4の発明によると、通常は自動操向機構を働かせての小回り旋回を行うことができるとともに、小回り旋回中でも意識的に前輪を限界位置まで強く操向操作すれば、左右後輪を同等に駆動しての旋回を行うことができ、圃場条件や機体の仕様などに応じた操向を好適に行える。
【0026】
〔請求項5に係る発明の構成、作用、および効果〕
【0027】
請求項5に係る発明は、左右の後輪のそれぞれに推進能力を抑制する推進能力抑制手段を装備し、前輪を設定角度以上に操向させる作動に連動して、旋回内側となる後輪の推進能力抑制手段を作動させて、左右後輪に推進能力の差による機体旋回力を発揮させる自動操向機構を備えた水田作業機において、
設定角度以上の前輪操作域における所定操向位置で、旋回内側となる後輪を低速で駆動する強制駆動手段を備えてあることを特徴とする。
【0028】
上記構成によると、前輪を設定角度以上に操向することで旋回内側の後輪に対する推進能力抑制手段が作動して小回り旋回が行われるが、前輪を設定角度以上の操作域における所定の操向位置に操向すれば、旋回内側となる後輪を低速で駆動する状態をもたらすことができ、前輪を大きく操向させた状態で左右後輪に強制的な旋回力を発揮させながら旋回を行うことができる。
【0029】
従って、請求項5の発明によると、前輪を大きく操向操作するだけで小回り旋回を行うことのできる自動操向機構の特徴を活かしながら、必要に応じて比較的大きい旋回半径での旋回を行行うことができ、操向性能の向上に有効となる。
【0030】
〔請求項6に係る発明の構成、作用、および効果〕
【0031】
請求項6に係る発明は、左右の後輪のそれぞれに推進能力を抑制する推進能力抑制手段を装備し、前輪を設定角度以上に操向させる作動に連動して、旋回内側となる後輪の推進能力抑制手段を作動させて、左右後輪に推進能力の差による機体旋回力を発揮させる自動操向機構を備えた水田作業機において、
前輪が最大に操向操作された時に旋回内側となる後輪を低速で駆動する強制駆動手段を備えてあることを特徴とする。
【0032】
上記構成によると、前輪を設定角度以上に大きく操向すれば旋回内側の後輪の推進能力を抑制しての小回り旋回状態となるが、前輪を最大に操向すると、旋回内側となる後輪を低速で駆動する状態をもたらすことができ、前輪を大きく操向させた状態で左右後輪に強制的な旋回力を発揮させながら比較的大きい旋回半径での旋回を行うことができる。
【0033】
従って、請求項6の発明によると、前輪を大きく操向操作するだけで小回り旋回を行うことのできる自動操向機構の特徴を活かしながら、必要に応じて旋回半径の大きい旋回をも行行うことができ、操向性能の向上に有効となる。
【0034】
〔請求項7に係る発明の構成、作用、および効果〕
【0035】
請求項7に係る発明は、左右の後輪のそれぞれに推進能力を抑制する推進能力抑制手段を装備し、前輪を設定角度以上に操向させる作動に連動して、旋回内側となる後輪の推進能力抑制手段を作動させて、左右後輪に推進能力の差による機体旋回力を発揮させる自動操向機構を備えた水田作業機において、
前輪が最大に操向操作された時に旋回内側となる後輪を間欠駆動する強制駆動手段を備えてあることを特徴とする。
【0036】
上記構成によると、前輪を設定角度以上に大きく操向すれば旋回内側の後輪の推進能力を抑制しての小回り旋回状態となるが、前輪を最大に操向すると、旋回内側となる後輪を間欠的に駆動する状態をもたらすことができ、前輪を大きく操向させた状態で左右後輪に強制的な旋回力を発揮させながら比較的大きい旋回半径での旋回を行うことができる。
【0037】
従って、請求項7の発明によると、前輪を大きく操向操作するだけで小回り旋回を行うことのできる自動操向機構の特徴を活かしながら、必要に応じて旋回半径の大きい旋回をも行行うことができ、操向性能の向上に有効となる。
【0038】
〔請求項8に係る発明の構成、作用、および効果〕
【0039】
請求項8に係る発明は、左右の後輪のそれぞれに推進能力を抑制する推進能力抑制手段を装備し、前輪を設定角度以上に操向させる作動に連動して、旋回内側となる後輪の推進能力抑制手段を作動させて、左右後輪に推進能力の差による機体旋回力を発揮させる自動操向機構を備えた水田作業機において、
設定角度以上の前輪の操向に連動して、旋回内側の後輪に対する推進能力抑制手段を間欠作動させるよう構成してあることを特徴とする。
【0040】
上記構成によると、前輪を設定角度以上に大きく操向すれば旋回内側の後輪の推進能力を抑制しての小回り旋回状態となるが、前輪を設定角度以上の操作域で大きく操向すると、旋回内側となる後輪が推進能力が抑制された状態と通常の推進状態とが繰り返される状態がもたらされ、前輪を大きく操向させた状態で左右後輪に或る程度の旋回力を発揮させた旋回を行うことができる。
【0041】
従って、請求項8の発明によると、前輪を大きく操向操作するだけで小回り旋回を行うことのできる自動操向機構の特徴を活かしながら、必要に応じて旋回半径の大きい旋回をも行行うことができ、操向性能の向上に有効となる。
【0042】
〔請求項9に係る発明の構成、作用、および効果〕
【0043】
請求項9に係る発明は、左右の後輪のそれぞれに推進能力を抑制する推進能力抑制手段を装備し、前輪を設定角度以上に操向させる作動に連動して、旋回内側となる後輪の推進能力抑制手段を作動させて、左右後輪に推進能力の差による機体旋回力を発揮させる自動操向機構を備えた水田作業機において、
設定角度以上の前輪の操向に連動して、旋回内側の後輪に対する推進能力抑制手段を間欠作動させるとともに、前輪の操向角度に応じて前記間欠周期が変化するよう設定してあることを特徴とする。
【0044】
上記構成によると、前輪を設定角度以上に大きく操向すれば旋回内側の後輪の推進能力を抑制しての小回り旋回状態となるが、前輪を設定角度以上の操作域で大きく操向すると、旋回内側となる後輪が推進能力が抑制された状態と通常の推進状態とが繰り返される状態がもたらされ、前輪を大きく操向させた状態で左右後輪に或る程度の旋回力を発揮させた旋回を行うことができる。しかも、前輪操向角度に応じて間欠周期が変わるので、左右後輪によってもたらされる旋回力を前輪操向によって選択することができる。
【0045】
従って、請求項9の発明によると、前輪を大きく操向操作するだけで小回り旋回を行うことのできる自動操向機構の特徴を活かしながら、必要に応じて旋回半径の大きい旋回をも行行うことができ、操向性能の向上に有効となる。
【0046】
【発明の実施の形態】
図1、図2に、水田作業機の一例として乗用型田植機が示されている。この乗用型田植機は、操向自在な左右一対の前輪1と操向不能な左右一対の後輪2とを備えた四輪駆動型の走行機体3の後部に、8条植え仕様の苗植付け装置4が油圧シリンダ5によって駆動されるリンク機構6を介して昇降自在に連結されるとともに、機体後部に8条仕様の施肥装置7が装備された構造となっている。
【0047】
前記走行機体3における機体フレーム8の前部には、前輪1を軸支したミッションケース9が連結固定されるとともに、機体フレーム8の後部には、後輪2を軸支した後部伝動ケース10がローリング自在に支持されている。また、ミッションケース9の前側に、横軸型のエンジン11が配備されるとともに、エンジン11の後方に位置する搭乗運転部に、前輪1を操向操作するためのステアリングハンドル12、運転座席13、ステップ14などが備えられている。
【0048】
前記苗植付け装置4は、8条分の苗を載置して左右方向に設定ストロークで往復移動される苗のせ台16、苗のせ台16の下端から1株分づつ苗を切り出して圃場に植付けてゆく8組の回転式の植付け機構17、植付け箇所を整地する5個の整地フロート18、等を備えて構成されており、苗のせ台16に補給するための予備苗を複数段に載置収容する予備苗のせ台19が、機体前部の左右に配備されている。
【0049】
前記施肥装置7は、運転座席13と苗植付け装置4との間において走行機体3上に搭載されており、粉粒状の肥料を貯留する肥料ホッパー21、この肥料ホッパー21内の肥料を設定量づつ繰り出す繰出し機構22、繰り出された肥料を供給ホース23を介して前記整地フロート18に備えた作溝器24に風力搬送する電動ブロア25、などを備えている。
【0050】
前記ミッションケース9の左側面には、前記エンジン11にベルト連動された静油圧式無段変速装置(HST)からなる主変速装置31が連結装備されており、この主変速装置31を操作するための主変速レバー32が、前記ステアリングハンドル12の左横脇に配置されている。この主変速レバー32は、中立停止位置から前方への揺動操作によって前進速度の変更が、また、中立停止位置から後方への揺動操作によって後進速度の変更が可能となっている。
【0051】
図3,図4に示すように、ミッションケース9内には、前記主変速装置31からの出力を高低二段に変速するギヤ式の副変速機構33と、この副変速機構33からの出力を左右の前輪1に伝達するデフロック付きのデフ機構34とが設置されているとともに、走行伝動系から分岐した動力の正転動力のみを苗植付け装置4へ伝達する一方向クラッチ35と、これからの動力を6段に変速する株間変速機構36と、苗植付け装置4への動力伝達用のPTO軸37、このPTO軸からの動力伝達を断続する植付けクラッチ38、等が装備されている。
【0052】
前記副変速機構33は、ギヤシフトによって植付け作業用の低速段、移動走行用の高速段に切換え可能に構成され、この副変速機構33を操作するための副変速レバー39が運転座席13の左横脇に配置されている。なお、前記デフ機構34は、運転部におけるステップ14上に配備したデフロックペダル40の踏み込み操作によってロックされて、左右前輪1が等速で駆動されるようになっている。
【0053】
後輪駆動用の後部伝動ケース10は、図5〜図7に示すように、機体フレーム8に前後軸芯X周りに一定範囲内でローリング自在に支持された横向き伝動ケース部10Aと、その左右両端それぞれに連結された減速ケース部10Bとから構成されており、その横向き伝動ケース部10A内に、ミッションケース8から後ろ向きに延出された主伝動軸15からの動力を左右に振り分ける横向き伝動軸41が内装されて主伝動軸15にベベルギヤ連動されている。また、各減速ケース部10Bには後輪2を軸支する車軸42と、前記横向き伝動軸41と車軸42とを減速連動する減速ギヤ機構43が装備されている。
【0054】
そして、横向き伝動軸41の両端と各減速ギヤ機構43との間には、各後輪2の推進能力を抑制する手段として摩擦式のサイドクラッチ45が介装されている。これらサイドクラッチ45は、横向き伝動軸41にスプライン嵌合されて一体回転するとともに軸芯方向に移動自在なボス部材46と、減速ギヤ機構43に連動する従動側ドラム47とを備え、ボス部材46の機体横外方への移動により互いに圧接されて摩擦連動(クラッチ入り)するとともに、ボス部材の機体横内方への移動により摩擦連動を解除(クラッチ切り)する複数の摩擦板48がボス部材46と従動側ドラム47とに交互に係合装着され、ボス部材46をクラッチ入り側に移動付勢するクラッチバネ49が横向き伝動軸41に外嵌装着された構造となっている。
【0055】
また、右側の減速ケース部10Bと右側サイドクラッチ45のボス部材46との間には、機体停止用のブレーキ50が設けられている。このブレーキ50は、前記ボス部材46の外周にスプライン外嵌装着された摩擦板51と減速ケース部10Bの内周に係合して回り止めした摩擦板52とを圧接することで、ボス部材46とこれと一体回転する横向き伝動軸41を制動するよう構成されたものであり、ボス部材46に遊嵌したカップ状の操作部材53が機体横外方へ移動されることで摩擦板51,52同士が圧接されるようになっている。
【0056】
機体停止用の前記ブレーキ50は、減速ケース10Bの上面に縦軸心P1周りに回転自在に貫通装着したブレーキ操作軸54によって操作されるようになっている。つまり、ブレーキ操作軸54のケース内突入部分にはシフトフォーク55が装着されるとともに、このシフトフォーク55が前記操作部材53の端面に対向配備されており、ブレーキ操作軸54を回動することでシフトフォーク55を介して操作部材53をシフトさせて、ボス部材46を制動することができるようになっている。
【0057】
そして、図7に示すように、前記ブレーキ操作軸54のケース外突出部に備えた操作アーム54aが、運転部におけるステップ14の足元右前に配備されたペダル56に連係ロッド57を介して連動連結されており、ペダル56の踏み込み操作に伴って連係ロッド57が前方に引張り変位されてブレーキ50が制動操作され、踏み込みを解除することでブレーキ50制動が解除されるようになっている。また、踏込み操作されたペダル50をロックレバー58で係止保持することで、駐車状態をもたらすことができるようになっている。なお、詳細な構造は省略するが、ペダル56を連結した支軸56aの左端部が前記主変速装置31の操作系に機械的に連係されており、ペダル56を踏み込むと、前進域あるいは後進域に操作されている主変速レバー32が、強制的に中立停止位置に戻されるようになっている。
【0058】
前記サイドクラッチ45の操作構造は以下のように構成されている。つまり、前記ボス部材46の端面にスラストカラー60を介して突き合わせ配置されたクラッチ操作スリーブ61が横向き伝動軸41にスライド可能に挿嵌されるとともに、減速ケース部10Aの上面に縦軸芯P2周りに回動自在にクラッチ操作軸62が貫通装着され、このクラッチ操作軸62のケース内突入端部に形成した偏心カム63が前記クラッチ操作スリーブ61の端面に対向配置され、クラッチ操作軸62の回動操作によってサイドクラッチ45が入り切り操作されるようになっている。なお、図5中に示すように、左側のサイドクラッチ45のクラッチ操作軸62は、平面視で反時計回りの回動によってクラッチ切り作動し、時計回りの回動ではクラッチ入り状態が維持され、また、図6中に示すように、右側のサイドクラッチ45のクラッチ操作軸62は、平面視で時計回りの回動によってクラッチ切り作動し、反時計回りの回動ではクラッチ入り状態が維持されるように、偏心カム63の位相が設定されている。
【0059】
そして、前輪1が直進位置から設定角度以上に操向作動されるのに連動して旋回内側のサイドクラッチ45だけを自動的に切り操作して、左右後輪2の推進能力に差異をもたらして機体旋回力をもたらす自動操向機構Aが備えられており、以下、自動操向機構Aの具体構成について説明する。
【0060】
〔第1例〕
【0061】
この例の自動操向機構Aは以下のように構成されている。つまり、図7に示すように、ステアリングハンドル12の回動操作によって縦軸心Z周りに左右に揺動されるピットマンアーム65と、前輪1それぞれのナックルアーム66とがタイロッド67を介して連動連結されてステアリングリンク機構68が構成されるとともに、このピットマンアーム65に連設した操作金具65aと、機体の前後中間付近の下部に縦軸芯Y周りに揺動可能に配備した中継アーム69とが押し引きロッド70で連動連結され、この中継アーム69と一体に縦軸芯Y周りに揺動する天秤アーム71が備えられている。他方、後部伝動ケース10の左右に取り付けたブラケット76には、支点P3周りに回動可能にカムレバー72が装備されており左右の、各カムレバー72と天秤アーム71の左右端とがロッド73を介して連動連結されている。そして、前記クラッチ操作軸62のケース外突出部に連設した操作アーム62aの先端ローラ74が、カムレバー72の外周に対向配備されている。
【0062】
ここで、前記押し引きロッド70の前端は操作金具65aの長孔75に連動連結されており、ピットマンアーム65が設定角度未満の揺動される時には長孔75の融通によって押し引きロッド70は操作されることがなく、自動操向機構Aは作動することはない。そして、ピットマンアームが設定角度以上に大きく揺動されると押し引きロッド70が押しあるいは引き操作されて、自動操向機構Aが作動するようになっている。
【0063】
また、ロッド73とカムレバー72とは、ロッド73の後端部に形成した長孔77とカムレバー72に設けたピン78とを介して連動連結されており、一方のロッド73が前方への引き操作されて一方のカムレバー72が回動される時、他方のロッド73の後方への押し移動が長孔77によって吸収されて他方のカムレバー72に回動操作力が伝達されないように構成されている。また、図示されていないが、カムレバー72は、その回動支点部に装備されたねじりバネによってロッド73を後方に引く方向に回動付勢されている。つまり、図7において左側のカムレバー72は反時計回りに、また、右側のカムレバー72は時計回りにそれぞれ回動付勢され、自動操向機構Aが作動していない通常時は、回動付勢された各カムレバー72はストッパ79によって基準位置に受け止め支持されている〔図8(イ)参照〕。
【0064】
左右のカムレバーの作動は作動方向が左右勝手違いであるだけで同等に作動するので、その作動を左側のカムレバーについて図8および図9に基づいて説明する。
【0065】
図8(イ)に示すように、前記カムレバー72の外周には小径カム部C1、第1大径カム部C2、凹入カム部C3、および、第2大径カム部C4が形成されており、カムレバー72が基準位置にある時、クラッチ切り位置にある操作アーム62aの先端ローラ74が小径カム部C1に対向している。そして、第1大径カム部C2は基点から角度αの位置に局部的に形成され、また、凹入カム部C3は基点から角度βの位置に局部的形成され、かつ、第2大径カム部C4は基点から角度γ以上の領域に形成されている。
【0066】
上記構成によると、通常の植付け作業中における前輪1の操向角度は設定角度未満の小さいものであり、ピットマンアーム65の揺動にかかわらず天秤アーム71は揺動作動することがなく、左右のカムレバーも基準位置に保持されて左右のサイドクラッチ45は共に入り状態に維持され、左右後輪2は等速で駆動される。
【0067】
畦際での機体方向転換のために左右の前輪1を例えば左側に最大限まで操向すると、前輪1が設定角度以上に操向された時点から自動操向機構Aが作動を開始し、天秤アーム71が図7において時計回りに揺動し、これに連動して左側のカムレバー72だけが反時計回りに回動され、先ず、図8(ロ)に示すように、第1大径カム部C2によって先端ローラ74が押圧されることで操作アーム62aが反時計回りに揺動され、左側のサイドクラッチ45が切り操作される。そして、図8(ハ)に示すように、前輪1の操向に伴ってカムレバー72が更に反時計回りに回動されることで先端ローラ74が凹入カム部C3に落ち込むことになるが、この場合の操作アーム62aはクラッチ入り位置にまでは大きく復帰揺動することができず、クラッチ切り状態が維持される。そして、前輪1の更なる操向に伴ってカムレバー72が大きく反時計回りに回動されることで、図8(ニ)に示すように、先端ローラ74が第2大径カム部C4に乗り上がることで操作アーム62aが反時計回りに大きく揺動され、左側のサイドクラッチ45が十分なストロークで切り操作される。
【0068】
このように、前輪1を設定角度以上に左側に大きく操向して自動操向機構Aが作動する状態では、旋回内側となる左側のサイドクラッチ45が自動的に切られ、左右の前輪1と旋回外側となる右側の後輪2との3輪駆動によって機体が旋回し、サイドクラッチ45が切られて自由状態にある旋回内側(左側)の後輪2は機体の旋回移動に伴って接地追従して遊転し、旋回内側の後輪2で不当に圃場を荒らすことなく機体旋回が行われる。
【0069】
ここで、13 に示すように、8条植え仕様の田植機では畦際での機体方向転換を行う際、畦際に8条分の周り植えを行う幅のスペース(枕地)Mを過不足なく残して機体方向転換を行って次行程の条合わせを行うことが要求されるものであり、そのために略コの字状の軌跡をとって方向転換を行うことが望ましい。そこで、上記のように3輪駆動による小回り旋回で機体を或る程度旋回させたところで、ステアリングハンドル12を右方に少し切り戻すと、図9(ホ)に示すように、カムレバー72が反時計回りに回動されて、先端ローラ74が小径カム部C3に落ち込んで左側サイドクラッチ45が入り状態となる。
【0070】
このように大きく操向した前輪1をに少し戻して左右のサイドクラッチ45を共に入れた状態では、左右後輪2の推進力差による旋回力は発生しないので、操向された前輪1のみによって機体が旋回することになり、その旋回半径は大きいものとなり、図13中における横向き移動軌跡を得るのに好都合となる。
【0071】
そして、この横向き移動の終了近くに至ったところで前輪1を再度左方に大きく操向操作することで、再び図8(ニ)に示すように、左側のカムレバー72を時計回りに大きく回動させて、左側のサイドクラッチ45を切り操作し、3輪駆動による小回り旋回で機体を旋回させて次行程の始端に向かうことができ、その後、前輪1を直進近くまで戻して所望の条合わせを行うのである。
【0072】
ここで、左側限界あるいはその近くまで操向した前輪1を直進に戻す場合、上記したように、先ず、図9(ホ)に示すように、先端ローラ74が小径カム部C3に落ち込んでクラッチ入り状態がもたらされ、その後のハンドル戻しに連動してカムレバー72が反時計回りに回動し、図9(ヘ)に示すように、第1大径カム部C2によって操作アーム62aが時計回りに揺動されることになるが、上記したように、左側のサイドクラッチ45においては、クラッチ操作軸62の時計回りの回動に対しては切り操作されることがない。そして、ハンドルの切り戻しに連動して更にカムレバー72が反時計回りに回動すると、先端ローラ74が第1大径カム部C2を乗り越えたところで、操作アーム62aは復帰バネ79によって元のクラッチ入り位置に戻される。つまり、先端ローラ74が小径カム部C3に落ち込んだ以降の直進への戻し操作中は常にクラッチ入り状態がもたらされるのである。
【0073】
なお、3輪駆動による小回り旋回作動中に、走行負荷によって推進が困難になったような場合にも、前輪1を少し切り戻して図9(ホ)に示す状態を現出することで四輪駆動による十分な推力で旋回することができるものであり、この機能は、4条〜6条仕様の田植機において、自動操向機構Aを作動させての小回り旋回中に走行負荷に対して推力不足となったり、前輪1の浮き上がりによって旋回の続行が困難になったような場合に有効に活用することができるものである。
【0074】
図10に、前記カムレバー72の変形例が示されている。この例のカムレバー72では、前記小径カム部C3が、前輪1が最大に操向された時のカムレバー72の回動位置に近くに設定されており、これによると、前輪1を最大に操向した状態から少し戻すだけでクラッチ入り状態を現出することができ、前輪1を比較的大きく操向した状態で旋回内側のサイドクラッチの入り切りを繰り返してインチング旋回操作を行うことが容易となり、走行負荷の大きい圃場での小回り旋回に有効に活用できる。
【0075】
〔第2例〕
【0076】
この例の自動操向機構Aは以下のように構成されている。図11に示すように、ピットマンアーム65と中継点までの連係構造は前例と同様であるが、天秤アーム71の左右から延出されたロッド73と左右サイドクラッチ45の操作アーム62aとが長孔・ピンの融通をもって連係され、自動操向機構Aが作動して天秤アーム71が揺動されると、旋回内側となるサイドクラッチ45の操作アーム62aだけがクラッチ切り方向に回動されるようになっている。
【0077】
この例における左側のサイドクラッチ45が図12に示されている。この例では、従動側ドラム47と一体回転する出力ギヤ81が、歯を所定本数ごとに欠如した間欠ギヤ82のボス82aに遊嵌装着されるとともに、両ギヤ81,82が減速ギヤ機構43の従動ギヤ83に同時咬合されている。そして、間欠ギヤ82のボス部82aの端部が、従動側ドラム47の内側において横向き伝動軸41に遊嵌装着したバネ受けディスク84の中心部に咬合連結され、間欠ギヤ82とバネ受けディスク84が一体回転するように構成されている。
【0078】
また、サイドクラッチ45におけるボス部材46の端部には咬合爪85が形成されるとともに、バネ受けディス84には、この咬合爪85に咬合可能な係合孔86が形成されており、ボス部材46が図12中において左方にシフト操作されてクラッチ切り作動した後、更に左方に大きくシフトされると、咬合爪85が係合孔86に係合して間欠ギヤ82がボス部材46と一体に回転するようになっている。
【0079】
上記構成によると、通常の植付け作業中における前輪1の操向角度は設定角度未満の小さいものであり、ピットマンアーム65の揺動にかかわらず天秤アーム71は揺動作動することがなく、左右のサイドクラッチ45は共に入り状態に維持され、左右後輪2は等速で駆動される。この場合、横向き伝動軸41からの動力はサイドクラッチ45の従動側ドラム47から出力ギヤ81に伝達されて従動ギヤ83に伝達される。
【0080】
畦際での機体方向転換のために左右の前輪1を例えば左側に大きく操向すると、前輪1が設定角度以上に操向された時点から自動操向機構Aが作動を開始し、天秤アーム71が図7において時計回りに揺動し、これに連動して左側のサイドクラッチ45の操作アーム62aだけが反時計回りに回動され、ボス部材が図12において左方にシフトされてサイドクラッチが切られ、出力ギヤ81への動力伝達が断たれる。これによって、左右の前輪1と旋回外側となる右側の後輪2との3輪駆動によって機体が旋回し、サイドクラッチ45が切られて自由状態にある旋回内側(左側)の後輪2は機体の旋回移動に伴って接地追従して遊転する。
【0081】
そして、上記3輪駆動による旋回作動において、前輪1を最大限度まで左に操向すると、ボス部材46が更に左方にシフトすることで咬合爪85が係合孔に係合し、横向き伝動軸41の動力がボス部材46およびバネ受けディスク84を介して間欠ギヤ82に伝達されるようになり、間欠ギヤ82と従動ギヤ83との間欠伝動によって左側の後輪2が間欠的に駆動される。従って、所定の速度で右側の後輪2が連続回転駆動されるのに対して左側の後輪2が間欠的に駆動されることで左右後輪2に旋回力がもたらされ、機体は四輪駆動で小回り旋回作動する。
【0082】
〔第3例〕
【0083】
この例の自動操向機構Aは以下のように構成されている。図11に示すように、ピットマンアーム65の揺動角度がポテンショメータなどの角度センサ91で検出されて制御装置92の入力されるとともに、制御装置92によって作動制御される電動シリンダなどのアクチュエータ93によって左右後輪2に対するサイドクラッチ45の操作アーム62aが揺動操作されるように構成されている。
【0084】
この構成においては、角度センサ91からの情報に基づいて前輪1が設定角度以上に操向されたことが検知されると、旋回内側の後輪2に対するサイドクラッチ45の操作アーム62aがアクチュエータ93によって操作され、旋回内側の後輪2への動力伝達が断たれ、操向された左右の前輪1と旋回外側の後輪2との3輪駆動による小回り旋回が行われる。
【0085】
そして、前輪1が限界近くの所定角度以上に操向されたことが検知されると、アクチュエータ93が間欠的に作動して旋回内側のサイドクラッチ45が間欠的に入り切りされる状態になるとともに、前輪操向角度に応じて間欠周期が自動的に変更され、例えば、前輪操向角度が大きくなるほどクラッチ入り時間が長くなり、最大に操向した時にはサイドクラッチが連続入り状態となる。つまり、前輪を自動操向機構Aが作動する設定角度以上に操向し、かつ、限界近くまで大きく操向すると、左右後輪2による旋回力が次第に小さくなるのである。
【0086】
〔第4例〕
図11に示すように、前輪1が設定角度以上に操向されたことが角度センサ91で検出されると、これに連動して旋回内側の後輪2に対するサイドクラッチ45をアクチュエータ93で切り作動させる自動操向機構Aを備えた構造において、前輪1が操向限界まで操向されると自動操向機構Aによって切られていた旋回内側のサイドクラッチ45を入り作動させるように構成するとともに、前輪1がサイドクラッチ45を入り作動させる操向限界位置に操作する時にだけピットマンアーム65に作用するバネ式、摩擦式、あるいは、油圧式の抵抗付与手段を備えておく。このような構成によると、通常の操向時には抵抗付与手段が利くまでの範囲で前輪1を軽く旋回操することで、旋回内側の後輪2に対するサイドクラッチ45を切り作動させての小回り旋回を行い、操向限界において抵抗付与手段に打ち勝って意識的に前輪1を強く操向操作することで、切られていたサイドクラッチ45を入れて、左右後輪2による旋回力を無くした状態での比較的大きい旋回半径での旋回を行うことができる。
【0087】
〔別実施形態〕
本発明は、以下のような形態で実施することもできる。
【0088】
(2)上記した各実施形態では、左右の後輪のそれぞれに推進能力を抑制する推進能力抑制手段としてサイドクラッチのみを装備した構造を例示しているが、サイドクラッチの切り作動に引き続いてサイドブレーキを制動作動させて駆動の断たれた後輪2を制動する構成、いわゆるサイドクラッチ・ブレーキを装備した形態で実施することもできる。
【0089】
(2)また、左右後輪2をデフ機構を介して駆動するとともに、左右後輪2を独立的に制動をかけて推進能力を抑制するサイドブレーキを装備して実施することもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】乗用田植機の全体側面図
【図2】乗用田植機の全体平面図
【図3】走行系の伝動構造を示す概略図
【図4】作業系の伝動構造を示す概略図
【図5】後部伝動ケースの左側部分を示す縦断背面図
【図6】後部伝動ケースの右側部分を示す縦断背面図
【図7】第1例の自動操向機構を示す平面図
【図8】左側サイドクラッチの自動操向作動を示す平面図
【図9】左側サイドクラッチの自動操向作動を示す平面図
【図10】サイドクラッチ操作構造の変形例を示す平面図
【図11】第2例の自動操向機構を示す平面図
【図12】第2例の自動操向機構によって操作される左側サイドクラッチの縦断背面図
【図13】第3例および第4例の自動操向機構の構成図
【図14】機体旋回作動の説明図
【符号の説明】
1 前輪
2 後輪
A 自動操向機構
【発明の属する技術分野】
本発明は、機体の操向構造に特徴を有する田植機や水田直播機などの水田作業機に関する。
【0002】
【従来の技術】
代表的な水田作業機である田植機においては、左右の後輪のそれぞれに推進能力を抑制する推進能力抑制手段としてサイドクラッチやサイドブレーキなどを装備し、前輪を設定角度以上に操向させる作動に連動して、旋回内側となる後輪の推進能力抑制手段を作動させて、左右後輪に推進能力の差による機体旋回力を発揮させる自動操向機構を備えたものが実用化されている。
【0003】
上記自動操向機構は、前輪操向操作だけで左右後輪に機体旋回力を発揮させて小回り旋回を行うことができるものであり、旧来のように、左右一対備えたサイドクラッチペダルやサイドブレーキペダルを踏み分け操作しなくても小さい旋回半径での旋回を行うことができ、4条あるいは6条仕様などの条数の少ない(作業幅の小さい)仕様の機種では、畦際で機体をUターン旋回させる場合に、旋回から次行程の走行位置への位置合わせ(条合わせ)を一連にかつ速やかに行うことができ、自動操向機構の特徴を有効に発揮させることができるものである。
【0004】
しかし、8条あるいは10条仕などの条数の多い機種は、前行程の機体走行位置と次行程の機体走行位置との横方向間隔が大きいので、図14中のS1でに示すように、畦際での機体方向転換時の旋回半径が小さいと旋回過剰になりやすく、旋回を開始して次行程の機体走行位置への位置合わせ移動(条合わせ)に手間取ってしまうことになり、前記自動操向機構の特徴が十分に活用されにくものとなっていた。
【0005】
自動操向機構による旋回過剰の発生を抑制する手段としては、前行程の走行位置と次行程の走行位置との距離に対応して前輪の最大操向角度を小さ目に設定して、図14中のS2でに示すように、自動操向機構が作動した際の旋回半径を大き目に設定しておくことも考えられるが、これによると、畦際での機体方向転換時に、前輪を大きく操向操作しておくだけで、旋回を開始から次行程の機体走行位置への位置合わせ移動を円弧状の旋回移動軌跡でもって一連に速やかに行うことができるようになるのであるが、その反面、作業幅の大きい機体を大きい半径の円弧軌跡で旋回移動させるためには、畦際に形成する旋回スペース(枕地)Mの幅(畦からの距離)が全条植付け幅よりも大きいものとなってしまい、枕地を全条植えで回り植えした後に植え残した枕地を手植えしなければならなくなり、実用には不適当である。
【0006】
そこで、自動操向機構が作動して旋回内側の後輪のサイドクラッチが切られている小回り旋回状態の途中においても、解除ペダルを踏込むことで、切り操作されているサイドクラッチを強制的に入り作動させて左右後輪による機体旋回力を無くすようにし、解除ペダルを踏込んでいる間は、前輪だけの操向で機体を比較的大きい旋回半径で旋回作動させることができるようにして、略コの字形の軌跡での旋回を行いやすくする手段が提案された(例えば、特許文献1参照。)。
【0007】
【特許文献1】
特開2002−264835号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
提案されている上記構造によると、前輪操向に連動して自動的に切り操作されているサイドクラッチを無理に入り作動させための弾性融通機構を必要とし、このために連係構造が複雑になっていた。また、弾性融通に抗したペダル操作が必要となるためにペダル操作が重くなりがちであり、操作性の点で難点があった。
【0009】
本発明は、このような点に着目してなされたものであって、前輪を大きく操向操作するだけで小回り旋回を行うことのできる自動操向機構の特徴を活かしながら、必要に応じて旋回半径の大きい旋回をも行えるようにして、所望の機体旋回を行うことができるようにすることを主たる目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
〔請求項1に係る発明の構成、および、作用・効果〕
【0011】
請求項1に係る発明は、左右の後輪のそれぞれに推進能力を抑制する推進能力抑制手段を装備し、前輪を設定角度以上に操向させる作動に連動して、旋回内側となる後輪の推進能力抑制手段を作動させて、左右後輪に推進能力の差による機体旋回力を発揮させる自動操向機構を備えた水田作業機において、
前輪の設定角度以上の操向域に、旋回内側となる後輪の推進能力抑制手段を作動させる操向位置と、推進能力抑制手段を作動させない操向位置とを設けてあることを特徴とする。
【0012】
上記構成によると、前輪を設定角度以上に操向することで旋回内側の後輪に対する推進能力抑制手段が作動して小回り旋回が行われるが、前輪を設定角度以上の操作域における所定の操向位置に操向すれば、前輪を大きく操向させた状態で左右後輪を同等に駆動しての旋回状態をもたらすことができる。
【0013】
従って、請求項1の発明によると、前輪を大きく操向操作するだけで小回り旋回を行うことのできる自動操向機構の特徴を活かしながら、必要に応じて旋回半径の大きい旋回をも行うことができ、操向性能を向上することができる。
【0014】
〔請求項2に係る発明の構成、作用、および効果〕
【0015】
請求項2に係る発明は、左右の後輪のそれぞれに推進能力を抑制する推進能力抑制手段を装備し、前輪を設定角度以上に操向させる作動に連動して、旋回内側となる後輪の推進能力抑制手段を作動させて、左右後輪に推進能力の差による機体旋回力を発揮させる自動操向機構を備えた水田作業機において、
前輪の設定角度以上の操向域に、旋回内側となる後輪の推進能力抑制手段を作動させる操向位置、推進能力抑制手段の作動を解除する操向位置、および、推進能力抑制手段を作動させる操向位置をこの順で配置してあることを特徴とする。
【0016】
上記構成によると、前輪を設定角度以上に操向することで旋回内側の後輪に対する推進能力抑制手段が作動して小回り旋回が行われるが、前輪を設定角度以上の操作域の所定の操向位置に操向すれば、前輪を大きく操向させた状態で左右後輪を同等に駆動しての旋回状態をもたらすことができるとともに、前輪を最大に操向すれば旋回内側の後輪の推進能力を抑制しての小回り旋回状態となる。
【0017】
従って、請求項2の発明によると、前輪を大きく操向操作するだけで小回り旋回を行うことのできる自動操向機構の特徴を活かしながら、必要に応じて旋回半径の大きい旋回をも行うことができ、操向性能を向上することができる。
【0018】
〔請求項3に係る発明の構成、作用、および効果〕
【0019】
請求項3に係る発明は、左右の後輪のそれぞれに推進能力を抑制する推進能力抑制手段を装備し、前輪を設定角度以上に操向させる作動に連動して、旋回内側となる後輪の推進能力抑制手段を作動させて、左右後輪に推進能力の差による機体旋回力を発揮させる自動操向機構を備えた水田作業機において、
前輪が最大に操向されて推進能力抑制手段が作動している推進抑制状態から前輪が直進側に戻し操向されると、推進能力抑制手段が作動解除されるように構成してあることを特徴とする。
【0020】
上記構成によると、前輪を最大に操向すれば旋回内側の後輪の推進能力を抑制しての小回り旋回状態となるが、最大に操向した前輪を直進側に少し戻すと、旋回内側の後輪が通常の推進状態になり、前輪を大きく操向させた状態で左右後輪を同等に駆動しての旋回状態をもたらすことができる。
【0021】
従って、請求項3の発明によると、前輪を大きく操向操作するだけで小回り旋回を行うことのできる自動操向機構の特徴を活かしながら、必要に応じて旋回半径の大きい旋回をも行行うことができ、操向性能を向上することができる。
【0022】
〔請求項4に係る発明の構成、作用、および効果〕
【0023】
請求項4に係る発明は、左右の後輪のそれぞれに推進能力を抑制する推進能力抑制手段を装備し、前輪を設定角度以上に操向させる作動に連動して、旋回内側となる後輪の推進能力抑制手段を作動させて、左右後輪に推進能力の差による機体旋回力を発揮させる自動操向機構を備えた水田作業機において、
前輪を最大に操向操作することで推進能力抑制手段が作動解除されるように構成するとともに、この時の前輪操向操作に抵抗が付与されるよう構成してあることを特徴とする。
【0024】
上記構成によると、前輪を設定角度以上に大きく操向すれば旋回内側の後輪の推進能力を抑制しての小回り旋回状態となるが、前輪を最大に操向すると、旋回内側の後輪が通常の推進状態になり、前輪を大きく操向させた状態で左右後輪を同等に駆動しての旋回状態をもたらすことができる。そして、このように前輪を最大に操向するには操作抵抗が大きくなるので、左右後輪を同等に駆動しての旋回状態にあるかどうかを前輪操作力の大きさで認識することができる。
【0025】
従って、請求項4の発明によると、通常は自動操向機構を働かせての小回り旋回を行うことができるとともに、小回り旋回中でも意識的に前輪を限界位置まで強く操向操作すれば、左右後輪を同等に駆動しての旋回を行うことができ、圃場条件や機体の仕様などに応じた操向を好適に行える。
【0026】
〔請求項5に係る発明の構成、作用、および効果〕
【0027】
請求項5に係る発明は、左右の後輪のそれぞれに推進能力を抑制する推進能力抑制手段を装備し、前輪を設定角度以上に操向させる作動に連動して、旋回内側となる後輪の推進能力抑制手段を作動させて、左右後輪に推進能力の差による機体旋回力を発揮させる自動操向機構を備えた水田作業機において、
設定角度以上の前輪操作域における所定操向位置で、旋回内側となる後輪を低速で駆動する強制駆動手段を備えてあることを特徴とする。
【0028】
上記構成によると、前輪を設定角度以上に操向することで旋回内側の後輪に対する推進能力抑制手段が作動して小回り旋回が行われるが、前輪を設定角度以上の操作域における所定の操向位置に操向すれば、旋回内側となる後輪を低速で駆動する状態をもたらすことができ、前輪を大きく操向させた状態で左右後輪に強制的な旋回力を発揮させながら旋回を行うことができる。
【0029】
従って、請求項5の発明によると、前輪を大きく操向操作するだけで小回り旋回を行うことのできる自動操向機構の特徴を活かしながら、必要に応じて比較的大きい旋回半径での旋回を行行うことができ、操向性能の向上に有効となる。
【0030】
〔請求項6に係る発明の構成、作用、および効果〕
【0031】
請求項6に係る発明は、左右の後輪のそれぞれに推進能力を抑制する推進能力抑制手段を装備し、前輪を設定角度以上に操向させる作動に連動して、旋回内側となる後輪の推進能力抑制手段を作動させて、左右後輪に推進能力の差による機体旋回力を発揮させる自動操向機構を備えた水田作業機において、
前輪が最大に操向操作された時に旋回内側となる後輪を低速で駆動する強制駆動手段を備えてあることを特徴とする。
【0032】
上記構成によると、前輪を設定角度以上に大きく操向すれば旋回内側の後輪の推進能力を抑制しての小回り旋回状態となるが、前輪を最大に操向すると、旋回内側となる後輪を低速で駆動する状態をもたらすことができ、前輪を大きく操向させた状態で左右後輪に強制的な旋回力を発揮させながら比較的大きい旋回半径での旋回を行うことができる。
【0033】
従って、請求項6の発明によると、前輪を大きく操向操作するだけで小回り旋回を行うことのできる自動操向機構の特徴を活かしながら、必要に応じて旋回半径の大きい旋回をも行行うことができ、操向性能の向上に有効となる。
【0034】
〔請求項7に係る発明の構成、作用、および効果〕
【0035】
請求項7に係る発明は、左右の後輪のそれぞれに推進能力を抑制する推進能力抑制手段を装備し、前輪を設定角度以上に操向させる作動に連動して、旋回内側となる後輪の推進能力抑制手段を作動させて、左右後輪に推進能力の差による機体旋回力を発揮させる自動操向機構を備えた水田作業機において、
前輪が最大に操向操作された時に旋回内側となる後輪を間欠駆動する強制駆動手段を備えてあることを特徴とする。
【0036】
上記構成によると、前輪を設定角度以上に大きく操向すれば旋回内側の後輪の推進能力を抑制しての小回り旋回状態となるが、前輪を最大に操向すると、旋回内側となる後輪を間欠的に駆動する状態をもたらすことができ、前輪を大きく操向させた状態で左右後輪に強制的な旋回力を発揮させながら比較的大きい旋回半径での旋回を行うことができる。
【0037】
従って、請求項7の発明によると、前輪を大きく操向操作するだけで小回り旋回を行うことのできる自動操向機構の特徴を活かしながら、必要に応じて旋回半径の大きい旋回をも行行うことができ、操向性能の向上に有効となる。
【0038】
〔請求項8に係る発明の構成、作用、および効果〕
【0039】
請求項8に係る発明は、左右の後輪のそれぞれに推進能力を抑制する推進能力抑制手段を装備し、前輪を設定角度以上に操向させる作動に連動して、旋回内側となる後輪の推進能力抑制手段を作動させて、左右後輪に推進能力の差による機体旋回力を発揮させる自動操向機構を備えた水田作業機において、
設定角度以上の前輪の操向に連動して、旋回内側の後輪に対する推進能力抑制手段を間欠作動させるよう構成してあることを特徴とする。
【0040】
上記構成によると、前輪を設定角度以上に大きく操向すれば旋回内側の後輪の推進能力を抑制しての小回り旋回状態となるが、前輪を設定角度以上の操作域で大きく操向すると、旋回内側となる後輪が推進能力が抑制された状態と通常の推進状態とが繰り返される状態がもたらされ、前輪を大きく操向させた状態で左右後輪に或る程度の旋回力を発揮させた旋回を行うことができる。
【0041】
従って、請求項8の発明によると、前輪を大きく操向操作するだけで小回り旋回を行うことのできる自動操向機構の特徴を活かしながら、必要に応じて旋回半径の大きい旋回をも行行うことができ、操向性能の向上に有効となる。
【0042】
〔請求項9に係る発明の構成、作用、および効果〕
【0043】
請求項9に係る発明は、左右の後輪のそれぞれに推進能力を抑制する推進能力抑制手段を装備し、前輪を設定角度以上に操向させる作動に連動して、旋回内側となる後輪の推進能力抑制手段を作動させて、左右後輪に推進能力の差による機体旋回力を発揮させる自動操向機構を備えた水田作業機において、
設定角度以上の前輪の操向に連動して、旋回内側の後輪に対する推進能力抑制手段を間欠作動させるとともに、前輪の操向角度に応じて前記間欠周期が変化するよう設定してあることを特徴とする。
【0044】
上記構成によると、前輪を設定角度以上に大きく操向すれば旋回内側の後輪の推進能力を抑制しての小回り旋回状態となるが、前輪を設定角度以上の操作域で大きく操向すると、旋回内側となる後輪が推進能力が抑制された状態と通常の推進状態とが繰り返される状態がもたらされ、前輪を大きく操向させた状態で左右後輪に或る程度の旋回力を発揮させた旋回を行うことができる。しかも、前輪操向角度に応じて間欠周期が変わるので、左右後輪によってもたらされる旋回力を前輪操向によって選択することができる。
【0045】
従って、請求項9の発明によると、前輪を大きく操向操作するだけで小回り旋回を行うことのできる自動操向機構の特徴を活かしながら、必要に応じて旋回半径の大きい旋回をも行行うことができ、操向性能の向上に有効となる。
【0046】
【発明の実施の形態】
図1、図2に、水田作業機の一例として乗用型田植機が示されている。この乗用型田植機は、操向自在な左右一対の前輪1と操向不能な左右一対の後輪2とを備えた四輪駆動型の走行機体3の後部に、8条植え仕様の苗植付け装置4が油圧シリンダ5によって駆動されるリンク機構6を介して昇降自在に連結されるとともに、機体後部に8条仕様の施肥装置7が装備された構造となっている。
【0047】
前記走行機体3における機体フレーム8の前部には、前輪1を軸支したミッションケース9が連結固定されるとともに、機体フレーム8の後部には、後輪2を軸支した後部伝動ケース10がローリング自在に支持されている。また、ミッションケース9の前側に、横軸型のエンジン11が配備されるとともに、エンジン11の後方に位置する搭乗運転部に、前輪1を操向操作するためのステアリングハンドル12、運転座席13、ステップ14などが備えられている。
【0048】
前記苗植付け装置4は、8条分の苗を載置して左右方向に設定ストロークで往復移動される苗のせ台16、苗のせ台16の下端から1株分づつ苗を切り出して圃場に植付けてゆく8組の回転式の植付け機構17、植付け箇所を整地する5個の整地フロート18、等を備えて構成されており、苗のせ台16に補給するための予備苗を複数段に載置収容する予備苗のせ台19が、機体前部の左右に配備されている。
【0049】
前記施肥装置7は、運転座席13と苗植付け装置4との間において走行機体3上に搭載されており、粉粒状の肥料を貯留する肥料ホッパー21、この肥料ホッパー21内の肥料を設定量づつ繰り出す繰出し機構22、繰り出された肥料を供給ホース23を介して前記整地フロート18に備えた作溝器24に風力搬送する電動ブロア25、などを備えている。
【0050】
前記ミッションケース9の左側面には、前記エンジン11にベルト連動された静油圧式無段変速装置(HST)からなる主変速装置31が連結装備されており、この主変速装置31を操作するための主変速レバー32が、前記ステアリングハンドル12の左横脇に配置されている。この主変速レバー32は、中立停止位置から前方への揺動操作によって前進速度の変更が、また、中立停止位置から後方への揺動操作によって後進速度の変更が可能となっている。
【0051】
図3,図4に示すように、ミッションケース9内には、前記主変速装置31からの出力を高低二段に変速するギヤ式の副変速機構33と、この副変速機構33からの出力を左右の前輪1に伝達するデフロック付きのデフ機構34とが設置されているとともに、走行伝動系から分岐した動力の正転動力のみを苗植付け装置4へ伝達する一方向クラッチ35と、これからの動力を6段に変速する株間変速機構36と、苗植付け装置4への動力伝達用のPTO軸37、このPTO軸からの動力伝達を断続する植付けクラッチ38、等が装備されている。
【0052】
前記副変速機構33は、ギヤシフトによって植付け作業用の低速段、移動走行用の高速段に切換え可能に構成され、この副変速機構33を操作するための副変速レバー39が運転座席13の左横脇に配置されている。なお、前記デフ機構34は、運転部におけるステップ14上に配備したデフロックペダル40の踏み込み操作によってロックされて、左右前輪1が等速で駆動されるようになっている。
【0053】
後輪駆動用の後部伝動ケース10は、図5〜図7に示すように、機体フレーム8に前後軸芯X周りに一定範囲内でローリング自在に支持された横向き伝動ケース部10Aと、その左右両端それぞれに連結された減速ケース部10Bとから構成されており、その横向き伝動ケース部10A内に、ミッションケース8から後ろ向きに延出された主伝動軸15からの動力を左右に振り分ける横向き伝動軸41が内装されて主伝動軸15にベベルギヤ連動されている。また、各減速ケース部10Bには後輪2を軸支する車軸42と、前記横向き伝動軸41と車軸42とを減速連動する減速ギヤ機構43が装備されている。
【0054】
そして、横向き伝動軸41の両端と各減速ギヤ機構43との間には、各後輪2の推進能力を抑制する手段として摩擦式のサイドクラッチ45が介装されている。これらサイドクラッチ45は、横向き伝動軸41にスプライン嵌合されて一体回転するとともに軸芯方向に移動自在なボス部材46と、減速ギヤ機構43に連動する従動側ドラム47とを備え、ボス部材46の機体横外方への移動により互いに圧接されて摩擦連動(クラッチ入り)するとともに、ボス部材の機体横内方への移動により摩擦連動を解除(クラッチ切り)する複数の摩擦板48がボス部材46と従動側ドラム47とに交互に係合装着され、ボス部材46をクラッチ入り側に移動付勢するクラッチバネ49が横向き伝動軸41に外嵌装着された構造となっている。
【0055】
また、右側の減速ケース部10Bと右側サイドクラッチ45のボス部材46との間には、機体停止用のブレーキ50が設けられている。このブレーキ50は、前記ボス部材46の外周にスプライン外嵌装着された摩擦板51と減速ケース部10Bの内周に係合して回り止めした摩擦板52とを圧接することで、ボス部材46とこれと一体回転する横向き伝動軸41を制動するよう構成されたものであり、ボス部材46に遊嵌したカップ状の操作部材53が機体横外方へ移動されることで摩擦板51,52同士が圧接されるようになっている。
【0056】
機体停止用の前記ブレーキ50は、減速ケース10Bの上面に縦軸心P1周りに回転自在に貫通装着したブレーキ操作軸54によって操作されるようになっている。つまり、ブレーキ操作軸54のケース内突入部分にはシフトフォーク55が装着されるとともに、このシフトフォーク55が前記操作部材53の端面に対向配備されており、ブレーキ操作軸54を回動することでシフトフォーク55を介して操作部材53をシフトさせて、ボス部材46を制動することができるようになっている。
【0057】
そして、図7に示すように、前記ブレーキ操作軸54のケース外突出部に備えた操作アーム54aが、運転部におけるステップ14の足元右前に配備されたペダル56に連係ロッド57を介して連動連結されており、ペダル56の踏み込み操作に伴って連係ロッド57が前方に引張り変位されてブレーキ50が制動操作され、踏み込みを解除することでブレーキ50制動が解除されるようになっている。また、踏込み操作されたペダル50をロックレバー58で係止保持することで、駐車状態をもたらすことができるようになっている。なお、詳細な構造は省略するが、ペダル56を連結した支軸56aの左端部が前記主変速装置31の操作系に機械的に連係されており、ペダル56を踏み込むと、前進域あるいは後進域に操作されている主変速レバー32が、強制的に中立停止位置に戻されるようになっている。
【0058】
前記サイドクラッチ45の操作構造は以下のように構成されている。つまり、前記ボス部材46の端面にスラストカラー60を介して突き合わせ配置されたクラッチ操作スリーブ61が横向き伝動軸41にスライド可能に挿嵌されるとともに、減速ケース部10Aの上面に縦軸芯P2周りに回動自在にクラッチ操作軸62が貫通装着され、このクラッチ操作軸62のケース内突入端部に形成した偏心カム63が前記クラッチ操作スリーブ61の端面に対向配置され、クラッチ操作軸62の回動操作によってサイドクラッチ45が入り切り操作されるようになっている。なお、図5中に示すように、左側のサイドクラッチ45のクラッチ操作軸62は、平面視で反時計回りの回動によってクラッチ切り作動し、時計回りの回動ではクラッチ入り状態が維持され、また、図6中に示すように、右側のサイドクラッチ45のクラッチ操作軸62は、平面視で時計回りの回動によってクラッチ切り作動し、反時計回りの回動ではクラッチ入り状態が維持されるように、偏心カム63の位相が設定されている。
【0059】
そして、前輪1が直進位置から設定角度以上に操向作動されるのに連動して旋回内側のサイドクラッチ45だけを自動的に切り操作して、左右後輪2の推進能力に差異をもたらして機体旋回力をもたらす自動操向機構Aが備えられており、以下、自動操向機構Aの具体構成について説明する。
【0060】
〔第1例〕
【0061】
この例の自動操向機構Aは以下のように構成されている。つまり、図7に示すように、ステアリングハンドル12の回動操作によって縦軸心Z周りに左右に揺動されるピットマンアーム65と、前輪1それぞれのナックルアーム66とがタイロッド67を介して連動連結されてステアリングリンク機構68が構成されるとともに、このピットマンアーム65に連設した操作金具65aと、機体の前後中間付近の下部に縦軸芯Y周りに揺動可能に配備した中継アーム69とが押し引きロッド70で連動連結され、この中継アーム69と一体に縦軸芯Y周りに揺動する天秤アーム71が備えられている。他方、後部伝動ケース10の左右に取り付けたブラケット76には、支点P3周りに回動可能にカムレバー72が装備されており左右の、各カムレバー72と天秤アーム71の左右端とがロッド73を介して連動連結されている。そして、前記クラッチ操作軸62のケース外突出部に連設した操作アーム62aの先端ローラ74が、カムレバー72の外周に対向配備されている。
【0062】
ここで、前記押し引きロッド70の前端は操作金具65aの長孔75に連動連結されており、ピットマンアーム65が設定角度未満の揺動される時には長孔75の融通によって押し引きロッド70は操作されることがなく、自動操向機構Aは作動することはない。そして、ピットマンアームが設定角度以上に大きく揺動されると押し引きロッド70が押しあるいは引き操作されて、自動操向機構Aが作動するようになっている。
【0063】
また、ロッド73とカムレバー72とは、ロッド73の後端部に形成した長孔77とカムレバー72に設けたピン78とを介して連動連結されており、一方のロッド73が前方への引き操作されて一方のカムレバー72が回動される時、他方のロッド73の後方への押し移動が長孔77によって吸収されて他方のカムレバー72に回動操作力が伝達されないように構成されている。また、図示されていないが、カムレバー72は、その回動支点部に装備されたねじりバネによってロッド73を後方に引く方向に回動付勢されている。つまり、図7において左側のカムレバー72は反時計回りに、また、右側のカムレバー72は時計回りにそれぞれ回動付勢され、自動操向機構Aが作動していない通常時は、回動付勢された各カムレバー72はストッパ79によって基準位置に受け止め支持されている〔図8(イ)参照〕。
【0064】
左右のカムレバーの作動は作動方向が左右勝手違いであるだけで同等に作動するので、その作動を左側のカムレバーについて図8および図9に基づいて説明する。
【0065】
図8(イ)に示すように、前記カムレバー72の外周には小径カム部C1、第1大径カム部C2、凹入カム部C3、および、第2大径カム部C4が形成されており、カムレバー72が基準位置にある時、クラッチ切り位置にある操作アーム62aの先端ローラ74が小径カム部C1に対向している。そして、第1大径カム部C2は基点から角度αの位置に局部的に形成され、また、凹入カム部C3は基点から角度βの位置に局部的形成され、かつ、第2大径カム部C4は基点から角度γ以上の領域に形成されている。
【0066】
上記構成によると、通常の植付け作業中における前輪1の操向角度は設定角度未満の小さいものであり、ピットマンアーム65の揺動にかかわらず天秤アーム71は揺動作動することがなく、左右のカムレバーも基準位置に保持されて左右のサイドクラッチ45は共に入り状態に維持され、左右後輪2は等速で駆動される。
【0067】
畦際での機体方向転換のために左右の前輪1を例えば左側に最大限まで操向すると、前輪1が設定角度以上に操向された時点から自動操向機構Aが作動を開始し、天秤アーム71が図7において時計回りに揺動し、これに連動して左側のカムレバー72だけが反時計回りに回動され、先ず、図8(ロ)に示すように、第1大径カム部C2によって先端ローラ74が押圧されることで操作アーム62aが反時計回りに揺動され、左側のサイドクラッチ45が切り操作される。そして、図8(ハ)に示すように、前輪1の操向に伴ってカムレバー72が更に反時計回りに回動されることで先端ローラ74が凹入カム部C3に落ち込むことになるが、この場合の操作アーム62aはクラッチ入り位置にまでは大きく復帰揺動することができず、クラッチ切り状態が維持される。そして、前輪1の更なる操向に伴ってカムレバー72が大きく反時計回りに回動されることで、図8(ニ)に示すように、先端ローラ74が第2大径カム部C4に乗り上がることで操作アーム62aが反時計回りに大きく揺動され、左側のサイドクラッチ45が十分なストロークで切り操作される。
【0068】
このように、前輪1を設定角度以上に左側に大きく操向して自動操向機構Aが作動する状態では、旋回内側となる左側のサイドクラッチ45が自動的に切られ、左右の前輪1と旋回外側となる右側の後輪2との3輪駆動によって機体が旋回し、サイドクラッチ45が切られて自由状態にある旋回内側(左側)の後輪2は機体の旋回移動に伴って接地追従して遊転し、旋回内側の後輪2で不当に圃場を荒らすことなく機体旋回が行われる。
【0069】
ここで、13 に示すように、8条植え仕様の田植機では畦際での機体方向転換を行う際、畦際に8条分の周り植えを行う幅のスペース(枕地)Mを過不足なく残して機体方向転換を行って次行程の条合わせを行うことが要求されるものであり、そのために略コの字状の軌跡をとって方向転換を行うことが望ましい。そこで、上記のように3輪駆動による小回り旋回で機体を或る程度旋回させたところで、ステアリングハンドル12を右方に少し切り戻すと、図9(ホ)に示すように、カムレバー72が反時計回りに回動されて、先端ローラ74が小径カム部C3に落ち込んで左側サイドクラッチ45が入り状態となる。
【0070】
このように大きく操向した前輪1をに少し戻して左右のサイドクラッチ45を共に入れた状態では、左右後輪2の推進力差による旋回力は発生しないので、操向された前輪1のみによって機体が旋回することになり、その旋回半径は大きいものとなり、図13中における横向き移動軌跡を得るのに好都合となる。
【0071】
そして、この横向き移動の終了近くに至ったところで前輪1を再度左方に大きく操向操作することで、再び図8(ニ)に示すように、左側のカムレバー72を時計回りに大きく回動させて、左側のサイドクラッチ45を切り操作し、3輪駆動による小回り旋回で機体を旋回させて次行程の始端に向かうことができ、その後、前輪1を直進近くまで戻して所望の条合わせを行うのである。
【0072】
ここで、左側限界あるいはその近くまで操向した前輪1を直進に戻す場合、上記したように、先ず、図9(ホ)に示すように、先端ローラ74が小径カム部C3に落ち込んでクラッチ入り状態がもたらされ、その後のハンドル戻しに連動してカムレバー72が反時計回りに回動し、図9(ヘ)に示すように、第1大径カム部C2によって操作アーム62aが時計回りに揺動されることになるが、上記したように、左側のサイドクラッチ45においては、クラッチ操作軸62の時計回りの回動に対しては切り操作されることがない。そして、ハンドルの切り戻しに連動して更にカムレバー72が反時計回りに回動すると、先端ローラ74が第1大径カム部C2を乗り越えたところで、操作アーム62aは復帰バネ79によって元のクラッチ入り位置に戻される。つまり、先端ローラ74が小径カム部C3に落ち込んだ以降の直進への戻し操作中は常にクラッチ入り状態がもたらされるのである。
【0073】
なお、3輪駆動による小回り旋回作動中に、走行負荷によって推進が困難になったような場合にも、前輪1を少し切り戻して図9(ホ)に示す状態を現出することで四輪駆動による十分な推力で旋回することができるものであり、この機能は、4条〜6条仕様の田植機において、自動操向機構Aを作動させての小回り旋回中に走行負荷に対して推力不足となったり、前輪1の浮き上がりによって旋回の続行が困難になったような場合に有効に活用することができるものである。
【0074】
図10に、前記カムレバー72の変形例が示されている。この例のカムレバー72では、前記小径カム部C3が、前輪1が最大に操向された時のカムレバー72の回動位置に近くに設定されており、これによると、前輪1を最大に操向した状態から少し戻すだけでクラッチ入り状態を現出することができ、前輪1を比較的大きく操向した状態で旋回内側のサイドクラッチの入り切りを繰り返してインチング旋回操作を行うことが容易となり、走行負荷の大きい圃場での小回り旋回に有効に活用できる。
【0075】
〔第2例〕
【0076】
この例の自動操向機構Aは以下のように構成されている。図11に示すように、ピットマンアーム65と中継点までの連係構造は前例と同様であるが、天秤アーム71の左右から延出されたロッド73と左右サイドクラッチ45の操作アーム62aとが長孔・ピンの融通をもって連係され、自動操向機構Aが作動して天秤アーム71が揺動されると、旋回内側となるサイドクラッチ45の操作アーム62aだけがクラッチ切り方向に回動されるようになっている。
【0077】
この例における左側のサイドクラッチ45が図12に示されている。この例では、従動側ドラム47と一体回転する出力ギヤ81が、歯を所定本数ごとに欠如した間欠ギヤ82のボス82aに遊嵌装着されるとともに、両ギヤ81,82が減速ギヤ機構43の従動ギヤ83に同時咬合されている。そして、間欠ギヤ82のボス部82aの端部が、従動側ドラム47の内側において横向き伝動軸41に遊嵌装着したバネ受けディスク84の中心部に咬合連結され、間欠ギヤ82とバネ受けディスク84が一体回転するように構成されている。
【0078】
また、サイドクラッチ45におけるボス部材46の端部には咬合爪85が形成されるとともに、バネ受けディス84には、この咬合爪85に咬合可能な係合孔86が形成されており、ボス部材46が図12中において左方にシフト操作されてクラッチ切り作動した後、更に左方に大きくシフトされると、咬合爪85が係合孔86に係合して間欠ギヤ82がボス部材46と一体に回転するようになっている。
【0079】
上記構成によると、通常の植付け作業中における前輪1の操向角度は設定角度未満の小さいものであり、ピットマンアーム65の揺動にかかわらず天秤アーム71は揺動作動することがなく、左右のサイドクラッチ45は共に入り状態に維持され、左右後輪2は等速で駆動される。この場合、横向き伝動軸41からの動力はサイドクラッチ45の従動側ドラム47から出力ギヤ81に伝達されて従動ギヤ83に伝達される。
【0080】
畦際での機体方向転換のために左右の前輪1を例えば左側に大きく操向すると、前輪1が設定角度以上に操向された時点から自動操向機構Aが作動を開始し、天秤アーム71が図7において時計回りに揺動し、これに連動して左側のサイドクラッチ45の操作アーム62aだけが反時計回りに回動され、ボス部材が図12において左方にシフトされてサイドクラッチが切られ、出力ギヤ81への動力伝達が断たれる。これによって、左右の前輪1と旋回外側となる右側の後輪2との3輪駆動によって機体が旋回し、サイドクラッチ45が切られて自由状態にある旋回内側(左側)の後輪2は機体の旋回移動に伴って接地追従して遊転する。
【0081】
そして、上記3輪駆動による旋回作動において、前輪1を最大限度まで左に操向すると、ボス部材46が更に左方にシフトすることで咬合爪85が係合孔に係合し、横向き伝動軸41の動力がボス部材46およびバネ受けディスク84を介して間欠ギヤ82に伝達されるようになり、間欠ギヤ82と従動ギヤ83との間欠伝動によって左側の後輪2が間欠的に駆動される。従って、所定の速度で右側の後輪2が連続回転駆動されるのに対して左側の後輪2が間欠的に駆動されることで左右後輪2に旋回力がもたらされ、機体は四輪駆動で小回り旋回作動する。
【0082】
〔第3例〕
【0083】
この例の自動操向機構Aは以下のように構成されている。図11に示すように、ピットマンアーム65の揺動角度がポテンショメータなどの角度センサ91で検出されて制御装置92の入力されるとともに、制御装置92によって作動制御される電動シリンダなどのアクチュエータ93によって左右後輪2に対するサイドクラッチ45の操作アーム62aが揺動操作されるように構成されている。
【0084】
この構成においては、角度センサ91からの情報に基づいて前輪1が設定角度以上に操向されたことが検知されると、旋回内側の後輪2に対するサイドクラッチ45の操作アーム62aがアクチュエータ93によって操作され、旋回内側の後輪2への動力伝達が断たれ、操向された左右の前輪1と旋回外側の後輪2との3輪駆動による小回り旋回が行われる。
【0085】
そして、前輪1が限界近くの所定角度以上に操向されたことが検知されると、アクチュエータ93が間欠的に作動して旋回内側のサイドクラッチ45が間欠的に入り切りされる状態になるとともに、前輪操向角度に応じて間欠周期が自動的に変更され、例えば、前輪操向角度が大きくなるほどクラッチ入り時間が長くなり、最大に操向した時にはサイドクラッチが連続入り状態となる。つまり、前輪を自動操向機構Aが作動する設定角度以上に操向し、かつ、限界近くまで大きく操向すると、左右後輪2による旋回力が次第に小さくなるのである。
【0086】
〔第4例〕
図11に示すように、前輪1が設定角度以上に操向されたことが角度センサ91で検出されると、これに連動して旋回内側の後輪2に対するサイドクラッチ45をアクチュエータ93で切り作動させる自動操向機構Aを備えた構造において、前輪1が操向限界まで操向されると自動操向機構Aによって切られていた旋回内側のサイドクラッチ45を入り作動させるように構成するとともに、前輪1がサイドクラッチ45を入り作動させる操向限界位置に操作する時にだけピットマンアーム65に作用するバネ式、摩擦式、あるいは、油圧式の抵抗付与手段を備えておく。このような構成によると、通常の操向時には抵抗付与手段が利くまでの範囲で前輪1を軽く旋回操することで、旋回内側の後輪2に対するサイドクラッチ45を切り作動させての小回り旋回を行い、操向限界において抵抗付与手段に打ち勝って意識的に前輪1を強く操向操作することで、切られていたサイドクラッチ45を入れて、左右後輪2による旋回力を無くした状態での比較的大きい旋回半径での旋回を行うことができる。
【0087】
〔別実施形態〕
本発明は、以下のような形態で実施することもできる。
【0088】
(2)上記した各実施形態では、左右の後輪のそれぞれに推進能力を抑制する推進能力抑制手段としてサイドクラッチのみを装備した構造を例示しているが、サイドクラッチの切り作動に引き続いてサイドブレーキを制動作動させて駆動の断たれた後輪2を制動する構成、いわゆるサイドクラッチ・ブレーキを装備した形態で実施することもできる。
【0089】
(2)また、左右後輪2をデフ機構を介して駆動するとともに、左右後輪2を独立的に制動をかけて推進能力を抑制するサイドブレーキを装備して実施することもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】乗用田植機の全体側面図
【図2】乗用田植機の全体平面図
【図3】走行系の伝動構造を示す概略図
【図4】作業系の伝動構造を示す概略図
【図5】後部伝動ケースの左側部分を示す縦断背面図
【図6】後部伝動ケースの右側部分を示す縦断背面図
【図7】第1例の自動操向機構を示す平面図
【図8】左側サイドクラッチの自動操向作動を示す平面図
【図9】左側サイドクラッチの自動操向作動を示す平面図
【図10】サイドクラッチ操作構造の変形例を示す平面図
【図11】第2例の自動操向機構を示す平面図
【図12】第2例の自動操向機構によって操作される左側サイドクラッチの縦断背面図
【図13】第3例および第4例の自動操向機構の構成図
【図14】機体旋回作動の説明図
【符号の説明】
1 前輪
2 後輪
A 自動操向機構
Claims (9)
- 左右の後輪のそれぞれに推進能力を抑制する推進能力抑制手段を装備し、前輪を設定角度以上に操向させる作動に連動して、旋回内側となる後輪の推進能力抑制手段を作動させて、左右後輪に推進能力の差による機体旋回力を発揮させる自動操向機構を備えた水田作業機において、
前輪の設定角度以上の操向域に、旋回内側となる後輪の推進能力抑制手段を作動させる操向位置と、推進能力抑制手段を作動させない操向位置とを設けてあることを特徴とする水田作業機。 - 左右の後輪のそれぞれに推進能力を抑制する推進能力抑制手段を装備し、前輪を設定角度以上に操向させる作動に連動して、旋回内側となる後輪の推進能力抑制手段を作動させて、左右後輪に推進能力の差による機体旋回力を発揮させる自動操向機構を備えた水田作業機において、
前輪の設定角度以上の操向域に、旋回内側となる後輪の推進能力抑制手段を作動させる操向位置、推進能力抑制手段の作動を解除する操向位置、および、推進能力抑制手段を作動させる操向位置をこの順で配置してあることを特徴とする水田作業機。 - 左右の後輪のそれぞれに推進能力を抑制する推進能力抑制手段を装備し、前輪を設定角度以上に操向させる作動に連動して、旋回内側となる後輪の推進能力抑制手段を作動させて、左右後輪に推進能力の差による機体旋回力を発揮させる自動操向機構を備えた水田作業機において、
前輪が最大に操向されて推進能力抑制手段が作動している推進抑制状態から前輪が直進側に戻し操向されると、推進能力抑制手段が作動解除されるように構成してあることを特徴とする水田作業機。 - 左右の後輪のそれぞれに推進能力を抑制する推進能力抑制手段を装備し、前輪を設定角度以上に操向させる作動に連動して、旋回内側となる後輪の推進能力抑制手段を作動させて、左右後輪に推進能力の差による機体旋回力を発揮させる自動操向機構を備えた水田作業機において、
前輪を最大に操向操作することで推進能力抑制手段が作動解除されるように構成するとともに、この時の前輪操向操作に抵抗が付与されるよう構成してあることを特徴とする水田作業機。 - 左右の後輪のそれぞれに推進能力を抑制する推進能力抑制手段を装備し、前輪を設定角度以上に操向させる作動に連動して、旋回内側となる後輪の推進能力抑制手段を作動させて、左右後輪に推進能力の差による機体旋回力を発揮させる自動操向機構を備えた水田作業機において、
設定角度以上の前輪操作域における所定操向位置で、旋回内側となる後輪を低速で駆動する強制駆動手段を備えてあることを特徴とする水田作業機。 - 左右の後輪のそれぞれに推進能力を抑制する推進能力抑制手段を装備し、前輪を設定角度以上に操向させる作動に連動して、旋回内側となる後輪の推進能力抑制手段を作動させて、左右後輪に推進能力の差による機体旋回力を発揮させる自動操向機構を備えた水田作業機において、
前輪が最大に操向操作された時に旋回内側となる後輪を低速で駆動する強制駆動手段を備えてあることを特徴とする水田作業機。 - 左右の後輪のそれぞれに推進能力を抑制する推進能力抑制手段を装備し、前輪を設定角度以上に操向させる作動に連動して、旋回内側となる後輪の推進能力抑制手段を作動させて、左右後輪に推進能力の差による機体旋回力を発揮させる自動操向機構を備えた水田作業機において、
前輪が最大に操向操作された時に旋回内側となる後輪を間欠駆動する強制駆動手段を備えてあることを特徴とする水田作業機。 - 左右の後輪のそれぞれに推進能力を抑制する推進能力抑制手段を装備し、前輪を設定角度以上に操向させる作動に連動して、旋回内側となる後輪の推進能力抑制手段を作動させて、左右後輪に推進能力の差による機体旋回力を発揮させる自動操向機構を備えた水田作業機において、
設定角度以上の前輪の操向に連動して、旋回内側の後輪に対する推進能力抑制手段を間欠作動させるよう構成してあることを特徴とする水田作業機。 - 左右の後輪のそれぞれに推進能力を抑制する推進能力抑制手段を装備し、前輪を設定角度以上に操向させる作動に連動して、旋回内側となる後輪の推進能力抑制手段を作動させて、左右後輪に推進能力の差による機体旋回力を発揮させる自動操向機構を備えた水田作業機において、
設定角度以上の前輪の操向に連動して、旋回内側の後輪に対する推進能力抑制手段を間欠作動させるとともに、前輪の操向角度に応じて前記間欠周期が変化するよう設定してあることを特徴とする水田作業機。
Priority Applications (3)
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JP2013119356A (ja) * | 2011-12-08 | 2013-06-17 | Yanmar Co Ltd | 作業機 |
-
2002
- 2002-09-30 JP JP2002285779A patent/JP2004122811A/ja active Pending
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