JP2004123523A - 酸化インジウム−酸化錫粉末の製造方法 - Google Patents

酸化インジウム−酸化錫粉末の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】
 インジウムイオンと錫イオンとを含有する水溶液とアルカリ水溶液を混合してインジウムと錫とを含有する沈澱を生成させた後、固液分離により得られた沈澱を焼成することによる酸化インジウム−酸化錫粉末の製造方法において、高密度のITO焼結体を与えるITO粉末の製造方法を提供する。
【解決手段】
 インジウムイオンと錫イオンとを含有する水溶液とアルカリ水溶液とを混合してインジウムと錫とを含有する沈殿を生成させた後、固液分離により得られた沈澱を焼成することによる酸化インジウム−酸化錫粉末の製造方法において、インジウムイオンと錫イオンとを含有する水溶液として錫イオン中の2価の錫イオンの割合が50重量%以上である水溶液を用いることを特徴とする酸化インジウム−酸化錫粉末の製造方法。
【選択図】     なし

Description

 本発明は、酸化インジウム−酸化錫(Indium−Tin−Oxide、酸化インジウムに酸化錫が固溶した物質、以下ITOと略す。)粉末及びその製造方法に関する。さらに詳しくは、高密度のITO焼結体の製造用に好適なITO粉末及びその製造方法に関する。
 ITO粉末はITO焼結体の製造用に用いられ、酸化錫を2〜20重量%含有する。ITO焼結体はITO薄膜をスパッタ法により製造するためのターゲットとして用いられている。ITO薄膜は、高い導電性と優れた透光性を有するために、液晶ディスプレイ用の透明導電膜として利用されている。
 高密度のITO焼結体からなるターゲットを用いると、高い導電性を有するITO薄膜を得ることができるので、相対密度が99%以上である高密度の焼結体がターゲット用のITO焼結体として好適であることが知られている。
 ITO焼結体はITO粉末を焼結して製造されているので、高密度のITO焼結体を与えるITO粉末が求められている。
 ITO焼結体製造用のITO粉末は、インジウムイオンと錫イオンとを含有する水溶液からインジウムと錫を含有する沈澱を得て、次いでこれをろ過し、得られた沈澱を焼成することにより製造される。ITO粉末の従来の製造方法においては、インジウムイオンと錫イオンとを含有する水溶液として、InCl3と4価の錫の塩であるSnCl4とを水に溶解させた水溶液を用い、その水溶液にアンモニア水等のアルカリ水溶液を滴下し、インジウムと錫とを含有する沈澱を得て、次いでこれを濾過し、得られた沈澱を焼成することにより、ITO粉末を製造している(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)。しかし、製造されたITO粉末は高密度のITO焼結体の製造用には充分ではなかった。
特開平7−21831号公報 特開平7−247162号公報
 本発明の目的は、インジウムイオンと錫イオンとを含有する水溶液とアルカリ水溶液を混合してインジウムと錫とを含有する沈澱を生成させた後、固液分離により得られた沈澱を焼成することによる酸化インジウム−酸化錫粉末の製造方法において、高密度のITO焼結体を与えるITO粉末の製造方法を提供することにある。
 本発明者らは、インジウムイオンと錫イオンとを含有する水溶液とアルカリ水溶液とを混合して、インジウムと錫とを含有する沈澱を生成させた後、固液分離により得られた沈澱を焼成することによるITO粉末の製造方法について鋭意検討した結果、該水溶液に含有される錫イオンとして2価の錫イオンが多く含まれる場合に、高密度のITO焼結体を与えるITO粉末が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
 すなわち本発明は、インジウムイオンと錫イオンとを含有する水溶液とアルカリ水溶液とを混合してインジウムと錫とを含有する沈澱を生成させた後、固液分離により得られた沈澱を焼成することによる酸化インジウム−酸化錫粉末の製造方法において、インジウムイオンと錫イオンとを含有する水溶液として錫イオン中の2価の錫イオンの割合が50重量%以上である水溶液を用いることを特徴とする酸化インジウム−酸化錫粉末の製造方法を提供する。
 本発明の製造方法によるITO粉末は、ITO焼結体製造用の原料粉末として使用した場合、高い密度のITO焼結体が得られ、得られた焼結体をスパッタリングターゲットとして用いた場合、高い導電性を有するITO薄膜を得ることができ、一方、本発明の製造方法によるITO粉末は、均一で微細な一次粒子からなるので、透明導電性のフィラ−用途としても適しているので、本発明は工業的に極めて有用である。
 錫イオンは水溶液中に含有されるときは2価または4価の原子価を示す。本発明の製造方法においては、インジウムイオンと錫イオンとを含有する水溶液(以下、「原水溶液」ということがある。)に含有される錫イオンとしては、原水溶液に含有されている錫イオンの量全体に対して2価の錫イオンが50重量%以上であり、70重量%以上が好ましく、80重量%以上がより好ましい。原水溶液に含有される2価の錫イオンが錫イオンの量全体に対して50重量%未満の場合は、沈澱を含有する水溶液から固液分離により沈澱を取り出し、得られた沈澱を焼成して得られるITO粉末には強固な凝集粒子が含まれ、そのため得られたITO粉末を用いてITO焼結体を製造しても高い密度を有するITO焼結体とはならない。
 本発明の製造方法において、原水溶液は、例えば、塩化インジウム(InCl3)、硝酸インジウム(In(NO33)等の水溶性のインジウム塩と塩化第一錫(SnCl2)、硫酸錫(SnSO4)等の2価の水溶性の錫塩を水に溶解させて製造することができる。インジウム塩と錫塩をそれぞれ溶解させて別々の水溶液としてから混合しても、前記の固体のインジウム塩と前記の固体の錫塩を水に加えて共に溶解させて原水溶液としてもよい。塩化インジウムの水溶液または硝酸インジウムの水溶液としては、金属インジウムをそれぞれ塩酸または硝酸に溶解させて製造したものを用いてもよく、塩化第一錫の水溶液も、金属錫を塩酸に溶解させて製造したものを用いることもできる。金属インジウムと金属錫とを塩酸に加えて溶解させることにより、原水溶液を製造することもできる。
 また、原水溶液としては、塩化インジウムと塩化第二錫(SnCl4)とを水に溶解させた水溶液に含有される4価の錫イオンの少なくとも一部を2価に還元したものを用いることができる。あるいは、インジウムと錫と酸素とを含有する化合物を酸に溶解させて得られる溶解液に含有される4価の錫イオンの少なくとも一部を2価に還元したものを用いることもできる。
 インジウムと錫と酸素とを含有する化合物としては、ITO、水酸化インジウム−水酸化錫混合物等が挙げられ、工業的には、ITO粉末の中で品質規格から外れた製品、ITO焼結体で品質規格から外れた製品、ITO焼結体の研削くず、あるいはスパッタリングに使用した使用済みITOターゲットから取り出されたITO焼結体を用いることができる。以下、ITOの使用済みターゲットを用いた方法に関して説明する。
 使用済みITOターゲットは、ITO焼結体が銅製のバッキングプレートにインジウム半田等により貼付された状態で回収されるため、150〜200℃程度に加熱してITO焼結体をバッキングプレートから剥離する。剥離して取り出したITO焼結体にはバッキングプレートとの接合に使用したインジウム半田等が付着残留している場合がある。インジウム半田にはCu、Pb等の不純物が含まれている場合があり、また、ITO焼結体表面にSi、Al、Fe等を含有する異物が付着している場合があるため、酸を用いて洗浄し、インジウム半田や異物等を除去しておくことが好ましい。
 ITO焼結体は、酸への溶解速度を向上させるために予め粉砕することが好ましい。粉砕方法としては特に限定されないが、工業的に通常用いられるジョークラッシャー、ロールクラッシャー、ディスクミル、振動ミル等を用いることができ、これら粉砕機の被粉砕物に接触する部分の材質としてはアルミナ、ジルコニア、タングステンカーバイド等のセラミックスが好ましい。粉砕機の材質が金属の場合は、粉砕後のITO焼結体にその金属が付着して汚染が生じ、ITO焼結体を溶解して作製した溶解液(以下、単に溶解液ということがある。)から金属不純物を除去することが必要となるので好ましくない。粉砕後のITO焼結体の大きさとしては必ずしも限定されないが、好ましくは20mm以下、更に好ましくは2mm以下、最も好ましくは0.5mm以下である。
 ITO焼結体を溶解するための酸としては塩酸、硫酸、硝酸等が挙げられるが、ITOの溶解速度が速い塩酸が好ましく、以下塩酸を用いた場合について説明する。溶解方法は特に限定されないが、反応容器に塩酸と粉砕後のITO焼結体とを仕込み撹拌する等の方法を例示することができる。
 ITO焼結体を酸により溶解するときの温度、時間は特に限定されず、工業的に有利な温度、時間を選択することができ、温度としては通常は40℃以上100℃以下、好ましくは60℃以上80℃以下の温度範囲、溶解時間としては通常は100時間以内、好ましくは50時間以内、さらに好ましくは24時間以内である。ITO焼結体を溶解して得られた溶解液のインジウムの濃度は200g/L以上、さらに300g/L以上とすることが、ITO粉末の生産性の観点から好ましい。
 こうして得られた溶解液には、未溶解のITO焼結体破片や粉砕機の部材から混入したセラミックス粒子が残存する場合もあるが、その場合には濾過等の固液分離によりそれらの固体を除去して液のみを回収する。
 このようにして得られる溶解液中の錫イオンは通常は4価である。この溶解液またはインジウム塩と4価の錫塩を水に溶解させた水溶液を原水溶液として用いる場合は、錫イオンを4価から2価に還元する必要がある。以下、溶解液を用いる場合を例として述べる。
 この還元処理は、溶解液に金属錫を添加して溶解させる方法によって行うことができる。金属錫としては数mm以下程度の粒状のものを用いることができる。その添加量は、溶解液中の錫イオンのうち2価の錫イオンが50重量%以上となる量であればよく、例えば、溶解液中の錫イオンの量の5倍以上の重量の金属錫を溶解液に入れ、反応温度は通常10℃以上90℃以下の範囲、好ましくは20℃以上80℃以下の温度範囲で、通常は6時間以上、好ましくは8時間以上反応させることにより還元処理を行うことができる。このときには還元反応が伴うので、塩酸水溶液中への金属錫の溶解挙動とは異なり、水素ガスの発生が殆ど無い。還元処理は、N2、Ar等の不活性ガス雰囲気中で行うことが好ましい。
 また、還元処理は、前記溶解液に金属インジウムを添加して反応させる方法によって行うこともできる。金属インジウムとしては数mm以下程度の粒状のものや板状のものを用いることができるが、好ましくは溶解液中に存在する錫1gに対して金属インジウムの表面積が2cm2以上、好ましくは3cm2となるように添加する。インジウムの添加重量としては溶解液中の錫イオンの重量の1.3〜2.0倍程度が好ましい。還元反応の温度としては、通常は0℃以上50℃以下であり、好ましくは5℃以上40℃以下程度の温度範囲である。高温で反応させると錫の還元が起こらず水素ガスの発生が生じることがあるので好ましくない。この金属インジウムの添加により錫イオンが0価(すなわち金属錫)まで還元されることもあり、その場合は生成した金属錫を除去することができる。
 そして、還元処理後の溶解液から金属錫および/または金属インジウムを除去してインジウムイオンと錫イオンとを含有する水溶液、すなわち原水溶液が得られる。このようにして得られた原水溶液中に存在する全ての錫イオンの量に対する2価の錫イオンの重量割合は、本発明の製造方法においては50重量%以上である必要があり、50重量%に満たない場合は、さらに還元処理を行ったり、2価の錫イオンを含有する水溶液を加えるなどして50重量%以上とする。
 必要に応じて、該水溶液中のインジウムイオンと錫イオンの濃度を調整する。最終的なインジウムイオンと錫イオンの濃度は、最終的に得ようとするITO粉末に含有される錫量に応じて、インジウムイオン濃度との関係で決定すれば良く、酸化物に換算した場合において酸化インジウムと酸化錫の合計量に対する酸化錫の量が2重量%以上20重量%以下が好ましい。すなわち、インジウムの量をIn23の重量として計算し、錫の量をSnO2の重量として計算した場合において、(SnO2/(In23+SnO2))×100が2以上20以下となることが好ましい。錫イオンまたはインジウムイオンの濃度の調整は、別途調製したインジウムの塩酸溶解液あるいは錫の塩酸溶解液を添加したり、別途調製した塩化インジウム水溶液あるいは塩化第一錫水溶液を添加したりすることにより行うことができる。
 原水溶液中には、不純物として例えば、Zr、Al、Si、Fe等が含まれる場合があり、この場合にはカチオン交換樹脂、アニオン交換樹脂等のイオン交換樹脂と接触させて、これら不純物を除去する工程を含む製造方法が好ましい。特に、ITO焼結体を粉砕し溶解して得られる溶解液を用いる場合は、不純物としてZr、Al、Si、Fe等が含まれる可能性が高く、イオン交換樹脂と接触させて、これら不純物を除去する工程を含む製造方法が好ましい。
 また、原水溶液に含まれる2価の錫イオンは、例えば原水溶液を空気中に放置することによって、容易に酸化され4価の錫イオンに変化する。従って、原水溶液は密栓して、不活性雰囲気中で保存することが好ましい。
 以上のようにしてインジウムイオンと錫イオンとを含有する水溶液を得た後、この原水溶液とアルカリ水溶液とを混合してインジウムと錫を含有する沈澱を生成させる。原水溶液とアルカリ水溶液とを混合してインジウムと錫を含有する沈澱を生成させる方法としては、原水溶液及びアルカリ水溶液を、反応槽に入れた水の中に供給することにより行うことができる。
 この場合、用いるアルカリ水溶液としては、アンモニア水や水酸化ナトリウム水溶液や水酸化カリウム水溶液などが挙げられるが、アンモニア水を用いた場合、固液分離や洗浄を行った際に発生する排水中にアンモニアが多量に含まれ、廃水処理にコストがかかるため好ましくない。水酸化ナトリウム水溶液または水酸化カリウム水溶液を用いる場合、濃度は特に限定されないが、通常10〜50重量%程度の範囲である。アンモニア水を用いる場合も濃度は特に限定されないが、通常10〜28重量%程度の範囲である。
 また、原水溶液及びアルカリ水溶液を、反応槽に入れた水の中に供給する方法としては、例えば、まず反応槽に所定量、所定温度、所定pHの水(蒸留水あるいはイオン交換水等)を入れて撹拌し、次いで、撹拌を行いながら水中への原水溶液およびアルカリ水溶液の供給を開始し、反応中のpHが4以上7以下の範囲に維持されるよう、必要量のアルカリ水溶液を供給することにより行うことができる。このpH範囲にpHを維持して反応させることにより、均一な粒径で、かつ濾過性および乾燥後の解砕性が良好な沈澱が得やすくなる。供給中のpHが7を越えた範囲に維持して反応させた場合、ろ過に時間がかかり、乾燥後に固い塊を含み解砕が困難な沈澱が得られるおそれがある。また、pHが4未満の範囲に維持して反応させた場合、沈澱とならずに溶液中に溶解している状態のインジウムの量が多くなり、収率が低下するおそれがある。
 なお、原水溶液及びアルカリ水溶液の供給の初期段階において、pHが4以上7以下の範囲外に振れる場合がある。特に原水溶液の供給を開始した直後の急激なpH低下や、アルカリ水溶液の供給による急激なpHの上昇を生じる場合があるが、この現象が供給の初期のみであれば、得られる沈澱の濾過性や乾燥後の解砕性および焼成により得られるITO粉末には影響を与えない。なお、前記の供給の初期とは、全供給時間の10%以内の時間をいう。
 また、反応に用いる原水溶液は強酸性を呈するため、原水溶液にアルカリを予め添加して、該水溶液のpHを、インジウムおよび錫の沈澱が生じない程度、例えばpH=0〜1程度に調整しておくことも、反応中のpHを4以上7以下の範囲に維持するために好ましい方法の一つとして挙げられる。
 また、反応槽に入れる水の温度は40℃以上100℃未満が好ましい。水温が40℃未満の場合、得られる沈澱の濾過性が悪化し、濾過に時間がかかり、および乾燥後のケーキが固い塊となり、解砕が困難となるおそれがある。
 原水溶液の供給速度は、工業的に有利な速度を選ぶことができる。供給速度は、反応槽の容量等により調整することができるが、原水溶液の全量を供給する時間として、通常は10分以上300分以下、好ましくは20分以上200分以下である。原水溶液の供給時間が300分を超えると、得られるITO粉末中の一次粒子同士の凝集が強くなり、解砕が困難となるおそれがある。
 原水溶液の供給が終了した後は、インジウムと錫とを含有する沈澱が生成しており、その沈澱を熟成することが好ましい。熟成の方法としては、該沈澱を含有する懸濁液を撹拌または静置する方法等が採用できる。熟成の温度としては、反応温度と同じ40℃以上100℃未満が好ましい。この熟成を行うことによって、沈澱の粒子径の均一化が生じるものと思われる。
 次いで、濾過等により固液分離を行い、インジウムと錫とを含有する沈澱を取り出す。濾過の方法は特に限定されず、吸引濾過、加圧濾過、遠心分離、フィルタ−プレス等の工業的に通常用いられる方法が挙げられる。
 また、濾過による固液分離後の該沈澱には、副生したアルカリ塩類が残存していることがあるため、必要に応じて該沈澱の洗浄を行うことができる。洗浄液としては、蒸留水やイオン交換水等の水、あるいはアンモニア水等を用いることができる。洗浄液にアンモニア水を用いた場合、洗浄時間の短縮効果があること等から好ましい。この場合、アンモニア水のpHとしては、好ましくは8以上12以下、より好ましくはpH9.5以上10.5以下である。pHが12を超えるアンモニア水を用いて洗浄を行った場合、インジウムと錫を含有する沈澱が再溶解する傾向があり、また、洗浄排水中のアンモニア濃度が高くなり、廃水処理にコストがかかり好ましくない。
 洗浄によって、インジウムと錫とを含有する沈澱のアルカリ含有量と塩素含有量を低下させることができる。洗浄は、乾燥後に得られる沈澱のアルカリ含有量が200重量ppm以下、さらに好ましくは100重量ppm以下、塩素含有量が10000重量ppm以下、さらに好ましくは5000重量ppmとなるように行うことが好ましく、そのためには、排水中のアルカリイオン濃度が200mg/L以下、より好ましくは100mg/L以下、さらに好ましくは50mg/Lとなるまで行い、また、排水中の塩素イオン濃度が200mg/L以下、より好ましくは100mg/L以下、さらに好ましくは50mg/Lとなるまで行うことが好ましい。
 次いで、固液分離により得られ、インジウムと錫とを含有する沈澱を乾燥することができるが、乾燥と焼成は同時に行うこともできる。乾燥を行う場合、乾燥温度は特に限定されず、沈澱に付着した水分を除去できる程度の温度、例えば90℃以上200℃以下程度の温度範囲で行うことができる。乾燥を行った場合、本願においては得られた該沈澱のBET比表面積は通常は30m2/g以下となり、凝集が非常に弱く粉砕が容易なものとなる。
 これに対して、原水溶液として、2価の錫イオンが錫イオン全量の50重量%未満のものを用いた場合には、得られた沈澱を乾燥させた物のBET比表面積は50m2/gを超え、極めて微粒子からなる粉末となり、乾燥後の沈澱に固い塊が含まれるので、焼成後に得られるITO粉末にも固い塊が含まれ、高い密度を示すITO焼結体が得られるITO粉末とはならない。
 次に、インジウムと錫とを含有する沈澱を焼成することによってITO粉末とする。
 焼成温度は通常は600℃以上1300℃以下の温度範囲であり、好ましくは800℃以上1200℃以下である。
 焼成の雰囲気ガスとしては、塩化水素、臭化水素、沃化水素等のハロゲン化水素ガス;塩素、臭素、沃素等のハロゲンガス;空気;酸素;窒素;アルゴン等を用いることができる。焼成において少なくとも最高到達温度付近においてはハロゲン化水素ガスおよび/またはハロゲンガスを含有する雰囲気が好ましい。ハロゲン化水素ガスとしては塩化水素ガスが、ハロゲンガスとしては塩素が好ましい。ハロゲン化水素ガスおよび/またはハロゲンガスを含有する雰囲気ガス中での焼成によって、凝集が弱く、特に高い密度のITO焼結体を与えるITO粉末を得ることができる。
 ハロゲン化水素ガスおよび/またはハロゲンガスを含有する雰囲気中で焼成する場合、雰囲気の全体積に対して、該ガスの好ましい濃度は1体積%以上、より好ましい濃度は5体積%以上である。ハロゲン化水素ガスおよび/またはハロゲンガスの濃度の上限は特に限定されないが、工業的な生産性の面から、通常は70体積%以下、より好ましくは50体積%以下、さらに好ましくは20体積%以下である。該ガス以外のガスとしてはアルゴン等の不活性ガス、窒素、酸素、空気またはこれらの混合ガスを用いることができる。
 ハロゲン化水素ガスおよび/またはハロゲンガスを含有する雰囲気ガスを含有する雰囲気ガスは、昇温の過程で600℃以上で導入することが好ましい。600℃未満の温度から前記雰囲気ガスを導入すると、ITOの揮発量が多くなり、収率が低下する等の問題が生ずるおそれがある。また、所定温度で所定時間焼成した後は、前記雰囲気ガスの供給を止め、アルゴン等の不活性ガス、窒素、酸素あるいは空気またはこれらの混合ガスを含有する雰囲気ガスを供給し、冷却することが好ましい。
 焼成における雰囲気ガスの圧力は特に限定されず、工業的に用いられる範囲において任意に選ぶことができる。通常は常圧(0.08MPa以上0.12MPa以下)で焼成を行う。
 適切な焼成の時間は雰囲気ガスの濃度や焼成の温度にも依存するので必ずしも限定されないが、所定の温度範囲に保持する時間は好ましくは1分以上、より好ましくは10分以上である。
 焼成装置は必ずしも限定されず、いわゆる焼成炉を用いることができる。特に、ハロゲン化水素ガスおよび/またはハロゲンガスを用いる場合、焼成炉はハロゲン化水素ガス、ハロゲンガスに腐食されない材質で構成されていることが好ましい。さらに雰囲気を調整できる構造を備えていることが望ましい。また、ハロゲン化水素ガスまたはハロゲンガスという腐食性ガスを用いるので、焼成炉は気密性があることが望ましい。
 工業的には連続方法で焼成することが好ましく、例えば、トンネル炉等を用いることができる。ハロゲン化水素ガスまたはハロゲンガス雰囲気中で焼成する場合、焼成工程で用いられる装置、坩堝やボ−トは、アルミナ性、石英性、耐酸レンガあるいはグラファイト製であることが好ましい。
 上記の製造方法により製造されたITO粉末はBET比表面積径(ITO粉末のBET比表面積とITOの理論密度から求めた値)が、好ましくは0.05μm以上1μm以下、さらに好ましくは0.1μm以上0.5μm以下の均一な一次粒子から構成される。またこれら一次粒子同士の凝集は弱く、焼結用に好適である。
 また、上記の製造方法により製造されたITO粉末には、アルカリがハロゲン化物としてITO粒子表面に残留している場合があり、焼成後にITO粉末を水で洗浄することによってアルカリ含有量を減少させることができる。こうして、アルカリ含有量が10ppm以下で、純度99.99%以上のITO粉末を得ることができる。
 焼成後のITO粉末を水で洗浄する場合、その方法としては、焼成後のITO粉末を所定量の水に添加して、攪拌して分散させスラリー化させた後に、濾過等の固液分離等を行った後、水を注いで洗浄する方法を採用することができる。濾過の方法は特に限定されず、吸引濾過、加圧濾過、遠心分離、フィルタ−プレス等の工業的に通常用いられる方法を挙げることができる。また、焼成後のITO粉末に所定量の水に加えて、攪拌して分散させた後に、得られたITOスラリーのpHを好ましくは6以上9以下、更に好ましくは7以上8以下に調整する方法により、濾過性が改善され短時間で濾過洗浄が終了する。
 また、得られたITO粉末を粉砕することができる。粉砕方法としては特に限定されるものではなく、例えば通常工業的に用いられる、振動ミル、ボールミルやジェットミル等が挙げられるが、本願発明の製造方法によるITO粉末の粉砕方法としては、ITO粉末中の一次粒子同士の凝集は弱いため、軽度の粉砕、例えばボ−ルミルやジェットミル等により粉砕することができる。またボールミル粉砕に際しては、乾式粉砕または湿式粉砕、またはこれらの組み合わせのいずれの方法も用いることができる。
 ITO粉末の粉砕に用いられる粉砕容器としてはアルミナ製や樹脂製等のものを用いることができ、粉砕用のボールとしてはアルミナ製、ジルコニア製や樹脂製等のものを用いることができる。ボールミル粉砕の際に粉砕容器やボールからの汚染が少ない、樹脂製の粉砕容器と耐摩耗性の高いジルコニア製の粉砕用ボールを用いることが好ましく、更にボールミル粉砕条件、例えば回転数、粉砕時間等を最適化することで高純度のITO粉末を得ることができる。
 次に本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
 なお、本発明における各種測定は次のようにして行った。
1.焼成後に得られたITO粉末の累積粒度分布とBET比表面積の測定
(1)レーザー散乱法を測定原理とする粒度分布測定装置(島津製作所製、SALD−2000A型)を用いて累積粒度分布を測定し、累積50重量%の粒径を平均粒径とした。
(2)BET比表面積測定装置(島津製作所製、フロ−ソ−ブII 2300型)を用いてBET比表面積を測定した。
 また次式によってBET比表面積径(DBET)を算出し、一次粒子径の目安とした。
   DBET(μm)=6/(S×ρ)
        S=BET比表面積(m2/g)
        ρ=ITOの理論密度(g/cm3
          錫の含有量が酸化物換算で酸化錫として(SnO2/(I
          n23+SnO2))×100=10重量%の場合は、
          ρは7.16g/cm3である。
2.ITO粉末中の塩素含有量測定方法
 ITO粉末中の塩素含有量は、ITO粉末を水素還元し、排出ガスを水トラップに吸収させ、トラップ中の塩素量をイオンクロマトグラフィーにより定量し測定した。
実施例1
 金属インジウム(純度99.999重量%)を濃度35重量%の塩酸に溶解して製造した塩化インジウム水溶液(In=23.3重量%含有)5151gに、金属錫(純度99.995重量%)を濃度35重量%の塩酸に溶解した錫塩水溶液(Sn=23.3重量%含有)526gを混合して、インジウムイオンと錫イオンとを含有する水溶液を調製した。該水溶液中の全てのSnイオンに対する2価のSnイオンの割合は85.3重量%であった。インジウムイオンと錫イオンとを含有する水溶液中のSnの量は、酸化物に換算して酸化錫として(SnO2/(In23+SnO2))×100=10重量%であった。次いで濃度25重量%の水酸化ナトリウム水溶液を加えてインジウムイオンと錫イオンとを含有する水溶液のpHを0.5に調整した。
 容積20Lの反応槽内にイオン交換水6kgを入れて55℃に保持した。この55℃のイオン交換水を撹拌しながら、インジウムイオンと錫イオンとを含有する水溶液と濃度25重量%水酸化ナトリウム水溶液とを、反応中のpHが5.5に維持されるように、114分かけて同時に供給し中和反応を行ってインジウムと錫とを含有する沈澱を生成させた。反応終了後、55℃にて30分撹拌の後に、25重量%水酸化ナトリウム水溶液にてpH=8.0に調整した。
 次いで、沈澱を含有する水溶液から吸引濾過により固液分離を行って沈澱を得た。沈澱は吸引濾過後、漏斗に保持したままアンモニア水によりpH=10に調整したイオン交換水5.8kgを5回注いで(合計29kg)洗浄した。洗浄5回目の洗浄排水のナトリウムイオン濃度は3.8mg/L,塩素イオン濃度は28mg/Lであった。
 次いで、この沈澱を140℃にて乾燥した。乾燥した沈澱のBET比表面積は13m2/g、ナトリウム含有量は7重量ppmで塩素含有量は5000重量ppmであった。そして、前記乾燥させた沈澱を焼成した。沈澱は石英ガラス製のボ−トに充填した。充填量は約500g、充填深さは約30mm程度とした。焼成は石英ガラス製炉芯管を用いた管状炉(東京理化窯業社製)で行った。昇温速度は5℃/分とした。焼成の雰囲気は当初空気として昇温を開始し、温度が1000℃に達してから塩化水素10体積%−空気90体積%からなる雰囲気を導入して雰囲気を切り替え、1100℃で40分間保持して焼成を行った。1100℃で保持した後、空気を導入して雰囲気を切り替え、室温まで冷却し、目的とするITO粉末をボ−ト中に得た。塩化水素は鶴見ソ−ダ(株)製のボンベ塩化水素(純度99.9%)を用いた。雰囲気ガス濃度の調整は、流量計を用いたガス流量の調整により行った。粉末を取り出して水洗してITO粉末を得た。水洗方法は、焼成後のITO粉末を、その重量の3倍量のイオン交換水に入れ、30分撹拌の後に、アンモニア水を添加してpH=8〜9に調整した後、吸引濾過し、排水中の塩素イオン濃度が1mg/L以下となるまでイオン交換水にて洗浄した。洗浄後、130℃にて乾燥した。得られたITO粉末の塩素含有量は10ppm未満、BET比表面積が3.0m2/gでBET比表面積径が0.28μm、平均粒径が5.1μmであった。
 また、得られたITO粉末の湿式粉砕を行った。湿式粉砕はボールミルにより行った。ITO粉末100gと、エタノール100gと、直径5mmジルコニアボ−ル1000gとをポリエチレン製500mlポットに入れ、回転数100rpmにて8時間粉砕した。次いで、減圧下にて乾燥し、粉砕ITO粉末を得た。粉砕後に得られたITO粉末のBET比表面積は3.7m2/g、BET比表面積径は0.23μm、平均粒径は0.9μmであった。
 粉砕ITO粉末を焼結した。粉砕後のITO粉末を、10MPa(100kg/cm2)に加圧して一軸成形した後、250MPa(2.5ton/cm2)の圧力にてCIP成形を行い、成形体を得た。焼結は常圧の酸素雰囲気中、1500℃の温度範囲に3時間保持して行った。得られたITO焼結体の焼結体密度は7.12g/cm3となり、理論密度の99.4%まで高密度化した。
実施例2
 まず金属インジウムを塩酸に溶解させた水溶液と、塩化第二錫(SnCl4)水溶液と濃度35重量%塩酸とを混合し、Inイオン濃度が110g/L、Snイオン濃度が12g/L、水素イオン濃度が0.9mol/Lの水溶液を調整した。次いで、該水溶液526mLに金属錫121.4gを添加して、N2雰囲気中、70℃にて7時間保持して溶解させた後に未溶解の金属錫を除去することにより、水溶液中の錫を4価から2価に還元した。得られた水溶液中の全てのSnイオンに対する2価のSnイオンの重量割合は、理論計算で99%であった。次いで、インジウムの塩酸溶解液を添加して、錫含有量が酸化物換算で(SnO2/(In23+SnO2))×100=10重量%のインジウムイオンと錫イオンとを含有する水溶液を得た。その水溶液に濃度25重量%の水酸化ナトリウムを添加し、pHを0.2に調整した。得られた水溶液は720mlであり、In濃度は159g/L、Sn濃度17g/Lであった。
 次いで、容積2Lの反応槽内にイオン交換水600gを入れて60℃に保持し、撹拌しながら、上記で得られたインジウムイオンと錫イオンとを含有する水溶液と濃度25重量%の水酸化ナトリウム水溶液とを、反応中のpHが5.5に維持されるように、60分かけて同時に供給して中和反応を行ってインジウムと錫を含有する沈澱を生成させた。反応終了後、60℃にて30分撹拌の後に、濃度25重量%水酸化ナトリウム水溶液にてpH=8.0に調整し、更に40℃まで降温の後にpH=10.0に調整し、得られた沈澱を吸引濾過により採取後、アンモニア水によりpH=10に調整したイオン交換水約580gを7回注いで洗浄した。洗浄7回目の洗浄排水の塩素イオン濃度は87mg/Lであった。
 次いで、この沈澱を130℃にて乾燥した。乾燥した沈澱の平均粒径は5.0μm、BET比表面積は16m2/gであり、乾燥品の解砕は容易であった。次に、上記乾燥物を実施例1と同じ炉を用いて実施例1と同様に炉内に設置し、1090℃までは空気のみを流し、1090℃から10体積%塩化水素−90体積%空気からなるガスを流して雰囲気を切り替え、1090℃で60分間保持して焼成した。得られた粉末を実施例1と同様にして水洗してITO粉末を得た。得られたITO粉末のBET比表面積は3.8m2/g、BET比表面積径は0.2μm、平均粒径は4.2μmであった。
 また、得られたITO粉末を実施例1と同様にして湿式粉砕し、BET比表面積が5.0m2/g、BET比表面積径が0.17μm、平均粒径が0.8μmの粉砕ITO粉末を得た。
 粉砕して得られたITO粉末を実施例1と同様にして焼結した結果、焼結体密度は7.11g/cm3となり、理論密度の99.3%にまで高密度化した。
実施例3
 インジウムと錫の水酸化物143.8g(In=90.1g、Sn=8.8g含有)と金属錫(純度99.995%)45.6gを1Lセパラブルフラスコに投入し、更に濃度35重量%の塩酸268mlを添加して、75℃にて6時間保持して、Snを還元しつつ金属錫と前記水酸化物の溶解を行った。その後、未溶解の金属錫を水溶液から除去し、インジウムイオンと錫イオンとを含有する水溶液を得た。この水溶液中の全てのSnイオンに対する2価のSnイオンの割合は、理論計算で83重量%であった。次いで、インジウムの塩酸溶解液を添加して、酸化物換算で((SnO2/(In23+SnO2))×100=10重量%とし、濃度25重量%の水酸化ナトリウム水溶液を添加し、pHを0.2に調整した。得られたインジウムイオンと錫イオンとを含有する水溶液中のInイオンの濃度は17.0重量%、Snイオンの濃度は1.8重量%であった。
 次いで、容積2Lの反応槽内にイオン交換水600gを入れて60℃に保持した。この60℃のイオン交換水を撹拌しながら、上記で得られたインジウムイオンと錫イオンとを含有する水溶液703.4gと、濃度25重量%の水酸化ナトリウム水溶液とを、反応中のpHが5.5に維持されるように、60分かけて同時に供給して中和反応を行ってインジウムと錫を含有する沈澱を生成させた。反応終了後、60℃にて30分撹拌の後に、濃度25重量%水酸化ナトリウム水溶液にてpH=9.8に調整し、得られた沈澱を吸引濾過により採取後、アンモニア水にてpH=10に調整したイオン交換水約580gを5回注いで洗浄した。洗浄5回目の洗浄排水の塩素イオン濃度は20mg/Lであった。
 次いで、この沈澱を130℃にて乾燥した。乾燥した沈澱の平均粒径は4.5μm、BET比表面積は17m2/gであり、乾燥品の解砕は容易であった。次に、乾燥後の沈澱を実施例2と同様にして焼成し、実施例1と同様にして水洗してITO粉末を得た。得られたITO粉末のBET比表面積が3.7m2/g、BET比表面積径が0.23μm、平均粒径が4.0μmであった。
 また、該ITO粉末を実施例1と同様にして湿式粉砕することによって、BET比表面積が4.8m2/g、平均粒径が0.8μmの粉砕ITO粉末が得られた。
 粉砕して得られたITO粉末を実施例1と同様にして焼結した結果、焼結体密度は7.10g/cm3となり、理論密度の99.1%にまで高密度化した。
比較例1
 インジウムと錫とを含有する水酸化物(In:57.9重量%,Sn:6.2重量%含有)2072gを濃度35重量%の塩酸3845gに溶解させた。得られた水溶液中の全ての錫イオンに対する2価の錫イオンの割合は0重量%であった。次いで濃度25重量%の水酸化ナトリウム水溶液を加えてインジウムイオンと錫イオンとを含有する水溶液のpHを0.4に調整した。
 容積20Lの反応槽内にイオン交換水6kgを入れて55℃に保持した。この55℃のイオン交換水を撹拌しながら、インジウムイオンと錫イオンを含有する水溶液と濃度25重量%水酸化ナトリウム水溶液を、反応中のpHが5.5に維持されるように、121分かけて同時に供給し、中和反応を行ってインジウムと錫とを含有する沈澱を生成させた。反応終了後、55℃にて30分撹拌の後に、濃度25重量%水酸化ナトリウム水溶液にてpH=8.0に調整した。次に、得られた沈澱を吸引濾過後、アンモニア水にてpH=10に調整したイオン交換水5.8kgを5回注いで洗浄した。洗浄5回目の洗浄排水のナトリウムイオン濃度は58mg/L、塩素イオン濃度は260mg/Lであった。
 次いで、この沈澱を140℃にて乾燥した。乾燥した沈澱のBET比表面積は54m2/g、ナトリウム含有量は150重量ppmで塩素含有量は2800重量ppmであった。次に、得られた沈澱を実施例1と同様にして焼成した。得られたITO粉末の塩素含有量は63重量ppm、BET比表面積は3.3m2/g、BET比表面積径は0.26μm、平均粒径は1.6μmであった。
 また、得られたITO粉末を実施例1と同様にして湿式粉砕した結果、BET比表面積が3.9m2/g、BET比表面積径が0.21μm、平均粒径が1.0μmの粉砕ITO粉末となった。
 粉砕後に得られたITO粉末を実施例1と同様にして焼結した結果、焼結体密度は6.84g/cm3となり、理論密度の95.6%にまでしか密度は上がらなかった。
実施例4
 使用済みのITOターゲット粉砕品(大きさ約10〜20mm角)814gと35重量%塩酸水溶液716gを2Lセパラブルフラスコに仕込み、80℃で40時間溶解した後、未溶解ITOを除去して、In=311g/L、Sn=34g/L、Zr=0.0354g/L、水素イオン濃度3.2mol/LのITO溶解液を得た。次いで該溶解液をイオン交換水にて希釈して水素イオン濃度を1.4mol/Lに調整後、カチオン交換樹脂(商品名:デュオライトC255LFH)を充填したカラムに1.5ml/分の速度で通液して不純物Zrを除去して、In=142g/L、Sn=15.7g/L、Zr≦0.0001g/LのITO精製溶解液を得た。次いで、ITO精製溶解液563mLに金属錫(純度99.995%)177.8gを添加して、70℃にて7時間保持して反応させた後に未溶解の金属錫を除去することにより、4価の錫イオンを2価に還元した。錫塩水溶液中の全てのSnイオン量に対する2価のSnイオンの割合は、理論計算で99重量%であった。次いで、インジウムの塩酸溶解液を添加して、インジウムイオンと錫イオンを含有する水溶液の錫含有量を酸化物換算で(SnO2/(In23+SnO2))×100=10重量%とし、濃度25重量%の水酸化ナトリウムを添加し、pHを0.02に調整してIn=191g/L、Sn=20g/Lのインジウムイオンと錫イオンとを含有する水溶液627mlを得た。
 次いで、容積2Lの反応槽内にイオン交換水600gを入れて60℃に保持した。この60℃のイオン交換水を撹拌しながら、上記で得られたインジウムイオンと錫イオンとを含有する水溶液と、濃度25重量%水酸化ナトリウム水溶液とを、反応中のpHが5.5に維持されるように、58分かけて同時に供給し中和反応を行ってインジウムと錫を含有する沈澱を生成させた。反応終了後、55℃にて30分撹拌の後に、濃度25重量%水酸化ナトリウム水溶液にてpH=9.7に調整して、得られた沈澱を吸引濾過により採取後、アンモニア水にてpH=10に調整したイオン交換水約580gを5回注いで洗浄した。洗浄5回目の洗浄排水の塩素イオン濃度は20mg/Lであった。
 次いで、この沈澱を130℃にて乾燥した。乾燥した 沈澱の平均粒径は4.4μm、BET比表面積は22m2/gであり、乾燥品の解砕は容易であった。また、乾燥後の沈澱の不純物含有量はAl≦3重量ppm、Si=7重量ppm、Fe=3重量ppm、Cu≦3重量ppm、Pb≦1重量ppm、Zn≦3重量ppmと非常に少なく、高純度であった。次に、上記乾燥後の沈澱を実施例2と同様にして焼成し、得られた粉末を実施例1と同様にして水洗してITO粉末を得た。得られたITO粉末のBET比表面積が3.9m2/g、BET比表面積径が0.21μm、平均粒径は4.0μmであった。また、該粉末の不純物含有量はAl≦5重量ppm、Si=42重量ppm、Fe≦5重量ppm、Cu≦5重量ppm、Pb≦1重量ppm、Zn≦5重量ppmと少なく、99.99重量%以上の純度を有する高純度のITO粉末であった。
 また、該ITO粉末を実施例1と同様にして湿式粉砕することによって、BET比表面積が5.1m2/g、BET比表面積径が0.16μm、平均粒径が0.9μmの粉砕ITO粉末が得られた。
 粉砕して得られたITO粉末を実施例1と同様にして焼結した結果、焼結体密度は7.14g/cm3となり、で、理論密度の99.7%にまで高密度化した。
比較例2
 実施例4と同様にしてITO溶解液を得て、水素イオン濃度を1.0mol/Lとし、次いで該溶解液をカチオン交換樹脂(商品名:モノスフィアー650C)を充填したカラムに1.5ml/分の速度で通液して不純物Zrを除去して、In=214g/L、Sn=23g/L、Zr=0.001g/LのITO精製溶解液を得た。次いで、該ITO精製溶解液を還元処理することなく、該ITO精製溶解液(イオンジウムイオンと錫イオンとを含有する水溶液)715mlに濃度20重量%の水酸化ナトリウムおよび濃度35重量%の塩酸を用いてpHを0.4に調整した。得られたインジウムイオンと錫イオンとを含有する水溶液は890mlで、Inの濃度は172g/L、Snの濃度は19g/Lであった。
 次いで、容積5Lの反応槽内にイオン交換水765gを入れて60℃に保持した。この60℃のイオン交換水を撹拌しながら、インジウムイオンと錫イオンとを含有する水溶液と濃度25重量%の水酸化ナトリウム水溶液を、反応中のpHが5.5に維持されるように、120分かけて同時に供給し中和反応を行ってインジウムと錫を含有する沈澱を生成させた。反応終了後、55℃にて30分撹拌の後に、濃度25重量%の水酸化ナトリウム水溶液にてpH=8に調整し、得られた沈澱を吸引濾過によって回収後、アンモニア水にてpH=10に調整したイオン交換水約740gを7回注いで洗浄した。洗浄7回目の洗浄排水の塩素イオン濃度は49mg/Lであった。
 次いで、この沈澱を130℃にて乾燥した。乾燥した沈澱の平均粒径は5.0μm、BET比表面積は58m2/gと微粒であり、強固な塊状となり解砕は容易ではなかった。次に、上記乾燥した沈澱を実施例1と同じ炉を用いて実施例1と同様にして沈澱を炉内に設置し、1050℃までは空気を流し、1050℃からは10体積%塩化水素−90体積%空気を流して雰囲気を切り替え、更に昇温して、1100℃で40分間保持して焼成した。焼成後に得られた粉末を実施例1と同様にして水洗してITO粉末を得た。得られたITO粉末のBET比表面積は2.6m2/g、BET比表面積径が0.32μm、平均粒径は4.5μmであった。
 また、得られたITO粉末を実施例1と同様にして湿式粉砕することによって、BET比表面積が4.0m2/g、BET比表面積径が0.21μm、平均粒径が1.1μmの粉砕ITO粉末が得られた。
 粉砕して得られたITO粉末を実施例1と同様にして焼結した結果、焼結体密度は6.90g/cm3となり、理論密度の96.4%までにしかならなかった。

Claims (9)

  1.  インジウムイオンと錫イオンとを含有する水溶液とアルカリ水溶液とを混合してインジウムと錫とを含有する 沈澱を生成させた後、固液分離により得られた沈澱を焼成することによる酸化インジウム−酸化錫粉末の製造方法において、インジウムイオンと錫イオンとを含有する水溶液として錫イオン中の2価の錫イオンの割合が50重量%以上である水溶液を用いることを特徴とする酸化インジウム−酸化錫粉末の製造方法。
  2.  インジウムイオンが塩化インジウム由来である請求項1記載の製造方法。
  3.  インジウムイオンと錫イオンとを含有する水溶液が、インジウムと錫と酸素とを含有する化合物を塩酸に溶解して得られる水溶液である請求項1または2のいずれかに記載の製造方法。
  4.  インジウムイオンと錫イオンとを含有する水溶液が、塩化インジウムと塩化第二錫とを含有する水溶液を還元処理して得られた水溶液である請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
  5.  酸化物に換算した場合における酸化インジウムと酸化錫の合計量に対する酸化錫の量が2重量%以上20重量%以下である請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
  6.  インジウムイオンと錫イオンとを含有する水溶液をイオン交換樹脂と接触させる工程を含む請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
  7.  インジウムイオンと錫イオンとを含有する水溶液とアルカリ水溶液との混合を、40℃以上100℃未満の温度の水に、インジウムイオンと錫イオンとを含有する水溶液とアルカリ水溶液とを、pHが4以上7以下の範囲に維持されるよう供給して行うことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
  8.  焼成を、ハロゲン化水素ガスおよび/またはハロゲンガスを1体積%以上含有する雰囲気中で、600℃以上1300℃以下の温度範囲で保持して行うことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法。
  9.  アルカリ水溶液が水酸化ナトリウムおよび/または水酸化カリウムの水溶液である請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法。
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