JP2004137588A - 特定骨格を有する四級アミン化合物及び有機硫黄化合物を添加剤として含む銅電解液並びにそれにより製造される電解銅箔 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】1分子中に1個以上のエポキシ基を有する化合物とアミン化合物とを付加反応させた後、窒素を四級化することにより得られる、下記一般式(1)で表される特定骨格を有する四級アミン化合物と、有機硫黄化合物を添加剤として含む銅電解液。
【化1】
(一般式(1)中、R1及びR2はヒドロキシアルキル基、エーテル基、芳香族基、芳香族置換アルキル基、不飽和炭化水素基、及びアルキル基からなる一群から選ばれるものであり、R3はベンジル基、アリル基、又はアルキル基を、Aはエポキシ化合物残基を、X1 −はCl−、Br−、又はCH3SO4 −を、nは1以上の整数を表す。)
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電解銅箔の製造に用いる銅電解液、特にファインパターン化が可能であり、常温及び高温における伸びと抗張力に優れた電解銅箔の製造に用いる銅電解液に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、電解銅箔を製造するには、表面を研磨した回転する金属製陰極ドラムと、該陰極ドラムのほぼ下半分の位置に配置した該陰極ドラムの周囲を囲む不溶性金属アノード(陽極)を使用し、前記陰極ドラムとアノードとの間に銅電解液を流動させるとともに、これらの間に電位を与えて陰極ドラム上に銅を電着させ、所定厚みになったところで該陰極ドラムから電着した銅を引き剥がして連続的に銅箔を製造する。
このようにして得た銅箔は一般的に生箔と言われているが、その後いくつかの表面処理を施してプリント配線板等に使用されている。
【0003】
従来の銅箔製造装置の概要を図4に示す。この電解銅箔装置は、電解液を収容する電解槽の中に、陰極ドラムが設置されている。この陰極ドラム1は電解液中に部分的(ほぼ下半分)に浸漬された状態で回転するようになっている。
この陰極ドラム1の外周下半分を取り囲むように、不溶性アノード(陽極)2が設けられている。この陰極ドラム1とアノード2の間は一定の間隙3があり、この間を電解液が流動するようになっている。図4の装置には2枚のアノード板が配置されている。
【0004】
この図4の装置では、下方から電解液が供給され、この電解液は陰極ドラム1とアノード2の間隙3を通り、アノード2の上縁から溢流し、さらにこの電解液は循環するように構成されている。陰極ドラム1とアノード2の間には整流器を介して、両者の間に所定の電圧が維持できるようになっている。
陰極ドラム1が回転するにつれ、電解液から電着した銅は厚みを増大し、ある厚み以上になったところで、この生箔4を剥離し、連続的に巻き取っていく。このようにして製造される生箔は、陰極ドラム1とアノード2の間の距離、供給される電解液の流速あるいは供給する電気量により厚みを調整することができる。
【0005】
このような電解銅箔製造装置によって製造される銅箔は、陰極ドラムと接触する面は鏡面となるが、反対側の面は凸凹のある粗面となる。通常の電解では、この粗面の凸凹が激しく、エッチング時にアンダーカットが発生し易く、ファインパターン化が困難であるという問題を有している。
【0006】
一方、最近ではプリント配線板の高密度化に伴い、回路幅の狭小化、多層化に伴いファインパターン化が可能である銅箔が要求されるようになってきた。このファインパターン化のためには、エッチング速度と均一溶解性を持つ銅箔、すなわちエッチング特性に優れた銅箔が必要である。
【0007】
他方、プリント配線板用銅箔に求められる性能は、常温における伸びだけでなく、熱応力によるクラック防止のための高温伸び特性、さらにはプリント配線板の寸法安定性のために高い引張り強さが求められている。ところが、上記のような粗面の凸凹が激しい銅箔は、上記のようにファインパターン化には全く適合しないという問題を有している。このようなことから粗面のロープロファイル化が検討されている。
【0008】
一般に、このロープロファイル化のためには、膠やチオ尿素を電解液に多量添加することによって達成できることが知られている。
しかし、このような添加剤は、常温及び高温における伸び率が急激に低下し、プリント配線板用銅箔としての性能を大きく低下させてしまうという問題を有している。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、陰極ドラムを用いた電解銅箔製造における粗面側(光沢面の反対側)の表面粗さの小さいロープロファイル電解銅箔を得ること、特にファインパターン化が可能であり、さらに常温及び高温における伸びと抗張力に優れた電解銅箔を得ることを課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、ロープロファイル化が可能である最適な添加剤を電解液に添加することにより、ファインパターン化が可能であり、常温及び高温における伸び抗張力に優れた電解銅箔を得ることができるとの知見を得た。
【0011】
本発明者らはこの知見に基づいて、陰極ドラムとアノードとの間に銅電解液を流して陰極ドラム上に銅を電着させ、電着した銅箔を該陰極ドラムから剥離して連続的に銅箔を製造する電解銅箔製造方法において、特定骨格を有する四級アミン化合物と有機硫黄化合物を含有する銅電解液を用いて電解することにより、ファインパターン化が可能であり、常温及び高温における伸びと抗張力に優れた電解銅箔を得ることができることを見いだし本発明に至った。
【0012】
すなわち、本発明は以下の構成よりなる。
[1]1分子中に1個以上のエポキシ基を有する化合物とアミン化合物とを付加反応させた後、窒素を四級化することにより得られる、下記一般式(1)で表される特定骨格を有する四級アミン化合物と、有機硫黄化合物を添加剤として含む銅電解液。
【0013】
【化11】
(一般式(1)中、R1及びR2はヒドロキシアルキル基、エーテル基、芳香族基、芳香族置換アルキル基、不飽和炭化水素基、及びアルキル基からなる一群から選ばれるものであり、R3はベンジル基、アリル基、又はアルキル基を、Aはエポキシ化合物残基を、X1 −はCl−、Br−、又はCH3SO4 −を、nは1以上の整数を表す。)
【0014】
[2]前記特定骨格を有する四級アミン化合物のエポキシ化合物残基Aが、線状エ−テル結合を有することを特徴とする[1]記載の銅電解液。
【0015】
[3]前記特定骨格を有する四級アミン化合物が下記一般式(2)〜(9)いずれかであることを特徴とする前記[1]又は[2]記載の銅電解液。
【0016】
【化12】
【0017】
【化13】
【0018】
【化14】
【0019】
【化15】
【0020】
【化16】
【0021】
【化17】
【0022】
【化18】
【0023】
【化19】
(一般式(2)〜(9)中、R1及びR2はヒドロキシアルキル基、エーテル基、芳香族基、芳香族置換アルキル基、不飽和炭化水素基、及びアルキル基からなる一群から選ばれるものであり、R3はベンジル基、アリル基、又は炭素数1〜5のアルキル基を、X1 −はCl−、Br−、又はCH3SO4 −を表す。)
【0024】
[4]前記有機硫黄化合物が下記一般式(10)又は(11)で表される化合物であることを特徴とする請求項1記載の銅電解液。
X−R1−(S)n−R2−YO3Z1 (10)
R4−S−R3−SO3Z2 (11)
(一般式(10)及び(11)中、R1、R2、及びR3は炭素数1〜8のアルキレン基であり、R4は、水素、
【化20】
からなる一群から選ばれるものであり、Xは水素、スルホン酸基、ホスホン酸基、スルホン酸又はホスホン酸のアルカリ金属塩基又はアンモニウム塩基からなる一群から選ばれるものであり、Yは硫黄又は燐のいずれかであり、Z1及びZ2は水素、ナトリウム、カリウムのいずれかであり、nは2又は3である。)
【0025】
[5]前記[1]〜[4]のいずれかに記載の銅電解液を用いて製造される電解銅箔。
[6]前記[5]記載の電解銅箔を用いてなる銅張積層板。
【0026】
本発明においては、電解液中に、1分子中に1個以上のエポキシ基を有する化合物とアミン化合物とを付加反応させた後、窒素を四級化することにより得られる上記一般式(1)で表される特定骨格を有する四級アミン化合物と、有機硫黄化合物を含むことが重要である。どちらか一方のみの添加では、本発明の目的は達成できない。
【0027】
特定骨格を有する四級アミン化合物(1)は、下記反応式で表される付加反応により特定骨格を有するアミン化合物を合成した後、窒素を四級化することにより得られる。すなわち、1分子中に1個以上のエポキシ基を有する化合物とアミン化合物を混合し、50〜150℃で30分〜6時間程度反応させることにより特定骨格を有するアミン化合物を合成し、次に、四級化剤を添加し、50〜150℃で30分〜6時間程度反応させ、窒素を四級化することにより製造することができる。
【0028】
【化21】
(上記式中、R1及びR2はヒドロキシアルキル基、エーテル基、芳香族基、芳香族置換アルキル基、不飽和炭化水素基、及びアルキル基からなる一群から選ばれるものであり、Aはエポキシ化合物残基を、nは1以上の整数を表す。)
【0029】
特定骨格を有するアミン化合物構造中のR1及びR2の具体的な例としては、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシイソプロピル基(以上ヒドロキシアルキル基)、2−エトキシエチル基、2−プロポキシエチル基(以上エーテル基)、フェニル基、ナフチル基(以上芳香族基)、トリル基、キシリル基、クメニル基、1−フェニルエチル基(以上芳香族置換アルキル基)、アリル基、1−プロペニル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、2−メチルアリル基(以上不飽和炭化水素基)、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基(以上アルキル基)を挙げることができるが、水溶性の観点からは炭素数のあまり大きい置換基は好ましくなく、置換基1つあたりの炭素数としては8以下が好ましい。
【0030】
窒素を四級化するときに用いる四級化剤としては、ハロゲン化アルキル、ベンジルクロライド、ジメチル硫酸、臭化アリル等が挙げられ、一般式(1)におけるR3及びX1 −は、この四級化剤により決定される。
R3におけるアルキル基としては、炭素数1〜8のアルキル基が好ましい。より好ましくは炭素数1〜5のアルキル基である。
【0031】
特定骨格を有する四級アミン化合物としては、エポキシ化合物残基Aに線状エーテル結合を有する化合物が好ましく、エポキシ化合物残基Aが線状エーテル結合を有する前記四級アミン化合物しては、下記一般式(2)〜(9)で表される化合物が好ましい。これらの化合物は、原料の1分子中に1個以上のエポキシ基を有する化合物として、多価アルコールのポリグリシジルエーテル、例えば、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル等を用いることにより得られる。また、下記(2)〜(9)の化合物は、例えば一般式(6)と(7)のように、製造上混合物として得られる場合は単離する必要はなく、混合物のまま用いることができる。一般式(2)〜(9)におけるエポキシ化合物残基Aは以下のとおりである。
【0032】
【化22】
【0033】
【化23】
【0034】
【化24】
【0035】
【化25】
【0036】
【化26】
【0037】
【化27】
【0038】
【化28】
【0039】
【化29】
(一般式(2)〜(9)中、R1及びR2はヒドロキシアルキル基、エーテル基、芳香族基、芳香族置換アルキル基、不飽和炭化水素基、及びアルキル基からなる一群から選ばれるものであり、R3はベンジル基、アリル基、又は炭素数1〜5のアルキル基を、Aはエポキシ化合物残基を、X1 −はCl−、Br−、又はCH3SO4 −を表す。)
【0040】
また、有機硫黄化合物は上記一般式(10)又は(11)の構造式を持つ化合物であることが好ましい。
上記一般式(10)で表される有機硫黄化合物としては、例えば以下のものが挙げられ、好ましく用いられる。
HO3P−(CH2)3−S−S−(CH2)3−PO3H
HO3S−(CH2)4−S−S−(CH2)4−SO3H
NaO3S−(CH2)3−S−S−(CH2)3−SO3Na
HO3S−(CH2)2−S−S−(CH2)2−SO3H
CH3−S−S−CH2−SO3H
NaO3S−(CH2)3−S−S−S−(CH2)3−SO3Na
(CH3)2CH−S−S−(CH2)2−SO3H
【0041】
また、上記一般式(11)で表される有機硫黄化合物としては例えば以下のものが挙げられ、好ましく用いられる。
【化30】
【0042】
銅電解液中の四級アミン化合物と有機硫黄化合物の比は重量比で1:5〜5:1が好ましく、さらに好ましくは1:2〜2:1である。四級アミン化合物の銅電解液中の濃度は1〜50ppmが好ましい。
銅電解液中には、上記特定骨格を有する四級アミン化合物及び有機硫黄化合物の他に、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリエーテル化合物、ポリエチレンイミン、フェナジン染料、膠、セルロース等の公知の添加剤を添加してもよい。
【0043】
また、本発明の電解銅箔を積層して得られる銅張積層板は、常温及び高温における伸びと抗張力に優れた銅張積層板となる。
【0044】
【発明の実施の形態】
以下に実施例を示し、本発明をさらに詳細に説明する。
特定骨格を有する四級アミン化合物の合成例
下記化学式で表されるエポキシ化合物(ナガセ化成工業(株)製デナコールEX−521)10.0g(エポキシ基0.0544mol)とジメチルアミン40%水溶液61.2g(0.544mol)を三口フラスコに投入し、ドライアイス−メタノールを冷却媒体とする冷却管を使用して、60℃で3時間反応を行った。その後、冷却管を取り外し、窒素ガスを吹き込み過剰のジメチルアミンを除去した。その後、ベンジルクロライド6.88g(0.0544mol)を添加し、100℃で3時間反応を行い四級化した。
【0045】
【化31】
【0046】
反応により得られた化合物は、FT−IR、1H−NMR、13C−NMRにより同定した。得られた化合物のFT−IR、1H−NMR、13C−NMRスペクトルを図1〜3に示す。得られた化合物は下記化学式で表される四級アミン化合物であった。
【0047】
【化32】
【0048】
次に、アミン化合物を合成する際に用いたジメチルアミンを、ジベンジルアミン、ビス(2−エトキシエチル)アミン、ジエタノールアミン、ジフェニルアミン、ジアリルアミンにそれぞれ変えた以外は上記四級アミンの製造と同様にして四級アミン化合物を得た。
【0049】
実施例1〜12及び比較例1〜9
図1に示すような電解銅箔製造装置を使用して35μmの電解銅箔を製造した。電解液組成は次の通りであり、添加剤の添加量は表1記載の通りである。
Cu: 90g/L
H2SO4:80g/L
Cl: 60ppm
液温: 55〜57℃
添加剤A:ビス(3−スルフォプロピル)ジスルファイド2ナトリウム
(RASCHIG社製 SPS)
添加剤B:3−メルカプト−1−プロパンスルフォン酸ナトリウム塩
(RASCHIG社製 MPS)
添加剤C:上記合成例で得られた特定構造を有する四級アミン化合物
C1:ジベンジルアミンベンジルクロライド変性物
C2:ビス(2−エトキシエチル)アミンベンジルクロライド変性物
C3:ジエタノールアミンベンジルクロライド変性物
C4:ジフェニルアミンベンジルクロライド変性物
C5:ジアリルアミンベンジルクロライド変性物
C6:ジメチルアミンベンジルクロライド変性物
得られた電解銅箔の表面粗さRz(μm)をJIS B 0601に準じて、常温伸び(%)、常温抗張力(kgf/mm2)、高温伸び(%)、高温抗張力(kgf/mm2)をIPC−TM650に準じて測定した。結果を表1に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
上記表1に示す通り、本発明の添加剤(特定構造を有する四級アミン化合物及び有機硫黄化合物)を添加した実施例1〜12については表面粗さRzが0.94〜1.23μmの範囲にあり、常温伸び6.72〜9.20%、常温抗張力30.5〜37.2kgf/mm2、高温伸び11.9〜18.2%、高温抗張力19.9〜23.4kgf/mm2となった。このように著しいロープロファイル化が達成できているにも関わらず、常温伸び、常温抗張力、高温伸び、高温抗張力がいずれも添加剤を添加しない比較例1と同等の優れた特性を示している。これらに対し、無添加の比較例1及び一方のみを添加した比較例2〜9ではロープロファイル化は達成できていない。また、一方のみを添加した場合には、常温伸び、常温抗張力、高温伸び、高温抗張力がかえって悪い結果となった。
【0052】
【発明の効果】
以上から、本発明の特定構造を有する四級アミン化合物及び有機硫黄化合物を添加した銅電解液は、得られる電解銅箔の粗面のロープロファイル化に極めて有効であり、また常温における伸びだけでなく高温伸び特性を有効に維持でき、さらには高い引張り強さも同様に得られるという優れた特性を得ることができる。また、上記共添加は重要であり、これによって初めて、上記の特性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】特定構造を有する四級アミン化合物の合成例で得られた化合物のFT−IRスペストルである。
【図2】特定構造を有する四級アミン化合物の合成例で得られた化合物の1H−NMRスペクトルである。
【図3】特定構造を有する四級アミン化合物の合成例で得られた化合物の13C−NMRスペクトルである。
【図4】電解銅箔製造装置の一例を示す図である。
【符号の説明】
1 陰極ドラム
2 アノード
3 間隙
4 生箔
Claims (6)
- 前記特定骨格を有する四級アミン化合物のエポキシ化合物残基Aが、線状エ−テル結合を有することを特徴とする請求項1記載の銅電解液。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の銅電解液を用いて製造される電解銅箔。
- 請求項5記載の電解銅箔を用いてなる銅張積層板。
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