JP4295310B2 - ピボットアッシー軸受用フッ素系オイル組成物 - Google Patents

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本発明は、ピボットアッシー軸受用フッ素系オイル組成物に関するものである。さらに詳しくは、低トルク、低アウトガス、長寿命でかつヒステリシス特性が良いピボットアッシー軸受用に好適なフッ素系オイル組成物に関する。
最近、ピボットアッシー用軸受(ベアリング)に充填されるオイル組成物においては、低トルク、低アウトガス、長寿命でかつヒステリシス特性が良いオイル組成物を開発すべく、種々の研究がされてきた。最近のコンピュータの能力は、記憶容量と読み取り速度の飛躍的な増大による、高密度化、高速度化に向けて、いろいろな提案がされ改善されているが、このような記憶装置用の軸受に充填されるオイル組成物については、まだまだ改善の余地はのこされているのが実情である。
本発明者は、コンピュ−タのHDD(ハ−ドディスクドライブ)やFDD(フロッピ−ディスクドライブ)記憶装置、CDD(コンパクトディスクドライブ)、MOD(光磁気ディスクドライブ)など、情報機器において、とくに情報を書きこみ読みとる装置のピボットアッシー用軸受に関して、要求される性能すなわち、低トルク、低アウトガス、長寿命でかつヒステリシス特性が良いピボットアッシー用軸受に充填するピボットアッシー軸受用フッ素系オイル組成物を開発することを目的としている。
なお、本発明において、ピボットアッシー用軸受というのは、コンピュ−タのHDD(ハ−ドディスクドライブ)やFDD(フロッピ−ディスクドライブ)記憶装置、CDD(コンパクトディスクドライブ)、MOD(光磁気ディスクドライブ)、など情報機器周辺で用いられている情報を書きこみ読みとるためのアクチュエータを駆動する軸受をいう。本発明は、フッ素系オイル組成物とくに従来のピボットアッシー用軸受に比して格段に優れた低トルク、低アウトガス、長寿命でかつヒステリシス特性の優れたピボットアッシー用軸受に充填するピボットアッシー軸受用フッ素系オイル組成物を提供することを目的としてなされたものである。

本発明者は、前記した好ましい特性を有する軸受を開発するために種々研究を重ねた結果、特定の化学構造式をもつ添加剤とフッ素系オイルを含むことを特徴とするフッ素系オイル組成物をピボットアッシー用軸受内に封入すれば良い結果が得られることを見出し、この知見に基づいてピボットアッシー軸受用フッ素系オイル組成物を完成するに至った。 すなわち、本発明は、(A)フッ素系オイル及び(B)一般式(i)
Figure 0004295310
(式中Zは、式(ii)
Figure 0004295310
で示されるmは1〜50の整数であるフッ化エーテル基を表し、Yは一般式(iii)
Figure 0004295310
で示されるnは1〜30の整数である脂肪族ジアミド基、又は、一般式(iV)
Figure 0004295310
で示される脂肪族環状ジアミド基、又は一般式(V)
Figure 0004295310
で示される芳香族ジアミド基、又は一般式(Vi)
Figure 0004295310
で示される環式ジアミド基を表す。)で表わされる添加剤を含むピボットアッシー軸受用フッ素系オイル組成物である。
また、本発明は、(A)フッ素系オイルが、一般式(Vii)
Figure 0004295310
(式中pは6〜100の整数を表す)で示されるフッ化エーテルであり、添加剤 (B) が一般式(i)において、Zが一般式(ii)
Figure 0004295310
(式中mは1〜50の整数を表す)及びYが一般式(iii)
Figure 0004295310
(式中nは1〜30の整数を表す)で表わされるフッ化エーテル脂肪族ジアミド系添加剤であるピボットアッシー軸受用フッ素系オイル組成物である。さらに、本発明は、 (A)フッ素系オイルが、一般式(Vii)
Figure 0004295310
(式中pは6〜100の整数を表す)で示されるフッ化エーテルであり、添加剤 (B) が一般式(i)において、Zが一般式(ii)
Figure 0004295310
(式中mは1〜50の整数を表す)及びYが一般式(iV)
Figure 0004295310
で表わされるフッ化エーテル脂肪族環状ジアミド系添加剤であるピボットアッシー軸受用フッ素系オイル組成物である。またさらに、本発明は、(A)フッ素系オイルが、一般式(Vii)
Figure 0004295310
(式中pは6〜100の整数を表す)で示されるフッ化エーテルであり、添加剤 (B) が一般式(i)において、Zが一般式(ii)
Figure 0004295310
(式中mは1〜50の整数を表す)及びYが一般式(V)
Figure 0004295310
で表わされるフッ化エーテル芳香族ジアミド系添加剤であるピボットアッシー軸受用フッ素系オイル組成物である。さらに、本発明は、 (A)フッ素系オイルが、一般式(Vii)
Figure 0004295310
(式中pは6〜100の整数を表す)で示されるフッ化エーテルであり、添加剤 (B) が一般式(i)において、Zが一般式(ii)
Figure 0004295310
(式中mは1〜50の整数を表す)及びYが一般式(Vi)
Figure 0004295310
で表わされるフッ化エーテル環式ジアミド系添加剤であるピボットアッシー軸受用フッ素系オイル組成物である。また、本発明は、成分(A)のフッ素系オイル 対(B)の添加剤が質量比で、80〜99.9:20〜0.1含んでなる場合には、ピボットアッシー軸受用としてより好適に用いることが出来る。


本発明のフッ素系オイル組成物は、これをピボットアッシー用軸受に封入したときは、表3からも明らかなように、従来のポリオールエステル系オイル組成物を封入したピボットアッシー用軸受よりも、格段に優れた低トルク、低アウトガス、長寿命でかつヒステリシス特性の優れたものであることを確認することができた。
まず、本発明のフッ素系オイル組成物を封入する代表的なピボットアッシー用軸受を図1に示す。
1は外輪、2は玉、3は内輪、4は内輪面取り、5は保持器(リテーナ)、6は外輪面取り、7はシールド、8はスナップリングである。
また、dは内径、Liは内輪肩径、Doは外輪肩径、Dは外径である。軸受空間容積とは、内外輪とシールドによって囲まれた空間容積よりボール、リテーナの体積を引いた残部空間容積をいう。
また、このピボットアッシー軸受が組み込まれた磁気ディスク装置を図2に示す。10はピボット軸、20は揺動アーム、30は磁気ヘッド、40は駆動装置、50は磁気ディスク、60はクランプ、70はスピンドルモータ回転軸、80はハウジングである。
駆動パルスが入力されると、駆動装置40がピボット軸10に支持された揺動アーム20を揺動させ、磁気ヘッド30が磁気ディスク50の内周から外周又は外周から内周を半径方向に横断して、情報の読み込み又は書き込みを行う。
このとき、揺動アーム20が揺動する範囲は角度にして20°〜30°である。
本発明のフッ素系オイル組成物におけるヒステリシス特性とは、磁気ヘッド30が、同じ道のりを通って、1往復したときの特性をいう。
本発明のフッ素系オイルと特定の化学構造式をもつ添加剤からなる組成物は、組み合わせが新規なものであり、特定の化学構造式をもつ添加剤の割合は、オイル組成物全体の0.1ないし20質量%用いることが出来る。とくに1質量%ないし5質量%が望ましい。
0.1質量%以下だと、オイル組成物の表面張力が高くて軸受の細部にオイルが浸透しない恐れがあり、20質量%以上添加しても表面張力の低下が見られないばかりか、オイル組成物の粘度が高くなって好ましくない。
なお、フッ化エーテルジアミドは公知の化合物であり、合成方法は種々考えられるが、フッ化エーテル分子の端末にカルボキシル基をもつ化合物とジアミン化合物から合成するのが好適である。フッ素オイルは、分子量が約1,000から約10,000程度が望ましい。
1,000以下だと蒸発しやすく、アウトガス特性が悪くなり10,000以上だと粘度が高くなりトルクが高くなる。本発明のフッ素系オイル組成物は、オイル組成物の粘度が 5〜2,000mm/s である。
さらに、本発明のフッ素系オイル組成物は、通常フッ素系オイル組成物に用いられる各種の添加剤を含有することも可能である。
添加剤としては通常フッ素系オイル組成物に用いられている添加剤、すなわちフェニルα(β)ナフチルアミン、アルキルジフェニルアミン、フェノチアジン、t−ブチルフェノール等の酸化防止剤、金属スルホネート、非イオン系、アミン系等の防錆剤等が挙げられる。
次に、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
一般式(Vii)で示される式中のpを調節してそれぞれ異なった分子量のものを用いて、平均分子量1500〜2500(イ)、平均分子量2500〜3500(ロ)、平均分子量3000〜4000(ハ)および平均分子量7000〜8000(ニ)の4種類のフッ素系ベースオイル組成物を得た。
その特性を表1に示す。比較のためポリオールエステル(ホ)の特性も示す。
Figure 0004295310
各例の試料の評価は以下に示す方法で行った。
フッ素系オイル組成物の実施例1〜6では、フッ素オイルとして一般式(Vii)
Figure 0004295310
で示されるフッ化エーテルを用いた。
また、添加剤として、一般式(ii) m=15〜25
Figure 0004295310
及び一般式(iii) n=2
Figure 0004295310
で表わされるフッ化エーテル脂肪族ジアミド系添加剤(F1)を用いた。
(B)成分の添加剤をフッ素系オイル対添加剤が質量比で、80〜99.9:20〜0.1の割合で加えてフッ素系オイル組成物とした。
フッ素系オイル組成物実施例7〜10では、(B)成分の添加剤として一般式(iii)のn=6のフッ化エーテル脂肪族ジアミド(F2)を用いたほかは、実施例1と同様にしてフッ素系オイル組成物を得た。
フッ素系オイル組成物実施例11〜14では、(B)成分の添加剤として一般式(iii)のn=10のフッ化エーテル脂肪族ジアミド(F3)を用いたほかは、実施例1と同様にしてフッ素系オイル組成物を得た。
フッ素系オイル組成物実施例15〜17では、(B)成分の添加剤としてフッ化エーテルシクロヘキシルジアミド(F4)を用いたほかは、実施例1と同様にしてフッ素系オイル組成物を得た。
フッ素系オイル組成物実施例18〜20では、(B)成分の添加剤としてフッ化エーテルp−アミノアニリンジアミド(F5)を用いたほかは、実施例1と同様にしてフッ素系オイル組成物を得た。
フッ素系オイル組成物実施例21〜23では、(B)成分の添加剤としてフッ化エーテルピペラジンジアミド(F6)を用いたほかは、実施例1と同様にしてフッ素系オイル組成物を得た。
その配合成分、配合比を表2に示す。
Figure 0004295310
摩擦係数は曽田式振子型摩擦試験機で測定した。曽田式振子型摩擦試験機とは、振り子の支点摩擦部に試料油を与え、振り子を振動させ、振り子の減衰度合から支点部の摩擦係数を算出する試験機である。測定条件は、縦糸荷重40g 1個、横糸荷重80g 2個 初期振幅:0.5ラジアン 試験温度:室温で行った。
(比較例)
また、比較のために、(B)成分の添加剤について、添加剤を用いない場合や本発明で用いる添加剤以外の添加剤を用いて、他はフッ素系オイル組成物の実施例と同様にして、アクチュエータ転がり軸受用フッ素系オイル組成物を調製し比較例として表2に示した。
比較例1〜3は添加剤を用いないでアクチュエータ転がり軸受用フッ素系オイル組成物を調製した。
比較例4はF2を大量に用いてアクチュエータ転がり軸受用フッ素系オイル組成物を調製した。
比較例5は、
化学式(Viii)
Figure 0004295310
で示される添加剤を用いた他は実施例と同じようにして作成した。
比較例6は、
化学式(iX)
Figure 0004295310
で示される添加剤を用いた他は実施例と同じようにして作成した。
比較例7は、
化学式(X)
Figure 0004295310
で示される添加剤を用いた他は実施例と同じようにして作成した。
比較例8及び9は、
化学式(Xi)
Figure 0004295310
で示される添加剤を用いた他は実施例と同じようにして作成した。
比較例10は、
化学式(Xii)
Figure 0004295310
(式中qは6〜10である)で示されるベースオイルを用いて添加剤を用いないで作成した。
比較例11は、
ポリオールエステル(ホ)をベースオイルとして用い添加剤としてF1を用いて実施例と同じようにして作成した。
実施例1〜23及び比較例1〜11で作成したフッ素系オイル組成物をピボットアッシー用軸受に軸受空間容積の5vol%で封入しテストを繰り返した結果を表3に示す。
Figure 0004295310
軸受特性試験は、ピボットアッシー用軸受に被検体であるフッ素系オイル組成物を封入し、回転トルク、ヒステリシス特性、アウトガス特性を測定した。
回転トルクは、一定の与圧量で接着固定したピボットアッシー軸受の状態でトルクテスターにより、回転数2rpmで室温にて測定した。 アウトガス特性は、各試料を数mg採り、ダイナミックヘッドスペース法で測定した。
本発明におけるヒステリシス特性は、磁気ヘッド30が、同じ道のりを通って、1往復したときの特性であり、評価試験は、磁気ヘッド30が磁気ディスク上を内から外へ、そして同じ軌道上を外から内へ移動したとき、オフセット電流の電流値を測定することにより行った。
トルクは低いものほど、アウトガス特性は少ないものほど、ヒステリシス特性は、オフセット電流の電流値の変化が小さいのものほど優れている。
次の4段階で評価した。
◎ :優れている
○ :良い
△ :普通
× :劣る
本発明のピボットアッシー軸受用フッ素系オイル組成物は、従来のポリオールエステル
系オイル組成物を封入したピボットアッシー用軸受よりも、格段に優れた低トルク、低ア
ウトガス、長寿命でかつヒステリシス特性の優れたピボットアッシー用軸受を提供するこ
とが出来、産業上極めて利用価値が高いものである。
代表的なピボットアッシー用軸受の断面図である。 代表的な磁気ディスク装置の見取り図である。
符号の説明
1 外輪
2 玉
3 内輪
4 内輪面取り
5 保持器
6 外輪面取り
7 シールド
8 スナップリング
10 ピボット軸
20 揺動アーム
30 磁気ヘッド
40 駆動装置
50 磁気ディスク
60 クランプ
70 スピンドルモータ回転軸
80 ハウジング

Claims (6)

  1. (A)フッ素系オイル及び(B)一般式(i)
    Figure 0004295310
    (式中Zは、式(ii)
    Figure 0004295310
    で示されるmは1〜50の整数であるフッ化エーテル基を表し、
    Yは一般式(iii)
    Figure 0004295310
    で示されるnは1〜30の整数である脂肪族ジアミド基、
    又は、一般式(iv)
    Figure 0004295310
    で示される脂肪族環状ジアミド基、
    又は一般式(v)
    Figure 0004295310
    で示される芳香族ジアミド基、
    又は一般式(vi)
    Figure 0004295310
    で示される環式ジアミド基を表す。)
    で表わされる添加剤を含むピボットアッシー軸受用フッ素系オイル組成物。
  2. (A)フッ素系オイルが、一般式(vii)
    Figure 0004295310
    (式中pは6〜100の整数を表す)で示されるフッ化エーテルであり、
    添加剤(B)が一般式(i)において、Zが一般式(ii)
    Figure 0004295310
    (式中mは1〜50の整数を表す)及びYが一般式(iii)

    Figure 0004295310
    (式中nは1〜30の整数を表す)で表わされるフッ化エーテル脂肪族ジアミド系添加剤である請求項1に記載されたピボットアッシー軸受用フッ素系オイル組成物。
  3. (A)フッ素系オイルが、一般式(vii)
    Figure 0004295310
    (式中pは6〜100の整数を表す)で示されるフッ化エーテルであり、添加剤(B) が一般式(i)において、Zが一般式(ii)
    Figure 0004295310
    (式中mは1〜50の整数を表す)及びYが一般式(iv)
    Figure 0004295310
    で表わされるフッ化エーテル脂肪族環状ジアミド系添加剤である請求項1に記載されたピボットアッシー軸受用フッ素系オイル組成物。
  4. (A)フッ素系オイルが、一般式(vii)
    Figure 0004295310
    (式中pは6〜100の整数を表す)で示されるフッ化エーテルであり、添加剤(B) が一般式(i)において、Zが一般式(ii)
    Figure 0004295310
    (式中mは1〜50の整数を表す)及びYが一般式(v)
    Figure 0004295310
    で表わされるフッ化エーテル芳香族ジアミド系添加剤である請求項1に記載されたピボットアッシー軸受用フッ素系オイル組成物。
  5. (A)フッ素系オイルが、一般式(vii)
    Figure 0004295310
    (式中pは6〜100の整数を表す)で示されるフッ化エーテルであり、添加剤(B)が一般式(i)において、Z が一般式(ii)
    Figure 0004295310
    (式中mは1〜50の整数を表す)及びYが一般式(vi)

    Figure 0004295310
    で表わされるフッ化エーテル環式ジアミド系添加剤である請求項1に記載されたピボットアッシー軸受用フッ素系オイル組成物。
  6. 成分(A)のフッ素系オイル 対(B)の添加剤が質量比で、80〜99.9:20〜0.1含んでなる請求項1ないし請求項5のいずれかひとつに記載されたピボットアッシー軸受用フッ素系オイル組成物。
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