JP2004159585A - 唐辛子種子油およびその利用 - Google Patents
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Abstract
【課題】唐辛子種子由来の辛味成分と、その鮮明な赤彩色を喪失せずに、不快な風味が解消され、しかも多用途に適用可能な唐辛子種子油およびそれを利用した配合油を提供する。
【解決手段】唐辛子種子を圧搾して得た搾油を、蒸留手段、とりわけ、真空度約10 torr以下、吹き込み水蒸気量約10%以下、約120℃〜約200℃、約10分〜約60分間の蒸留条件下で実施される減圧水蒸気蒸留に適用してその臭気成分を除去して得られる唐辛子種子油。
【選択図】 なし
【解決手段】唐辛子種子を圧搾して得た搾油を、蒸留手段、とりわけ、真空度約10 torr以下、吹き込み水蒸気量約10%以下、約120℃〜約200℃、約10分〜約60分間の蒸留条件下で実施される減圧水蒸気蒸留に適用してその臭気成分を除去して得られる唐辛子種子油。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、不快な風味が解消され、しかも多用途に適用可能な新規の唐辛子種子油に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
唐辛子(トウガラシ)とは、中南米を原産地とする多年生低木に属する植物であり、現在では、温帯において一年生草木として栽培されるトウガラシ(Capsicum annuum L)またはその変種のナス科の果実をも含めて唐辛子と称されている。
【0003】
この唐辛子は、辛味の有無に基いて、鷹の爪、八房、伏見などの辛味のある唐辛子と、ピーマンやパプリカなどの辛味のない唐辛子とに大別される。 これら唐辛子の辛味とは、唐辛子に含まれるカプサイシノイドによって発現されるヒトの生理現象である。 これらカプサイシノイドの中でも、カプサイシン、ジヒドロカプサイシン、ノルジヒドロカプサイシン、ホモカプサイシン、それにホモジヒドロカプサイシンの5種類の物質が、唐辛子の辛味の構成に寄与していると言われている。 また、これまでのところ、これらカプサイシノイドが、体温上昇および発汗を促して脂肪の燃焼を助長したり、胃を刺激して食欲を増進させたり、あるいは、塩分が薄くとも辛味によって食品の薄味をマスキングできるなどの有用な作用を呈することが知られている。
【0004】
また、辛さ成分のみならず、唐辛子の実の部分には、カロテン、ビタミンB1、B2を多く含み、また、葉の部分には、カロテン、ビタミンC、カルシウム、鉄、カリウムを豊富に含んでおり、栄養バランスの面でも優れた食材なのである。
【0005】
加えて、一般的に、カプサイシノイドを加熱処理しても、その成分構成に変化をきたさないことから、焼く、煮る、炒めるなどのいずれの加熱調理法にも適用できて、多彩な食品への取り込みが可能であることから、現在では、健康に対する良好なイメージが消費者に定着しつつある。
【0006】
ところで、唐辛子の食材としてのかような価値に着目して、従来より種々の形態で唐辛子の利用が行われてきている。 特に、唐辛子から色素や唐辛子エキスを取得する際に副産物として産出される唐辛子種子を、圧搾および抽出して得られる唐辛子種子油が、従来より、特に中国において食用に供されている。 しかし、この唐辛子種子油は、唐辛子種子由来の特有の青臭い風味(生臭さ)を呈しており、この風味は、日本人にとっては不快臭に他ならず、我が国の消費者には受け入れ難いものであった。 これら不快臭を除去するための精製手段についてこれまで様々な検討が試みられているが、従来の精製方法によれば、不快臭のみならず辛味成分までが除去されたり、あるいは唐辛子種子油に特有の鮮明な赤彩色が変色してしまうなどの、商品価値の低下に直結する不都合を招いていたのが実情である。 結局のところ、唐辛子種子油の不快臭のみを選択的に除去する手段を未だ見出せない状況にあり、当該技術分野にあっては、かような選択的除去手段の出現が待望されているのである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、従来の唐辛子種子油において認識されていた上掲の問題点に鑑みて鋭意研究を行った。 特に、その脱臭方法の改良の研究において、唐辛子種子油に特有の不快臭のみを選択的に除去する条件にたどり着いて、本発明を完成するに至ったのである。
【0008】
すなわち、本発明の要旨とするところは、唐辛子種子を圧搾して得た搾油を、蒸留手段に適用してその臭気成分を除去して得られる唐辛子種子油にある。 そして、当該蒸留手段としては、好ましくは、真空度約10 torr以下、吹き込み水蒸気量約10%以下、約120℃〜約200℃、約10分〜約60分間の蒸留条件下で実施される減圧水蒸気蒸留が好適に利用可能である。 また、減圧水蒸気蒸留以外にも、分子蒸留など、当該技術分野で周知の脱臭手段も当然に利用可能である。
【0009】
また、本発明の唐辛子種子油のヨウ素価は約134±約20で、かつ約100ppm以上のカプサイシノイドと約1重量%以下のトランス酸を含有している。
【0010】
本発明の構成によって、唐辛子種子油の品質に直接的な影響を及ぼす唐辛子種子由来の辛味成分と、その鮮明な赤彩色を喪失せずに、唐辛子種子油に特有の不快臭が除去された唐辛子種子油が得られる。
【0011】
また、本発明の唐辛子種子油と従来の食用油とを配合することで、風味が良好で、しかも多用途に適用可能な配合油も得られる。
【0012】
また、本発明の唐辛子種子油と香料および/または香辛料の抽出成分とを配合することで、任意の香味が付与された風味油も得られる。
【0013】
また、本発明の唐辛子種子油が配合されてなる調合油と、この調合油で抽出した風味成分および/または香味成分とを配合することで、風味/香味に富んだ風味油を得ることもできる。
【0014】
さらに、本発明の唐辛子種子油を、マヨネーズやドレッシングの他、麺類やベーカリー食品の原材料として利用することで、良好な風味と食味を呈する麺類やベーカリー食品が提供される。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0016】
本発明の唐辛子種子を得るために用いる唐辛子とは、内国産および外国産を問わずに、いずれの唐辛子でも使用可能である。
【0017】
唐辛子を出発原料として、本発明の唐辛子種子油は製造される。
【0018】
最初に、製油工場に運び込まれた唐辛子に混在する異種植物の種子に茎や葉、傷の付いた種子、未熟種子などを機械的に、または手作業で除去して、唐辛子の精選(選別)を行う。
【0019】
次に、精選された唐辛子を、乾燥および粗砕の工程に適用する。
【0020】
唐辛子の乾燥とは、唐辛子の水分調整に他ならず、唐辛子の実からの唐辛子色素の抽出および種子からの油の抽出を効果的に行う上で重要な工程である。 とりわけ、水分量を13%以下、好ましくは、5〜10%程度に調整することで、高品質の圧搾油を高収率で得ることができる。
【0021】
水分調整を行って得られたこれら唐辛子を、粗砕工程に適用する。 この粗砕工程とは、唐辛子を実と種子に分離するために、唐辛子を物理的に圧壊または裂開するための工程であって、各種粉砕機、好ましくは、粗割ロール(クラッキンロール:Cracking Roll)と呼ばれるスジロール(一段式のペアロール)等の粉砕機を用いて唐辛子を4〜8分割程度に砕く。
【0022】
次いで、粗砕された唐辛子をその種子と実に分別する。 分別方法としては、フルイ(篩)分け、比重差を利用する風別などの方法があり、それぞれを単独で、または適宜組み合わせて利用することができる。 通常、唐辛子の実は色素の抽出に供され、そして、種子部分のみが搾油工程へ送られる。
【0023】
勿論、前述の一連の機械的手段による唐辛子種子の精選・分別に代えて、天日干しした唐辛子から手作業で唐辛子をその種子と実に分別する、との旧来の手法によることも当然に可能である。
【0024】
次いで、精選・分別された唐辛子種子を、圧搾して圧搾油を得る。
【0025】
圧搾(採油)方法には、従来より公知の物理的な圧搾方法(バッチ式または連続式圧搾方法)と、ヘキサン(n−ヘキサン)等の有機溶剤を用いた化学抽出法とがあり、これらいずれの方法も本発明にあっては利用できるが、取得される油の品質や経済性を考慮した場合、前者の物理的な圧搾方法によるのが好適である。
【0026】
物理的圧搾を経て得られた圧搾油には、圧搾時に混入した微粉状脱脂粕や水分、さらに水和して析出しはじめた水和性ガム質などの、非油溶性の夾雑者が混在しているので、濾過または遠心分離などの操作を行って、これら不純物を除去することで粗油が取得できる。
【0027】
また、唐辛子種子油の不快臭を除去するために採用すべき蒸留のための条件、とりわけ、減圧水蒸気蒸留のための条件としては、唐辛子種子由来の辛味成分と、その鮮明な赤彩色を喪失させない観点からして、約10 torr以下の真空度、約10%以下の吹き込み水蒸気量において、約100℃〜約200℃、好ましくは、約120℃〜約200℃にて、約10分〜約60分間、最も好ましくは、約150℃にて、約30分間の条件とする。
【0028】
このような条件下での蒸留工程を経ることで、ヨウ素価が約134±約20、好ましくは約134±約5で、カプサイシノイド含量が約100ppm以上、好ましくは約300ppm〜約500ppm、そして、トランス酸含量が約1重量%以下、好ましくは約0.1重量%以下である唐辛子種子油が得られる。
【0029】
このようにして得られた本発明の唐辛子種子油は、缶、ガラス瓶、プラスチック、紙などの公知の収納容器に充填・収容される。
【0030】
また、本発明の唐辛子種子油と従来の食用油とを配合することで、風味が良好で、しかも多用途に適用可能な配合油も得られる。
【0031】
また、本発明の唐辛子種子油と香料および/または香辛料の抽出成分とを配合することで、任意の香味が付与された風味油も得られる。
【0032】
また、本発明の唐辛子種子油が配合されてなる調合油と、この調合油で抽出した風味成分および/または香味成分とを配合することで、風味/香味に富んだ風味油を得ることもできる。
【0033】
さらに、本発明の唐辛子種子油またはこれを含む配合油を用いて食材の調理を行うことで、良好な風味と食味を呈する食品が得られる。 例えば、本発明の唐辛子種子油を用いて、フライ調理、炒め調理、焼き調理することで、風味良好な食品を提供することができる。 かような食品として、コロッケ、天ぷら、唐揚げ、豚カツ、ドーナツ、揚げ菓子、炒飯、たこ焼などがある。
【0034】
また、本発明の唐辛子種子油またはこれを含む配合油を、マヨネーズやドレッシングなどの調味料のベースオイルとすることで、調味料に良好な風味と食味を付与することができる。
【0035】
さらに、本発明の唐辛子種子油を麺類やベーカリー食品の原材料として利用することで、これら食品に良好な風味と食味を付与することも可能となる。
【0036】
【実施例】
以下に、本願発明の実施例を具体的に説明するが、本願発明はこれら実施例の開示によって限定的に解釈されるべきものではない。
【0037】
実施例1:唐辛子種子油の製造条件の検討
唐辛子種子油[粗油:唐辛子搾油(唐辛子種子油:住友商事ケミカル株式会社)]を、120℃、150℃または200℃に温度設定された蒸留装置(脱臭器)に入れて、そこで10、30または60分間蒸留して本願発明の唐辛子種子油(実施例A〜I)を得た。
【0038】
また、粗油(カプサイシン含量370ppm)を、従来の蒸留条件(260℃、60分)で脱臭したものを、比較例の唐辛子種子油とした。 なお、粗油のカプサイシン含量は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって決定して得た数値である。
【0039】
実施例A〜Iの唐辛子種子油、比較例の唐辛子種子油および前述の粗油に関して、トランス酸含量、色度および風味についての検定を行った。
【0040】
トランス酸含量は、キャヒ゜ラリーGC(島津GC17A, FID検出)を用いたガスクロマトグラフィー(GLC)法によって、その含量(重量%)を決定した。
【0041】
また、色度は、各被験油をヘキサンで2倍希釈(容積比)したものを、基準油脂分析法 (2.2.1.1−色(ロビボンド法)、基準油脂分析試験法(I)、日本油化学会制定、1996年版、社団法人日本油化学会)に従って、ロビボンド比色計により測定し、同等の標準色ガラスの値を割り出して決定した。
【0042】
そして、実施例A〜Iの唐辛子種子油、比較例の唐辛子種子油および粗油の風味、すなわち、異味異臭の有無や唐辛子種子特有の不快臭の有無を確認した。
【0043】
これら分析・評価項目に関する結果を、以下の表1にまとめた。
【0044】
【表1】
【0045】
なお、実施例Eの唐辛子種子油と市販の菜種油(菜種白絞油:吉原製油株式会社)とを、10重量%:90重量%の割合で混合してなる配合油について、熟練したパネラー12名によって官能試験を行ったところ、パネラー全員から「辛味を感じる」旨の回答を得た。
【0046】
表1に記載の結果から明らかなように、本発明の唐辛子種子油は、唐辛子種子由来の辛味成分と、その鮮明な赤彩色を喪失せずに、異味異臭や唐辛子種子油に特有の不快臭が除去されていたことが確認された。 これはすなわち、本願発明の唐辛子種子油の製造条件、特に、粗油の蒸留条件として、約120℃〜約200℃、約10分〜約60分間の条件が好適であることを指し示すものにほかならない。
【0047】
実施例2:唐辛子種子油を用いた調合油の製造およびその性状の検討
実施例Eの唐辛子種子油と市販の菜種油(菜種白絞油:吉原製油株式会社)とを、10重量%:90重量%の割合で混合してなる実施例2の配合油を得た。
【0048】
同様に、実施例Eの粗油と市販の菜種油(菜種白絞油:吉原製油株式会社)とを、10重量%:90重量%の割合で混合してなる比較例2の配合油を得た。
【0049】
これら配合油を用いて、トンカツを調理した。 具体的には、100gの豚肉を、打ち粉、生卵(全卵量)、パン粉の順序に付け、それらを加熱された各油(170℃)で、5分間フライ調理した。
【0050】
各油で揚げ調理された豚カツに関して、熟練したパネラーによって、3点識別試験法および3点嗜好試験法によって、官能評価を行った。
【0051】
その結果を、以下の表2にとりまとめた。
【0052】
【表2】
【0053】
表2に記載の結果から明らかなように、本発明の配合油を利用して得たトンカツの方が嗜好性に優れ、フライ食品の調理用途に好適に利用できることが確認できた。
【0054】
実施例3:唐辛子種子油の配合量の検討
▲1▼ 炒め飯[外観]
実施例Eの唐辛子種子油と市販の菜種油(菜種白絞油:吉原製油株式会社)とからなる配合油において、以下の表3に記載のように、唐辛子種子油の配合量を変えて調製した4種類の配合油を準備した。
【0055】
フライパンに、敷き油として各油(大さじ1杯)を敷き、そこに、400gの白飯、生卵1個、塩と胡椒を各少々加えて、加熱調理を行い、炒め飯を作った。
【0056】
このようにして調理した炒め飯に関して、熟練したパネラー14名によってそれらの色調について官能評価(選択法)を行った。 その結果、表3に示したように、唐辛子種子油の配合量を5重量%としたときに、大半のパネラーが、その色調を好ましいと判断した。 これは、唐辛子種子油を配合してなる配合油が、特有の黄色彩を呈しており、これが炒め飯の外観を引き立たせたものと考えられる。
【0057】
【表3】
【0058】
▲2▼ 炒め飯[辛味と嗜好性]
実施例Eの唐辛子種子油と市販の菜種油(菜種白絞油:吉原製油株式会社)とからなる配合油において、以下の表4に記載のように、唐辛子種子油の配合量を変えて調製した5種類の配合油を準備した。
【0059】
フライパンに、敷き油として各油(大さじ1杯)を敷き、そこに、400gの白飯、生卵1個、塩、胡椒、それにケチャップを各少々加えて、加熱調理を行い、炒め飯を作った。
【0060】
このようにして調理した炒め飯に関して、熟練したパネラー13名によってそれらの辛味と嗜好性について官能評価(選択法)を行った。 その結果、表4に示したように、唐辛子種子油の配合量を5重量%以上、特に、5〜20重量%としたときに、大半のパネラーが、適度の辛味を認識し、また、嗜好性を好ましいと判定した。 また、辛味の強弱には個人差があるものの、辛味が認識される炒め飯が有意に好まれていることが判明した。
【0061】
【表4】
【0062】
▲3▼ トンカツ[外観]
実施例Eの唐辛子種子油と市販の菜種油(菜種白絞油:吉原製油株式会社)とからなる配合油において、以下の表5に記載のように、唐辛子種子油の配合量を変えて調製した5種類の配合油を準備した。
【0063】
100gの豚肉を、打ち粉、生卵(全卵量)、パン粉の順番に付け、それらを加熱された各油(170℃)で、5分間フライ調理して、トンカツを作った。
【0064】
このようにして調理したトンカツに関して、熟練したパネラー12名によってそれらの色調について官能評価(選択法)を行った。 その結果、表5に示したように、唐辛子種子油を配合した配合油を用いた事例について、すべてのパネラーが、その色調を好ましいと判断した。 これは、唐辛子種子油を配合した配合油を用いて得られるトンカツでは、衣に特有の黄色彩が付いており、これがトンカツの外観を引き立たせたものと考えられる。
【0065】
【表5】
【0066】
▲4▼ トンカツ[辛味と嗜好性]
実施例Eの唐辛子種子油と市販の菜種油(菜種白絞油:吉原製油株式会社)とからなる配合油において、以下の表6に記載のように、唐辛子種子油の配合量を変えて調製した5種類の配合油を準備した。
【0067】
100gの豚肉を、打ち粉、生卵(全卵量)、パン粉の順番に付け、それらを加熱された各油(170℃)で、5分間フライ調理して、トンカツを作った。
【0068】
このようにして調理したトンカツに関して、熟練したパネラー12名によってそれらの辛味と嗜好性について官能評価(選択法)を行った。 その結果、表6に示したように、唐辛子種子油を配合した配合油を利用した事例において、すべてのパネラーが、適度の辛味を認識し、また、嗜好性を好ましいと判定した。 また、辛味の強弱には個人差があるものの、辛味が認識されるトンカツが有意に好まれていることが判明した。
【0069】
【表6】
【0070】
実施例4:風味油
実施例Eの唐辛子種子油と市販の菜種油(菜種白絞油:吉原製油株式会社)とを、20重量%:80重量%の割合で混合してなる配合油200gを得た。 この配合油を、105℃にまで加熱し、そこに刻みニンニク(2mm角)30gを加えた。 これを攪拌器で攪拌しながら、約105℃の温度を、90分間維持した。 その後、130℃にまで昇温して、さらに10分間加熱することで、本発明の風味油を得た。
【0071】
この風味油を官能的に評価したところ、良好なガーリック風味と適度の唐辛子の辛味が確認され、また、唐辛子種子に由来する鮮やかな赤色が明確に残っていた。
【0072】
実施例5:調味料
▲1▼ マヨネーズ
表7に記載の材料を準備した。 そして、まず、卵黄、食酢、調味料等の水相材料を混合して、次いで、ホモミキサー(HV−M:特殊機化工業)を用いて、1000rpmで、5分間攪拌した。 得られた水相原料混合物に、低温耐性菜種油(菜種サラダ油:吉原製油株式会社)または配合油(菜種油と実施例Eの唐辛子種子油との配合油)を徐々に添加して後、ホモミキサーで、5000rpmで、20分間攪拌した。 このようにして、マヨネーズを得た。
【0073】
このようにして調製したマヨネーズに関して、熟練したパネラー13名によってそれらの辛味と嗜好性について官能評価を行った。 その結果、表7に示したように、唐辛子種子油を配合したマヨネーズにおいて、ほぼ全員のパネラーが、適度の辛味を認識し、また、嗜好性を好ましいと判定した。
【0074】
【表7】
【0075】
▲2▼ 中華風ドレッシング
表8に記載の材料を準備した。 そして、まず、食酢、醤油等の水相材料を充分に混合し、これに、低温耐性菜種油(菜種サラダ油:吉原製油株式会社)または配合油(菜種油+実施例Eの唐辛子種子油)を徐々に添加して、中華風ドレッシングを得た。
【0076】
このようにして調製した中華風ドレッシングに関して、熟練したパネラー13名によって、それらの辛味と嗜好性について官能評価を行った。 その結果、表8に示したように、唐辛子種子油を配合したドレッシングにおいて、大半のパネラーが、適度の辛味を認識し、また、嗜好性を好ましいものと判定した。
【0077】
【表8】
【0078】
実施例6:ベーカリー食品
表9に記載の材料を準備した。 そして、これら材料一式すべてを、自動パン焼き器(ナショナル自動ホームベーカリー;SD−BT152)に投入し、同機器を稼動させて、パンが焼き上がるのを待った。
【0079】
焼き上がったパンを試食してみたところ、唐辛子種子油を利用したパンにおいて適度の辛味が認められ、従来品のパンよりも美味しく食すことができた。 また、COLOR READER CR−13(MINOLTA社)を用いて色度を求めたところ、唐辛子種子油を利用したパンでは、従来の材料を用いたパンよりも、赤色彩と黄色彩がやや強く発現していることが客観的に確認された。
【0080】
【表9】
【0081】
【発明の効果】
このように本発明によると、所期の目的であった、不快な風味が解消され、しかも多用途に適用可能な新規の唐辛子種子油が実現される。
【0082】
また、本発明の唐辛子種子油およびそれを用いた配合油は、食品の調理に適するのみならず、良好な風味を呈する食品をも提供するのである。
【0083】
さらに、本発明の唐辛子種子油を麺類やベーカリー食品の原材料として利用することで、これら食品に良好な風味と食味を付与することも可能となるのである。
【発明の属する技術分野】
本発明は、不快な風味が解消され、しかも多用途に適用可能な新規の唐辛子種子油に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
唐辛子(トウガラシ)とは、中南米を原産地とする多年生低木に属する植物であり、現在では、温帯において一年生草木として栽培されるトウガラシ(Capsicum annuum L)またはその変種のナス科の果実をも含めて唐辛子と称されている。
【0003】
この唐辛子は、辛味の有無に基いて、鷹の爪、八房、伏見などの辛味のある唐辛子と、ピーマンやパプリカなどの辛味のない唐辛子とに大別される。 これら唐辛子の辛味とは、唐辛子に含まれるカプサイシノイドによって発現されるヒトの生理現象である。 これらカプサイシノイドの中でも、カプサイシン、ジヒドロカプサイシン、ノルジヒドロカプサイシン、ホモカプサイシン、それにホモジヒドロカプサイシンの5種類の物質が、唐辛子の辛味の構成に寄与していると言われている。 また、これまでのところ、これらカプサイシノイドが、体温上昇および発汗を促して脂肪の燃焼を助長したり、胃を刺激して食欲を増進させたり、あるいは、塩分が薄くとも辛味によって食品の薄味をマスキングできるなどの有用な作用を呈することが知られている。
【0004】
また、辛さ成分のみならず、唐辛子の実の部分には、カロテン、ビタミンB1、B2を多く含み、また、葉の部分には、カロテン、ビタミンC、カルシウム、鉄、カリウムを豊富に含んでおり、栄養バランスの面でも優れた食材なのである。
【0005】
加えて、一般的に、カプサイシノイドを加熱処理しても、その成分構成に変化をきたさないことから、焼く、煮る、炒めるなどのいずれの加熱調理法にも適用できて、多彩な食品への取り込みが可能であることから、現在では、健康に対する良好なイメージが消費者に定着しつつある。
【0006】
ところで、唐辛子の食材としてのかような価値に着目して、従来より種々の形態で唐辛子の利用が行われてきている。 特に、唐辛子から色素や唐辛子エキスを取得する際に副産物として産出される唐辛子種子を、圧搾および抽出して得られる唐辛子種子油が、従来より、特に中国において食用に供されている。 しかし、この唐辛子種子油は、唐辛子種子由来の特有の青臭い風味(生臭さ)を呈しており、この風味は、日本人にとっては不快臭に他ならず、我が国の消費者には受け入れ難いものであった。 これら不快臭を除去するための精製手段についてこれまで様々な検討が試みられているが、従来の精製方法によれば、不快臭のみならず辛味成分までが除去されたり、あるいは唐辛子種子油に特有の鮮明な赤彩色が変色してしまうなどの、商品価値の低下に直結する不都合を招いていたのが実情である。 結局のところ、唐辛子種子油の不快臭のみを選択的に除去する手段を未だ見出せない状況にあり、当該技術分野にあっては、かような選択的除去手段の出現が待望されているのである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、従来の唐辛子種子油において認識されていた上掲の問題点に鑑みて鋭意研究を行った。 特に、その脱臭方法の改良の研究において、唐辛子種子油に特有の不快臭のみを選択的に除去する条件にたどり着いて、本発明を完成するに至ったのである。
【0008】
すなわち、本発明の要旨とするところは、唐辛子種子を圧搾して得た搾油を、蒸留手段に適用してその臭気成分を除去して得られる唐辛子種子油にある。 そして、当該蒸留手段としては、好ましくは、真空度約10 torr以下、吹き込み水蒸気量約10%以下、約120℃〜約200℃、約10分〜約60分間の蒸留条件下で実施される減圧水蒸気蒸留が好適に利用可能である。 また、減圧水蒸気蒸留以外にも、分子蒸留など、当該技術分野で周知の脱臭手段も当然に利用可能である。
【0009】
また、本発明の唐辛子種子油のヨウ素価は約134±約20で、かつ約100ppm以上のカプサイシノイドと約1重量%以下のトランス酸を含有している。
【0010】
本発明の構成によって、唐辛子種子油の品質に直接的な影響を及ぼす唐辛子種子由来の辛味成分と、その鮮明な赤彩色を喪失せずに、唐辛子種子油に特有の不快臭が除去された唐辛子種子油が得られる。
【0011】
また、本発明の唐辛子種子油と従来の食用油とを配合することで、風味が良好で、しかも多用途に適用可能な配合油も得られる。
【0012】
また、本発明の唐辛子種子油と香料および/または香辛料の抽出成分とを配合することで、任意の香味が付与された風味油も得られる。
【0013】
また、本発明の唐辛子種子油が配合されてなる調合油と、この調合油で抽出した風味成分および/または香味成分とを配合することで、風味/香味に富んだ風味油を得ることもできる。
【0014】
さらに、本発明の唐辛子種子油を、マヨネーズやドレッシングの他、麺類やベーカリー食品の原材料として利用することで、良好な風味と食味を呈する麺類やベーカリー食品が提供される。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0016】
本発明の唐辛子種子を得るために用いる唐辛子とは、内国産および外国産を問わずに、いずれの唐辛子でも使用可能である。
【0017】
唐辛子を出発原料として、本発明の唐辛子種子油は製造される。
【0018】
最初に、製油工場に運び込まれた唐辛子に混在する異種植物の種子に茎や葉、傷の付いた種子、未熟種子などを機械的に、または手作業で除去して、唐辛子の精選(選別)を行う。
【0019】
次に、精選された唐辛子を、乾燥および粗砕の工程に適用する。
【0020】
唐辛子の乾燥とは、唐辛子の水分調整に他ならず、唐辛子の実からの唐辛子色素の抽出および種子からの油の抽出を効果的に行う上で重要な工程である。 とりわけ、水分量を13%以下、好ましくは、5〜10%程度に調整することで、高品質の圧搾油を高収率で得ることができる。
【0021】
水分調整を行って得られたこれら唐辛子を、粗砕工程に適用する。 この粗砕工程とは、唐辛子を実と種子に分離するために、唐辛子を物理的に圧壊または裂開するための工程であって、各種粉砕機、好ましくは、粗割ロール(クラッキンロール:Cracking Roll)と呼ばれるスジロール(一段式のペアロール)等の粉砕機を用いて唐辛子を4〜8分割程度に砕く。
【0022】
次いで、粗砕された唐辛子をその種子と実に分別する。 分別方法としては、フルイ(篩)分け、比重差を利用する風別などの方法があり、それぞれを単独で、または適宜組み合わせて利用することができる。 通常、唐辛子の実は色素の抽出に供され、そして、種子部分のみが搾油工程へ送られる。
【0023】
勿論、前述の一連の機械的手段による唐辛子種子の精選・分別に代えて、天日干しした唐辛子から手作業で唐辛子をその種子と実に分別する、との旧来の手法によることも当然に可能である。
【0024】
次いで、精選・分別された唐辛子種子を、圧搾して圧搾油を得る。
【0025】
圧搾(採油)方法には、従来より公知の物理的な圧搾方法(バッチ式または連続式圧搾方法)と、ヘキサン(n−ヘキサン)等の有機溶剤を用いた化学抽出法とがあり、これらいずれの方法も本発明にあっては利用できるが、取得される油の品質や経済性を考慮した場合、前者の物理的な圧搾方法によるのが好適である。
【0026】
物理的圧搾を経て得られた圧搾油には、圧搾時に混入した微粉状脱脂粕や水分、さらに水和して析出しはじめた水和性ガム質などの、非油溶性の夾雑者が混在しているので、濾過または遠心分離などの操作を行って、これら不純物を除去することで粗油が取得できる。
【0027】
また、唐辛子種子油の不快臭を除去するために採用すべき蒸留のための条件、とりわけ、減圧水蒸気蒸留のための条件としては、唐辛子種子由来の辛味成分と、その鮮明な赤彩色を喪失させない観点からして、約10 torr以下の真空度、約10%以下の吹き込み水蒸気量において、約100℃〜約200℃、好ましくは、約120℃〜約200℃にて、約10分〜約60分間、最も好ましくは、約150℃にて、約30分間の条件とする。
【0028】
このような条件下での蒸留工程を経ることで、ヨウ素価が約134±約20、好ましくは約134±約5で、カプサイシノイド含量が約100ppm以上、好ましくは約300ppm〜約500ppm、そして、トランス酸含量が約1重量%以下、好ましくは約0.1重量%以下である唐辛子種子油が得られる。
【0029】
このようにして得られた本発明の唐辛子種子油は、缶、ガラス瓶、プラスチック、紙などの公知の収納容器に充填・収容される。
【0030】
また、本発明の唐辛子種子油と従来の食用油とを配合することで、風味が良好で、しかも多用途に適用可能な配合油も得られる。
【0031】
また、本発明の唐辛子種子油と香料および/または香辛料の抽出成分とを配合することで、任意の香味が付与された風味油も得られる。
【0032】
また、本発明の唐辛子種子油が配合されてなる調合油と、この調合油で抽出した風味成分および/または香味成分とを配合することで、風味/香味に富んだ風味油を得ることもできる。
【0033】
さらに、本発明の唐辛子種子油またはこれを含む配合油を用いて食材の調理を行うことで、良好な風味と食味を呈する食品が得られる。 例えば、本発明の唐辛子種子油を用いて、フライ調理、炒め調理、焼き調理することで、風味良好な食品を提供することができる。 かような食品として、コロッケ、天ぷら、唐揚げ、豚カツ、ドーナツ、揚げ菓子、炒飯、たこ焼などがある。
【0034】
また、本発明の唐辛子種子油またはこれを含む配合油を、マヨネーズやドレッシングなどの調味料のベースオイルとすることで、調味料に良好な風味と食味を付与することができる。
【0035】
さらに、本発明の唐辛子種子油を麺類やベーカリー食品の原材料として利用することで、これら食品に良好な風味と食味を付与することも可能となる。
【0036】
【実施例】
以下に、本願発明の実施例を具体的に説明するが、本願発明はこれら実施例の開示によって限定的に解釈されるべきものではない。
【0037】
実施例1:唐辛子種子油の製造条件の検討
唐辛子種子油[粗油:唐辛子搾油(唐辛子種子油:住友商事ケミカル株式会社)]を、120℃、150℃または200℃に温度設定された蒸留装置(脱臭器)に入れて、そこで10、30または60分間蒸留して本願発明の唐辛子種子油(実施例A〜I)を得た。
【0038】
また、粗油(カプサイシン含量370ppm)を、従来の蒸留条件(260℃、60分)で脱臭したものを、比較例の唐辛子種子油とした。 なお、粗油のカプサイシン含量は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって決定して得た数値である。
【0039】
実施例A〜Iの唐辛子種子油、比較例の唐辛子種子油および前述の粗油に関して、トランス酸含量、色度および風味についての検定を行った。
【0040】
トランス酸含量は、キャヒ゜ラリーGC(島津GC17A, FID検出)を用いたガスクロマトグラフィー(GLC)法によって、その含量(重量%)を決定した。
【0041】
また、色度は、各被験油をヘキサンで2倍希釈(容積比)したものを、基準油脂分析法 (2.2.1.1−色(ロビボンド法)、基準油脂分析試験法(I)、日本油化学会制定、1996年版、社団法人日本油化学会)に従って、ロビボンド比色計により測定し、同等の標準色ガラスの値を割り出して決定した。
【0042】
そして、実施例A〜Iの唐辛子種子油、比較例の唐辛子種子油および粗油の風味、すなわち、異味異臭の有無や唐辛子種子特有の不快臭の有無を確認した。
【0043】
これら分析・評価項目に関する結果を、以下の表1にまとめた。
【0044】
【表1】
【0045】
なお、実施例Eの唐辛子種子油と市販の菜種油(菜種白絞油:吉原製油株式会社)とを、10重量%:90重量%の割合で混合してなる配合油について、熟練したパネラー12名によって官能試験を行ったところ、パネラー全員から「辛味を感じる」旨の回答を得た。
【0046】
表1に記載の結果から明らかなように、本発明の唐辛子種子油は、唐辛子種子由来の辛味成分と、その鮮明な赤彩色を喪失せずに、異味異臭や唐辛子種子油に特有の不快臭が除去されていたことが確認された。 これはすなわち、本願発明の唐辛子種子油の製造条件、特に、粗油の蒸留条件として、約120℃〜約200℃、約10分〜約60分間の条件が好適であることを指し示すものにほかならない。
【0047】
実施例2:唐辛子種子油を用いた調合油の製造およびその性状の検討
実施例Eの唐辛子種子油と市販の菜種油(菜種白絞油:吉原製油株式会社)とを、10重量%:90重量%の割合で混合してなる実施例2の配合油を得た。
【0048】
同様に、実施例Eの粗油と市販の菜種油(菜種白絞油:吉原製油株式会社)とを、10重量%:90重量%の割合で混合してなる比較例2の配合油を得た。
【0049】
これら配合油を用いて、トンカツを調理した。 具体的には、100gの豚肉を、打ち粉、生卵(全卵量)、パン粉の順序に付け、それらを加熱された各油(170℃)で、5分間フライ調理した。
【0050】
各油で揚げ調理された豚カツに関して、熟練したパネラーによって、3点識別試験法および3点嗜好試験法によって、官能評価を行った。
【0051】
その結果を、以下の表2にとりまとめた。
【0052】
【表2】
【0053】
表2に記載の結果から明らかなように、本発明の配合油を利用して得たトンカツの方が嗜好性に優れ、フライ食品の調理用途に好適に利用できることが確認できた。
【0054】
実施例3:唐辛子種子油の配合量の検討
▲1▼ 炒め飯[外観]
実施例Eの唐辛子種子油と市販の菜種油(菜種白絞油:吉原製油株式会社)とからなる配合油において、以下の表3に記載のように、唐辛子種子油の配合量を変えて調製した4種類の配合油を準備した。
【0055】
フライパンに、敷き油として各油(大さじ1杯)を敷き、そこに、400gの白飯、生卵1個、塩と胡椒を各少々加えて、加熱調理を行い、炒め飯を作った。
【0056】
このようにして調理した炒め飯に関して、熟練したパネラー14名によってそれらの色調について官能評価(選択法)を行った。 その結果、表3に示したように、唐辛子種子油の配合量を5重量%としたときに、大半のパネラーが、その色調を好ましいと判断した。 これは、唐辛子種子油を配合してなる配合油が、特有の黄色彩を呈しており、これが炒め飯の外観を引き立たせたものと考えられる。
【0057】
【表3】
【0058】
▲2▼ 炒め飯[辛味と嗜好性]
実施例Eの唐辛子種子油と市販の菜種油(菜種白絞油:吉原製油株式会社)とからなる配合油において、以下の表4に記載のように、唐辛子種子油の配合量を変えて調製した5種類の配合油を準備した。
【0059】
フライパンに、敷き油として各油(大さじ1杯)を敷き、そこに、400gの白飯、生卵1個、塩、胡椒、それにケチャップを各少々加えて、加熱調理を行い、炒め飯を作った。
【0060】
このようにして調理した炒め飯に関して、熟練したパネラー13名によってそれらの辛味と嗜好性について官能評価(選択法)を行った。 その結果、表4に示したように、唐辛子種子油の配合量を5重量%以上、特に、5〜20重量%としたときに、大半のパネラーが、適度の辛味を認識し、また、嗜好性を好ましいと判定した。 また、辛味の強弱には個人差があるものの、辛味が認識される炒め飯が有意に好まれていることが判明した。
【0061】
【表4】
【0062】
▲3▼ トンカツ[外観]
実施例Eの唐辛子種子油と市販の菜種油(菜種白絞油:吉原製油株式会社)とからなる配合油において、以下の表5に記載のように、唐辛子種子油の配合量を変えて調製した5種類の配合油を準備した。
【0063】
100gの豚肉を、打ち粉、生卵(全卵量)、パン粉の順番に付け、それらを加熱された各油(170℃)で、5分間フライ調理して、トンカツを作った。
【0064】
このようにして調理したトンカツに関して、熟練したパネラー12名によってそれらの色調について官能評価(選択法)を行った。 その結果、表5に示したように、唐辛子種子油を配合した配合油を用いた事例について、すべてのパネラーが、その色調を好ましいと判断した。 これは、唐辛子種子油を配合した配合油を用いて得られるトンカツでは、衣に特有の黄色彩が付いており、これがトンカツの外観を引き立たせたものと考えられる。
【0065】
【表5】
【0066】
▲4▼ トンカツ[辛味と嗜好性]
実施例Eの唐辛子種子油と市販の菜種油(菜種白絞油:吉原製油株式会社)とからなる配合油において、以下の表6に記載のように、唐辛子種子油の配合量を変えて調製した5種類の配合油を準備した。
【0067】
100gの豚肉を、打ち粉、生卵(全卵量)、パン粉の順番に付け、それらを加熱された各油(170℃)で、5分間フライ調理して、トンカツを作った。
【0068】
このようにして調理したトンカツに関して、熟練したパネラー12名によってそれらの辛味と嗜好性について官能評価(選択法)を行った。 その結果、表6に示したように、唐辛子種子油を配合した配合油を利用した事例において、すべてのパネラーが、適度の辛味を認識し、また、嗜好性を好ましいと判定した。 また、辛味の強弱には個人差があるものの、辛味が認識されるトンカツが有意に好まれていることが判明した。
【0069】
【表6】
【0070】
実施例4:風味油
実施例Eの唐辛子種子油と市販の菜種油(菜種白絞油:吉原製油株式会社)とを、20重量%:80重量%の割合で混合してなる配合油200gを得た。 この配合油を、105℃にまで加熱し、そこに刻みニンニク(2mm角)30gを加えた。 これを攪拌器で攪拌しながら、約105℃の温度を、90分間維持した。 その後、130℃にまで昇温して、さらに10分間加熱することで、本発明の風味油を得た。
【0071】
この風味油を官能的に評価したところ、良好なガーリック風味と適度の唐辛子の辛味が確認され、また、唐辛子種子に由来する鮮やかな赤色が明確に残っていた。
【0072】
実施例5:調味料
▲1▼ マヨネーズ
表7に記載の材料を準備した。 そして、まず、卵黄、食酢、調味料等の水相材料を混合して、次いで、ホモミキサー(HV−M:特殊機化工業)を用いて、1000rpmで、5分間攪拌した。 得られた水相原料混合物に、低温耐性菜種油(菜種サラダ油:吉原製油株式会社)または配合油(菜種油と実施例Eの唐辛子種子油との配合油)を徐々に添加して後、ホモミキサーで、5000rpmで、20分間攪拌した。 このようにして、マヨネーズを得た。
【0073】
このようにして調製したマヨネーズに関して、熟練したパネラー13名によってそれらの辛味と嗜好性について官能評価を行った。 その結果、表7に示したように、唐辛子種子油を配合したマヨネーズにおいて、ほぼ全員のパネラーが、適度の辛味を認識し、また、嗜好性を好ましいと判定した。
【0074】
【表7】
【0075】
▲2▼ 中華風ドレッシング
表8に記載の材料を準備した。 そして、まず、食酢、醤油等の水相材料を充分に混合し、これに、低温耐性菜種油(菜種サラダ油:吉原製油株式会社)または配合油(菜種油+実施例Eの唐辛子種子油)を徐々に添加して、中華風ドレッシングを得た。
【0076】
このようにして調製した中華風ドレッシングに関して、熟練したパネラー13名によって、それらの辛味と嗜好性について官能評価を行った。 その結果、表8に示したように、唐辛子種子油を配合したドレッシングにおいて、大半のパネラーが、適度の辛味を認識し、また、嗜好性を好ましいものと判定した。
【0077】
【表8】
【0078】
実施例6:ベーカリー食品
表9に記載の材料を準備した。 そして、これら材料一式すべてを、自動パン焼き器(ナショナル自動ホームベーカリー;SD−BT152)に投入し、同機器を稼動させて、パンが焼き上がるのを待った。
【0079】
焼き上がったパンを試食してみたところ、唐辛子種子油を利用したパンにおいて適度の辛味が認められ、従来品のパンよりも美味しく食すことができた。 また、COLOR READER CR−13(MINOLTA社)を用いて色度を求めたところ、唐辛子種子油を利用したパンでは、従来の材料を用いたパンよりも、赤色彩と黄色彩がやや強く発現していることが客観的に確認された。
【0080】
【表9】
【0081】
【発明の効果】
このように本発明によると、所期の目的であった、不快な風味が解消され、しかも多用途に適用可能な新規の唐辛子種子油が実現される。
【0082】
また、本発明の唐辛子種子油およびそれを用いた配合油は、食品の調理に適するのみならず、良好な風味を呈する食品をも提供するのである。
【0083】
さらに、本発明の唐辛子種子油を麺類やベーカリー食品の原材料として利用することで、これら食品に良好な風味と食味を付与することも可能となるのである。
Claims (14)
- 唐辛子種子を圧搾して得た搾油を、蒸留手段に適用してその臭気成分を除去して得られる、ことを特徴とする唐辛子種子油。
- 前記蒸留手段が、真空度10 torr以下、吹き込み水蒸気量10%以下、120℃〜200℃、10分〜60分間の蒸留条件下で実施される減圧水蒸気蒸留である請求項1に記載の唐辛子種子油。
- そのヨウ素価が134±20であり、かつそのカプサイシノイド含量が100ppm以上であり、かつそのトランス酸含量が1重量%以下である請求項1または2に記載の唐辛子種子油。
- 請求項1乃至3のいずれかに記載の唐辛子種子油を1重量%以上の重量比率で配合してなる調合油。
- 請求項4に記載の調合油を主成分とするフライ用油脂。
- 請求項5に記載のフライ用油脂で食材をフライ処理して得られたことを特徴とするフライ食品。
- 請求項1乃至3のいずれかに記載の唐辛子種子油が1重量%以上の重量比率で配合され、かつ香料および/または香辛料の抽出成分をさらに含む風味油。
- 請求項1乃至3のいずれかに記載の唐辛子種子油が1重量%以上の重量比率で配合してなる調合油と、当該調合油で抽出した風味成分および/または香味成分とを含む風味油。
- 請求項1乃至3のいずれかに記載の唐辛子種子油を利用して調製された調味料。
- 前記調味料が、マヨネーズまたはドレッシングである請求項9に記載の調味料。
- 前記調味料に含有される油脂の0.1重量%〜50重量%を、請求項1乃至3のいずれかに記載の唐辛子種子油で代替してなる請求項10に記載の調味料。
- 請求項1乃至3のいずれかに記載の唐辛子種子油を利用して調製された食品。
- 前記食品が、麺類またはベーカリー食品である請求項12に記載の食品。
- 請求項1乃至3のいずれかに記載の唐辛子種子油の量が、前記麺類またはベーカリー食品の原料粉の30重量%以下である請求項13に記載の食品。
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