JP2004168963A - ブラックマトリックス用カーボンブラック顔料 - Google Patents

ブラックマトリックス用カーボンブラック顔料 Download PDF

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Abstract

【課題】薄膜で黒色度や遮光性が高く、低導電性で感光性能に優れたブラックマトリックスを少ない紫外線照射量で形成することのできるカーボンブラック顔料を提供する。
【解決手段】窒素吸着比表面積(NSA)が50m/g以上、DBP吸収量が140cm/100g以下のカーボンブラックを湿式酸化処理して生成したカーボンブラック粒子表面のヒドロキシル基に、カルボキシル基およびビニル基、あるいは、カルボキシル基およびイソプロペニル基を持つ有機化合物をエステル結合させてなるブラックマトリックス用カーボンブラック顔料。好ましくは、カーボンブラック粒子表面のヒドロキシル基が0.5μmol/m以上に酸化処理される。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶表示装置用カラーフィルターやプラズマディスプレイなどに用いられるブラックマトリックス用の顔料として、導電性が低く、高度の遮光性および黒色度を有し、特に感光特性に優れたブラックマトリックスの形成に好適なカーボンブラック顔料に関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶ディスプレイは、液晶となる結晶材料を透明な電極間に挟み、電極間に電圧を印加して液晶の分子配列を変えることにより入射光の透過を制御し、反射板と偏光板を組み合わせることにより画像や文字などを表示するものであり、消費電力が少なくて済むため、携帯電話、時計、カメラ、各種電気機器などの表示装置として広く使用されている。
【0003】
この液晶ディスプレイをカラー化したカラー液晶ディスプレイは、画素ごとに赤、青、緑のカラーフィルターを付けて光の三原色をつくり、各画素の明暗を制御して色の変化を表現するものである。すなわち、カラーフィルターは透明基板上に赤、青、緑の三原色の画素をつくり、各画素を透過する光量を制御して三原色の加色による発色によってカラー表示を行うものであり、各画素間の漏光を防止し、コントラストおよび色純度の低下を防止するために各画素間の光を遮断するための遮断層(ブラックマトリックス)が形成されている。ブラックマトリックスは、また、カラーフィルターに対向する基板上に設けられた液晶の駆動用電極やTFT(薄膜トランジスタ)などのトランジスタを遮光する機能も有している。
【0004】
したがって、ブラックマトリックスには、当然、遮光性に優れていることが要求されるが、その他に、表面が平滑で、層の厚さが薄いこと、導電性が低いことなどが必要とされている。すなわち、表面平滑性が劣り、層厚が厚いと三原色の色パターンを形成する際に凹凸が生じることになり、また導電性が高いと印加電圧により半導体素子が誤作動を起こすおそれがあるためである。
【0005】
このブラックマトリックスには従来から▲1▼フォトリソグラフィ法によるCr、Ni、Alなどの金属薄膜からなるブラックマトリックス、▲2▼黒色顔料を分散した黒色有機樹脂膜からなるブラックマトリックス、が用いられてきた。このうち▲1▼の金属薄膜により形成されたブラックマトリックスは、遮光率や光学濃度が高く解像度に優れている反面、導電性が高く、また光反射率が大きいので反射光による写り込みが生じ易く、表示品位が損なわれる難点がある。
【0006】
一方、▲2▼の黒色有機樹脂膜からなるブラックマトリックスには上記のような難点が少なく、特に、カーボンブラックは黒色顔料として優れた黒色度を備えているとともに黒鉛粉末に比べて導電性も低く、ブラックマトリックス用の黒色顔料として好適である。そこで、カーボンブラックを分散した光重合性樹脂組成物を透明基板に塗布してブラックマトリックスを形成する方法やカーボンブラックを含有するインキを透明基板に印刷してブラックマトリックスを形成する方法などが開発されている。このブラックマトリックス用のカーボンブラックあるいはカーボンブラックを用いたブラックマトリックスのカーボンブラックの特性を規制するものとして、例えば、下記の技術などが開発、提案されている。
【0007】
樹脂中に少なくともカーボンブラックを含むインキにおいて、前記カーボンブラックが、カーボンブラック100g 当たり40〜130mlの吸油量を有し、かつ950℃で7分間加熱したときの揮発減量分が3重量%以上であって、樹脂100重量部に対して10〜50重量部の割合で配合されることを特徴とする液晶カラーフィルター遮光層用インキ(特許文献1)、樹脂中に遮光剤を分散せしめてなる樹脂ブラックマトリックスにおいて、該遮光剤として下記(A)〜(D)のうち少なくとも1つを満たすカーボンブラックを用いることを特徴とする樹脂ブラックマトリックス。但し、(A)PH値が6.5以下、(B)表面のカルボキシル基濃度〔COOH〕が、全炭素原子あたりのモル比で、0.001<〔COOH〕、(C)表面の水酸基濃度〔OH〕が全炭素原子あたりのモル比で、0.001<〔OH〕、(D)表面のスルホン基濃度〔SOH〕が、全炭素原子あたりのモル比で0.001<〔SOH〕、(特許文献2)。
【0008】
また、黒色顔料としてカーボンブラックを含有するブラックマトリックスにおいて、該カーボンブラックの平均粒子径が40〜300nmであることを特徴とするカラーフィルター用ブラックマトリックス(特許文献3)、黒色顔料としてカーボンブラックを含有するブラックマトリックスにおいて、該カーボンブラックは、950℃における揮発分中のCO及びCOから算出した全酸素量が、カーボンブラックの表面積100m当たり7mg以上であることを特徴とするカラーフィルター用ブラックマトリックス(特許文献4)、平均粒径50〜200nm、DBP吸油量10〜40ml/100g の範囲にあるカーボンブラックを含有することを特徴とするブラックマトリックス用カラーフィルターレジスト(特許文献5)、平均一次粒子径35〜150nm、凝集体径60〜300nm、ジブチルフタレート吸油量30〜90ml/100g のカーボンブラックを樹脂で被覆してなることを特徴とする黒色レジストパターン形成用カーボンブラック(特許文献6)、なども提案されている。
【0009】
更に、全酸素量が15mg/g以上、全酸素量/比表面積が0.10mg/m以上であるカーボンブラックを樹脂で被覆処理してなる絶縁性ブラックマトリックス用カーボンブラック(特許文献7)や表面のカルボキシル基濃度〔COOH〕、表面の水酸基濃度〔OH〕、表面のスルホン酸基濃度〔SOH〕の少なくとも1つが、全炭素原子あたりのモル比で、0.005より大きいカーボンブラックを遮光剤として含む樹脂からなるブラックマトリックスであって、比抵抗率が、7×10Ω・cm以上であることを特徴とする樹脂ブラックマトリックス(特許文献8)などが提案されている。
【0010】
一般に、ブラックマトリックスには黒色度および遮光性が高く、遮光層の膜厚が薄くても高い遮光率を有し、また遮光層の表面が平滑で、遮光層の導電性が小さいこと、などが必要とされている。
【0011】
そこで、本発明者はこれらのブラックマトリックスに要求される諸性能の向上について別異の観点から研究を行い、窒素吸着比表面積(NSA)50m/g以上、DBP吸収量140cm/100g以下のカーボンブラックを湿式酸化して、X線光電子分光法により測定した全炭素原子当たりの全酸素原子の原子比(酸素結合エネルギーの強度/炭素結合エネルギーの強度)の値が0.1以上に酸化処理されたカーボンブラック表面の官能基を基幹として、ビニルモノマーを反応させてカチオン重合によりビニルポリマーが化学結合されてなるブラックマトリックス用カーボンブラック顔料(特許文献9)、および、酸化処理されたカーボンブラック表面の官能基をアゾ基に変換して基幹とし、該基幹にビニル基を含むモノマーがラジカルグラフト重合して生成したビニルポリマーが化学結合されてなるブラックマトリックス用カーボンブラック(特許文献10)、を開発、提案した。
【0012】
これらのカーボンブラックを遮光剤として用いたブラックマトリックスは総合的に優れた性能を有しているが、ブラックマトリックスの膜強度が若干不足し、改善する必要性のあることが認められた。そこで、本発明者は酸化処理したカーボンブラック表面のカルボキシル基をカリウム塩(COOK基)に変換して基幹とし、該基幹にエポキシドと環状酸無水物とのアニオン開環交互共重合により生成したポリエステルがグラフト結合されてなるブラックマトリックス用カーボンブラック顔料(特許文献11)を開発した。
【0013】
このカーボンブラック顔料を用いることによりブラックマトリックスの膜強度を向上させることができたが、ブラックマトリックス形成用の樹脂組成物やインキ組成物の粘度が増大する難点があった。そこで、本発明者はX線光電子分光法により測定した全酸素原子と全炭素原子との原子比の値が0.1以上に酸化処理されて生成したカーボンブラック粒子表面のカルボキシル基に、エーテル結合、および末端あるいは側鎖にアルコール系水酸基を持つ直鎖状、分枝状あるいは環状の化合物がエステル化反応により結合されたブラックマトリックス用カーボンブラック(特許文献12)を開発した。
【0014】
更に、本発明者は感光特性に優れたブラックマトリックスの形成に好適なカーボンブラック顔料として、湿式酸化処理して生成したカーボンブラック粒子表面のカルボキシル基に、不飽和二重結合および末端あるいは側鎖にアルコール系水酸基を持つ有機化合物をエステル結合させたブラックマトリックス用カーボンブラック顔料(特許文献13)を開発した。
【0015】
【特許文献1】
特開平8−262223号公報
【特許文献2】
特開平9−15403号公報
【特許文献3】
特開平9−15419号公報
【特許文献4】
特開平9−22653号公報
【特許文献5】
特開平9−80220号公報
【特許文献6】
特開平11−80583号公報
【特許文献7】
特開平9−95625号公報
【特許文献8】
特開平9−265006号公報
【特許文献9】
特開2002−69327号公報
【0016】
【特許文献10】
特願2001−227404号
【特許文献11】
特願2001−258986号
【特許文献12】
特願2002−14116号
【特許文献13】
特願2002−40948号
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
カーボンブラックを黒色顔料とするブラックマトリックスは、カーボンブラックを光重合性樹脂に分散した樹脂組成物を透明基板に塗布あるいは印刷して焼き付ける方法により形成される。したがって、樹脂の感光特性が改善され、光感度性能が向上すればするほど、ブラックマトリックスの形成時間が短縮でき、生産能率、生産効率上有利となり、コストダウンにつながることになる。
【0018】
そこで、本発明者は更に光感度性能の向上を図るべく鋭意研究を進めた結果、光重合開始剤から発生したラジカルと結合して光感度の低下を招くカーボンブラック粒子表面のヒドロキシル基を、他物質に転換することにより光感度の低下を防止し、少ない紫外線照射量でブラックマトリックスが形成できることを確認した。
【0019】
本発明は、上記の知見に基づいて開発に至ったもので、その目的は、優れた感光特性を有し、少ない紫外線照射量でブラックマトリックスを形成することができるとともに導電性が低く、高度の遮光性、表面平滑性などの優れた性能を備え、更に、現像後に得られるブラックマトリックスパターンの非露光部にブラックマトリックス層が残存しないたブラックマトリックスの形成に好適なカーボンブラック顔料を提供することにある。
【0020】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するための本発明のブラックマトリックス用カーボンブラック顔料は、窒素吸着比表面積(NSA)が50m/g以上、DBP吸収量が140cm/100g以下のカーボンブラックを湿式酸化処理して生成したカーボンブラック粒子表面のヒドロキシル基に、カルボキシル基およびビニル基、あるいは、カルボキシル基およびイソプロペニル基を持つ有機化合物をエステル結合させてなることを構成上の特徴とする。
【0021】
なお、湿式酸化処理によりカーボンブラック粒子表面に生成させたヒドロキシル基は0.5μmol/m以上であることが好ましい。
【0022】
【発明の実施の形態】
まず、本発明のカーボンブラック顔料には窒素吸着比表面積(NSA)が50m/g以上、DBP吸収量が140cm/100g以下の特性のものが適用される。窒素吸着比表面積(NSA)が50m/g未満であると、溶媒に分散させた際に分散液中におけるカーボンブラックの平均粒径が大きくなり、形成したブラックマトリックスの黒色度および光遮蔽力が低下し、遮光層の膜厚が厚くなるためである。但し、好ましくは300m/g以下のものが用いられる。また、DBP吸収量が140cm/100g以下のカーボンブラックを用いるのは、140cm/100gを越えると、樹脂などの溶媒に混合した場合、粘度が増大して遮光層の平滑性が損なわれ、また均一で薄い遮光層の形成が困難となるためである。なお、好ましくは、DBP吸収量は110cm/100g以下であり、また40cm/100g以上のカーボンブラックが好ましい。
【0023】
本発明のブラックマトリックス用カーボンブラック顔料は、上記の窒素吸着比表面積(NSA)50m/g以上、DBP吸収量140cm/100g以下の特性を有するカーボンブラックを対象として、湿式酸化処理してカーボンブラック粒子表面に官能基を生成させ、生成した官能基のうちヒドロキシル基に、カルボキシル基およびビニル基、あるいは、カルボキシル基およびイソプロペニル基を持つ有機化合物をエステル結合させたものである。
【0024】
酸化処理は、効率よくカーボンブラック粒子表面にヒドロキシル基を生成させるために湿式酸化処理が適用される。湿式酸化処理は、酸化剤として、例えばペルオキソ2硫酸塩、ペルオキソ2硼酸塩、ペルオキソ2炭酸塩、ペルオキソ2リン酸塩などのペルオキソ2酸塩が好適に用いられ、塩としてはアルカリ金属塩やアンモニウム塩などが好ましい。湿式酸化処理は、これらの酸化剤水溶液中にカーボンブラックを入れて攪拌、加熱することにより行われる。
【0025】
湿式酸化処理の度合は、酸化剤水溶液の濃度、カーボンブラックの添加量、反応温度、反応時間などを適宜に設定することにより制御することができる。具体的にはカーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)でヒドロキシル基量を除した値が0.5μmol/m以上となるように酸化処理することが好ましい。
【0026】
ヒドロキシル基が0.5μmol/m未満であると、ヒドロキシル基量が少ないためにカーボンブラック粒子表面に生成したヒドロキシル基が不均一化し易く、カルボキシル基およびビニル基、あるいは、カルボキシル基およびイソプロペニル基を持つ有機化合物を均一にエステル化反応させることが困難となるためである。その結果、ブラックマトリックス形成用の樹脂組成物を調製する際に溶媒への分散性が低下し、形成したブラックマトリックスの遮光性、表面平滑性、電気抵抗、感光性などの性能低下を招くことになる。
【0027】
本発明のブラックマトリックス用カーボンブラック顔料は、このようにして湿式酸化処理によりカーボンブラック粒子表面に生成したヒドロキシル基に、カルボキシル基およびビニル基、あるいは、カルボキシル基およびイソプロペニル基を持つ有機化合物をエステル結合させたものである。
【0028】
カルボキシル基およびビニル基を持つ有機化合物としては、例えば、アクリル酸、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノアクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチルアクリレート、アクリル酸ダイマー、2−アクリロイルキシエチルコハク酸などが、また、カルボキシル基およびイソプロペニル基を持つ有機化合物としては、例えば、メタクリル酸、2−メタクリロイロキシエチルコハク酸、2−メタクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸が例示される。
【0029】
また、エステル化反応させる際の縮合剤としては、例えば、塩化水素、濃硫酸、フッ化硼素などの無機酸、 N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド、 N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド、1−イソプロピル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド過塩素酸塩、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、N−(3− ジメチルアミノプロピル)−N’− エチルカルボジイミド塩酸塩、メト −P−トルエンスルホン酸 −1−シクロヘキシル−3−(2−モルホリノエチル)カルボジイミドなどのカルボジイミド類、塩化チオニル/N−メチル−2 −ピロピドン、塩化チオニル/N,N’−ジメチルホルムアミド、塩化チオニル/ピリジンなどがある。また、縮合剤を用いずにDean−Stark水分離器などを用いる共沸蒸留法やソックスレー抽出器に無水硫酸マグネシウムやモレキュラーシーブ5Aなどの乾燥剤を入れて、溶媒を乾留させて縮合させるなどの手法を用いることもできる。
【0030】
エステル結合は、上記の湿式酸化処理を施したカーボンブラックを容器に入れて、その中にカルボキシル基およびビニル基、あるいは、カルボキシル基およびイソプロペニル基を持つ有機化合物物と縮合剤を加えて所定温度下に所定時間、攪拌混合して反応させることにより、下記(1)、(2)式に示す反応式にしたがってエステル化反応が進み、エステル結合が形成される。次いで、未反応溶液を減圧あるいは加圧濾過で回収した後、真空乾燥することにより本発明のブラックマトリックス用カーボンブラック顔料が得られる。なお、(1)、(2)式において、Rは炭素数1〜10の2価の炭化水素基、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基などの有機基を示す。
【0031】
【化1】
Figure 2004168963
【0032】
【化2】
Figure 2004168963
【0033】
本発明のブラックマトリックス用カーボンブラック顔料は、溶媒および樹脂と混合して樹脂組成物を調製し、樹脂組成物を透明基板に塗布したり印刷するなどの方法で被膜をつけ、焼き付けすることによりブラックマトリックスが形成される。
【0034】
溶媒としては、例えばメチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、トルエン、キシレン、ベンゼン、クロロホルム、ジクロロメタン、酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、テトラハイドロフラン、N−メチル−2− ピロリドン、 N,N’−ジメチルホルムアミド、 N,N’−ジメチルアセトアミド、 N,N’−ジメチルスルホキシドなど樹脂の溶解性やカーボンブラック顔料の分散性に支障を来さない限り、種々の溶媒を使用することができる。
【0035】
また、樹脂としては、例えばフェノール樹脂、メラミン樹脂、キシレン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、クリプタル樹脂、エポキシ樹脂、アルキルベンゼン樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、メタクリル酸樹脂、ポリエステル樹脂、ポリビニルアルコール、など耐熱性、流動性、カーボンブラック顔料の分散性に悪影響を与えない限り、各種の樹脂が用いられる。
【0036】
ブラックマトリックス形成用の樹脂組成物は、本発明のカーボンブラック顔料と、上記の溶媒および樹脂とを混合することにより調製される。混合比としてはカーボンブラック顔料2〜20重量%、溶媒60〜96重量%、樹脂2〜20重量%の割合で混合される。
【0037】
カーボンブラック顔料が2重量%未満であると形成したブラックマトリックスの遮光性が低くなり、一方20重量%を越えるとブラックマトリックスの膜厚が厚くなるためである。また、溶媒が60重量%未満であると流動性が著しく低下するために均一な膜厚のブラックマトリックスの形成が困難となり、96重量%を越えると遮光性の低下が著しくなるためである。また、樹脂が2重量%未満であるとブラックマトリックスの膜強度が低下し、20重量%を越えると樹脂組成物の粘度が増大して膜厚の制御が困難となるためである。
【0038】
更に、光重合開始剤を樹脂組成物に対して0.5〜40重量%の割合で添加することが好ましい。光重合開始剤の添加割合が0.5重量%未満では十分な光感度が得られず、一方、40重量%を越えると結晶析出による硬度低下が生じるためである。
【0039】
光重合開始剤としては、例えばベンジル、ジアセチルなどのα−ジケトン類、ベンゾインなどのアシロイン類、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルなどのアシロインエーテル類、チオキサントン、2,4−ジエチルキサントン、チオキサントン−4− スルフォン酸などのチオキサントン類、ベンゾフェノン、4,4’− ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’− ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類、アセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、α, α’−ジメトキシアセトキシアセトフェノン、2,2’− ジメトキシ−2− フェニルアセトフェノン、p−メトキシアセトフェノン、2−メチル−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1− プロパンなどのアセトフェノン類、アントラキノン、1,4−ナフトキノンなどのキノン類やトリブロモメチルフェニルスルフォン、フェナンシルクロライド、トリス(トリクロロメチル)−s− トリアジン、p−メトキシフェニル−2,4− ビス(トリクロロメチル)−s− トリアジン、2−(p−ブトキシスチリル)−5− トリクロロメチル−1,3,4−オキサジアゾール、9,10− ジメチルベンズフェナジン、9−フェニルアクリジン、チオキサントン/アミン、ベンゾフェノン/ミヒラーズケトン、ベンジルジメチルケタール、ヘキサアリールビイミダゾール/メルカプトベンズイミダゾールなどが例示される。
【0040】
【実施例】
以下、本発明の実施例を比較例と対比して具体的に説明する。
【0041】
〔ブラックマトリックス用カーボンブラック顔料の製造〕
実施例1〜3
窒素吸着比表面積(NSA)およびDBP吸収量が異なるカーボンブラックを用いて、カーボンブラック100gを濃度1.0mol/dmの過硫酸ナトリウム水溶液3000cmに添加し、0.12s−1で攪拌しながら333Kの温度で10時間反応を行った。反応終了後、限外濾過膜(旭化成社製、AHP−1010、分画分子量 50000)で酸化反応液中に残存する過剰の塩を分離した後濃縮精製した。次いで、この精製液を383Kで16時間真空乾燥した後、ミキサーで粉砕して酸化処理したカーボンブラック試料85gを得た。
【0042】
セパラブルフラスコ(容量 2000cm)に、上記の酸化カーボンブラック試料を20g、メタクリル酸400cmを入れ、超音波洗浄器を用いて0.2s−1で60分間攪拌して分散液を調製した。次いで、この分散液中に、N,N ′−ジシクロヘキシルカルボジイミド(東京化学社製)2.9gをメタクリル酸40cmに溶解させた液を添加し、333Kの温度で12時間反応させた。
【0043】
次いで、フラスコ内に大量のトルエンを加え、減圧濾過してカーボンブラック顔料を回収した。その後、トルエンでソックスレー抽出を行い、未反応のメタクリル酸を完全に除去した後、383Kで16時間真空乾燥して表面に付着したトルエンを完全に除去した。このようにして、カーボンブラック粒子表面のヒドロキシル基にメタクリル酸をエステル結合させたブラックマトリックス用カーボンブラック顔料を製造した。
【0044】
実施例4
実施例2において、メタクリル酸に代えて、アクリル酸を使用した他は、全て実施例2と同じ方法によりカーボンブラック粒子表面のヒドロキシル基にアクリル酸がエステル結合したブラックマトリックス用カーボンブラック顔料を製造した。
【0045】
比較例1〜3
実施例1〜3に使用したカーボンブラックと同じカーボンブラックを用い、実施例1〜3と同じ方法で酸化処理を行った。この酸化カーボンブラックを、そのままブラックマトリックス用カーボンブラック顔料とした。
【0046】
比較例4〜6
窒素吸着比表面積(NSA)が50m/g以上、DBP吸収量がが140cm/100g以下の特性要件の少なくとも1つの特性要件を満たさないカーボンブラックを用いた他は、全て実施例1〜3と同じ方法によりブラックマトリックス用カーボンブラック顔料を製造した。
【0047】
比較例7〜9
実施例1〜3に使用したカーボンブラックと同じカーボンブラックを用い、カーボンブラック150gをオゾン処理器中に入れて、オゾン発生機(日本オゾン社製 IOT−4A6)により、発生電圧200V、オゾン発生量5mg/sの条件で5時間保持してオゾンによる気相酸化処理を行った他は、実施例1〜3と同じ方法でブラックマトリックス用カーボンブラック顔料を製造した。
【0048】
比較例10
実施例2のメタクリル酸に代えて、イソブチルビニルエーテルを用いた他は、全て実施例2と同じ方法によりブラックマトリックス用カーボンブラック顔料を製造した。
【0049】
酸化処理したカーボンブラックの粒子表面のヒドロキシル基を下記の方法により測定した。
2,2’−Diphenyl−1−picrylhydrazyl(DPPH)を四塩化炭素中に溶解し、5×10−4mol/dmに調整する。該溶液に酸化処理したカーボンブラックを約0.1〜0.6g入れ、60℃の恒温槽で6時間攪拌した後カーボンブラックと反応液とを分離し、濾液を紫外線吸光光度計によりヒドロキシル基量を測定する。この値を未酸化カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)で除して、カーボンブラック粒子の単位表面積当たりのヒドロキシル基量(μmol/m)とする。
【0050】
このようにして製造したブラックマトリックス用カーボンブラック顔料について、使用したカーボンブラックの特性、酸化処理法、酸化処理後のヒドロキシル基量およびエステル結合させた有機化合物などを表1に示した。
【0051】
【表1】
Figure 2004168963
【0052】
〔ブラックマトリックス形成用樹脂組成物の調製〕
カーボンブラック顔料16g、シクロヘキサノン64g、メタクリル酸樹脂20g、光重合開始剤としてイルガキュア(R)907(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)3gを軽く混合した後、ホモジナイザーにより微分散させてブラックマトリックス形成用の樹脂組成物を調製した。この樹脂組成物の粘度、表面張力および樹脂組成物中のカーボンブラック粒子凝集体の粒径を下記の方法により測定し、その結果を表2に示した。
【0053】
粘度;
回転振動式粘度計(山一電機社製、VM−100A−L )を用いて、温度298Kにおける粘度を測定した。
【0054】
表面張力;
表面張力測定装置(協和界面科学社製)を用いて、温度298Kにおける表面張力を測定した。
【0055】
粒径;
ヘテロダインレーザドップラー方式粒度分布測定装置(マイクロトラック社製UPA model 9340)を用いて測定した。測定は、樹脂組成物中のカーボンブラック粒子凝集体の粒度分布の累積度数分布曲線から50%累積度数の値を平均粒径、99%累積度数の値を最大粒径として求めた。なお、測定時、粘度調整の溶媒としてはシクロヘキサノンを用いた。
【0056】
【表2】
Figure 2004168963
【0057】
〔ブラックマトリックスの形成〕
調製した樹脂組成物を、トリクロロエチレンで超音波洗浄した厚さ1.1mmのほうケイ酸透明ガラス基板上にスピンコーターを用いて0.06s−1で塗布し、393〜523Kのホットプレート上で120秒間加熱した。次いで、線幅が20μm(ブラックマトリックスになる部分が20μm)のマスクを介してウシオ電機社製露光装置にて紫外線照射を行った。その後、富士フィルムオーリン社製現像液FHD−5に浸漬し、流量8.33cm/s、吐出圧0.098MPaでシャワー洗浄して現像し、非露光部の黒色樹脂層を除去した。最後に、表面温度523Kのホットプレート上で1時間加熱してブラックマトリックスパターンを得た。
【0058】
このようにして形成したブラックマトリックスについて、下記の方法により測定評価を行い、その結果を表3に示した。
【0059】
紫外線照射量;
ウシオ電機社製露光装置を用いて、樹脂組成物を硬化させる紫外線照射量を測定した。
【0060】
光学的濃度(OD値);
マクベス濃度計(コルモーゲン社製、RD−927)を用いて透過光学的濃度(OD値)測定し、膜厚1μm 当たりの光学的濃度を求めた。
【0061】
膜厚;
触針式膜厚計(テンコール社製 α−ステップ)により観察して、膜厚を測定した。
【0062】
体積固有抵抗;
ガラス基板をクロム蒸着基板に変更した以外は、ブラックマトリックスと同じ方法で塗膜を形成し、硬化した塗膜上に面積0.28cm(S)の円形電極を銀ペーストにより形成し、この電極と対向電極であるクロム蒸着面との間に一定電圧発生装置(ケンウッド社製 PA36−2A レギュレーテッド DC パワーサプライ)を用いて一定の電圧(100V)を印加し、膜に流れる電流(I)を電流計(アドバンテスト社製 R644C デジタルマルチメーター)にて測定した。次に、黒色膜の膜厚(d)cmを測定し、下記式から体積固有抵抗Rを求めて、その対数値(log10R)を算出した。
R(Ω・cm)=(V・S)/(I・d)
【0063】
膜硬度;
JIS K5400「鉛筆ひっかき試験」の方法に準拠して測定した。
【0064】
表面粗さ;
SPM(走査型プローブ顕微鏡、AFM モード SII社製 SPI−3100 )にて表面を観察し、表面の粗さを測定した。
【0065】
【表3】
Figure 2004168963
【0066】
表1〜3より、窒素吸着比表面積(NSA)が50m/g以上、DBP吸収量が140cm/100g以下のカーボンブラックを過硫酸ナトリウム水溶液でヒドロキシル基を0.5μmol/m以上に湿式酸化処理し、生成したヒドロキシル基と、メタクリル酸をエステル結合させた実施例1〜3、および、アクリル酸をエステル結合させた実施例4のカーボンブラック顔料から調製した樹脂組成物は、粘度が約15mPa・sと低く、また樹脂組成物中のカーボンブラック粒子凝集体の粒径も小さく、この樹脂組成物は紫外線照射量が約300mJ/cmでブラックマトリックスを形成することができ、更に、このブラックマトリックスは光学的濃度、膜厚、体積固有抵抗、膜硬度、表面粗さなど、いずれも良好なレベルにあった。なお、現像後に得られるブラックマトリックスパターンの非露光部にブラックマトリックス層の残存は確認されなかった。
【0067】
これに対して、比較例1〜3は実施例1〜3と同じカーボンブラックを用い、同じ酸化処理を施したものであるが、実施例1〜3のようにメタクリル酸をエステル結合させない場合には、調製した樹脂組成物は、粘度が約40mPa・sであり、ブラックマトリックスの形成には約500mJ/cmの紫外線照射量が必要であった。また、形成したブラックマトリックスも実施例1〜3に比べて、膜厚当たりの光学的濃度および体積固有抵抗が非常に低かった。
【0068】
また、窒素吸着比表面積(NSA)が50m/g以上、DBP吸収量がが140cm/100g以下の特性要件の少なくとも1つの特性要件を満たさないカーボンブラックを用いた比較例4〜6では、実施例1〜4に比べて形成したブラックマトリックスの光学的濃度が低く、表面粗さも若干大きくなることが認められた。
【0069】
一方、オゾンによる気相酸化を施した比較例7〜9では、酸化処理が不充分なため、カーボンブラック粒子表面に生成したヒドロキシル基が極めて少なく、調製した樹脂組成物は粘度が高く、表面張力、カーボンブラック粒子凝集体も大きいものであった。その結果、形成したブラックマトリックスは光学的濃度、膜厚、表面粗さ、体積固有抵抗、膜硬度のいずれも低位にあった。
【0070】
また、比較例10は、実施例2と同じカーボンブラックを実施例2と同じ方法で酸化処理したものであるが、有機化合物としてメタクリル酸に代えてカルボキシル基を持たないイソブチルビニルエーテルを使用したので、エステル化反応が進行せず、調製した樹脂組成物はゲル化して、ブラックマトリックスを形成することができなかった。
【0071】
【発明の効果】
本発明のブラックマトリックス用カーボンブラック顔料は、窒素吸着比表面積(NSA)が50m/g以上、DBP吸収量が140cm/100g以下の特性範囲にあるカーボンブラックを湿式酸化処理して、生成したカーボンブラック粒子表面のヒドロキシル基に、カルボキシル基およびビニル基、あるいは、カルボキシル基およびイソプロペニル基を持つ有機化合物をエステル結合させてなることを特徴とする。そして、このカーボンブラック顔料を用いて調製したブラックマトリックス形成用の樹脂組成物は粘度が低く、樹脂組成物中のカーボンブラック粒子凝集体の粒径も小さく、低紫外線照射量でブラックマトリックスを形成することが可能である。そして、この樹脂組成物により形成したブラックマトリックスは光学的濃度が高く、膜厚、体積固有抵抗、膜硬度、表面粗さなどに優れており、能率良くブラックマトリックスの形成が可能となる。更に、現像後に得られるブラックマトリックスパターンの非露光部にはブラックマトリックス層の残存は認められないものである。

Claims (2)

  1. 窒素吸着比表面積(NSA)が50m/g以上、DBP吸収量が140cm/100g以下のカーボンブラックを湿式酸化処理して生成したカーボンブラック粒子表面のヒドロキシル基に、カルボキシル基およびビニル基、あるいは、カルボキシル基およびイソプロペニル基を持つ有機化合物をエステル結合させてなることを特徴とするブラックマトリックス用カーボンブラック顔料。
  2. 湿式酸化処理して生成したカーボンブラック粒子表面のヒドロキシル基が0.5μmol/m以上である請求項1記載のブラックマトリックス用カーボンブラック顔料。
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