JP3260912B2 - 柱状構造領域を有する非単結晶シリコンで構成された光受容層を備えた電子写真感光体及びその製造方法 - Google Patents

柱状構造領域を有する非単結晶シリコンで構成された光受容層を備えた電子写真感光体及びその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、基体上に柱状構造領域
を有する非単結晶シリコンで構成された光受容層を配し
て構成した電子写真感光体及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】電子写真感光体の光導電層を構成する材
料については、高感度で、SN比が高く、照射する電磁
波のスペクトル特性に適合した吸収スペクトル特性を有
すること、光応答性が早く、高い暗抵抗値を有するこ
と、機械的耐久性に優れていること、使用時に於て人体
に対して無公害であること、等の諸特性が要求される。
これらの諸特性を有する材料である水素化アモルファス
シリコンを光導電層に使用した電子写真感光体が、例え
ば特開昭54−86341号公報に記載されている。こ
うしたアモルファスシリコンを光導電層に使用した電子
写真感光体は現在実用に付されている。
【0003】特開昭56−62254号公報及び、特開
昭57−119356号公報には、炭素原子を含有する
水素化アモルファスシリコンを電子写真感光体として使
用し、電子写真特性を向上させる技術が開示されてい
る。
【0004】ところで、こうした電子写真感光体を構成
するアモルファスシリコン膜を形成する成膜方法として
は、スパッタリング法、熱により原料ガスを分解する方
法(熱CVD法)、光により原料ガスを分解する方法
(光CVD法)、プラズマにより原料ガスを分解する方
法(プラズマCVD法)等が提案されている。これらの
成膜方法の中で、プラズマCVD法は、現在繁用されて
おり、そのための装置も各種提案されている。こうした
プラズCVD法の中、マイクロ波グロ−放電分解を用い
たいわゆるマイクロ波プラズマCVD法が工業的に注目
されている。
【0005】マイクロ波プラズマCVD法は、他の方法
に比べて高いデポジション速度と高い原料ガス利用効率
が得られるという利点を有している。こうした利点を生
かしたマイクロ波プラズマCVD技術の一例が、米国特
許4,504,518号明細書に記載されている。この
明細書に記載の技術は、0.1Torr以下の低圧下で
のマイクロ波プラズマCVD法による成膜で、高速の堆
積速度で良質の堆積膜を得るというものである。
【0006】また、マイクロ波プラズマCVD法により
原料ガスの利用効率を改善するための技術が特開昭60
−186849号公報に記載されている。該公報に記載
の技術は、概要、マイクロ波エネルギ−の導入手段を取
り囲むように基体を配して内部チャンバ−(即ち、放電
空間)を形成するようにして、原料ガス利用効率を高め
るようにしたものである。
【0007】更に、特開昭61−283116号公報に
は、放電空間中にプラズマ電位制御用の電極(バイアス
電極)を設け、このバイアス電極に所望の電圧を印加し
て堆積膜へのイオン衝撃を制御しながら堆積膜の形成を
行うようにして堆積膜の特性を向上させる技術を開示し
ている。
【0008】こうしたマイクロ波プラズマCVD技術に
基づいた電子写真感光体の製造方法が米国特許5,12
9,359号明細書に記載されている。この米国特許
5,129,359号明細書に記載された電子写真感光
体の製造方法は、例えば、図12の縦断面図、図13の
横断面図で示される堆積膜形成装置により実施される。
【0009】図12、及び図13において、601は反
応容器であり、真空気密化構造を成している。602は
マイクロ波電力を反応容器601内に効率よく透過し、
かつ真空気密を保持し得るような材料(例えば石英ガラ
ス、アルミナセラミックス等)で形成されたマイクロ波
導入誘電体窓である。603はマイクロ波電力の伝送を
行う導波管であり、マイクロ波電源から反応容器近傍ま
での矩形の部分と、反応容器に挿入された円筒形の部分
から成っている。導波管603はスタブチュ−ナ−(図
示せず)、アイソレ−タ−(図示せず)を介してマイク
ロ波電源(図示せず)に接続されている。604は排気
管を示す。該排気管は一端が反応容器601内に開口
し、他端が排気装置(図示せず)に連通している。60
6は基体605により囲まれた放電空間を示す。電源6
11は、バイアス電極612に直流電圧を印加するため
の直流電源(バイアス電源)を示す。
【0010】上述した構成の成膜装置による従来の電子
写真感光体の製造は、以下のようにして行われる。ま
ず、真空ポンプ(図示せず)により排気管604を介し
て反応容器601内を排気し、反応容器601内を1×
10-7Torr以下の圧力に調整する。ついでヒ−タ−
607により基体605を200℃乃至300℃程度の
温度に加熱保持する。そこで不図示のガス導入手段を介
して、シランガス、水素ガス等の原料ガスが反応容器6
01内に導入される。これと同時並行的にマイクロ波電
源608により周波数2.45GHzのマイクロ波を発
生させ、導波管603及び誘電体窓602を介して反応
容器601内に導入される。更に放電空間606内のバ
イアス電極612に接続されたバイアス電源611よ
り、バイアス電極612を介して基体605に対してバ
イアス電圧を印加する。かくして基体605により囲ま
れた放電空間606において、原料ガスはマイクロ波の
エネルギ−により励起されて解離し、更にバイアス電極
611と基体605の間の電界により定常的に基体60
5上にイオン衝撃を受けながら、基体605表面に堆積
膜が形成される。この成膜時、基体605を回転軸60
9をモ−タ−610により回転させることにより回転さ
せる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】この方法によれば、あ
る程度低コストで、実用的な特性と均一性のある電子写
真感光体を得ることがである。しかし、こうした従来の
電子写真感光体には依然として改良すべき問題点が存在
する。即ち、特に成膜時、成膜速度の速い領域では、均
一膜質で光学的及び電気的諸特性の要求を満足し、かつ
電子写真プロセスにより画像形成時に欠陥の少ない堆積
膜を定常的に安定して高収率(高歩留まり)で得るのは
難しいという問題点がある。
【0012】こうした問題点の1つに、いわゆる感度む
ら係る問題点がある。感度むらは、ラインコピ−(文字
だけよりなる原稿のコピ−)の場合にはたいして問題に
はならない。しかし、最近、写真等、ハ−フト−ンを含
む原稿のコピ−の機会が多くなり、しかも高速複写が要
求されるに従い、この感度むらに係る問題は無視できな
いものとなってきた。そして、近年急速に需要の増加し
てきたカラ−コピ−のように厳密な画像濃度の均一性が
要求される場合においては特に重要視しなければならな
い問題である。
【0013】他の問題点として、解像度に係る問題点が
ある。複写画像の解像度は、使用する電子写真感光体の
特性以外に、現像、定着等のプロセスにも依存して決ま
ってくる。そして、近年のトナ−の微粒子化等、これら
プロセス発展に対応して、電子写真感光体についても従
来の特性を上回る解像度が要求されるようになってきて
いる。
【0014】こうした問題点を解消する方法が、ヨ−ロ
ッパ特許公開公報EP0454456A1号に記載され
ている。該公開公報には非単結晶炭化珪素光導電層中に
弗素原子を微量(1乃至95原子ppm)含有させ、更
に酸素原子の含有量を制御することにより光導電層中の
内部の歪みを効果的に緩和し、コピ−画像における「ポ
チ」発生、「ガサツキ」発生及び「ゴ−スト」発生を抑
制し、光受容部層表面の「球状突起」発生をも抑制した
光受容部材が記載されている。この技術は、光受容部材
の光受容層の表面の球状突起を減少させてコピ−画質の
安定と向上を図るものである。ところが、非単結晶炭化
珪素光導電層中に所定量の弗素原子及び酸素原子を含有
したところで完全に球状突起をなくすことは不可能であ
る。因に本発明らがこの光受容部材を使用してハ−フト
−ンを含む原稿を50枚/min以上の高速で長期に亙っ
て連続的に複写してみたところ、感度むらの発生や解像
度の低下が認められた。上述した光受容部材表面の球状
突起に起因するものと考えられる。
【0015】また、特開昭62−84965号公報及び
特開昭62−188665号公報には電子写真感光体の
表面を研磨することにより、感光体の層厚むらを補正す
る技術が開示されている。しかし、これらの公報に於て
は、画像欠陥と表面研磨の関係については触れられてお
らず、層厚むらを制御したところで、今日要求されてい
るような高速複写においても、高解像度、高感度な複写
画像を安定して得ることは非常に難しい。
【0016】特に、高速複写において、高解像度、高感
度な複写画像を安定的に得るためには、露光用に使用さ
れる光の反射の問題をも解決しなければならない。露光
用の光源に半導体レ−ザ−を用いたデジタル複写機の感
光体としてにアモルファスシリコン系の感光体を使用す
る場合、アモルファスシリコンのエネルギ−バンドギャ
ップよりも低エネルギ−である近赤外レ−ザ−を使用す
るため、アモルファスシリコン膜中でレ−ザ−光を完全
に吸収することはできない。そのためレ−ザ−光は吸収
されるもののほかに一部透過或は反射されるものもある
ため、感光体表面で反射したレ−ザ−光とアモルファス
シリコン膜と基体との界面或はアモルファスシリコン膜
の積層界面で反射したレ−ザ−光が互いに干渉し合い、
干渉縞が生じてしまう。
【0017】この干渉縞の問題を解決する技術が米国特
許4,808,504号明細書に開示されている。該明
細書に開示された電子写真感光体は、感光層が配される
基体表面に複数の球状痕跡窪みによる凹凸を設け、感光
体全体に発生する干渉縞を、各々の痕跡窪み内に分散せ
しめて干渉縞の発生を防止するというものである。
【0018】この干渉縞の発生を防止するようにした電
子写真感光体は、有効なものとして評価されている。と
ころがこの電子写真感光体については、基体表面に複数
の球状痕跡窪みによる凹凸を設けるためには、例えば複
数の剛体真球を基体表面に落下させる等の工程が必要で
あるところ、設備的な面と製造工程の面から電子写真感
光体の大幅なコストアップを招いてしまうという問題が
ある。
【0019】本発明の主たる目的は、従来の電子写真感
光体における上述した感度むらの発生、解像度の低下等
の問題のない改善された電子写真感光体を提供すること
にある。本発明の他の目的は、電子写真感光体用の基体
と、該基体上に設けられた珪素原子を含有する電子写真
感光体であって、前記非単結晶材料で構成された層が、
該層の内部に位置する核より該層の層厚方向に実質的に
平行な柱状構造の領域を5個/cm2乃至500個/c
2の密度で有することを特徴とする電子写真感光体を
提供することにある。本発明の更に別の目的は、前記改
善された電子写真感光体をマイクロ波プラズCVD法に
より、安定して歩留り良くしかも安価に製造する方法を
提供することにある。
【0020】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、従来の電
子写真感光体における上述した問題点を解決し、上記目
的を達成すべく、感光層を構成する非単結晶材料(アモ
ルファスシリコン)の内部に柱状構造の領域を積極的に
形成して検討を行った。その結果、本発明者らは、概
要、(1)基体上に形成される非単結晶材料で構成され
た層の内部に、該層の層厚方向に実質的に平行な柱状構
造の領域を複数配した場合、該柱状構造の領域が前記非
単結晶材料で構成された層の層厚方向に垂直な方向の電
荷の流れがなくなり、解像度が向上する;(2)柱状構
造の領域により、入射光の感光体表面からの反射、積層
された堆積膜の界面からの反射、或は基体表面からの反
射が分散されて、反射のむらが低減(即ち、光の吸収量
の差を低減)する、という知見を得た。
【0021】本発明は本発明者らが得た上記知見に基づ
いて完成したものである。本発明の骨子は下述するとお
りの内容のものである。即ち、本発明の電子写真感光体
は、電子写真感光体用の基体と、該基体上に設けられた
珪素原子を含有する非単結晶材料で構成された光受容層
と、からなる電子写真感光体であって、前記光受容
が、該層の内部に位置する複数の核を起点として該層の
層厚方向に実質的に平行な柱状構造の領域を5個/cm
2乃至500個/cm2の密度で有することを特徴とする
ものである。本発明は、上記構成の電子写真感光体の製
造方法を包含する。本発明の電子写真感光体の製造方法
は、減圧にし得る反応容器内に珪素原子を含有するガス
を導入し、前記ガスにマイクロ波エネルギ−を供給し
て、前記反応容器内の放電空間内にプラズマを生起さ
せ、前記反応容器内に配された基体上に珪素原子を含有
する非単結晶材料で構成された光受容層を形成して電子
写真感光体を製造する方法であって、(i)前記光受容
層の一部を形成し、(ii)形成された層の表面に、柱状構
造の領域を形成する起点となるシリコン原子を含有した
粉末で形成されている複数の核を安定した状態で付着さ
せ、(iii)前記複数の核を付着させた層表面上に前記
(i)の工程を行い、前記複数の核を起点として該層の
成長方向に実質的に平行柱状構造の領域を5個/cm
2乃至500個/cm2の密度で形成することを特徴とす
るものである。
【0022】上記構成の本発明の電子写真感光体によれ
ば、非単結晶材料で構成された層の内部に、該層の層厚
方向に実質的に平行な柱状構造の領域を複数配すること
により、該柱状構造の領域が前記非単結晶材料で構成さ
れた層の層厚方向に垂直な方向の電荷の流れが抑えら
れ、これにより画像流れの発生がなくなり、解像度が向
上する。また、前記柱状構造の領域により、入射光の感
光体表面からの反射、積層された堆積膜の界面からの反
射、或は基体表面からの反射が分散される。これにより
反射のむらが低減し(即ち、光の吸収量の差のが低
減)、その結果感度むらの発生が低減する。
【0023】また、本発明の電子写真感光体の製造方法
によれば、上記構成の改善された電子写真感光体を安定
して歩留り良く、しかも安価に製造することができる。
【0024】本発明者らは、現在の電子写真感光体のほ
とんどは、電荷発生機能、電荷輸送機能、表面保護機
能、電荷注入阻止機能等の機能の異なる複数の層を基体
上に積層して構成されていることに着目し、このような
電子写真感光体における感度むらの発生原因について検
討した。その結果、次のような知見を得た。即ち、積層
した複数の堆積層は各々屈折率が微妙に異なるため、各
層の界面では入射光の反射が生ずる。この反射に加えて
感光体表面からの反射、基体表面からの反射も生じ、こ
れらの全ての反射光はその行路長の違いにより互いに干
渉をおこし、互いに強め合うか、打ち消し合う。たとえ
膜質的に同等な部分であっても、層の厚さ、光の入射角
の違い等により感光体の部分により光の行路長が異なっ
てくるため、干渉により光の強度は感光体の位置によっ
て異なる。これが、反射のむらとなり、感光体の感度の
むらの発生原因となる。
【0025】また、電子写真感光体における解像度の低
下を引き起こす原因について検討して。その結果、電子
写真感光体においては、基体及び感光層の表面に保持さ
れた電荷で、露光領域に存在するものは露光時に消滅す
るが、露光時に感光層内で発生した電荷によっては非露
光部に残存する電荷の電界により横方向に流れるもの
(即ち、層厚方向に垂直な方向への流れ)が生じ、これ
が解像度の低下を引き起こす。
【0026】以上述べた知見に基づいて本発明者らは、
上述の感度むらの発生及び、解像度の低下は、基体上に
形成される非単結晶材料で構成された層の内部に、該層
の層厚方向に実質的に平行な柱状構造の領域を複数配し
た場合、防止できるのではないかと考え得るに至った。
本発明者らはこの考えが有効であるか否かを確かめるた
め以下に述べる実験を行った。
【0027】実験1 上述した柱状構造の領域の出発点となる核としてSi粉
末をAl基体表面上に散布した後、該Al基体表面上に
堆積膜(光受容層)を形成して感光体を得た。該堆積膜
をSEMで観察した。また、得られた感光体を用いて、
画像形成を行い、電子写真特性について調べた。
【0028】成膜装置として、図7及び図8に示した装
置を使用した。図7及び図8に示した装置は以下に述べ
る点を除いて、前述の図12及び図13に示した装置と
同じ構成である。即ち、柱状構造の領域の出発点となる
核の導入口として、導入口213が設けられている点、
及び基体205自転の他に公転するような機構が設けら
れている点で図12及び図13に示した装置とは異なっ
ている。図7、及び図8において、201は反応容器、
202はマイクロ波電力を反応容器201内に効率よく
透過し、かつ真空気密を保持し得るアルミナセラミック
スで形成されたマイクロ波導入誘電体窓、203はマイ
クロ波電力の伝送を行う導波管である。導波管203は
スタブチュ−ナ−(図示せず)、アイソレ−タ−(図示
せず)を介してマイクロ波電源(図示せず)に接続され
ている。204は一端が反応容器201内に開口し、他
端が排気装置(図示せず)に連通している排気管、20
6は基体205により囲まれた放電空間、211はバイ
アス電極212に直流電圧を印加するための直流電源
(バイアス電源)である。214はシ−ル部材、216
は公転プレ−ト、215は公転プレ−ト216を回転さ
せるためのモ−タ−である。光受容層の形成は以下のよ
うにして行った。
【0029】即ち、Al製の基体205が配された反応
容器201内を排気管204を介して排気し、該反応容
器201内を1×10-7Torrの圧力に調整した。つ
いでヒ−タ−207に通電して基体205を250℃の
温度に加熱保持した。モ−タ−210により基体205
を自転させると共に、モ−タ−215により基体205
を公転させた。ここで、平均粒子径10μmのSi粉末
を圧力2×104Pa、流量1000sccmのArガ
スとともに導入口213を介して2分間に亙って反応容
器201内に導入し、基体205の表面上にSi粉末を
散布した。次に、不図示のガス導入手段を介して、Si
4ガス,Heガス,CH4ガス,SiF 4ガスをそれぞ
れ、350sccm,100sccm,50sccm,
1sccmの流量で反応容器201内に導入し、該反応
容器201内を4.0mTorrの圧力に調整した。こ
うしたところで、マイクロ波電源208により周波数
2.45GHz、1000Wのマイクロ波を導波管20
3を介して反応容器201内に導入した。これと同時に
バイアス電極212に70Vのバイアス電圧を印加し
た。かくして基体205により囲まれた放電空間206
において、上述の成膜用原料ガスはマイクロ波のエネル
ギ−により励起されて解離し、バイアス電極212と基
体205の間の電界により定常的にイオン衝撃を受けな
がら、基体205上に水素及び弗素を含有するアモルフ
ァス炭化珪素膜(a−SiC:H:F)が20μmの厚
みで形成された。こうして得られたアモルファス炭化珪
素膜をAl基体205の一部より切り出してSEM観察
用の試料を作成し、SEM観察を行った。そうしたとこ
ろ、基体205の表面上のSi核から光受容層の自由表
面に向かって複数の亀裂がはしっており、膜質が粗悪な
ものであることが確認できた。また、光受容層の表面に
は、多数の突起が生じていたので、図9に示す研磨装置
を使用して突起の研磨を行った。図9に示される研磨装
置は、電子写真感光体をシャフトに取りつけてこれを回
転させ、回転する電子写真感光体の表面に研磨テ−プを
圧着させて研磨を行う形態のものである。研磨は以下の
ようにして行った。
【0030】まず研磨装置本体301中の研磨ユニット
302を上方に上げクランプ303により固定したの
ち、電子写真感光体305を支持台304と組み合わ
せ、シャフト306に固定した。ついでクランプ303
を緩め、研磨ユニット302を下方に降ろし、圧接ロー
ラ−307により研磨テープ308を電子写真感光体3
05に圧着した。研磨テープ308としてはポリエステ
ルフィルム上に平均粒径8μmの炭化珪素粉末を塗布し
たものを用いた。圧接ローラ−307は表面にウレタン
ゴム(JIS硬度;80)を被覆したものを用いた。こ
の時、圧接用のバネ309を調節して、圧接ローラ−3
07を介して研磨テープ308を電子写真感光体305
に圧着させる圧力を線圧40g/cm、接触幅(以降
「ニップ幅」と略称する)を0.5mmとした。
【0031】次に、回転数が可変のモーター310及び
311を回転し、研磨を行なった。研磨テープ308の
送り速度は10mm/min、被研磨部材である電子写
真感光体305の回転速度は300mm/secとし
て、5分間の研磨を行なった。
【0032】このようにして得られた感光体をキヤノン
(株)製NP9330複写機を実験用に改造した複写機
に搭載して画像形成を行った。複写の初期には原稿の複
写がなんとかできたものの、複写を繰り返すに従い複写
画像の状態が急激に悪くなり、原稿の文字が認識できな
くなってしまった。ここで作製した感光体の特性が非常
に悪いのは、Si核のAl基体上への吸着が安定したも
のではなく、このことに起因して、Si核上に形成され
る堆積膜に亀裂が生じたためであろうと考えられる。
【0033】実験2 実験においては、実験1で得られた結果に鑑みて、Si
核のAl基体上への散布をAl基体上にわずかに堆積膜
を形成した後に行った。即ち、実験1におけるSi核の
Al基体上への散布工程を、Al基体上にわずかに堆積
膜を形成した後に行う以外、実験1と同様にして行っ
た。具体的には、次のとおりに行った。反応容器201
内を減圧排気した後、Al基体205を250℃の温度
に加熱保持した。基体205を自転公転させると共に、
SiH4ガス,Heガス,CH4ガス,SiF4ガスの成
膜用原料ガスをそれぞれ、350sccm,100sc
cm,50sccm,1sccmの流量で反応容器20
1内に導入し、該反応容器201内を4.0mTorr
の圧力に調整した。こうしたところで、マイクロ波電源
208により周波数2.45GHz、1000Wのマイ
クロ波を導波管203を介して反応容器201内に導入
した。これと同時にバイアス電極212に70Vのバイ
アス電圧を印加した。この操作を、基体205上に水素
及び弗素を含有するアモルファス炭化珪素膜(a−Si
C:H:F)が5μmの厚みで形成されるまでつづけた
後、マイクロ波電源205の電源を切り、原料ガスの供
給をストップさせた。次に、平均粒子径10μmのSi
粉末を圧力2×104Pa、流量1000sccmのA
rガスとともに導入口213より2分間に亙って反応容
器201内に導入し、5μm厚のアモルファス炭化珪素
膜(a−SiC:H:F)上にSi粉末を散布した。そ
の後再び、上述の原料ガスを反応容器201内に導入す
るとともに、マイクロ波電力の投入及びバイアス電極2
12へのバイアス電圧の印加を行う上述の成膜操作を繰
り返して、厚さ15μmのアモルファス炭化珪素膜(a
−SiC:H:F)を積層した。こうして電子写真感光
体を得た。得られた電子写真感光体について実験1と同
様にして評価した。SEM観察の結果、最初に形成した
5μm厚のアモルファス炭化珪素膜(a−SiC:H:
F)上に散布したSi核から膜厚方向に見かけ上平行な
柱状の領域が形成されているのが観察された。これらの
柱状の領域は、すべてのSi核から発生しているわけで
はなく、Si核の中には柱状の領域を発生させていない
ものもあった。図9に示す研磨装置を使用して実験1と
同様に感光体表面の研磨を行った後、実験1と同様に画
像形成を行った。その結果、実験1で得られた複写画像
に比べて格段に優れた画像が得られたが、複写枚数が5
万枚を越えたあたりから急激に複写画像の低下(特に解
像度の低下及び白ポチの増加)が認められた。5万枚複
写後の感光体では、該感光体の光受容層を構成する堆積
膜がどのように変化したのかを観察するため、該堆積膜
をAl基体の一部より切り出してSEM観察用の試料を
作成し、SEM観察を行った。そうしたところ、最初に
形成した5μm厚のアモルファス炭化珪素膜(a−Si
C:H:F)上に散布されたSi核から膜厚方向に見か
け上平行に形成された柱状の領域は存在するものの、他
にSi核の近傍に堆積膜の存在しない粗な領域が存在し
ているのが確認された。この粗な領域の発生が解像度の
低下及び白ポチの増加を引き起こしたものと考えられ
る。また該粗な領域は、堆積膜上に散布されたいくつか
のSi核が安定した状態で堆積膜に吸着しなかったこと
に起因して生じたものと考えられる。
【0034】実験3 本実験においては、Si核がアモルファス炭化珪素膜
(a−SiC:H:F)上に安定した状態で吸着するよ
うにすべく、核となるSi粉末をあらかじめ帯電させ、
該Si粉末と基体の両者の電界を利用してSi核をアモ
ルファス炭化珪素膜(a−SiC:H:F)上に吸着さ
せるようにした。本実験における成膜操作は、図7及び
図8に示される堆積膜形成装置に改良を加えたものを使
用して行った。具体的には、導入口213の途中に0.
5mm径のタングステン線で構成された帯電器を配し、
この帯電器に直流電圧を印加することでコロナ放電を発
生させてSi粉末を帯電させるようにした。これに加え
て、基体205に直流バイアス電圧を印加できるように
した。本実験における成膜は、実験2におけるSi核の
散布を、Si粒子を帯電器により帯電させるとともにA
l基体205にバイアス電圧を印加して両者の間に生ず
る電界を利用して行った以外実験2におけると同様にし
て行った。具体的には、次のとおりに行った。反応容器
201内を減圧排気した後、Al基体205を250℃
の温度に加熱保持した。Al基体205を自転公転させ
ると共に、SiH4ガス,Heガス,CH4ガス,SiF
4ガスの成膜用原料ガスをそれぞれ、350sccm,
100sccm,50sccm,1sccmの流量で反
応容器201内に導入し、該反応容器201内を4.0
mTorrの圧力に調整した。こうしたところで、マイ
クロ波電源208により周波数2.45GHz、100
0Wのマイクロ波を導波管203を介して反応容器20
1内に導入した。これと同時にバイアス電極212に7
0Vのバイアス電圧を印加した。この成膜工程を、Al
基体205上に5μm厚の水素及び弗素を含有するアモ
ルファス炭化珪素膜(a−SiC:H:F)が形成され
るまでつづけた後、マイクロ波電源205の電源を切
り、上記成膜用原料ガスの供給をストップさせた。次
に、導入口213の近傍に設けられた帯電器に5kVの
直流電圧を印加してコロナ放電を発生させてSi粉末を
帯電させ、Al基体205に−100Vの直流電圧を印
加した状態で、Si粉末を圧力2×104Pa、流量1
000sccmのArガスとともに導入口213より2
分間に亙って反応容器201内に導入した。Al基体2
05への直流電圧を印加を停止した後、上述の成膜用原
料ガスを反応容器201内に導入するとともに、マイク
ロ波電力の投入及びバイアス電極212へのバイアス電
圧の印加をする上述の成膜操作を繰り返して厚さ15μ
mのアモルファス炭化珪素膜(a−SiC:H:F)を
積層した。こうして電子写真感光体を得た。得られた電
子写真感光体について実験2と同様の手法で評価した。
SEM観察の結果、最初に形成した5μm厚のアモルフ
ァス炭化珪素膜(a−SiC:H:F)上に散布された
全てのSi核から堆積膜の膜厚方向に見かけ上平行に柱
状の領域が形成されているのが観察された。図9に示す
研磨装置を使用して実験2におけると同様に感光体表面
の研磨を行った後、実験2と同様にして画像形成を行っ
た。その結果、実験2で得られた複写画像よりもさらに
優れた画像が得られ、10万枚の複写後にあっても複写
画像の低下は見られなかった。ここで非常に優れた複写
画像が得られた理由は、堆積膜上にSi核が安定な状態
で吸着し、該Si核を起点として柱状の領域が膜厚方向
に見かけ上平行に柱状の領域が形成されたためと考えら
れる。
【0035】実験4 本実験においては実験3において得られた結果に鑑みて
堆積膜中に形成される柱状構造領域の密度を種々変化さ
せ、好ましい密度を得べく検討した。本実験では、図1
に示される構成の電子写真感光体を複数種作製した。図
1において102は、基体であり、104は珪素原子を
母体とする非単結晶(アモルファス、微結晶、あるいは
多結晶)で構成された光導電層としての機能を有する層
である。103は電荷注入阻止層、105は表面保護層
である。110は柱状構造を示し、111は柱状構造の
核を示す。それぞれの場合、堆積膜の形成は実験3で使
用した装置を使用して以下のように行った。反応容器2
01内を減圧排気した後、Al基体205を250℃の
温度に加熱保持した。Al基体205を自転公転させる
と共に、SiH4ガス,Heガス,B26ガス,NOガ
スの成膜用原料ガスをそれぞれ、350sccm,10
00ppm,10sccmの流量で反応容器201内に
導入し、該反応容器201内を4.0mTorrの圧力
に調整した。こうしたところで、マイクロ波電源208
により周波数2.45GHz、1000Wののマイクロ
波を導波管203を介して反応容器201内に導入し
た。これと同時にバイアス電極212に70Vのバイア
ス電圧を印加した。こうして電荷注入阻止層103を形
成した。この成膜工程を続けてAl基体205上に3μ
m厚のa−Si:H:N:B膜を形成した。次いでB2
6ガス及びNOガスの供給をやめ、上述したSiH4
ス及びHeガスに加えてCH4及びSiF4ガスをそれぞ
れ50sccm,1sccmの流量で反応容器201内
に導入して5μmのa−SiC:H:F膜を形成した
後、マイクロ波電源205の電源を切り、上記成膜用原
料ガスの供給をストップさせた。それぞれの場合におい
て、次に、導入口213の近傍に設けられた帯電器に5
kVの直流電圧を印加してコロナ放電を発生させSi粉
末を帯電させ、Al基体205に−100Vの直流電圧
を印加した状態で、該Si粉末を圧力2×104Pa、
流量800sccmのArガスとともに導入口213よ
り異なった導入時間、即ち、10秒〜5分間に亙って反
応容器201内に導入した。Al基体205への直流電
圧を印加を停止した後、上述の成膜用原料ガスを反応容
器201内に導入するとともに、マイクロ波電力の投入
及びバイアス電極212へのバイアス電圧の印加を行う
上述の成膜操作を繰り返して15μm厚のa−SiC:
H:Fを積層した。こうして光導電層104を形成し
た。次に表1に示した成膜条件で0.5μm厚のa−S
iC:H膜からなる表面層105を形成した。上記10
3層、104層、及び105層の形成条件を表1にまと
めて示す。得られたそれぞれの感光体について、図9に
示す研磨装置を使用して実験2と同様にその表面の研磨
を行った。得られたそれぞれの感光体をキヤノン(株)
製NP9330複写機を実験用に改造した複写機に搭載
して画像形成及び評価を行った。得られた評価結果は表
2にまとめて示す。表2に示した各評価項目については
以下の評価基準で行った。
【0036】(1)感度むら:全面ハーフトーンの原稿
を原稿台に置きコピーした時に得られた画像サンプルを
観察し、濃淡のむらを評価した。
【0037】感光体表面を軸方向に3等分、周方向に3
等分表面に対応するように9つの領域に分け各々の領域
の画像濃度の平均を比較し評価した。 ◎ ・・・・ 9つの領域で画像濃度の差無し。 ○ ・・・・ 1〜2の領域で一部僅かな画像濃度の差有
り。 △ ・・・・ 全面に渡り画像濃度の差があるが程度は軽徴
である。 × ・・・・ 全面に渡り問題になる程度の画像濃度の差が
ある。
【0038】(2)解像度:白地に全面文字よりなる通
常の原稿を原稿台に置きコピーした時に得られた画像サ
ンプルを観察し、画像上の文字がいずれもつぶれずに再
現できたか評価した。
【0039】但し、この時画像上でむらがある時は、全
画像領域で評価し一番悪い部分の結果を示した。 ◎ ・・・・ 良好。 ○ ・・・・ 一部つぶれ有り。 △ ・・・・ つぶれは多いが文字として認識できる。 × ・・・・ 文字として認識できないものもある。
【0040】(3)干渉縞:全面ハーフトーンの原稿及
び全面黒の原稿を原稿台に置きコピーした時に得られた
画像サンプルを観察し、感光体の膜厚むらに対応した縞
状の濃淡のむらを評価した。 ◎ ・・・・ いずれの画像でも干渉縞は全く認められな
い。 ○ ・・・・ 詳細に観察するとハーフトーンの画像で一部
に軽徴な干渉縞が認められる。 △ ・・・・ ハーフトーンの画像で干渉縞が、全面黒の画
像上では認められない。 × ・・・・ 何れの画像上でも干渉縞が目立つ。
【0041】(4)がさつき:全面ハーフトーンの原
稿、及び、白地に全面文字よりなる通常の原稿を交互に
原稿台に置きコピーした時に得られた画像サンプルを観
察し、がさつきの程度を評価した。 ◎ ・・・・ いずれの画像でもがさつきは全く認められな
い。 ○ ・・・・ ハーフトーンの画像に一部わずかにがさつく
部分有り。 △ ・・・・ ハーフトーンの画像ではがさつきが目立つ
が、全面文字の原稿には影響無し。 × ・・・・ 文字として認識できないものもある。
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】 表2に示した結果から明らかなように、堆積膜中に5個
/cm2乃至500個/cm2の範囲の密度で柱状構造を
形成した場合、感度むら、解像度、干渉縞、がさつきの
それぞれにつき、非常に優れた特性を示す電子写真感光
体が得られることが理解される。
【0044】以上の実験1乃至実験4の結果から、次の
ことが判明した。
【0045】基体上に非単結晶材料で構成された層を形
成した後、該層の表面に成長して柱状構造の領域を形成
する起点となる核を安定した状態で吸着させた後、非単
結晶材料で構成された層を更に形成し、該層の層厚方向
に実質的に平行な柱状構造の領域を5個/cm2乃至5
00個/cm2の密度で形成してなる光受容部材は、感
度むら、解像度、干渉縞、がさつきのそれぞれにつき、
非常に優れた特性を示す。
【0046】本発明の電子写真感光体は、電子写真感光
体用の基体と、該基体上に設けられた珪素原子を含有す
る非単結晶材料で構成された光受容層と、からなる電子
写真感光体であって、前記光受容層が、該層の内部に位
置する複数の核を起点として該層の層厚方向に実質的に
平行な柱状構造の領域を5個/cm2乃至500個/c
2の密度で有することを特徴とするものである。
【0047】本発明の電子写真感光体の製造方法は、減
圧にし得る反応容器内に珪素原子を含有するガスを導入
し、前記ガスにマイクロ波エネルギ−を供給して、前記
反応容器内の放電空間内にプラズマを生起させ、前記反
応容器内に配された基体上に珪素原子を含有する非単結
晶材料で構成された光受容層を形成して電子写真感光体
を製造する方法であって、(i)前記光受容層の一部を
形成し、(ii)形成された層の表面に、柱状構造の領域を
形成する起点となる複数の核を安定した状態で付着さ
せ、(iii)前記複数の核を付着させた層表面上に前記
(i)の工程を行い、前記複数の核を起点として該層の
成長方向に実質的に平行な柱状構造の領域を5個/cm
2乃至500個/cm2の密度で形成することを特徴起点
として該層の成長方向に実質的に平行な柱状構造の領域
を5個/cm2乃至500個/cm2の密度で形成するこ
とを特徴とするものである。
【0048】本発明の電子写真感光体を図1を参照しな
がら説明する。図1は本発明の電子写真感光体の断面を
模式的に示した図である。
【0049】図1において102は、基体であり、10
4は珪素原子を母体とする非単結晶(アモルファス、微
結晶、あるいは多結晶)で構成された光導電層としての
機能を有する層である。110は柱状構造の領域を示
し、111は柱状構造の核を示す。103は電荷注入阻
止層を示し、105は表面保護層を示す。これらの電荷
注入阻止層103及び表面保護層105は、必ずしも必
要とされるものではなく、得ようとする電子写真感光体
の特性に応じて適宜設けることのできるものである。
【0050】本発明の電子写真感光体は、従来の感光体
に見られる感度むらの発生、解像度の低下等の問題はな
く、画像特性に優れたものである。この点について、図
6を参照しながら説明する。図6は珪素原子を母体とす
る非単結晶からなる光導電層104に光が入射した際、
どのように光が進むかを示した図である。図6において
柱状構造の領域110及び柱状構造の核111は、非単
結晶層104中に界面を形成している。柱状構造の領域
110における屈折率と非単結晶層104の領域の屈折
率とは異なっていることから入射光I1は、両者の界面
において反射を繰り返し、例えばR1〜R6の反射光を発
生する。反射光R1〜R6はそれぞれ行路長が異なるた
め、互いに干渉を起こし、強め合うか、打ち消し合うが
柱状構造の領域110の存在により光の反射機会が増加
する。これにより、反射光どうしの干渉が分散され、特
定位置で光が強め合うあるいは打ち消し合うことがなく
なる。
【0051】また、本発明の電子写真感光体において
は、露光時に光導電層内で発生する電荷が非露光部に残
存する電荷の電界によって引き寄せられて生ずる横流れ
を柱状構造の領域110の存在により阻止できる。
【0052】本発明の電子写真感光体においては、図2
に示す様に、珪素原子を母体とする非単結晶104を、
例えば104(A)、104(B)、104(C)のよ
うな複数の層を積層して構成することもできる。また、
図3に示す様に103層及び105層のそれぞれを相異
なる複数の層を積層して構成することもできる。 10
3層及び105層のそれぞれには、上述した以外に例え
ば基体からの光の反射を防ぐ光吸収層、電荷を輸送する
電荷輸送層、又は電荷を発生する電荷発生層として機能
等を持たせることができる。好ましい態様においては、
103層を、光吸収層及び/又は電荷注入阻止層とし、
105層を電荷発生層及び/又は表面層とする。103
層及び105層はそれぞれシリコン原子を母体とし炭
素、ゲルマニウム、窒素、酸素、水素、弗素、ほう素、
燐の中から選択される一種又はそれ以上を含有する非晶
質材料及び多結晶質材料を包含する非単結晶材料の中か
ら選択されるもので構成される。柱状構造領域の形状
は、感光体表面に対して水平に切断した場合の形状とし
て、円形、楕円形またはそれらが重なった形状に近似し
た形状が好ましい。感光体表面に対して垂直に切断した
時の断面の形状は、長方形、三角形、台形、またはそれ
らを組み合わせた形状が好ましい。
【0053】柱状構造領域の大きさは、感光体表面側か
らみて直径(または長径)1μm以上、300μm以
下、より好ましくは5μm以上、100μm以下が好ま
しい。これより小さいと本発明の効果は見られず、一方
大きいと、所望の電子写真特性が発揮されない。柱状構
造の密度は、直径(または長径)5μm以上100μm
以下のものが1cm2当たり5個以上500個以下、好
ましくは10個以上、300個以下、最適には10個以
上、100個以下とされる。これらの範囲より柱状構造
の密度が小さいと本発明の効果が見られず、一方、大き
いと、画像のがさつき等、画像特性の悪化をもたらして
しまう。
【0054】柱状構造領域発生の起点となる核は微小な
粒子ならば何でも良いが特にシリコン原子を含有した単
結晶、多結晶等の結晶質粉末が好ましい。しかし、非単
結晶の粉末も使用できる。
【0055】柱状構造領域の発生起点位置は、該柱状構
造領域を形成する光受容層について、該層の下方界面位
置から層厚方向で上方に1μm以上、より好ましくは3
μm以上、最適には5μm以上のところに設定される。
【0056】柱状構造領域を発生させる起点となる核を
堆積膜上に散布して付着させる好適な方法としては、核
となる粒子を帯電させた後、ヘリウム、ネオン、アルゴ
ン、等の希ガス、水素ガス、又はシランガス、メタンガ
ス等の原料ガスと共に反応容器内に導入して堆積膜上に
散布し、基体と帯電した粉体の両者の電界を利用して堆
積膜上に核となる該粒子を付着させる方法が挙げられ
る。
【0057】核となる粒子を帯電させる方法としては、
コロナ放電、火花放電あるいはグロ−放電のような手段
で電荷を与える方法が望ましいものとして例示できる。
コロナ放電を使用する場合、0.1〜0.5mm程度の
径のステンレス線、タングステン線等の帯電線で構成さ
れた帯電器に、4〜8kVの直流電圧をかけてコロナ放
電を発生させる。核となる粒子と共に反応容器内に導入
されるガスの流量及び吹き出し圧は、粉体粒子の大き
さ、量、対象となる膜の面積、散布時間等に依存して変
わるものであるが、一般に該ガスの流量を100scc
m〜100slmとし、圧力を104Pa〜105Paに
するのが好ましい。帯電した粒子と基体間の電界を用い
て付着を行う場合には、電界の強度は、1V/cm〜1
00V/cmとするのが好ましい。
【0058】本発明における珪素原子を含有する非単結
晶層104は珪素原子に対して炭素原子を2.0原子%
以上、25原子%以下含有し、更に、珪素原子に対して
弗素原子を2.0ppm以上、90ppm以下含有する
ことが好ましい。
【0059】珪素原子を含有する非単結晶層104の形
成に用いる原料ガスとしては、シラン、ジシラン等の他
に、炭素原子を添加するガスとして、メタン(C
4)、エタン(C25)、エチレン(C24)、アセ
チレン(C22)、プロパン(C38)等の炭化水素ま
たはこれらの混合ガスが挙げられる。また、テトラメチ
ルシラン(Si(CH34)の様に珪素原子と炭素原子
を同時に含むガスも原料ガスとして有効である。
【0060】珪素原子を含有する非単結晶層104中に
弗素原子を添加するために使用するガスとしては、四弗
化珪素(SiF4)、(CF4)等の弗化物またはこれら
の混合ガスが挙げられる。
【0061】104層中に炭素を含有させる場合、10
4層中の珪素原子の量に対して2原子%以上、20原子
%以下、最適には3原子%以上、10原子%以下含有さ
せることが好ましい。
【0062】104層中に弗素原子を含有させる場合、
104層中の珪素原子の量に対して2ppm以上、90
ppm以下、最適には3ppm以上、80ppm以下の
量で含有させることが望ましい。
【0063】104層の厚さは、基体上の堆積膜の総膜
厚の30%以上、100%以下、更に好ましくは50%
以上、100%以下の範囲が好ましい。
【0064】本発明において、マイクロ波プラズマCV
D法により104層を形成する場合、放電空間内にバイ
アス電圧を印加した状態で層形成を行なうことは有効で
あり、少なくとも基体に陽イオンが衝突する方向に電界
が掛かることが好ましい。バイアス電圧を全く掛けない
場合、本発明の効果は著しく低減してしまうが、バイア
ス電圧を印加する場合、DC成分の電圧を1V以上、5
00V以下、好ましくは5V以上、100V以下とする
のが望ましい。
【0065】103層及び105層の形成方法は、真空
蒸着、スパッタ、熱CVD、プラズマCVD等適宜選択
して使用できる。
【0066】基体材料としては、例えば、ステンレス、
Al、Cr、Mo、Au、In、Nb、Te、V、T
i、Pt、Pd、Fe等の金属、これらの合金または表
面を導電処理したポリカーボネート等の合成樹脂、ガラ
ス、セラミックス、紙等が使用できる。
【0067】基体の形状は任意の物で良いが、複数の基
体で放電空間を取り囲む構成の堆積膜形成方法において
は特に円筒形の物が最適である。基体の大きさには特に
制限はないが実用的には直径20mm以上、500mm
以下、長さ10mm以上、1000mm以下が好まし
い。
【0068】複数の基体で放電空間を取り囲む構成の堆
積膜形成方法においては基体の間隔は1mm以上、50
mm以下が好ましい。基体の数は放電空間を形成できる
ならばいずれでも良いが3本以上、より好ましくは4本
以上が適当である。
【0069】本発明において、珪素原子を含有する非単
結晶よりなる層は、特に、水素を含むアモルファスシリ
コン、または、他の原子を含み珪素を主体としたアモル
ファス材料が望ましい。
【0070】本発明の電子写真用感光体では、基体上に
堆積した堆積膜の総膜厚は、5μm以上、100μm以
下、更に好ましくは10μm以上、70μm以下、最適
には15μm以上、50μm以下が望ましい。
【0071】電子写真感光体を構成する堆積膜の形成法
としては、特にプラズマCVD法が望ましい。そして、
プラズマCVD法であれば、DC放電法、RF放電法、
マイクロ波放電法等を使用することができるが、特にマ
イクロ波を使用した放電法が好ましい。
【0072】マイクロ波を使用する場合、特に、図7及
び図8に示すように、放電空間を囲むように基体を設
け、少なくとも基体の一端側から導波管によりマイクロ
波を放電空間に導入する構成の方法が望ましい。この
時、マイクロ波を導入のための誘電体窓の材質としては
アルミナ(Al23)、窒化アルミニウム(AlN)、
窒化ボロン(BN)、窒化珪素(SiN)、炭化珪素
(SiC)、酸化珪素(SiO2)、酸化ベリリウム
(BeO)、テフロン、ポリスチレン等マイクロ波の損
失の少ない材料が通常使用される。
【0073】本発明では、堆積膜形成中の放電空間の圧
力は、DC電力またはRF電力を放電電力として用いる
場合には、特に100mtorr以上、5torr以
下、好ましくは200mtorr以上、2torr以下
が好ましい。マイクロ波を放電電力として用いる場合に
は、0.5mtorr以上、100mtorr以下、好
ましくは1mtorr以上、20mtorr以下の圧力
が、放電の安定性及び堆積膜の均一性を考慮すると望ま
しい。
【0074】堆積膜形成時の基体温度は、100℃以
上、500℃以下の範囲がとり得るが、特に150℃以
上、450℃以下、好ましくは200℃以上、400℃
以下、最適には230℃以上、350℃以下が望まし
い。
【0075】基体の加熱方法は、真空仕様である発熱体
であればよく、より具体的にはシース状ヒーターの巻き
付けヒーター、板状ヒーター、セラミックスヒーター等
の電気抵抗発熱体、ハロゲンランプ、赤外線ランプ等の
熱放射ランプ発熱体、液体、気体等を温媒とし熱交換手
段による発熱体等が挙げられる。加熱手段の表面材質
は、ステンレス、ニッケル、アルミニウム、銅等の金属
類、セラミックス、耐熱性高分子樹脂等を使用すること
ができる。また、それ以外にも、反応容器とは別に加熱
専用の容器を設け、加熱した後、反応容器内に真空中で
基体を搬送する等の方法も使用することができる。更
に、放電に使用するマイクロ波自身により(例えば、必
要に応じて強度を変えることにより)基体温度を制御す
ることも可能である。以上のいずれの手段を単独にまた
は併用して用いることができる。
【0076】堆積膜形成中の放電電力は、DC電力また
はRF電力を放電電力として用いる場合、特に20W以
上、2kW以下、好ましくは50W以上、1kW以下
が、マイクロ波放電電力として用いる場合、100W以
上、10kW以下、好ましくは500W以上、2kW以
下が望ましい。
【0077】本発明に使用される研磨工程は、研磨材を
塗布した研磨テープを用いる場合特に効果が大きい。好
適な研磨材としてはシリカ(SiO2)、アルミナ(A
2 3)、酸化鉄(Fe23)、炭化珪素(SiC)、
窒化炭素(C34)、酸化セリウム(CeO)等の微粉
末がある。研磨材の平均粒径としては、平均粒径が小さ
すぎると研磨速度が低下し、実質的な研磨時間の増大を
招き、大きすぎると研磨速度が非常に速くなり、目的と
する柱状構造以外の部分にも影響を与えてしまう。具体
的には、1μm以上、20μm以下が望ましい。
【0078】研磨材の微粉末を塗布するベース材料とし
てはフィルム状の形状のものならばいずれでも良く、ポ
リアミド、ポリエステル、ポリウレタン、ポリ尿素、ポ
リオレフィン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩
化ビニリデン、ポリ弗化エチレン、ポリアクリロニトリ
ル、ポリビニルアルコール、ポリシアン化ビニリデン等
の有機高分子、ステンレス等の金属薄膜、紙等が挙げら
れる。中でも計量且つ強度もあること、安価で大量生産
が可能で環境変化に強い等の理由により有機高分子フィ
ルムが最適である。
【0079】研磨装置に用いられる圧接ローラーとして
は、いずれの材質でも良いが、圧接ローラーが必要以上
に堅い場合には研磨テープによる傷が被研磨部材である
電子写真感光体に発生し、又、必要以上に柔らかい場合
には圧接圧力が研磨テープに伝わらず、実質的に研磨速
度の低下を招くため、例えば表面をシリコンゴムあるい
はウレタン等の材料で被覆したものが望ましい。更に、
圧接圧力に応じて研磨テープと電子写真感光体との間
で、適切な量のニップ幅をもたせることが可能なローラ
ーが好ましい。この時ニップ幅としては、0.01mm
以上、3mm以下が望ましい。圧接圧力としては線圧と
して10g/cm以上、500g/cm以下が望まし
い。
【0080】圧接ローラーの代わりに凸型に湾曲した圧
接部材を用いても良い。
【0081】溶剤に分散させた研磨材を用いる方法も有
効である。この時好適な研磨材としてはシリカ(SiO
2)、アルミナ(Al23)、酸化鉄(Fe23)、炭
化珪素(SiC)、窒化炭素(C34)、酸化セリウム
(CeO)等の微粉末がある。研磨材の平均粒径として
は、平均粒径が小さすぎると研磨速度が低下し、実質的
な研磨時間の増大を招き、大きすぎると研磨速度が非常
に速くなり、目的とする柱状構造以外の部分にも影響を
与えてしまう。具体的には、1μm以上、20μm以下
が望ましい。
【0082】溶剤としては研磨材が分散可能であればい
ずれの液体でも良いが、取り扱いの容易さから特に水が
好ましい。研磨材の濃度は流動性と研磨速度の最適化の
ため、体積比率で5%以上、50%以下が望ましい。研
磨材を分散した溶液を保持する部材は、溶剤を保持でき
るならばいずれでも良いが、実用上特に布、紙等、繊維
質の物が望ましい。
【0083】保持部材の形状としてはいずれでも良く、
ローラー状、平面状、円筒形の電子写真感光体を包み込
むような曲面を持ったもの等が挙げられる。この時ニッ
プ幅としては、0.1mm以上、100mm以下が望ま
しい。圧接圧力としては1g/cm2以上、1000g
/cm2以下が望ましい。
【0084】何れの研磨方法でも、被研磨材である電子
写真感光体の回転速度は1mm/sec以上、1000
mm/sec以下が望ましい。研磨時間は10秒以上、
60分以下、好ましくは1分以上、10分以下が本発明
を実施するに当たり適当である。
【0085】堆積膜の断面構造の観察は、感光体の切断
面を必要に応じてバフ研磨等の研磨を行った後、光学顕
微鏡または電子顕微鏡等を使用して行うことが望まし
い。
【0086】
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明の電子写真感光
体及びその製造方法をより具体的に説明するが、本発明
はこれら実施例に限定されるものではない。
【0087】実施例1 実験4で使用した成膜装置を使用して、図1に示される
3層構成のアモルファスシリコン系電子写真感光体を複
数種作製した。それぞれの電子写真感光体は、光導電層
104の形成条件を下述するように一部変更した以外
は、実験4におけると同様の方法で作製した即ち、それ
ぞれの場合において、104層形成の際のCH4の流量
は表1においては一点のみが示されているがこれを種々
変化させ、Si粉末の付着工程の際の平均粒子径10μ
mのSi粉末を圧力2.5×104Pa、流量1000
sccmのArガスとともに導入口213より2分間に
亙って反応容器201内に導入した以外は実験4におけ
ると同様にして、電子写真感光体を作製した。
【0088】このようにして得られた電子写真感光体の
それぞれについて、実験4で行ったのと同様にして評価
を行った。得られた評価結果を表3に示す。表3におけ
る「白ポチ」の評価基準は次のとおりである。
【0089】白ポチ:黒原稿を原稿台に置きコピーした
時に得られた画像サンプルの同一面積内にある白点の数
により評価を行なった。 ◎ ・・・・ 良好。 ○ ・・・・ 一部小さい白点有り。 △ ・・・・ 全面に白点があるが文字の認識には支障無
し。 × ・・・・ 文字が読みにくい程白点が多い。
【0090】
【表3】 表3に示した結果から明らかなように、本発明の電子写
真感光体は、104層中に炭素原子を2.0原子%乃至
25原子%の範囲で含有する場合に特に有効であること
がわかる。
【0091】実施例2 実験4で使用した成膜装置を使用して、図1に示される
3層構成のアモルファスシリコン系電子写真感光体を複
数種形成した。それぞれの電子写真感光体は、光導電層
104の形成条件を下述するように一部変更した以外
は、実験4におけると同様の方法で作製した即ち、それ
ぞれの場合において、104層形成の際のSiF4の流
量は表1においては一点のみが示されているがこれを種
々変化させ、Si粉末の付着工程の際の平均粒子径10
μmのSi粉末を圧力2.5×10 4Pa、流量100
0sccmのArガスとともに導入口213より2分間
に亙って反応容器201内に導入した以外は実験4にお
けると同様にして、電子写真感光体を作成した。このよ
うにして得られた電子写真感光体を使用して、画像形成
を行い、感度むら及び解像度について実験4で行ったの
と同様にして評価を行った。得られた評価結果を表4に
示す。表4から理解されるように本発明の電子写真感光
体は、104層中に弗素原子を2.0ppm乃至90p
pmの範囲で含有する場合に特に有効である。尚、この
傾向は、104層中の炭素量を変化させても同様であっ
た。
【0092】
【表4】 実施例3 実験4で使用した成膜装置を使用して、図4に示される
3層構成のアモルファスシリコン系電子写真感光体を複
数種作成した。3層の形成条件は表5に示したとおりで
ある。本実施例においては、104(B)層と105層
の層厚を変化させて感光体を製造し、得られたそれぞれ
の感光体について評価を行った。ここで、感光体を構成
する堆積膜の総膜厚を20μm,30μm,40μm,
として検討した。また、104(A)層形成の条件につ
いて、珪素原子に対して炭素原子が14原子%、且つ弗
素原子が70ppm含有されるようにCH4ガス及びS
iF6ガスを反応容器内に導入した。104(B)層形
成の条件については、珪素原子に対して炭素原子が7原
子%、且つ弗素原子が30ppm含有されるようにCH
4ガス及びSiF6ガスを反応容器内に導入した。柱状構
造の成長起点となる成長核の堆積膜上への散布工程は、
104(B)層を5μm形成した後、実験4で示したの
と同様の方法で行った。得られた結果を表6に示す。表
6より104層の層膜厚が感光体を構成する堆積膜の総
膜厚30%以上、100%未満の範囲にあるとき本発明
の電子写真感光体は、特に有用であることがわかる。
尚、この傾向は104層中の炭素量及び弗素量を変化さ
せても同様であった。
【0093】
【表5】
【0094】
【表6】 実施例4 表7に示す条件で、Si粉末の付着工程の際の平均粒子
径10μmのSi粉末を圧力2.5×104Pa、流量
1000sccmのArガスとともに導入口213より
2分間に亙って反応容器201内に導入した以外は実験
4におけると同様にして、複数種の電子写真感光体を作
成した。得られた電子写真感光体のそれぞれについて、
実験4で行ったのと同様にして評価を行った。得られた
評価結果を表8に示す。表8における「細線再現性」
「クリ−ニング性」「耐久性」「サ−ビス性」の評価基
準は次のとおりである。
【0095】細線再現性:白地に全面文字よりなる通常
の原稿を原稿台に置きコピーした時に得られた画像サン
プルを観察し、画像上の細線が途切れずにつながってい
るか評価した。但しこの時画像上のむらがある時は、全
画像領域で評価し一番悪い部分の結果を示した。 ◎ ・・・・ 良好。 ○ ・・・・ 一部途切れあり。 △ ・・・・ 途切れは多いが文字として認識できる。 × ・・・・ 文字として認識できないものもある。
【0096】クリーニング性:全面黒原稿、ハーフトー
ン原稿、全面文字の原稿を各10枚づつコピーを行な
い、クリーナーによるクリーニング性を評価した。 ◎ ・・・・ 良好。 ○ ・・・・ 一部小さなクリーニング不良が認められたが
ブレード清掃後治まった。 △ ・・・・ 筋状にクリーニング不良が数カ所認められた
が実用上支障無し。 × ・・・・ 全面クリーニング不良。
【0097】耐久性:上記の評価を行なった電子写真感
光体を複写機にいれ、1万枚通紙耐久後次のようにして
評価した。 ◎ ・・・・ いずれの項目においても初期と同等である。 ○ ・・・・ いずれか1つの項目において初期に比べ僅か
に劣化が認められた。 △ ・・・・ いずれかの項目において初期に比べかなりの
劣化が認められるが、実用上支障無し。 × ・・・・ 実用上支障がある劣化が認められた。
【0098】サービス性:ブレード傷によるクリーニン
グ不良か、分離爪摩耗による紙の分離不良が発生するま
で連続的に通紙耐久を行ない、通紙枚数を市場でのサー
ビスマンの出動実績と比較した。 ◎ ・・・・ 他の定期交換部品の補償枚数以上であった。 ○ ・・・・ 定期点検で充分対応可能な枚数であった。 △ ・・・・ サービスマンが定期点検以外に呼ばれる可能
性のある枚数であった。 × ・・・・ サービスが困難な枚数であった。
【0099】
【表7】
【0100】
【表8】 比較例1 図12及び図13に示す成膜装置を使用して、表9に示
す条件で柱状構造領域のないアモルファスシリコン電子
写真感光体を作成した。得られた感光体を使用して、実
施例4と同様にして評価を行った。評価結果を表8に示
す。
【0101】
【表9】 比較例2 RFプラズマCVD法を用いて表10に示す条件によ
り、図11に示す構成のアモルファスシリコン電子写真
感光体を作製した。図11において502はAl基体、
503は電荷注入阻止層、504は光導電層、504は
表面保護層をそれぞれ示している。ここでは図14に示
した成膜装置を使用して通常行われる手順によりAl基
体705上にアモルファスシリコン膜の形成を行ない電
子写真感光体を作製した。図14において、701は真
空容器、702はRF電源、703は原料ガス導入口、
706は放電空間、707は支持体、708絶縁体、7
09は回転シャフトである。得られた感光体は図15に
示す研磨装置801を用いて表面の研磨を行った。感光
体805を回転シャフト806にセットしてモ−タ−8
11により回転させた。回転する感光体805に粒径2
μmのシリカ粉末を分散させたノルマルヘプタン液を塗
布した研磨布807を押し当てて10分間研磨した。8
02は押し当て機構である。こうして得られた電子写真
感光体について、実施例4と同様にして評価を行った。
評価結果を表8に示す。
【0102】
【表10】 実施例5 実験4で使用した成膜装置を使用して、表11に示す条
件に従い、図5に示す4層構成の電子写真感光体を作製
した。柱状構造成長の核となるSi粉末の散布工程は、
104層を5μm堆積させた後、平均粒子径12μmの
Si粉末を圧力2.5×104Pa、流量800scc
mのArガスとともに導入口213より2分間に亙って
反応容器201内に導入して行った。細かい操作手順は
実験4に示したのと類似のものとした。得られた電子写
真感光体について、実施例4と同様にして評価を行っ
た。その結果、実施例4と同様に優れた特性を有するも
のであることが確認された。
【0103】
【表11】 実施例6 炭素原子の供給ガスとして、メタンガスに代えて、アセ
チレンガスを用い、実験4で使用した成膜装置を使用し
て、表12に示す条件に従い、図1に示す3層構成の電
子写真感光体を作製した。柱状構造成長の核となるSi
粉末の付着工程は104層を5μm堆積させた後、平
均粒子径8μmのSi粉末を圧力2.5104Pa、流
量800sccmのArガスとともに導入口213より
3分間に亙って反応容器201内に導入して行った。細
かい操作手順は実験4に示したのと類似のものとした。
得られた電子写真感光体について、実施例4と同様にし
て評価を行った。その結果、実施例4と同様にして評価
を行った。その結果、実施例4と同様に優れた特性を有
するものであることが確認された。
【0104】
【表12】 実施例7 実験4で使用した成膜装置を使用して、表7に示す条件
に従い、実施例4と同様の工程により基体上に堆積膜を
形成した。堆積膜形成後、図10に示される研磨装置を
使用して感光体表面の研磨を行った。図10に示される
研磨装置は、電子写真感光体をシャフトに取りつけてこ
れを回転させ、回転する電子写真感光体の表面に研磨液
413を供給して研磨を行う形態のものである。
【0105】まず研磨装置本体401中の研磨ユニット
402を上方に上げクランプ403により固定した後、
電子写真感光体405を支持体404と組み合わせ、シ
ャフト406に固定した。ついでクランプ403を緩
め、研磨ユニット402を下方に降ろし、研磨ローラー
407を電子写真感光体405に圧着した。研磨ローラ
ー407の表面の材質として布を用いた。この時、圧差
用のバネ409を調節して、研磨ローラー407を電子
写真感光体405に圧着させる圧力を10g/cm2
ニップ幅を10mmとした。
【0106】上部タンク408に蓄えられた、研磨材と
して平均粒径が8μmの炭化珪素を使用した研磨液41
3をバルブ414で流量を調節しながら、注入管415
を通して研磨ローラー407に滴下した。研磨液の滴下
と同時に、モーター410及び411を回転させ、研磨
を行なった。研磨ローラー407の回転速度は10mm
/min,被研磨部材である電子写真感光体405の回
転速度は300mm/secとして5分間の研磨を行な
った。以上のようにして研磨を終了した電子写真感光体
は、その表面をイオン交換水にて洗浄し、表面に残存し
ている研磨液を取り除き、続いて温度40℃の乾燥室に
て1時間放置して表面の水分を取り除いた。
【0107】こうして得られた電子写真感光体を実施例
4と同様の手順で評価した。その結果、実施例4の場合
と同様に、優れた電子写真感光体であることが確認でき
た。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電子写真感光体の一例を模式的に示す
模式図である。
【図2】本発明の電子写真感光体の一例を模式的に示す
模式図である。
【図3】本発明の電子写真感光体の一例を模式的に示す
模式図である。
【図4】本発明の電子写真感光体の一例を模式的に示す
模式図である。
【図5】本発明の電子写真感光体の一例を模式的に示す
模式図である。
【図6】本発明の電子写真感光体における光の入射行路
及び反射行路を模式的に示す模式図である。
【図7】本発明の電子写真感光体を製造するのに使用可
能な成膜装置の一例を示す模式図である。
【図8】本発明の電子写真感光体を製造するのに使用可
能な成膜装置の一例を示す模式図である。
【図9】研磨装置を示す模式図である。
【図10】研磨装置を示す模式図である。
【図11】従来の電子写真感光体を模式的に示す模式図
である。
【図12】マイクロ波プラズマCVD装置の一例を示す
模式図である。
【図13】マイクロ波プラズマCVD装置の一例を示す
模式図である。
【図14】RFプラズマCVD装置を示す模式図であ
る。
【図15】研磨装置を示す模式図である。
【符号の説明】
101 本発明による電子写真感光体の断面 102,502 基体 103 電荷注入阻止層 104 光導電層 105 表面保護層 110 柱状構造の領域 111 柱状構造の核 201,601,701 反応容器 202,602 マイクロ波導入管 203,603 導波管 204,604,704 排気管 205,605,705 基体 206,606,706 放電空間 207,607,707 ヒーター 209,609,709 回転軸 210,610,710 モーター 211 直流電源 212 バイアス電極 213 粒子導入口 301,401,801 研磨装置 302,402 研磨ユニット 303,403 クランプ 304,404 支持体 305,405,805 電子写真感光体 306,406,806 シャフト 307 圧接ローラー 308 研磨テープ 309,409 バネ 310,410 モーター 311,411,811 モーター 407 研磨ローラー 408 タンク 413 研磨液 414 バルブ 415 注入管 501 従来の電子写真感光体の断面 503 電荷注入阻止層 504 光導電層 505 表面保護層 702 RF電極 703 原料ガス導入管 708 絶縁がいし 802 押し当て機構 807 研磨布
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭61−295567(JP,A) 特開 昭62−83753(JP,A) 特開 昭62−83754(JP,A) 特開 昭61−295568(JP,A) 特開 平2−76117(JP,A) 特開 平4−121759(JP,A) 特開 平4−191749(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G03G 5/08

Claims (15)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 電子写真感光体用の基体と、該基体上に
    設けられた珪素原子を含有する非単結晶材料で構成され
    た光受容層と、からなる電子写真感光体であって、前記
    光受容層が、該層の内部に位置する複数の核を起点とし
    て該層の層厚方向に実質的に平行な柱状構造の領域を5
    個/cm2乃至500個/cm2の密度で有することを特
    徴とする電子写真感光体。
  2. 【請求項2】 前記核を構成する材料は、結晶性材料で
    ある請求項1に記載の電子写真感光体。
  3. 【請求項3】 前記柱状構造の領域の直径は、1μm乃
    至300μmの範囲にある請求項1に記載の電子写真感
    光体。
  4. 【請求項4】 前記核は前記光受容層の前記基体側の界
    面位置から1μm以上の位置に設けられる請求項1に記
    載の電子写真感光体。
  5. 【請求項5】 前記光受容層を構成する前記非単結晶材
    料は、珪素原子に対して炭素原子を2.0原子%乃至2
    5原子%の範囲で含有する請求項1に記載の電子写真感
    光体。
  6. 【請求項6】 前記光受容層を構成する非単結晶材料
    は、珪素原子に対して弗素原子を2.0ppm乃至90
    ppmの範囲で含有する請求項1に記載の電子写真感光
    体。
  7. 【請求項7】 減圧にし得る反応容器内に珪素原子を含
    有するガスを導入し、前記ガスにマイクロ波エネルギ−
    を供給して、前記反応容器内の放電空間内にプラズマを
    生起させ、前記反応容器内に配された基体上に珪素原子
    を含有する非単結晶材料で構成された光受容層を形成し
    て電子写真感光体を製造する方法であって、(i)前記
    光受容層の一部を形成し、(ii)形成された層の表面に、
    柱状構造の領域を形成する起点となるシリコン原子を含
    有した粉末で形成されている複数の核を安定した状態で
    付着させ、(iii)前記複数の核を付着させた層表面上に
    前記(i)の工程を行い、前記複数の核を起点として該
    層の成長方向に実質的に平行な柱状構造の領域を5個/
    cm2乃至500個/cm2の密度で形成することを特徴
    とする電子写真感光体の製造方法。
  8. 【請求項8】 前記核を構成する材料は、結晶性材料で
    ある請求項7に記載の電子写真感光体の製造方法。
  9. 【請求項9】 前記柱状構造の領域の直径は、1μm乃
    至300μmの範囲にある請求項7に記載の電子写真感
    光体の製造方法。
  10. 【請求項10】 前記核は前記光受容層の前記基体側の
    界面位置から1μm以上の位置に配置させる請求項7に
    記載の電子写真感光体の製造方法。
  11. 【請求項11】 前記光受容層を構成する前記非単結晶
    材料は、珪素原子に対して炭素原子を2.0原子%乃至
    25原子%の範囲で含有する請求項7に記載の電子写真
    感光体の製造方法。
  12. 【請求項12】 前記光受容層を構成する前記非単結晶
    は、珪素原子に対して弗素原子を2.0ppm乃至90
    ppmの範囲で含有する請求項7に記載の電子写真感光
    体の製造方法。
  13. 【請求項13】 前記核を構成する材料を帯電させて前
    記反応容器内に導入する請求項7に記載の電子写真感光
    体の製造方法。
  14. 【請求項14】 前記帯電はコロナ帯電である請求項1
    3に記載の電子写真感光体の製造方法。
  15. 【請求項15】 前記核の前記層表面への付着は、1V
    /cm〜100V/cmの電界のもとで行われる請求項
    13に記載の電子写真感光体の製造方法。
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