JP2004162849A - 転動装置 - Google Patents

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裕俊 宮島
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雅彦 山崎
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Abstract

【課題】低トルク,低騒音で音響寿命に優れる転動装置を提供する。
【解決手段】複素環式化合物からなる腐食防止剤と、金属ジチオフォスフェート及び金属ジチオカーバメートの少なくとも一方からなる極圧添加剤と、を含有するグリース組成物Gを、深溝玉軸受の内部に封入した。腐食防止剤の含有量はグリース組成物G全体の0.03〜1.5質量%で、極圧添加剤のうち金属分の含有量はグリース組成物G全体の0.027〜0.3質量%である
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、低トルク,低騒音で音響寿命に優れる転動装置に係り、特に、ハードディスクドライブ(HDD),フレキシブルディスクドライブ(FDD),コンパクトディスクドライブ(CDD),光磁気ディスクドライブ(MOD),ビデオテープレコーダ(VTR)等のような情報機器や、エアコンディショナ,洗濯機,掃除機等の家庭用電器等に用いられる転動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
前述のような情報機器,家庭用電器には多くの小型モータが内蔵されており、このモータには小径,ミニアチュアの転がり玉軸受がモータ回転軸の支持用途で組み込まれている。このような用途に用いられる玉軸受に要求される性能は機器に応じて様々であり多岐にわたるが、情報機器,家庭用電器は身の回りで使用される機器であるだけに、軸受の回転に伴って発生する騒音はなるべく小さいことが好ましい。また、転がり軸受は回転時間の経過に従って、回転中に発生する騒音が次第に増大していく傾向があるが、情報機器,家庭用電器は数年以上使用されることが殆どであるので、その使用期間中にはなるべく音響上昇せず、低騒音であり続けることが要求される。
【0003】
軸受の寿命というと、通常は焼き付いて軸受がもはや回転不能となるまでの時間を考えるが、情報機器,家庭用電器の場合は軸受の使用条件がさほど厳しくないことが多いので、軸受が焼き付くまでには相当の長期間を要し、機器の種類にもよるが焼付き寿命が実際に問題となることは少ない。むしろ、生活空間において快適に使用し続けるために、機器の使い始めから廃棄まで低騒音であり続けること、すなわち音響寿命が長いことが実際の市場の要求に即している。
【0004】
従来、情報機器,家庭用電器に使用される転がり軸受には、増ちょう剤がリチウム石けんで、基油が合成エステル油である潤滑グリースが多用されてきた。リチウム石けんの特徴としては、際立った欠点がなく、軸受に封入したときに低騒音であり、高速性能にも優れていることがあげられる。また、金属石けんの増ちょう剤としては比較的高温域でも使用することが可能であり、100℃程度までの雰囲気温度で使用することができる。一方、合成エステル油は、高速性能,高温性能,及び低温流動性に優れ、潤滑性も良好であるため、幅広い条件での使用に耐え得る。
【0005】
【特許文献1】
特開平5−9489号公報
【特許文献2】
特開2000−26875号公報
【特許文献3】
特開2000−199526号公報
【特許文献4】
特開2001−139969号公報
【特許文献5】
特開2001−139979号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
基油の動粘度と軸受のトルクとの間には相関関係が認められ、基油の動粘度が大きければトルクも大きくなる。したがって、情報機器,家庭用電器用途においては、基油の動粘度は50mm/s以下であることが多かった。
しかしながら、低トルクを実現するために基油の動粘度を低くすると、音響寿命は短くならざるを得ない。なぜなら、軸受の摺動面間に構成されるEHL油膜の油膜厚さが基油の動粘度の低下に伴って減少してしまうからである。つまり、EHL油膜が安定して厚く構成されている場合は、軸受の摩擦面は直接接触を起こさないため摩擦表面は損傷せず、軸受の低騒音性能は維持されるが、基油の動粘度が低く油膜が薄い場合は、しばしば油膜切れが発生して摩擦表面が損傷し、軸受の音響性能が劣化してしまうこととなる。
【0007】
また、モータ等の消費電力を考慮すれば、当然軸受の回転トルクは小さい方が好ましい。しかしながら、前述の理由から、低トルクであるということと、音響寿命が長いということとは、技術的に相反する部分を有しており、従来は両立させることが困難であった。
そこで、本発明は上記のような従来技術が有する問題点を解決し、低トルク,低騒音で音響寿命に優れる転動装置を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するため、本発明は次のような構成からなる。すなわち、本発明に係る請求項1の転動装置は、外面に軌道面を有する内方部材と、該内方部材の軌道面に対向する軌道面を有し前記内方部材の外方に配置された外方部材と、前記両軌道面間に転動自在に配設された複数の転動体と、前記内方部材と前記外方部材との間に形成され前記転動体が配設された空隙部内に充填されたグリース組成物と、を備える転動装置において、前記グリース組成物は、ベンゾトリアゾール誘導体,インダゾール誘導体,ベンゾチアゾール誘導体,ベンズオキサゾール誘導体,ベンズイミダゾール誘導体,及びチアジアゾール誘導体のうちの少なくとも1種の複素環式化合物からなる腐食防止剤と、金属ジチオフォスフェート及び金属ジチオカーバメートの少なくとも一方からなる極圧添加剤と、基油と、を含有するとともに、前記腐食防止剤の含有量は組成物全体の0.03〜1.5質量%で、前記極圧添加剤のうち金属分の含有量は組成物全体の0.027〜0.3質量%であることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る請求項2の転動装置は、請求項1に記載の転動装置において、前記基油の40℃における動粘度は20〜50mm/sであることを特徴とする。
さらに、本発明に係る請求項3の転動装置は、請求項1又は請求項2に記載の転動装置において、前記基油は極性基を有していることを特徴とする。
【0010】
さらに、本発明に係る請求項4の転動装置は、請求項1〜3のいずれかに記載の転動装置において、モータ用の転がり軸受であることを特徴とする。
このような転動装置は、低トルク,低騒音で音響寿命に優れる。つまり、グリース組成物に前記腐食防止剤と前記極圧添加剤との両方を含有させたので、低トルクを実現するために動粘度の低い基油を使用しても、長期間にわたって低騒音を維持することができる。
【0011】
前記腐食防止剤は金属表面に吸着膜又は反応生成被膜を形成し、金属に対する酸等の攻撃を防ぐ作用を有すると考えられる。分子内にNH基を有するベンゾトリアゾールを例に説明すると、図1に示すように金属と窒素原子との間に配位結合が生じることによって、金属表面にベンゾトリアゾールの被膜が形成されると考えられる。NH基を有しない腐食防止剤においても、SやOといった非共有電子対を持つ元素を複素環中に有しているので、それによって腐食防止剤が金属表面に吸着して、腐食防止剤の被膜が形成されると考えられる。
【0012】
このような被膜が形成された金属表面に対する金属ジチオフォスフェート,金属ジチオカーバメートの反応性は、被膜が形成されていない金属表面に対するそれよりも著しく高い。その理由は、以下のように推定される。前記腐食防止剤は、ベンゼン環やN,S等の非共有電子対を持つ原子を含む複素環を有するので、分子構造上、電子密度が高い。金属ジチオフォスフェート,金属ジチオカーバメート中の金属は僅かに正に分極しているので、腐食防止剤の被膜の高密度の電子群に誘引される。よって、金属ジチオフォスフェート,金属ジチオカーバメートの金属表面に対する反応性が高まるわけである。このように2種の添加剤の間に相互作用が存在するため、本発明のグリース組成物を封入した転動装置は、金属ジチオフオスフェート,金属ジチオカーバメートのみを含有するグリース組成物を封入した場合よりも音響寿命が優れている。
【0013】
ここで、腐食防止剤である複素環式化合物について詳細に説明する。まず、ベンゾトリアゾール誘導体とは、下記の式(I)に示すような化合物である。なお、式中のRはアルキル基であるが、何らかの官能基が導入されたアルキル基でもよい。また、Rの置換数は特に限定されるものではなく、0〜4個のいずれでもよい。複数個置換されている場合には、Rの種類(置換基の化学構造)は同一でもよいし異なっていてもよい。さらに、式中のR”はアルキル基又は水素原子であるが、何らかの官能基が導入されたアルキル基でもよい。さらに、トリアゾール環と縮合しているベンゼン環を、ナフタレン環のような他の芳香環としてもよい。
【0014】
【化1】
Figure 2004162849
【0015】
インダゾール誘導体とは、下記の式(II)に示すような化合物である。なお、式中のRはアルキル基であるが、何らかの官能基が導入されたアルキル基でもよい。また、Rの置換数は特に限定されるものではなく、0〜4個のいずれでもよい。複数個置換されている場合には、Rの種類(置換基の化学構造)は同一でもよいし異なっていてもよい。さらに、式中のR”はアルキル基又は水素原子であるが、何らかの官能基が導入されたアルキル基でもよい。さらに、ベンゼン環の部分を、ナフタレン環のような他の芳香環としてもよい。
【0016】
【化2】
Figure 2004162849
【0017】
ベンゾチアゾール誘導体とは下記の式(III )に示すような化合物であり、ベンズオキサゾール誘導体とは下記の式(IV)に示すような化合物であり、ベンズイミダゾール誘導体とは下記の式(V)に示すような化合物である。
なお、これら3つの式中のRはアルキル基であるが、何らかの官能基が導入されたアルキル基でもよい。また、Rの置換数は特に限定されるものではなく、0〜4個のいずれでもよい。複数個置換されている場合には、Rの種類(置換基の化学構造)は同一でもよいし異なっていてもよい。さらに、チアゾール環,オキサゾール環,イミダゾール環と縮合しているベンゼン環を、ナフタレン環のような他の芳香環としてもよい。さらにまた、式中のXは−S−又は−S−S−である。さらにまた、R’はアルキル基又は水素原子であるが、何らかの官能基が導入されたアルキル基でもよい。また、R’はRと同一でもよいし異なっていてもよい。
【0018】
さらに、式(V)中のR”はアルキル基又は水素原子であるが、何らかの官能基が導入されたアルキル基でもよい。また、R”は、RやR’と同一でもよいし異なっていてもよい。
【0019】
【化3】
Figure 2004162849
【0020】
【化4】
Figure 2004162849
【0021】
【化5】
Figure 2004162849
【0022】
チアジアゾール誘導体とは下記の式(VI)に示すような化合物である。なお、式中のR及びRはアルキル基又は水素原子であるが、何らかの官能基が導入されたアルキル基でもよい。また、R及びRは同一でもよいし異なっていてもよい。さらに、式中のXは−S−又は−S−S−である。
【0023】
【化6】
Figure 2004162849
【0024】
次に、極圧添加剤である金属ジチオフオスフェート及び金属ジチオカーバメートについて説明する。金属の種類は特に限定されるものではないが、例えば、モリブデン(Mo),亜鉛(Zn),アンチモン(Sb),ビスマス(Bi),ニッケル(Ni),テルル(Te),ナトリウム(Na),鉄(Fe),銅(Cu)等があげられる。
【0025】
腐食防止剤の含有量は組成物全体の0.03〜1.5質量%である必要がある。0.03質量%未満であると、吸着膜又は反応生成被膜が金属表面に十分に形成されないおそれがある。また、極圧添加剤(金属ジチオフォスフェート,金属ジチオカーバメート)の金属表面に対する反応性が十分に高められないおそれがある。一方、1.5質量%超過であると、基油に溶解しきれずに析出して、転動装置の音響性能を悪化させるおそれがある。このような不都合がより生じにくくするためには、腐食防止剤の含有量は組成物全体の0.04〜1.3質量%であることが好ましく、0.04〜0.13質量%であることがさらに好ましい。
【0026】
極圧添加剤の含有量は、極圧添加剤中の金属分の含有量が組成物全体の0.027〜0.3質量%である必要がある。この範囲外であると、転動装置の音響寿命が不十分となるおそれがある。
極圧添加剤の好ましい含有量は、使用する基油の種類によって変化することはよく知られている。例えば、エステル油のような極性基を有する基油(以降は極性油と記す)を用いる場合は、転動装置の使用条件にもよるが、極圧添加剤の含有量は多めにする必要があることが多い。この理由は、極性油は添加剤の溶解性が大きいので多量の添加剤を溶解することができるが、添加剤分子が基油に溶媒和されるために金属表面との反応性が低下するからである。よって、摩耗低減や摩擦緩和の効果を十分に得るために、極圧添加剤を多量に添加する必要が生じやすいのである。
【0027】
逆に、ポリα−オレフィンのような極性基を有していない基油を用いる場合は、極圧添加剤の含有量は比較的少量で十分であるが、その反面、多量の極圧添加剤を溶解することができず、また、何らかの環境の変化により極圧添加剤が結晶化して析出してしまうというトラブルが発生することが懸念される。
通常、添加剤は必ずしも基油に溶解している必要はないが、本発明の転動装置が適用される情報機器,家庭用電器の分野においては、添加剤が不溶であると転動装置を駆動した際の騒音が著しく増大するので好ましくない。したがって、本発明においては、基油はエステル油やアルキルジフェニルエーテル等の極性油を使用することが好ましい。
【0028】
そして、基油の粘度は、40℃における動粘度が20〜50mm/sであることが好ましい。動粘度が20mm/s未満であると、音響寿命が不十分となるおそれがある。一方、動粘度が50mm/s超過であると、トルクが高くなるおそれがある。
なお、前述したように、腐食防止剤は極圧添加剤の反応性を高めるので、両者を併用した場合はそれぞれを単独で使用した場合よりも大きな効果がもたらされ、溶媒和による極圧添加剤の反応性の低下を補うことができる。また、極圧添加剤を多量に添加した場合には、ちょう度変化等のグリース性状の変化や腐食が予想されるが、これらの弊害を避ける目的で極圧添加剤の含有量を極端に少量とした場合であっても、前記両者を併用すれば高い極圧効果を発揮させることができる。
【0029】
本発明における前記内方部材とは、転動装置が転がり軸受の場合には内輪、同じくボールねじの場合にはねじ軸、同じくリニアガイド装置の場合には案内レール、同じく直動ベアリングの場合には軸をそれぞれ意味する。また、前記外方部材とは、転動装置が転がり軸受の場合には外輪、同じくボールねじの場合にはナット、同じくリニアガイド装置の場合にはスライダ、同じく直動ベアリングの場合には外筒をそれぞれ意味する。
【0030】
【発明の実施の形態】
本発明に係る転動装置の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。図2は本発明に係る転動装置の一実施形態である深溝玉軸受の構造を示す部分縦断面図である。
この玉軸受(呼び番号608、内径8mm,外径22mm,幅7mm)は、内輪1と、外輪2と、内輪1と外輪2との間に転動自在に配設された複数の玉3と、複数の玉3を保持するプラスチック製の保持器4と、外輪2のシール溝2a,2aに取り付けられた非接触形のゴムシール5,5と、で構成されている。また、内輪1と外輪2とゴムシール5,5とで囲まれた軸受空間には該空間容積の30体積%のグリース組成物Gが充填され、ゴムシール5により玉軸受内に密封されている。そして、このようなグリース組成物Gにより、前記両輪1,2の軌道面と玉3との接触面が潤滑されている。
【0031】
このグリース組成物Gには、ステアリン酸リチウムが増ちょう剤として使用されており、40℃における動粘度が26mm/sであるポリオールエステル油が基油として使用されている。さらに、このグリース組成物Gには、腐食防止剤としてベンゾトリアゾールが含有され、極圧添加剤としてモリブデンジチオフォスフェートが含有されている。腐食防止剤の含有量は、組成物全体の0.05質量%であり、極圧添加剤のうちのモリブデン分の含有量は、組成物全体の0.09質量%である。
【0032】
なお、本実施形態は本発明の一例を示したものであって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
例えば、基油及び増ちょう剤の種類は上記のものに限定されるものではなく、また、グリース組成物Gには上記以外の各種添加剤を添加してもよい。
また、本実施形態においては転動装置の例として深溝玉軸受をあげて説明したが、本発明は、他の種類の様々な転がり軸受に対して適用することができる。例えば、アンギュラ玉軸受,自動調心玉軸受,円筒ころ軸受,円すいころ軸受,針状ころ軸受,自動調心ころ軸受等のラジアル形の転がり軸受や、スラスト玉軸受,スラストころ軸受等のスラスト形の転がり軸受である。
【0033】
また、本発明は、転がり軸受に限らず、他の種類の様々な転動装置に対して適用することができる。例えば、ボールねじ,リニアガイド装置,直動ベアリング等である。
次に、種々のグリース組成物を封入した玉軸受を用意して、その音響寿命,初期音響性能,及びトルク性能(回転トルク)を評価した。玉軸受は前述した呼び番号608の玉軸受と同様の構成であり、表1〜3に示すようなグリース組成物が軸受空間の容積の30体積%封入されている。なお、表1〜3には記載されていないが、これらのグリース組成物には、増ちょう剤としてステアリン酸リチウム(実施例7のみ12−ヒドロキシステアリン酸リチウム)が使用され、基油としてポリオールエステル(40℃における動粘度は26mm/s)が使用されている。また、腐食防止剤及び極圧添加剤以外の添加剤として、アミン系酸化防止剤と亜鉛スルホネート系防錆剤とが、組成物全体の1質量%ずつ添加されている。さらに、全てのグリース組成物は、混和ちょう度が250である。
【0034】
【表1】
Figure 2004162849
【0035】
【表2】
Figure 2004162849
【0036】
【表3】
Figure 2004162849
【0037】
実施例1〜10及び比較例1〜5において使用した腐食防止剤は、ベンゾトリアゾール、2,5−ビス(n−ドデシルジチオ)−1,3,4−チアジアゾール、2−(n−ドデシルジチオ)ベンズイミダゾール、2−(n−ドデシルジチオ)ベンズオキサゾール、2−(n−ドデシルジチオ)ベンゾチアゾール、インダゾールであり、表1〜3においてはそれぞれBT,DTD,DBI,DBO,DBT,Indと表記してある。なお、トリルトリアゾール,オクチルトリアゾール,2−メルカプトベンゾチアゾール等も使用可能である。
【0038】
また、実施例1〜10及び比較例1〜5において使用した極圧添加剤は、モリブデンジチオフォスフェート,モリブデンジチオカーバメート,亜鉛ジチオフォスフェート,亜鉛ジチオカーバメート,アンチモンジチオカーバメートであり、表1〜3においてはそれぞれMoDTP,MoDTC,ZnDTP,ZnDTC,SbDTCと表記してある。
【0039】
MoDTP及びMoDTCは、それぞれ旭電化社のサクラルーブ300及びサクラルーブ165であり、ZnDTP及びZnDTCは、旭電化社のキクルーブZ−112及びバンダービルト社のVanlubeAZである。また、SbDTCはバンダービルト社のVanlube73である。
極圧添加剤としては、上記以外に、旭電化社のサクラルーブ100,サクラルーブ600,サクラルーブ310やバイエル社のAdditinRC3580,Additin3038,Additin3058,バンダービルト社のMolyvanL等が好適に使用できる。
【0040】
次に、音響寿命,初期音響性能,及びトルク性能(回転トルク)の評価方法について説明する。いずれの評価においても、1種の玉軸受につき8個試験を行い、その平均値により評価を行った。
〔初期音響性能の評価方法について〕
回転速度1800min−1、アキシアル荷重29.4N、室温下という条件で、アンデロンメータを用いて玉軸受の回転初期のアンデロン値(ハイバンド値)を測定した。そして、このアンデロン値により初期音響性能を評価した。
【0041】
〔トルク性能の評価方法について〕
図3に示すようなトルク測定装置を用いて、玉軸受の回転トルク値を測定した。玉軸受10の内輪がアーバ12を介してエアスピンドル11に固定され、外輪がエアベアリング13を備えたアルミキャップ14に固定されている。そして、エアスピンドル11を室温下、回転速度1800min−1で回転させて玉軸受10の内輪を回転させ、そのときの回転トルク値をアルミキャップ14に接続したストレインケージ15で測定した。この測定値は、ストレインアンプ16及びローパスフィルタ17を経由して、レコーダ18にて記録される。なお、表1〜3に記載の回転トルク値は、比較例1の回転トルク値を1とした場合の相対値で示してある。
【0042】
〔音響寿命の評価方法について〕
図4に示すような構造の連続回転装置のハウジング21内に玉軸受(図示されない)を装着し、ゴムベルト22及びプーリ23を介してモータ24で回転させた。回転速度は6000min−1、アキシアル荷重は50N、雰囲気温度は95℃である。玉軸受のアンデロン値を一定時間毎にアンデロンメータを用いて測定し、平均アンデロン値が2に達するまでの時間を音響寿命とした。なお、表1〜3に記載の音響寿命の値は、比較例1の音響寿命を1とした場合の相対値で示してある。
【0043】
次に、評価結果について考察する。実施例1と比較例2との比較、及び、実施例6と比較例3との比較から、グリース組成物が耐食防止剤と極圧添加剤との両方を含有していると、耐食防止剤により極圧添加剤の添加効果が高められるため、音響寿命が優れていることが分かる。
実施例1〜10は、市販の極圧添加剤を組成物全体の最大3質量%まで添加している。3質量%超過であると、極圧添加剤の分子中の硫黄に起因する腐食の発生率が向上するおそれがある。また、極圧添加剤が高粘度の油に希釈されている場合は、グリース組成物の基油の粘度を大きくし回転トルク値を高くするので、極圧添加剤の含有量を高くすることは賢明とは言えない。
【0044】
市販の極圧添加剤においては、極圧添加剤における金属分の濃度は、おおよそ4〜10質量%であるので、極圧添加剤の含有量を金属分の濃度で規定すると、0.3質量%以下であれば問題がないと考えられる。また、実施例6と比較例4との比較から、Moの濃度が0.027質量%の場合は音響寿命が優れているが、0.018質量%では音響寿命は十分ではないことが分かる。よって、極圧添加剤の含有量は、極圧添加剤のうちの金属分の含有量が組成物全体の0.027〜0.3質量%であることが適当であることが分かる。
【0045】
次に、グリース組成物の基油の粘度について検討した。すなわち、比較例1において基油の粘度のみを種々変更したグリース組成物を封入した玉軸受を用意して、音響寿命を前述と同様にして評価した。また、実施例2において基油の粘度のみを種々変更したグリース組成物を封入した玉軸受を用意して、音響寿命及び回転トルク値を前述と同様にして評価した。
【0046】
これらの評価結果を図5のグラフにまとめて示す。なお、グラフの音響寿命の値は、比較例1の音響寿命を1とした場合の相対値で示してある。また、グラフの回転トルク値は、実施例2の回転トルク値を1とした場合の相対値で示してある。
図5のグラフの回転トルク値から、基油の40℃における動粘度は50mm/s以下が好ましく、40mm/s以下がより好ましいことが分かる。一方、図5のグラフの音響寿命を示す2つのラインのうち下方に位置するライン(比較例1において基油の粘度のみを種々変更したもの)を見ると、50mm/sまでは基油の動粘度が大きくなるに従って音響寿命が急増し、それ以上では逓増している。これに対して、音響寿命を示す2つのラインのうち上方に位置するライン(実施例2において基油の粘度のみを種々変更したもの)を見ると、23mm/sまでは基油の動粘度が大きくなるに従って音響寿命が急増し、それ以上では逓増している。そして、上方に位置するラインの方は低粘度域でも音響寿命が優れており、しかも、下方に位置するラインよりも全体的に音響寿命が優れている。
【0047】
図5のグラフに示した評価結果を総合すると、基油の40℃における動粘度は、20〜50mm/sが好ましく、23〜40mm/sがより好ましいと言える。
次に、グリース組成物中の腐食防止剤の含有量について検討した。すなわち、実施例1において腐食防止剤(ベンゾトリアゾール)の含有量のみを種々変更したグリース組成物を封入した玉軸受を用意して、初期音響性能及び音響寿命を前述と同様にして評価した。
【0048】
これらの評価結果を図6のグラフにまとめて示す。なお、グラフの音響寿命の値は、前述の比較例1の音響寿命を1とした場合の相対値で示してある。
腐食防止剤の含有量が1.5質量%以下であると、初期音響性能(初期アンデロン値)は0.7〜0.85と低く低騒音であるが、1.5質量%を超えると初期音響性能は急上昇した。これは、1.5質量%を超えると腐食防止剤が基油に溶解しきれず、不溶解分が生じるためであると考えられる。
【0049】
一方、音響寿命は、腐食防止剤の含有量が増えるに従って向上し、0.03質量%以上でほぼ一定の値となった。0.03質量%未満では音響寿命が不十分である。
図6のグラフに示した評価結果を総合すると、腐食防止剤の含有量は組成物全体の0.03〜1.5質量%が好ましく、0.04〜1.3質量%がより好ましく、0.04〜0.13質量%がさらに好ましいと言える。
【0050】
【発明の効果】
以上のように、本発明の転動装置は低トルク,低騒音で音響寿命に優れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ベンゾトリアゾールと金属との結合状態を説明する図である。
【図2】本発明に係る転動装置の一実施形態である深溝玉軸受の構造を示す部分縦断面図である。
【図3】回転トルク測定装置の構成を示す概略図である。
【図4】軸受の音響寿命を評価する連続回転装置の部分正面図である。
【図5】基油の動粘度と、玉軸受の回転トルク値及び音響寿命と、の相関を示すグラフである。
【図6】グリース組成物中の腐食防止剤の含有量と、玉軸受の初期音響性能及び音響寿命と、の相関を示すグラフである。
【符号の説明】
1 内輪
2 外輪
3 玉
G グリース組成物

Claims (4)

  1. 外面に軌道面を有する内方部材と、該内方部材の軌道面に対向する軌道面を有し前記内方部材の外方に配置された外方部材と、前記両軌道面間に転動自在に配設された複数の転動体と、前記内方部材と前記外方部材との間に形成され前記転動体が配設された空隙部内に充填されたグリース組成物と、を備える転動装置において、
    前記グリース組成物は、ベンゾトリアゾール誘導体,インダゾール誘導体,ベンゾチアゾール誘導体,ベンズオキサゾール誘導体,ベンズイミダゾール誘導体,及びチアジアゾール誘導体のうちの少なくとも1種の複素環式化合物からなる腐食防止剤と、金属ジチオフォスフェート及び金属ジチオカーバメートの少なくとも一方からなる極圧添加剤と、基油と、を含有するとともに、
    前記腐食防止剤の含有量は組成物全体の0.03〜1.5質量%で、前記極圧添加剤のうち金属分の含有量は組成物全体の0.027〜0.3質量%であることを特徴とする転動装置。
  2. 前記基油の40℃における動粘度は20〜50mm/sであることを特徴とする請求項1に記載の転動装置。
  3. 前記基油は極性基を有していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の転動装置。
  4. モータ用の転がり軸受であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の転動装置。
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