JP2019064644A - ガスバリア性容器 - Google Patents

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Abstract

【課題】透明性及び高いガスバリア性を兼備するガスバリア性容器を提供する。【解決手段】基材である熱可塑性樹脂容器2の上にガスバリア膜3を備えるガスバリア性容器において、前記ガスバリア膜が珪素(Si)、酸素(O)、窒素(N)、及び炭素(C)を含むガスバリア層を少なくとも1層有し、前記ガスバリア層のSiの元素組成比を1.0としたとき、前記ガスバリア層のNの元素組成比が0.01以上1.5以下であることを特徴とする。【選択図】図2

Description

本発明は、ガスバリア膜を備えるガスバリア性容器に関する。
ペットボトル等のプラスチックボトルは、現在広く普及している。プラスチックボトルは飲料等の容器として用いられることが多いが、近年、プラスチックボトルの表面にダイヤモンド・ライク・カーボン膜(DLC膜)や酸化珪素膜(SiO膜)といったガスバリア膜を成膜する技術が開発されており、当該ガスバリア膜を備えたプラスチックボトルが金属缶やガラス瓶の代替として使用されている。
また、ガスバリア性の観点では、熱可塑性樹脂フィルム又はシートの形態であれば、窒化珪素膜(SiN膜)が優れていることが知られている。
特開2006−104529号公報 特開2005−271959号公報 特開2007−237702号公報
しかしながら、DLC膜を有するプラスチックボトルはやや褐色を示すため、ボトルの内容物を見せる仕様の場合には、より無色透明であることが望まれている。例えば、特許文献1にはDLC由来のアモルファスカーボン膜を有するプラスチックボトルが開示されており、該文献によるとプラスチックボトルの色はL*a*b*表色系におけるb*の絶対値が3.5〜7であり、褐色を示している。
SiO膜を有するボトルは、膜質が柔軟性や可撓性等に欠けるためにガスバリア性機能が損なわれる虞がある(例えば、特許文献2)。
SiN膜は、一般に回り込み蒸着性(蒸着粒子が成膜面形状に沿って微細箇所(例えば、リブが付されている箇所)まで均等に蒸着される特性)が低く、またSiO膜よりも可撓性に欠ける硬質な膜質として知られている(例えば、特許文献3)。
フィルムやシートの場合であれば、成膜時の成膜箇所の形状が略平面であり、回り込み蒸着性が高くなくとも均等蒸着でき、また蒸着膜面上に他のフィルムや層を重ねるため、使用時に変形してもガスバリア性の劣化は緩和される。しかしながら、ボトル形状にSiN膜を成膜する場合は、略円筒状胴部や、首部、肩部、底部とボトル全体に曲率を有しており、また場合により加飾性や強度向上のために局所的に凹凸を有する形状であるので、成膜追従性が低いSiN膜ではボトル全面の均等蒸着が困難である。また、ボトルの場合は蒸着膜を保護するための被覆層が無いので、可撓性が不十分なSiN膜では、ボトルの膨張収縮や使用における変形によって、ガスバリア性の劣化が発生し易い。更に、SiN膜由来の濃い黒褐色を示すという欠点がある。
そこで本発明は、透明性及び高いガスバリア性を兼備するガスバリア性容器を提供することを課題とする。
本発明者らは、鋭意検討の結果、Si、O、N、及びCを含むガスバリア層を備えることで、透明性及び高いガスバリア性を実現できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、上記課題を解決するための本発明の1つの態様は、
基材である熱可塑性樹脂容器の上にガスバリア膜を備えるガスバリア性容器において、前記ガスバリア膜が珪素(Si)、酸素(O)、窒素(N)、及び炭素(C)を含むガスバリア層を少なくとも1層有し、前記ガスバリア層のSiの元素組成比を1.0としたとき、前記ガスバリア層のNの元素組成比が0.01以上1.5以下であることを特徴とする、ガスバリア性容器、である。
前記ガスバリア性容器において、少なくとも1層の前記ガスバリア層のうち、少なくとも1層の元素組成比が、Oが0.1以上2.2以下であり、Nが0.01以上1.5以下であり、且つCが0.05以上3.0以下であることが好ましい。また、少なくとも1層の前記ガスバリア層のうち、少なくとも1層のOの元素組成比が1.5以上2.2以下であることが好ましく、或いは、少なくとも1層の前記ガスバリア層のうち、少なくとも1層のNの元素組成比が0.1以上1.5以下であることが好ましい。
また、前記ガスバリア性容器において、前記ガスバリア膜が前記ガスバリア層を少なくとも2層有し、少なくとも2層の前記ガスバリア層のうち、少なくとも1層がA層であり、少なくとも1層がB層であり、前記A層のOの元素組成比が1.5以上2.2以下であり、前記B層のNの元素組成比が0.1以上1.5以下であることが好ましい。ガスバリア膜が前記A層及び前記B層を有する場合、前記基材上に、前記基材側から前記A層と前記B層とをこの順に有することが好ましい。
さらに、前記ガスバリア性容器は、酸素透過率(23℃相対湿度50%)が0.02cc/pkg/24h/atm・air以下であることが好ましい。また、イエローインデックス(JIS K7373:2006)が8.0未満であることが好ましい。
本発明のガスバリア性容器によれば、所定のガスバリア層を有しているため高いガスバリア性を実現している。また、上記ガスバリア層は透明性が高いため、ガスバリア性容器の透明性も高い。
ガスバリア性容器1の外観を示した図である。 図1にIIで示した箇所の断面拡大図である。 実施例における、プラズマ化学蒸着の装置を示した図である。
以下、本発明のガスバリア性容器について1つの好適な実施形態を用いて説明するが、本発明のガスバリア性容器はこれに限定されない。
<ガスバリア性容器1>
ガスバリア性容器1は基材である熱可塑性樹脂容器2の上にガスバリア膜3を備える。図1にガスバリア性容器1の外観図の例を示した。また、図2に図1のIIで示した箇所の断面拡大図を示した。
(ガスバリア性容器1の形状)
ガスバリア性容器1は図1に示したように略円筒状の形状をしており、口部11、肩部12、胴部13及び底部14を有している。ただし、本発明のガスバリア性容器の形状はこれに限定されず、目的の用途に合わせて適宜形成することができる。また、後述するようにガスバリア膜3の成膜追従性、可撓性が良いことから、容器にリブ、加飾、耐圧向上のための細かい凹凸部を付すこともできる。
なお、ガスバリア性容器1を封止する蓋、キャップ、封止材も、その形状、構成を工夫して、内容物に対するガスバリア性を保つ形状とすることが望まれる。
(熱可塑性樹脂容器2)
熱可塑性樹脂容器2はガスバリア性容器1の形状の基本となるものであり、熱可塑性樹脂を主原料としている。ここで、「主原料」とは全体に対して90%以上の割合で含まれている原料を意味する。
熱可塑性樹脂の種類は特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等のポリオレフィン系樹脂;環状ポリオレフィン等の非晶質ポリオレフィン系樹脂;(メタ)アクリル系樹脂;ポリ塩化ビニル系樹脂;ポリスチレン系樹脂;ポリビニルアルコール樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体等のポリビニルアルコール系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリビニルブチラート樹脂;ポリアリレート樹脂;エチレン−四フッ化エチレン共重合体、三フッ化塩化エチレン、四フッ化エチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、パーフルオロ−パーフルオロプロピレン−パーフルオロビニルエーテル共重合体等のフッ素系樹脂;ポリ酢酸ビニル系樹脂;アセタール系樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン2,6−ナフタレート(PEN)等のポリエステル系樹脂;ポリアミド6、ポリアミド12、ポリアミド共重合体等のポリアミド系樹脂;ポリイミド樹脂;ポリエーテルイミド樹脂;ポリサルホン樹脂;ポリエーテルサルホン樹脂;ポリエーテルエーテルケトン樹脂等を用いることができる。中でも、汎用性、強度、透明性、美観性、成形性、膜密着性の点からPETが好ましい。
熱可塑性樹脂容器2の厚さは用途に応じて適宜設定できるが、0.2mm以上1.5mm以下であることが好ましい。
(ガスバリア膜3)
ガスバリア膜3はガスバリア性容器1にガスバリア性を付与するための膜であり、熱可塑性樹脂容器2の上に備えられている。好ましくは、図2に示したように、熱可塑性樹脂容器2の表面にガスバリア膜3が形成された形態である。熱可塑性樹脂容器2の表面には外側表面(外部環境側表面)及び内側表面(内容物側表面)があるが、ガスバリア膜3はこれらのうち少なくとも一方に形成されていればよく、両方に形成されていてもよい。好ましくは、図2に示したように内側表面にガスバリア膜3が形成されることである。
ガスバリア性容器1はガスバリア膜を備えることにより、外気が容器の内容物側へ透過したり、内容物の炭酸ガスや香味成分が容器外へ移行したりすることを防ぐことができる。
また、内側表面にガスバリア膜を備えることにより、熱可塑性樹脂容器2中の微量成分や水分が内容物側へ移行することを抑制できる。
次にガスバリア膜3の層構成について説明する。
ガスバリア膜3は珪素(Si)、酸素(O)、窒素(N)、及び炭素(C)を含むガスバリア層を少なくとも1層有しており、ガスバリア層のSiの元素組成比を1.0としたとき、Nの元素組成比が0.01以上1.5以下であることを特徴としている。
Nの元素組成比が0.01以上であると、ガスバリア膜3のガスバリア性を向上することができる。また、1.5以下であると、ガスバリア膜3の着色が抑制される。よって、ガスバリア膜3は上記ガスバリア層を有することにより、透明性及び高いガスバリア性を備えることができる。
なお、以下においてもガスバリア層の元素組成比について説明するが、これらの元素組成比も上記と同様に、Siの元素組成比を1.0として算出している。
上記のとおり、ガスバリア膜3はガスバリア層を少なくとも1層有する。すなわち、ガスバリア膜3はガスバリア層を1層のみ有していてもよく、2層以上有していてもよい。また2層以上有する場合、これらのガスバリア層の元素組成比は同じであってもよく、異なっていてもよい。ただし、ガスバリア層のNの元素組成比は0.01以上1.5以下であることが重要である。
なお、ガスバリア層には水素(H)が含まれているが、XPS装置ではHのピークが検出できないため、元素組成比の記述には加えていない。
さらに、ガスバリア膜3の層構成について説明する。
ガスバリア膜3は、該ガスバリア膜3が有する少なくとも1層のガスバリア層のうち、少なくとも1層のO、N、及びCのいずれかの元素組成比が以下の範囲であることが好ましい。言い換えると、ガスバリア膜3がガスバリア層を1層のみ有する場合は、ガスバリア層のO、N、及びCのいずれかの元素組成比が以下の範囲であることが好ましい形態であり、2層以上有する場合は、少なくとも1層のO、N、及びCのいずれかの元素組成比が以下の範囲であることが好ましい形態である。さらに言い換えると、2層以上有する場合は、1つの層のO、N、及びCのいずれかの元素組成比が以下の範囲であり、その他の層は任意のガスバリア層である形態も好ましい形態に含まれる。
Oの元素組成比は、下限は0.1以上が好ましく、0.3以上がより好ましく、1.5以上が更に好ましい。上限は、2.2以下が好ましく、2.0以下がより好ましい。Oの元素組成比が0.1以上であると、ガスバリア膜3に透明性を付与することができ、1.5以上であるとさらに透明性が高まる。Oの元素組成比が2.2を超えるとSi、O、N、及びCを含むガスバリア層としてのガスバリア性の向上が抑制され易い。
Nの元素組成比は、下限は0.01以上であり、0.1以上が好ましく、0.3以上がよりに好ましい。上限は1.5以下であり、1.3以下が好ましく、1.2以下がより好ましい。Nの元素組成比が0.1以上であるとより高いガスバリア性を付与することができる。また、Nの元素組成比が1.3以下であるとガスバリア膜3の着色が抑制されつつ、適度な硬度となる。
Cの元素組成比は、下限は0.05以上が好ましく、0.1以上がより好ましく、0.5以上が更に好ましい。上限は3.0以下が好ましく、2.5以下がより好ましく、2.0以下が更に好ましい。Cの元素組成比が0.05以上であると、ガスバリア性を阻害せずにガスバリア膜3に成膜追従性を付与することができ、0.5以上であるとさらに成膜追従性が高まる。Cの元素組成比が2.5以下であると着色が抑制される。Cの元素組成比が3.0を超えるとガスバリア膜3のガスバリア性、透明性が低下する傾向にある。
なお、ガスバリア膜3が有する少なくとも1層のガスバリア層のうち、少なくとも1層のO、N、及びC全ての元素組成比が上記の範囲にあることにより、ガスバリア膜3は透明性及び高いガスバリア性を兼備しつつ、成膜追従性及び膜の可撓性が良好となる。そのため、容器のガスバリア性を高くすることができ、また容器が膨張収縮や変形を受けても、ガスバリア性を良好に維持することができる。
続いて、ガスバリア膜3がガスバリア層を少なくとも2層有する場合の好ましい形態について説明する。
ガスバリア膜3がガスバリア層を少なくとも2層有する場合、少なくとも2層のガスバリア層のうち、少なくとも1層がA層であり、少なくとも1層がB層であることが好ましい。すなわち、ガスバリア膜3がガスバリア層を2層有する場合は、一方のガスバリア層がA層であり、他方のガスバリア層がB層である形態が好ましく、3層以上有する場合は、少なくとも1層がA層であり、少なくとも1層がB層である形態が好ましい。さらに言い換えると、3層以上有する場合は、1つの層がA層であり、もう1つの層がB層であり、その他の層が任意のガスバリア層である形態も好ましい形態に含まれる。
A層はOの元素組成比が1.5以上2.2以下であることを特徴としており、Oの元素組成比が1.5以上であるとガスバリア膜3の透明性が高まる。
B層はNの元素組成比が0.1以上1.5以下であることを特徴としており、Nの元素組成比が0.1以上であるとガスバリア膜3のガスバリア性が高まる。
よって、A層は透明性に秀でたガスバリア層と言え、B層はよりガスバリア性の高いガスバリア層と言える。
ここで、A層の元素組成比についてさらに説明する。
Oの元素組成比は、下限は1.6以上が好ましく、1.7以上が更に好ましい。上限は2.1以下がより好ましい。
Nの元素組成比は0以上1.0以下であることが好ましく、下限は0.01以上がより好ましく、0.02以上が更に好ましい。上限は0.5以下がより好ましく、0.3以下が更に好ましい。透明性に秀でたガスバリア層A層を形成する観点で、Nの元素組成比が1.0以下であると、ガスバリア膜3の着色が抑制され、かつ適度な硬度となる。
Cの元素組成比は0.01以上1.0以下であることが好ましく、下限は0.02以上がより好ましく、0.03以上が更に好ましい。上限は0.5以下がより好ましく、0.3以下が更に好ましい。Cの元素組成比が0.01以上であることにより、ガスバリア性を阻害しない程度で可撓性を付与することができ、1.0以下であることにより、着色が抑制される。
次にB層の元素組成比についてさらに説明する。
Oの元素組成比は0.1以上2.0以下であることが好ましく、下限は0.2以上がより好ましい。上限は1.9以下がより好ましい。より高度なガスバリア性を有するガスバリア層B層を形成する観点で、Si、O、N、Cを含むガスバリア層においてOの元素組成比が2.0以下であると好適であり、且つ適度な可撓性も付与される。
Nの元素組成比は、下限は0.2以上がより好ましく、0.3以上が更に好ましい。上限は1.3以下がより好ましい。
Cの元素組成比は0.01以上2.0以下であることが好ましく、下限は0.2以上がより好ましい。上限は1.7以下がより好ましく、1.6以下が更に好ましい。
上記のように、A層はOの元素組成比が高いため、透明性が高い。一方で、B層はNの元素組成比が高いため、ガスバリア性が高い。
よって、ガスバリア膜3はA層とB層とを少なくとも1層ずつ備えることで、透明性及び高いガスバリア性を兼備することが容易となる。
ここで、ガスバリア膜3がA層及びB層を備える場合の具体的な形態について説明する。例えば、(1)〜(10)の形態が挙げられる。
(1)A/B
(2)B/A
(3)A/B/A
(4)B/A/B
(5)A/B/A/B
(6)B/A/B/A
(7)A/A/B
(8)A/B/B
(9)A/A/B/B
(10)B/B/A/A
(1)〜(10)において、左側が基材である熱可塑性樹脂容器2側を表しており、「/」が層間の境界を表している。また、同じ層が連続している例を挙げているが、これは同じ層(元素組成比は同じであってもよく、異なっていてもよい。)が複数回積層されたことを意味する。これらの複数の層は、一度に続けて成膜されてもよいし、複数回に分けて成膜されてもよく、各回の成膜装置や方法が異なってもよい。
上記の積層形態のうち、ガスバリア膜3は熱可塑性樹脂容器2側にA層が配置され、熱可塑性樹脂容器2とは反対側(図1、2における容器の内容物側)にB層が配置された形態((1)、(3)、(5)、(7)〜(9))が好ましく、熱可塑性樹脂容器2側からA層、B層の順にガスバリア層を有している形態(1)がより好ましい。ガスバリア層が2層である形態とすることにより、膜厚を低減できるため、透明性が高くなる。また、蒸着工数が少なくても所定の機能を発現する点で、生産性が良い。
熱可塑性樹脂容器2は熱可塑性樹脂を主原料とするため、ガスバリア膜3の成膜加工時やガスバリア性容器1の形状を形成するための2次加工時における温度衝撃により、熱可塑性樹脂容器2に膨張収縮が生じることがある。また、製造されたガスバリア性容器1の搬送や使用による衝撃により形状が変形することがある。このような場合、ガスバリア膜3にも多少の変形や瞬間的な変形が生じることがあるが、その場合においてもガスバリア膜3は、比較的に柔軟性、追従性のよいA層が熱可塑性樹脂容器2側に形成されており、比較的にガスバリア性が良く、硬質なB層が熱可塑性樹脂容器2とは反対側(図1、2における容器の内容物側)に形成されているため、良好なガスバリア性を維持することができる。
よって、熱可塑性樹脂容器2側にA層を配置することで、基材容器への密着性、膜全体の柔軟性が向上し、熱可塑性樹脂容器2とは反対側(図1、2における容器の内容物側)にB層を配置することでガスバリア性が向上する。
ガスバリア膜3の元素組成比は、X線光電子分光分析(XPS:X−ray Photoelectron Spectroscopy)装置を用いて測定することができる。
詳しくは次のとおりである。
XPS装置を用い、ガスバリア膜3のSi2pスペクトル、O1sスペクトル、N1sスペクトル、C1sスペクトルを分析し、得られたピーク面積を解析することで元素組成比が得られる。また、エッチング分析により、膜深さ方向の元素組成比を測定することもできる。
なお、成膜後に外気に曝されるガスバリア膜3の最表面は、酸化が生じて酸素原子比率が高くなる。そこで、本願ではこれを考慮して、最表層の分析値を除いた分析値を用いる。また、層界面付近も正確な値を示さないため、分析値から除外する(接する層同士が混じり合うため。)。
また、ガスバリア膜3がガスバリア性及び透明性を備える観点から、Si−N結合が多く、Si−C結合が少ないことが好ましいと考えられ、それらは、フーリエ変換赤外線吸収分析(FT−IR)や飛行時間型2次イオン質量分析(TOF−SIMS)によって分析できる。例えば、FT−IRで熱可塑性樹脂容器2由来のスペクトルを差し引いた差スペクトル分析を行い、Si−N伸縮振動ピーク(900cm−1付近)、Si−C伸縮振動ピーク(1000cm−1付近)、N−H伸縮振動ピーク(3400cm−1)、Si−H伸縮振動ピーク(2200cm−1)等のピーク強度比から解析することができる。
ガスバリア膜3の膜厚はガスバリア性、透明性、及び色目を良好に兼備できれば良く特に限定されないが、ガスバリア膜3の総厚の下限が5nm以上であることが好ましく、10nm以上がより好ましく、上限が300nm以下であることが好ましく、200nm以下がより好ましく、100nm以下がさらに好ましい。下限を5nm以上にすることにより蒸着抜けが発生し難く、ガスバリア性が十分に得られ易い。一方で、上限を300nm以下にすることにより良好な透明性が得られる。
なお、A層及びB層を有する場合は、A層の膜厚は5nm以上150nm以下、B層の膜厚は5nm以上100nm以下が好ましい。
また、本容器断面の超薄切片を作製し透過型電子顕微鏡で観察すると、層の境界の判別に有効であり、各層の膜厚計測にも用いることができる。
また、膜厚は、容器開口部から底面部までの成膜面全体に亘って均等であることがガスバリア性及び透明性の観点から好ましく、例えば、容器全高の半分の位置高さにおける膜厚を基準として±50%の膜厚範囲であることが好ましく、より好ましくは±30%である。膜厚分布は、容器形状を考慮し、ガス導入位置、ガス流量、電極位置、プラズマ印加電力などを調整して、均等化を図ることができる。
ガスバリア膜3の膜密度は、1.50g/cm以上が好ましく、1.60g/cm以上がより好ましく、2.00g/cm以上がさらに好ましい。
膜密度が大きいと膜が緻密であり、ガスバリア性が良好となる。なお、本願のガスバリア膜3は膜密度が大きくとも、可撓性に優れることが特徴であり、内容物の充填加工や、保管及び搬送時に多少の外圧が加わってもガスバリア性の劣化が起き難い。
膜の密度を高めるには、炭素組成比の低減や、プラズマ反応したガス分子が容器基材へ密集して緻密に堆積することにより為される。
また、膜密度の測定方法は、例えば、X線反射率測定から解析する方法、容器基材を溶剤で十分溶解させて膜を単離させ比重法で測定する方法等が挙げられる。
(ガスバリア性容器1の透明性、色目)
ガスバリア性容器1は、内容物の視認性、容器美観性、衛生的印象の点から、無色透明であることが好ましい。一般に、熱可塑性樹脂容器は無色透明に成形されたものが用いられるので、ガスバリア性容器1の透明性や色目は、ガスバリア膜3の透明性や色目(色味)が大きく影響する。
一般にガスバリア性の高い窒素含有珪素膜は黒褐色を帯びるが、本願のガスバリア膜3は、透明で、無色〜極薄褐色であることが特徴である。ガスバリア膜の透明性、色目の測定は、簡便的に、無色透明な樹脂容器基材に成膜した状態で行うことが出来る。
ガスバリア性容器1の光線透過率は80%以上が好ましく、85%以上がより好ましく、88%以上が更に好ましい。光線透過率が80%以上であると透明であるといえる。
ガスバリア性容器1の色目は、茶褐色や黒褐色の色目が付かず、内容物の変色といった誤解を与えないよう、無色に近いほど好ましい。イエローインデックスYI値(JIS K7373:2006)は8.0未満が好ましく、6.0未満がより好ましく、4.0未満がさらに好ましい。b*(JIS Z8781−4:2013)は5以下が好ましく、4以下がより好ましく、3以下が更に好ましい。
イエローインデックスYI値が小さいほど色目が薄く無色性が高い。また、同様に、b*が小さいほど色目が薄く無色性が高い。
(ガスバリア性容器1のガスバリア性)
ガスバリア性容器1の温度23℃、相対湿度50%における酸素透過率(OTR:Oxygen Transmission Rate)は0.02cc/pkg/24h/atm・air以下が好ましい。より好ましくは0.015cc/pkg/24h/atm・air以下であり、さらに好ましくは0.010cc/pkg/24h/atm・air以下である。例えば、炭酸飲料やアルコール飲料等の用途にはより低い酸素透過率、すなわちより高いガスバリア性が適している。
ガスバリア性容器1の酸素透過率が0.02cc/pkg/24h/atm・air以下であることにより、内容物の酸化、腐食、及び腐敗、内容物の炭酸ガス抜け、並びに香味抜けの抑制に有効である。
本容器の容器当たりのガスバリア性の良さは、ガスバリア膜3を成膜しない容器のOTRと比較することで分かる。すなわち、膜形成しない容器に対する、ガスバリア膜3を形成したガスバリア性容器1の酸素透過率の比(BIF:Barrier Improvement Factor)を検討することで分かる。BIFが1.0より高いとガスバリア性が向上したことを意味し、より好ましくは2.0以上であり、さらに好ましくは5.0以上である。近年のハイバリア性要求の観点からは10以上が好ましい。
(ガスバリア性容器1の用途)
ガスバリア性容器1は上記のとおり、ガスバリア性、透明性が良いので、酸化防止、腐食防止、香味維持、炭酸ガス抜け防止、変色防止と、内容物の視認性などを必要とする、食品用、飲料用、調味料用、医薬用、工業部品用に適している。中でも、飲料用及び調味料用などに好適に用いることができる。例えば、炭酸飲料、ワイン、日本酒など、内容物の色目が品質や消費者に与える影響の大きいものに好適である。
現在、飲料用及び調味料用の容器はガラス瓶からプラスチック製の容器への代替が進み、今後プラスチック製の容器が多用されることが予想される。本願のガスバリア性容器1はこれまでのプラスチック製容器に比べてガスバリア性が向上しており、かつ透明性を備えているため、飲料用及び調味料用の容器として従来の容器よりも優れていると言える。
<ガスバリア性容器の製造方法>
次に、ガスバリア性容器1の製造方法について説明する。
国際公開第2006/126677号パンフレットには、水素含有SiNx膜をはじめ水素含有DLC膜、水素含有SiOx膜、水素含有SiCxNy膜をプラスチック容器に成膜する製法が開示されている。しかしながら、当該開示されている方法は熱触媒体を用いて化学蒸着する製法であり、汎用の高周波プラズマやマイクロ波プラズマを用いた装置ではなく熱触媒体を備えた新たな設備が必要であった。
一方で、本発明のガスバリア膜3は、DLC蒸着、及び酸化珪素蒸着を行う際に使用する公知の高周波電源やマイクロ波電源を用いて成膜することができることを特徴としている。よって、新たに熱触媒体を有する設備を用意する必要がないため、本願の製造方法によれば、簡易にガスバリア膜3を成膜することができる。
以下に詳しく説明する。
すなわち、ガスバリア性容器1の製造方法は、Si、O、N、及びCを含むガスバリア層を形成するガスを用いて基材である熱可塑性樹脂容器2の上にガスバリア膜3を成膜する工程を備えている。ガスバリア膜3を成膜する方法は特に限定されないが、蒸着法であることが好ましく、プラズマ化学蒸着法であることがより好ましい。
なお、以下においては、プラズマ化学蒸着法によりガスバリア膜3を成膜する方法を例示して説明する。
なお、熱可塑性樹脂容器2は上記した熱可塑性樹脂を用いて、目的の形状に合わせて公知の方法により成形することができ、好ましくは延伸ブロー成形で成形することである。延伸ブロー成形で熱可塑性樹脂容器2を成形することにより、ガスバリア膜3の成膜性、引いてはガスバリア性が向上する。
(ガスバリア膜3の成膜工程)
まず、Si、O、N、及びCを含むガスバリア層を形成するガスについて説明する。
原料ガス、または原料ガス及び添加ガスをプラズマ化学蒸着へ導入し、これらのガスがプラズマ下で反応して、容器基材の上に堆積することでガスバリア膜3が成膜される。
原料ガスとしては、有機シランガスを用いる。有機シランガスとしては有機シラザンガス及びアミノシランガスが好ましく、アミノシランガスが特に好ましい。
アミノシランは、1分子中に複数のSi−N結合を有するので、Siに対するNの結合価数および元素組成比が高く、ガスバリア膜3のガスバリア性を向上させ易い。また、ガスバリア性と色目の観点から、ガスバリア膜3のCの元素組成比を低減させることが好ましい。ここで、アミノシランのN−C結合の結合解離エネルギーと有機シラザンのSi−C結合の結合解離エネルギーとを比較すると、一般的にアミノシランのN−C結合の結合解離エネルギーの方が小さく解離し易い。よって、アミノシランを用いることでSiに対するCの結合価数および元素組成比が低減するため、プラズマ中の化学反応や成膜後の膜処理に有利である。そのため、アミノシランガスを用いることにより、より低い反応エネルギーで望ましい元素組成比のガスバリア膜3を形成できる。また、基材である熱可塑性樹脂容器2を加温せずとも、好適な窒素含有珪素系膜を成膜し易いので、ガスバリア性容器1の熱変形等の不具合を防ぐことができる。さらにアミノシランガスを用いることにより、プラズマ化学反応において緻密な、すなわち密度の高い、優れたガスバリア性を有するガスバリア膜3を形成できる。
アミノシランの具体例としては、テトラキス(ジメチルアミノ)シラン、トリス(ジメチルアミノ)シラン、テトラキス(ジエチルアミノ)シラン、トリス(ジエチルアミノ)シラン、ビス(ジエチルアミノ)シラン、テトラキス(エチルメチルアミノ)シラン、トリス(エチルメチルアミノ)シラン、ビス(エチルメチルアミノ)シラン、ジメチルアミノシラン等が挙げられる。中でも、テトラキス(ジメチルアミノ)シラン、トリス(ジメチルアミノ)シラン、ビス(ジエチルアミノ)シランが好ましい。
各化合物中のSi−N結合解離エネルギーとN−C結合解離エネルギーとのバランス、及びプラズマ化学蒸着条件との相対関係が、ガスバリア膜3の元素組成比に影響すると考えられるため、その観点で原料ガスを選択し、目的のガスバリア膜3を成膜するとよい。
なお、原料ガスは何れか1つを単独で用いても良いし、2種以上を混合して用いても良い。
また、沸点の高い原料を用いて原料ガスを発生させる場合は、公知の方法で原料液体を気化させて成膜装置へ導入する。例えば、常温液体のアミノシランの場合、80℃〜120℃加熱で気化させると良く、その場合、気化室から真空チャンバー(蒸着室)までの配管を80℃〜120℃の加温状態で保持して気化させたガスを流入させるとよい。
次に反応ガスと希釈ガス(以下、添加ガスと総称する)について説明する。
反応ガスは、原料ガスと反応して、ガスバリア膜3に適する元素組成のガスを生成させる目的で使用する。
反応ガスとしては、酸素、オゾン、一酸化窒素、二酸化窒素、亜酸化窒素、水素、アンモニア、アミン、炭化水素、水蒸気、空気などが挙げられる(本発明では、真空チャンバー中に残存している水蒸気、酸素、空気等や、基材に付着及び/又は含有している水分等も反応に関係することが考えられる。)。
中でも、酸素、窒素、水素が好ましく、原料ガス成分に対してプラズマ下で酸化、窒化、水素化、脱炭素化の反応を行い、ガスバリア性と無色化を両立させるための膜組成と為すことができる。反応ガスは、何れか1つを単独で用いても良いし、2種以上を同時に用いても良い。
例えば、酸化度の高い膜を形成するには酸素、窒化度の高い膜を形成するには窒素、水素、アンモニアを用いると好ましい。
希釈ガスは、例えばプラズマ化学反応や成膜の均質化、均等化などの目的で使用する。希釈ガスとしては、アルゴンなどの不活性ガスを挙げることができる。
また、原料ガスにアミノシランを用い、添加ガスに酸素を用いた場合は、原料ガスと添加ガスの総和ガス流量に対する原料ガス流量の比率は、20%以下が好ましく、15%以下がより好ましい。原料ガスにアミノシランを用い、添加ガスに窒素及び/又は水素を用いた場合は、原料ガスと添加ガスの総和ガス流量に対する原料ガス流量の比率は、2%以下が好ましく、1%以下がより好ましい。
このような原料ガスと添加ガスの総和ガス流量に対する原料ガス流量の比率にすることによって、少量ずつ緻密な膜を形成できる。また、原料ガスに対して多量の添加ガスを用いることによって、反応率を高くすることができる。
次にSi、O、N、及びCを含むガスを用いて基材である熱可塑性樹脂容器2の上にガスバリア膜3を成膜する方法について説明する。
当該方法は、公知の高周波電源又はマイクロ波電源を用いたプラズマ化学蒸着(CVD:Chemical Vapor Deposition)装置を用いて行うことができる。装置の真空チャンバーに熱可塑性樹脂容器2を装填し減圧真空引きし、原料ガス、又は原料ガス及び添加ガスを導入して、高周波又はマイクロ波によりこれらのガスをプラズマ化及び反応させ、熱可塑性樹脂容器2の上にガスバリア膜3を堆積させる。
真空チャンバーの真空度は、ガスをプラズマ化できる真空度であれば良く限定されないが、例えば1Pa以上350Pa以下が好ましく、5Pa以上100Pa以下がより好ましく、10Pa以上50Pa以下が更に好ましい。
高周波の印加は、数〜数10MHz、好ましくは5〜15MHzの高周波を、熱可塑性樹脂容器2の容量やガス流量と適合させた電力を印加することが好ましい。例えば数10W〜数1000Wを印加することが好ましい。
電極の表面積における高周波電源の供給出力は0.5〜2.5W/cmが好ましい。
また、異なる元素組成比の層を2層以上有するガスバリア膜3を成膜する場合は、真空引きを継続したまま、原料ガス及び添加ガスの種類やガス流量を変えて行うことで成膜することができる。例えば、原料ガスを一定流量で流し、添加ガスの流量や種類を切り替えることなどが挙げられる。
このように、真空引きを継続したまま元素組成比の異なるガスを堆積させ、多層のガスバリア膜3を成膜することにより、層間の密着性を高くすることができ、これによりガスバリア膜3のガスバリア性及び透明性を向上させることができる。
また、原料ガスの種類や添加ガスの種類を切り替える場合は、先に使用していたガスの導入を停止させ、一定時間経過させて真空チャンバー中の残存ガスを十分排気させてから、次に使用するガスの導入を行うことで、各層の元素組成比を制御し易くなり、また各層の機能を効果的に発揮させることができる。
基材である熱可塑性樹脂容器2の水分含有率や容器表面に付着した水分を低減、排除すると良好なガスバリア膜を得易いことから、成膜する前に、容器を減圧下で数分から数時間おいたり、熱可塑性樹脂容器2が熱変形しない温度範囲で加温したり、乾燥ガスを流したり、アルゴンなどの不活性ガスで容器表面を真空エッチングしたりする等を行っても良い。熱可塑性樹脂容器を加温する温度は80℃以下が好ましく、50℃以下がより好ましく、常温がさらに好ましい。
また、熱可塑性樹脂容器2とガスバリア膜3の密着性や緻密成膜のために、予め熱可塑性樹脂容器2の表面に公知のプラズマ処理、コロナ処理、コート処理などの表面処理を施しても良い。
以下実施例について説明するが、本発明のガスバリア性容器はこれに限定されない。
<ガスバリア性容器の作製;実施例1〜12、比較例1〜2>
(ブロー成形)
ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET、一般ボトルグレード、極限粘度0.83dl/g、融点240℃、結晶化温度172℃)製の有底円筒状のパリソンを用い、2ステップブロー成形法(コールドパリソン法)で、ガスバリア膜を成膜するための未成膜容器(基材容器)を成形した。基材容器の形状は、平らな円形底を有する略円筒状、全高109mm、胴部外径62mm、口部外径53mm、胴部厚み0.3mmであり、容積240mlであった。
(ガスバリア膜の成膜)
図3で概略的に示すように、基材容器の形状に合わせた外部電極と、ボトル口部上方のチャンバー壁に排気口を有するプラズマ化学蒸着(CVD)装置に、得られた基材容器を装填し、先端部に細孔を設けてガス供給管を兼ねたφ10mmの内部電極をボトル内部の全高約50%の位置に配設して、真空チャンバー圧力0.1Pa未満まで真空排気した後に、気化させたトリス(ジメチルアミノ)シラン(3DMAS)を導入し、13.56MHz高周波電力を印加し、基材容器の内面にガスバリア膜をプラズマ化学蒸着した。このとき、各例の条件のとおり、添加ガスとして水素(H)、窒素(N)、酸素(O)を導入した。添加ガスを導入していない例については、真空チャンバー中の残存空気や残存水蒸気等や基材に付着及び/又は含有していた水分等が反応に関与した可能性が考えられる。
2層目を蒸着する場合は、1層目を蒸着した後、チャンバー内のガスを十分に排気し、次いで2層目を蒸着させるためのガスをチャンバー内に導入し、13.56MHz高周波電力を印加してプラズマ化学蒸着した。成膜条件は表1に示した。なお、比較例1に係るガスバリア性容器にはガスバリア膜を成膜しておらず、基材容器のままである。また、比較例2は、基材容器を窒素雰囲気下で60℃24時間保管して予め乾燥させた後にガスバリア膜を成膜した。
以上により、実施例1〜12、及び比較例1〜2に係るガスバリア性容器を作製した。
<ガスバリア性容器の作製;実施例13、比較例3>
(ブロー成形)
実施例1と同様にして未成膜容器(基材容器)を成形した。基材容器の形状は、略半球状に内容物側へ窪んでいる底部、円筒状の胴部、胴部から徐々に縮径した肩部、首部を有し、全高280mm、胴部外径70mm、口部外径28mm、胴部厚み0.35mmであり、容積720mlであった。
(ガスバリア膜の成膜)
実施例1と同様にして成膜した。なお、比較例3はガスバリア膜を成膜しておらず、基材容器のままである。
Figure 2019064644
上記により作製したガスバリア性容器、又は評価用のガスバリア性容器等に対して以下の評価を行った。結果を表2、3に示した。
<元素組成比>
サーモフィッシャーサイエンティフィック社製XPS(X線光電子分光スペクトル)装置K−Alpha(X線源:Al Kαモノクロ線)を用い、C1s、N1s、O1s、Si2pの各ナロースペクトル分析を行った。深さ方向分析は、アルゴンガスを用いてエッチングを行い、上記のスペクトル分析を行った。
次いで、装置付属の解析ソフトにより、各スペクトルの感度係数補正、バックグラウンド除去を行い、ピーク面積比から各元素の原子%を解析した。
なお、表2ではガスバリア層のSiの原子%に対するO、N、及びCの原子%の比率、すなわち、Siを1.00としたときのO、N、及びCの元素組成比を示した。
<ガスバリア膜の厚さ>
ガスバリア性容器の全高50%の高さ位置から小片を切り出して、容器断面の超薄切片を作製し、透過型電子顕微鏡で観察し、膜厚を計測した。
<酸素透過率(OTR)>
MOCON社製OX−TRAN2/61機を用い、各例で得られたガスバリア容器の開口部に当該装置用のアダプターヘッドを装着して、23℃相対湿度50%条件下で、容器当たりの酸素透過率を測定した。
また、未蒸着の比較例1のOTRに対する各試験例のOTRの比率(BIF)を算出し評価した。
また、実施例2,3,5,7の容器について、全高50%の高さ位置の胴部において、外側(外部環境側)から直径10mmの面で水平方向に容器の中心側(内容物側)へ向けて、対角線上の2方向から2mmずつ20回押し込んだ後に、酸素透過率を測定した。また、未蒸着の比較例1のOTRに対する比率(BIF)を評価し、表3に示した。
<評価:光線透過率、イエローインデックス(YI)値、b*>
容器の全高50%の高さ位置から約2cm角の小片を切り出し、スガ試験機社製測色計SC−Tを用い透過法で、光線透過率とYI値をJIS K7373:2006に準じて測定し、また、b*をJIS Z8781−4:2013に準じて測定した。
YI値は、表2において、4.0未満を「a」、4.0以上6.0未満を「b」、6.0以上8.0未満を「c」、8.0以上を「d」と示した。
なお、b*及び光線透過率は、比較例1、実施例10、11のみ測定している。
Figure 2019064644
Figure 2019064644
実施例1〜13に係るガスバリア性容器はOTR、及び色目共に良好な結果であった。一方で、比較例1、3はOTRが高く、比較例2は色目の結果が悪かった。
また、実施例2、3、5、7の胴部を押し込み試験した後のOTRは、押し込み前よりも幾分大きくなったが、未蒸着の比較例1よりもガスバリア性は高かった。
1 ガスバリア性容器
2 熱可塑性樹脂容器
3 ガスバリア膜
11 口部
12 肩部
13 胴部
14 底部

Claims (8)

  1. 基材である熱可塑性樹脂容器の上にガスバリア膜を備えるガスバリア性容器において、
    前記ガスバリア膜が珪素(Si)、酸素(O)、窒素(N)、及び炭素(C)を含むガスバリア層を少なくとも1層有し、
    前記ガスバリア層のSiの元素組成比を1.0としたとき、
    前記ガスバリア層のNの元素組成比が0.01以上1.5以下であることを特徴とする、ガスバリア性容器。
  2. 少なくとも1層の前記ガスバリア層のうち、少なくとも1層の元素組成比が、Oが0.1以上2.2以下であり、Nが0.01以上1.5以下であり、且つCが0.05以上3.0以下である、請求項1に記載のガスバリア性容器。
  3. 少なくとも1層の前記ガスバリア層のうち、少なくとも1層のOの元素組成比が1.5以上2.2以下である、請求項1又は2に記載のガスバリア性容器。
  4. 少なくとも1層の前記ガスバリア層のうち、少なくとも1層のNの元素組成比が0.1以上1.5以下である、請求項1又は2に記載のガスバリア性容器。
  5. 前記ガスバリア膜が前記ガスバリア層を少なくとも2層有し、
    少なくとも2層の前記ガスバリア層のうち、少なくとも1層がA層であり、少なくとも1層がB層であり、
    前記A層のOの元素組成比が1.5以上2.2以下であり、
    前記B層のNの元素組成比が0.1以上1.5以下である、請求項1〜4のいずれかに記載のガスバリア性容器。
  6. 前記基材上に、前記基材側から前記A層と前記B層とをこの順に有する請求項5に記載のガスバリア性容器。
  7. 酸素透過率(23℃相対湿度50%)が0.02cc/pkg/24h/atm・air以下である、請求項1〜6のいずれかに記載のガスバリア性容器。
  8. イエローインデックス(JIS K7373:2006)が8.0未満である請求項1〜7のいずれかに記載のガスバリア性容器。
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