JP2004204301A - 堆積膜形成装置 - Google Patents

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Tatsuji Okamura
竜次 岡村
Junichiro Hashizume
淳一郎 橋爪
Nobufumi Tsuchida
伸史 土田
Takashi Otsuka
崇志 大塚
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Abstract

【課題】堆積膜形成中に反応容器の内部から堆積膜が剥がれることに起因して電子写真感光体に球状突起が形成されることを抑え、電子写真感光体により形成される画像に欠陥が生じることを防止する。
【解決手段】堆積膜形成装置の反応容器(不図示)内の排気口(不図示)が開口している部分には、複数の開口穴を有する排気面部材120が設置されている。排気面部材120は反応容器の内壁に堆積膜が直接付着することを防ぐ防着板121と一体に構成されている。排気面部材120は防着板121の厚さよりも薄く構成されている。
【選択図】 図4

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、基体上に堆積膜を形成する堆積膜形成装置に関する。さらに詳しくは、本発明は、円筒形基体上にアモルファスシリコン膜を形成するアモルファスシリコン感光体製造装置として用いられる堆積膜形成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
像形成分野において、光受容部材における光受容層を形成する光導電材料としては、高感度で、SN比〔光電流(Ip)/暗電流(Id)〕が高く、照射する電磁波のスペクトル特性に適合した吸収スペクトルを有すること、光応答性が早く、所望の暗抵抗値を有すること、使用時において人体に対して無害であること等の特性が要求される。特に、事務機としてオフィスで使用される電子写真装置内に組み込まれる電子写真感光体の場合には、上記の使用時における無公害性は重要な点である。
【0003】
このような点に優れた性質を示す光導電材料にアモルファスシリコン(以下、「a−Si」と表記する。)があり、電子写真感光体の光受容部材として注目されている。このような光受容部材は、一般的には、導電性支持体を50℃〜350℃に加熱し、該支持体上に真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、熱CVD法、光CVD法、プラズマCVD法等の成膜法によりa−Siからなる光導電層を形成することで作成される。
【0004】
こうした堆積膜の形成法として、従来から、スパッタリング法、熱により原料ガスを分解する方法(熱CVD法)、光により原料ガスを分解する方法(光CVD法)、プラズマにより原料ガスを分解する方法(プラズマCVD法)等が多数知られている。中でもプラズマCVD法、即ち原料ガスを直流又は高周波(RF,VHF)やマイクロ波などのグロー放電等によって分解し、ガラス、石英、耐熱性合成樹脂フィルム、ステンレス鋼、アルミニウム等からなる基体上に薄膜状の堆積膜を形成する方法は、電子写真感光体の形成方法等において現在、実用化が非常に進んでおり、そのための装置も各種提案されている。
【0005】
中でもプラズマCVD法、すなわち原料ガスを高周波あるいはマイクロ波グロー放電によって分解し、基体上にa−Si堆積膜を形成する方法が好適なものとして実用に付されている。
【0006】
特許文献1(特開昭57−115551号公報)には、シリコン原子を主体とし、水素原子またはハロゲン原子の少なくともいずれか一方を含むアモルファス材料で構成されている光導電層の上に、シリコン原子及び炭素原子を母体とし、水素原子を含む非光導電性のアモルファス材料で構成された表面障壁層を設けた光導電部材の例が開示されている。
【0007】
また、特許文献2(特許第3155413号公報)には、原料ガスに周波数51〜250MHzの電磁波を与えて発生する原料ガスのグロー放電分解を用いたプラズマCVD法によって形成されてなることを特徴とする電子写真用光受容部材の形成方法が開示されている。
【0008】
これらの技術により、電気的、光学的、光導電率的特性及び使用環境特性、耐久性が向上し、更に、画像品位の向上も可能になっている。特に、高周波電力を用いたプラズマプロセスは放電の安定性が高く、酸化膜や窒化膜などの絶縁性の材料形成にも使用できるなど、さまざまな利点により使用されている。
【0009】
【特許文献1】
特開昭57−115551号公報
【特許文献2】
特許第3155413号公報
【特許文献3】
特開平11−345780号公報
【特許文献4】
特開平10−036969号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
プラズマCVD法により基体上に堆積膜形成を行う堆積膜形成装置では、反応容器内部の基体以外の部分、例えば、反応容器の内壁へも堆積膜が付着する。反応容器内壁に堆積した付着膜は、堆積膜形成を繰り返すことによりその一部が剥がれ、その破片は堆積膜形成中に基体表面に付着する場合がある。例えば、形成される堆積膜が電子写真感光体用のものである場合には、こうした破片が原因となる堆積膜の欠陥が、電子写真感光体により形成される画像に欠陥を引き起こしてしまう。
【0011】
こうした課題を解決する手段として、成膜毎に反応容器を化学的にクリーニング(エッチング処理)したり、反応容器を分解して物理的にクリーニングしたりすることが行われていたが、こうした手法は時間と労力を要し、生産性を低下させる要因となる。
【0012】
こうした問題を解決すべく、上記の特許文献3(特開平11−345780号公報)には、反応容器内の部材の表面粗さを規定し、膜剥がれを抑える提案がなされている。更に、該公報には、上記部材のグロー放電に接する面に防着板を設けることが記載されている。該公報には、防着板を設ける場合、堆積膜が付着した防着板を取り外し、堆積膜が付着していない別の防着板に交換することで、反応容器の内部のクリーニングが容易になると同時に、表面を粗くする際の容易性が向上するという効果が挙げられている。また、該公報においては、表面粗さを実現するにあたり、プラズマ溶射法のように直接表面を粗くすることができる粉体でコーティングする方法も例としてあげられている。
【0013】
防着板の厚さは、取り扱い易さや強度の観点から、ある程度の厚さが必要となる。特に、防着板表面を溶射により表面処理を行う場合は、溶射によって防着板が変形してしまう場合があるので、通常は3mm以上の厚さが必要となる。
【0014】
更に、プラズマCVD法による堆積膜形成装置においては、反応容器に接続された排気経路へのプラズマの漏れが問題となっていた。
【0015】
反応容器内で生成されたプラズマが排気口を介して排気配管内へ漏れ出すことによって、プラズマの安定性が低下したり、反応容器内へのパワー効率が低下したりする場合がある。これは、プラズマによって分解された堆積膜形成用ガスが排気配管を介して排出されるときに、排気配管内部に堆積膜が形成され、堆積膜形成時にそれらの膜が剥離して基体表面に飛散することにより堆積膜の欠陥の原因となる場合があるからである。
【0016】
さらに、排気配管内部に堆積膜が形成されていると、プラズマを用いて基体の加熱を行う場合、プラズマ加熱時に反応容器内に生成したプラズマが排気口を介して排気配管内部にまで漏れ、排気配管内部に形成された堆積膜が該プラズマによってスパッタされて基体表面に付着し、形成される堆積膜の特性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0017】
このため、従来の堆積膜形成装置及び堆積膜形成方法を用いて、例えば電子写真用感光体に使用する堆積膜を形成する場合、定期的に排気配管内のクリーニングを行わなければならず、その際に大掛かりな作業を伴うために生産性の面で問題となる場合があった。
【0018】
これらの問題に対して、排気配管内へのプラズマの漏れを防止する手段として、上記の特許文献4(特開平10−036969号公報)には、排気口にメッシュ形状等の排気面部材を取りつけることによって、排気配管へのプラズマの廻り込みをより効果的に防止する方法が開示されている。この技術により、排気配管へのプラズマの漏れは減少し、排気配管内への膜の堆積量は低減され、それに伴い堆積膜への悪影響も減少する。
【0019】
一般的に、排気面部材に形成する開口穴の大きさはプラズマの漏れ量を抑えるためにできるだけ小さく設計され、排気面部材の厚さは排気抵抗を少なくするためにできるだけ薄く設計されている。
【0020】
このように、排気面部材は薄く、防着板は厚く設計しなければならず、従来の堆積膜形成装置の場合、厚さの違う排気面部材と防着板は、例えば図9に示すように、比較的薄い排気面部材2002を比較的厚い防着板2001と反応容器の排気口が開口している面(不図示)との間に挟み込み、排気口からのプラズマの漏れを防止していた(図中、A面はプラズマ空間側を示している)。
【0021】
しかしながら、このような構成の場合、図9に示す排気面部材2002と防着板2001との境界(B部分)において、プラズマ空間側には微小な隙間が生じてしまう。
【0022】
たとえば、電子写真感光体を形成する装置のように、長時間にわたって厚膜の堆積膜を形成する装置の場合、必然的に排気面部材2002にも厚膜が堆積されることとなる。こうした隙間部分は堆積膜が剥がれやすく、剥がれた堆積膜の破片はプラズマ空間に飛散し、堆積膜の欠陥原因となってしまう。隙間部分では、成膜条件によっては異常放電が起こってしまう場合があり、堆積膜へ悪影響を及ぼしたり、ダストを発生させたりしてしまう場合もあり、前述のように堆積膜に欠陥を生じさせる要因となる。
【0023】
本発明の目的は、上述のごとき堆積膜の欠陥を減少させ、ひいては電子写真感光体によって形成された画像に生じる欠陥を減少させることができる堆積膜形成装置を提供することにある。特に、本発明の目的は、堆積膜形成中に反応容器の内部から堆積膜が剥がれることに起因して電子写真感光体に球状突起が形成されることを抑え、電子写真感光体により形成される画像に欠陥が生じることを防止することにある。
【0024】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上述の問題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、少なくともシリコンを含む非単結晶物質からなる堆積膜を形成する装置を以下のような構成にすることにより、長期にわたって、画像欠陥を防止して、良好な画像形成の維持ができる感光体を安価に安定して製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0025】
すなわち、本発明の堆積膜形成装置は、真空気密可能であり、内部空間を排気するための排気口が開口している反応容器と、前記反応容器の内部空間を排気するために前記排気口に接続された排気手段と、前記反応容器の外部に設置されたカソード電極と、該カソード電極に高周波電力を印加する高周波電力導入手段と、前記反応容器の内部に設置された被成膜基体とを有し、前記高周波電力導入手段によって前記カソード電極に高周波電力を印加して前記カソード電極と前記対向電極との間にプラズマを発生させ、前記被成膜基体上に堆積膜を形成する堆積膜形成装置において、前記反応容器内の前記排気配管が開口している部分には複数の開口穴を有する排気面部材が設置されており、該排気面部材は前記反応容器の内壁に堆積膜が直接付着することを防ぐ防着板と一体に構成され、前記排気面部材の厚さは前記防着板の厚さよりも薄いことを特徴とする。
【0026】
上記本発明の堆積膜形成装置では、排気面部材と防着板とが一体に構成されていることから両者の間に隙間がないため、従来のように、隙間部分に形成された堆積膜が剥がれて反応容器のプラズマ空間内に飛散して堆積膜の欠陥原因となったり、あるいは、隙間部分に成膜条件によって起こりうる異常放電が堆積膜へ悪影響を及ぼしたり、ダストを発生させたりすることで堆積膜に欠陥を生じさせることはない。
【0027】
排気面部材に形成された複数の開口穴の総面積、すなわち排気面部材の開口面積は、反応容器から排気配管への排気抵抗とプラズマの漏れ具合制御の両面の観点に基づいて設定される。排気能力の観点からは開口面積はできるだけ大きい方がさまざまな製造条件に対応できるためより望ましいが、開口面積が大きくなる程、排気配管へのプラズマの漏れ量が増大する。その一方で、プラズマの漏れ量を抑えるために開口面積を少なくした場合には、排気面部材の排気抵抗が増大し、反応容器内の圧力に制限を与えてしまう。これに対して本発明の堆積膜形成装置では、排気面部材の厚さを防着板の厚さよりも薄くなっているので、排気面部材の開口面積を抑えつつ、その排気抵抗を少なくすることを可能にしている。
【0028】
本発明の堆積膜形成装置は、排気面部材を上述のような構成にすることにより、排気領域近傍、特に排気面部材と防着板との間の微小な隙間部分での異常放電や微小な膜剥がれを防止すると共に、原料ガスを効率よく排気することによって、画像欠陥が少なく、電気特性の均一性に優れた良質な堆積膜形成を効率よく生産することを可能にするものである。
【0029】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。以下では、本発明を実施するための堆積膜形成装置、その堆積膜形成装置で形成する堆積膜、および基体について順に説明する。
【0030】
(堆積膜形成装置)
図1は、プラズマCVD法を用いてアモルファスシリコンを母材とした電子写真用感光体を形成する装置である、本発明の堆積膜形成装置の一実施形態を示している。また、図2は図1に示した装置における堆積膜形成装置の横断面図を示している。
【0031】
この装置は、少なくとも、被成膜基体である円筒形基体101を内包できる減圧可能な反応容器102、反応容器102内に原料ガスを供給するためのガス管117及び該原料ガスを分解するための電力を導入するカソード114からなる堆積膜形成装置100、反応容器102内に原料ガスを供給するガス供給システム104、反応容器102内を排気する排気手段としての排気システム105及びカソード114に電力を供給する高周波電力導入手段である電力供給システム106からなる。反応容器102の排出口119が開口している底面部には、複数の開口穴が開けられた排気面部材120が配置されている。
【0032】
この装置を用いて堆積膜を形成するには、まず、反応容器102内のヒーターを内蔵する基体支持体103に円筒形基体101を設置する。なお、基体支持体103は反応容器102内において反応容器102の中心と同心の同一の円周上に等間隔に複数設置されており、円筒形基体101も反応容器102内において反応容器102の中心と同心の同一の円周上に等間隔に複数設置される。次に、反応容器102内を排気口119を介して排気ポンプ107によって排気し、所望の真空度まで排気が完了した後、不活性ガス、例えばArガスを原料ガス供給システム104内のマスフローコントローラによって所定の流量で反応容器102内に供給する。そして、排気ポンプ107の排気速度を調整することによって、反応容器102内を所望の圧力に制御する。反応容器102の内圧を所望の圧力に設定した後に、基体支持体103に内蔵されたヒーターによって円筒形基体101を所望の温度まで加熱する。なお、堆積膜形成中も円筒形基体101を堆積膜形成に必要な所望の温度に保持し続ける。
【0033】
以上の手順により加熱工程が終了した後、続いて堆積膜形成工程を行う。反応容器102内のArガスを排気ポンプ107によって排気した後、排気バルブ108、メイン排気バルブ109を操作し、スロットルバルブ110の開度を全開にして油拡散ポンプ111を介したメイン排気ポンプ112によって反応容器102内を例えば1×10-3Paの真空度まで排気する。続いて、原料ガス供給システム104により、各原料ガスを各供給配管に設置されたマスフローコントローラを用いて所定の流量で反応容器102内に供給する。スロットルバルブ110の開度を調節し、排気速度を調整することで、反応容器102の内圧を所望の圧力に制御する。反応容器102の内圧が安定したところで、電力源113からカソード114にマッチングボックス115を介して電力の供給を行い、反応容器102内にグロー放電プラズマを生起させる。なお、反応容器102は少なくとも一部が誘電体で形成されている。また、円筒形基体101はアース電位に維持されており、カソード114に対向するアノード(対向電極)として作用する。
【0034】
この放電エネルギーによって、反応容器102内に導入された原料ガスが分解され、円筒形基体101上に所定の堆積膜が形成される。堆積膜が所望の膜厚に到達したらカソード114に印加している電力の供給を停止し、原料ガス供給システム104からの原料ガスの供給を停止することで堆積膜の形成を終える。
【0035】
同様の作業を複数回続けて行うことによって、多層構造を持つ堆積膜を形成することが可能でなる。
【0036】
以上の堆積膜形成方法によって、例えば図3に示すように、基体201上に電荷注入阻止層202、光導電層203、表面層204の順に形成膜を堆積させることにより、電子写真用感光体が形成される。
【0037】
このような堆積膜形成方法においては、堆積膜の基体周方向の均一性を向上させるために、堆積膜形成中、図1に示すように基体101を駆動部118を介してモーター116によって所定の速度で回転させる。
【0038】
(堆積膜)
本発明において水素化アモルファスシリコン(a−Si:H)よりなる堆積膜を基体表面上に形成する場合には、原料ガスとしてSiH4、Si26、Si38、Si410等のガス状態のシラン化合物、またはガス化し得る水素化珪素(例えばシラン類)が有効に使用されるものとして挙げられ、更に層作成時の取り扱い易さ、Si供給効率の良さ等の点でSiH4、Si26が好ましいものとして挙げられる。また、必要に応じてこれらのガスに加えて伝導性を制御する原子を含むガスを用いることもできる。伝導性を制御する原子としては、半導体分野における、いわゆる不純物を挙げることができ、p型伝導特性を与える周期律表第13族に属する原子(以下、「第13族原子」と略記する。)またはn型伝導特性を与える周期律表第15族に属する原子(以下、「第15族原子」と略記する。)を用いることができる。第13族原子導入用の原料物質として具体的には、硼素原子導入用としては、B26、B410、B59、B511、B610、B612、B614等の水素化硼素、BF3、BCl3、BBr3等のハロゲン化硼素等が挙げられる。この他、AlCl3、GaCl3、Ga(CH33、InCl3、TlCl3等も挙げることができる。
【0039】
第15族原子導入用の原料物質として有効に使用されるのは、燐原子導入用としては、PH3、P24等の水素化燐、PH4I、PF3、PF5、PCl3、PCl5、PBr3、PBr5、PI3等のハロゲン化燐が挙げられる。この他、AsH3、AsF3、AsCl3、AsBr3、AsF3、SbH3、SbF3、SbF5、SbCl3、SbCl5、BiH3、BiCl3、BiBr3等も第15族原子導入用の出発物質の有効なものとして挙げることができる。また、これらの伝導性を制御する原子導入用の原料物質を必要に応じてH2および/またはHeにより希釈して使用してもよい。
【0040】
また、アモルファス炭化シリコン(a−SiC)よりなる層を形成する場合には、前記原料ガスのほかに、CH4、C26、C38、C410等のガス状態の、またはガス化し得る物質を使用すればよい。
【0041】
例えばアモルファス酸化シリコン(a−SiO)を形成する場合には、前記の原料ガスのほかに、酸素原子導入用のガスとして、酸素(O2)、オゾン(O3)、一酸化窒素(NO)、二酸化窒素(NO2)、一二酸化窒素(N2O)、三二酸化窒素(N23)、四二酸化窒素(N24)、五二酸化窒素(N25)、三酸化窒素(NO3)、シリコン原子(Si)と酸素原子(O)と水素原子(H)とを構成原子とする例えば、ジシロキサン(H3SiOSiH3)、トリシロキサン(H3SiOSiH2OSiH3)等の低級シロキサン等を使用すればよい。
【0042】
本発明において、例えばアモルファス窒化シリコン(a−SiN)を形成する場合には、前記の原料ガスのほかに、窒素原子導入用のガスとして、窒素(N2),アンモニア(NH3),ヒドラジン(H2NNH2),アジ化水素(HN3)等のガス状のまたはガス化し得る窒素、窒素物及びアジ化物等の窒素化合物を使用すればよい。
【0043】
本発明で使用する高周波電力の周波数は50〜450MHzのVHF帯域の範囲が好ましい。例えば図1に示した堆積膜形成装置において基体101に堆積膜形成を行う場合、原料ガスを分解するために印加される高周波放電エネルギーの周波数が50MHz未満の場合、気相中でポリシラン等の副生成物が発生し、それらが排気口119内に付着すると、クリーニング時に支障をきたす場合がある。また、副生成物が排気面部材120の開口穴に詰まることによって、反応容器102内の圧力を所定の値に安定維持することが困難となる場合がある。そのため、排気口119に繋がる排気配管内のクリーニング時の作業性向上、及び形成される堆積膜の膜質向上及び再現性向上という観点から、高周波放電エネルギーの周波数は50MHz以上とすることが望ましい。また、450MHzを超える場合、排気面部材120を設置した場合でも、プラズマの漏れを十分に防止することが容易ではない場合がある。そのため、形成される堆積膜の膜質向上及び再現性向上という観点から、高周波放電エネルギーの周波数は450MHz以下とすることが望ましい。
【0044】
高周波電力は目的に応じて決めればよいが、通常は基体1体あたり10〜5000Wの範囲が好ましい。また反応容器の圧力についても同様に目的とする通常の場合、0.01Pa〜1000Paの範囲が好ましいものとされる。これら基体温度、使用するガス種及び流量、高周波電力、反応容器の圧力はそれぞれ個別的、一義的に決定されるのものではなく、目的とする堆積膜の特性により最適範囲を選択するのが望ましい。
【0045】
(基体)
本発明で使用される基体は、導電性がある必要がある。導電性基体としては、Al、Cr、Mo、Au、In、Nb、Te、V、Ti、Pt、Pd、Fe、リン青銅等の金属、およびこれらの合金、例えばステンレス、等が挙げられる。また、ポリエステル、ポリエチレン、ポリカーボネート、セルロースアセテート、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアミド等の合成樹脂のフィルムまたはシート、ガラス、セラミック等の電気絶縁性基体の少なくとも光受容層を形成する側の表面を導電処理した基体も用いることができる。こうした基体は、堆積膜形成中は20℃〜500℃の所望の温度に加熱することができる。
【0046】
【実施例】
以下、実施例及び比較例により、本発明をより具体的に説明する。
【0047】
(1)評価その1
〔実施例1〕
実施例1では、図1の堆積膜形成装置を用い、直径80mm、長さ358mmのアルミニウム製の円筒形基体101上に、発振周波数が105MHzの高周波電源113を用いて、表1に示す堆積膜の形成条件により、図3に示すアモルファスシリコンを母材とした電子写真用感光体を作成した。
【0048】
【表1】
Figure 2004204301
【0049】
本実施例においては、排気面部材120として、図4に示すように防着板121と一体に構成されたものを用いた。図4(a)は本発明の実施例1において用いられる排気面部材の斜視図であり、図4(b)は同排気面部材の排気面部分を示す拡大断面図である。また、図5(a)は図4に示した排気面部材の排気面部分に形成された開口穴を示す図であり、図5(b)はそれらの穴の直径dとピッチpを示す図である。
【0050】
図4に示すように、本実施例で用いる排気面部材120は防着板部分121と一体に構成されている。このような構成の排気面部材120は、例えば、防着板121を構成する一定の厚みを有している円板の、プラズマ空間側に配置される面Aの中央領域にフライス加工等によって座グリ部を形成し、その座グリ部に所定の径を有する複数の開口穴を所定のピッチで形成することで構成することができる。このように構成された本実施例の排気面部材120は、プラズマ空間側に配置される面A側の防着板121との間に段差Cがあるが、両者の境目Bに隙間はない。
【0051】
排気面部材120は、堆積膜形成中、その開口穴を通して原料ガスを排気口119からそれに繋がる排気経路に排気することに加え、プラズマが排気口119から排気配管へ漏れることを防止する役割を有していることから、排気面部材120には導電性の材料を使用することが好ましい。さらにそれが金属材料であれば、耐熱性が高いという点で更に好適である。排気面部材120には、開口穴をパンチング加工で形成した形状のものを用いてもよいし、あるいは開口穴がメッシュ形状に形成されているものを用いてもよい。
【0052】
排気面部材120に形成された複数の開口穴の総面積、すなわち排気面部材120の開口面積は、反応容器102から排気配管への排気抵抗とプラズマの漏れ具合制御の両面の観点に基づいて設定される。排気能力の観点からは開口面積はできるだけ大きい方がさまざまな製造条件に対応できるためより望ましいが、開口面積が大きくなる程、排気配管へのプラズマの漏れ量が増大する。その一方で、プラズマの漏れ量を抑えるために開口面積を少なくした場合には、排気面部材120の排気抵抗が増大し、反応容器102内の圧力に制限を与えてしまう。このため一般的には、開口面積を抑えつつ排気抵抗を少なくするために、排気面部材120の厚さをできるだけ薄く設計した方がよく、装置の大きさにも関係するが、排気面部材120の厚さは1〜3mmとすることが好ましい。
【0053】
防着板121の材料は、防着板121が用いられる形成装置100に要求される機能によって選択できる。たとえば、反応容器102内にプラズマを良好に生成するために防着板121が反応容器102と同様に導電性やシールド性を要求される場合には、防着板121の材料は、金属材料の中から選択されることが好ましい。このような金属材料の例としては、Al、Cr、Mo、Au、In、Ni、Ti、Pt、Feやこれらの合金が挙げられる他、防着板121には絶縁材料の表面に導電層を形成したものも使用できる。
【0054】
防着板121の厚さは、その取り扱い易さや強度確保の観点から、ある程度の厚さが必要となる。特に、防着板121の表面に後述するように溶射によって表面処理を行う場合は、溶射により防着板121が変形してしまう場合があるので、防着板121は通常は3mm以上の厚さが必要となる。
【0055】
本実施例では、防着板121と排気面部材120の材質はアルミ材(A5052)とし、排気面部材120には、図5(b)に示すように直径dがφ2mm、ピッチpが3mmの開口穴をパンチング加工によって形成した。また、排気面部材120の厚さは1mmとし、防着板121の厚さは5mmとした。
【0056】
〔実施例2〕
実施例2も実施例1と同様に、図1の堆積膜形成装置を用い、直径80mm、長さ358mmのアルミニウム製の円筒形基体101上に発振周波数が105MHzの高周波電源113を用いて、表1に示す堆積膜の形成条件により、図3に示すアモルファスシリコンを母材とした電子写真用感光体を作成した。
【0057】
ただし、実施例2における排気面部材120は、図6に示すように防着板121と一体に構成されたものを用いた。図6(a)は本発明の実施例2において用いられる排気面部材の、プラズマ空間側に配置される面を示す斜視図、図6(b)は同排気面部材の排気面部分を示す拡大断面図、図6(c)は同排気面部材の排気側に配置される面を示す斜視図である。
【0058】
図6に示すように、本実施例で用いる排気面部材120も実施例1と同様に、防着板121と一体に構成されている。本実施例の排気面部材120も実施例1のものと構成は同じであり、その一方の面において防着板121との間に段差Cがあるが、両者の境目Bに隙間はない。ただし本実施例では、実施例1と異なり、排気面部材120と防着板121との間に段差のない方の面Aがプラズマ空間側に配置されるようになっている。すなわち、本実施例の排気面部材120と防着板121は、プラズマ空間側に配置される面Aにおいて1つの平面を成している。
【0059】
本実施例においても、排気面部材120と防着板121の材質はアルミ材(A5052)とし、排気面部材120には、直径がφ2mm、ピッチが3mmの複数の穴をパンチング加工によって形成した。また、排気面部材120の厚さは1mmとし、防着板121の厚さは5mmとした。
【0060】
〔比較例1〕
本比較例では、実施例1と同様に図1の堆積膜形成装置を用い、直径80mm、長さ358mmのアルミニウム製の円筒形基体101上に、発振周波数が105MHzの高周波電源113を用いて、表1に示す堆積膜の形成条件により、図3に示すアモルファスシリコンを母材とした電子写真用感光体を作成した。
【0061】
本比較例では、排気面部材として、図9に示した従来型のものを用いた。図9に示した従来型の排気面部材2000は、防着板2001と別部材になっており、排気面部材2000が防着板2001の開口部を塞ぐように、防着板2001と反応容器の排気口が開口した底面との間に挟まれている。そのため、両部分2001,2002の間には段差Cがあり、両部分の境目Bには隙間が生じている。
【0062】
本比較例では、防着板2001は厚さ5mmのアルミ材(A5052)で構成した。また、排気面部材2000には、直径がφ2mm、ピッチが3mmの複数の穴が開けられた、厚さ1mmのアルミ材(A5052)からなるパンチングボードを使用した。
【0063】
実施例1,2及び比較例1でそれぞれ作成した電子写真感光体を電子写真装置(キヤノン製の複写機NP−6750を評価用に改造したもの)にセットして、それらの電子写真感光体について以下のように特性評価を行った。
【0064】
(画像欠陥)
電子写真装置の原稿台にA3サイズの黒紙原稿(キヤノン社製テストチャート:部品番号FY9−073)をセットして画像形成を行った。得られた画像を図7に示すように反応容器の垂直方向に従って、円筒形基体の上側部分、中央部分、下側部分に対応するように3つのエリアに分割し、各々のエリアに発生していたφ0.2mm以上の白抜け(白ポチ)をカウントした。
【0065】
得られた結果は、比較例1の中エリア内に生じていた白抜けの個数を100とした場合の相対比較で評価し、以下のようにランク付けを行った。
◎ … 70%未満
○ … 70%以上90%未満
△ … 90%以上110%未満
× … 110%以上
その評価結果を表2に示す。
【0066】
【表2】
Figure 2004204301
【0067】
表2に示されているように、本実施例1,2で作成した感光体はどのエリアにおいても良好な画像が得られた。堆積膜形成後の排気面部材120,2002を目視で観察したところ、比較例1で使用した排気面部材2002と防着板2001との隙間に膜剥がれが生じていたことが確認された。
【0068】
(2)評価その2
〔実施例3〕
実施例3では、実施例1,2及び比較例1と同様に図1に示した堆積膜形成装置を用い、直径80mm、長さ358mmのアルミニウム製の円筒形基体101上に、発振周波数が105MHzの高周波電源113を用いて、表1に示す堆積膜の形成条件により、図3に示すアモルファスシリコンを母材とした電子写真用感光体を作成した。
【0069】
本実施例においては、排気面部材として、実施例2(図6参照)で用いた一体型構成のものを使用した。ただし、本実施例では排気面部材120および防着板121の素材にはステンレス鋼材(SUS304)を用い、そのプラズマ空間側の表面Aにはアルミナ材料(Al23)を100μmの厚さに溶射した。なお、本実施例においても実施例2と同様に、排気面部材120には直径がφ2mm、ピッチが3mmの複数の穴をパンチング加工によって形成し、また、排気面部材120の厚さは1mmとし、防着板121の厚さは5mmとした。
【0070】
〔比較例2〕
本比較例では、実施例3と同様に図1に示した堆積膜形成装置を用い、直径80mm、長さ358mmのアルミニウム製の円筒形基体101上に、発振周波数が105MHzの高周波電源113を用いて、表1に示す堆積膜の形成条件により、図3に示すアモルファスシリコンを母材とした電子写真用感光体を作成した。
【0071】
本比較例では、排気面部材として、比較例1と同様に図9に示した従来型のものを用いた。ただし排気面部材2002と防着板2001は、実施例3と同様にステンレス鋼材(SUS304)で構成し、それらのプラズマ空間側に配置される面Aにはアルミナ材料(Al23)を100μmの厚さで溶射した。なお、本比較例の排気面部材2002に形成された穴の径とピッチは、比較例1と同様である。
【0072】
実施例3および比較例2でそれぞれ作成した感光体について、以下のように評価を行った。
【0073】
(球状突起数)
得られた感光体の全ての表面を光学顕微鏡で観察した。そして、10μm以上〜20μm未満、20μm以上の大きさの球状突起の数を数え、10cm2当たりの球状突起の個数を調べた。測定ポイントは、反応容器の垂直方向に従って、感光体の上端から10cmの位置、中央位置、および下端から10cmの位置とした。
【0074】
得られた結果は、比較例2での中央位置での値を100%とした場合の相対比較で評価し、各感光体を以下のようにランク付けして分類した。
◎ … 70%未満
○ … 70%以上90%未満
△ … 90%以上110%未満
× … 110%以上
その評価結果を表3に示す。
【0075】
【表3】
Figure 2004204301
【0076】
表3から、本実施例においては特に10〜20μmの比較的小さい球状突起が減少していることが分かる。
【0077】
また、堆積膜形成後の排気面部材120,2002を目視で観察したところ、比較例2で使用した排気面部材2002と防着板2001との隙間部では溶射材料自体が一部剥がれていることが確認された。
【0078】
(耐久後の画像欠陥)
実施例3及び比較例2でそれぞれ作成した電子写真感光体を電子写真装置(キヤノン製の複写機NP−6750を評価用改造したもの)にセットし、電子写真装置の原稿台にA3サイズの黒紙原稿(キヤノン社製テストチャート:部品番号FY9−073)をセットして画像形成を行った。得られた画像を図7に示すよう実施例1と同様に、円筒形基体の上側部分、中央部分、下側部分に対応するように3つのエリアに分割し、各々のエリアに発生していたφ0.2mm以上の白抜け(白ポチ)をカウントした。さらに、30万枚相当の加速耐久試験を行った後の画像についても、同様の評価を行った。
【0079】
得られた結果は、比較例2の中エリア内に発生していた白抜けの個数を100とした場合の相対比較で評価し、以下のようにランク付けを行った。
◎ … 70%未満
○ … 70%以上90%未満
△ … 90%以上110%未満
× … 110%以上
その結果を表4に示す。
【0080】
【表4】
Figure 2004204301
【0081】
表4に示されているように、本実施例では初期及び耐久後共に良好な画像が全エリアにおいて得られることが分かる。
【0082】
このように、排気面部材120に対して堆積膜の密着性を向上させる観点から、排気面部材120は例えばセラミックス材等の絶縁性材料、Al、Ni、ステンレス鋼(SUS)等の金属系材料で溶射されていることが効果的である。具体的なセラミックス材料としては、アルミナ、二酸化チタン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、ジルコン、コージェライト、ジルコン−コージェライト、酸化珪素、酸化ベリリウムマイカ系セラミックス等が挙げられる。金属系材料としては、前述のAl、Ni、SUSの他、Cr、Mo、Au、In、Ti、Pt、Feやこれらの合金が挙げられる。
【0083】
排気面部材120の表面を被覆する溶射材の厚さには特に制限はないが、溶射材の耐久性および均一性を増すため、また、製造コストの面から、1μm〜10mmであることが好ましく、10μm〜5mmであることがより好ましい。
【0084】
(3)評価その3
〔実施例4〕
本実施例では、図1の堆積膜形成装置を用い、直径80mm、長さ358mmのアルミニウム製の円筒形基体101上に、発振周波数が105MHzの高周波電源113を用いて、表5に示す堆積膜の形成条件により、図3に示すアモルファスシリコンを母材とした電子写真用感光体を作成した。本実施例では、生産性を考慮し、上記の各実施例に比べて成膜速度を速めるために原料ガスの流量及び投入電力を増加させている。
【0085】
【表5】
Figure 2004204301
【0086】
本実施例においては、実施例3と同様の構成の排気面部材120を用いた。すなわち、排気面部材120の素材にはステンレス鋼材(SUS304)を用い、そのプラズマ空間側の表面Aにはアルミナ材料(Al23)を100μmの厚さに溶射した。なお、本実施例においても実施例2,3と同様に、排気面部分120bには直径がφ2mm、ピッチが3mmの複数の穴をパンチング加工によって形成し、また、防着板部分120aの厚さは5mmとし、排気面部分120bの厚さは1mmとした。
【0087】
〔比較例3〕
本比較例では、図1の堆積膜形成装置を用い、直径80mm、長さ358mmのアルミニウム製の円筒形基体101上に、発振周波数が105MHzの高周波電源113を用いて、表5に示した堆積膜の形成条件により、図3に示すアモルファスシリコンを母材とした電子写真用感光体を作成した。本比較例でも、実施例4と同様に原料ガスの流量及び投入電力を増加させている。
【0088】
本比較例では、排気面部材として図8に示した構成のものを用いた。図8(a)は本比較例で用いる排気面部材を示す斜視図、図8(b)は図8(a)に示した排気面部材の断面図である。
【0089】
図8に示した排気面部材1002は、防着板1001と一体になっている。このような排気面部材1002は、例えば、防着板部分1001を成す円板の中央部領域に複数の穴を形成することによって構成することができる。防着板1001と排気面部材1002は厚さ5mmのステンレス鋼材(SUS304)で構成し、排気面部材1002には直径がφ2mm、ピッチが3mmの複数の穴をパンチング加工によって形成した。さらに、それらのプラズマ空間側の表面Aには、アルミナ材料(Al23)を100μmの厚さに溶射した。
【0090】
なお、本比較例の構成では、実施例4と同様の成膜条件のガス流量(表5参照)の場合に、成膜中の反応容器102(図1)内の圧力を実施例4の場合と同じにすることはできないため、成膜中の反応容器102(図1)内の圧力を実施例4の場合の3割増の圧力にして成膜を行った。
【0091】
実施例4及び比較例3でそれぞれ作成した電子写真感光体について、実施例3と比較例2との場合と同様に、初期及び耐久後の画像評価を行った。さらに、これらの電子写真感光体について、キヤノン製の複写機NP−6750によって、以下の具体的な評価法により各項目の評価を行った。
【0092】
(帯電能の均一性)
複写機の主帯電器に一定の電流を流したときの現像器位置での暗部電位を測定した。帯電能の均一性に関しては、電子写真用感光体の電位を感光体の長手方向に4cm間隔で測定し、これらの平均の電位に対する各部の電位のばらつきを評価した。
【0093】
(感度の均一性)
複写機の現像器位置での暗部電位を一定値となるように主帯電器電流を調整した後に、一定の光量の画像露光を照射し、現像器位置での明部電位を測定した。感度の均一性に関しては、電子写真用感光体の明部電位を感光体の長手方向に4cm間隔で測定し、これらの平均の明部電位と各部の電位とのばらつきを評価した。
【0094】
得られた結果は、平均電位と各測定ポイントの電位との差(電位差)の平均を平均値で割った値で評価した。評価は、比較例2で作成した感光体を用い、画像欠陥については比較例2の中エリアを100とし、帯電能均一性や感度均一性に関しても比較例2の感光体の評価結果を100%とした場合の相対比較で各感光体を以下のようにランク付けした。
◎ … 5%未満
○ … 5%以上10%未満
△ … 10%以上20%未満
× … 20%以上
以上の評価結果を表6に示す。
【0095】
【表6】
Figure 2004204301
【0096】
表6に示されているように、本実施例では比較例2,3に比べて全項目において良好な結果が得られている。これにより、排気面部材120の構成を本実施例のようにすることで、画像欠陥に優れ、かつ電気特性の均一性に優れた感光体を生産できることがわかった。
【0097】
(4)評価その4
〔実施例5〕
本実施例では、図1の堆積膜形成装置を用い、直径80mm、長さ358mmのアルミニウム製の円筒形基体101上に、発振周波数が105MHzの高周波電源113を用いて、実施例3と同様の表5に示した堆積膜の形成条件により、図3に示すアモルファスシリコンを母材とした電子写真用感光体を作成した。
【0098】
本実施例においては、排気面部材として実施例3で用いた構成のものを使用した。ただし、本実施例では、プラズマ空間側の表面Aに表7に示した各材料を100μmの厚さにそれぞれ溶射して構成した、各種の排気面部材を用いた。
【0099】
各種材料が溶射された各排気面部材をそれぞれ用いた場合に作成した各電子写真感光体について、実施例3と比較例2との場合と同様に、初期及び耐久後の画像評価を行った。さらに、これらの電子写真感光体について、キヤノン製の複写機NP−6750によって、上記した具体的な評価法により帯電能の均一性と感度の均一性の各項目の評価を行った。
【0100】
評価は、比較例2で作成した感光体を用い、画像欠陥については比較例2の中エリアを100とし、帯電能、感度に関しても比較例2の感光体の評価結果を100%とした場合の相対比較で各感光体を以下のようにランク付けした。
◎ … 5%未満
○ … 5%以上10%未満
△ … 10%以上20%未満
× … 20%以上
排気面部材に溶射した材料の種類と上記評価の結果を表7に示す。
【0101】
【表7】
Figure 2004204301
【0102】
表7に示されているように、いずれの材料が溶射された排気面部材を用いた場合においても良好な結果が得られている。そのため、これらのいずれの材料が溶射された排気面部材を用いた場合であっても、形成した感光体の画像欠陥、帯電能の均一性、および感度の均一性の各項目について性能を向上させることができることがわかる。
【0103】
本発明の実施態様の例を以下に列挙する。
【0104】
[実施態様1]
真空気密可能であり、内部空間を排気するための排気口が開口している反応容器と、前記反応容器の内部空間を排気するために前記排気口に接続された排気手段と、前記反応容器の外部に設置されたカソード電極と、該カソード電極に高周波電力を印加する高周波電力導入手段と、前記反応容器の内部に設置された被成膜基体とを有し、前記高周波電力導入手段によって前記カソード電極に高周波電力を印加して前記カソード電極と前記対向電極との間にプラズマを発生させ、前記被成膜基体上に堆積膜を形成する堆積膜形成装置において、
前記反応容器内の前記排気配管が開口している部分には、前記反応容器の内部から前記排気配管内へ漏れるプラズマを減少させる複数の開口穴を有する排気面部材が設置されており、該排気面部材は前記反応容器の内壁に堆積膜が直接付着することを防ぐ防着板と一体に構成され、前記排気面部材の厚さは前記防着板の厚さよりも薄いことを特徴とする堆積膜形成装置。
【0105】
[実施態様2]
前記排気面部材と前記防着板の、前記反応容器の内部空間側に配置される面同士の間には段差が形成されていない、実施態様1に記載の堆積膜形成装置。
【0106】
排気面部材と防着板との間に段差がある場合には、堆積膜形成が長時間にわたり、排気面部材にも厚膜が堆積すると、前述したように排気面部材と防着板との隙間に形成された堆積膜のみならず、両者の段差部に形成された堆積膜も剥がれやすくなる場合がある。さらに、排気面部材の表面へ溶射を施した場合においては、排気面部材を長期間にわたって使い込むことで経時変化すると、段差部分では溶射材料自体が剥がれすくなる場合がある。さらに、段差部分では成膜条件によっては異常放電が起こってしまう場合があり、これにより基体に形成する堆積膜に悪影響を及ぼしたり、あるいはダストを発生させたりして、基体上に形成した堆積膜に欠陥が生じる要因となる場合がある。
【0107】
これに対して、本実施態様のように、排気面部材と防着板の、反応容器の内部空間側に配置される面同士の間には段差が形成されていない構成とすることにより、従来のように、排気面部材と防着板の段差部に形成された堆積膜が剥離したり、その段差部に溶射されていた溶射材が剥離したりするような不具合を根本的に無くすことができる。したがって、本実施態様によれば、基体上に形成した堆積膜に上記のような要因によって欠陥が生じることを防止することが可能である。
【0108】
[実施態様3]
前記排気面部材の、前記反応容器の内部空間側に配置される面に溶射材が溶射されている、実施態様1または2に記載の堆積膜形成装置。
【0109】
排気面部材に溶射材を溶射することにより、排気面部材と排気面部材上に堆積した堆積膜との密着性が向上し、堆積膜が排気面部材から剥がれ難くすることが可能になる。
【0110】
[実施態様4]
前記被成膜基体は円筒形に構成されており、前記反応容器内において前記反応容器の中心と同心の同一の円周上に等間隔に複数設置されている、実施態様1から3のいずれか1項に記載の堆積膜形成装置。
【0111】
[実施態様5]
前記堆積膜は電子写真感光体用堆積膜であり、少なくともシリコンを含む非単結晶物質からなる、実施態様1から4のいずれか1項に記載の堆積膜形成装置。
【0112】
[実施態様6]
前記高周波電力導入手段によって発振される前記高周波電力の周波数は50〜450MHzの範囲である、実施態様1から5のいずれか1項に記載の堆積膜形成装置。
【0113】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の堆積膜形成装置は、反応容器内の排気口が開口している部分には複数の開口穴を有する排気面部材が設置されており、排気面部材は反応容器の内壁に堆積膜が直接付着することを防ぐ防着板と一体に構成され、排気面部材の厚さは防着板の厚さよりも薄いので、排気領域近傍、特に排気面部材と防着板との間の微小な隙間部分での異常放電や微小な膜剥がれを防止すると共に、原料ガスを効率よく排気することによって、画像欠陥が少なく、電気特性の均一性に優れた良質な堆積膜形成を効率よく生産することができる。
【0114】
さらに、排気面部材と防着板の、反応容器の内部空間側に配置される面同士の間には段差が形成されていない構成とすることにより、従来のように、排気面部材と防着板の段差部に形成された堆積膜が剥離したり、その段差部に溶射されていた溶射材が剥離したりするような不具合を根本的に無くすことができ、一層良質な堆積膜形成をさらに効率よく生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の堆積膜形成装置の一実施形態を示す概略構成図である。
【図2】図1に示した装置における形成装置の横断面図を示す図である。
【図3】本発明の実施例によって作成された電子写真感光体の層構成を示す断面図である。
【図4】本発明の実施例に用いられる排気面部材の一例を示す図である。
【図5】本発明の実施例に用いられる排気面部材に形成された複数の穴を示す図である。
【図6】本発明の実施例に用いられる排気面部材の他の例を示す図である。
【図7】本発明の実施例で構成した電子写真感光体を用いて形成した画像を、各エリアごとに分割して評価するために画定した境界を示す図である。
【図8】本発明の比較例に用いられる排気面部材の一例を示す図である。
【図9】従来の堆積膜形成装置に用いられる排気面部材および防着板を示す斜視図である。
【符号の説明】
100 堆積膜形成装置
101 円筒形基体
102 反応容器
103 基体支持体
104 ガス供給システム
105 排気システム
106 電力供給システム
107 排気ポンプ
108 排気バルブ
109 メイン排気バルブ
110 スロットルバルブ
111 油拡散ポンプ
112 メイン排気ポンプ
113 電力源
114 カソード
115 マッチングボックス
116 モーター
117 ガス管
118 駆動部
119 排気口
120,1002,2002 排気面部材
121,1001,2001 防着板
201 基体
202 電荷注入阻止層
203 光導電層

Claims (1)

  1. 真空気密可能であり、内部空間を排気するための排気口が開口している反応容器と、前記反応容器の内部空間を排気するために前記排気口に接続された排気手段と、前記反応容器の外部に設置されたカソード電極と、該カソード電極に高周波電力を印加する高周波電力導入手段と、前記反応容器の内部に設置された被成膜基体とを有し、前記高周波電力導入手段によって前記カソード電極に高周波電力を印加して前記カソード電極と前記対向電極との間にプラズマを発生させ、前記被成膜基体上に堆積膜を形成する堆積膜形成装置において、前記反応容器内の前記排気口が開口している部分には複数の開口穴を有する排気面部材が設置されており、該排気面部材は前記反応容器の内壁に堆積膜が直接付着することを防ぐ防着板と一体に構成され、前記排気面部材の厚さは前記防着板の厚さよりも薄いことを特徴とする堆積膜形成装置。
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