JP2004146846A - フレキシブルプリント配線板 - Google Patents

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Abstract

【課題】 カールが極力抑えられて寸法安定性に優れ、電子機器の小型化や多機能化に要求される高密度化された微細な回路に対応可能な高性能なフレキシブルプリント配線板を提供する。
【解決手段】 フレキシブルプリント配線板1は、回路に応じてパターニングされた銅箔2の一方の面に銅箔2を支持する第1のポリイミド系樹脂層3が形成されるとともに、銅箔2の他方の面に上記回路を被覆して保護する第2のポリイミド系樹脂層5が形成されてなる。そして、第1のポリイミド系樹脂層3の熱線膨張係数と第2のポリイミド系樹脂層5の熱線膨張係数との差が、3×10−6/K以下である。
【選択図】 図1

Description

 本発明は、例えば電子機器等の電気的接続に用いるフレキシブルプリント配線板に関し、特に銅箔等の導体に直接ポリイミド系樹脂を塗布したフレキシブルプリント配線板上にポリイミド系樹脂からなる絶縁保護層を形成したものに関するものである。
 携帯型記録再生装置等のいわゆるポータブル電気製品では、小型化や低価格化を図るために、電気回路部間を比較的安価で省スペース化が可能なフレキシブルプリント配線板を利用して接続されたものが多い。
 このようなフレキシブルプリント配線板の分野においては、電子機器の小型化や多機能化の要請に伴い、回路の高密度化、ワイヤボンディングによる表面実装、半導体チップのダイレクト搭載やパッケージング等の技術が日進月歩の発展を遂げている。そのため、フレキシブルプリント配線板では、形状がより複雑化されるとともに、更なる高密度実装に必要な微細な回路が増々要求されている。
 従来のフレキシブルプリント配線板は、例えば、ベース基板であるフレキシブルプリント基板にエッチングが施されて回路が形成されるとともに、この回路を保護するための絶縁保護層(カバーレイ)が形成されてなる。
 このようなフレキシブルプリント配線板に用いられるベース基板であるフレキシブルプリント基板は、柔軟性や耐熱性の点からポリイミドフィルムが多用されている。例えば、このフレキシブルプリント基板としては、ポリイミドフィルムと導体である銅箔とを耐熱性の接着剤を介して互いに接着させてなる3層フレキシブルプリント基板が挙げられる。
 しかし、この3層フレキシブルプリント基板は、接着剤の耐熱性が不十分であり、接着剤が熱による変形を生じやすいため、接着剤で接着する際に熱圧着等の熱履歴を加えると、基板の反りやカールが生じて、微細な回路パターンの形成やワイヤボンディング等による表面実装が困難となる問題があった。
 そのため、フレキシブルプリント基板としては、このような3層フレキシブルプリント基板の欠点を改良するために、図13に示すように、接着剤を用いずに銅等の金属箔51上に直接ポリイミドの前駆体であるポリアミック酸を塗布し、このポリアミック酸を乾燥後にイミド化してポリイミド系樹脂層52を積層形成した2層フレキシブルプリント基板53が提案され実用化されている。そして、この2層フレキシブルプリント基板53を用いてなる保護層付きフレキシブルプリント配線板50としては、図14に示すように、フレキシブルプリント基板53に回路が形成されるとともに、この回路上に絶縁保護層54が形成されてなる。なお、図14中にて、金属箔51のうち、絶縁保護層54により被覆されずに露呈している部分は、端子となる部分である。
特開平9−252169号公報
 しかしながら、このような2層フレキシブルプリント基板53においても、金属箔51上に塗布したポリアミック酸をイミド化する際に高温下にて行うため、上記の接着剤よりも耐熱性に優れたポリイミド系樹脂層52を用いているにも関わらず、金属箔51とポリイミド系樹脂層52との熱膨張率の差が起因して、常温に戻した際に金属箔51とポリイミド系樹脂層52との熱収縮率に差が生じ、カールが生じてしまう。その結果、このようなカールがフレキシブルプリント基板53に生じてしまうと、エッチング後の回路の導体間隔の精度が落ちてしまい、しかも部品実装が非常に難しくなる。
 そこで、このような2層フレキシブルプリント基板におけるカールの除去等を目的として、形成するポリイミド樹脂の化学構造を特定した方法が提案されている。また、ポリイミド樹脂の熱膨張係数が極力小さくなるように、前駆体であるポリアミック酸の構造を特定している方法も提案されている。
 しかしながら、上述したような2層フレキシブルプリント基板のカール除去方法として提案されている何れの方法においても、カールを完全に除去することは難しく、金属箔をエッチングして回路を形成した後のものについてはカールの矯正は不可能である。
 しかも、従来のこれらの方法では、あくまでも絶縁保護層54が形成されていない状態のベース基板であるフレキシブルプリント基板53自体を対象としており、フレキシブルプリント基板53と回路の絶縁保護層54とが一体化されたフレキシブルプリント配線板50について検討しているものではない。
 近年、更なる高密度実装等の高度な技術革新が望まれるフレキシブルプリント配線板の分野では、半導体チップ等のはんだによる実装を考えると、フレキシブルプリント基板と回路の絶縁保護層との一体でその性能が十分達成されるものである。そのため、フレキシブルプリント基板53のカールが抑えられるだけでは不十分であり、絶縁保護層54をも一体化されたフレキシブルプリント配線板50自体の状態を考慮する必要がある。
 ところで、このフレキシブルプリント配線板50自体に用いられる絶縁保護層(カバーレイ)54にも耐熱性が求められることから、この絶縁保護層54としては、ポリイミド系材料からなる層からなるものが多い。そして、このような絶縁保護膜54の形成方法としては、例えば、いわゆる印刷法やフィルム法等が挙げられる。
 印刷法では、硬質プリント印刷板と同様な方法でレジストインクをシルクスクリーンで印刷するが、レジストインクがエポキシ樹脂を主成分とするので柔軟性に劣るという欠点があり、また、レジストの熱膨張率を十分考慮してレジストを選定しないと結果的にフレキシブルプリント配線板がカールを生じたものとなる場合がある。しかも、ポリイミド系のレジストインクに含まれる極性の高い溶剤が大気中の水分を吸収するため印刷作業性が悪く、フィルムの厚さの管理がしにくいという問題がある。
 一方、フィルム法では、ランド部や端子部に相当する部分を金型やびく型を使用して孔あけ加工した後に、接着剤の付いたポリイミドフィルムと、回路を形成したフレキシブルプリント基板とを加熱圧着等により接着してフレキシブルプリント配線板とする。
 しかし、この方法では、金型等の精度を向上させても微細なランド部や端子部を形成することが難しく、接着剤のはみ出しのために微細な回路を汚染する欠点がある。また、半導体チップ等に実装する際には、フレキシブルプリント配線板の平面性が必要であるが、絶縁保護層の形成時に、絶縁保護層の厚さのバラツキによる部分的な収縮やカールが発生してしまい、その結果、平面性が損なわれ、導体間に収縮が起こってしまう。さらに、最近、端子部等で微細回路の導体間、即ち導体間に絶縁保護層を埋め込んで隣接する導体との隔離を完全にする回路が要求されており、このような場合には、導体間の寸法安定性が厳しく要求され、従来の技術では、対応ができない。
 以上述べたように、フレキシブルプリント配線板50では、絶縁保護層54を形成する際に、レジストの選定の誤りによる生じるカールや、レジストの剥がれや耐折性の低下、更には、接着剤のはみ出し、接着力の不足、寸法精度の悪化等の課題がある。
 そこで、本発明は、このような実情に鑑みて提案されたものであり、カールが極力抑えられて寸法安定性に優れ、電子機器の小型化や多機能化に要求される高密度化された微細な回路に対応可能な高性能なフレキシブルプリント配線板を提供することを目的とする。
 上述した目的を達成する本発明に係るフレキシブルプリント配線板は、回路に応じてパターニングされた導体の一方の面に導体を支持する第1のポリイミド系樹脂層が形成されてなるとともに、導体の他方の面に回路を被覆して保護する第2のポリイミド系樹脂層が形成されてなるフレキシブルプリント配線板において、第1のポリイミド系樹脂層の熱線膨張係数と第2のポリイミド系樹脂層の熱線膨張係数との差が、3×10−6/K以下であり、導体の熱線膨張係数と、第1のポリイミド系樹脂層及び第2のポリイミド系樹脂層のうちの少なくとも何れか一方の樹脂層の熱線膨張係数との差が、2×10−6/K〜10×10−6/Kの範囲であることを特徴とするものである。
 このように、本発明に係るフレキシブルプリント配線板は、導体を挟む第1及び第2のポリイミド系樹脂層の熱線膨張係数の差が最適な値に規定されているので、導体を挟む両方のポリイミド系樹脂層の熱膨張性が極力等しくなされる。したがって、本発明のフレキシブルプリント配線板では、加熱処理等の工程を経ても、カールの発生が極力抑えられて良好な平面性が得られたものとなる。
 本発明によれば、カールの発生が極力抑えられ良好な平面性が得られて寸法安定性が良く、電子機器の小型化や多機能化に要求される高密度化された微細な回路に十分対応可能な高性能なものが得られる。
 以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下では、片面アクセスタイプのフレキシブルプリント配線板を一例として取り挙げるが、本発明のフレキブルプリント配線板は、回路が形成された導体の両面にポリイミド系樹脂層が形成されているもの、つまり保護層付きフレキシブルプリント基板であればこれに限定されない。
 図1は、本発明を適用した保護層付きフレキシブルプリント配線板1の一例の断面図である。また、図2は、本発明を適用した保護層付きフレキシブルプリント配線板1の他の例の断面図である。
 本発明を適用した保護層付きフレキシブルプリント配線板1は、図1に示すように、回路に応じてパターニングされた銅箔2の一方の面に第1のポリイミド系樹脂層3が形成されてなるフレキシブルプリント配線板4と、このフレキシブルプリント配線板4の銅箔2上に上記回路を被覆して保護する絶縁保護層としての第2のポリイミド系樹脂層5とを備える。なお、図1中で銅箔2が露呈している部分2aは、端子部となる部分である。
 この銅箔2は、回路に応じてパターニングされており、第1のポリイミド系樹脂層3により支持されるとともに、第2のポリイミド系樹脂層5により回路が被覆されて保護されている。なお、この銅箔2は、第1及び第2のポリイミド系樹脂層3,5を構成するポリイミド系樹脂のイミド化温度である250℃〜400℃の雰囲気で熱処理すると、熱線膨張係数が上昇する性質がある。例えば、銅箔2の熱線膨張係数は、イミド化前には16.0×10−6〜18.0×10−6/Kであるが、イミド化後になると18.0×10−6〜20.0×10−6/Kとなる。
 また、銅箔2としては、具体的には、電解銅箔や圧延銅箔等を使用することができる。そして、この銅箔2の厚さとしては、35μm以下、好ましくは8μm〜18μmが微細回路を形成する上で好ましい。銅箔2の厚さが18μm以上であると、微細回路の形成が難しい。また、銅箔2の厚さが8μm以下であると、塗布工程でしわ等が生じやすく作業しにくい。
 さらに、銅箔2としては、表面処理を施さない銅箔が最適であるが、亜鉛やクロムや酸化等によって表面処理した場合には、中心線平均粗さRaが10μm以下、好ましくは7μm以下が良い。
 なお、本発明のフレキシブルプリント配線板に使用される金属導体は、銅箔2に限らず、後述するように、第1及び第2のポリイミド層3,5とほぼ同等な熱線膨張係数を有する金属導体であれば良い。また、この銅箔の中でも、接着強度の向上のために行われるマット処理やニッケルや亜鉛メッキ、酸化処理を施した銅箔も使用可能である。又、アルミニウムアルコラート、アルミニウムキレート、シランカップリング剤、イミダゾール処理等の化学的な表面処理が施されていても良い。
 本発明における第1のポリイミド系樹脂層3は、ポリイミド系樹脂の前駆体である酸二無水物と芳香族ジアミンとの縮合化合物であるポリアミック酸を主成分とする溶液を、銅箔2上に塗布し、その後このポリアミック酸溶液を乾燥してイミド化することにより形成されるものである。
 また、本発明における第2のポリイミド系樹脂層5は、エッチングにより銅箔2にパターニングされた回路を保護するための絶縁保護層の役割を果たすものである。この第2のポリイミド系樹脂層5は、第1のポリイミド系樹脂層5と同様に、ポリイミド系樹脂の前駆体である酸二無水物と芳香族ジアミンとの縮合物であるポリアミック酸を主成分とする溶液を、フレキシブルプリント配線板4上に塗布し、乾燥後エッチングにより端子部を形成してから、イミド化して形成するものである。
 特に、本発明の保護層付きフレキシブルプリント配線板1では、上記第1のポリイミド系樹脂層3を構成するポリイミド系樹脂の熱線膨張係数と上記第2のポリイミド系樹脂層5を構成するポリイミド系樹脂の熱線膨張係数との差が、3×10−6/K以下である。ここで、第1のポリイミド系樹脂層3を構成するポリイミド系樹脂と第2のポリイミド系樹脂層5を構成するポリイミド系樹脂との熱線膨張係数の差が3×10−6/Kよりも大きいと、カールが発生しやすくなる。
 このように、本発明の保護層付きフレキシブルプリント配線板1では、銅箔2を挟む第1及び第2のポリイミド系樹脂層3,5の熱線膨張係数の差が最適な値に限定されているので、銅箔2を挟む両方のポリイミド系樹脂層3,5の熱膨張性が極力等しくなされる。したがって、本発明の保護層付きフレキシブルプリント配線板1では、イミド化等の加熱処理工程を経てもカールの発生が極力抑えられて良好な平面性が得られたものとなり、耐熱性に優れ、微細回路を高精度に形成可能な高品質なものとなる。
 なお、本発明の保護層付きフレキシブルプリント配線板では、カールのみを考慮した場合第1及び第2のポリイミド系樹脂層3,5をともに同じ材料から構成することが好ましいと考えられるが、実際には、半導体チップのはんだや異方性導電膜による実装を考慮した場合、第1のポリイミド系樹脂層3と第2のポリイミド系樹脂層5との役割が互いに異なることがある。しかも、第2のイミド系樹脂層5は、後述するように、アルカリ溶液によりエッチングする必要がある。そのため、第1のポリイミド系樹脂層3及び第2のポリイミド系樹脂層5としては、異なる材料を用いて形成する必要が生じる場合が十分考えられる。よって、カールの低減だけを考えると、第1及び第2のポリイミド系樹脂層の材料として全く同じポリアミック酸を用いることが最善と考えらるが、実際には以上のような点から、この第2のポリイミド系樹脂層5を構成するポリイミド系樹脂を、第1のポリイミド系樹脂層3を構成するポリイミド系樹脂との熱線膨張率の差に基づいて特定する必要が生じる場合がある。
 また、上述したように、この第2のポリイミド系樹脂層5は、ポリアミック酸を塗布して形成されるため、従来のような接着剤やレジストを用いた製造方法のように、レジストの選定の誤りによる生じるカールや、レジストの剥がれや耐折性の低下、更には、接着剤のはみ出し、接着力の不足、寸法精度の悪化等の問題がなく、効率的にカールの発生が抑えられ良好な平面性が得られたものとなる。
 また、本発明の保護層付きフレキシブルプリント配線板1においては、上記第1のポリイミド系樹脂層3及び第2のポリイミド系樹脂層5のうちの少なくとも何れか一方を構成するポリイミド系樹脂と、イミド化等の熱処理後の銅箔2との熱線膨張係数の差が2.0×10−6/K〜10.0×10−6/Kであることが好ましく、より好ましくは2.0×10−6/K〜5.0×10−6/Kが良い。
 これは、銅箔2がイミド化の加熱処理後において、その熱線膨張係数が上述したように約2.0×10−6/K上昇するためである。また、ポリイミド系樹脂層3,5を構成するポリイミド系樹脂と銅箔2との熱線膨張係数の差が10.0×10−6/K以上であると、フレキシブルプリント配線板のカールや平面性が劣るためである。
 また、ポリイミド系樹脂の熱線膨張係数を、銅箔2の熱線膨張係数との差が2×10−6〜10×10−6/Kとするためには、本発明のポリイミド系樹脂層3,5を構成する各ポリイミド系樹脂の熱線膨張係数は、好ましくは20×10−6/K〜30×10−6/K、より好ましくは21×10−6/K〜24×10−6/Kが良い。
 このように、本発明の保護層付きフレキシブルプリント配線板1では、銅箔2とポリイミド系樹脂層3,5を構成するポリイミド系樹脂の熱線膨張係数がそれぞれ極力等しくなるようになされることにより、導体部と導体部間とにおける熱膨張量や熱収縮量がほぼ一致するので、微細回路のパターン精度や微細回路の平面性を向上することができる。また、より効果的にカールの発生を抑えることが可能となり、耐熱性の更なる向上を図ることができる。
 また、以上のような熱線膨張係数を満足するポリイミド系樹脂層3,5を構成するポリイミド系樹脂材料は、次に示すような酸二無水物と芳香族ジアミンとの縮合化合物であるポリアミック酸をイミド化して形成されるものである。
 酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン酸二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物等を用いることができる。
 ジアミンとしては、例えば、p−フェニレンジアミン、4,4ジアミノジフェニルエーテル、2,2−ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルフォン、4,4-ジアミノベンズアニリド、1,4−ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン等を好適に用いることができる。
 特に、本発明のポリイミド系樹脂層3,5を構成するポリイミド系樹脂は、上述のものに限られないが、絶縁保護層として使用するポリイミド系樹脂は、ランド部、つまり端子部2aを強アルカリ水溶液及び温水を用いてエッチングすることにより形成するために、前駆体のポリアミック酸の状態で強アルカリ水溶液に容易に溶解するものがよい。この点からすると、比較的低温で溶解しやすいピロメリット酸二無水物を使用した組み合わせが好ましい。
 なお、上記の酸二無水物とジアミンとの縮合化合物であるポリアミック酸のカルボン酸基は、導体である銅箔2を腐食させることが考えられるため、このポリアミック酸には防錆剤を添加することもできる。しかも、防錆剤は、防錆の機能の他に、銅箔2の界面の接着強度を向上させることも期待できる。
 このような防錆剤としては、例えば、3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,3−トリアゾール等のトリアゾール化合物や、2−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物とその塩が挙げられる。そして、このような防錆剤の添加量としては、ポリアミック酸100重量部に対して1〜10重量部とすることが好ましい。
 ここで、このポリイミド系樹脂層3,5を構成するポリイミド系樹脂は、特開昭60−157286号公報、特開昭60−243120号公報、特開昭63−239998号公報、特開平1−245586号公報、特開平3−123093号公報、特開平5−1390527号公報等に報告されるように既存の酸二無水物と芳香族ジアミンとの組み合わせやそれぞれの化学構造、並びにこれらの配合比等を変えることにより、線膨張係数を自在に調整して合成することができる。
 なお、本発明の保護層付きフレキシブルプリント配線板としては、図1に示すような第1及び第2のポリイミド系樹脂層3,5がそれぞれ単層構造であるものに限らず、図2に示すように、ポリイミド系樹脂層が多層構造であるものでも良い。このとき、各ポリイミド系樹脂層は、それぞれ3層以下の多層構造であることが好ましい。4層以上だとコストアップを招き経済的でないからである。一方、ポリイミド系樹脂層が1層では、カールを100%とることができない場合もあるが、回路基板の用途によっては十分使用可能である。よって、ポリイミド層を3層以下の構造とすることが好ましい。
 具体的には、本発明の保護層付きフレキシブル配線板10としては、図2に示すように、フレキシブルプリント配線板6が銅箔2上に3層のポリイミド系樹脂層3a,3b,3cが積層形成されてなるとともに、銅箔2上に絶縁保護層7として働くポリイミド系樹脂層が3層のポリイミド系樹脂層5a,5b,5cとして形成されているものでも良い。このとき、ポリイミド系樹脂層3a,3b,3cは、銅箔2側のポリイミド系樹脂層3a及び外側のポリイミド系樹脂層3cの熱線膨張係数が、ポリイミド系樹脂層3a、3cの中間層であるポリイミド系樹脂層3bの熱線膨張係数よりも高いものとすると良い。つまり、相対的に、銅箔2側のポリイミド系樹脂層3a及び外側のポリイミド系樹脂層3cが高熱線膨張性ポリイミド系樹脂層となるとともに、中間層のポリイミド系樹脂層3bが低熱線膨張性ポリイミド層となる。但し、銅箔2側のポリイミド系樹脂層3a,5a及び外側のポリイミド系樹脂層3c,5cの熱線膨張係数と、中央に位置するポリイミド系樹脂層3b,5bの熱線膨張係数との差が、3×10−6/Kよりも大きくないことが好ましい。このような構成とすることにより、銅箔2との接着強度を向上させることができるとともに、フレキシブルプリント配線板6のカールを抑えることができる。
 そして、特に、銅箔2側のポリイミド系樹脂層3a,5aの熱線膨張係数が外側のポリイミド系樹脂層3c,5cの熱線膨張係数よりも若干大きいとより好ましい。これは、銅箔2の表面の粗さがカールに影響を及ぼすためである。
 以上のように、ポリイミド系樹脂層を多層構造にすることにより、熱線膨張係数を銅箔の熱線膨張係数とより近い値に調整することができ、効果的にカールを制御することができる。特に、銅箔2に対して外側の層のポリイミド系樹脂の厚さによってカールを制御することができる。
 なお、多層構造を形成する個々のポリイミド系樹脂同士の層間剥離を起こさないように接着力を向上させるため、又は、銅箔2との接着力を向上させるために、エポキシ樹脂を添加すると良い。このエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型、ノボラックフェノール型等の汎用エポキシ樹脂を使用できる。必ずしも、エポキシ樹脂の硬化剤は、必要ないが添加しても良い。その場合には、硬化剤は、ポリアミック酸溶液に配合する。
 また、多層構造を形成するポリイミド系樹脂層の熱線膨張係数は、単層構造のポリイミド系樹脂層3,5の場合と同様に、銅箔2の熱線膨張係数との差が2×10−6/K〜10×10−6/Kであることが好ましく、より好ましくは2×10−6/K〜5×10−6/Kが良い。
 そして、多層構造のポリイミド系樹脂層を構成する各ポリイミド系樹脂の熱線膨張係数は、20×10−6/K〜55×10−6/Kであれば良く、好ましくは20×10−6/K〜30×10−6/K、より好ましくは21×10−6/K〜24×10−6/Kであることが良い。構成する一層のポリイミド系樹脂の熱線膨張係数が20×10−6/K未満であると、その樹脂を銅箔2に塗布した場合には銅箔2に対する接着強度が不十分となる。また、構成する一層のポリイミド系樹脂の熱線膨張係数が55×10−6/Kを越えると、銅箔2との熱線膨張係数の差が2.0×10−6/K〜10.0×10−6/Kを満たすポリイミド系樹脂層を形成することができない。
 但し、絶縁保護層としての第2のポリイミド系樹脂層5は、層厚が薄くてもよい回路の場合には、銅箔3の熱線膨張係数との差がイミド化後に2.0×10−6/K〜10.0×10−6/K、好ましくは、2.0×10−6/K〜5.0×10−6/Kの熱線膨張係数を持つポリアミック酸を、層間耐電圧が製品の要求を満足するように1層塗布して形成すれば良い。通常、第2のポリイミド系樹脂層5は、膜厚が3μm〜10μmであり、3μm以下では耐電圧が劣り、10μm以上の厚さでは単層として塗布すると回路にカールが生じる。そのため、10μm以上の膜厚で塗布する際には2層以上を塗布し、外側の層の厚さによってカールを制御する。
 つぎに、以上のような構成からなる本発明のフレキシブルプリント配線板の製造方法について、図面を参照しながら詳細を説明する。なお、以下では、図1に示す単層構造のポリイミド系樹脂層を有する保護層付きフレキシブルプリント配線板を例に取り挙げるが、図2に示すような多層構造のポリイミド系樹脂層を有する保護層付きフレキシブルプリント配線板についても同様にポリイミド系樹脂層を積層することにより製造することができる。
 先ず、フレキシブルプリント基板5を製造するには、図3に示すような導体である銅箔2を用意する。
 次に、この銅箔2上に形成するポリイミド系樹脂層の前駆体であるポリアミック酸溶液を以下のように合成し調整する。
 ポリアミック酸溶液を合成する方法としては、極性溶媒中で上述したような酸二無水物と芳香族ジアミンとを反応させる。なお、この反応は発熱反応であるため、必要に応じて冷却を行いながら反応を制御するものとする。通常、約0℃〜90℃、好ましくは約5℃〜50℃にて反応させる。溶液の粘度が高い場合には、90℃に近い温度で熱処理することにより粘度を低下させることができる。
 このとき、酸二無水物と芳香族ジアミンとを同時に加えても良いし、又はどちらか一方を先に極性溶媒中に溶解又は懸濁させておき、他方を徐々に添加させつつ反応させても良い。酸二無水物と芳香族ジアミンのモル比は、当モルとなるのが望ましいが、約10:9〜9:10の範囲内で両成分のどちらか一方を過剰量用いても良い。なお、上記極性溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン等のピロリドン系溶媒、N,N’−ジメチルアセトアミド等のアセトアミド系溶媒、クレゾール等のフェノール系溶媒を使用することができるが、安全性の観点からN−メチル−2−ピロリドンの使用が特に好ましい。又、キシレン、トルエン、エチレングリコールモノエチルエーテル等も混合して使用することができる。
 以上のようにして、ポリイミド系樹脂層の前駆体であるポリアミック酸溶液が合成される。
 次に、このように合成されたポリアミック酸溶液を、図4に示すように、銅箔2上に塗布し、その後乾燥して、ポリアミック酸層13を形成する。このとき、銅箔2上に塗布するポリアミック酸溶液としては、イミド化後の熱線膨張係数が20×10−6/K〜30×10−6/K、より好ましくは21×10−6/K〜24×10−6/Kであるものとすると良い。
 ここで、ポリアミック酸溶液を塗布する方法としては、ブレードを持つナイフコーターやコンマコーター、グラビヤコーター、ワイヤコーター等の工業的に従来より使用されている方法を用いることができる。また、乾燥温度としては、溶媒の飛散に伴う発泡が生じない温度で特に限定しない。
 なお、図2に示したような多層構造のポリイミド系樹脂層層3a,3b,3cを有するものを作製するには、このポリアミック酸溶液が塗布された層の上に、更にポリアミック酸溶液を塗布乾燥する工程を順次繰り返し行えば良い。
 詳しくは、先ず、塗布されたポリアミック酸溶液からなる層は、乾燥後にこの層中における残存溶媒量が50重量%〜80重量%となるようにする。ここで、残存溶媒量が50重量%以下であると、積層塗布された界面からの層間剥離が生じる。そのため、例えば、ポリアミック酸溶液の極性溶媒としてN−メチル−2−ピロリドンを使用した場合、N−メチル−2−ピロリドンの沸点が204℃であるので残存溶媒量を80重量%以下とするためには、最高温度を170℃にする必要がある。
 そして、ポリアミック酸溶液を多層塗布した後に、最後に、多層のポリアミック酸溶液からなる層の全体において残存溶媒量を0%にするために、230℃にて乾燥すれば良い。なお、このときポリアミック酸溶液の一部はイミド化するが、最終的に全体が所望のレベルにイミド化されたポリイミド系樹脂層を得るには、後述する加熱工程によりイミド化を行うものとする。
 次に、このポリアミック酸層13に対して280℃〜350℃で加熱処理を施すことにより、このポリアミック酸層13をイミド化し、図5に示すように、イミド化率が80%以上となされた第1のポリイミド系樹脂層3を形成し、フレキシブルプリント基板11が得られる。
 なお、このようにして得られたフレキシブルプリント基板11は、回路の形成時に影響を及ばさない程度であれば表面がフラットでなくても良い。特に、銅箔2表面を上にした場合に、若干凸状のカールを生じている方が、その後の絶縁保護層である第2のポリイミド系樹脂層5の形成やイミド化時の収縮を吸収して、最終的に得られる保護層付きフレキシブルプリント配線板の平面性を得ることができる。但し、上述した凸状のカールの程度としては、100mm×100mmの大きさの試料の曲率半径が100mm以上が好ましい。
 次に、このような方法によって形成したフレキシブルプリント基板11の銅箔2に所定の回路パターンを形成する。
 詳しくは、このフレキシブルプリント基板11の銅箔2上に、通常のサブストラクト法により、液状レジストを塗布乾燥し、このレジストに対して紫外線を用いて所望のパターンを露光し、その後このレジストに対して現像工程を施す。これにより、紫外線が露光されたレジスト部分が現像工程により除去されて、図6に示すように、銅箔2上に所望のパターンのレジスト12がマスクとして形成される。
 そして、塩化第2銅水溶液等の通常のエッチング液により銅箔2をエッチングして、所望の凹凸パターンが銅箔2上に形成される。その後、このレジスト12からなるマスクを除去することにより、図7に示すように、銅箔2に回路パターンが形成され、フレキシブルプリント配線板4が得られる。
 次に、銅箔2に形成された回路パターンの回路保護のために、フレキシブルプリント配線板4上に、第1のポリイミド系樹脂層の形成工程と同様な工程にて、ポリアミック酸を塗布し、乾燥することにより、図8に示すように、ポリアミック酸層14を形成する。
 なお、このポリアミック酸層14は、イミド化されて第2のポリイミド系樹脂層となる。すなわち、ポリアミック酸層14は、ポリイミド系樹脂の前駆体となるが、このポリイミド系樹脂としては、熱線線膨張係数が21×10−6〜24×10−6/Kであるものが好ましく、また、第1のポリイミド系樹脂層3を形成するポリイミド系樹脂の熱線膨張係数との差が、3×10−6/K以下であるものが好ましい。よって、イミド化後のポリイミド系樹脂が上記の熱線膨張係数の条件を満足するようなポリアミック酸を用いてポリアミック酸層14を形成する。
 次に、銅箔2上に形成されたポリアミック酸層14に対して、半導体の製造工程等で従来から行われているアルカリ水溶液によるエッチングを施して、ランド部や端子部を形成する。
 詳しくは、このポリアミック酸層14上に、中性又は弱酸性水溶液により現像可能で且つ耐アルカリ水溶液性に優れたフォトレジストを溶媒乾燥後の厚さが約10μmとなるように塗布する。なお、このフォトレジストとしては、例えば、NR−41(ナイロン−オリゴエステル系、ソニーケミカル社製)が挙げられる。そして、このフォトレジストに対してレーザ光を用いて所定のパターンを露光して、その後このフォトレジストに対して現像工程を施す。これにより、レーザ光が露光されたフォトレジスト部分が現像工程により除去されて、図9に示したように、フォトレジスト15がマスクとして形成される。
 そして、10%苛性カリ水溶液と温水とを併用することによりポリアミック酸層14をエッチングして、その後、強酸水溶液でフォトレジスト15を剥離して、図10に示すようなポリアミック酸層14に端子部2aを形成する。
 最後に、このポリアミック酸層14に対して280℃〜350℃にて約30分〜120分の間加熱処理を施すことにより、ポリアミック酸層14をイミド化して、図11に示すように、第2のポリイミド系樹脂層5を形成し、図1及び図12に示すような本発明の保護層付きフレキシブルプリント配線板1が得られる。ここで、図1は、図12中の破線A0−A1による切断面である。
 なお、第1のポリイミド系樹脂層3を形成する際のイミド化は、250℃〜350℃で行うがイミド化は必ずしも100%達成されている必要はない。これは、絶縁保護層としての第2のポリイミド系樹脂層5を形成する際のイミド化においても、この第1のポリイミド系樹脂層3が加熱されるので、過剰な熱エネルギーが銅箔2との接着強度の低下を引き起こす場合があるからである。よって、第2のポリイミド系樹脂層5を形成する前段階での第1のポリイミド系樹脂層3におけるイミド化率は、イミド化が不十分なために生じる収縮が影響を与えない程度の導体回路が得られる80%位が好ましい。そして、第2のイミド層の前駆体であるポリアミック酸層14が塗布された後で、図11に示すように、このポリアミック酸層14及び第1のポリイミド系樹脂層3内の未だイミド化されていない材料を250℃〜350℃にて一気に100%イミド化させる。
 以下、本発明の実施例について具体的な実験結果に基づいて説明する。
 まず、ポリアミック酸を次のように合成した。そして、合成したポリアミック酸溶液をイミド化してなるポリイミド系樹脂の熱線膨張係数を測定するため、以下のようなポリイミドフィルムを作製した。
 実験例1
<ポリアミック酸溶液の合成>
 始めに、温度制御できるジャケット付きの60リットルの反応釜に、表1に示すように、パラフェニレンジアミン(PDA、三井化学製)0.866kg(8.00モル)と、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(DPE、和歌山精化製)1.603kg(8.00モル)とを窒素ガス雰囲気下で溶剤N−メチル−ピロリドン(NMP、三菱化学製)約44kgに溶解した。その後、50℃においてピロメリット酸二無水物(PMDA、三菱ガス化学社製)3.523kg(16.14モル)を徐々に加えながら3時間反応させた。このようにして、固形分約12%の25℃における粘度20Pa・Sのポリアミック酸溶液を得た。ここで、このポリアミック酸溶液を合成サンプル1と称する。
 次に、このポリアミック酸溶液を銅箔上にイミド化後のフィルムの厚さが25μmとなるように塗布し、80℃〜170℃の連続炉で溶剤を飛散させた後、230℃〜350℃まで昇温し、350℃で30分間加熱処理してイミド化した。
 その後、銅箔の一部を塩化第2銅溶液でエッチングしてポリイミドフィルムを作製した。そして、得られたポリイミドフィルムの熱線膨張係数を測定したところ、20×10−6/Kであった。
Figure 2004146846
 実験例2〜実験例12
 次に、以上の工程と同様にして、酸二無水物の種類、ジアミンの種類及びジアミンの割合を表1に示すようなものに変えて、ポリアミック酸溶液を合成した。このとき、合成されたポリアミック酸溶液を合成サンプル2〜合成サンプル12と称する。
 そして、これら合成サンプル2〜合成サンプル12のポリアミック酸溶液を用いて、上記の工程と同様にしてポリイミドフィルムを作製し、作製した各ポリイミドフィルムの熱線膨張係数を測定した。以上の熱線膨張係数の測定結果を表1に示す。
 つぎに、以上のようにして得られたポリアミック酸溶液を用いて、フレキシブルプリント配線板を作製した。
 実施例1
 <フレキシブルプリント基板及びフレキシブルプリント配線板の作製>
 先ず、表2に示すような厚さ18μmの電解銅箔(商品名:CF−T9−LP,福田金属社製)を用意し、この銅箔上に、表3に示すように、合成サンプル2のポリアミック酸溶液を厚さ3μmとなるように塗布し、溶媒を飛散させてポリアミック酸層を形成した。なお、残存溶媒含有量は、45%であった。
 次に、同様にして、表3に示すように、合成サンプル1のポリアミック酸溶液を、イミド化後の厚さが18μmになるように塗布した。1層目と2層目とを合わせた残存溶媒含有量は75%であった。
 次に、同様にして、表3に示すように、2層目のポリアミック酸層上に合成サンプル2のポリアミック酸溶液を、イミド化後の厚さが2μmとなるように塗布した。これら3層を合わせた残存溶媒含有量は、70%であった。
 その後、温度230℃で5分間加熱処理を行った。残存溶媒含有量は、1%以下であった。更に、窒素ガスの雰囲気で350℃まで1時間かけて昇温を行い、温度350℃で15分間焼成してフレキシブルプリント基板を作製した。
 次に、上記の方法で製造したフレキシブルプリント基板の銅箔上に液状レジスト(商品名:RX−20、東京応化工業社製)を塗布し、乾燥、露光、現像工程を行って、塩化第2銅水溶液で銅箔をエッチングし、直径5mmの丸ランド及びピッチ100μm、幅50μmの平行回路を形成し、フレキシブルプリント配線板を作製した。なお、現時点のエッチング技術においては、上記のサイズのピッチが最小ピッチである。つまり、現時点のエッチング技術で可能な最小ピッチの回路を形成した。
Figure 2004146846
Figure 2004146846
 以上のようにして得られたフレキシブルプリント配線板について、以下の評価試験を行い、その測定結果を表4に示した。
 評価試験の方法
 (1)熱線膨張係数の測定
 サーマルメカニカルアナライザー(TMA/SCC150CU、S11社製)を使用し、荷重2.5〜5.0grをかけた引張法により行い、100℃〜350℃の範囲の測定データに従って、熱線膨張係数を測定した。
 (2)イミド化率の測定
 赤外線吸光分析によるイミド基の吸収波長1780cm−1の吸光量を同試料100%イミド化した時のイミド基の吸光量に対する百分率から算出した。
 (3)カールの測定
 フレキシブルプリント配線板を100mm×100mmの大きさに切断し、下に凸の状態で水平な板の上に載せたときの四隅の高さの平均から曲率半径を算出した。
 <絶縁保護層を形成することによる保護層付きフレキシブルプリント配線板の作製>
 次に、以上のようなフレキシブルプリント配線板におけるピッチ100μmの平行導体の導体間に絶縁保護層として第2のポリイミド系樹脂層を形成した。詳しくは、第2のポリイミド系樹脂層の形成においては、表3に示すような合成サンプルをそれぞれ利用して、表3に示すような厚さの3層のポリアミック酸層を形成した。
 次に、銅箔上に形成された3層のポリアミック酸層に対して10%苛性カリ水溶液と温水とを併用することによりエッチングを施して、ランド部や端子部を形成した。
 最後に、このポリアミック酸層に対して280℃〜350℃にて約30分〜120分間加熱処理を施すことにより、ポリアミック酸層をイミド化して絶縁保護層としての第2のポリイミド系樹脂層が形成された本実施例の保護層付きフレキシブルプリント配線板を得た。
 なお、ここで、絶縁保護層の熱線膨張係数についても、絶縁保護層形成前のフレキシブルプリント配線板の熱線膨張係数を測定した方法と同様にして、絶縁保護層に相当するポリイミドフィルムを作製しそのフィルムの熱線膨張係数を測定した。この結果を表4に示す。
 以上のようにして得られた保護層付きフレキシブルプリント配線板について、以下の評価試験を行い、その測定結果を表4に示した。
 評価試験の方法
 (4)カール及び平面性の有無
 保護層付きフレキシブルプリント配線板全体を目視で観察してカールの有無を評価した。また、フレキシブルプリント配線板の導体部及び導体間の局所に起こる収縮や膨れの有無を目視で観測して平面性の有無を評価した。
 (5)回路ピッチの測定
 3次元測定機を使用して、導体幅及び導体間隔を測定した。
 (6)電気的信頼性の評価
 作製した保護層付きフレキシブルプリント配線板の導体部と、ITOガラスの導体部との接続を異方導電フィルム(商品名:CP7131,ソニーケミカル社製)を使用して貼り合わせた。そして、これを85℃85%の雰囲気下に放置したときの電気抵抗値を測定した。なお、測定結果において、0.5Ω以下を合格とした。
 実施例2〜実施例18及び比較例1〜比較例5
 フレキシブルプリント配線板側の銅箔を支持するポリイミド系樹脂層及び絶縁保護層としてのポリイミド系樹脂層を表3に示す組成及び厚みとなるように形成した以外は、実施例1と同様にしてフレキシブルプリント配線板及びそれを用いた保護層付きフレキシブルプリント配線板を作製し、実施例1と同様な評価試験を行った。
Figure 2004146846
 <評価試験の結果>
 表4の結果から示されるように、フレキシブルプリント配線板の銅箔を支持するポリイミド系樹脂層と絶縁保護膜としてのポリイミド系樹脂層の熱線膨張係数の差が3×10−6/K以下である実施例1〜実施例16は、カールが無く、導体部や導体間の局所に起こる収縮や膨れもなく平面性が良好であり、電気的信頼性も高いことがわかる。
 一方、フレキシブルプリント配線板の銅箔を支持するポリイミド系樹脂層と絶縁保護膜としてのポリイミド系樹脂層の熱線膨張係数の差が3×10−6/K以上である比較例4及び比較例5は、カールが有り、さらに平面性や電気的信頼性にも劣る。
 このことから、フレキシブルプリント配線板の銅箔を支持するポリイミド系樹脂層と絶縁保護膜としてのポリイミド系樹脂層の熱線膨張係数の差が3×10−6/K以下とすることにより、カールが無く、平面性が良好で電気的信頼性を確保することができることが判明した。
 なお、実施例17及び実施例18は、表1に示すように、ポリイミド系樹脂層間の熱線膨張係数差が3×10−6/K下であるが、平面性や電気的信頼性が不十分である。これは、ポリイミド系樹脂層を構成するポリイミド系樹脂の熱線膨張係数が約10×10−6/Kと非常に小さく、そのため、銅箔に対する接着強度が不十分であるからである。よって、このことから、銅箔を有するフレキシブルプリント配線板においては、ポリイミド系樹脂層を構成する各ポリイミド系樹脂の熱線膨張係数が20×10−6〜55×10−6/K、好ましくは20×10−6〜30×10−6/Kであることが良いとわかった。
 さらに、絶縁保護層を形成していない比較例1〜比較例3は、カールが大きかった。特に、熱線膨張係数の小さいポリイミド系樹脂を用いてポリイミド系樹脂層が形成された比較例3においても、絶縁保護層がないために、完全にカールを除去することはできていない。このことから、上述のように熱線膨張係数の差が規定された絶縁保護層を形成することにより、より効果的にカールの除去が行えることがわかる。
本発明を適用した保護層付きフレキシブルプリント配線板の一例の断面図である。 本発明を適用した保護層付きフレキシブルプリント配線板の他の例の断面図である。 本発明を適用した保護層付きフレキシブルプリント配線板の製造工程の一工程を示す断面図である。 本発明を適用した保護層付きフレキシブルプリント配線板の製造工程の他の工程を示す断面図である。 本発明を適用した保護層付きフレキシブルプリント配線板の製造工程の他の工程を示す断面図である。 本発明を適用した保護層付きフレキシブルプリント配線板の製造工程の他の工程を示す断面図である。 本発明を適用した保護層付きフレキシブルプリント配線板の製造工程の他の工程を示す断面図である。 本発明を適用した保護層付きフレキシブルプリント配線板の製造工程の他の工程を示す断面図である。 本発明を適用した保護層付きフレキシブルプリント配線板の製造工程の他の工程を示す断面図である。 本発明を適用した保護層付きフレキシブルプリント配線板の製造工程の他の工程を示す断面図である。 本発明を適用した保護層付きフレキシブルプリント配線板の製造工程の他の工程を示す断面図である。 本発明を適用した保護層付きフレキシブルプリント配線板の斜視図である。 従来の2層フレキシブルプリント基板の一例を示す断面図である。 従来の保護層付きフレキシブルプリント配線板の一例を示す断面図である。
符号の説明
1 保護層付きフレキシブルプリント配線板、 2 銅箔、 3 第1のポリイミド系樹脂層、 5 第2のポリイミド系樹脂層

Claims (1)

  1.  回路に応じてパターニングされた導体の一方の面に上記導体を支持する第1のポリイミド系樹脂層が形成されてなるとともに、上記導体の他方の面に上記回路を被覆して保護する第2のポリイミド系樹脂層が形成されてなるフレキシブルプリント配線板において、
     上記第1のポリイミド系樹脂層の熱線膨張係数と上記第2のポリイミド系樹脂層の熱線膨張係数との差が、3×10−6/K以下であり、
     上記導体の熱線膨張係数と、上記第1のポリイミド系樹脂層及び第2のポリイミド系樹脂層のうちの少なくとも何れか一方の樹脂層の熱線膨張係数との差が、2×10−6/K〜10×10−6/Kの範囲であることを特徴とするフレキシブルプリント配線板。
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