JP3602206B2 - 配線構造体とその製造法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、主に銅からなる配線材料と、主にポリイミドからなる絶縁膜とを備える薄膜配線を有する配線構造体およびその製造法に係り、特に、高集積実装基板およびその製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、LSI(大規模集積回路)を実装するための配線基板など、配線構造体の多層化、高集積化、高性能化が進んでいる。これに伴い、超高速の集積回路チップを直接搭載させるための多層配線基板の開発が進められている。この多層配線基板にはセラミック基板上に多層に導体パターンを高密度で設けた薄膜多層配線が形成されることが多くなっている。そこで、薄膜多層配線の絶縁膜には、高度な特性が要求されるようになってきている。現在、この絶縁膜の材料の一つとして、ポリイミドが広く使用されている。
【0003】
ポリイミドは、一般に、ジアミン成分とテトラカルボン酸二無水物成分とを極性有機溶媒中で重合反応させてポリイミド前駆体(ポリアミド酸)を生成し、これを加熱等により脱水閉環させる方法で得られる。
【0004】
従来より行われている薄膜配線基板の製造の方法は、例えば、「アイ・イー・イー・イー トランザクションズ オン コンポーネンツ ハイブリッド アンド マニュファクチュアリング テクノロジ」第13巻2号 1990年6月 第440〜443頁(IEEE TRANSACTIONS ON COMPONENTS,HYBRIDS,AND MANUFACTURING TECHNOLOGY,VOL.13,NO2,JUNE1990,440〜443)において論じられており、また、具体的な例については特開平4−23390号公報などに記載されている。
【0005】
上記従来技術では、Cuよりなる導体パターン上にポリイミド前駆体であるポリアミド酸ワニスを塗布し、加熱硬化することによってポリイミド絶縁膜を形成している。しかし、従来より知られているポリイミドでは、例えば「ジャーナルオブ ヴァキューム サイエンス アンド テクノロジ(Journal of Vacuum Science and Technology)」A,第7巻,3号(1989)の第1402〜1412頁や、同誌A,第9巻,6号(1991)の第2963〜2974頁に記載されているように、銅に接触した状態で、この脱水閉環のための加熱を行うと、銅がポリイミド(またはポリイミド前駆体)内に溶出し、この溶出した銅によって、高温時にポリイミドが分解するという問題があった。そこで、ポリイミド内に溶出した銅によりポリイミドが高温で分解するという問題を解決するために、300℃以上の高温時の加熱を、アルゴンと水素の混合ガスのような還元性のガスを用いた還元性の雰囲気中で行なうことという方法が知られている。
【0006】
しかし、この方法では、ポリイミドが高温で分解するという問題は解決できるが、ポリイミドまたはポリイミド前駆体内への銅の溶出は抑えることができない。ポリイミド(またはポリイミド前駆体)内部へ溶出した銅は、銅とポリイミドとの間での接着性の低下をきたし、さらに、誘電率を上昇させるため、信号伝送遅延時間を増大させる。また、上記の還元性ガスは高価であるから、特に配線を多層に繰返し形成する製品を製造する場合には、製品のコスト高につながるという別の問題も生ずる。
【0007】
この、銅がポリイミド内に溶出するという問題を解決するための案として、ポリイミド前駆体(ポリアミド酸)のカルボキシル基をエステル化する方法が考えられる。この場合、エステル化したポリイミド前駆体が高価であるために、特に配線を多層に繰返し形成する製品を製造する場合には製品のコスト高につながるという問題がある。また、エステル化の原料である酸塩化物が水分に対して不安定であるために、ポリイミド前駆体のエステル化率が必ずしも100%にはならず、カルボキシル基が少量ながら残ってしまうという問題もある。さらに、酸塩化物によるポリイミド前駆体のエステル化反応では、カルボキシル基と等モル量の塩酸が生成し、これを100%除くのは容易ではないという問題もある。すなわち、エステル化したポリイミド前駆体を用いる場合、カルボキシル基や塩酸等の酸成分がポリイミド前駆体溶液内に残ってしまい、この酸が金属銅の溶出を促進してしまうため、結果的に、銅がポリイミド内に溶出する現象を抑制しきれないという問題があった。
【0008】
一方、銅のポリイミド内への溶出を防止する別の方法として、銅の露出部をポリイミドに溶出しない別の金属で被覆してからポリイミドを形成するという方法が知られている。しかし、この場合、銅以外の別の金属を形成する工程が増加するために製品のコスト高を招くという問題がある。また、ニッケルやアルミニウム等を銅の被覆に用いた場合には、銅を被覆した金属が、加熱に際して銅と相互拡散するため、配線全体としての抵抗値の増加を招く原因となる。さらに、被覆した金属の表面にまで銅が拡散してしまうと、結果的に銅がポリイミド内へ溶出してしまうという問題があった。
【0009】
そこで、本発明者らは、これらの問題に鑑み、エステル化したポリイミド前駆体を用いることなく、またポリイミド前駆体の加熱硬化中に高価な還元性ガスを用いることなく、ポリイミドまたはその前駆体への銅の溶出を抑止する、すなわち、銅とポリイミド前駆体との反応を抑止する製造法、および、銅の溶出のない配線構造体を提供することを目的として、鋭意検討を重ねた結果、本発明に至ったものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
以上述べたように、配線の一部として銅を用い、該銅と直接に接する絶縁膜がポリイミド前駆体から加熱により形成されるポリイミドである場合には、該銅とポリイミド前駆体との界面での反応を抑止すること、さらに、上層金属層との接続をするためのヴィア配線を形成する場合には、絶縁膜の応力を低減することが、配線構造体を製造する上で必須となる。
【0011】
そこで、本発明では、塩基性化合物により系の酸性度を抑制したポリイミド前駆体組成物を用いること、ポリイミド前駆体の加熱硬化の際に、雰囲気中の酸素濃度を制限すること、および/または、ポリイミド膜の膜厚を薄くすることにより、銅とポリイミド前駆体との反応を抑制する。
すなわち、本発明では、配線層と絶縁層とを有する配線構造体の製造法において、少なくとも一部が銅からなる配線層を形成する工程と、配線層上に、ポリイミド前駆体と塩基性化合物とを含む第1のポリイミド前駆体を含む第1のポリイミド前駆体組成物の層である第1のポリイミド前駆体層を形成する工程と、第1のポリイミド前駆体層を加熱し、第1のポリイミド層を形成する第1のポリイミド層形成工程とを有する配線構造体の製造法が提供される。
【0012】
ところで、マルチチップモジュ−ル等の配線基板の薄膜多層配線層を、配線として銅を用い、絶縁膜としてポリイミドを用いて形成する場合、上で述べた問題の他に、絶縁膜の平坦化を図るために機械的な手段により研磨すると、ポリイミドの絶縁膜にクラックが発生することがあるという問題に遭遇した。
【0013】
そこで、本発明では、絶縁膜を第1の絶縁膜と第2の絶縁膜とからなる複合膜とすることが望ましい。
【0014】
ここで、銅配線上に直接形成される第1の絶縁膜としては、銅との反応性を抑制した有機高分子膜(銅の拡散を阻止する拡散阻止層)とする。このようにすれば、銅の露出部分を拡散阻止層で覆ったのち、この拡散阻止層表面に第2の絶縁層を形成するため、第2の絶縁層の形成に酸性度の高いポリアミド酸を用いたとしても、このポリアミド酸が銅に直接接触しないため、銅の拡散は阻止される。また、本発明では、銅の露出部分を有機高分子化合物で覆うため、ポリイミドに溶出しない別の金属で銅を被覆する場合と異なり、被覆材と銅との相互拡散などの問題も生じない。
【0015】
第1の絶縁膜表面に形成される第2の絶縁膜としては、低熱膨張性ポリイミド膜を用いることが望ましい。このようにすれば、膜応力を低減できるため、ポリイミドの機械的特性を維持しつつ、銅とポリイミドとの界面接着性に優れ、かつ、クラックの発生しない、配線基板全体として高信頼性である配線構造体が得られる。
【0016】
以下に、本発明の、(1)銅とポリイミド前駆体との反応の抑止、(2)配線構造体製造時のポリイミド膜に発生するクラックの防止、の2つの課題を解決した際に用いた手段の作用につき述べる。
【0017】
(1)銅とポリイミド前駆体との反応の抑止
先ず、銅とポリイミド前駆体との反応の抑止の達成方法に関して、その作用を詳細に説明する。
【0018】
銅のポリイミドまたはポリイミド前駆体への溶出は、銅とポリイミド前駆体との反応により起こると考えられる。銅とポリイミド前駆体との反応は、ポリイミド前駆体中に存在するカルボン酸から解離する酸による金属銅のイオン化反応、すなわち、下記の反応式1、反応式2のいずれかで表わされる酸化還元反応であると捉えることができる。
【0019】
【化14】
【0020】
これらの酸化還元反応の標準電位Eは、反応式1で表わされる反応の場合、E=−0.68Vであり、反応式2で表わされる反応の場合E=+1.78Vである。標準電位Eは、いわゆるネルンスト(Nernst)の式において、左辺のCuと右辺のCuイオンが等しい活量にある場合の左辺と右辺の電位の差を表したものであり、一般に、この値が正の場合は反応が右側に自発的に進行し、負の場合には右側に進行しにくい。
【0021】
反応式1の反応は、標準電位が負であり、自発的には進行しない。反応式2の反応は、標準電位が正であり、自発的に進行する。従って、銅とポリイミドの反応は、酸による銅のイオン化とそれに伴う水素発生反応という、反応式1の形態ではなく、酸と銅と酸素の3者が関与する水生成反応(反応式2)であると考えられる。
【0022】
そこで、上述の反応に関するネルンスト(Nernst)の式を再度詳細に考察してみる。上述の反応式2の標準電位Eは、左辺のCuと右辺のCuイオンが等しい活量にある場合、すなわち近似的には左辺のCuの約1/2が反応してCuイオンになってしまった場合の左辺と右辺の電位の差を表していた。反応をより定量的に議論するには、酸素の分圧や水素イオン濃度及びCuイオンの活量を考慮した下記数式1(”Atlas of Electrochemical Equilibria in Aqueous solutions”(1966年、Pergamon Press Ltd.発行)の第386頁、第541頁に記載されている)が必要となる。
【0023】
この式の左辺Eは、反応式2の反応の前後での電位の差、すなわちポテンシャルエネルギーの差を表しており、右辺には酸素濃度と水素イオン濃度が、それぞれ酸素分圧(pO2)、水素イオン指数(pH)という形で表れている。Eの数値がより小さくなれば、反応は進行しにくくなる。
【0024】
ここで、例としてポリイミドをエステル化した場合を考えて見る。この場合、エステル化率が100%であれば、pHは近似的に中性であると考えられるがpH=7ではE=0とはならない。すなわち、ポリイミドの前駆体をエステル化しても式(2)の反応はまだ進行する余地のあることがわかる。
【0025】
一方、酸素の濃度に関して見てみると、pO2は1以下の数値が入るため、pO2を含む項は全体としては負となり、酸素濃度が低いほどEの数値は小さくなり、式(2)の反応は進行しにくくなるものと考えられる。
【0026】
以上の考察から、銅とポリイミド前駆体との反応を抑止する手段として、系の酸性度を低減する(pHを高める)こと、系の酸素濃度を低減すること、の2つが考えられる。
【0027】
なお、これらの推測には、反応の前後でのポテンシャルエネルギーの差から平衡論的に導き出されたものであり、反応速度論的な考慮はされていないこと、数式1に表れている数値や係数は理想状態に関するものであること、等から実際の効果はあくまでも実験にて検証する必要がある。そこで、後述する実施例に示すように、本発明者等は、多くの実験によりこれを検証し、実際に、上記の何れも銅とポリイミド前駆体との反応を抑止する上で飛躍的な効果があることを突き止め、本発明に至った。
【0028】
反応抑制のための上述の2つの手段のうち、本発明では、系の酸性度を低減する手段を採用する。本発明では、低酸性度のポリイミド前駆体として、以下の一般式(化1)で表される繰返し単位を有するポリイミドの前駆体を用いる。
【0029】
【化1】
【0030】
(式中、R1は、(化2)
【0031】
【化2】
【0032】
から選ばれる少なくとも一種の4価の有機基であり、R2は芳香環を含む2価の有機基である。)
なお、本明細書において、「ポリイミドの前駆体」とは、ポリアミド酸と、酸二無水物およびジアミンとの、少なくともいずれかをさす。なお、一般式(化1)で表される繰返し単位を有するポリイミドの前駆体は、下記一般式(化15)のポリアミド酸と、下記一般式(化16)の酸二無水物および下記一般式(化17)のジアミンとの、少なくともいずれかである。なお、(化15)〜(化17)におけるR1およびR2は、上述の一般式(化1)と同様である。
【0033】
【化15】
【0034】
【化16】
【0035】
【化17】
【0036】
一般式(化1)のポリイミドの前駆体のうち、一般式(化15)のポリアミド酸は、カルボキシル基を有する酸である。この一般式(化15)のポリアミド酸の酸性度は、そのカルボキシル基からの水素イオンの解離の程度に依存する。その解離の程度はR1の構造に依存し、1個のカルボキシル基が結合した芳香環に、他にどのような置換基が結合しているかで決まる。これは、ハメット(Hammett)則という経験的な規則として知られている。幾つかのR1について計算して求めた、ハメット則における水素イオンの解離の程度を示すσ値を表1に示す。
【0037】
【表1】
【0038】
表1で、用いた略称は、つぎの通りである。
【0039】
PMDA:ピロメリット酸二無水物
BTDA:3,4,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物
BPDA:3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
TPDA:p−ターフェニル−3,3”,4,4”−テトラカルボン酸二無水物
m−TPDA:m−ターフェニル−3,3”,4,4”−テトラカルボン酸二無水物
ODPA:3,3’,4,4’−オキシジフタル酸二無水物
表1から明らかなように、一般に用いられるPMDAやBTDAでは、σ値が正となり酸性度が大きい。一方で、BPDA、ODPA、TPDAではσ値が0以下となり、酸性度が小さい。これにより、前述のR1が(化2)である場合にそのポリイミド前駆体の酸性度が低く、銅の溶出を低く抑えることが可能となることがわかる。
【0040】
上述のR2は、R1の芳香環に直接的に結合していないので、ポリイミド前駆体の酸性度にほとんど影響を与えない。ハメット則は水溶液中での経験則であるため、本発明のポリイミド前駆体溶液のような有機溶媒系に直接適用する際は、実際の効果を実験により検証する必要がある。後述の実施例で示されるように、本発明者等は、本発明の(化1)で示される化合物の前駆体は、水溶液中の場合のみならず本発明の対象とする有機溶媒系でも、銅の拡散抑制に有効であることを検証した。
【0041】
ところで、本発明で用いている塩基性化合物は、ポリイミド前駆体中のカルボキシル基を中和し、ポリイミド前駆体を含む溶液全体の酸性度を下げ、従ってpHを上昇させる働きをするという効果を有する。その結果、塩基性化合物の存在は、前述の数式1の左辺にある反応の電位を小さくし、反応を抑止する方向に働く。また、カルボキシル基を中和してあまるほど過剰に添加された塩基性化合物は、さらに系のpHを上昇させることとなり、一層、銅との反応を抑止する効果が増す。従って、絶縁層の形成に用いられるポリイミド前駆体組成物は、含まれるポリイミド前駆体1当量に対して、1当量以上の前記塩基性化合物を含むことが好ましい。すなわち、該ポリイミド前駆体組成物は、反応点の数が、前記ポリイミド前駆体全体の含むカルボキシル基の総数以上になる量の塩基性化合物を含むことが好ましい。
【0042】
また、本発明では、上述の配線構造体の製造方法も提供される。ポリイミドの焼成工程では、雰囲気中の酸素濃度を0.5%以下にすることが望ましい。配線構造体の製造法において、銅がポリイミド前駆体に溶出する過程における酸素の影響は極めて大きい。この酸素濃度を低減することによりポリイミド前駆体に銅が溶出するのを抑止することができる。特に抑止効果の大きい酸素濃度の領域は0.5%以下であり、この濃度を超えると急激に銅の溶出量が増大する。この手段として通常の液体窒素から発生する窒素ガスをポリイミド前駆体塗布後のベーク時の雰囲気として用いることができ、100ppm以下の低酸素濃度の雰囲気は容易に達成可能である。この酸素濃度を低減することと前述のポリイミド前駆体を含む溶液系の酸性度を低減することとは、銅の溶出を抑止する効果に関して加成性が成立つ。従って、できる限り銅とポリイミド前駆体が接する際の雰囲気の酸素濃度を低減し、さらに、用いるポリイミド前駆体(またはその組成物)の酸性度を低減することで、銅の溶出量を最小限度に抑えることが可能となる。
【0043】
そこで、本発明では、ポリイミド前駆体の加熱硬化時には、雰囲気の酸素濃度を0.5体積%以下にすることが望ましい。系の酸素濃度を0.5体積%以下に低減すれば、銅の溶出をさらに阻害することができるからである。
【0044】
つぎに、溶媒の存在による影響について考える。Cuとポリイミドワニスとの反応は、溶媒の存在によって促進される。これは、溶媒により銅イオンの分散が促進されることと、溶媒が存在する間は、系内の温度上昇が抑制されるためイミド化の進行が阻害されることとによる。
【0045】
しかし、ポリイミドワニスからの溶媒の蒸発は、雰囲気との接触面である膜表面で起こるため、Cu導体層とポリイミドワニスとの界面では、膜表面よりも長時間溶媒が残存することになる。従って、熱硬化時に溶媒をできるだけ早く気化させることが反応防止には有効であると考えられる。しかし、熱硬化温度を急激に上昇させて溶媒の蒸発時間を短くすることは、膜膨れなどの原因になり難しい。また、極端に熱硬化温度を高くすると、膜表面が急激に硬化してしまうため、かえって内部の溶媒の留去を阻害する結果ともなりかねない。従って、熱硬化温度を高くすることには、限界がある。
【0046】
そこで、本発明者らは、ポリイミドの形成膜厚に着目して、検討を行った。厚いポリイミド膜を得るためには、厚いポリイミドワニス膜を形成しなければならないため、膜内での溶媒の存在時間は長くなる。従って、ポリイミドの形成膜厚が大きいほどCuとポリイミドとの反応は生じ易くなり、ポリイミド膜中へのCuの拡散量が増えることになる。
【0047】
発明者らの実験によれば、ポリイミドの形成膜厚を6.5μm以上にした場合に、Cu層との界面近傍のポリイミド層にCuが高濃度で存在する領域が形成されることが確認された。図9に、セラミック絶縁層と、銅層と、ポリイミド絶縁層とをこの順で積層した場合の、ポリイミド層におけるCu元素の拡散状況を、形成膜厚dに対して観察して得られたグラフである。なお、ポリイミド膜の形成は、銅層表面に、ピロメリット酸二無水物と4,4’−ジアミノジフェニルエーテルとを重合させて得られるポリアミド酸のワニスを塗布し、加熱してイミド化させて行った。
【0048】
図9(a)は、ポリイミド膜の膜厚が10μmのポリイミド層4中のCu元素濃度分布を示したもので、横軸が銅/ポリイミド界面からの距離、縦軸が銅濃度である。この図からわかるように、銅/ポリイミド界面からの距離が大きくなるにつれて、Cu元素濃度が減少し、銅/ポリイミド界面からの距離が小さいところにCu濃度の高い層(以下、高濃度層という)が存在している。
【0049】
一方、図9(b)は、高濃度層の膜厚とポリイミド層4の形成膜厚との関係を示すグラフである。この図よりポリイミド層4の形成膜厚が6.5μmのところで高濃度層の膜厚が急激に増大し、それ以下では高濃度層がほとんど形成されていないことがわかる。これより、ポリイミド層4の形成膜厚を6.5μm以下に形成している本実施例においては、高濃度層がほとんど形成されていないことがわかる。
【0050】
このCuが高濃度で存在する領域は、Cu導体パターン近傍のポリイミド膜の機械強度低下の原因であり、この高濃度層を無くすことが機械強度低下防止に必要となる。そのため、少なくとも、配線上に形成されるポリイミド膜の形成膜厚は、6.5μm以下にすることが望ましい。このようにすることにより、有機溶媒の気化時間の短縮を図ることができる。有機溶媒の存在時間が短かければ、ポリイミド膜中へのCu拡散を抑制して、Cuとの界面近傍へのCu高濃度層の形成を防止することができ、Cu拡散によるポリイミド膜の耐熱性および機械強度の低下を防止できる。
【0051】
(2)配線構造体製造時のポリイミド膜に発生するクラックの防止
次に、クラックを防止する手段につき説明する。既に述べたように、配線構造体の製造において、ポリイミド膜にクラックを生ずる場合がある。例えば、図8(a)に示されるように、基板1に平行に形成された配線2を上層の配線と接続するためにヴィア配線3を形成し、図8(b)に示されるように絶縁膜としてポリイミド4を形成する。次いで図8(c)に示されるように絶縁膜平坦化のためにポリイミド4を研磨し、ヴィア配線3の頭出しを行なうとヴィア配線3の周囲にクラックを生じ、更にその上に配線を形成することを試みても、配線の断線をきたし不良となってしまう場合がある。クラックが発生する理由は、基板とポリイミド若しくは基板とメタルとの間にそれらの熱膨張係数差に基づく応力が発生するためである。
【0052】
このクラックの発生は、ポリイミド膜に働く膜応力を低減することで防止することができる。ここで、膜応力を低減することによりクラックの発生を防止できる理由を、図8を用いて考察する。
【0053】
図8(c)に示されるような、ヴィア配線3の上面が露出した平坦な絶縁膜4を得るために、ポリイミド膜4を研磨すると、ヴィア配線3の周囲にクラックを生ずる場合がある。これは、基板1とポリイミド3との間に、それらの熱膨張係数差に基づく応力が発生するためである。この応力は、ポリイミド膜4を研磨する前(図8(b)に図示)には、ヴィア配線3上のポリイミド4aがつなぎとなっているため問題にならない。しかし、研磨後には、このつなぎが無くなるため、ヴィア配線の周囲では膜応力がポリイミドを引き裂く力となって働く。クラックは、この力により発生するものと考えられる。このポリイミド膜4を引き裂く力は、ヴィア配線の形を角形状から丸い形状にしても防ぎきれるものではなく、膜応力自体を低減しない限り根本的な解決は困難であるものと考えられる。
【0054】
そこで、本発明では、膜応力を低減するために、絶縁層を、上記の銅との反応性の乏しいポリイミドからなる第1の絶縁膜と、低熱膨張性のポリイミドからなる第2の絶縁膜との、少なくとも2層にすることが望ましい。配線層上に第1の絶縁膜を形成し、さらに第1の絶縁膜上に第2の絶縁膜を形成して、全体として一のポリイミド絶縁層とすることにより、本発明では、配線上に直接形成される部分のポリイミド層にかかる熱応力を低減することができる。これにより、研磨後のクラックの発生が抑制される。
【0055】
このポリイミド膜に働く応力を低減するために、本発明では、低熱膨張性ポリイミドを用いる。その結果、応力を低減でき、クラックを防止することができる。その際の応力は絶縁膜全体として35MPa(メガパスカル)以下とすることが望ましい。この低応力達成のために、前述の低熱膨張性ポリイミドの膜厚の絶縁膜全体に占める割合が50%以上である必要がある。これは、非低熱膨張性ポリイミドの膜応力が45MPa程度である一方で、低熱膨張性ポリイミドの膜応力は25MPa以下となるものが多く、しかもそれらを積層した複合膜の膜応力にはほぼ加成性が成り立つためである。
【0056】
【作用】
つぎに、本発明のうち、銅とポリイミド前駆体との反応の抑止法につき詳細に説明する。本発明では、配線層と絶縁層とを有する配線構造体において、上記配線層の配線は、少なくとも一部が銅からなり、絶縁層は、下記一般式(化1)で表される繰返し単位を有するポリイミドからなることを特徴とする配線構造体が提供される。
【0057】
【化1】
【0058】
ここで、R1は、(化2)
【0059】
【化2】
【0060】
のうちから選ばれる少なくとも一種の4価の有機基であり、R2は芳香環を含む2価の有機基である。このポリイミドの前駆体であるポリアミド酸は酸性度が低いため、このポリイミドの前駆体を用いれば、銅の溶出を抑制することができる。また、R2は芳香環を含む2価の有機基であり、下記(化3)
【0061】
【化3】
【0062】
から選ばれる少なくとも一種を用いることが好ましい。R2は一般式(化1)のポリイミドの前駆体の酸性度にほとんど影響を与えないため、ポリイミド前駆体の熱硬化物であるポリイミドに良好な熱特性や機械特性を与える基を任意に用いることができる。本発明で用いられるポリアミド酸およびポリイミドの重量平均分子量は、機械特性の観点から、2万以上であることが望ましく、通常、2万〜10万程度である。
【0063】
なお、ポリイミド前駆体組成物に塩基性化合物を含めることにより、銅の溶出を抑制することもできる。これは、この塩基性化合物がポリイミド前駆体のカルボキシル基を中和するために、系全体の酸性度が低下し、結果として銅との反応を抑止するからである。また、該塩基性化合物の量はポリイミド前駆体のカルボキシル基を実質的に中和できる量以上とすることが望ましいが、ポリイミド前駆体の溶液の安定性が大きくは損なわれない程度に更に多めに添加してもよい。多めに添加された分は、系全体の酸性度を更に低下させる方向に働き、一層銅との反応を抑止する効果が増す。
【0064】
この塩基化合物としては、ポリイミド前駆体のカルボキシル基を中和し、かつポリイミド前駆体の安定性を大きく損なわず、ポリイミド前駆体を熱硬化しポリイミドとした際にポリイミドの機械特性や電気的特性を大きく損なうものでなければ如何なるものでも使用することができる。なお、塩基性化合物としては、下記(化4)から選ばれる少なくとも一種のアミン化合物であることが好ましい。
【0065】
【化4】
【0066】
特に該塩基性化合物が上記(化4)のアミン化合物の場合には、ポリイミド前駆体から加熱によりポリイミドを形成する際、最終的には殆どが蒸発、分解、散逸しポリイミド中に殆ど残留しないために、過剰の添加は問題無く行なうことができる。したがって、この塩基化合物の量は、ポリイミド前駆体1当量に対して、1当量以上であることが望ましい。なお、ポリイミドの当量は、カルボキシル基1つあたりを1価として計算して求められる量であり、塩基化合物の当量は、酸との酸塩基相互作用を考えたとき、反応点となる部位1つを一価として計算して求められる量である。
【0067】
なお、絶縁膜の形成に、上述の一般式(化1)で表されるポリイミドの前駆体と、上述の塩基性化合物とを含むポリイミド前駆体組成物を用いれば、それ自体酸性度の低いポリアミド酸のカルボキシル基をさらに中和することで、系全体の酸性度をさらに低下させることができ、銅の溶出抑制のために特に有効である。
【0068】
また、ポリイミド膜の機械強度は、絶縁膜の持っている膜応力が低いほど高くなるため、ポリイミドとCuの反応を防止すると同時に、ポリイミド絶縁膜全体の膜応力を下げることがポリイミド膜の機械強度低下の抑制には有効である。そこで、本発明では、配線層と絶縁層とを有する配線構造体において、該配線層の配線は、少なくとも一部が銅からなり、絶縁層は、配線層上に形成される第1の絶縁膜と、該第1の絶縁膜上に形成される第2の絶縁膜とを、少なくとも備え、第1の絶縁膜は、上述のポリイミド前駆体組成物(一般式(化1)で表されるポリイミドの前駆体、および/または、塩基性化合物を含む)から得られる第1のポリイミドからなり、第2の絶縁膜は、上記第1のポリイミドより熱膨張係数の小さい第2のポリイミドからなることを特徴とする配線構造体が提供される。前記第1の絶縁膜の厚さは、前記第2の絶縁膜より薄いことが望ましい。このように、絶縁層を、熱膨張性の低いポリイミドからなる絶縁膜を含む複合層とすることにより、絶縁層全体の膜応力を低減することができる。
【0069】
なお、第1のポリイミドとしては、上述の一般式(化1)で表される繰返し単位を有するポリイミドを用いることが望ましく、第1の絶縁膜の厚さは、6.5μm以下にすることが望ましい。また、第2の絶縁膜の厚さは、第1の絶縁膜より厚いことが望ましく、6.5μm以上20μm以下であることがさらに望ましい。
【0070】
なお、第2の絶縁膜に用いられる低応力達成のための低熱膨張性ポリイミドとしては、その上層に形成される金属層やポリイミドとの接着性が良好であるものが望ましい。
【0071】
例えば、第2のポリイミドの第1の例としては、下記一般式(化5)で表される繰返し単位と、(化6)で表される繰り返し単位とを有し、一分子中に含まれる、一般式(化5)で表わされる繰返し単位の数と一般式(化6)で表される繰り返し単位の数との合計を100としたときの、一般式(化5)で表される繰り返し単位の数は95未満であり、一般式(化6)で表される繰り返し単位の数は5以上であるポリイミドが挙げられる。
【0072】
【化5】
【0073】
【化6】
【0074】
(式中、R3は下記(化7)
【0075】
【化7】
【0076】
から選ばれる少なくとも一種の4価の有機基であり、R4は下記(化8)
【0077】
【化8】
【0078】
から選ばれる少なくとも一種の2価の有機基であり、R5は下記(化9)
【0079】
【化9】
【0080】
から選ばれる少なくとも一種の2価の有機基である。)
このポリイミドは、このポリイミドの前駆体を加熱硬化させて得られる。このポリイミドの前駆体のうちのポリアミド酸は、下記一般式(化18)で表される繰返し単位と、(化19)で表される繰り返し単位とを有し、一分子中に含まれる、一般式(化18)で表わされる繰返し単位の数と一般式(化19)で表される繰り返し単位の数との合計を100としたときの、一般式(化18)で表される繰り返し単位の数は95未満であり、一般式(化19)で表される繰り返し単位の数は5以上であるポリアミド酸である。
【0081】
【化18】
【0082】
【化19】
【0083】
また、下記一般式(化20)の酸二無水物と、2種類のジアミンからなるジアミン混合物とを混合し、加熱硬化させることにより、上記ポリアミド酸が得られ、さらに加熱硬化させれば、上記(化5)および(化6)で表されるポリイミドが得られる。ここで、ジアミン混合物は、95%(モル比)未満の下記一般式(化21)のジアミンと、5%(モル比)以上の下記一般式(化22)のジアミンとの混合物である。なお、(化18)〜(化22)におけるR3〜R5は、上述の一般式(化5)および(化6)と同様である。
【0084】
【化20】
【0085】
【化21】
【0086】
【化22】
【0087】
第2のポリイミドの第2の例としては、下記一般式(化10)で表される繰返し単位と、(化11)で表される繰り返し単位とを有し、一分子中に含まれる、一般式(化10)で表わされる繰返し単位の数と一般式(化11)で表される繰り返し単位の数との合計を100としたときの、一般式(化10)で表される繰り返し単位の数は85〜50であり、一般式(化11)で表される繰り返し単位の数は50〜15である第2のポリイミドが挙げられる。
【0088】
【化10】
【0089】
【化11】
【0090】
(式中、R3は下記(化7)
【0091】
【化7】
【0092】
から選ばれる少なくとも一種の4価の有機基であり、R6は下記(化12)
【0093】
【化12】
【0094】
から選ばれる少なくとも一種の2価の有機基であり、R7は下記(化13)
【0095】
【化13】
【0096】
から選ばれる少なくとも一種の2価の有機基である。)
このポリイミドは、このポリイミドの前駆体を加熱硬化させて得られる。このポリイミドの前駆体のうちのポリアミド酸は、下記一般式(化23)で表される繰返し単位と、(化24)で表される繰り返し単位とを有し、一分子中に含まれる、一般式(化23)で表わされる繰返し単位の数と一般式(化24)で表される繰り返し単位の数との合計を100としたときの、一般式(化23)で表される繰り返し単位の数は95未満であり、一般式(化24)で表される繰り返し単位の数は5以上であるポリアミド酸である。
【0097】
【化23】
【0098】
【化24】
【0099】
また、上記一般式(化20)の酸二無水物と、2種類のジアミンからなるジアミン混合物とを混合し、加熱硬化させることにより、上記ポリアミド酸が得られ、さらに加熱硬化させれば、上記(化10)および(化11)で表されるポリイミドが得られる。ここで、ジアミン混合物は、95%(モル比)未満の下記一般式(化25)のジアミンと、5%(モル比)以上の下記一般式(化26)のジアミンとの混合物である。なお、(化20)におけるR3と、(化25)および(化26)におけるR6およびR7は、いずれも、上述の一般式(化10)および(化11)と同様である。
【0100】
【化25】
【0101】
【化26】
【0102】
上記2例の低熱膨張性ポリイミドのうち、第1の例では、芳香環にメチル基を有する有機基成分をポリイミド分子鎖中に導入することにより上層金属や上層に形成されるポリイミドとの接着を確保する。これは、芳香環にメチル基を有する有機基が、酸素によるアッシングやアルゴンイオンを用いたスパッタリング等の処理により極めて活性な表面状態を作り出すことができるためであり、その結果として上述の接着を確保することができる。その割合はモル比で5%以上必要であり、充分な効果を達成できる。また、第2の例では、エ−テル結合を有する有機基成分をポリイミド分子鎖中に導入することにより上層に形成される金属やポリイミドとの接着を確保する。エ−テル結合を有する有機基成分は本来上層金属や上層に形成されるポリイミドとの接着性に優れているが、反面ポリイミドが低熱膨張性となるための阻害要因となる。そのため、上述に記載のようにある割合に限定された範囲で低応力と上述の高接着性が達成できる。
【0103】
前述の全てのポリイミド前駆体は、必要なテトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分とを極性有機溶剤中で撹拌し、重合反応させポリイミド前駆体(ポリアミド酸)を生成することで容易に得ることができる。ここで、酸二無水物とジアミンの量は、化学量論的にほぼ同等であることが望ましい。
【0104】
また使用できる極性有機溶剤としては、例えば、1−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミド、テトラメチレンスルホン、p−クロロフェノ−ル、p−ブロモフェノ−ル等があげられ、これらの少なくとも1種以上を用いることができるが、必ずしもこれらに限定されるものではなく、ポリイミド前駆体が溶解するものであれば、何れのものでも使用可能である。
【0105】
さらに、塩基性化合物を含んだポリイミド前駆体組成物を得るには、該ポリイミド前駆体を上記方法により合成後、得られた反応溶液に塩基性化合物を添加し、撹拌すればよい。
【0106】
本発明では、配線構造体の製造方法も提供される。ここで、配線構造体とは、配線と絶縁層とを有する電子装置をいい、半導体集積回路素子、配線基板、サーマルヘッド、磁気ヘッド等が含まれる。ここでは、例として、薄膜・厚膜複合多層配線基板の製造方法を説明する。
【0107】
まず、配線を有するセラミック基板表面に、導体パターンを形成して、配線層とする。導体パターンの形成には、フォトリソグラフィ法や、アディティブ法など、周知の方法を用いることができる。なお、銅配線層は、その上層および下層の少なくともいずれか一方に、Cr、Ti、Ta、W、Nb、およびTiWのうちから選ばれた材料よりなる導体層を備えることが望ましい。
【0108】
つぎに、この配線層表面に、ポリイミド前駆体組成物の膜を形成する。成膜方法は、スピンコートなど、周知の方法を用いることができる。このポリイミド前駆体組成物の膜を、加熱することにより硬化させることにより、ポリイミドからなる絶縁膜が得られる。なお、ポリイミド前駆体組成物は、上述の一般式(化1)で表されるポリイミドの前駆体と、塩基性化合物との、少なくともいずれかを含むことが望ましい。また、溶媒の存在時間を短くするために、ポリイミド前駆体組成物の膜厚は、加熱硬化させて得られる絶縁膜の膜厚が6.5μm以下になるような膜厚にすることが望ましい。
【0109】
このポリイミド前駆体組成物の膜を加熱硬化させると、ポリイミドからなる絶縁膜が得られる。このポリイミド前駆体の加熱硬化の工程においては、雰囲気中の酸素濃度を0.5v/v%以下にすることが望ましく、酸素がない雰囲気で行うことがさらに望ましい。なお、このようにして得られた絶縁膜表面に、さらに、低熱膨張性のポリイミドからなる膜を形成し、絶縁膜を複合膜にする工程を設けてもよい。
【0110】
また、絶縁膜表面に導体配線を形成する工程と、該導体配線上に絶縁膜をさらに形成する工程とをこの順で繰り返せば、複数の配線層を備える多層配線基板を得ることができる。
【0111】
つぎに、基本的な製造工程例を説明する。薄膜配線基板の基本的な構造を、図10に示す。薄膜配線基板の基本的な製造工程例としては、
(a) 図10(a)に示すように、Cu導体からなる配線層102上にポリイミドからなる絶縁層104を形成する場合、
(b) 図10(b)に示すように、Cu導体からなる配線層102およびビア106上に、ポリイミドからなる絶縁層104を形成する場合、および、
(c) 図10(c)に示すように、絶縁層107中のスルーホール100上に存在するCu導体からなる配線層103上にポリイミドからなる絶縁層104を形成する場合、
などが挙げられる。
【0112】
最初に図10(a)に示した構造の製造工程について説明する。絶縁層101上に、通常のスパッタリング法を用いてCu膜を成膜し、このCu膜を、周知のフォトエッチング法を用いて所定のパターン形状に加工して、Cuからなる配線層102を形成する。得られた配線層102上に、ポリイミド前駆体組成物をスピンコート等により成膜し、加熱硬化させてポリイミド層104を形成する。以上により、図10(a)に示した構造の配線基板が得られる。
【0113】
次に、図10(b)に示した構造の製造工程について説明する。絶縁層101上に、通常のスパッタリング法を用いてCu膜を成膜する。このCu膜表面に、周知のプロセスによりめっき用のレジストパターンを形成し、めっき法によりCu導体からなるビア配線106を形成する。つぎに、めっき用レジストを除去した後に周知のフォトエッチング法によりビアパッド105と配線102aと有する配線層102を形成する。ついで、配線層102上にポリイミド前駆体組成物をスピンコート等により成膜し、加熱硬化させてポリイミド層4を形成する。以上により、図10(b)に示した構造の配線基板が得られる。
【0114】
次に、図10(c)に示した構造の製造工程について説明する。絶縁層101上に、通常のスパッタリング法を用いてCu膜を成膜し、周知のフォトエッチング法を用いて所定のパターン形状に加工し、Cuからなる配線層2を形成する。ついで、感光性ポリイミド前駆体組成物を用い、周知のフォトリソグラフィー法によってスルーホール100を設けた絶縁層107を形成する。つぎに、通常のスパッタリング法を用いてCu膜を成膜し、周知のフォトエッチング法を用いて所定のパターン形状に加工し、Cu導体からなる配線層103を形成する。最後に、配線層103上にポリイミド前駆体組成物をスピンコート等により成膜し、加熱硬化させてポリイミド層4を形成する。以上により、図10(c)に示す構造を有する配線基板が得られる。
【0115】
上述の(a)〜(c)のいずれの場合も、導体(配線層102,103およびビア配線106)上にポリイミド層4を形成する場合、ポリイミド層104の形成には、ポリイミド前駆体を含むポリイミド前駆体組成物を用いるが、このポリイミド前駆体として、上述の一般式(化1)で表されるポリイミドの前駆体を用いるか、あるいは、組成物中に塩基性化合物をさらに含むようにする。
【0116】
なお、上述の(a)〜(c)の各場合とも、ポリイミド層104の形成膜厚dは、6.5μm以下にすることが望ましい。しかし、(b)および(c)の場合、ポリイミド層4が最も厚くなるところは、Cu導体パターンのパターンエッジ部である。そこで、該パターンエッジ部の膜厚d´をも6.5μm以下に形成することが望ましい。しかし、通常は、平坦部の膜厚dとパターンエッジ部の膜厚d´との差は小さいので、平坦部の膜厚dを6.5μm以下にすれば、十分な効果が得られる。
【0117】
絶縁層104の形成膜厚dは、6.5μm以下にすることが望ましい。しかし、絶縁層104の形成膜厚dを6.5μmより厚くする必要がある場合には、絶縁層104を2層以上の多層構造とすればよい。すなわち、配線上に直接形成される層の形成膜厚dを6.5μm以下にし、この層の表面に、さらに絶縁層を形成すれば、絶縁層104全体の厚さを、6.5μmより厚くしても、十分な効果が得られる。
【0118】
なお、上述の(a)〜(c)のいずれの場合も、絶縁層101は、高分子材料およびセラミック材料のいずれの材料からなるものであってもよい。また、Cu導体からなる配線層102は、上述のようなフォトリソグラフィの手法によらずに、印刷や、アディティブ法など、他の方法によって配線パターンを形成してもよい。さらに、上述の例では、Cuの成膜をスパッタリング法によって行っているが、めっき法などを用いても差支えない。また、上述の例では、ビア6をめっきにより形成しているが、スパッタリング法によってCuを成膜し、周知のフォトエッチングによって加工することにより形成しても良い。スルーホールの形成についても、上述のような感光性材料を用いた方法に限らず、機械的穿孔など、他の方法により行ってもよい。
【0119】
また、ポリイミド前駆体組成物の成膜は、スピンコート等による塗布に限らず、例えば、ポリイミド前駆体組成物からなるシートを載置するなど、他の方法を用いて行ってもよい。ポリイミド前駆体の加熱硬化は、窒素気流中あるいは真空中など、酸素の少ない雰囲気において行うことが望ましい。
【0120】
さらに、上述の例では、配線層102,103はCu単体で構成しているが、絶縁層104との密着性を確保するために、配線層102,103の上面や下面にCr、Ti、Ta、W、Nb、およびTiWの中から選んだ材料からなる薄膜層を形成しても良い。この場合の本発明の効果はCu導体パターンの側壁に対して現れる。
【0121】
つぎに、多層配線基板を形成する場合の製造工程例について説明する。導体配線119を備えるセラミック基板111上に薄膜多層配線112を形成する場合の、製造途中の多層配線基板の断面図を、図11に示す。図11に示した多層配線基板は、導体配線119を備えるセラミック基板と、3層の絶縁層110と、厚膜基板101と薄膜多層配線102の整合をとるための整合層114と、平面配線116と、ビア配線113と、ビアパッド115とを備える。各絶縁層110は、それぞれ、第1のポリイミド膜117と、第2のポリイミド膜118とを備える。多層配線基板は、例えば、つぎの(1)〜(12)の工程により作製される。
【0122】
(1) セラミック基板111を洗浄し、酸素プラズマ処理を行って基板表面の清浄化を行う。
【0123】
(2) 逆スパッタリングにより基板表面の清浄化を行った後、セラミック基板111表面に、スパッタリング法によりCr、Cu、Crを順次成膜し、Cr/Cu/Cr積層膜を形成する。ここで、Cr/Cu/CrはCr膜、Cu膜、Cr膜を、この順で順次積層した構造を表す。
【0124】
(3) Cr/Cu/Cr積層膜表面に、周知のフォトリソグラフィ法によりレジストパターンを形成し、選択性エッチングによりCr/Cu/Cr積層膜の最上層のCr膜をパターン化した後、電気めっきを用いてCu膜を成長させ、Cu導体よりなるビア113aを形成する。さらに、周知のフォトエッチング法によりCr/Cu/Cr積層膜のパターン分離を行い、整合層114のパターンを形成する。
【0125】
(4) セラミック基板111表面の露出部分と、整合層114およびビア113aとを覆うように、第1のポリイミド前駆体組成物をスピンコートにより塗布し、加熱硬化させて、第1の絶縁層110aの第1のポリイミド膜117aを形成する。ここで、第1のポリイミド前駆体組成物は、ポリイミド前駆体として、上述の一般式(化1)で表されるポリイミドの前駆体を含むか、あるいは、塩基性化合物を含むことが望ましい。また、この第1のポリイミド膜117aの膜厚は6.5μm以下にすることが望ましい。このようにすることにより、第1のポリイミド膜117a中へのCu拡散を防止することができる。
【0126】
(5) 次いで、第1のポリイミド膜117a表面に、第2のポリイミド前駆体組成物をスピンコートにより塗布し、加熱硬化させて、第1の絶縁層110aの第2のポリイミド膜118aを形成する。この第2のポリイミド膜118aの形成膜厚は、第1の絶縁層110aの必要膜厚に応じて定めれば良い。第2のポリイミド膜118aは、第1のポリイミド膜117aと同材料であっても良いが、異なっても差支えなく、熱膨張の少ないポリイミドを用いることが望ましい。この低熱膨張性ポリイミドには、上述の一般式(化5)で表される繰返し単位と(化6)で表される繰り返し単位とを有するポリイミド、および、上述の一般式(化10)で表される繰返し単位と、(化11)で表される繰り返し単位とを有するポリイミドの少なくともいずれかが好適である。また、ここでは、絶縁層110を2つの絶縁膜117,118の複合膜としているが、さらに第2のポリイミド膜118表面に絶縁膜を形成し、3層以上の複合膜としてもよい。
【0127】
(6) 得られた第1の絶縁層110a表面を、テープラップ法やポリッシュ法などの機械研磨法により研磨し、ビア113aの頭出しと絶縁層110aの平坦化とを行ったのち、絶縁層110a表面およびビア113a露出部分の洗浄と酸素プラズマ処理とを行い、表面を清浄化する。
【0128】
(7) 上述の(2)〜(3)と同様にして、絶縁層110a表面およびビア113a露出部分にCr/Cu/Cr積層膜を成膜したのち、最上層Cr膜をパターン化した後、電気めっきを用いてCuを成長させ、Cuよりなるビア113bを形成し、Cr/Cu/Cr積層膜をパターン分離してビアパッド115aおよび配線層116aを得る。
【0129】
(8) 上述の(4)と同様にして、第1の絶縁層110a表面と、平面配線116a、ビアパッド115aおよびビア113bとを覆うように、第1のポリイミド前駆体組成物をスピンコートにより塗布し、加熱硬化させて、第2の絶縁層110bの第1のポリイミド膜117bを形成する。第1の絶縁層110aの場合と同様に、ここで、第1のポリイミド前駆体組成物は、ポリイミド前駆体として、上述の一般式(化1)で表されるポリイミドの前駆体を含むか、あるいは、塩基性化合物を含むことが望ましい。また、この第1のポリイミド膜117bの膜厚も、6.5μm以下にすることが望ましい。
【0130】
(9) 次いで、上述の(5)と同様にして、第1のポリイミド膜117b表面に、第2のポリイミド膜118bを形成する。これにより、第2の絶縁層110bが形成されたことになる。
【0131】
(10) 得られた第2の絶縁層110b表面を、上述の(6)と同様にして研磨し、ビア113aの頭出しおよび平坦化と、表面の清浄化を行ったのち、上述の(7)と同様にして、ビア113c、ビアパッド115bおよび配線層116bを形成する。
【0132】
(11) さらに、上述の(8)〜(9)と同様にして、第2の絶縁層110b表面と、平面配線116b、ビアパッド115bおよびビア113cとを覆うように、第3の絶縁層110cの第1のポリイミド膜117cおよび第2のポリイミド膜118cを形成し、第3の絶縁層110cを得る。
【0133】
(12) 以上により、図3に示した、製造途中の多層配線基板が作製される。さらに、(10)〜(11)の工程を繰り返すことにより、配線層の積層数を増やすことができる。所望の積層が得られたら、最後に、表面を研磨し、清浄化したのち、半導体チップなどとの接続のための表面電極(図示せず)を形成することにより、多層配線基板が得られる。
【0134】
従来より用いられてきた製造方法では、上述の(6)および(10)に相当する研磨工程において、ビア113aの周辺の第1の絶縁層110aに相当する箇所や、ビア113bの周辺の第2の絶縁層110bに相当する箇所に、クラックの発生が見られることがあった。しかし、本発明の第1の態様によれば、上述の一般式(化1)により表されるポリイミドの前駆体を含むポリイミド前駆体組成物を用いて第1のポリイミド膜117を形成することにより、クラックの発生を抑制する。また、本発明の第2の態様によれば、塩基性化合物を含むポリイミド前駆体組成物を用いて第1のポリイミド膜117を形成することにより、クラックの発生を抑制する。さらに、本発明の第3の態様では、第1のポリイミド膜117の膜厚を6.5μm以下にすることにより、クラックの発生を抑制する。
【0135】
つぎに、厚膜多層基板の両面に薄膜配線とI/O(入出力)ピンを形成するための薄膜メタライズを形成した厚膜・薄膜複合配線基板の製造方法の例を、図12を用いて説明する。
【0136】
図12に示した配線基板は、内部配線119を備えるセラミック基板111の表裏一方の面に、厚膜基板111と薄膜配線の整合をとるための金属層パターン(整合層)114と、ビア54と、半導体チップ等との接続のための金属層パターン(表面電極)127と、絶縁層110とを備える。絶縁層110は、第1のポリイミド膜(絶縁膜)117と第2のポリイミド膜(絶縁膜)118とを備える。また、セラミック基板111の他方の面には、入出力(I/O)ピン取り付けの際の応力分散のための3層からなる金属層パターン121と、入出力端子接続のための金属層パターン(表面電極)123と、表面電極123にはんだ125を介して接続されたI/Oピン126と、第1の絶縁層122および第2の絶縁層124とを備える。
【0137】
この配線基板は、つぎの(21)〜(30)の工程により作製することができる。なお、ここでは、上記I/Oピン126のある側の面を裏面側の面と呼び、その反対側の面を表面側の面と呼ぶことにする。
【0138】
(21) セラミック基板111を洗浄し、酸素プラズマ処理によりセラミック基板111の表裏両面の清浄化を行ったのち、上述の(2)と同様にして、セラミック基板111の表裏両面にCr/Cu/Cr積層膜を形成し、裏面側のCr/Cu/Cr積層膜表面を、ポリイミド膜等からなる保護膜(図示せず)により覆う。
【0139】
(22) セラミック基板111の表面側のCr/Cu/Cr積層膜表面に、上述の(3)と同様にして、Cuよりなるビア113を形成したのち、パターン分離し、整合層として働く金属層パターン(整合パッド)114を得る。
【0140】
(23) (22)の工程により露出したセラミック基板111表面と、整合パッド114およびビア113とを覆うように、上述の(4)と同様にして第1のポリイミド前駆体を塗布し、加熱硬化させて第1のポリイミド膜117を形成する。
【0141】
(24) 次いで、第1のポリイミド膜117表面に、上述の(5)と同様にして、第2のポリイミド前駆体組成物を塗布し、加熱硬化させて第2のポリイミド膜118を形成する。これにより2層構造の絶縁膜110が得られる。なお、第2のポリイミド膜118の形成膜厚は、表面側に形成する絶縁層110の必要膜厚に応じて定めれば良い。
【0142】
(25) 裏面側の面に形成してある保護膜(図示せず)を酸素アッシングなどにより除去するしたのち、周知のフォトエッチング法により、裏面側のCr/Cu/Cr積層膜のパターン分離を行い、金属層パターン121を形成する。
【0143】
(26) (25)の工程により露出したセラミック基板111表面と金属層パターン121とを覆うように、上述の(24)と同様にして、ポリイミド前駆体組成物を塗布し、加熱硬化させて、裏面側の第1の絶縁層122を形成する。
【0144】
(27) この第1の絶縁層122に、周知のフォトエッチング法あるいはレーザアブレーション法などにより、金属層パターン61に達する貫通孔をあけ、逆スパッタリングにより露出した金属層パターン61表面および第1のポリイミド膜122表面の清浄化を行った後、スパッタリング法などによりCr膜を成膜し、さらに、このCr膜表面に、はんだと接続可能な金属(NiあるいはNi−W)からなる薄膜層を成膜する。次いで、周知のフォトエッチング法によりこの金属膜(Cr膜、および、はんだと接続可能な金属の膜)のパターン化を行い、表面電極123を得る。
【0145】
(28) 表面電極123および第1の絶縁層122の表面に、第2のポリイミド前駆体組成物をスピンコートにより塗布し、加熱硬化させて、第2の絶縁層124を形成する。
【0146】
(29) テープラップ法やポリッシュ法などの機械研磨法を用いて、表面側の絶縁層110表面を研磨し、ビア113の頭出しと平坦化とを行ったのち、基板の洗浄と酸素プラズマ処理を行い、表面を清浄化し、さらに逆スパッタリングにより表面側の面の清浄化を行ったのち、この表面側の面に、スパッタリング法等によりCr膜およびはんだと接続可能な金属(Ni−WあるいはNi)からなる薄膜層を順次成膜する。次いで、周知のフォトエッチング法によりCr膜およびはんだと接続可能な金属の膜のパターン化を行い、表面電極127を形成する。
【0147】
(30) レーザアブレーション法などにより、裏面側の第2の絶縁膜124に、裏面側の表面電極123に達する貫通孔(スルーホール)をあけて、裏面側表面電極123表面の一部を露出させたのち、表裏両面の表面電極127,123の露出部分に、置換めっきなどにより、Au層(図示せず)を設ける。最後に、はんだ125を用いてI/Oピン126を裏面側の表面電極123に接続する。
【0148】
以上により、図12に示した配線基板が作製される。上記工程例では、表面側には2層構造の絶縁層110を、裏面側には2層の単層構造絶縁層122,124を、それぞれ形成している。
【0149】
以上の工程のうち、表面側に形成される第1のポリイミド膜117(工程(23)により形成)と、裏面側に形成される第1の絶縁層122(工程(26)により形成)とは、第1のポリイミド前駆体組成物を用いて形成される。ここで、第1のポリイミド前駆体組成物は、ポリイミド前駆体として、上述の一般式(化1)で表されるポリイミドの前駆体を含むか、あるいは、塩基性化合物を含むことが望ましい。また、第1のポリイミド膜117の形成と、第1の絶縁層122の形成とに、同じポリイミド前駆体組成物を用いてもよく、互いに異なる組成物を用いてもよい。なお、この第1のポリイミド膜117および第1の絶縁膜122の膜厚は、それぞれ6.5μm以下にすることが望ましい。本発明によれば、第1のポリイミド膜117および第1の絶縁層122中へのCu拡散を防止することができ、これによる耐熱性劣化や機械強度の低下が回避される。
【0150】
実際、従来は、工程(29)に相当する研磨工程において、ビア113の周辺の絶縁層110にクラックの発生などが見られたが、本発明を適用した上記工程では、クラックは発生しない。なお、表面側の絶縁層110は、3層以上にしても差支えない。
【0151】
また、表面側に形成される第2のポリイミド膜118(工程(24)により形成)と、裏面側に形成される第2の絶縁層124(工程(28)により形成)とは、第2のポリイミド前駆体組成物を用いて形成される。この第2のポリイミド前駆体組成物は、第1のポリイミド前駆体組成物と同じものであっても良いが、異なっても差支えなく、第2のポリイミド膜118の形成と、第2の絶縁層124の形成とに、同じポリイミド前駆体組成物を用いてもよく、互いに異なる組成物を用いてもよいが、いずれも熱膨張の少ないポリイミドを用いることが望ましい。
【0152】
この低熱膨張性ポリイミドには、上述の一般式(化5)で表される繰返し単位と(化6)で表される繰り返し単位とを有するポリイミド、および、上述の一般式(化10)で表される繰返し単位と、(化11)で表される繰り返し単位とを有するポリイミドの少なくともいずれかが好適である。
【0153】
【実施例】
次に、本発明の実施例を、図面を用いて説明する。なお、以下に記載する各合成例では、粘度の測定にE型粘度計(DV□−E型ディジタル粘度計((株)トキメック製)を使用した。
【0154】
まず、ポリイミド前駆体を合成し、反応溶液に適宜塩基性化合物を添加して、反応溶媒の残存したワニスとして、ポリイミド前駆体組成物を得た(合成例1〜10、14〜16)。得られたワニスの固形分濃度および粘度を、表2に示す。
【0155】
【表2】
【0156】
表2で用いた化合物の略号は、それぞれ、
BPDA:3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
ODPA:3,3’,4,4’−オキシジフタル酸二無水物
TPDA:p−ターフェニル−3,3”,4,4”−テトラカルボン酸二無水物
m−TPDA:m−ターフェニル−3,3”,4,4”−テトラカルボン酸二無水物
DDE:4,4’−ジアミノジフェニルエ−テル
BAPB:4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル
BAPP:2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン
HFBAPP:2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン
PDA:p−フェニレンジアミン
DMBP:3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル
DAPM:3−ジメチルアミノプロピルメタクリレート
4−MPY:4−メチルピリジン
PMDA:ピロメリット酸二無水物
BTDA:3,4,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物
を示す。
【0157】
<合成例1>
室温、窒素気流下、ジアミン成分として4,4’−ジアミノジフェニルエ−テルを30.0g(0.15mol)を、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)と1−メチル−2−ピロリドン(NMP)の1:1の混合溶媒420gに撹拌しつつ溶解した。次いで、酸二無水物として3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物44.1g(0.15mol)を混入し、窒素気流下で撹拌しつつ溶解した(全固形分濃度15wt/wt%)。反応溶液の粘度は、酸二無水物添加後、6時間経過時に600ポアズに達した。さらにこの溶液を55〜70℃の温度範囲で約6時間加熱してその粘度を30ポアズとし、配線構造体を製造する際に用いるポリイミド前駆体組成物(表2のワニス番号1)を得た。
【0158】
<合成例2>
合成例1と同様にして得られたポリイミド前駆体組成物に、塩基性化合物として、3−ジメチルアミノプロピルメタクリレートを51.4g(0.30mol)添加した。添加後、溶液の粘度が55ポアズまで上昇した。次いで、該溶液を35℃で4時間加熱しその粘度を40ポアズとし、配線構造体を製造する際に用いるポリイミド前駆体組成物(表2のワニス番号2)を得た。
【0159】
<合成例3〜10、14〜15>
表2のワニス番号3〜10、14〜15の欄に示される成分をそれぞれ用いて、合成例1または合成例2と同様の方法でポリイミド前駆体を合成し、表2に示す固形分濃度および粘度のポリイミド前駆体組成物(ワニス番号3〜10、14〜16)を得た。なお、これらの合成例においても、合成例1および2と同様に、酸二無水物およびジアミンの量はそれぞれ0.15molとし、塩基性化合物を添加する場合、その量は0.30molとした。
【0160】
<比較合成例>
合成例1と同様の方法で、表3に示した原料をそれぞれ0.15mol用いてポリイミド前駆体を合成し、ポリイミド前駆体組成物(表3のワニス番号11〜13)を得た。なお、表3では、化合物名を表2と同様の略号を用いて記載した。
【0161】
【表3】
【0162】
<実験例1>
200ml用の丸底フラスコに表2のワニス番号1のポリイミド前駆体ワニス(合成例1で合成したもの)を30g取り、アトマイズ銅(粒径約15μm、純度99.999wt/wt%)を0.3g添加し、窒素気流下で毎分300回転の速度で30分間撹拌した。撹拌する際の温度は23℃、50℃、80℃の3種類とした。このとき、フラスコ内部の酸素濃度を酸素濃度計にて測定したところ、いずれも約500ppm(vol/vol)であった。
【0163】
次いで、ワニスをポアサイズ3μmのフィルタにて窒素により加圧濾過し、未反応の銅をワニスから完全に除去した。濾過したワニスをガラス基板にスピン塗布し、窒素気流下、130℃の温度で30分間プリベークした後、該ワニスから生成したポリイミド前駆体のフィルムを剥離した。次いで、ポリイミド前駆体のフィルムをフレームへ装着し、窒素気流下で、200℃で30分間ベークしたのち、350℃で30分間ベークし、銅が均一に分散したポリイミドフィルムを得た。このフィルム中に存在する銅の濃度をケイ光X線法により定量した。その結果を図2に示す。これは、ポリイミド前駆体であるワニスと銅が反応し、ワニス中に溶出した銅の量を表している。本実験例の結果から、この図に示される様に、温度が上昇してもワニス中に銅は殆ど溶出せず、酸性度の低いポリイミド前駆体の使用と酸素濃度の低い雰囲気が、ポリイミド前駆体と銅との反応を抑止する上で極めて効果があることがわかる。
【0164】
<実験例2>
表2にワニス番号2として示す、塩基性化合物を含むワニスを用いることの他は、実験例1と同様の実験を行った。その結果を図3に示す。この図に示される様に、温度が上昇してもワニス中に銅は殆ど溶出せず、酸性度の低いポリイミド前駆体の使用と酸素濃度の低い雰囲気が、ポリイミド前駆体と銅との反応を抑止する上で極めて効果があることが示された。この例では実験例1の場合と比較して、さらに銅との反応性が抑止されていることがわかる。
【0165】
<実験例3>
表2にワニス番号16として示す、塩基性化合物を含むワニスを用いることの他は、実験例1と同様の実験を行った。その結果を図13に示す。本実験例では、実験例2と異なり、カルボキシル基の酸性度の高いポリアミド酸を用いているにもかかわらず、図13に示される様に、温度が上昇してもワニス中に銅は殆ど溶出せず、塩基性化合物の添加と、酸素濃度の低い雰囲気とにより、ポリイミド前駆体と銅との反応が抑止されていることがわかる。
【0166】
<比較実験例1>
ワニスとして表3のワニス番号13を用いることの他は、実験例1と同様の実験を行った。その結果を図4に示す。この図に示される様に、温度の上昇とともにワニス中に銅が溶出する量が増加し、しかもその絶対量が前述の実験例1〜3と比較するとはるかに多い。従って、酸素濃度の低い雰囲気下でも、酸性度の高いポリイミド前駆体を使用し、酸性度を下げるための塩基性化合物の添加がなければ、ポリイミド前駆体と銅との反応を抑止することが困難になると考えられる。実際、さらに酸素濃度を低くし、80ppm(vol/vol)にて同様の実験を行ったが、図4とほぼ同様の結果となった。
【0167】
<実験例4>
シリコンウエハ(直径4インチ)上にスパッタリング法により0.05μmの厚さのクロム膜と、2μmの厚さの銅膜とを順に成膜し、その上に、表2のワニス番号2のワニス(合成例2で調製したもの)をスピン塗布し、ベーク炉に窒素気流下23℃にて投入後、毎分2℃の速度で昇温し400℃に到達後60分間保持した後取り出した。この時、ベーク炉中の酸素濃度は6〜10ppm(vol/vol)であった。取り出したウエハをSIMS(Secondary Ion Mass Spectrometry:二次イオン質量分析)法により、ポリイミド側から深さ方向へ銅の濃度を計測した。結果を図5に示す。図5(a)は、測定したウエハの部分断面図である。このウエハは、基板53上に、クロム層54、銅層55、ポリイミド層56を、この順で備える。また、図5(b)は、SIMS法による測定結果のグラフである。本実験例3の測定結果は、曲線51として図示されている。
【0168】
この図から、本実験例では、銅の濃度はポリイミドと銅の極界面近傍までは低く抑えられていることがわかる。また、本実験例では、特に界面近傍における銅濃度4000ppm(wt/wt)以上の領域に関しては、0.1μm以下という極めて薄い厚さでしか銅は高濃度で存在していない。この結果から、前述の実験例1〜2に示されたような室温〜80℃の温度領域のみならず、ポリイミドを形成する全温度工程にわたっても、酸素濃度の低い雰囲気と酸性度の低いポリイミド前駆体を用いることにより、銅とポリイミドとの反応を抑止し、ポリイミドの分解を防ぐことができることわかる。
【0169】
なお、本実験例でSIMS用に作製したウエハに対して、さらに窒素気流下400℃の加熱処理を追加しても、SIMS法による測定結果にほとんど変化は見られなかった。従って、この結果から、ポリイミド前駆体が完全にイミド化した後では、もはや銅はほどんどポリイミド側に浸入しないことがわかる。
【0170】
<比較実験例2>
ワニスとして、ワニス番号13を用いることの他は実験例3と同様にして、調製されたウエハの銅濃度を測定した。その結果を図5(b)に曲線52として図示する。この図から、酸性度の高いワニスを用いると酸素濃度を低減してもポリイミド側に銅が大量に溶出することがわかる。特に界面近傍における銅濃度4000ppm(wt/wt)以上の領域に関しては、銅は2μm程度の極めて厚い領域にわたって存在しており、ポリイミドの表面側でも、ほとんどの領域で銅が1000ppm(wt/wt)以上の高濃度で存在していることがわかる。
【0171】
なお、本比較実験例でSIMS用に作製したウエハに対して、さらに窒素気流下400℃での加熱処理を10時間追加したところ、ポリイミド膜は極めて脆くなり、いたるところにクラックが発生し、ポリイミド膜の剥がれも見られた。ちなみに、銅膜を形成することなく、ワニス番号13のワニスを直接シリコンウエハに形成したものについて同様の加熱処理を行ったが、ポリイミド膜に脆くなる等の大きな変化は見られなかった。従って、このポリイミド膜が脆くなり、クラックが発生した原因は銅がポリイミド内に大量に溶出したためであることがわかる。
【0172】
<実験例5>
シリコンウエハ(直径4インチ)上に、スパッタリング法により、クロム0.05μmの厚さのクロム膜および2μmの厚さの銅膜を順に成膜し、その上に表2のワニス番号2のワニスをスピン塗布し、ベーク炉に窒素気流下23℃にて投入後、毎分2℃の速度で昇温し400℃に到達後60分間保持した後取りだした。この際、ベーク炉内の酸素濃度を、10ppm(0.001vol/vol%)、1000ppm(0.1vol/vol%)、10000ppm(1vol/vol%)、20.6vol/vol%(空気)の4種類とした。次いで、銅膜およびポリイミド膜の形成されたクロム膜をウエハから剥離し、この、クロム、銅、ポリイミドの三層の膜から、クロムと銅とをそれぞれウエットエッチングにより除去して、ポリイミドフィルムを得た。
【0173】
このようにして得たポリイミドフィルムに含まれる銅の量を、ケイ光X線法により定量した。その結果を図6に曲線61として図示する。この図に示されるように、本実験例から、酸素濃度低い領域ではポリイミド中に銅がほとんど溶出していないが、1vol/vol%を超えると銅の量が急激に増加していることがわかる。従って、ポリイミドを形成するための全温度工程にわたってみた場合にも、酸素濃度の低い雰囲気と、酸性度の低いポリイミド前駆体とを用いることにより、銅とポリイミドとの反応を効果的に抑止することが可能である。図6から、銅とポリイミドとの反応を実用的に抑止するには、0.5vol/vol%以下の酸素濃度に保持することが効果的であることがわかる。
【0174】
<比較実験例3>
ワニスとして表3のワニス番号13を用いることの他は、実験例5と同様の実験を行った。その結果を図6に曲線62として示す。この図に示されるように、本比較実験例から、酸性度の高いワニスを用いると酸素濃度を低減してもポリイミド側に銅が大量に溶出してしまうことがわかる。ちなみに、この例で、ベーク時の雰囲気を空気とした場合には、形成されるポリイミド膜が極めて脆く、そのため剥離することが不可能であり銅の定量を行うには至らなかった。
【0175】
<実験例6>
実験例5で作製したポリイミドフィルムにアルミニウムで電極を形成し、ポリイミド膜の誘電率を測定した。その結果を表4のワニス番号2の欄に示す。なお、ワニス番号2をシリコンウエハ上に直接に塗布して形成したポリイミドの比誘電率は3.1である。この表に示したように、本実験例5の結果から、誘電率は、ベーク雰囲気中の酸素濃度が1vol/vol%以上では大きく上昇してしまうが、1000ppm(vol/vol)までは3.1の正常な値を示すことがわかる。なお、シリコンウエハ上に直接ワニス番号2から形成したポリイミド膜では、空気中でベークしても大きな誘電率の上昇は見られなかったことから、誘電率の上昇原因は、ポリイミド内への銅の溶出が原因であると思われる。この例に見られるように、酸素濃度の低い雰囲気と酸性度の低いポリイミド前駆体を用いることにより、誘電率の上昇を効果的に抑止することが可能である。
【0176】
【表4】
【0177】
<比較実験例4>
ワニスとしてワニス番号13を用いたことの他は、実施例5と同様の実験を行った。その結果を表4のワニス番号13の欄に示す。ワニス番号13をシリコンウエハ上に直接に塗布して形成したポリイミドの比誘電率は3.5であるので、この表に示した実験結果から、酸素濃度10ppm(vol/vol)から誘電率が上昇し始め、1vol/vol%を超えると急激に増加することがわかる。実施例5の場合との比較から、ベーク雰囲気の酸素濃度を低く保持しても、酸性度の高いポリイミド前駆体を用いると、誘電率の上昇を抑止することが困難であることが示される。
【0178】
<実施例1>
本実施例では、表2のワニス番号1のワニスと表2のワニス番号9のワニスとを用いて、銅−ポリイミド系多層配線構造体を作製した。本実施例における銅−ポリイミド系多層配線構造体の製造プロセスを図1に示す。
【0179】
(1)まず、内部にタングステン配線22を有するムライト系セラミック基板11(図1(a)に図示、127mm角、3mm厚)を用意した。
【0180】
(2)基板11の配線層を形成する面に、めっき下地膜として、スパッタ法により、クロム層(膜厚0.05μm)と銅層(0.5μm)とを順次形成し、電極層12とした(図1(b))。
【0181】
(3)次いで、電極層12上にポジタイプレジスト13を回転塗布し、窒素雰囲気中90℃で30分加熱した。この時のレジスト13の膜厚は10μmであった(図1(c))。このようにして得たレジスト膜13つきの基板に、所定のマスクで露光、現像、リンス処理を行ない、所定のレジストパターンを得たのち(図1(d))、電気めっき法により銅めっきを行なって、銅の配線層14を得た(図1(e))。めっき液組成はCuSO4/5H2O(70g/l)、H2SO4(140g/l)、HCl(50ppm(wt/vol))であり、電流密度は1.0(A/dm2)、8μm厚の銅を得るための所要時間は35分であった。銅めっき終了後、水洗し、乾燥を90℃で1時間行なった。
【0182】
(4)さらに、(3)の工程(図1(c)〜(e))を繰り返し(図1(f)〜(h))、銅のヴィア配線14aを形成したのち、レジスト13を剥離液にて剥離した(図1(i))。
【0183】
(5)次いで、めっき下地膜である銅およびクロムのうち、(3),(4)の工程により形成された銅めっき層14,14aに接していない部分を、塩化アンモニウム系エッチング液、および過マンガン酸カリウム系エッチング液にてそれぞれ選択的に除去した(図1(j))。
【0184】
(6)次に、銅と直接に接するポリイミド前駆体として表2のワニス番号1のワニスを回転塗布し、500ppm(vol/vol)の酸素濃度を有する窒素気流下、30℃で加熱炉に投入し、毎分4℃で昇温し、200℃で30分保持後、さらに毎分4℃で昇温し、350℃で60分同様の窒素雰囲気下で加熱して、第1の絶縁膜16を形成した。加熱後の膜厚は5μmであった。なお、本実施例では、第1の絶縁膜16、第2の絶縁膜17、ポリイミド層15の膜厚は、第1の絶縁膜16が、配線14を介さず、直接下の絶縁層(セラミック基板11またはポリイミド層15)に接している箇所で測定した。
【0185】
さらに、低熱膨張性のポリイミドとなる表2のワニス番号9のワニスを回転塗布し、500ppm(vol/vol)の酸素濃度を有する窒素気流下、140℃で加熱炉に投入し60分保持後、毎分4℃で昇温し、200℃で30分保持後、さらに毎分4℃で昇温し、350℃で60分同様の窒素雰囲気下で加熱して、第2の絶縁膜17を形成した。ワニス番号9から加熱により得た部分17の膜厚は13μmであった。
【0186】
このようにして得られた第1の絶縁膜16と第2の絶縁膜17とを合わせたポリイミド膜15全体の膜厚は18μmとなった(図1(k))。
【0187】
(7)得られたポリイミド層15の表面を、アルミナ粒子の付着したテープ(#500〜#4000)により研磨し、ポリイミド層15を平坦化して、全ポリイミド膜15の厚さを16μmとした(図1(l))。
【0188】
(8)さらに、(2)〜(7)の工程(図1(b)〜(l))を3回繰り返し、4層の配線層を有する銅−ポリイミド系多層配線構造体を得た。
【0189】
以上の工程により得られた多層配線構造体においては、Cuとポリイミドの界面付近にボイドやはがれ、クラック等は無く、全ての配線にわたって良好な電気的導通が得られた。
【0190】
<実施例2〜4>
第1の絶縁膜(銅表面上に形成されるポリイミド層)16を、表2のワニス番号2、ワニス番号4、ワニス番号6のポリイミド前駆体ワニスをそれぞれ用いて形成し、第2の絶縁膜(第1の絶縁膜上に形成される低熱膨張性ポリイミドによるポリイミド層)17を、表2のワニス番号9のポリイミド前駆体ワニスを用いて形成した他は、実施例1と同様の方法で、5層の配線層を有する銅−ポリイミド系多層配線構造体を得た。ただし、実施例1では、(8)の工程で(2)〜(7)の工程を3回繰り返したが、本実施例7〜9では、4回繰り返した。得られた多層配線構造体においては、Cuとポリイミドの界面付近にボイドやはがれ、クラック等は無く、全ての配線にわたって良好な電気的導通が得られた。
【0191】
<実施例5〜11>
第1の絶縁膜16を、表2のワニス番号3、ワニス番号5、ワニス番号7、ワニス番号8、ワニス番号14、ワニス番号15、ワニス番号16のポリイミド前駆体ワニスを用いて形成し、第2の絶縁膜17を、表2のワニス番号10のポリイミド前駆体ワニスを用いて形成した他は、実施例7と同様の方法で、5層の配線層を有する銅−ポリイミド系多層配線構造体を得た。完成した多層配線構造体においては、Cuとポリイミドの界面付近にボイドやはがれ、クラック等は無く、全ての配線にわたって良好な電気的導通が得られた。
【0192】
<比較実施例1〜2>
第1の絶縁膜16を、表3のワニス番号11あるいはワニス番号12を用いて形成した他は、実施例1の工程(1)〜(7)と同様にして、配線構造体を製造した。
【0193】
本比較実施例1,2では、(6)の工程において、配線のCu上にワニス番号11あるいはワニス番号12のポリイミド前駆体ワニスを塗布して、350℃で60分加熱し、第1の絶縁膜16を作成した。この第1の絶縁膜16を顕微鏡により観察したところ、ワニス番号11(比較実施例1)、ワニス番号12(比較実施例2)の何れの場合にも、ポリイミドのCu配線周辺部分が、緑褐色に変色していた。
【0194】
さらに、実施例1と同様に、ワニス番号9のポリイミド前駆体ワニスを塗布し、350℃で60分加熱して、第2の絶縁膜17を形成した。このようにして形成されたポリイミド層15を有する多層配線構造体を顕微鏡により観察したところ、ワニス番号11(比較実施例1)、ワニス番号12(比較実施例2)の何れの場合にも、第1の絶縁膜16と第2の絶縁膜17との間にフクレが見られた。
【0195】
この後、工程(7)において、テープ研磨によりポリイミドの平坦化を行ったところ、第1の絶縁膜16とCu配線14との間に溝ができ、剥がれが見られた。これは、ポリイミドへCuが大量に溶出した後に、350℃の高温にさらされたために、ポリイミド膜のCuとの界面を中心とした部分が分解し、界面の接着性が低下したものと考えられる。
【0196】
<比較実施例3>
第1の絶縁膜16を、表2のワニス番号2のワニスを用いて形成し、さらに、第2の絶縁膜17も、低熱膨張性ポリイミドであるワニス番号9のワニスの代わりにワニス番号2のワニスを用いて作成することの他は、実施例1と同様の方法で多層配線構造体を製造した。
【0197】
その結果、ポリイミド膜15を形成後(工程(6))、研磨によりポリイミド膜15を平坦化したところ(工程(7))、銅のヴィア配線14aの周囲にクラックが観察された。その後、スパッタ法によりめっきのための電極12を形成を形成したところ(2回目の工程(2))、クラックの部分で電極12の断線がみられた。さらに、上層配線のめっきを行ったところ(2回目の工程(3))、めっきの生成が起こっていない部分が多数見られた。この段階から、工程を先に進めることができず、この比較実施例では、配線構造体として完成に至らなかった。
【0198】
<実施例12>
実施例1と同様にして4層の配線層14を有する配線構造体を調製し、最上層のヴィア配線14aの露出部分およびその周辺のポリイミド層15表面の上に、クロム(0.05μm)、銅(5μm)、クロム(0.05μm)、ニッケル(2μm)の順にスパッタ法で成膜後、レジストを用いたウエットエッチングでパターンニングして、表面電極25を形成した。さらに、この表面電極25の周囲に、LSIとはんだ接続する際のはんだ広がりを防止するために保護膜26を形成した。保護膜26は、ワニス番号2のポリイミド前駆体ワニスをスピン塗布し、窒素気流中30℃でベーク炉に投入後、毎分4℃で昇温し、400℃に到達後60分間保持して形成した。このとき、ベーク炉内の酸素濃度は0.1vol/vol%であった。得られた配線構造体を図7に示す。このようにして作製した配線構造体の、保護膜26の開口部27を、KrFガスによるエキシマレーザーで加工し、LSIとの接続部とした。保護膜26は良好に形成され、異常は見られなかった。
【0199】
<実施例13>
本実施例では、配線の一部をスパッタリング法によって形成することにより、図1に示した構造と類似の構造の配線構造体を得る。本実施例における製造プロセスを、図14に示す。
【0200】
(1)まず、配線22を備えるセラミック基板11表面に、スパッタリング法によりCrを蒸着させて膜厚0.05μmの第1のCr層132を形成し、この第1のCr層132表面に、スパッタリング法によりCuを主成分とする導体層133(膜厚6μm)を形成し、さらにこのCu層123表面に、スパッタリング法によりCrを蒸着させて膜厚0.05μmの第2のCr層134を形成した(図14(a))。
【0201】
(2)つぎに、ビアを形成する部分136を除く第2のCr層134表面にレジスト層135(膜厚17μm)を形成し(図14(b))、レジストに覆われていない部分136に露出しているCr層134をエッチングにより除去して、下層のCu層134を露出させ、ここに、めっき法によりCuを主成分とするビア配線137(高さ17μm)を形成して(図14(c))、レジスト層135を剥離したのち(図14(d))。なお、めっき方法は、実施例1と同様とした。
【0202】
(3)形成されたビア配線137と、レジスト層135の剥離により露出した第2のCr層134表面とを覆うように、感光性レジスト138を塗布し(図14(e))、所定のマスクを介して露光させ、現像して、所定のパターンとしたのち(図14(f))、露出した導体層132〜134をエッチングして除去し(図14(g))、レジスト138を剥離した(図14(h))。
【0203】
(4)残った導体層132〜134とビア配線137と基板11表面とを覆うように、表2のワニス番号2のワニスを回転塗布したのち、70℃の加熱炉中に入れ、酸素濃度100ppm(vol/vol)の窒素気流下で、毎分2℃で昇温させ、350℃に達したら350℃のまま60分保持したのち、冷却した。これにより、図14(i)に示すように、膜厚6μmの第1のポリイミド膜139が形成された。
【0204】
(5)得られた第1のポリイミド膜139の表面に、表2のワニス番号9のワニスを回転塗布し、酸素濃度100ppm(vol/vol)の窒素気流下で、140℃の加熱炉中に入れ、140℃で60分保持したのち、毎分4℃で昇温し、200℃に達したら、200℃のまま60分保持し、その後、さらに毎分4℃で昇温し、350℃に達したら、350℃のまま60分保持して、冷却した。これにより、図14(j)に示すように、膜厚14μmの第2のポリイミド膜140が形成され、2層構造の絶縁膜131が得られた。得られた絶縁膜131の膜厚は、20μmであった。
【0205】
(6)最後に、実施例1と同様の方法により、絶縁膜131を、膜厚が18μmになるまで研磨して平坦化し、図14(k)に示すように、ビア配線の頂部を露出させた。
【0206】
さらに、上述の(1)〜(6)の工程を3回繰り返すことにより、4層の配線層を有する銅−ポリイミド系多層配線構造体を得た。得られた多層配線構造体においては、銅とポリイミドとの界面付近にボイドや剥がれ、クラック等は検出されず、すべての配線にわたって良好な電気的導通が得られた。
【0207】
<比較実施例4>
保護膜26を形成するためのポリイミド前駆体として表3のワニス番号11を用いることの他は、実施例11と同様にして配線構造体を作製した。ワニス番号11を塗布しベーク後、取りだして観察したところ、電極25の側壁の部分でポリイミド膜26が褐色に変色している部分とフクレが発生している部分とが見られた。次いで、保護膜26の開口部27をKrFガスによるエキシマレーザーで加工したところ、電極25の端部にポリイミド層26が剥がれている箇所が見られた。これは、電極25の端部の側壁でポリイミド前駆体と銅が反応した結果であると考えられる。
【0208】
【発明の効果】
以上に説明したように、絶縁層の形成においてCu表面に直接接触するポリイミド前駆体として、本発明の第1の態様ではCuとの反応性が低いポリイミド前駆体を用い、本発明の第2の態様では塩基性化合物を含むポリイミド前駆体組成物を用いるため、いずれの態様でも、ポリイミド前駆体の加熱硬化に際してCuの溶出が抑制される。従って、ポリイミドが劣化することなく、ポリイミドの熱的、電気的、機械的特性に優れ、Cuとポリイミドの界面接着性に優れる。
【0209】
さらに、本発明では、ヴィア配線を形成する際には低熱膨張性のポリイミドによる絶縁層を形成することで低応力化を図る。これにより、ポリイミド膜にクラックを発生しない、配線基板全体として高信頼性である多層配線構造体とその低コストな製造法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1のCu−ポリイミド多層配線構造体の製造プロセスを示す説明図である。
【図2】実験例1における、銅とポリイミド前駆体との反応性を示すグラフである。
【図3】実験例2における、銅とポリイミド前駆体との反応性を示すグラフである。
【図4】比較実験例1における、銅とポリイミド前駆体との反応性を示すグラフである。
【図5】ポリイミド膜に溶出した銅の濃度分布のSIMSによる観測結果を示すグラフおよび観測対象の部分断面図である。
【図6】ポリイミド膜に溶出した銅の量のケイ光X線法による測定結果を示すグラフである。
【図7】実施例12において製造した多層配線構造体の部分断面図である。
【図8】従来技術の配線構造体の断面図である。
【図9】ポリイミドの膜厚と溶出したCuの濃度との関係を示すグラフである。
【図10】本発明の配線基板の構造例を示す断面図である。
【図11】本発明の多層配線基板の構造例を示す断面図である。
【図12】本発明の多層基板の構造例を示す断面図である。
【図13】実施例3における、銅とポリイミド前駆体との反応性を示すグラフである。
【図14】実施例13における多層配線構造体の製造プロセスを示す説明図である。
【符号の説明】
1…基板、2…配線、3…ヴィア配線、4…ポリイミド膜、11…セラミック基板、12…電極層、13…フォトレジスト、14…銅配線、14a…ヴィア配線、15…ポリイミド膜、16…第1の絶縁膜、17…第2の絶縁膜、22…タングステン配線、25…表面電極、26…保護膜、27…開口部、100…スルーホール部、101…絶縁層、102,103…配線層、104…ポリイミド層、105…ビアパッド、106…ビア、107…絶縁層、110…絶縁層、110a…第1の絶縁層、110b…第2の絶縁層、110c…第3の絶縁層、111…セラミック配線基板、112…薄膜多層配線基板、113,113a,113b,113c…ビア、114…整合層、115,115a,115b…ビアパッド、116,116a,116b…配線、117…第1のポリイミド膜、117a…第1の絶縁層の第1のポリイミド膜、117b…第2の絶縁層の第1のポリイミド膜、117c…第3の絶縁層の第1のポリイミド膜、118……第2のポリイミド膜、118a…第1の絶縁層の第2のポリイミド膜、118b…第2の絶縁層の第2のポリイミド膜、118c…第3の絶縁層の第2のポリイミド膜、119…導体配線、120…絶縁層、121…金属層、122…第1の絶縁層、123,127…表面電極、124…第2の絶縁層、125…はんだ、126…入出力ピン、131…絶縁層、132…第1のCr層、133…Cu層、134…第2のCr層、135…レジスト層、136…ビア形成部、137…ビア、138…感光性レジスト層、139…第1のポリイミド膜、140…第2のポリイミド膜。
Claims (14)
- 配線層と絶縁層とを有する配線構造体の製造法において、
少なくとも一部が銅からなる配線層を形成する工程と、
上記配線層上に、ポリイミド前駆体と塩基性化合物とを含む第1のポリイミド前駆体を含む第1のポリイミド前駆体組成物の層である第1のポリイミド前駆体層を形成する工程と、
上記第1のポリイミド前駆体層を加熱し、第1のポリイミド層を形成する第1のポリイミド層形成工程とを有する配線構造体の製造法。 - 請求項1または2において、
上記第1のポリイミド前駆体層を形成する工程は、
酸素濃度が0.5v/v%以下の雰囲気下で行なわれることを特徴とする配線構造体の製造法。 - 請求項1において、
上記第1のポリイミド層形成工程の後に、
上記第1のポリイミド層表面に、上記第1のポリイミドよりも熱膨張係数の小さい第2のポリイミドの前駆体を含む第2のポリイミド前駆体組成物の層である第2のポリイミド前駆体層を形成する工程と、
上記第2のポリイミド前駆体層を加熱し、第2のポリイミド層を形成する第2のポリイミド層形成工程とを有する配線構造体の製造法。 - 配線層と絶縁層とを有する配線構造体の製造法において、
少なくとも一部が銅からなる配線層を形成する工程と、
上記配線層上に、ポリイミド前駆体と塩基性化合物とを含む第1のポリイミド前駆体を含む第1のポリイミド前駆体組成物の層である第1のポリイミド前駆体層を形成する工程と、
上記第1のポリイミド前駆体層を加熱し、第1のポリイミド層を形成する第1のポリイミド層形成工程と、
上記第1のポリイミド層表面に、上記第1のポリイミドよりも熱膨張係数の小さい第2のポリイミドの前駆体を含む第2のポリイミド前駆体組成物の層である第2のポリイミド前駆体層を形成する工程と、
上記第2のポリイミド前駆体層を加熱し、第2のポリイミド層を形成する第2のポリイミド層形成工程とを有し、
上記第2のポリイミドは、
下記一般式(化5)で表される繰返し単位と、下記一般式(化6)で表される繰り返し単位とを有し、一般式(化5)で表わされる繰返し単位の数と一般式(化6)で表される繰り返し単位の数との合計を100としたときの、一般式(化5)で表される繰り返し単位の数は95未満であり、一般式(化6)で表される繰り返し単位の数は5以上であることを特徴とする配線構造体の製造法。
- 配線層と絶縁層とを有する配線構造体の製造法において、
少なくとも一部が銅からなる配線層を形成する工程と、
上記配線層上に、ポリイミド前駆体と塩基性化合物とを含む第1のポリイミド前駆体を含む第1のポリイミド前駆体組成物の層である第1のポリイミド前駆体層を形成する工程と、
上記第1のポリイミド前駆体層を加熱し、第1のポリイミド層を形成する第1のポリイミド層形成工程と、
上記第1のポリイミド層表面に、上記第1のポリイミドよりも熱膨張係数の小さい第2のポリイミドの前駆体を含む第2のポリイミド前駆体組成物の層である第2のポリイミド前駆体層を形成する工程と、
上記第2のポリイミド前駆体層を加熱し、第2のポリイミド層を形成する第2のポリイミド層形成工程とを有し、
上記第2のポリイミド前駆体は、
下記一般式(化10)で表される繰返し単位と、下記一般式(化11)で表される構造を繰り返し単位とを有し、一般式(化10)で表わされる繰返し単位の数と一般式(化11)で表される繰り返し単位の数との合計を100としたときの、一般式(化10)で表される繰り返し単位の数は85〜50であり、一般式(化11)で表される繰り返し単位の数は50〜15であることを特徴とする配線構造体の製造法。
- 配線層と絶縁層とを有する配線構造体の製造法において、
少なくとも一部が銅からなる配線層を形成する工程と、
上記配線層上に、ポリイミド前駆体と塩基性化合物とを含む第1のポリイミド前駆体を含む第1のポリイミド前駆体組成物の層である第1のポリイミド前駆体層を形成する工程とを有し、
上記第1のポリイミド前駆体層を形成する工程は、上記第1のポリイミド層の膜厚が、6.5μm以下になるような厚さに、上記第1のポリイミド前駆体層を形成する工程であることを特徴とする配線構造体の製造法。 - 請求項1において、
上記ポリイミド前駆体組成物は、上記ポリイミド前駆体のカルボキシル基1個に対して、1分子以上の上記塩基性化合物を含むことを特徴とする配線構造体の製造法。 - 請求項1において、
上記絶縁層は、上記配線層上に形成される第1の絶縁膜と、該第1の絶縁膜上に形成される第2の絶縁膜とを、少なくとも備え、
上記第1の絶縁膜は、上記第1のポリイミドからなり、
上記第2の絶縁膜は、上記第1のポリイミドより熱膨張係数の小さい第2のポリイミドからなることを特徴とする配線構造体の製造法。 - 配線層と絶縁層とを有する配線構造体の製造法において、
少なくとも一部が銅からなる配線層を形成する工程と、
上記配線層上に、ポリイミド前駆体と塩基性化合物とを含む第1のポリイミド前駆体を含む第1のポリイミド前駆体組成物の層である第1のポリイミド前駆体層を形成する工程とを有し、
上記の絶縁膜の厚さは、6.5μm以下であることを特徴とする配線構造体の製造法。 - 配線層と絶縁層とを有する配線構造体の製造法において、
少なくとも一部が銅からなる配線層を形成する工程と、
上記配線層上に、ポリイミド前駆体と塩基性化合物とを含む第1のポリイミド前駆体を含む第1のポリイミド前駆体組成物の層である第1のポリイミド前駆体層を形成する工程 とを有し、
上記絶縁層は、上記配線層上に形成される第1の絶縁膜と、該第1の絶縁膜上に形成される第2の絶縁膜とを、少なくとも備え、
上記第1の絶縁膜は、上記第1のポリイミドからなり、
上記第2の絶縁膜は、上記第1のポリイミドより熱膨張係数の小さい第2のポリイミドからなり、
上記第1の絶縁膜の厚さは、6.5μm以下であることを特徴とする配線構造体の製造法。 - 請求項9において、上記第2の絶縁膜の厚さは、上記第1の絶縁膜より厚いことを特徴とする配線構造体の製造法。
- 配線層と絶縁層とを有する配線構造体の製造法において、
少なくとも一部が銅からなる配線層を形成する工程と、
上記配線層上に、ポリイミド前駆体と塩基性化合物とを含む第1のポリイミド前駆体を含む第1のポリイミド前駆体組成物の層である第1のポリイミド前駆体層を形成する工程とを有し、
上記絶縁層は、上記配線層上に形成される第1の絶縁膜と、該第1の絶縁膜上に形成される第2の絶縁膜とを、少なくとも備え、
上記第1の絶縁膜は、上記第1のポリイミドからなり、
上記第2の絶縁膜は、上記第1のポリイミドより熱膨張係数の小さい第2のポリイミドからなり、
上記第2のポリイミドは、下記一般式(化5)で表される繰返し単位と、下記一般式(化6)で表される繰り返し単位とを有し、一分子中に含まれる、一般式(化5)で表わされる繰返し単位の数と一般式(化6)で表される繰り返し単位の数との合計を100としたときの、一般式(化5)で表される繰り返し単位の数は95未満であり、一般式(化6)で表される繰り返し単位の数は5以上であることを特徴とする配線構造体の製造法。
- 配線層と絶縁層とを有する配線構造体の製造法において、
少なくとも一部が銅からなる配線層を形成する工程と、
上記配線層上に、ポリイミド前駆体と塩基性化合物とを含む第1のポリイミド前駆体を含む第1のポリイミド前駆体組成物の層である第1のポリイミド前駆体層を形成する工程とを有し、
上記絶縁層は、上記配線層上に形成される第1の絶縁膜と、該第1の絶縁膜上に形成される第2の絶縁膜とを、少なくとも備え、
上記第1の絶縁膜は、上記第1のポリイミドからなり、
上記第2の絶縁膜は、上記第1のポリイミドより熱膨張係数の小さい第2のポリイミドからなり、
上記第2のポリイミドは、下記一般式(化10)で表される繰返し単位と、下記一般式(化11)で表される繰り返し単位とを有し、一分子中に含まれる、一般式(化10)で表わされる繰返し単位の数と一般式(化11)で表される繰り返し単位の数との合計を100としたときの、一般式(化10)で表される繰り返し単位の数が85〜50であり、一般式(化11)で表される繰り返し単位の数は50〜15であることを特徴とする配線構造体の製造法。
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