JP2004190500A - スタータ - Google Patents

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Abstract

【課題】二段作動を確実に行うことができるスタータ1を提供する。
【解決手段】電磁スイッチ3の吸引力を受けてピニオン規制部材6を作動させるクランクバー7は、ピニオン規制部材6によりピニオン5の回転が規制されてからピニオンギヤ34がリングギヤに噛み合うまでの間、電磁スイッチ3のプランジャ吸引力を上回るバネ荷重を生じるだけの捩じり剛性を有している。これにより、ピニオン5の回転が規制されてからピニオンギヤ34がリングギヤに噛み合うまでの間、プランジャの移動を停止させることができる。その結果、ピニオン5の回転が規制されてからピニオンギヤ34がリングギヤに噛み合うまでは、アーマチャ10を低速度で回転させることができ、ピニオンギヤ34がリングギヤに噛み合った後、アーマチャ10を高速度で回転させることができる。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、回転規制されたピニオンギヤをヘリカルスプラインの作用により押し出してエンジンのリングギヤに噛み合わせる回転規制噛み合式スタータに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来技術として、例えば特許文献1に記載されたスタータがある。
このスタータは、回転規制されたピニオンを軸方向に移動させてエンジンのリングギヤに噛み合わせる方式であり、ピニオンがリングギヤに噛み合う時の衝撃を低減するために、モータを二段階に起動している。
具体的には、起動抵抗を介してモータに通電する第1の通電回路と、起動抵抗を短絡してモータに通電する第2の通電回路とを設けて、第1の通電回路に介在される第1の接点と、第2の通電回路に介在される第2の接点とを、電磁スイッチのプランジャストロークに応じて順次ONする(先に第1の接点がONし、その後、第2の接点がONする)様に構成されている。これにより、ピニオンがリングギヤに噛み合うまではモータを低速度で回転させ、ピニオンがリングギヤに噛み合った後、モータを高速度で回転させることができる。
【0003】
【特許文献1】
特開平9−217672号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記の二段作動(ピニオンがリングギヤに噛み合うまではモータを低速度で回転させ、ピニオンがリングギヤに噛み合った後、モータを高速度で回転させる)を確実に行うためには、ピニオンの回転がピニオン規制部材により規制された後、そのピニオン規制部材とプランジャとを連結する連結手段のバネ荷重が十分に大きく、電磁スイッチの吸引力を上回る必要がある。
【0005】
ところが、特許文献1に記載されたスタータは、プランジャとピニオン規制部材とを棒状のクランクバーによって連結し、そのクランクバーが捩じり方向に対して弾性を有している。このため、クランクバーのバネ定数が低いと、電磁スイッチの吸引力がクランクバーのバネ荷重を上回り、ピニオンの回転が規制された後もプランジャが移動して第2の接点が閉じる可能性があり、上記の二段作動を確実に行うことが困難であった。
本発明は、上記事情に基づいて成されたもので、その目的は、二段作動を確実に行うことができるスタータを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
(請求項1の発明)
本発明は、ピニオン規制部材に回転規制されたピニオンをヘリカルスプラインの作用により反モータ方向へ移動させてエンジンのリングギヤに噛み合わせる方式のスタータであって、
モータに低電流を流す第1の通電回路を開閉する第1のスイッチと、モータに高電流を流す第2の通電回路を開閉する第2のスイッチとを備え、電磁スイッチの吸引力を利用してピニオン規制部材を動かすクランクバーは、ピニオン規制部材によりピニオンの回転が規制されてからピニオンがリングギヤに噛み合うまでの間、電磁スイッチのプランジャ吸引力を上回るバネ荷重を生じることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、回転規制されたピニオンが出力軸上を移動してピニオンの規制が外れるまでの間、クランクバーのバネ荷重が電磁スイッチのプランジャ吸引力を上回るので、プランジャの移動を停止させることができる。その結果、スタータの二段作動を確実に行うことができる。つまり、ピニオンがリングギヤに噛み合うまでは、第2のスイッチがONすることがないので、モータを低速度で回転させることができ、ピニオンの規制が外れた後、第2のスイッチがONすることにより、モータを高速度で回転させることができる。
【0008】
(請求項2の発明)
請求項1に記載したスタータにおいて、
クランクバーは、棒状部の回動方向に作動して係合部に当接する作動部を有し、ピニオン規制部材がピニオンの回転を規制する際に、作動部が係合部を直接押圧してピニオンに係合させることを特徴とする。
この構成によれば、ピニオン規制部材の係合部がピニオンに係合した時に、そのピニオンとクランクバーの作動部との間に係合部が挟まれるので、ピニオン規制部材の剛性が大きくなり、それ以上、ピニオン規制部材が移動することはなく、クランクバーの回動を阻止できる。また、ピニオン規制部材の移動を阻止するためのストッパを別に設ける必要もない。
【0009】
(請求項3の発明)
請求項1または2に記載したスタータにおいて、
ピニオン規制部材は、第1のスイッチがONした後、ピニオンが回転を開始するまでにピニオンの回転規制を行うことを特徴とする。
本発明のスタータは、ピニオン規制部材によりピニオンの回転が規制されると、クランクバーの回動が阻止されてプランジャの移動が停止するので、その前(ピニオンが回転規制される前)に第1のスイッチをONする必要がある。つまり、ピニオン規制部材がピニオンの回転を規制するタイミングは、第1のスイッチがONした後、ピニオンが回転を開始するまでの間に設定される。その結果、ピニオンが回転規制される前にモータに通電できるので、その後、回転規制されたピニオンに対し、出力軸の回転とヘリカルスプラインの作用で出力軸上を移動させてリングギヤに噛み合わせることができる。
【0010】
(請求項4の発明)
請求項1〜3に記載した何れかのスタータにおいて、
クランクバーは、分割して構成され、組付け時に一体化されることを特徴とする。
従来の様に、クランクバーを一つの部材から形成した場合は、クランクバーの曲げ角度誤差や、電磁スイッチ等の組付け精度により、吸引力>バネ荷重となるプランジャストローク位置が大きくばらつき、ピニオンの回転が規制されてからピニオンがリングギヤに噛み合うまでの間、プランジャを停止できなくなる可能性がある。
【0011】
これに対し、クランクバーを分割して組付け時に一体化すれば、クランクバーとプランジャとの組付け角度、またはクランクバーとピニオン規制部材との組付け角度を調整して組付けることができるので、吸引力>バネ荷重となるプランジャストローク位置精度が良くなる。また、その結果、電磁スイッチやその他の部品の組付け精度を落とすことができるので、コスト低減が可能となる。
【0012】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施例)
図1はスタータ1の断面図である。
本実施例のスタータ1は、回転力を発生するモータ2と、このモータ2の通電電流をON/OFFする電磁スイッチ3、モータ2に駆動されて回転する出力軸4、この出力軸4上を移動可能に配置されるピニオン5、このモータ2の起動時にピニオン5の回転を規制するピニオン規制部材6、及び電磁スイッチ3の電磁力(吸引力)を利用してピニオン規制部材6を作動させるクランクバー7等を備えている。
【0013】
モータ2は、ヨーク8、磁極9(永久磁石)、アーマチャ10、及びブラシ11等から構成される周知の直流電動機であり、電磁スイッチ3によってモータ接点(後述する)が閉じると、バッテリ電流がブラシ11(図2参照)を通じてアーマチャ10に流れることにより、アーマチャ10に回転力を生じる。
このモータ2は、ヨーク8の前端側に組み合わされるフロントハウジング12と、ヨーク8の後端側に組み合わされるエンドカバー13との間に挟持されている。
【0014】
電磁スイッチ3は、図1に示す様に、スタータ1の後部(モータ2の後側)に配置され、内蔵されるプランジャ14(図2参照)の動作方向(図示上下方向)がモータ2の軸方向(図示左右方向)と交差する向きに固定されている。
この電磁スイッチ3は、図2に示す様に、IGスイッチ15のON操作により通電されて磁力を発生するソレノイド16と、このソレノイド16の内径側を往復動自在に嵌挿され、磁力の作用により図示上方へ吸引される上記のプランジャ14、ソレノイド16への通電が停止した時に、プランジャ14を初期位置へ押し戻すためのプランジャリターンスプリング(図示せず)、及び上記のモータ接点を構成する第1のスイッチAと第2のスイッチB等を備えている。
【0015】
第1のスイッチAは、モータ2に低電流を流すための第1の通電回路に設けられ、プランジャ14と共に可動する第1の可動接点17と、この第1の可動接点17に対向して配置される第1の固定接点18とで構成される。
第2のスイッチBは、モータ2に高電流を流すための第2の通電回路に設けられ、プランジャ14の移動に伴い、第1の可動接点17と共に可動する第2の可動接点19と、この第2の可動接点19に対向して配置される第2の固定接点20とで構成される。
【0016】
第1の可動接点17は、図1に示す様に、プランジャ14に連結されたホルダ部21に弾力を持たせた銅板22を介して支持され、プランジャ14と一体に可動する。なお、銅板22は、第1の可動接点17が第1の固定接点18に当接した時に、接点圧を付与する接点圧スプリングとして機能する。
第1の固定接点18は、図1に示す様に、エンドカバー13を貫通して取り付けられた端子ボルト23に導通板24を介して電気的に接続されている。この第1の固定接点18は、第2の固定接点20より電気抵抗の大きい材料(例えばカーボン材)を使用して形成されている。
端子ボルト23は、図2に示す様に、バッテリケーブルを介して車載バッテリ25に接続され、車載バッテリ25から電力の供給を受ける。
【0017】
第2の可動接点19は、上記のホルダ部21に絶縁保持されると共に、リード線26を介して正極側のブラシ11に接続されている。なお、第1の可動接点17は、銅板22を介して第2の可動接点19と電気的に接続されている。
第2の固定接点20は、上記の端子ボルト23と一体に設けられている。
ホルダ部21は、プランジャ14に対しスプリング(図示せず)を介して組み付けられており、そのスプリングが第2の可動接点19と第2の固定接点20との当接時に接点圧を付与する接点圧スプリングとして機能している。
【0018】
上記の第1のスイッチAと第2のスイッチBは、モータ2の起動時にアーマチャ10の回転速度を低く抑えるために、第2のスイッチBより先に第1のスイッチAがONする様に設けられている。具体的には、プランジャ14が初期位置に静止している時に、第1の固定接点18と第1の可動接点17との接点間距離より第2の固定接点20と第2の可動接点19との接点間距離の方が大きくなる様に構成されている。
【0019】
出力軸4は、モータ2の前方側(図1の左側)にてモータ2の回転軸(アーマチャ軸10a)と同軸線上に配置され、フロントハウジング12に保持された軸受27と、センタケース28に保持された軸受29とで回転自在に支持されている。この出力軸4は、以下に説明する減速装置と一方向クラッチを介してアーマチャ10の回転力が伝達されて回転する。
なお、センタケース28は、フロントハウジング12のヨーク8側内部に配置されて、減速装置と一方向クラッチの外周を覆っている。
減速装置は、遊星ギヤ30の回転運動(自転運動と公転運動)によってアーマチャ10の回転を減速する遊星歯車減速装置である。
【0020】
一方向クラッチは、減速装置の回転出力を受けて回転するアウタ31と、このアウタ31の内径側に配置されるインナ32、及びアウタ31とインナ32との間に形成されるくさび状空間に配されるローラ33等から構成される。
アウタ31は、遊星ギヤ30の公転運動が伝達されて回転する。
インナ32は、出力軸4の後端部に設けられて、出力軸4と一体に回転する。ローラ33は、遊星ギヤ30の公転運動を受けてアウタ31が回転すると、アウタ31とインナ32との間にロックされてアウタ31の回転をインナ32に伝達する。一方、エンジンの始動によりインナ32の回転速度がアウタ31の回転速度を上回ると、アウタ31とインナ32との間で空転することにより、両者間の動力伝達を遮断する。
【0021】
ピニオン5は、内径側に内ヘリカルスプラインが形成され、この内ヘリカルスプラインが出力軸4に形成された外ヘリカルスプラインに噛み合って出力軸4上に配置され、図示しないスプリングにより常時反リングギヤ方向(図1の右方向)に付勢されている。
このピニオン5は、始動時にエンジンのリングギヤ(図示しない)に噛み合うギヤ34(以下ピニオンギヤ34と呼ぶ)と、ピニオンギヤ34の反リングギヤ側に設けられたフランジ部35とを有し、そのフランジ部35の外径部に複数の凹部35aが周方向に連続して設けられている。
【0022】
ピニオン5の後側には、ピニオンギヤ34がリングギヤに噛み合った後、ピニオン規制部材6と協働してピニオン5の後退を阻止する後退規制リング36が具備されている。この後退規制リング36は、図3に示す様に、出力軸4の外周に配置される環状体を有し、プレート37に設けられた支持部37aにより揺動自在に支持されると共に、フランジ部35の後側に回転自在に組付けられたスラストワッシャ38(図1参照)に連結されている。
なお、プレート37は、センタケース28の前方に配置されて、センタケース28との間にピニオン規制部材6を収容する空間部を形成している。
【0023】
ピニオン規制部材6は、例えば金属線材をコイル状に巻回して形成され、上記の空間部に収容されて、その空間部を図3に示すX−Y方向に移動可能に配置され、且つプレート37に取り付けられた戻しスプリング39によってX方向(図1の下方)へ常時付勢されている。
ピニオン規制部材6の両端部は、共に同一方向へ略直角に折り曲げられて、プレート37より前方(ピニオン5側)に取り出されている。
【0024】
上記両端部のうち一方の端部は、図1に示す様に、ピニオン5に設けられたフランジ部35の半径方向外側をピニオン5の回転方向に交差して配置され、ピニオン規制部材6が図示上方へ移動した時に、フランジ部35の凹部35aに係合してピニオン5の回転を規制する係合部6a(以下、一方の端部を係合部6aと呼ぶ)として設けられている。また、他方の端部は、出力軸4の径方向において係合部6aと反対側(図2参照)に位置し、上記の戻しスプリング39よりバネ荷重を受けるアーム部6b(以下、他方の端部をアーム部6bと呼ぶ)として設けられている。
【0025】
クランクバー7は、金属製の丸棒部材によって形成され、その丸棒部材の両端側を所定角度折り曲げてクランク形状に設けられている。具体的には、丸棒部材の一端側に設けられる伝達部7aと、丸棒部材の他端側に設けられる作動部7b、及び伝達部7aと作動部7bとを繋ぐ棒状部7cとで構成される。
伝達部7aは、その先端部がプランジャ14に具備されたフック部40に係合して、電磁スイッチ3の吸引力を棒状部7cに伝達する。
棒状部7cは、ヨーク8の内側で隣合う磁極9同士の間を通り抜けてアーマチャ軸10aと略平行に配設され、一組の軸受(図示せず)により回動自在に支持されている。
【0026】
作動部7bは、図3に示す様に、その先端部がピニオン規制部材6の係合部6aに当接しており、電磁スイッチ3の吸引力が伝達部7aから棒状部7cに伝達されて棒状部7cが回動すると、その棒状部7cと一体に回動して係合部6aを図示上方へ押し上げる働きを有する。
このクランクバー7は、ピニオン規制部材6によりピニオン5の回転が規制されてからピニオン5の規制が外れるまでの間、電磁スイッチ3のプランジャ吸引力を上回るバネ荷重を生じるだけの捩じり剛性を有している。
【0027】
次に、本実施例の作動を図4〜図7に基づいて説明する。
図4は電磁スイッチ3の吸引力に対向してバネ荷重を発生する各種バネ部材(以下の▲1▼〜▲5▼)の位置関係と、それぞれのバネ定数を示す。
▲1▼電磁スイッチ3のプランジャリターンスプリング(下記の説明ではスプリング▲1▼と呼ぶ)
▲2▼ピニオン規制部材6を図3に示すX方向へ付勢する戻しスプリング39
【0028】
▲3▼クランクバー7
▲4▼ピニオン規制部材6
▲5▼第2のスイッチBに付与される接点圧スプリング(下記の説明では接点圧スプリング▲5▼と呼ぶ)
図5はプランジャ14の移動量(プランジャストローク)に対する電磁スイッチ3の吸引力とバネ荷重との関係を示すグラフである。
【0029】
IGスイッチ15を閉じる(ON操作する)と、車載バッテリ25から電磁スイッチ3のソレノイド16に電流が流れて磁力が発生し、その磁力によりプランジャ14が吸引され、スプリング▲1▼を撓ませながら図1の上方へ移動する。このプランジャ14の移動に伴いクランクバー7が回動すると、図6に示す様に、クランクバー7の作動部7bがピニオン規制部材6の係合部6aを押圧して、戻しスプリング39を撓ませながらピニオン規制部材6が図示下方(矢印方向)へ移動する。
【0030】
ここで、クランクバー7は、他のバネ部材(スプリング▲1▼、戻しスプリング39、ピニオン規制部材6)より極端にバネ定数が高いので、プランジャ14の移動により回動するだけで、バネとして働くことはない。この時の合成バネ定数は0.87N/mmと低く、図5に示す様に、電磁スイッチ3の吸引力がバネ荷重を上回っているので、プランジャ14が吸引されて移動することにより、第1のスイッチAをONする(第1の可動接点17が第1の固定接点18に当接する)。その結果、バッテリ電流が抑制されてアーマチャ10に流れることにより、アーマチャ10が低速度で回転する。
【0031】
第1のスイッチAがONした後、図7に示す様に、ピニオン規制部材6の係合部6aがフランジ部35の凹部35aに係合すると、ピニオン規制部材6が図示下方へ移動できなくなる(ピニオン規制部材6のバネ定数が非常に大きくなる)。このため、クランクバー7の作動部7b側が固定された状態となり、プランジャ14が移動することでクランクバー7に捩じり力が働き、クランクバー7がバネ(トーションバー)として機能する。この時の合成バネ定数は、クランクバー7のバネ定数が支配的となるため、見かけ上、図4(b)に示す様になる。その結果、バネ荷重が電磁スイッチ3の吸引力を上回るため、プランジャ14の移動が一旦停止する。
【0032】
ピニオン規制部材6によって回転規制されたピニオン5は、出力軸4の回転とヘリカルスプラインの作用により、出力軸4上をリングギヤ側へ前進する。
その後、ピニオンギヤ34がリングギヤに噛み合うと、係合部6aがフランジ部35から外れて後退規制リング36の後側に入り込むことにより、ピニオン5の回転規制を解除する。これにより、ピニオン規制部材6と戻しスプリング39とに再びバネ荷重が生じるため、バネ部材▲1▼〜▲4▼の配置は、図4(c)に示す様に、図4(a)と同様の関係となる。その結果、合成バネ定数が小さくなり、電磁スイッチ3の吸引力がバネ荷重を上回ることで、プランジャ14が再び動き始める。
【0033】
プランジャ14の移動により第2のスイッチBがONする(第2の可動接点19が第2の固定接点20に当接する)と、接点圧スプリング▲5▼が撓み始めるが、接点圧スプリング▲5▼のバネ荷重が小さいため、電磁スイッチ3の吸引力>バネ荷重の関係は変わらない。その結果、プランジャ14は最後まで吸引されて、所定のストローク(図5では8mm )を移動する。
【0034】
以後、エンジンが始動してIGスイッチ15を開く(OFF 操作する)と、電磁スイッチ3のソレノイド16に流れる電流が遮断されて磁力が消滅するため、プランジャ14がスプリング▲1▼に付勢されて初期位置に押し戻される。このプランジャ14の移動に伴い、クランクバー7が始動時と反対方向に回動するため、ピニオン規制部材6のアーム部6bに作用する押圧力(ピニオン規制部材6を図1の上方へ押し上げる力)が解除される。
【0035】
これにより、ピニオン規制部材6が戻しスプリング39により図3のX方向(図1の下方)へ押し戻され、係合部6aが後退規制リング36の後側から抜け出るため、ピニオン5の後退規制が解除されて、ピニオン5を付勢するスプリングの反力とリングギヤから受ける後退力とでピニオン5が出力軸4上を後退し、図1に示す静止位置に復帰する。
【0036】
(第1実施例の効果)
本実施例のスタータ1は、第1のスイッチAがONした後、ピニオン規制部材6によりピニオン5の回転が規制されてからピニオン5がリングギヤに噛み合うまでの間、クランクバー7に生じるバネ荷重が電磁スイッチ3のプランジャ吸引力を上回るため、ピニオンギヤ34がリングギヤに噛み合うまでプランジャ14の移動を停止させることができる。その結果、スタータ1の二段作動を確実に行うことができる。つまり、ピニオンギヤ34がリングギヤに噛み合うまでは、アーマチャ10を低速度で回転させることができ、ピニオンギヤ34がリングギヤに噛み合った後、アーマチャ10を高速度で回転させることができる。
【0037】
また、本実施例では、ピニオン規制部材6の係合部6aをクランクバー7の作動部7bが直接押圧しているので、係合部6aがフランジ部35の凹部35aに係合すると、そのフランジ部35とクランクバー7の作動部7bとの間に係合部6aが挟まれることにより、ピニオン規制部材6の剛性が大きくなる(ピニオン規制部材6の移動が阻止される)。この構成によれば、後退規制リング36にピニオン規制部材6の移動を阻止するためのストッパ手段を設ける必要がなく、後退規制リング36の形状を簡略化できるので、コスト低減が可能となる。
【0038】
(第2実施例)
図8はクランクバー7の全体形状を示す模式図である。
本実施例は、クランクバー7を分割して組み合わせた場合の一例である。
図8(a)は伝達部7aを別部材として棒状部7cに組み合わせた例である。
図8(b)は作動部7bを別部材として棒状部7cに組み合わせた例である。
図8(c)はクランクバー7を三分割(伝達部7a、棒状部7c、及び作動部7bをそれぞれ分割)して組み合わせた例である。
【0039】
この様に、クランクバー7を分割して組付け時に一体化することにより、クランクバー7の伝達部7aとプランジャ14のフック部40との組付け角度、またはクランクバー7の作動部7bとピニオン規制部材6の係合部6aとの組付け角度を調整して組付けることができるので、吸引力>バネ荷重となるプランジャストローク位置精度が良くなる。また、その結果、電磁スイッチ3やその他の部品の組付け精度を落とすことができるので、コスト低減が可能となる。
【0040】
また、クランクバー7を分割して組み合わせることにより、スタータ1の組付け性が大幅に向上する。例えば、伝達部7aを分割した場合には、プランジャ14のフック部40に伝達部7aの一端部を係合させる際に、その作業を棒状部7cと分離した状態で行うことができるので、クランクバー7が作動部7bから伝達部7aまで一体に形成されている場合と比較して組付けが容易である。
【0041】
(変形例)
第1実施例では、第1のスイッチAと第2のスイッチBをそれぞれ機械的な接点(第1の可動接点17、第1の固定接点18、第2の可動接点19、第2の固定接点20)で構成しているが、半導体を用いたスイッチとしても良い。
また、第1実施例では、クランクバー7の作動部7bが、ピニオン規制部材6の係合部6aを直接押圧してフランジ部35の凹部35aに係合させているが、従来技術で説明した特許文献1に記載されている様に、クランクバー7の作動部7bをピニオン規制部材6のアーム部6bに係合してピニオン規制部材6を動かしても良い。
【0042】
但し、係合部6aがフランジ部35の凹部35aに係合してピニオン5を回転規制した後、ピニオンギヤ34がリングギヤに噛み合うまでの間、ピニオン規制部材6が撓まない(クランクバー7が回動しない)様にする必要がある。具体的には、例えば、後退規制リング36にピニオン規制部材6のアーム部6bを支えるストッパ手段を設けることで対応可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】スタータの断面図である。
【図2】スタータの電気回路図である。
【図3】ピニオン側から見た後退規制リング周辺の軸方向正面図である。
【図4】電磁スイッチの吸引力に対向してバネ荷重を発生する各種バネ部材の位置関係と、それぞれのバネ定数を示す図面である。
【図5】プランジャストロークに対する電磁スイッチの吸引力とバネ荷重との関係を示すグラフである。
【図6】ピニオンの回転規制を実行する初期の作動説明図である。
【図7】ピニオンの回転規制状態を示す作動説明図である。
【図8】クランクバーを分割して組み合わせた全体図である(第2実施例)。
【図9】エンドカバー側から見た部分断面図である(第2実施例)。
【符号の説明】
1 スタータ
2 モータ
3 電磁スイッチ
4 出力軸
5 ピニオン
6 ピニオン規制部材
6a 係合部
7 クランクバー
7b 作動部
7c 棒状部
14 プランジャ
A 第1のスイッチ
B 第2のスイッチ

Claims (4)

  1. 回転力を発生するモータと、
    内蔵するプランジャを磁力によって吸引する電磁スイッチと、
    前記モータに低電流を流す第1の通電回路に設けられ、且つ前記プランジャが吸引されて第1のストロークを移動した時点で前記第1の通電回路を閉じる第1のスイッチと、
    前記モータに高電流を流す第2の通電回路に設けられ、且つ前記プランジャが吸引されて前記第1のストロークより大きい第2のストロークを移動した時点で前記第2の通電回路を閉じる第2のスイッチと、
    前記モータに駆動されて回転する出力軸と、
    この出力軸上にヘリカルスプライン嵌合するピニオンと、
    このピニオンに係合可能な係合部を有し、この係合部が前記ピニオンに係合して前記ピニオンの回転を規制するピニオン規制部材と、
    前記プランジャに連結され、そのプランジャを介して前記電磁スイッチの吸引力が伝達されて回動する棒状部を有し、この棒状部の回動に伴って前記ピニオン規制部材を動かすクランクバーとを備え、
    前記ピニオン規制部材に回転規制された前記ピニオンを前記ヘリカルスプラインの作用により反モータ方向へ移動させてエンジンのリングギヤに噛み合わせる方式のスタータであって、
    前記クランクバーは、前記ピニオン規制部材により前記ピニオンの回転が規制されてから前記ピニオンの規制が外れるまでの間、前記電磁スイッチのプランジャ吸引力を上回るバネ荷重を生じることを特徴とするスタータ。
  2. 請求項1に記載したスタータにおいて、
    前記クランクバーは、前記棒状部の回動方向に作動して前記係合部に当接する作動部を有し、前記ピニオン規制部材が前記ピニオンの回転を規制する際に、前記作動部が前記係合部を直接押圧して前記ピニオンに係合させることを特徴とするスタータ。
  3. 請求項1または2に記載したスタータにおいて、
    前記ピニオン規制部材は、前記第1のスイッチがONした後、前記ピニオンが回転を開始するまでに前記ピニオンの回転規制を行うことを特徴とするスタータ。
  4. 請求項1〜3に記載した何れかのスタータにおいて、
    前記クランクバーは、分割して構成され、組付け時に一体化されることを特徴とするスタータ。
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