JP3742785B2 - パワーステアリング装置 - Google Patents
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Description
この発明は、パワーシリンダ側に導く流量を制御する流量制御弁を備えたパワーステアリング装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
図7および図8に示した従来の装置は、特開2001−163233に記載された流量制御弁Vである。
この流量制御弁VにはポンプPを接続するとともに、スプール1は、その一端を一方のパイロット室2に臨ませ、他端を他方のパイロット室3に臨ませている。上記一方のパイロット室2は、ポンプポート4を介してポンプPに常時連通している。また、他方のパイロット室3にはスプリング5を介在させている。このようにした両パイロット室2,3は、可変オリフィスaを介して、たがいに連通している。この可変オリフィスaは、ソレノイドSOLに対するソレノイド電流指令値SIに応じて開度を制御するが、この詳細は後で説明する。
【0003】
すなわち、一方のパイロット室2は、流路6→可変オリフィスa→流路7を経由してパワーシリンダ8を制御するステアリングバルブ9の流入側に連通している。また、他方のパイロット室3は、流路10および流路7を介してステアリングバルブ9の流入側に連通している。
したがって、上記両パイロット室2,3は、可変オリフィスaを介して連通することになり、可変オリフィスaの上流側の圧力が一方のパイロット室2に作用し、下流側の圧力が他方のパイロット室3に作用することになる。
【0004】
そして、スプール1は、一方のパイロット室2の作用力と、他方のパイロット室3の作用力とがバランスした位置を保つが、そのバランス位置において、前記ポンプポート4とタンクポート11との開度が決められる。
今、エンジン等からなるポンプ駆動源12が停止していると、ポンプポート4に圧油が供給されない。ポンプポート4に圧油が供給されなければ、両パイロット室2,3には圧力が発生しないので、スプール1はスプリング5の作用で図示のノーマル位置を保つ。
【0005】
なお、図中符号13はスプール1の先端に形成したスリットで、スプール1が図示の位置にあるときにも、このスリット13を介して一方のパイロット室2が流路7に常時連通するようにしている。言い換えると、スプール1が図示の状態にあって、流路6を閉じているようなときにも、ポンプPの吐出油が、このスリット13を介して、ステアリングバルブ9側に供給されるようにしている。
【0006】
このように微少流量であるが、ステアリングバルブ9側に圧油を供給するようにしたのは、装置全体の焼き付きの防止、キックバック等の外乱の防止、および応答性の確保を目的にしているからである。
【0007】
そして、上記のノーマル状態からポンプPが駆動して、ポンプポート4に圧油が供給されると、可変オリフィスaに流れができるので、そこに差圧が発生する。この差圧の作用で、両パイロット室2,3に圧力差が発生し、この圧力差に応じてスプール1がスプリング5に抗して移動し、上記バランス位置を保つ。
このようにスプール1がスプリング5に抗して移動することによって、タンクポート11の開度を大きくするが、このときのタンクポート11の開度に応じて、ステアリングバルブ9側に導かれる制御流量QPと、タンクTあるいはポンプPに還流される戻り流量QTの分配比が決まる。言い換えれば、タンクポート11の開度に応じて制御流量QPが決まることになる。
【0008】
上記のように制御流量QPが、スプール1の移動位置で決まるタンクポート11の開度に応じて制御されるということは、結局は、可変オリフィスaの開度に応じて制御流量QPが決まることになる。なぜなら、スプール1の移動位置は、両パイロット室2,3の圧力差で決まるとともに、この圧力差を決めているのが可変オリフィスaの開度だからである。
【0009】
したがって、車速や操舵状況に応じて、制御流量QPを制御するためには、可変オリフィスaの開度、すなわちソレノイドSOLに対するソレノイド電流指令値SIを制御すればよいことになる。
なぜなら、可変オリフィスaは、ソレノイドSOLが非励磁状態のときにその開度を最少に保ち、励磁電流を大きくしていくにしたがってその開度を大きくするからである。
【0010】
なお、前記ステアリングバルブ9は、図示していないステアリングホィールの入力トルク(操舵トルク)に応じて、パワーシリンダ8の圧力を制御するものである。例えば、操舵トルクが大きければ、パワーシリンダ8への供給量を大きくし、操舵トルクが小さければそれに応じてパワーシリンダ8の圧力を小さくするようにしている。この操舵トルクとステアリングバルブ9の切り換え量は、図示していないトーションバーなどのねじれ反力によって決まることになる。
【0011】
上記のように操舵トルクが大きいときに、ステアリングバルブ9の切り換え量を大きくすれば、その分、パワーシリンダ8によるアシスト力が大きくなる。反対に、ステアリングバルブ9の切り換え量を小さくすれば、上記アシスト力は小さくなる。
そして、ピストンの移動速度によって決まるパワーシリンダ8の必要(要求)流量QMと、流量制御弁Vで決められる制御流量QPとをなるべく等しくすれば、ポンプP側のエネルギー損失を低く抑えることができる。なぜなら、ポンプP側のエネルギー損失は、制御流量QPとパワーシリンダ8の要求流量QMとの差によって発生するからである。
【0012】
上記のように制御流量QPを、パワーシリンダ8の要求流量QMにできるだけ近づけるために、可変オリフィスaの開度を制御するのが、ソレノイドSOLに対するソレノイド電流指令値SIであり、このソレノイド電流指令値SIを制御するのが、コントローラCである。そして、このコントローラCには、操舵角センサ14と車速センサ15とを接続し、これら両センサの出力信号に基づいて、ソレノイド電流指令値SIを制御するようにしている。
【0013】
なお、符号16は、コントローラCとソレノイドSOLとの間に接続したソレノイドSOLの駆動装置である。また、符号17,18は絞りであり、符号19はリリーフ弁である。
【0014】
上記コントローラCには、上記操舵角センサ14、車速センサ15から操舵角信号Sθ、操舵角速度信号Sωおよび車速信号Svが入力される。
上記操舵角信号Sθは、操舵角センサ14によって検出した操舵角に基づいて算出し、車速信号Svは、車速センサ15によって検出した車速に基づいて算出している。また、操舵角速度信号Sωは、上記操舵角信号Sθを微分して算出したものである。ただし、この操舵角速度信号Sωは、操舵角速度センサを別に設けて、この操舵角速度センサによって直接求めてもよい。
【0015】
上記コントローラCは、操舵角信号Sθ、操舵角速度信号Sωおよび車速信号Svを基準にして、ソレノイドSOLの励磁電流の基礎となるソレノイド電流指令値SIを出力するが、以下にこのコントローラCの作用について説明する。
操舵角信号Sθと電流指令値Iθとは、その操舵角信号Sθと制御流量QPとの関係がリニアな特性になる理論値に基づいて決めている。また、操舵角速度信号Sωと電流指令値Iωとの関係も、操舵角速度信号Sωと制御流量QPとがリニアな特性になる理論値に基づいて決めている。
【0016】
ただし、電流指令値Iθおよび電流指令値Iωは、操舵角信号Sθおよび操舵角速度信号Sωが、ある設定値以上にならなければいずれもゼロを出力するようにしている。つまり、ステアリングホィールが中立あるいはその近傍にあるときには、上記電流指令値IθもIωもゼロになるようにしている。つまり、その中立近傍に不感帯域を設けている。
【0017】
また、上記電流指令値Iθ、Iωは、テーブル値としてコントローラCにあらかじめ記憶させておいてもよいし、操舵角信号Sθあるいは操舵角速度信号Sωを基にして、その都度コントローラCに演算させるようにしてもよい。
いずれにしても電流指令値Iθと電流指令値Iωとを決定したら、これら両者を加算する。
【0018】
上記のようにして両電流指令値Iθ、Iωを加算したら、この加算値(Iθ+Iω)に、車速信号Svに基づいた電流指令値Ivを乗算する。
この車速信号Svに基づいた電流指令値Ivは、車速が低速域では1を出力し、高速域ではゼロを出力する。また、低速域と高速域との間の中速域では、1からゼロまでの小数点以下の値を出力するようにしている。
【0019】
したがって、上記加算値(Iθ+Iω)に車速信号Svに基づいた電流指令値Ivを乗算すれば、低速域では(Iθ+Iω)がそのまま出力され、高速域では(Iθ+Iω)がゼロになる。
また、中速域では、速度が上がれば上がるほどそれに反比例した値が出力されることになる。
上記のようにして、(Iθ+Iω)×Ivが決まったら、それにスタンバイ用の電流指令値Isを加算する。
【0020】
このスタンバイ用の電流指令値Isは、可変オリフィスaのソレノイドSOLに所定の電流を常に供給するためのものである。つまり、操舵角信号Sθ、操舵角速度信号Sωおよび車速信号Svに基づいた電流指令値が全てゼロの場合でも、電流指令値Isによってソレノイド電流指令値SIが確保されるようにして、可変オリフィスaが一定の開度を保ち、所定のスタンバイ流量QSがステアリングバルブ9側に常に供給されるようにしている。
【0021】
一方、省エネという観点からすると、パワーシリンダ8およびステアリングバルブ9側の要求流量QMがゼロなら、流量制御弁Vの制御流量QPもゼロにするのが理想的である。つまり、制御流量QPをゼロにするということは、ポンプPの吐出量全量をタンクポート11からポンプPまたはタンクTに還流させること意味する。そして、タンクポート11からポンプPまたはタンクTに還流する流路は、本体B内にあって非常に短いので、その圧力損失がほとんどない。圧力損失がほとんどないので、ポンプPの駆動トルクも最小に抑えられ、その分、省エネにつながることになる。
このような意味から、要求流量QMがゼロのときに、制御流量QPもゼロにするのが、省エネという観点からは有利になる。
【0022】
それにもかかわらず、要求流量QMがゼロのときでもスタンバイ流量QSを確保しているのは、次の2つの理由からである。
【0023】
▲1▼キックバック等の外乱やセルフアライニングトルクに対抗
タイヤに外乱やセルフアライニングトルク等による抗力が作用すると、それがパワーシリンダ8のロッドに作用する。もし、スタンバイ流量を確保しておかなければ、この外乱やセルフアライニングトルクによる抗力で、タイヤがふらついてしまう。しかし、スタンバイ流量を確保しておけば、たとえ上記抗力が作用したとしても、タイヤがふらついたりしない。すなわち、上記パワーシリンダ8のロッドには、ステアリングバルブ9を切り換えるためのピニオン等がかみ合っているので、上記抗力が作用すると、ステアリングバルブも切り換わって、その抗力に対抗する方向にスタンバイ流量を供給することになる。したがって、スタンバイ流量を確保しておけば、上記キックバックによる外乱やセルフアライニングトルクに対抗できることになる。
【0024】
▲2▼応答性の確保
上記のようにスタンバイ流量QSを確保しておけば、それが全然ないときよりも、目的の制御流量QPに到達する時間が短くてすむ。この時間差が応答性になるので、結局、スタンバイ流量QSを確保した方が、応答性を向上させることができる。
【0025】
今、車速が低速域にある状態で操舵すれば、その時の操舵角θと操舵角速度ωによって、電流指令値IθとIωとが決まる。そして、これら指令値を加算するとともに、この加算値(Iθ+Iω)に車速vに応じた電流指令値Iv=1を掛け合わせる。その乗算値である(Iθ+Iω)に、スタンバイ流量を確保するための電流指令値Isをさらに加算する。
すなわち、低速域では、ソレノイド電流指令値SIは、SI=Iθ+Iω+Isということになる。
【0026】
なお、上記のように操舵角θによる電流指令値Iθと、操舵角速度ωによる電流指令値Iωとを加算しているのは、次の理由からである。
第1の理由は、応答性を確保することである。つまり、パワーシリンダ8やステアリングバルブ9側の要求流量QMに対して、常に、多めの制御流量QMを供給している方が、パワーシリンダの応答性がよくなる。
【0027】
第2の理由は、保舵時の安定を確保するためである。例えば、ステアリングバルブ9側の要求流量QMを推定するには、操舵トルクに最も近似している操舵角速度ωを利用するのがよい。
したがって、理論的には、操舵角速度ωによる電流指令値Iωだけでも、それなりの制御が可能になる。しかし、操舵角速度ωは、ステアリングを操舵している最中にしか発生しない。例えば、ステアリングをある角度操舵して、その舵角の位置でステアリングを止めて保舵しているときには、操舵角速度ωはゼロになってしまう。
【0028】
もし、上記のような保舵時に、制御流量QPを確保できなければ、車両のセルフアライニングトルクや外力に対する保舵力が大きくなってしまう。
しかし、上記ように操舵角θをパラメータにしておけば、保舵時であっても操舵角θが保たれているので、電流指令値Iθを確保できる。したがって、この電流指令値Iθで保舵に必要なパワーを維持できることになる。
なお、上記操舵角θと操舵角速度ωとの関係は、低速域、中速域および高速域での走行中にもすべて同じようにあてはまることである。
【0029】
また、低速域での走行中でも、直進走行時などでステアリングホィールを中立位置近傍に保っているときには、操舵角θによる電流指令値Iθおよび操舵角速度ωによる電流指令値Iωはゼロになってしまう。しかし、この場合にも、電流指令値Isだけは出力されるので、スタンバイ流量は必ず確保されることになるので、キックバック等による外乱にも対抗できる。しかも、スタンバイ流量を確保しているので、応答性も良好に保つことができる。
【0030】
車速が高速域にあるときには、車速による電流指令値Ivがゼロになる。この電流指令値Ivがゼロになれば、(Iθ+Iω)×Iv=0となるので、制御流量QPは、スタンバイ流量QSだけとなり、ステアリング操作には大きな操舵トルクを必要とする。
そして、中速域での走行中には、その速度が上がるにつれて、車速による電流指令値Ivが小さくなっていくので、それにともなって制御流量QPも少なくなる。したがって、大きな操舵トルクを必要とすることになる。
【0031】
【発明が解決しようとする課題】
上記のようにした従来のパワーステアリング装置では、ステアリングホィールを切ったままで、言い換えると操舵角を保ったままで車両を停止させたときには、電流指令値Iθが操舵角に応じた値を出力する。また、ステアリングホィールを切ったまま停止しているときには、操舵角速度ωによる電流指令値Iωはゼロであり、車速vによる電流指令値Ivが1を出力することになる。
したがって、ステアリングホィールを切ったまま停止しているときには、操舵角に応じた電流指令値Iθが出力されることになる。
【0032】
上記のように操舵角を保ったまま停止しているときに電流指令値Iθが出力されるということは、その分、ステアリングバルブ9に圧油が必要以上に供給されることになり、エネルギーロスになるという不具合があった。
なお、操舵角を保ったまま車両を停止させる状況としては、次の場合が考えられる。例えば、ステアリングホィールを切ったまま車庫入れを終了した場合で、少しの間エンジンを切らないでいるときや、走行中に車線を変更するためにステアリングホィールを切ったが、その瞬間に信号待ちで停止するときなどである。
【0033】
この発明の目的は、保舵しながら停止あるいは微速走行状態にある場合のエネルギーロスをなくすことによって、さらに省エネに寄与するパワーステアリング装置を提供することである。
【0034】
【課題を解決するための手段】
この発明は次の装置を前提にしている。すなわち、パワーシリンダを制御するステアリングバルブと、このステアリングバルブの上流側に設けた可変オリフィスと、この可変オリフィスの開度を制御するソレノイドと、このソレノイドを駆動するソレノイド電流指令値SIを制御するコントローラと、ポンプから供給される流量を、上記可変オリフィスの開度に応じてステアリングバルブに導く制御流量あるいはタンクまたはポンプに環流させる戻り流量に分配する流量制御弁とを備え、上記コントローラには、操舵角センサと車速センサとを接続し、上記操舵角センサからの操舵角信号Sθに応じた操舵角θを演算または記憶する一方、コントローラはこの操舵角θに応じた電流指令値Iθを記憶または演算するとともに、上記車速センサからの車速信号Svに応じた車速vを演算または記憶する一方、コントローラはこの車速vに応じた電流指令値Ivを記憶または演算し、上記電流指令値Iθおよび電流指令値Ivを基に可変オリフィスのソレノイド電流指令値SIを制御する構成にしたパワーステアリング装置を前提にする。
【0035】
第1の発明は、上記電流指令値Iθが、車速センサからの車速信号Svが設定極微速域以上の場合に対応する走行用電流指令値Iθ1と、上記車速信号Svがゼロまたは設定極微速域に対応する停車用電流指令値Iθ2とからなり、上記操舵角信号Sθに対する停車用電流指令値Iθ2の増加の割合を、操舵角信号Sθに対する走行用電流指令値Iθ1の増加の割合よりも小さくし、上記コントローラは、車速センサからの車速信号Svがゼロまたは設定極微速域にあるとき、可変オリフィスの開度が小さくなるようにソレノイド電流指令値SIを制御する構成にしている。
上記のように車速信号Svがゼロまたは設定極微速域にあるときには、車両が停止しているか、微速走行中である。このような状況では、たとえステアリングホィールを切った状態にあっても、制御流量を必要としない。したがって、このような状態のときには、可変オリフィスの開度を極力小さくすることで、エネルギーロスを少なくすることができる。しかも、上記のように、操舵角信号Sθに対する停車用電流指令値Iθ2の増加の割合を、操舵角信号Sθに対する走行用電流指令値Iθ1の増加の割合よりも小さくすることによって、車速信号Svがゼロまたは設定極微速域にあるときの出力値を小さくすることができる。
【0036】
第2の発明の走行用電流指令値Iθ1および停車用電流指令値Iθ2には、上記操舵角θがゼロまたはその近傍で電流指令値Iθがゼロとなる不感帯を設けるとともに、上記停車用電流指令値Iθ2の不感帯を走行用電流指令値Iθ1の不感帯よりも大きくし、上記コントローラは上記いずれかの電流指令値に基づいて、ソレノイド電流指令値SIを制御する構成にしている。
【0037】
上記のように停車用電流指令値Iθ1の不感帯を大きくすることによって、たとえステアリングホイールをきった状態においても、車速信号Svがゼロまたは設定極微速域にあるときの出力値を小さくすることができる。この出力値が小さくなったとき、可変オリフィスの開度も小さくなるようにした。
【0042】
【発明の実施の形態】
図1に示した第1実施形態は、図7および図8に示した従来の装置に、車両が停止あるいは極微速走行状態の場合に対応する停車用電流指令値Iθ2を備え、可変オリフィスaの開度を小さくするための構成を付加したものである。この構成以外は、図7に示した従来の装置と同様なので、同一の構成要素については、同一符号を用いて説明し、その詳細を省略する。
【0043】
図1に示したように、この第1実施形態では、走行用回路20と、停車用回路21とを備えるとともに、これら走行用回路20と停車用回路21とを切り換え手段22によって切り換えるようにしている。
また、コントローラCは車速信号Svに基づいて、切り換え手段22を切り換える電流指令値Icを決定する。
【0044】
上記コントローラCは、車速信号Svが設定極微速域Va以上である場合には、車両が走行中であると判断し、ソレノイド電流指令値SIが走行用回路20から出力されるように切り換え手段22を切り換える。
上記走行用回路20は、従来の回路とほぼ同様である。すなわち、コントローラCには、操舵角センサ14、車速センサ15から操舵角信号Sθ、操舵角速度信号Sωおよび車速信号Svが入力される。上記コントローラCは、上記操舵角信号Sθに基づいて走行用電流指令値Iθ1を決定し、操舵角速度信号Sωに基づいて電流指令値Iωを決定する。そして、これら両者を加算する。両電流指令値Iθ1、Iωを加算したら、この加算値(Iθ1+Iω)に、車速信号Svに基づいた電流指令値Ivを乗算する。
上記のようにして、(Iθ1+Iω)×Ivが決まったら、それにスタンバイ用の電流指令値Isを加算する。そして、この{(Iθ1+Iω)×Iv}+Isをソレノイド電流指令値SIとして出力するようにしている。
【0045】
また、上記走行用電流指令値Iθ1は、図示のようなテーブルに基づいて出力されるようにしているが、このテーブル値において、操舵角信号Sθがある設定以上にならなければゼロを出力するような不感帯d1を設けている。例えば、操舵角信号Sθが4.5°までを不感帯d1としている。
【0046】
一方、車速信号Svがゼロまたは設定極微速域Va内にある場合には、ソレノイド電流指令値SIが停車用回路21から出力されるように切り換え手段22を切り換える。停車用回路21は、操舵角センサ14から入力された操舵角信号Sθだけに基づいた制御をおこなう。
すなわち、コントローラCは、操舵角信号Sθに基づいて停車用電流指令値Iθ2を決定する。そして、この電流指令値Iθ2にスタンバイ用の電流指令値Isを加算する。この加算値Iθ2+Isをソレノイド電流指令値SIとして出力するようにしている。
【0047】
上記停車用電流指令値Iθ2は、図示のような不感帯d2を設けている。この不感帯d2は、上記走行用電流指令値Iθ1の不感帯d1よりも、大きくなるように設定している。
例えば、上記走行用回路20の場合、操舵角θが4.5°までを不感帯d1としているが、上記停止用回路21の場合、操舵角θが9°までを不感帯d2としている。
【0048】
つまり、走行中にステアリングを操舵した場合には、不感帯d1を小さく設定しているので、少しでも操舵されたときには、その操舵角信号Sθに応じたソレノイド電流指令値SIを出力し、その応答性を確保するようにしている。
一方、停車中あるいは極微速走行中にステアリングを操舵した場合には、不感帯d2を上記走行中の不感帯d1よりも大きくした。したがって、上記不感帯d2を大きくした分、ステアリングを大きく操舵しても、停車用電流指令値Iθ2はゼロを出力する。停車用電流指令値Iθ2がゼロになるので、ソレノイド電流指令値SIはスタンバイ用の電流指令値Isだけになる。
したがって、上記停車中あるいは極微速走行中にステアリングホィールを切った状態に保っているときのエネルギーロスを最小限に抑えることができる。
【0049】
なお、上記停止用回路21によってソレノイド電流指令値SIが出力されている場合であっても、車速センサ15によって極微速域Va以上であることが確認されたときには、コントローラCによって切り換え手段22が走行用回路20に切り換えられる。したがって、速やかに応答性の良好な操舵をおこなうことができる。
また、上記走行用回路20によってソレノイド電流指令値SIが出力されたときには、従来例と同様の効果を発揮することができる。
【0050】
さらに、上記電流指令値Iθ1、Iθ2は、テーブル値としてコントローラCにあらかじめ記憶させておいてもよいし、操舵角信号Sθを基にして、その都度コントローラCに演算させるようにしてもよい。いずれにしても、その不感帯d1,d2を設定するとともに、走行用電流指令値Iθ1の不感帯d1よりも停車用電流指令値Iθ2の不感帯d2の方を大きくするようにしている。
【0051】
また、上記第1実施形態の他の例として、図2に示したように、操舵角信号Sθに対する停車用電流指令値Iθ2の増加の割合r2を、操舵角信号Sθに対する走行用電流指令値Iθ1の増加の割合r1よりも小さくすることも考えられる。このように停車用電流指令値Iθ2の増加の割合r2を小さくすることによって、車速vが極微速域Vaよりも小さい場合、ステアリングホィールの操舵角θが大きくなっても停車用電流指令値Iθ2を小さく抑えることができる。
上記停車用電流指令値Iθ2を小さくすることができるので、ソレノイド電流指令値SIも小さくすることができ、エネルギーロスを最小限に抑えることができる。
【0052】
さらに、上記操舵角信号Sθに対する停車用電流指令値Iθ2の増加の割合を小さくするとともに、その不感帯d2を大きくすることも考えられる。このようにした場合には、より一層、極微速域でのエネルギーロスを抑えることができる。
【0053】
図3には、この発明の第2実施形態を示している。この第2実施形態では、次の2点で、第1の実施態様と相違させている。すなわち、第1の点は、操舵角信号Sθに基づいた走行用電流指令値Iθ1と、操舵角速度信号Sωに基づいた電流指令値Iωとを、実際の状況により近づけたことである。
第2の点は、操舵角信号Sθに基づいた走行用電流指令値Iθ1と、操舵角速度信号Sωに基づいた電流指令値Iωとを、第1実施形態のように加算するのではなく、いずれか大きい方の値を選択するようにしたことである。
【0054】
第1実施形態との相違点である第1の点は、次のことを考慮している。ドライバーの操舵感覚を基にすれば、図4に示すように、操舵角θとそれによって特定される制御流量QPとは、リニアな特性を維持するのが理想的である。
ところが、ソレノイド電流指令値SIと、ソレノイドSOLによる可変オリフィスaの開度で決まる制御流量QPとは、図5に示すように、二乗特性に近いものになる。これは、可変オリフィスaを構成するポペットの形状とか、ソレノイドの性能とが相乗的に作用した結果である。
【0055】
しかし、第1実施形態では、操舵角信号Sθによって走行用電流指令値Iθ1を求め、この走行用電流指令値Iθ1で制御流量QPを特定しようとしているので、そのままだと、操舵角θと制御流量QPとが、リニアな特性にならない。
そこで、この第2実施形態では、操舵角信号Sθによる走行用電流指令値Iθ1を、図3に示すように、制御流量QPが最大流量に達するまでを、曲線状にしたものである。
【0056】
ただし、この曲線を得るのに、例えば、操舵角θと制御流量QPとが、図4に示すリニアな特性になるポイントを、実験によってプロットしていってもよいし、図5の曲線と図4の曲線を数式化し、図4の値を図5の値で除算して、θ=f(I)を求めてもよい。
なお、このことは、操舵角速度ωに関しても全く同じことがいえる。
【0057】
このようにした第2実施形態によれば、操舵角θおよび操舵角速度ωと、制御流量QPとがリニアな関係になるので、操舵感覚と出力とを一致させることができる。
なお、上記のように制御流量QPと、操舵角θあるいは操舵角速度ωとの相対関係を、リニアな特性にする考え方は、前記した第1実施形態にも適用できること当然である。
【0058】
また、前記した第2の相違点である操舵角信号Sθによる走行用電流指令値Iθ1と、操舵角速度信号Sωによる電流指令値Iωとのいずれか大きい方の値を選択するようにした理由を次に説明する。
例えば、第1実施形態では、走行用電流指令値Iθ1と電流指令値Iωとを加算していたが、このように指令値Iθ1とIωとを加算すると、その値のふれ幅が大きくなってしまう。
【0059】
例えば、第1実施形態のように、電流指令値Iθ1とIωとを加算すると、そのグラフの曲線の中で、変化率が最も大きなところで、図6の斜線で示すような幅ができてしまう。例えば、図6におけるx点に注目すると、x=θ1+ω1のときもあるし、x=θ2+ω2のときもある。このように加算される個々の値が相違するにもかかわらず、xが同じ値になってしまうと、ドライバーの操舵感覚は同じなのに、電流指令値(Iθ1+Iω)がy1、y2の範囲で異なったものになる。
そのために、ドライバーの操舵感覚は同じなのに、出力が異なるという結果になってしまう。このような理由から、第1実施形態の場合には、操舵感が多少悪くなるということがあった。
【0060】
そこで、この第2実施形態では、電流指令値Iθ1 またはIωのうち、大きな方の値だけを選択するようにしたものである。このように一方の値だけを選択することによって、図6の斜線の部分で示したふれ幅を最小限に抑えることができる。
なお、電流指令値Iθ1またはIωのうち、小さい値ではなく、大きな値を選択するようにしたのは、応答性を確保するためである。つまり、制御流量QPが少ない場合よりも多めの方が、応答性がよいからである。
【0061】
また、この第2実施形態では、車速vによる電流指令値Ivをリミッターとして利用した点も、第1実施形態とは相違する。つまり、第1実施形態では、この電流指令値Ivを、(Iθ1+Iω)に積算していた。しかし、電流指令値Ivを積算してしまうと、車速が高くなればなるほど、実質的に係数が小さくなる。係数が小さくなれば、グラフの傾きがそれだけ緩やかになる。傾きが緩やかになれば、応答性が悪くなる。
そこで、この第2実施形態では、上記のように車速による電流指令値Ivをリミッターとして利用し、ソレノイド電流指令値SIの傾きを一定に保つようにしたものである。
【0062】
ただ、上記傾きの変化は、実際に、ほんのわずかなので、それを無視しても操舵感にそれほど大きな影響を及ぼさない。
したがって、この第2実施形態においても、車速vによる電流指令値Ivを、いずれか大きい方の電流指令値Iθ1またはIωに積算してもよい。
反対に、車速vによる電流指令値Ivをリミッターとして利用することは、第1実施形態においてもそのまま適用することができる。
なお、この第2実施形態においても、走行用回路20と、停車用回路21とを備えるとともに、これら走行用回路20と停車用回路21とを切り換え手段22を備え、コントローラCは車速信号Svに基づいて、切り換え手段22を切り換える電流指令値Icを決定することは第1実施形態と同様である。
【0063】
【発明の効果】
第1及び第2の発明によれば、車両が停止、あるいは走行と判断されない程度の極微速域で動いていたりする状況では、ハンドル舵角に関係なくステアリングバルブに供給される流量を最小限に抑えられるので、その状況でのエネルギーロスがほとんどなくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態のコントローラの制御系を示す説明図である。
【図2】第1実施形態の他の例を示す説明図である。
【図3】第2実施形態のコントローラの制御系を示す説明図である。
【図4】操舵角と制御流量との関係を示したグラフである。
【図5】ソレノイド電流指令値と制御流量との関係を示したグラフである。
【図6】操舵角θと操舵角速度ωとを加算した値と、ソレノイド電流指令値とを加算した値との関係を示したグラフである。
【図7】従来の油圧回路図である。
【図8】従来のコントローラの制御系を示す説明図である。
【符号の説明】
8 パワーシリンダ
9 ステアリングバルブ
14 操舵角センサ
15 車速センサ
V 流量制御弁
P ポンプ
SOL ソレノイド
Iθ 電流指令値
Iθ1 電流指令値
Iθ2 電流指令値
Iv 電流指令値
a 可変オリフィス
C コントローラ
Sθ 操舵角信号
Sv 車速信号
r1 操舵角信号に対する停車用電流指令値Iθ1の増加の割合
r2 操舵角信号に対する停車用電流指令値Iθ2の増加の割合
Claims (2)
- パワーシリンダを制御するステアリングバルブと、このステアリングバルブの上流側に設けた可変オリフィスと、この可変オリフィスの開度を制御するソレノイドと、このソレノイドを駆動するソレノイド電流指令値SIを制御するコントローラと、ポンプから供給される流量を、上記可変オリフィスの開度に応じてステアリングバルブに導く制御流量あるいはタンクまたはポンプに環流させる戻り流量に分配する流量制御弁とを備え、上記コントローラには、操舵角センサと車速センサとを接続し、上記操舵角センサからの操舵角信号Sθに応じた操舵角θを演算または記憶する一方、コントローラはこの操舵角θに応じた電流指令値Iθを記憶または演算するとともに、上記車速センサからの車速信号Svに応じた車速vを演算または記憶する一方、コントローラはこの車速vに応じた電流指令値Ivを記憶または演算し、上記電流指令値Iθおよび電流指令値Ivを基に可変オリフィスのソレノイド電流指令値SIを制御する構成にしたパワーステアリング装置において、上記電流指令値Iθは、車速センサからの車速信号Svが設定極微速域以上の場合に対応する走行用電流指令値Iθ1と、上記車速信号Svがゼロまたは設定極微速域に対応する停車用電流指令値Iθ2とからなり、上記操舵角信号Sθに対する停車用電流指令値Iθ2の増加の割合を、操舵角信号Sθに対する走行用電流指令値Iθ1の増加の割合よりも小さくし、上記コントローラは、車速センサからの車速信号Svがゼロまたは設定極微速域にあるとき、可変オリフィスの開度が小さくなるようにソレノイド電流指令値SIを制御する構成にしたパワーステアリング装置。
- 上記走行用電流指令値Iθ1および停車用電流指令値Iθ2には、上記操舵角θがゼロまたはその近傍で電流指令値Iθがゼロとなる不感帯を設けるとともに、上記停車用電流指令値Iθ2の不感帯を走行用電流指令値Iθ1の不感帯よりも大きくし、コントローラは上記いずれかの電流指令値に基づいて、ソレノイド電流指令値SIを制御する構成にした請求項1記載のパワーステアリング装置。
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