JP2004155290A - 流量制御装置 - Google Patents

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昇 清水
Tadahiro Nakazato
肇宏 中里
Sachiko Hatano
幸子 羽田野
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Abstract

【課題】操舵角センサの取り付けが緩んだことによって生じる異常な信号を、異常と判断することのできる流量制御装置を提供する。
【解決手段】コントローラCは、操舵角センサ16からの信号が、正常であるか、あるいは異常であるかを判断している。そして、車速が一定速度以上で、かつ、一定値以上の操舵角速度信号ωが所定時間以上入力されたときに、操舵角センサ16からの信号が異常と判断するようにしている。上記操舵角センサ16からの信号を正常と判断した場合には、基本ソレノイド電流指令値Ibを出力し、異常と判断した場合には、基本ソレノイド電流指令値Ibに代えて、非常用ソレノイド電流指令値Iaを出力する。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、ソレノイド励磁電流によって制御対象に供給する流量を制御する流量制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の流量制御装置として、例えば特許文献1に記載されたものが知られている。この従来例を示したのが図3である。
図示したように、流量制御弁Vに、ポンプPを接続している。
上記流量制御弁Vのスプール1は、その一端を一方のパイロット室2に臨ませ、他端を他方のパイロット室3に臨ませている。上記一方のパイロット室2は、ポンプポート4を介してポンプPに常時連通している。また、他方のパイロット室3にはスプリング5を介在させている。このようにした両パイロット室2,3は、ソレノイドSOLの励磁電流Iに応じて開度を制御する可変オリフィスaを介して、たがいに連通している。
【0003】
すなわち、一方のパイロット室2は、流路6→可変オリフィスa→流路7を経由してパワーシリンダ8を制御するステアリングバルブ9の流入側に連通している。また、他方のパイロット室3は、流路10および流路7を介してステアリングバルブ9の流入側に連通している。
したがって、上記両パイロット室2,3は、可変オリフィスaを介して連通することになり、可変オリフィスaの上流側の圧力が一方のパイロット室2に作用し、下流側の圧力が他方のパイロット室3に作用することになる。
【0004】
そして、スプール1は、一方のパイロット室2の作用力と、他方のパイロット室3の作用力およびスプリング5の作用力とがバランスした位置を保つが、そのバランス位置において、前記タンクポート11の開度が決められる。
今、エンジン等からなるポンプ駆動源12が停止していると、ポンプポート4に圧油が供給されない。ポンプポート4に圧油が供給されなければ、両パイロット室2,3には圧力が発生しないので、スプール1はスプリング5の作用で図示のノーマル位置を保つ。
【0005】
上記の状態からポンプPが駆動して、ポンプポート4に圧油が供給されると、可変オリフィスaに流れができるので、そこに差圧が発生する。この差圧の作用で、両パイロット室2,3に圧力差が発生し、この圧力差に応じてスプール1がスプリング5に抗して移動し、上記バランス位置を保つ。
このようにスプール1がスプリング5に抗して移動することによって、タンクポート11の開度を大きくするが、このときのタンクポート11の開度に応じて、ステアリングバルブ9側に導かれる制御流量QPと、タンクTあるいはポンプPに還流される戻り流量QTの分配比が決まる。言い換えれば、タンクポート11の開度に応じて制御流量QPが決まることになる。
【0006】
上記のように制御流量QPが、スプール1の移動位置で決まるタンクポート11の開度に応じて制御されるということは、結局は、可変オリフィスaの開度に応じて制御流量QPが決まることになる。なぜなら、スプール1の移動位置は、両パイロット室2,3の圧力差で決まるとともに、この圧力差を決めているのが可変オリフィスaの開度だからである。
【0007】
したがって、車速や操舵状況に応じて、制御流量QPを制御するためには、可変オリフィスaの開度、すなわちソレノイドSOLの励磁電流を制御すればよいことになる。
なぜなら、可変オリフィスaは、ソレノイドSOLの励磁電流の大きさによって、開度を最大から最小まで任意に制御できるからである。
【0008】
なお、前記ステアリングバルブ9は、図示していないステアリングホィールの入力トルク(操舵トルク)に応じて、パワーシリンダ8の圧力を制御するものである。例えば、操舵トルクが大きければ、パワーシリンダ8への供給量を大きくし、操舵トルクが小さければそれに応じてパワーシリンダ8の圧力を小さくするようにしている。この操舵トルクとステアリングバルブ9の切り換え量は、図示していないトーションバーなどのねじれ反力によって決まることになる。
【0009】
上記のように操舵トルクが大きいときに、ステアリングバルブ9の切り換え量を大きくすれば、その分、パワーシリンダ8によるアシスト力が大きくなる。反対に、ステアリングバルブ9の切り換え量を小さくすれば、上記アシスト力は小さくなる。
そして、ピストンの移動速度によって決まるパワーシリンダ8の必要(要求)流量QMと、流量制御弁Vで決められる制御流量QPとをなるべく等しくすれば、ポンプP側のエネルギー損失を低く抑えることができる。なぜなら、ポンプP側のエネルギー損失は、制御流量QPとパワーシリンダ8の必要流量QMとの差によって発生するからである。
【0010】
上記のように制御流量QPを、パワーシリンダ8の必要流量QMにできるだけ近づけるために、可変オリフィスaの開度を制御するのが、ソレノイドSOLに対するソレノイド電流指令値SIであり、このソレノイド電流指令値SIを制御するのが、コントローラCである。
このコントローラCには、操舵角センサ16と車速センサ17とを接続し、これら両センサの出力信号に基づいて、ソレノイドSOLの励磁電流を制御するようにしている。
【0011】
なお、図中符号18はスプール1の先端に形成したスリットで、スプール1が図示の位置にあるときにも、このスリット18を介して一方のパイロット室2が流路7に常時連通するようにしている。言い換えると、スプール1が図示の状態にあって、流路6を閉じているようなときにも、ポンプPの吐出油が、このスリット18を介して、ステアリングバルブ9側に供給されるようにしている。
【0012】
このように微少流量であるが、ステアリングバルブ9側に圧油を供給するようにしたのは、キックバック等の外乱の防止、および応答性の確保を目的にしているからである。
なお、符号19は、コントローラCとソレノイドSOLとの間に接続したソレノイドSOLの駆動装置ある。
また、符号13,14は絞りであり、符号15はリリーフ弁である。
【0013】
【特許文献1】
特開2001−260917号公報(第3〜6頁、図1)
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような従来の装置では、操舵角センサ16の信号に基づいてソレノイドSOLの励磁電流を制御をするために、この操舵角センサ16を車体等に取り付けるようにしている。しかし、この取り付けた操舵角センサ16に飛び石などが衝突し、想定外の衝撃が作用することがある。このように想定外の衝撃が作用することによって、操舵角センサ16の取り付け箇所に緩みが生じることがある。操舵角センサ16の取り付け箇所が緩んでいると、走行中の振動や外力等の影響によって、操舵角センサ16ががたついたり、その取り付け位置がずれたりすることがある。そして、このように操舵角センサ16ががたついたり取り付け位置がずれたりすると、実際の操舵角速度とはかけ離れた大きな操舵角速度信号がコントローラCに出力されるおそれがある。また、逆に小さな信号が出力されたりすることもある。
【0015】
ところが、上記従来の装置では、実際の操舵角とかけ離れた信号が出力されても、その信号が異常であると判断することができないため、その信号に基づいてソレノイド電流指令値を制御してしまう。その結果、必要以上に大きなアシスト力が発揮されたり、アシスト力が不足するといった状況が生じて、操舵フィーリングが著しく損なわれるという問題があった。
【0016】
この発明の目的は、操舵角センサの取り付けが緩んだことによって生じる異常な信号を、異常と判断することのできる流量制御装置を提供することである。
【0017】
【課題を解決するための手段】
第1の発明は、ソレノイド励磁電流によって制御される制御対象と、ソレノイド励磁電流を制御するコントローラと、コントローラに接続するとともに操舵角を検出する操舵角センサとを備え、コントローラは、上記操舵角センサからの操舵角信号を基にして基本ソレノイド電流指令値Ibを決定し、この基本ソレノイド電流指令値Ibを基に励磁電流を制御する流量制御装置において、上記コントローラに車速センサを接続するとともに、このコントローラは、上記操舵角センサからの操舵角信号に基づいて操舵角速度を決定するとともに、車速が一定速度以上であって、所定の値以上の操舵角速度信号が入力されたとき、操舵角センサからの信号が異常と判断することを特徴とする。
【0018】
第2の発明のコントローラは、所定の値以上の操舵角速度信号が、一定時間以上継続して入力されたときに、操舵角センサからの信号が異常と判断することを特徴とする。
第3の発明のコントローラは、所定の値以上の操舵角速度信号が、一定時間内に所定の回数以上入力されたときに、操舵角センサからの信号が異常と判断することを特徴とする。
【0019】
第4の発明の制御対象は、パワーシリンダを制御するステアリングバルブの上流側に設けた可変オリフィスとするとともに、この可変オリフィスの開度を制御するソレノイドと、ポンプから供給される流量を、上記可変オリフィスの開度に応じてステアリングバルブに導く制御流量とタンクまたはポンプに環流させる戻り流量とに分配する流量制御弁とを備え、上記コントローラは、操舵角センサからの操舵角に応じたソレノイド電流指令値Iθと、車速センサからの車速に応じたソレノイド電流指令値Ivとを演算または記憶して、これらソレノイド電流指令値Iθとソレノイド電流指令値Ivとに基づいて基本ソレノイド電流指令値Ibとする一方、上記操舵角センサからの信号を異常と判断したときに、上記基本ソレノイド電流指令値Ibの最大値のほぼ半分の値を非常用ソレノイド電流指令値Iaとして出力することを特徴とする。
【0020】
【発明の実施の形態】
図1,図2に示した実施形態は、コントローラCに、操舵角センサの取り付け緩みなどによって生じる異常信号を判断する判定部を備えた点に特徴を有し、その他の構成については図3に示した前記従来例と同じである。
また、この実施形態では、制御対象を可変オリフィスaとし、この可変オリフィスaの開度をソレノイド励磁電流によって制御している。
以下では、コントローラCについて詳細に説明し、従来と同じ構成要素については同じ符号を付してその説明を省略する。
【0021】
上記コントローラCには、操舵角信号θ、操舵角速度信号ω、および車速信号vを入力するようにしている。
上記操舵角信号θは、操舵角センサ16によって検出した操舵角に基づいて算出し、車速信号vは、車速センサ17によって検出した車速に基づいて算出している。また、操舵角速度信号ωは、上記操舵角信号θを微分して算出したものである。
【0022】
上記コントローラCは、判定部において、操舵角センサ16からの信号が、正常であるか、あるいは異常であるかを判断している。そして、操舵角センサ16からの信号を正常と判断した場合には、基本ソレノイド電流指令値Ibを出力し、異常と判断した場合には、基本ソレノイド電流指令値Ibに代えて、非常用ソレノイド電流指令値Iaを出力する。
以下では、コントローラCが、操舵角センサ16からの信号が、異常か否かを判断する手順を図1に基づいて説明する。
【0023】
図1に示したように、コントローラCは、ステップ101で車速センサ17からの車速信号vを読みこむ。上記コントローラCは、ステップ102で操舵角センサ16からの操舵角信号θを読みこむとともに、この操舵角信号θから操舵角速度信号ωを決定する。
そして、ステップ103で車速が一定速度以上であるかどうかを判断する。車速が一定速度よりも低い場合、すなわち停車時から低速走行時の範囲内ではステップ104に進む。ステップ104については後で詳細に説明する。一方、一定速度以上で走行中の場合にはステップ105に進み、操舵角センサ16からの信号の異常判定を行う。
【0024】
上記ステップ105では、上記異常判定を行うために、操舵角速度信号ωが一定値以上かどうかを判断する。操舵角速度信号ωが一定値よりも小さい場合には、ステップ104に進む。操舵角速度信号ωが一定値以上の場合には、操舵角センサ16からの信号が異常である可能性があるとしてステップ106に進む。
そして、ステップ106で上記異常の可能性がある信号が入力されている異常経過時間tをカウントする。
【0025】
上記異常経過時間tをカウントしたら、ステップ107でこの異常経過時間tが所定時間以上続いたかどうかを判断する。この所定時間を例えば1sと設定している。これに対して、このフローの1サイクルを約0.1sとしている。したがって、1サイクルでカウントされる異常経過時間tは0.1sであり、この異常経過時間tが10回以上カウントされなければ、所定時間1s以上続いたと判断されない。言い換えれば、上記ステップ103で車速が一定速度以上と判断され、ステップ105で操舵角速度信号ωが一定値以上と判断された状態が10サイクル以上続けば、異常事態が所定時間1sに達し、異常経過時間tが所定時間以上続いたと判断される。
そして、上記異常経過時間tが所定時間以上続いた場合には、ステップ108に進み、操舵角センサ16からの信号が異常であると判断する。
【0026】
上記のように、車速が一定速度以上で、しかも一定値以上の操舵角速度信号ωが所定時間入力された場合に、操舵角センサ16からの信号が異常であると判断するようにしたのは、以下の理由からである。
車両が例えば60km/hの速度以上の中高速域で走行している場合に、道路状況に応じて右左折などの操舵を行うが、このような中高速域で走行中に、ハンドルを急に操舵する可能性は非常に低い。すなわち、中高速域において、急ハンドルを切るということはほとんどないため、大きな操舵角速度信号ωが検出される可能性は極めて低い。
【0027】
このような中高速域にもかかわらず、大きな操舵角速度信号ωが検出されるということは、取り付けの緩み等が原因で、操舵角センサ16が異常な信号を出力していることが考えられる。
そこで、この実施形態では、車速が一定の速度異常であって、所定の値以上の大きな操舵角速度信号がコントローラCに入力された場合に、このコントローラCが異常信号であると判断するようにした。
上記のようにステップ108で操舵角センサ16から出力された信号が以上であると判断したら、ステップ109で非常用ソレノイド電流指令値Iaを出力する。
【0028】
一方、異常経過時間tが所定時間よりも短い場合には、操舵角センサ16からの信号が正常であると判断し、ステップ110に進み基本ソレノイド電流指令値Ibを出力する。
【0029】
なお、図1のフローチャートでは、上記非常用ソレノイド電流指令値Iaまたは基本ソレノイド電流指令値Ibが出力されたら、再びスタートに戻って、上記故障の判断を繰り返しおこなうようにしている。
また、上記ステップ103で車速が一定速度よりも小さく、またステップ105で操舵角速度が一定よりも小さいと判断された場合には、ステップ104に進み、異常経過時間tがリセットされる。そして、この異常経過時間tをリセットしてから、ステップ110で基本ソレノイド電流指令値Ibを出力する。
このようにステップ104で異常経過時間tをリセットすることによって、前回のサイクルまでは異常状態であったが、これが回復して正常な状態に戻った場合などに対応することができる。すなわち、回復して正常な状態に戻った場合には、基本ソレノイド電流指令値Ibによる制御をすることができる。
【0030】
上記図1のフローで操舵角センサ16からの信号が正常であると判断された場合には、コントローラCは、基本ソレノイド電流指令値Ibを出力し、通常制御をおこなう。以下、この通常制御について図2を用いて説明する。
図2に示したように、コントローラCには、操舵角信号θ、操舵角速度信号ω、および車速信号vを入力する。コントローラCは、上記操舵角信号θに基づいてソレノイド電流指令値Iθを決定するが、このソレノイド電流指令値Iθは、その操舵角信号θと制御流量QPとの関係がリニアな特性になる理論値に基づいて決めている。また、操舵角速度信号ωに基づいてソレノイド電流指令値Iωを決定するが、ソレノイド電流指令値Iωも、操舵角速度信号ωと制御流量QPとがリニアな特性になる理論値に基づいて決めている。
【0031】
ただし、ソレノイド電流指令値Iθおよびソレノイド電流指令値Iωは、操舵角信号θおよび操舵角速度信号ωが、ある設定値以上にならなければいずれもゼロを出力するようにしている。つまり、ステアリングホィールが中立あるいはその近傍にあるときには、上記ソレノイド電流指令値IθもIωもゼロになるようにしている。
【0032】
また、上記ソレノイド電流指令値Iθ、Iωは、テーブル値としてコントローラCにあらかじめ記憶させておいてもよいし、操舵角信号θあるいは操舵角速度信号ωを基にして、その都度コントローラCに演算させるようにしてもよい。
いずれにしてもソレノイド電流指令値Iθとソレノイド電流指令値Iωとを決定したら、これら両者を加算する。
【0033】
上記のようにして両ソレノイド電流指令値Iθ、Iωを加算したら、この加算値(Iθ+Iω)に、車速信号vに基づいたソレノイド電流指令値Ivを乗算する。
この車速信号vに基づいたソレノイド電流指令値Ivは、車速が低速域では1を出力し、高速域ではゼロを出力する。また、低速域と高速域との間の中速域では、1からゼロまでの小数点以下の値を出力するようにしている。
【0034】
したがって、上記加算値(Iθ+Iω)に車速信号vに基づいたソレノイド電流指令値Ivを乗算すれば、低速域では(Iθ+Iω)がそのまま出力され、高速域では(Iθ+Iω)がゼロになる。
また、中速域では、速度が上がれば上がるほどそれに反比例した値が出力されることになる。
上記のようにして、(Iθ+Iω)×Ivが決まったら、それにスタンバイソレノイド電流指令値Isを加算する。
【0035】
このスタンバイソレノイド電流指令値Isは、可変オリフィスaの開度を制御するソレノイドSOLに所定の電流が常に供給されるようにするためのものである。つまり、操舵角信号θ、操舵角速度信号ωおよび車速信号vに基づいたソレノイド電流指令値が全てゼロの場合でも、スタンバイソレノイド電流指令値Isによって可変オリフィスaが一定の開度を保ち、所定のスタンバイ流量QSがステアリングバルブ9側に常に供給されるようにしている。
【0036】
このように一定のスタンバイ流量QSを確保する理由は、以下の通りである。すなわち、タイヤにキックバック等の外乱やセルフアライニングトルク等による抗力が作用すると、それがパワーシリンダ8のロッドに作用するが、このような場合であっても、スタンバイ流量QSを確保しておけば、タイヤがふらつくのを防止できるからである。また、スタンバイ流量QSを確保しておけば、それが全然ないときよりも、目的の制御流量に短時間で達することができる分、応答性を向上させることができるからである。
【0037】
上記のようにして、スタンバイソレノイド電流指令値Isを加算した値〔{(Iθ+Iω)×Iv}+Is〕を、基本ソレノイド電流指令値IbとしてコントローラCから出力する。
【0038】
上記通常制御をおこなっている場合には、走行中にステアリングホィールを操舵すると、そのときの操舵角信号θと操舵角速度信号ωとに基づいて、コントローラCがソレノイド電流指令値IθとIωとを特定する。そして、これらソレノイド電流指令値Iθ,Iωを加算するとともに、この加算した値(Iθ+Iω)に、そのときの車速に応じたソレノイド電流指令値Ivを乗算する。さらに、この乗算値(Iθ+Iω)×Ivに、スタンバイソレノイド電流指令値Isを加算して、この加算値{(Iθ+Iω)×Iv}+Isを基本ソレノイド電流指令値IbとしてコントローラCから出力する。
【0039】
一方、ステアリングホィールを中立位置近傍に保っているときは、ソレノイド電流指令値Iθもソレノイド電流指令値Iωもゼロになる。しかし、この場合にも、スタンバイソレノイド電流指令値Isだけは出力されるので、スタンバイ流量は必ず確保される。
したがって、低速域での直進走行時であっても、キックバック等による外乱に対抗でき、また、操舵時の応答性も良好に保つことができる。
【0040】
また、必要流量QMは、操舵トルクを考慮せずにを特定しているが、操舵トルクに基づいて必要流量QMを制御した方が、より正確な制御ができる。それにもかかわらず、この実施形態で操舵トルクを考慮していないのは、操舵トルクに基づいて制御する場合には、現状のパワーステアリング装置を大幅に変更しなければならず、それがコストアップにつながるからである。
上記のように、操舵角θおよび操舵角速度ωに基づいて、必要流量QMを推定する方法を採用すれば、現状のパワーステアリング装置をほとんど変更しなくても済む。したがって、この実施形態によれば、操舵トルクを直接検出するシステムよりも、コストを安く抑えることができる。
【0041】
また、上記のような通常制御の場合には、操舵角信号θ、操舵角速度ω、車速信号vに基づいた基本ソレノイド電流指令値Ibを出力することによって、省エネを実現しつつ、ドライバーの操舵フィーリングを良好に保つことができる。
【0042】
一方、図1のフローで操舵角センサ16からの信号が異常であると判断した場合には、コントローラCは非常用ソレノイド電流指令値Iaを出力する。この非常用ソレノイド電流指令値Iaは、上記基本ソレノイド電流指令値Ibの最大値のほぼ半分の値としている。すなわち、上記基本ソレノイド電流指令値Ibの最小値と最大値との中間値を非常用ソレノイド電流指令値Iaとして出力する。
【0043】
この非常用ソレノイド電流指令値Iaに基づいて、可変オリフィスaのソレノイドの励磁電流を制御する。したがって、可変オリフィスaは一定の開度を保つようになる。可変オリフィスaが一定の開度を保つので、パワーシリンダにも一定の作動油が供給される。したがって、上記中間値を出力することによって、パワーシリンダのアシスト力が急に大きくなったり、小さくなったりするのを防止することができる。アシスト力が急に大きくなったり小さくなったりするのを防止できるので、ステアリングホィールが極端に軽すぎたり重すぎたりして、ドライバーの操舵フィーリングが著しく損なわれるのを防止することができる。
【0044】
また、前記従来例では、上記操舵角センサ16取り付けが緩んだりして極端に大きな異常信号が出力された場合には、この異常信号に基づいてパワーシリンダ側に大きな流量を供給していた。したがって、その分、エネルギーロスが生じていた。しかし、この実施形態では、中間値である非常用ソレノイド電流指令値Iaを出力するようにしたので、従来に比べて、供給流量を少なくすることができ、その分、省エネ効果を発揮することができる。
【0045】
さらに、上記実施形態では、車速が一定速度以上で、かつ、一定値以上の操舵角速度信号ωが所定時間以上入力されたときに、操舵角センサ16からの信号が異常と判断するようにしている。この判断方法によれば、操舵角センサ16が正常な取り付け位置からずれた状況を効果的に判断することができる。
【0046】
なお、上記実施形態では、車速が一定速度以上で、かつ、一定値以上の操舵角速度信号ωが所定時間以上出力された場合に操舵角センサ16からの信号が異常であると判断するようにしているが、これに限ったものではない。例えば、所定時間内に一定値以上の操舵角速度信号ωが入力される回数を測定し、この回数が一定回数以上になったときに、異常信号であると判断するようにしてもよい。
このように一定値以上の操舵角速度信号ωが入力される回数によって、異常を判断する場合には、緩んだ操舵角センサ16がぶらついているような状況に対して効果的である。
【0047】
なお、上記実施形態では、非常用ソレノイド電流指令値Iaは、基本ソレノイド電流指令値Ibの中間値としているが、これに限ったものではない。例えば、車速センサ17からの車速信号vを基に非常用ソレノイド電流指令値Iaを決定し、これを出力するようにしてもよい。
上記車速センサ17の車速信号vを基に非常用ソレノイド電流指令値Iaを出力する場合には、コントローラCは、図2で示したように、車速信号vからソレノイド電流指令値Ivを決定し、このソレノイド電流指令値Ivにスタンバイソレノイド電流指令値Isを加算する。そして、この加算した値を非常用ソレノイド電流指令値Iaとして出力する。
このように車速信号vを基にある非常用ソレノイド電流指令値Iaを決めるようにすれば、この非常用ソレノイド電流指令値Iaは、車速信号vに応じてある程度変動するようになる。したがって、より操舵状況に応じた操舵フィーリングを得ることができる。
【0048】
また、上記実施形態では、ステアリングバルブに設けた可変オリフィスaを制御対象としているが、これに限ったものではない。例えば、四輪駆動車の後輪の操舵機構や、車両の自動操舵機構を制御対象としてもよい。
さらに、図1のフローで操舵角センサの異常と判断した場合には、異常用ソレノイド電流指令値Iaを出力し、正常と判断した場合には、基本ソレノイド電流指令値Ibを出力するようにしているが、この切り替えを特別に設けた切替手段で切り替えるようにしてもよい。
【0049】
【発明の効果】
第1の発明によれば、コントローラは、車速が一定速度以上であって、所定の操舵角速度信号が入力されたとき、操舵角センサ16からの信号が異常であると判断することができる。したがって、上記異常と判断した場合には、この異常信号を用いないで制御対象の制御をすることができる。上記異常信号を用いない制御として、非常用ソレノイド電流指令値による制御が考えられる。
【0050】
第2の発明によれば、コントローラは、一定値以上の操舵角速度信号が、所定時間以上継続的に入力されたときに操舵角センサ16からの信号が異常であると判断することとしたので、例えば、正常な取り付け位置から操舵角センサがずれてた位置を保ったままの場合であっても、これを判断することができる。
【0051】
第3の発明によれば、コントローラは、一定値以上の操舵角速度信号が所定時間内に一定回数入力されたときに操舵角センサからの信号が異常であると判断することとしたので、例えば、操舵角センサの取り付け異常によって、操舵角センサがぶらついているような場合であっても、これを確実に判断することができる。
【0052】
第4の発明によれば、制御対象は、パワーシリンダを制御するステアリングバルブの上流側に設けた可変オリフィスとし、異常信号と判断した場合には、上記基本ソレノイド電流指令値Iの中間電流を出力することとした。したがって、パワーシリンダのアシスト力が、極端に大きくなったり小さくなったりするのを防止することができ、ドライバーの操舵フィーリングを安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態のフロー図である。
【図2】第1実施形態のコントローラの通常制御の制御系を示すブロック図である。
【図3】従来例の回路図である。
【符号の説明】
8 パワーシリンダ
9 ステアリングバルブ
16 操舵角センサ
17 車速センサ
V 流量制御弁
P ポンプ
a 可変オリフィス
QP 制御流量
QT 戻り流量
C コントローラ
θ 操舵角信号
v 車速信号
Iθ ソレノイド電流指令値
Iv ソレノイド電流指令値
Ia 非常用ソレノイド電流指令値
Ib 基本ソレノイド電流指令値

Claims (4)

  1. ソレノイド励磁電流によって制御される制御対象と、ソレノイド励磁電流を制御するコントローラと、コントローラに接続するとともに操舵角を検出する操舵角センサとを備え、コントローラは、上記操舵角センサからの操舵角信号を基にして基本ソレノイド電流指令値Ibを決定し、この基本ソレノイド電流指令値Ibを基に励磁電流を制御する流量制御装置において、上記コントローラに車速センサを接続するとともに、このコントローラは、上記操舵角センサからの操舵角信号に基づいて操舵角速度を決定するとともに、車速が一定速度以上であって、所定の値以上の操舵角速度信号が入力されたとき、操舵角センサからの信号が異常と判断することを特徴とする流量制御装置。
  2. コントローラは、所定の値以上の操舵角速度信号が、一定時間以上継続して入力されたときに、操舵角センサからの信号が異常と判断することを特徴とする請求項1記載の流量制御装置。
  3. コントローラは、所定の値以上の操舵角速度信号が、一定時間内に所定の回数以上入力されたときに、操舵角センサからの信号が異常と判断することを特徴とする請求項1記載の流量制御装置。
  4. 制御対象は、パワーシリンダを制御するステアリングバルブの上流側に設けた可変オリフィスとするとともに、この可変オリフィスの開度を制御するソレノイドと、ポンプから供給される流量を、上記可変オリフィスの開度に応じてステアリングバルブに導く制御流量とタンクまたはポンプに環流させる戻り流量とに分配する流量制御弁とを備え、上記コントローラは、操舵角センサからの操舵角に応じたソレノイド電流指令値Iθと、車速センサからの車速に応じたソレノイド電流指令値Ivとを演算または記憶して、これらソレノイド電流指令値Iθとソレノイド電流指令値Ivとに基づいて基本ソレノイド電流指令値Ibとする一方、上記操舵角センサからの信号を異常と判断したときに、上記基本ソレノイド電流指令値Ibの最大値のほぼ半分の値を非常用ソレノイド電流指令値Iaとして出力することを特徴とする請求項1〜3の何れか1に記載の流量制御装置。
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