JP2004148673A - 透明ガスバリア膜、透明ガスバリア膜付き基体およびその製造方法 - Google Patents

透明ガスバリア膜、透明ガスバリア膜付き基体およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】フラトパネルディスプレイなどに用いられる有機物に対し、耐久性を向上させるための、極めて優れたガスバリア性を有するガスバリア膜を提供する。
【解決手段】基体の表面に成膜される酸化珪素系(SiOx)の透明ガスバリア膜において、酸化珪素系の透明ガスバリア膜が、C(炭素)およびN(窒素)のいずれをも含み、Si(珪素)、O(酸素)、C、Nの元素成分比が、Siの1に対して、Oが0.60〜1.70、Cが0.05〜0.40、Nが0.05〜0.60である透明ガスバリア膜。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、フラットパネルディスプレイや電子デバイスなどに用いられるガスバリア膜およびバリア膜付き基体に関する。
【0002】
【従来の技術】
食品や医薬品を長期間保管するための包装材として、従来から可撓性のあるプラスティックフィルムが、その扱いやすさと透明性から多々用いられているが、酸素ガスや水蒸気を通しやすいために食品や医薬品を劣化させてしまうことがあった。
【0003】
これを解決するために、プラスティックフィルム基材の上に、酸化珪素などの無機酸化物や、窒化珪素などの無機窒化物を膜つけし、酸素ガスや水蒸気をバリアする透明なガスバリア膜を得る技術が知られており、例えば、プラズマCVDによるカーボンを含んだ酸化珪素系膜がある。CVD法は基板に熱的なダメージを与えることが少なく、かつ可撓性に優れた膜が得られる製法である(特許文献1)。
【0004】
しかし、CVD法では成膜速度が遅く、生産性を考えるとコストが高く、また、出発原料に有機化合物を用いるために、膜中に有機物が残りやすく膜に吸収が生じやすいといった問題点がある。
【0005】
また、アクリレートを含むポリマー層と無機層を交互に複数層積層することで、酸素および水蒸気に対する高度なガスバリア性を有する透明ガスバリア材がある(特許文献2)。
【0006】
しかし、この手法は、ポリマーの原料である混合樹脂溶液を均一に塗布した後に電子線を照射してポリマー化し、その上にEB蒸着法で無機薄膜を積層する方法であり、工程が非常に複雑で時間がかかることが大きな欠点である。
【0007】
また、フラットパネルディスプレイの1つである有機エレクトロルミネッセンス素子に用いるための無機バリア膜として、窒化酸化シリコンがあり、これは高いガスバリア性をもつSiNxと、高い透光性をもつSiOの双方の利点をあわせもたせたものである(特許文献3)。
【0008】
このバリア膜は、主とする成膜方法がスパッタ法であり、成膜速度が遅くて実用的でない。
【0009】
一方、成膜法については、イオンプレーティングの1種である、アークプラズマ蒸着法が知られている(特許文献4、特許文献5)。
【0010】
【特許文献1】
特開2002−192646号公報
【特許文献2】
特開2002−205354号公報
【特許文献3】
特開2002−100469号公報
【特許文献4】
特開平9−25575号公報
【特許文献5】
特開平11−269636号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、フラットパネルディスプレイなどに用いられる有機物に対し、耐久性を向上させるための、極めて優れた酸素ガスや水蒸気に対するガスバリア性を有するガスバリア膜および該ガスバリア膜を成膜した基体、該ガスバリア膜を効率よく成膜する方法を提供する。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の透明ガスバリア膜は、基体の表面に成膜される酸化珪素系(SiOx)の透明ガスバリア膜において、酸化珪素系の透明ガスバリア膜が、C(炭素)およびN(窒素)のいずれをも含むことを特徴とする透明ガスバリア膜である。
【0013】
また、本発明の透明ガスバリア膜は、前述のガスバリア膜において、Si(珪素)、O(酸素)、C、Nの元素成分比が、Siの1に対して、Oが0.60〜1.70、Cが0.05〜0.40、Nが0.05〜0.60であることを特徴とし、さらにまた、前述の透明ガスバリア膜において、In、Al、Zr、Zn、Sn、Ti、Taのうち、1種もしくは2種以上の元素を含むことを特徴とする透明ガスバリア膜である。
【0014】
また、本発明の透明ガスバリア膜は、可視光透過率が50%以上あるいは80%以上であることを特徴とする透明ガスバリア膜である。
【0015】
また本発明の透明ガスバリア膜付き基体は、前述のガスバリア膜をプラスティックの板、フィルム、あるいはガラス板に成膜されてなることを特徴とする透明ガスバリア膜付き基体である。
【0016】
さらにまた、本発明の透明ガスバリア膜付き基体は、有機EL素子に用いられていることを特徴とする。
【0017】
また、本法発明の透明ガスバリア膜の成膜方法は、圧力勾配型ホロカソードプラズマガンを用いたアークプラズマ蒸着法で成膜することを特徴とする透明ガスバリア膜の成膜方法である。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明による透明ガスバリア膜は、基体の表面に成膜される酸化珪素系(SiOx)の透明ガスバリア膜において、酸化珪素系の透明ガスバリア膜が、C(炭素)およびN(窒素)のいずれをも含むものであり、図1に示すように、基体2に透明ガスバリア膜1が積層される。
【0019】
該透明ガスバリア膜の元素成分比は、好ましくは、Siの1に対してOを0.60〜1.70、Cを0.05〜0.40、Nを0.05〜0.60とするのが望ましい。
【0020】
透明ガスバリア膜中のOがSiに対して1.70倍を越えて存在すると、透光性、膜の低反射性、基体との密着性は良いが、ガスバリア性が著しく低下する。一方、OがSiに対して0.60未満では、透過率が減少して透光性が確保できず、また、膜の基体との密着性も悪くなる。特に酸素欠陥が生じた場合では、可視光域短波長側に著しい吸収が生じ、透明ガスバリア膜が着色する。
【0021】
NがSiに対して0.60倍を越える場合、ガスバリア性は良好であるが、透明ガスバリア膜の屈折率が高くなって透光性が低下し、また、透明ガスバリア膜に生じる応力が大きくなり、基体が反って、基体から膜が剥離するという不具合が生じる。一方、Nが、Siに対して0.05倍未満の場合、ガスバリア性が不十分となる。
【0022】
CがSiに対して0.40倍を越える場合、ガスバリア性と膜の屈曲に対する可撓性は良好であるが、膜にクラックが生じ、透光性が低下しやすくなる。一方、CがSiに対して0.05倍未満の場合、膜に生じる応力が大きくなり、基体が反るという不具合が生じる。
【0023】
また、本発明の透明ガスバリア膜は、ガスバリア性を向上させるため、透明ガスバリア膜の原子の網目構造を複雑にしたり、膜を緻密化したり、屈折率を制御して透光を向上するために、Si以外の金属であるIn、Al、Zr、Zn、Sn、Ti、Taのうち、1種以上の元素を微量添加したものである。In、Al、Zr、Zn、Sn、Ti、Taは、基体の表面や、基体の表面に成膜されている膜や電子素子等との密着性をよくすることができる。
【0024】
本発明の透明ガスバリア膜は、図1に示すように、基体の一つの表面のみに成膜して十分なバリア性を有するが、用途によっては、基体の両面に成膜してもよい。
【0025】
本発明の透明ガスバリア膜を成膜する基体には、特に制限するものではないが、プラスティック樹脂であれば、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアクリレートの他にも、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリエチレンナフタレート、ポリビニルアルコール、ポリエーテルスルフォン、ナイロン、および、これらの延伸フィルム、板材が使用出来る。これらのプラスティック樹脂の厚さは、50μm〜5mmであることが好ましい。
【0026】
さらに、これらの基体に用いるプラスティック樹脂の表面を、コロナ放電処理、アンカーコーティング処理、平滑化処理したものでも良い。
【0027】
また、本発明によるガスバリア膜を成膜する基体には、プラスティック樹脂の他に、ガラスやセラミックスや金属の上に各種有機物(モノマー、高分子)を塗布したものや、電子デバイス関連素子を成膜したものでも良い。ガラスやセラミックスや金属は、酸素ガスや水蒸気を発生しないが、この上に成膜した各種有機物や電子デバイス関連素子が酸素ガスや水蒸気を発生することがあり、これから発生したガスが上部に拡散するのを防ぐために、本発明の透明ガスバリア膜が有効に用いることができる。例えば、厚さ100μm程度の薄いガラスにおいて、ガラスを屈曲させたときにガラスの表面や端部の微細な欠陥による破壊を防ぐために、ガラスの両面あるいは片面に樹脂をコートし、可撓性を向上させたガラスを基体に用いてもよい。
【0028】
また、基体上に各種有機物(モノマー、高分子)を塗布して成膜したものや電子デバイス関連素子を成膜したものにおいて、これらの成膜したものから酸素や水蒸気が発生しない場合でも、これらの成膜したものが外側(成膜したもの基体側あるいは基体側とは反対側の面)や空気中から進入する酸素や水分により劣化するのを防ぐために、成膜したものの片側、あるいは両側に、成膜したものの面に直に、あるいは、他の成膜した面を介してガスバリア膜を成膜することもできる。
【0029】
本発明の透明ガスバリア薄膜は、圧力勾配型ホロカソードプラズマガンを用いたアークプラズマ蒸着法を用いて、基体の表面に成膜することが好ましい。該アークプラズマ蒸着法は、例えば、図2に概略を示す成膜装置を用いる。該アークプラズマ蒸着法は、イオンプレーティングの1種であり、特開平9−25575号公報や特開平11−269636号公報に開示されている成膜方法である。
【0030】
ガスバリア膜の成膜する膜厚は、可視光透過率が50%以上の場合、2μm以下とすることが好ましく、可視光透過率が80%以上の場合、400nm以下とすることが望ましい。また、ガスバリア性能を有効に機能させるためには、膜厚を100nm以上とすることが望ましい。
【0031】
図2に示す成膜装置は、真空チャンバー3と、真空チャンバー3の側壁に取り付けられた圧力勾配型プラズマガン4と、真空チャンバー3内の底部に配置したルツボ5と、真空チャンバー3内の上部に配置した基板支持ホルダー6によって構成されている。
【0032】
ルツボ5は、窒化珪素製やカーボン製のものを使用することが望ましい。
【0033】
圧力勾配型プラズマガン4には、圧力勾配型ホロカソードプラズマガンを用いることが望ましい。圧力勾配型プラズマガン4は、Ta製のパイプ7とLaB製の円盤8とで構成された複合陰極であり、パイプ7の内部にArガスを導入した際に加熱されたTa、LaBから熱電子が放出され、プラズマビーム9を成形する。圧力勾配型プラズマガン4の内部は、真空チャンバー3より常に圧力が高く保たれており、高温に曝されたTaやLaBが酸素などの反応性ガスによって劣化することを防ぐ構造になっている。
【0034】
基板支持ホルダー6はモーターにより回転する機構になっている。また、基板支持ホルダー6の上部には、基板加熱用ヒーター10と温度計11が配置されている。基板加熱用ヒーター10は、成膜する基体19を所定温度に保持するために設けられるもので、温度計11の測定値をもとに基板加熱ヒーター10の出力を制御している。また、真空チャンバー3の側壁にはガス供給ノズル12が配置されており、このガス供給ノズル12には、マスフローコントローラーを介して酸素ガス(O)、窒素ガス(N)、炭酸ガス(CO)などの反応ガス13が供給される。また、真空チャンバー3はコンダクタンスバルブ14を介して真空排気装置15に接続されており、真空チャンバー3に取り付けられた真空計16の測定値をもとに、コンダクタンスバルブ14の開度を調整して真空チャンバー3内が所定の圧力(真空度)に維持されるようになっている。
【0035】
電気的に絶縁性の高い原料を透明ガスバリア膜の成膜に用いるときには、圧力勾配型プラズマガン4の近傍に設けた反射電子帰還電極17を使用して、真空チャンバー3中の電子を捕獲し、長時間安定して成膜できる。
【0036】
図2に示す成膜装置を用いて、次の手順で本発明の透明ガスバリア膜を基体に成膜する。
【0037】
窒化珪素あるいはカーボンで製造されたルツボ5に、粒状の蒸発原料18を充填し、蒸発原料18が充填されたルツボ5を真空チャンバー3の底部にセットする。蒸発原料18は、ルツボに入れるため粒状であることが好ましいが、その形状を特に限定するものではない。
【0038】
蒸発原料18を成膜する基体2を基板支持ホルダー6に取り付け、真空チャンバー3内を約10−4Paに排気する。排気後、マスフローコントローラーを用いて流量を制御(10〜40sccm)した放電用Arガス20を、圧力勾配型プラズマガン4を通して真空チャンバー3内に供給する。
【0039】
次に、反応ガス(Oガス、Nガス、COガスなど)13をガス供給ノズル12から真空チャンバー3内に供給するとともに、真空排気装置15と真空チャンバー3との間に配置されたコンダクタンスバルブ14の開口の程度を調整して、真空チャンバー3内を約0.1Paの圧力に調整する。これらの反応ガス13は、図示しないマスフローコントローラーにより流量を制御する。流量は、膜組成、成膜速度、圧力勾配型プラズマガン4の出力、真空度、基体の温度、および放電圧力によって決定する。
【0040】
次に、圧力勾配型プラズマガン4を作動させ、プラズマビーム9をルツボ5内の蒸発原料18に収束させ、蒸発原料18が蒸発する温度に蒸発原料18を加熱する。プラズマビーム9をルツボ5中の蒸発原料18に集束させるために、集束コイル21や磁石22などを使用する。
【0041】
プラズマビーム9によって加熱・蒸発した蒸発原料と導入された反応ガスは、プラズマ雰囲気23によってイオン化される。イオン化したこれらの物質は、雰囲気中のプラズマのもつプラズマポテンシャルと、基体のもつフローティングポテンシャルとの電位差によって基体に向かって加速され、粒子は約20eVという大きなエネルギーをもって基体2の下表面に到達・堆積し、非常に緻密な本発明の透明ガスバリア膜が成膜される。
【0042】
本発明の透明ガスバリア膜をアークプラズマ蒸着法で成膜する際、蒸発原料にSiOx(0≦x≦2)を用いる。蒸発時の安定性および反応ガスとの反応性から、好ましくはSiO、Siが良い。SiOは最も安価で、かつ扱いやすい材料ではあるが、膜の十分な炭化および窒化が難しい。また、SiやSiCは、
成膜するための蒸発させる温度が高いため、多大な電力が必要となり、成膜コストが高く、あまり実用的ではない。
【0043】
原料は、粉体状でも、粒状でも、ブロック状でも、どのような形態でも使用出来る。反応ガスには、窒素、酸素、炭素を含むガスを用いる。たとえば窒素源には、Nが望ましいが、NO、NO、NOでもよい。酸素源にはOが望ましいが、Oでもよい。また、炭素源には、CO、CO、微量のメタン、エタン、プロパンなどが使用出来る。
【0044】
本発明の透明ガスバリア膜に用いる、Si以外の金属(Al、Zr、Zn、Ti、Ta)の蒸発原料には、金属、酸化物または2種以上の金属からなる複酸化物が使用出来る。これらの金属や化合物を蒸発原料として使用する場合には、蒸気圧や蒸発速度を十分に考慮する必要がある。
【0045】
【実施例】
以下に本発明の実施例を述べるが、本発明は、以下の実施例に限定するものではない。
【0046】
実施例1
本発明の透明ガスバリア膜を、図2に示す成膜装置を用い、次に示す手順で基体に成膜した。
【0047】
蒸発原料18には、高純度化学製のSiO粉粒体を使用した。これを、窒化珪素製のルツボ5に充填し、真空チャンバー3の底の、所定の位置に設置した。
【0048】
30cm角に切り出したPETフィルム(厚さ200μm)を純水中で超音波洗浄し、さらに、純水で十分にすすいだ後、乾燥してPETフィルムの面を清浄にして、基体19に用いた。
【0049】
このPETフィルムをガラス板に固定し、PETフィルムを固定したガラス板を、PETフィルムが下になるように、真空チャンバー3内の基板支持ホルダー6に設置した。
【0050】
この後、真空チャンバー3内の圧力が1.0×10−4Paに達するまで、約2時間、真空排気装置15で排気した。なお、この排気中に、基体19は加熱していない。
【0051】
圧力勾配型プラズマガン4に20sccmのアルゴンガス(Ar)を流し、さらに、反応性ガスとして炭酸ガス(CO)を50sccm、窒素ガス(N)を100sccm流した。次に圧力勾配型プラズマガン4の出力が10kWになるまで徐々に電力を印可し、圧力勾配型プラズマガン4からプラズマビームを発生させて原料に照射し、原料を加熱して蒸発させた。なお、圧力勾配型プラズマガン4には、圧力勾配型ホロカソードプラズマガンを用いた。
【0052】
このとき、また、真空チャンバー3内の圧力が0.4Paとなるように真空排気装置の排気能力を制御した。
【0053】
放電、圧力、原料の蒸発が安定した後、シャッターを25秒間開け、PETフィルム上に膜を成膜した。
【0054】
得られた膜の厚さは202nmであり、8.1nm・s−1という著しく早い成膜速度でCおよびNを含む酸化珪素系の膜が成膜できた。また、膜の組成を分析した結果、おおよそSi:O:C:N=1.0:1.3:0.1:0.3の元素成分比であった。分光特性から求めた波長550nmでの膜の屈折率は1.620で、膜の消衰係数は0.002と著しく小さく、可視光線透過率86%と極めて透光性が高い膜であった。
【0055】
膜の酸素透過度は、JIS K 7126 のB法に準じ、また、水蒸気透過度は、JIS K 7129 のB法に準じ、それぞれ測定した。本実施例の透明ガスバリア膜付き基体の酸素透過度は、0.09cc・m−2・day−1・atm−1であり、また、水蒸気透過度は、0.10g・m−2・day−1であり、酸素および水蒸気に対するバリア性が著しく良好な透明ガスバリア膜が得られた。また、本実施例の透明ガスバリア膜は、テープ剥離試験でも膜の脱落がなく、非常に強固に基体19と密着していた。
【0056】
実施例2
実施例1で使用した装置、基体、蒸発原料と同じものを使用した。基体のPETフィルムを洗浄し、ついで真空チャンバー3中にセットして真空引きするとともに、基板加熱ヒーター10を作動させて50℃でフィルム表面の付着ガスを脱気した。フィルムを室温に冷却した後、圧力勾配型プラズマガン4の出力8kW、一酸化炭素ガス(CO)30sccm、窒素ガス(N)100sccm、酸素ガス(O2)10sccm流し、真空チャンバー3内の圧力0.2Paで85秒間、基体(PETフィルム)19上に膜を成膜した。
【0057】
得られた膜の厚さは355nmであり、膜はおおよそSi:O:C:N=1.0:1.0:0.2:0.5の元素成分比をもつ、CおよびNを含む酸化珪素系の膜であった。分光特性から求めた波長550nmでの膜の屈折率は1.79で、膜の消衰係数は0.005、可視光線透過率は81%であった。
【0058】
膜の酸素透過度と水蒸気透過度を実施例1と同様に測定したところ、本実施例の透明ガスバリア膜付き基体の酸素透過度は、0.03cc・m−2・day−1・atm−1、水蒸気透過度は、0.04g・m−2・day−1で、酸素および水蒸気に対するバリア性が著しく良好であった。また、本実施例の透明ガスバリア膜は、テープ剥離試験でも膜の脱落がなく、非常に強固に基板と密着していた。
【0059】
比較例1
実施例1で使用した装置で、基体19には実施例1と同じPETフィルムを用い、蒸発原料18にはSiO粉粒体を使用した。圧力勾配型プラズマガン4の出力10kW、 窒素ガスを100sccm流し、真空チャンバー3内の圧力0.2Paで40秒間、PETフィルム上に膜を成膜した。得られた膜の厚さは196nmであり、膜の組成を分析した結果、おおよそSi:O:N=1.0:1.8:0.2の元素成分比をもち、実施例1で得られた透明ガスバリア膜に対してCを含まない膜であった。分光特性から求めた波長550nmでの膜の屈折率は1.55で、膜の消衰係数は0.002であり、可視光線透過率は 90%と極めて透光性が高い膜であった。
【0060】
しかし、膜の酸素透過度と水蒸気透過度を実施例1と同様に測定したところ、本膜付き基体の酸素透過度は0.85cc・m−2・day−1・atm−1、水蒸気透過度は0.75g・m−2・day−1で、酸素および水蒸気に対するバリア性は劣るものであった。
【0061】
比較例2
実施例1と同じPETフィルムを用いた。実施例1に使用した装置でSiO粉粒体を原料に用いた。圧力勾配型プラズマガン4の出力を12kW、窒素ガスを50sccm、炭酸ガスを200sccm流し、真空チャンバー3内の圧力0.1Paで31秒間、PETフィルム上に膜を成膜した。得られた膜の厚さは210nmであり、膜の組成を分析した結果、おおよそSi:O:C:N=1.0:0.8:0.5:0.2の元素成分比をもつ、CおよびNを含む酸化珪素系の膜で、実施例1で得られた膜に比較し、Cの多い膜であった。得られた膜は褐色に着色しており、可視光線透過率が39%と著しく低いものであった。また、膜表面を顕微鏡で観察すると微細なクラックが多数発生しており、ガスバリア膜としては到底用いることができないものであった。
【0062】
【発明の効果】
本発明の透明ガスバリア膜は、高いガスバリア性と透光性を両立させたバリア膜つき基体を提供する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で得られるガスバリア膜つき基体の構成を示す模式的な断面図である。
【図2】本発明のガスバリア膜の成膜方法による成膜装置の概略図である。
【符号の説明】
1 C,Nを含む酸化珪素系のガスバリア膜
2 基体
3 真空チャンバー
4 圧力勾配型プラズマガン
5 ルツボ
6 基板支持ホルダー
7 Ta製のパイプ
8 LaB6製の円盤
9 プラズマビーム
10 基板加熱用ヒーター
11 温度計
12 ガス供給ノズル
13 反応性ガス
14 コンダクタンスバルブ
15 真空排気装置
16 真空計
17 反射電子帰還電極
18 蒸発原料
19 基体
20 放電用アルゴンガス
21 収束コイル
22 磁石
23 プラズマ雰囲気

Claims (9)

  1. 基体の表面に成膜される酸化珪素系(SiOx)の透明ガスバリア膜において、酸化珪素系の透明ガスバリア膜が、C(炭素)およびN(窒素)のいずれをも含むことを特徴とする透明ガスバリア膜。
  2. Si(珪素)、O(酸素)、C、Nの元素成分比が、Siの1に対して、Oが0.60〜1.70、Cが0.05〜0.40、Nが0.05〜0.60であることを特徴とする請求項1に記載の透明ガスバリア膜。
  3. 透明ガスバリア膜が、In、Al、Zr、Zn、Sn、Ti、Taのうち、1種もしくは2種以上の元素を含むことを特徴とする請求項1あるいは請求項2のいずれかに記載の透明ガスバリア膜。
  4. ガスバリア膜の可視光透過率が50%以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の透明ガスバリア膜。
  5. ガスバリア膜の可視光透過率が80%以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の透明ガスバリア膜。
  6. 透明ガスバリア膜が成膜されている基体が、透明プラスティックの板あるいはフィルムであることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の透明ガスバリア膜が成膜されてなる透明ガスバリア膜付き基体。
  7. 透明ガスバリア膜が成膜されている基体が、ガラス板であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の透明ガスバリア膜が成膜されてなる透明ガスバリア膜付き基体。
  8. 透明ガスバリア膜が成膜されている基体が、有機EL素子に用いられていることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の透明ガスバリア膜が成膜されてなる透明ガスバリア膜付き基体。
  9. 圧力勾配型プラズマガンを用いたアークプラズマ蒸着法で、膜厚100nm〜2μmの範囲に成膜することを特徴とする請求項1乃至請求項8に記載の透明ガスバリア膜の成膜方法。
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