JP2004191552A - 電子写真感光体の製造装置 - Google Patents

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Shigenori Ueda
重教 植田
Makoto Aoki
誠 青木
Tomohito Ozawa
智仁 小澤
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Abstract

【課題】高速で大面積の基体を均一にプラズマ処理して、膜厚、膜質、表面性が均一で欠陥のない堆積膜を形成し得る電子写真感光体の製造装置を提供する。
【解決手段】減圧可能な縦型の反応容器102内に設置された円筒状基体101の表面に、少なくともシリコンを含む非単結晶材料からなる堆積膜を形成する、電子写真感光体の製造装置において、反応容器102内には、高周波電力の印加が可能な高周波電極104と、反応容器102の底面117と円筒状基体101の下部との間に位置し、複数の開口部を有する誘電体材料からなる遮蔽板118が設けられている。この遮蔽板118は、底面117付近の塵や剥離した膜片が浮遊して円筒状基体101に付着することを防ぐ。高周波電極104には、異なる周波数の複数の高周波電力が同時に供給される。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プラズマを用いた真空処理、特にプラズマCVD(Chemical VaporDeposition)法による堆積膜形成に適した、電子写真感光体の製造装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、半導体デバイス、電子写真感光体、画像入力用ラインセンサー、撮影デバイス、光起電力デバイス等を形成するための真空処理方法として、プラズマCVD法、イオンプレーティング法、プラズマエッチング法など、高周波電力により生成されるプラズマを利用する真空処理方法が知られており、そのための装置も数多く実用化されている。
【0003】
例えば、プラズマCVD法を用いた堆積膜形成方法、つまり、高周波電力のグロー放電により原料ガスのプラズマを生成し、その分解種を基板上に堆積させることによって堆積膜を形成する方法がある。この方法を用いた場合、例えば、原料ガスにシランガスを用いることで、アモルファスシリコン薄膜を形成することが可能である。また、近年では、堆積膜形成速度が速く、高品質の堆積膜が得られる、VHF帯の高周波電力を用いたプラズマCVD法が注目されている(特許文献1参照)。プラズマCVD法によるアモルファスシリコン薄膜の形成方法の概要に関して、アモルファスシリコンを母材とした電子写真用感光体の製造工程を例にとって説明する。
【0004】
図5は、プラズマCVD法を用いて、アモルファスシリコンを母材とした電子写真用感光体を形成する装置を示している。この装置は、円筒状基体501を内包できる減圧可能な反応容器502、反応容器502内に原料ガスを供給するためのガス導入管503、および原料ガスを分解するための電力を導入する高周波電極504を有する真空処理手段500と、反応容器502内に原料ガスを供給する不図示のガス供給手段と、反応容器502内を排気する不図示の排気手段と、高周波電極504に電力を供給する電力供給手段505とを含むものである。
【0005】
その構成についてもう少し詳細に説明すると、真空処理手段500の反応容器502内には、円筒状基体501を支持するための基体支持体506と、基体支持体506に内蔵されたヒーター(不図示)と、ガス導入管503と、電力分岐部513により連結された複数の高周波電極504が配置されている。反応容器502は、上部のシールド514と底面517によって密閉可能になっている。反応容器502の内部は、底面517に接続された排気管507を通じて、外部の排気手段に接続されている。基体支持体506は、モーター511から減速ギア512を介して接続されている回転軸510に取り付けられている。複数の高周波電極504につながっている電力分岐部513には、高周波電源508が、マッチングボックス509を介して接続されている。電力分岐部513は、電磁波を実質的に閉じ込めるシールド514内に、シールド514とは電気的に絶縁された状態で設置されており、すなわち、絶縁体を介して反応容器502に固定された構成になっている。ガス導入管503には、図示しないガス供給手段が接続されている。
【0006】
この装置を用いて電子写真感光体を製造する場合、まず、反応容器502内の基体支持体506に円筒状基体501を設置し、不図示の排気手段によって、底面517に設けられた排気管507から反応容器502内の空気を吸引し、所望の真空度まで排気する。その後、不図示のガス供給手段によって、不活性ガス、例えばArガスを、ガス導入管503から所定の流量で反応容器502内に供給する。排気手段の排気速度を調整することによって、反応容器502内を所定の圧力に制御した後に、基体支持体506に内蔵されたヒーター(不図示)によって円筒状基体501を所定の温度まで加熱する。
【0007】
円筒状基体501が所定の温度になったら、反応容器502内のArガスを、不図示の排気手段によって吸引し、反応容器502内を、例えば0.1Paの真空度まで排気する。続いて、不図示のガス供給手段によって、反応容器502内に、SiH、H、B、PH、CH、NO等の原料ガスを、所定の流量で供給する。排気手段の排気速度を調整することにより、反応容器502の内圧を所望の圧力に制御する。反応容器502の内圧が安定したところで、高周波電源508からマッチングボックス509および電力分岐部513を介して、各高周波電極504に電力を供給し、反応容器502内にグロー放電を生起させる。この放電エネルギーによって、反応容器502内に導入された原料ガスが分解され、円筒状基体501上に堆積膜が形成される。堆積膜が所望の膜厚に到達したら、高周波電極504への電力供給を停止し、原料ガスの供給を停止して、堆積膜の形成を終える。なお、堆積膜形成中、円筒状基体501はヒーターによって、堆積膜形成に必要な所定の温度に保持され続ける。
【0008】
以上説明したのと同様の作業を複数回繰り返して行うことによって、複数の堆積膜を円筒状基体501に形成して、多層構造を持つ電子写真感光体を形成することができる。
【0009】
VHF帯およびその近傍の周波数の高周波電力を用いてプラズマを生成し真空処理を施すことにより、真空処理速度の向上および真空処理特性の向上が達成可能である。しかしながら、このような周波数帯の高周波電力を用いた場合、反応容器502内での高周波電力の波長が、反応容器502、高周波電極504、円筒状基体501、基体支持体506等と同程度の長さになり、反応容器502中で高周波電力が定在波を形成してしまうことがある。この定在波によって、反応容器502内では、場所ごとに電力の強弱が生じ、プラズマ特性が異なってしまう。その結果、円筒状基体501の表面における堆積膜の膜厚はほぼ均一であっても、その膜質に不均一が生じ、特に電子写真感光体のように円筒状基体501の表面積が大きい場合には、特性ムラが生じ、真空処理特性を広い範囲で均一にすることは困難である。
【0010】
このような問題を解決するために、周波数の異なる複数の高周波電力を反応容器502内に同時に供給することが考えられる。これによって、反応容器502内には各周波数に応じた波長の異なる複数の定在波が形成されるが、これらの定在波は同時に供給されているので、複数の定在波が合成され、結果として明確な定在波が存在しなくなる。このような考えに基づけば、複数の高周波電力の周波数は互いに異なりさえすれば、どのような値であっても定在波抑制効果が得られる。
【0011】
例えば、10MHz以上の高周波電力と1MHz以下の高周波電力とを、同一の電極に供給する構成が開示されている(特許文献2参照)。しかしながら、このように両電力の周波数が1桁以上も異なってしまうと、原料ガスの分解の仕方が変わり、生成される活性種の種類や比率が異なってしまう。このため、電界強度的には均一化がなされても、10MHz電力による電界定在波の腹部分では、その周波数に応じた種類と比率の活性種が生成され、1MHz電力による電界定在波の腹部分では、10MHz電力による電界定在波の腹部分とは異なった種類と比率の活性種が生成されてしまう。その結果、活性種の種類と比率に空間的なばらつきが生じてしまい、真空処理特性を不均一にしてしまう場合がある。
【0012】
真空処理中の異物の付着防止に関しては、蒸着装置に落し蓋やカバーや遮蔽板などを設けることによって蒸着物の飛散を防止する技術が開示されている(特許文献3および特許文献4参照)。またスパッタ装置において、ウエハーの位置よりも低い位置に、ウエハーの外径よりも小さい防着板を設けることによって、ウエハーに対する異物の付着を防止する技術が開示されている(特許文献5参照)。
【0013】
【特許文献1】
特開平9−310181号公報
【特許文献2】
特開昭60−160620号公報
【特許文献3】
特開平5−339709号公報
【特許文献4】
特開平5−339710号公報
【特許文献5】
特開平7−126832号公報
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
前記した従来の装置および方法により、良好なプラズマ処理や堆積膜形成が行えるが、電子写真感光体などの製品に対する市場の要求レベルは日々高まっており、より高品質の製品が生産可能なプラズマ処理及び堆積膜形成方法が求められている。例えば、電子写真感光体の場合、電子写真装置のプロセススピード向上、小型化、低価格化等の要求が非常に高いため、これらを実現可能な感光体の特性、具体的には、帯電能および感度等の向上や、感光体製造時の良品率(歩留まり)の向上が不可欠となっている。また、近年目覚しい普及を見せているデジタル電子写真装置やカラー電子写真装置においては、文字原稿のみならず、写真、絵、デザイン画等のコピーも頻繁に行われるため、従来以上に、画像欠陥の低減や画像濃度ムラの低減が求められている。
【0015】
しかしながら、本発明者らが、前記した公報に開示された技術を実施して真空処理特性の均一性に関する実験を行った結果、確かにある程度均一性が向上できるものの、近年要求されているレベルの均一性を得るには至らなかった。すなわち、電界強度的には均一化されているはずの電力供給方法を利用しても、実際の真空処理においては不均一性が残ってしまう場合がある。
【0016】
また、電子写真感光体のさらなる高画質化への課題として、前記した真空処理特性の均一性の問題の他に、微小な画像欠陥の問題が挙げられる。微小な画像欠陥とは、一面の黒地(黒ベタ)を形成したときに、円形の白抜け(白ポチ)などの画像欠陥が発生する現象である。この画像欠陥の原因は、堆積膜形成前の円筒状基体501(図5参照)の表面上、または堆積膜形成途中の堆積膜上に、数μm〜数十μmの大きさの塵や剥離した堆積膜の小片(膜片)が付着し、これらを核として、堆積膜表面に向かって柱状や逆円錐状の異常成長部(球状突起)が発生することである。
【0017】
この球状突起の発生するメカニズムについて説明する。円筒状基体501の表面上に欠陥が存在すると、その部分でのプラズマ中の電位が変化するため、その近傍のプラズマ空間で生成または輸送される活性種が異なってくる。また、このような欠陥のために、活性種の円筒状基体501の表面での運動が阻害され、堆積膜形成時の表面反応も異なってくる。そのため、従来の電子写真感光体の製造工程において、堆積膜の、この欠陥部を核として成長した部分は、他の正常な部分とは性質が異なり、電子写真的に不十分な部分、特に暗抵抗の小さな部分となる。すなわち、電子写真用感光体を電子写真装置に用いる場合には、主帯電器により堆積膜表面に均一に帯電を行い、生じた表面電荷のクーロン力によりトナー像を形成するが、正現像の場合、球状突起の周辺に帯電された表面電荷は、前記した暗抵抗の小さな部分を通り抜けて速やかに円筒状基体501に到達してしまうため、その部分だけ、トナーを引き付けることができない。これが、黒ベタの画像中では、球状突起の位置に対応した白点(白ポチ)状の画像欠陥として現れ、画像品質を著しく低下させてしまう。また、球状突起が電子写真感光体表面に存在すると、繰り返しのコピーを行った場合に残留トナーを回収するクリーナーブレードを破損したり劣化を著しく早める要因となり、感光体表面のクリーニング不良を引き起こす場合がある。
【0018】
このような不具合を引き起こす球状突起が発生する1つの要因である、前記した堆積膜形成前の円筒状基体501の表面に付着する塵に関しては、反応容器502内部や反応容器502周辺を清浄にする(クリーン度を向上させる)等の対策がなされている。
【0019】
次に、球状突起が発生する他の要因である、堆積膜形成途中に発生する、剥離した膜片に関して説明する。電子写真用感光体の堆積膜は、大面積の円筒状基体501の表面に数μm〜数十μmの膜厚で複数の層を積層することによって形成されるが、このとき、反応容器502の内壁面にも堆積膜が形成され、形成途中でこの堆積膜に微小な剥離が発生する。こうして剥離した膜片は、反応容器502内を飛散して、堆積膜形成途中の円筒状基体501の表面に付着しやすい。従って、不具合を引き起こす球状突起の発生を抑制するためには、膜片の飛散を防止することが重要である。
【0020】
以上説明したように、従来の装置においては、反応容器502内のプラズマ強度分布の不均一と、反応容器502内の原料ガスおよび活性種の分布の不均一が原因で、形成される堆積膜の膜厚および膜質が不均一になってしまうという問題と、堆積膜形成途中に反応容器502の内壁面から剥離した膜片が飛散して、堆積膜形成途中の円筒状基体501に付着し、堆積膜が異常成長して画像欠陥の原因になるという問題とがある。これらの問題は、円筒状基体501が長いほど顕著であり、また、同一の反応容器502内に、複数個の円筒状基体501を配置して堆積膜を形成する場合に顕著である。さらに、生産効率を上げるために堆積膜形成速度を速くした場合には、前記した通り堆積膜の膜厚および膜質が不均一になりやすい。
【0021】
このようにプラズマCVD法の制御技術が開発されてきているものの、電子写真用感光体のような、大面積で比較的長尺の円筒状基体に堆積膜を形成する場合には、前記した堆積膜の膜厚および膜質の均一性の問題があるため、成膜条件が必然的に制限されてしまう。感光体特性の向上を目指し、電子写真感光体の形成条件や層構成の最適化もなされているが、特に、画像欠陥の低減や、膜厚および膜質の均一化という点で、電子写真感光体の製造装置および製造方法には未だ改善の余地が残されているのが現状である。
【0022】
そこで本発明の目的は、前記した従来の問題点を克服し、従来のプラズマCVD工程では達成できなかった処理速度で、大面積の基体を均一にプラズマ処理することを可能にし、膜厚、膜質、表面性のいずれも極めて均一で、欠陥のない堆積膜を高速で形成し得る電子写真感光体の製造装置を提供することにある。
【0023】
【課題を解決するための手段】
前記した目的を達成するために、本発明は、減圧可能な縦型の反応容器内に設置された円筒状基体の表面に、少なくともシリコンを含む非単結晶材料からなる堆積膜を形成する、電子写真感光体の製造装置において、反応容器内には、高周波電力の印加が可能な高周波電極と、反応容器の底面と前記円筒状基体の下部との間に位置し、複数の開口部を有する誘電体材料からなる遮蔽板が設けられていることを特徴とする。
【0024】
ここで、このような構成の装置を発明するに至った経緯について説明する。
【0025】
本発明者らは、前記した従来の問題点について鋭意検討した結果、VHF帯ならびにその近傍の高周波電力においては、プラズマの分布状態が電極の大きさや放電条件に対して敏感に反応し、反応容器内の高周波電力の波長が反応容器や高周波電極や円筒状基体や基体支持体等と同程度の長さとなるため、定在波の影響が生じて、プラズマ特性の分布が不均一になりやすく、その結果として処理ムラが発生することがわかった。また、VHF帯の高周波電力を使用したプラズマ処理では、表皮効果に起因した電極の表面インピーダンスの問題も顕在化する。すなわち、VHF帯のように周波数が高くなると、高周波電流は導体表面付近のみを流れるようになり、電極表面におけるジュール損が大きくなって、電力効率が低下するとともに、伝搬経路の長さの相違によるプラズマ密度の不均一の問題も生じる。さらに、電極の表面インピーダンスは、電極表面の粗さや汚れ等に左右され、一様な表面インピーダンスを達成することは困難である。そして、前記したようなプラズマ密度の不均一は、表面処理の不均一をもたらすことになる。
【0026】
このような処理ムラを低減して均一性を上げるべく、従来から電極の形状や高周波電力の導入形態などの様々な改良がなされてきたが、膜厚の均一性と膜質の均一性を両立すること、ならびに、これらの均一性を維持したまま良好な膜質の堆積膜を得るのは容易ではなかった。特に、電極形状など装置の改良で膜圧および膜質の均一性を得ようとした場合、複数の層が積層された構成の積層体では、特定の層では有効な方法であっても、その他の層では充分な効果が得られないことがある。したがって、各層の形成条件が異なる複数の層を有する積層体を形成する際に、膜圧および膜質の均一性を保つための、簡便で効果的な方法が求められていた。
【0027】
そこで、これらの課題を解決し、プラズマの均一化と、それに基づくプラズマ処理の均一化を達成する方法を検討した結果、周波数の近接した複数の高周波を同一の電極に供給し、それらの高周波の電力比率を適切に設定することによって、基体表面内での膜厚および膜質の均一性が格段に向上することが、実験により明らかになった。以下、プラズマの均一化およびそれに基づくプラズマ処理の均一化を達成するために行った実験と、それによって得られた知見を述べる。
【0028】
まず、図5に示されている装置を用いて、高周波電源508より出力された高周波電力をマッチングボックス(整合回路)509を通して高周波電極504に印加し、高周波電極504とそれに対向する円筒状基体501との間の高周波電界によりプラズマを生起させることによって、円筒状基体501にプラズマ処理(a−Si膜の堆積)を行った。電子写真感光体に用いられる円筒状基体501は、通常350mm程度の長さであるため、必然的に、高周波電極504は350〜400mm程度の長さである。
【0029】
このプラズマ処理工程において、例えば、高周波電極504に供給される高周波電力の周波数を、13.56MHzから100MHzに変更すると、その波長λは大気中では約22mから3mに変化する。高周波電極504上の1点から導入された高周波電力は、高周波電極504の表面を伝播して反対側に到達するが、その伝播距離がλ/10以上になると、定在波の影響により高周波電極504上で電界のばらつきが生じる。つまり、100MHzの高周波電力を供給する場合には、この電界のばらつきの影響から、放電空間内の電界ムラが生じ、軸方向にプラズマ特性の不均一性がみられ、それに対応して堆積膜の特性も不均一になることが観測された。
【0030】
さらに、装置構成や電子写真感光体の製造条件によっては、反応容器502内部の塵や膜片などの量の分布に関係なく、電界の弱い部分に画像欠陥の集中が観察された。これは、反応容器502内の塵や膜片などが電界ムラに伴って円筒状基体501の表面に引き寄せられる吸着作用によるものと考えられる。
【0031】
そこで、このような高周波電極504上の電界ムラによる不均一性を解消し、高周波の定在波をプラズマ特性のムラに反映させないようにするために、図6に示すように、周波数は異なるが比較的近接する複数の高周波電力を高周波電極に同時に供給可能な装置を用いた実験を行った。この装置は、図5に示す装置とは電力供給手段405のみが異なっており、それ以外の構成は全く同じであるので同一の符号を付与し説明を省略する。図6に示す装置の電力供給手段405では、それぞれ異なる発振周波数f1,f2の2つのVHF電源408,415が、マッチングボックス409,416を介して、電力分岐部513に接続されており、2つのVHF電源408,415からマッチングボックス409,416を介して供給した高周波電力を、電力分岐部513にて合成して、高周波電極504から反応容器502内に供給する構成になっている。
【0032】
この装置を用いて実験を行った結果、それぞれの周波数において発生するはずの局所ムラが緩和されることが判明した。しかし、画像欠陥に関しては、定在波の局所ムラが緩和され電界ムラがなくなったことによって、塵や膜片などが円筒状基体501の特定の部位に吸着される現象はなくなったものの、装置構成や電子写真感光体の製造条件によっては、反応容器502内の塵や膜片の分布に対応して、これらが円筒状基体501の表面に付着して画像欠陥となる場合があった。この画像欠陥は、特に、円筒状基体501の鉛直方向下部に集中して発生する傾向があった。このように円筒状基体501の下部に集中する画像欠陥に関して検討を行った結果、以下のような現象により画像欠陥の集中が発生することが判明した。
【0033】
円筒状基体501に堆積膜を形成する場合、縦型反応容器502内の、円筒状基体501以外のプラズマと接する部位でも堆積膜が形成されるが、それについては特に考慮されず、投入される高周波電力量や円筒状基体501の加熱条件など堆積膜の形成条件は、円筒状基体501に堆積する膜の膜質や応力のみを考慮して設定されている。そのため、円筒状基体501以外に堆積する膜の膜質や応力は円筒状基体501に堆積する膜とは異なる。その結果、堆積膜形成中の温度変化や積層条件や堆積膜の膜厚増加に伴い、膜の応力により、円筒状基体501以外に堆積する膜の微小な剥離が発生する。この微小な剥離により発生した膜片が、縦型反応容器502の下部に設けられた排気手段の排気方向に吸引されて、縦型反応容器502の底面517に降り積もる。さらに、この降り積もった膜片が、原料ガスの供給や排気に伴うガスの流れによって、滞留したり飛散して円筒状基体501の下部に付着する場合がある。さらに、縦型反応容器502の底面517に直接堆積した膜の剥離に加えて、底面517に降り積もった膜片の上にさらに堆積膜が形成され、その膜片上に堆積する膜はより剥離しやすい状態であるため、円筒状基体501の下部に付着する膜片が加速的に増加してしまう場合があることが確認された。
【0034】
そこで、縦型反応容器502の底面517に膜片が降り積もった状態や、底面517に堆積した膜が底面517を構成する材料との応力差により剥離した状態で、膜片が円筒状基体501の周囲に飛散して表面に付着することを防止する手段を検討した結果、円筒状基体501を支持する基体支持体506の下端面と反応容器502の底面517との間に遮蔽板を設けるのが効果的であることが判明した。
【0035】
前記した遮蔽板は、誘電体材料で構成され、複数の開口部が設けられており、各開口部の開口面積が0.8mm以上80mm以下であり、反応容器の底面と接触しないように配設された場合に、本発明の効果が顕著であった。
【0036】
遮蔽板が誘電体材料からなることにより、プラズマ空間を遮蔽せずに従来の最適なプラズマ空間を維持することが可能である。特に、誘電体材料としてアルミナセラミックを用いてその表面を適度に粗くすることより、堆積膜の密着性が向上して、遮蔽板に堆積した堆積膜の剥離を防止することが可能である。これに対し、遮蔽板を金属から構成した場合には、遮蔽板の位置でプラズマが遮断され、プラズマの均一性や安定性が損なわれたり、熱膨張によって遮蔽板からの堆積膜剥離が発生する場合がある。
【0037】
遮蔽板の各開口部の開口面積が0.8mmよりも小さいと、開口部に堆積した堆積膜によって開口部が塞がって反応容器を所定の圧力に維持することが困難になる場合や、反応容器上部で発生した膜片が遮蔽板の開口部を通過せずに遮蔽板自体に降り積もる場合がある。堆積膜の膜質向上および再現性向上や画像欠陥の防止という観点から、遮蔽板の各開口部の開口面積は0.8mm以上であることが望ましい。また、各開口部の開口面積が80mmよりも大きい場合には、反応容器の底面から飛散する膜片を遮蔽する効果が損なわれ、膜片が遮蔽板を通過して円筒状基体に到達する場合がある。画像欠陥を防止する観点から、遮蔽板の各開口部の開口面積は80mm以下であることが望ましい。また、遮蔽板全体の面積に対する開口部全体の面積の比率、すなわち開口率が、30%以上70%以下の範囲であることが好ましい。開口率が30%よりも小さいと、遮蔽板自体に膜片が降り積もり膜片の飛散を防止する効果が損なわれる場合があり、逆に開口率が70%より大きいと、反応容器の底面から飛散する膜片を遮蔽する効果が損なわれる場合があるからである。
【0038】
反応容器の底面と遮蔽板との間隔は、この間隔に膜片が存在してトラップされ得る範囲、すなわち1mm以上であることが望ましい。間隔が1mmよりも狭いと、反応容器の底面と遮蔽板との間隔に膜片をトラップする効果が損なわれる場合がある。この間隔の上限に関しては、装置形態により異なるが電子写真感光体を均一に製造可能な範囲内であればよいが、間隔を広げ過ぎると装置の大型化や原料ガスの利用効率の低下につながるため、間隔は1mm以上の範囲でできるだけ狭い方がよい。
【0039】
なお、本発明の装置における底面とは、縦型の反応容器において、プラズマ空間のプラズマと接する鉛直方向の最下面を指す。図示する例では、反応容器下部に設けられた排気手段と一体化された底面であるが、基体保持体に保持された円筒状基体の下方に、プラズマを遮断する目的で金属メッシュやパンチング板などのプラズマ遮断手段(不図示)が設けられている場合には、そのプラズマ遮断手段がプラズマと接する最下面となる。
【0040】
本発明において、このような反応容器内への複数の高周波電力の供給は、同一の高周波電極から行う必要がある。異なる周波数の高周波電力を各々別の電極から供給した場合には、電極ごとに高周波電力の周波数に依存した定在波が生じてしまい、電極近傍のプラズマ特性は、この定在波に応じたばらつきが生じてしまい、生成活性種の種類および比率やイオンのエネルギーが位置によって異なってしまう。
【0041】
本発明において、電極に供給する複数の高周波電力の関係、すなわち、複数の高周波電力の周波数や電力比率は、実際に真空処理特性の均一性を確認しながら決定すればよいが、それぞれの高周波電力の周波数の差があまりにも小さいと、実質的に同一周波数の高周波電力を印加した場合と同様の状態になってしまい、各々の定在波の節位置および腹位置が近いため十分な定在波抑制効果が得られなくなってしまう。また、周波数の差が大きすぎると、周波数が小さい方の高周波電力の高周波電界定在波の波長が、周波数が大きい方の高周波電力の高周波電界定在波の波長に対して大きすぎて、これもまた十分な定在波抑制効果が得られない。また、本発明においては、電極に供給する複数の高周波波電力は、周波数が10MHz以上250MHz以下の高周波電力を少なくとも2つ含むことが本発明の効果を得る上で必要である。周波数が10MHzより低くなると、高速な処理速度を得ることが困難になる。より好ましくは30MHz以上とすることが堆積速度の点で好ましい。一方、周波数が250MHzよりも高くなると、高周波電力の進行方向への減衰が顕著となって、周波数の異なる高周波電力との減衰率のずれが顕著となってしまい、十分な均一化効果が得られなくなってしまう。250MHz以下にすることで重畳効果が有効に得られる。
【0042】
電極に供給する複数の高周波電力の電力比率に関しては、前記の通り10MHz以上250MHz以下周波数の2つの高周波電力を供給する場合、第1の高周波電力をP1、これより周波数の低い第2の高周波電力をP2としたときに、電力の総和(P1+P2)に対する第2の高周波電力P2の比率を0.1以上0.9以下の範囲とすることが、本発明の効果を得る上で好ましい。第2の高周波電力が電力の総和に対してこの範囲よりも小さいと、高周波電界は第1の高周波電力に起因する成分が支配的となってしまい定在波抑制効果がみられない。一方、第2の高周波電力を大きくするに従って、第2の高周波電力が反応容器中での原料ガス分解に及ぼす影響が高まり、第2の高周波電力を単独で用いた場合に近くなり、定在波抑制効果が小さくなる。したがって、少なくとも一方の高周波電力が、2つの合計電力に対して10%以上にすることが定在波抑制効果を確実に得るうえで必要である。
【0043】
以上のように2つの高周波電力を組み合わせた場合に本発明の効果は十分に得られるが、さらに第3の高周波電力を組み合わせることも可能である。第3の高周波電力の範囲としては、第1,第2の高周波電力が適切な範囲に設定されている限りにおいては特に制限はないが、以下のようにすることができる。
【0044】
第3の高周波電力(周波数f3、電力P3)が、f1,f2と同様に10MHz以上250MHz以下の範囲にある場合には、第1の高周波電力(P1,f1)、第2の高周波電力(P2,f2)を組み合わせた場合と同様のメカニズムが期待できる。このとき、P1〜P3の中で、電力値の上位2つをP1,P2と再定義すれば、P3は最も電力値が低いことになる。この場合には、P3によるマッチング不整合が起こりにくく、かつP3による定在波抑制効果が加わるため、P1,P2を組み合わせた場合よりもさらにムラが抑制される。
【0045】
また、少なくとも一部が誘電体で形成された反応容器の外側に高周波電極を配置することにより、真空処理特性の均一性をさらに向上することができる。これは、高周波電極上に若干の電界分布が残っていても、高周波電極とプラズマの間に誘電体が位置することにより、この誘電体の緩衝作用により高周波電極上の若干の電位分布が軽減され、均一性が向上するものと考えられる。
【0046】
また、本発明においては、被処理物が円筒状の場合により大きな効果を得ることができる。これは、被処理物が円筒状の場合、被処理物上の高周波電力の反射端は被処理物の両端に限定されることによるものと推測される。多くの反射端が存在し、それに応じた多くの定在波が生じる場合に比べ、定在波の腹位置での電界強度が高く、他の周波数の電力によって生じる定在波の節位置、即ち電界強度の低い部分を効果的に補うことが可能となるためと推測される。
【0047】
また、本発明においては、生産性向上のために、反応容器内に複数の基体支持体を設置してもよい。ただし、複数の基体支持体を設置する場合においては、反応容器が円筒状であり、かつ、各高周波電極とガス供給管と各基体支持体が、反応容器と同一の中心軸をもつ円周上にそれぞれ等間隔に配置されることによりより顕著な効果を得ることができる。これは、基体支持体、反応容器、高周波電極の位置関係を極力対称に配置することにより、各基体に対する処理均一性が向上するためと推察される。
【0048】
本発明の構成は、電子写真感光体ならびにその製造の場合により効果的である。電子写真感光体は、大面積の基体への堆積膜形成が必要であり、さらにその全領域にわたって構造欠陥が存在しない必要がある。そのため本発明によれば、基体上に膜厚、膜質共に均一で良好な特性の堆積膜を得ることができるため電子写真特性の向上ならびに生産性の向上に伴うコスト低減の上で極めて効果的である。
【0049】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0050】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態の電子写真感光体の製造装置であるアモルファスシリコン感光体製造装置が図1に示されている。なお、図1(a)はこの製造装置の概略断面図、図1(b)は図1(a)のA−A’線断面図である。
【0051】
本実施形態の製造装置は、図6に示す従来の装置に遮蔽板118を付加した構成であり、それ以外の構成要素は実質的に同様である。また、この製造装置を用いた堆積膜形成方法は、電力供給手段による電力供給方法が規定されている以外は、図6に示す装置を用いた従来の方法と実質的に同様であり、前記した通り遮蔽板118が付加されていることによって、従来にない格別の効果が得られるものである。
【0052】
本実施形態の製造装置は、円筒状基体101を内包できる減圧可能な反応容器102、反応容器102内に原料ガスを供給するためのガス導入管103、および原料ガスを分解するための電力を導入する高周波電極104を有する真空処理手段100と、反応容器102内に原料ガスを供給する不図示のガス供給手段と、反応容器102内を排気する不図示の排気手段と、高周波電極104に電力を供給する電力供給手段105とを含むものである。
【0053】
真空処理手段100の反応容器102内には、反応容器102の中心部に位置し、円筒状基体101を支持するための1つの基体支持体106と、基体支持体106に内蔵されたヒーター(不図示)と、ガス導入管103と、電力分岐部113により連結された複数の高周波電極104が配置されている。反応容器102は、上部のシールド114と底面117によって密閉可能になっている。反応容器102の内部は、底面117に接続された排気管107を通じて、外部の排気手段に接続されている。基体支持体106は、モーター111から減速ギア112を介して接続されている回転軸110に取り付けられている。複数の高周波電極104につながっている電力分岐部113には、それぞれ異なる発振周波数f1,f2を有する2つのVHF電源(高周波電源)108,115が、マッチングボックス109,116を介して接続されている。電力分岐部113は、電磁波を実質的に閉じ込めるシールド114内に、シールド114とは電気的に絶縁された状態で設置されており、すなわち、絶縁体を介して反応容器102に固定された構成になっている。なお、放電初期の真空処理安定性を向上するために、電力分岐部113と高周波電極104とはコンデンサーを介して接続してもよい。ガス導入管103には、図示しないガス供給手段が接続されている。
【0054】
基体支持体106の下端と底面117の間には、複数の開口部118aを有する遮蔽板118が設けられている。遮蔽板118は、誘電体材料からなり、底面117と接しない位置に設けられている。遮蔽板118と底面117との間隔は、装置構成によって異なるが、円筒状基体101の下方に位置する基体支持体106の下端から底面117までの距離によって決まり、遮蔽板118の上面が基体保持体106の下端面と接する場合に間隔は最大になる。
【0055】
図2(a)〜(c)に、遮蔽板118に設けられている開口部118aのパターンの例が模式的に示されているように、開口部118aの形状は丸穴や角穴等のいかなる形状であってもよい。ただし、加工性の点から考えると丸穴が好ましい。また、これらの開口部118aは一定のピッチで配置されていることが好ましい。そしてこの遮蔽板118を形成する誘電体材料は、堆積膜の密着性向上の観点から、セラミック材であることが好ましく、具体的には、アルミナ、二酸化チタン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、ジルコン、コージェライト、ジルコン−コージェライト、酸化珪素、酸化ベリリウムマイカ系セラミック等が好ましい。これらのうち、真空処理時の不純物混入制御や耐熱性などの点から、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素が特に好ましい。
【0056】
図1に示す本実施形態の製造装置を用いて堆積膜を形成する方法について、以下に簡単に説明する。
【0057】
まず、反応容器102内の基体支持体106に円筒状基体101を設置し、不図示の排気手段によって、底面117に設けられた排気管107および遮蔽板118に設けられた開口部118aを介して反応容器102内の空気を吸引し、所望の真空度まで排気する。反応容器102内を所定の圧力に制御した後に、基体支持体106に内蔵されたヒーター(不図示)によって円筒状基体101を所定の温度(200℃〜300℃程度)まで加熱する。
【0058】
円筒状基体101が所定の温度になったところで、不図示のガス供給手段によって、反応容器102内に原料ガスを供給する。原料ガスの流量が所定流量になり、反応容器102内の圧力が安定した後に、高周波電源108,115からマッチングボックス109,116および電力分岐部113を介して、各高周波電極104に、周波数の異なる2つの高周波電力を同時に供給する。このとき、2つの高周波電力の周波数をそれぞれf1,f2とし、電力値をそれぞれP1,P2とすると、
10MHz≦f2<f1≦250MHz
0.1≦P2/(P1+P2)≦0.9
となるように設定する。
【0059】
その結果、反応容器102内にグロー放電が発生し、その放電エネルギーによって反応容器102内の原料ガスが励起解離して、円筒状基体101上に堆積膜が形成される。所望の膜厚の堆積膜が形成されたら、高周波電極104への電力供給を停止し、続いて原料ガスの供給を停止して、堆積膜の形成を終える。以上の作業を複数回繰り返して複数の堆積膜を円筒状基体101に形成して、多層構造の光受容層を持つ電子写真感光体を形成する。なお、堆積膜形成中、円筒状基体101は、ヒーターによって堆積膜形成に必要な所定の温度に保持され続けるとともに、減速ギア112および回転軸110を介してモーター111によって所定の速度で回転させられることによりその表面全周に亘って堆積膜が形成される。
【0060】
図3には、以上のようにして形成された電子写真感光体(光受容層)の層構成の例が模式的に示されている。図3(a)に示されている例では、円筒状基体101の上に、電荷注入阻止層602と、少なくとも水素を含むa−Siからなる光導電層603と、電子写真装置における顕像保持能力をもつ表面層604が順に積層されている。図3(b)に示されている例では、円筒状基体101の上に、電荷注入阻止層602と、電荷輸送層605と電荷発生層606からなる2層構造の機能分離型光導電層603と、表面層604が順に積層されている。この構成の場合、電子写真感光体に光を照射すると、主として電荷発生層606で生成されたキャリアーが電荷輸送層605を通過して導電性の円筒状基体101に至る。
【0061】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態のアモルファスシリコン感光体製造装置について、図4を参照して説明する。なお、第1の実施形態と同様の部分については、同一の符号を付与し説明を省略する。
【0062】
本実施形態の真空処理手段200では、反応容器102内に複数(例えば6個)の基体保持体206が配置されており、複数の高周波電極204および電力分岐部213が反応容器102の外部に配置されている。そして、これらが外部容器219内に収容されている。反応容器102内には、6個の基体保持体206が円周上に等間隔に配置されており、また、ガス導入管203が、6個の基体保持体206が構成する円の外側の円周上に等間隔に6個配置されている。これによって、反応容器102内には、6個の円筒形基体101を同一円周上に等間隔に配置することができる。それ以外の構成は図1に示す第1の実施形態の装置と実質的に同一であるので、同一の符号を付与して説明を省略する。
【0063】
なお、高周波電極204から放出される高周波電力を反応容器102内に効率良く導入するために、円筒状の反応容器102の側壁は、誘電体であるセラミックスにより構成されている。具体的なセラミックス材料としては、アルミナ、二酸化チタン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、ジルコン、コージェライト、ジルコン−コージェライト、酸化珪素、酸化ベリリウムマイカ系セラミックス等が挙げられる。これらのうち、真空処理時の不純物混入抑制や耐熱性等の点から、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素が特に好ましい。
【0064】
本実施形態でも、第1の実施形態と実質的に同じ方法によって、図3(a),(b)に例示するような電子写真感光体を製造することができる。
【0065】
【実施例】
以下、本発明のより具体的な実施例とそれと対比させる比較例について詳細に説明する。
【0066】
各実施例及び比較例では、画像欠陥抑制の効果を明確にするために、円筒状基体および遮蔽板以外の、プラズマに曝される部材に対する表面加工は一切行わなかった。すなわち、反応容器の内面、基体支持体、反応容器の蓋や底面等の部材の表面は、切削加工されたままの表面状態にし、ブラスト処理や溶射処理などの表面粗さ制御による堆積膜の剥離対策は行なっていない。
【0067】
[実施例1]
実施例1では、図1に示す第1の実施形態の製造装置を用いて堆積膜の形成を行った。本実施例の遮蔽板118は、表面がブラスト加工された厚さ3mmのアルミナセラミックス材に、図2(a)に示すような丸穴状の開口部118aが設けられたものであり、底面117の上方に30mmの間隔で配置されている。そして、高周波電源108,115から、発振周波数がf1=105MHzとf2=60MHzの2種類の周波数の高周波電力を高周波電極104に同時に供給し、表1に示す条件で、直径80mm、長さ358mmのアルミニウム製の円筒状基体の表面上に、図3に示すような堆積膜を形成した。このとき、遮蔽板118の開口部118aの開口率は30%であるが、開口面積のみ条件を変えながら7個の電子写真感光体を作成した。
【0068】
【表1】
Figure 2004191552
【0069】
このようにして製造した7個の電子写真感光体に関して、後述する方法で膜厚ムラを評価し、また、評価用に改造された電子写真装置(キヤノン製複写機iR−5000)にこれらを搭載して、後述する方法で、帯電能ムラと、感度ムラと、画像欠陥の評価を行った。その結果を表2に示している。
【0070】
【表2】
Figure 2004191552
【0071】
各評価方法は次の通りである。
【0072】
(膜厚ムラ評価方法)
電子写真感光体の長手方向中央部から両端部に至るまで1cm間隔で合計27点の位置において、フィッシャー社製デジタル膜厚計であるフィッシャースコープMMS(商品名)などによって膜厚を測定する。得られた27点の膜厚の最大値と最小値の差を求め、それを膜厚ムラとして評価する。膜厚ムラの評価は、後述する比較例1の膜厚ムラを100とした時の相対値で示している。従って、数値が小さいほど膜厚ムラが小さく良好である。
【0073】
(帯電能ムラ評価方法)
評価用に改造された電子写真装置に電子写真感光体をセットし、これをプロセススピード265mm/secで回転させ、除電光として波長650nmのLEDを用いてその光量を4lx・secに調整し、主帯電器の帯電電流量を1000μAに調整して、電子写真感光体の長手方向の中央部に対応する現像器の位置にセットした表面電位計(TREK社製Model344)の電位センサーにより、非画像露光状態における感光体の表面電位(帯電能)を測定する。電子写真感光体の長手方向中央部から両端部に至るまで1cm間隔で合計27点の位置において、前記の通り表面電位(帯電能)を測定し、得られた27点の表面電位の最大値と最小値の差を求め、それを帯電能ムラとして評価する。帯電能ムラの評価は、後述する比較例1の帯電能ムラを100とした時の相対値で示している。従って、数値が小さいほど帯電能ムラが小さく良好である。
【0074】
(感度ムラ評価方法)
評価用に改造された電子写真装置に電子写真感光体をセットし、これをプロセススピード265mm/secで回転させ、除電光として波長650nmのLEDを用いてその光量を4lx・secに調整し、電子写真感光体の長手方向中央部に対応する現像器の位置における暗部電位が400Vになるように主帯電器の帯電電流量を調整する。そして、原稿台にベタ白原稿を置き、明部電位が50Vになるように出力を調整したレーザー光により画像露光を行う。この時に必要な光量を、レーザー出力値から換算して求め、それを電子写真感光体の感度とみなす。電子写真感光体の長手方向中央部から両端部に至るまで1cm間隔で合計27点の位置において、前記の通り感度を求め、得られた27点の感度の最大値と最小値の差を求め、それを感度ムラとして評価する。感度ムラの評価は、後述する比較例1の感度ムラを100とした時の相対値で示している。従って、数値が小さいほど感度ムラが小さく良好である。
【0075】
(画像欠陥評価方法)
評価用に改造された電子写真装置に電子写真感光体をセットし、これをプロセススピード265mm/secで回転させ、除電光として波長650nmのLEDを用いてその光量を4lx・secに調整し、電子写真感光体の長手方向中央部に対応する現像器の位置での暗部電位が400Vになるように主帯電器の帯電電流量を調整する。そして、画像露光用のレーザ光を照射しない状態で現像バイアスを変化させることにより、透過濃度2.0の全面黒色の画像(ベタ黒画像)をA3サイズで連続10枚印刷出力する。10枚目のベタ黒画像に関して、電子写真感光体の一周分の領域に存在する白点状の画像欠陥を数える。ただし、0.1mm以上の大きさの画像欠陥のみ数え、1mm未満の大きさの画像欠陥は無視する。画像欠陥の評価は、後述する比較例1の画像欠陥の数を100とした時の相対値で示している。従って、数値が小さいほど画像欠陥が少なく良好である。
【0076】
[比較例1]
以上説明した各評価方法の基準となる比較例1について説明する。比較例1では、図5に示す製造装置を用いて堆積膜の形成を行った。高周波電極には周波数が105MHzの高周波電力を表3の条件で供給した。それ以外は前記した実施例1と同様の条件(表1および表3参照)で堆積膜の形成を行った。そして、前記した方法で、膜厚ムラと、帯電能ムラと、感度ムラと、画像欠陥を求めた。これらが、表2に示すように評価の基準値(100)になる。
【0077】
【表3】
Figure 2004191552
【0078】
比較例1を基準として実施例1を評価したところ、同一の高周波電極104に対して複数の異なる周波数の高周波電力を同時に供給することによって、表2に示すように電子写真特性が全体的に向上し、特に、膜厚や帯電能や感度の均一性が向上する。なお、遮蔽板118の開口面積は、0.8mm〜80mmの範囲であると、画像欠陥を防止する効果が顕著である。しかし、遮蔽板118の開口面積が0.8mmを下回ると、成膜途中で遮蔽板118に堆積した膜による目詰まりが発生して、反応炉内の圧力が不安定になり、スパーク等の異常放電が発生し、堆積膜が堆積途中で剥れてしまう現象が発生する場合があり、必ずしも実用的とはいえなかった。また、開口面積が80mmを越えると、反応容器102の底面117から塵や膜片等が飛散する確率が高くなるため、画像欠陥防止に対しては必ずしも十分な効果があるとはいえない。
【0079】
[実施例2]
実施例2では、図4に示す第2の実施形態の製造装置を用いて、実施例1と同様に堆積膜の形成を行った。ただし、本実施例の遮蔽板118は、表面がブラスト加工された厚さ3mmのアルミナセラミックス材に、図2(b)に示すような楕円穴状の開口部118aが設けられたものであり、遮蔽板118の開口部118aの開口率は50%、開口面積は50mmである。そして、底面117との間隔を1mm〜100mmの範囲で変えながら、電子写真感光体製造を6回行った。その際の各条件を表4に示している。
【0080】
【表4】
Figure 2004191552
【0081】
このようにして製造した電子写真感光体に関して、前記の方法で、膜厚ムラと、帯電能ムラと、感度ムラと、画像欠陥の評価を行った。本実施例では、同一条件で1回の製造工程で6個の電子写真感光体が製造されるため、それらの平均を求め、後述する比較例2を基準とした相対値として表5に示している。
【0082】
【表5】
Figure 2004191552
【0083】
[比較例2]
実施例2の評価基準となる比較例2について説明する。比較例2では、図4に示す製造装置から遮蔽板118を取り除き、それ以外は前記した実施例2と同様の条件(表4参照)で堆積膜の形成を行った。そして、前記した方法で、膜厚ムラと、帯電能ムラと、感度ムラと、画像欠陥を求めた。これらが、表5に示すように評価の基準値(100)になる。
【0084】
比較例2を基準として実施例2を評価したところ、遮蔽板118が底面117に接しない状態、実質的には遮蔽板118と底面117との間に1mm以上の間隔があれば、膜厚や帯電能や感度の均一性を維持したまま画像欠陥を防止する効果が得られることが判明した。
【0085】
[実施例3]
実施例3では、図4に示す製造装置を用いて、高周波電極204に供給する高周波電力の周波数をf1=100MHz、f2=60MHzに変更し、遮蔽板118の開口部118aの開口率を70%、開口面積を80mmにし、遮蔽板118と底面117との間隔を50mmに固定して、電子写真感光体製造を行った。その際の各条件を表6に示している。
【0086】
【表6】
Figure 2004191552
【0087】
このようにして同時に製造した6個の電子写真感光体A〜Fに関して、前記した方法で、膜厚ムラと、帯電能ムラと、感度ムラと、画像欠陥を求め、後述する比較例3を基準とした相対値として表7に示している。
【0088】
【表7】
Figure 2004191552
【0089】
[比較例3]
実施例3の評価基準となる比較例3について説明する。比較例3では、図4に示す製造装置から遮蔽板118を取り除き、それ以外は前記した実施例3と同様の条件(表6参照)で堆積膜の形成を行った。そして、同時に製造された6個の電子写真感光体に関して、前記した方法で、膜厚ムラと、帯電能ムラと、感度ムラと、画像欠陥を求めた。そして、各特性毎に、6個の電子写真感光体のうちの最も良好な結果を、表7に示す評価の基準値(100)として設定した。
【0090】
比較例3を基準として実施例3を評価したところ、表7に示すように、遮蔽板118を設けることによって、1度に複数の電子写真感光体を製造可能な量産型の装置構成において、同等の良好な性能を有する製品を効率よく製造できることが判明した。
【0091】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、減圧可能な縦型の反応容器内に設置された円筒状基体の表面に堆積膜を形成する電子写真感光体の製造装置において、反応容器の底面と円筒状基体の下部との間に、複数の開口部を有する誘電体材料からなる遮蔽板を設けることによって、放電安定性や均一な真空処理特性を保ちながら、画像欠陥を低減することができる。したがって、電子写真特性の高い電子写真感光体を、再現性および生産性よく製造することができる。さらに、一度に多数の電子写真感光体を製造可能な製造装置においても、本発明を採用することにより、同時に製造される電子写真感光体の特性を均一に保つことができるので、高品質な電子写真感光体を効率よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態の電子写真感光体製造装置を示す概略断面図である。
【図2】本発明の電子写真感光体製造装置の遮蔽板を示す概略平面図である。
【図3】本発明の電子写真感光体製造装置により製造された電子写真感光体の層構成を示す概略断面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態の電子写真感光体製造装置を示す概略断面図である。
【図5】従来の電子写真感光体製造装置の第1の例を示す概略断面図である。
【図6】従来の電子写真感光体製造装置の第2の例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
100,200,500 真空処理手段
101,501 円筒状基体
102,502 反応容器
103,203,503 ガス導入管
104,204,504 高周波電極
105,405,505 高周波電力供給手段
106,206,506 基体支持体
107,507 排気管
108,408,508 高周波電源
109,409,509 マッチングボックス
110,510 回転軸
111,511 モーター
112,512 減速ギア
113,213,513 電力分岐部
114,514 シールド
115,415 高周波電源
116,416 マッチングボックス
117,517 底面
118 遮蔽板
118a 開口部
219 外部容器
602 電荷注入阻止層
603 光導電層
604 表面層
605 電荷輸送層
606 電荷発生層

Claims (1)

  1. 減圧可能な縦型の反応容器内に設置された円筒状基体の表面に、少なくともシリコンを含む非単結晶材料からなる堆積膜を形成する、電子写真感光体の製造装置であって、
    前記反応容器内には、高周波電力の印加が可能な高周波電極と、前記反応容器の底面と前記円筒状基体の下部との間に位置し、複数の開口部を有する誘電体材料からなる遮蔽板が設けられていることを特徴とする電子写真感光体の製造装置。
JP2002357902A 2002-12-10 2002-12-10 電子写真感光体の製造装置 Pending JP2004191552A (ja)

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