JPH11514778A - ディスクドライブに適合する添加剤で最適化した潤滑剤を備えた流体軸受を有するディスクドライブ用スピンドルモータ - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 ディスクドライブ１０は、ハウジング１２、中心軸線８０、このハウジングに関して固定され、この中心軸線と同軸の固定部材３４、およびこの固定部材に関して上記中心軸線周りに回転可能な回転可能部材３６を含む。ステータ３８がこのハウジングに関して固定されている。ロータ７０がこの回転可能部材によって支持され、このステータに磁気的に結合されている。少なくとも一つのデータ記憶ディスク１６がこの回転可能部材にそれと同軸に取付けられている。流体軸受３７がこの固定部材と回転可能部材を相互連結し、この流体軸受の接触劣化に抗するに有効な、粘度指数が少なくとも１１０の基礎流体の配合物８４、酸化防止添加剤、腐食防止添加剤および摩耗防止添加剤を含む。

Description

【発明の詳細な説明】 ディスクドライブに適合する添加剤で最適化した潤滑剤を備えた 流体軸受を有するディスクドライブ用スピンドルモータ 発明の背景 本発明は、ディスクドライブ・データ記憶装置用スピンドルモータに関し、更 に詳しくは、このスピンドルモータ内の流体軸受用に最適化した潤滑流体に関す る。 “ウィンチェスター”型ディスクドライブとして知られるディスクドライブ・ データ記憶装置は、この業界でよく知られている。ウィンチェスター ・ディス クドライブでは、回転ディスクの表面上にある磁化可能材料の薄層にディジタル データを読み書きする。読み書き作業は、スライダ本体が担持する変換器を介し て行う。このスライダと変換器は、時々まとめてヘッドと称し、典型的には、各 ディスク面に単一ヘッドが関連する。これらのヘッドは、電子回路の制御の下で アクチュエータ装置によって、このディスク面上の複数の円形で同心のデータト ラックの何れかへ選択的に動かされる。各スライダ本体は、自動式の空気軸受面 を含む。ディスクが回転すると、そのディスクが空気軸受面の下に空気を引込み 、それがスライダをディスク面上に１００ないし１５０ミクロン持上げ、浮遊さ せる上昇力を発生する。 現代のディスクドライブ製品で、最も普通に使われる種類のアクチュエータは 、回転可動コイルアクチュエータである。ディスク自体は、典型的には、ブラシ レスＤＣスピンドルモータのハブ構造に“積重ね”て取付けてある。スピンドル モータの回転速度は、このモータのステータ巻線へ向ける転流信号のタイミング と電力の両方を制御するモータ駆動回路装置によって正確に制御する。典型的な スピンドルモータの速度は、３６００ｒｐｍの範囲にあった。現在の技術は、ス ピンドルモータの速度を７２００ｒｐｍ、１０，０００ｒｐｍおよびそれ以上に 増加した。 ディスクドライブ・データ記憶装置の主な騒音源の一つは、スピンドルモータ である。ディスクドライブ製造業者は、最近スピンドルモータの従来の球軸受ま たはころ軸受を、動圧軸受または靜圧軸受のような、“流体”軸受で置換えるこ とに注目し始めた。流体軸受は、軸受面を分離する流体膜に依存し、従って従来 の玉軸受より遥かに静かであり、一般的に振動が少ない。動圧軸受は、流体膜の 分離を維持するために内部で圧力を発生する、自己ポンピング軸受である。靜圧 軸受は、流体膜の分離を維持するために外部の加圧流体源を要する。流体軸受に 於ける軸受面間の相対運動は、軸受面間が接触しないように完全に流体膜内に起 る剪断要素を生ずる。 この状況は、固体軸受面がしばしば互いに接触し且つ直立応力がその境界面に 起る、ころ軸受、玉軸受および滑り軸受のような、典型的境界潤滑または弾性流 体潤滑の用途とは異なる。これらの境界潤滑の用途で、潤滑剤の主な目的は、境 界面を改変して摩耗および摩擦を減らすことである。潤滑剤の界面の化学特性が 最も重要である。 流体軸受の用途では、完全に異なる流体特性が、この軸受の機能にとって重要 である。境界特性は、ディスク回転の起動と停止のときだけ重要である。通常の 動作中、最も重要な特性は、バルク特性である。ディスクドライブの用途に使う ことを意図した流体軸受は、電力損失が少なく、限られた油脂供給でこの軸受か ら逃げることなく長寿命中適正でなければならないことが必要な小型のユニット である。市販の潤滑剤は、ディスクドライブの小型流体軸受の用途に対して、殆 ど何らかの点で不適当である。 管理しなければならない潤滑剤特性、および達成しなければならない管理の程 度は、ディスクドライブ用の小型流体軸受に特有である。これらの特性には、電 力損失、粘度およびその温度依存性、表面移動、蒸気圧および蒸発速度、耐酸化 性および耐腐蝕性、レオロジー、境界特性並びにシステム適合性がある。粘度は 、電力損失および軸受剛性を決定し、種々の動作条件に亘って比較的一定である べきである。潤滑剤は、軸受から這い出ないように表面移動が小さくあるべきで ある。潤滑剤は、高い耐酸化性および耐反応性を有して軸受の寿命を長くすべき である。レオロジーは、剪断に対する変形および流れ反応である。 潤滑剤は、ディスクドライブの他の材料に適合すべきでもある。例えば、潤滑 剤の表面移動またはガス抜けが、ヘッドとディスクの間の付着摩擦を増したり、 ヘッドの構造若しくは働きを低下させたりして、ヘッドとディスクの間の相互作 用を損うべきでない。従って、適当な流体軸受特性をもつ流体の処方は、汎用潤 滑剤を意図した流体とは異なる考慮が必要である。市販の潤滑剤の他の欠点は、 その潤滑剤の正確な組成をしばしば製造業者が提供せず、ディスクドライブの敏 感な動作に適合しない幾つかの添加剤が入っているかも知れないことである。 発明の概要 本発明のディスクドライブ・データ記憶システムは、ハウジング、中心軸線、 このハウジングに関して固定されてこの中心軸線と同軸の固定部材、およびこの 固定部材に関して上記中心軸線周りに回転可能な回転可能部材を含む。ステータ がこのハウジングに関して固定されている。ロータがこの回転可能部材によって 支持され、このステータに磁気的に結合されている。少なくとも一つのデータ記 憶ディスクがこの回転可能部材にそれと同軸に取付けられている。流体軸受がこ の固定部材と回転可能部材を相互連結し、この流体軸受の接触劣化に抗するに有 効な、粘度指数が少なくとも１１０の基礎流体、酸化防止添加剤、腐食防止添加 剤および摩耗防止添加剤の配合物を含む。 好適実施例では、この配合物中で上記酸化防止添加剤の濃度が重量で０．２５ ％〜３％、上記腐食防止添加剤の濃度が重量で０．０５％〜０．５％、および上 記摩耗防止添加剤の濃度が重量で０．１％ないし４％である。上記基礎流体は、 エステル、合成炭化水素または異なるエステル若しくは合成炭化水素の配合物で あるのが好ましい。上記酸化防止添加剤は、アミンおよびフェノールから成るグ ループから選択するのが好ましい。上記腐食防止添加剤は、金属スルホン酸塩、 長鎖アミン、カルボン酸誘導体、チアジアゾールおよびトリアゾールの誘導体、 並びに燐酸アミンから成るグループから選択するのが好ましい。上記摩耗防止添 加剤は、ジアルキルジチオ燐酸塩、アルキルおよびアリル ジスルフィドおよび ポリサルファイド、ジチオカーバメート、アルキル燐酸塩、モリブデン錯体、並 びに中性燐酸塩エステルから成るグループから選択するのが好ましい。 このディスクドライブ・データ記憶システムは、更に、アクチュエータ、およ びこのアクチュエータによってこのデータ記憶ディスクに近接してそれと連絡す るために支持されたヘッドを含む。この潤滑流体の好適成分は、上記ヘッドと上 記ディスクの間の境界面に適合する。例えば、これらの成分は、上記流体軸受か らのこれらの成分のガス抜けによって生ずる上記ヘッドと上記ディスクの間の付 着摩擦を殆ど増さない。また、これらの成分は、上記ヘッドおよび上記ディスク の構造または働きを低下させない。 図面の簡単な説明 図１は、本発明によるディスクドライブ・データ記憶装置の平面図である。 図２は、本発明による動圧スピンドルモータの断面図である。 図３は、図２の線３−３による動圧スピンドルモータの、明瞭にするために一 部除去した、概略断面図である。 好適実施例の詳細な説明 本発明は、潤滑流体組成をディスクドライブに特有の要件に最適化した、動圧 軸受または靜圧軸受スピンドルモータを有するディスクドライブ・データ記憶装 置である。図１は、本発明が有用である、典型的なディスクドライブ１０の平面 図である。ディスクドライブ１０には、ハウジングベース１２および上カバー１ ４がある。ハウジングベース１２は、上カバー１４と組合さって密封した環境を 作り、内部部品をこの密封した環境外からの要素による汚染から保護する。 ディスクドライブ１０には、更に、ディスククランプ１８によってスピンドル モータ（図示せず）上に回転するように取付けられたディスクパック１６がある 。ディスクパック１６には、中心軸周りに一緒に回転するように取付けられた、 複数の個々のディスクがある。各ディスクは、関連するヘッド２０を有し、その ヘッドは、そのディスク面と連絡するようにディスクドライブ１０に取付けられ ている。図１に示す例では、ヘッド２０が屈曲部２２に支持され、次にそれがア クチュエータ本体２６のヘッド取付けアーム２４に取付けられている。図１に示 すアクチュエータは、回転可動コイルアクチュエータとして知られる型式であり 、全体を２８で示すボイスコイルモータ（ＶＣＭ）を含む。ボイスコイルモータ ２８は、アクチュエータ本体２６をそれに取付けられたヘッド２０と共にピボッ ト軸３０の周りに回転して、ヘッド２０を弓形経路３２に沿って所望のデータト ラック上に配置する。図１に回転アクチュエータを示すが、本発明は、リニヤア ク チュエータのような他の型式のアクチュエータを有するディスクドライブにも有 用である。 図２は、本発明による動圧軸受スピンドルモータ３２の断面図である。スピン ドルモータ３２には、固定部材３４、ハブ３６およびステータ３８がある。図２ に示す実施例では、この固定部材がナット４０および座金４２によってベース１ ２に固定され、取付けられた軸である。ハブ３６は、動圧軸受３７を介して軸３ ４の周りに回転するように軸３４と相互連結されている。軸受３７には、半径方 向作動面４４および４６、並びに軸方向作動面４８および５０がある。軸３４に は、流体口５４、５６および５８があり、それらが潤滑流体６０を供給し、この 流体を軸受の作動面に沿って循環する支援をする。潤滑流体６０は、既知の方法 で軸３４の内部に結合した流体源（図示せず）によって軸３４に供給する。 スピンドルモータ３２には、更に、動圧軸受３７の軸方向作動面４８および５ ０を形成するスラスト軸受４５がある。カウンタプレート６２が作動面４８を圧 迫して、この動圧軸受を軸方向に安定させ、ハブ３６をスピンドルモータ３２内 に配置する。Ｏリング６４がカウンタプレート６２とハブ３６の間に設けられて いて、この動圧軸受をシールする。このシールは、動圧流体６０がカウンタプレ ート６２とハブ３６の間から逃げるのを防ぐ。 ハブ３６には、中央芯材６５、およびディスクパック１６（図１に示す）を軸 ３４の周りに回転するように支持するディスク担持部材６６がある。ディスクパ ック１６は、ディスククランプ１８（やはり図１に示す）によってディスク担持 部材６６上に保持されている。永久磁石７０がハブ３６の外径に取付けられてい て、それがスピンドルモータ３２のロータとして作用する。芯材６５は、磁性材 料で出来ていて、磁石７０の背鉄として作用する。ロータ磁石７０は、一体の環 状リングに作ることも、またはハブ３６の周辺に離間した、複数の個々の磁石に 作ることもできる。ロータ磁石７０は、磁化して一つ以上の磁極を作る。 ステータ３８は、ベース１２に取付けられ、ステータ積層７２およびステータ 巻線７４を含む。ステータ巻線７４は、ステータ積層７２に取付けられている。 ステータ巻線７４は、ロータ磁石７０とハブ３６が中心軸線８０の周りに回転で きるように、ロータ磁石７０から半径方向に離間している。ステータ３８は、ボ ルト７８によってベース１２に固定された幾つかのＣクランプ７６のような、既 知の方法でベース１２に取付けられている。 ステータ巻線７４に加える転流パルスが回転磁界を発生し、それがロータ磁石 ７０と連絡してハブ３６を軸受３７の中心軸線８０の周りに回転させる。転流パ ルスのタイミングを合わせ、偏極を選択したＤＣ電流パルスを逐次選択したステ ータ巻線に向けて、ロータ磁石を駆動し、その速度を制御する。 図２に示す実施例では、スピンドルモータ３２が“ハブ下”型モータで、ステ ータ３８の軸方向位置がハブ３６の下にある。ステータ３８の半径方向位置もハ ブ３６の外にあり、ステータ巻線７４を積層７２の内径面８２に固着する。代替 実施例では、ステータを、ハブの下ではなく、ハブ内に配置する。ステータの半 径方向位置は、ハブの内でも外でもよい。その上、スピンドルモータは、図２に 示すように固定軸を有することも、または回転軸を有することもできる。回転軸 スピンドルモータでは、軸受が回転軸とこの回転軸と同軸の外固定スリーブとの 間にある。 図３は、図２の線３−３による動圧スピンドルモータ３２の、明瞭にするため に一部除去した、概略断面図である。ステータ３８は、積層７２およびステータ 巻線７４を含み、それらはロータ磁石７０および中央芯材６５と同軸である。ス テータ巻線７４は、積層７２の歯の周りに巻いた位相巻線Ｗ１、Ｖ１、Ｕ１、Ｗ ２、Ｖ２およびＵ２を含む。これらの位相巻線は、中心軸線８０に垂直で交差す るコイル軸を有するコイルで作られている。例えば、位相巻線Ｗ１は、中心軸線 ８０に垂直なコイル軸８３を有する。動圧軸受３７の半径方向作動面４４および ４６は、軸３４の外径面と中央芯材６５の内径面が形成する。半径方向作動面４ ４および４６は、通常の動作中、隙間Ｃを維持する潤滑流体８４によって分離さ れている。 １．潤滑剤粘度の最適化 本発明の一つの側面によれば、潤滑流体は、流体粘度を正確に定義することに よってその流体を使う特定の設計の動圧軸受に対して電力損失および軸受耐荷重 （即ち、軸受剛性）を最適化するように選択した基礎流体の配合物を含む。 電力消費量（Ｐ）と軸受剛性（Ｋ）は、次の関係に従って流体粘度に比例する 、 但し、μ_Bは流体の配合物の絶対粘度、ωはハブの回転速度、Ｃは半径方向作動 面４４および４６の間の（または軸方向作動面４８および５０での）間隙または 隙間、並びにＲは半径方向および／または軸方向作動面の特性長である。 小型動圧軸受を有するディスクドライブの用途では、電力容量と負荷容量が重 要である。従って、潤滑流体に対して何れか特定の温度での正確な粘度を指定す るのが望ましく、そうすれば所望の粘度がスピンドルモータの大きさおよび構造 で変動する。任意の粘度値の潤滑剤は市販されていない。本発明の潤滑流体は、 各々化学組成は同様であるが粘度が異なる基礎流体の配合物を含む。これらの基 礎流体を正確に配合して、全体の粘度を所望粘度の、好ましくは１０％以内、最 も好ましくは２〜５％以内にする。基礎流体を次の関係に従って配合する、 但し、 μ_B ＝ 基礎流体の配合物の温度Ｔ_cでの絶対粘度； Ｔ_c ＝ 所望の粘度であるときの温度； ν_n ＝ 基礎流体ｎの動粘度； ｎ ＝ １より大きい整数； ρ_n ＝ 基礎流体ｎの密度； χ_n ＝ 基礎流体ｎの重量比率；および χ₁ ＋ χ₂ … ＋ … χ_n ＝ １。 例えば、ｎ＝２で、配合物の所望の動粘度をνとすると、ν₁＞ν＞ν₂でν₁ およびν₂を適正に選択すれば、所望の粘度の潤滑流体が得られる。 好適な基礎流体には、ペルフルオロポリエーテル、合成炭化水素および高度に 精製した（高度に浄化した）鉱物性炭化水素がある。最も好適な基礎流体には、 ジエステル、ポリオールエステルおよびポリアルファオレフィン（ＰＡＯ）があ る。これらの基礎流体は、種々の組合せで配合することができるが、配合物がエ ステルだけの組合せ、ポリアルファオレフィンだけの組合せ、および少なくとも 一つのエステルと少なくとも一つのポリアルファオレフィンだけの組合せを含む のが好ましい。単一エステルまたはポリアルファオレフィンは、所望の粘度を有 し、その他の所望の特性を満足するならば、本発明の代替実施例で使うことがで きる。 これらの最も好適な基礎流体は、従来の標準流体潤滑剤である石油ベースの炭 化水素に比べて、ディスクドライブの用途で幾つかの利点を示すことが分った。 これらの基礎流体は、粘度があまり温度に依存せず、蒸発が少なく、蒸気圧が低 く、表面移動が少なく、耐酸化性が改善され、境界性能は同様であるが添加剤で 容易に向上でき、ディスクドライブ内の他の材料と適合性がよく、並びに純粋な 化学組成が分っているので全ての特性をよく制御できる。従って、これらの流体 は、ヘッドおよびディスク境界面の劣化を最少にし、軸受およびディスクドライ ブを長寿命にする。 好適実施例では、これらの基礎流体を配合して、体積対表面積比（Ｖ／Ａ）約 １．９〜２．０ｍｍに基づき、７０℃で４〜１０センチポアズ（ｃＰ）の正確な 絶対粘度、少なくとも１１０の粘度指数、および１．０×１０^-3ｍｇ／ｄ・ｍｍ² 未満の範囲の蒸発量を得る。 その上、これらの基礎流体は、軸受からディスクへのこの流体のガス抜けによ るヘッドとディスクの間の付着摩擦（“スティクション”）への寄与が、ディス クドライブに高温または多湿状態のような種々の条件の下で使われている既存の 化学製品または潤滑剤の寄与と、好ましくは、同等以下であるように選択する。 これらの化学製品または潤滑剤には、例えば、グリースおよび磁性流体シールが ある。 ２．潤滑流体に選択した添加剤を配合すること 本発明の他の側面では、潤滑流体が高粘度指数の基礎流体（または基礎流体の 配合物）およびヘッドとディスクの境界面に適合しながらこの配合が接触劣化に 抗するに有効であるように選択した添加物の混合物を含む。 動圧軸受の潤滑流体の粘度は、温度の上昇と共に低下する。これは、電力損失 および与えられた厚さの流体に対する軸受負荷容量を低下する。小型動圧軸受を 有するディスクドライブの用途では、電力損失と軸受負荷容量の大きな変動は許 容できない。 粘度指数（ＶＩ）は、潤滑剤の粘度- 温度に対する感度を表す任意の方法で、 しばしば粘度の温度依存性と解釈される。与えられた粘度を有する流体の粘度指 数が高いことは、その流体の粘度が温度であまり変らないことを示す。電力消費 は、ディスクドライブの小型動圧軸受にとって重要なパラメータであるので、高 ＶＩ指数が望ましい。幾つかのクラスの流体に対する典型的な粘度指数を以下の 表１に示す： エステル流体は、水素および炭素は勿論、酸素を含有し、それであるエステル 流体は、ディスクドライブの用途で、天然および合成炭化水素流体に比べて特有 の利点を示す。これらの利点には、高粘度指数、高耐酸化性、改善された境界潤 滑特性、合成炭化水素に比べて低表面移動性、および低蒸発量がある。 例えば、市販のジエステル流体は、ＶＩ指数が高く、耐酸化性がよいが、金属 対金属接触での耐接触劣化性が悪い。これが市販のジエステル流体を、油脂の量 が非常に少なくてわずかな分解でも軸受特性に悪影響する小型動圧軸受で使用す ることを制限する。 市販の流体には、軸受の寿命中持続するに十分な金属非活性化添加剤が入って いない。その上、大抵の市販の流体には、ヘッドとディスクの境界面に適合しな い成分が入っている。しばしば、市販の流体の正確な組成を製造業者が管理して いない。これらの流体を使用すると、ディスクドライブの性能を意図せずに低下 することがある。 本発明の潤滑流体は、ジエステル流体またはポリアルファオレフィンのような 高ＶＩ指数の基礎流体の配合物、および、この流体に酸化防止、耐食および金属 非活性化特性を与えて、この流体がヘッドとディスクの境界面に適合しながら、 市販のエステルおよび／または合成炭化水素配合物より著しく高い耐接触劣化性 を示すように選択した添加剤の組合せを含む。 酸化防止剤の好適な種類には、アミン（アリールアミン）、フェノールまたは 両者の混合物のような、窒素および酸素含む防止剤がある。最も好適な種類の酸 化防止剤には、ブチルヒドロキシトルエン（液体ヒンダードフェノール）、アル キルジフェニルアミン、フェニル・アルファ・ナフチルアミン、またはこれらの 酸化防止剤の二つ以上の組合せがある。潤滑基礎流体に於けるこれらの添加剤の 好適処理レベルは、質量で０．２５％〜３％である。 錆および腐食防止剤、または金属不動態化剤の好適な種類には、金属スルホン 酸塩、長鎖アミン、カルボン酸誘導体、チアジアゾールおよびトリアゾールの誘 導体、並びに燐酸アミンがある。最も好適な種類には、合成または石油スルホン 酸カルシウム、合成または石油スルホン酸バリウム、アルケニル琥珀酸誘導体お よびトリアゾール誘導体がある。潤滑基礎流体に於けるこれらの添加剤の好適処 理レベルは、質量で０．０２％〜０．５％である。 本発明の潤滑流体は、更に耐摩耗特性、高圧金属接触特性および摩擦特性を改 善するための添加剤を含む。この種の好適添加剤には、ジアルキルジチオ燐酸塩 、アルキルおよびアリル ジスルフィドおよびポリサルファイド、ジチオカーバ メート、アルキル燐酸塩、モリブデン錯体、トリフェニル燐酸塩のような中性燐 酸塩エステル（トリアリルおよびトリアルキル）、またはこれらの添加剤の二つ 以上の組合せがある。最も好適な摩耗防止添加剤には、ジアルキルジチオ燐酸亜 鉛、モリブデンジスルフィド、液体燐酸アミン、並びにプロピル化およびブチル 化トリフェニル燐酸塩がある。潤滑基礎流体に於けるこれらの添加剤の好適処理 レベルは、質量で０．１％〜４％である。 高ＶＩ指数ジエステルをベースにした油脂および／または合成炭化水素と上記 添加剤の配合物で、市販のエステルまたは合成炭化水素配合物より耐接触劣化性 が著しく高い動圧流体が得られる。種々の配合物を試験し、ヘッドとディスクの 境界面に適合することが分った。これらの配合物は、ヘッドとディスクの間の付 着摩擦をそれほど増さず、ヘッドとディスクの境界面にその他の干渉を生じなか った。これらの配合物は、精製パラフィン系石油に対して高負荷および高温での 電力消費および寿命で優れていることも分った。 ３．高剪断強度粘度指数の改良した流体の適用 本発明の他の側面では、潤滑流体が基礎流体と耐剪断性が高い粘度改質剤（“ ＶＩ向上剤”）の混合物を含む。ＶＩ向上剤は、基礎流体の粘度の温度依存性を 減らす。粘度の温度依存性は、非常に重要で、温度依存性が高いことは、スピン ドルモータ用小型軸受の機能に望ましくない。この影響を最少にするために、選 択した市販のポリマーを本発明に従って基礎流体に配合して、スピンドルモータ の温度・電力消費曲線で改善を実測した。電力消費が温度にあまり依存しないこ とを観測した。 本発明の好適実施例では、温度・粘度挙動は不適当であるが、その他の点では 適当な基礎流体が与えられたとすると、高分子量の可溶性ポリマーを重量で５〜 ５０％の濃度でその基礎流体に加える。このポリマーの分子量は、１０，０００ 〜１，０００，０００ダルトンが好ましい。好適なポリマーＶＩ向上剤には、ポ リアクリレート、ポリイソプレンおよびポリスチレンがあるが、それらに限定さ れない。 本発明による小型動圧軸受で遭遇する条件下では、剪断率が毎秒１０⁶以上で ある。この剪断率は、軸受の間隙の幅（図３に示す隙間Ｃ）に関する軸受作動面 の速度変化の割合と定義する。軸受面間の剪断条件が、ポリマーを破壊すること によって、ＶＩ向上剤の寿命を制限する。ＶＩ効果は、数ある要因の中で、ポリ マー鎖の長さに依るので、ＶＩ向上剤の有効性は、剪断破損によって減少する。 本発明の更に好適な実施例で、選択したポリマーＶＩ向上剤は、固体ポリマー の引張り強度が少なくとも７００ｋｇ／ｃｍ²（１０，０００ｐｓｉ）で、耐熱 劣化性が少なくとも１２１℃（２５０°Ｆ）の耐剪断破損性の高いクラスのポリ マーに属する。それでこのポリマーは、剪断強度を有する。このクラスのポリマ ーには、硫化ポリフェニレン、ポリエーテルエーテルケトン、およびポリエーテ ルイミドのような材料の可溶型があるが、それらに限定されない。 尚更に好適な実施例では、固体ポリマーの引張り強度が少なくとも９８４ｋｇ ／ｃｍ²（１４，０００ｐｓｉ）で、耐熱劣化性が２６０℃（５００°Ｆ）以上 である。このクラスのポリマーには、ポリアミド・イミド、ポリイミド、ポリベ ンゾイミダゾール、および液晶ポリマーがあるが、それらに限定されない。その 上更に好適な実施例では、固体ポリマーの引張り強度が少なくとも１，４００ｋ ｇ／ｃｍ²（２０，０００ｐｓｉ）で、耐熱劣化性が少なくとも３７０℃（７０ ０°Ｆ）である。このクラスのポリマーには、バックチューブその他のバックミ ンスターフラーレン炭素形があるが、それらに限定されない。 最も好適な実施例では、ポリマーＶＩ向上剤が先のグループの特性を有し、そ れを、上に議論したように、この流体に酸化防止および金属非活性化保護を与え るように機能的にし、または化学的に改質する。 本発明を好適実施例を参照して説明したが、当業者は、この発明の精神および 範囲から逸脱することなく、形および詳細に変更を加えることができることが分 るだろう。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.⁶ 識別記号 ＦＩ Ｈ０２Ｋ 7/08 Ｈ０２Ｋ 7/08 Ａ // Ｃ１０Ｎ 30:06 30:10 30:12 40:02 (72)発明者 ボレリス，ルイス アメリカ合衆国95023 カリフォルニア州 ホリスター，ソートゥース ドライブ 1361 (72)発明者 ロイトルド，ハンス アメリカ合衆国95060 カリフォルニア州 サンタクルズ，ガーキイ ストリート 849 (72)発明者 ハイネ，ギュンター，ケイ. アメリカ合衆国95003 カリフォルニア州 アプトス，ドリフトウッド コート 143

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １．ディスクドライブ・データ記憶システムであって： ハウジング； 中心軸線； このハウジングに関して固定され、この中心軸線と同軸の固定部材； このハウジングに関して固定されたステータ； この固定部材に関して上記中心軸線周りに回転可能な回転可能部材； この回転可能部材によって支持され、上記ステータに磁気的に結合されたロー タ； この回転可能部材にそれと同軸に取付けられた、少なくとも一つのデータ記憶 ディスク； ヘッドをこのデータ記憶ディスクに近接してそれと連絡するために支持するア クチュエータ；並びに 上記固定部材と回転可能部材を相互連結する流体軸受で、この流体軸受の接触 劣化に抗するに有効な、粘度指数が少なくとも１１０の基礎流体、酸化防止添加 剤、腐食防止添加剤および摩耗防止添加剤の配合物を含む潤滑流体を有する軸受 ； を含むデータ記憶システム。 ２．請求項１のディスクドライブ・データ記憶システムに於いて、上記配合物 中で上記酸化防止添加剤の濃度が重量で０．２５％〜３％であるシステム。 ３．請求項１のディスクドライブ・データ記憶システムに於いて、上記配合物 中で上記腐食防止添加剤の濃度が重量で０．０２％〜０．５％であるシステム。 ４．請求項１のディスクドライブ・データ記憶システムに於いて、上記配合物 中で上記摩耗防止添加剤の濃度が重量で０．１％〜４％であるシステム。 ５．請求項１のディスクドライブ・データ記憶システムに於いて、上記酸化防 止添加剤を窒素および酸素を含む酸化防止剤から成るグループから選択するシス テム。 ６．請求項５のディスクドライブ・データ記憶システムに於いて、上記酸化防 止添加剤をアミンおよびフェノールから成るグループから選択するシステム。 ７．請求項５のディスクドライブ・データ記憶システムに於いて、上記酸化防 止添加剤が本質的にアミンとフェノールの混合物から成るシステム。 ８．請求項１のディスクドライブ・データ記憶システムに於いて、上記酸化防 止添加剤をブチルヒドロキシトルエン、アルキルジフェニルアミンおよびフェニ ル・アルファ・ナフチルアミンから成るグループから選択するシステム。 ９．請求項１のディスクドライブ・データ記憶システムに於いて、上記酸化防 止添加剤が本質的にブチルヒドロキシトルエン、アルキルジフェニルアミンおよ びフェニル・アルファ・ナフチルアミンから成るグループから選択した少なくと も二つの添加剤の混合物から成るシステム。 １０．請求項１のディスクドライブ・データ記憶システムに於いて、上記腐食 防止添加剤を金属スルホン酸塩、長鎖アミン、カルボン酸誘導体、チアジアゾー ルおよびトリアゾールの誘導体、並びに燐酸アミンから成るグループから選択す るシステム。 １１．請求項１０のディスクドライブ・データ記憶システムに於いて、上記腐 食防止添加剤を合成スルホン酸カルシウム、石油スルホン酸カルシウム、合成ス ルホン酸バリウム、石油スルホン酸バリウム、アルケニル琥珀酸誘導体およびト リアゾール誘導体から成るグループから選択するシステム。 １２．請求項１のディスクドライブ・データ記憶システムに於いて、上記摩耗 防止添加剤をジアルキルジチオ燐酸塩、アルキルおよびアリル ジスルフィドお よびポリサルファイド、ジチオカーバメート、アルキル燐酸塩、モリブデン錯体 、並びに中性燐酸塩エステルから成るグループから選択するシステム。 １３．請求項１のディスクドライブ・データ記憶システムに於いて、上記摩耗 防止添加剤をトリアリルおよびトリアルキル燐酸塩から成るグループから選択す るシステム。 １４．請求項１のディスクドライブ・データ記憶システムに於いて、上記摩耗 防止添加剤がアルキルおよびアリル ジスルフィドおよびポリサルファイド、ジ チオカーバメート、アルキル燐酸塩、モリブデン錯体、並びに中性燐酸塩エステ ルから成るグループから選択した少なくとも二つの添加剤から成るシステム。 １５．請求項１のディスクドライブ・データ記憶システムに於いて、上記摩耗 防止添加剤をジアルキルジチオ燐酸亜鉛、モリブデンジスルフィド、液体燐酸ア ミン、並びにプロピル化およびブチル化トリフェニル燐酸塩から成るグループか ら選択するシステム。 １６．請求項１のディスクドライブ・データ記憶システムに於いて、上記基礎 流体をジエステル、ポリオールエステル、ポリアルファオレフィン、ペルフルオ ロポリエーテルおよび鉱物性炭化水素から成るグループから選択するシステム。 １７．請求項１６のディスクドライブ・データ記憶システムに於いて、上記基 礎流体をジエステルおよびポリオールエステルから成るグループから選択するシ ステム。 １８．請求項１のディスクドライブ・データ記憶システムに於いて、上記基礎 流体が、ジエステル、ポリオールエステルおよびポリアルファオレフィンから成 るグループから選択した少なくとも二つの基礎流体の配合物を含み、その配合物 の中の各基礎流体の粘度が異なるシステム。 １９．請求項１のディスクドライブ・データ記憶システムであって、更に： アクチュエータ；および このアクチュエータによってこのデータ記憶ディスクに近接してそれと連絡す るために支持されたヘッド；を含み、このヘッドとディスクが境界面を有し、上 記配合物がこの境界面に適合する基礎流体、酸化防止添加剤、腐食防止添加剤お よび摩耗防止添加剤から成るシステム。 ２０．請求項１のディスクドライブ・データ記憶システムに於いて、上記配合 物が、上記流体軸受からの上記配合物のガス抜けによって生ずる上記ヘッドと上 記ディスクの間の付着摩擦に抗するに有効であるシステム。 ２１．ディスクドライブの中の流体軸受を潤滑するための流体軸受ディスクド ライブ潤滑流体であって： ジエステル、ポリオールエステル、ポリアルファオレフィン、ペルフルオロポ リエーテルおよび鉱物性炭化水素から成るグループから選択した基礎流体； アミンとフェノールから成るグループから選択した酸化防止添加剤； 金属スルホン酸塩、長鎖アミン、カルボン酸誘導体、チアジアゾールおよびト リアゾールの誘導体、並びに燐酸アミンから成るグループから選択した腐食防止 添加剤； ジアルキルジチオ燐酸塩、アルキルおよびアリル ジスルフィドおよびポリサ ルファイド、ジチオカーバメート、アルキル燐酸塩、モリブデン錯体、並びに中 性燐酸塩エステルから成るグループから選択した摩耗防止添加剤； を含む潤滑流体。