JP2003027245A - 真空処理方法及び真空処理装置 - Google Patents

真空処理方法及び真空処理装置

Info

Publication number
JP2003027245A
JP2003027245A JP2001215387A JP2001215387A JP2003027245A JP 2003027245 A JP2003027245 A JP 2003027245A JP 2001215387 A JP2001215387 A JP 2001215387A JP 2001215387 A JP2001215387 A JP 2001215387A JP 2003027245 A JP2003027245 A JP 2003027245A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
frequency
high frequency
frequency power
power
vacuum processing
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2001215387A
Other languages
English (en)
Inventor
Hitoshi Murayama
仁 村山
Yukihiro Abe
幸裕 阿部
Makoto Aoki
誠 青木
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Canon Inc
Original Assignee
Canon Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Canon Inc filed Critical Canon Inc
Priority to JP2001215387A priority Critical patent/JP2003027245A/ja
Publication of JP2003027245A publication Critical patent/JP2003027245A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Photoreceptors In Electrophotography (AREA)
  • Chemical Vapour Deposition (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 真空処理速度や、真空処理特性や、真空処理
特性の再現性の向上、更には真空処理特性の均一性を極
めて高いレベルとし、真空処理コストの低減を図る。 【解決手段】 異なる周波数の高周波電力を同一の高周
波電極上の同一の供給点に同時供給して形成されたプラ
ズマにより被処理物を処理する方法で、少なくとも1つ
の高周波電極上を伝送される高周波電力の主なる伝送方
向が他の高周波電極上を伝送される高周波電力の主なる
伝送方向と異なり、複数の高周波電力が周波数が10M
Hz以上250MHz以下の高周波電力を2つ以上含
み、該周波数範囲内にある高周波電力の中で最大の電力
値と次に大きい電力値を有する高周波電力について、周
波数の高い方の高周波電力の周波数、電力値をf1、P
1、周波数の低い方の高周波電力の周波数、電力値をf
2、P2としたとき、電力値P1、P2が、0.1≦P
2/(P1+P2)≦0.9の条件を満たす。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は半導体デバイス、電
子写真用感光体、画像入力用ラインセンサー、撮影デバ
イス、光起電力デバイス等における堆積膜形成やエッチ
ング等に用いられる高周波電力を用いた真空処理方法、
及び真空処理装置に関する、
【0002】
【従来の技術】従来、半導体デバイス、電子写真用感光
体、画像入力用ラインセンサー、撮影デバイス、光起電
力デバイス、その他各種エレクトロニクス素子、光学素
子に用いる堆積膜形成方法として、真空蒸着法、スパッ
タリング法、イオンプレーティング法、熱CVD法、光
CVD法、プラズマCVD法等、多数知られており、そ
のための装置も実用に付されている。
【0003】中でもプラズマCVD法、すなわち、原料
ガスを直流または高周波あるいはマイクロ波グロー放電
により分解し、基板上に薄膜状の堆積膜を形成する方法
は好適なものとして、電子写真用水素化アモルファスシ
リコン(以下、「a−Si:H」と表記する)堆積膜の
形成等、現在実用化が非常に進んでおり、そのための装
置も各種提案されている。
【0004】このような堆積膜の形成装置及び形成方法
は概略以下のようなものである。
【0005】図6は電源としてRF帯の周波数を用いた
RFプラズマCVD法(以後「RF−PCVD」と略記
する)による堆積膜形成装置、具体的には電子写真用光
受容部材の形成装置の一例を 示す模式的な構成図であ
る。図6に示す形成装置の構成は以下の通りである。
【0006】この装置は大別すると、堆積装置210
0、原料ガスの供給装置2200、反応容器2101内
を減圧にするための排気装置(図示せず)から構成され
ている。堆積装置2100中の反応容器2101内には
円筒状基体2112、基体加熱用ヒーターを内蔵した基
体支持体2113、原料ガス導入管2114が設置さ
れ、更に高周波マッチングボックス2115が反応容器
2101の一部を構成するカソード電極2111に接続
されている。カソード電極2111は碍子2120によ
りアース電位と絶縁され、基体支持体2113を通して
アース電位に維持されアノード電極を兼ねた円筒状基体
2112との間に高周波電圧が印加可能となっている。
【0007】原料ガス供給装置2200は、SiH4
GeH4、H2、CH4、B26、PH 3等の原料ガスのボ
ンベ2221〜2226とバルブ2231〜2236,
2241〜2246,2251〜2256およびマスフ
ローコントローラー2211〜2216から構成され、
各原料ガスのボンベはバルブ2260介して反応容器2
111内のガス導入管2114に接続されている。
【0008】この装置を用いた堆積膜の形成は、例えば
以下のように行なうことができる。
【0009】まず、反応容器2101内に円筒状基体2
112を設置し、不図示の排気装置(例えば真空ポン
プ)により反応容器2101内を排気する。続いて、基
体支持体2113に内蔵された基体加熱用ヒーターによ
り円筒状基体2112の温度を200℃乃至350℃の
所定の温度に制御する。
【0010】堆積膜形成用の原料ガスを反応容器210
1に流入させるには、ガスボンベのバルブ2231〜2
237、反応容器のリークバルブ2117が閉じられて
いることを確認し、また、流入バルブ2241〜224
6、流出バルブ2251〜2256、補助バルブ226
0が開かれていることを確認して、まずメインバルブ2
118を開いて反応容器2111およびガス配管内21
16を排気する。
【0011】次に真空計2119の読みが約7×10-1
Paになった時点で補助バルブ2260、流出バルブ2
251〜2256を閉じる。
【0012】その後、ガスボンベ2221〜2226よ
り各ガスをバルブ2231〜2236を開いて導入し、
圧力調整器2261〜2266により各ガス圧を0.2
MPaに調整する。次に、流入バルブ2241〜224
6を徐々に開けて、各ガスをマスフローコントローラー
2211〜2216内に導入する。
【0013】以上のようにして成膜の準備が完了した
後、以下の手順で各層の形成を行う。
【0014】円筒状基体2112が所定の温度になった
ところで流出バルブ2251〜2256のうちの必要な
ものおよび補助バルブ2260を徐々に開き、ガスボン
ベ2221〜2226から所定のガスをガス導入管21
14を介して反応容器2101内に導入する。次にマス
フローコントローラー2211〜2216によって各原
料ガスが所定の流量になるように調整する。その際、反
応容器2101内の圧力が所定の値になるように真空計
2119を見ながらメインバルブ2118の開口を調整
する。内圧が安定したところで、周波数13.56MH
zのRF電源(不図示)を所望の電力に設定して、高周
波マッチングボックス2115、カソード2111を通
じて反応容器2101内にRF電力を導入し、円筒状基
体2112をアノードとして作用させてグロー放電を生
起させる。この放電エネルギーによって反応容器内に導
入された原料ガスが分解され、円筒状基体2112上に
所定のシリコンを主成分とする堆積膜が形成されるとこ
ろとなる。所望の膜厚の形成が行われた後、RF電力の
供給を止め、流出バルブを閉じて反応容器へのガスの流
入を止め、堆積膜の形成を終える。
【0015】同様の操作を複数回繰り返すことによっ
て、所望の多層構造の光受容層が形成される。
【0016】それぞれの層を形成する際には必要なガス
以外の流出バルブはすべて閉じられていることは言うま
でもなく、また、それぞれのガスが反応容器2101
内、流出バルブ2251〜2256から反応容器210
1に至る配管内に残留することを避けるために、流出バ
ルブ2251〜2256を閉じ、補助バルブ2260を
開き、さらにメインバルブ2118を全開にして系内を
一旦高真空に排気する操作を必要に応じて行う。
【0017】膜形成の均一化を図るために、層形成を行
なっている間は、円筒状基体2112を駆動装置(不図
示)によって所定の速度で回転させることも有効であ
る。
【0018】さらに、上述のガス種およびバルブ操作は
各々の層の作成条件にしたがって変更が加えられること
は言うまでもない。
【0019】このような、上記従来のRF帯の周波数を
用いたRFプラズマCVD法による堆積膜形成装置、形
成方法に加え、更には近年、VHF帯の高周波電力を用
いたVHFプラズマCVD(以後「VHF−PCVD」
と略記する)法が注目を浴びており、これを用いた各種
堆積膜形成の開発も積極的に進められている。これはV
HF−PCVD法では膜堆積速度が速く、また高品質な
堆積膜が得られるため、製品の低コスト化、高品質化を
同時に達成し得るものと期待されるためである。例えば
特開平6−287760号公報にはa−Si系電子写真
用光受容部材形成に用いうる装置及び方法が開示されて
いる。また、複数の電子写真用光受容部材を同時に形成
でき、生産性の極めて高い図7に示すような堆積膜形成
装置の開発も進められている。
【0020】図7(a)は従来の堆積膜形成装置の概略
断面図、図7(b)は図7(a)の切断線A−A’に沿
う概略断面図である。反応容器301の側面には排気管
311が一体的に形成され、排気管311の他端は不図
示の排気装置に接続されている。反応容器301の中心
部を取り囲むように、堆積膜の形成される6本の円筒状
基体305が互いに平行になるように配置されている。
各円筒状基体305は回転軸308によって保持され、
発熱体307によって加熱されるようになっている。モ
ータ309を駆動すると、減速ギア310を介して回転
軸308が回転し、円筒状基体305がその母線方向中
心軸(その基体長さ方向に沿った筒中心軸)のまわりを
自転するようになっている。
【0021】6本の円筒状基体305により囲まれた成
膜空間306には原料ガスが原料ガス供給手段312よ
り供給される。VHF電力はVHF電源303よりマッ
チングボックス304を経てカソード電極302より成
膜空間306に供給される。この際、回転軸308を通
してアース電位に維持された円筒状基体305がアノー
ド電極として作用する。
【0022】このような装置を用いた堆積膜形成は概略
以下のような手順により行なうことができる。
【0023】まず、反応容器301内に円筒状基体30
5を設置し、不図示の排気装置により排気管311を通
して反応容器301内を排気する。続いて、発熱体30
7により円筒状基体305を200℃〜300℃程度の
所定の温度に加熱、制御する。
【0024】円筒状基体305が所定の温度となったと
ころで、原料ガス供給手段313を介して、原料ガスを
反応容器301内に導入する。原料ガスの流量が設定流
量となり、また、反応容器301内の圧力が安定したの
を確認した後、高周波電源303よりマッチングボック
ス304を介してカソード電極302へ所定のVHF電
力を供給する。これにより、カソード電極302とアノ
ード電極を兼ねた円筒状基体305の間にVHF電力が
導入され、円筒状基体305で囲まれた成膜空間306
にグロー放電が生起し、原料ガスは励起解離して円筒状
基体305上に堆積膜が形成される。
【0025】所望の膜厚の形成が行なわれた後、VHF
電力の供給を止め、続いて原料ガスの供給を停止して堆
積膜の形成を終える。同様の操作を複数回繰り返すこと
によって、所望の多層構造の光受容層が形成される。
【0026】堆積膜形成中、回転軸308を介して円筒
状基体305をモータ309により所定の速度で回転さ
せることにより、円筒状基体表面全周に渡って堆積膜が
形成される。
【0027】
【発明が解決しようとする課題】上記従来の方法及び装
置により、良好な堆積膜形成、即ち真空処理がなされ
る。しかしながら、このような真空処理を用いた製品に
対する市場の要求レベルは日々高まっており、この要求
に応えるべく、より高品質化、低コスト化が実現可能な
真空処理方法が求められるようになっている。
【0028】例えば、電子写真装置の場合、コピースピ
ードの向上、高画質化、低価格化の要求は非常に強く、
これらを実現するためには感光体特性、具体的には帯電
能、感度等の向上、画像上に白点あるいは黒点で現れる
感光体中構造欠陥に起因する画像欠陥の抑制、及び感光
体生産コストの低下が不可欠となっている。また、近年
その普及が目覚しいデジタル電子写真装置、カラー電子
写真装置においては、文字原稿のみならず、写真、絵、
デザイン画等のコピーも頻繁に為されるため、画像濃度
むらの低減が従来以上に強く求められるようになってい
る。
【0029】このような感光体特性の向上、感光体生産
コストの低下を目指し、堆積膜積層構成の最適化等も為
されているが、同時に、真空処理方法の面での改善も強
く望まれている。
【0030】このような状況下において、前述した従来
の真空処理方法においても、真空処理特性の向上、真空
処理コストの低下に関して、まだ改善の余地が残されて
いるのが現状である。
【0031】すでに述べたように、VHF帯、あるいは
その近傍の周波数の高周波電力を用いてプラズマを生成
し真空処理を施すことにより、真空処理速度の向上、真
空処理特性の向上が達成可能であり、鋭意研究がなされ
ている。しかしながら、このような周波数帯の高周波電
力を用いた場合、真空処理容器中での高周波電力の波長
が真空処理容器、高周波電極、基板、あるいは基板ホル
ダー等と同程度の長さとなり、真空処理容器中で高周波
電力が定在波を形成しやすくなり、この定在波によって
真空処理容器中では場所ごとに電力の強弱が生じ、プラ
ズマ特性が異なってしまう。この結果、真空処理特性の
均一性を広い範囲でより一層得ることは難しかった。
【0032】このような問題を解決するための手段とし
て、複数の異なる周波数の高周波電力を反応容器中に同
時に供給することが考えられる。これによって、反応容
器中には各々の周波数に応じた、異なる波長の定在波が
複数形成されることとなるが、これらは同時に供給され
ているので、これら複数の定在波が合成され、結果とし
て明確な定在波が形成されなくなる。このような考えに
基づけば、異なる複数の高周波電力の周波数はどのよう
な値であっても定在波抑制効果は得られる。たとえば、
特開昭60-160620号公報においては、10MHz以上の高周波
電力と1MHz以下の高周波電力を同一電極に供給する構成
が開示されており、また、特開平09-321031号公報にお
いては、UHF帯(300MHz以上1GHz以下)の
第1の高周波電力とそれと2倍以上異なる周波数の高周
波電力を同時に印加する構成が開示されている。これら
の技術を用いることによって、反応容器中の高周波電力
の定在波は抑制され、真空処理の均一性が向上するもの
と考えられる。
【0033】しかしながら、本発明者らは、たとえば特
開昭60-160620号公報で開示された技術を用いて均一性
に関する実験を行った結果、確かにあるレベルまでは真
空処理特性の均一性は向上できるものの、近年要求され
ている均一性レベルを得るには至らなかった。また、特
開平09-321031号公報で開示された技術を用いて実験を
行った結果も同様に、近年要求されている均一性レベル
を得るには至らなかった。即ち、電界強度的には均一化
されているはずの電力供給方法をもってしても、実際の
真空処理においては、ある程度の不均一性が残ってしま
うことが明らかとなった。
【0034】本発明は上記課題の解決を目的とするもの
である。即ち、反応容器中に被処理物を設置し、該反応
容器中に供給した原料ガスを高周波電力により分解し、
該被処理物に処理を施す真空処理方法において、真空処
理速度の向上、真空処理特性の向上、真空処理特性の再
現性向上を達成し、更には真空処理特性の均一性を極め
て高いレベルとし、また、真空処理コストの低減が可能
な真空処理方法を提供することにある。
【0035】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記目的を
達成すべく鋭意検討を行った結果、まず、同一電極に複
数の高周波電力を供給し、それらの周波数の関係、及び
電力の関係を変化させた際、特定の周波数の関係、特定
の電力の関係において均一化効果が顕著に得られること
を見い出した。そして、それらの周波数、及び電力を所
定の関係とすることで、真空処理速度の向上、真空処理
特性の向上、真空処理特性の均一性向上、真空処理コス
トの低減が同時に実現可能であることを見い出した。更
には、高周波電極を複数とし、少なくとも1つの高周波
電極上を伝送される高周波電力の主なる伝送方向と他の
高周波電極上を伝送される高周波電力の主なる伝送方向
とが異なるようにすることで、真空処理特性の均一性を
極めて高いレベルとすることが可能であることを見い出
し、本発明を完成させるに至った。
【0036】即ち、本発明は、反応容器中に被処理物を
設置し、少なくとも2つの異なる周波数の高周波電力を
同一の高周波電極上に同時に供給し、該高周波電極より
前記反応容器内に導入された高周波電力によってプラズ
マを形成して被処理物を処理する真空処理方法におい
て、前記異なる周波数の高周波電力が同時供給される高
周波電極が複数であり、該複数の高周波電極のうちの少
なくとも1つの高周波電極上を伝送される高周波電力の
主なる伝送方向が他の高周波電極上を伝送される高周波
電力の主なる伝送方向と異なり、更に、各高周波電極に
供給する前記複数の高周波電力は周波数が10MHz以
上250MHz以下の高周波電力を少なくとも2つ含
み、該周波数範囲内にある高周波電力が有する電力値の
中で最も大きい電力値と次に大きい電力値を有する高周
波電力について、そのうち周波数の高い方の高周波電力
の周波数、電力値をf1、P1、周波数の低い方の高周
波電力の周波数、電力値をf2、P2としたとき、前記
電力値P1、P2が、 0.1 ≦ P2/(P1+P2) ≦ 0.9 を満たすことを特徴とする。
【0037】また、本発明は、反応容器中に被処理物を
設置し、少なくとも2つの異なる周波数の高周波電力を
同一の高周波電極上に同時に供給し、該高周波電極より
前記反応容器内に導入された高周波電力によってプラズ
マを形成して被処理物を処理する真空処理装置におい
て、前記異なる周波数の高周波電力が同時供給される高
周波電極が複数であり、該複数の高周波電極のうちの少
なくとも1つの高周波電極上を伝送される高周波電力の
主なる伝送方向が他の高周波電極上を伝送される高周波
電力の主なる伝送方向と異なるよう構成されており、更
に、各高周波電極に供給する前記複数の高周波電力は周
波数が10MHz以上250MHz以下の高周波電力を
少なくとも2つ含み、該周波数範囲内にある高周波電力
が有する電力値の中で最も大きい電力値と次に大きい電
力値を有する高周波電力について、そのうち周波数の高
い方の高周波電力の周波数、電力値をf1、P1、周波
数の低い方の高周波電力の周波数、電力値をf2、P2
としたとき、前記電力値P1、P2が、 0.1 ≦ P2/(P1+P2) ≦ 0.9 を満たすことを特徴とする。
【0038】このような本発明によれば、高い真空処理
速度を維持しながら、真空処理特性の向上、真空処理コ
ストの低減を実現し、同時に真空処理特性の均一性を著
しく向上させることが可能である。
【0039】このような本発明によって、真空処理特性
の顕著な均一化効果が得られるメカニズムについては、
現段階ではまだ明らかにはなっていないものの、おおよ
そ以下のような作用によるものと考えている。
【0040】たとえば、特開昭60-160620号公報に具体
的に示されている周波数関係の場合、即ち、10MHz以上
の高周波電力(以下“高周波数電力”と称す)と1MHz以
下の高周波電力(以下“低周波数電力”と称す)を同時
に処理容器中に供給した場合、高周波数電力による電界
定在波と低周波数電力による電界定在波が合成され、高
周波電界的には処理容器中での電界定在波を抑制するこ
とは可能である。しかしながら、10MHz以上の高周波電
力(高周波数電力)と1MHz以下の高周波電力(低周波数
電力)では生成されるプラズマ特性が大きく異なり、そ
の結果、高周波数電力による原料ガスの分解の仕方と低
周波数電力による原料ガスの分解の仕方が異なってしま
い、生成される活性種の種類、比率が異なってしまう。
このため、電界強度的には均一化がなされていても、高
周波数電力定在波の腹部分では高周波数電力の周波数に
応じた種類、比率の活性種が多く生成され、低周波数電
力定在波の腹部分では低周波数電力の周波数に応じた種
類、比率の活性種が多く生成されてしまう。その結果、
活性種の種類、比率に空間的な分布が生じてしまい、真
空処理特性に不均一化をもたらしてしまうものと考えら
れる。f1とf2を共に所定の範囲内、即ち10MHz以
上、250MHz以下とすることで、プラズマ特性の顕
著な差が生じにくく、その結果、上述したような活性種
の種類、比率の空間的な分布が生じにくくなり、真空処
理特性の均一化が達成可能になるものと考えられる。
【0041】このように、電界定在波の抑制、及び、活
性種の種類、比率の空間的分布の均一化を同時に達成し
ようとした場合、高周波数電力の電力値と低周波数電力
の電力値の関係もまた重要となる。これら2つの高周波
電力は、高周波電界の弱い部分をお互いに補うことによ
って電界の均一化を達成するものである。このため、こ
れら2つの電力値の比率は、互いの高周波電界の弱い部
分を補いうる範囲に設定することが十分な効果を得る上
で必要となる。高周波数電力の電力値をP1、低周波数
電力の電力値をP2として、 0.1≦P2/(P1+P2)≦0.9 の範囲とすることで、このような電界の弱い部分の補完
作用が顕著に現れ始め、その結果、膜特性の均一化効果
が顕著に得られるようになるものと考えられる。
【0042】本発明において、このような真空処理容器
中への高周波電力の供給は、複数の周波数の高周波電力
を同一電極に同時に供給する必要がある。各々異なった
周波数の高周波電力を各々別の電極から供給した場合、
電極上では電極ごとに供給高周波電力の周波数に依存し
た波長の定在波が生じてしまう。この結果、電極近傍の
プラズマ特性は、この定在波に応じた分布形状をもって
しまう。また、生成活性種の種類・比率や、電極に入射
するイオンのエネルギーが位置によって異なってしまう
ため、堆積膜形成時には電極上に付着する膜の構造が電
極上の位置に依存して異なってしまう。このため、膜構
造そのもの、あるいは、近傍膜との内部応力の違いに起
因して、電極上では付着膜が剥れやすい部分が生じてし
まい、剥れた膜が被処理物上に付着して欠陥を生じやす
くなってしまう。このようなことは、例えば反応容器の
少なくとも一部を誘電体材料で構成し、反応容器外に設
置された高周波電極から誘電体部材を通して反応容器内
に高周波電力を導入する構成とした場合にも同様に生じ
ることである。このような場合、高周波電極上に生じた
定在波の影響によって、誘電体部材近傍のプラズマ特性
が、この定在波に応じた分布形状をもってしまう。ま
た、生成活性種の種類・比率や、絶縁性材料部に入射す
るイオンのエネルギーが位置によって異なってしまうた
め、堆積膜形成時には誘電体部材上に付着する膜の構造
が誘電体部材上の位置に依存して異なってしまう。この
ため、膜構造そのもの、あるいは、近傍膜との内部応力
の違いに起因して、誘電体部材上では付着膜が剥れやす
い部分が生じてしまい、剥れた膜が被処理物上に付着し
て欠陥を生じやすくなってしまう。
【0043】本発明では、このような問題を回避するた
めに、周波数の異なる複数の高周波電力を同一電極に同
時に供給する必要がある。このようにすることにより、
電極上においても定在波は抑制され、上述したような問
題が効果的に抑制される。
【0044】そして更に、高周波電極を複数とし、少な
くとも1つの高周波電極上を伝送される高周波電力の主
なる伝送方向が他の高周波電極上を伝送される高周波電
力の主なる伝送方向と異なるよう構成することにより、
高周波電力の伝送中の減衰に起因して生じる電力むらが
解消可能となり、真空処理特性の均一性を極めて高いレ
ベルに維持可能となる。より詳しく説明すると、上述し
たような周波数範囲、電力比率の複数の高周波電力を同
一の高周波電極に同時に供給することで、定在波に起因
する特性むらの抑制は可能となり、膜特性の均一化効果
が顕著に得られる。しかしながら、高周波電力を放電空
間へ1方向からのみ供給した場合には、高周波電力が高
周波電極上を伝播していくにしたがって、高周波電力は
徐々に減衰し、放電空間中において高周波電力を導入し
た側とそうでない側とで放電空間中での高周波電力密度
が異なってしまう。この結果、高周波電力を導入した側
とそうでない側とで膜特性に差が生じてしまう場合があ
る。このような現象は、放電空間の大きさのみに依存す
るのではなく、生成したプラズマの高周波電力吸収率に
よっても影響を受ける。即ち、生成したプラズマが導入
した高周波電力を吸収しやすい場合、このような現象が
生じやすくなる。また、本発明においては複数の周波数
の異なる高周波電力を同一高周波電極に同時に供給する
ため、各周波数ごとにプラズマの高周波電力吸収率が異
なり、高周波電力を放電空間へ1方向からのみ供給した
場合には、各周波数ごとの電力密度の比率が高周波電力
を導入した側とそうでない側とで異なってしまう場合が
ある。この結果、条件によっては、高周波電力を導入し
た側とそうでない側とで膜特性の均一化効果のレベルが
異なってしまう場合がある。
【0045】本発明においては、高周波電極を複数と
し、少なくとも1つの高周波電極上を伝送される高周波
電力の主なる伝送方向が他の高周波電極上を伝送される
高周波電力の主なる伝送方向と異なるよう構成されてい
るので、このような高周波電力の伝送方向での減衰に起
因して生じる膜特性差、均一化効果のレベルの差が効果
的に抑制可能となる。
【0046】本発明においては、特に、 30MHz≦f2<f1≦250MHz とすることで、より顕著な効果を得ることができる。こ
の範囲においては、前述したような2つの高周波電力の
周波数の違いに起因する生成活性種の種類・比率の違い
が特に生じにくくなり、その結果が膜特性の均一化に対
してより顕著に反映されるためと考えられる。
【0047】また、本発明においては、2つの高周波電
力の電力値のバランスに関しても、高周波数電力の電力
値をP1、低周波数電力の電力値をP2として、 0.2≦P2/(P1+P2)≦0.7 とすることで、本発明の効果をより顕著に得ることが可
能となる。これは、前述した、電界の弱い部分の補完作
用が更に顕著に得られ、同時に、プラズマ起因の実効電
力のふらつきの影響を受けにくくなり、常時安定した特
性均一効果が得られるためではないかと推察される。電
力比率P2/(P1+P2)が小さい場合、P2はP1の
電界の弱い部分をかろうじて補完する状態であり、その
電力値の若干のずれが電界均一化効果を大きく左右す
る。このような状況において、プラズマ生起中に何らか
の理由でP2にロスが生じ、実質的に真空処理空間中に
導入される電力がふらついた場合、安定した電界均一化
効果が得られなくなり、十分な膜質均一化効果が得られ
なくなる。このようなP2のロスの原因としては、プラ
ズマ生成空間におけるスパークや一時的な局所放電等が
考えられる。0.2≦P2/(P1+P2)の範囲はこの
ようなプラズマ起因でのP2のロスが生じても、P1の
電界の弱い部分を補完可能な範囲であるものと推察され
る。
【0048】一方、P1に関しても同様に、その電力比
率P1/(P1+P2)が小さい場合、電力値の若干のず
れが電界均一化効果を大きく左右する。そして、プラズ
マ起因の実効電力のふらつきの影響が特性均一化効果に
現れやすくなるものと考えられる。0.3≦P1/(P
1+P2)の範囲、即ち、P2/(P1+P2)≦0.7
の範囲においては、このようなプラズマ起因でのP1の
ロスが生じても、P2の電界の弱い部分を補完可能な範
囲であるものと推察される。そして、P1、P2各々の
全体に対する適正比率範囲が異なるのは、高周波電力の
周波数が高い方がスパークや局所放電が生じた際に、そ
こに電力が集中しやすく、そこでのロス分が大きくなる
ためではないかと考えられる。
【0049】更に本発明においては、P1、P2、f
1、f2を P2/(P1+P2)≦f2/f1 の関係とすることで、均一な放電を極めて安定的に得る
ことが可能となり、真空処理の安定性、再現性が高ま
る。この理由としては、およそ次のように考えている。
【0050】高周波電力によって生起する放電では、周
波数に応じ、安定的な放電が生成される空間的領域が異
なる場合がある。本発明のように、2つの高周波電力を
用いて定在波を抑制する場合には、周波数が近い方がお
のずと放電全体の分布が似かよるので、広い電力値範囲
で望ましい放電分布を安定的に得ることが可能になると
推測される。よって、2つの高周波電力の電力比、すな
わちP2/(P1+P2)を、2つの周波数の関係によっ
て決定される範囲(f1/f2)内にすることで、均一
な放電分布が安定的に得られるものと考えられる。
【0051】また、本発明においては第1の高周波電力
の周波数f1と第2の高周波電力の周波数f2との比f
2/f1を 0.5<f2/f1≦0.9 とすることが真空処理特性の均一化効果をより高いレベ
ルで得る上で好ましい。その理由は以下のようなメカニ
ズムに基づくものと推察される。
【0052】前述したように、f1とf2が離れるにし
たがって、周波数f1の高周波電力による原料ガスの分
解の仕方と周波数f2の高周波電力による原料ガスの分
解の仕方が異なる方向となり、生成される活性種の種
類、比率が異なってしまうことがある。このため、電界
強度的には均一化がなされても、第1の高周波電力の定
在波の腹部分ではその周波数に応じた種類、比率の活性
種が生成され、第2の高周波電力の定在波の腹部分では
第2の高周波電力の定在波の腹部分とは異なった種類、
比率の活性種が生成される方向となる。その結果、条件
によっては活性種の種類、比率に空間的な分布が生じて
しまうことがあり、真空処理特性の均一化効果を高いレ
ベルで安定して得ることが難しくなってしまう場合があ
る。f1/f2>0.5の関係に維持することで、この
ような周波数の違いによる生成活性種の種類、比率の違
いが実使用上無視できるレベルとなり、極めて高いレベ
ルでの真空処理特性均一化効果が得られるものと考えら
れる。一方、f1とf2が近すぎると、各々の定在波の
節位置、腹位置が近いため十分な定在波抑制効果が得に
くくなるものと考えられる。このようなことから、0.
5<f2/f1≦0.9とすることで、極めて高いレベ
ルでの真空処理特性均一化効果を得ることが可能になる
ものと考えられる。
【0053】なお、本発明において、上記関係に設定す
る対象の高周波電力は、真空処理に影響を及ぼすレベル
以上の電力を有したものであって、実質上、真空処理に
影響を及ぼさない低電力の高周波電力、例えば高調波等
は上記関係に制限されるものではない。
【0054】また、必要に応じて、更に他の周波数の電
力を同時に供給しても良い。たとえば、真空処理中のバ
イアス効果を高めるために、本発明の範囲の高周波電力
に加えて、数十kHz〜数百kHz程度の周波数の電力
を同時に供給することができる。このように、更なる電
力を供給する場合には、その電力を加えることで真空処
理特性の均一性が損なわれない程度の電力とする必要が
ある。
【0055】このような本発明においては、棒状の電極
から高周波電力を真空処理容器中に供給することでより
顕著な効果を得ることができる。このような実質的に一
次元として扱うことが可能な電極形状においては、電力
が進行方向に対して横方向に回りこむことが実質的にな
いので、横方向への回りこみによる二次的な定在波が生
じず、顕著な効果が得られるのではないかと推察してい
る。
【0056】このように、高周波電極を棒状とする場
合、棒状とする高周波電極の数が多いほど本発明の効果
を顕著に得るうえで好ましく、更には全ての高周波電極
を棒状とすることがより好ましい。そして、複数の高周
波電極を棒状とする場合、それらの高周波電極は互いに
平行に設置されていることが、真空処理特性の均一性、
真空処理の安定性の面から好ましい。棒状の高周波電極
を平行に設置することで、このような効果が得やすい理
由に関しては定かではないが、電極間での高周波電界の
干渉が生じにくくなるためではないかと推測している。
【0057】そして、本発明において全ての電極を棒状
とし、互いに平行に設置する場合、第1の方向に高周波
電力を伝送する高周波電極の数と、第2の方向に高周波
電力を伝送する高周波電極の数を同数とすることが、本
発明の効果を得る上で好ましい。このようにすることで
高周波電力の伝送方向での電力減衰の影響が軽減され、
電力減衰に起因して生じる膜特性差、均一化効果のレベ
ルの差が抑制され、本発明の効果が顕著に得ることが可
能となる。
【0058】また、本発明においては、被処理物が円筒
状、または円柱状の場合により大きな効果を得ることが
できる。これは、被処理物が円筒状、または円柱状の場
合、被処理物上の高周波電力の反射端は被処理物の両端
に限定されることによるものと推測される。多くの反射
端が存在し、それに応じた多くの定在波が生じる場合に
比べ、定在波の腹位置での電界強度が高く、他の周波数
の電力によって生じる定在波の節位置、即ち電界強度の
低い部分を効果的に補うことが可能となるためと推測さ
れる。
【0059】更に、本発明は、真空処理が堆積膜形成で
ある場合に特に顕著な効果を得ることが可能である。本
発明においては、電極上を含め真空処理容器中の全領域
の電界分布を均一化するため、膜付着を生ずる部位全領
域にわたって、局所的な膜構造の変化が効果的に抑制さ
れる。この結果、内部応力の局所的変化に起因する膜剥
れが効果的に抑制され、剥れた膜が被処理物上へ付着す
ることによって生じる被処理物上の欠陥が大幅に低減さ
れる。
【0060】このような本発明は特に、真空処理方法が
電子写真感光体形成の場合により効果的である。電子写
真感光体は、大面積の堆積膜形成が必要であり、さらに
その全領域にわたって構造欠陥が存在しない必要があ
る。一方、電子写真感光体形成では一般的に数十μmも
の厚さの堆積膜形成を行うため、真空処理容器壁面への
膜付着が多く、壁面付着膜の膜剥れを生じやすい。更に
は、構造欠陥が生じた場合、電子写真感光体では他のデ
バイスのように、構造欠陥の存在する部分のみを不良と
して扱い、他の領域は良品として扱うといったことがで
きず、大面積にわたって形成した全堆積膜が不良となっ
てしまう。このため、電子写真感光体形成においては、
構造欠陥が生じた際のコストへの影響は非常に高く、本
発明によって構造欠陥をも効果的に抑制することは生産
コスト低減の上できわめて効果的となる。
【0061】このような効果が得られる本発明を以下で
図を用いて詳述する。図1は本発明に用いることができ
るa−Si系感光体製造装置の一例を示した概略図であ
る。図1(a)はその装置の概略断面図、図1(b)は
図1(a)の切断線A−A’に沿う概略断面図である。
反応容器101の底部には排気口111が形成され、排
気口111の他端は不図示の排気装置に接続されてい
る。反応容器101の中心部を取り囲むように、堆積膜
の形成される6本の円筒状基体105がホルダー106
に載置された状態で、互いに平行になるように配置され
ている。各円筒状基体105は回転軸108によって保
持され、発熱体107によって加熱されるようになって
いる。不図示のモータを駆動することで回転軸108が
回転し、円筒状基体105がその母線方向中心軸(その
基体長さ方向に沿った筒中心軸)のまわりを自転するよ
うになっている。円筒状基体105は回転軸108を介
して所定の電位、一般的にはアース電位に維持される。
【0062】反応容器101内には原料ガスが原料ガス
供給手段112より供給される。また、円筒状基体10
5の配置円内には内部高周波電極102が1本設置さ
れ、2つの高周波電源103、113より異なる周波数
の高周波電力がマッチングボックス104を経て棒状の
内部高周波電極102の上端に同時に供給され、供給さ
れた高周波電力は内部高周波電極102上を反応容器1
01の上部から下部へ向かう方向で伝送されながら、同
時に反応容器101内に高周波電力を放射する。円筒状
基体105の配置円外には棒状の外部高周波電極114
が3本設置され、2つの高周波電源115、117より
異なる周波数の高周波電力がマッチングボックス116
を経て3本の外部高周波電極114の下端に同時に供給
され、供給された高周波電力は外部高周波電極102上
を反応容器101の下部から上部へ向かう方向で伝送さ
れながら、同時に反応容器101内に高周波電力を放射
する。
【0063】高周波電源103、113は各々の発振周
波数の関係が、たとえば高周波電源103の発振周波数
をf1、高周波電源113の発振周波数をf2とした場
合、 10MHz≦f2<f1≦250MHz より好ましくは、30MHz≦f2<f1≦250MH
z とすることが可能であり、更に、高周波電源103から
の高周波電力をP1、高周波電源113からの高周波電
力をP2とした場合、 0.1≦P2/(P1+P2)≦0.9 とすることが可能な電源を用いる。
【0064】同様に、高周波電源115、117は各々
の発振周波数の関係が、たとえば高周波電源115の発
振周波数をf1’、高周波電源117の発振周波数をf
2’とした場合、 10MHz≦f2’<f1’≦250MHz とすることが可能であり、更に、高周波電源115から
の高周波電力をP1’、高周波電源117からの高周波
電力をP2’とした場合、 0.1≦P2’/(P1’+P2’)≦0.9 とすることが可能な電源を用いる。
【0065】高周波電源103の発振周波数f1と高周
波電源115の発振周波数f1’は必ずしも同一の発振
周波数とする必要はないが、可能な限り同一周波数とす
ることが真空処理特性の均一性向上の上から好ましい。
同様に、高周波電源113の発振周波数f2と高周波電
源117の発振周波数f2’についても、必ずしも同一
の発振周波数とする必要はないが、可能な限り同一周波
数とすることが真空処理特性の均一性向上の上から好ま
しい。
【0066】また、図1においては、内部高周波電極1
02に高周波電力を供給する高周波電源と外部高周波電
極114に高周波電力を供給する高周波電源は別個とな
っているが、高周波電源から高周波電極に高周波電力を
伝送する高周波電力伝送経路を途中で分岐することによ
って、同一の高周波電源から出力された高周波電力を内
部高周波電極102と外部高周波電極114に同時に供
給する構成としても良い。この場合、高周波電力伝送経
路の分岐点はマッチングボックスよりも高周波電源側で
あっても良いし、マッチングボックスよりも高周波電極
側であっても良い。分岐点がマッチングボックスよりも
高周波電源側の場合、分岐された高周波電力伝送経路各
々にマッチングボックスが設置される。一方、分岐点が
マッチングボックスよりも高周波電極側の場合、マッチ
ングボックスは1つでよい。これらのうち、制御性の点
からは、分岐点をマッチングボックスよりも高周波電源
側とし、分岐された高周波電力伝送経路各々にマッチン
グボックスを設置することが好ましい。
【0067】なお、図1においては、上記範囲を満たす
2つの異なる周波数の高周波電力を出力可能な2つの電
源を用いているが、本発明においては2つ以上の異なる
周波数の高周波電力が供給可能であればよく、高周波電
源が3つ以上であってもよい。また、あらかじめ複数の
周波数を合成した高周波電力が出力可能な電源を用いた
場合には、電源の数は1つであってもかまわない。いず
れにしても、少なくとも2つの異なる周波数の高周波電
力を同一電極に供給可能な構成であり、2つの異なる周
波数f1(Hz)、f2(Hz)の関係が、 10MHz≦f2<f1≦250MHz であり、それ
らの電力の関係が 0.1≦P2/(P1+P2)≦0.9 とすることが可能な構成とする。
【0068】高周波電極102、114の形状として
は、特に制限はないが、真空処理特性の均一化効果をよ
り顕著に得るためには、図1に示したような棒状、ある
いは線状であることが好ましく、また、膜はがれ防止の
観点から、可能な限り曲面により構成されていることが
好ましく、特に、円柱状、円筒状が好ましい。
【0069】高周波電極102、114の表面は、膜の
密着性を向上し、膜剥れを防止し、成膜中のダストを抑
制する目的から、粗面化されていることが望ましい。粗
面化の具体的な程度としては、2.5mmを基準とする
10点平均粗さ(Rz)で5μm以上200μm以下の
範囲が好ましい。
【0070】更に、膜の密着性向上の観点から、高周波
電極102、114の表面はセラミックス材で被覆され
ていることが効果的である。被覆の具体的手段に特に制
限はないが、例えばCVD法、溶射等の表面コーティン
グ法により、高周波電極102、114の表面をコーテ
ィングしてもよい。コーティング法の中でも溶射は、コ
スト面から、あるいはコーティング対象物の大きさ・形
状の制限を受けにくいため好ましい。また、高周波電極
102、114の外部をパイプ形状等のセラミック部材
により覆う構成とすることも効果的である。具体的なセ
ラミックス材料としては、アルミナ、二酸化チタン、窒
化アルミニウム、窒化ホウ素、ジルコン、コージェライ
ト、ジルコン-コージェライト、酸化珪素、酸化ベリリ
ウムマイカ系セラミックス等が挙げられる。高周波電極
102の表面を被覆するセラミックス材の厚さは特に制
限はないが、耐久性及び均一性を増すため、また、高周
波電力吸収量、製造コストの面から1μm〜10mmが
好ましく、10μm〜5mmがより好ましい。
【0071】また、高周波電極102、114に加熱ま
たは冷却手段を設けることにより、高周波電極102、
114表面における膜の密着性を更に高め、より効果的
に膜剥れの防止を達成できる。この場合、高周波電極1
02、114を加熱するか、冷却するかは、堆積する膜
材料、堆積条件に応じて適宜決定する。具体的な加熱手
段としては、発熱体であれば特に制限はない。具体的に
はシース状ヒーターの巻付けヒーター、板状ヒーター、
セラミックヒーター等の電気抵抗発熱体、ハロゲンラン
プ、赤外線ランプ等の熱輻射ランプ発熱体、液体、気体
等を媒体とした熱交換手段による発熱体等が挙げられ
る。具体的な冷却手段としては、吸熱体であれば特に制
限はない。例えば、液体・気体等を冷却媒体として流す
ことができる冷却コイル、冷却板、冷却筒等が挙げられ
る。
【0072】図2は本発明に用いることができるa−S
i系感光体製造装置の他の一例を示した概略図である。
図2(a)はその装置の概略断面図、図2(b)は図2
(a)の切断線A−A’に沿う概略断面図である。反応
容器101は円筒状の誘電体壁401及び上下の導電性
板状部材よりなっている。反応容器101の底部には排
気口111が形成され、排気口111の他端は不図示の
排気装置に接続されている。反応容器101の中心部を
取り囲むように、堆積膜の形成される6本の円筒状基体
105がホルダー106に載置された状態で、互いに平
行になるように配置されている。各円筒状基体105は
回転軸108によって保持され、発熱体107によって
加熱されるようになっている。不図示のモータを駆動す
ることで回転軸108が回転し、円筒状基体105がそ
の母線方向中心軸(その基体長さ方向に沿った筒中心
軸)のまわりを自転するようになっている。円筒状基体
105は回転軸108を介して所定の電位、一般的には
アース電位に維持される。
【0073】反応容器101内には原料ガスが原料ガス
供給手段112より供給される。また、反応容器101
の一部を構成する円筒状の誘電体壁401の外部には棒
状の高周波電極114が互いに平行に6本設置されてお
り、更にその外部には高周波電力シールド402が設け
られている。6本の高周波電極114のうち、3本には
高周波電力が高周波電極114の上端から供給され、残
りの3本には高周波電力が高周波電極114の下端より
供給され(以下、図2においては、高周波電力が上端か
ら供給される高周波電極を「高周波電極114」、高周
波電力が下端から供給される高周波電極を「高周波電極
114’」とする。)、更には、反応容器周方向で高周
波電力供給方向が交互となるよう構成されている。この
ような高周波電極114、114’への高周波電力の供
給は以下のような構成によりなされる。2つの高周波電
源103、113より異なる周波数の高周波電力がマッ
チングボックス104を経て、上端を高周波電力供給点
とする3本の高周波電極114の上端に同時に供給さ
れ、供給された高周波電力は高周波電極114上を上部
から下部へ向かう方向で伝送されながら、同時に反応容
器101の一部を構成する円筒状の誘電体壁401を通
して反応容器101内に高周波電力を放射する。また、
2つの高周波電源115、117より異なる周波数の高
周波電力がマッチングボックス116を経て、下端を高
周波電力供給点とする3本の高周波電極114’の下端
に同時に供給され、供給された高周波電力は高周波電極
114’上を下部から上部へ向かう方向で伝送されなが
ら、同時に反応容器101の一部を構成する円筒状の誘
電体壁401を通して反応容器101内に高周波電力を
放射する。
【0074】高周波電源103、113は各々の発振周
波数の関係が、たとえば高周波電源103の発振周波数
をf1、高周波電源113の発振周波数をf2とした場
合、 10MHz≦f2<f1≦250MHz より好ましくは、 30MHz≦f2<f1≦250MHz とすることが可能であり、更に、高周波電源103から
の高周波電力をP1、高周波電源113からの高周波電
力をP2とした場合、 0.1≦P2/(P1+P2)≦0.9 とすることが可能な電源を用いる。
【0075】同様に、高周波電源115、117は各々
の発振周波数の関係が、たとえば高周波電源115の発
振周波数をf1’、高周波電源117の発振周波数をf
2’とした場合、 10MHz≦f2’<f1’≦250MHz とすることが可能であり、更に、高周波電源115から
の高周波電力をP1’、高周波電源117からの高周波
電力をP2’とした場合、 0.1≦P2’/(P1’+P2’)≦0.9 とすることが可能な電源を用いる。
【0076】高周波電源103の発振周波数f1と高周
波電源115の発振周波数f1’は必ずしも同一の発振
周波数とする必要はないが、可能な限り同一周波数とす
ることが真空処理特性の均一性向上の上から好ましい。
同様に、高周波電源113の発振周波数f2と高周波電
源117の発振周波数f2’についても、必ずしも同一
の発振周波数とする必要はないが、可能な限り同一周波
数とすることが真空処理特性の均一性向上の上から好ま
しい。
【0077】なお、図2においては、上端を高周波電力
供給点とする高周波電極114に高周波電力を供給する
高周波電源と下端を高周波電力供給点とする高周波電極
114’に高周波電力を供給する高周波電源は別個とな
っているが、高周波電源から高周波電極に高周波電力を
伝送する高周波電力伝送経路を途中で分岐することによ
って、同一の高周波電源から出力された高周波電力を全
ての高周波電極114、114’に供給する構成として
も良い。この場合、高周波電力伝送経路の分岐点はマッ
チングボックスよりも高周波電源側であっても良いし、
マッチングボックスよりも高周波電極側であっても良
い。分岐点がマッチングボックスよりも高周波電源側の
場合、分岐された高周波電力伝送経路各々にマッチング
ボックスが設置される。一方、分岐点がマッチングボッ
クスよりも高周波電極側の場合、マッチングボックスは
1つでよい。これらのうち、制御性の点からは、分岐点
をマッチングボックスよりも高周波電源側とし、分岐さ
れた高周波電力伝送経路各々にマッチングボックスを設
置することが好ましい。
【0078】また、図2においては、上記範囲を満たす
2つの異なる周波数の高周波電力を出力可能な2つの電
源を用いているが、本発明においては2つ以上の異なる
周波数の高周波電力が供給可能であればよく、高周波電
源が3つ以上であってもよい。また、あらかじめ複数の
周波数を合成した高周波電力が出力可能な電源を用いた
場合には、電源の数は1つであってもかまわない。いず
れにしても、少なくとも2つの異なる周波数の高周波電
力を同一電極に供給可能な構成であり、2つの異なる周
波数f1(Hz)、f2(Hz)の関係が、 10MHz≦f2<f1≦250MHz であり、それらの電力の関係が 0.1≦P2/(P1+P2)≦0.9 とすることが可能な構成とする。
【0079】更に、図2では高周波電極114、11
4’上での高周波電力の伝送方向は、反応容器101の
周方向で交互に異なるように構成されているが、必ずし
もこのようにする必要はない。例えば、周方向に3本連
続で上方向から下方向へ高周波電力を伝送し、残りの3
本に対しては下方向から上方向へ高周波電力を伝送する
構成とすることも可能である。しかしながら、本発明の
効果をより顕著に得る上では、図2に示した装置のよう
に高周波電極114、114’上での高周波電力の伝送
方向は、反応容器101の周方向で交互に異なるように
構成することが好ましい。また、図2では上方向から下
方向へ高周波電力を伝送する高周波電極114の数と下
方向から上方向へ高周波電力を伝送する高周波電極11
4の数を同数としているが、必ずしも同数とする必要は
ない。例えば、上方向から下方向へ高周波電力を伝送す
る高周波電極114の数を1本とし、下方向から上方向
へ高周波電力を伝送する高周波電極114’の数を5本
としても良いし、逆に、上方向から下方向へ高周波電力
を伝送する高周波電極114の数を5本とし、下方向か
ら上方向へ高周波電力を伝送する高周波電極114’の
数を1本としても良く、また、他の組み合わせであって
も構わない。いずれにしても、少なくとも1つの高周波
電極上を伝送される高周波電力の伝送方向が他の高周波
電極上を伝送される高周波電力の伝送方向と異なってい
れば良いが、本発明の効果をより顕著に得る上では、図
2のように高周波電極上での高周波電力の伝送方向が、
反応容器101の周方向で交互に異なるように構成され
ていることが好ましい。高周波電極114、114’の
形状としては、特に制限はないが、真空処理特性の均一
化効果をより顕著に得るためには、図1に示したような
棒状、あるいは線状であることが好ましい。
【0080】また、高周波電極114に冷却手段を設け
ることが、高周波電力による発熱の影響を回避する上で
好ましい。
【0081】円筒状の誘電体壁401は少なくとも一部
が高周波電力を透過可能な誘電体材料で構成されている
必要がある。誘電体壁401に用いる誘電体材料として
は特に制限はないが、例えばアルミナ、二酸化チタン、
窒化アルミニウム、窒化ホウ素、ジルコン、コージェラ
イト、ジルコン-コージェライト、酸化珪素、酸化ベリ
リウムマイカ系セラミックス等のセラミックが挙げられ
るが、これらのうち、アルミナ、窒化アルミニウム、窒
化ホウ素が高周波電力の損失が少なく、耐熱性が高く、
更に真空保持に適している点から好ましい。なお、誘電
体壁401は円筒状以外の他の形状であっても良いが、
各円筒状基体105への壁面の影響を均一化するという
点から、各円筒状基体105に対して対称な形が好まし
い。そして、プラズマを安定して維持することが容易で
あるという点から、可能な限り曲面によって形成されて
いることが好ましい。
【0082】図2において、反応容器101はこのよう
な誘電体壁401と上下の導電性板状部材により構成さ
れているが、必ずしもこのような構成とする必要はな
く、例えば反応容器101全てを誘電体材料で構成して
も良い。反応容器101としては、真空保持が可能であ
り、その一部から高周波電力を反応容器101の内部に
透過可能な構成となっていればよい。
【0083】高周波電力シールド402は高周波電力の
外部への漏れを防止可能に構成される。この高周波電力
シールド402は、一般的に高周波電力を用いた真空処
理装置で用いられている高周波電力シールドと同様に構
成すればよい。具体的には、アルミニウム、ステンレ
ス、銅、等の導電性面状部材によって反応容器101及
び高周波電極114を囲う構成としても良いし、同様の
導電性材料を用いたメッシュ状部材によって反応容器1
01及び高周波電極114、114’を囲う構成として
も良い。また、同様の導電性材料を用いたパンチングボ
ードによって反応容器101及び高周波電極114、1
14’を囲う構成としても良い。そしてその形状に関し
ても特に制限がなく、円筒状、角状等いずれの形状であ
っても良いが、高周波電力シールド402内における高
周波電力密度の均一性を確保する上から、各電極に対し
て可能な限り対称な形とすることが好ましい。また、高
周波電力の安定的供給という点から、可能な限り曲面で
構成することが好ましい。そして、反応容器101の一
部が導電性材料で構成されている場合には、図2のよう
に、その一部、或いは全部を高周波電力シールドとして
兼用することも可能である。
【0084】このような装置を用いた真空処理は、例え
ば図2の装置を用いて堆積膜形成を行う場合、概略以下
のような手順により行なうことができる。まず、反応容
器101内に円筒状基体105を設置し、不図示の排気
装置により排気口111を通して反応容器101内を排
気する。続いて、不図時のモータにより回転軸108を
介して円筒状基体105を所定の速度で回転させなが
ら、発熱体107により円筒状基体105を200℃〜
300℃程度の所定の温度に加熱、制御する。この際、
原料ガス供給手段112よりAr、He、N2、H2等の
ガスを反応容器101中に所定流量導入し、反応容器1
01中の圧力を所定圧力に維持しながら円筒状基体10
5を加熱、制御してもよい。
【0085】円筒状基体105が所定の温度となったと
ころで、原料ガス供給手段112を介して、原料ガスを
反応容器101内に導入する。円筒状基体105の加熱
・制御時にAr、He、N2、H2等のガスを用いている
場合には、これに先立って、あるいはこれと並行してこ
れらのガスの導入を停止する。原料ガスの流量が設定流
量となり、また、反応容器101内の圧力が安定したの
を確認した後、 10MHz≦f2<f1≦250MHz の関係を満たす2つの周波数f1、f2の高周波電力を
高周波電源103、113よりマッチングボックス10
4を介して上端を高周波電力供給端とする3本の高周波
電極114に供給する。
【0086】同時に、 10MHz≦f2<f1≦250MHz の関係を満たす2つの周波数f1’、f2’の高周波電
力を高周波電源115、117よりマッチングボックス
116を介して下端を高周波電力供給端とする3本の高
周波電極114’に供給する。これにより、高周波電力
は高周波電極114’より誘電体壁401を透過して反
応容器101中に放射され、反応容器101内に異なる
周波数の高周波電力が導入される。そして反応容器10
1内にグロー放電が生起し、原料ガスは励起解離して円
筒状基体105上に堆積膜が形成される。
【0087】所望の膜厚の形成が行なわれた後、高周波
電力の供給を止め、続いて原料ガスの供給を停止して堆
積膜の形成を終える。同様の操作を複数回繰り返すこと
によって、所望の多層構造の光受容層が形成される。こ
の際、各層間では一旦高周波電力の供給を停止し、続い
て原料ガスの供給を停止し、反応容器101を十分に排
気した後、次の層の形成を開始しても良いし、高周波電
力、原料ガス流量を次の層の条件に連続的に、かつ/ま
たは、段階的に変化させることによって次の層を形成し
ても良い。
【0088】
【発明の実施の形態】「実験例」以下、実験例により本
発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらによりな
んら制限されるものではない。
【0089】(実験例1)図1に示す真空処理装置を用
い、表1に示す条件でa-SiC堆積膜を形成した。円筒状
基体105は直径80mm、長さ358mmのアルミニ
ウムシリンダーであり、その表面には堆積膜特性評価用
として幅1インチ、長さ1.5インチの研磨ガラス(コー
ニング社製、#7059)を円筒状基体105の周方向1列に
母線方向(その基体長さ方向)に9枚並べて設置した。
円筒状基体105上の研磨ガラス設置個所は円筒状基体
105と研磨ガラスが密着するように平面化した。内部
高周波電極102、外部高周波電極114は直径20m
mのステンレス製金属棒とし、その表面を内径21m
m、外径24mmのアルミナ製パイプにより覆う構造と
した。アルミナ製パイプはブラスト加工により、表面粗
さを2.5mmを基準長とするRzで20μmとした。
円筒状基体105は内部高周波電極102を中心とする
円周上に等間隔で6本配置した。
【0090】高周波電源103、113から出力された
高周波電力は、各々別々の同軸線路により、マッチング
ボックス104に供給され、マッチングボックス104
内で各々の電力が合成される。その後、高周波電力は同
軸線路により内部高周波電極102の上端に供給され、
内部高周波電極102上を反応容器101の上方向から
下方向に伝送されながら、同時に反応容器101内へ放
射される。
【0091】また、高周波電源115、117から出力
された高周波電力は、各々別々の同軸線路により、マッ
チングボックス116に供給され、マッチングボックス
116内で各々の電力が合成される。その後、高周波電
力は3本に分岐された同軸線路により3本の外部高周波
電極114の下端に均等に供給され、3本の外部高周波
電極114上を反応容器101の下方向から上方向に伝
送されながら、同時に反応容器101内へ放射される。
【0092】なお、マッチングボックス104、116
内には、各々の高周波電力が他方の高周波電源に流れ込
まないようにフィルター回路(不図示)が設けられてい
る。
【0093】原料ガス供給手段112は、内径10m
m、外径13mmのアルミナ製パイプで、端部が封止さ
れた構造とし、パイプ上に設けられた直径1.2mmの
ガス噴出口より原料ガス供給可能な構造のものを用い
た。原料ガス供給手段112の設置位置は円筒状基体配
置円内であり、円筒状基体105の配置円と中心を同じ
くする同一円周上に等間隔で3本配置した。原料ガス供
給手段112の表面は、ブラスト加工により、表面粗さ
を2.5mmを基準長とするRzで20μmとした。
【0094】高周波電源103、115より出力される
高周波電力の周波数は50MHzとし、高周波電源11
3、117より出力される高周波電力の周波数は30M
Hzとした。
【0095】このような装置を用いた、堆積膜形成は概
略以下の通りとした。
【0096】まず、基体ホルダー106に保持され、表
面に堆積膜特性評価用の研磨ガラスが設置された円筒状
基体105を反応容器101内の回転軸108上に設置
した。その後、不図示の排気装置により排気口111を
通して反応容器101内を排気した。続いて、回転軸1
08を介して円筒状基体105を不図示のモータにより
10rpmの速度で回転させ、更に原料ガス供給手段1
12より反応容器101中に500ml/min(no
rmal)のAr を供給しながら発熱体107により
円筒状基体105を250℃に加熱・制御し、その状態
を2時間維持した。
【0097】次いで、Arの供給を停止し、反応容器1
01を不図示の排気装置により排気管111を通して排
気した後、原料ガス供給手段112を介して、表1に示
した堆積膜形成条件で原料ガスを導入した。原料ガスの
流量が設定流量となり、また、反応容器101内の圧力
が安定したのを確認した後、高周波電源103、11
3、115、117の出力を所定の値に設定し、マッチ
ングボックス104、116を介して内部高周波電極1
02、外部高周波電極114へ高周波電力を供給した。
内部高周波電極102、外部高周波電極114より反応
容器101内に放射された高周波電力によって、原料ガ
スを励起解離することにより、円筒状基体105上にa
−SiC堆積膜を1μm堆積させた。
【0098】このような手順により、高周波電源10
3、113より内部高周波電極102に供給される総電
力、及び高周波電源115、117より3本の外部高周
波電極114に供給される総電力を表1に示した値と
し、総電力に対する30MHzの高周波電力の比率を0
%から100%の間で変化させて13通りの電力比で堆
積膜を形成した。
【0099】堆積膜形成後、反応容器101内をArに
てパージした後、N2ガスでリークして堆積膜が形成さ
れた堆積膜特性評価用の研磨ガラスを取り出した。
【0100】
【表1】 このようにして形成した堆積膜の光学的エネルギーバン
ドギャップ(Egopt)を評価した。測定には紫外可視分光
光度計(日本分光製、V-570)を用い、Taucプロット(hν
と(αhν)1/2との関係を求め、hν軸の切片の値をEgo
ptと定義する)によりEgoptを決定した。
【0101】この測定をa−SiC膜を堆積した9枚の
基板に対して行うことで、円筒状基体上に形成された堆
積膜の母線方向(その基体長さ方向)の均一性を評価し
た。9枚の基板の測定値のうち、最もEgoptが大きい部
分と小さい部分との差を、Egoptの母線方向ムラ(基体
長さ方向ムラ)として定めた。
【0102】評価結果を表2に示す。表2では、総電力
に対する30MHzの高周波電力の比率を0%とした場
合を基準とし、悪化を×、同等、または20%未満の良
化を△、20%以上40%未満の良化を△〜〇、40%
以上60%未満の良化を〇、60%以上80%未満の良
化を〇〜◎、80%以上の良化を◎で示している。
【0103】表2より、総電力に対する30MHzの高
周波電力の比率を0.1以上、0.9以下とすることで
特性均一化効果が明確に現れることが確認された。即
ち、50MHzの電力をP1、30MHzの電力をP2
として、 0.1≦P2/(P1+P2)≦0.9 の範囲において特性均一化効果が明確に現れ、特に、 0.2≦P2/(P1+P2)≦0.7 の範囲において特性均一化効果が顕著に現れることが確
認された。
【0104】
【表2】 (実験例2)実験例1で用いた真空処理装置を用い、表
3に示す条件で実験例1と同様の手順でa−Si堆積膜
を形成した。ただし、高周波電源103、115より出
力される高周波電力の周波数は20MHz、40MH
z、60MHz、80MHz、150MHz、200M
Hz、250MHz、300MHzの8条件とし、高周
波電源113、117より出力される高周波電力の周波
数は高周波電源103、115より出力される高周波電
力の周波数の3/4倍の周波数とした。また高周波電源
113より内部高周波電極102に供給される電力は、
内部高周波電極102に供給される総電力の20%と
し、高周波電源117より外部高周波電極114に供給
される電力は、外部高周波電極114に供給される総電
力の20%とした。
【0105】(実験例3)実験例2において、高周波電
源113、117より出力される高周波電力の周波数を
高周波電源103、115より出力される高周波電力の
周波数の1/2倍の周波数とする以外は実験例2と同様
にして、表3に示す条件で実験例1と同様の手順でa−
Si堆積膜を形成した。
【0106】(実験例4)実験例2において、高周波電
源113、117より出力される高周波電力の周波数を
高周波電源103、115より出力される高周波電力の
周波数の1/4倍の周波数とする以外は実験例2と同様
にして、表3に示す条件で実験例1と同様の手順でa−
Si堆積膜を形成した。
【0107】(比較実験例1)高周波電源113、11
7より高周波電力の供給を行わず、高周波電源103、
115より各々、内部高周波電極102への総電力供
給、外部高周波電極114への総電力供給を行う以外は
実験例2と同様にして、表3に示す条件でa−Si膜の
形成を行った。
【0108】実験例2、実験例3、実験例4、比較実験
例1で評価用の研磨ガラス基板上に堆積されたa−Si
膜上にCrの櫛形電極を形成し、以下の具体的評価法に
より光感度の評価を行った。
【0109】ここで光感度とは、明導電率をσp、暗導
電率をσdとして、 光感度=log(σp/σd) とした。この光感度の値が大きいほど堆積膜特性が良好
であることを示す。なお、明導電率σpは、1mW/cm2の強
度のHe-Neレーザー(波長632.8nm)を照射したときの導電
率、暗導電率σdは光を照射しないときの導電率であ
る。
【0110】このような測定を各条件ごとに、a−Si
膜の形成された9枚の基板全てで行い、最も高い光感度
(S/Nmax)と最も低い光感度(S/Nmin)との差(S
/Nmax‐S/Nmin)を光感度の母線方向ムラ(基体長さ
方向ムラ)とした。
【0111】得られた評価結果を表4に示す。表4で
は、高周波電源103、115の各周波数ごとに、比較
実験例1の評価結果を基準とし、悪化を×、同等、また
は20%未満の良化を△、20%以上40%未満の良化
を△〜〇、40%以上60%未満の良化を〇、60%以
上80%未満の良化を〇〜◎、80%以上の良化を◎で
示している。表4より、高周波電源103、115より
供給される高周波電力の周波数が250MHz以下であ
り、高周波電源113、117より供給される高周波電
力の周波数が10MHz以上において顕著な特性均一化
効果が得られることが確認された。即ち、高周波電源1
03、115より供給される高周波電力の周波数f1、
高周波電源113、117より供給される高周波電力の
周波数f2が 10MHz≦f2<f1≦250MHz の関係を満たす場合に顕著な特性均一化効果が得られる
ことが確認され、特に 30MHz≦f2<f1≦250MHz の関係を満たす場合により顕著な特性均一化効果が得ら
れることが確認された。
【0112】
【表3】
【0113】
【表4】 「実施例」以下、実施例により本発明を更に詳しく説明
するが、本発明はこれらによりなんら制限されるもので
はない。
【0114】(実施例1)図1に示す堆積膜形成装置を
用い、高周波電源103、115の発振周波数を100
MHzとし、高周波電源113、117の発振周波数を
10MHz、30MHz、54MHz、68MHz、9
0MHzとした各々の条件で直径80mm、長さ358
mmの円筒状アルミニウムシリンダー105上に表5に
示す条件で電荷注入阻止層、光導電層、表面層からなる
a−Si系感光体を5ロット、合計30本作製した。な
お、高周波電源103の出力は内部高周波電極102に
供給する全電力の90%、高周波電源113の出力は内
部高周波電極102に供給する全電力の10%とした。
また、高周波電源115の出力は外部高周波電極114
に供給する全電力の90%、高周波電源117の出力は
外部高周波電極114に供給する全電力の10%とし
た。
【0115】内部高周波電極102、外部高周波電極1
14は直径20mmのSUS製円柱であり、その外部を
内径21mm、外径24mmのアルミナ製パイプにより
覆う構造とした。アルミナ製パイプはブラスト加工によ
り、表面粗さを2.5mmを基準長とするRzで20μ
mとした。円筒状基体105は内部高周波電極102を
中心とする円周上に等間隔で6本配置した。
【0116】感光体作製手順は概略以下の通りとした。
【0117】まず、基体ホルダー106に保持された円
筒状基体105を反応容器101内の回転軸108上に
設置した。その後、不図示の排気装置により排気管11
1を通して反応容器101内を排気した。続いて、回転
軸108を介して円筒状基体105をモータ109によ
り10rpmの速度で回転させ、更に原料ガス供給手段
112より反応容器101中に500ml/min(n
ormal)のAr を供給しながら発熱体107によ
り円筒状基体105を250℃に加熱・制御し、その状
態を2時間維持した。
【0118】次いで、Arの供給を停止し、反応容器1
01を不図示の排気装置により排気管111を通して排
気した後、原料ガス供給手段112を介して、表5に示
した電荷注入阻止層形成に用いる原料ガスを導入した。
原料ガスの流量が設定流量となり、また、反応容器10
1内の圧力が安定したのを確認した後、高周波電源10
3の出力を内部高周波電極102に供給する全電力の9
0%、高周波電源113の出力を内部高周波電極102
に供給する全電力の10%とした状態で、全出力を表1
に示した内部高周波電極102への供給電力に設定し、
マッチングボックス104を介して内部高周波電極10
2の上端へ高周波電力を供給した。
【0119】同様に、高周波電源115の出力を外部高
周波電極114に供給する全電力の90%、高周波電源
117の出力を外部高周波電極114に供給する全電力
の10%とした状態で、全出力を表1に示した外部高周
波電極114への供給電力に設定し、マッチングボック
ス116を介して外部高周波電極114の下端へ高周波
電力を供給した。
【0120】内部高周波電極102、外部高周波電極1
14より反応容器101内に放射された高周波電力によ
って、原料ガスを励起解離することにより、円筒状基体
105上に電荷注入阻止層を形成した。所定の膜厚の形
成が行なわれた後、高周波電力の供給を止め、続いて原
料ガスの供給を停止して電荷注入阻止層の形成を終え
た。同様の操作を複数回繰り返すことによって、光導電
層、表面層を順次形成した。
【0121】(比較例1)実施例1において、高周波電
源113、117の発振周波数を7MHzとする以外は
実施例1と同様にして、直径80mm、長さ358mm
の円筒状アルミニウムシリンダー105上に表5に示す
条件で電荷注入阻止層、光導電層、表面層からなるa-
Si系感光体を5ロット、合計30本作製した。なお、
高周波電源103の出力は内部高周波電極102に供給
する全電力の90%、高周波電源113の出力は内部高
周波電極102に供給する全電力の10%とした。ま
た、高周波電源115の出力は外部高周波電極114に
供給する全電力の90%、高周波電源117の出力は外
部高周波電極114に供給する全電力の10%とした。
【0122】このようにして実施例1、比較例1で作製
されたa−Si感光体を本テスト用に改造されたキヤノ
ン製の複写機NP−6750に設置し、感光体の特性評価
を行なった。評価項目は、「画像濃度むら」、「帯電
能」、「光メモリー」、「画像欠陥」の4項目とし、以
下の具体的評価法により各項目の評価を行なった。
【0123】画像濃度むら … まず、 現像器位置で
の暗部電位が一定値となるよう主帯電器電流を調整した
後、原稿に反射濃度0.1以下の所定の白紙を用い、現
像器位置での明部電位が所定の値となるよう像露光光量
を調整した。 次いでキャノン製中間調チャート(部品
号:FY9-9042)を原稿台に置き、コピ−したときに得られ
たコピ−画像上全領域における反射濃度の最高値と最低
値の差により評価した。評価結果は全感光体の平均値と
した。従って、数値が小さいほど良好である。
【0124】帯電能 … 複写機の主帯電器に
一定の電流を流したときの現像器位置での暗部電位を測
定する。したがって、暗部電位が大きいほど帯電能が良
好であることを示す。帯電能測定は感光体母線方向(感
光体基体長さ方向)全領域に渡って行ない、その中の最
低暗部電位により評価した。評価結果は全感光体の平均
値とした。従って、数値が大きいほど良好である。
【0125】光メモリー … 現像器位置における
暗部電位が所定の値となるよう、主帯電器の電流値を調
整した後、所定の白紙を原稿とした際の明部電位が所定
の値となるよう像露光光量を調整する。この状態でキヤ
ノン製ゴーストテストチャート(部品番号:FY9−9
040)に反射濃度1.1、直径5mmの黒丸を貼り付
けたものを原稿台に置き、その上にキヤノン製中間調チ
ャートを重ねておいた際のコピー画像において、中間調
コピー上に認められるゴーストチャートの直径5mmの
黒丸の反射濃度と中間調部分の反射濃度との差を測定す
ることにより行った。光メモリー測定は感光体母線方向
(感光体基体長さ方向)全領域にわたって行い、その中
の最大反射濃度差により評価した。評価結果は全感光体
の平均値とした。従って、数値が小さいほど良好であ
る。
【0126】画像欠陥 … キャノン製中間調チ
ャート(部品番号:FY9-9042)を原稿台に置き、コピーし
たときに得られたコピ−画像の同一面積内にある直径
0.1mm以上の白点を数え、その数により評価した。
従って、数値が小さいほど良好である。
【0127】また、評価結果を表6に示す。表6におい
て、評価結果は、比較例1の評価結果を基準とし、画像
濃度むらに関しては、最大反射濃度差が1/4未満まで
良化したものを◎、1/4以上1/2未満まで良化した
ものを◎〜〇、1/2以上3/4未満まで良化したもの
を〇、3/4以上までの良化を〇〜△、同等を△、悪化
を×で示した。また、帯電能に関しては、10%以上の
向上を◎、7.5%未満5%以上の向上を◎〜〇、5%
未満2.5%以上の向上を〇、2.5%未満の向上を〇〜
△、同等を△、悪化を×で示した。光メモリーに関して
は最大反射濃度差が1/4未満まで良化したものを◎、
1/4以上1/2未満まで良化したものを◎〜〇、1/
2以上3/4未満まで良化したものを〇、3/4以上ま
での良化を〇〜△、同等を△、悪化を×で示した。画像
欠陥に関しては、直径0.1mm以上の白点の数が1/
4未満まで良化したものを◎、1/4以上1/2未満ま
で良化したものを◎〜〇、1/2以上3/4未満まで良
化したものを〇、3/4以上までの良化を〇〜△、同等
を△、悪化を×で示した。
【0128】実施例1のいずれの条件においても良好な
結果が得られ、本発明の効果が確認された。特に、低周
波数側の高周波電源113、117の発振周波数f2
(Hz)を30MHz以上とした場合により良好な結果
が得られ、更に、高周波数側の高周波電源103、11
5の発振周波数をf1(Hz)として、0.5<f2/
f1≦0.9の範囲においてより顕著な効果が得られる
ことが確認された。
【0129】また、実施例1で作製された電子写真感光
体を用いて形成された電子写真画像は、画像流れ等もな
い極めて良好なものであり、100万枚の耐久試験の後
も良好な電子写真画像が得られた。
【0130】
【表5】
【0131】
【表6】 (実施例2)図3に示す真空処理装置を用い、a−Si
C膜の形成、及び形成されたa−SiC膜のエッチング
を行った。図3において、図3(a)は本実施例の真空
処理装置を横方向から見た概略断面図、図3(b)は本
実施例の真空処理装置を上方向から見た概略断面図であ
る。反応容器501には排気口511が形成され、排気
口511の他端は不図示の排気装置に接続されている。
反応容器501内には真空処理が施される基板509が
基板支持台510上に設置され、基板支持台510中の
不図示の温度制御機構により基板509の温度が制御可
能となっている。そして、基板支持台510はアース電
位に維持され、基板509は基板支持台510を介して
アース電位に維持可能となっている。
【0132】反応容器501内には真空処理に用いられ
る原料ガスが原料ガス供給手段512より供給される。
原料ガス供給手段512は、内径10mm、外径13m
mのアルミナ製パイプで、端部が封止された構造とし、
パイプ上に設けられた直径1.2mmのガス噴出口より
原料ガス供給可能な構造のものを用いた。原料ガス供給
手段512の表面は、ブラスト加工により、表面粗さを
2.5mmを基準長とするRzで20μmとした。
【0133】また、反応容器501内には棒状の高周波
電極502、と高周波電極502’が交互に、互いに並
行に設置されている。高周波電極502には高周波電源
503、504より異なる周波数の高周波電力がマッチ
ングボックス505を経て棒状の高周波電極502の一
端に供給される。供給された高周波電力は高周波電極5
02上を高周波電力供給点側から反対側に向かう方向で
伝送されながら、同時に反応容器501内に高周波電力
を放射する。一方、高周波電極502’には高周波電源
506、507より異なる周波数の高周波電力がマッチ
ングボックス508を経て棒状の高周波電極502の一
端に供給される。この際、高周波電力が供給される位置
は高周波電極502とは反対側とされている。高周波電
極502’に供給された高周波電力は高周波電極50
2’上を高周波電力供給点側から反対側に向かう方向
で、即ち高周波電極502上の高周波電力伝送方向とは
逆方向に伝送されながら、同時に反応容器501内に高
周波電力を放射する。高周波電極502、502’は直
径20mmのSUS製円柱であり、その外部を内径21
mm、外径24mmのアルミナ製パイプにより覆う構造
とした。アルミナ製パイプはブラスト加工により、表面
粗さを2.5mmを基準長とするRzで20μmとし
た。また、マッチングボックス505、508内には、
各々の高周波電力が他方の高周波電源に流れ込まないよ
うにフィルター回路(不図示)が設けられている。
【0134】このような真空処理装置により、以下の真
空処理を行った。
【0135】まず、基板支持台510上に縦30cm、
横30cm、厚さ1mmのアルミニウム基板509を設
置した後、反応容器501内を不図示の排気装置により
排気口511を介して排気した。続いて、原料ガス供給
手段512より反応容器501中に500ml/min
(normal)のHeを供給しながら、基板支持台5
10中の不図示の温度制御機構により基板509を23
0℃に加熱、制御し、その状態を40分間維持した。
【0136】ついで、Heの供給を停止し、反応容器5
01中を不図示の排気装置により排気口511を介して
排気した後、原料ガス供給手段より表7に示す条件で原
料ガスを導入した。原料ガスの流量が設定流量となり、
また、反応容器501内の圧力が安定したのを確認した
後、高周波電源503、504、506、507の出力
を所定の値に設定し、マッチングボックス505、50
8を介して高周波電極502、502’へ高周波電力を
供給した。高周波電極502、502’より反応容器5
01内に放射された高周波電力によって、原料ガスを励
起解離することにより、基板509上にa−SiC堆積
膜を堆積させた。この際、堆積膜厚は基板509の中央
で1μmとなるようにした。
【0137】堆積膜形成後、反応容器501内をHeに
てパージし、基板509の温度が室温まで低下した後、
原料ガス供給手段より表8に示す条件でエッチング用の
原料ガスを導入した。原料ガスの流量が設定流量とな
り、また、反応容器501内の圧力が安定したのを確認
した後、高周波電源503、504、506、507の
出力を所定の値に設定し、マッチングボックス505、
508を介して高周波電極502、502’へ高周波電
力を供給した。高周波電極502、502’より反応容
器501内に放射された高周波電力によって、反応容器
501内では原料ガスがプラズマ化され、そこで生じた
活性種により基板509上のa−SiC膜がエッチング
される。この際、エッチング時間は基板509中央での
a−SiC膜厚が0.7μmとなるまでの時間とした。
また、エッチング処理中の基板509の温度は基板支持
台510中の不図示の温度制御機構により30℃に維持
した。
【0138】所定のエッチング処理が終了した後、反応
容器501内をHeにてパージし、次いで、N2ガスで
リークして堆積膜形成、及びエッチング処理が施された
基板509を取り出した。
【0139】このような真空処理を高周波電源503、
506の発振周波数を150MHz、高周波電源50
4、507の発振周波数を90MHzとし、高周波電極
502へ供給される総電力に対する高周波電源504か
らの供給電力比率、及び、高周波電極502’へ供給さ
れる総電力に対する高周波電源507からの供給電力比
率を0.1、0.2、0.4、0.6、0.7、0.9
の6条件で行った。
【0140】(比較例2)実施例2において、高周波電
源504、507の発振周波数を高周波電源503、5
06の発振周波数と同じ150MHzとする以外は実施
例2と同様にして、縦30cm、横30cm、厚さ1m
mのアルミニウム基板509上に真空処理を施した。
【0141】このようにして、実施例2、比較例2で真
空処理された真空処理特性の均一性を基板509上のa
−SiC膜の膜厚分布を測定することで評価した。具体
的には、基板509上のa−SiC膜の膜厚を各基板ご
とに、基板中央位置を基準として縦方向2cm間隔、横
方向2cm間隔の合計225点の位置で測定し、その最
大値と最小値を求め、(最大値)−(最小値)を膜厚む
らとした。評価結果を表9に示す。表9においては、比
較例2の結果を基準とし、悪化を×、同等、または20
%未満の良化を△、20%以上40%未満の良化を△〜
〇、40%以上60%未満の良化を〇、60%以上80
%未満の良化を〇〜◎、80%以上の良化を◎で示して
いる。
【0142】実施例2のいずれの条件においても、本発
明による真空処理特性の均一化効果が確認された。特
に、高周波数側の電力をP1、低周波数側の電力をP2
として、 0.2≦P2/(P1+P2)≦0.7 の範囲において、より顕著な本発明の効果が確認され
た。
【0143】また、実施例2のいずれの条件においても
真空処理の安定性は高かったが、特に高周波数側の周波
数をf1、低周波数側の周波数をf2として、 P2/(P1+P2)≦f2/f1 の範囲であるP2/(P1+P2)=0.1、0.2、
0.4、0.6の条件においては真空処理の安定性は極
めて高かった。
【0144】
【表7】
【0145】
【表8】
【0146】
【表9】 (実施例3)図2に示す堆積膜形成装置を用い、高周波
電源103、115の発振周波数を200MHzとし、
高周波電源113、117の発振周波数を20MHz、
30MHz、70MHz、105MHz、150MH
z、190MHzとした各々の条件で直径108mm、
長さ358mmの円筒状アルミニウムシリンダー105
上に表10に示す条件で電荷注入阻止層、光導電層、表
面層からなるa−Si系感光体を作製した。なお、高周
波電源103、113、115、117の出力はいずれ
も同じ出力値とした。
【0147】反応容器101の一部を構成する円筒状の
誘電体壁401は内径450mm、高さ500mm、厚
さ5mmのアルミナ製円筒であり、その内面はブラスト
加工により、表面粗さを2.5mmを基準長とするRz
で20μmとした。
【0148】誘電体壁401の外部に設けられる6本の
高周波電極114は直径20mmのSUS製円柱であ
り、これらが互いに並行に設置されており、更にその外
部にはアルミニウム製の高周波電力シールド402が設
けられている。円筒状アルミニウムシリンダー105、
反応容器101の導電性部、高周波電力シールド402
はいずれもアース電位に維持した。
【0149】6本の高周波電極114、114’のう
ち、3本には高周波電力が高周波電極114の上端から
供給され、残りの3本には高周波電力が高周波電極11
4’の下端より供給され、更には、反応容器周方向で高
周波電力供給方向が交互となるよう構成されている。
【0150】そして、2つの高周波電源103、113
より異なる周波数の高周波電力がマッチングボックス1
04を経て、上端を高周波電力供給点とする3本の高周
波電極114の上端に同時に供給され、供給された高周
波電力は高周波電極114上を反応容器101の上部か
ら下部へ向かう方向で伝送されながら、同時に反応容器
101の一部を構成する円筒状の誘電体壁401を通し
て反応容器101内に高周波電力を放射する。また、2
つの高周波電源115、117より異なる周波数の高周
波電力がマッチングボックス116を経て、下端を高周
波電力供給点とする3本の高周波電極114’の下端に
同時に供給され、供給された高周波電力は高周波電極1
14’上を反応容器101の下部から上部へ向かう方向
で伝送されながら、同時に反応容器101の一部を構成
する円筒状の誘電体壁401を通して反応容器101内
に高周波電力を放射する。なお、マッチングボックス1
04、116内には、各々の高周波電力が他方の高周波
電源に流れ込まないようにフィルター回路(不図示)が
設けられている。
【0151】感光体作製手順は概略以下の通りとした。
【0152】まず、基体ホルダー106に保持された円
筒状基体105を反応容器101内の回転軸108上に
設置した。その後、不図示の排気装置により排気管11
1を通して反応容器101内を排気した。続いて、回転
軸108を介して円筒状基体105をモータ109によ
り10rpmの速度で回転させ、更に原料ガス供給手段
112より反応容器101中に500ml/min(n
ormal)のArを供給しながら発熱体107により
円筒状基体105を250℃に加熱、制御し、その状態
を2時間維持した。
【0153】次いで、Arの供給を停止し、反応容器1
01を不図示の排気装置により排気管111を通して排
気した後、原料ガス供給手段112を介して、表10に
示した電荷注入阻止層形成に用いる原料ガスを導入し
た。原料ガスの流量が設定流量となり、また、反応容器
101内の圧力が安定したのを確認した後、高周波電源
103、113の出力を表10に示した電力に設定し、
マッチングボックス104を介して高周波電極114の
上端へ高周波電力を供給した。同様に、高周波電源11
5、117の出力を表10に示した電力に設定し、マッ
チングボックス116を介して高周波電極114’の下
端へ高周波電力を供給した。
【0154】高周波電極114、114’より反応容器
101内に放射された高周波電力によって、原料ガスを
励起解離することにより、円筒状基体105上に電荷注
入阻止層を形成した。所定の膜厚の形成が行なわれた
後、本実施例では放電を止めず、連続的にガス流量、電
力を変化させて、次の層である第一光導電層条件に設定
した。ガス流量、電力を連続的に変化させる時間は10
分とした。所定の膜厚の第一光導電層が形成された後、
連続的にガス流量、電力を変化させて、次の層である第
二光導電層条件に設定した。ガス流量、電力を連続的に
変化させる時間は5分とした。所定の膜厚の第二光導電
層が形成された後、連続的にガス流量、電力、圧力を変
化させて、次の層である表面層条件に設定した。ガス流
量、電力、圧力を連続的に変化させる時間は15分とし
た。
【0155】(比較例3)実施例3において、高周波電
源113、117の発振周波数を高周波電源103、1
15の発振周波数と同じ200MHzとする以外は実施
例3と同様にして、表10に示す条件でa−Si系感光
体の形成を行った。
【0156】このようにして実施例3、比較例3で作製
されたa−Si感光体を本テスト用に改造されたキヤノ
ン製の複写機GP605に設置し、実施例1と同様の具
体的評価手段により、「画像濃度むら」、「帯電能」、
「光メモリー」、「画像欠陥」の4項目に関して評価を
行った。評価結果を表11に示す。表11において、評
価結果は、比較例3の評価結果を基準とし、画像濃度む
らに関しては、最大反射濃度差が1/4未満まで良化し
たものを◎、1/4以上1/2未満まで良化したものを
◎〜〇、1/2以上3/4未満まで良化したものを〇、
3/4以上までの良化を〇〜△、同等を△、悪化を×で
示した。また、帯電能に関しては、10%以上の向上を
◎、7.5%未満5%以上の向上を◎〜〇、5%未満
2.5%以上の向上を〇、2.5%未満の向上を〇〜
△、同等を△、悪化を×で示した。光メモリーに関して
は最大反射濃度差が1/4未満まで良化したものを◎、
1/4以上1/2未満まで良化したものを◎〜〇、1/
2以上3/4未満まで良化したものを〇、3/4以上ま
での良化を〇〜△、同等を△、悪化を×で示した。画像
欠陥に関しては、直径0.1mm以上の白点の数が1/
4未満まで良化したものを◎、1/4以上1/2未満ま
で良化したものを◎〜〇、1/2以上3/4未満まで良
化したものを〇、3/4以上までの良化を〇〜△、同等
を△、悪化を×で示した。
【0157】実施例3のいずれの条件においても良好な
結果が得られ、本発明の効果が確認された。特に、低周
波数側の高周波電源113、117の発振周波数f2
(Hz)を30MHz以上とした場合により良好な結果
が得られ、更に、高周波数側の高周波電源103、11
5の発振周波数f1(Hz)として、0.5<f2/f
1≦0.9の範囲においてより顕著な効果が得られるこ
とが確認された。
【0158】また、実施例3で作製された電子写真感光
体を用いて形成された電子写真画像は、画像流れ等もな
い極めて良好なものであり、100万枚の耐久試験の後
も良好な電子写真画像が得られた。
【0159】
【表10】
【0160】
【表11】 (実施例4)図4に示す堆積膜形成装置を用い、表12に
示す条件でa−Si系感光体を形成した。
【0161】図4において、図4(a)は本実施例の堆
積膜形成装置の概略断面図、図4(b)は図4(a)の
切断線A‐A’に沿う概略断面図である。反応容器10
1の底部には排気口111が形成され、排気口111の
他端は不図示の排気装置に接続されている。反応容器1
01の中心部を取り囲むように、堆積膜の形成される直
径30mm、長さ358mmの12本の円筒状アルミニ
ウムシリンダー105がホルダー106に載置された状
態で、互いに平行になるように配置されている。各円筒
状アルミニウムシリンダー105は回転軸108によっ
て保持され、発熱体107によって加熱されるようにな
っている。不図示のモータを駆動することで回転軸10
8が回転し、円筒状アルミニウムシリンダー105がそ
の母線方向中心軸(その基体長さ方向に沿った筒中心
軸)のまわりを自転するようになっている。円筒状アル
ミニウムシリンダー105は回転軸108を介してアー
ス電位に維持される。
【0162】反応容器101内には原料ガスが原料ガス
供給手段112より供給される。原料ガス供給手段11
2は、内径10mm、外径13mmのアルミナ製パイプ
で、端部が封止された構造とし、パイプ上に設けられた
直径1.2mmのガス噴出口より原料ガス供給可能な構
造のものを用いた。原料ガス供給手段512の表面は、
ブラスト加工により、表面粗さを2.5mmを基準長と
するRzで20μmとした。
【0163】反応容器101の中央には内部高周波電極
102が設置され、また、反応容器101の一部を構成
するアルミナ製の円筒状誘電体壁401の外部には棒状
の外部高周波電極114が互いに平行に6本設置されて
おり、更にその外部には高周波電力シールド402が設
けられている。
【0164】内部高周波電極102への電力供給は以下
のような構成によりなされる。2つの高周波電源10
3、113より異なる周波数の高周波電力がマッチング
ボックス104を経て内部高周波電極102の下端に同
時に供給され、供給された高周波電力は内部高周波電極
102上を反応容器101の下部から上部へ向かう方向
で伝送されながら、同時に反応容器101内に高周波電
力を放射する。一方、外部高周波電極114への電力供
給は以下のような構成によりなされる。2つの高周波電
源115、117より異なる周波数の高周波電力がマッ
チングボックス116を経て外部高周波電極114の上
端に同時に供給され、供給された高周波電力は外部高周
波電極114上を上部から下部へ向かう方向で伝送され
ながら、同時に反応容器101の一部を構成する円筒状
誘電体壁401を通して反応容器101内に高周波電力
を放射する。内部高周波電極102は直径20mmのS
US製円柱であり、その外部を内径21mm、外径24
mmのアルミナ製パイプにより覆う構造とした。このア
ルミナ製パイプ、及び反応容器101の一部を構成する
アルミナ製の円筒状誘電体壁401の内面はブラスト加
工により、表面粗さを2.5mmを基準長とするRzで
20μmとした。また、マッチングボックス104、1
16内には、各々の高周波電力が他方の高周波電源に流
れ込まないようにフィルター回路(不図示)が設けられ
ている。
【0165】本実施例においては、高周波電源103、
115の発振周波数を60MHz、高周波電源113、
117の発振周波数を40MHzとした。また、高周波
電源103の出力は内部高周波電極102に供給する全
電力の50%、高周波電源113の出力は内部高周波電
極102に供給する全電力の50%とした。また、高周
波電源115の出力は外部高周波電極114に供給する
全電力の50%、高周波電源117の出力は外部高周波
電極114に供給する全電力の50%とした。
【0166】感光体作製手順は概略以下の通りとした。
【0167】まず、基体ホルダー106に保持された円
筒状アルミニウムシリンダー105を反応容器101内
の回転軸108上に設置した。その後、不図示の排気装
置により排気管111を通して反応容器101内を排気
した。続いて、回転軸108を介して円筒状アルミニウ
ムシリンダー105を不図示のモータにより10rpm
の速度で回転させ、更に原料ガス供給手段112より反
応容器101中に500ml/min(normal)
のAr を供給しながら発熱体107により円筒状アル
ミニウムシリンダー105を250℃に加熱、制御し、
その状態を2時間維持した。
【0168】次いで、Arの供給を停止し、反応容器1
01を不図示の排気装置により排気管111を通して排
気した後、原料ガス供給手段112を介して、表12に
示した電荷輸送層形成に用いる原料ガスを導入した。原
料ガスの流量が設定流量となり、また、反応容器101
内の圧力が安定したのを確認した後、高周波電源103
の出力を内部高周波電極102に供給する全電力の50
%、高周波電源113の出力を内部高周波電極102に
供給する全電力の50%とした状態で、高周波電源10
3、113からの全電力を表12に示した内部高周波電
極102への供給電力値に設定し、マッチングボックス
104を介して内部高周波電極102の下端へ高周波電
力を供給した。同時並行的に、高周波電源115の出力
を外部高周波電極114に供給する全電力の50%、高
周波電源117の出力を外部高周波電極114に供給す
る全電力の50%とした状態で、高周波電源115、1
17からの全電力を表12に示した外部高周波電極11
4への供給電力値に設定し、マッチングボックス116
を介して外部高周波電極114の上端へ高周波電力を供
給した。
【0169】内部高周波電極102、外部高周波電極1
14より反応容器101内に放射された高周波電力によ
って、原料ガスを励起解離することにより、円筒状アル
ミニウムシリンダー105上に電荷輸送層を形成した。
所定の膜厚の形成が行なわれた後、放電を止めず、まず
連続的にガス流量を5分間で変化させ、その後電力を5
分間で変化させて、次の層である電荷発生層条件に設定
した。所定の膜厚の電荷発生層が形成された後、連続的
にガス流量、電力、圧力を変化させて、次の層である表
面層条件に設定した。ガス流量、電力、圧力を連続的に
変化させる時間は15分とした。
【0170】(実施例5)実施例4で用いた堆積膜形成
装置を図5に示すように改造し、それ以外は実施例4と
同様にして表12に示す条件でa−Si系感光体を形成
した。図5において、内部高周波電極102、外部高周
波電極114への高周波電力供給は以下のようにしてな
される。
【0171】2つの高周波電源103、113より異な
る周波数の高周波電力がマッチングボックス104を経
て内部高周波電極102の下端に同時に供給され、供給
された高周波電力は内部高周波電極102上を反応容器
101の下部から上部へ向かう方向で伝送されながら、
同時に反応容器101内に高周波電力を放射する。一
方、外部高周波電極114への電力供給は以下のように
なされる。2つの高周波電源115、117より異なる
周波数の高周波電力がマッチングボックス116を経て
3本の外部高周波電極114の上端に同時に供給され、
供給された高周波電力は3本の外部高周波電極114上
を上部から下部へ向かう方向で伝送されながら、同時に
反応容器101の一部を構成する円筒状誘電体壁401
を通して反応容器101内に高周波電力を放射する。ま
た、残りの3本の外部高周波電極114’への高周波電
力供給は、2つの高周波電源701、702より出力さ
れた異なる周波数の高周波電力がマッチングボックス7
03を経て3本の外部高周波電極114’の下端に同時
に供給されることによりなされる。供給された高周波電
力は3本の外部高周波電極114’上を下部から上部へ
向かう方向で伝送されながら、同時に反応容器101の
一部を構成する円筒状誘電体壁401を通して反応容器
101内に高周波電力を放射する。高周波電源115、
117より上端に電力供給される外部高周波電極114
と高周波電源701、702より下端に電力供給される
外部高周波電極114’とは、反応容器101の周方向
で交互に配置した。
【0172】本実施例においては、高周波電源103、
115、701の発振周波数を60MHz、高周波電源
113、117、702の発振周波数を40MHzとし
た。また、高周波電源103の出力は内部高周波電極1
02に供給する全電力の50%、高周波電源113の出
力は内部高周波電極102に供給する全電力の50%と
した。また、高周波電源115、117、701、70
2の各々の出力は外部高周波電極114、114’に供
給する全電力の25%とした。
【0173】図5に示した堆積膜形成装置は、図4の堆
積膜形成装置と高周波電力供給方法が上記した点で異な
る以外は同様の構成となっている。
【0174】このような図5に示した堆積膜形成装置を
用いたa−Si系感光体作製手順は概略以下の通りとし
た。
【0175】まず、基体ホルダー106に保持された円
筒状アルミニウムシリンダー105を反応容器101内
の回転軸108上に設置した。その後、不図示の排気装
置により排気管111を通して反応容器101内を排気
した。続いて、回転軸108を介して円筒状アルミニウ
ムシリンダー105を不図示のモータにより10rpm
の速度で回転させ、更に原料ガス供給手段112より反
応容器101中に500ml/min(normal)
のAr を供給しながら発熱体107により円筒状アル
ミニウムシリンダー105を250℃に加熱、制御し、
その状態を2時間維持した。
【0176】次いで、Arの供給を停止し、反応容器1
01を不図示の排気装置により排気管111を通して排
気した後、原料ガス供給手段112を介して、表12に
示した電荷輸送層形成に用いる原料ガスを導入した。原
料ガスの流量が設定流量となり、また、反応容器101
内の圧力が安定したのを確認した後、高周波電源103
の出力を内部高周波電極102に供給する全電力の50
%、高周波電源113の出力を内部高周波電極102に
供給する全電力の50%とした状態で、高周波電源10
3、113からの全電力を表12に示した内部高周波電
極102への供給電力値に設定し、マッチングボックス
104を介して内部高周波電極102の下端へ高周波電
力を供給した。同時並行的に、高周波電源115の出力
を外部高周波電極114に供給する全電力の25%、高
周波電源117の出力を外部高周波電極114に供給す
る全電力の25%とした状態で、マッチングボックス1
16を介して3本の外部高周波電極114の上端へ高周
波電力を供給し、更に、高周波電源701の出力を外部
高周波電極114’に供給する全電力の25%、高周波
電源702の出力を外部高周波電極114’に供給する
全電力の25%とした状態で、マッチングボックス70
3を介して外部高周波電極114’の下端へ高周波電力
を供給した。
【0177】内部高周波電極102、外部高周波電極1
14、114’より反応容器101内に放射された高周
波電力によって、原料ガスを励起解離することにより、
円筒状アルミニウムシリンダー105上に電荷輸送層を
形成した。所定の膜厚の形成が行なわれた後、放電を止
めず、まず連続的にガス流量を5分間で変化させ、その
後電力を5分間で変化させて、次の層である電荷発生層
条件に設定した。所定の膜厚の電荷発生層が形成された
後、連続的にガス流量、電力、圧力を変化させて、次の
層である表面層条件に設定した。ガス流量、電力、圧力
を連続的に変化させる時間は15分とした。
【0178】(比較例4)実施例4において、高周波電
源113、117の発振周波数を高周波電源103、1
15の発振周波数と同じ60MHzとする以外は実施例
4と同様にして、表12に示す条件でa−Si系感光体
を形成した。
【0179】このようにして実施例4、実施例5、比較
例4で作製されたa−Si系感光体を正帯電ドラム用に
改造されたキヤノン製の複写機NP‐6030に設置
し、実施例1と同様の具体的評価手段により、「画像濃
度むら」、「帯電能」、「光メモリー」、「画像欠陥」
の4項目に関して評価を行った。評価結果を表13に示
す。表13において、評価結果は、比較例4の評価結果
を基準とし、画像濃度むらに関しては、最大反射濃度差
が1/4未満まで良化したものを◎、1/4以上1/2
未満まで良化したものを◎〜〇、1/2以上3/4未満
まで良化したものを〇、3/4以上までの良化を〇〜
△、同等を△、悪化を×で示した。また、帯電能に関し
ては、10%以上の向上を◎、7.5%未満5%以上の
向上を◎〜〇、5%未満2.5%以上の向上を〇、2.5
%未満の向上を〇〜△、同等を△、悪化を×で示した。
光メモリーに関しては最大反射濃度差が1/4未満まで
良化したものを◎、1/4以上1/2未満まで良化した
ものを◎〜〇、1/2以上3/4未満まで良化したもの
を〇、3/4以上までの良化を〇〜△、同等を△、悪化
を×で示した。画像欠陥に関しては、直径0.1mm以
上の白点の数が1/4未満まで良化したものを◎、1/
4以上1/2未満まで良化したものを◎〜〇、1/2以
上3/4未満まで良化したものを〇、3/4以上までの
良化を〇〜△、同等を△、悪化を×で示した。
【0180】実施例4、実施例5のいずれの条件におい
ても良好な結果が得られ、本発明の効果が確認された。
特に、外部高周波電極114上を伝送される高周波電力
の伝送方向を反応容器101の周方向で交互に変化させ
た実施例5において、本発明の効果がより顕著に得られ
た。
【0181】また、実施例4、実施例5で作製された電
子写真感光体を用いて形成された電子写真画像は、画像
流れ等もない極めて良好なものであり、100万枚の耐
久試験の後も良好な電子写真画像が得られた。
【0182】
【表12】
【0183】
【表13】
【0184】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、反
応容器中に被処理物を設置し、該反応容器中に供給した
原料ガスを高周波電力により分解し、該被処理物に処理
を施す真空処理方法において、真空処理速度を高く維持
しながらも、真空処理特性の向上、真空処理特性の再現
性向上を達成し、更には真空処理特性の均一性を極めて
高いレベルとすることが可能となる。また、被処理物表
面への異物の付着を効果的に抑制するため、良品率の向
上が実現可能となり、真空処理コストの低減が可能とな
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に用いることができる堆積膜形成装置の
一例を示した模式的な構成図である。
【図2】本発明に用いることができる堆積膜形成装置の
一例を示した模式的な構成図である。
【図3】本発明に用いることができる堆積膜形成装置の
一例を示した模式的な構成図である。
【図4】本発明に用いることができる堆積膜形成装置の
一例を示した模式的な構成図である。
【図5】本発明に用いることができる堆積膜形成装置の
一例を示した模式的な構成図である。
【図6】従来のRF帯の周波数を用いたRFプラズマC
VD法による電子写真用光受容部材の製造装置の一例を
示した模式的な構成図である。
【図7】従来のVHF帯の周波数を用いたVHFプラズ
マCVD法による電子写真用光受容部材の製造装置の一
例を示した模式的な構成図である。
【符号の説明】
101 反応容器 102 内部高周波電極 103 高周波電源 104 マッチングボックス 105 円筒状基体 106 基体ホルダー 107 発熱体 108 回転軸 111 排気口 112 原料ガス供給手段 113 高周波電源 114、114’ 外部高周波電極 115 高周波電源 116 マッチングボックス 117 高周波電源 301 反応容器 302 カソード電極 303 高周波電源 304 マッチングボックス 305 円筒状基体 306 成膜空間 307 発熱体 308 回転軸 309 モータ 310 減速ギア 311 排気管 312 原料ガス供給手段 401 誘電体壁 501 反応容器 502 高周波電極 503 高周波電源 504 高周波電源 505 マッチングボックス 506 高周波電源 507 高周波電源 508 マッチングボックス 509 基板 510 基板支持台 511 排気口 512 原料ガス供給手段 701 高周波電源 702 高周波電源 703 マッチングボックス 2100 堆積装置 2111 反応容器 2112 円筒状基体 2113 支持体加熱用ヒーター 2114 原料ガス導入管 2115 マッチングボックス 2116 原料ガス配管 2117 反応容器リークバルブ 2118 メイン排気バルブ 2119 真空計 2200 原料ガス供給装置 2211〜2216 マスフローコントローラー 2221〜2226 原料ガスボンベ 2231〜2236 原料ガスボンベバルブ 2241〜2246 ガス流入バルブ 2251〜2256 ガス流出バルブ 2261〜2266 圧力調整器
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 青木 誠 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内 Fターム(参考) 2H068 EA24 4K030 AA06 AA17 BA30 CA02 CA16 FA01 JA16 JA18 KA05 KA30 LA17 5F045 AA08 AB04 AC01 CA16 DA52 DP25 EH15 EH19

Claims (26)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 反応容器中に被処理物を設置し、少なく
    とも2つの異なる周波数の高周波電力を同一の高周波電
    極上に同時に供給し、該高周波電極より前記反応容器内
    に導入された高周波電力によってプラズマを形成して被
    処理物を処理する真空処理方法において、 前記異なる周波数の高周波電力が同時供給される高周波
    電極が複数であり、該複数の高周波電極のうちの少なく
    とも1つの高周波電極上を伝送される高周波電力の主な
    る伝送方向が他の高周波電極上を伝送される高周波電力
    の主なる伝送方向と異なり、更に、各高周波電極に供給
    する前記複数の高周波電力は周波数が10MHz以上2
    50MHz以下の高周波電力を少なくとも2つ含み、該
    周波数範囲内にある高周波電力が有する電力値の中で最
    も大きい電力値と次に大きい電力値を有する高周波電力
    について、そのうち周波数の高い方の高周波電力の周波
    数、電力値をf1、P1、周波数の低い方の高周波電力
    の周波数、電力値をf2、P2としたとき、前記電力値
    P1、P2が、 0.1 ≦ P2/(P1+P2) ≦ 0.9 を満たすことを特徴とする真空処理方法。
  2. 【請求項2】 30MHz≦f2<f1≦250MHz
    である請求項1に記載の真空処理方法。
  3. 【請求項3】 0.2≦P2/(P1+P2)≦0.7で
    ある請求項1又は請求項2に記載の真空処理方法。
  4. 【請求項4】 P2/(P1+P2)≦ f2/f1であ
    る請求項1から3のいずれかに記載の真空処理方法。
  5. 【請求項5】 0.5<f2/f1≦0.9である請求
    項1から4のいずれかに記載の真空処理方法。
  6. 【請求項6】 高周波電極のうち少なくとも1つが棒状
    である請求項1から5のいずれかに記載の真空処理方
    法。
  7. 【請求項7】 高周波電極のうち少なくとも2つ以上が
    棒状である請求項6に記載の真空処理方法。
  8. 【請求項8】 高周波電極が全て棒状である請求項7に
    記載の真空処理方法。
  9. 【請求項9】 棒状の高周波電極が互いに平行である請
    求項7又は8に記載の真空処理方法。
  10. 【請求項10】 第1の方向に高周波電力を伝送する高
    周波電極の数と、第2の方向に高周波電力を伝送する高
    周波電極の数が同数である請求項9に記載の真空処理方
    法。
  11. 【請求項11】 被処理物が円筒状、または円柱状であ
    る請求項1から10のいずれかに記載の真空処理方法。
  12. 【請求項12】 真空処理が堆積膜形成である請求項1
    から11のいずれかに記載の真空処理方法。
  13. 【請求項13】 真空処理が電子写真用感光体形成であ
    る請求項1から12のいずれかに記載の真空処理方法。
  14. 【請求項14】 反応容器中に被処理物を設置し、少な
    くとも2つの異なる周波数の高周波電力を同一の高周波
    電極上に同時に供給し、該高周波電極より前記反応容器
    内に導入された高周波電力によってプラズマを形成して
    被処理物を処理する真空処理装置において、 前記異なる周波数の高周波電力が同時供給される高周波
    電極が複数であり、該複数の高周波電極のうちの少なく
    とも1つの高周波電極上を伝送される高周波電力の主な
    る伝送方向が他の高周波電極上を伝送される高周波電力
    の主なる伝送方向と異なるよう構成されており、更に、
    各高周波電極に供給する前記複数の高周波電力は周波数
    が10MHz以上250MHz以下の高周波電力を少な
    くとも2つ含み、該周波数範囲内にある高周波電力が有
    する電力値の中で最も大きい電力値と次に大きい電力値
    を有する高周波電力について、そのうち周波数の高い方
    の高周波電力の周波数、電力値をf1、P1、周波数の
    低い方の高周波電力の周波数、電力値をf2、P2とし
    たとき、前記電力値P1、P2が、 0.1 ≦ P2/(P1+P2) ≦ 0.9 を満たすことを特徴とする真空処理装置。
  15. 【請求項15】 30MHz≦f2<f1≦250MH
    zである請求項14に記載の真空処理装置。
  16. 【請求項16】 0.2≦P2/(P1+P2)≦0.7
    である請求項14又は15に記載の真空処理装置。
  17. 【請求項17】 P2/(P1+P2)≦ f2/f1で
    ある請求項16に記載の真空処理装置。
  18. 【請求項18】 0.5<f2/f1≦0.9である請
    求項17に記載の真空処理装置。
  19. 【請求項19】 高周波電極のうち少なくとも1つが棒
    状である請求項14から18のいずれかに記載の真空処
    理装置。
  20. 【請求項20】 高周波電極のうち少なくとも2つ以上
    が棒状である請求項19に記載の真空処理装置。
  21. 【請求項21】 高周波電極が全て棒状である請求項2
    0に記載の真空処理装置。
  22. 【請求項22】 棒状の高周波電極が互いに平行である
    請求項20又は21に記載の真空処理装置。
  23. 【請求項23】 第1の方向に高周波電力を伝送する高
    周波電極の数と、第2の方向に高周波電力を伝送する高
    周波電極の数が同数である請求項22に記載の真空処理
    装置。
  24. 【請求項24】 被処理物が円筒状、または円柱状であ
    る請求項14から23のいずれかに記載の真空処理装
    置。
  25. 【請求項25】 堆積膜形成が可能である請求項14か
    ら24のいずれかに記載の真空処理装置。
  26. 【請求項26】 電子写真用感光体形成が可能である請
    求項25に記載の真空処理装置。
JP2001215387A 2001-07-16 2001-07-16 真空処理方法及び真空処理装置 Pending JP2003027245A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2001215387A JP2003027245A (ja) 2001-07-16 2001-07-16 真空処理方法及び真空処理装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2001215387A JP2003027245A (ja) 2001-07-16 2001-07-16 真空処理方法及び真空処理装置

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2003027245A true JP2003027245A (ja) 2003-01-29

Family

ID=19050034

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2001215387A Pending JP2003027245A (ja) 2001-07-16 2001-07-16 真空処理方法及び真空処理装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2003027245A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP3897582B2 (ja) 真空処理方法、真空処理装置、半導体装置の製造方法および半導体装置
JPH08225947A (ja) プラズマ処理方法及びプラズマ処理装置
JP3745095B2 (ja) 堆積膜形成装置および堆積膜形成方法
JP4109861B2 (ja) 真空処理方法
JP2003027245A (ja) 真空処理方法及び真空処理装置
JP2003041369A (ja) 真空処理方法および真空処理装置
JP2003034872A (ja) 真空処理方法および真空処理装置
JP2003024772A (ja) プラズマ処理装置およびプラズマ処理方法
JP2003041370A (ja) 真空処理方法
JP2002080971A (ja) 真空処理装置、真空処理方法及び基体ホルダー
JP2005015884A (ja) 真空処理装置
JP2002220670A (ja) 真空処理方法
JP2004149825A (ja) 真空処理装置および真空処理方法
JP2003049277A (ja) プラズマ処理方法及びプラズマ処理装置
JPH0897161A (ja) 高周波プラズマcvd法による堆積膜形成方法及び堆積膜形成装置
JP2003193242A (ja) プラズマ処理装置
JP2005068455A (ja) 堆積膜形成方法及び装置
JP2005163165A (ja) 堆積膜形成装置および堆積膜形成方法
JP2003313668A (ja) 半導体装置の製造方法
JP2003027244A (ja) 真空処理装置および真空処理方法
JP2005068454A (ja) 堆積膜形成方法
JP2007063628A (ja) 堆積膜形成装置及び堆積膜形成方法
JP2003313667A (ja) 真空処理方法
JP2003049268A (ja) 非単結晶膜の製造方法および製造装置
JP2004193419A (ja) 真空処理方法