JP2004130715A - インクジェット記録ヘッドの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ノズルプレート基材200の片面に撥インク処理を施す第1の工程、前記ノズルプレート基材200の撥インク処理面200Aに保護シート201を、撥インク処理されていない側の面に剥離シート202付きのシート状接着剤203の貼り付けを行う第2の工程、前記ノズルプレート基材200にレーザーを用いてノズル孔加工を行うことによりノズルプレート2を作製する第3の工程、前記剥離シート202を剥離する第4の工程、前記ノズルプレート2をシート状接着剤203を介してインク流路部材11に接着する第5の工程を有することを特徴とするインクジェット記録ヘッドの製造方法。
【選択図】 図6
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数に区切られた多数のインクチャネル内のインクをノズルプレートに形成されたノズル孔から吐出させるようにした例えばマルチチャネル型のインクジェット記録ヘッドの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
複数に区切られた多数のインクチャネル内のインクをノズルプレートに形成されたノズル孔から吐出させるようにしたマルチチャネル型インクジェット記録ヘッドは、多数のインクチャネルを形成したインク流路部材の前端面に、各インクチャネルに対応するように多数のノズル孔が形成されたノズルプレートを接合することにより製造される。
【0003】
特許文献1には、シート状のノズルプレートに対して、撥インク処理、保護部材形成、ノズル孔加工を施した後にインク流路部材であるアクチュエータ基板に貼り付けることで、撥インク処理が施されている部分を保護部材によって傷付けないようにする技術が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開平07−156410号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、このようなノズルプレートを用いたインクジェット記録ヘッドの製造方法では、ノズルプレートのアクチュエータ基板のようなインク流路部材に貼り付ける側の面は保護部材がなく、工程中に汚れたり、傷ついたりする問題がある。特にノズル孔をレーザー加工することにより形成する場合は、その加工時に発生したススが付着することによる汚れは大きな問題となり、接着剤でインク流路部材に接着する際の接着力の低下を招く可能性がある。
【0006】
また、ノズルプレートをアクチュエータ基板のようなインク流路部材に接着する際に、接着剤のはみ出しによりノズル孔が詰まることがあり、これも大きな問題となる。
【0007】
本発明は、これらの問題を解決するもので、各工程作業時にノズルプレートのインク流路部材に貼り付ける側の面の表面の傷付き、汚れ、接着の際の接着剤のはみ出しを防止することのできるインクジェット記録ヘッドの製造方法を提供することを課題としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題は、以下の各発明によって解決される。
【0009】
即ち、請求項1記載の発明は、ノズルプレート基材の片面に撥インク処理を施す第1の工程、前記ノズルプレート基材の撥インク処理面に保護シートを、撥インク処理されていない側の面に剥離シート付きのシート状接着剤の貼り付けを行う第2の工程、前記ノズルプレート基材にレーザーを用いてノズル孔加工を行うことによりノズルプレートを作製する第3の工程、前記剥離シートを剥離する第4の工程、前記ノズルプレートをシート状接着剤を介してインク流路部材に接着する第5の工程を有することを特徴とするインクジェット記録ヘッドの製造方法である。
【0010】
請求項1記載の発明によれば、ノズルプレート基材の両面に保護シート及び剥離シート付きシート状接着剤を貼り付けた状態で以降の各工程を行うことにより、各工程作業時にノズルプレート基材表面の傷付きや汚れを防止することができる。また、ノズル孔をレーザー加工する際に不完全燃焼により発生したススがノズルプレート基材表面に付着して汚染するおそれがなくなる。また、シート状接着剤を使うことで、インク流路部材に貼り付ける際の接着剤のはみ出しを抑え、ノズル孔の詰まりを防止することができる。更に、保護シートによりノズル孔を精度良く開けることができる。
【0011】
請求項2記載の発明は、前記保護シートを剥離する第6の工程を有することを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録ヘッドの製造方法である。
【0012】
請求項2記載の発明によれば、保護シートを剥がす手間なくインクを射出することができるインクジェット記録ヘッドを得ることができる。
【0013】
請求項3記載の発明は、前記保護シートは、ノズルプレート基材に貼り付けられた状態でノズルプレート基材からはみ出たタグ部を有することを特徴とする請求項1又は2記載のインクジェット記録ヘッドの製造方法である。
【0014】
請求項3記載の発明によれば、タグ部を保持して作業ができるので、インク流路部材に接着する際に、タグ部を保持し、張力を与えて接着すれば、しわの発生が無く精度良く接着できる。また、剥離するときもタグ部を保持して容易に剥離できる。
【0015】
請求項4記載の発明は、前記保護シートは、加熱によって粘着力が低下する粘着剤付きシートであることを特徴とする請求項1、2又は3記載のインクジェット記録ヘッドの製造方法である。
【0016】
請求項4記載の発明によれば、加熱により粘着力が低下する粘着剤のついた保護シートを用いることで、シート状接着剤でノズルプレート基材をインク流路部材に貼り付けた後の加熱硬化時の熱で、粘着力が低下し剥離し易くなり、作業性が向上すると共に、剥離の際の粘着剤残り、撥インク膜の剥がれを防止できる。
【0017】
請求項5記載の発明は、前記第3の工程は、ノズル孔加工の際に、前記剥離シート側から行い、且つ前記保護シートを貫通しないようにすることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のインクジェット記録ヘッドの製造方法である。
【0018】
請求項5記載の発明によれば、ノズルプレート基材のノズル孔加工の際に、保護シートを貫通しないようにすることで、ノズル孔加工後の各工程などで、保護シート側からのノズル孔内へのゴミの進入を防止することができる。
【0019】
請求項6記載の発明は、前記ノズルプレート基材の材料は複数枚のノズルプレートを作製可能な大きさを有し、前記第2工程と第3工程の間に、剥離シートを貫通させずに、保護シート、ノズルプレート基材及びシート状接着剤を貫通させてノズルプレート個々の大きさに切断するレーザー切断工程を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のインクジェット記録ヘッドの製造方法である。
【0020】
請求項6記載の発明によれば、複数枚のノズルプレートを作製可能なノズルプレート基材を用いて、一括して撥インク処理、保護シート貼り付け、接着剤シート貼り付け、ノズル孔のレーザー穿孔を行うので、作業効率が良い。特に、レーザー穿孔時の位置合わせを、ノズルプレート個々に行わなくて済むので作業効率が良い。また、剥離シートを残して切断することで、ノズル孔のレーザー穿孔前に切断作業ができるので、切断時のノズル孔の汚れを防止できる。更に、インク流路部材に貼り付ける際は、剥離シートを剥がせば、簡単に複数枚のノズルプレートに分離できる。
【0021】
請求項7記載の発明は、前記ノズルプレート基材は、紫外線によってアブレーション可能な材料からなると共に、前記レーザーは、紫外線レーザーであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のインクジェット記録ヘッドの製造方法である。
【0022】
請求項7記載の発明によれば、アブレーション可能なノズルプレート基材に対して紫外線レーザーで加工することにより、形状の整った孔を開けたり、切断することが可能になる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。
【0024】
本発明の製造方法に係るインクジェット記録ヘッドは、インクチャネル内のインクを該インクチャネルの一端に形成されたノズル孔からインク滴として吐出するように構成されたものであれば、インクを吐出するエネルギーを発生するための構造はどのようなタイプでもよいが、ここではインクチャネルを構成する側壁が分極された圧電性材料により形成され、この側壁に電界を印加することにより側壁をせん断変形させてインクチャネル内のインクを吐出する、いわゆるシェヤーモードタイプの記録ヘッドを例に挙げて説明する。
【0025】
図1は、完成されたマルチチャネル型インクジェットヘッドの構造の一例を示す一部破断斜視図である。
【0026】
同図において、1はヘッドチップ、2はノズルプレート、3はバックプレート、4はインクマニホールドである。
【0027】
同図に示すヘッドチップ1は、アクチュエータ基板11と、該アクチュエータ基板11の上面に接合されたカバー基板12とにより構成されている。
【0028】
アクチュエータ基板11は、電界を印加することにより変形を生じる2枚の圧電材料基板11a、11bを、分極方向を互いに反対に向けてエポキシ系接着剤等を用いて上下に接合されてなり、それら2枚の圧電材料基板11a、11bに亘って円盤状の砥石(ダイシングブレード)等の公知の研削機を用いて所定ピッチで互いに平行な複数列の溝が加工されることにより、チャネル13と隔壁14とが交互に形成されている。なお、本発明のインク流路部材は、本実施形態におけるアクチュエータ基板11に相当する。
【0029】
各隔壁14の壁面には該隔壁14に電界を印加するための金属電極(図示せず)が形成されている。この金属電極の形成方法としては、蒸着法、スパッタ法、めっき法等の公知の手段を用いることができる。図示する態様では、隔壁14は分極方向の異なる2枚の圧電材料基板11a、11bからなるため、各金属電極は、それら両圧電材料基板11a、11bを駆動させるべく、少なくとも各隔壁14を構成している圧電材料基板11a及び11bに亘る側面の全面に形成されている。
【0030】
カバー基板12は、アクチュエータ基板11のチャネル13が形成されている上面にエポキシ系接着剤等を用いて接合される。このカバー基板12には、アクチュエータ基板11に用いられているものと同じ圧電材料基板を脱分極して使用すると、貼り合せた時にソリ、変形、熱膨張係数の差による剥離等が起こらないために好ましい。
【0031】
ヘッドチップ1の前端面には、ヘッドチップ1の複数のチャネル13に対応するように形成されたインク吐出用のノズル孔21を有するノズルプレート2が、また、ヘッドチップ1の後端面には、インク導入孔31を有するバックプレート3を介してチャネル13内にインクを供給するインクマニホールド4が接着剤を用いてそれぞれ接合されている。
【0032】
次に、本発明の特徴である上記ノズルプレート2にノズル孔21を加工し、インク流路部材であるアクチュエータ基板11と接着する各製造工程について図2〜図8を用いて更に説明する。
【0033】
第1の工程
第1の工程は、ノズルプレート基材の片面に撥インク処理を施す工程である。
【0034】
図2に示すノズルプレート基材200は、複数枚のノズルプレートを作製可能な大きさを有するシート状の基材であり、ここでは3枚(図2において点線で示す)のノズルプレートを作製可能な大きさの基材を用いたものとして説明する。
【0035】
このノズルプレート基材200の材料としては、樹脂シートを用いることができ、例えば、ポリカーボネート、ポリサルフォン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリベンスイミダゾール、ポリアセタール、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリフェニレンオキサイド、フェノール樹脂、アクリル樹脂等の樹脂シートを好ましく用いることができる。
【0036】
また、ノズルプレート基材200はシート状に形成されるため、その厚さは、例えば50〜130μmの範囲が好ましい。
【0037】
ノズルプレート基材200の片面(図2では上面)は、撥インク処理されて撥インク処理面200Aが形成される。かかる撥インク処理に用いられる撥インク性のコーティングには、PTFE、FEP、PFA、パーフルオロシクロポリマー等のフッ素樹脂を好ましく用いることができる。撥インク処理の方法は特に問わない。
【0038】
第2の工程
第2の工程は、ノズルプレート基材の撥インク処理面に保護シートを、撥インク処理されていない側の面に剥離シート付きのシート状接着剤の貼り付けを行う工程である。
【0039】
図3に示すように、撥インク処理されたノズルプレート基材200に、撥インク処理面200Aの面から粘着剤201Aを介して保護シート201を貼付けると共に、撥インク処理面200Aの反対側の面から、予め剥離シート202が付いたシート状接着剤203を貼り付ける。なお、保護シート201と、剥離シート202付きのシート状接着剤203の貼り付け順序は問わない。
【0040】
保護シート201及び剥離シート202は、ノズルプレート基材200より面積が大きく、ノズルプレート基材200に貼り付けられた状態で、ノズルプレート基材200からはみ出るタグ部201a及び202aをそれぞれ有していることが好ましい。
【0041】
タグ部201a及び202aを有していると、その後の各工程でこのタグ部201a及び202aを保持して作業ができるので、ノズルプレート基材200の汚れを低減できる。また、剥離シート202を剥離する際や最後に保護シート201を剥離する際も、タグ部202aや201aを保持することで容易に剥離することができる。特に保護シート201のタグ部201aは、後工程においてインク流路部材に接着する際に、このタグ部201aをつかんで張力を与えながら接着すれば、しわの発生のない精度の良い接着ができる点で特に重要である。
【0042】
このタグ部201a及び202aは、図3の点線で区画される各ノズルプレートの長さ方向両端部にそれぞれ配置されるように、ノズルプレート基材200の図示左右両端部にそれぞれ形成されることが更に好ましい。
【0043】
保護シート201には樹脂シートが用いられ、具体的には上記ノズルプレート基材200と同一の樹脂シートを用いることが好ましい。厚さは20〜80μmの範囲が好ましい。また、保護シート201に設けられた粘着剤201Aとしては、ゴム系粘着剤が好ましく用いられる。
【0044】
また、この保護シート201は、作業性を良好にするため、予め粘着剤201Aが付与された粘着剤付きシートであってもよい。
【0045】
この粘着剤201Aは、加熱によって粘着力が低下する粘着剤であることが好ましい。後工程において保護シート201を剥離する際、加熱することにより、剥離の際の粘着剤の残りや、ノズルプレート表面の撥インク処理面200Aの撥インク膜の剥がれを防止することができる。なお、加熱によって粘着力が低下する粘着剤付きシートとしては、日東電工社製の「リバアルファ」等が挙げられる。
【0046】
一方、ノズルプレート基材200の撥インク処理面200Aの反対側の面に設けるシート状接着剤203は、剥離シート202の片面に、例えば加熱反応型(熱硬化型)の接着剤を、液状ではなくシート状(薄膜状)に塗布したものである。この接着剤がシート状接着剤203の本体となっている。上記シート状接着剤203を使用するには、一方の部材Aの被接合面に上記本体側の面を貼り付け、剥離シート202を除去することにより、上記接着剤本体を上記被接合面にフィルム状に転写塗布した形態とした後、他方の部材Bを部材A上の接着剤本体に重ね合わせ、次いで部材AとBを熱圧着により接合する。本発明では、この部材Aがノズルプレート2に、部材Bがインク流路部材(アクチュエータ基板11)に該当する。
【0047】
このシート状接着剤203に使用される接着剤としては、熱硬化型接着剤、代表的にはエポキシ系接着剤を用いることができる。このように熱硬化型接着剤を用いた場合、後工程での取り扱い性に優れると共に、上記したように、保護シート201の粘着剤201Aに加熱によって粘着力が低下する粘着剤を用いた場合の効果を生かすことができるために好ましい。即ち、作製されたノズルプレート2を熱硬化型接着剤によってインク流路部材に貼り付けた場合、その接着剤を加熱硬化する時の熱によって保護シート201の粘着剤201Aの粘着力が低下するため、保護シート201を剥離し易くなり、保護シート201を剥離するために格別に加熱工程を設ける必要がなくなり、作業性が向上する効果がある。
【0048】
市販されているシート状接着剤としては、例えば(株)スリーボンド社製のフレキシブルプリント基板用加熱反応型フィルム状接着剤「スリーボンド1650」が挙げられる。これは剥離シートの片面に、エポキシ系接着剤を塗布したものである。
【0049】
上記シート状接着剤203及び剥離シート202の厚みは100μm以下が好ましい。これよりも厚すぎると後工程での切断加工や孔加工にかかる時間が長くなるため好ましくない。
【0050】
本実施形態に示すように、ノズルプレート基材200が複数枚のノズルプレートを作製可能な大きさを有する場合は、本工程と次で説明するノズル孔加工を行う第3の工程との間に、剥離シート202を残して、ノズルプレート基材200、保護シート201、シート状接着剤203を貫通させることにより、ノズルプレート基材200をノズルプレート個々に分離するためのレーザー切断工程を有することが好ましい。
【0051】
図4は、図3における(IV)方向から見たレーザー切断工程を説明する説明図である。このレーザー切断工程は、保護シート201の側からレーザー光を照射することで、ノズルプレート基材200を複数枚のノズルプレートとなるように切断加工する。本実施形態では、図2及び図3の点線で示すように、3枚のノズルプレートを作製可能としているため、この点線に沿ってレーザー光を照射することにより切断加工を行う。
【0052】
このときのレーザー光は、図4に示すように、保護シート201、粘着剤201A、ノズルプレート基材200及びシート状接着剤203を貫通し、剥離シート202にまで達するが、この剥離シート202を貫通しないように切断部300を形成することにより加工を行う。切断部300は、この剥離シート202を切断しないことが好ましく、これにより剥離シート202を介して複数枚のノズルプレートがつながった状態で、この後の孔加工を一括して行うことができるようになる。このことにより、レーザー加工時の位置合わせ作業や、ノズルプレートの取り付け作業を複数枚のノズルプレート毎に行う必要がなくなり、作業効率が向上する効果がある。また、ノズルプレート個々に切断する切断加工後に後述するノズル孔の孔開け加工を行うようにしているため、この切断加工時にノズル孔が汚れるのを防止することができる。
【0053】
なお、本発明において加工時に使用されるレーザーは紫外線レーザーが好ましい。これは、ノズルプレー基材200や保護シート201の材料として紫外線によってアブレーション可能な材料、具体的には、上記したポリカーカーボネート、ポリサルフォン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリベンスイミダゾール、ポリアセタール、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリフェニレンオキサイド、フェノール樹脂、アクリル樹脂等のように紫外線により励起され易い性質を有する材料を使用している場合、これら材料は、紫外線レーザーによる光化学反応により照射された部分の構成分子が励起状態(高エネルギー状態)になって不安定になるのに伴い、励起エネルギーを発散して安定化するために分子間の結合を切って飛散する力によりエッチングされる材料であるため、紫外線レーザーを用いて加工することにより、形状の整った切断をすることが可能になるためである。
【0054】
特にノズルプレート基材200が上記の通り紫外線によってアブレーション可能な材料からなり、これを紫外線レーザーで加工すると、次工程において説明するノズル孔加工の際に、形状の整った孔を開けることが可能となるために好ましい態様である。これはノズル孔毎の形状のばらつきをなくし、均質で精度良くノズル孔を形成する上で重要である。
【0055】
紫外線レーザーとしてはエキシマレーザーが好適である。
【0056】
第3の工程
第3の工程は、ノズルプレート基材にレーザーでノズル孔加工を行うことによりノズルプレートを作製する工程である。
【0057】
図5は、図3における(V)方向から見たノズル孔加工工程を説明する説明図である。図5に示すように、保護シート201と反対側の剥離シート202の側からレーザー光を照射してノズル孔21とするためのノズル孔加工を行う。図中の符号400はノズル孔加工により形成された孔である。本実施形態では1枚のノズルプレート毎に5個の孔400を形成している。この孔400を加工形成することによりノズルプレート基材200に形成された部分がノズル孔21となり、これによりノズル孔21を有するノズルプレート2となる。
【0058】
本実施形態に示すように、ノズルプレート基材200が複数枚のノズルプレートを作製可能な大きさを有する場合には、このノズル孔加工は、上記レーザー切断工程によって切断されたノズルプレート個々に対して行う。
【0059】
このノズル孔加工は、図5に示すように、剥離シート202からシート状接着剤203、ノズルプレート基材200、粘着剤201Aを貫通し、保護シート201にまで達するが、この保護シート201を貫通しないように加工を行うことが好ましい。このように保護シート201を貫通しないようにすることで、その後の各工程において保護シート201側からのノズル孔内へのゴミの進入を防止することができるようになる。
【0060】
また、ノズルプレート基材200の両面にはそれぞれ保護シート201、剥離シート202が設けられ、該ノズルプレート基材200の表面がこれら保護シート201及び剥離シート202により覆われているため、レーザー光を照射して切断加工やノズル孔加工の時に不完全燃焼により発生するススがノズルプレート基材200の表面に付着して汚れるのを防止することができる。
【0061】
更に、ノズル孔21を形成するための孔400は、このようにレーザー光を照射することで、剥離シート202、シート状接着剤203、ノズルプレート基材200、粘着剤201Aを貫通して保護シート201にまで達するように加工されるが、この孔400においてノズルプレート基材200に形成されるノズル孔21となる部分の奥側端部(ノズルプレート基材200における撥インク処理面200A側の端部)21aは粘着剤201Aにより保持された状態で加工されるため、この奥側端部21aが確実に切断された状態になり、ノズル孔21を高精度に加工することが可能である。
【0062】
また、ノズル孔21は、その入口側(チャネル13内側)の孔径が出口側(ノズルプレート表面側)の孔径よりも大きくなるようなテーパー構造となることが望ましいが、本実施形態のようにノズル孔21の入口側となる剥離シート202の側からレーザー光を照射してノズル孔21を加工することにより、このようなテーパー構造を容易に得ることが可能である。
【0063】
第4の工程
第4の工程は、剥離シート202を剥離する工程である。
【0064】
本実施形態に示すように、1枚のノズルプレート基材200から複数枚のノズルプレートを作製するものでは、前記レーザー切断工程において、既に剥離シート202以外は切断部300によって切断されているため、この剥離シート202を剥離することで、図6に示すように、1枚のノズルプレート2の大きさの積層シートに容易に分離され、これが複数枚(本実施形態では3枚)得られることになる。このとき、剥離シート202のタグ部202aを保持するようにすれば、剥離シート202を簡単に剥離することができる。
【0065】
第5の工程
第5の工程は、以上のようにして作製されたノズルプレート2をシート状接着剤203を介してインク流路部材であるアクチュエータ基板11に接着する工程である。
【0066】
大判のノズルプレート基材200から切断加工された1枚のノズルプレート2は、図7に示すように、保護シート201が貼り付けられた状態で、チャネル13が形成されたアクチュエータ基板11に、シート状接着剤203を介して接着する。このとき、ノズル孔加工により形成されたノズル孔21となる各孔400は、それぞれチャネル13に対応するように位置合わせされて接着される。
【0067】
なお、本実施形態では、図7に示すように、アクチュエータ基板11にカバー基板12が接合されており、ノズルプレート2は、このカバー基板12が接合されたアクチュエータ基板11の前端面に接着される。
【0068】
アクチュエータ基板11の前端面にシート状接着剤203を介して保護シート201が貼り付けられた状態のノズルプレート21を貼り合わせた後、保護シート201の側から加熱加圧することによりシート状接着剤203を硬化させる。このとき、保持シート201のタグ部201aを保持してノズルプレート21に張力を与えながら接着することで、しわの発生が無く、高位置精度でノズルプレート2をアクチュエータ基板11の前端面に接着することができる。
【0069】
また、この接着時に加圧する際には、保護シート201を介して加圧することができるので、ノズルプレート21の表面に形成された撥インク処理面200Aに直接触れることがなく、撥インク処理面200Aの汚染や損傷を防止することができる。
【0070】
更に、ノズルプレート2とアクチュエータ基板11との接着はシート状接着剤203により行われるため、貼り付け時の接着剤のはみ出しが抑えられ、ノズル孔21の詰まりを防止することができる。
【0071】
以上のように、ノズルプレート基材の片面に撥インク処理を施す第1の工程、ノズルプレート基材の撥インク処理面に保護シートを、撥インク処理されていない側の面に剥離シート付きのシート状接着剤の貼り付けを行う第2の工程、ノズルプレート基材にレーザーでノズル孔加工を行うことによりノズルプレートを作製する第3の工程、剥離シートを剥離する第4の工程、ノズルプレートをシート状接着剤を介してインク流路部材に接着する第5の工程を経た後、アクチュエータ基板11の後端面(ノズルプレート2と反対側の端面)にバックプレート3を介してインクマニホールド4を設けることによりインクジェット記録ヘッドが作製される。
【0072】
第6の工程
この後、インク吐出などの必要が生じた際は、図6に示すように、ノズルプレート2の表面から保護シート201を剥離する。この保護シート201の剥離の際は、保護シート201に設けられたタグ部201aを保持することで、容易に保護シート201のみを剥離することができる。
【0073】
また、前述したように、保護シート201とノズルプレート2との間の粘着剤201Aとして加熱によって粘着力が低下する粘着剤を用いることで、ノズルプレート2をアクチュエータ基板11の前端面に熱硬化型接着剤からなるシート状接着剤203を介して接着した際の加熱硬化時の熱により、剥離が容易となるため、ノズルプレート2表面の撥インク処理面200A上の粘着剤残りや、撥インク膜の剥がれを防止することもできる。
【0074】
この第6の工程を含む製造方法によれば、ユーザが保護シート201を剥がす手間なくインク射出して使用することができるインクジェット記録ヘッドを得ることができる。
【0075】
【発明の効果】
請求項1記載の発明によれば、ノズルプレート基材の両面に保護シート及び剥離シート付きシート状接着剤を貼り付けた状態で以降の各工程を行うことにより、各工程作業時にノズルプレート基材表面の傷付きや汚れを防止することができる。また、ノズル孔をレーザー加工する際に不完全燃焼により発生したススがノズルプレート基材表面に付着して汚染するおそれがなくなり、作製されたノズルプレートをインク流路部材に接着する際の接着力の低下を招くようなことはない。また、シート状接着剤を使うことで、インク流路部材に貼り付ける際の接着剤のはみ出しを抑え、ノズル孔の詰まりを防止することができる。更に、保護シートによりノズル孔を精度良く開けることができる。
【0076】
請求項2記載の発明によれば、保護シートを剥がす手間なくインクを射出することができるインクジェット記録ヘッドを得ることができる。
【0077】
請求項3記載の発明によれば、タグ部を保持して作業ができるので、インク流路部材に接着する際に、タグ部を保持し、張力を与えて接着すれば、しわの発生が無く精度良く接着できる。また、剥離するときもタグ部を保持して容易に剥離できる。
【0078】
請求項4記載の発明によれば、加熱により粘着力が低下する粘着剤のついた保護シートを用いることで、シート状接着剤でノズルプレート基材をインク流路部材に貼り付けた後の加熱硬化時の熱で、粘着力が低下し剥離し易くなり、作業性が向上すると共に、剥離の際の粘着剤残り、撥インク膜の剥がれを防止できる。
【0079】
請求項5記載の発明によれば、ノズルプレート基材のノズル孔加工の際に、保護シートを貫通しないようにすることで、ノズル孔加工後の各工程などで、保護シート側からのノズル孔内へのゴミの進入を防止することができる。
【0080】
請求項6記載の発明によれば、複数枚のノズルプレートを作製可能なノズルプレート基材を用いて、一括して撥インク処理、保護シート貼り付け、接着剤シート貼り付け、ノズル孔のレーザー穿孔を行うので、作業効率が良い。特に、レーザー穿孔時の位置合わせを、ノズルプレート個々に行わなくて済むので作業効率が良い。また、剥離シートを残して切断することで、ノズル孔のレーザー穿孔前に切断作業ができるので、切断時のノズル孔の汚れを防止できる。更に、インク流路部材に貼り付ける際は、剥離シートを剥がせば、簡単に複数枚のノズルプレートに分離できる。
【0081】
請求項7記載の発明によれば、アブレーション可能なノズルプレート基材に対して紫外線レーザーで加工することにより、形状の整った孔を開けたり、切断することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】完成されたマルチチャネル型インクジェットヘッドの構造の一例を示す一部破断斜視図
【図2】撥インク処理面を形成したノズルプレート基材を示す斜視図
【図3】ノズルプレート基材に保護シート、粘着剤及び剥離シート付きシート状接着剤を貼り付けた状態を示す斜視図
【図4】図3における(IV)方向から見たレーザー切断工程を説明する説明図
【図5】図3における(V)方向から見たノズル孔加工工程を説明する説明図
【図6】剥離シートを剥離する状態を説明する説明図
【図7】ノズルプレートをインク流路部材に接着する状態を説明する説明図
【図8】保護シートを剥離する状態を説明する説明図
【符号の説明】
1:ヘッドチップ
11:アクチュエータ基板
11a、11b:圧電材料基板
12:カバー基板
13:チャネル
14:隔壁
2:ノズルプレート
21:ノズル孔
21a:奥側端部
3:バックプレート
4:インクマニホールド
200:ノズルプレート基材
200A:撥インク処理面
201:保護シート
201A:粘着剤
201a:タグ部
202:剥離シート
202a:タグ部
203:シート状接着剤
300:切断部
400:孔
Claims (7)
- ノズルプレート基材の片面に撥インク処理を施す第1の工程、前記ノズルプレート基材の撥インク処理面に保護シートを、撥インク処理されていない側の面に剥離シート付きのシート状接着剤の貼り付けを行う第2の工程、前記ノズルプレート基材にレーザーを用いてノズル孔加工を行うことによりノズルプレートを作製する第3の工程、前記剥離シートを剥離する第4の工程、前記ノズルプレートをシート状接着剤を介してインク流路部材に接着する第5の工程を有することを特徴とするインクジェット記録ヘッドの製造方法。
- 前記保護シートを剥離する第6の工程を有することを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録ヘッドの製造方法。
- 前記保護シートは、ノズルプレート基材に貼り付けられた状態でノズルプレート基材からはみ出たタグ部を有することを特徴とする請求項1又は2記載のインクジェット記録ヘッドの製造方法。
- 前記保護シートは、加熱によって粘着力が低下する粘着剤付きシートであることを特徴とする請求項1、2又は3記載のインクジェット記録ヘッドの製造方法。
- 前記第3の工程は、ノズル孔加工の際に、前記剥離シート側から行い、且つ前記保護シートを貫通しないようにすることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のインクジェット記録ヘッドの製造方法。
- 前記ノズルプレート基材の材料は複数枚のノズルプレートを作製可能な大きさを有し、前記第2工程と第3工程の間に、剥離シートを貫通させずに、保護シート、ノズルプレート基材及びシート状接着剤を貫通させてノズルプレート個々の大きさに切断するレーザー切断工程を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のインクジェット記録ヘッドの製造方法。
- 前記ノズルプレート基材は、紫外線によってアブレーション可能な材料からなると共に、前記レーザーは、紫外線レーザーであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のインクジェット記録ヘッドの製造方法。
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