JP2004131759A - 堆積膜形成方法 - Google Patents

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青木 誠
Shigenori Ueda
植田 重教
Tomohito Ozawa
小澤 智仁
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Abstract

【課題】異常成長の大幅な低減と、高品質化、低コスト化とを高い次元で両立させることが可能な堆積膜形成方法を提供する。
【解決手段】減圧可能な反応容器内に基板を設置し、高周波電力を用いてグロー放電によるプラズマを形成して該基板に膜を堆積させる堆積膜形成方法において、放電開始の際、バイアス印加手段からバイアス電圧を印加し、高周波電力をゼロから所定の電力値まで増加させるのと連動して、該バイアス電圧を放電開始時の初期値から減少させることを特徴とする堆積膜形成方法。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体デバイス、電子写真用感光体、画像入力ラインセンサー、撮影デバイス、光起電力デバイスなどの形成に用いる堆積膜形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、半導体デバイス、電子写真用感光体、画像入力用ラインセンサー、撮影デバイス、光起電力デバイス、その他各種エレクトロニクス素子、光学素子等を作成する際に用いられる堆積膜形成方法として、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、熱CVD法、光CVD法、プラズマCVD法等、多数知られており、そのための装置も実用に付されている。中でも高周波電力を用いたプラズマプロセスは、様々な材料を用いた堆積膜作成に用いることが出来、酸化膜や窒化膜などの絶縁性の材料形成にも使用できる等様々な利点より使用されている。プラズマプロセスの好適な使用例としては、例えば電子写真用水素化アモルファスシリコン(以下、a−Si:Hと表記する)堆積膜の形成等、現在実用化が非常に進んでおり、そのための装置も各種提案されている。
【0003】
また、近年では、より高い周波数の高周波電源を用いたプラズマCVD法の報告(Plasma Chemistry and Plasma Processing, Vol.7, No.3, (1987),p267−273)があり、放電周波数を従来の13.56MHzより高くすることで、堆積膜の性能を落とさずに堆積速度を向上させることができる可能性が示されており、注目されている。例えば特開平6−287760公報にはa−Si系電子写真用光受容部材形成に用いうるVHF帯の周波数を用いたPCVDの装置及び方法が開示されている。また、特開平7−288233号公報には、同一円周上に配置された複数の円筒状基体上に、VHF帯の高周波を用いて複数の堆積膜を同時に形成する技術が開示されている。
【0004】
また、特開平07−321105号公報には、半導体装置の製造方法において、10MHzから1GHzの範囲の高周波電力、一例として13.56MHz、を供給する電源と、300kHzから500kHzの範囲の低周波電力、一例として400kHz、を供給する電源とを用いて層間絶縁膜を作成する技術が開示されている。
【0005】
また、特開2000−144405号公報には、主にスパッタの例を挙げ、基板にバイアス電圧を印加し、該バイアス電圧が成膜中に変化するようにバイアス用電源を制御する薄膜形性装置が開示されている。この方法はCVDにも応用できるとしており、膜質の変化を最小限にとどめながらステップカバレッジを向上させることが出来るとしている。
【0006】
また、堆積膜形成方法ではないが、特開2000−322710号公報には、アンモニアと一酸化炭素の混合ガスのプラズマを用いてニッケル、鉄、コバルト合金をエッチングする際、セルフバイアスが一定となるように対象物にバイアスが与えられ、イオンの入射の均一化、効率化を図る方法が開示されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の方法及び装置により、良好な堆積膜形成処理がなされる。しかしながら、このような処理を用いた製品に対する市場の要求レベルは日々高まっており、この要求に応えるべく、より高品質化、低コスト化が実現可能な堆積膜形成方法が求められるようになっている。
【0008】
例えば、電子写真装置の場合、コピースピードの向上、高画質化、低価格化の要求は非常に強く、これらを実現するためには感光体特性、具体的には帯電能、感度等の向上、膜中の構造欠陥に起因し画像上に白点あるいは黒点で現れる画像欠陥の抑制、及び感光体生産コストの低下が不可欠となっている。また、近年その普及が目覚しいデジタル電子写真装置、カラー電子写真装置においては、文字原稿のみならず、写真、絵、デザイン画等のコピーも頻繁に為されるため、更なる高解像度化、画像濃度むらの低減、画像欠陥の低減などが従来以上に強く求められるようになっている。
【0009】
上述した感光体の例においては、例えば堆積膜積層構成の最適化等の工夫も続けられている。しかし、同時に堆積膜形成方法の面での改善も強く望まれており、膜特性の向上、特性ムラの改善などの品質向上に関して、まだ改善の余地が残されているのが現状である。
【0010】
例えば、膜質改善のために、プラズマにバイアス印加手段により電圧を与えたり、或いは基板にバイアス電圧を与えたりする方法が取られることがある。この方法は、確かに特性向上が認められる場合もあるが、同時に気相中に存在する電荷を帯びた微粒子を基板表面にひきつけやすくなることがある。このようなメカニズムで基板上に到達した微粒子は、これを核とする異常成長を誘発し、堆積膜の特性を著しく阻害することがあった。よって、バイアスを与える方法は特性向上と異常成長の誘発という、メリットとデメリットの2つの側面を持っており、それらの間にはトレードオフの関係が出来てしまうことが多く、バイアスを印加する場合には慎重に行わなければならない場合があった。
【0011】
また、比較的厚膜が必要な膜堆積プロセスの場合、基板や基板周辺、反応容器などから微小な膜剥れが生じることがあるが、例えばバイアス電圧のみを変化させる方法、即ちバイアス電圧の絶対値を膜堆積の初期だけに大きく印加し、その後はバイアス電圧を所望の値まで落とす方法を用いても、完全にはこの微小膜剥れを防ぐことが出来ないことが分かった。
【0012】
特に、電子写真用感光体のように、他のデバイスにくらべて比較的厚い膜が必要な場合には、堆積膜形成中のダストの膜中への取り込みを最小限に抑える必要がある。即ち、ダストが吸着して異常成長が起こった場合、ダストを起点として円錐形の成長が起こり、膜表面には半球状の突起のように異常成長面が現れる。よって、膜厚が厚いほど異常成長による球状突起の径が大きく、異常成長による画像欠陥がより顕著に目立ちやすくなってしまう。また、このような異常成長は、電子写真装置内のクリーニングプロセスにおいて、クリーニングブレードを傷つけたり、トナーをすり抜けさせたりして所謂クリーニング不良を引き起こしやすくすることもあった。
【0013】
また、膜厚が厚くなるということは、例えば蓄積される応力の増大などにより、膜剥がれの抑制がより難しくなることを意味している。よって、膜厚が厚い条件では、基板上の剥がれは勿論、反応空間内の全ての部材、例えば壁面、上蓋や底板などからの全ての膜剥がれを抑制する必要があり、より厳しい条件となる。よって、膜剥がれによるダストの生成を極力抑えるような堆積膜形成方法を確立する必要があった。
【0014】
[発明の目的]
本発明は上記課題の解決を目的とするものである。即ち、堆積膜形成方法において、膜特性の高品質化と均一性向上とを高いレベルで両立し、また、ダストの発生を抑え、ダストによる異常成長を極限まで抑制することの出来る堆積膜形成方法を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記の問題を解決し、高品質、高い均一性を持つ堆積膜が得られ、またダストの発生、取り込みによる異常成長を極限まで抑えるために、鋭意検討した結果、堆積膜形成スタート時の高周波電力の印加方法、及びバイアス電圧の印加方法を最適化することで、上記の目的を良好に達成しうることを見出し、本発明に至った。
【0016】
即ち、本発明の堆積膜形成方法は、減圧可能な反応容器内に基板を設置し、高周波電力を用いてグロー放電によるプラズマを形成して該基板に膜を堆積させる堆積膜形成方法において、
放電開始の際、バイアス印加手段からバイアス電圧を印加し、高周波電力をゼロから所定の電力値まで増加させるのと連動して、該バイアス電圧を放電開始時の初期値から減少させることを特徴とする。
【0017】
また、前記バイアス電圧が、直流電圧であってもよく、
加えて、前記基板が導電性であり、前記バイアス電圧が該基板に印加されてもよい。
【0018】
この場合、前記バイアス電圧が負であることが好ましい。
【0019】
加えて、前記バイアス電圧が、プラズマ中に挿入された棒状電極に印加されてもよく、
この場合、前記バイアス電圧が正であることが好ましい。
【0020】
加えて、前記高周波電力が所定の電力値に到達した際に、前記バイアス電圧をゼロとすることがより好ましい。
【0021】
加えて、前記バイアス電圧の絶対値の上限が100Vであることがより好ましい。
【0022】
加えて、前記高周波電力及び前記バイアス電圧を減少させる時間が、10秒以上5分以下であることがより好ましい。
【0023】
加えて、前記高周波電力が、少なくとも2つの異なる周波数の高周波電力からなり、これを同一の高周波電極に同時に印加することがより好ましい。
【0024】
加えて、前記2つの高周波電力が、10MHz以上250MHz以下であることがより好ましい。
【0025】
加えて、前記堆積膜が、シリコンを構成材料として含むアモルファス物質である場合、より好適である。
【0026】
加えて、前記堆積膜が電子写真用感光体である場合が好適である。
【0027】
[作用]
本発明者らは鋭意検討を行った結果、広範囲な堆積膜形成条件において、膜剥がれ防止には放電開始時の電力が小さい方が望ましい場合が多く、大抵の場合において徐々に電力を投入することが最も好ましいことを見出した。即ち、大抵の堆積膜形成条件において、いきなり強い放電を生起させるよりは、徐々にその強度を増していく方法が、膜剥がれ抑制には効果的であることが多かった。逆にいえば、高性能で高い均一性を持つ堆積膜形成条件が得られたとしても、放電初期に慎重に電力を制御しないと、膜剥がれが生じて異常成長が起こりやすくなる可能性があることが判った。
【0028】
しかし、現実には、この放電初期時のパワーの低い状況では、膜特性が悪い場合が発生する。即ち、放電に与えられる電力が十分ではなく、仮にガスの分解が出来て活性種を生成できたとしても、活性種に与えられるエネルギーが十分でないために、最適な結合が形成されず、特性が不十分となることが考えられる。加えて、堆積膜形成条件によっては、このようにエネルギーが不足する場合に基板上の結合が十分緩和されずに歪みが残ってしまい、本来の目的とは逆に応力集中によって膜剥がれの原因となることがあり、対策が裏目に出てしまうこともあった。
【0029】
そこで本発明者らは、このような状況を改善するためにバイアス電圧をプラズマに印加する手段を用い、放電開始直後の高周波電力が時々刻々変化する状況では、最適なバイアス電圧もやはり異なると考え、高周波電力の変化に合わせて印加するバイアス電圧を徐々に減らすことを見出し、本発明に至った。
【0030】
本発明のように、放電開始時の高周波電力の漸増とバイアス電圧の漸減とを組み合わせることにより、膜特性の向上、特性ムラの低減、剥がれ抑制などが実現できる理由については、全てが明らかとなっているわけではないが、現時点では以下のように考えている。
【0031】
本発明では、高周波電力によるプラズマを用いて堆積膜を形成しているが、このプラズマは空間電位Vsを持ち、基板の電位Vgとの間にVs−Vgの電圧がかかっている。プラズマ中のイオンや活性種はこの電位Vs−Vgからエネルギーを得て基板に到達し、基板上で緩和運動を行うことが出来る。よって、活性種等と基板とを含めた系全体がエネルギー的に有利になるように結合を作ることになり、最適な成長が起こると考えられる。一方、Vs−Vgが小さいと、プラズマ中のイオンなどの活性種は基板上で十分に緩和運動を行えるエネルギーを持ち得ない。よって、特性が不十分になったり、また場合によっては結合の緩和が不十分であるために応力集中が起こったりすると考えられる。
【0032】
ここで、Vsの値は放電条件、例えば圧力、ガス種などによって大きく変わりうるので一概には言えないが、通常の膜堆積を行うCVDプロセスにおいては、投入する高周波電力が小さければ、Vsは小さくなる傾向がある。よって、放電開始時に高周波電力を徐々に増やしていく場合、Vs−Vgが小さい時間が発生するため、好ましくない状況が生じる恐れがある。
【0033】
そこで、Vs−Vgを大きくするためには、Vgを小さくすればよい。例えば、基板をアースに接続している場合であれば、Vgをアースから切り離して負の電圧を与えてやればよい。このように基板にバイアス電圧を与えることで、基板に到達するイオンなどの活性種に十分なエネルギーを与えることができ、高周波電力が小さい場合の欠点を補うことが可能である。
【0034】
一方、放電開始から十分時間がたち、高周波電力が十分に大きくなったときには、Vsの値も大きくなっているはずである。ゆえに、基板上に十分なエネルギーをもつ活性種が到達するようになっている。このときには、放電初期の低電力時と同一の基板バイアスを与えている場合には、Vs−Vgが過剰になっている可能性がある。このように過剰なエネルギーは、逆に膜に入射するイオンのエネルギーを過剰にする可能性があり、そのために膜にダメージを与えることがあると考えられる。よって、高周波電力を増加させるにしたがって、バイアス電圧を減少させることが好ましい。
【0035】
以上のようなVs−Vgの議論は、プラズマにバイアス印加手段を用いてバイアスを印加した場合にも当然当てはまる。この場合、例えばプラズマ中にバイアス電圧を印加した棒を挿入してプラズマの空間電位Vsを制御する方法である。この場合にも、堆積膜初期の高周波電力が低い間にはVsをプラス側にシフトさせ、Vs−Vgを稼ぎ、高周波電力が所定値まで増加するにしたがって、バイアス電圧も所定値まで漸減させればよい。このようにすることで、前述の問題が同様に回避できる。
【0036】
このとき、このようにプラズマや基板に与える電圧は、例えば交流、脈流(交流と直流とを足し合わせたもの)、半波/全波整流した交流などでも構わないが、制御性がよい直流電圧が最も適している。直流電圧にすることで、本発明の効果が最も効率よく得られる。
【0037】
また、この直流電圧の場合には、前述したように基板に印加するのであれば負の直流電圧が好ましく、またバイアス印加手段によりプラズマの電位を制御するのであれば、正の直流電圧が好ましい。この理由は前述した通り、Vs−Vgの関係から導き出せるものである。
【0038】
また、バイアス電圧は、高周波電力が所定の電力値に達したときにゼロとなるようにすることがより好ましい。この理由としては、基板側、プラズマ側相方とも、バイアスを定常的に印加することにより、プラズマ中のダストの持つ電位が変化し、基板にダストが引き付けられやすくなると予想されるためである。実際に、本発明者らは様々な形態の堆積膜形成装置、様々な堆積膜形成条件において、基板上の異常成長の度合いとバイアス印加との影響を調べたところ、膜堆積中常に何らかのバイアス電圧を印加していた場合よりも、初期にのみバイアス電圧を与え、その後バイアス電圧を0Vにしたものの方がより異常成長による欠陥の数が少ないことが判った。このことから、初期に与えられたバイアス電圧は、高周波電力が所定の値になると同時に、その値をゼロにすることがより望ましい。
【0039】
また、初期に与えられるバイアス電圧は、上限として100V程度にとどめることがより好ましい。この原因についても全てが明らかになっていないが、スパークやそれに類似した異常な局所放電による基板上のダメージを起こさないためには、バイアス電圧に上限が存在すると予想される。実験の結果、装置形態や堆積条件による差はあるものの、ほぼ100V以下であればどのような条件下でも前述したような局所的な異常放電が起こりにくいことが判った。このことから、より好ましくはバイアス電圧を100V以下にとどめること、即ちバイアス電圧の上限を100Vとすることが望ましい。
【0040】
加えて、高周波電力とバイアス電圧を変化させる時間に関しては、下限は好ましくは10秒以上、更に好ましくは30秒以上が望ましく、上限は好ましくは5分以下、更に好ましくは3分以下が望ましいことが判った。10秒より短い場合には、高周波電力を徐々に印加することで膜剥がれを防止する効果が少なくなってしまう場合がある。また、これ以上短い時間になると、バイアス電圧を同時進行で変化させる必要から見ても、コントロールが難しくなり、再現性の点に関しても非常に難しくなってくる。よって、10秒以上が好ましく、より好ましくは30秒以上が望ましい。一方、5分より長い時間をかけて高周波電力とバイアス電圧を変化させる場合、確かに本発明の効果は得られるが、時間が長くなると、それだけ膜剥がれが生じる可能性が高くなり、その際にバイアス電圧が存在すると剥がれた膜を引き付けやすくなってしまう。実験的には、5分以下にすることで、ダストの吸着を実質的に無くすことが出来ることが判り、より望ましいことが判った。また、3分以下であれば本発明の効果が最大限に得られ、且つ吸着もほぼ完全に起こらなくすることが出来るため、更に好ましいことが判った。
【0041】
また、本発明で印加する高周波電力は、少なくとも2つの異なる周波数の高周波電力を用い、同一電極に給電し、且つその周波数が10MHz以上250MHz以下がより好ましい。このような周波数の高周波電力を2つ以上同一電極に給電することで、高品質の堆積膜を高速で堆積させることが可能になり、より好ましいが、本願の方法により堆積膜形成初期にバイアスを印加することにより、更に良好な堆積膜が得られることが判った。この理由に関しては以下のように考えている。
【0042】
VHF帯の高周波を用いることで、高品質の膜を高速で堆積させることが可能であるが、VHF帯のように波長の短い高周波を用いると、定在波によるムラが発生する場合がある。そこで、このような周波数範囲の2つの高周波電力を重畳して用いることで、定在波のムラを抑制することが可能となる。しかし、このように2つのVHF帯の高周波を重畳する場合でも、低パワーの際には定在波ムラの抑制が難しい場合が生じる。よって、最適でない放電によって膜が形成される可能性があり、この影響が定常状態になっても引き継がれたり、膜剥がれの要因になったりしてしまう可能性が考えられる。
【0043】
そこで、前述したような周波数範囲の少なくとも2つの高周波電力を同一電極に重畳し、且つ堆積膜形成初期にプラズマないしは基板にバイアス電圧を印加することにより、前述した問題が克服でき、本願の効果が効率よく得られる。即ち、高品質の堆積膜を高速に得られ、また定在波による特性ムラも実質的に起こらず、膜剥がれも抑制され、異常成長などが実質的に起こらない堆積膜形成方法を提供でき、より好ましい。
【0044】
加えて、本発明はシリコンを構成材料とするアモルファス物質の作成時に最も効果的であり、更には電子写真用感光体の作成に好適である。これは以下のような理由による。
【0045】
例えばアモルファスカーボンなどの場合、工具やハードディスクの保護膜などの応用が考えられ、その場合には出来るだけ硬い膜であり、且つ下地(基板)との密着性がよいことが望ましい。下地との密着性という観点からは、本発明のように放電初期の特性に注意することで効果が得られる場合があるが、硬度という点では、むしろ放電が定常状態に移行した後も定常的にバイアスを与える方がより硬い膜を得やすい。一方、シリコンを構成要素とするアモルファス物質は、主に半導体としての使用が前提であることが多く、イオンの衝突が少ない方が膜質を向上させやすい。つまり、適度なバイアス電圧ならば、基板上の運動エネルギーを与えるために好ましい反面、あまりバイアスを与えすぎると逆にイオン衝撃が大きく膜質を損ねる場合がある。よって、バイアスを漸減する本願の方法は半導体として使用されるアモルファスシリコン系の膜を前提としており、そのように前提とした膜を作成する際に最も効果的であるのはいうまでもない。
【0046】
また、電子写真用感光体の場合、特に本発明は有効である。電子写真用感光体は大面積の堆積膜形成が必要であり、更にその全領域にわたって特性が均一で、且つ構造欠陥(異常成長など)が存在しない必要がある。一方、電子写真用感光体形成では一般的に数十μmもの厚さの堆積膜形成を行うため、反応容器壁面など、基板以外への膜付着も多く、それらの膜剥がれが生じやすい。更には、異常成長などが生じた場合、電子写真用感光体では致命的である。即ち、例えば集積回路形成であれば、異常成長の存在する部分(チップ)のみを不良として扱い、他の領域は良品として扱うことが出来る。一方、電子写真用感光体の場合には、このような扱いが出来ず、大面積にわたって形成した全堆積膜が不良となってしまう。このため、電子写真用感光体においては、異常成長が生じた際のコストへの影響は非常に大きく、本発明によってこれらを低減することのメリットは大きい。
【0047】
以上のような改善によって、本発明は、膜特性の高品質化と均一性向上、高速処理によるコストダウンなどを高いレベルで両立させ、また同時に、ダストの発生源である膜剥がれを防止することでダストを抑え、またダストの吸着を防ぎ、ダストによる異常成長を極限まで抑制し、前述した従来技術における諸問題を全て解決しうる、極めて優れた堆積膜形成方法を提供する。
【0048】
【実施例】
以下、図面に従って本発明の堆積膜形成方法について詳細に説明する。
【0049】
図1は、VHF帯の高周波を好適に使用できる堆積膜形成装置の一例であって、円筒状基体101の上に電子写真用感光体を好適に堆積することが出来る装置の模式的な構成図である。
【0050】
図1(a)は、カソード電極104を反応容器102外に設置し、反応容器102内に複数の円筒状基体101を設置する構成としたアモルファスシリコン感光体製造装置である。なお、図1(b)は、図1(a)のA−A’断面図を示している。
【0051】
図1に示す装置は、2つの高周波電源107 及び108から発振された2種類の周波数を持つ高周波電力をマッチングボックス109で合成し、電力分岐113の給電点に印加し、反応容器102の外部に設置された複数のカソード電極104から反応容器102内に電力を供給し、反応容器102内にプラズマを生起し堆積膜を形成する構成である。このような構成とすることで、VHFの短い波長に起因する電極上ないしは基体上に現れる定在波の影響を実質的になくす事が出来、膜の均一性を飛躍的に向上させることが可能である。また、排気管105の反応容器102との接続部には、排気管105へ高周波電力やプラズマが漏れるのを防ぐために排気メッシュ114を挿入している。
【0052】
円筒状基体は回転軸110を通して電気的にバイアス電源116に接続されている。このようにすることで、基体の電位を制御して、基体の電位とプラズマの空間電位との間の電位を制御することが出来る。これにより、成膜初期においては活性種に運動エネルギーを与えることが出来、膜質の改善、膜質ムラ抑制などに効果的である。このとき、バイアス電源116は所望の電圧に制御できる電源が望ましく、更に好ましくは電圧可変型の直流安定化電源が望ましい。
【0053】
また、基板以外でも、プラズマにバイアスを印加する手段を用いて空間電位やフローティング電位を制御してもよい。図2には、放電空間の中心に、バイアス印加棒217を挿入し、バイアス電源216に接続した装置の模式図を示す。バイアス印加棒と基板バイアスの違いを除いては、図1の構成と全く同一である。このとき、例えばバイアス印加棒に正の直流電圧を印加すると、プラズマの空間電位Vsが変化し、基板電位Vgとの電位差Vs−Vgが変化する。このことで活性種に運動エネルギーを与えるなどの効果が得られる。投入する電力が大きくなるに従い、バイアス電源216を制御してバイアス電圧を徐々に小さくすればよい。バイアス電源216も所望の電圧制御が出来る電源であればいかなるものでもよいが、出来れば電圧可変型の直流安定化電源が望ましい。
【0054】
カソード電極104から放出される高周波電力を反応容器102に効率良く導入するために、円筒形の反応容器102の側壁には誘電体であるセラミックスが用いられている。具体的なセラミックス材料としては、アルミナ、二酸化チタン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、ジルコン、コージェライト、ジルコン−コージェライト、酸化珪素、酸化ベリリウムマイカ系セラミックス等が挙げられる。これらのうち、真空処理時の不純物混入抑制、耐熱性等の点からアルミナ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素が好ましい。
【0055】
さらに、図1、図2に示す反応装置は反応容器102内に6本の円筒状基体101が同一円周上に等間隔に設置される構成となっている。円筒状基体101の本数は図1、図2においては6本であるが、反応容器と円筒状基体の径に応じて任意に変えることが可能である。また、ガスを導入するガス導入管103が円筒状基体の配置円外の同一円周上等間隔に6本設置されている。このガス導入管に関しても、ガスを均等に供給することが出来れば任意の数にすることが出来る。
【0056】
また、電力分岐113と各カソード電極104の接続にはコンデンサーを介して接続してもよい。
【0057】
図1、図2の装置を用いた場合の堆積膜形成の概略を以下に説明する。
【0058】
まず、反応容器102内に円筒状基体101を設置し、不図示の排気装置により排気管を通して反応容器102内を排気する。続いて、不活性ガスを流しながらヒーター(不図示)により円筒状基体101を200℃〜300℃程度の所定の温度に加熱・制御する。
【0059】
円筒状基体101が所定の温度となったところで、不図示のガス供給及び調整手段手段を介して、原料ガスを反応容器102内に導入する。その後、不図示の排気コンダクタンス制御手段を用いて、反応容器102内の圧力が0.05 ̄40Paの間、好適には0.1 ̄20Paの所定の圧力に設定する。反応容器102内の圧力が安定したのを確認した後、高周波電力を高周波電源107及び108よりマッチングボックス109を介してカソード電極104へ供給する。これにより、反応容器102内に2つの異なる周波数の高周波電力が導入され、反応容器102内にグロー放電が生起し、原料ガスは励起解離して円筒状基体上に堆積膜が形成される。
【0060】
このとき、2つの高周波電力は、それぞれゼロから徐々に増大させる方が望ましい。このようにすることで、より小さな電力から放電が開始され、その放電の強度が徐々に強くなっていくため、膜や基板へのダメージが小さく、好ましい結果が得られる。放電開始の電力は堆積膜形成装置の形状、放電空間の圧力にもよるが、例えば2つの高周波電力が50MHz〜120MHz程度のVHF帯であり、圧力が1〜4Pa程度であれば、放電開始電力は合計で数W〜数十W程度であって、十分低電力から放電が開始可能である。このように低電力で放電を開始し、且つその後は所望の電力、例えば数百W〜数kWまでの電力に到達するまでは、徐々に電力を増加させる方が望ましい。合計電力の増加の速度に関しては、例えば連続的な変化であれば、単位時間Tあたりの電力Wの変化量をΔW/T (W/s)としてあらわすと、典型的には0.5W/s以上50W/s、より好ましくは1W/s以上30W/s以下、最適には2W/s以上20W/s以下が好ましい範囲として挙げられる。
【0061】
このように徐々に電力を増加させる際に、バイアスを印加し、電力の増加に伴ってバイアス電圧の絶対値を徐々に下げていくことが必要である。例えば図1のように円筒状基体101にバイアス電圧を印加する場合には、高周波電力の印加開始時(ゼロの時)に、例えば負の直流バイアス電圧の印加を開始し、高周波電力をゼロから徐々に上げていくに従って負のバイアス電圧を徐々にゼロの方向に近づけていく。このとき、高周波電力の電力値が所定の値に到達した時点で、負のバイアス電圧もあらかじめ決められた所定の値に到達するように、初期値と高周波電力の変化速度とから勘案してバイアス電圧を変化させればよい。
【0062】
また、この負のバイアス電圧は、高周波電力が所望の膜堆積を行うための電力値に到達した時点(電力値の変化が終了した時点)で、バイアス電圧がゼロボルトとなっていることが好ましい。このようにすることで、バイアス電圧によるフローティング電位との差の増大を防ぎ、ダストの吸着を防止することが出来る。
【0063】
一方、バイアス電圧の初期値は、−100V以上(絶対値でいうと100V以下)にとどめることが望ましい。初期値に関しては、堆積膜形成装置の形状や処理時のガス圧力、膜に要求されるバイアスの強さなどを勘案して、予備実験などを行って実験的に決定すればよいが、−100Vよりも負側に大きいバイアス電圧を印加すると、基板にダメージが生じる場合が多く、慎重なパラメータ設定が必要になるため、より好ましくは−100V以上(絶対値で言うと100V以下)となるようにすることが望ましい。
【0064】
また、図3には、高周波電力の変化とバイアス電圧の変化のパターンを模式的に表したものを示した。図3にあるように、高周波電力とバイアス電圧はそれぞれ(a)直線的、或いは(b)階段状、或いは(C)連続的な曲線、例えば二次関数的に変化させても構わない。しかし重要なのは、いずれの場合においても、高周波電力の変化と連動して、実質的に同じ割合だけ変化させることが重要である。つまり、電力が直線的に増大するならば、バイアスの必要量も直線的に変化するはずであるし、電力変化が階段状であればバイアスが必要となる量も階段状に変化するはずである。よって、パターンとしては電力の変化とバイアスの変化は全く逆のパターン(変化割合が同じで変化の符号が異なるパターン)にすることが望ましい。
【0065】
以上は図1のように円筒状基体(基板)側にバイアスを印加する場合について述べたが、図2のようにバイアス印加手段(バイアス印加棒)によって、プラズマの空間電位に対してバイアスをかける場合にも、バイアス電圧の符号が逆になるだけで、同様の考え方で行えばよい。
【0066】
このようにして膜堆積を開始し、所望の時間にわたって堆積膜を形成する。このとき、回転軸110を介して円筒状基体101をモーター111により所定の速度で回転させることにより、円筒状基体101表面全周にわたって堆積膜が形成される。
【0067】
所望の膜厚の形成が行なわれた後、高周波電力の供給を止め、続いて原料ガスの供給を停止して堆積膜の形成を終える。同様の操作を複数回繰り返すことによって、所望の多層構造の光受容層が形成される。
【0068】
高周波電源107、108は、各々の発振周波数の関係が、例えば高周波電源107が第1の高周波(周波数f1、電力値P1)を供給する第1の高周波電源、108が第2の高周波(周波数f2、電力値P2)を供給する第2の高周波電源とした場合、
10MHz≦f2<f1≦250MHz
0.1≦P2/(P1+P2)≦0.9
とすることで、堆積速度、特性、ムラ抑制の観点からバランスが最も好ましく、好適である。大面積で均一な膜堆積を高速に行うためには上述したような範囲の2つの高周波を重畳する技術を使用することが最も好ましい。
【0069】
また、第1の高周波電源にはf1よりも低く、f2よりも高いカットオフ周波数特性をもつハイパスフィルターを設けてもよい。また、同様に第2の高周波電源にはf2よりも高く、f1よりも低いカットオフ周波数特性をもつローパスフィルターを設けてもよい。それらの周波数選択性は高い方が、それぞれの高周波電源に回り込む他方の電力が小さく出来、より好ましい。
【0070】
また、前記周波数の範囲が30MHz以上の場合には堆積速度が更に速くなるのでより好ましい。
【0071】
また、前記電力の範囲が
0.2≦P2/(P1+P2)≦0.7
の場合がより好ましく、更に電力比の上限がf2/f1に設定することで、放電の安定性の点で最も好ましい。
【0072】
また、前記周波数の範囲が、
0.5<f2/f1≦0.9
の範囲に設定するのが、より高い定在波抑制効果を得られるのでより好ましい。
【0073】
また、図1のような装置の場合、例えば電極毎にf1、f2を単独で給電する方法が考えられるが、より好ましくは、f1、f2を同一の棒状電極の同一方向から給電することが望ましい。実際にはf1とf2とを合成(重畳)した後、分岐を経て各々のカソード電極に同一方向から均等に給電する。このような構成にすることで、定在波の抑制効果がより有効に得られるため、好ましい。
【0074】
[実験例及び実施例]
以下実験例及び実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
【0075】
《実験例1》
図1に示す真空処理装置を用い、表1に示す条件で電子写真用感光体の光導電層に好適なa−Si単層膜を形成した。被処理基板として、直径80mmの鏡面加工を施したアルミニウムシリンダーを6本設置した。
【0076】
このような装置を用いた、堆積膜形成は概略以下の通りとした。
【0077】
まず、不図示の排気装置により排気管105を通して反応容器102を排気した。続いて、不図示の原料ガス供給手段より反応容器102中に650ml/min(normal)のHeを供給し、不図示の圧力制御手段を用いて反応容器102内部の圧力(以下、内圧とする)を67〜670Pa程度に維持する。次に、不図示の発熱体により基板を290℃になるように加熱・制御した。
【0078】
次いでHeの供給を一旦停止し、反応容器102を不図示の排気装置により排気したあと、表1に示した堆積膜形成条件を用い、a−Si:Hからなる堆積膜を約10μm程度堆積させ、ドラムAを作成した。このとき、不図示の発熱体を制御して、プラズマからの加熱を考慮しつつ、膜堆積中の温度が290℃程度になるように維持した。また、基板に印加される負の直流バイアスの電圧は、初期値として−60V、その後図3(a)のように直線的に0Vまで減少させた。また同時に2つの高周波電力の合計電力値を連動して変化させる。今回、高周波電力値は700Wとしたが、0W→700Wのようにバイアス電圧の変化と連動して増加させた。このバイアスと高周波電力の変化時間は1分間とした。このとき、周波数の高い方の電源の電力をP1、低い方をP2としたとき、P2/(P1+P2)を0.5(P1:P2=1:1)として堆積膜を形成した。膜堆積中はアルミニウムシリンダーからなる基板を回転させ、万遍なく膜を堆積させた。
【0079】
堆積膜形成後、反応容器102をArにてパージしたあと、N2ガスでリークして堆積膜を取り出した。
【0080】
【表1】
Figure 2004131759
取り出したドラムAの表面を顕微鏡で観察した。周方向に90度間隔で4方向を任意に選び、軸方向に2cm間隔で17点、周方向4列の計68点を選び、50倍の視野にて直径が10μm以上の異常成長の数をカウントした。このような評価を同時に堆積させた6本について行い、平均した結果をドラムAの異常成長の値とした。
【0081】
結果は比較実験例1と共に図4に示す。
【0082】
《比較実験例1》
図1の装置を用い、実験例1と同様に表1の条件で実験例1と同様の膜堆積を行った。このとき、膜堆積の初期条件として以下の3種類の条件でドラムB、C、Dを作成した。
【0083】
ドラムB・・・基板に対するバイアス電圧印加を行わず、基板はアースに接地した。一方高周波電力は、スタートと同時に700Wを一気に印加した。その後は全く同様の膜堆積を行い、10μmのa−Si:H膜を堆積させた。
【0084】
ドラムC・・・基板に対するバイアス電圧印加を行わず、基板はアースに接地した。高周波電力は、実験例1と同様に0Wから1分間かけて700Wまで上昇させた。その後は全く同様の膜堆積を行い、10μmのa−Si:H膜を堆積させた。
【0085】
ドラムD・・・基板に対するバイアス電圧印加を−60Vから0Vまで一分間かけて徐々に減少させた。一方、高周波電力はスタートと同時に700Wを一気に印加した。その後は全く同様の膜堆積を行い、10μmのa−Si:H膜を堆積させた。
【0086】
取り出した基板の表面を実験例1と同様の方法で観察し、ドラムB、C、Dのそれぞれに関して6本の平均を求めた。
【0087】
実験例1、比較実験例1のドラムA〜Dの膜堆積初期の条件をまとめると、表2のようになる。
【0088】
【表2】
Figure 2004131759
得られた結果を図4に示す。図4では、ドラムBでの異常成長の数を基準(=1)として相対値で表している。即ち、ドラムBでの異常成長の数をNbとし、ドラムXでの異常成長の数をNxとしたとき、Nx/Nbの値を算出し、この値が1よりも小さければ良好であり、1よりも大きければ異常成長の発生がより顕著になっていることを示す。
【0089】
図4から、高周波電力の変化を徐々に行ったドラムCでは、高周波電力をいきなり印加したドラムBに対してやや異常成長の数が減少しており、ある程度の改善効果が見られる。しかし、ドラムを取り出す際に反応容器を観察すると、ドラムB、Cの作成後の反応容器からは、非常に微小ではあるが、細かい局所的な剥がれが見られ、この剥がれが基板に付着し、異常成長が引き起こされたと考えられる。この局所的な微小剥がれが生じた箇所では、堆積膜形成時にバイアスが十分でなかったと予想され、密着性が局所的に減少したために剥がれたのではないかと考えている。一方、ドラムDではこのような局所的な微小剥がれは見られなかったが、全体的に膜の密着性が悪く、異常成長の改善効果はCよりも少なかった。
【0090】
これらに対し、ドラムAでは全体的に膜の密着性が良好であり、局所的な剥がれも見られず、異常成長の改善効果が最も高く、ドラムBに比べて半減していることがわかった。
【0091】
以上の結果から、膜堆積の初期において、パワーを徐々に増加させると共に、連動して、印加したバイアス電圧の絶対値を徐々に減少させることで、異常成長の発生を大きく減少させることが出来、極めて良好な膜堆積が実現できることがわかった。
【0092】
《実験例2》
図2の装置、即ちバイアス印加棒を用いた装置を用い、表3の条件で膜堆積を行った。このとき、膜堆積の初期条件として表4の5種類の初期条件でドラムE〜Jを作成した。バイアス棒に印加される正の直流バイアスの電圧は、初期値、終了値(定常値)として表4の値とし、表の値を直線的結ぶように変化させた。即ち、ドラムE ̄Jまでは、表4の初期値から0Vまで直線的に減少させ、ドラムJに関しては+80Vから+10Vまで直線的に減少させ、その後は定常的に+10Vの電圧を印加しつづけ、バイアス電圧は膜堆積終了までそのまま維持した。また、バイアス電圧を変化させる際には、同時に2つの高周波電力の合計電力値を連動して変化させる。今回、高周波電力値は700Wとしたが、0W→700Wのようにバイアス電圧の変化と連動して増加させた。このバイアスと高周波電力の変化時間は2分間とした。その他の条件、作成方法については実験例1と同様である。
【0093】
【表3】
Figure 2004131759
【0094】
【表4】
Figure 2004131759
取り出した基板の表面を実験例1と同様の方法で観察し、E〜Jのそれぞれに関し6本の平均を求めた。
【0095】
得られた結果は、比較実験例2での結果を基準として評価し、図5に示す。
【0096】
《比較実験例2》
バイアス印加棒をアースとし、電源に接続しないこと以外はE〜Jと同じ条件でドラムKを作成した。即ち、バイアスの印加とその漸減は行わないが、高周波電力の印加は2分間をかけて徐々に行った。また、異常成長の数を実験例2と同様の評価方法にて評価した。
【0097】
結果を図5に示す。図5において、異常成長の数は、ドラムKでの異常成長のカウント数を基準とした相対値で表している。即ち、ドラムKでの異常成長の数を分母にとり、ドラムE ̄Jでの異常成長の数を分子に取ったとき、この値が1であればドラムKと同等、1より大きければ異常成長の数がドラムKよりも多く、逆に1より小さければ異常成長の数がドラムKよりも少ない、即ち改善していることを示している。
【0098】
図5より明らかなように、実験例2で作成したドラムE〜Jでの結果は全て、比較実験例2で作成したドラムKの結果に比べ、明確に異常成長が減少している。このことから、堆積膜形成初期にバイアス電圧を与えることで、異常成長が効果的に抑制できることがわかった。また特に、バイアス印加棒に印加する電圧が100V以下の場合に改善効果が顕著であることが判る。また、ドラムGとドラムJとの比較では、ドラムGの方が更に改善効果が大きい。このことから、バイアスを印加する場合には、初期にバイアス電圧を与えて徐々に減少させ、定常的には0Vにすることがより好ましいことが判った。
【0099】
《実験例3》
図1の装置を用い、表5の条件で膜堆積を行った。このとき、膜堆積の初期条件として表6の7種類の初期条件でドラムL〜Rを作成した。基板に印加される負の直流バイアスの電圧は、初期値として表5の値とし、0Vまで直線的に減少させた。また、バイアス電圧を変化させる際には、同時に2つの高周波電力の合計電力値を連動して変化させる。今回、高周波電力値は500Wとしたが、0W→500Wのようにバイアス電圧の変化と連動して増加させた。このバイアスと高周波電力の変化時間は表6に挙げたように7通りで変化させた。その他の条件、作成方法については実験例1と同様である。
【0100】
【表5】
Figure 2004131759
【0101】
【表6】
Figure 2004131759
取り出した基板の表面を実験例1と同様の方法で観察し、6本の平均を求めた。
【0102】
得られた結果は、比較実験例3での結果を基準として評価し、図6に示す。
【0103】
《比較実験例3》
基板をバイアス用電源には接続せず、アースとし、また高周波電力は一気に印加した。それ以外はL〜Rと同じ条件でドラムSを作成した。また、異常成長の数を実験例1と同様の評価方法にて評価した。
【0104】
結果を図6に示す。図6において、異常成長の数は、ドラムSでの異常成長のカウント数を基準とした相対値で表している。即ち、ドラムSでの異常成長の数を分母にとり、ドラムL ̄Rでの異常成長の数を分子に取ったとき、この値が1であればドラムSと同等、1より大きければ異常成長の数がドラムSよりも多く、逆に1より小さければ異常成長の数がドラムSよりも少ない、即ち改善していることを示している。
【0105】
図6より明らかなように、実験例3で作成したドラムL〜Rでの結果は全て、比較実験例3で作成したドラムSの結果に比べ、明確に異常成長が減少している。このことから、堆積膜形成初期にバイアス電圧を一定時間内において変化させることで、異常成長が効果的に抑制できることがわかった。また特に、基板に印加するバイアスの変化時間が、10秒以上5分以下の場合に改善効果が顕著であり、更に最適には30秒以上3分以下が最も顕著であった。以上のことから、バイアスを印加する場合には、初期にバイアス電圧を与えて徐々に減少させ、その変化時間が10秒以上5分以下であることがより好ましいことが判った。
【0106】
[実施例1]
図1に示す真空処理装置を用い、直径80mmの鏡面加工を施したアルミニウムシリンダー(基板)上に、表7に示す条件で下部阻止層、光導電層、表面層の順に膜の堆積を行って電子写真用感光体を作成した。真空処理装置としては、反応容器の径を500mmφとし、上記のアルミニウムシリンダー6本を円上に等間隔に配置した装置構成とした。このとき、高周波電源としては2種類の周波数の高周波電源を用い、2つの電力比を1:1に固定し、合計の電力を表7に示すように各層において変化させた。
【0107】
特に、膜堆積初期において、基板上に−50Vのバイアス電圧を印加し、その後30秒かけて0Vまで直線的に変化させた。これと同時に、合計高周波電力を0Wから500Wまで徐々に変化させた。
【0108】
作成した電子写真用感光体は、実験例1と同様に軸方向17点、周方向4列の計68点について顕微鏡観察を行い、異常成長の数をカウントした。
【0109】
次に、この電子写真用感光体を電子写真装置(キヤノン製iR−5000を実験用に改造した物)にセットして、電位特性、画像特性の評価を行った。
【0110】
この際、プロセススピード265mm/secで回転させ、除電光に波長650nmのLEDを用い、光量を4lx・sとした。このような帯電プロセスにおいて、帯電器電流を1000μA一定とし、電子写真装置の現像器位置にセットした表面電位計(TREK社  Model  344)の電位センサーにより光受容部材の表面電位を測定し、この値を帯電能とした。この帯電能を軸方向に10点測定し、最大値と最小値の差を持って帯電能ムラと定義した。
【0111】
次に、画像欠陥について評価した。まず帯電器電流を1000μA一定とし、画像露光をオフとし、現像バイアス電圧を振ることにより、透過濃度2.1、1.0の2種類のA3全面黒画像(ベタ黒)を出力し、画像上に現れる白点状の画像欠陥の数をカウントした。また、画像露光を全面に露光してA3全面白画像(ベタ白)を出力し、画像上に現れる黒点状の画像欠陥の数をカウントした。
【0112】
次にゴースト特性について評価した。まず現像器位置における暗部電位が所定の値となるよう、主帯電器を調整した後、所定の白紙を原稿とした際の明部電位が所定の値となるよう、像露光強度を調整する。この状態でキヤノン製ゴーストチャート(部品番号:FY9−9040)に透過濃度2.0、直径5mmの黒丸を感光体の母線方向に10mm間隔で貼り付けたものを原稿台に置き、その上にキヤノン製中間調チャートを重ねておいた際のコピー画像において、中間調コピー上に認められるゴーストチャートの直径5mmの黒丸の透過濃度と中間調の透過濃度との差を測定することにより行った。
【0113】
次に、特性ムラの評価として、画像濃度ムラについて評価した。画像濃度ムラは、まず現像器位置での暗部電位が一定値となるように主帯電器電流を調整したあと、原稿に反射濃度0.1以下の所定の白紙を用い、現像器位置での明部電位が所定の値となるように像露光強度を調整した。次いでキヤノン製中間調チャート(部品番号:FY9−9042)を原稿台に置き、コピーしたときに得られたコピー画像上全領域における透過濃度を評価した。
【0114】
得られた結果は、比較例1での結果と共に、表8に示す。
【0115】
【表7】
Figure 2004131759
[比較例1]
実施例1と同様の装置で、表7に示す条件で下部阻止層、光導電層、表面層の順に膜の堆積を行って電子写真用感光体を作成した。
【0116】
特に、膜堆積初期の段階でバイアス印加は行わず、高周波電力のみを30秒かけて徐々に変化させた。
【0117】
作成した電子写真用感光体は、実施例1と同様に軸方向17点、周方向4列の計68点について顕微鏡観察を行い、異常成長の数をカウントした。
【0118】
次に、この電子写真用感光体を電子写真装置(キヤノン製iR−5000を実験用に改造した物)にセットして、電位特性、画像特性の評価を実施例1と同様に行った。
【0119】
実施例1、比較例1の評価結果を表8に示す。
【0120】
【表8】
Figure 2004131759
表8においては、全ての結果について、比較例1での評価を基準(=1)としたとき、それぞれどれだけ向上しているかを示している。
【0121】
異常成長の結果は、比較例1の結果に対して実施例1の微小な異常成長の数は半減していた。
【0122】
また、電位特性、画像特性評価の結果、帯電能ムラ、ゴースト、画像濃度ムラのいずれも比較例1に比べて実施例1の方が改善しており、初期の膜質改善によるダスト管理、膜堆積開始時の膜質向上の影響がこれらの特性に結びついていると考えられる。また、ベタ黒、ベタ白における画像欠陥においては、実施例1の方が高品位であり、特に、濃度の低いベタ黒画像(透過濃度1.0)における画像欠陥を比較した場合、その結果は顕著であった。
【0123】
よって、本願のように堆積膜形成初期の作成方法に注意して電子写真用感光体を作成した場合、異常成長の数が極めて少ないために画像欠陥がほとんど見られず、電気特性、画像特性が良好であり、均一性が高く、極めて良好な感光体が得られることが判った。
[実施例2]
図1に示す真空処理装置と同様で、反応容器の径を500mmφ、アルミニウムシリンダー7本を円上に等間隔に配置した構成とした装置を用い、直径80mmの鏡面加工を施したアルミニウムシリンダー上に、表9に示す条件で下部阻止層、光導電層、表面層の順に膜の堆積を行って電子写真用感光体を作成した。このとき、高周波電源としては2種類の周波数の高周波電源を用い、2つの電力比を1:1に固定し、合計の電力を表9に示すように各層において変化させた。
【0124】
特に、膜堆積初期において、基板上に−70Vのバイアス電圧を印加し、その後1分かけて0Vまで直線的に変化させた。これと同時に、合計高周波電力を0Wから600Wまで徐々に変化させた。
【0125】
作成した電子写真用感光体は、実験例1と同様に軸方向17点、周方向4列の計68点について顕微鏡観察を行い、異常成長の数をカウントしたが、画像上問題となるような大きな異常成長は、ほとんど観測されなかった。また5μm以下の非常に細かい異常成長もほとんど見られなかった。
【0126】
次に、この電子写真用感光体を電子写真装置(キヤノン製iR−5000を実験用に改造した物)にセットして、実施例1と同様に電位特性、画像特性の評価を行った。
【0127】
実施例1と同様の帯電能ムラ評価を行ったが、帯電能ムラが非常に少なく、良好であることが確認できた。
【0128】
次に、画像欠陥についても実施例1と同様の評価を行った。ベタ黒、ベタ白画像とも、画像欠陥はほとんど観察されず、極めて良好な画像が得られることが判った。特に透過濃度の薄いベタ黒画像においても、実施例1と同様に良好であることが確かめられた。
【0129】
次にゴースト特性についても実施例1と同様の評価を行った。すると、中間調画像上にゴーストに起因する濃度ムラはほとんど観察されず、均一な中間調画像が得られた。
【0130】
次に、実施例1と同様に画像濃度ムラについて評価したが、透過濃度のムラもほとんど見られず、良好な結果が得られた。
【0131】
結果、帯電能ムラ、ベタ黒、ベタ白における画像欠陥、ゴースト、画像濃度ムラのいずれも、きわめて少なく、高品位な画像再現性と特性均一性とが高いレベルで達成されていることが判った。
【0132】
よって、本願のように堆積膜形成初期の作成方法に注意して電子写真用感光体を作成した場合、異常成長の数が極めて少ないために画像欠陥がほとんど見られず、電気特性、画像特性が良好であり、均一性が高く、極めて良好な感光体が得られることが判った。
【0133】
【表9】
Figure 2004131759
[実施例3]
図1に示す真空処理装置と同様で、反応容器の径を400mmφ、アルミニウムシリンダー5本を円上に等間隔に配置した構成とした装置を用い、直径80mmの鏡面加工を施したアルミニウムシリンダー(基板)上に、表10に示す条件で下部阻止層、光導電層、表面層の順に膜の堆積を行って電子写真用感光体を作成した。このとき、高周波電源としては2種類の周波数の高周波電源を用い、2つの電力比を1:1に固定し、合計の電力を表10に示すように各層において変化させた。
【0134】
特に、膜堆積初期において、基板上に−60Vのバイアス電圧を印加し、その後1分30秒かけ、図3(b)のように階段状に変化させ、最終的に0Vまで変化させた。これと同時に、合計高周波電力を0Wから750Wまで同様の階段状の変化で徐々に増加させた。
【0135】
作成した電子写真用感光体は、実験例1と同様に軸方向17点、周方向4列の計68点について顕微鏡観察を行い、異常成長の数をカウントしたが、画像上問題となるような大きな異常成長は、ほとんど観測されなかった。また、5μm以下の非常に微小な異常成長に関しても、実施例1と同様に非常に少なかった。
【0136】
次に、この電子写真用感光体を電子写真装置(キヤノン製iR−5000を実験用に改造した物)にセットして、実施例1と同様に電位特性、画像特性の評価を行った。
【0137】
実施例1と同様の帯電能ムラ評価を行ったが、帯電能ムラが非常に少なく、良好であることが確認できた。
【0138】
次に、画像欠陥についても実施例1と同様の評価を行った。ベタ黒、ベタ白画像とも、画像欠陥はほとんど観察されず、極めて良好な画像が得られることが判った。特に透過濃度の薄いベタ黒画像においても、実施例1と同様に良好であることが確かめられた。
【0139】
次にゴースト特性についても実施例1と同様の評価を行った。すると、中間調画像上にゴーストに起因する濃度ムラはほとんど観察されず、均一な中間調画像が得られた。
【0140】
次に、実施例1と同様に画像濃度ムラについて評価したが、透過濃度のムラもほとんど見られず、良好な結果が得られた。
【0141】
結果、帯電能ムラ、ベタ黒、ベタ白における画像欠陥、ゴースト、画像濃度ムラのいずれも、きわめて少なく、高品位な画像再現性と特性均一性とが高いレベルで達成されていることが判った。
【0142】
よって、本願のように堆積膜形成初期の作成方法に注意して電子写真用感光体を作成した場合、異常成長の数が極めて少ないために画像欠陥がほとんど見られず、電気特性、画像特性が良好であり、均一性が高く、極めて良好な感光体が得られることが判った。
【0143】
【表10】
Figure 2004131759
[実施例4]
図1に示す真空処理装置と同様で、反応容器の径を400mmφ、アルミニウムシリンダー5本を円上に等間隔に配置した構成とした装置を用い、直径80mmの鏡面加工を施したアルミニウムシリンダー(基板)上に、表11に示す条件で下部阻止層、光導電層、表面層の順に膜の堆積を行って電子写真用感光体を作成した。このとき、高周波電源としては2種類の周波数の高周波電源を用い、2つの電力比を1:1に固定し、合計の電力を表11に示すように各層において変化させた。
【0144】
特に、膜堆積初期において、基板上に−60Vのバイアス電圧を印加し、その後1分かけ、図3(c)のように2次曲線状に変化させ、最終的に0Vまで減少させた。これと同時に、合計高周波電力を0Wから650Wまで同様の2次曲線状の変化で徐々に増加させた。
【0145】
作成した電子写真用感光体は、実験例1と同様に軸方向17点、周方向4列の計68点について顕微鏡観察を行い、異常成長の数をカウントしたが、画像上問題となるような大きな異常成長は、ほとんど観測されなかった。また、5μm以下の非常に微小な異常成長に関しても、実施例1と同様に非常に少なかった。
【0146】
次に、この電子写真用感光体を電子写真装置(キヤノン製iR−5000を実験用に改造した物)にセットして、実施例1と同様に電位特性、画像特性の評価を行った。
【0147】
実施例1と同様の帯電能ムラ評価を行ったが、帯電能ムラが非常に少なく、良好であることが確認できた。
【0148】
次に、画像欠陥についても実施例1と同様の評価を行った。ベタ黒、ベタ白画像とも、画像欠陥はほとんど観察されず、極めて良好な画像が得られることが判った。特に透過濃度の薄いベタ黒画像においても、実施例1と同様に良好であることが確かめられた。
【0149】
次にゴースト特性についても実施例1と同様の評価を行った。すると、中間調画像上にゴーストに起因する濃度ムラはほとんど観察されず、均一な中間調画像が得られた。
【0150】
次に、実施例1と同様に画像濃度ムラについて評価したが、透過濃度のムラもほとんど見られず、良好な結果が得られた。
【0151】
結果、帯電能ムラ、ベタ黒、ベタ白における画像欠陥、ゴースト、画像濃度ムラのいずれも、きわめて少なく、高品位な画像再現性と特性均一性とが高いレベルで達成されていることが判った。
【0152】
よって、本願のように堆積膜形成初期の作成方法に注意して電子写真用感光体を作成した場合、異常成長の数が極めて少ないために画像欠陥がほとんど見られず、電気特性、画像特性が良好であり、均一性が高く、極めて良好な感光体が得られることが判った。
【0153】
【表11】
Figure 2004131759
【0154】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、減圧可能な反応容器内に基板を設置し、高周波電力を用いてグロー放電によるプラズマを形成して該基板に膜を堆積させる堆積膜形成方法において、放電開始の際、バイアス印加手段からバイアス電圧を印加し、高周波電力をゼロから所定の電力値まで変化させるのと連動して、該バイアス電圧を放電開始時の初期値から減少させることにより、基板上の異常成長を極めて効果的に低減できる堆積膜形成方法を提供出来る。更には、高品質で均一性の高い大面積の堆積膜を、更に高速で堆積させることが出来、製品品質の向上、スループットの向上や良品率向上による生産コスト低下を高い次元で両立することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わる堆積膜形成装置の一例で、基板(基体)側にバイアスを印加することが可能な、プラズマCVD法による堆積膜形成装置の模式的な構成図である。(a)は縦断面図、(b)は横断面図である。
【図2】本発明に係わる堆積膜形成装置の一例で、バイアス印加棒によりプラズマの電位を変化しうる、プラズマCVD法による堆積膜形成装置の模式的な構成図である。
【図3】(a)、(b)、(c)本発明におけるバイアス電圧と高周波電力の変化パターンを説明するための図である。
【図4】本発明におけるバイアス電圧変化、高周波電力変化の効果を説明する図であり、実験例1、比較実験例1で行った実験の異常成長数を比較したグラフである。
【図5】本発明におけるバイアス電圧値の違いによる効果の比較を説明する図であり、実験例2、比較実験例2で行った実験の異常成長数を比較したグラフである。
【図6】本発明における変化時間の違いによる効果の比較を説明する図であり、実験例3、比較実験例3で行った実験の異常成長数を比較したグラフである。
【符号の説明】
101、201                円筒状基体
102、202                反応容器
103、203                ガス導入管
104、204                カソード電極
105、205                排気配管
106、206                基体支持体
107、207                第1の高周波電源
108、208                第2の高周波電源
109、209                マッチングボックス
110、210                回転軸
111、211                モーター
112、212                ギア
113、213                高周波電力分岐部
114、214                排気メッシュ
115、215                シールド
116、216                バイアス電源
217             バイアス印加棒

Claims (13)

  1. 減圧可能な反応容器内に基板を設置し、高周波電力を用いてグロー放電によるプラズマを形成して該基板に膜を堆積させる堆積膜形成方法において、
    放電開始の際、バイアス印加手段からバイアス電圧を印加し、高周波電力をゼロから所定の電力値まで増加させるのと連動して、該バイアス電圧を放電開始時の初期値から減少させることを特徴とする堆積膜形成方法。
  2. 前記バイアス電圧が、直流電圧であることを特徴とする請求項1に記載の堆積膜形成方法。
  3. 前記基板が導電性であり、前記バイアス電圧が該基板に印加されることを特徴とする請求項2に記載の堆積膜形成方法。
  4. 前記バイアス電圧が負である、請求項3に記載の堆積膜形成方法。
  5. 前記バイアス電圧が、プラズマ中に挿入された棒状電極に印加されることを特徴とする請求項2に記載の堆積膜形成方法。
  6. 前記バイアス電圧が正である、請求項5に記載の堆積膜形成方法。
  7. 前記高周波電力が所定の電力値に到達した際に、前記バイアス電圧をゼロとすることを特徴とする請求項1ないし6に記載の堆積膜形成方法。
  8. 前記バイアス電圧の絶対値の上限が100Vである請求項2ないし7に記載の堆積膜形成方法。
  9. 前記高周波電力及び前記バイアス電圧を減少させる時間が、10秒以上5分以下であることを特徴とする請求項1ないし8に記載の堆積膜形成方法。
  10. 前記高周波電力が、少なくとも2つの異なる周波数の高周波電力からなり、これを同一の高周波電極に同時に印加することを特徴とする請求項1ないし9に記載の堆積膜形成方法。
  11. 前記2つの高周波電力が、10MHz以上250MHz以下であることを特徴とする請求項1ないし10に記載の堆積膜形成方法。
  12. 前記堆積膜が、シリコンを構成材料として含むアモルファス物質である請求項1ないし11に記載の堆積膜形成方法。
  13. 前記堆積膜が電子写真用感光体である請求項12に記載の堆積膜形成方法。
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