JP3737715B2 - パワーステアリング装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、パワーシリンダ側に導く流量を制御する流量制御弁を備えたパワーステアリング装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
図5および図6に示した従来の装置は、流量制御弁VにポンプPを接続している。ただし、この装置は、本出願人が、平成11年12月13日に特許庁に出願したものであるが、本願の出願時点では、その内容は公知になっていない。
上記流量制御弁Vのスプール1は、その一端を一方のパイロット室2に臨ませ、他端を他方のパイロット室3に臨ませている。上記一方のパイロット室2は、ポンプポート4を介してポンプPに常時連通している。また、他方のパイロット室3にはスプリング5を介在させている。このようにした両パイロット室2,3は、ソレノイドSOLに対するソレノイド電流指令値SIに応じて開度を制御する可変オリフィスaを介して、たがいに連通している。
【0003】
すなわち、一方のパイロット室2は、流路6→可変オリフィスa→流路7を経由してパワーシリンダ8を制御するステアリングバルブ9の流入側に連通している。また、他方のパイロット室3は、流路10および流路7を介してステアリングバルブ9の流入側に連通している。
したがって、上記両パイロット室2,3は、可変オリフィスaを介して連通することになり、可変オリフィスaの上流側の圧力が一方のパイロット室2に作用し、下流側の圧力が他方のパイロット室3に作用することになる。
【0004】
そして、スプール1は、一方のパイロット室2の作用力と、他方のパイロット室3の作用力とがバランスした位置を保つが、そのバランス位置において、前記ポンプポート4とタンクポート11との開度が決められる。
今、エンジン等からなるポンプ駆動源12が停止していると、ポンプポート4に圧油が供給されない。ポンプポート4に圧油が供給されなければ、両パイロット室2,3には圧力が発生しないので、スプール1はスプリング5の作用で図示のノーマル位置を保つ。
【0005】
なお、図中符号13はスプール1の先端に形成したスリットで、スプール1が図示の位置にあるときにも、このスリット13を介して一方のパイロット室2が流路7に常時連通するようにしている。言い換えると、スプール1が図示の状態にあって、流路6を閉じているようなときにも、ポンプPの吐出油が、このスリット13を介して、ステアリングバルブ9側に供給されるようにしている。
【0006】
このように微少流量であるが、ステアリングバルブ9側に圧油を供給するようにしたのは、装置全体の焼き付きの防止、キックバック等の外乱の防止、および応答性の確保を目的にしているからである。
【0007】
そして、上記のノーマル状態からポンプPが駆動して、ポンプポート4に圧油が供給されると、可変オリフィスaに流れができるので、そこに差圧が発生する。この差圧の作用で、両パイロット室2,3に圧力差が発生し、この圧力差に応じてスプール1がスプリング5に抗して移動し、上記バランス位置を保つ。
このようにスプール1がスプリング5に抗して移動することによって、タンクポート11の開度を大きくするが、このときのタンクポート11の開度に応じて、ステアリングバルブ9側に導かれる制御流量QPと、タンクTあるいはポンプPに還流される戻り流量QTの分配比が決まる。言い換えれば、タンクポート11の開度に応じて制御流量QPが決まることになる。
【0008】
上記のように制御流量QPが、スプール1の移動位置で決まるタンクポート11の開度に応じて制御されるということは、結局は、可変オリフィスaの開度に応じて制御流量QPが決まることになる。なぜなら、スプール1の移動位置は、両パイロット室2,3の圧力差で決まるとともに、この圧力差を決めているのが可変オリフィスaの開度だからである。
【0009】
したがって、車速や操舵状況に応じて、制御流量QPを制御するためには、可変オリフィスaの開度、すなわちソレノイドSOLに対するソレノイド電流指令値SIを制御すればよいことになる。
なぜなら、可変オリフィスaは、ソレノイドSOLが非励磁状態のときにその開度を最少に保ち、励磁電流を大きくしていくにしたがってその開度を大きくするからである。
【0010】
なお、前記ステアリングバルブ9は、図示していないステアリングホィールの入力トルク(操舵トルク)に応じて、パワーシリンダ8の圧力を制御するものである。例えば、操舵トルクが大きければ、パワーシリンダ8への供給量を大きくし、操舵トルクが小さければそれに応じてパワーシリンダ8の圧力を小さくするようにしている。この操舵トルクとステアリングバルブ9の切り換え量は、図示していないトーションバーなどのねじれ反力によって決まることになる。
【0011】
上記のように操舵トルクが大きいときに、ステアリングバルブ9の切り換え量を大きくすれば、その分、パワーシリンダ8によるアシスト力が大きくなる。反対に、ステアリングバルブ9の切り換え量を小さくすれば、上記アシスト力は小さくなる。
そして、入力トルクによって決まるパワーシリンダ8の必要(要求)流量QMと、流量制御弁Vで決められる制御流量QPとをなるべく等しくすれば、ポンプP側のエネルギー損失を低く抑えることができる。なぜなら、ポンプP側のエネルギー損失は、制御流量QPとパワーシリンダ8の要求流量QMとの差によって発生するからである。
【0012】
上記のように制御流量QPを、パワーシリンダ8の要求流量QMにできるだけ近づけるために、可変オリフィスaの開度を制御するのが、ソレノイドSOLに対するソレノイド電流指令値SIであり、このソレノイド電流指令値SIを制御するのが、コントローラCである。そして、このコントローラCには、操舵角センサ14と車速センサ15とを接続し、これら両センサの出力信号に基づいて、ソレノイド電流指令値SIを制御するようにしている。
【0013】
なお、符号16は、コントローラCとソレノイドSOLとの間に接続したソレノイドSOLの駆動装置ある。また、符号17,18は絞りであり、符号19はリリーフ弁である。
【0014】
上記コントローラCには、上記操舵角センサ14、車速センサ15から操舵角信号Sθ、操舵角速度信号Sωおよび車速信号Svが入力される。
上記操舵角信号Sθは、操舵角センサ14によって検出した操舵角に基づいて算出し、車速信号Svは、車速センサ15によって検出した車速に基づいて算出している。また、操舵角速度信号Sωは、上記操舵角信号Sθを微分して算出したものである。ただし、この操舵角速度信号Sωは、操舵角速度センサを別に設けて、この操舵角速度センサによって直接求めてもよいものである。
【0015】
上記コントローラCは、操舵角信号Sθ、操舵角速度信号Sωおよび車速信号Svを基準にして、ソレノイドSOLの励磁電流の基礎となるソレノイド電流指令値SIを出力するが、以下にこのコントローラCの作用について説明する。
操舵角信号Sθと電流指令値Iθとは、その操舵角信号Sθと制御流量QPとの関係がリニアな特性になる理論値に基づいて決めている。また、操舵角速度信号Sωと電流指令値Iωとの関係も、操舵角速度信号Sωと制御流量QPとがリニアな特性になる理論値に基づいて決めている。
【0016】
ただし、電流指令値Iθおよび電流指令値Iωは、操舵角信号Sθおよび操舵角速度信号Sωが、ある設定値以上にならなければいずれもゼロを出力するようにしている。つまり、ステアリングホィールが中立あるいはその近傍にあるときには、上記電流指令値IθもIωもゼロになるようにして、その中立近傍に不感帯域を設けている。
【0017】
また、上記電流指令値Iθ、Iωは、テーブル値としてコントローラCにあらかじめ記憶させておいてもよいし、操舵角信号Sθあるいは操舵角速度信号Sωを基にして、その都度コントローラCに演算させるようにしてもよい。
いずれにしても電流指令値Iθと電流指令値Iωとを決定したら、これら両者を加算する。
【0018】
上記のようにして両電流指令値Iθ、Iωを加算したら、この加算値(Iθ+Iω)に、車速信号Svに基づいた電流指令値Ivを乗算する。
【0019】
したがって、上記加算値(Iθ+Iω)に車速信号Svに基づいた電流指令値Ivを乗算すれば、低速域では(Iθ+Iω)がそのまま出力され、高速域では(Iθ+Iω)がゼロになる。
また、中速域では、速度が上がれば上がるほどそれに反比例した値が出力されることになる。
上記のようにして、(Iθ+Iω)×Ivが決まったら、それにスタンバイ用の電流指令値Isを加算する。
【0020】
このスタンバイ用の電流指令値Isは、可変オリフィスaのソレノイドSOLに所定の電流を常に供給するためのものである。つまり、操舵角信号Sθ、操舵角速度信号Sωおよび車速信号Svに基づいた電流指令値が全てゼロの場合でも、電流指令値Isによってソレノイド電流指令値SIが確保されるようにして、可変オリフィスaが一定の開度を保ち、所定のスタンバイ流量QSがステアリングバルブ9側に常に供給されるようにしている。
【0021】
一方、省エネという観点からすると、パワーシリンダ8およびステアリングバルブ9側の要求流量QMがゼロなら、流量制御弁Vの制御流量QPもゼロにするのが理想的である。つまり、制御流量QPをゼロにするということは、ポンプPの吐出量全量をタンクポート11からポンプPまたはタンクTに還流させること意味する。そして、タンクポート11からポンプPまたはタンクTに還流する流路は、本体B内にあって非常に短いので、その圧力損失がほとんどない。圧力損失がほとんどないので、ポンプPの駆動トルクも最小に抑えられ、その分、省エネにつながることになる。
このような意味から、要求流量QMがゼロのときに、制御流量QPもゼロにするのが、省エネという観点からは有利になる。
【0022】
それにもかかわらず、要求流量QMがゼロのときでもスタンバイ流量QSを確保しているのは、次の2つの理由からである。
【0023】
キックバック等の外乱やセルフアライニングトルクに対抗
タイヤに外乱やセルフアライニングトルク等による抗力が作用すると、それがパワーシリンダ8のロッドに作用する。もし、スタンバイ流量を確保しておかなければ、この外乱やセルフアライニングトルクによる抗力で、タイヤがふらついてしまう。しかし、スタンバイ流量を確保しておけば、たとえ上記抗力が作用したとしても、タイヤがふらついたりしない。すなわち、上記パワーシリンダ8のロッドには、ステアリングバルブ9を切り換えるためのピニオン等がかみ合っているので、上記抗力が作用すると、ステアリングバルブも切り換わって、その抗力に対抗する方向にスタンバイ流量を供給することになる。したがって、スタンバイ流量を確保しておけば、上記キックバックによる外乱やセルフアライニングトルクに対抗できることになる。
【0024】
応答性の確保
上記のようにスタンバイ流量QSを確保しておけば、それが全然ないときよりも、目的の制御流量QPに到達する時間が短くてすむ。この時間差が応答性になるので、結局、スタンバイ流量QSを確保した方が、応答性を向上させることができる。
【0025】
今、車速が低速域にある状態で操舵すれば、その時の操舵角θと操舵角速度ωによって、電流指令値IθとIωとが決まる。そして、これら指令値を加算するとともに、この加算値(Iθ+Iω)に車速vに応じた電流指令値Iv=1を掛け合わせる。その乗算値である(Iθ+Iω)に、スタンバイ流量を確保するための電流指令値Isをさらに加算する。
すなわち、低速域では、ソレノイド電流指令値SIは、SI=Iθ+Iω+Isということになる。
【0026】
なお、上記のように操舵角θによる電流指令値Iθと、操舵角速度ωによる電流指令値Iωとを加算しているが、実際には、上記ステアリングバルブ9に供給する流量は、操舵トルクに対応させるのが最も理想的である。しかしながら、操舵トルクセンサは、きわめて高価なので、実際にはほとんど用いることができない。そこで、操舵トルクに最も近似している操舵角速度ωを検出して、操舵トルクを検出したと同じような効果を得ようとしている。しかし、操舵角速度ωだけを検出したのでは、次のような不都合があるために、操舵角θも検出するようにしている。
その第1の理由は、応答性を確保することである。つまり、パワーシリンダ8やステアリングバルブ9側の要求流量QMに対して、常に、多めの制御流量QPを供給している方が、パワーシリンダの応答性がよくなる。そこで、操舵角θによる電流指令値Iθと操舵角速度ωによる電流指令値Iωとを単純に加算して、ソレノイド電流指令値SIを大きめに設定している。
【0027】
第2の理由は、保舵時の安定を確保するためである。つまり、操舵角速度ωは、ステアリングを操舵している最中にしか発生しない。例えば、ステアリングをある角度操舵して、その舵角の位置でステアリングを止めて保舵しているときには、操舵角速度ωはゼロになってしまう。
【0028】
もし、保舵時に制御流量QPを確保できなければ、車両のセルフアライニングトルクや外力に対して、ドライバーには大きな保舵力が求められる。
しかし、上記ように操舵角θをパラメータにしておけば、保舵時であっても操舵角θが保たれているので、電流指令値Iθを確保できる。したがって、この電流指令値Iθで保舵に必要なパワーを維持できることになる。言い換えると、ドライバーが確保しなければならない保舵力は小さくなる。このように、保舵時にもドライバーの保舵力を小さくするために、操舵角θによる電流指令値Iθを操舵角速度ωによる電流指令値Iωに加算している。
なお、上記操舵角θと操舵角速度ωとの関係は、低速域、中速域および高速域での走行中にもすべて同じようにあてはまることである。
【0029】
また、低速域での走行中でも、直進走行時などでステアリングホィールを中立位置近傍に保っているときには、操舵角θによる電流指令値Iθおよび操舵角速度ωによる電流指令値Iωはゼロになってしまう。言い換えると、操舵角θによる電流指令値Iθおよび操舵角速度ωによる電流指令値Iωの両方を検出していたとしても、電流指令値がゼロになってしまう。しかし、この場合には、スタンバイ流量が必ず確保されることになるので、キックバック等による外乱にも対抗でき、しかも、応答性も良好に保てる。
【0030】
車速が高速域にあるときには、車速による電流指令値Ivがゼロになる。この電流指令値Ivがゼロになれば、(Iθ+Iω)×Iv=0となるので、制御流量QPは、スタンバイ流量QSだけとなり、ステアリング操作には大きな操舵トルクを必要とする。
そして、中速域での走行中には、その速度が上がるにつれて、車速による電流指令値Ivが小さくなっていくので、それにともなって制御流量QPも少なくなる。したがって、大きな操舵トルクを必要とすることになる。
【0031】
【発明が解決しようとする課題】
上記のようにした従来のパワーステアリング装置では、ステアリングホィールを切ったままで、言い換えると操舵角を保ったままで車両を停止させたときには、電流指令値Iθが操舵角に応じた値を出力する。また、ステアリングホィールを切ったまま停止しているときには、操舵角速度ωによる電流指令値Iωはゼロであり、車速vによる電流指令値Ivが1を出力することになる。
したがって、ステアリングホィールを切ったまま停止しているときには、操舵角に応じた電流指令値Iθが出力されることになる。
【0032】
上記のように操舵角を保ったまま停止しているときに電流指令値Iθが出力されるということは、その分、ステアリングバルブ9に圧油が必要以上に供給されることになり、エネルギーロスになるという不具合があった。
なお、操舵角を保ったまま車両を停止させる状況としては、次の場合が考えられる。例えば、ステアリングホィールを切ったまま車庫入れを終了した場合で、少しの間エンジンを切らないでいるときや、走行中に車線を変更するためにステアリングホィールを切ったが、その瞬間に信号待ちで停止するときなどである。
【0033】
また、車両を停止させる場合だけでなく、保舵しながら極微低速で走行中にも同じことがいえる。つまり、操舵角を保ちながら極微低速で走行しているときには、制御流量をほとんど必要としない。このように制御流量が不要にもかかわらず、電流指令値Iθが出力するということは、停止中と同様にエネルギーロスになってしまう。
そして、もっとも大きな問題は、省エネモードである電流指令値Iθ2を出力している最中に、操舵角速度が一定以上になったとき、電流指令値がすぐに大きくならないという意味で、応答性が遅れるということである。
この発明の目的は、保舵しながら停止あるいは微速走行状態にある場合のエネルギーロスをなくすことによって、さらに省エネに寄与するとともに、省エネモードから通常モードに切り替わったときの応答性を向上させたパワーステアリング装置を提供することである。
【0034】
【課題を解決するための手段】
この発明は次の装置を前提にしている。すなわち、パワーシリンダを制御するステアリングバルブと、このステアリングバルブの上流側に設けた可変オリフィスと、この可変オリフィスの開度を制御するソレノイドと、このソレノイドを駆動するソレノイド電流指令値SIを制御するコントローラと、ポンプから供給される流量を、上記可変オリフィスの開度に応じてステアリングバルブに導く制御流量あるいはタンクまたはポンプに環流させる戻り流量に分配する流量制御弁とを備えている。そして、上記コントローラには、操舵角センサを接続し、この操舵角センサからの操舵角信号Sθに応じた操舵角θと操舵角速度ωを演算または記憶する。一方、コントローラはこの操舵角θに応じた電流指令値Iθおよび操舵角速度ωに応じた電流指令値Iωを記憶または演算するとともに、これら電流指令値Iθおよび電流指令値Iωを基に可変オリフィスのソレノイド電流指令値SIを制御する構成にしたパワーステアリング装置を前提にする。
【0035】
第1の発明は、上記のパワーステアリング装置を前提にしつつ、上記コントローラに選択部を設け、車速センサからの車速信号Svがゼロまたは設定極微速域にあり、かつ、操舵角速度信号Sωがゼロまたはそれに近い値のとき、上記選択部は省エネモードを選択するとともに、この選択部の選択にともなってコントローラは、電流指令値Iθのゲインを小さくし、かつ、電流指令値Iωのゲインを大きくする一方、車速信号Svが設定極微速域を超えているか、あるいは操舵角速度信号Sωがゼロまたはそれに近い値よりも大きいとき、上記選択部は通常モードを選択するとともに、この選択部の選択にともなってコントローラは、ソレノイド電流指令値SIを通常モードで制御する構成にし、省エネモードから通常モードへの切り替え時の応答性を向上させた点に特徴を有する。
【0036】
上記のように車速信号Svがゼロまたは設定極微速域にあり、しかも、操舵角速度信号Sωがゼロまたはそれに近い値のときには、車両が停止しているか、微速走行中であって、ステアリングホィールを操作していない状況である。このような状況では、たとえステアリングホィールを切った状態にあっても、制御流量を必要としない。したがって、このような状態のときには、可変オリフィスの開度を極力小さくすることで、エネルギーロスを少なくすることができる。なお、操舵角速度信号Sωがゼロに近い値というのは、例えば停止中でしかも保舵中にステアリングホィールを多少動かしたときの微少な範囲をいっている。言い換えると、操舵角速度信号Sωがゼロに近い値というのは、操舵を必要としない保舵中のステアリングホィールのわずかな動きを意味するものである。
【0037】
第2の発明は、上記のパワーステアリング装置を前提にしつつ、コントローラにはタイマーを接続するとともに、車速信号Svおよび操舵角速度信号Sωが、設定時間内にゼロまたはその近傍にあるとき、コントローラに設けた選択部は通常モードを選択する一方、上記設定時間を超えて車速信号Svおよび操舵角速度信号Sωがゼロまたはその近傍にあるとき、コントローラに設けた選択部は省エネモードを選択するとともに、この選択部が省エネモードを選択したことにともなってコントローラは、スタンバイ用の電流指令値Isをソレノイド電流指令値SIとして出力する構成にした点に特徴を有する。
【0038】
【発明の実施の形態】
図1,2に示した第1実施例は、図5および図6に示した従来の装置に、ステアリングホィールを切ったまま停止あるいは極微速走行状態にあるとき、電流指令値Iθのゲインを小さくするとともに、電流指令値Iωのゲインを大きくして、可変オリフィスaの開度を制御する構成を付加したものである。そして、上記以外の構成は、図5,6に示した従来の装置と同様なので、従来と同一の構成要素については、同一符号を用いて説明し、その詳細を省略する。
【0039】
この第1実施例では、操舵角制御特性T1、操舵角速度制御特性T3および車速制御特性T5を備えている。
そして、上記操舵角制御特性T1は、従来のものと全く同様で、操舵角信号Sθに応じて電流指令値Iθ1を出力する。また、上記操舵角速度制御特性T3も、従来のものと全く同様で、操舵角速度信号Sωに応じて電流指令値Iω1を出力するものである。
【0040】
さらに、この第1実施例では、選択部20を設けているが、この選択部20には、操舵角信号Sθ、操舵角速度信号Sωおよび車速信号Svが入力するようにしている。そして、コントローラCは、電流指令値IθおよびIωのそれぞれに係数K1およびK2を掛け合わせることによって、通常モードと省エネモードとの切り換えを行うが、このK1およびK2は、図2に示すように、選択部20によって特定される。
【0041】
例えば、上記係数K1,K2は、車両の通常走行時、すなわち車速Svが設定極微速域vaよりも大きいとき、もしくは車速Svが設定極微速域va以下であっても操舵角速度信号Sωが設定微少域ωaよりも大きいときには、選択部20はK1=1、K2=1を出力する。係数K1,K2がともに1であれば、電流指令値Iθ,Iωはそのままの値を保つ。したがって、この場合には、選択部20によって通常モードが選択されたことになる。なお、車速Svが設定極微速域va以下であって操舵角速度信号Sωが設定微少域ωaよりも大きいときとは、例えば、車庫入れのように微速域での据え切り時が相当する。
【0042】
一方、車速Svがゼロまたは設定極微速域va内にあって、かつ、操舵角速度信号Sωが設定微少域ωa内にあるとき、すなわち車両が停止中かあるいは極微速走行中には、選択部20は、K1<1、K2>1を出力する。係数K1が1よりも小さくなれば、操舵角制御特性T1から出力された電流指令値Iθが小さくなる。また、係数K2が1以上になれば、操舵角速度制御特性T3から出力された電流指令値Iωが大きくなる。したがって、この場合には、選択部20によって省エネモードが選択されたことになる。
上記のようにK1<1になれば、(Iθ×K1)が小さくなるので、省エネモードに切り換わったときのエネルギーロスを低く抑えることができる。しかも、この省エネモードでは、(Iω×K2)が大きくなるので、省エネモードから通常モードに切り換わるときの応答遅れも防止できる。
【0043】
上記のようにして(Iθ×K1)および(Iω×K2)が決まったら、コントローラCは、それら両者の値を加算した値すなわち(Iθ×K1)+(Iω×K2)を求める。さらに、コントローラCは、上記(Iθ×K1)+(Iω×K2)に、従来と同様に車速信号Svに基づいた電流指令値Ivを乗算する。
【0044】
このように上記加算値(Iθ×K1+Iω×K2)に車速信号Svに基づいた電流指令値Ivを乗算すれば、低速域ではIv=1となるので、(Iθ×K1+Iω×K2)がそのまま出力され、高速域ではIv=0となるので、(Iθ×K1+Iω×K2)がゼロになる。
また、中速域では、速度が上がれば上がるほど、その速度に反比例した値が出力されることになる。
上記のようにして、(Iθ×K1+Iω×K2)×Ivが決まったら、コントローラCは、(Iθ×K1+Iω×K2)×Ivの値にスタンバイ用の電流指令値Isを加算する。
【0045】
このスタンバイ用の電流指令値Isは、可変オリフィスaのソレノイドSOLに所定の電流を常に供給するためのものである。つまり、操舵角信号Sθ、操舵角速度信号Sωおよび車速信号Svに基づいた電流指令値が全てゼロの場合でも、電流指令値Isによってソレノイド電流指令値SIが確保されるようにして、可変オリフィスaが一定の開度を保ち、所定のスタンバイ流量QSがステアリングバルブ9側に常に供給されるようにしている。
【0046】
図3,4に示した第2実施例は、車速Svがゼロまたは設定極微速域va内にあって、かつ、操舵角速度信号Sωが設定微少域ωa内にある状態が、予め設定した時間t1以上維持されたときにのみ、省エネモードに切り換えるものである。
すなわち、図4に示すように、選択部20において、車速Svが設定極微速域vaよりも大きいとき、もしくは車速Svが設定極微速域va以下であっても操舵角速度信号Sωが設定微少域ωaよりも大きいときには、通常モードが選択される。
【0047】
一方、車速Svがゼロまたは設定極微速域va内にあって、かつ、操舵角速度信号Sωが設定微少域ωa内にある場合には、コントローラに接続した図示していないタイマーによって、その状態がどれくらい維持されているかが測定される。そして、この状態が設定時間t1未満であれば、通常モードのままであるが、設定時間t1以上経過すると、省エネモードに切り換わる。省エネモードに切り換わると、図3に示すように、選択部20がソレノイド電流指令値SIをスタンバイ用の電流指令値Isにする。このようにソレノイド電流指令値SIをスタンバイ用の電流指令値Isにすれば、エネルギーロスを低く抑えることができる。
なお、この第2実施例でも、省エネモードに切り換わったときに、前記第1実施例で説明したように、操舵角速度信号Iωのゲインを大きくして、応答遅れを防止するようにしてもよい。
【0048】
【発明の効果】
第1の発明によれば、ステアリングホィールを切った状態を保ちつつ車両を停止したり、あるいは走行と判断されない程度の極微速域で動いていたりする状況では、ハンドル舵角に関係なくステアリングバルブに供給される流量を最小限に抑えられるので、その状況でのエネルギーロスがほとんどなくなる。
特に、この発明では、コントローラに設けた選択部によって、通常モードと省エネモードとを選択できるようにしたので、それぞれのモードにおいて、最適な制御特性を得ることができる。その上で、この発明によれば、省エネモードである電流指令値Iθ2を出力している最中でも、操舵角速度が一定以上になると、立ち上がり時のゲインが通常モードよりも高い電流指令値Iω2が出力されるので、操舵開始時の応答遅れなどが生じない。
【0049】
第2の発明よれば、設定時間内における車速がゼロまたはその近傍にあるとき、コントローラは、通常モードのままであるが、設定時間を超えると、省エネモードに切り換わるので、エネルギーロスを低く抑えることができる。
【0050】
【0051】
【0052】
【0053】
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
【0081】
【0082】
【0083】
【0084】
【0085】
【0086】
【0087】
【0088】
【0089】
【0090】
【0091】
【図面の簡単な説明】
【図1】 第1実施例のコントローラの制御系を示す説明図である。
【図2】 第1実施例の選択部20の構成を示す図である。
【図3】 第2実施例のコントローラの制御系を示す説明図である。
【図4】 第2実施例の選択部20の構成を示す図である。
【図5】 従来の油圧回路図である。
【図6】 従来のコントローラの制御系を示す説明図である。
【符号の説明】
V 流量制御弁
P ポンプ
SOL ソレノイド
T タンク
a 可変オリフィス
8 パワーシリンダ
9 ステアリングバルブ
C コントローラ
14 操舵角センサ
15 車速センサ
Claims (2)
- パワーシリンダを制御するステアリングバルブと、このステアリングバルブの上流側に設けた可変オリフィスと、この可変オリフィスの開度を制御するソレノイドと、このソレノイドを駆動するためのソレノイド電流指令値SIを制御するコントローラと、ポンプから供給される流量を、上記可変オリフィスを介してステアリングバルブに導く制御流量あるいはタンクまたはポンプに環流させる戻り流量に分配する流量制御弁とを備え、上記コントローラには、操舵角センサを接続し、この操舵角センサからの操舵角信号Sθに応じた操舵角θと操舵角速度ωを演算または記憶する一方、コントローラはこの操舵角θに応じた電流指令値Iθおよび操舵角速度ωに応じた電流指令値Iωを記憶または演算するとともに、これら電流指令値Iθおよび電流指令値Iωを基に可変オリフィスのソレノイド電流指令値SIを制御する構成にしたパワーステアリング装置において、上記コントローラに選択部を設け、車速センサからの車速信号Svがゼロまたは設定極微速域にあり、かつ、操舵角速度信号Sωがゼロまたはそれに近い値のとき、上記選択部は省エネモードを選択するとともに、この選択部の選択にともなってコントローラは、電流指令値Iθのゲインを小さくし、かつ、電流指令値Iωのゲインを大きくする一方、車速信号Svが設定極微速域を超えているか、あるいは操舵角速度信号Sωがゼロまたはそれに近い値よりも大きいとき、上記選択部は通常モードを選択するとともに、この選択部の選択にともなってコントローラは、ソレノイド電流指令値SIを通常モードで制御する構成にし、省エネモードから通常モードへの切り替え時の応答性を向上させたパワーステアリング装置。
- パワーシリンダを制御するステアリングバルブと、このステアリングバルブの上流側に設けた可変オリフィスと、この可変オリフィスの開度を制御するソレノイドと、このソレノイドを駆動するためのソレノイド電流指令値SIを制御するコントローラと、ポンプから供給される流量を、上記可変オリフィスを介してステアリングバルブに導く制御流量あるいはタンクまたはポンプに環流させる戻り流量に分配する流量制御弁とを備え、上記コントローラには、操舵角センサを接続し、この操舵角センサからの操舵角信号Sθに応じた操舵角θと操舵角速度ωを演算または記憶する一方、コントローラはこの操舵角θに応じた電流指令値Iθおよび操舵角速度ωに応じた電流指令値Iωを記憶または演算するとともに、これら電流指令値Iθおよび電流指令値Iωを基に可変オリフィスのソレノイド電流指令値SIを制御する構成にしたパワーステアリング装置において、コントローラにはタイマーを接続するとともに、車速信号Svおよび操舵角速度信号Sωが、設定時間内にゼロまたはその近傍にあるとき、コントローラに設けた選択部は通常モードを選択する一方、上記設定時間を超えて車速信号Svおよび操舵角速度信号Sωがゼロまたはその近傍にあるとき、コントローラに設けた選択部は省エネモードを選択するとともに、この選択部が省エネモードを選択したことにともなってコントローラは、スタンバイ用の電流指令値Isをソレノイド電流指令値SIとして出力する構成にしたパワーステアリング装置。
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