JP2004156059A - プラズマ処理方法 - Google Patents

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Hitoshi Murayama
仁 村山
Daisuke Tazawa
大介 田澤
Hiroyuki Katagiri
宏之 片桐
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Abstract

【課題】複数の高周波電力供給系から周波数の異なる複数の高周波電力を反応容器中に導入するプラズマ処理方法において、各電力供給系に設けられた整合器によるインピーダンス整合が適正に、安定して達成され、その結果プラズマ処理特性の向上、プラズマ処理特性の再現性向上、更にはプラズマ処理コストの低減が可能なプラズマ処理方法、プラズマ処理装置を提供する。
【解決手段】3ポート・サーキュレーター101,111と高周波電源403,415の間に設けられた入射電力検出手段102,112から出力される信号、及び、3ポート・サーキュレーター101,111の反射電力出力ポートとそれに接続された無反射終端104,114との間に設けられた反射電力検出手段103,113から出力される信号とに基づいてマッチングボックス404,416におけるインピーダンス調整を行う。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は半導体デバイス、電子写真用感光体、画像入力用ラインセンサー、撮影デバイス、光起電力デバイス等における堆積膜形成やエッチング等に用いられる高周波電力を用いたプラズマ処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、半導体デバイス、電子写真用感光体、画像入力用ラインセンサー、撮影デバイス、光起電力デバイス、その他各種エレクトロニクス素子、光学素子に用いる堆積膜形成方法として、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、熱CVD法、光CVD法、プラズマCVD法等、多数知られており、そのための装置も実用に付されている。
【0003】
中でもプラズマCVD法、すなわち、原料ガスを直流または高周波あるいはマイクロ波グロー放電により分解し、基板上に薄膜状の堆積膜を形成する方法は好適なものとして、電子写真用水素化アモルファスシリコン(以下、「a−Si:H」と表記する)堆積膜の形成等、現在実用化が非常に進んでおり、そのための装置も各種提案されている。
【0004】
そして、更には近年、プラズマCVD法の中でもVHF帯の高周波電力を用いたVHFプラズマCVD(以後「VHF−PCVD」と略記する)法が注目を浴びており、これを用いた各種堆積膜形成の開発も積極的に進められている。これはVHF−PCVD法では膜堆積速度が速く、また高品質な堆積膜が得られるため、製品の低コスト化、高品質化を同時に達成し得るものと期待されるためである。例えば特開平6−287760号公報にはa−Si系電子写真用光受容部材形成に用いうる装置及び方法が開示されている。また、複数の電子写真用光受容部材を同時に形成でき、生産性の極めて高い図5に示すような堆積膜形成装置の開発も進められている。
【0005】
図5(a)は堆積膜形成装置の概略断面図、図5(b)は図5(a)中の切断線A−A’に沿う概略断面図である。反応容器301の側面には排気管311が一体的に形成され、排気管311の他端は不図示の排気装置に接続されている。堆積膜の形成される6本の円筒状基体305が反応容器301の中心部を取り囲み、かつ互いに平行になるように配置されている。各円筒状基体305は回転軸308によって保持され、発熱体307によって加熱されるようになっている。モータ309を駆動すると、減速ギア310を介して回転軸308が回転し、円筒状基体305がその筒内を通る中心軸の回りを自転するようになっている。
【0006】
6本の円筒状基体305により囲まれた成膜空間306には原料ガスが原料ガス供給手段312より供給される。VHF電力は高周波電源(VHF電源)303よりマッチングボックス304を経て高周波電極(カソード電極)302より成膜空間306に供給される。この際、回転軸308を通してアース電位に維持された円筒状基体305がアノード電極として作用する。
【0007】
このような装置を用いた堆積膜形成は概ね、以下のような手順により行なうことができる。
【0008】
まず、反応容器301内に円筒状基体305を設置し、不図示の排気装置により排気管311を通して反応容器301内を排気する。続いて、発熱体307により円筒状基体305を加熱し200℃〜300℃程度の所定の温度に制御する。
【0009】
円筒状基体305が所定の温度となったところで、原料ガス供給手段312を介して、原料ガスを反応容器301内に導入する。原料ガスの流量が設定流量に達し、また、反応容器301内の圧力が安定したのを確認した後、高周波電源303の出力を所定値に設定する。続いて、マッチングボックス304内の整合回路のインピーダンスを、高周波電源303の出力インピーダンスとマッチングボックス304の入口インピーダンスが同じになるように調整する。これによって、高周波電力は高周波電極302を介して効率良く反応容器301内に供給され、円筒状基体305で囲まれた成膜空間306にグロー放電が生起し、原料ガスは励起解離して円筒状基体305上に堆積膜が形成される。
【0010】
所望の膜厚の形成が行なわれた後、VHF電力の供給を止め、続いて原料ガスの供給を停止して堆積膜の形成を終える。同様の操作を複数回繰り返すことによって、所望の多層構造の光受容層が形成される。
【0011】
堆積膜形成中、回転軸308を介して円筒状基体305をモータ309により所定の速度で回転させることにより、円筒状基体表面全周にわたって堆積膜が形成される。
【0012】
このような堆積膜形成において、マッチングボックス304内の整合回路のインピーダンス調整は手動、あるいは自動で行われる。自動で行う場合、マッチングボックス304内の構成、及びその制御部は例えば図6に示すようになっている。整合回路201はマッチング可変コンデンサ202、チューニング可変コンデンサ203、およびコイル204からなり、また、整合回路201の入口において、電流検出素子205により高周波電流が検出され、電圧検出素子206により高周波電圧が検出される。電流検出素子205、電圧検出素子206の各出力は、制御部200内の位相差検出器207とインピーダンス検出器208に入力される。位相差検出器207では整合回路201の入口におけるインピーダンスの位相が検出され、インピーダンスの位相に応じた電圧をチューニング制御回路209に出力する。チューニング制御回路209では位相差検出器207より入力された電圧と基準電圧を比較し、その差に応じた電圧をチューニング可変コンデンサ203を駆動するモーター210に供給する。その結果、インピーダンスの位相が所定値、一般的には0となるようにモーター210によりチューニング可変コンデンサ203が調整される。一方、インピーダンス検出器208では整合回路201の入口におけるインピーダンスの絶対値が検出され、インピーダンスの絶対値に応じた電圧をマッチング制御回路211に出力する。マッチング制御回路211ではインピーダンス検出器208より入力された電圧と基準電圧を比較し、その差に応じた電圧をマッチング可変コンデンサ202を駆動するモーター212に供給する。その結果、インピーダンスの絶対値が所定値、一般的には50Ωとなるようにモーター212によりマッチング可変コンデンサ202が調整される。このような構成により、インピーダンス調整は自動的に行われ、反応容器301内に効率良く高周波電力が供給される。
【0013】
このようなプラズマ処理方法及び装置により、良好な堆積膜形成がなされるが、更なる真空処理特性の向上に向けて、複数の異なる周波数の電力を反応容器中に同時に供給する技術の開発も進められている。例えば特開平11−191554号公報には、300MHz〜1000MHzの第1の高周波電力と、50kHz〜30MHzの第2の高周波電力を同一電極に同時に供給する技術が開示されており、この技術により活性種制御効果が増大し、高精度なプラズマ処理が可能になるとされている。また、特開平7−74159号公報には60MHzの高周波電力と400kHzの低周波電力を重畳して同一電極に供給する技術が開示されており、この技術によりセルフバイアスを安定して制御でき、エッチングレートを向上しかつパーティクル発生を低減できるとされている。このように複数の高周波電力を反応容器中に供給するには、各々の高周波電力供給系に各々独立の高周波整合器を設け、各々の高周波電力供給系ごとに高周波整合器のインピーダンスを調整することで反応容器内に効率良く高周波電力を供給する。具体的なインピーダンス調整の仕方は単一の高周波電力を供給する場合と同様にしてなされる。
【0014】
このように、複数の異なる周波数の電力を反応容器中に同時に供給する真空処理方法は使用する周波数の関係や電力比率、あるいは具体的な真空処理内容に応じて様々な作用をもたらし、その作用を有効に利用することで真空処理特性を向上させるために大きな役割を果たすものと期待されている。
【0015】
図7はこのような周波数の異なる複数の高周波電力を反応容器中に同時に供給可能な真空処理装置の一例を示した概略図である。図7(a)はこの真空処理装置の概略断面図、図7(b)は図7(a)中の切断線A−A’に沿う概略断面図である。
【0016】
反応容器401の下部には排気管411が形成され、排気管411の他端は不図示の排気装置に接続されている。堆積膜の形成される6本の円筒状基体405が反応容器401の中心部を取り囲み、かつ互いに平行になるように配置されている。各円筒状基体405は回転軸408によって保持され、発熱体407によって加熱されるようになっている。不図示のモータを駆動することにより、不図示のギアを介して回転軸408が回転し、円筒状基体405がその長さ方向中心軸の回りを自転するようになっている。
【0017】
原料ガスは原料ガス供給手段412より反応容器401中に供給される。高周波電力は第1の高周波電源403より第1のマッチングボックス404を経て内部高周波電極402より反応容器401中に供給され、また、第2の高周波電源415より第2のマッチングボックス416を経て外部高周波電極414より反応容器401中に供給される。
【0018】
このような装置を用いた堆積膜形成は概ね、以下のような手順により行なうことができる。
【0019】
まず、反応容器401内に円筒状基体405を設置し、不図示の排気装置により排気管411を通して反応容器401内を排気する。続いて、発熱体407により円筒状基体405を加熱し200℃〜300℃程度の所定の温度に制御する。
【0020】
円筒状基体405が所定の温度となったところで、原料ガス供給手段412を介して、原料ガスを反応容器401内に導入する。原料ガスの流量が設定流量となり、また、反応容器401内の圧力が安定したのを確認した後、第1の高周波電源403の出力を所定値に設定し、これと同時並行的に第2の高周波電源415の出力を所定値に設定する。続いて、第1のマッチングボックス404内の整合回路のインピーダンスを、第1の高周波電源403の出力インピーダンスと第1のマッチングボックス404の入口インピーダンスが同じになるように調整する。これと同時並行的に、第2のマッチングボックス416内の整合回路のインピーダンスを、第2の高周波電源415の出力インピーダンスと第2のマッチングボックス416の入口インピーダンスが同じになるように調整する。
【0021】
これによって、高周波電力は内部高周波電極402、及び外部高周波電極414を介して効率良く反応容器401内に供給され、反応容器401内にグロー放電が生起し、原料ガスは励起解離して円筒状基体405上に堆積膜が形成される。
【0022】
所望の膜厚の形成が行なわれた後、高周波電力の供給を止め、続いて原料ガスの供給を停止して堆積膜の形成を終える。同様の操作を複数回繰り返すことによって、所望の多層構造の光受容層が形成される。
【0023】
堆積膜形成中、回転軸408を介して円筒状基体405を不図示のモータにより所定の速度で回転させることにより、円筒状基体表面全周にわたって均一な堆積膜が形成される。
【0024】
【特許文献1】
特開平6−287760号
【特許文献2】
特開平11−191554号
【特許文献3】
特開平7−74159号
【0025】
【発明が解決しようとする課題】
このようなプラズマ処理特性の向上、プラズマ処理コストの低減を達成していく上で、目的とする特性のプラズマを安定して、再現性よく生成する技術が重要となってくる。特に複数の異なる周波数の高周波電力を反応容器中に同時に供給する真空処理方法は、それによって得られる効果は大きいものの一般的にその制御が難しく、目的とする特性のプラズマを安定して、再現性よく生成する上でさまざまな改善の余地が残されているのが現状である。
【0026】
その1つとして、整合器のインピーダンス調整法が挙げられる。複数の異なる周波数の電力を反応容器中に同時に供給する場合、複数の高周波電力が干渉し、前述したような従来のインピーダンス調整法ではその干渉の影響で正確なインピーダンス調整が行えない場合が生じる。例えば、第1の高周波電力と、第2の高周波電力を同時に反応容器に供給する場合、第1の高周波電力は反応容器中を伝播して第2の高周波電力供給系に入り込んでしまう。その結果、第2の高周波電力供給系では本来存在しないはずの第1の高周波電力が反射波として存在するかのような状態となってしまい、パワーメーターや位相検出器、インピーダンス検出器の出力が整合状態を正確に反映しなくなってしまう場合がある。また、第1の高周波電力供給系においてもこれと同様の現象が生じ、整合状態が正確に把握できない状況となってしまう場合がある。そして、このような状況は他方の電力供給系から出力される電力の状態、即ち、電力値やその位相等によって影響度が異なるため、例えば片方の電力供給系を一定の状態に保っていても、他方の電力供給系の状態を変化させると、即ち、整合器のインピーダンスを変化させると、あたかも負荷の状態が変化したかのようにみえてしまい、整合状態が変わっていないにもかかわらず負荷状態が変化したと判断し、誤ったインピーダンス調整を行ってしまう。この結果、場合によっては真の整合ポイントとは大きく異なったインピーダンスに調整してしまい、プラズマの不安定さを引き起こす場合が生じる。
【0027】
このような問題を回避する手段として各々の電力供給系にハイパスフィルター、ローパスフィルターを設置することが一般的になされるが、本発明者らの検討によればこのようなフィルターによる対策はある程度の効果は得られるものの、その効果は必ずしも十分ではなく、ある程度の干渉の影響が残ってしまう場合が多い。特に、比較的周波数の近い複数の高周波電力を用いる場合、フィルターを設置しても他方の高周波電力の回り込みを十分に抑制することは一般的には非常に困難である。
【0028】
例えば、図7に示したプラズマ処理装置を用い、マッチングボックス404、及び416の構成、その制御部が図6に示したようなものを用いて真空処理を行う場合、以下のような現象が生じる場合がある。
【0029】
反応容器401内にプラズマを生起するためには、まず、原料ガス供給手段412を介して原料ガスを反応容器401内に導入した後、第1の高周波電源403、及び第2の高周波電源415の出力を所定値に設定し、続いて、第1のマッチングボックス404、及び第2のマッチングボックス416内の整合回路のインピーダンスを調整する。具体的には、第1のマッチングボックス404、及び第2のマッチングボックス416において、位相差検出器207によって整合回路201の入口におけるインピーダンスの位相を検出し、インピーダンスの位相に応じた電圧をチューニング制御回路209に出力する。チューニング制御回路209では位相差検出器207より入力された電圧と基準電圧を比較し、その差に応じた電圧をチューニング可変コンデンサ203を駆動するモーター210に供給する。その結果、インピーダンスの位相が所定値、一般的には0となるようにモーター210によりチューニング可変コンデンサ203を調整する。これと同時並行的に、インピーダンス検出器208では整合回路201の入口におけるインピーダンスの絶対値を検出し、インピーダンスの絶対値に応じた電圧をマッチング制御回路211に出力する。マッチング制御回路211ではインピーダンス検出器208より入力された電圧と基準電圧を比較し、その差に応じた電圧をマッチング可変コンデンサ202を駆動するモーター212に供給する。その結果、インピーダンスの絶対値が所定値、一般的には50Ωとなるようにモーター212によりマッチング可変コンデンサ202を調整する。
【0030】
しかしながら、実際のインピーダンス調整においては、例えば第1のマッチングボックス404のチューニング可変コンデンサ203、マッチング可変コンデンサ202を変化させると第2のマッチングボックス416で検出されるインピーダンスの位相、インピーダンスの絶対値が変化してしまう。このため、第2のマッチングボックス416のチューニング可変コンデンサ203、マッチング可変コンデンサ202を変化させることとなるが、この結果、今度は第1のマッチングボックス404で検出されるインピーダンスの位相、インピーダンスの絶対値が変化してしまう。このような状態が繰り返しなされ、各々のマッチングボックスのインピーダンスは常に変動を繰り返してしまう場合がある。このような状態となると、生起したプラズマは安定せず、場合によってはプラズマ処理特性に大きな影響を及ぼすこととなってしまう。
【0031】
また、他のインピーダンス調整の方法として、マッチングボックス入口での電力反射率、即ち反射電力/入射電力の値を用いる方法がある。この場合、例えばチューニング可変コンデンサの容量を増やす/または減らす方向に動かし、その結果、電力反射率が減少した場合にはチューニング可変コンデンサの容量を更に同じ方向に動かし、逆に、電力反射率が増加した場合にはチューニング可変コンデンサの容量を逆方向に動かす。同様の制御をマッチング可変コンデンサにおいても行うことで、電力反射率が最低となるインピーダンス条件に各可変コンデンサの容量を調整する。
【0032】
しかし、このようなインピーダンス調整法においても同様の問題が生じる場合がある。例えば第1のマッチングボックス404において、チューニング可変コンデンサの容量が、整合したインピーダンス(以下、「整合インピーダンス」と呼ぶ)よりも小さい場合を想定する。この状況において、まずチューニング可変コンデンサの容量が小さくなる方向に変化させた場合、本来はその方向で電力反射率が増加し、その電力反射率増加の信号を受けてモーターを逆回転させ容量を増加方向に転じなければならない。ところが、同時に第2のマッチングボックス416においてもチューニング可変コンデンサ、あるいはマッチング可変コンデンサの容量を変化させていると、その影響により、第1のマッチングボックス404における電力反射率が低下したとして検出されてしまう場合がある。これは、第2の高周波電力供給系から第1の高周波電力供給系への回り込み電力が、第2のマッチングボックス416のチューニング可変コンデンサ、あるいはマッチング可変コンデンサの容量を変化させることによって変化するためである。
【0033】
その結果、第1のマッチングボックス404においては、更にチューニング可変コンデンサの容量を小さくなる方向に変化させてしまい、整合インピーダンスとは更に大きくずれた容量に調整してしまう。このようなことが、マッチング可変コンデンサの容量調整においても生じ、また、第2のマッチングボックス416のチューニング可変コンデンサ、マッチング可変コンデンサにおいても生じてしまう場合がある。この結果、第1のマッチングボックス404、第2のマッチングボックス416では整合ポイントをいつまでも見つけられず、プラズマが不安定な状態が続いたり、場合によっては第1のマッチングボックス404、第2のマッチングボックス416のインピーダンスが整合インピーダンスと大きく異なった値となってしまい、プラズマが維持できなくなって放電切れを生じてしまう場合がある。
【0034】
以上のような現象は特にVHF帯の周波数において生じやすく、各々の電力供給系にフィルターを設けても十分には抑制できない場合が多い。
【0035】
このように、インピーダンス調整が適切になされないことに起因したプラズマ特性の変動がプラズマ処理特性の向上、プラズマ処理コストの低下を実現していく上での大きな障害の1つとなっており、インピーダンス調整技術の向上がプラズマ処理特性向上、プラズマ処理コスト低下を実現していく上での課題となっていた。
【0036】
インピーダンス調整に関する技術としては、例えば、特開平09−260096号公報には、予め設定されたインピーダンスを基準としてプラズマが着火するインピーダンスの整合ポイントを探索してプラズマを着火し、次に、安定したプラズマ放電を形成させる予め設定された基準となるインピーダンスの整合ポイントに自動的に移行した後、その整合ポイントを基準としてプラズマ放電を安定させるインピーダンスの整合ポイントを自動的に探索する技術が開示されており、プラズマ処理ごとに負荷インピーダンスが異なってもプラズマを確実に着火できるとされている。この技術によれば、プラズマ生起時のトラブル、例えば、プラズマが長時間未着火である等の問題が解決されるものの、放電が生起した後の上述したような問題に関しては依然として解決されてはいない。
【0037】
また、特開平11−087097号公報においては、インピーダンス整合及び電力制御システムに関する技術が開示されており、インピーダンス整合に関しては、整合回路内の各素子のインピーダンスはあらかじめ設定された値に固定しておき、インピーダンス調整は高周波電力の周波数を変化させることで行う構成となっている。このような技術によれば、インピーダンス調整は高周波電力の周波数を変化させるという電気的な処理で対応できるため、インピーダンス調整は迅速になされる。しかしながら、この技術の場合、周波数が処理ロットごとに異なってしまい、その結果、プラズマ処理特性にばらつきが生じる可能性がある。これは特に高周波電力の周波数がVHF帯のように、プラズマ処理特性の均一性に高周波電力の周波数が敏感な場合、ばらつきが生じやすくなる。
【0038】
特開平08−096992号公報には、プラズマ処理の各ステップの初期において、インピーダンス調整を行い、そのステップにおいてはその後インピーダンス調整は行わず、次のステップになったときに再びインピーダンス調整を行い、その後同じ状態を保持する技術が開示されており、具体的なインピーダンス調整のタイミングとしては▲1▼各ステップの初期の短い調整時間、▲2▼反射が異常に増えたときが挙げられている。そしてこの技術により、複数の電極から高周波電力を供給する場合に生じやすい不適切なインピーダンス調整がなくなり、プラズマの不安定化を回避することができるとされている。しかしながら、この技術の場合、プラズマ処理中のインピーダンスの経時的変化には十分に追従するものではなく、例えばプラズマ処理開始時の負荷インピーダンスの変化、あるいは、長時間プラズマ処理の場合の処理初期と終了直前でのインピーダンスの違いによってインピーダンスの不整合が生じてしまう。その結果、この不整合に起因して十分なプラズマ処理特性が得られない場合が生じてしまう。また、その不整合の度合いは反応容器の状態によって異なるので、プラズマ処理ロットごとにプラズマ処理特性が異なってしまう場合も生じる。一方、これを避けるためにプラズマ処理中にある程度の反射電力が生じた際にインピーダンス調整を行わせた場合、その時点で前述したような問題が生じてしまう。
【0039】
このように、インピーダンス整合に関してはこれまでさまざまな工夫がなされてきたが、複数の異なる周波数の高周波電力を反応容器中に同時に供給するプラズマ処理のように、複数の高周波電力が互いに干渉を及ぼしやすいプラズマ処理方法、プラズマ処理装置においては、まだ多くの改善すべき点が残されていた。
【0040】
本発明は上記課題の解決を目的とするものである。即ち、複数の高周波電力供給系から周波数の異なる複数の高周波電力を反応容器中に導入し、該反応容器中で原料ガスを分解することにより、前記反応容器中に設置した被処理物に処理を施すプラズマ処理方法において、各電力供給系に設けられた整合器によるインピーダンス整合が適正に、安定して達成され、その結果、プラズマ処理特性の向上、プラズマ処理特性の再現性向上、更にはプラズマ処理コストの低減が可能なプラズマ処理方法、プラズマ処理装置を提供することにある。
【0041】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記目的を達成すべく鋭意検討を行った結果、整合度を検知するための検出器を適正な位置に設置することによりインピーダンス調整を安定化させることが可能であることを見出した。
【0042】
従来、インピーダンス調整を自動制御する場合、整合度を検知する検出器、例えば位相検出器、インピーダンス検出器、電力計等は可能な限り整合器に近づけた位置に設置されていた。これは、整合を取ろうとする整合器、及び負荷に可能な限り近い位置で状態検出することでインピーダンス調整の精度を上げようとの発想によるものである。また、具体的な整合度検出手段としては位相検出器、インピーダンス検出器を併用することが多くなされていた。これは位相検出器、インピーダンス検出器を用いた場合、現状の位相、インピーダンスの目標値に対するずれが、単にずれ量だけではなく目標値に対する大小関係をも含めて検出されるため、整合回路内の可変インピーダンス素子をどちらの方向へ動かせばよいか、即ち、インピーダンスを大きくすれば良いのか、小さくすれば良いのかまでもが検出されるためである。このため、単に整合度のずれ量のみを検出する電力反射率を用いた場合に比べ、その制御法が容易であり、また制御スピードも速まる。
【0043】
しかしながら、本発明者らの検討においては、このような従来の発想に基づいた整合度の検出法、インピーダンス制御法ではさまざまな工夫を施してもインピーダンス調整の安定性に関してまだ改善の余地が残ることが明らかとなった。
【0044】
そして、整合度の検出法に関して更に検討を行った結果、高周波電力供給系に3ポート・サーキュレーターを設け、3ポート・サーキュレーターの第1ポートを高周波電源から出力された高周波電力の入力端とし、高周波電力が出力される第2ポートを整合器に接続し、残る第3ポートを無反射終端に接続する構成とし、更に、第1ポートと高周波電源との間に設置された入射電力検出手段と、第3ポートと無反射終端との間に設置された反射電力検出手段より出力される信号に基づいて整合度の検知、及び、整合器におけるインピーダンス調整を行うことで極めて安定したインピーダンス調整を行うことが可能であることを見い出した。
【0045】
即ち、本発明は、周波数の異なる複数の高周波電力を反応容器中に導入し、該反応容器中で原料ガスを分解することにより、前記反応容器中に設置した被処理物に処理を施すプラズマ処理方法において、少なくとも1つの高周波電力は高周波電源から出力された後、3ポート・サーキュレーター、整合器をこの順番で介した後、高周波電極から反応容器中に導入され、前記3ポート・サーキュレーターと前記高周波電源の間に設けられた入射電力検出手段から出力される信号、及び、前記3ポート・サーキュレーターの反射電力出力ポートとそれに接続された無反射終端との間に設けられた反射電力検出手段から出力される信号とに基づいて前記整合器におけるインピーダンス調整を行うことを特徴とする。
【0046】
このような本発明によれば、整合器によるインピーダンス整合が適正に、安定して達成され、その結果、プラズマ処理特性の向上、プラズマ処理特性の再現性向上、更にはプラズマ処理コストの低減が可能となる。
【0047】
このような本発明について、以下詳述する。
【0048】
本発明においては、整合器によるインピーダンス整合を第1ポートと高周波電源との間に設置された入射電力検出手段より出力される信号と、第3ポートと無反射終端との間に設置された反射電力検出手段より出力される信号とに基づいて整合度の検知、及び、整合器におけるインピーダンス調整を行う。この構成においては、インピーダンス整合を行う上での基準となる信号を出力する入射電力検出手段、反射電力検出手段と整合器の間にはサーキュレーターを介しているため、他の周波数の高周波電力がこの高周波電力供給系に回り込んできたとしても、それらの電力はサーキュレーターによりカットされ、入射電力検出手段、反射電力検出手段がその影響を受けることはない。この結果、他の周波数の高周波電力の干渉の影響を受けない信号に基づいてインピーダンス調整を行うことが可能となる。
【0049】
また、実際のプラズマ処理においてはインピーダンス調整を行ってもある程度の反射電力は存在し、サーキュレーターが設置されていない場合には、この反射電力と入射電力により高周波電力供給系の線路上には定在波が生じる。このような定在波が生じている線路上では入射電力、反射電力共に正確には検出できない。しかしながら、本発明の構成においてはサーキュレーターの作用により、サーキュレーターよりも高周波電源側、無反射終端側では入射電力、または反射電力のみしか存在せず、定在波が生じないので、入射電力、反射電力共に正確に検出可能となる。この結果、入射電力検出手段、反射電力検出手段からの整合度を正確に反映した信号に基づいてインピーダンス調整を行うことが可能となる。
【0050】
このような上記2つの作用により、本発明においては適切なインピーダンス調整が安定して行われるので、プラズマが安定して、再現性よく維持され、その結果、プラズマ処理特性の向上、プラズマ処理特性の再現性向上が可能となる。
【0051】
本発明においては、このようなインピーダンス調整法を複数の高周波電力供給系のうちの少なくとも1つにおいて行うことでプラズマ安定化の効果を得ることが可能であるが、顕著な効果を得る上では複数の高周波電力供給系の全てにおいてこのようなインピーダンス調整法を行うことが好ましい。
【0052】
また、このような本発明は、複数の高周波電力を同一の高周波電極から同時に反応容器中に供給する場合に、より顕著な効果を得ることができる。これは、複数の高周波電力を同一の高周波電極から同時に反応容器中に供給する場合、各電力供給系は高周波電極を通じて直接電気的に結合しているため、特に干渉が生じやすく、従来のインピーダンス調整法においてはプラズマの安定化がより困難であるのに対して、本発明においてはこのような場合においても十分なプラズマ安定化効果が得られるためである。
【0053】
このような本発明は、複数の異なる高周波電力を反応容器中に同時に供給する際、周波数が高い方の高周波電力の周波数をf1、周波数が低い方の高周波電力の周波数をf2として、
10MHz≦f2<f1≦250MHz
かつ、
0.1≦f2/f1≦0.9
である場合、なかでも、
10MHz≦f2<f1≦250MHz
かつ、
0.5<f2/f1≦0.9
の場合に特に効果的である。このような条件においては、一般的に前述したような干渉が生じやすく放電の不安定性が高まるが、本発明を用いることによりこのような干渉の影響が顕著に抑制可能となり、その結果、安定した放電が維持可能となる。
【0054】
また、本発明では、インピーダンス調整を予め定められたインピーダンス可変範囲内でのみ行うことで、更に放電を安定して維持可能となる。これは以下のような理由によるものである。インピーダンス可変範囲を設定しない場合には、例えばスパーク等の異常放電で一時的に負荷インピーダンスが変化すると、その異常状態での負荷インピーダンスと整合を取るように整合器のインピーダンス調整を行い、正常時の整合条件とは大きく異なったインピーダンスに設定してしまう場合がある。その結果、異常放電が収まった後、直ちに正常時のインピーダンスに復帰することができず、これが原因となってプラズマ処理特性そのものの低下やプラズマ処理特性の安定性低下をもたらしてしまう場合がある。また、異常放電発生時に整合器のインピーダンスを大きく変化させてしまうことによって、異常放電を助長し、正常なプラズマ状態に復帰できなくなってしまう場合もある。
【0055】
異常放電そのものは、多くの場合一時的であり、また、その発生個所も被処理物に悪影響を及ぼさない個所で生じる場合が多いため、直接プラズマ処理に悪影響を及ぼさない場合が多い。本発明では、インピーダンス可変範囲を適正な範囲に限定することで、異常放電が生じた際も、整合器のインピーダンスは正常時の適正インピーダンスから大きくずれることはなく、異常放電が収まった後、速やかに正常時の適正インピーダンスに復帰可能となり、また、異常放電を助長し、正常なプラズマ状態に復帰できなくなってしまうことも抑制される。
【0056】
更に、本発明はインピーダンス可変範囲をプラズマ処理の進行に伴って変更することでより大きな効果を得ることが可能となる。これは、プラズマ処理初期とプラズマ処理がある程度進行した後では反応容器内の状態、例えば壁面の状態等が異なり、その結果、負荷インピーダンスが変化することに起因している。プラズマ処理中に常に同一のインピーダンス可変範囲内で自動整合を取ろうとした場合、このようなプラズマ処理の進行に伴った負荷インピーダンスの変化に対応するためには、インピーダンス可変範囲を広く設定しなければならず、その結果、所望のレベルまでインピーダンスを整合させることができない場合が生じてしまう。したがって、本発明では、整合器によるインピーダンス整合を予め設定されたインピーダンス可変範囲内で行い、かつ、そのインピーダンス可変範囲をプラズマ処理の進行に伴って変更することで、更にプラズマ安定性を向上させることが可能となる。
【0057】
本発明においては更に、整合が取れたか否かを判断するために予め設定される整合目標条件を、必要に応じてプラズマ処理の進行に伴って変更することがより効果的である。これは以下のような理由、作用によるものである。本発明において、整合目標条件は入射電力検出手段、反射電力検出手段からの出力信号がインピーダンス調整終了時に満たすべき条件を設定したものであり、入射電力検出手段、反射電力検出手段からの出力信号が設定範囲内になった場合には整合が取れたと判断し、整合回路のインピーダンス調整を停止する。しかし、その設定範囲が狭すぎると場合によっては設定範囲内においては調整できず、常に整合回路のインピーダンスを調整しつづけ、安定したプラズマを維持することが困難な場合が生じる。一方、逆にその設定範囲が広すぎると、整合が十分でないにもかかわらずインピーダンス調整を停止してしまい、電力供給効率が低下したり、所望のプラズマ特性を得ることができなかったりする場合がある。また、プラズマ処理ロット間でのインピーダンスのばらつきも大きくなってしまうため、プラズマ処理特性の再現性が不十分になってしまう場合がある。そこで、整合目標条件も適正な値に設定することが、目的とする特性のプラズマを安定して、再現性よく生成する上で重要となる。既に述べたように、プラズマ処理の進行に伴って反応容器中の状態が変化していくため、適正な整合目標条件もプラズマ処理の進行と共に変化していくため、必要に応じて整合目標条件もプラズマ処理中に変更することで目的とする特性のプラズマを更に安定して、再現性よく生成しプラズマ処理特性の再現性向上が可能となる。
【0058】
また、本発明において、インピーダンス可変範囲をプラズマ処理の進行に伴って変更するに際して、実質的に連続的に変更することがより効果的である。インピーダンス可変範囲を不連続で変化させる場合、変化前の整合回路のインピーダンスが可変範囲の境界近傍にあると、インピーダンス可変範囲の変化によって整合回路のインピーダンスも実質的に不連続に変化してしまう場合があり、この結果、整合状態が不連続となってしまい、本発明の効果が最大限に得られない場合がある。このような状況は、条件の異なる複数の処理を連続的に行うプラズマ処理において生じやすい。従って、特に複数の処理間での条件変化が急激な場合に、インピーダンス可変範囲を実質的に連続的に変更することがより効果的となる。
【0059】
同様に、プラズマ処理の進行に伴って行うこの整合目標条件の変更も、インピーダンス可変範囲の変更と同じように、実質的に連続的に変更することがより効果的である。整合目標条件を不連続で変化させる場合、変化前の整合状態が整合目標条件の境界近傍にあると、整合目標条件の変化によって整合状態も不連続に変化してしまう場合があり、この結果、本発明の効果が最大限に得られない場合がある。このような状況は、条件の異なる複数のプラズマ処理を連続的に行うものである場合に生じやすい。従って、特に複数の処理間での条件変化が急激な場合に、整合目標条件を実質的に連続的に変更することがより効果的となる。
【0060】
そして、このような本発明は整合器によるインピーダンス調整が自動制御によってなされる場合に特に効果的となる。本発明においては電力反射率を基にインピーダンス調整を行うため、整合回路の入口に設けられた位相差検出器、インピーダンス検出器からの信号を基にインピーダンス調整を行う場合と比較すると、インピーダンス調整に要する時間が長くなる場合がある。これは、位相差検出器、インピーダンス検出器からの信号を基にインピーダンス調整を行う場合には基準電圧との比較により、チューニングコンデンサ、マッチングコンデンサの容量を増やせばよいのか、減らせばよいのか予め判断可能なのに対して、本発明で用いる電力反射率を基にしたインピーダンス調整では、チューニングコンデンサ、マッチングコンデンサの容量を増やせばよいのか、減らせばよいのかは事前には判明せず、まず一方向に変化させて、その際の電力反射率の増減を基にコンデンサ容量の増減を判断するためである。したがって、本発明で用いる電力反射率を基にしたインピーダンス調整ではインピーダンス調整中の瞬時の正確な判断を安定して行うことがインピーダンス調整時間を短くする上で必要となり、これが達成されないと、場合によっては放電の不安定性を引き起こしてしまう場合がある。したがって、インピーダンス調整中の瞬時の正確な判断を安定して行うためにインピーダンス調整は自動制御により行うことが本発明の効果を顕著に、安定して得る上で好ましい。
【0061】
このような本発明はまた、被処理物がプラズマ処理中の少なくとも一時期において移動、または回転している場合、特に顕著な効果を得ることができる。プラズマ処理中において被処理物が移動、回転等している場合には、それに付随して負荷インピーダンスが変動する場合が多い。例えば、円筒状の基体を自転させながらプラズマ処理を行う場合、自転時の偏心によって反応容器中での基体の相対的位置関係が微妙に変化してしまう場合が多い。このように基体の相対的位置が変化すると異常放電が生じやすく、また、その位置変化に伴って負荷インピーダンスが変動してしまう。本発明ではこのような異常放電が生じても、整合回路インピーダンスは適正値近傍に制限されるため、整合回路インピーダンスが適正値から大幅に逸脱したり、異常放電を助長するといった問題が回避され、安定したプラズマを維持することが可能となる。
【0062】
また、本発明はプラズマ処理が電子写真感光体形成の場合、特に大きな効果を得ることができる。その理由はおそらく以下の2つの要因によるものと推察される。1つは電子写真感光体形成の場合、一般的に数十μmの膜厚の堆積膜を形成するため、プラズマ処理に要する時間が長い。このため、プラズマ処理中に異常放電等により負荷インピーダンスの突発的な変化が生じることが多く、この変化によるプラズマ処理への弊害を抑制する本発明の効果が顕著に現れるものと考えられる。また、プラズマ処理に要する時間が長いため、プラズマ処理中の負荷インピーダンスの経時的変化が大きく、このような経時的変化に対しても適正にインピーダンス整合がなされる本発明の効果が電子写真感光体形成の場合に明確に現れるものと考えられる。2つめの要因は、電子写真感光体形成において、ガス種、圧力、高周波電力等、条件の異なる複数のプラズマ処理が連続的になされることである。なお、ここで連続的とは、必ずしもプラズマが生起した状態のまま連続してプラズマ処理条件の変更を行う場合のみを指すのではなく、処理条件の変更に際して放電を一時停止した後、処理条件を変更し、再びプラズマを生起する場合をも指すものである。条件の異なる複数のプラズマ処理が連続的になされる場合、各条件ごとに適正なインピーダンス可変範囲、あるいは適正な整合目標条件が異なることが確認されており、本発明を用いて、各条件ごとに適正なインピーダンス可変範囲、あるいは適正な整合目標条件を設定することで、一連のプラズマ処理全体を通じて適正なインピーダンス調整が行われることとなり、良好なプラズマ処理がなされるものと考えられる。
【0063】
このような効果が得られる本発明を図を用いて以下に詳述する。図1は本発明に用いることができるプラズマ処理装置の一例であり、図1(a)はこのプラズマ処理装置の概略図、図1(b)は図1(a)中の切断線A−A’に沿う概略断面図である。第1の高周波電源403から出力された高周波電力は3ポート・サーキュレーター101、マッチングボックス(整合器)404を介して、第1の高周波電極402より反応容器401中に導入される。一方、反射電力はマッチングボックス404から3ポート・サーキュレーター101に至り、そこから第1の高周波電源403側には出力されず、無反射終端104側に出力され、その後、無反射終端104に至って、ここで電力消費される。入射電力は第1の高周波電源403と3ポート・サーキュレーター101の間に設けられた入射電力検出手段102により検出される。また、反射電力は3ポート・サーキュレーター101と無反射終端104の間に設けられた反射電力検出手段103により検出される。
【0064】
同様にして、第2の高周波電源415から出力された高周波電力は3ポート・サーキュレーター111、マッチングボックス(整合器)416を介して、第2の高周波電極414より反応容器401中に導入される。一方、反射電力はマッチングボックス416から3ポート・サーキュレーター111に至り、そこから第2の高周波電源415側には出力されず、無反射終端114側に出力され、その後、無反射終端114に至って、ここで電力消費される。入射電力は第2の高周波電源415と3ポート・サーキュレーター111の間に設けられた入射電力検出手段112により検出される。また、反射電力は3ポート・サーキュレーター111と無反射終端114の間に設けられた反射電力検出手段113により検出される。
【0065】
このような構成とすることで、入射電力検出手段102,112、反射電力検出手段103,113が設けられた位置においては、複数の周波数の高周波電力が混在することはなく、また、入射電力と反射電力が混在することもない。この結果、定在波が生じることはなく、入射電力、反射電力が正確に検出可能となる。
【0066】
このような装置において、整合器404,416は例えば図2に示すような構成のものを用いることができる。
【0067】
整合器600(図1における符号404,416)内の整合回路601はマッチング可変コンデンサ602、チューニング可変コンデンサ603とコイル604とからなる。入射電力検出手段102,112から出力される入射電力値を反映した信号、及び、反射電力検出手段103,113から出力される反射電力値を反映した信号は図2における制御系610に入力され、制御系610内で整合度を反映した数値、例えば電力反射率に変換される。以下、整合度を反映した数値として電力反射率を用いた場合を例として説明すると、制御系610ではこの電力反射率と予め設定された整合目標条件とを比較し、電力反射率が整合目標条件を満たしている場合にはインピーダンス制御は行わず、電力反射率が整合目標条件を満たさない場合にはインピーダンス制御を開始する。具体的なインピーダンス制御法は例えば以下のようなものである。
【0068】
制御系610において、電力反射率が整合目標条件を満たしていない場合には、制御系610よりチューニング可変コンデンサ603を駆動するモーター605に信号が出力され、その信号に基づいてモーター605が回転し、それに連動してチューニング可変コンデンサ603のインピーダンスが増加する方向、または減少する方向に所定量調整される。この時点で電力反射率が整合条件を満たした場合にはインピーダンス制御を停止する。一方、電力反射率が整合条件を満たさない場合には、インピーダンス調整前と比べて電力反射率が増加したか減少したかを制御系610が判断し、電力反射率が増加した場合にはチューニング可変コンデンサ603のインピーダンス調整方向を逆方向、即ち、インピーダンスが増加する方向に調整していた場合にはインピーダンスが減少する方向に、インピーダンスが減少する方向に調整していた場合にはインピーダンスが増加する方向に所定量調整する。逆に、電力反射率が減少した場合には、更に同方向、即ち、インピーダンスが増加する方向に調整していた場合には更にインピーダンスが増加する方向に、インピーダンスが減少する方向に調整していた場合には更にインピーダンスが減少する方向に所定量調整する。
【0069】
同様のインピーダンス調整がマッチング可変コンデンサ602についてもなされ、電力反射率が整合目標条件を満たした際にインピーダンス調整を終了する。
【0070】
なお、このようなチューニング可変コンデンサ603、マッチング可変コンデンサ602のインピーダンス調整は同時並行的に行われても良いし、所定の順番で順次なされても良い。
【0071】
また、本発明においては、整合器におけるインピーダンス調整は予め定められたインピーダンス可変範囲内で行うことが安定した放電を維持する上で有効である。具体的には、例えば、チューニング可変コンデンサ603のインピーダンスが予め定められた可変範囲の最大値、又は最小値になった場合、その時点でモーター605の駆動を停止する。一方、既にチューニング可変コンデンサ603のインピーダンスが予め定められた可変範囲の最大値となっている場合には、チューニング可変コンデンサ603のインピーダンスを小さくする方向へのモーター605の駆動は行うが、チューニング可変コンデンサ603のインピーダンスを大きくする方向への駆動は行わない。同様に、既にチューニング可変コンデンサ603のインピーダンスが予め定められた可変範囲の最小値となっている場合には、チューニング可変コンデンサ603のインピーダンスを大きくする方向へのモーター605の駆動は行うが、チューニング可変コンデンサ603のインピーダンスを小さくする方向への駆動は行わない。このようにして、電力反射率が整合目標条件を満たすようチューニング可変コンデンサ603のインピーダンスを予め定められた可変範囲内で制御し、予め定められた可変範囲内で整合目標条件が満たされない場合には、電力反射率が整合目標条件に最も近い状態でチューニング可変コンデンサ603のインピーダンス調整を停止する。
【0072】
同様にして、マッチング可変コンデンサ602についてもインピーダンスを予め定められた可変範囲内で制御する。
【0073】
このような制御により、インピーダンス調整は予め定められたインピーダンス可変範囲内で行われる。なお、チューニング可変コンデンサ603、マッチング可変コンデンサ602のインピーダンスを検知する方法としては、例えば可変コンデンサやそれを駆動する機構部の移動量を検知する方法や、可変コンデンサ駆動用のモーターとしてステッピングモーターを用いその駆動信号を基に検知する方法等、従来公知の方法を用いればよい。また、チューニング可変コンデンサ603、マッチング可変コンデンサ602のインピーダンスを常に検知する必要は必ずしもなく、チューニング可変コンデンサ603、マッチング可変コンデンサ602のインピーダンスが可変範囲の最大値、または最小値になった際に信号が制御系610に出力される構成としても良い。
【0074】
なお、本発明において「インピーダンス可変範囲を設定する」とは、整合回路を構成するインピーダンス可変素子の可変幅によって構成上制限されるインピーダンス可変範囲を指すものではなく、それとは別に、構成上制限されるインピーダンス可変範囲よりも狭い範囲で別途インピーダンス可変範囲を設定するものである。
このようにインピーダンス可変素子の可変幅とは別にインピーダンス可変範囲設定可能な機能を持たせることにより、インピーダンス可変範囲を精度良く所望の範囲に設定可能となり、また、容易に設定変更可能となる。この結果、真空処理中の放電安定性を高めることが可能となり、また、真空処理中にインピーダンス可変範囲の設定変更が可能となるため複数の処理を連続的に行う場合にも対応可能となる。
【0075】
このような図2に示した構成のマッチングボックスを用いたプラズマ処理は、例えば図1に示すプラズマ処理装置を用いて、電荷注入阻止層、光導電層、表面層からなる電子写真用感光体を形成する場合、以下のようにして行うことができる。
【0076】
まず、前述した手順と同様にして円筒状基体405を加熱し200℃〜300℃程度の所定の温度に制御する。円筒状基体405が所定の温度となったところで、原料ガス供給手段412を介して、電荷注入阻止層形成に用いる原料ガスを反応容器401内に導入する。原料ガスの流量が設定流量に達し、また、反応容器401内の圧力が安定したのを確認した後、高周波電源403,415の出力を所定値に設定する。
【0077】
高周波電源403,415から高周波電力が出力されると、マッチングボックス(整合器)404,416においてインピーダンス調整が行われる。具体的には、第1の高周波電源403から出力された高周波電力は3ポート・サーキュレーター101、マッチングボックス404を介して、第1の高周波電極402より反応容器401中に導入される。一方、反射電力はマッチングボックス404から3ポート・サーキュレーター101に至り、そこから第1の高周波電源403側には出力されず、無反射終端104側に出力され、その後、無反射終端104に至って、ここで電力消費される。入射電力は第1の高周波電源403と3ポート・サーキュレーター101の間に設けられた入射電力検出手段102により検出される。また、反射電力は3ポート・サーキュレーター101と無反射終端104の間に設けられた反射電力検出手段103により検出される。
【0078】
同様にして、第2の高周波電源415から出力された高周波電力は3ポート・サーキュレーター111、マッチングボックス(整合器)416を介して、第2の高周波電極414より反応容器401中に導入される。一方、反射電力はマッチングボックス416から3ポート・サーキュレーター111に至り、そこから第2の高周波電源415側には出力されず、無反射終端114側に出力され、その後、無反射終端114に至って、ここで電力消費される。入射電力は第2の高周波電源415と3ポート・サーキュレーター111の間に設けられた入射電力検出手段112により検出される。また、反射電力は3ポート・サーキュレーター111と無反射終端114の間に設けられた反射電力検出手段113により検出される。
【0079】
入射電力検出手段102,112から出力される入射電力値を反映した信号、及び、反射電力検出手段103,113から出力される反射電力値を反映した信号は制御系610に入力され、制御系610内で整合度を反映した数値、例えば電力反射率に変換される。制御系610ではこの電力反射率と予め設定された整合目標条件とを比較し、電力反射率が整合目標条件を満たしている場合にはインピーダンス制御は行わず、電力反射率が整合目標条件を満たさない場合にはインピーダンス制御を開始する。具体的なインピーダンス制御法は前述したようにしてなされる。
【0080】
即ち、制御系610において、電力反射率が整合目標条件を満たしていない場合には、制御系610よりチューニング可変コンデンサ603を駆動するモーター605に信号が出力され、その信号に基づいてモーター605が回転し、それに連動してチューニング可変コンデンサ603のインピーダンスが増加する方向、または減少する方向に所定量調整される。この時点で電力反射率が整合条件を満たした場合にはインピーダンス制御を停止する。一方、電力反射率が整合条件を満たさない場合には、インピーダンス調整前と比べて電力反射率が増加したか減少したかを制御系610が判断し、電力反射率が増加した場合にはチューニング可変コンデンサ603のインピーダンス調整方向を逆方向、即ち、インピーダンスが増加する方向に調整していた場合にはインピーダンスが減少する方向に、インピーダンスが減少する方向に調整していた場合にはインピーダンスが増加する方向に所定量調整する。逆に、電力反射率が減少した場合には、更に同方向、即ち、インピーダンスが増加する方向に調整していた場合には更にインピーダンスが増加する方向に、インピーダンスが減少する方向に調整していた場合には更にインピーダンスが減少する方向に所定量調整する。同様のインピーダンス調整がマッチング可変コンデンサ602についてもなされ、電力反射率が整合目標条件を満たした際にインピーダンス調整を終了する。
【0081】
なお、このようなチューニング可変コンデンサ603とマッチング可変コンデンサ602のインピーダンス調整は同時並行的に行われても良いし、所定の順番で順次なされても良い。
【0082】
このようなインピーダンス調整によって、高周波電力は高周波電極402,414を介して効率良く反応容器401内に供給され、反応容器401内にプラズマが生起する。
【0083】
なお、このプラズマ生起時のインピーダンス調整は必ずしも自動制御により行う必要はない。また、例えば、プラズマ生起時は手動によりインピーダンス調整を行い、プラズマが生起したのを確認した後、自動制御に切り替えても良いし、手動インピーダンス調整によりプラズマを生起し、所定の時間が経過した後、自動制御に切り替えても良い。
【0084】
更に、プラズマ生起時のマッチング可変コンデンサ602、及びチューニング可変コンデンサ603のインピーダンスを最も放電が生起しやすい値に予め設定しておき、その値を起点としてインピーダンス調整を行うことが調整時間の短縮、プラズマ処理特性のロット間でのばらつき抑制の点で好ましい。
【0085】
このようにして電荷注入阻止層の形成が終了したならば、引き続き光導電層の形成を行う。電荷注入阻止層と光導電層の間で放電を停止する場合には、所望の膜厚の電荷注入阻止層が形成された後、高周波電力の供給を止め、続いて原料ガスの供給を停止して電荷注入阻止層の形成を終える。次いで、電荷注入阻止層の形成開始時と同様の手順で光導電層の形成を行う。
【0086】
一方、電荷注入阻止層と光導電層を放電を切らずに連続的に形成する場合には、原料ガス流量、高周波電力、圧力等のプラズマ処理条件を連続的に、及び/または、段階的に変化させて光導電層形成条件に設定する。プラズマ処理条件の変化のさせ方については特に制限はなく、プラズマ処理特性をみながら適宜決定すればよい。
【0087】
こうして光導電層の形成が終了したら、引き続き表面層の形成を行う。光導電層形成から表面層形成への移行手順は、電荷注入阻止層形成から光導電層形成への移行手順と同様にして行えばよい。
【0088】
このようにして、表面層の形成が終了したら、高周波電力の出力を停止し、原料ガスの供給を停止して電子写真感光体の形成を終了する。
【0089】
電荷注入阻止層、光導電層、表面層形成中は電荷注入阻止層形成開始時と同様のインピーダンス調整を行うことにより、電力反射率が低く、安定した放電が維持可能となり、良好な電子写真感光体が形成可能となる。
【0090】
また、整合器におけるインピーダンス調整を予め定めたインピーダンス可変範囲内で行う場合には、例えば以下のようにして行えばよい。
【0091】
なお、図1中のマッチングボックス404,416内の構成はいずれも図2に示す構成であるが、マッチングボックス404内の各部とマッチングボックス416内の各部を区別するために、以下ではマッチングボックス416内の各部を示す番号には「’」を添えて説明する。
【0092】
まず、電子写真用感光体形成に先立って、電荷注入阻止層、光導電層、表面層の各層の条件ごとに、プラズマが安定して維持されるマッチングボックス404内のマッチング可変コンデンサ602のインピーダンス、チューニング可変コンデンサ603のインピーダンスをロット間でのばらつきをも含めて予備実験により予め調べておき、その結果を基に、各層のマッチング可変コンデンサ602のインピーダンス可変範囲、チューニング可変コンデンサ603のインピーダンス可変範囲を決定する。インピーダンス可変範囲の決定は、例えば予備実験でのマッチング可変コンデンサ602のインピーダンス、チューニング可変コンデンサ603のインピーダンスのばらつき範囲そのものを可変範囲としたり、あるいは、インピーダンスのばらつき範囲の2倍程度の範囲をインピーダンス可変範囲として設定する等、実際のプラズマ処理においてプラズマが安定して維持できるように、プラズマ形成条件、使用装置構成等に応じて適宜決定する。本発明者らの検討によれば、予備実験により得られたインピーダンスのばらつき範囲の2倍程度の範囲内にインピーダンス可変範囲を設定することが安定したプラズマを維持する上で好ましい。例えば予備実験により可変コンデンサのインピーダンスが200pF〜300pFの間でばらついた場合、即ちインピーダンスのばらつき幅が100pFの場合、可変コンデンサのインピーダンス可変範囲としてはばらつき範囲の2倍である200pFの幅に設定することが好ましく、この例の場合、可変コンデンサのインピーダンス可変範囲としては150pF〜350pFの範囲内とすることが好ましい。
【0093】
同様にして、マッチングボックス416内のマッチング可変コンデンサ602’のインピーダンス、チューニング可変コンデンサ603’のインピーダンスをロット間でのばらつきをも含めて予備実験により予め調べておき、その結果を基に、各層のマッチング可変コンデンサ602’のインピーダンス可変範囲、チューニング可変コンデンサ603’のインピーダンス可変範囲を決定する。具体的なインピーダンス可変範囲の決定は、マッチングボックス404の場合と同様にして行う。
【0094】
このようにして決定された、電荷注入阻止層、光導電層、表面層の各層のマッチング可変コンデンサ602,602’のインピーダンス可変範囲、チューニング可変コンデンサ603,603’のインピーダンス可変範囲は予め制御系610,610’に格納しておき、層の切り替えのタイミングに合わせて参照するマッチング可変コンデンサ602,602’のインピーダンス可変範囲、チューニング可変コンデンサ603,603’のインピーダンス可変範囲を変更することとしても良いし、あるいは、層の切り替えのタイミングで制御系610,610’に外部からデータを送るようにしても良いし、他の方法によりインピーダンス可変範囲を変更しても良い。
【0095】
また、各層のインピーダンス可変範囲は必ずしも1つに決定する必要はなく、複数設定しても良い。この場合、層の途中の予め決定された時点で次のインピーダンス可変範囲に設定を変更する。また、逆に、必ずしも各層ごとに全て別々のインピーダンス可変範囲を設定する必要はなく、例えば電荷注入阻止層と光導電層では同じインピーダンス可変範囲を用いても良いし、光導電層と表面層では同じインピーダンス可変範囲を用いることとしても良く、あるいは、阻止層と光導電層の初期は同じインピーダンス可変範囲を用い、光導電層の途中でインピーダンス可変範囲を変更しても良いし、あるいは全層に渡って同じインピーダンス可変範囲を用いても良いが、処理中の適当な時点でその時点における最適なインピーダンス可変範囲に設定変更することが顕著な効果を得る上で好ましい。
【0096】
インピーダンス可変範囲を変更するタイミングについては適宜決定すればよいが、プラズマ処理の進行に伴って負荷インピーダンスの変化が顕著に生じる時点でインピーダンス可変範囲を変更することが本発明の効果を顕著に得る上で好ましい。
【0097】
また、このようなインピーダンス可変範囲を変更するタイミングは必ずしもマッチングボックス404とマッチングボックス416で同じとする必要はなく、各々のマッチングボックスごとにタイミングが異なっても構わない。
【0098】
このようにインピーダンス可変範囲を予め決定した後、反応容器401内に円筒状基体405を設置し、不図示の排気装置により排気管411を通して反応容器401内を排気する。続いて、回転軸408を介して円筒状基体405を不図示のモータにより所定の速度で回転させ、また、発熱体407により円筒状基体405を加熱し200℃〜300℃程度の所定の温度に制御する。
【0099】
円筒状基体405が所定の温度となったところで、原料ガス供給手段412を介して、電荷注入阻止層形成に用いる原料ガスを反応容器401内に導入する。原料ガスの流量が設定流量に達し、また、反応容器401内の圧力が安定したのを確認した後、高周波電源403,415の出力を所定値に設定する。
【0100】
高周波電源403,415から高周波電力が出力されると、マッチングボックス404,416においてインピーダンス調整が行われる。具体的には、上述したインピーダンス可変範囲を設定しない場合と同様に行われるが、電荷注入阻止層の形成が開始されたらマッチング可変コンデンサ602,602’、及びチューニング可変コンデンサ603,603’のインピーダンス可変範囲を電荷注入阻止層形成開始時の値に設定しインピーダンス調整を行う。この際、マッチング可変コンデンサ602,602’、及びチューニング可変コンデンサ603,603’のインピーダンス可変範囲はプラズマ生起時のマッチング可変コンデンサ602,602’、及びチューニング可変コンデンサ603,603’のインピーダンスの値が含まれるようなインピーダンス可変範囲とすることが好ましい。
【0101】
また、プラズマ生起前後では、適正なマッチング可変コンデンサ602,602’、及びチューニング可変コンデンサ603,603’のインピーダンスが大きく異なる場合がある。このような場合、電荷注入阻止層形成開始時のマッチング可変コンデンサ602,602’、及びチューニング可変コンデンサ603,603’のインピーダンスの可変範囲は広く設定せざるを得なくなるため、電荷注入阻止層形成中に可変範囲を連続的に、または段階的に変更し、インピーダンス可変範囲を徐々に狭めていくことが好ましい。
【0102】
このようにして電荷注入阻止層の形成が終了したならば、引き続き光導電層の形成を行う。電荷注入阻止層と光導電層の間で放電を停止する場合には、所望の膜厚の電荷注入阻止層が形成された後、高周波電力の供給を止め、続いて原料ガスの供給を停止して電荷注入阻止層の形成を終える。次いで、電荷注入阻止層の形成開始時と同様の手順で光導電層の形成を行う。この際、プラズマ処理条件、インピーダンス可変範囲、及び必要に応じて整合目標条件を光導電層形成時の条件に変更する。
【0103】
一方、電荷注入阻止層と光導電層を放電を切らずに連続的に形成する場合には、原料ガス流量、高周波電力、圧力等のプラズマ処理条件を連続的に、及び/または、段階的に変化させて光導電層形成条件に設定する。プラズマ処理条件の変化のさせ方については特に制限はなく、プラズマ処理特性をみながら適宜決定すればよい。また、電荷注入阻止層と光導電層への変化時のインピーダンス可変範囲の変更は、たとえば、電荷注入阻止層形成時のインピーダンス可変範囲と、処理条件変更中のインピーダンス可変範囲と、光導電層形成時のインピーダンス可変範囲を各々別々の値に設定しても良いし、処理条件変更が終了するまでは電荷注入阻止層形成時のインピーダンス可変範囲とし、光導電層の形成が開始された時点で光導電層形成用のインピーダンス可変範囲に設定しても良いし、あるいは電荷注入阻止層の形成が終了した時点でインピーダンス可変範囲を光導電層形成用のインピーダンス可変範囲に設定し、処理条件変更中、及び光導電層の形成を同一のインピーダンス可変範囲で行っても良い。そして、たとえば、電荷注入阻止層形成時のインピーダンス可変範囲と、処理条件変更中のインピーダンス可変範囲と、光導電層形成時のインピーダンス可変範囲を各々別々の値に設定する場合には、処理条件変更中のインピーダンス可変範囲を複数設定し、処理条件変更中にインピーダンス可変範囲を変更するようにしても良い。インピーダンス可変範囲の変更をどのように行うかは目的とするプラズマ処理特性、プラズマ処理条件、プラズマ処理装置の構成等により好適な変化のさせ方が異なるので、これらを考慮して適宜決定すればよい。
【0104】
こうして光導電層の形成が終了したら、引き続き表面層の形成を行う。光導電層形成から表面層形成への移行手順は、電荷注入阻止層形成から光導電層形成への移行手順と同様にして行えばよい。
【0105】
このようにして、表面層の形成が終了したら、高周波電力の出力を停止し、原料ガスの供給を停止して電子写真感光体の形成を終了する。
【0106】
なお、インピーダンス可変範囲の変更は、マッチング可変コンデンサ602,602’、及びチューニング可変コンデンサ603,603’のインピーダンス可変範囲を共に変更するものであっても良いし、そのどちらかを変更するものであっても良い。
【0107】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらによりなんら制限されるものではない。
【0108】
(実施例1)
図1に示す堆積膜形成装置、及び図2に示す構成のマッチングボックス及びその制御系を用い、高周波電源403の発振周波数を60MHz、高周波電源415の発振周波数を100MHzとし、直径80mm、長さ358mmの円筒状アルミニウムシリンダー405上に表1に示す条件で電荷注入阻止層、光導電層、表面層からなるアモルファスシリコン(a−Si)系感光体を10ロット、合計60本作製した。表1において、高周波電力とは入射電力から反射電力を引いた実効電力を示している。高周波電極402,414は直径20mmのSUS製円柱であり、その外部を内径21mm、外径24mmのアルミナ製パイプにより覆う構造とした。アルミナ製パイプはブラスト加工により、表面粗さを2.5mmを基準長とするRzで20μmとした。円筒状基体405は同一円周上に等間隔で6本配置した。
【0109】
また、マッチング可変コンデンサ602,602’は50pF以上,1000pF以下の範囲で可変のものを用い、チューニング可変コンデンサ603,603’は5pF以上,250pF以下の範囲で可変のものを用いた。高周波電源403,415の出力インピーダンスは50Ωであり、3ポート・サーキュレーター101,111、入射電力検出手段102,112、反射電力検出手段103,113、無反射終端104,114がマッチングボックス404,416との間に図1に示すような構成で、特性インピーダンス50Ωの同軸ケーブルでつながれている。
【0110】
このような装置により、まず、円筒状基体405を反応容器401内の回転軸408上に設置した。その後、不図示の排気装置により排気管411を通して反応容器401内を排気した。続いて、回転軸408を介して円筒状基体405を不図示のモータにより10rpmの速度で回転させ、更に原料ガス供給手段412より反応容器401中に500ml/min(normal)のAr を供給しながら発熱体407により円筒状基体405を加熱し250℃に制御し、その状態を2時間維持した。
【0111】
次いで、Arの供給を停止し、反応容器401を不図示の排気装置により排気管411を通して排気した後、原料ガス供給手段412を介して、表1に示した電荷注入阻止層形成に用いる原料ガスを導入した。原料ガスの流量が設定流量となり、また、反応容器401内の圧力が安定したのを確認した後、高周波電源403,415の出力を表1に示した電荷注入阻止層条件の20%の値に設定した。この状態でマッチングボックス404,416内のマッチング可変コンデンサ602,602’、チューニング可変コンデンサ603,603’の容量を変化させた。入射電力検出手段102からの出力、及び反射電力検出手段103からの出力は制御系610に入力され、制御系610内において各入力値が電力値に換算されて、電力反射率が算出される。本実施例においては放電生起時の整合目標条件を電力反射率20%以下と設定し、電力反射率が20%以下となった時点で、制御系610はマッチング可変コンデンサ602、チューニング可変コンデンサ603の容量変化を停止する。
【0112】
同様にして、入射電力検出手段112からの出力、及び反射電力検出手段113からの出力は制御系610’に入力され、制御系610’内において各入力値が電力値に換算されて、電力反射率が算出される。本実施例においてはマッチングボックス416の放電生起時の整合目標条件も電力反射率20%以下と設定し、電力反射率が20%以下となった時点で、制御系610’はマッチング可変コンデンサ602’、チューニング可変コンデンサ603’の容量変化を停止する。
【0113】
このようにマッチング可変コンデンサ602,602’及びチューニング可変コンデンサ603,603’の容量を調整しながら、高周波電源403,415の出力を表1に示した電荷注入阻止層条件の値まで上げることで放電を生起し、電荷注入阻止層の形成を開始した。電荷注入阻止層の形成が開始されたら、マッチングボックス404、414共に整合目標条件を電力反射率5%以下に設定変更し、電力反射率が5%以下となるまでマッチング可変コンデンサ602、602’、チューニング可変コンデンサ603、603’の容量を変化させ、電力反射率が5%以下となった時点で、制御系610、610’はマッチング可変コンデンサ602、602’、チューニング可変コンデンサ603、603’の容量変化を停止する。
【0114】
このようにして、電荷注入阻止層の形成が終了したら、高周波電力の出力を停止し、ガス種、ガス流量、圧力等のプラズマ処理条件を表1に示した光導電層形成条件に設定し、電荷注入阻止層形成時と同様にして放電を生起し、光導電層を形成した。
【0115】
光導電層の形成が終了したら、同様にして表面層を形成して、電子写真感光体の形成を終了した。
【0116】
【表1】
Figure 2004156059
このようにして、電荷注入阻止層、光導電層、表面層からなる電子写真用感光体を10ロット、合計60本作製した。いずれのロットにおいても安定した電子写真用感光体形成がなされた。
【0117】
(比較例1)
図7に示す堆積膜形成装置、及び図6に示す構成のマッチングボックス及びその制御系を用い、高周波電源403の発振周波数を60MHz、高周波電源415の発振周波数を100MHzとし、直径80mm、長さ358mmの円筒状アルミニウムシリンダー405上に表1に示す条件で電荷注入阻止層、光導電層、表面層からなるa−Si系感光体を10ロット、合計60本作製した。図7中のマッチングボックス404、416内の構成はいずれも図6に示す構成であるが、マッチングボックス404内の各部とマッチングボックス416内の各部を区別するために、以下ではマッチングボックス416内の各部を示す番号には「’」を添えて説明する。
【0118】
また、マッチング可変コンデンサ202,202’は50pF以上,1000pF以下の範囲で可変のものを用い、チューニング可変コンデンサ203,203’は5pF以上,250pF以下の範囲で可変のものを用いた。高周波電源403,415の出力インピーダンスは50Ωであり、マッチングボックス404,416との間は特性インピーダンス50Ωの同軸ケーブルでつながれている。
【0119】
このような装置により、まず、実施例1と同様にして、円筒状基体405を加熱して250℃に制御し、及び原料ガスの導入を行った。原料ガスの流量が設定流量となり、また、反応容器401内の圧力が安定したのを確認した後、高周波電源403,415の出力を表1に示した電荷注入阻止層条件の20%の値に設定した。
【0120】
次いでマッチングボックス404,416でインピーダンス調整を行った。具体的には、整合回路201,201’の入口において、電流検出素子205,205’により高周波電流が検出され、電圧検出素子206,206’により高周波電圧が検出される。電流検出素子205,205’、電圧検出素子206,206’の各出力は、制御系200,200’内の位相差検出器207,207’とインピーダンス検出器208,208’に入力される。位相差検出器207,207’では整合回路201,201’の入口におけるインピーダンスの位相が検出され、インピーダンスの位相に応じた電圧がチューニング制御回路209,209’に出力される。チューニング制御回路209,209’ではチューニング可変コンデンサ203,203’のインピーダンスを位相差検出器207,207’より入力された電圧に基づいて制御する。即ち、位相差検出器207,207’より入力された電圧と基準電圧を比較し、その差に応じた電圧をチューニング可変コンデンサ203,203’を駆動するモーター210,210’に供給し、位相差検出器207,207’より入力される電圧と基準電圧の差が小さくなる方向に調整する。基準電圧はマッチングボックス404,416の高周波電力入力点での負荷側への入射電圧と反射電圧の位相差を0度とした際の位相検出器107,107’からの出力電圧値に設定されている。
【0121】
一方、インピーダンス検出器208,208’では整合回路201,201’の入口におけるインピーダンスの絶対値が検出され、インピーダンスの絶対値に応じた電圧がマッチング制御回路211,211’に出力される。マッチング制御回路211,211’ではマッチング可変コンデンサ202,202’のインピーダンスをインピーダンス検出器208,208’より入力された電圧に基づいて制御する。即ち、インピーダンス検出器208,208’より入力された電圧と基準電圧を比較し、その差に応じた電圧をマッチング可変コンデンサ202,202’を駆動するモーター212,212’に供給し、インピーダンス検出器208,208’より入力された電圧と基準電圧の差が小さくなる方向に調整する。基準電圧はマッチングボックス404,416の高周波電力入力点から負荷側をみたインピーダンスを50Ωとした際のインピーダンス検出器208,208’からの出力電圧値に設定されている。
【0122】
このようにマッチング可変コンデンサ202,202’及びチューニング可変コンデンサ203,203’のインピーダンス調整が自動制御によりなされている状態で、高周波電源403,415の出力を表1に示した電荷注入阻止層の値まで上げることで放電を生起し、電荷注入阻止層の形成を開始した。
【0123】
チューニング制御回路209,209’ではチューニング可変コンデンサ203,203’の容量調整を行い、位相検出器207,207’より入力された電圧と基準電圧の差が整合目標条件以下となった場合にモーター210,210’への電圧の供給を停止する。基準電圧はマッチングボックス404,416の高周波電力入力点での負荷側への入射電圧と反射電圧の位相差を0度とした際の位相検出器207,207’からの出力電圧値に設定されている。
【0124】
同時並行的に、マッチング制御回路211,211’ではマッチング可変コンデンサ202,202’の容量調整を行い、マッチング可変コンデンサ202,202’の容量がインピーダンス検出器208,208’より入力された電圧と基準電圧の差が整合目標条件以下となった場合にモーター212,212’への電圧の供給を停止する。基準電圧はマッチングボックス404,416の高周波電力入力点での負荷側のインピーダンスを50Ωとした際のインピーダンス検出器208,208’からの出力電圧値に設定されている。
【0125】
このようにして、電荷注入阻止層の形成を終了した後、高周波電力の出力を停止し、ガス種、ガス流量、圧力等のプラズマ処理条件を表1に示した光導電層形成条件に設定し、電荷注入阻止層形成時と同様にして放電を生起させ、光導電層の形成を行った。
【0126】
光導電層の形成が終了した後、高周波電力の出力を停止し、ガス種、ガス流量、圧力等のプラズマ処理条件を表1に示した表面層形成条件に設定し、電荷注入阻止層形成時と同様にして放電を生起させ、表面層層の形成を行った。
【0127】
なお、予め、電力反射率が5%以下となる位相検出器207,207’の出力値とインピーダンス検出器208,208’の出力値の組み合わせを調べておき、これを整合目標条件とした。
【0128】
このようにして、電荷注入阻止層、光導電層、表面層からなる電子写真用感光体を10ロット、合計60本作製した。
【0129】
その結果、6ロットにおいて電子写真用感光体形成中にマッチング可変コンデンサ202,202’及びチューニング可変コンデンサ203,203’の容量が一時的に安定点から大きく外れ放電が不安定になる現象が生じた。
【0130】
このようにして実施例1、比較例1で作製されたa−Si感光体を本テスト用に改造されたキヤノン製の複写機NP−6750に設置し、感光体の特性評価を行なった。評価項目は、「画像濃度むら」、「光メモリー」、「特性ばらつき」、「画像欠陥」の4項目とし、以下の具体的評価法により各項目の評価を行なった。
【0131】
画像濃度むら …まず、現像器位置での暗部電位が一定値となるように主帯電器電流を調整した後、原稿に反射濃度0.1以下の所定の白紙を用い、現像器位置での明部電位が所定の値となるように像露光光量を調整した。次いでキヤノン製中間調チャート(部品番号:FY9−9042)を原稿台に置き、コピーしたときに得られたコピー画像上全領域における反射濃度の最高値と最低値の差により評価した。評価結果は全感光体の平均値とした。従って、数値が小さいほど良好である。
【0132】
光メモリー …現像器位置における暗部電位が所定の値となるように、主帯電器の電流値を調整した後、所定の白紙を原稿とした際の明部電位が所定の値となるよう像露光光量を調整する。この状態でキヤノン製ゴーストテストチャート(部品番号:FY9−9040)に反射濃度1.1、直径5mmの黒丸を貼り付けたものを原稿台に置き、その上にキヤノン製中間調チャートを重ねておいた際のコピー画像において、中間調コピー上に認められるゴーストチャートの直径5mmの黒丸の反射濃度と中間調部分の反射濃度との差を測定することにより行った。光メモリー測定は感光体の長手方向全領域にわたって行い、その中の最大反射濃度差により評価した。評価結果は全感光体の平均値とした。従って、数値が小さいほど良好である。
【0133】
特性ばらつき …上記「光メモリー」評価における全感光体の評価結果の最大値・最小値を求め、次いで、(最大値)/(最小値)の値を求めた。従って、数値が小さいほど特性ばらつきが小さく良好であることを示す。
【0134】
画像欠陥 …キヤノン製中間調チャート(部品番号:FY9−9042)を原稿台に置き、コピーしたときに得られたコピ−画像の同一面積内にある直径0.1mm以上の白点を数え、その数により評価した。従って、数値が小さいほど良好である。
【0135】
評価結果を表2に示す。表2において、評価結果は、比較例1の評価結果を基準とし、画像濃度むらに関しては、最大反射濃度差が1/4未満まで良化したものを◎、1/4以上1/2未満まで良化したものを◎〜〇、1/2以上3/4未満まで良化したものを〇、3/4以上までの良化を〇〜△、同等を△、悪化を×で示した。また、「特性ばらつき」については40%以上の良化を◎、20%以上40%未満の良化を○、10%以上20%未満の良化を△、10%未満の良化または10%未満の悪化を▲、10%以上の悪化を×で示した。光メモリーに関しては最大反射濃度差が1/4未満まで良化したものを◎、1/4以上1/2未満まで良化したものを◎〜〇、1/2以上3/4未満まで良化したものを〇、3/4以上までの良化を〇〜△、同等を△、悪化を×で示した。画像欠陥に関しては、直径0.1mm以上の白点の数が1/4未満まで良化したものを◎、1/4以上1/2未満まで良化したものを◎〜〇、1/2以上3/4未満まで良化したものを〇、3/4以上までの良化を〇〜△、同等を△、悪化を×で示した。
【0136】
実施例1で作製した電子写真感光体はいずれの評価項目においても良好な結果が得られ、本発明の効果が確認された。また、実施例1で作製された電子写真感光体を用いて形成された電子写真画像は、画像流れ等もない極めて良好なものであった。
【0137】
【表2】
Figure 2004156059
(実施例2)
実施例1で用いた堆積膜形成装置、マッチングボックス、及び制御系を用い、表1に示す条件で、まず、以下の手順によりマッチング可変コンデンサ602,602’、及び、チューニング可変コンデンサ603,603’のインピーダンス可変範囲の決定を行った。
【0138】
まず、実施例1と同様の手順で、円筒状基体405の加熱・制御、及び原料ガスの導入を行った。原料ガスの流量が設定流量となり、また、反応容器401内の圧力が安定したのを確認した後、高周波電源403,415の出力を表1に示した電荷注入阻止層条件の20%の値に設定した。この状態でマッチングボックス404,416内のマッチング可変コンデンサ602,602’の容量及びチューニング可変コンデンサ603,603’の容量を調整し、電力反射率が最小となるようにした。
【0139】
その後、高周波電源403,415の出力を表1に示した電荷注入阻止層条件の値まで上げることで放電を生起し、放電が生起した際の各々の可変コンデンサの容量を調べた。引き続き、電荷注入阻止層の形成を行った。電荷注入阻止層の形成が開始されたら、再びマッチング可変コンデンサ602,602’及びチューニング可変コンデンサ603,603’の容量を電力反射率が最小になるように調整した。この調整を電荷注入阻止層形成中、2分間隔で行い、電荷注入阻止層形成中のマッチング可変コンデンサ602,602’及びチューニング可変コンデンサ603,603’の容量の変動範囲を調べた。
【0140】
電荷注入阻止層の形成が終了したら、高周波電力の出力を停止し、ガス種、ガス流量、圧力等のプラズマ処理条件を表1に示した光導電層形成条件に設定し、電荷注入阻止層形成時と同様にして、放電生起時のマッチング可変コンデンサ602,602’及びチューニング可変コンデンサ603,603’の容量、光導電層形成中のマッチング可変コンデンサ602,602’及びチューニング可変コンデンサ603,603’の容量の変動範囲を調べた。
【0141】
同様にして、表面層に関して放電生起時のマッチング可変コンデンサ602,602’及びチューニング可変コンデンサ603,603’の容量、表面層形成中のマッチング可変コンデンサ602,602’及びチューニング可変コンデンサ603,603’の容量の変動範囲を調べた。
【0142】
このような実験を10回行い、電荷注入阻止層、光導電層、表面層の放電生起時のマッチング可変コンデンサ602,602’及びチューニング可変コンデンサ603,603’の容量の変動範囲、各層形成中のマッチング可変コンデンサ602,602’及びチューニング可変コンデンサ603,603’の容量の変動範囲を調べた。
【0143】
この結果を基に、電荷注入阻止層放電開始時、電荷注入阻止層形成時、光導電層放電開始時、光導電層形成時、表面層放電開始時、表面層形成時のマッチング可変コンデンサ602,602’及びチューニング可変コンデンサ603,603’の容量可変範囲を以下の条件を満たすように決定した。
【0144】
容量可変範囲の中心は容量変動範囲の中心とする。
【0145】
容量可変範囲の幅は容量変動範囲幅の2倍とする。
【0146】
このようにしてマッチング可変コンデンサ602,602’、及び、チューニング可変コンデンサ603,603’の容量可変範囲の決定を行った後、表1に示す条件で以下のようにして電子写真感光体を10ロット作製した。
【0147】
まず、円筒状基体405を反応容器401内の回転軸408上に設置した。その後、不図示の排気装置により排気管411を通して反応容器401内を排気した。続いて、回転軸408を介して円筒状基体405を不図示のモータにより10rpmの速度で回転させ、更に原料ガス供給手段412より反応容器401中に500ml/min(normal)のAr を供給しながら発熱体407により円筒状基体405を加熱して250℃に制御し、その状態を2時間維持した。
【0148】
次いで、Arの供給を停止し、反応容器401を不図示の排気装置により排気管411を通して排気した後、原料ガス供給手段412を介して、表1に示した電荷注入阻止層形成に用いる原料ガスを導入した。原料ガスの流量が設定流量に達し、また、反応容器401内の圧力が安定したのを確認した後、高周波電源403,415の出力を表1に示した電荷注入阻止層条件の20%の値に設定した。
【0149】
なお、制御系610,610’には、容量可変範囲決定の実験結果に基づいた、電荷注入阻止層放電開始時、電荷注入阻止層形成時、光導電層形成時、表面層形成時の各容量可変範囲が予め入力設定されており、容量可変範囲指定信号の入力により所望の容量可変範囲が選択される。
【0150】
この状態で、まず、制御系610,610’に容量可変範囲指定信号を入力し、電荷注入阻止層放電開始時の容量可変範囲を選択した後、インピーダンス自動制御を開始する。具体的には、制御系610,610’において、電力反射率が整合目標条件を満たしていない場合には、制御系610,610’よりチューニング可変コンデンサ603,603’を駆動するモーター605,605’に信号が出力され、その信号に基づいてモーター605,605’が回転し、それに連動してチューニング可変コンデンサ603,603’のインピーダンスが増加する方向、または減少する方向に所定量調整される。この時点で電力反射率が整合条件を満たした場合にはインピーダンス制御を停止する。一方、電力反射率が整合条件を満たさない場合には、インピーダンス調整前と比べて電力反射率が増加したか減少したかを制御系610,610’が判断し、電力反射率が増加した場合にはチューニング可変コンデンサ603,603’のインピーダンス調整方向を逆方向、即ち、インピーダンスが増加する方向に調整していた場合にはインピーダンスが減少する方向に、インピーダンスが減少する方向に調整していた場合にはインピーダンスが増加する方向に所定量調整する。逆に、電力反射率が減少した場合には、更に同方向、即ち、インピーダンスが増加する方向に調整していた場合には更にインピーダンスが増加する方向に、インピーダンスが減少する方向に調整していた場合には更にインピーダンスが減少する方向に所定量調整する。
【0151】
同様のインピーダンス調整がマッチング可変コンデンサ602,602’についてもなされ、電力反射率が整合目標条件を満たした際にインピーダンス調整を終了する。
【0152】
そして、チューニング可変コンデンサ603,603’のインピーダンスが予め定められた可変範囲の最大値、又は最小値になった場合は、その時点でモーター605,605’の駆動を停止する。一方、既にチューニング可変コンデンサ603,603’のインピーダンスが予め定められた可変範囲の最大値となっている場合には、チューニング可変コンデンサ603,603’のインピーダンスを小さくする方向へのモーター605,605’の駆動は行うが、チューニング可変コンデンサ603,603’のインピーダンスを大きくする方向への駆動は行わない。同様に、既にチューニング可変コンデンサ603,603’のインピーダンスが予め定められた可変範囲の最小値となっている場合には、チューニング可変コンデンサ603,603’のインピーダンスを大きくする方向へのモーター605,605’の駆動は行うが、チューニング可変コンデンサ603,603’のインピーダンスを小さくする方向への駆動は行わない。このようにして、電力反射率が整合目標条件を満たすようにチューニング可変コンデンサ603,603’のインピーダンスを予め定められた可変範囲内で制御し、予め定められた可変範囲内で整合目標条件が満たされない場合には、電力反射率が整合目標条件に最も近い状態でチューニング可変コンデンサ603,603’のインピーダンス調整を停止する。
【0153】
同様にして、マッチング可変コンデンサ602,602’についてもインピーダンスを予め定められた可変範囲内で制御する。
【0154】
このような制御により、インピーダンス調整は予め定められたインピーダンス可変範囲内で行われる。なお、チューニング可変コンデンサ603,603’、マッチング可変コンデンサ602,602’のインピーダンスを検知する方法としては、可変コンデンサ駆動用のモーター605,606,605’,606’としてステッピングモーターを用いることにより行った。
【0155】
このようにマッチング可変コンデンサ602,602’及びチューニング可変コンデンサ603,603’のインピーダンス調整が自動制御によりなされている状態で、高周波電源403,415の出力を表1に示した電荷注入阻止層の値まで上げることで放電を生起し、電荷注入阻止層の形成を開始した。電荷注入阻止層の形成が開始されたら、制御系610,610’に容量可変範囲指定信号を入力することで、電荷注入阻止層形成時の容量可変範囲を選択し、マッチング可変コンデンサ602,602’及びチューニング可変コンデンサ603,603’の容量可変範囲を電荷注入阻止層形成時の範囲に設定変更した。制御系610,610’では変更された容量可変範囲内でチューニング可変コンデンサ603,603’の容量調整を行う。そして、チューニング可変コンデンサ603,603’の容量が可変範囲の最大値、又は最小値になった場合、または、電力反射率が整合目標条件以下となった場合にモーター605,605’への電力の供給を停止する。整合目標条件は、電力反射率10%以下と設定した。
【0156】
同時並行的に、制御系610,610’では変更された容量可変範囲内でマッチング可変コンデンサ602,602’の容量調整を行う。そして、マッチング可変コンデンサ602,602’の容量が可変範囲の最大値、又は最小値になった場合、または、電力反射率が整合目標条件以下となった場合にモーター606,606’への電力の供給を停止する。
【0157】
このようにして、電荷注入阻止層の形成を終了した後、高周波電力の出力を停止し、ガス種、ガス流量、圧力等のプラズマ処理条件を表1に示した光導電層形成条件に設定し、また、制御系610,610’に容量可変範囲指定信号を入力することで、光導電層放電開始時の容量可変範囲を選択した後、電荷注入阻止層形成時と同様にして放電を生起させ、光導電層の形成を行った。
【0158】
光導電層の形成が終了した後、高周波電力の出力を停止し、ガス種、ガス流量、圧力等のプラズマ処理条件を表1に示した表面層形成条件に設定し、また、制御系610,610’に容量可変範囲指定信号を入力することで、表面層放電開始時の容量可変範囲を選択した後、電荷注入阻止層形成時と同様にして放電を生起させ、表面層層の形成を行った。
【0159】
このようにして、電荷注入阻止層、光導電層、表面層からなる電子写真用感光体を10ロット、合計60本作製した。いずれのロットにおいても安定した電子写真用感光体形成がなされた。
【0160】
(実施例3)
実施例2で用いた堆積膜形成装置、マッチングボックス、及び制御系を用い、表1に示す条件で、以下の手順により電荷注入阻止層、光導電層、表面層の各層形成時の整合目標条件を決定した。
【0161】
まず、実施例2においてインピーダンス可変範囲を決定した際と同様の手順で電荷注入阻止層の形成を開始した。電荷注入阻止層の形成が開始されたら、マッチング可変コンデンサ602,602’及びチューニング可変コンデンサ603,603’の容量を電力反射率が最小になるように調整した。この調整を電荷注入阻止層形成中、2分間隔で行い、電荷注入阻止層形成中の最小電力反射率の変動範囲を調べた。
【0162】
電荷注入阻止層の形成が終了したら、高周波電力の出力を停止し、ガス種、ガス流量、圧力等のプラズマ処理条件を表1に示した光導電層形成条件に設定し、電荷注入阻止層形成時と同様にして、光導電層形成中の最小電力反射率の変動範囲を調べた。
【0163】
同様にして、表面層に関して表面層形成中の最小電力反射率の変動範囲を調べた。
【0164】
このような実験を10回行い、電荷注入阻止層、光導電層、表面層の各層形成時の最小電力反射率の変動範囲を調べた。
【0165】
この結果を基に、電荷注入阻止層、光導電層、表面層形成時の整合目標条件を以下の条件を満たすように決定した。整合目標条件=(最小電力反射率の変動範囲の最大値)×1.5
続いて、実施例2と同様にして、マッチング可変コンデンサ602,602’、及び、チューニング可変コンデンサ603,603’の容量可変範囲の決定を行った後、表1に示す条件で実施例2と同様にして電子写真感光体を10ロット、合計60本作製した。但し、本実施例においては、整合目標条件は電荷注入阻止層、光導電層、表面層の各層ごとに上述したようにして決定した値を用いた。
【0166】
その結果、いずれのロットにおいても安定した電子写真用感光体形成がなされた。
【0167】
このようにして実施例2、実施例3で作製されたa−Si感光体を本テスト用に改造されたキヤノン製の複写機NP−6750に設置し、感光体の特性評価を行なった。評価項目は、「画像濃度むら」、「光メモリー」、「特性ばらつき」、「画像欠陥」の4項目とし、実施例1と同様の評価法により各項目の評価を行なった。
【0168】
評価結果を表3に示す。表3において、評価結果は、比較例1の評価結果を基準とした。
【0169】
実施例2で作製した電子写真感光体はいずれの評価項目においても良好な結果が得られ、本発明の効果が確認された。また、実施例1で作製された電子写真感光体と比較しても更に良好な特性が得られた。
【0170】
また、実施例3で作製した電子写真感光体はいずれの評価項目においても良好な結果が得られ、本発明の効果が確認された。また、実施例2で作製された電子写真感光体と比較しても更に良好な特性が得られた。
【0171】
【表3】
Figure 2004156059
(実施例4)
図3に示した堆積膜形成装置、及び図2に示したマッチングボックス、制御系を用い、表4に示す条件でa−Si系感光体を形成した。図3(a)はこの堆積膜形成装置の概略断面図、図3(b)は図3(a)中の切断線A‐A’に沿う概略断面図である。図3において、反応容器501の底部には排気口509が形成され、排気口509の他端は不図示の排気装置に接続されている。堆積膜の形成される直径30mm、長さ358mmの円筒状アルミニウムシリンダーである円筒状基体505がホルダー506に載置された状態で、反応容器501の中心部を取り囲むように12本、互いに平行になるように配置されている。
【0172】
各円筒状基体505は回転軸508によって保持され、発熱体507によって加熱されるようになっている。不図示のモータを駆動することで回転軸508が回転し、円筒状基体505がその長手方向に筒内を通る中心軸の回りを自転するようになっている。円筒状基体505は回転軸508を介してアース電位に維持される。
【0173】
反応容器501内には原料ガスが原料ガス供給手段510より供給される。原料ガス供給手段510は、内径10mm、外径13mmのアルミナ製パイプで、端部が封止された構造とし、パイプ上に設けられた直径1.2mmのガス噴出口より原料ガス供給可能な構造のものを用いた。原料ガス供給手段510の表面は、ブラスト加工により、表面粗さを2.5mmを基準長とするRzで20μmとした。
【0174】
反応容器501の一部を構成するアルミナ製の円筒状誘電体壁503の外部には棒状の高周波電極502が互いに平行に6本設置されており、更にその外部には高周波電力シールド504が設けられている。
【0175】
第1の高周波電源511の周波数は105MHzとし、第1の高周波電源511から出力された高周波電力は3ポート・サーキュレーター515、マッチングボックス(整合器)512を介して、高周波電極502より反応容器501中に導入される。反射電力はマッチングボックス512から3ポート・サーキュレーター515に至り、そこから第1の高周波電源511側には出力されず、無反射終端518側に出力され、その後、無反射終端518に至って、ここで電力消費される。入射電力は第1の高周波電源511と3ポート・サーキュレーター515の間に設けられた入射電力検出手段516により検出される。また、反射電力は3ポート・サーキュレーター515と無反射終端518の間に設けられた反射電力検出手段517により検出される。
【0176】
一方、第2の高周波電源513の周波数は60MHzとし、第2の高周波電源513から出力された高周波電力は3ポート・サーキュレーター519、マッチングボックス(整合器)514を介して、高周波電極502より反応容器501中に導入される。反射電力はマッチングボックス514から3ポート・サーキュレーター519に至り、そこから第2の高周波電源513側には出力されず、無反射終端522側に出力され、その後、無反射終端522に至って、ここで電力消費される。入射電力は第2の高周波電源513と3ポート・サーキュレーター519の間に設けられた入射電力検出手段520により検出される。また、反射電力は3ポート・サーキュレーター519と無反射終端522の間に設けられた反射電力検出手段521により検出される。
【0177】
入射電力検出手段516,520から出力される入射電力値を反映した信号、及び、反射電力検出手段517,521から出力される反射電力値を反映した信号は制御系610に入力され、制御系610内で電力反射率に変換される。制御系610ではこの電力反射率と予め設定された整合目標条件とを比較し、電力反射率が整合目標条件を満たしている場合にはインピーダンス制御は行わず、電力反射率が整合目標条件を満たさない場合にはインピーダンス制御を開始する。
【0178】
高周波電極502は直径20mmのSUS製円柱とした。また、反応容器501の一部を構成するアルミナ製の円筒状誘電体壁503の内面はブラスト加工により、表面粗さを2.5mmを基準長とするRzで20μmとした。また、マッチングボックス512,514の具体的構成は図2に示した構成であるが、マッチングボックス512内の各部とマッチングボックス514内の各部を区別するために、以下ではマッチングボックス514内の各部を示す番号には「’」を添えて説明する。マッチング可変コンデンサ602,602’は50pF以上,1000pF以下の範囲で可変のものを用い、チューニング可変コンデンサ603,603’は5pF以上,250pF以下の範囲で可変のものを用いた。
【0179】
このような装置を用い、まず、インピーダンス可変範囲の決定を実施例2と同様の手順により、表4に示す条件で行った。ついで、整合目標条件の決定を実施例3と同様の手順により、表4に示す条件で行った。なお、電荷輸送層形成後は放電を止めず、まず連続的にガス流量を5分間で変化させ、その後、電力を5分間で変化させて、次の層である電荷発生層を形成した。また、電荷発生層形成後は放電を止めず、連続的にガス流量、電力、圧力を15分間で変化させて、次の層である表面層を形成した。このようにして、インピーダンス可変範囲、整合目標条件を決定した。
【0180】
【表4】
Figure 2004156059
このようなインピーダンス可変範囲、整合目標条件を用いて概略以下の手順により電子写真感光体を表4に示す条件で10ロット、合計120本作製した。
【0181】
まず、基体ホルダー506に保持された円筒状アルミニウムシリンダー505を反応容器501内の回転軸508上に設置した。その後、不図示の排気装置により排気管509を通して反応容器501内を排気した。続いて、回転軸508を介して円筒状アルミニウムシリンダー505を不図示のモータにより10rpmの速度で回転させ、更に原料ガス供給手段510より反応容器501中に500ml/min(normal)のAr を供給しながら発熱体507により円筒状アルミニウムシリンダー505を加熱し250℃に温度制御し、その状態を2時間維持した。
【0182】
次いで、Arの供給を停止し、反応容器501を不図示の排気装置により排気管508を通して排気した後、原料ガス供給手段510を介して、表4に示した電荷輸送層形成に用いる原料ガスを導入した。原料ガスの流量が設定流量となり、また、反応容器501内の圧力が安定したのを確認した後、高周波電源511,513の出力を表4に示した電荷輸送層条件の20%の値に設定した。
【0183】
なお、制御系610,610’には、容量可変範囲決定の実験結果、整合目標条件決定の実験結果に基づいた、電荷注入阻止層形成時、光導電層形成時、表面層形成時の各容量可変範囲、整合目標条件が予め入力設定されており、容量可変範囲指定信号、整合目標条件指定信号の入力により所望の容量可変範囲、整合目標条件が選択される。
【0184】
この状態で、まず、制御系610,610’に容量可変範囲指定信号を入力し、容量可変範囲、整合目標条件を選択した後、インピーダンス自動制御を開始する。具体的な制御方法は実施例3と同様とした。
【0185】
このようにマッチング可変コンデンサ602,602’及びチューニング可変コンデンサ603,603’のインピーダンス調整を行いながら、高周波電源511,513の出力を表4に示した電荷輸送層条件の値まで上げることで放電を生起し、電荷輸送層の形成を開始した。電荷輸送層形成中のインピーダンス調整の具体的方法は実施例1と同様にした。
【0186】
このようにして、電荷輸送層の形成を終了した後、放電を止めず、まず連続的にガス流量を5分間で変化させ、その後電力を5分間で変化させて、次の層である電荷発生層形成条件に変化させた。この間、マッチング可変コンデンサ602,602’及びチューニング可変コンデンサ603,603’の容量可変範囲、整合目標条件は連続的に変化させ、電荷発生層形成開始時には各々の設定値が電荷発生層の各設定値となるようにした。その後、電荷発生層、表面層を同様にしてマッチング可変コンデンサ602,602’及びチューニング可変コンデンサ603,603’の容量可変範囲、整合目標条件を変化させながら電子写真感光体を形成した。なお、電荷発生層形成後は放電を止めず、連続的にガス流量、電力、圧力、マッチング可変コンデンサ602,602’及びチューニング可変コンデンサ603,603’の容量可変範囲、整合目標条件を15分間で変化させて、次の層である表面層を形成した。
【0187】
このようにして、電荷輸送層、電荷発生層、表面層からなる電子写真用感光体を10ロット、合計120本作製した。いずれのロットにおいても安定した電子写真用感光体形成がなされた。
【0188】
(比較例2)
図4に示した堆積膜形成装置、及び図6に示したマッチングボックス、制御系を用い、表4に示す条件でa−Si系感光体を形成した。図4(a)はこの堆積膜形成装置の概略断面図、図4(b)は図4(a)中の切断線A‐A’に沿う概略断面図である。
【0189】
図4に示した堆積膜形成装置は、実施例4で用いた堆積膜形成装置(図3)から3ポート・サーキュレーター(図3の符号515,519)、無反射終端(図3の符号518,522)、入射電力検出手段(図3の符号516,520)、反射電力検出手段(図3の符号517,521)を取り外した構成となっている。第1の高周波電源511の周波数は105MHz、第2の高周波電源513の周波数は60MHzとした。
【0190】
このような装置により、インピーダンス調整の仕方以外は実施例4と同様にして電荷輸送層、電荷発生層、表面層からなる電子写真用感光体を10ロット、合計120本作製した。なお、インピーダンス調整は比較例1と同様にして行った。
【0191】
その結果、5ロットにおいて電子写真用感光体形成中にマッチング可変コンデンサ202,202’及びチューニング可変コンデンサ203,203’の容量が一時的に安定点から大きく外れ放電が不安定になる現象が生じた。
【0192】
このようにして実施例4、比較例2で作製されたa−Si系感光体を本テスト用に改造されたキヤノン製の複写機NP−6030に設置し、感光体の特性評価を行なった。評価項目は、「画像濃度むら」、「光メモリー」、「特性ばらつき」、「画像欠陥」の4項目とし、具体的評価法は実施例1と同様にした。
【0193】
比較例2を基準とした評価結果を表7に示す。実施例4で作製した電子写真感光体はいずれの評価項目においても良好な結果が得られ、本発明の効果が確認された。
【0194】
【表5】
Figure 2004156059
本発明の様々な実施例が示され説明されたが、当業者であれば、本発明の趣旨と範囲は本明細書内の特定の説明と図に限定されるのではなく、以下に列挙する様々な態様の修正と変更に及ぶものである。
【0195】
以下、本発明の様々な態様を列挙する。
【0196】
「発明態様1」 周波数の異なる複数の高周波電力を反応容器中に導入し、該反応容器中で原料ガスを分解することにより、前記反応容器中に設置した被処理物に処理を施すプラズマ処理方法において、少なくとも1つの高周波電力は高周波電源から出力された後、3ポート・サーキュレーター、整合器をこの順番で介した後、高周波電極から反応容器中に導入され、前記3ポート・サーキュレーターと前記高周波電源の間に設けられた入射電力検出手段から出力される信号、及び、前記3ポート・サーキュレーターの反射電力出力ポートと前記反射電力出力ポートに接続された無反射終端との間に設けられた反射電力検出手段から出力される信号とに基づいて前記整合器におけるインピーダンス調整を行うことを特徴とするプラズマ処理方法。
【0197】
「発明態様2」 全ての高周波電力が高周波電源から出力された後、3ポート・サーキュレーター、整合器をこの順番で介した後、高周波電極から反応容器中に導入され、前記3ポート・サーキュレーターと前記高周波電源の間に設けられた入射電力検出手段から出力される信号、及び、前記3ポート・サーキュレーターの反射電力出力ポートと前記反射電力出力ポートに接続された無反射終端との間に設けられた反射電力検出手段から出力される信号とに基づいて前記整合器におけるインピーダンス調整を行う、発明態様1に記載のプラズマ処理方法。
【0198】
「発明態様3」 周波数の異なる複数の高周波電力を同一の高周波電極より反応容器中に同時に供給する、発明態様1または2に記載のプラズマ処理方法。
【0199】
「発明態様4」 周波数の異なる複数の高周波電力は周波数が10MHz以上250MHz以下の高周波電力を少なくとも2つ含み、前記周波数の範囲内にある高周波電力が有する電力値の中で最も大きい電力値と次に大きい電力値を有する高周波電力について、周波数が高い方の高周波電力の周波数をf1、周波数が低い方の高周波電力の周波数をf2として、
0.1≦f2/f1≦0.9
である、発明態様1から3のいずれかに記載のプラズマ処理方法。
【0200】
「発明態様5」 周波数の異なる複数の高周波電力は周波数が10MHz以上250MHz以下の高周波電力を少なくとも2つ含み、前記周波数の範囲内にある高周波電力が有する電力値の中で最も大きい電力値と次に大きい電力値を有する高周波電力について、周波数が高い方の高周波電力の周波数をf1、周波数が低い方の高周波電力の周波数をf2として、
0.5<f2/f1≦0.9
である、発明態様4に記載のプラズマ処理方法。
【0201】
「発明態様6」 整合器におけるインピーダンス調整が予め定められたインピーダンス可変範囲内で電力検出器から出力される信号に基づいて行う、発明態様1から5のいずれかに記載のプラズマ処理方法。
【0202】
「発明態様7」 プラズマ処理の進行に伴ってインピーダンス可変範囲を変更する、発明態様6に記載のプラズマ処理方法。
【0203】
「発明態様8」 プラズマ処理の進行に伴ってインピーダンス可変範囲を実質的に連続的に変更する、発明態様7に記載のプラズマ処理方法。
【0204】
「発明態様9」 整合器によるインピーダンス調整が、自動制御によりなされる、発明態様1から8のいずれか1項に記載のプラズマ処理方法。
【0205】
「発明態様10」 自動制御は整合器のインピーダンスを調整することにより予め定められた整合目標条件を満たすようになされ、かつ、プラズマ処理の進行に伴って前記整合目標条件を変更する、発明態様9に記載のプラズマ処理方法。
【0206】
「発明態様11」 プラズマ処理の進行に伴って、整合目標条件を実質的に連続的に変更する、発明態様10に記載のプラズマ処理方法。
【0207】
「発明態様12」 プラズマ処理が条件の異なる複数の処理を連続的に行う、発明態様1から11のいずれかに記載のプラズマ処理方法。
【0208】
「発明態様13」 被処理物がプラズマ処理中の少なくとも一時期において、移動または回転する、発明態様1から12のいずれかに記載のプラズマ処理方法。
【0209】
「発明態様14」 プラズマ処理が電子写真用感光体形成である、発明態様1から13のいずれかに記載のプラズマ処理方法。
【0210】
「発明態様15」 少なくとも高周波電源と整合器を有する複数の高周波電力供給系と、該複数の高周波電力供給系から供給される周波数の異なる複数の高周波電力を反応容器中に導入するための高周波電極と、該反応容器中に原料ガスを供給するための原料ガス供給手段を有するプラズマ処理装置において、前記複数の高周波電力供給系のうちの少なくとも1つは、3ポート・サーキュレーターを有しており、該3ポート・サーキュレーターの第1ポートを前記高周波電源から出力された高周波電力の入力端とし、高周波電力が出力される第2ポートを前記整合器に接続し、残る第3ポートを無反射終端に接続し、前記第1ポートと前記高周波電源との間に設置された入射電力検出手段と、前記第3ポートと前記無反射終端との間に設置された反射電力検出手段より出力される信号に基づいて、前記整合器におけるインピーダンス調整を行う機構を有することを特徴とするプラズマ処理装置。
【0211】
「発明態様16」 複数の電力供給系のうち、少なくとも2つが同一の高周波電極に接続されている、発明態様15に記載のプラズマ処理装置。
【0212】
「発明態様17」 周波数の異なる複数の高周波電力は周波数が10MHz以上250MHz以下の高周波電力を少なくとも2つ含み、前記周波数の範囲内にある高周波電力が有する電力値の中で最も大きい電力値と次に大きい電力値を有する高周波電力について、周波数が高い方の高周波電力の周波数をf1、周波数が低い方の高周波電力の周波数をf2として、
0.1≦f2/f1≦0.9
である、発明態様15または16に記載のプラズマ処理装置。
【0213】
「発明態様18」 周波数の異なる複数の高周波電力は周波数が10MHz以上250MHz以下の高周波電力を少なくとも2つ含み、前記周波数の範囲内にある高周波電力が有する電力値の中で最も大きい電力値と次に大きい電力値を有する高周波電力について、周波数が高い方の高周波電力の周波数をf1、周波数が低い方の高周波電力の周波数をf2として、
0.5<f2/f1≦0.9
である、発明態様17に記載のプラズマ処理装置。
【0214】
「発明態様19」 整合器はインピーダンス可変な整合回路を有しており、該整合回路のインピーダンスを制御するための制御部がインピーダンス可変範囲を制限する可変範囲設定値を格納可能である、発明態様15から18のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置。
【0215】
「発明態様20」 制御部が複数の可変範囲設定値を格納可能である、発明態様19に記載のプラズマ処理装置。
【0216】
「発明態様21」 制御部が整合が取れたと判断するための整合目標条件を複数格納可能である、発明態様19または20に記載のプラズマ処理装置。
【0217】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、高周波電源から出力された後、整合器、電極を介して反応容器中に導入された周波数の異なる複数の高周波電力により反応容器中に導入した原料ガスを分解し、該反応容器中に設置された被処理物に処理を施すプラズマ処理方法において、整合器によるインピーダンス整合が適正に、安定して達成され、その結果、プラズマ処理特性の向上、プラズマ処理特性の再現性向上、更にはプラズマ処理コストの低減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に用いることができるプラズマ処理装置の一例を示した模式的な構成図である。
【図2】本発明に用いることができるマッチングボックス内の構成、及びその制御系の概略を示した図である。
【図3】本発明に用いることができるプラズマ処理装置の一例を示した模式的な構成図である。
【図4】従来のVHF帯の周波数を用いたVHFプラズマCVD法による電子写真用光受容部材の製造装置の一例を示した模式的な構成図である。
【図5】従来のVHF帯の周波数を用いたVHFプラズマCVD法による電子写真用光受容部材の製造装置の一例を示した模式的な構成図である。
【図6】従来のマッチングボックス内の構成、及びその制御系の一例の概略を示した図である。
【図7】従来のVHF帯の周波数を用いたVHFプラズマCVD法による電子写真用光受容部材の製造装置の一例を示した模式的な構成図である。
【符号の説明】
101、111、515、519 3ポート・サーキュレーター
102、112、516、520 入射電力検出手段
103、113、517、521 反射電力検出手段
104、114、518、522 無反射終端
200、610 制御系
201、601 整合回路
202、602 マッチング可変コンデンサ
203、603 チューニング可変コンデンサ
204、604 コイル
205 電流検出素子
206 電圧検出素子
207 位相差検出器
208 インピーダンス検出器
209 チューニング制御回路
210、212、309、605、606 モーター
211 マッチング制御回路
301、401、501 反応容器
302、402、414、502 高周波電極
303、403、415、513 高周波電源
304、404、416、511、512、514 マッチングボックス
305、405、505 円筒状基体
306 成膜空間
307、407、507 発熱体
308、408、508 回転軸
310 減速ギア
311、411 排気管
312、412、510 原料ガス供給手段
503 誘電体壁
504 シールド
506 ホルダー
509 排気口

Claims (1)

  1. 周波数の異なる複数の高周波電力を反応容器中に導入し、該反応容器中で原料ガスを分解することにより、前記反応容器中に設置した被処理物に処理を施すプラズマ処理方法において、
    少なくとも1つの高周波電力は高周波電源から出力された後、3ポート・サーキュレーター、整合器をこの順番で介した後、高周波電極から反応容器中に導入され、前記3ポート・サーキュレーターと前記高周波電源の間に設けられた入射電力検出手段から出力される信号、及び、前記3ポート・サーキュレーターの反射電力出力ポートと前記反射電力出力ポートに接続された無反射終端との間に設けられた反射電力検出手段から出力される信号とに基づいて前記整合器におけるインピーダンス調整を行うことを特徴とするプラズマ処理方法。
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