JP2004166573A - 銀杏加工方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】加工中に略全ての銀杏の殻が自然に割れ、その後の加熱調理時に殻や実が破裂せず、しかも風味や色合いという銀杏の品質も低下しにくい銀杏加工方法および加工銀杏を提供する。
【解決手段】殻と実との隙間から空気を抜いた後(図1(b))、殻と実との隙間に水を侵入させ(図1(d))、次にこれを冷凍し(図1(f))、殻と実との隙間の水を凍らせて水が氷結するときの体積膨張力を利用し、殻を内側から割るので、加工中に略全ての銀杏の殻が自然に割れ、その後の加熱調理時に殻や実が破裂せず、しかも冷凍品であるので風味や色合いという銀杏の品質も低下しにくい。
【選択図】 図1
【解決手段】殻と実との隙間から空気を抜いた後(図1(b))、殻と実との隙間に水を侵入させ(図1(d))、次にこれを冷凍し(図1(f))、殻と実との隙間の水を凍らせて水が氷結するときの体積膨張力を利用し、殻を内側から割るので、加工中に略全ての銀杏の殻が自然に割れ、その後の加熱調理時に殻や実が破裂せず、しかも冷凍品であるので風味や色合いという銀杏の品質も低下しにくい。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は銀杏加工方法および加工銀杏、詳しくは加工途中で銀杏の殻が自然に割れ、加熱調理時に殻や実が破裂せず、しかも風味や色合いといった銀杏の品質も低下しにくい銀杏加工方法および加工銀杏に関する。
【0002】
【従来の技術】
例年、銀杏は9月上旬から11月下旬にかけて、生の食材として市場に出回る。居酒屋などの飲食店では、その秋期に限定し、銀杏料理をメニューに加えているところが多い。
生の銀杏の賞味期限は、冷蔵庫による保存でも、殻付きや剥き実に関係なく1週間程度である。銀杏は、殻付きの方が風味(味、香りなど)、色合い、食感などが良い。そのことは一般的に知られている。
ところで、銀杏の賞味期限を長くし、年間にわたって銀杏料理を楽しめるように、従来、水煮の銀杏が市販されている。例えば銀杏の実を水煮し、それを缶に詰めたり瓶に詰めたりした商品、その他、水煮の実をレトルトパックに密封した商品などがそれである。
【0003】
また、例えば特開平8−242799号の「鞘付の冷凍味付枝豆およびその製造方法」などの食品に対するブランチング処理後の冷凍技術を応用して、銀杏の実をブランチング処理し、それを冷凍パックに詰めることも考えられる。
【0004】
【特開平8−242799号】
【0005】
ブランチング処理とは、食品(ここでは銀杏)を冷凍保存する際に施される加熱処理の一種である。具体的には、銀杏の殻を剥き、その実を5〜10分間湯通しする。こうして、銀杏の実の80〜90%が加熱処理(ボイル)される。言い換えれば、銀杏は完全には熱処理されないまま冷凍される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの従来の銀杏加工方法などによれば、水煮または冷凍用のブランチング処理の何れであっても、銀杏の実は熱湯で加熱処理される。そのため、水煮後の銀杏および冷凍して解凍した銀杏は、銀杏特有の風味、色合い、食感などが低下していた。また、このように水煮やブランチング処理された銀杏は、加熱処理時、熱湯の中に所定時間だけ浸漬される。その結果、その実は多くの細胞壁が破壊されていた。これにより、例えば銀杏の串焼きを作るため、水煮後の銀杏または冷凍して解凍した銀杏に竹串を刺すと、銀杏に亀裂が入り、簡単に割れてしまう。よって、串焼き銀杏の歩留りが低下する。
【0007】
そこで、銀杏を熱湯で加熱処理せず、殻が付いた生のまま冷凍することも考えられる。しかしながら、この方法では、解凍後、殻付きの銀杏を例えばグリルの炎や炭火などで炙って焼き処理した際、生の銀杏の場合と同様に、殻や実が破裂するおそれがあった。また、殻の一部分に亀裂が入らなかった際には、ハンマやペンチなどで殻を割らなければならない。そのため、手間を要するとともに、この殻割り時にハンマなどで実を押し潰すおそれもあった。
また、殻付き銀杏を焼き処理する別の方法として、解凍後、まず銀杏の殻を割ってから、実を炙る方法も考えられる。しかしながら、この方法では、炙りの最中に、実が破裂してしまうおそれがある。そこで発明者は、この現象について鋭意研究した結果、一部の銀杏の実の中心部には空洞が存在し、この空洞の内部空気が加熱処理中に体積膨張して、このような実単独での破裂現象が発生することを突き止めた。
【0008】
【発明の目的】
この発明は、加工中に略全ての銀杏の殻が自然に割れ、その後の加熱調理時に殻や実が破裂せず、しかも風味や色合いという銀杏の品質も低下しにくい銀杏加工方法および加工銀杏を提供することを、その目的としている。
また、この発明は、加熱調理時に実が破裂しない加工銀杏を提供することを、その目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、銀杏の殻と実との隙間から空気を抜く空気抜き工程と、この空気抜き後、前記殻と実とのあいだの隙間に水を侵入させる水侵入工程と、水が侵入した殻付き銀杏を冷凍し、該殻と実との隙間の水を凍らせ、水が氷結するときの体積膨張力により、前記殻を内側から割る冷凍工程とを備えた銀杏加工方法である。
殻と実との隙間から空気を抜く方法は限定されない。例えば、95〜98℃の熱湯に1〜3分間程度殻付き銀杏を浸漬する。また、殻付き銀杏を真空室(負圧室)に収納し、多孔質の殻を通して、殻と実との隙間から空気を吸い出してもよい。この真空を利用した場合、空気抜きを短時間で確実に行うことができる。しかも、例えば真空状態を維持したまま、次の水侵入工程として銀杏を水に浸漬すれば、あらかじめ殻と実との隙間が負圧化されているので、その隙間への水の侵入時間が短縮し、しかも水の侵入も確実になる。
殻と実との隙間に、水を侵入させる方法は限定されない。例えば、冷水に所定時間だけ浸漬してもよい。
殻付きの銀杏の冷凍方法は限定されない。例えば、殻付き銀杏を−30℃前後で急速冷凍してもよい。殻付き銀杏の保存は−18℃以下とし、この温度で殻付き銀杏またはその剥き実を市場に流通させる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、前記空気抜き工程では、殻付きの銀杏に高温の水を接触させ、該殻と実との隙間から空気を抜く請求項1に記載の銀杏加工方法である。
殻付きの銀杏に接触させる高温の水は限定されない。例えば熱湯、スチームでもよい。接触方法としては、殻付き銀杏を熱湯に浸漬したり、スチーム室に収納したりする。何れの場合にも、短時間の接触となる。具体的には1〜3分間、特に1分間前後が好ましい。このように、高温の水との接触時間を短くするのは、高温の水との接触により銀杏の実の細胞壁を破壊しないためである。破壊されると、銀杏を調理する際に型崩れしやすい。しかも、調理時間の調整がむずかしくなり、例えば焼き処理する際、表面に部分的な焦げが発生したり、固くなるおそれがある。
【0011】
請求項3に記載の発明は、前記水侵入工程では、前記空気抜きされた殻付きの銀杏を水に浸漬する請求項1または請求項2に記載の銀杏加工方法である。
水の温度は、例えば1〜3℃である。殻付き銀杏の水への浸漬時間は、例えば24時間程度以上である。
【0012】
請求項4に記載の発明は、前記空気抜き工程の前に、前記殻付きの銀杏を水に浸漬し、比重差により銀杏の良品と不良品とを選別して、該不良品を排除しておく請求項1〜請求項3のうち、何れか1項に記載の銀杏加工方法である。
不良品としては、例えば発育不良の銀杏、割れた銀杏、劣化した銀杏、虫食いの銀杏、さらには収穫から日数が経ち過ぎて実が痩せた銀杏などが挙げられる。これらは、良品の銀杏とは異なり、水よりも比重が小さい。そのため水面付近に浮く。
【0013】
請求項5に記載の発明は、前記冷凍後の殻付きの銀杏を解凍し、その後、該殻付きの銀杏を、前記実に焦げ目が付かない加熱条件で焼き処理する請求項1〜請求項4のうち、何れか1項に記載の銀杏加工方法である。
銀杏の解凍は、流水または冷水により行ってもよい。また、室内または冷蔵庫内で自然解凍してもよい。
銀杏の実に焦げ目を付けない加熱条件は限定されない。例えば、解凍後の殻付き銀杏を、炉内温度が常温〜150℃の熱処理炉に入れ、次いでヒータまたはバーナなどにより設定温度200℃まで徐々に昇温させる。加熱時間は3分30秒〜6分間である。その後、お湯または冷水に浸漬し、それから殻を外して1〜3℃で保存する。または、剥き実の銀杏を市場に流通させてもよい。
【0014】
請求項6に記載の発明は、焼き処理後、前記実から殻を外し、再び冷凍する請求項5に記載の銀杏加工方法である。
殻を外した後、例えば銀杏の実を、−18℃以下に保持して流通させてもよい。
【0015】
請求項7に記載の発明は、前記実の表面の一部に、該実の中心部に存在する空洞まで達した空気抜き孔を穿孔する請求項1〜請求項6のうち、何れか1項に記載の銀杏加工方法である。
空気抜き孔の大きさは限定されない。例えば直径0.8〜1.5mmである。空気抜き孔を形成する方法も限定されない。例えば、妻楊枝または竹串などを銀杏の実に突き刺す。空気抜き孔の形成数は限定されない。少なくとも1つあればよい。
【0016】
請求項8に記載の発明は、銀杏の殻と実との隙間に存在する水が、前記銀杏の冷凍処理により氷結して殻が割れている加工銀杏である。
【0017】
請求項9に記載の発明は、前記実の表面の一部に、該実の中心部に存在する空洞まで達した空気抜き孔が穿孔されている請求項8に記載の加工銀杏である。
【0018】
請求項10に記載の発明は、銀杏の実の表面の一部に、該実の中心部に存在する空洞まで達した空気抜き孔が穿孔されている加工銀杏である。
銀杏は殻付きでもよいし、実だけでもよい。また、対象となるのは、生の銀杏でも加工された銀杏でもよい。加工の種類は限定されない。例えば、冷凍された銀杏でもよい。
【0019】
【作用】
請求項1に記載の銀杏加工方法によれば、銀杏の殻と実との隙間から空気を抜き、その後、殻と実との隙間に水を侵入させる。続いて、水が侵入した殻付き銀杏を冷凍し、この隙間に存在する水を凍らせる。その際、水が氷結するときの体積膨張力により、殻が内側から割れる。
これにより、加工中に銀杏の殻が自然に割れ、その後の加熱調理時に殻や実が破裂せず、しかも冷凍されるので、風味や色合いといった銀杏の品質も低下しにくい。
【0020】
特に、請求項2に記載の銀杏加工方法によれば、殻付きの銀杏に高温の水を接触させ、殻と実との隙間から空気を抜く。このとき、高温の水の熱により殻と実との隙間に存在する空気、および、実に含まれる空気の運動が激しくなり、多孔質の殻をこの空気が通過する。それと入れ代わるように外部から水が隙間に侵入する。ただし、ボイルによる剥き実の細胞壁の破壊を防止するため、水との接触時間は短く設定される場合が多いことから、全ての銀杏の隙間全体に水が満たされるわけではない。また、このようにボイルすることで、例えば銀杏の殺菌効果、剥き実の内部の酸化酵素を不活性化させて品質低下を防止する効果、加熱による組織軟化を促して氷結時の細胞壁の破壊を防止するなど、公知のブランチング処理と同じ効果が得られる。また、殻のままボイルするため、銀杏の風味を保ち、ボイル中の実の傷付きや割れ、実への熱の伝わりを一定にすることができる。
【0021】
請求項3に記載の銀杏加工方法によれば、空気抜きされた銀杏を水に浸漬する。あらかじめ空気抜きを施しているので、略全ての銀杏に対して、殻を介して、殻と実との隙間の全域に水を侵入させることができる。高温の水を利用して空気抜きされた銀杏の場合、銀杏を水に浸漬する前に、流水または冷水を使用して銀杏を常温まで冷却した方が好ましい。
【0022】
請求項4に記載の銀杏加工方法によれば、空気抜き工程の前に、殻付きの銀杏を水に浸漬する。発育不良の銀杏、割れた銀杏、虫食いの銀杏、さらには収穫から日数が経ち過ぎて実が痩せた銀杏は、良品の銀杏よりも比重が小さく水に浮く。よってその比重差により銀杏の良品と不良品とを選別することができる。ここで不良品と判断された銀杏を、空気抜きされる銀杏の中からあらかじめ排除しておく。
このように、あらかじめ不良品を除去しておくことで、この発明で処理した銀杏は、冷凍工程でより100%に近い割合で殻を割ることができる。その結果、選別しない場合よりも、加工銀杏の歩留りを高めることができる。
【0023】
請求項5に記載の銀杏加工方法によれば、殻付きの銀杏を解凍後、実に焦げ目が付かない加熱条件で焼き処理する。解凍直後の銀杏には、通常、その殻の内面および実の表面に多少の水分が残っている。そのため、焼き処理時、実を均一に加熱処理することができる。すなわち、銀杏の細胞を膨張させ、適度な硬さや弾性力を与えることができる。しかも、焼き処理による焼きムラや焦げまたは実そのものの破損、割れなどを防ぐことができる。
【0024】
請求項6に記載の銀杏加工方法によれば、焼き処理後、実から殻を外し、再び冷凍する。焼き処理を施すことで殻の割れは増大する。そのため、殻剥き時に殻が剥きやすい。
【0025】
請求項7に記載の銀杏加工方法および請求項9、請求項10に記載の加工銀杏によれば、実の表面の一部に、実の中心部に存在する空洞まで達した空気抜き孔を穿孔する。これにより、銀杏の焼き処理時、実の中心部に存在する空洞の内部空気が体積膨張しても、この内部空気は空気抜き孔を通過して外部に排出される。その結果、この焼き処理に伴う実の破裂を防ぐことができる。
【0026】
請求項8に記載の加工銀杏によれば、銀杏の冷凍時、銀杏の殻と実との隙間に存在する水が氷結し、このときの水の体積膨張力により銀杏は殻が割れる。そのため、後の殻剥き作業が容易になるとともに、焼き処理時における銀杏の殻が実の破裂を防止することができる。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施例を図面を参照して説明する。図1は、この発明の一実施例に係る銀杏加工方法を示すフローシートである。
図1に示すように、この実施例にあっては、原料選別、空気抜き、冷却、水侵入、水切り、冷凍、解凍、水切り、焼き処理、殻剥き、選別、串刺し、冷凍(保存)、包装・箱詰め・検査、出荷の各工程を経て、加工銀杏が製造されて市場に出回る。以下、各工程を詳細に説明する。
まず、原料入荷後、殻付きの銀杏を水に浸漬し、比重差により良品と不良品とを選別する(図1(a))。発育不良の銀杏、割れた銀杏、劣化した銀杏、虫食いの銀杏、その他、収穫から日数が経ち過ぎて実が痩せた銀杏などは、良品の銀杏よりも比重が小さい。そのため、水の中に投入すると、水面付近まで浮き上がる。その後、この不良品の銀杏を掬い取る。実が詰まった良品の銀杏は、比重が水より重く、水面下深く沈んでしまう。
【0028】
次に、良品の銀杏に対して、殻と実との隙間から空気を抜く(図1(b))。具体的には、殻付きの銀杏を95〜98℃の熱湯に1分間浸漬する。殻付きのままボイルするので、銀杏の風味を保ち、ボイル中に発生する実の傷、割れを防ぎ、実への熱の伝わりを均一にすることができる。銀杏の浸漬時間が短いので、実の細胞壁を破壊しにくい。この細胞壁が破壊されると、出荷先で銀杏を調理する際に型崩れしやすい。しかも、加熱調理するときに調理時間の設定がむずかしく、例えば炙り焼きする際、表面に部分的な焦げが発生したり、固くなるおそれがある。この空気抜き工程でも、殻と実との隙間に水が侵入してくる。ただし、隙間の全域が水で満たされる銀杏は、全体の80〜90%である。したがって、仮に、次の水侵入工程を省き、このまま殻付き銀杏を冷凍すると、10〜20%の銀杏において、冷凍により殻が割れないという不具合が生じる。
次いで、空気抜きされた殻付きの銀杏を常温近くまで冷やす(図1(c))。冷却方法としては、流水に晒したり、冷水に漬ける。
【0029】
その後、殻と実とのあいだの隙間に水を侵入させる(図1(d))。すなわち、1〜3℃の冷水に24時間以上浸漬する。あらかじめ銀杏は殻付きのまま熱湯に漬けられて空気抜きが施される。これにより、ボイルによって殻の中の実が組織軟化し、続いて冷水に漬けることで水分が殻と実との隙間に侵入する。その結果、略100%に近い銀杏において、殻と実との隙間の全域に水を侵入させることができる。
続いて、ボイルされた殻付き銀杏を水切りする(図1(e))。ここでの水切りは容易なものでよい。水分を取りすぎると、凍結時に殻が割れた部分から露出した実の一部分が乾燥し、劣化しやすくなるからである。
【0030】
次に、水切りされた殻付き銀杏を−30℃前後で急速冷凍する(図1(f))。これにより、殻と実との隙間に存在する水が氷結し、このときの水の体積膨張力により、略全ての銀杏の殻が自然に内側から押し割られる。その際、あらかじめ空気抜き工程でのボイルにより、銀杏の実に組織軟化が施されている。これにより、冷凍に伴う実の細胞破壊(品質低下)を防ぐことができる。得られた殻付きの冷凍銀杏は、例えば1〜2kgずつ袋または容器に密封し、保存したり、食材として流通させてもよい。このように銀杏を密封するのは、外気との接触による実の乾燥および劣化を防ぐためである。
【0031】
図1(g)に示す解凍時には、凍った殻付き銀杏を冷水に漬けて解凍する。または、流水に晒して解凍する。冷凍銀杏は、氷結したまま調理が可能であるが、食感に少し違いが生じる。よって、このように自然解凍してから調理(例えば炙り焼き)した方が好ましい。自然解凍すれば、生の銀杏と略同じ時間またはそれより若干早く調理できる。
解凍後、殻付き銀杏を水切りする(図1(g))。ここでの水切りは、図1(e)の水切り時よりもしっかりと施す。これは、次の銀杏の焼き処理に影響をおよぼすためである。
焼き処理工程では、殻付きの銀杏を実に焦げ目が付かない加熱条件で、徐々に温度を高めながらオーブンで焼き処理する(図1(i))。設定温度は200℃である。ここで、実際に熱処理試験を行った結果を報告する。試験例1は焼き処理開始時のオーブンの室内温度が30℃、試験例2は150℃である。このときの加熱時間とオーブンの室内温度との関係を表1に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
表1から明らかなように、初期の室内温度が30℃の場合には、室内温度が200℃に達するまで5分かかった。これに対して、初期の室内温度が150℃の場合、3分30秒という短時間で設定温度まで達した。何れの場合でも、銀杏の焼き具合は良好であった。
解凍直後の銀杏には、その殻の内面および実の表面に多少の水分が付着している。そのため、焼き処理時、殻の中で銀杏を均一に加熱処理することができる。すなわち、銀杏の実はあらかじめ組織軟化されている。そのため、焼き処理時には細胞が組織破壊を起こさず膨張する。よって、剥き実に適度な硬さや弾性力を与えることができる。しかも、剥き実は殻に包まれた状態で焼かれる。そのため、焼きムラや焦げ、焼き処理中の剥き実の破損、割れなどを防ぐことができる。
【0034】
焼き処理後、殻を剥く(図1(j))。冷凍時に生じた殻の割れは焼き処理により大きくなっている。そのため、殻剥き時に殻が剥きやすい。得られた剥き実からしぶ皮を剥がすかは任意である。
次に、大きさの規格などを基準にし、剥き実を選別する(図1(k))。その後、剥き実に竹串を刺し、串刺し銀杏の下ごしらえをする(図1(l))。
次いで、この串刺しされた銀杏を−18℃以下で再び冷凍し、この温度を保持して各種の検査を行った後、包装、箱詰めして出荷する(図1(n),図1(o))。
【0035】
このように、殻と実との隙間から空気を抜き、その後、この隙間に水を侵入させて冷凍し、前記隙間の水を凍らせることで水が氷結するときの体積膨張力により殻を割るようにしたので、加工中に略全ての銀杏の殻が自然に割れる。しかも、その後の加熱調理時に殻や実が破裂せず、さらに冷凍品であるので風味や色合いといった銀杏の品質も低下しにくい。
また、殻付きの銀杏に高温の水を接触させ、殻と実との隙間から空気を抜くので、簡単な作業で空気抜きを行うことができる。
さらに、空気抜きされた銀杏を水に浸漬するので、殻を通して、殻と実との隙間の略全域に水を侵入させることができる。
次に、空気抜き工程の前に、殻付きの銀杏を水に浸漬し、その比重差により良品と不良品とを選別するので、最終的に得られる加工銀杏の歩留りを高めることができる。
【0036】
それから、解凍後の銀杏を殻付きのまま焼き処理するので、実に焦げ目を付けずに均一に焼き処理することができる。しかも、焼きムラや焦げ、または実の破損、割れなどを防ぐことができる。
また、焼き処理時に殻の割れが増大するので、続く殻剥き時に殻が剥きやすくなる。
さらには、この剥き実の一部に、内部の空洞まで達する空気抜き孔を穿孔してもよい。これにより、炙り焼きなどの調理中に実が破裂しにくい。すなわち、焼き処理時に、実の中心部に存在する空洞の内部空気が体積膨張しても、この内部空気は空気抜き孔を通過して外部に排出される。そのため、実の破裂を防ぐことができる。
【0037】
【発明の効果】
請求項1に記載の銀杏加工方法によれば、殻と実との隙間から空気を抜いた後、殻と実との隙間に水を侵入させ、次にこれを冷凍し、殻と実との隙間の水を凍らせて水が氷結するときの体積膨張力を利用し、殻を内側から割るので、加工中に略全ての銀杏の殻が自然に割れ、その後の加熱調理時に殻や実が破裂せず、しかも冷凍品であるので風味や色合いという銀杏の品質も低下しにくい。
【0038】
特に、請求項2に記載の銀杏加工方法によれば、殻付きの銀杏に高温の水を接触させ、殻と実との隙間から空気を抜くので、簡単な作業で空気抜きを行うことができる。
【0039】
請求項3に記載の銀杏加工方法によれば、空気抜きされた銀杏を水に浸漬するので、殻を通して、殻と実との隙間の略全域に水を侵入させることができる。
【0040】
請求項4に記載の銀杏加工方法によれば、空気抜き工程の前に、殻付きの銀杏を水に浸漬し、その比重差により良品と不良品とを選別するので、最終的に得られる加工銀杏の歩留りを高めることができる。
【0041】
請求項5に記載の銀杏加工方法によれば、解凍後の銀杏を殻付きのまま焼き処理するので、実に焦げ目を付けずに均一に焼き処理することができる。しかも、焼きムラや焦げ、または実の破損、割れなどを防ぐことができる。
【0042】
請求項6に記載の銀杏加工方法によれば、焼き処理を施すことで殻の割れが増大するので、続く殻剥き時に殻を剥きやすい。
【0043】
請求項7に記載の銀杏加工方法および請求項9、請求項10に記載の加工銀杏によれば、剥き実の一部に、内部の空洞まで達した空気抜き孔を穿孔するので、焼き処理時に、実の破裂を防ぐことができる。
【0044】
請求項8に記載の加工銀杏によれば、銀杏の冷凍時、銀杏の殻と実との隙間に存在する水が氷結し、このときの水の体積膨張力により銀杏は事前に殻が割れる。そのため、殻剥き作業が容易になるとともに、その後の焼き処理時における銀杏の破裂を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施例に係る銀杏加工方法を示すフローシートである。
【発明の属する技術分野】
この発明は銀杏加工方法および加工銀杏、詳しくは加工途中で銀杏の殻が自然に割れ、加熱調理時に殻や実が破裂せず、しかも風味や色合いといった銀杏の品質も低下しにくい銀杏加工方法および加工銀杏に関する。
【0002】
【従来の技術】
例年、銀杏は9月上旬から11月下旬にかけて、生の食材として市場に出回る。居酒屋などの飲食店では、その秋期に限定し、銀杏料理をメニューに加えているところが多い。
生の銀杏の賞味期限は、冷蔵庫による保存でも、殻付きや剥き実に関係なく1週間程度である。銀杏は、殻付きの方が風味(味、香りなど)、色合い、食感などが良い。そのことは一般的に知られている。
ところで、銀杏の賞味期限を長くし、年間にわたって銀杏料理を楽しめるように、従来、水煮の銀杏が市販されている。例えば銀杏の実を水煮し、それを缶に詰めたり瓶に詰めたりした商品、その他、水煮の実をレトルトパックに密封した商品などがそれである。
【0003】
また、例えば特開平8−242799号の「鞘付の冷凍味付枝豆およびその製造方法」などの食品に対するブランチング処理後の冷凍技術を応用して、銀杏の実をブランチング処理し、それを冷凍パックに詰めることも考えられる。
【0004】
【特開平8−242799号】
【0005】
ブランチング処理とは、食品(ここでは銀杏)を冷凍保存する際に施される加熱処理の一種である。具体的には、銀杏の殻を剥き、その実を5〜10分間湯通しする。こうして、銀杏の実の80〜90%が加熱処理(ボイル)される。言い換えれば、銀杏は完全には熱処理されないまま冷凍される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの従来の銀杏加工方法などによれば、水煮または冷凍用のブランチング処理の何れであっても、銀杏の実は熱湯で加熱処理される。そのため、水煮後の銀杏および冷凍して解凍した銀杏は、銀杏特有の風味、色合い、食感などが低下していた。また、このように水煮やブランチング処理された銀杏は、加熱処理時、熱湯の中に所定時間だけ浸漬される。その結果、その実は多くの細胞壁が破壊されていた。これにより、例えば銀杏の串焼きを作るため、水煮後の銀杏または冷凍して解凍した銀杏に竹串を刺すと、銀杏に亀裂が入り、簡単に割れてしまう。よって、串焼き銀杏の歩留りが低下する。
【0007】
そこで、銀杏を熱湯で加熱処理せず、殻が付いた生のまま冷凍することも考えられる。しかしながら、この方法では、解凍後、殻付きの銀杏を例えばグリルの炎や炭火などで炙って焼き処理した際、生の銀杏の場合と同様に、殻や実が破裂するおそれがあった。また、殻の一部分に亀裂が入らなかった際には、ハンマやペンチなどで殻を割らなければならない。そのため、手間を要するとともに、この殻割り時にハンマなどで実を押し潰すおそれもあった。
また、殻付き銀杏を焼き処理する別の方法として、解凍後、まず銀杏の殻を割ってから、実を炙る方法も考えられる。しかしながら、この方法では、炙りの最中に、実が破裂してしまうおそれがある。そこで発明者は、この現象について鋭意研究した結果、一部の銀杏の実の中心部には空洞が存在し、この空洞の内部空気が加熱処理中に体積膨張して、このような実単独での破裂現象が発生することを突き止めた。
【0008】
【発明の目的】
この発明は、加工中に略全ての銀杏の殻が自然に割れ、その後の加熱調理時に殻や実が破裂せず、しかも風味や色合いという銀杏の品質も低下しにくい銀杏加工方法および加工銀杏を提供することを、その目的としている。
また、この発明は、加熱調理時に実が破裂しない加工銀杏を提供することを、その目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、銀杏の殻と実との隙間から空気を抜く空気抜き工程と、この空気抜き後、前記殻と実とのあいだの隙間に水を侵入させる水侵入工程と、水が侵入した殻付き銀杏を冷凍し、該殻と実との隙間の水を凍らせ、水が氷結するときの体積膨張力により、前記殻を内側から割る冷凍工程とを備えた銀杏加工方法である。
殻と実との隙間から空気を抜く方法は限定されない。例えば、95〜98℃の熱湯に1〜3分間程度殻付き銀杏を浸漬する。また、殻付き銀杏を真空室(負圧室)に収納し、多孔質の殻を通して、殻と実との隙間から空気を吸い出してもよい。この真空を利用した場合、空気抜きを短時間で確実に行うことができる。しかも、例えば真空状態を維持したまま、次の水侵入工程として銀杏を水に浸漬すれば、あらかじめ殻と実との隙間が負圧化されているので、その隙間への水の侵入時間が短縮し、しかも水の侵入も確実になる。
殻と実との隙間に、水を侵入させる方法は限定されない。例えば、冷水に所定時間だけ浸漬してもよい。
殻付きの銀杏の冷凍方法は限定されない。例えば、殻付き銀杏を−30℃前後で急速冷凍してもよい。殻付き銀杏の保存は−18℃以下とし、この温度で殻付き銀杏またはその剥き実を市場に流通させる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、前記空気抜き工程では、殻付きの銀杏に高温の水を接触させ、該殻と実との隙間から空気を抜く請求項1に記載の銀杏加工方法である。
殻付きの銀杏に接触させる高温の水は限定されない。例えば熱湯、スチームでもよい。接触方法としては、殻付き銀杏を熱湯に浸漬したり、スチーム室に収納したりする。何れの場合にも、短時間の接触となる。具体的には1〜3分間、特に1分間前後が好ましい。このように、高温の水との接触時間を短くするのは、高温の水との接触により銀杏の実の細胞壁を破壊しないためである。破壊されると、銀杏を調理する際に型崩れしやすい。しかも、調理時間の調整がむずかしくなり、例えば焼き処理する際、表面に部分的な焦げが発生したり、固くなるおそれがある。
【0011】
請求項3に記載の発明は、前記水侵入工程では、前記空気抜きされた殻付きの銀杏を水に浸漬する請求項1または請求項2に記載の銀杏加工方法である。
水の温度は、例えば1〜3℃である。殻付き銀杏の水への浸漬時間は、例えば24時間程度以上である。
【0012】
請求項4に記載の発明は、前記空気抜き工程の前に、前記殻付きの銀杏を水に浸漬し、比重差により銀杏の良品と不良品とを選別して、該不良品を排除しておく請求項1〜請求項3のうち、何れか1項に記載の銀杏加工方法である。
不良品としては、例えば発育不良の銀杏、割れた銀杏、劣化した銀杏、虫食いの銀杏、さらには収穫から日数が経ち過ぎて実が痩せた銀杏などが挙げられる。これらは、良品の銀杏とは異なり、水よりも比重が小さい。そのため水面付近に浮く。
【0013】
請求項5に記載の発明は、前記冷凍後の殻付きの銀杏を解凍し、その後、該殻付きの銀杏を、前記実に焦げ目が付かない加熱条件で焼き処理する請求項1〜請求項4のうち、何れか1項に記載の銀杏加工方法である。
銀杏の解凍は、流水または冷水により行ってもよい。また、室内または冷蔵庫内で自然解凍してもよい。
銀杏の実に焦げ目を付けない加熱条件は限定されない。例えば、解凍後の殻付き銀杏を、炉内温度が常温〜150℃の熱処理炉に入れ、次いでヒータまたはバーナなどにより設定温度200℃まで徐々に昇温させる。加熱時間は3分30秒〜6分間である。その後、お湯または冷水に浸漬し、それから殻を外して1〜3℃で保存する。または、剥き実の銀杏を市場に流通させてもよい。
【0014】
請求項6に記載の発明は、焼き処理後、前記実から殻を外し、再び冷凍する請求項5に記載の銀杏加工方法である。
殻を外した後、例えば銀杏の実を、−18℃以下に保持して流通させてもよい。
【0015】
請求項7に記載の発明は、前記実の表面の一部に、該実の中心部に存在する空洞まで達した空気抜き孔を穿孔する請求項1〜請求項6のうち、何れか1項に記載の銀杏加工方法である。
空気抜き孔の大きさは限定されない。例えば直径0.8〜1.5mmである。空気抜き孔を形成する方法も限定されない。例えば、妻楊枝または竹串などを銀杏の実に突き刺す。空気抜き孔の形成数は限定されない。少なくとも1つあればよい。
【0016】
請求項8に記載の発明は、銀杏の殻と実との隙間に存在する水が、前記銀杏の冷凍処理により氷結して殻が割れている加工銀杏である。
【0017】
請求項9に記載の発明は、前記実の表面の一部に、該実の中心部に存在する空洞まで達した空気抜き孔が穿孔されている請求項8に記載の加工銀杏である。
【0018】
請求項10に記載の発明は、銀杏の実の表面の一部に、該実の中心部に存在する空洞まで達した空気抜き孔が穿孔されている加工銀杏である。
銀杏は殻付きでもよいし、実だけでもよい。また、対象となるのは、生の銀杏でも加工された銀杏でもよい。加工の種類は限定されない。例えば、冷凍された銀杏でもよい。
【0019】
【作用】
請求項1に記載の銀杏加工方法によれば、銀杏の殻と実との隙間から空気を抜き、その後、殻と実との隙間に水を侵入させる。続いて、水が侵入した殻付き銀杏を冷凍し、この隙間に存在する水を凍らせる。その際、水が氷結するときの体積膨張力により、殻が内側から割れる。
これにより、加工中に銀杏の殻が自然に割れ、その後の加熱調理時に殻や実が破裂せず、しかも冷凍されるので、風味や色合いといった銀杏の品質も低下しにくい。
【0020】
特に、請求項2に記載の銀杏加工方法によれば、殻付きの銀杏に高温の水を接触させ、殻と実との隙間から空気を抜く。このとき、高温の水の熱により殻と実との隙間に存在する空気、および、実に含まれる空気の運動が激しくなり、多孔質の殻をこの空気が通過する。それと入れ代わるように外部から水が隙間に侵入する。ただし、ボイルによる剥き実の細胞壁の破壊を防止するため、水との接触時間は短く設定される場合が多いことから、全ての銀杏の隙間全体に水が満たされるわけではない。また、このようにボイルすることで、例えば銀杏の殺菌効果、剥き実の内部の酸化酵素を不活性化させて品質低下を防止する効果、加熱による組織軟化を促して氷結時の細胞壁の破壊を防止するなど、公知のブランチング処理と同じ効果が得られる。また、殻のままボイルするため、銀杏の風味を保ち、ボイル中の実の傷付きや割れ、実への熱の伝わりを一定にすることができる。
【0021】
請求項3に記載の銀杏加工方法によれば、空気抜きされた銀杏を水に浸漬する。あらかじめ空気抜きを施しているので、略全ての銀杏に対して、殻を介して、殻と実との隙間の全域に水を侵入させることができる。高温の水を利用して空気抜きされた銀杏の場合、銀杏を水に浸漬する前に、流水または冷水を使用して銀杏を常温まで冷却した方が好ましい。
【0022】
請求項4に記載の銀杏加工方法によれば、空気抜き工程の前に、殻付きの銀杏を水に浸漬する。発育不良の銀杏、割れた銀杏、虫食いの銀杏、さらには収穫から日数が経ち過ぎて実が痩せた銀杏は、良品の銀杏よりも比重が小さく水に浮く。よってその比重差により銀杏の良品と不良品とを選別することができる。ここで不良品と判断された銀杏を、空気抜きされる銀杏の中からあらかじめ排除しておく。
このように、あらかじめ不良品を除去しておくことで、この発明で処理した銀杏は、冷凍工程でより100%に近い割合で殻を割ることができる。その結果、選別しない場合よりも、加工銀杏の歩留りを高めることができる。
【0023】
請求項5に記載の銀杏加工方法によれば、殻付きの銀杏を解凍後、実に焦げ目が付かない加熱条件で焼き処理する。解凍直後の銀杏には、通常、その殻の内面および実の表面に多少の水分が残っている。そのため、焼き処理時、実を均一に加熱処理することができる。すなわち、銀杏の細胞を膨張させ、適度な硬さや弾性力を与えることができる。しかも、焼き処理による焼きムラや焦げまたは実そのものの破損、割れなどを防ぐことができる。
【0024】
請求項6に記載の銀杏加工方法によれば、焼き処理後、実から殻を外し、再び冷凍する。焼き処理を施すことで殻の割れは増大する。そのため、殻剥き時に殻が剥きやすい。
【0025】
請求項7に記載の銀杏加工方法および請求項9、請求項10に記載の加工銀杏によれば、実の表面の一部に、実の中心部に存在する空洞まで達した空気抜き孔を穿孔する。これにより、銀杏の焼き処理時、実の中心部に存在する空洞の内部空気が体積膨張しても、この内部空気は空気抜き孔を通過して外部に排出される。その結果、この焼き処理に伴う実の破裂を防ぐことができる。
【0026】
請求項8に記載の加工銀杏によれば、銀杏の冷凍時、銀杏の殻と実との隙間に存在する水が氷結し、このときの水の体積膨張力により銀杏は殻が割れる。そのため、後の殻剥き作業が容易になるとともに、焼き処理時における銀杏の殻が実の破裂を防止することができる。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施例を図面を参照して説明する。図1は、この発明の一実施例に係る銀杏加工方法を示すフローシートである。
図1に示すように、この実施例にあっては、原料選別、空気抜き、冷却、水侵入、水切り、冷凍、解凍、水切り、焼き処理、殻剥き、選別、串刺し、冷凍(保存)、包装・箱詰め・検査、出荷の各工程を経て、加工銀杏が製造されて市場に出回る。以下、各工程を詳細に説明する。
まず、原料入荷後、殻付きの銀杏を水に浸漬し、比重差により良品と不良品とを選別する(図1(a))。発育不良の銀杏、割れた銀杏、劣化した銀杏、虫食いの銀杏、その他、収穫から日数が経ち過ぎて実が痩せた銀杏などは、良品の銀杏よりも比重が小さい。そのため、水の中に投入すると、水面付近まで浮き上がる。その後、この不良品の銀杏を掬い取る。実が詰まった良品の銀杏は、比重が水より重く、水面下深く沈んでしまう。
【0028】
次に、良品の銀杏に対して、殻と実との隙間から空気を抜く(図1(b))。具体的には、殻付きの銀杏を95〜98℃の熱湯に1分間浸漬する。殻付きのままボイルするので、銀杏の風味を保ち、ボイル中に発生する実の傷、割れを防ぎ、実への熱の伝わりを均一にすることができる。銀杏の浸漬時間が短いので、実の細胞壁を破壊しにくい。この細胞壁が破壊されると、出荷先で銀杏を調理する際に型崩れしやすい。しかも、加熱調理するときに調理時間の設定がむずかしく、例えば炙り焼きする際、表面に部分的な焦げが発生したり、固くなるおそれがある。この空気抜き工程でも、殻と実との隙間に水が侵入してくる。ただし、隙間の全域が水で満たされる銀杏は、全体の80〜90%である。したがって、仮に、次の水侵入工程を省き、このまま殻付き銀杏を冷凍すると、10〜20%の銀杏において、冷凍により殻が割れないという不具合が生じる。
次いで、空気抜きされた殻付きの銀杏を常温近くまで冷やす(図1(c))。冷却方法としては、流水に晒したり、冷水に漬ける。
【0029】
その後、殻と実とのあいだの隙間に水を侵入させる(図1(d))。すなわち、1〜3℃の冷水に24時間以上浸漬する。あらかじめ銀杏は殻付きのまま熱湯に漬けられて空気抜きが施される。これにより、ボイルによって殻の中の実が組織軟化し、続いて冷水に漬けることで水分が殻と実との隙間に侵入する。その結果、略100%に近い銀杏において、殻と実との隙間の全域に水を侵入させることができる。
続いて、ボイルされた殻付き銀杏を水切りする(図1(e))。ここでの水切りは容易なものでよい。水分を取りすぎると、凍結時に殻が割れた部分から露出した実の一部分が乾燥し、劣化しやすくなるからである。
【0030】
次に、水切りされた殻付き銀杏を−30℃前後で急速冷凍する(図1(f))。これにより、殻と実との隙間に存在する水が氷結し、このときの水の体積膨張力により、略全ての銀杏の殻が自然に内側から押し割られる。その際、あらかじめ空気抜き工程でのボイルにより、銀杏の実に組織軟化が施されている。これにより、冷凍に伴う実の細胞破壊(品質低下)を防ぐことができる。得られた殻付きの冷凍銀杏は、例えば1〜2kgずつ袋または容器に密封し、保存したり、食材として流通させてもよい。このように銀杏を密封するのは、外気との接触による実の乾燥および劣化を防ぐためである。
【0031】
図1(g)に示す解凍時には、凍った殻付き銀杏を冷水に漬けて解凍する。または、流水に晒して解凍する。冷凍銀杏は、氷結したまま調理が可能であるが、食感に少し違いが生じる。よって、このように自然解凍してから調理(例えば炙り焼き)した方が好ましい。自然解凍すれば、生の銀杏と略同じ時間またはそれより若干早く調理できる。
解凍後、殻付き銀杏を水切りする(図1(g))。ここでの水切りは、図1(e)の水切り時よりもしっかりと施す。これは、次の銀杏の焼き処理に影響をおよぼすためである。
焼き処理工程では、殻付きの銀杏を実に焦げ目が付かない加熱条件で、徐々に温度を高めながらオーブンで焼き処理する(図1(i))。設定温度は200℃である。ここで、実際に熱処理試験を行った結果を報告する。試験例1は焼き処理開始時のオーブンの室内温度が30℃、試験例2は150℃である。このときの加熱時間とオーブンの室内温度との関係を表1に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
表1から明らかなように、初期の室内温度が30℃の場合には、室内温度が200℃に達するまで5分かかった。これに対して、初期の室内温度が150℃の場合、3分30秒という短時間で設定温度まで達した。何れの場合でも、銀杏の焼き具合は良好であった。
解凍直後の銀杏には、その殻の内面および実の表面に多少の水分が付着している。そのため、焼き処理時、殻の中で銀杏を均一に加熱処理することができる。すなわち、銀杏の実はあらかじめ組織軟化されている。そのため、焼き処理時には細胞が組織破壊を起こさず膨張する。よって、剥き実に適度な硬さや弾性力を与えることができる。しかも、剥き実は殻に包まれた状態で焼かれる。そのため、焼きムラや焦げ、焼き処理中の剥き実の破損、割れなどを防ぐことができる。
【0034】
焼き処理後、殻を剥く(図1(j))。冷凍時に生じた殻の割れは焼き処理により大きくなっている。そのため、殻剥き時に殻が剥きやすい。得られた剥き実からしぶ皮を剥がすかは任意である。
次に、大きさの規格などを基準にし、剥き実を選別する(図1(k))。その後、剥き実に竹串を刺し、串刺し銀杏の下ごしらえをする(図1(l))。
次いで、この串刺しされた銀杏を−18℃以下で再び冷凍し、この温度を保持して各種の検査を行った後、包装、箱詰めして出荷する(図1(n),図1(o))。
【0035】
このように、殻と実との隙間から空気を抜き、その後、この隙間に水を侵入させて冷凍し、前記隙間の水を凍らせることで水が氷結するときの体積膨張力により殻を割るようにしたので、加工中に略全ての銀杏の殻が自然に割れる。しかも、その後の加熱調理時に殻や実が破裂せず、さらに冷凍品であるので風味や色合いといった銀杏の品質も低下しにくい。
また、殻付きの銀杏に高温の水を接触させ、殻と実との隙間から空気を抜くので、簡単な作業で空気抜きを行うことができる。
さらに、空気抜きされた銀杏を水に浸漬するので、殻を通して、殻と実との隙間の略全域に水を侵入させることができる。
次に、空気抜き工程の前に、殻付きの銀杏を水に浸漬し、その比重差により良品と不良品とを選別するので、最終的に得られる加工銀杏の歩留りを高めることができる。
【0036】
それから、解凍後の銀杏を殻付きのまま焼き処理するので、実に焦げ目を付けずに均一に焼き処理することができる。しかも、焼きムラや焦げ、または実の破損、割れなどを防ぐことができる。
また、焼き処理時に殻の割れが増大するので、続く殻剥き時に殻が剥きやすくなる。
さらには、この剥き実の一部に、内部の空洞まで達する空気抜き孔を穿孔してもよい。これにより、炙り焼きなどの調理中に実が破裂しにくい。すなわち、焼き処理時に、実の中心部に存在する空洞の内部空気が体積膨張しても、この内部空気は空気抜き孔を通過して外部に排出される。そのため、実の破裂を防ぐことができる。
【0037】
【発明の効果】
請求項1に記載の銀杏加工方法によれば、殻と実との隙間から空気を抜いた後、殻と実との隙間に水を侵入させ、次にこれを冷凍し、殻と実との隙間の水を凍らせて水が氷結するときの体積膨張力を利用し、殻を内側から割るので、加工中に略全ての銀杏の殻が自然に割れ、その後の加熱調理時に殻や実が破裂せず、しかも冷凍品であるので風味や色合いという銀杏の品質も低下しにくい。
【0038】
特に、請求項2に記載の銀杏加工方法によれば、殻付きの銀杏に高温の水を接触させ、殻と実との隙間から空気を抜くので、簡単な作業で空気抜きを行うことができる。
【0039】
請求項3に記載の銀杏加工方法によれば、空気抜きされた銀杏を水に浸漬するので、殻を通して、殻と実との隙間の略全域に水を侵入させることができる。
【0040】
請求項4に記載の銀杏加工方法によれば、空気抜き工程の前に、殻付きの銀杏を水に浸漬し、その比重差により良品と不良品とを選別するので、最終的に得られる加工銀杏の歩留りを高めることができる。
【0041】
請求項5に記載の銀杏加工方法によれば、解凍後の銀杏を殻付きのまま焼き処理するので、実に焦げ目を付けずに均一に焼き処理することができる。しかも、焼きムラや焦げ、または実の破損、割れなどを防ぐことができる。
【0042】
請求項6に記載の銀杏加工方法によれば、焼き処理を施すことで殻の割れが増大するので、続く殻剥き時に殻を剥きやすい。
【0043】
請求項7に記載の銀杏加工方法および請求項9、請求項10に記載の加工銀杏によれば、剥き実の一部に、内部の空洞まで達した空気抜き孔を穿孔するので、焼き処理時に、実の破裂を防ぐことができる。
【0044】
請求項8に記載の加工銀杏によれば、銀杏の冷凍時、銀杏の殻と実との隙間に存在する水が氷結し、このときの水の体積膨張力により銀杏は事前に殻が割れる。そのため、殻剥き作業が容易になるとともに、その後の焼き処理時における銀杏の破裂を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施例に係る銀杏加工方法を示すフローシートである。
Claims (10)
- 銀杏の殻と実との隙間から空気を抜く空気抜き工程と、
この空気抜き後、前記殻と実とのあいだの隙間に水を侵入させる水侵入工程と、
水が侵入した殻付き銀杏を冷凍し、該殻と実との隙間の水を凍らせ、水が氷結するときの体積膨張力により、前記殻を内側から割る冷凍工程とを備えた銀杏加工方法。 - 前記空気抜き工程では、殻付きの銀杏に高温の水を接触させ、該殻と実との隙間から空気を抜く請求項1に記載の銀杏加工方法。
- 前記水侵入工程では、前記空気抜きされた殻付きの銀杏を水に浸漬する請求項1または請求項2に記載の銀杏加工方法。
- 前記空気抜き工程の前に、前記殻付きの銀杏を水に浸漬し、比重差により銀杏の良品と不良品とを選別して、該不良品を排除しておく請求項1〜請求項3のうち、何れか1項に記載の銀杏加工方法。
- 前記冷凍後の殻付きの銀杏を解凍し、その後、該殻付きの銀杏を、前記実に焦げ目が付かない加熱条件で焼き処理する請求項1〜請求項4のうち、何れか1項に記載の銀杏加工方法。
- 焼き処理後、前記実から殻を外し、再び冷凍する請求項5に記載の銀杏加工方法。
- 前記実の表面の一部に、該実の中心部に存在する空洞まで達した空気抜き孔を穿孔する請求項1〜請求項6のうち、何れか1項に記載の銀杏加工方法。
- 銀杏の殻と実との隙間に存在する水が、前記銀杏の冷凍処理により氷結して殻が割れている加工銀杏。
- 前記実の表面の一部に、該実の中心部に存在する空洞まで達した空気抜き孔が穿孔されている請求項8に記載の加工銀杏。
- 銀杏の実の表面の一部に、該実の中心部に存在する空洞まで達した空気抜き孔が穿孔されている加工銀杏。
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